IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

特許7589081成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法
<>
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図1
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図2
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図3
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図4
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図5
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図6
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図7
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図8
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図9
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図10
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図11
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図12
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図13
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図14
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図15
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図16
  • 特許-成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/04 20060101AFI20241118BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
C23C16/04
H01L21/205
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021044839
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144009
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 壮一
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-022941(JP,A)
【文献】特開2007-083726(JP,A)
【文献】特許第6795123(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/04
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜体を用意し、
複数の開口部を有する格子部と前記格子部を支持するリング部と、を含む遮蔽板を用いたプラズマ処理により、前記被成膜体の表面に対し、成膜が行われる第1部分と、前記第1部分と比較して成膜が抑制される第2部分と、を有する第1膜を形成し、
前記被成膜体の表面に対し、前記第1膜の成膜後に、
前記第2部分に、前記第1膜とは別の組成からなる第2膜を形成する工程を更に含み、
前記第1膜の硬度は、前記第2膜の硬度より高い、成膜方法。
【請求項2】
前記第1膜の密度は、前記第2膜の密度より低い、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
被加工膜が形成された基板を用意し、
前記被加工膜に対し、成膜が行われる第1部分と、前記第1部分と比較して成膜が抑制される第2部分と、を有する第1膜を形成し、
前記第2部分に前記第1膜とは別の組成からなる第2膜を形成し、
前記第1膜の前記第1部分にパターンを形成し、
前記第1膜および前記第2膜をマスクにして、前記被加工膜を加工し、
