(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】海水バラストを有しない輸送船のトリムを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B63B 43/06 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
B63B43/06 A
(21)【出願番号】P 2021500675
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 FR2019051710
(87)【国際公開番号】W WO2020012113
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-22
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラース ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】エッザールホーニ アドナン
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187986(JP,A)
【文献】特開昭56-071683(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105836090(CN,A)
【文献】英国特許出願公開第02343434(GB,A)
【文献】実公昭49-012793(JP,Y1)
【文献】特表2007-525624(JP,A)
【文献】国際公開第2014/087008(WO,A1)
【文献】中国実用新案第2739094(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 43/04
B63B 39/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水バラストを有しない輸送船(1)のトリムを制御するための方法であって、前記船は、前記船(1)の長手軸(x’x)に沿った長さL及び前記船(1)の横軸(y’y)に沿った幅lを有し、傾斜が同一の2つの側面(21)がそれぞれ延びる前記船(1)の平坦底部(22)を形成する部分を含む、断面が台形状である下部船体を含み、
前記船(1)は、所与の最大積載重量P
TCを考慮すると、式:P
T=P
v+P
TCに従う、その総重量P
Tの20%以上60%以下の空荷時重量P
vを有し、
前記船(1)は、少なくとも1つの船首タンク(2)及び1つの船尾タンク(3)を含み、前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)は、閉鎖され、海と連通せず、
前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)は、一方から他方に液体を移送するための少なくとも1つのラインを介して連通し、
前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)は、実質的に前記長手軸(x’x)に沿って互いに対向して、かつ、前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)の各々のそれぞれの幾何学的中心を考えて距離dを互いに空けて配置され、d≧L/4であり、
前記方法は、前記船の積荷の重量がP
TC/10未満のときに、液体を前記船首タンク(2)に移送して、前記船の喫水線を真っ直ぐにするステップを含み、
前記液体は、純粋な水、又はミネラルを含有する水であり、1リットルあたり0.95kgから1.05kgの間の質量を有し、前記液体で完全に充填されたときの前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)の総重量P
RTが前記空荷時重量P
Vの2%から8%に相当し、
前記船は係留タンク(12)をさらに含み、前記係留タンク(12)は前記船首タンク(2)及び前記船尾タンク(3)から独立しており、前記船(1)は、前記係留タンク(12)に海水を供給するための供給ライン(13)及び前記係留タンク(12)の排出を行うための排出ライン(14)をさらに含み、前記係留タンク(12)は前記船(1)の船首にあり、
前記方法は、前記船が積荷を輸送せず傾斜したトリムを有する状況において、前記船が港湾区域に入るもしくは港湾区域内で航行するとき、又は前記船が乾ドックに入るときに、前記船(1)の前記喫水線をさらに真っ直ぐにするために、前記供給ライン(13)を介して海水を前記係留タンク(12)に移送するステップをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記液体を前記船首タンク(2)に移送するステップは、前記船首タンク(2)が充填されるまで実行される、請求項1に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項3】
前記係留タンク(12)が、前記船(1)の船首の最初の3分の1に位置することを特徴とする、船(1)のトリムを制御するための請求項1又は2に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項4】
前記供給ライン(13)は、前記係留タンク(12)の上部へと排出する、請求項1から3のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項5】
前記排出ライン(14)は、船(1)の側面及び前記船(1)のプリムソルライン(20)の上方に排出する、請求項1から4のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項6】
前記船首タンク(2)が、前記船の船首の最初の3分の1に位置し、前記船尾タンク(3)が、前記船(1)の船尾の最後の3分の1に位置することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項7】
前記船(1)が、前記船(1)の前記長さLの40%以上60%以下の区域に位置する第3のタンク(4)を含むことを特徴とし、前記船首タンク(2)と前記船尾タンク(3)との間での前記液体の移送のための連通は、前記第3のタンク(4)を介して行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項8】
