(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】型締装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20241118BHJP
B29C 33/22 20060101ALI20241118BHJP
B29C 45/40 20060101ALI20241118BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20241118BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20241118BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C33/22
B29C45/40
B29C45/64
B29C45/16
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2021117640
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】三谷 聡麻
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184444(JP,A)
【文献】特開平10-264200(JP,A)
【文献】特開2013-049142(JP,A)
【文献】特開2006-103203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
B29C 49/00 - 49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型が取り付けられるようになっている固定盤と、
固定盤に対して近づき離れるように移動する可動盤と、
前記可動盤における前記固定盤の側にある面に対向して配置され、金型が取り付けられるようになっている回転盤と、
前記回転盤を前記可動盤に対して回転自在に接続している軸受構造体と、を備え、
前記可動盤における前記固定盤の側の面には円柱状の突出部が固定的に設置され、
前記回転盤の前記可動盤に対向する面には円形状の凹部が形成され、前記凹部には前記突出部が収納されるようになっており、
前記軸受構造体は、一対の内輪と一対の前記内輪に対して相対的に回転自在な外輪と一対の前記内輪と前記外輪の間に設けられている複数のローラとを備えたクロスローラリングからなり、
一対の前記内輪は前記突出部に対してその円周部に嵌め合わされ押さえ部材により固定されており、前記外輪は前記回転盤と前記固定盤を回転するプーリとによって挟み込まれるようにして固定されており、
前記突出部と前記凹部のいずれか一方には、他方に対向する面に摩擦低減用板状部材が設けられ、前記摩擦低減用板状部材は、前記回転盤の回転時には他方から離間しており、型締時には前記回転盤の弾性変形により他方に密着するようになっている、型締装置。
【請求項2】
金型を型締めする型締装置と、
射出材料を射出する射出装置と、を備えた射出成形機であって、
前記型締装置は、金型が取り付けられるようになっている固定盤と、
固定盤に対して近づき離れるように移動する可動盤と、
前記可動盤における前記固定盤の側にある面に対向して配置され、金型が取り付けられるようになっている回転盤と、
前記回転盤を前記可動盤に対して回転自在に接続している軸受構造体と、を備え、
前記可動盤における前記固定盤の側の面には円柱状の突出部が固定的に設置され、
前記回転盤の前記可動盤に対向する面には円形状の凹部が形成され、前記凹部には前記突出部が収納されるようになっており、
前記軸受構造体は、一対の内輪と一対の前記内輪に対して相対的に回転自在な外輪と一対の前記内輪と前記外輪の間に設けられている複数のローラとを備えたクロスローラリングからなり、
一対の前記内輪は前記突出部に対してその円周部に嵌め合わされ押さえ部材により固定されており、前記外輪は前記回転盤と前記固定盤を回転するプーリとによって挟み込まれるようにして固定されており、
