(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】電波反射板
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20241118BHJP
H01Q 3/46 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H01Q3/46
(21)【出願番号】P 2021060859
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大一
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】新木 盛右
(72)【発明者】
【氏名】沖田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-532911(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130839(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/213148(WO,A1)
【文献】特開2005-292587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
H01Q 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板との間に挟持される第1誘電体層と、
を備える電波反射板であり、
前記第1基板は、
第1基材と、
第1方向及び第2方向それぞれに沿って、等間隔にマトリクス状に配置される正方形の複数の第1パッチ電極と、
前記第1基材及び前記複数の第1パッチ電極との間に設けられた、正方形の複数の第2パッチ電極と、
前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極との間に設けられた、第2誘電体層と、
を備え、
前記第2基板は、
第2基材と、
前記第2基材に接して設けられた、共通電極と、
を備え、
前記第1誘電体層は、第1誘電率を有し、
前記第2誘電体層は、第2誘電率を有する、電波反射板。
【請求項2】
前記第1誘電率は可変であり、前記第2誘電率は一定である、請求項1に記載の電波反射板。
【請求項3】
前記第1誘電体層は、液晶層であり、
前記第2誘電体層は、有機絶縁層である、請求項1に記載の電波反射板。
【請求項4】
前記有機絶縁層の材料は、ポリイミド又はアクリルである、請求項3に記載の電波反射板。
【請求項5】
前記第1誘電率は、2.5以上3.5以下であり、
前記第2誘電率は、2.5である、請求項1に記載の電波反射板。
【請求項6】
前記第2パッチ電極は、フローティング状態である、請求項1に記載の電波反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電波反射板に関する。
【0002】
電気的に指向性を制御できるフェーズドアレイアンテナに使用する移相器として、液晶を利用した移相器の開発が行われている。フェーズドアレイアンテナでは、対応する移相器から高周波信号が伝送される複数のアンテナ素子は、1次元(又は2次元)に並べられている。上記のようなフェーズドアレイアンテナにおいて、隣り合うアンテナ素子に入力する高周波信号の位相差が一定となるよう、液晶の誘電率を調整する必要がある。
【0003】
また、フェーズドアレイアンテナと同様に液晶を利用して電波の反射方向を制御できる電波反射板の検討も行われている。この電波反射板において、反射電極を有する反射制御部が1次元(又は2次元)に並べられている。電波反射板においても、反射される電波の位相差が隣り合う反射制御部間で一定となるよう、液晶の誘電率を調整する必要がある。
【0004】
液晶を誘電体として用いる電波反射板は、反射方向を液晶に印加する電圧により可変で制御することが可能である。しかしながら、液晶を用いる電波反射板では、反射される電波の位相差量が不十分の場合、電波を反射する方向の可変量に制約を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-103201号公報