前記被加工膜は、前記基板上に交互に積層された、複数の第1種の膜と、複数の第2種の膜とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1膜はダイヤモンドライクカーボン膜を含む、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記被加工膜を加工することは、前記第1膜および前記第2膜を前記マスクにして、前記被加工膜に複数のメモリホールを形成することを含む、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNAND型フラッシュメモリのような半導体装置の製造工程においては、半導体基板の表面に被加工膜が形成された後に、当該被加工膜の表面を覆うようにマスクが成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-139424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板状である被成膜体の表面全体を覆うように成膜が行われた場合には、形成された膜で生じた応力により、被成膜体に反りが生じてしまうことがある。
【0005】
開示された実施形態によれば、被成膜体の反りを抑制することのできる成膜装置、成膜方法、及び半導体装置の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る成膜装置は、電極と、被成膜体を保持する保持部と、電極と保持部の間に配置され、被成膜体の表面の一部に対する成膜を抑制する遮蔽板と、を備え、遮蔽板は、複数の開口部を有する格子部と格子部を支持するリング部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、半導体装置の構成を示す等価回路図である。
図2図2は、半導体装置の構成を示す断面図である。
図3図3は、半導体装置の製造方法を示す図である。
図4図4は、半導体装置の製造方法を示す図である。
図5図5は、半導体装置の製造方法を示す図である。
図6図6は、半導体装置の製造方法を示す図である。
図7図7は、被成膜体で生じる反りについて説明するための図である。
図8図8は、本実施形態に係る成膜方法の概要について説明するための図である。
図9図9は、本実施形態に係る成膜装置の構成を示す図である。
図10図10は、本実施形態に係る成膜装置の構成を示す図である。
図11図11は、本実施形態に係る成膜方法を示す図である。
図12図12は、本実施形態に係る成膜方法を示す図である。
図13図13は、本実施形態に係る成膜方法を示す図である。
図14図14は、本実施形態に係る成膜方法を示す図である。
図15図15は、本実施形態に係る成膜方法を示す図である。
図16図16は、本実施形態に係る成膜方法を示す図である。
図17図17は、本実施形態に係る成膜方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0009】
本実施形態に係る成膜装置500は、半導体装置10の製造工程に用いられる装置であって、半導体基板20にマスク100を成膜するための装置として構成されている。半導体装置10の構成や、半導体装置10により実現される成膜方法について説明するに先立ち、半導体装置10の構成について先ず説明する。
【0010】
半導体装置10は、例えばNAND型フラッシュメモリとして構成された半導体記憶装置である。図1には、半導体装置10の構成が等価回路図として示されている。半導体装置10は複数のブロックBLKにより構成されているのであるが、図1においては、これらのうちの1つのブロックBLKのみが図示されている。半導体装置10が有する他のブロックBLKの構成も、図1に示されるものと同じである。各チップには、これら複数のブロックBLKを含む半導体装置10が含まれる。
【0011】
図1に示されるように、ブロックBLKは、例えば4つのストリングユニットSU(SU0~SU3)を含む。また各々のストリングユニットSUは、複数のNANDストリングNSを含む。NANDストリングNSの各々は、例えば8個のメモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)と、選択トランジスタST1、ST2とを含む。
【0012】
尚、メモリセルトランジスタMTの個数は8個に限られず、例えば、32個、48個、64個、96個でもよい。例えばカットオフ特性を高めるために、選択トランジスタST1、ST2のそれぞれが、単一ではなく複数のトランジスタにより構成されていてもよい。さらに、メモリセルトランジスタMTと選択トランジスタST1、ST2との間には、ダミーセルトランジスタが設けられていてもよい。
【0013】
メモリセルトランジスタMTは、選択トランジスタST1と選択トランジスタST2との間において、直列接続されるようにして配置されている。一端側のメモリセルトランジスタMT7が、選択トランジスタST1のソースに接続され、他端側のメモリセルトランジスタMT0が、選択トランジスタST2のドレインに接続されている。
【0014】
