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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】接合剤およびその用途
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/22 20060101AFI20241118BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20241118BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20241118BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20241118BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20241118BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20241118BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20241118BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20241118BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241118BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20241118BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B23K35/22 310A
C04B37/02 B
B23K35/26 310A
B23K35/30 310B
B23K35/30 310C
C22C13/00
C22C5/06 Z
C22C9/02
C22C9/00
H05K1/02 F
H05K1/09 A
H05K3/38 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021124713
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2022027647
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2020129363
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】森 陽光
(72)【発明者】
【氏名】小林 広治
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-091673(JP,A)
【文献】特開平04-305073(JP,A)
【文献】特開平04-317471(JP,A)
【文献】特開平05-139856(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137651(WO,A1)
【文献】特開2011-067849(JP,A)
【文献】特開昭62-289396(JP,A)
【文献】特開2012-011399(JP,A)
【文献】国際公開第2018/122971(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0043530(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/22
B23K 35/26
B23K 35/30
C22C 13/00
C22C 5/06
C22C 9/02
C22C 9/00
C04B 37/02
H05K 1/02
H05K 1/09
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AgおよびCuから選択される少なくとも一種の第1の非活性金属成分と、第2の非活性金属成分としてのSnとを含む非活性金属成分(1)と;活性金属としてのTiを含む活性金属成分(2)と;有機ビヒクル(3)とからなる接合剤であって;
前記非活性金属成分(1)におけるAg、CuおよびSnの組成比を、Ag、CuおよびSnの総量に対する各原子の割合[単位:atm%]として三角座標上に(Ag,Cu,Sn)と表すとき、前記組成比が、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(43,46,11)、(33,54,13)、(23,62,15)、(15,65,20)、(22,46,32)、(30,25,45)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域またはその外縁にあり、
前記外縁が、前記領域を区画する境界線上の任意の点Pの座標を(PAg,PCu,PSn)としたとき、(PAg+α,PCu+β,PSn+γ)で表される点Q(ただし、α、βおよびγは下記式を満たす)が形成する領域であり、
-2≦α≦2
-2≦β≦2
-2≦γ≦2
α+β+γ=0
前記第1の非活性金属成分および前記第2の非活性金属成分とは異なる第3の非活性金属成分の割合が、前記非活性金属成分(1)全体に対して、0~3質量%であり、
前記活性金属成分(2)が、前記活性金属単体および/または前記活性金属を含む化合物であり、前記活性金属成分(2)の割合が、前記非活性金属成分(1)の総量100質量部に対して、0.5~30質量部であり、
銅を含む銅板と、セラミックス基板とが接合された銅貼り基板を形成するための接合剤であり、
前記銅板の平均厚みが、0.5~5mmである接合剤。
【請求項2】
前記非活性金属成分(1)におけるAg、CuおよびSnの組成比が、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域またはその外縁にある請求項1記載の接合剤。
【請求項3】
前記非活性金属成分(1)におけるAg、CuおよびSnの組成比が、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(51,13,36)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域またはその外縁にある請求項1または2記載の接合剤。
【請求項4】
前記セラミックス基板が、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、およびアルミナから選択される少なくとも一種を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の接合剤。
【請求項5】
前記銅貼り基板が、パワーモジュール用回路基板である請求項1~4のいずれか一項に記載の接合剤。
【請求項6】
前記銅板および前記セラミックス基板と、この銅板およびセラミックス基板の間に介在し、かつ請求項1~5のいずれか一項に記載の接合剤の焼成物で形成された接合層とを含む銅貼り基板。
【請求項7】
前記銅板および前記セラミックス基板と、この銅板およびセラミックス基板の間に介在し、かつ請求項1~5のいずれか一項に記載の接合剤で形成された金属ペースト層とを含む積層体を形成する積層工程と;
この積層工程で得られた前記積層体を加熱して、前記金属ペースト層が焼成された接合層を形成する接合工程とを含む請求項6記載の銅貼り基板の製造方法。
【請求項8】
前記接合工程における加熱温度が、430~710℃である請求項7記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールなどに使用される回路基板(特に、銅貼り基板(または銅貼り回路基板)など)などの接合部の接合に利用可能な金属ペースト(接合剤(接合用組成物)またはろう材組成物)およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワーモジュールは、発電設備、自動車(ハイブリッドカー(HEV)など)、鉄道車両、家電製品(エアコンなど)などの様々な分野における電力の変換や制御などの役割を担っており、パワーモジュール用回路基板として、絶縁性基板(セラミックス基板)に銅板が接合された回路基板(銅貼り基板または銅貼り回路基板)がよく利用される。
【0003】
セラミックス基板は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などで形成され、熱伝導率や機械的強度などの要求によって使い分けられている。また、セラミックス基板に接合される銅板には0.1~0.5mm程度の厚い銅板が用いられ、半導体素子と接続するための銅回路、半導体素子の発熱を放熱するための銅放熱板などとして接合されている。
【0004】
セラミックス基板と銅板との接合方法としては、活性金属法が一般的に採用され、活性金属法による銅貼り基板はAMC(Active Metal Brazed Copper)基板と呼ばれている。活性金属法では、Ti、Zrなどの活性金属をAgなどの主成分に添加したろう材(活性金属ろう材)を用いて、セラミックス基板と銅板とをろう付けにより接合する方法であり、接合のメカニズムとしては、ろう材中の活性金属がセラミックス基板との接合界面に優先的に拡散し、セラミックス基板中のN、O、Siなどと反応することで活性金属化合物が形成され、この活性金属化合物を主として含む活性金属化合物層と銅板との間に、ろう材主成分(Agなど)を主として含むろう材層が介在して、異種材料である両者が接合される。すなわち、セラミックス基板と銅板との間に介在する接合層は、セラミックス基板側に位置する活性金属化合物層と、銅板側に位置するろう材層との2層構造で形成される。このような接合層を形成するための活性金属ろう材としては、Ag、Cu、SnおよびTiを含むろう材などが知られている。
【0005】
例えば、特開2002-137974号公報(特許文献1)には、金属成分として、銀75~89%、銅1~23%、錫1~5%、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選択された少なくとも一種の活性金属成分1~6%を含む接合ろう材を用いて、800~830℃で所定のセラミック体および無酸素銅板を接合する方法が開示されている。
【0006】
また、特開2014-90144号公報(特許文献2)では、ろう材金属成分がAgおよびCuを含み、活性金属成分としてTiHを含む特定のろう材を用いて、接合温度780~810℃の特定の条件下、所定のセラミックス基板と銅回路および銅放熱板とを接合する方法が開示されている。この文献の実施例1、2および5~10では、ろう材金属成分として、さらにSnが使用されている。
【0007】
特開2017-130686号公報(特許文献3)には、Agと、Cuと、SnまたはInと、Tiとを含有し、かつSnまたはInの含有量が1質量%以上15質量%以下である接合層により所定のセラミックス基板および銅板が接合され、かつ特定の断面形状および特性を有するセラミックス銅回路基板が開示されている。
【0008】
国際公開第2019/022133号(特許文献4)には、Agを85.0~95.0質量部、Cuを5.0~13.0質量部、SnまたはInを0.4~2.0質量部、および、TiをAg、Cuおよび、SnまたはInの合計100質量部に対して1.5~5.0質量部含有するろう材を用いて、接合温度770~900℃の所定条件下で、セラミックス基板に銅板を接合する工程を含むセラミックス回路基板の製造方法が開示されている。
【0009】
国際公開第2018/199060号(特許文献5)には、セラミックス基板と銅板とが、Ag、Cuおよび活性金属を含むろう材を介して接合された所定のセラミックス回路基板が開示され、ろう材にSnが含まれることも記載されている。
【0010】
特開2019-64865号公報(特許文献6)には、セラミックス基板の少なくとも一方の面に、ろう材を特定の塗布領域および非塗布領域を形成するように塗布することを特徴とする金属-セラミックス接合基板の製造方法が開示され、この文献の実施例では、85質量%の銀と、7質量%の銅と、5質量%の錫と、3質量%のチタンを含有するペースト状の活性金属含有ろう材を用いたことが記載されている。
【0011】
このように、活性金属ろう材は、一般的に、ろう材中の金属成分を含む金属粒子や金属化合物などの粉末に、有機溶剤などの有機ビヒクルを混合して分散させたペースト状組成物(金属ペースト)の形態で使用されることが多い。
【0012】
一方、近年のパワーモジュールは、小型化(高密度化)かつ高出力化が進む傾向にあり、搭載されるチップの温度上昇を抑制するため、より高い放熱特性が要求されている。そのため、パワーモジュール用回路基板としての銅貼り回路基板には放熱性の向上が求められており、接合される銅板を厚くする厚銅化によって放熱量を増加させる検討がなされている。
【0013】
しかし、厚銅化は、銅板のはく離やセラミックス基板の割れといった接合性および信頼性(耐久信頼性または耐熱衝撃性)の点で不具合を生じさせる。すなわち、異種材料である銅板とセラミックス基板との熱膨張係数には大きな差があるため、稼働時のスイッチング(オン/オフ)動作による熱サイクルなどに伴って熱応力(熱膨張差)が生じ、この熱応力が前記不具合の要因となる。この熱応力は、厚銅化によって一層大きくなるとともに、両者を接合する接合層(接合部)では特に大きな熱応力がかかるため、高い放熱性と、高い接合性および信頼性との充足は困難である。