【文献】特表2019-530387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、反射される電波の位相差量を増加させることが可能な電波反射板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る電波反射板は、第1基板と、第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板との間に挟持される第1誘電体層と、を備える電波反射板であり、前記第1基板は、第1基材と、第1方向及び第2方向それぞれに沿って、等間隔にマトリクス状に配置される正方形の複数の第1パッチ電極と、前記第1基材及び前記複数の第1パッチ電極との間に設けられた、正方形の複数の第2パッチ電極と、前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極との間に設けられた、第2誘電体層と、を備え、前記第2基板は、第2基材と、前記第2基材に接して設けられた、共通電極と、を備え、前記第1誘電体層は、第1誘電率を有し、前記第2誘電体層は、第2誘電率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の電波反射板を示す断面図である。
【
図3】
図3は、パッチ電極を示す拡大平面図である。
【
図4】
図4は、電波反射板の一部を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の電波反射板の駆動方法において、期間毎にパッチ電極に印加する電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、本実施形態の電波反射板の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の電波反射板を示す平面図である。
【
図8】
図8は、電波反射板の部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、スイッチング素子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る電波反射板について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第3方向Zの矢印の先端に向かう方向を上又は上方と定義し、第3方向Zの矢印の先端に向かう方向とは反対側の方向を下又は下方と定義する。
【0011】
また、「第1部材の上方の第2部材」及び「第1部材の下方の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよく、又は第1部材から離れて位置していてもよい。後者の場合、第1部材と第2部材との間に、第3の部材が介在していてもよい。一方、「第1部材の上の第2部材」及び「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接している。
【0012】
また、第3方向Zの矢印の先端側に電波反射板を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを平面視という。第1方向X及び第3方向Zによって規定されるX-Z平面、あるいは第2方向Y及び第3方向Zによって規定されるY-Z平面における電波反射板の断面を見ることを断面視という。
【0013】
図1は、本実施形態の電波反射板を示す断面図である。電波反射板REは、電波を反射させることができ、電波のための中継装置として機能している。
【0014】
図1に示すように、電波反射板REは、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、液晶層LCと、を備えている。第1基板SUB1は、電気絶縁性の基材BA1と、複数のパッチ電極PEFと、絶縁層INSと、複数のパッチ電極PELと、配向膜AL1と、有している。
【0015】
基材BA1は、平板状に形成され、互いに直交する第1方向X及び第2方向Yを含むX-Y平面に沿って延伸している。
基材BA1上に、複数のパッチ電極PEFが設けられている。
複数のパッチ電極PEFを覆って、絶縁層INSが設けられている。
【0016】
絶縁層INS上に、複数のパッチ電極PELが設けられている。複数のパッチ電極PELは、複数のパッチ電極PEFと第3方向で対向し、それぞれ重畳している。
【0017】
パッチ電極PELを覆って、配向膜AL1が設けられている。
なお本実施形態では、パッチ電極PEF及びPELを総じて、パッチ電極PEとも呼ぶこともある。
【0018】
第2基板SUB2は、第1基板SUB1に所定の隙間を空けて対向配置されている。第2基板SUB2は、電気絶縁性の基材BA2と、共通電極CEと、配向膜AL2と、を有している。基材BA2は、平板状に形成され、X-Y平面に沿って延伸している。
