(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20241118BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20241118BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20241118BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20241118BHJP
【FI】
B09B3/40
B09B3/00 ZAB
C01B32/05
B09B101:75
(21)【出願番号】P 2021148380
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉江 信二
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151501(JP,A)
【文献】特開2004-074148(JP,A)
【文献】特開2008-064072(JP,A)
【文献】特開2011-143396(JP,A)
【文献】特開2014-042908(JP,A)
【文献】特許第6883830(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に、廃棄物と酸担持活性炭とを投入して加熱し、
前記廃棄物の炭化反応が進行している際に、前記炉内に非酸担持活性炭を投入する、廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記非酸担持活性炭は、カルボキシル基(-COOH)、アルデヒド基(-CHO)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH
2)、スルホ基(-SO
3H)、エーテル基(―O―)、カルボニル基(C=O)、エステル基(―COO―)、及び酸無水物基(―CO―O―CO―)からなる群より選択される官能基を有する、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、有機物の分解処理方法が開示されている。この文献では、活性炭に『脱水作用』を持つ濃硫酸を吸着させて触媒として用いている。この触媒を用いれば、産業廃棄物も炭化できると考えられる。
【0003】
ところで、一般的に直接濃硫酸を有機物に滴下しても、滴下部分のみが炭化し、それ以上には炭化される範囲が拡大しない。この理由は、有機物自体が濃硫酸を吸収してしまい新たな有機物が濃硫酸に接触できないためである。特許文献1で提案された触媒は、これを解決課題としている。この触媒は、活性炭の熱に起因した吸着・脱着作用及び濃硫酸の脱水反応時の吸熱作用を利用した触媒である。この触媒は、一気に作用するものではないとされている。たとえ反応炉の設定温度が同一であっても、活性炭触媒自体の温度が上下することで、結果として活性炭から露出する濃硫酸の速度を緩和させることができるとされている。また、有機物と活性炭触媒を攪拌することで、広範囲において有機物と活性炭触媒を接触できることから、効率的に有機物を炭化できるとされている。また、この文献の技術は、比較的低温(例えば80℃-160℃程度)の雰囲気温度を維持可能な加熱炉において処理可能なことから、安全安価な産廃処理技術として提案されている。
【0004】
活性炭に吸着使用される濃度96%以上の濃硫酸は、それ自体が非常に強い強酸にて有機物に対し、水素イオン(H+)を放出し、有機物の酸素イオンと反応して脱水が行われる。その結果、有機物中の炭素含有量が増えるため、炭化が促進される反応となる。但し、最終的には濃硫酸にH+が戻るため、濃硫酸自体は触媒として活用される。
【0005】
なお、濃硫酸は活性炭内に吸着されているため、脱着作用が始まる温度以下(80℃前後)においては、濃硫酸を吸着した活性炭に接触したとしても酸化力による影響はない。よって、濃硫酸を吸着した活性炭は、炭化炉内で加熱した際にのみ機能する安全な触媒である。
【0006】
また、濃硫酸を吸着した活性炭については特許文献2も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-143396号公報
