(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】レーザマーキングシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20241118BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/073
(21)【出願番号】P 2021100931
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 友人
(72)【発明者】
【氏名】高井 茉佑子
(72)【発明者】
【氏名】李 英根
(72)【発明者】
【氏名】松下 真弓
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-177367(JP,A)
【文献】特開2007-253167(JP,A)
【文献】特表2013-535339(JP,A)
【文献】特表2020-510538(JP,A)
【文献】特開2000-091264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物をレーザビームによって加工するレーザマーキングシステムであって、
前記レーザビームを出射する光源、
前記レーザビームを1次元方向に引き延ばすビーム整形部、
前記引き延ばしたレーザビームのビームスポットの長軸方向における強度分布を変調するビーム変調部、
前記変調したレーザビームを前記対象物に対して照射するビーム照射部、
を備え
、
前記レーザマーキングシステムは、移動する前記対象物を加工するように構成されており、
前記対象物が移動する方向は、前記ビームスポットの短軸方向である
ことを特徴とするレーザマーキングシステム。
【請求項2】
対象物をレーザビームによって加工するレーザマーキングシステムであって、
前記レーザビームを出射する光源、
前記レーザビームを1次元方向に引き延ばすビーム整形部、
前記引き延ばしたレーザビームのビームスポットの長軸方向における強度分布を変調するビーム変調部、
前記変調したレーザビームを前記対象物に対して照射するビーム照射部、
を備え
、
前記ビーム変調部は、前記ビームスポット内において、ビーム強度が第1強度である第1領域と、ビーム強度が前記第1強度よりも小さい第2強度である第2領域とを構成するように、前記レーザビームを変調し、
前記ビーム変調部は、第1時刻においては、前記第1領域と前記第2領域を有するように前記レーザビームを変調し、
前記ビーム変調部は、第2時刻においては、前記第1強度を有する第3領域と前記第2強度を有する第4領域を有するように前記レーザビームを変調し、
前記レーザマーキングシステムはさらに、前記ビームスポットの照射位置を前記第1時刻と前記第2時刻との間で移動させることにより、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域、および前記第4領域によって構成された2次元パターンを前記対象物上に加工する、ビーム照射位置変更部を備える
ことを特徴とするレーザマーキングシステム。
【請求項3】
対象物をレーザビームによって加工するレーザマーキングシステムであって、
前記レーザビームを出射する光源、
前記レーザビームを1次元方向に引き延ばすビーム整形部、
前記引き延ばしたレーザビームのビームスポットの長軸方向における強度分布を変調するビーム変調部、
前記変調したレーザビームを前記対象物に対して照射するビーム照射部、
を備え
、
前記レーザマーキングシステムはさらに、前記ビーム照射部が照射する前記レーザビームの方向を調整するビーム方向調整部を備え、
前記ビーム変調部は、前記ビームスポット内における前記レーザビームの強度分布を2次元領域内において変調できるように構成されており、
前記ビーム方向調整部は、前記2次元領域よりも大きい平面サイズの領域に対して前記レーザビームを方向づけることにより、前記2次元領域よりも大きい平面サイズの領域において前記レーザビームによって前記対象物を加工する
ことを特徴とするレーザマーキングシステム。
【請求項4】
前記ビーム変調部は、前記ビームスポット内において、ビーム強度が第1強度である第1領域と、ビーム強度が前記第1強度よりも小さい第2強度である第2領域とを構成するように、前記レーザビームを変調する
ことを特徴とする請求項1
または3記載のレーザマーキングシステム。
【請求項5】
前記ビーム変調部は、前記対象物を第1量だけ変質させるビーム強度を有するように前記第1強度を構成するとともに、前記対象物を前記第1量よりも小さい第2量だけ変質させるビーム強度を有するように前記第2強度を構成する
ことを特徴とする請求項
4記載のレーザマーキングシステム。
【請求項6】