【0014】
このような厚銅化に対応するため、国際公開第2017/213207号(特許文献7)には、接合層における接合力の要となる活性金属化合物層の形態制御が重要であることが記載されている。前記特許文献1~6ではペースト状の活性金属ろう材が使用されているが、特許文献7には、ペースト状のろう材では限界があるため、合金化されたバルク状の活性金属ろう材をクラッドした複合材料によりセラミックス基板に接合する方法が開示されている。この文献にはクラッドする活性金属ろう材として、Ag-Cu-Ti-Sn合金が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2002-137974号公報
【文献】特開2014-90144号公報
【文献】特開2017-130686号公報
【文献】国際公開第2019/022133号
【文献】国際公開第2018/199060号
【文献】特開2019-64865号公報
【文献】国際公開第2017/213207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献7のバルク状の活性金属ろう材では、ペースト状のろう材に比べて調製し難く取り扱い性の点で劣るため、生産性が低く、銅貼り基板を効率よく製造できない。
【0017】
また、厚銅化を適用した際の具体的な銅板の厚みとしては、例えば、SiCパワー半導体素子では0.5mm以上(例えば1mmや3mm)も必要になる。ところが、通常、900℃程度の高温で接合を行うAMC基板では、銅板が厚くなるほど冷却時に生じる熱応力が大きくなるため、厚銅化による銅板の剥がれやセラミックス基板の割れが顕著になるとともに、たとえ接合できたとしても、残留応力のため信頼性に乏しかった。そのため、本発明者らは、セラミックス基板および銅板に対して、動作温度よりも大きな負荷が生じ得る接合時の熱応力を低減して接合性を確保する観点から、より低温で接合することに着目した。
【0018】
比較的低い接合温度で接合した例として、特許文献5の実施例6では、厚み0.8mmの無酸素銅板を窒化ケイ素基板に接合温度725℃で接合しているが、接合温度を710℃に下げた比較例5~6では銅板がはく離したことが記載されており、低温で良好な接合性を確保するのには限界があった。
【0019】
従って、本発明の目的は、厚い銅板であっても、セラミックス基板と低温で有効に接合できるとともに、耐久信頼性(耐熱衝撃性)に優れ、かつ外観が良好な接合層(または銅貼り基板)を形成可能な接合剤(接合材料、活性金属ろう材または金属ペースト)、ならびにこの接合材料を用いて形成された銅貼り基板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、Ag、CuおよびSnの割合(または原子(元素)比)を特定の範囲に調整して活性金属と組み合わせると、厚い銅板であっても、セラミックス基板に低温で有効に接合できることを見いだし、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明のペースト状組成物(接合剤(接合用組成物)または活性金属ろう材)は、AgおよびCuから選択される少なくとも一種と、Snとを含む非活性金属成分(1)[または合金形成成分(1)]と;活性金属を含む活性金属成分(2)と;有機ビヒクル(3)とを含む金属ペーストであって;
前記非活性金属成分(1)におけるAg、CuおよびSnの組成比を、Ag、CuおよびSnの総量に対する各原子の割合[単位:atm%]として三角座標上に(Ag,Cu,Sn)と表すとき、前記組成比が、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(43,46,11)、(23,62,15)、(15,65,20)、(0,59,41)、(0,13,87)、(35,13,52)、および(29,0,71)で囲まれた領域[好ましくは(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(43,46,11)、(33,54,13)、(23,62,15)、(15,65,20)、(0,59,41)、(0,13,87)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域(領域A~D)]またはその外縁(または近傍)にある接合剤である。
【0022】
なお、本願において、三角座標上の所定領域の「外縁」(外側近傍)とは、前記所定領域の外側[前記所定領域内(領域内部および境界線上)に含まれない範囲]であって、かつ、前記所定領域を区画(規定)する境界線上の任意の点Pの座標を(Ag,Cu,Sn)=(PAg,PCu,PSn)としたとき(PAg+PCu+PSn=100[atm%])、(Ag,Cu,Sn)=(PAg+α,PCu+β,PSn+γ)で表される点Q(ただし、α、βおよびγは下記式を全て満たす)が形成する範囲(領域)、すなわち、前記所定領域の外側において点Qが存在し得る範囲または領域(前記所定領域の外縁部または外周部)であってもよい。
【0023】
-2≦α≦2
-2≦β≦2
-2≦γ≦2
α+β+γ=0
【0024】
前記非活性金属成分(1)におけるAg、CuおよびSnの組成比は、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(43,46,11)、(23,62,15)、(15,65,20)、(35,13,52)、および(29,0,71)で囲まれた領域またはその外縁(近傍)にあるのが好ましく;(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(35,13,52)、および(29,0,71)で囲まれた領域またはその外縁(近傍)にあるのがさらに好ましい。
【0025】
特に、前記非活性金属成分(1)におけるAg、CuおよびSnの組成比は、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(43,46,11)、(33,54,13)、(23,62,15)、(15,65,20)、(22,46,32)、(30,25,45)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域(領域A~C)またはその外縁(近傍)にあるのが好ましく;
(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域(領域A~B)[なかでも、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(48,32,20)、(51,13,36)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域(領域A~B)]またはその外縁(近傍)にあるのがより好ましく;
(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(51,13,36)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域(領域A)またはその外縁(近傍)にあるのがさらに好ましい。
【0026】
また、前記非活性金属成分(1)におけるAg、CuおよびSnの組成比で合金を形成したとき、前記合金の融点(または溶融温度)は、400~650℃程度であってもよい。
【0027】
前記活性金属は、Ti、Zr、Hf、およびNbから選択される少なくとも一種であってもよい。前記活性金属成分(2)は、活性金属の水素化物を含んでいてもよい。前記活性金属成分(2)の割合は、前記非活性金属成分(1)の総量100質量部に対して、0.5~30質量部程度であってもよい。
【0028】
前記接合剤(金属ペースト)は、銅を含む銅板と、セラミックス基板とが接合された銅貼り基板を形成するための活性金属ろう材であってもよい。前記銅板の平均厚みは、0.5~5mm程度であってもよい。前記セラミックス基板は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、およびアルミナから選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。前記銅貼り基板は、パワーモジュール用回路基板であってもよい。
【0029】
本発明は、前記銅板および前記セラミックス基板と、この銅板およびセラミックス基板の間に介在し、かつ前記接合剤(金属ペースト)の焼成物(または焼結物)で形成された接合層とを含む銅貼り基板を包含する。
【0030】
また、本発明は、前記銅板および前記セラミックス基板と、この銅板およびセラミックス基板の間に介在し、かつ前記接合剤(金属ペースト)で形成された金属ペースト層とを含む積層体を形成する積層工程と;
この積層工程で得られた前記積層体を加熱して、前記金属ペースト層が焼成(または焼結)された接合層を形成する接合工程とを含む前記銅貼り基板の製造方法も包含する。前記接合工程における加熱温度(または接合温度)は、430~710℃程度であってもよい。
【0031】
なお、本願において、Ag、CuおよびSnの組成比(Ag,Cu,Sn)が、三角座標上に規定された複数の点(または複数の特定組成比)で「囲まれた領域」にあるとは、特に断りがない限り、前記複数の点(または組成比)で形成される多角形(凹多角形または凸多角形)の内部(内側領域)のみならず、前記多角形を構成する辺(または線分)上に、前記組成比(Ag,Cu,Sn)が位置してもよいことを意味する。
【0032】
また、本願において、合金の「融点」(または「溶融温度」)とは、固相線温度を意味する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の接合剤(接合材料、接合用組成物、金属ペーストまたは活性金属ろう材)は、厚い銅板であっても、セラミックス基板と低温で有効に接合できる。また、高い接合性(接着性または密着性)を示すだけでなく、スイッチング動作などの熱サイクルによって生じる熱応力(または熱膨張差による負荷)が繰り返し加わっても、基板割れや銅板はく離を有効に抑制でき、耐久信頼性(耐熱衝撃性)に優れている。さらに、接合層の外観も良好である。外観は、接合性や耐久信頼性とは同時に満たし難いトレードオフな特性であるにもかかわらず、これらの特性をバランスよく充足できる。また、ペースト状組成物であっても、低温で有効に接合可能なため、銅貼り基板を効率よく(高い生産性で)製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は本発明のAg、CuおよびSnの組成比(Ag,Cu,Sn)の範囲(領域A,B,C,Dおよび境界線X,Y)を説明するための三角座標である。
図2図2は実施例における銅貼り基板の作製方法を説明するための概略図である。
図3図3は実施例における接合用組成物(金属ペースト)または接合層のAg、CuおよびSnの組成比(Ag,Cu,Sn)を示す三角座標である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[接合剤(接合用組成物または金属ペースト)]
接合剤(接合用組成物または金属ペースト)は、活性金属とは異なる特定の金属を所定の割合で含む非活性金属成分(1)と;活性金属を含む活性金属成分(2)と;有機ビヒクル(3)とを含んでいる。
【0036】
(1)非活性金属成分(ろう材層形成金属成分または合金形成成分)
非活性金属成分(1)は、後述する活性金属とは異なる金属成分として、AgおよびCuから選択される少なくとも一種の第1の非活性金属成分と、第2の非活性金属成分としてのSnとを所定の割合(組成比または原子(元素)比)で含んでいる。これらの非活性金属成分(1)は、焼成(または焼結)後の接合層において、ろう材層の主成分となる合金を形成する。
【0037】
第1の非活性金属成分としては、接合性を向上し易い点から、少なくともAgを含むのが好ましく、Cuを含む場合には、後述するようにCuの割合(組成比または原子比)がAgよりも少ないのがさらに好ましく、実質的にCuを含んでいなくてもよい。
【0038】
金属ペーストは、第2の非活性金属成分としてのSnを含むことにより、形成される合金の融点(または溶融温度)が低減されて、従来よりも低温での接合が可能になる。
【0039】
また、非活性金属成分(1)は、第1および第2の非活性金属成分とは異なる他の非活性金属成分(第3の非活性金属成分)を必要に応じて含んでいてもよい。第3の非活性金属成分としては、例えば、Ni、W、Mo、Au、Pt、Pdなどの高融点金属、Bi、In、Znなどの低融点金属(または易溶融金属)などが挙げられる。これらの第3の非活性金属成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて含まれていてもよい。これらの第3の非活性金属成分の割合は、非活性金属成分(1)全体に対して、例えば30質量%以下(例えば0~10質量%)、好ましくは5質量%以下(例えば0.1~3質量%)であり、実質的に0質量%、すなわち、非活性金属成分(1)が第1および第2の非活性金属成分のみで構成されるのがさらに好ましい。
