(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】配管構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/122 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
(21)【出願番号】P 2021191394
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2024-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 文弥
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196744(JP,A)
【文献】特開2021-067094(JP,A)
【文献】特開2017-031670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域に配置され、水廻り器具から排出された排水を横方向に排出する複数の第1横引き管と、
前記第1の領域に配置され、前記複数の第1横引き管を一つに合流させる合流管と、
前記第1の領域とは壁を介して隣接する第2の領域に配置され、前記合流管で合流した前記排水を流下させることによりサイホン力を発生させる竪管と、
前記合流管と前記竪管とを連結すると共に前記壁に形成された孔を貫通し、前記合流管から排出された前記排水を前記竪管側へ排出し、前記合流管から前記壁までの長さが100mm以上に設定されている第2横引き管と、
を備えた配管構造。
【請求項2】
前記第1の領域は、複数階の建物に設けられた住居スペースであり、
前記第2の領域は、前記竪管が接続されて前記建物の各階のスラブを貫く排水立て管が配置される配管スペースである、
請求項1に記載の配管構造。
【請求項3】
前記第1横引き管は、前記第2横引き管よりも長く設定されている、
請求項1または請求項2に記載の配管構造。
【請求項4】
前記第2横引き管は、長さが1000mm以下に設定されている、
請求項3に記載の配管構造。
【請求項5】
前記複数の第1横引き管の流路合計断面積≧前記第2横引き管の流路断面積に設定されている、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、水廻り器具から排出され一時貯留槽に貯留された排水にサイホン力を作用させて流出させるサイホン排水システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のサイホン排水システムでは、サイホン排水管の内径を、従来のサイホン排水システムで用いられてきた内径20~25mmより小さくすることで、サイホン力が起動するまでの時間(サイホン発生時間)を短縮している。
【0005】
水廻り器具は、単位時間あたりの排水量が器具ごとに異なる。例えば便器からは一度に10リットル未満程度の排水が排出される一方、浴槽等からは一度に200リットル程度の排水が排出されることがある。このような大量の排水を排水する場合、内径が小さな排水管では排水に時間がかかる場合がある。
【0006】
また、内径が小さなサイホン排水管を複数設けると、一例として共同住宅などで住居スペースと配管スペースとが壁で仕切られている場合、サイホン排水管を通す孔を壁に複数形成する必要があり、施工に手間が掛かる。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、サイホン発生時間を短縮しつつ、排水時間の増加を抑制でき、施工が容易になる配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の配管構造は、第1の領域に配置され、水廻り器具から排出された排水を横方向に排出する複数の第1横引き管と、前記第1の領域に配置され、前記複数の第1横引き管を一つに合流させる合流管と、前記第1の領域とは壁を介して隣接する第2の領域に配置され、前記合流管で合流した前記排水を流下させることによりサイホン力を発生させる竪管と、前記合流管と前記竪管とを連結すると共に前記壁に形成された孔を貫通し、前記合流管から排出された前記排水を前記竪管側へ排出し、前記合流管から前記壁までの長さが100mm以上に設定されている第2横引き管と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の配管構造では、水廻り器具から排出された排水を排出する複数の第1横引き管が合流部で合流し、合流部には第2横引き管が接続されている。そして、この第2横引き管が、竪管に接続されている。複数の第1横引き管を流れた排水は、合流部で合流して第2横引き管を介して竪管へ導かれる。そして竪管内を排水が落下することに伴い、第1横引き管及び第2横引き管サイホン力が作用する。
【0010】
ここで、各第1横引き管には、合流後の排水が1本の竪管内を落下することに伴ってサイホン力が作用する。このため、例えば各第1横引き管にそれぞれ個別の竪管が接続されている場合と比較して、竪管内に多くの排水が集まる。すなわち、サイホン力を発生させるために必要な排水の流量を速く確保できる。これにより、サイホン発生時間を短縮できる。