前記突出部と前記凹部のいずれか一方には、他方に対向する面に摩擦低減用板状部材が設けられ、前記摩擦低減用板状部材は、前記回転盤の回転時には他方から離間しており、型締時には前記回転盤の弾性変形により他方に密着するようになっている、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を回転する回転盤を備えた型締装置、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機に設けられている型締装置は、固定盤と、この固定盤に対して開閉する可動盤とを備えている。回転盤を備えた射出成形機は、固定盤と可動盤のいずれかの型盤に回転盤が設けられるが、例えば特許文献1に記載されているように、可動盤に回転盤が設けられることが多い。回転盤は可動盤に対向して設けられ回転するようになっている。そして、複数個の金型つまり回転側金型が取り付けるようになっている。型締めするとこれら複数個の回転側金型のいずれかが固定盤に取り付けられている固定側金型と型締めされる。回転盤の回転位置を変えて型締めすると他の回転側金型が固定側金型と型締めされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで回転盤は回転軸を備え、この回転軸が可動盤の中心に空けられている貫通孔に挿入されている。この貫通孔と回転軸の間にはベアリングが設けられ、回転軸が回転可能に支持されている。可動盤には回転軸を駆動する駆動機構が設けられており、この駆動機構により回転盤を回転するようになっている。
【0005】
回転軸を回転可能に支持しているベアリングは型締力を繰り返し受けると、経年劣化により摩耗する。そうすると回転軸が貫通孔に対して傾くようになる。回転軸が傾くと回転盤が可動盤に対して傾く。このような状態で回転盤が回転すると可動盤と回転盤とが接触し摩耗の原因になる。回転盤の平行度がずれて型締の精度が低下するという問題がある。
【0006】
本開示において、回転時における傾きを防止する回転盤を備えた型締装置を提案する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
可動盤の固定盤側の面に円柱状の突出部を固定的に設ける。回転盤の可動盤に対向する面に円形状の凹部を形成し、凹部に突出部が収納されるようにする。突出部に対して軸受構造体を介して回転自在に回転盤を設ける。軸受構造体には、内輪と該内輪に対して相対的に回転自在な外輪と内輪と外輪の間に設けられている複数のローラとを備えたクロスローラリングを採用する。内輪は突出部に対してその円周部に嵌め合わされ押さえ部材により固定するようにし、外輪は回転盤と固定盤を回転するプーリとによって挟み込んで固定する。突出部と凹部のいずれか一方には、他方に対向する面に摩擦低減用板状部材を設けるようにし、摩擦低減用板状部材は、回転盤の回転時には他方から離間し、型締時には回転盤の弾性変形により他方に密着するようになっている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回転時における回転盤の傾きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る射出成形機の側面図である。
【
図2】本実施の形態に係る回転盤と型締装置の一部とを示す正面図である。
【
図3】本実施の形態に係る可動盤と回転盤とを示す側面断面図である。
【
図4】本実施の形態に係る回転盤に設けられているクロスローラベアリングを一部断面で示す斜視図である。
【
図5】従来の可動盤と回転盤とを示す側面断面図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る可動盤と回転盤とを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、金型を型締めする型締装置2と、射出材料を溶融して射出する射出装置3と、型締装置2に設けられている回転盤4と、から概略構成されている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2はベッドB上に固定されている固定盤5と、ベッドB上をスライドする型締ハウジング6と、ベッドB上を同様にスライドする可動盤7とを備えている。固定盤5と型締ハウジング6は複数本、例えば4本のタイバー9、9、…によって連結されている。可動盤7は、固定盤5と型締ハウジング6の間でスライド自在になっている。型締ハウジング6と可動盤7の間には型締機構11が設けられている。型締機構11は直圧式の型締機構、つまり型締シリンダから構成してもよいが、本実施の形態においてはトグル機構から構成されている。
【0014】
後で詳しく説明するが本実施の形態に係る回転盤4は可動盤7に設けられている。固定盤5には固定側金型13が取り付けられ、回転盤4には2個の回転側金型14、14が設けられている。
図1において、回転盤4に取り付けられている2個の回転側金型14、14は紙面の手前側と奥側とに設けられており、重なって示されている。2個の回転側金型14、14は、回転盤4の回転位置に応じていずれか1個が固定側金型13と整合するようになっている。型締機構11を駆動すると固定側金型13と、整合している1個の回転側金型14とが型開閉される。