前記ビーム変調部は、前記レーザビームを遮断することにより、前記第2強度をゼロにする
ことを特徴とする請求項
5記載のレーザマーキングシステム。
【請求項7】
前記ビーム照射位置変更部は、前記ビームスポットの短軸方向において、前記ビームスポットの照射位置を移動させる
ことを特徴とする請求項
2記載のレーザマーキングシステム。
【請求項8】
前記ビーム変調部は、2次元のピクセル領域ごとに前記レーザビームの強度を変調することができるように構成されており、
前記ビーム変調部は、前記ビームスポットの短軸方向に沿って、前記ピクセル領域における前記レーザビームの強度を順次更新するように構成されており、
前記ビーム照射位置変更部は、前記ビーム変調部が前記レーザビームの強度を更新した前記ピクセル領域から順に、前記ビームスポットが照射されるように、前記ビームスポットの照射位置を変更する
ことを特徴とする請求項
2記載のレーザマーキングシステム。
【請求項9】
前記ビーム変調部は、前記短軸方向における前記2次元パターンの開始位置から順に、前記レーザビームの強度を前記短軸方向に沿って順次更新し、
前記ビーム照射位置変更部は、前記ビーム変調部が前記短軸方向における前記2次元パターンのサイズの半分に相当する領域に対して前記レーザビームの強度を更新完了した時点で、前記ビームスポットを照射開始するとともに、前記ビームスポットを前記短軸方向に沿って移動させ、
前記ビーム変調部は、前記短軸方向に沿って前記2次元パターン全体に対して前記レーザビームの強度を更新し終えると、前記開始位置に戻って改めて前記レーザビームの強度を前記短軸方向に沿って順次更新する
ことを特徴とする請求項8記載のレーザマーキングシステム。
【請求項10】
前記ビーム変調部が前記レーザビームの強度を更新する動作と、前記ビーム照射位置変更部が前記ビームスポットを移動させる動作は、同期している
ことを特徴とする請求項9記載のレーザマーキングシステム。
【請求項11】
前記ビーム変調部は、第1時刻においては、前記ビームスポット内における前記レーザビームの強度分布が第1平面パターンを有するように、前記レーザビームを変調し、
前記ビーム変調部は、第2時刻においては、前記ビームスポット内における前記レーザビームの強度分布が第2平面パターンを有するように、前記レーザビームを変調し、
前記ビーム方向調整部は、前記対象物上の第1領域に対して前記第1平面パターンの前記レーザビームを照射するとともに、前記対象物上の第2領域に対して前記第2平面パターンの前記レーザビームを照射することにより、前記第1平面パターンと前記第2平面パターンを足し合わせた平面パターンを前記対象物上に加工する
ことを特徴とする請求項
3記載のレーザマーキングシステム。
【請求項12】
前記対象物上に加工される前記第1平面パターンと、前記対象物上に加工される前記第2平面パターンは、両者の境界部分において一部重なり合っている
ことを特徴とする請求項1
1記載のレーザマーキングシステム。
【請求項13】
前記レーザマーキングシステムはさらに、前記光源、前記ビーム整形部、および前記ビーム変調部を制御することにより前記レーザマーキングシステムを制御するコントローラを備え、
前記レーザマーキングシステムはさらに、前記対象物上に加工する形状パターンを指示する指示入力を受け取るユーザインターフェースを備え、
前記コントローラは、前記ユーザインターフェースが受け取った前記形状パターンを前記対象物上に加工するように、前記レーザマーキングシステムを制御する
ことを特徴とする請求項1
から3のいずれか1項記載のレーザマーキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物をレーザビームによって加工するレーザマーキングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
賞味期限や製造番号などの情報を直接対象物に印字するレーザマーキングシステムのニーズが増大している。レーザマーキングは、インクジェットに比べて、直接対象物の表面を印字できるので、微細性、不滅性で優れているほか、インクを使用する必要がなく、環境面でメリットがある。
【0003】