ストリングユニットSU0~SU3の各々の選択トランジスタST1のゲートは、それぞれセレクトゲート線SGD0~SGD3に共通接続されている。選択トランジスタST2のゲートは、同一のブロックBLK内にある複数のストリングユニットSU間で同一のセレクトゲート線SGSに共通接続されている。同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMT0~MT7の制御ゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に共通接続される。すなわち、ワード線WL0~WL7及びセレクトゲート線SGSは、同一ブロックBLK内の複数のストリングユニットSU0~SU3間で共通となっているのに対し、セレクトゲート線SGDは、同一ブロックBLK内であってもストリングユニットSU0~SU3毎に個別に設けられている。
【0015】
半導体装置10には、m本のビット線BL(BL0、BL1、・・・、BL(m-1))が設けられている。上記の「m」は、1つのストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSの本数を表す整数である。それぞれのNANDストリングNSのうち、選択トランジスタST1のドレインは、対応するビット線BLに接続されている。選択トランジスタST2のソースは、ソース線SLに接続されている。ソース線SLは、ブロックBLKが有する複数の選択トランジスタST2のソースに対し、共通接続されている。
【0016】
同一のブロックBLK内にある複数のメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータは、一括して消去される。一方、データの読み出し及び書き込みは、1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTに対して一括して行われる。それぞれのメモリセルは、上位ビット、中位ビット、及び下位ビットからなる3ビットのデータを保持することができる。
【0017】
つまり、本実施形態に係る半導体装置10は、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式として、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットデータを記憶させるTLC方式を採用している。このような態様に替えて、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式としては、1つのメモリセルトランジスタMTに2ビットデータを記憶させるMLC方式や、1つのメモリセルトランジスタMTに1ビットデータを記憶させるSLC方式等を採用してもよい。
【0018】
1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTが記憶する1ビットデータの集合は、「ページ」と称される。図1では、上記のような複数のメモリセルトランジスタMTからなる集合の一つに、符号「MG」が付してある。
【0019】
本実施形態のように、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットのデータが記憶される場合、1つのストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合は、3ページ分のデータを記憶することができる。
【0020】
図2には、半導体装置10の構成が、模式的な断面図として示されている。同図に示されるように、半導体装置10では、半導体基板20の上に複数のNANDストリングNSが形成されている。半導体基板20は、その表面にp型ウェル領域が形成されたシリコン基板である。半導体基板20は、図1のソース線SLとして機能する。
【0021】
半導体基板20の上方には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層333、ワード線WLとして機能する複数の配線層332、及びセレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層331が積層されている。積層された配線層333、332、331のそれぞれの間には、図2においては不図示の絶縁層40が配置されている。
【0022】
半導体装置10には複数のメモリホールMHが形成されている。メモリホールMHは、上記の配線層333,332,331、及びこれらの間にある不図示の絶縁層40を上下方向に貫通しており、且つ半導体基板20に達するように形成された穴である。メモリホールMHの側面には、ブロック絶縁膜335、電荷蓄積層336、及びトンネル絶縁膜337が順次形成され、更にその内側に導電体柱338が埋め込まれている。導電体柱338は、例えばポリシリコンからなり、NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMT並びに選択トランジスタST1及びST2の動作時にチャネルが形成される領域として機能する。このように、メモリホールMHの内側には、ブロック絶縁膜335、電荷蓄積層336、トンネル絶縁膜337、及び導電体柱338からなる柱状体が形成されている。
【0023】