【0015】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ16と、この加熱シリンダ16に入れられているスクリュ17と、スクリュ17を駆動するスクリュ駆動装置18とから構成されている。加熱シリンダ16はその後端部近傍にホッパ20が、そして先端に射出ノズル22が設けられている。
【0016】
<回転盤>
回転盤4は前記したように可動盤7に設けられている。
図2には、回転盤4に垂直な方向から見た回転盤4と可動盤7とが示されている。回転盤4は、可動盤7に対して滑らかに回転するようになっている。可動盤7の上部には回転盤駆動機構25が設けられている。回転盤4には回転盤4よりわずかに大径のプーリ24が固着されている。
図1、2に示されているように、プーリ24と回転盤駆動機構25との間にベルト26が掛け回されている。回転盤駆動機構25を駆動するとプーリ24と回転盤4とが一体的に回転するようになっている。
【0017】
図3には、可動盤7と回転盤4の側方断面図が示されている。可動盤7には、固定盤5(
図1参照)側の面において、その中央部に円柱状に立ち上がった突出部28が形成されている。この突出部28の上面に、摩擦低減用板状部材30が設けられている。摩擦低減用板状部材30は、本実施の形態においては、黒鉛を主体とした固形潤滑剤が合金中に均一に分散されて、焼結・形成されているウエアプレート30からなる。
【0018】
突出部28の径は回転盤4の径より小さいが、可動盤7において十分に大きく、突出部28は可動盤7の中央部を大きく占めている。またウエアプレート30の面積も大きくなっている。後で説明するが、回転盤4は型締時には金型14からの型締力を受けてわずかに弾性変形し、ウエアプレート30に密着する。突出部28とウエアプレート30は十分に大きいので型締力は可動盤7に適切に作用することになる。可動盤7とウエアプレート30とには、エジェクタロッドを通す穴、つまりエジェクタロッド穴31、31、…が複数個空けられている。
【0019】
このような可動盤7に対して、回転盤4には
図3に示されているように、可動盤7に対向する側において円形状の凹部32が形成されている。可動盤7の突出部28はこの凹部32に収納されるようになっている。このような凹部32が形成されていることによって、回転盤4の円周部分にはフランジ部35が形成されている。
【0020】
回転盤4の凹部32の表面、つまりウエアプレート30と対向している面には、わずかに立ち上がった台部33が形成されている。この台部33とウエアプレート30は、回転盤4の回転時には接触しないように、これらの間にわずかな隙間が確保されている。しかしながら型締時には金型14からの型締力を受けて回転盤4がわずかに弾性変形して台部33とウエアプレート30とが密着することになる。回転盤4にも、エジェクタロッド穴34、34、…が空けられている。
【0021】
<軸受構造体>
本実施の形態に係る回転盤4は、可動盤7の円柱状の突出部28に対して、そのフランジ部35において軸受構造体36によって回転自在に支持されている。つまり、軸受構造体36は回転盤4の中央近傍ではなく、円周部分に設けられている。すなわち、本実施の形態に係る回転盤4は、固定的に設けられている突出部28に対して、その外周部分において軸受けされて回転するようになっている。
【0022】
本実施の形態において軸受構造体36は、
図4に示されている、クロスローラリング36から構成されている。クロスローラリング36は、特殊な形状のベアリング部品であり、全体としてリング状になっている。クロスローラリング36は、外輪36aと、一対の内輪36b、36bと、これらの間に入れられている多数のローラ36c、36c、…とから構成されている。ローラ36c、36c、…は円柱状を呈し、外輪36aと一対の内輪36b、36bの間で転動する。したがって、クロスローラリング36は、外輪36aに対して一対の内輪36b、36bが相対的に滑らかに回転するようになっている。
【0023】
図3に示されているように、クロスローラリング36は可動盤7の突出部28に対して、その円周部に設けられている。そして押さえ部材38によって一対の内輪36b、36bが固定されている。一方、クロスローラリング36の外輪36aは、回転盤4の円周部分に設けられている。すなわち、回転盤4のフランジ部35には、大径のプーリ24が設けられており、このフランジ部35とプーリ24とによって、外輪36aが固定されている。したがって、回転盤4は可動盤7に対して滑らかに回転する。