【0011】
また、第1横引き管の内径を小さくしなくてもサイホン力を発生させやすくできるため、第1横引き管の内径を小さくすることに伴う排水時間の増加を抑制できる。
【0012】
ここで、第2横引き管を設けず、合流管を竪管に連結することが考えられるが、この場合には、複数の第1横引き管を壁に貫通させる必要があり、壁に第1横引き管を貫通させる孔を複数形成する必要があり、施工が煩雑になる。
【0013】
しかし、請求項1の配管構造では、第1の領域で複数本の第1横引き管を合流管で合流させ、合流管と竪管とを第2横引き管で連結し、該第2横引き管を壁に形成された孔を貫通させているので、壁に形成する孔の数は最小限の1つで済み、施工が容易になる。
なお、合流管から壁までの第2横引き管の長さが短すぎると、合流管が壁に接近し過ぎてしまい、合流管と第2横引き管とを接続する際の作業性が悪化する。このため、合流管から壁までの第2横引き管の長さを100mm以上に設定することが好ましい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配管構造において、前記第1の領域は、複数階の建物に設けられた住居スペースであり、前記第2の領域は、前記竪管が接続されて前記建物の各階のスラブを貫く排水立て管が配置される配管スペースである。
【0015】
請求項2に記載の配管構造では、建物の住居スペースに配置された複数の第1横引き管の排水を合流管で合流させ、合流させた排水を壁の孔を貫通させた第2横引き管を介して配管スペースに配置された竪管へ流し、竪管からの排水を排水立て管に排出することができる。
【0016】
仮に、合流管を配管スペースに配置した場合、竪管から壁までの間に合流管を配置する関係上、合流管を住居スペースに設けた場合に比較して配管スペースの占有面積を大きくする必要があり、その分、住居スペースが狭くなってしまい好ましくない。
【0017】
一方、請求項2の配管構造では、合流管を住居スペースに配置しているので、配管スペースに合流管を配置するスペースが必要ないため配管スペースを狭くすることができ、配管スペースを狭くした分、住居スペースを広くすることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の配管構造において、前記第1横引き管は、前記第2横引き管よりも長く設定されている。
【0019】
第2横引き管は、壁に形成する孔の数を少なくするために設けているため、必要以上に長くする必要は無く、第1横引き管よりも短くてよい。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の配管構造において、前記第2横引き管は、長さが1000mm以下に設定されている。
【0021】
合流管と竪管とを連結する第2横引き管の長さは、1000mm以下に設定することが好ましい。排水は、合流管の下流側で1本の第2横引き管で竪管へ流されるため、第2横引き管が長すぎると流路抵抗が増えるためサイホン排水の性能面の観点から好ましくない。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の配管構造において、前記複数の第1横引き管の流路合計断面積≧前記第2横引き管の流路断面積に設定されている。
【0023】
複数の第1横引き管の流路合計断面積≧第2横引き管の流路断面積に設定することで、複数の第1横引き管の流路合計断面積<第2横引き管の流路断面積に設定する場合に比較して、排水を迅速に竪管に到達させることができ、サイホン力が発生するまでの発生時間を短縮することができる。
また、複数の第1横引き管の流路合計断面積>第2横引き管の流路断面積に設定することで、排水の流速が下流側に行くほど速くなり、排水をより迅速に竪管に到達させることができる、サイホン力が発生するまでの発生時間を更に短縮することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の配管構造では、サイホン発生時間を短縮しつつ、排水時間の増加を抑制でき、かつ施工が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配管構造を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る配管構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る配管構造の分岐管を示す水平断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る配管構造の合流管を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る配管構造20について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0027】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0028】