基材BA2に接して、共通電極CEが設けられている。共通電極CEと基材BA1との間に、図示しない絶縁層を設けてもよい。
共通電極CEを覆って、配向膜AL2が設けられている。本実施形態において、配向膜AL1及び配向膜AL2は、それぞれ水平配向膜である。
【0019】
第1基板SUB1及び第2基板SUB2は、それぞれの周縁部に配置されたシール材SALにより接合されている。液晶層LCは、第1基板SUB1、第2基板SUB2、及びシール材SALで囲まれた空間に設けられている。液晶層LCは、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持されている。
【0020】
ここで、液晶層LCの厚み(セルギャップ)をdlとする。厚みdlは、通常の液晶表示パネルの液晶層の厚みより大きい。本実施形態において、厚みdlは50μmである。但し、電波の反射位相を十分に調整できるのであれば、厚みdlは、50μm未満であってもよい。又は、電波の反射角を大きくするため、厚みdlは、50μmを超えてもよい。電波反射板REの液晶層LCに使用する液晶材料は、通常の液晶表示パネルに使用する液晶材料と異なっている。なお、上述した電波の反射位相に関しては後述する。
【0021】
共通電極CEにはコモン電圧が印加され、共通電極CEの電位は固定される。本実施形態において、コモン電圧は接地電圧、例えば0Vである。パッチ電極PEにも電圧が印加される。本実施形態において、パッチ電極PEは、交流駆動される。液晶層LCは、パッチ電極PEと共通電極CEとの間に生じた電界により駆動される。パッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加される電圧が液晶層LCに作用することで、液晶層LCの誘電率は変化する。
【0022】
液晶層LCの誘電率が変わると、液晶層LCにおける電波の伝搬速度も変わる。そのため、液晶層LCに作用させる電圧を調整することで、電波の反射位相を調整することができる。これにより、電波の反射方向を調整することができる。
【0023】
本実施形態において、液晶層LCに作用させる電圧の絶対値は、10V以下である。10Vで液晶層LCの誘電率が飽和状態となるためである。ただし、液晶層LCの誘電率によっては、その飽和状態となる電圧は異なってくるため、液晶層LCに作用させる電圧の絶対値は、10Vを超えてもよい。例えば、液晶の応答速度の向上が求められる場合、10Vを超える電圧を液晶層LCに作用させた後、10V以下の電圧を液晶層LCに作用させてもよい。
【0024】
第1基板SUB1は、第2基板SUB2と対向する側とは反対側に入射面Saを有している。なお、
図1中、入射波w1は電波反射板REに入射される電波であり、反射波w2は電波反射板REで反射された電波である。
【0025】
図2は、
図1に示した電波反射板を示す平面図である。
図2に示す電波反射板REでは、第1方向X及び第2方向Yのそれぞれに沿ってマトリクス状に配置された、複数のパッチエリアPAを有している。複数のパッチエリアPAのそれぞれは、パッチ電極PEを有している。
図2に示すパッチ電極PEは、重畳するパッチ電極PEF及びパッチ電極PELを示すものとする。
【0026】
複数のパッチ電極PEは、第1方向X及び第2方向Yのそれぞれに沿って間隔を置いてマトリクス状に配置されている。X-Y平面において、複数のパッチ電極PEは、同一形状及び同一サイズを有している。複数のパッチ電極PELは同一平面(X-Y平面)に設けられ、複数のパッチ電極PEFは、パッチ電極PELより上方の同一平面(X-Y平面)に設けられている。
【0027】
複数のパッチ電極PEは、第1方向Xに沿って等間隔に並べられ、第2方向Yに沿って等間隔に並べられている。複数のパッチ電極PEは、第2方向Yに沿って延伸し第1方向Xに沿って並べられた複数のパッチ電極群GPに含まれている。
図2では、複数のパッチ電極群GPは、例えば、第1パッチ電極群GP1から第8パッチ電極群GP8までを有している。
【0028】
第1パッチ電極群GP1は複数の第1パッチ電極PE1を有し、第2パッチ電極群GP2は複数の第2パッチ電極PE2を有し、第3パッチ電極群GP3は複数の第3パッチ電極PE3を有し、第4パッチ電極群GP4は複数の第4パッチ電極PE4を有し、第5パッチ電極群GP5は複数の第5パッチ電極PE5を有し、第6パッチ電極群GP6は複数の第6パッチ電極PE6を有し、第7パッチ電極群GP7は複数の第7パッチ電極PE7を有し、第8パッチ電極群GP8は複数の第8パッチ電極PE8を有している。例えば、第2パッチ電極PE2は、第1方向Xに沿った方向において、第1パッチ電極PE1と第3パッチ電極PE3との間に位置している。