メモリホールMHの内側に形成された柱状体のうち、積層された配線層333、332、331のそれぞれと交差している各部分は、トランジスタとして機能する。これら複数のトランジスタのうち、配線層331と交差している部分にあるものは、選択トランジスタST1として機能する。複数のトランジスタのうち、配線層332と交差している部分にあるものは、メモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)として機能する。複数のトランジスタのうち、配線層333と交差している部分にあるものは、選択トランジスタST2として機能する。このような構成により、各メモリホールMHの内側に形成された柱状体のそれぞれは、図1を参照しながら説明したNANDストリングNSとして機能する。柱状体の内側にある導電体柱338は、メモリセルトランジスタMTや選択トランジスタST1、ST2のチャンネルとして機能する部分である。
【0024】
導電体柱338よりも上側には、ビット線BLとして機能する配線層が形成される。導電体柱338の上端には、導電体柱338とビット線BLとを接続するコンタクトプラグ339が形成されている。
【0025】
図2に示される構成と同様の構成が、図2の紙面の奥行き方向に沿って複数配列されている。図2の紙面の奥行き方向に沿って一列に並ぶ複数のNANDストリングNSの集合によって、1つのストリングユニットSUが形成されている。
【0026】
半導体装置10を製造する方法について簡単に説明する。尚、後に説明する成膜装置500により行われる成膜方法は、半導体装置10の製造工程の途中において用いられるものである。
【0027】
<積層工程>積層工程では、半導体基板20の上面を覆うように、複数の絶縁層30及び犠牲層60が交互に形成される。図3には、積層工程が完了した状態が示されている。それぞれの犠牲層60は、後にタングステン等の導電性材料にリプレイスされ、配線層331、332、333となる層である。積層された絶縁層30及び犠牲層60の全体からなる膜には、後に説明するように、メモリホールMH等を形成するための加工が施される。このため、積層工程において積層された絶縁層30及び犠牲層60の全体からなる膜のことを、以下では「被加工膜50」とも表記する。
【0028】
<マスク形成工程>積層工程の後に行われるマスク形成工程では、被加工膜50の表面S11上にマスク100が形成される。マスク100は、本実施形態における「第1膜」に該当する。マスク形成工程では、先ず、成膜装置500を用いたプラズマ処理、例えばプラズマCVDによって、図4のようにマスク100が形成される。その後、図5のように、マスク100に複数の開口110が形成される。開口110は、メモリホールMHが形成される部分の直上となる位置のそれぞれに形成される。マスク形成工程の詳細については後に説明する。
【0029】
<MH加工工程>マスク形成工程の後に行われるMH加工工程では、マスク100を介したRIE(Reactive Ion Etching)により、被加工膜50に複数のメモリホールMHが形成される。図6には、MH加工工程が完了した状態が示されている。同図に示されるように、それぞれのメモリホールMHは、被加工膜50における絶縁層30及び犠牲層60のそれぞれを貫通し、ソース線SLである半導体基板20に達する深さまで形成される。
【0030】
MH加工工程が完了した後は、アッシングによりマスク100が除去される。その後、各メモリホールMHの内側に、ブロック絶縁膜335、電荷蓄積層336、トンネル絶縁膜337、及び導電体柱338からなる柱状体(図2を参照)が形成される。また、犠牲層60が導電性材料にリプレイスされ、配線層331、332、333が形成される。更にその後、コンタクトプラグ339、ビット線BL等が形成され、図1及び図2を参照しながら説明した半導体装置10が完成する。
【0031】
上記のように、マスク形成工程においては、被加工膜50の表面S11上にマスク100が形成される。このとき、図7(A)に示されるように、マスク100が被加工膜50の上面全体を覆う一様な膜として形成された場合には、マスク100と被加工膜50との熱膨張率の違い等に起因して、マスク100では大きな応力が生じる。その結果、図7(B)に示されるように、被加工膜50を含む半導体基板20の全体に反りが生じてしまうことがある。
【0032】
特に、メモリホールMHが深くなることに伴って、マスク100の材料として比較的エッチング耐性がある硬質の膜が使用されることが多い。その結果、成膜されたマスク100で生じる応力が大きくなり、図7(B)に示される半導体基板20の反りも大きくなる傾向がある。半導体基板20の反りは、後の工程におけるチャッキング不良や、半導体基板20における膜剥がれの原因となるため、好ましくない。
【0033】
そこで、本実施形態では、成膜装置500による成膜方法を工夫することで、半導体基板20の反りを抑制することとしている。
【0034】
図8には、成膜装置500によってマスク100が形成された後の状態の、半導体基板20が示されている。半導体基板20は例えばシリコン基板などの半導体ウエハを含む。図8(A)は、半導体基板20を上面視で描いた図であり、図8(B)は、半導体基板20を側面視で描いた図である。