レーザマーキングは、インクジェットに比べ印字速度について課題があり、普及の障害となっている。例えば特許文献1は、レーザマーキングの高速化に関する技術を記載している。同文献においては、印字パターンを使って複数点を同時に印字する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにビームを2次元に広げると、原理的には印字速度が向上する一方で、印字パターンの印字点のビーム強度密度が小さくなる。したがって、印字パターンを利用しないものと比べると、ビームスポットの面積が大きくなった比率に相応する高出力な光源が必要になる。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、ビーム光源の出力を抑制しながら、2次元印字パターンと同等の高速化が可能なレーザマーキングシステムを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザマーキングシステムは、レーザビームを1次元方向に引き延ばし、引き延ばしたレーザビームのビームスポットの長軸方向における強度分布を変調する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るレーザマーキングシステムによれば、ビーム光源の出力を抑制しながら、2次元印字パターンと同等に高速印字することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係るレーザマーキングシステム100の構成図である。
【
図2】ビームスポットの変化過程を説明する模式図である。
【
図3】実施形態2に係るレーザマーキングシステム100の構成図である。
【
図4】ビームスポットの変化過程を説明する模式図である。
【
図5】実施形態2において2次元パターンを印字対象物5に対して加工する過程を説明する模式図である。
【
図6】ビーム変調部3による変調動作とビーム照射位置変更部8による照射位置変更動作を同期させることを示す模式図である。
【
図7】実施形態3に係るレーザマーキングシステム100の構成図である。
【
図8】ビーム方向調整部9が2次元パターンを照射する位置を調整した結果を示す模式図である。
【
図9】ビーム変調部3を構成するデバイスの具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係るレーザマーキングシステム100の構成図である。レーザマーキングシステム100は、印字対象物5に対してレーザビームによって文字列などを印字加工するシステムである。レーザマーキングシステム100は、光源1、ビーム整形部2、ビーム変調部3、ビーム照射部4、コントローラ110、GUI(Graphical User Interface)120を備える。
【0011】
光源1は、レーザ光6を出射する。光波長は、印字対象物5の種別に応じて設定する。波長:種別の関係として以下の例が挙げられる。(a)紫外光:白色樹脂、透明樹脂、黒色樹脂、(b)1um帯赤外光:黒いもの、金属、水分を含んだもの、(c)10um帯光:ガラス、透明樹脂、紙、(d)緑光:黒色樹脂。
【0012】
ビーム整形部2は、ビームを1方向に広げる。1方向に広げるとは、例えばビームスポットの形状をXY平面上のいずれかの方向に伸長することを意味する。このように1次元方向に伸長したビームを、細線ビームと呼ぶ場合もある。ビーム整形部2は例えば、シリンドリカルレンズを組み合わせることによって構成することができる。さらに、ビームスポットの長手方向における強度分布が一様になるように、補正フィルタを用いてもよい。
【0013】
ビーム変調部3は、細線ビームの長手方向における強度分布を変調する。変調の具体例については後述する。ビーム変調部3は例えば、デジタルミラーデバイスや液晶デバイスなど、マイクロディスプレイにおいて用いられるデバイスを用いて構成することができる。1次元のGLV(Grating Light Valve)を使うと、強度分布を高速に(例えば数GHz程度)変調することができる。
【0014】
ビーム照射部4は、印字対象物5に対して細線ビームを照射する。ビーム照射部4は例えば、ミラーやレンズなどのデバイスによって構成することができる。
【0015】
印字対象物5は、例えばベルトコンベアなどの搬送機構によって方向7に沿って移動している場合がある。この場合、レーザマーキングシステム100は、移動する印字対象物5に対してパターンを加工することになる。
【0016】
コントローラ110は、レーザマーキングシステム100が備える各構成要素(
図1においては光源1とビーム変調部3、後述の実施形態においてはさらにビーム照射位置変更部8とビーム方向調整部9)を制御する。GUI120は、印字パターンや印字対象物5の種別などの情報をコントローラ110に対して入力するために用いるユーザインターフェースである。
【0017】
図2は、ビームスポットの変化過程を説明する模式図である。光源1が出射するレーザ光のビームスポット11は、略円形である。ビーム整形部2がビームを1次元方向に拡大することにより、ビームスポット21のように長軸と短軸を有する細線ビームが形成される。ビームパワー密度はビームスポット21の長軸方向において均一であることが望ましい。ビーム変調部3がビームの強度分布を変調することにより、ビームスポット31のなかには、ビーム強度が強い領域31aと弱い領域31bが形成される。
【0018】