【0029】
各々のパッチ電極群GPは、第2方向Yに沿って並べられ互いに電気的に接続された複数のパッチ電極PEを含んでいる。本実施形態において、各々のパッチ電極群GPの複数のパッチ電極PEは、接続配線CLにより接続されている。接続配線CLは、複数のパッチ電極PELのみに接続され、複数のパッチ電極PEFに対しては、接続配線CLが設けられていなくてもよい。すなわち、パッチ電極PEFはフローティング状態であればよい。この場合、
図2に示すパッチ電極PEは、パッチ電極PELを表している。なお図示しないが、接続配線CLは、複数のパッチ電極PELそれぞれ、及び、複数のパッチ電極PEFのそれぞれに対して設けられていてもよい。
【0030】
図2に示す電波反射板REは、パッチ電極PEごとにスイッチング素子が設けられておらず、接続配線CLを介して電圧が印加される。つまり、
図2に示す電波反射板REは、パッシブ駆動により駆動される。しかし本実施形態の電波反射板はこれに限定されず、パッチ電極PEごとにスイッチング素子を設け、いわゆるアクティブ駆動により駆動してもよい。詳細は後述する。
【0031】
複数の接続配線CLは、第1基板SUB1に、第2方向Yに沿って延伸し、第1方向Xに沿って並べられている。接続配線CLは、第1基板SUB1のうち第2基板SUB2と対向していない領域まで延伸している。なお、本実施形態と異なり、複数の接続配線CLは、複数のパッチ電極PEと一対一で接続されてもよい。
【0032】
本実施形態において、第2方向Yに沿って並んだ複数のパッチ電極PEと、接続配線CLとは、同一の導体で一体に形成されている。なお、複数のパッチ電極PEと、接続配線CLとは、互いに異なる導体で形成されてもよい。パッチ電極PE、接続配線CL、及び上記共通電極CEは、金属、又は金属に準ずる導体で形成されている。例えば、パッチ電極PE、接続配線CL、及び上記共通電極CEは、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)等の透明な導電材料で形成されてもよい。接続配線CLは、図示しないアウターリードボンディング(OLB)のパッドに接続されてもよい。1つのパッチエリアPAは、1つのパッチ電極PE、及び、隣り合うパッチ電極PEを接続する接続配線CLの一部を有している。
【0033】
接続配線CLは細線であり、接続配線CLの幅は後述する長さPxと比べて十分に小さい。接続配線CLの幅は、数μm乃至数十μmであり、μmオーダーである。なお、接続配線CLの幅が長大きすぎると、電波の周波数成分の感度が変わってしまうため望ましくない。
【0034】
シール材SALは、第1基板SUB1と第2基板SUB2とが対向する領域の周縁部に配置されている。
【0035】
図2には、第1方向Xに沿った方向及び第2方向Yに沿った方向にそれぞれ8個のパッチ電極PEが並べられた例を示したが、本実施形態はこれに限定されない。パッチ電極PEの個数は、種々変形可能である。例示すると、パッチ電極PEは、第1方向Xに沿った方向に100個並べられ、第2方向Yに沿った方向に複数個(例えば100個)配置されていてもよい。電波反射板RE(第1基板SUB1)の第1方向Xに沿った方向の長さは、例えば40cm以上80cm以下である。
【0036】
図3は、パッチ電極を示す拡大平面図である。本実施形態では、パッチ電極PEL及びPEFは同じ形状を有している。よって、
図3に示すパッチ電極PEは、パッチ電極PEL及びPEFの両方の形状を示すものである。
パッチ電極PEは、正方形の形状を有している。パッチ電極PEの形状は得に限定されるものではないが、正方形や真円が望ましい。パッチ電極PEの外形に注目すると、縦横のアスペクト比が1:1となる形状が望ましい。横偏波及び縦偏波に対応するためには90°の回転対称構造が望ましいためである。
【0037】
パッチ電極PEは、第1方向Xに沿った方向に長さPxを有し、第2方向Yに沿った方向に長さPyを有している。長さPx及び長さPyは、入射波w1の周波数帯に応じて調整した方が望ましい。次に、上記入射波w1の周波数帯と、長さPx及び長さPyとについて、望ましい関係を例示する。
2.4GHz: Px=Py=35mm
5.0GHz: Px=Py=16.8mm
28GHz: Px=Py=3.0mm
【0038】
図4は、電波反射板の一部を示す拡大断面図である。