<配管構造>
(サイホン排水システム)
図1、及び
図2には、本実施形態に係る配管構造20の概略が示されている。配管構造20は、サイホン力を利用して水廻り器具12からの排水を排出するサイホン排水システムの構造である。配管構造20は、建物の一例としての、多層に形成された共同住宅10に用いられている。
【0029】
配管構造20は、排水を下方へ流す排水立て管22を備えている。一例として、排水立て管22は、共同住宅10の各階の各住居スペース10Aとは異なる領域である配管スペース(メーターボックス、パイプスペース等とも称す)10B内に上下方向(縦方向)に沿って収容されており、共同住宅10の各階のスラブ14を貫いている。なお、住居スペース10Aと配管スペース10Bとは、壁16で区画されている。
【0030】
共同住宅10の各住戸の住居スペース10Aには、水廻り器具12が設けられている。水廻り器具12は、例えば浴室ユニットであり、浴槽12A及び洗い場12Bが一体化されて形成されている。
洗い場12Bの床には、排水口を備えた排水トラップ12Cが設けられており、排水トラップ12Cは、浴槽12Aの排水と洗い場12Bの排水とを合流させて排水導入管24に排出する。
【0031】
排水導入管24の下流側の端部は、後述する一次貯留槽30と接続されている。これにより、排水導入管24は、水廻り器具12の浴槽12A、及び洗い場12Bから排出される排水を、一次貯留槽30へ導入する。なお、排水導入管24、及び一次貯留槽30は、床18の下側に配置されている。排水導入管24は、一次貯留槽30側が低くなるように勾配をもって配設されていることが好ましい。
【0032】
一次貯留槽30は、水廻り器具12から排水導入管24を介して導入された排水を、一時的に貯留して排水立て管22へ排出するための貯留槽である。一次貯留槽30は、例えば塩化ビニル等の樹脂材料で形成されている。一次貯留槽30は、一次貯留槽30内に流入した排水を下流側に排出する排水部30Aを側部に備えている。
図3に示すように、本実施形態では、排水部30Aの出口の内径d1がφ28.1mmである。
【0033】
(サイホン排水管)
排水部30Aには、サイホン排水管40が接続されている。サイホン排水管40は、スラブ14に沿って配設される水平管部42、水平管部42の下流側で鉛直方向に沿って延びる竪管部44と、水平管部42と竪管部44との間に設けられる落し込み部46とを含んで構成されている。
【0034】
(水平管部)
図2、
図3、及び
図4に示すように、水平管部42は、分岐管50、継手52、第1横引き枝管54、第1曲がり管56、継手58、第2横引き枝管60、継手62、第2曲がり管64、継手66、合流管68、壁貫通用横引き管70を含んで構成されている。第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60は、本発明の第1横引き管の一例である。
【0035】
本実施形態では、一次貯留槽30の排水部30Aに、継手48を介してサイホン排水管40の分岐管50が接続されているが、排水部30Aにサイホン排水管40の分岐管50を直接的に接続してもよい。継手48は必要に応じて設ければよく、継手48は無くてもよい。なお、本実施形態の継手48の内径d2はφ28.1mmである。
【0036】
(分岐管)
図3に示すように、分岐管50は、一次貯留槽30の排水部30A、及び継手48の延長線上に配置され継手48に接続される直線管部50Aと、平面視で直線管部50Aの側部に接続され直線管部50Aに対して角度θで傾斜して延びる傾斜管部50Bとを含んで構成されている。
【0037】
上記角度θは、15~45°の範囲内にあることが好ましく、本実施形態では25°に設定されている。
なお、本実施形態の直線管部50Aの内径d3、及び傾斜管部50Bの内径d4は、各々φ28.1mmである。
【0038】
直線管部50Aの下流側の端部には、継手52を介して第1横引き枝管54が接続されている。また、傾斜管部50Bの下流側には、第1曲がり管56、及び継手58を介して第2横引き枝管60が接続されている。なお、第1横引き枝管54と第2横引き枝管60とは、互いに隣接して互いに平行に配置されている。
【0039】
本実施形態の第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60には、一例として、各々呼び径が25Jのポリブテン管を用いることができる。なお、本実施形態の第1横引き枝管54の内径d5、及び第2横引き枝管60の内径d6は、各々φ28.1mmである。
【0040】
図4に示すように、第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60の下流側には、合流管68が配置されている。
本実施形態の合流管68は、
図3に示す分岐管50と同一構造の継手である。
図4に示す合流管68の構成について、分岐管50と同一構成には同一符号を付している。
【0041】