領域31aにおけるビーム強度は、印字対象物5に対してパターンを加工することができる程度に設定する。領域31bにおけるビーム強度は、印字対象物5を加工しない程度に設定する。例えば領域31bにおけるビーム強度は0であってもよい。ただしこれに限るものではなく、領域31aにおいて印字対象物5がレーザによって変質する量が、領域31bにおいてレーザによって変質する量よりも大きいことにより、印字加工の役割を果たすことができるのであれば、その限りにおいて本実施形態1の構成は有用である。
【0019】
ビームスポット11の1次元方向における拡大率をRとすると、ビームスポット21の強度はビームスポット11の1/R倍となる。これに対して特許文献1のようにビームスポットを2次元方向に拡大すると、ビーム強度は1/R2となる。したがって本実施形態1によれば、ビームスポットを拡大することにともなうビーム強度の減少を、従来よりも抑制することができる。
【0020】
印字対象物5は方向7に沿って移動しているので、領域31aと31bの形状パターンを経時的に変化させることにより、印字対象物5に対して2次元パターンを加工することができる。ビームスポット31の短軸方向と方向7を一致させた場合は、矩形状の2次元パターンを加工することができる。両方向が一致していない場合は、両方向間の相対角度に沿って2次元パターンを加工することができる。
【0021】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係るレーザマーキングシステム100は、ビーム整形部2によってレーザ光6を1次元方向に引き延ばし、ビーム変調部3によってビームスポットの長軸方向における強度分布を変調する。これにより、ビーム強度を維持しつつ、伸長したビームスポット31によって効率的に印字加工を進めることができる。
【0022】
本実施形態1に係るレーザマーキングシステム100において、ビームスポット31のなかには、印字対象物5を加工できる程度の強度を有する領域31aと、加工しない程度の強度を有する領域31bとが形成される。加工する領域と加工しない領域をともに有することにより、印字対象物5に対して様々な形状パターンを加工することができる。さらにビームのパワーを領域31aへ振り向けることにより、ビーム強度を維持することができる。
【0023】
2次元に拡大する場合、印字対象物5の移動速度が変わると2個の印字パターンの重なりが変わるので、例えば重なった領域が増え印字パターンが可読できなくなる可能性があり、印字対象物5の移動速度を精密に制御する必要がある。これに対して、本実施形態1に係るレーザマーキングシステム100は、移動方向に印字パターンが圧縮または伸長するだけなので、印字対象物5の移動速度の変化に対して寛容である。
【0024】
<実施の形態2>
印字対象物5を移動させることに代えてまたはこれと併用して、2次元のピクセルパターンに対してビームスポットを走査することにより、印字対象物5に対して2次元パターンを加工することもできる。本発明の実施形態2では、その構成例について説明する。
【0025】
図3は、本実施形態2に係るレーザマーキングシステム100の構成図である。本実施形態2においては、実施形態1で説明した構成に加えて、ビーム整形部2とビーム変調部3との間にビーム照射位置変更部8を備える。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0026】
ビーム照射位置変更部8は、レーザビームの照射位置を変更することができる。例えばガルバノミラーやポリゴンミラーなどのデバイスによって、ビーム照射位置変更部8を構成することができる。
【0027】
図4は、ビームスポットの変化過程を説明する模式図である。ビーム照射位置変更部8は、ビームスポット81の短軸方向に沿って、ビームスポットの照射位置を変化させることができる。
【0028】
図5は、本実施形態2において2次元パターンを印字対象物5に対して加工する過程を説明する模式図である。ビーム変調部3は、印字対象物5に対して加工する2次元パターンを構成するピクセルごとに、ビーム強度を変調できるように構成されている。
図5においては、右下がりの斜線パターンと右上がりの斜線パターンをそれぞれ構成するピクセルパターンを例示した。
【0029】
ビーム変調部3は、例えばマイクロディスプレイデバイスによって構成することができる。マイクロディスプレイは、ピクセルごとにレーザビームをON/OFFすることができる。領域31aに対応するピクセルをONにし、領域31bに対応するピクセルをOFFにする。ビーム変調部3がピクセルのON/OFFを切り替えながら、ビーム照射位置変更部8がビームスポット81を短軸方向に沿って移動させることにより、ピクセルのON/OFFが表している2次元パターンが印字対象物5に対して印字される。
【0030】