【文献】特開2009-201405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、濃硫酸を吸着した活性炭は、活性炭の吸着・脱着作用を利用して、常温においては安全に使用できる触媒となる。しかし、80℃以上の高温化においては、活性炭表面に露出する濃硫酸の量は、吸熱反応による活性炭自体の表面温度の上昇及び下降によって緩慢になるものの、連続的な濃硫酸の脱離(放出)となってしまう。すなわち、80℃以上の加熱炉内においては、連続的に活性炭の脱離作用が働いてしまう。
濃硫酸を吸着した活性炭では、ファンデルワールス力による物理的吸着力、及び微細孔に働く毛細管現象による吸着力によって、濃硫酸が活性炭に保持されている。上記特許文献1では、攪拌により活性炭が崩壊して、活性炭自体の吸着能力の悪化等が生じて、一旦脱離した濃硫酸が戻る場所が無い状態になってしまう。詳細には、活性炭の崩壊の多くは、構造的に弱い部分、つまりマクロ孔を起点としていると考えられる。もともと濃硫酸の多くは、マクロ孔中に吸着している。崩壊後は、そのマクロ孔が少なくなるため、メソ孔・ミクロ孔で吸着する必要がある。その結果、低分子質で吸着しやすい濃硫酸であるが、非常に濃度が高いことから、メソ孔・ミクロ孔内への吸着では、深部までスムーズに侵入難く、途中で付着し、最も侵入しやすいマクロ孔にスペースが無い分だけ、吸着が難しくなるものと考えられる。よって活性炭自体の保持力が落ちて濃硫酸の離脱が発生してしまう。
【0009】
このように脱離した濃硫酸は、炭化炉内を汚染するおそれがある。炭化炉が鉄成分を含む場合には、通常、濃硫酸により不働態被膜が形成されるため、腐食はそれ以上進行しない。しかし、脱水反応の際に発生する水(H2O)は直ちに鉄と反応(酸化)してしまうため、炭化炉を腐食することになる。SUS材等は、硫酸と反応してしまい腐食されてしまう。極力、濃硫酸の露出を抑制できれば、炭化炉材質はSUS材でも構わない。しかし、炭化炉材質に鉄材を採用し、H2Oの制御を試みた方が耐久年数を確保するために適していると考えられる。いずれの炉材にしても完全な腐食対策は不可能なため、活性炭から露出する濃硫酸の制御が必要となる。
【0010】
また、脱離した濃硫酸は、生成物へ過剰に付着する課題がある。過剰に付着した場合、脱水反応のみで終わらずに、更に二次反応を起こす可能性がある。例えば、有機物中に含まれるCa(カルシウム)、アンモニウム(NH4
+)等、及び活性炭に含まれるNa(ナトリウム)、アンモニウム(NH4
+)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)等と、濃硫酸とが反応してしまい中和塩が形成され、中和塩が析出して、脱水反応生成物及び炭化炉を汚染するおそれがある。
【0011】
また、濃硫酸の脱水作用における反応によって、活性炭への加熱エネルギーがばらつくことから、以下の影響が懸念される。すなわち、設定された加熱温度と溶融温度が近い物質が炭化炉内に存在した場合に、温度のばらつきに起因して有機物(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂)が溶解してしまい、溶解物が活性炭表面を覆って空孔を塞いでしまう。その結果、触媒の活性が低下するおそれがある。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、濃硫酸を吸着した活性炭から脱離した濃硫酸を捕捉することで、脱離した濃硫酸による不利益を抑制することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
炉内に、廃棄物と酸担持活性炭とを投入して加熱し、
前記廃棄物の炭化反応が進行している際に、前記炉内に非酸担持活性炭を投入する、廃棄物処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示の廃棄物処理方法は、廃棄物の炭化反応が進行している際に、炉内に非酸担持活性炭を投入するから、非酸担持活性炭により脱離した濃硫酸を捕捉できる。よって、脱離した濃硫酸による不利益が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、炭化炉の一例の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記非酸担持活性炭は、カルボキシル基(-COOH)、アルデヒド基(-CHO)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH2)、スルホ基(-SO3H)、エーテル基(―O―)、カルボニル基(C=O)、エステル基(―COO―)、及び酸無水物基(―CO―O―CO―)からなる群より選択される官能基を有する、廃棄物処理方法。