合流管68では、前述した分岐管50とは第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60の接続関係が異なっており、合流管68の直線管部50Aには、継手66を介して第2横引き枝管60が接続され、合流管68の傾斜管部50Bには、第2曲がり管64、及び継手62を介して第1横引き枝管54が接続されている。
【0042】
図2、及び
図4に示すように、合流管68の直線管部50Aの下流側の端部に壁貫通用横引き管70が接続されており、壁貫通用横引き管70の下流側の端部に落し込み部46が接続されている。
本実施形態の壁貫通用横引き管70には、一例として、呼び径が30Aの塩ビ管が用いられている。
図4に示すように、本実施形態の壁貫通用横引き管70の内径d7は、φ30mmである。
【0043】
図1に示すように、本実施形態の配管構造20では、水廻り器具12から合流管68までが住居スペース10Aに配置されており、合流管68の下流側の壁貫通用横引き管70が壁16に形成された貫通孔16Aを貫通して配管スペース10Bまで延びている。
【0044】
なお、本実施形態では、第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60は壁貫通用横引き管70よりも長く設定されている。この壁貫通用横引き管70の長さL1は、排水抵抗を考慮すると1000mm以下に設定することが好ましい。また、合流管68から壁16までの壁貫通用横引き管70の長さL2が短すぎると、合流管68が壁16に接近し過ぎてしまい、合流管68と壁貫通用横引き管70とを接続する際の作業性が悪化する。このため、合流管68から壁16までの壁貫通用横引き管70の長さL2は100mm以上に設定することが好ましい。
【0045】
(落し込み部)
落し込み部46は、壁貫通用横引き管70から排出された排水を竪管部44に向けて排出する湾曲した配管である。
なお、本実施形態では、落し込み部46の内径はφ28.1mmであり、竪管部44の内径はφ25mmである。
【0046】
竪管部44は、満流状態で排水を落下させることでサイホン力を発生させる。竪管部44は、排水立て管22に沿って上下方向(鉛直方向)に配設されており、排水立て管22の合流部継手26に達している。合流部継手26は、竪管部44からの排水を排水立て管22へ合流させる継手部材である。
【0047】
なお、本実施形態の一次貯留槽30には、通気管72が接続されており、通気管72は、合流部継手26に達している。
【0048】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の配管構造20の作用、及び効果を説明する。
【0049】
水廻り器具12から排水が排出されると、該排水は、排水導入管24、及び一次貯留槽30を介してサイホン排水管40に流入する。
【0050】
サイホン排水管40を用いて排水する場合、水廻り器具12から排水が排出され、該排水が竪管部44に到達して竪管部44にサイホン力が発生するまでにはタイムラグがある。したがって、サイホン力が発生するまでは、サイホン力を作用させて排水している場合に比較して排水速度は遅くなる。
【0051】
本実施形態の配管構造20では、水平管部42の上流側に、第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60の2本の配管を備えているため、水平管部42を竪管部44まで1本の配管で構成した場合に比較して、水廻り器具12の下流側の管内容積を増加させている。
【0052】
したがって、水廻り器具12から一度に多量の排水が排出された場合、該排水を第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60の2つの配管に流入させることができるので、排水を1本の横引き管に流入させる場合に比較して、サイホン力が発生するまでの間、水廻り器具12から排出された排水を下流側へ迅速に流すことができる。
【0053】
このため、水廻り器具12から一度に多量の排水を流した際に、排水トラップ12Cから排水が溢れることが抑制できる。
【0054】
ところで、水廻り器具12から竪管部44までの距離が長くなる、言い換えると、水平管部42の長さが長くなると、該距離が短い場合に比較してサイホン力が発生するまでの時間が長くなる。
【0055】
しかし、本実施形態の配管構造20では、サイホン力が発生するまでの間に水廻り器具12から排出された排水を下流側へ迅速に流すことができるため、排水トラップ12Cから排水が溢れることを抑制しつつ水廻り器具12から竪管部44までの距離、言い換えれば、水平管部42を長くすることが可能となる。このため、水廻り器具12の配置の自由度を上げることも可能となる。
【0056】
本実施形態の配管構造20の分岐管50では、直線管部50Aの側部に傾斜管部50Bが傾斜して接続されている。傾斜管部50Bでは、分岐管50の分岐部分で排水の流れの方向が変えられてしまうため、圧力損失を発生してしまう。
【0057】
一方、合流管68では、第1横引き枝管54から排出された排水は合流管68の傾斜管部50Bに流れ込み、第2横引き枝管60から排出された排水は合流管68の直線管部50Aに流れ込み、合流管68で合流した排水が、壁貫通用横引き管70を介して竪管部44へ流れ込む。