図4に示すように、液晶層LCの厚みdl(セルギャップ)は、複数のスペーサSSにより保持されている。本実施形態において、スペーサSSは、柱状スペーサであり、第2基板SUB2に形成され、第1基板SUB1側に突出している。
【0039】
スペーサSSの幅は10μm以上20μm以下である。パッチ電極PEの長さPx及び長さPyがmmオーダーであるのに対し、スペーサSSの第1方向Xの断面径はμmオーダーである。そのため、パッチ電極PEと対向する領域にスペーサSSを存在させる必要がある。また、パッチ電極PEと対向する領域のうち、複数のスペーサSSが存在する領域の割合は1%程度である。そのため、上記領域にスペーサSSが存在しても、スペーサSSが反射波w2に及ぼす影響は僅かである。なお、スペーサSSは、第1基板SUB1に形成され、第2基板SUB2側に突出してもよい。又は、スペーサSSは球状スペーサであってもよい。
【0040】
電波反射板REは、複数の反射制御部RHを備えている。各々の反射制御部RHは、複数のパッチ電極PEのうち1つのパッチ電極PE(第3方向で重畳するパッチ電極PEL及びPEF)と、共通電極CEのうち上記1つのパッチ電極PEと対向した部分と、液晶層LCのうち上記1つのパッチ電極PEと対向した領域と、を有している。各々の反射制御部RHは、パッチ電極PEに印加される電圧に応じて入射面Sa側から入射される電波(入射波w1)の位相を調整し、電波を入射面Sa側に反射させ、反射波w2とするように機能する。各々の反射制御部RHにおいて、反射波w2は、パッチ電極PEで反射した電波と共通電極CEで反射した電波との合成波である。上述のように、複数のパッチ電極PELが接続配線CLにより接続され、複数のパッチ電極PEFがフローティング状態の場合は、当該電圧は複数のパッチ電極PELのみに印加される。
【0041】
第1方向Xに沿った方向において、パッチ電極PEは等間隔に並べられている。隣り合うパッチ電極PE間の長さ(ピッチ)をdkとする。長さdkは、1つのパッチ電極PEの幾何学中心から、隣のパッチ電極PEの幾何学中心までの距離に相当している。本実施形態において、反射波w2を第1反射方向d1において同位相とするものとして説明する。
図4のX-Z平面において、第1反射方向d1は、第3方向Zとの間に第1角度θ1を成す方向である。第1反射方向d1は、X-Z平面に平行である。
図4中θ1aはθ1と等しい(θ1=θ1a)。
【0042】
複数の反射制御部RHで反射される電波が第1反射方向d1で位相を揃えるには、直線状の二点鎖線上で電波の位相が揃っていればよいことになる。例えば、点Q1bでの反射波w2の位相と、点Q2aでの反射波w2の位相とが、揃っていればよい。第1パッチ電極PE1の点Q1aから点Q1bまでの物理的な直線距離はdk×sinθ1である。そのため、第1反射制御部RH1と第2反射制御部RH2とに注目すると、第2反射制御部RH2からの反射波w2の位相を第1反射制御部RH1からの反射波w2の位相より、位相量δ1だけ遅らせればよい。ここで、位相量δ1は次の式で表される。
δ1=dk×sinθ1×2π/λ
【0043】
図5は、本実施形態の電波反射板の駆動方法において、期間毎にパッチ電極に印加する電圧の変化を示すタイミングチャートである。
図5では、電波反射板REの駆動期間のうち、第1期間Pd1から第5期間Pd5までを示している。本実施形態において、上述のようにパッチ電極PELにのみ電圧を印加し、パッチ電極PEFはフローティング状態の場合は、
図5のパッチ電極PEは、パッチ電極PELを示すものとする。
【0044】
図4及び
図5に示すように、電波反射板REの駆動が開始されると、第1期間Pd1に、複数の反射制御部RHにて反射される電波が第1反射方向d1において同位相となるように、複数のパッチ電極PEに電圧Vが印加される。例えば、第1パッチ電極PE1に第1電圧V1が印加され、第2パッチ電極PE2に第2電圧V2が印加され、第3パッチ電極PE3に第3電圧V3が印加される。
【0045】
第1期間Pd1に続く第2期間Pd2に、複数の反射制御部RHにて反射される電波が第1反射方向d1において同位相に保持されるように、複数のパッチ電極PEに電圧が印加される。例えば、第1パッチ電極PE1に第2電圧V2が印加され、第2パッチ電極に第3電圧V3が印加され、第3パッチ電極PE3に第4電圧V4が印加される。
それぞれの期間Pdに、各々のパッチ電極群GPの複数のパッチ電極PEに接続配線CLを介して同一の電圧が印加される。
【0046】