【0040】
これらの非活性金属成分(1)の形態は特に制限されないが、粒子状の形態で含まれているのが好ましい。非活性金属成分(1)中の金属成分は、それぞれ金属単体粒子(金属粒子)として含まれていてもよく、合金化した合金粒子として含まれていてもよい。合金粒子としては、非活性金属成分(1)中の金属成分のうち、全金属成分が合金化した合金粒子であってもよいが、少なくとも一部が合金化した合金粒子であればよい。非活性金属成分(1)の好ましい形態としては、各金属単体粒子(金属粒子)の混合粒子、または金属単体粒子(金属粒子)と合金粒子とを組み合わせた混合粒子である。
【0041】
粒子状の非活性金属成分(1)(前記金属単体粒子、合金粒子などの非活性金属粒子)の代表的な形状としては、例えば、球状(真球状または略球状)、楕円体(楕円球)状、多面体状(多角錘状、立方体状や直方体状など多角柱状など)、板状(扁平状、鱗片状、薄片状など)、ロッド状または棒状、繊維状、樹針状、不定形状などが挙げられ、通常、球状、楕円体状、多面体状、不定形状などである。充填密度が高くなる点や、ペーストとしての流動性に優れる点から、球状が好ましい。
【0042】
粒子状の非活性金属成分(1)(前記金属単体粒子、合金粒子などの非活性金属粒子)の中心粒径(D50)は、ペーストとしての流動性、焼成後の緻密性ならびに気密性および接合性(密着性)を向上できる点から、100μm以下(特に50μm以下)程度であってもよく、例えば0.001~50μm、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~15μm、さらに好ましくは0.2~10μmである。
【0043】
なお、本願において、中心粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された平均粒径(体積基準)を意味する。
【0044】
粒子状の非活性金属成分(1)(前記金属単体粒子、合金粒子などの非活性金属粒子)は、ペースト中の金属含有量を向上でき、接合層の緻密性(接合性)および熱伝導性を向上できるとともに、ペーストの取り扱い性を向上(粘度を調整)し易い点から、粒径3μm未満(例えば1nm以上3μm未満)の非活性金属小粒子(以下「小粒子」と称する)と、粒径3~50μmの非活性金属大粒子(以下「大粒子」と称する)との組み合わせが好ましい。
【0045】
小粒子の中心粒径は、例えば0.1~2.5μm、好ましくは0.2~2μm、さらに好ましくは0.25~1.5μm、より好ましくは0.3~1μmである。小粒子の中心粒径が小さすぎると、金属ペーストの粘度が上昇して取り扱い性が困難となるおそれがあり、大きすぎると、緻密性(接合性)が低下するおそれがある。
【0046】
大粒子の中心粒径は、例えば3~30μm、好ましくは4~20μm、さらに好ましくは4.5~15μm、より好ましくは5~10μmである。大粒子の中心粒径が小さすぎると、ペーストの焼結収縮が大きくなるおそれがあり、大きすぎると、接合部の緻密性(接合性)が低下するおそれがある。
【0047】
粒子状の非活性金属成分(1)(前記金属単体粒子、合金粒子などの非活性金属粒子)として、小粒子と大粒子とを組み合わせる場合、小粒子の割合は、大粒子100体積部に対して、例えば1~500体積部、好ましくは50~400体積部、さらに好ましくは70~300体積部、より好ましくは90~230体積部である。小粒子の割合が少なすぎると、接合部の緻密性(接合性)が低下するおそれがあり、多すぎると、取り扱い性が低下するおそれがある。
【0048】
なお、本願において、体積割合は、25℃、大気圧下での体積割合を示す。
【0049】
粒子状の非活性金属成分(1)(前記金属単体粒子、合金粒子などの非活性金属粒子)は、慣用の方法で製造でき、例えば、湿式還元法、電解法、アトマイズ法、水アトマイズ法などの各種製法によって製造できる。
【0050】
(非活性金属成分(1)の組成比)
非活性金属成分(1)において、Ag、CuおよびSnの組成比、すなわち、Ag、CuおよびSnの総量(100atm%)に対する各原子の割合[単位:atm%]は、所定の範囲に調整されている。Ag、CuおよびSnの各割合(原子比または元素比)[単位:atm%]を三角座標上に(Ag,Cu,Sn)と表すとき、前記組成比は、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(43,46,11)、(33,54,13)、(23,62,15)、(15,65,20)、(0,59,41)、(0,13,87)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域、すなわち、図1に示すように、領域A、B(Bを含む)、CおよびDのいずれかの領域またはその外縁(好ましくは前記領域)にある。
【0051】
なお、本願において、「領域A」は、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(51,13,36)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)で囲まれた領域(内部および境界線上)の組成比を意味し;
「領域B」は、(Ag,Cu,Sn)=(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(35,13,52)および(51,13,36)で囲まれた領域[ただし、(67,12,21)、(51,13,36)および(35,13,52)をこの順で結ぶ直線(線分)上は除く]の組成比を意味し;
「領域B」は、(Ag,Cu,Sn)=(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(48,32,20)および(51,13,36)で囲まれた領域[ただし、(67,12,21)および(51,13,36)を結ぶ直線(線分)上は除く]の組成比を意味し;
「領域C」は、(Ag,Cu,Sn)=(47,40,13)、(43,46,11)、(33,54,13)、(23,62,15)、(15,65,20)、(22,46,32)、(30,25,45)および(35,13,52)で囲まれた領域[ただし、(47,40,13)および(35,13,52)を結ぶ直線(線分)上は除く]の組成比を意味し;
「領域D」は、(Ag,Cu,Sn)=(15,65,20)、(0,59,41)、(0,13,87)、(35,13,52)、(30,25,45)および(22,46,32)で囲まれた領域[ただし、(15,65,20)、(22,46,32)、(30,25,45)および(35,13,52)をこの順で結ぶ直線(線分)上は除く]の組成比を意味する。
【0052】
厚い銅板に対しても(または銅板とセラミックス基板との熱膨張係数の差が大きくても)、低温でより有効に接合性を向上できる点から、前記組成比は、領域A~C(領域A+B+Cともいう)またはその外縁(近傍)にあるのが好ましく、より好ましくは領域A~B(領域A+Bともいう)またはその外縁、さらに好ましくは領域A~B(領域A+Bともいう)またはその外縁、特に領域Aまたはその外縁が好ましい。すなわち、領域Dから領域A側へ行くにつれて[または領域A~Dにおいて、Agが増える方向および/またはCuが減る方向(図1における左側および/または下側)へ向かうにつれて]、接合性を向上し易くなるようである。
【0053】
なお、同様の観点から、前記組成比は、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(43,46,11)、(23,62,15)、(15,65,20)、(35,13,52)および(29,0,71)で囲まれた領域にあるのが好ましく、さらに好ましくは(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(35,13,52)、および(29,0,71)で囲まれた領域にあってもよい。
【0054】
本発明の接合用組成物(金属ペースト)では、このようにAg、CuおよびSnの組成比が所定の範囲となるよう調整されているため、ろう材層を形成する合金の融点(または溶融温度)が低減されて、従来よりも低温であっても接合できるものと推察されるが、本発明者らが当初着目したように、単純に接合温度(または合金の融点)を低下させて、接合時の加熱(焼成または焼結)および冷却によって生じる熱応力さえ低減できれば、接合性を改善できるわけではなかった。また、合金の融点(溶融温度)および接合温度(焼成または焼結温度)は、接合性のみならず、耐久信頼性(耐熱衝撃性)および接合後の外観とも密接に関係しているため、これらの特性を同時に満たすのは特に困難であった。
【0055】
詳しくは、合金の融点(溶融温度)を低下させた場合、低い接合温度で合金を溶融して接合層(またはろう材層)を形成できるため、接合時の熱応力を抑制でき、接合性を向上できる反面、接合温度が低すぎて活性金属成分(2)がセラミックス基板と十分に反応できず、接合性が低下したり、耐久信頼性(耐熱衝撃性)が低下するおそれがある。しかし、活性金属成分(2)の反応性を向上するために接合温度を上げすぎると、接合層またはろう材層(または非活性金属成分(1))の流動性が高くなり過ぎるため、非活性金属成分(1)が流出して、セラミックス基板上へのはみ出しや銅板上への這い上がりが生じ、外観不良の原因となる。このような外観不良は、銅貼り基板製造後の後工程において、銅板面などにめっき処理やはんだ付けを施す際に悪影響を及ぼすのみならず、特に過剰に流出してしまうと接合性の低下も引き起こすおそれがある。また、このような外観不良は、セラミックス基板や銅板に対するぬれ性も関係しており、Ag、CuおよびSnの組成比によっても変化するため、前記特性を同時に満たすのは極めて困難であったが、本発明では、Ag、CuおよびSnの組成比を所定範囲に調整したため、これらの特性を有効に充足できる。
【0056】
前記Ag、CuおよびSnの組成比で合金を形成したときの融点は、例えば400~650℃(例えば450~630℃)程度であってもよく、好ましくは470~650℃(例えば490~600℃)、さらに好ましくは500~650℃(例えば510~550℃)である。合金の融点(溶融温度)が高すぎると、接合性(またはぬれ性)を確保するために高い接合温度(焼成または焼結温度)が必要となり、冷却時に生じる大きな熱応力(負荷)により銅板の反りやセラミックス基板の割れが生じ易く、特に、大きな負荷が生じる厚い銅板を有効に接合できないおそれがある。一方、合金の融点(溶融温度)が低すぎると、接合層(またはろう材層)の流出による外観および/または接合不良を抑制するために接合温度を低く調整する必要があり、活性金属成分(2)がセラミックス基板と十分に反応できず、接合性が低下したり、耐久信頼性(耐熱衝撃性)が低下するおそれがある。
【0057】
なお、前記Ag、CuおよびSnの組成比で合金を形成したときの融点は、慣用の方法、例えば、示差走査熱量測定(DSC)などにより測定できる。
【0058】
なお、図1において、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)、(67,12,21)、(58,25,17)、(47,40,13)、(43,46,11)、(33,54,13)、(23,62,15)、(15,65,20)および(0,59,41)をこの順に結ぶ直線(線分)で構成される境界線、すなわち、領域A~Dと、この領域A~Dの外側に位置し、かつSnの割合が低い領域(後述の参考例1~5および参考例9~10が含まれる領域)との境界線をXとし;
(Ag,Cu,Sn)=(0,13,87)、(35,13,52)、(32,6,62)および(29,0,71)をこの順に結ぶ線分で構成される境界線、すなわち、領域A~Dと、この領域A~Dの外側に位置し、かつSnの割合が高い領域(後述の参考例6~8が含まれる領域)との境界線をYとした。
【0059】
前記境界線X付近に600~650℃程度の固液境界(または融点)の組成比が存在し、境界線Y付近に400℃程度の固液境界が存在し、この境界線Xと境界線Yとの間(合金の融点が400~650℃程度の組成比)の領域では、焼成温度700℃程度以下の低温で厚い銅板を接合可能なようである。
【0060】
そのため、前記Ag、CuおよびSnの組成比は、前述のように前記領域内(内部および境界線上)にあってもよいが、本願発明の効果を害しない範囲で(接合性を確保できる範囲で)、前記領域の外縁(外側近傍、例えば、境界線XおよびYの外縁(近傍)など)であってもよい。
【0061】
前記領域の外縁(前記領域の外側近傍)としては、領域を区画する境界線上から外側に向かって(境界線の垂直方向に向かって)、各成分が、例えば2atm%(例えば1.5atm%)、好ましくは1atm%(例えば0.5atm%)、さらに好ましくは0.3atm%(例えば0.1atm%)程度の範囲内となる領域であってもよい。例えば、領域の外縁(近傍)は、領域を区画する境界線上の任意の点Pの座標を(Ag,Cu,Sn)=(PAg,PCu,PSn)としたとき、(Ag,Cu,Sn)=(PAg+α,PCu+β,PSn+γ)で表される点Q(ただし、α、βおよびγは下記式を全て満たす)が形成する領域であってもよい。
【0062】
-2≦α≦2
-2≦β≦2
-2≦γ≦2
α+β+γ=0