【0035】
図8に示されるように、マスク100は、半導体基板20の上面において、複数の矩形の領域に分かれた状態で成膜されている。各領域の境界部分においては、マスク100が形成されていないか、その厚さが極めて薄くなっている。つまり、マスク100の成膜が抑制されており、当該部分には溝が形成されている。各領域は、例えば1つのチップに相当する大きさを有していてもよいし、複数個のチップに相当する大きさを有していてもよい。
【0036】
各領域の境界部分には、溝の内側を埋めるように、マスク100とは別の材料からなる充填膜200が形成されている。充填膜200の材料は、マスク100に比べて、生じる応力が小さくなるような材料が用いられる。
【0037】
このように、本実施形態では、マスク100が被加工膜50の上面全体を覆う一様な膜として形成されるのではなく、複数の領域に分かれるように形成される。マスク100の全体で生じる応力は、一様に成膜された場合に比べて著しく低減されるので、応力に起因した半導体基板20の反りも低減される。
【0038】
被加工膜50が形成された半導体基板20は、マスク100を成膜する対象であるから、本実施形態における「被成膜体」に該当する。被成膜体の表面(本実施形態では被加工膜50の表面)のうち、マスク100の成膜が抑制されない部分、すなわち、図8において充填膜200に覆われていない部分のことを、以下では「第1部分51」とも称する。また、マスク100の成膜が上記のように抑制される部分、すなわち、図8において充填膜200に覆われている部分のことを、以下では「第2部分52」とも称する。第2部分52は、第1部分51と比較して成膜が抑制される部分、ということができる。
【0039】
このような成膜を実現するための、成膜装置500の構成等について説明する。図9には、成膜装置500の構成が模式的に示されている。本実施形態の成膜装置500はプラズマCVD装置として構成されている。成膜装置500は、保持部510と、電極520と、電源530と、遮蔽板としての抑制部材540と、を備えている。
【0040】
保持部510は、被成膜体である半導体基板20を保持する部分である。保持部510としては、例えばメカチャックや静電チャック等を用いることができる。保持部510は、被加工膜50を上方に向けた状態で、半導体基板20を下方側から保持して固定する。保持部510は導電性の部材により構成されており、半導体基板20と共に接地されている。
【0041】
電極520は、保持部510と対向するように、保持部510の上方側に配置されている。電極520は、保持部510との間においてRFと称される高周波の電界を生じさせ、これによりプラズマを発生させるための電極である。電極520は、プラズマの原料となるガスを供するためのシャワーヘッドと兼用されている。
【0042】
電源530は、互いに対向する保持部510と電極520との間に高周波の交流電圧を印加することで、上記の電界を生じさせるための電源装置である。
【0043】
抑制部材540は、先に述べた第2部分52への成膜を抑制するために、被加工膜50の表面に沿って配置される部材である。図9においては、抑制部材540が模式的な断面図として描かれている。図10には、抑制部材540の構成が上面視で描かれている。同図に示されるように、抑制部材540は、リング部541と、格子部542と、を有している。抑制部材540は、その全体が、例えば金属を含む導電性の部材により形成されている。
【0044】
リング部541は、次に述べる格子部542を内側において支持するための円環状の部材である。リング部541の内径は、被加工膜50の上面の直径よりも大きい。
【0045】
格子部542は、リング部541の内側全体に配置された格子状の部材である。格子部542には、矩形の開口OPが複数形成されている。開口OPが形成されている部分は、本実施形態における「開口部」に該当する。各開口OPの形状は特に限定されないが、後の工程で半導体基板20がダイシングされる際の、各チップの形状に概ね等しくてよい。換言すれば、ダイシングされる線に沿うように格子部542が形成されていてよい。尚、半導体基板20のうち格子部542により覆われる部分は、上記のようにダイシングされる線の直上となる位置に限らず、他の部分であってもよい。いずれの場合であっても、マスク100を用いて形成されるデバイスパターンとは重ならない位置(本実施形態では、開口110が形成されない位置)を覆うように、格子部542が形成されることが好ましい。
【0046】
保持部510によって保持された半導体基板20の上方、に抑制部材540が配置された状態においては、被加工膜50の一部が格子部542によって覆われた状態となる。被加工膜50のその他の部分は、開口OPを通じて上方に開放された状態となる。図9に示されるように、抑制部材540は、保持部510と共に接地されている。
【0047】
成膜装置500によって行われる成膜方法について説明する。当該成膜は、先に述べたマスク形成工程において、マスク100を形成するために行われるものである。
【0048】