第1期間Pd1及び第2期間Pd2のそれぞれにおいて、共通電極CEの電位を基準とすると、各々のパッチ電極PEに印加される電圧の極性は、定期的に反転される。例えば、パッチ電極PEは60Hzの駆動周波数で駆動される。パッチ電極PEは交流駆動されるため、長期間、液晶層LCに固定電圧が印加されることはない。焼き付きの発生を抑制できるため、第1反射方向d1に対する反射波w2の方向のずれを抑制することができる。
【0047】
さらに、本実施形態において、各々のパッチ電極PEにおいて、第2期間Pd2に印加される電圧の絶対値は、第1期間Pd1に印加される電圧の絶対値と異なる。焼き付きの発生を十分に抑制できるため、第1反射方向d1に対する反射波w2の方向のずれを抑制することができる。
【0048】
期間Pdが別の期間Pdに変わっても、1つの反射制御部RHにて第1反射方向d1に反射される電波と、隣の反射制御部RHにて第1反射方向d1に反射される電波との位相量δ1は維持されている。本実施形態において、位相量δ1は60°である。
【0049】
図5に示す例では、第6パッチ電極PE6には、第1期間Pd1に第6電圧V6が印加される。第1反射制御部RH1にて第1反射方向d1に反射される電波と、第6パッチ電極PE6を 有する第6反射制御部にて第1反射方向d1に反射される電波と、の間に300°の位相差を与えている。
【0050】
第1反射制御部RH1にて第1反射方向d1に反射される電波と、第7パッチ電極PE7を有する第7反射制御部にて第1反射方向d1に反射される電波と、の間に360°の位相差を与えるため、第1期間Pd1に、第7パッチ電極PE7には第7電圧を印加してもよい。しかし本実施形態において、第1期間Pd1に、第7パッチ電極PE7には第1電圧V1が印加される。周期的な電圧印加パターンにより、電圧Vの種類を抑えつつ、多数のパッチ電極PEを駆動することができる。
【0051】
図6は、本実施形態の電波反射板の拡大断面図である。本実施形態の電波反射板REは、共通電極CE、誘電体層DLT1、パッチ電極PEL、誘電体層DLT2、及び、パッチ電極PEFを備えている。
図6に示す誘電体層DLT1は、可変の誘電率ε1を有す誘電体層であり、例えば、
図1や
図4に示す液晶層LCである。誘電体層DLT2は、固定の誘電率ε2を有する誘電体層であり、
図1や
図4に示す絶縁層INSに該当する。
本実施形態の電波反射板REは、パッチ電極PE及び誘電体層の積層体を2層備える電波反射板であるといえる。当該積層体を2層備える電波反射板は、積層体が1層のみである場合と比較して、位相差量を増加させることが可能である。以下に具体例を説明する。
【0052】
図6に示すPxは、上述のようにパッチ電極PEの長さである。パッチ電極PE間の距離を、wpとする。誘電体層DLT1及びDLT2の厚さを、それぞれ、tp1及びtp2とする。パッチ電極PEが正方形形状のため、長さPyは長さPxと等しい。
ここで、比較例として、当該積層体が1層の場合、例えば、パッチ電極PEF及び誘電体層DLT2を設けない電波反射板を考える。本実施形態の電波反射板REと比較例の電波反射板を、下記に述べる条件で比較した。
【0053】
本実施形態の電波反射板REにおいて、誘電体層DLT1の厚さtp1及びDLT2の厚さtp2は、それぞれ、50μm及び30μmとする。入射波w1の周波数、パッチ電極PE(パッチ電極PEF及びPEL)の長さPx、及び、パッチ電極PE間の距離wpは、それぞれ、28GHz、3000μm、及び、50μmである。
一方、比較例の電波反射板では、上述のように、パッチ電極PEのうちパッチ電極PEF、及び、誘電体層DLT2は設けられていない、すなわち誘電体層DLT2の厚さtp2は0μmである。それ以外の条件は、本実施形態の電波反射板REと同様とする。
【0054】
本実施形態の電波反射板REでは、反射率は0dBから10dBであり、反射する電波の位相差量は280dBであった。比較例の電波反射板では、反射率は0dBから10dBであり、当該位相差量は180dBであった。このように、誘電体層及びパッチ電極の積層体を2層にすることにより、反射する電波の位相差量を増加させることができる。
【0055】
誘電体層DLT1の誘電率ε1は、例えば、2.5以上3.5以下であればよい。例えば、上述のように液晶層を用いればよいが、これに限定されない。誘電体層DLT1として、他の可変の誘電体、具体的には外部からの操作により誘電率を変化させることのできる誘電体を用いてもよい。 誘電体層DLT2の誘電率ε2は、固定値、例えば、2.5とすればよい。このような誘電率ε2を有する誘電体として、例えば、有機絶縁材料、さらに具体的には、ポリイミド又はアクリルが挙げられる。誘電率ε2は、誘電率ε1の2倍程度を上限とすることが好ましい、