【0063】
好ましいαは、-1.5≦α≦1.5(例えば、-1≦α≦1)、さらに好ましくは-0.5≦α≦0.5(例えば、-0.3≦α≦0.3)、特に、-0.1≦α≦0.1であってもよい。なお、好ましいβの範囲およびγの範囲も、それぞれ上記αの好ましい範囲と同様である。これらのα、βおよびγの各範囲は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
また、Agの組成比(原子比)は前記範囲(領域)内またはその外縁(近傍)にあればよいが、非活性金属成分(1)全体(特に、Ag、CuおよびSnの総量)に対して、0~76atm%程度から選択してもよく、例えば0~74atm%(例えば15~74atm%)、好ましくは29~74atm%(例えば35~74atm%)、さらに好ましくは44~74atm%(例えば60~74atm%)である。また、Agの組成比(原子比)は、非活性金属成分(1)全体(特に、Ag、CuおよびSnの総量)に対して、例えば0~72質量%(例えば20~72質量%)、好ましくは27~72質量%(例えば35~72質量%)、さらに好ましくは44~72質量%(例えば58~72質量%)である。Agの組成比(原子比)が少なすぎると、接合性が低下するおそれがある。
【0065】
Cuの組成比(原子比)は前記範囲内またはその外縁(近傍)にあればよいが、非活性金属成分(1)全体(特に、Ag、CuおよびSnの総量)に対して、例えば0~65atm%(例えば0~53atm%)、好ましくは0~46atm%(例えば0~32atm%)、さらに好ましくは0~19atm%(例えば0~13atm%)、特に好ましくは0~12atm%である。また、Cuの組成比(原子比)は、非活性金属成分(1)全体(特に、Ag、CuおよびSnの総量)に対して、例えば0~51質量%(例えば0~39質量%)、好ましくは0~33質量%(例えば0~21質量%)、さらに好ましくは0~12質量%(例えば0~7.8質量%)、特に好ましくは0~7質量%であり、実質的にCuを含んでいなくてもよい。Cuの組成比(原子比)が多すぎると、接合性や耐久信頼性が低下するおそれがある。
【0066】
Snの組成比(原子比)は前記範囲内またはその外縁(近傍)にあればよいが、非活性金属成分(1)全体(特に、Ag、CuおよびSnの総量)に対して、10~89atm%程度から選択してもよく、例えば11~87atm%(例えば15~71atm%)、好ましくは20~52atm%(例えば21~44atm%)、さらに好ましくは25~40atm%である。
【0067】
また、Snの組成比(原子比)は、非活性金属成分(1)全体(特に、Ag、CuおよびSnの総量)に対して、例えば15~92.5質量%(例えば22~73質量%)、好ましくは24~57.2質量%(例えば25~49質量%)、さらに好ましくは28~42質量%である。Snの組成比(原子比)が少なすぎると、合金の融点(溶融温度)を十分に低減できずに高い接合温度が必要となり、接合時に生じる熱応力が大きくなって接合性や耐久信頼性が低下するおそれがある。Snの組成比(原子比)が多すぎると、合金の融点(溶融温度)が低すぎて(接合時に流動性が高くなり過ぎて)、接合層(ろう材層)が過剰に流出し、外観不良や接合性の低下を招くおそれがあるとともに、この接合層の流出を抑制するために接合温度を下げると、活性金属成分(2)が十分に反応できず、接合性や耐久信頼性が低下するおそれがある。
【0068】
(2)活性金属成分
活性金属成分に含まれる活性金属としては、例えば、Ti、Zr、Hf、Nbなどが挙げられる。これらの活性金属は、単独でまたは2種以上組み合わせて含まれていてもよい。これらの活性金属のうち、接合(焼成または焼結)工程での活性に優れ、セラミックス基板と銅板との接合性を向上できる点から、Ti、ZrおよびNbからなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、Tiおよび/またはZrがさらに好ましく、Tiが特に好ましい。
【0069】
活性金属成分(2)は、活性金属を含んでいればよく、前記活性金属単体および/または活性金属を含む化合物として含まれていてもよいが、接合工程での活性に優れる点から、活性金属を含む化合物であるのが好ましい。
【0070】
活性金属を含む化合物としては、特に限定されないが、例えば、水素化チタン(TiH)、水素化ジルコニウム(ZrH)、水素化ニオブ(NbH)などの活性金属水素化物、ホウ化チタンなどの活性金属ホウ化物などが挙げられる。これらの活性金属を含む化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらのうち、接合工程での活性に優れる点から水素化物が好ましく、水素化チタン(TiH)が特に好ましい。
【0071】
活性金属成分(2)の形態は特に制限されないが、粒子状の形態、すなわち、活性金属を含む活性金属含有粒子として含まれているのが好ましい。このような活性金属含有粒子としては、水素化チタン粒子および/または水素化ジルコニウム粒子が好ましく、水素化チタン粒子がさらに好ましい。
【0072】
前記活性金属含有粒子の形状は、好ましい態様も含めて、前記粒子状の非活性金属成分(1)の形状として例示された形状から選択できる。
【0073】
前記活性金属含有粒子の中心粒径(D50)は0.1~100μm程度の範囲から選択でき、金属ペーストの取り扱い性などの点から、例えば0.2~50μm、好ましくは0.5~20μm、さらに好ましくは1~10μmである。
【0074】
活性金属成分(2)の割合は、前記非活性金属成分(1)の総量100質量部に対して、例えば0.1~50質量部(例えば0.3~40質量部)程度、具体的には0.5~30質量部(例えば1~20質量部、好ましくは2~15質量部、さらに好ましくは3~10質量部)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは1.5~10質量部(例えば2~5質量部)、さらに好ましくは2~4質量部である。活性金属成分(2)の割合が少なすぎると、接合性、特に接合層(活性金属化合物層)とセラミックス基板との接合性を十分に向上できないおそれがあり、逆に多すぎると、熱伝導性(放熱性)や焼結性が低下するおそれがある。
【0075】
(3)有機ビヒクル
接合用組成物(金属ペースト)は、ペースト状(流動性のある状態)にするために、前記非活性金属成分(1)および活性金属成分(2)に加えて、有機ビヒクル(第1の有機ビヒクル)をさらに含んでいる。
【0076】
有機ビヒクルは、金属粒子を含む金属ペーストの有機ビヒクルとして利用される慣用の有機ビヒクル、例えば、有機バインダーおよび/または有機溶剤であってもよい。有機ビヒクルは、有機バインダーおよび有機溶剤のいずれか一方であってもよいが、通常、有機バインダーと有機溶剤との組み合わせ(有機バインダーの有機溶剤による溶解物または混合物)である。
【0077】
有機バインダーとしては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体など)、熱硬化性樹脂(熱硬化性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂など)などが挙げられる。これらの有機バインダーは、単独でまたは2種以上組み合わせて含まれていてもよい。これらの有機バインダーのうち、接合工程(焼成または焼結過程)で容易に焼失し、かつ灰分の少ない樹脂、例えば、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなど)、セルロース誘導体(ニトロセルロース、エチルセルロース、ブチルセルロース、酢酸セルロースなど)、ポリエーテル系樹脂(ポリオキシメチレンなど)、ゴム類(ポリブタジエン、ポリイソプレンなど)などが好ましく、熱分解性などの点から、ポリ(メタ)アクリル酸メチルやポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル(特に、ポリアクリル酸ブチルなどのポリアクリル酸C1-6アルキルエステル)が好ましい。
【0078】
有機溶剤としては、特に限定されず、ペーストに適度な粘性を付与し、かつペーストをセラミックス基板および/または銅板に塗布した後に乾燥処理によって容易に揮発できる有機化合物であればよく、高沸点の有機溶剤であってもよい。このような有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素(パラキシレンなど)、エステル類(乳酸エチルなど)、ケトン類(イソホロンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、脂肪族アルコール(オクタノール、デカノール、ジアセトンアルコールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなど)、カルビトール類(カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトールなど)、カルビトールアセテート類(エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、トリエチレングリコール、グリセリンなど)、脂環族アルコール類[例えば、シクロヘキサノールなどのシクロアルカノール類;テルピネオール、ジヒドロテルピネオールなどのテルペンアルコール類(モノテルペンアルコールなど)など]、芳香族アルコール類(メタクレゾールなど)、芳香族カルボン酸エステル類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、窒素含有複素環化合物(ジメチルイミダゾール、ジメチルイミダゾリジノンなど)などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて含まれていてもよい。これらの有機溶剤のうち、ペーストの流動性などの点から、カルビトールなどのカルビトール類、テルピネオールなどの脂環族アルコール類が好ましく、テルピネオールなどの脂環族アルコール類がさらに好ましい。
【0079】
有機バインダーと有機溶剤とを組み合わせる場合、有機バインダーの割合は、有機溶剤100質量部に対して、例えば1~200質量部、好ましくは10~100質量部、さらに好ましくは30~60質量部程度であり、有機ビヒクル全体に対して5~80質量%、好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。
【0080】
有機ビヒクルの割合は、非活性金属成分(1)の総量100質量部に対して、例えば1~300質量部(例えば1~50質量部)、好ましくは5~30質量部(例えば10~15質量部)である。有機ビヒクルの割合が少なすぎると、取り扱い性が低下するおそれがあり、多すぎると、焼成後の接合層に空隙が形成され易くなって緻密性および気密性が低下するおそれがあり、特に、前記空隙が絶縁性基板(セラミックス基板)との界面付近に形成されると、活性金属成分(2)が前記基板と十分に反応できず、接合性(密着性)が低下するおそれがある。
【0081】
[銅貼り基板(銅貼り回路基板)]
本発明の接合用組成物(金属ペースト)は、銅を含む銅板と、絶縁性基板(セラミックス基板)とが接合された銅貼り基板を形成するための活性金属ろう材として有効に利用できる。すなわち、前記銅貼り基板は、銅板と、絶縁性基板(セラミックス基板)と、これらの間に介在し、かつ前記活性金属ろう材(接合用組成物(金属ペースト))の焼成物(または焼結物)で形成された接合層とを有するAMC基板である。特に、本発明の接合用組成物(金属ペースト)を用いることにより、銅板の厚みを厚くして放熱性を向上するための厚銅化に対応可能なため、前記銅貼り基板は、パワーモジュール用回路基板として好適に利用できる。
【0082】
なお、前記活性金属ろう材(接合用組成物(金属ペースト))の焼成物で形成された接合層は、銅板と絶縁性基板(セラミックス基板)との接合面の少なくとも一部の領域に形成されていればよく、接合面全面に形成されているのが好ましい。また、接合層は、前述のように、銅板側に位置するろう材層と、絶縁性基板(セラミックス基板)側に位置する活性金属化合物層との2層構造で形成されている。前記ろう材層は、前記非活性金属成分(1)が合金化した合金を主成分として(ろう材層全体に対して、例えば50質量%以上、好ましくは90質量%以上の割合で)含んでいてもよい。また、活性金属化合物層は、前記活性金属成分(2)が絶縁性基板(セラミックス基板)との接合界面でN、O、Siなどの原子と反応することで形成した活性金属化合物を主成分として(活性金属化合物層全体に対して、例えば50質量%以上、好ましくは90質量%以上の割合で)含んでいてもよい。
【0083】
焼成後の接合層(ろう材層および活性金属化合物層の総厚み)の平均厚みは、例えば5~30μm程度であってもよく、好ましくは10~20μmである。平均厚みが薄すぎると接合性が低下するおそれがあり、厚すぎると耐久信頼性が低下するおそれがある。
【0084】
(銅板)