【0016】
以下、本開示を詳しく説明する。本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0017】
1.廃棄物処理方法
本開示の廃棄物処理方法は、炉内に、廃棄物と酸担持活性炭とを投入して加熱する。廃棄物の炭化反応が進行している際に、炉内に非酸担持活性炭を投入する。
【0018】
(1)炉
炉(炭化炉)は、廃棄物と酸担持活性炭とを投入して加熱する装置である。炉(炭化炉)の材質は、特に限定されない。例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックス材料、ソーダガラス、溶融石英等のガラス材料を使用することができる。
炉の内部には、内容物を攪拌するための、回転羽根を備えていてもよい。また、炉の底部は、網とされていて、この網を反応生成物たる炭化物が落下する構造となっていてもよい。落下した炭化物は例えばエアーを用いて回収してもよい。
【0019】
(2)廃棄物
廃棄物は、硫酸により炭化される有機物を含んでいれば、特に限定されない。有機物としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、フッ素樹脂系樹脂等の熱可塑性樹脂、又はポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0020】
(3)酸担持活性炭
酸担持活性炭は、酸を担持した活性炭であれば、酸の種類、大きさ、形状は特に限定されない。
酸担持活性炭としては、スルホン化活性炭が好ましく用いられる。スルホン化活性炭は、活性炭を濃硫酸又は発煙硫酸中で加熱することにより得られる。濃硫酸の濃度は、活性炭を十分にスルホン化できるように90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。また、発煙硫酸における三酸化硫黄の濃度は特に制限されないが、例えば、三酸化硫黄含有率が30%、60%の市販品を用いることができる。
活性炭の原料は特に限定されない。活性炭の原料は、例えば、稲藁、大鋸屑、椰子殻、サトウキビバガス、伐採材等の植物残渣、オイルカーボン、石油ピッチ等の石油系原料、石炭、石炭ピッチ等の石炭系原料、フェノール樹脂等の樹脂等を用いることができる。
スルホン化活性炭は、有機物を炭化して炭化物にする反応を触媒できる。活性炭のスルホン化度は、特に限定されない。活性炭のスルホン化度は、十分な触媒活性を確保する観点から、0.1mmol/g以上5mmol/g以下が好ましい。
【0021】
なお、基本的に濃硫酸自体は脱水作用においては触媒に相当するため、補充は本来不要のはずである。しかし、濃硫酸の一部は中和反応してしまい「硫酸塩」になる場合もある。この硫酸塩は、それ以上脱水作用には寄与しない。そのため、逐次、濃硫酸を補充する必要もあるが、濃硫酸の大半は硫酸塩にならず、脱水作用によるH+イオンと結合し、再び濃硫酸となる。それらは、脱水生成物である「炭」に吸着又は付着し、脱水生成物たる炭とともに炉外に排出される場合があり、結果として濃硫酸は徐々に減少してしまう可能性がある。本開示の廃棄物処理方法では、このように減少してしまう濃硫酸は、吸引力を有する非酸担持活性炭により吸着されるため、濃硫酸が炉内に保持して、継続的に脱水反応を行うことが可能となる。
活性炭表面が疎水性構造のため、水分を吸着することはない。従って、脱水作用によって生じた水分は活性炭に吸着されず存在し、炉内加熱(例えば80℃-160℃)により水蒸気として炉外に放出される。そのため、脱水作用によって生じた水分により濃硫酸が希釈されにくいから、酸化力が低下する可能性は低い。
【0022】
(4)廃棄物処理における加熱温度