マスク形成工程においては、先ず、被加工膜50が形成された半導体基板20が、保持部510の上面に設置され、保持部510によって保持された状態とされる。図9には、半導体基板20が保持部510によって保持された直後の状態が示されている。
【0049】
尚、抑制部材540は、上下方向に沿って移動可能な不図示の保持機構によって保持されている。半導体基板20が保持部510の上面に載置される際において、上記の保持機構は、抑制部材540を予め上方側に移動させておく。これにより、半導体基板20の移動が抑制部材540により妨げられてしまうことが防止される。
【0050】
半導体基板20が保持部510の上面に載置されると、上記の保持機構は、抑制部材540を下方側へと移動させることで、抑制部材540を被加工膜50の表面に沿うように配置する。図11には、このような抑制部材540の移動が完了した状態が示されている。当該状態においては、格子部542の全体が被加工膜50の上面と平行となっており、且つ、格子部542が被加工膜50の上面に近接した状態となっている。
【0051】
この状態で、保持部510と電極520との間に高周波の電圧が印加されると共に、電極520から下方側に向けてガスが供給される。保持部510と電極520との間ではプラズマPSが発生し、その一部が、下方側にある被加工膜50の表面に到達してマスク100が成膜される。図12には、このように成膜が行われている途中の状態が示されている。
【0052】
マスク100は、例えば、組成比が90%以上の炭素原子と、組成比が10%以下の水素原子とを含有するダイヤモンドライクカーボン膜である。マスク100は更に、タングステン原子、ボロン原子、窒素原子、酸素原子などの不純物原子を含有していてもよい。いずれの場合でも、マスク100は、カーボンを主成分とする比較的硬質の膜として形成され、その密度は例えば2.0g/cm以上である。マスク100は、例えば金属のような、カーボン以外の材料を主成分とする膜として形成されてもよい。
【0053】
マスク100の材料となるイオン等の活性種は、プラズマPSから、抑制部材540の開口OPを通じて被加工膜50の表面に到達する。このため、図12において模式的に示されるように、被加工膜50の表面のうち格子部542の直下の部分では、上記活性種(成膜材料)の到達が格子部542によって妨げられるので、マスク100の成膜が抑制される。一方、被加工膜50の表面のうち開口OPの直下の部分では、上記活性種の到達が妨げられないので、マスク100の成膜が抑制されない。このため、マスク100は、開口OPの直下の部分では厚く形成される一方で、格子部542の直下の部分ではほとんど形成されない。
【0054】
被加工膜50の表面のうち開口OPの直下の部分は、上記のようにマスク100の成膜が抑制されない部分であるから、先に述べた「第1部分51」に該当する。また、被加工膜50の表面のうち格子部542の直下の部分は、上記のようにマスク100の成膜が抑制される部分であるから、先に述べた「第2部分52」に該当する。
【0055】
尚、格子部542の直下における成膜を確実に抑制するためには、格子部542の厚さが、プラズマPSと被加工膜50との間におけるシース厚よりも大きくなっていることが好ましい。
【0056】
本実施形態では、先に述べたように、抑制部材540はその全体が導電性の材料を主として含むように形成されている。本実施形態のように、マスク100の材料として、導電性を有する材料が主として用いられる場合には、抑制部材540も主として導電性の材料により形成されていることが好ましい。一方、マスク100の材料として、主として絶縁性の材料が用いられる場合には、抑制部材540も主として絶縁性の材料により形成されていることが好ましい。このような構成においては、抑制部材540の上面に成膜材料が堆積したとしても、抑制部材540の導電性が成膜中において変化しにくいので、一定の安定した条件で成膜を行うことができる。
【0057】
図13には、第2部分52の近傍の部分が拡大して示されている。同図に示されるように、第2部分52の直上では、マスク100の成膜が抑制されたことに伴って、凹状の溝Gが形成されている。溝Gの底の部分においては、図13の例のようにマスク100が薄く形成されていてもよいが、被加工膜50の表面が露出していてもよい。このような溝Gは、上面視において、格子部542に対応した格子状の溝として形成される。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る成膜装置500は、被成膜体(被加工膜50が形成された半導体基板20)の表面の一部に対する成膜を抑制する抑制部材540を備える。抑制部材540は、保持部510に保持された被成膜体の表面に沿って配置されることで、当該表面の一部における成膜を抑制する。抑制部材540は、成膜が抑制されない第1部分51が、成膜が抑制される第2部分52によって複数の領域に分かれるように構成されている。
【0059】