銅貼り基板を形成するための銅板としては、少なくとも銅を含んでいればよく、銅または銅合金などが挙げられる。銅としては、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅などの純銅などが挙げられる。銅合金としては、例えば、Cu-W合金、Cu-Mo合金、Cu-Fe-P合金などが挙げられる。また、Cuと、WやMoなどの異種金属を一枚の板に圧延した複合材であるクラッド材を用いてもよい。クラッド材としては、例えば接合面にCu層を圧着したCu-Mo-Cu、Cu-W-Cuのようなクラッド材が挙げられる。なお、銅の割合は、銅板中の金属成分全体に対して、例えば1質量%以上(例えば5~100質量%)程度であってもよく、例えば10質量%以上(例えば20~100質量%)、好ましくは50質量%以上(例えば70~100質量%)、さらに好ましくは80質量%以上(例えば90~100質量%)程度であってもよい。これらの銅板は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることもできる。これらの銅板のうち、接合性などの点から無酸素銅が好ましい。
【0085】
銅板は、半導体素子と接続するための銅回路(回路用の銅板または銅回路板)および/または半導体素子の発熱を放熱するための銅放熱板(放熱用の銅板)であってもよい。例えば、銅貼り基板において、絶縁性基板(セラミックス基板)の一方の面に接合層を介して銅回路を接合し、他方の面に接合層を介して銅放熱板を接合してもよい。
【0086】
銅板の平均厚みは、用途に応じて適宜選択してもよく、例えばパワーモジュール用(出力の大きいパワーモジュール用)では、0.1mm以上0.5mm未満程度であってもよいが、前述のように本発明の接合用組成物(金属ペースト)を用いることで、厚銅化しても高い接合性で有効に接合可能なため、銅板の平均厚みは、例えば0.1~5mm(例えば0.1~3mm)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは0.5mm以上(例えば0.5~4mm)、さらに好ましくは1mm以上(例えば1.5~3.5mm)、特に2mm以上(例えば2.5~3.5mm、好ましくは2.7~3.3mm)である。
【0087】
(絶縁性基板(セラミックス基板))
銅貼り基板を形成するための基板(絶縁性基板)としては、接合(焼成または焼結)工程を経るため、耐熱性が要求され、エンジニアリングプラスチックなどの有機材料であってもよいが、通常、無機材料(無機素材)で形成された基板であり、前記活性金属が反応可能なセラミックス基板であるのが好ましい。
【0088】
無機材料としては、例えば、セラミックス{金属酸化物(アルミナまたは酸化アルミニウム(サファイアなどのコランダムも含む)、ジルコニアまたは酸化ジルコニウム、フェライトまたは酸化鉄、チタニアまたは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、ベリリアまたは酸化ベリリウムなど)、酸化ケイ素(石英、二酸化ケイ素など)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化チタンなど)、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化炭素、金属炭化物(炭化チタン、炭化タングステンなど)、炭化ケイ素、炭化ホウ素、金属ホウ化物(ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウムなど)、金属複酸化物[ムライト、チタン酸金属塩(チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ニオブ、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウムなど)、ジルコン酸金属塩(ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛など)など]など}、ガラス類(ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなど)、ケイ素類(半導体ケイ素など)などが挙げられる。無機材料は、これらの無機材料と金属との複合材料(例えば、ほうろうなど)であってもよい。
【0089】
前記絶縁性基板は、例えば、セラミックス基板、ガラス基板、シリコン基板、ほうろう基板などの耐熱性基板であってもよいが、これらの耐熱性基板のうち、アルミナ基板、サファイア基板、窒化アルミニウム基板、窒化ケイ素基板、炭化ケイ素基板などのセラミックス基板が好ましく、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、窒化ケイ素基板がさらに好ましく、外観が良好で、かつ耐久信頼性にも優れる点では、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、窒化ケイ素基板がさらに好ましく、接合性に優れる点では、窒化ケイ素基板が特に好ましい。
【0090】
なお、絶縁性基板(セラミックス基板)表面は、酸化処理[表面酸化処理、例えば、放電処理(コロナ放電処理、グロー放電処理、高温酸化処理など)、酸処理(クロム酸処理など)、紫外線照射処理、焔処理など]、表面凹凸処理(溶剤処理、サンドブラスト処理など)などの表面処理が施されていてもよい。
【0091】
絶縁性基板(セラミックス基板)の平均厚みは、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば0.01~10mm(例えば0.05~5mm)、好ましくは0.1~1mm、さらに好ましくは0.2~0.8mmである。
【0092】
また、絶縁性基板(セラミックス基板)の25℃における熱伝導率は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば1~500W/(m・K)(例えば10~400W/(m・K))、好ましくは15~300W/(m・K)、さらに好ましくは20~200W/(m・K)である。
【0093】
なお、本願において、熱伝導率は、慣用の方法、例えば、JIS R 1611などに準じて測定できる。
【0094】
(銅貼り基板の特性)
本発明の銅貼り基板は、前述のように、厚い銅板であっても有効に接合できるとともに、セラミックス基板上へのはみ出しや銅板上への這い上がりが抑制されており、外観が良好である。具体的には、銅貼り基板において、銅板の縁部(側面)からの距離が0.5mm以上のはみ出しおよび/または這い上がりがなく、好ましくははみ出しおよび/または這い上がりが全く見られない。このように銅貼り基板は外観が良好なため、悪影響を及ぼすことなく、めっき処理やはんだ付けなどの後処理(後工程)に供することができる。
【0095】
また、本発明の銅貼り基板は、高い接合性のみならず、耐久信頼性(耐熱衝撃性)にも優れているため、急熱/急冷による熱衝撃を繰り返し与えても、基板のはく離や割れなどの不具合を有効に抑制できる。例えば、低温域(例えば-55℃~-35℃、好ましくは-50℃~-40℃程度)と、高温域(例えば140~160℃、好ましくは145~155℃程度)とをそれぞれ約30分間保持して急熱/急冷する操作を1サイクルとして、この操作を繰り返し行ったとき、例えば1000サイクル以上(例えば1000~10000サイクル)、好ましくは2000サイクル以上(例えば2000~8000サイクル)、さらに好ましくは3000サイクル以上(例えば3000~5000サイクル)繰り返しても、基板のはく離や割れなどの不具合を有効に抑制できる。
【0096】
[銅貼り基板(銅貼り回路基板)の製造方法]
本発明の銅貼り基板の製造方法は、銅板と絶縁性基板(セラミックス基板)とを、前記接合剤(接合用組成物または金属ペースト)で形成された金属ペースト層(接合用組成物層または接合層前駆体層)を介して積層した積層体(銅貼り基板前駆体または予備成形体)を形成する積層工程と;この積層工程で得られた前記積層体を加熱して、前記金属ペースト層が焼成された接合層を形成する接合工程とを含んでいる。
【0097】
(積層工程)
積層工程において、銅板および絶縁性基板(セラミックス基板)の間に介在する金属ペースト層(接合用組成物層または接合層前駆体層)を形成する方法は特に制限されないが、銅板および/または絶縁性基板(セラミックス基板)に対して、前記接合剤(接合用組成物または金属ペースト)を塗布して形成するのが好ましい。塗布方法は特に制限されないが、スクリーン印刷法が好ましい。
【0098】
なお、金属ペースト層(接合用組成物層または接合層前駆体層)は、銅板と絶縁性基板(セラミックス基板)との接合面の少なくとも一部の領域に形成されていればよく、接合面全面に形成されているのが好ましい。
【0099】
積層工程では、銅板と絶縁性基板(セラミックス基板)とを積層する前に、金属ペースト層(接合用組成物層または接合層前駆体層)に対して乾燥処理を施してもよい。乾燥処理は、自然乾燥であってもよいが、加熱して乾燥するのが好ましい。加熱温度は、前記有機ビヒクル(または有機溶媒)の種類に応じて選択してもよく、例えば50~200℃、好ましくは80~180℃、さらに好ましくは100~150℃である。加熱時間は、例えば1分~3時間、好ましくは5分~2時間、さらに好ましくは10分~1時間である。
【0100】
乾燥後の金属ペースト層(または乾燥膜)の平均厚みは、5~50μmが好ましく、10~30μmがさらに好ましい。平均厚みが薄すぎると接合性が低下するおそれがあり、厚すぎると耐久信頼性が低下するおそれがある。
【0101】
積層工程では、絶縁性基板(セラミックス基板)の少なくとも一方の面に対して、金属ペースト層を介して銅板を積層(接合)すればよいが、片面のみに積層(接合)した場合、焼成後に熱応力の違いによって銅板の反りおよび/または絶縁性基板(セラミックス基板)の割れが生じ易くなるため、絶縁性基板(セラミックス基板)の両面に対して、金属ペースト層を介して銅板を積層するのが好ましい。そのため、前述のように、絶縁性基板(セラミックス基板)の一方の面に銅回路板、他方の面に銅放熱板を積層(接合)してもよい。
【0102】
(接合工程)
接合工程では、積層工程で得られた前記積層体(銅貼り基板前駆体または予備成形体)を加熱(焼成または焼結)して、前記金属ペースト層が焼成(または焼結)された接合層を形成する。接合(焼成)工程は、バッチ炉またはベルト搬送式のトンネル炉を用いて行なってもよい。
【0103】
接合工程における加熱温度(接合温度、焼成(または焼結)温度)は、前記接合用組成物(金属ペースト)中の非活性金属成分(1)の組成比(または前記組成比で非活性金属成分(1)が合金化したときの合金の融点(溶融温度))によって異なり、前記合金の融点よりも低い温度では溶融しないため、高い接合性で接合できない。そのため、接合温度は、前記合金の融点よりも高い温度に設定される。代表的な接合温度(設定温度またはピーク温度)としては、前記合金の融点に対して、例えば30~150℃高い温度(例えば35~120℃高い温度)、好ましくは40~110℃高い温度(例えば45~105℃高い温度)であり、50~100℃程度高い温度(例えば60~90℃高い温度)に設定するのがさらに好ましい。前記合金の融点(溶融温度)は、前記(非活性金属成分(1)の組成比)の項で記載したAg、CuおよびSnの組成比で合金を形成したときの融点と好ましい態様を含めて同様であってもよい。より具体的な接合温度(設定温度)としては、例えば430~710℃、好ましくは450~700℃(例えば500~700℃、好ましくは550~700℃)、さらに好ましくは600~700℃(例えば650~700℃)である。接合温度が高すぎると、冷却時に生じる大きな熱応力(負荷)によって銅板の反りやセラミックス基板の割れが生じ易く、特に、大きな負荷が生じる厚い銅板を有効に接合できないおそれがあるとともに、接合層(ろう材層または非活性金属成分(1)で形成される合金)の流動性が高くなり過ぎて、セラミックス基板上へのはみ出しや銅板上への這い上がりが生じ、外観および/または接合不良を引き起こすおそれがある。一方、接合温度が低すぎると、接合用組成物中の活性金属成分(2)がセラミックス基板と十分に反応できず、接合性が低下したり、耐久信頼性(耐熱衝撃性)が低下するおそれがある。
【0104】
接合工程は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中のいずれの雰囲気(焼成雰囲気)で行ってもよい。生産性(または低コスト化)の観点からは、不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。特に、本発明では、窒素ガス雰囲気中であっても、銅板と絶縁性基板(セラミックス基板)とを有効に接合できるため、窒素ガス雰囲気中が特に好ましい。
【0105】
接合工程では、銅板の反りを防ぐために、接合面に対して荷重を付加しつつ焼成してもよい。荷重のかけ方は特に限定されず、銅貼り基板(または銅板)の上面に重りを載せて、荷重をかけてもよい。また、接合面に対する荷重(または圧力)は、例えば0.1~10gf/mm、好ましくは0.5~5gf/mmである。なお、荷重を付加する場合、銅板と重りとの間に、重りの接触面よりも大きなサイズのセラミック基板(銅貼り基板を形成するための絶縁性基板とは異なるセラミックス基板)を挟んだ状態で焼成するのが好ましい。
【実施例
【0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、使用した材料、調製方法、評価方法などの詳細について示す。