マイクロディスプレイは、ピクセルのON/OFFを切り替える速度(フレームレート)によって、変調速度が規定される。フレームレート以上の速度でビームスポット81をマイクロディスプレイ上において走査することにより、マイクロディスプレイが2次元パターンを形成する速度と同等の速度で、印字対象物5に対してその2次元パターンを印字することができる。
【0031】
マイクロディスプレイは、典型的には10kHz程度のフレームレートで動作する。
【0032】
図6は、ビーム変調部3による変調動作とビーム照射位置変更部8による照射位置変更動作を同期させることを示す模式図である。ビーム変調部3を構成するデバイスのなかには、全てのピクセルのビーム強度を同時に切り替える(すなわち全てのピクセルのON/OFFを同時に切り替える)のではなく、切り替え速度にしたがって順次切り替えるように構成されているものがある。例えばマイクロディスプレイは、
図6に示すX方向に沿って各ピクセルを順次切り替えるように構成されている。X方向は、ビームスポット81の短軸方向と一致している。
図6の例においては、ビーム変調部3は初めにX座標が最も小さい第1列の各ピクセルのON/OFFを切り替え、次に第2列の各ピクセルのON/OFFを切り替え、第3列以降も同様に順次ON/OFFを切り替える。
【0033】
ビーム変調部3がこのように構成されている場合、ON/OFFの切り替えが完了した列から順に、ビームスポット81を照射する必要がある。
図6の例においては、X座標が最も小さい第1列から順に、ビームスポット81を照射する。これにより、各X座標のON/OFFパターンが列ごとに印字対象物5に対して加工される。ビーム変調部3は、最後のX座標のピクセルに対してON/OFFを切り替え完了すると、最初のX座標に戻って第1列から順に改めてON/OFFを切り替える。
【0034】
ビーム変調部3がピクセルのON/OFFパターンを切り替える動作と、ビーム照射位置変更部8がビームスポット81の照射位置を移動させる動作とを互いに同期させることにより、両動作間の待ち時間を抑制することができる。
図6右図はこの様子を模式的に示したグラフである。
【0035】
ビーム変調部3がピクセルのON/OFFパターンを切り替える動作を、符号32によって示した。ビーム変調部3は、時刻t=0から開始して、第1列より順にピクセルパターンを切り替える。時刻が進行するのにともなって、X座標も進行する。
【0036】
ビーム変調部3が印字パターンのX方向サイズの半分に対してピクセルパターンを更新完了した時点で、ビーム照射位置変更部8はビームスポット81をビーム変調部3に対して照射開始する。この動作を符号82によって示した。ビーム変調部3がピクセルパターンのX座標を進行させる速度と、ビーム照射位置変更部8がビームスポット81のX座標を移動させる速度は、略等しい。したがって符号32と82は傾きが略等しい。
【0037】
ビーム変調部3が印字パターンの最後のX座標についてピクセルパターンを更新し終えると、最初のX座標に戻る。この時点においてビームスポット81は、印字パターンのX方向サイズの略半分の位置にある。さらにビーム変調部3が印字パターンのX方向サイズの半分に対してピクセルパターンを更新完了した時点で、ビーム照射位置変更部8は最後のX座標に対してビームスポット81を照射し、最初のX座標に戻る。その後の動作も同様である。
【0038】
以上の同期動作により、ビーム照射位置変更部8は、ビーム変調部3が全てのピクセルパターンを更新し終えるまで照射を待機する必要がないので、両者間の待ち時間を最小限に抑制することができる。
【0039】
図6において、符号32の動作速度と符号82の動作速度が同一であれば、両者の速度は同期しているといえるが、必ずしもこれに限らない。例えばビーム変調部3がピクセルパターンを更新する速度のほうがやや速いとしても、最初のX座標に戻るごとに、ビーム照射位置変更部8の動作が追いつくまでビーム変調部3が待機すればよい。この場合であっても、両者の動作は周期ごとに同期しているといえる。
【0040】
<実施の形態2:まとめ>
本実施形態2に係るレーザマーキングシステム100において、ビーム変調部3は、ビームスポット81の短軸方向(X方向)に沿ってピクセルパターンを順次更新する(ビームのON/OFFをピクセルごとに切り替える)ように構成されており、ビーム照射位置変更部8は同方向に沿ってビームスポット81を移動させる。これにより、ビーム変調部3が形成する2次元パターンを、印字対象物5に対して加工することができる。印字対象物5が移動するか否かによらず、この機能は実現可能である。
【0041】
本実施形態2に係るレーザマーキングシステム100は、ビーム変調部3が2次元パターンのピクセルをON/OFFする動作(すなわちビームスポット31のなかのビーム強度を変調する動作)と、ビーム照射位置変更部8がビームスポット81をビーム変調部3に対して照射する動作とを同期させる。これにより、両動作間の待ち時間を抑制し、高速印字を実現できる。