加熱温度は、特に限定されない。加熱温度は、廃棄物の種類に応じて適宜変更できる。加熱温度は、有機物を十分に炭化させる観点から80℃以上が好ましい。脱水反応後に発生したH2O(水)が炉内に残ってしまうと、炉内温度を下げたり、炉自体の酸化反応を誘発し、錆等による腐食を進行させてしまうため、この水を飛ばす観点から、100℃以上がより好ましい。他方、炉内で反応させる産廃物として、熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン、ポリエチレン等)が含まれる場合もあり、これらの溶融温度が例えば160℃であるため、それを下回る温度で加熱して、活性炭の孔が溶融樹脂で塞がれることを抑制する要望がある。この観点から、加熱温度は、160℃以下が好ましい。以上の観点から加熱温度は、80℃以上160℃以下が好ましく、100℃以上160℃以下がより好ましい。なお、脱水反応処理された生成物たる炭化物は完全なカーボン(炭素含有率90%以上のもの)ではなく、生成物の発火を抑制する観点から、加熱温度は250℃以下に調整される。
加熱手段は、特に限定されない。加熱手段として、赤外線ヒーター、シーズヒーター、セラミックヒーター、カーボンヒーター等の各種ヒーターの他、過熱水蒸気も採用される。過熱水蒸気は、例えば、ボイラー等で加熱した水蒸気を更にヒーター、電磁誘導等で加熱し、100℃以上600℃程度まで昇温して得られる。過熱水蒸気には噴射力が有り、産廃物等が飛散するため、過熱水蒸気を産廃物に直接噴射せずに、過熱水蒸気の熱を間接的に利用する間接加熱も採用される。また、噴射水蒸気は水分を含んでいるため、直接噴射すれば濃硫酸の脱水反応を促進するには適していると考えられる。
【0023】
(5)廃棄物処理における処理時間
処理時間は、特に限定されない。
【0024】
(6)非酸担持活性炭の投入
廃棄物の炭化反応が進行している際に、非酸担持活性炭を炉内に投入すると、次のようにして脱水反応が継続できると推測される。すなわち、投入された新しい非酸担持活性炭が、酸担持活性炭から過剰に露出気味の濃硫酸をファンデルワールス力及び/又は毛細管機能によって捕捉するため、酸担持活性炭を追加しなくとも脱水反応が継続できると推測される。よって、高価な酸担持活性炭を追加投入しなくてもよく、コストを低減できる。
非酸担持活性炭の投入するタイミングは、廃棄物の炭化反応が進行している際であれば特に限定されない。例えば、酸担持活性炭の形状が崩れて濃硫酸が露出した際に、非酸担持活性炭を投入すればよい。具体的には、過剰に露出気味の濃硫酸を十分に捕捉して、継続的に脱水反応行う観点から、初期の酸担持活性炭の最大径を100%とした場合に、酸担持活性炭の最大径が35%以上80%以下となるまで崩壊したタイミングで非酸担持活性炭を投入することが好ましく、酸担持活性炭の最大径が40%以上75%以下となるまで崩壊したタイミングで非酸担持活性炭を投入することがより好ましく、酸担持活性炭の最大径が50%以上70%以下となるまで崩壊したタイミングで非酸担持活性炭を投入することが更に好ましい。
投入する非酸担持活性炭とは、濃硫酸や発煙硫酸で処理していない活性炭である。非酸担持活性炭の形状は特に限定されない。
非酸担持活性炭の投入量は、特に限定されない。ここで好ましい投入量を説明する。酸担持活性炭の初期の質量を100質量部とした場合に、非酸担持活性炭の投入量は、10質量部以上200質量部以下が好ましく、50質量部以上150質量部以下が好ましく、70質量部以上130質量部以下が更に好ましい。この範囲内では、過剰に露出気味の濃硫酸を十分に捕捉して、継続的に脱水反応を行うことができる。なお、非酸担持活性炭を複数回に分けて投入する場合には、上記の投入量は、投入量の合計を意味している。
非酸担持活性炭は、カルボキシル基、アルデヒド基、水酸基、アミノ基、スルホ基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、及び酸無水物基からなる群より選択される官能基を有することが好ましい。尚、カルボニル基を有する非酸担持活性炭は、キノン構造を有していてもよい。
活性炭は非極性物質であるため、極性のある物質の吸着には向かない。そのため、極性分子を吸着できるよう、投入する非酸担持活性炭は、官能基を有しているものが好ましい。表面の官能基が硫酸分子を吸着する力を発揮するからである。
官能基を有する非酸担持活性炭の調製方法は、特に限定されない。官能基を有する非酸担持活性炭は、酸化性ガス(例えば窒素、二酸化炭素、酸素等)、水等の液体による賦活処理によらずに、例えば、化学薬品による薬品賦活処理によっても調製できる。
官能基としては、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基、キノン型カルボニル基が特に好ましい。