【0107】
[使用した材料]
(非活性金属成分)
Ag(銀)粒子:中心粒径0.5μmの銀粒子、融点962℃
Cu(銅)粒子:中心粒径2.0μmの銅粒子、融点1085℃
AgCu(銀銅)合金粒子:中心粒径5.0μm、72Ag-28Cu合金粒子、融点780℃
Sn(錫)粒子:中心粒径5.0μmの錫粒子、融点232℃
(活性金属成分)
水素化チタン:中心粒径6.0μmの水素化チタン粒子
水素化ジルコニウム:中心粒径5.0μmの水素化ジルコニウム粒子
(有機ビヒクル)
有機バインダーであるアクリル樹脂(ポリアクリル酸ブチル)と、有機溶剤であるテレピネオールとを、有機バインダー:有機溶剤=4:9の質量比で混合した混合物
(銅板(または銅合金板))
銅板(0.5mm):30mm×30mm×0.5mm、C1020材(無酸素銅)
銅板(1mm):30mm×30mm×1.0mm、C1020材(無酸素銅)
銅板(2mm):30mm×30mm×2.0mm、C1020材(無酸素銅)
銅板(3mm):30mm×30mm×3.0mm、C1020材(無酸素銅)
Cu-W合金板(2mm):30mm×30mm×2.0mm、銅-タングステン合金板、組成80W-20Cu
Cu-W合金板(3mm):30mm×30mm×3.0mm、銅-タングステン合金板、組成80W-20Cu
(セラミックス基板)
窒化ケイ素(Si)基板:50.8mm×50.8mm×0.3mm、熱伝導率90W/(m・K)
アルミナ(Al)基板:76.2mm×76.2mm×0.635mm、純度96%、熱伝導率24W/(m・K)
窒化アルミニウム(AlN)基板:76.2mm×76.2mm×0.635mm、熱伝導率170W/(m・K)。
【0108】
[接合用組成物(金属ペースト)の調製]
表1~5または12に示す組成で各原料を秤量し、ミキサーにより混合した後、三本ロールで均一に混練することによって、接合用組成物(金属ペースト)を調製した。
【0109】
[銅貼り基板の作製]
図2(a)~(e)に示すように、銅貼り基板を作製した。すなわち、(a)セラミックス基板2の両面に、(b)表1~5または12に示す接合用組成物(金属ペースト)を用いて、30mm×30mmの正方形パターンをスクリーン印刷で塗布して、印刷膜(金属ペースト層)3a,3bを形成した。印刷膜3a,3bの乾燥前の平均膜厚はそれぞれ20μm程度であり、120℃の送風乾燥機で印刷膜3a,3bを10分間乾燥させた後の平均膜厚はそれぞれ17μm程度であった。(c)乾燥後、30mm×30mmの正方形の2枚の銅板4a,4bを、それぞれセラミックス基板2の両面(上面と下面)の印刷膜(金属ペースト層)3a,3bに合わせて積層して、銅貼り基板の前駆体(積層体)1を形成した。(d)そして、銅貼り基板の前駆体(積層体)1の両面を耐熱板(セラミックス板)5a,5bで挟み上側から1kgの重り6により荷重をかけた状態で、ベルト式連続焼成炉内に配置し、窒素雰囲気中、所定のピーク温度(焼成温度または接合温度)で、15分間(ピーク保持時間)焼成を行い、(e)銅貼り基板10(セラミックス基板2の両面に接合層13a,13bを介して銅板4a,4bが積層された基板)を作製した。なお、焼成後の接合層13a,13bの平均膜厚はそれぞれ12μm程度であった。
【0110】
[接合性評価]
各接合用組成物(金属ペースト)に対して、厚銅化に対する接合性を検証し、優劣判定(ランク付け)を行った。具体的には、銅板の厚みを0.5mm、1mm、3mmの順に増加(厚銅化)して、どの厚みまで接合できるか検証し、厚み1mmの銅板を接合できたが、厚み3mmの銅板を接合できなかった場合は、厚み2mmの銅板に対する接合性も検証した。なお、銅板としては、実施例37以外の例では無酸素銅を用いた。また、各接合用組成物におけるろう材成分または非活性金属成分(Ag(銀)、Cu(銅)、Sn(錫))の組成と、その合金化の状態によって融点が異なるため、焼成の設定温度(ピーク温度、焼成温度または接合温度)を少なくとも450℃、600℃、700℃の3水準で行い(さらに、組成に応じて500℃、550℃または650℃でも行い)、接合できる温度を検証した。
【0111】
接合性については、上記検証で接合(作製)した銅貼り基板において、セラミックス基板の割れや、銅板の反りが発生しておらず、さらに、銅板とセラミックス基板との間の接合層に剃刀を入れても、銅板がセラミックス基板から容易に剥離しなかった場合は「接合できた(合格)」と判断して「○」で示した。その一方で、セラミックス基板の割れや銅板の反りが発生したり、接合層に剃刀を入れて容易に剥離した場合は「接合できなかった(不合格)」と判断して「×」で示した。また、接合(合格)できた各接合用組成物(金属ペースト)の中で、最も厚い3mmの銅板を接合できた接合用組成物をaランク、2mmの銅板を接合できた接合用組成物をbランク、1mmの銅板を接合できた接合用組成物をcランク、0.5mmの銅板を接合できた接合用組成物をdランクとしてランク付けした。
【0112】
(判定基準)
aランク:厚み3mmの銅板を接合できる(合格)
bランク:厚み2mmの銅板を接合できる(合格)
cランク:厚み1mmの銅板を接合できる(合格)
dランク:厚み0.5mmの銅板を接合できる(合格)
eランク:いずれの接合温度でも、厚み0.5mmの銅板を接合できない、または基板に割れが生じる、もしくは銅板に反りが発生する(不合格)。
【0113】
[外観評価]
接合性評価で作製した銅貼り基板のうち、合格(a、b、cまたはdランク)となった銅貼り基板に対して外観評価を行った。外観評価は、各接合用組成物およびその焼成温度において、接合できた最も厚い銅板を使用した銅貼り基板に対して行った。外観評価では、接合層の銅板への這い上がりや、セラミックス基板へのはみ出しがないかをルーペ(15倍)で観察した。結果を以下の基準で判定し、bランク以上を合格とした。
【0114】
(判定基準)
aランク:這い上がりやはみ出しが全く見られない(合格)
bランク:銅板の縁部(側面)からの距離が0.5mm未満の這い上がりやはみ出しが見られる(合格)
cランク:銅板の縁部(側面)からの距離が0.5mm以上の這い上がりやはみ出しが見られる(不合格)。
【0115】
[耐久信頼性評価(熱衝撃試験)]
接合性評価で作製した銅貼り基板のうち、接合性評価および外観評価で合格となった銅貼り基板に対して、熱衝撃試験を行った。低温域(-45℃)と高温域(150℃)とでそれぞれ30分間保持して加熱冷却する操作を1サイクルとして繰り返し、銅板の剥離や、セラミックス基板の割れなどの不具合を確認した。1000サイクル後に初期確認を行い、不具合がなければ2000サイクルまで継続した。2000サイクル後にも不具合がない場合は、さらに3000サイクルを上限に継続した。結果を以下の基準で判定し、cランク以上を合格とした。
【0116】
(判定基準)
aランク:3000サイクル後に不具合(銅板の剥離、セラミックス基板の割れ)がない(合格)
bランク:2000サイクル後に不具合がない(合格)
cランク:1000サイクル後に不具合がない(合格)
dランク:1000サイクル後に不具合が確認された(不合格)。
【0117】
[総合的な判定]
接合性評価、外観評価、および耐久信頼性評価の総合的な判定として、以下の基準で、厚銅化に対する接合性の観点で、優劣判定(ランク付け)を行った。最も厚い3mmの銅板を接合できた接合用組成物を最も優れたAランクとし、Dランク以上を合格とした。
【0118】
(判定基準)
Aランク:接合性評価がaランクで、外観評価および耐久信頼性評価がいずれも合格レベル(外観評価がaまたはbランク、耐久信頼性評価がa、bまたはcランク)
Bランク:接合性評価がbランクで、外観評価および耐久信頼性評価がいずれも合格レベル
Cランク:接合性評価がcランクで、外観評価および耐久信頼性評価がいずれも合格レベル
Dランク:接合性評価がdランクで、外観評価および耐久信頼性評価がいずれも合格レベル
Eランク:接合性評価、外観評価および耐久信頼性評価のうち、いずれか1つでも不合格レベル(外観評価がcランク、または耐久信頼性評価がdランク)がある。
【0119】
[実施例1](Ag、Snの2成分)
セラミックス基板として窒化ケイ素基板、および接合用組成物として(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物1)を用いて、銅貼り基板を作製し、各種評価を行った。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板(無酸素銅)も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Aランクとなった。
【0120】
[実施例2](Ag、Snの2成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(70,0,30)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Aランクとなった。
【0121】
[実施例3](Ag、Snの2成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(60,0,40)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が600℃の場合に、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Aランクとなった。
【0122】
[実施例4(4a,4b)](Ag、Snの2成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(29,0,71)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0123】
焼成温度が450℃の場合(実施例4a)、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0124】
一方、焼成温度が500℃の場合(実施例4b)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Aランクとなった。
【0125】
[実施例5(5a,5b)](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(35,13,52)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0126】
焼成温度が450℃の場合(実施例5a)、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0127】
一方、焼成温度が500℃の場合(実施例5b)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Aランクとなった。
【0128】
[実施例6](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(67,12,21)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Aランクとなった。
【0129】
[実施例7(7a,7b,7c)](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(65,2,33)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物7)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0130】
焼成温度が600℃の場合(実施例7a)および700℃の場合(実施例7c)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(aまたはbランク)が得られ、Aランクとなった。
【0131】
なお、実施例7a,7cを比較すると、焼成温度が低い実施例7aの方が、外観評価が優れていたのに対して、耐久信頼性評価は、焼成温度が高い実施例7cの方が優れていた。
【0132】
一方、焼成温度を650℃にすると(実施例7b)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(全てaランク)が得られ、Aランクとなった。
【0133】
[実施例8(8a,8b,8c)](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(62,11,27)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0134】
焼成温度が600℃の場合(実施例8a)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(aまたはcランク)が得られ、Aランクとなった。
【0135】
焼成温度が700℃の場合(実施例8c)、実施例8aと同様に、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(aまたはbランク)が得られ、Aランクとなった。
【0136】
なお、実施例8a,8cを比較すると、焼成温度が低い実施例8aの方が、外観評価が優れていたのに対して、耐久信頼性評価は、焼成温度が高い実施例8cの方が優れていた。