【0042】
<実施の形態3>
図7は、本発明の実施形態3に係るレーザマーキングシステム100の構成図である。本実施形態3においては、実施形態1または2で説明した構成に加えて、ビーム変調部3とビーム照射部4との間にビーム方向調整部9を備える。その他の構成は実施形態1または2と同様である。
図7においては、実施形態2に加えてビーム方向調整部9を配置した例を示した。
【0043】
ビーム方向調整部9は、ビーム変調部3が強度分布を変調したビームスポット31を照射する方向を調整する。具体的には、ビーム変調部3が形成する2次元パターンを印字対象物5に対して照射する位置を、ビームの方向付けによって調整する。これにより、印字対象物5上において2次元パターンが加工される位置を調整することができる。ビーム方向調整部9は例えば、1つ以上のガルバノミラーによって構成することができる。
【0044】
図8は、ビーム方向調整部9が2次元パターンを照射する位置を調整した結果を示す模式図である。ビーム変調部3が形成する2次元パターンのサイズは限られており、例えば
図8のパターン51がこれに相当する。ビーム変調部3が形成する2次元パターンよりも大きいサイズのパターンを印字するためには、2次元パターンそのものの照射位置を走査する必要がある。ビーム方向調整部9は、ビームの方向付けによりこれを実現する。
図8左図においては、パターン51を1行×5列=5個並べた例を示した。
図8右図においては、パターン51を2行×5列=10個並べた例を示した。各パターンは同じでなくともよい。
【0045】
パターン51間の境界部分において、互いに重なり合う部分52を設けてもよい。部分52においては、例えば周辺画素の平均値を配置することにより、パターン間の境界の連続性を損ねることなく、外観上の違和感を軽減できる。なお、印字対象物5が移動する場合は、移動速度をモニタして、移動方向の重なりのエリアを制御する必要がある。
【0046】
<実施の形態3:まとめ>
本実施形態3に係るレーザマーキングシステム100は、ビーム変調部3が形成した2次元パターンをビーム方向調整部9が方向づけることにより、複数の2次元パターンを並べて配置したパターンを、印字対象物5に対して加工することができる。これにより、ビーム変調部3が形成する2次元パターンよりも大きい2次元パターンであっても加工可能となる。
【0047】
<実施の形態4>
図9は、ビーム変調部3を構成するデバイスの具体例を示す。
図9上段はビーム変調部3としてDMD(Digital Micromirror Device)31を用いた例である。
図9下段はビーム変調部3としてLCOS(Liquid Crystal On Silicon)32を用いた例である。ビーム照射位置変更部8としては例えばポリゴンミラーを用いることができる。
【0048】
DMD31は、偏光フィルタが必要ないので、印字効率がよい。LCOS32は、偏光フィルム33を用いることにより、コントラストを向上できる利点がある。ただし光利用効率がDMDよりも小さい。紫外光に対してはDMD31のほうがLCOS32よりも耐久性が高い利点がある。
【0049】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0050】
実施形態2において、ピクセルごとにレーザビームをON/OFFすることにより、ピクセルパターンを印字することを説明した。この場合、各ピクセルは1ビットによって表現することができる。実施形態2はこれに限るものではなく、例えばピクセルごとに複数ビットによって表現される階調に対応するレーザビーム強度を用いて、その複数ビットによって表現されるピクセルパターンを印字することもできる。すなわち、ビームスポットの照射位置(ピクセル位置)ごとにビーム強度を変調することにより、様々な階調パターンを有するピクセルパターンを印字することができる。
【0051】
コントローラ10は、その機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、その機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することによって構成することもできる。GUI120は、例えばコントローラ110がディスプレイなどの表示デバイス上に操作画面を提示することによって構成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:光源
2:ビーム整形部
3:ビーム変調部
4:ビーム照射部
5:印字対象物
8:ビーム照射位置変更部
9:ビーム方向調整部
100:レーザマーキングシステム
110:コントローラ
120:GUI