【0024】
本実施の形態に係る回転盤4は、その円周部分において軸受構造体36を介して可動盤7の突出部28に設けられている。したがって、仮に長期間の運転によって軸受構造体36が劣化しても、回転盤4は平行度が維持されやすく、安定して回転することが保証される。さらに本実施の形態において、軸受構造体36は転がり軸受からなる。したがって長期間運転しても摩耗し難い。したがって回転盤4がガタつくという問題は発生しにくい。つまり長期間安定して回転盤4を精度良く回転させることができる。型締の精度が安定するという効果も得られる。
【0025】
<従来の回転盤>
従来の回転盤51を備えた可動盤52が
図5に示されている。従来の回転盤51はその中央に回転軸54が固着されている。可動盤52には中央に貫通孔55が空けられており、貫通孔55にベアリング57、57を介して回転軸54が入れられている。可動盤52にはウエアプレート59、59からなる滑り軸受が設けられており、回転盤51はウエアプレート59、59に対して摺動的に回転するようになっている。回転盤51の円周部分には段部60が形成されており、この段部60は可動盤52に固定されている押さえ部材61によって押さえられている。したがって型開力が作用しても回転盤51は可動盤52から離間しない。可動盤52には回転軸54を駆動する駆動機構63が設けられ回転軸54を介して回転盤51を回転するようになっている。
【0026】
従来の回転盤51は、前記したように回転軸54においてベアリング57、57によって回転可能に支持されている。換言すると、回転盤51は、その中央部において回転可能に支持されている。長期間の運転によりベアリング57、57が劣化すると、回転軸54が傾きやすく、回転盤51が傾くという問題がある。また回転盤51とウエアプレート59、59は回転するときに摺動するので摩耗しやすいという問題もある。長期運転によりウエアプレート59、59が摩耗すると回転盤51のガタツキの原因になり、高い精度で型締めすることができない、という問題がある。本実施の形態に係る回転盤4(
図3参照)はこれらの問題を解決している。前記したように回転盤4は長期間運転しても平行度が維持されやすく、安定した回転することが保証されているからである。そして長期間してもガタツキの問題は発生しにくいからである。
【0027】
<回転盤の変形例>
本実施の形態に係る回転盤4は色々な変形が可能である。
図6には第2の実施の形態に係る回転盤4‘が示されている。前実施の形態に係る回転盤4、可動盤7と同様の部品・部材については同じ番号の符号を付して説明を省略する。
【0028】
この第2の実施の形態において、可動盤7’には、円柱状の突出部28‘の周りに段部42が形成されている。この段部42にはウエアプレート43、43が設けられている。一方、回転盤4’には、円形の凹部32の周囲にドーナツ状を呈するスライド部45が形成されている。このスライド部45が段部42のウエアプレート43、43に対して摺動するようになっている。つまり第2の実施の形態において回転盤4‘と可動盤7’とを接続している軸受構造体は、段部42とウエアプレート43、43とスライド部45とからなる滑り軸受から構成されている。これらの軸受構造体も回転盤4‘において円周部分に設けられている。したがって、回転盤4’は傾きにくく、長期間平行度が維持される。
【0029】
この第2の実施の形態において、可動盤7‘に形成されている段部42には、鍔部47が形成されている。回転盤4’とプーリ24は、この鍔部47を挟み込んでいる。これによって型開時に回転盤4‘が可動盤7’から離間しないようになっている。
【0030】
<他の変形例>
本実施の形態に係る回転盤4(
図3参照)において、ウエアプレート30と台部33は回転時において接触せず、型締時に密着するように説明した。しかしながら、回転時において摺動するようになっていてもよい。また、ウエアプレート30は必須の部材ではなく、台部33が形成されていることも必須ではない。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 回転盤
5 固定盤 6 型締ハウジング
7 可動盤 9 タイバー
11 型締機構 13 固定側金型
14 回転側金型 16 加熱シリンダ
17 スクリュ 18 スクリュ駆動装置
20 ホッパ 22 射出ノズル
24 プーリ 25 回転盤駆動機構
26 ベルト 28 突出部
30 ウエアプレート 31 エジェクタロッド穴
32 凹部 33 台部
34 エジェクタロッド穴 36 クロスローラリング
38 押さえ部材 42 段部
43 ウエアプレート 45 スライド部
47 鍔部