【0137】
一方、焼成温度を650℃にすると(実施例8b)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(全てaランク)が得られ、Aランクとなった。
【0138】
[実施例9(9a,9b)](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(44,12,44)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0139】
焼成温度を550℃にすると(実施例9a)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(全てaランク)が得られ、Aランクとなった。
【0140】
一方、焼成温度が600℃の場合(実施例9b)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(aまたはbランク)が得られ、Aランクとなった。
【0141】
[実施例10(10a,10b)](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(32,6,62)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0142】
焼成温度が450℃の場合(実施例10a)、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0143】
一方、焼成温度を500℃にすると(実施例10b)、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(全てaランク)が得られ、Aランクとなった。
【0144】
[実施例11](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(43,2,55)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物11)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が600℃の場合に、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(全てaランク)が得られ、Aランクとなった。
【0145】
[実施例12](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(51,13,36)の組成(領域A)の金属ペースト(組成物12)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が600℃の場合に、0.5mm、1mm、3mmのいずれの銅板も接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果(全てaランク)が得られ、Aランクとなった。
【0146】
[実施例13(13a,13b)](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(56,19,25)の組成(領域B)の金属ペースト(組成物13)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0147】
焼成温度が600℃の場合(実施例13a)、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0148】
焼成温度が700℃の場合(実施例13b)、実施例13aと異なり、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0149】
なお、実施例13a,13bを比較すると、焼成温度が低い実施例13aの方が、接合性および外観評価が優れていた。耐久信頼性評価は双方とも優れていた。
【0150】
[実施例14(14a,14b)](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(48,32,20)の組成(領域B)の金属ペースト(組成物14)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0151】
焼成温度が600℃の場合(実施例14a)、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0152】
焼成温度が700℃の場合(実施例14b)、実施例14aと異なり、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0153】
なお、実施例14a,14bを比較すると、焼成温度が低い実施例14aの方が、外観評価が優れていたのに対して、接合性および耐久信頼性評価は、焼成温度が高い実施例14bの方が優れていた。
【0154】
[実施例15](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(58,25,17)の組成(領域B)の金属ペースト(組成物15)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0155】
[実施例16](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(47,40,13)の組成(領域B)の金属ペースト(組成物16)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0156】
[実施例17](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(43,46,11)の組成(領域C)の金属ペースト(組成物17)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0157】
[実施例18](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(23,62,15)の組成(領域C)の金属ペースト(組成物18)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0158】
[実施例19](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(15,65,20)の組成(領域C)の金属ペースト(組成物19)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0159】
[実施例20](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(23,53,24)の組成(領域C)の金属ペースト(組成物20)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0160】
[実施例21](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(33,54,13)の組成(領域C)の金属ペースト(組成物21)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0161】
[実施例22](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(22,46,32)の組成(領域C)の金属ペースト(組成物22)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0162】
[実施例23](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(30,25,45)の組成(領域C)の金属ペースト(組成物23)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が600℃の場合に、0.5mm、1mmの銅板を接合できたが、2mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Cランクとなった。
【0163】
[実施例24](Cu、Snの2成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(0,59,41)の組成(領域D)の金属ペースト(組成物24)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mmの銅板を接合できたが、1mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Dランクとなった。
【0164】
[実施例25(25a,25b)](Cu、Snの2成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(0,40,60)の組成(領域D)の金属ペースト(組成物25)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
【0165】
焼成温度が600℃の場合(実施例25a)、0.5mmの銅板を接合できたが、1mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Dランクとなった。
【0166】
焼成温度が700℃の場合(実施例25b)、実施例25aと同様に、0.5mmの銅板を接合できたが、1mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Dランクとなった。
【0167】
なお、実施例25a,25bを比較すると、焼成温度が低い実施例25aの方が、外観評価が優れていたのに対して、耐久信頼性評価は、焼成温度が高い実施例25bの方が優れていた。
【0168】
[実施例26](Cu、Snの2成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(0,20,80)の組成(領域D)の金属ペースト(組成物26)を用いた。焼成温度が600℃の場合に、0.5mmの銅板を接合できたが、1mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Dランクとなった。
【0169】
[実施例27](Cu、Snの2成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(0,13,87)の組成(領域D)の金属ペースト(組成物27)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃の場合に、0.5mmの銅板を接合できたが、1mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Dランクとなった。
【0170】
[実施例28](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(9,48,43)の組成(領域D)の金属ペースト(組成物28)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が700℃の場合に、0.5mmの銅板を接合できたが、1mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Dランクとなった。
【0171】
[実施例29](Ag、Cu、Snの3成分)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(15,22,63)の組成(領域D)の金属ペースト(組成物29)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が600℃の場合に、0.5mmの銅板を接合できたが、1mm、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Dランクとなった。
【0172】
[参考例1](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(80,0,20)の組成の金属ペースト(組成物30)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0173】
[参考例2](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(65,25,10)の組成の金属ペースト(組成物31)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0174】
[参考例3](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(55,40,5)の組成の金属ペースト(組成物32)を用いた。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0175】
[参考例4](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(19,67,14)の組成の金属ペースト(組成物33)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0176】