【0058】
上流側の分岐管では、排水が流れる際に、傾斜管部50Bで圧力損失を発生してしまうが、直線管部50Aでは、圧力損失は最小限で済む。
一方、合流管68の下流側の合流管68では、傾斜管部50Bから排出された排水が直線管部50Aで合流する際に、排水の流れの方向が変えられてしまうため、圧力損失を発生してしまうが、直線管部50Aでは、第2横引き枝管60から排出された排水の流れの方向が変わらないため、圧力損失は最小限で済む。
【0059】
図3、及び
図4に示すように、本実施形態の配管構造20では、分岐管50の下流側に、分岐管50とは第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60に対する接続関係を逆にした合流管68を設けることで、分岐管50で損失した分を合流管68で相殺させ、第1横引き枝管54を流れた排水の損失と第2横引き枝管60を流れた排水の損失とを同等に近づけることができ、効率的に排水を行うことができる。
【0060】
本実施形態の配管構造20が適用された共同住宅10では、住居スペース10Aと配管スペース10Bとの間に壁16が設けられているが、合流管68を住居スペース10Aに設け、合流管68と落し込み部46とを1本の壁貫通用横引き管70で接続しているため、サイホン排水管40の水平管部42を挿通させる貫通孔16Aは、壁16に1カ所形成すればよく、施工が容易になる。
【0061】
ところで、合流管68を配管スペース10Bに配置した場合、竪管部44から壁16までの間に合流管68を配置する関係上、合流管68を住居スペース10Aに設けた場合に比較して配管スペース10Bの占有面積を大きくする必要があり、その分、住居スペース10Aが狭くなってしまい好ましくない。しかし、本実施形態の配管構造20では、合流管68を住居スペース10Aに配置しているので、配管スペース10Bに合流管68を配置するスペースが必要ないため配管スペース10Bを狭くすることができ、配管スペース10Bを狭くした分、住居スペース10Aを広くすることができる。
【0062】
なお、配管構造20は、分岐管50の直線管部50Aと傾斜管部50Bとの流路合計断面積≧第1横引き枝管54と第2横引き枝管60との流路合計断面積≧合流管68の直線管部50Aと傾斜管部50Bとの流路合計断面積≧壁貫通用横引き管70に設定することができ、分岐管50の直線管部50Aと傾斜管部50Bとの流路合計断面積>第1横引き枝管54と第2横引き枝管60との流路合計断面積>合流管68の直線管部50Aと傾斜管部50Bとの流路合計断面積>壁貫通用横引き管70に設定することが好ましい。
【0063】
水平管部42の下流側に向けて配管の流路断面積を小さくすることで、下流側に向けて配管の流路断面積を一定とした場合に比較して、排水を早く竪管部44に到達させ、サイホン力を早く発生させることができる。
【0064】
なお、分岐管50の角度θが15°未満になると、第1横引き枝管54、及び第2横引き枝管60との接続部分を離間させる必要上、直線管部50A、及び傾斜管部50Bが長くなり過ぎ、その結果、分岐管50の全長が長くなり過ぎる。一方、角度θが45°を超えると、分岐部分で排水の流れが急に変化して圧損が大きくなり好ましくない。なお、合流管68についても同様である。
【0065】
(その他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0066】
上記実施形態では、水廻り器具12からの排水を一次貯留槽30を介してサイホン排水管40に流したが、一次貯留槽30は必ずしも設ける必要はなく、水廻り器具12からの排水を、直接サイホン排水管40に流してもよい。
【0067】
上記実施形態では、一例として、浴室ユニットからの排水を一次貯留槽30、分岐管50を介して第1横引き枝管54と第2横引き枝管60とに分けて排出する構成であったが、本発明はこれに限らず、一例として、浴室ユニット以外の水回り器具(不図示、例えば洗面化粧台、キッチンなど)からの排水を流す複数本の水平管を合流管で合流させて壁貫通用横引き管70に流す構成としてもよい。
【0068】
上記実施形態では、住居スペース10Aが本発明の第1の領域に相当し、配管スペース10Bが本発明の第2の領域に相当していたが、本発明はこれに限らず、本発明の第1の領域は、住居スペース10A以外の、人が居住しない領域であってもよく、本発明の第2の領域は配管スペース10B以外の領域であってもよい。
【0069】
上記実施形態に記載した配管の内径は一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…共同住宅(建物)、10A…住居スペース(第1の領域)、10B…配管スペース(第2の領域)、12…水廻り器具、16…壁、16A…貫通孔(孔)、20…配管構造、40…サイホン排水管、42…水平管部、44…竪管部、54…第1横引き枝管(第1横引き管)、60…第2横引き枝管(第1横引き管)、70…壁貫通用横引き管(第2横引き管)