誘電体層DLT2の厚さtp2は、上記では30μmとしたが、これに限定されない。厚さtp2は、誘電体層DLT1の厚さdlの2倍程度、例えば、0μmより厚く75μm以下であればよい。
【0056】
以上本実施形態の電波反射板REは、誘電体層及びパッチ電極の積層体を2層にすることで、反射される電波の位相差量を増加させることが可能である。
【0057】
図7は、本実施形態の電波反射板を示す平面図である。
図7に示した例では、
図1に示した例と比較して、パッチ電極PEを制御するスイッチング素子が設けられているという点で異なっている。
図7に示すように、第1基板SUB1は、接続配線CLに代えて、複数の信号線SL、複数の走査線GL、複数のスイッチング素子SW、駆動回路DRV、及び複数のリード線LEを有している。
【0058】
複数の信号線SLは、第2方向Yに沿って延伸し、第1方向Xに沿った方向に配置されている。複数の走査線GLは、第1方向Xに沿って延伸し第2方向Yに沿った方向に配置されている。複数の走査線GLは、駆動回路DRVに接続されている。スイッチング素子SWは、1つの信号線SLと1つの走査線GLとの交差部近傍に設けられている。複数のリード線LDは、駆動回路DRVに接続されている。信号線SL及びリード線LDは、それぞれアウターリードボンディング(OLB)のパッドに接続されてもよい。
【0059】
図8は、電波反射板の部分拡大断面図である。
図8に示すように、電波反射板REの基材BA1の上に走査線GLが設けられている。走査線GLはゲート電極GEを有している。基材BA1、パッチ電極PEF、及び、絶縁層INS上に、走査線GLが設けられている。
走査線GLを覆って、絶縁層GIが形成されている。絶縁層GI上に半導体層SMCが設けられている。半導体層SMCは、ゲート電極GEに重畳し、第1領域R1と、第2領域R2と、を有している。第1領域R1及び第2領域R2において、一方がソース領域であり、他方がドレイン領域である。
【0060】
ゲート電極GE、半導体層SMC等は、薄膜トランジスタ(TFT)としてのスイッチング素子SWを構成している。スイッチング素子SWは、ボトムゲート型薄膜トランジスタであってもよく、トップゲート型薄膜トランジスタであってもよい。
【0061】
半導体層SMCの第1領域R1に接してソース電極SE、第2領域R2に接してドレイン電極DEが設けられている。ソース電極SEは、信号線SLと一体形成されていてもよい。
絶縁層GI、半導体層SMC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEの上に、絶縁層ILI1が形成されている。
【0062】
絶縁層ILI1上にパッチ電極PEがL形成されている。パッチ電極PELは、絶縁層ILI1に形成されたコンタクトホールCHを通りドレイン電極DEに接続されている。配向膜AL1は、絶縁層ILI2及びパッチ電極PELの上に形成されている。
【0063】
図9はスイッチング素子を示す平面図である。
図9において、半導体層SMCの記載は省略している。図示はしないが、パッチ電極PEFは、パッチ電極PELと重畳する位置に配置されている。
第1方向Xに沿って延伸する走査線GL、及び、第2方向Yに沿って延伸する信号線SLは、それぞれ、交差する領域の幅が広い。走査線GLの当該幅が広い領域がゲート電極GE、信号線SLの当該幅が広い領域がソース電極SEである。
【0064】
図7から
図9までに示すように、複数のパッチ電極PE(特にパッチ電極PEL)をアクティブマトリクス駆動により個別に駆動することができる。そのため、複数のパッチ電極PEを独立して駆動することができる。例えば、電波反射板REが反射する反射波w2の方向を、Y-Z平面に平行な方向とすることができる。
アクティブマトリクス駆動の電波反射板REにおいても、誘電体層及びパッチ電極の積層体を2層にすることで、反射される電波の位相差量を増加させることができる。
【0065】
本開示では、基材BA1及びBA2を、それぞれ、第1基材及び第2基材とする。誘電体層DLT1及びDLT2を、それぞれ、第1誘電体層及び第2誘電体層とする。パッチ電極PEL及びPEFを、それぞれ、第1パッチ電極及び第2パッチ電極とする。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
BA1…基材、BA2…基材、CE…共通電極、DLT1…誘電体層、DLT2…誘電体層、INS…絶縁層、LC…液晶層、PA…パッチエリア、PE…パッチ電極、PEF…パッチ電極、PEL…パッチ電極、RE…電波反射板、SUB1…第1基板、SUB2…第2基板、w1…入射波、w2…反射波。