下記の化学式に官能基の例を示す。各符号は、以下の官能基を示している。この化学式では、便宜的に(I)-(IV)の官能基の全ての種類が活性炭の表面に形成されているように記載されているが、官能基は1種のみであっても、2種以上であってもよい。
(I)カルボキシル基
(II)ラクトン(エステル基)
(III)フェノール性水酸基
(IV)カルボニル基
【化1】
【0025】
(7)本実施形態の廃棄物処理方法の作用効果
本実施形態の廃棄物処理方法によれば、余剰な濃硫酸が除去されるから、炉の汚染速度を遅延する効果が見込める。
また、余剰な濃硫酸を捕捉することで、高価な酸担持活性炭の追加量を減らすことができる。
これらの作用効果から、廃棄物(産業廃棄物)の安全安価な処理作業を行うことができる。
【実施例】
【0026】
1.廃棄物処理の実験
実験例1,2,3は比較例であり、実験例4は実施例である。
(1)実験例1
(1.1)廃棄物
廃棄物として、硬質ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタラート)、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン)、GF(ガラスフィラー)の複合体である車両用天井材の粉砕物(φ8mmのスクリーンを通過したもの)を用いた。
【0027】
(1.2)炭化炉
図1に模式的に示した炭化炉1を用いた。炭化炉1の内部には、攪拌用回転羽根3が備えられている。炭化炉1内では、廃棄物5とスルホン化活性炭7とが攪拌されつつ、図示しない赤外線ヒーターにより加熱される。炭化炉1の底部には、スクリーンメッシュ9が備えられている。このスクリーンメッシュ9を通して反応生成物11(炭化物)が落下し、落下物をエアーにより運んで回収する機構が採用されている。なお、スクリーンメッシュ9は、線径0.45mm/目開量0.96mm/開孔率46.4%相当品を使用した。
【0028】
(1.3)
ペレット状のスルホン化活性炭7を1kg炭化炉1に投入した。続いて廃棄物5を2.5kg炭化炉1に投入した。炭化炉1内を約120℃に加熱しつつ、攪拌した。炭化炉1内で混合物の量を目視で観察した。初期のスルホン化活性炭7の最大径を100%とした場合に、スルホン化活性炭7の最大径が35%以上80%以下となるまで崩壊したタイミングで、スルホン化活性炭7を1kg追加投入した。6時間攪拌後に反応生成物11(炭化物)を回収した。反応生成物11を目視で観察したところ、ほぼ全てが炭化されており、炭化物1423gを回収した。なお、反応生成物11は黒色の炭化物であった。
【0029】
(2)実験例2
スルホン化活性炭7を1kg追加投入しないこと以外は、実験例1と同様にして廃棄物5を処理した。反応生成物11を目視で観察したところ、スルホン化活性炭7の表面にPET/PP等熱可塑性樹脂が付着してしまい炭化反応が止まってしまった。反応生成物11は黒色化せずに赤褐色であった。実験例2では、炭化物232gを回収した。
【0030】
(3)実験例3
スルホン化活性炭7の代わりに木炭を1kg追加投入したこと以外は、実験例1と同様にして廃棄物を処理した。反応生成物11を目視で観察したところ、実験例2と同様に、赤褐変色粉体が約50%程度混ざった状態であった。気体が抜けただけのウレタンの塊が多数存在していた。実験例3では、炭化物567gを回収した。
【0031】
(4)実験例4
スルホン化活性炭7の代わりに活性炭(非酸担持活性炭)を1kg追加投入したこと以外は、実験例1と同様にして廃棄物5を処理した。反応生成物11を目視で観察したところ、若干未反応物が存在したが、ほとんどは炭化物であった。実験例3では、炭化物816gを回収した。
【0032】
2.考察
実験例4(実施例)では、高価なスルホン化活性炭7を用いずに、活性炭(非酸担持活性炭)を用いても炭化反応を十分に継続できた。すなわち、実施例4では、スルホン化活性炭7の触媒活性の低下が抑制された。
また、実験例4では、スルホン化活性炭7から脱離した濃硫酸を活性炭にて捕捉することで、脱離した濃硫酸に起因する炭化炉1の汚染が抑制された。
【0033】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 …炭化炉
3 …攪拌用回転羽根
5 …廃棄物
7 …スルホン化活性炭
9 …スクリーンメッシュ
11…反応生成物