また、半導体装置10の製造工程のうち、成膜装置500によってマスク100を形成するマスク形成工程は、被加工膜50が形成された半導体基板20を保持する工程(図9)と、抑制部材540を、被加工膜50の表面に沿って配置する工程(図11)と、被加工膜50の表面に対し、抑制部材540を通じて成膜材料を到達させることで成膜を行う工程(図12)と、を含む。このような工程を経ることで、マスク100が複数の領域に分かれて形成される。その結果、マスク100の応力を低減し、応力に起因した半導体基板20の反りを抑制することが可能となる。
【0060】
ところで、図13のように溝Gの内側が露出したまま、MH加工工程においてマスク100を介したRIEが行われた場合には、第2部分52の直上ではマスク100が早期に無くなってしまい、その下の被加工膜50がエッチングされてしまう。このため、本実施形態では先に述べたように、溝Gの内側を埋めるように充填膜200が形成される。充填膜200の形成は、成膜装置500とは別の装置によって行われる。
【0061】
先ず、図14に示されるように、マスク100の表面全体を覆うように充填膜200が形成される。充填膜200は、マスク100とは別の組成からなる膜であって、本実施形態における「第2膜」に該当する。「別の組成からなる膜」には、一部の成分(例えばカーボン)がマスク100と共通するような膜も含まれる。充填膜200の材料としては、マスク100よりも硬度が低く、マスク100に比べて応力が小さくなるような材料が用いられる。本実施形態では、マスク100よりも低密度のカーボン膜を材料として、充填膜200が形成される。充填膜200の形成は、塗布により行われてもよく、プラズマCVD等により行われてもよい。充填膜200の密度は、例えば2.0g/cm未満である。
【0062】
図14のように充填膜200が形成された後、充填膜200の表面がエッチバックされ、必要に応じてCMPが施される。その結果、図15に示されるように、溝Gの内側の部分を残して充填膜200が除去される。これにより、半導体基板20は、先に説明した図8に示される状態となる。
【0063】
その後、マスク100には、図5に示されるような複数の開口110が形成される。具体的には、先ず、マスク100の表面を覆うように、2層のレジスト膜410、420が形成される。図16に示されるように、レジスト膜410はマスク100上を覆うように形成され、レジスト膜420はその更に上を覆うように形成される。
【0064】
続いて、フォトリソグラフィ及びRIEを用いて、レジスト膜410、420を貫くように開口401が形成される。開口401は、開口110と対応する位置、すなわち、メモリホールMHと対応する位置のそれぞれに形成される円形の開口である。
【0065】
その後、レジスト膜410、420をマスクとしたRIEにより、マスク100のうち開口401の直下の部分がエッチングされ、開口110が形成される。以上の加工を可能とするために、感光性を有する材料によりレジスト膜410を形成し、エッチング耐性を有する材料によりレジスト膜420を形成すればよい。開口110の形成が完了した後は、アッシングによりレジスト膜410、420が除去される。図17には、レジスト膜410、420が除去された状態が示されている。
【0066】
その後は、図17に示されるマスク100を用いて、先に説明したMH加工工程が行われる。当該工程は、マスク100(第1膜)および充填膜200(第2膜)をマスクにして、被加工膜50を加工する工程、ということができる。
【0067】
以上のように、本実施形態で用いられる成膜方法においては、被加工膜50の表面に対し、抑制部材540を通じて成膜材料を到達させることでマスク100の成膜を行った後に、第2部分52の直上(つまり、溝Gの内側)に、上記の成膜材料とは別の材料からなる充填膜200を形成する工程を更に含んでいる。これにより、マスク100を複数の領域に分割し応力を抑制しながらも、領域の境界部分におけるエッチング耐性を確保することが可能となっている。
【0068】
尚、充填膜200は、マスク100よりもエッチング耐性が低い。しかしながら、充填膜200が形成されている部分は、メモリホールMHのような加工対象が密には配置されていないので、当初からエッチング速度が低い部分である。このため、充填膜200のエッチング耐性が低くても、メモリホールMHの形成時において、充填膜200が無くなってしまうことは無い。
【0069】
以上に説明した成膜方法は、半導体装置10の製造工程のうち、種々の成膜工程に適用することができる。本実施形態では、マスク100がCVDにより成膜される場合の例について説明したが、本実施形態のような抑制部材540を用いた成膜方法は、例えばスパッタ等のPVDによる成膜に適用することもできる。また、半導体装置10の製造工程に限られず、他の成膜工程に適用することもできる。
【0070】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0071】
20:半導体基板、50:被加工膜、100:マスク、200:充填膜、500:成膜装置、510:保持部、520:電極、540:抑制部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17