[参考例5](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(0,65,35)の組成の金属ペースト(組成物34)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。
焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0177】
[参考例6](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(0,10,90)の組成の金属ペースト(組成物35)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0178】
[参考例7](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(20,0,80)の組成の金属ペースト(組成物36)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0179】
[参考例8](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(30,10,60)の組成の金属ペースト(組成物37)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0180】
[参考例9](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(73,9,18)の組成の金属ペースト(組成物38)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0181】
[参考例10](領域A~Dに含まれない組成)
金属ペースト(組成物1)に代えて、(Ag,Cu,Sn)=(34,56,10)の組成の金属ペースト(組成物39)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして検証した。焼成温度が450℃、600℃、700℃のいずれの場合にも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0182】
結果を表1~10および図3に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
【0185】
【表3】
【0186】
【表4】
【0187】
【表5】
【0188】
【表6】
【0189】
【表7】
【0190】
【表8】
【0191】
【表9】
【0192】
【表10】
【0193】
表1~10および図3から明らかなように、Ag、CuおよびSnの組成比を三角座標上の特定の領域に調整した金属ペースト組成物を用いた実施例では、平均厚み0.5mm以上の厚い銅板であっても、700℃以下の低温でセラミックス基板に対して有効に接合できた。また、実施例では、高い接合性のみならず、耐久信頼性(耐熱衝撃性)および外観評価も良好であり、これらの特性をバランスよく充足していた。
【0194】
なお、図3の三角座標上には、焼成温度(接合温度)700℃で接合できた組成物(金属ペースト)を「●」(丸)、600℃で接合できた組成物を「■」(四角)、500℃で接合できた組成物を「◆」(菱)、450℃で接合できた組成物を「▲」(三角)、いずれの温度でも接合できなかった組成物を「×」(バツ)でそれぞれ表示した(なお、複数の温度で接合できた組成物では、高い方の温度に合わせて表示した)。
【0195】
また、図3では、実施例を「実」、参考例を「参」とし、その直後に対応する番号をそれぞれ表記した(例えば、実施例1を「実1」、参考例1を「参1」と表記した)。
【0196】
焼成温度700℃で接合できた組成物(合金化時の融点が600~650℃程度となる組成)が、(Ag,Cu,Sn)=(74,0,26):実施例1、(67,12,21):実施例6、(58,25,17):実施例15、(47,40,13):実施例16、(43,46,11):実施例17、(33,54,13):実施例21、(23,62,15):実施例18、(15,65,20):実施例19、および(0,59,41):実施例24をこの順に結ぶ線分で構成される境界線X付近に点在することから、600~650℃程度での固液境界が境界線X付近に存在すると推察できる。また、焼成温度450~500℃で接合できた組成物(合金化時の融点が400~450℃程度となる組成)が、(Ag,Cu,Sn)=(0,13,87):実施例27、(35,13,52):実施例5、(32,6,62):実施例10および(29,0,71):実施例4をこの順に結ぶ線分で構成される境界線Y付近に点在することから、400~450℃程度での固液境界が境界線Y付近に存在すると推察できる。そのため、境界線Xと境界線Yとの間(合金の融点が400~650℃程度の組成)の領域が焼成温度700℃以下の低温で厚い銅板を接合可能な領域になると推察できる。
【0197】
実際に、厚み0.5mm以上の銅板を接合できた組成物は全て、境界線Xと境界線Yとの間の領域(領域A~D)内の組成物であり、領域を外れた参考例の組成物では、厚み0.5mm以上の銅板を低温で接合できなかった。
【0198】
また、境界線Xと境界線Yとの間の領域(領域A~D)のなかでも、領域Aの組成物で作製した銅貼り基板(実施例1~12)の総合評価はランクAであり、領域Bの組成物で作製した銅貼り基板(実施例13~16)の総合評価はランクBであり、領域Cの組成物で作製した銅貼り基板(実施例17~23)の総合評価はランクCであり、領域Dの組成物で作製した銅貼り基板(実施例24~29)の総合評価はランクDであった。そのため、領域D側からA側の方向へ(領域D,C,B,Aの順に)近づくほど(好ましくは領域A~D中を左側(特に左下側)へ向かうほど)、外観および耐久信頼性を両立しつつ高い接合性を確保でき、特に領域Aの組成が最も厚銅化に対応できることがわかった。
【0199】
なお、特許文献1~7の実施例で使用された具体的なろう材成分において、Ag、CuおよびSnの総量(100atm%)に対する各原子比(Ag,Cu,Sn)[単位:atm%]を算出すると、下記表11のような範囲にある。
【0200】
【表11】
【0201】
表11から明らかなように、特許文献1~7における組成比では、いずれもSnの割合が少なく、図3の三角座標上では境界線X(特に領域A~C)よりも左側に大きく離れた位置(領域外)にある。なお、これらの中では本願領域(領域B,C)に比較的近いと思われる特許文献7の組成比は(Ag,Cu,Sn)=(55.5,40.6,3.9)程度であるが、この特許文献7の組成比に近接する本願参考例3(Ag,Cu,Sn)=(55,40,5)の総合評価がEランクであることから、従来のろう材成分では、高い接合性で銅板を接合できないことが推察される。
【0202】
[実施例30](Ag、Snの2成分、活性金属成分の種類を変更した例)
活性金属成分を水素化ジルコニウムに変更した金属ペースト(組成物40)を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、焼成温度を600℃として検証した。Aランクとなった実施例3に対して、実施例30では、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0203】
[実施例31(31a,31b)](Ag、Cu、Snの3成分、活性金属成分の種類を変更した例)
活性金属成分を水素化ジルコニウムに変更した金属ペースト(組成物41)を用いたこと以外は、実施例7(7a,7c)と同様の方法で検証した。Aランクとなった実施例7(7a,7c)に対して、焼成温度が600℃(実施例31a)および700℃(実施例31b)のいずれの場合においても、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0204】
[比較例1](活性金属成分を含まない例)
活性金属成分を含まない金属ペースト(組成物42)を用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で、焼成温度を450℃、600℃、700℃として検証したが、いずれの焼成温度でも、0.5mmの銅板でさえ接合できなかったので、Eランクとなった。
【0205】
[実施例32(32a,32b)](Ag、Cu、Snの3成分、活性金属成分の割合を変更した例)
非活性金属成分100質量部に対する活性金属成分の割合を0.5質量部に減量した金属ペースト(組成物43)を用いたこと以外は、実施例7(7a,7c)と同様の方法で検証した。焼成温度が600℃(実施例32a)および700℃(実施例32b)のいずれの場合においても、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0206】
[実施例33(33a,33b)](Ag、Cu、Snの3成分、活性金属成分の割合を変更した例)
活性金属成分の割合を10.0質量部に増量した金属ペースト(組成物44)を用いたこと以外は、実施例7(7a,7c)と同様の方法で検証した。焼成温度600℃(実施例33a)および700℃(実施例33b)のいずれの場合においても、実施例7(7a,7c)と同様に0.5mm、1mm、3mmの銅板を接合でき、接合性評価、外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Aランクとなった。
【0207】
[実施例34(34a,34b)](Ag、Cu、Snの3成分、活性金属成分の割合を変更した例)
活性金属成分の割合を30.0質量部まで増量した金属ペースト(組成物45)を用いたこと以外は、実施例7(7a,7c)と同様の方法で検証した。焼成温度600℃(実施例34a)および700℃(実施例34b)のいずれの場合においても、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0208】
結果を表12~13に示す。
【0209】
【表12】
【0210】
【表13】
【0211】
表12~13の結果から、活性金属成分を含まない比較例1では接合不可であったのに対して、いずれの実施例でも接合性、外観および耐久信頼性が優れていた。また、活性金属成分としては、接合性および耐久信頼性の点から、特に水素化チタンが好ましいと云える。さらに、非活性金属成分100質量部に対する活性金属成分の割合は、0.5~30質量部では良好な結果が得られ、特に3~10質量部程度が好ましいと云える。
【0212】
[実施例35~36](実施例7cに対してセラミックス基板の種類を変更した例)
セラミックス基板として、アルミナ基板(実施例35)または窒化アルミニウム基板(実施例36)を用いたこと以外は、実施例7cと同様にして検証した。結果を表14に示す。
【0213】
【表14】
【0214】
アルミナ基板の場合(実施例35)、実施例7cと同様の焼成温度700℃において、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0215】
窒化アルミニウム基板の場合(実施例36)、実施例7cと同様の焼成温度700℃において、0.5mm、1mm、2mmの銅板を接合できたが、3mmの銅板は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。
【0216】
実施例7c,35,36を比較すると、窒化ケイ素基板を用いた実施例7cの方が、実施例35および36に比べて接合性は優れる一方で、外観評価は実施例35,36の方が優れていた。
【0217】
[実施例37](Ag、Cu、Snの3成分、銅板の種類を変更した例)
銅板の種類を無酸素銅から銅-タングステン合金に変更したこと以外は、実施例7bと同様の方法で、焼成温度を650℃として検証した。3mmの銅板(無酸素銅)を接合できAランクとなった実施例7bに対して、実施例37では2mmの銅板(銅-タングステン合金)を接合できたが、3mmの銅板(銅-タングステン合金)は接合できなかった。外観評価、耐久信頼性評価はいずれも良好な結果が得られ、Bランクとなった。結果を表15に示す。
【0218】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0219】
本発明の接合剤(接合材料または金属ペースト)は、銅板と、セラミックス基板とを接合するための活性金属ろう材として有効に利用できる。特に、厚い銅板を用いても優れた接合性および耐久信頼性を示すとともに、外観も良好なため、得られる銅貼り基板は、発電設備、自動車(電気自動車(EV)、ハイブリッドカー(HEV)、燃料電池自動車など)、鉄道車両(新幹線など)、家電製品(エアコン、冷蔵庫など)、エレベーターなどの様々な用途において、電力の変換および/または制御するためのパワーモジュール用の回路基板として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0220】
1…銅貼り基板の前駆体(積層体)
2…セラミックス基板(絶縁性基板)
3a、3b…金属ペースト層(接合用組成物層または接合層前駆体層)
4a、4b…銅板
10…銅貼り基板
13a、13b…接合層
図1
図2
図3