前記船(1)が、前記液体の到達又は不達及び前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)の各々におけるその流量を管理するためのバルブのセットと、前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)の1つから別の船首タンク(2)及び船尾タンク(3)に前記液体を移送するための少なくとも1つのポンプと、前記船首タンク(2)及び船尾タンク(3)の少なくとも1つに前記液体を導入するための手段(30、40)と、を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項9】
前記船(1)が、その総重量P
Tの30%以上50%以下の空荷時重量P
vを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項10】
前記船(1)が少なくとも1つの封止された断熱タンクを含むことを特徴とし、前記封止された断熱タンクは、2つの連続した封止バリアを含み、前記2つの連続した封止バリアは、前記封止された断熱タンクに収容される製品と接触する一次封止バリアと、前記一次封止バリアと前記船(1)の壁の少なくとも一部からなる支持構造との間に配置される二次封止バリアとを含み、前記2つの連続した封止バリアは、前記一次封止バリアと前記支持構造との間に配置された2つの断熱バリア又は単一の断熱バリアと交互になっている、請求項1から9のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項11】
前記船(1)が少なくとも1つの封止された断熱タンクを含むことを特徴とし、前記封止された断熱タンクは、封止バリア及び断熱バリアを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項12】
前記封止された断熱タンクが液化天然ガス(LNG)又は液化ガス(LG)を収容することを特徴とする、請求項10又は11に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項13】
前記封止された断熱タンクを取り囲む空間の少なくとも一部が区画化されていないことを特徴とする、請求項
10から12のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【請求項14】
前記船(1)が積荷を運んでいないとき、前記側面(21)の傾斜が、前記側面(21)の先端が水位(50)よりも上方に最大1メートルの高さに位置するような傾斜であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のトリムを制御するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水バラストを有しない船を対象とする。本発明は、より具体的には、液化天然ガス(以下LNG)タンクを有する船、又は例えばエチレン、メタン、エタンなどの液化ガス(LG)若しくは液化石油ガス(LPG)の輸送タンクを有する船などの、非常に大量の商品を輸送することが可能であり、したがって空荷で、実質的に積荷なしで、又は少ない積荷での航行時に大幅に減少した喫水を示す船であって、一方で、それが特に輸送する可能性が高い商品の性質上、前記商品なしでの帰航を定型的に行うこの種の船に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で多数の商船が、あらゆる状況下で最適な耐航条件を維持するために、充填された又は部分的に充填された海水バラストを用いている。この海水バラストの主な機能は、船を水中に降ろすこと、換言すれば、喫水を増すこと、またあるいは喫水線(船の船体において到達する海水位)を上げることである。
【0003】
実際、原則として、推進スクリュー(又は複数の推進スクリュー)を完全に浸すのに十分な喫水を得て、スクリューが離水するのを防ぐためには、海水バラストが必要となる。通常の貨物船は、商品を輸送しておらずバラストなしの場合、喫水が比較的浅くなる。喫水が減少する(又は喫水線が下がる)というこの現象は、船の空荷時重量が、重量で表される総積載容量、すなわちその最大容量まで積載されたときの船の総重量のうち、比較的小さな割合を示す場合に顕著となる。
【0004】
本発明の文脈において、「船の空荷時重量」という表現は、貨物がなく、その運転に必要なもの以外の機器を有しない、すなわち少量の燃料を有する船の重量を意味する。相対的な重量を考慮すると、ここでは、船の空荷時重量とは、船がごくわずかな量の燃料しか含まないことを意味すると考えられる。
【0005】
バラストを使用しない場合、実質的に船尾に配置される船の機器の重量のために、スクリューは概して十分に浸漬されず、船の船首の喫水は極端に低くなる。このような状況下では、船の耐航条件に関する安全性が許容可能なものでなくなるため、港湾区域内又は港の出口での航行及び公海での航海が許可されない。
【0006】
そのため、これらの耐航条件を満たすために、これらの商品輸送船によって地球の様々な地域間でかなりの量の海水が輸送されている。
【0007】
また、船がそれ以降商品を輸送しなくなったとき(以下「空荷時」との表現を用いる場合がある)に十分な耐航条件を回復するために海水バラストを使用するというこの必要性は、これらの船の積載容量が非常に大きく、そのため空荷時のこれらの船の喫水が、その長さ、高さ、及び幅の寸法を考慮すると浅すぎる(又は船体の喫水線が低すぎる)場合に、特に意味深くなる。
【0008】
さらに、例えば非常に長いメタンタンカー型の船の場合、ナビゲーションタワー、エンジン又は複数のエンジン、及び船の運転に必要な他の要素などの航行に必要な要素の配置は、船の船尾に位置し、LNGの貯蔵を目的とするタンクは、船の船首部分に位置する。その結果、LNG貯蔵タンクが空であるとき、船を機能させるのに必要な要素とタンクとの間の不均衡により、船の船首が船尾に対して高くなるように傾斜したトリムが船に与えられる。このように船首が高くなることにより、船首の大部分、例えば船首バルブの一部が水から浮き出て、例えば港への入港操縦中に、船の安定性及び船の航行条件が悪化する可能性がある。
【0009】
使用上の技術的観点からは、海水バラストの使用は、非常に大きい技術的及び運用上の投資を伴う。さらに、この海水バラストは、最終的にバラストタンクの底部に堆積物の層を形成する相当量の廃物をもたらすため、船の機能が時間の経過とともに低下する場合がある。また、この大量のバラストにより船の速度が大幅に低下し、それにより、船の条件が悪い場合、特に非常に荒れた天候のために、海に留まる能力が低下することに留意すべきである。
【0010】
さらに、一部の港湾区域への入港には、船が通らなければならない安全な航路を知っているため、アプローチ及び係留操作を行うことを許可されたパイロットの存在が不可欠である。船のこれら一時的なパイロットは、船の横に配置されるように近付くシャトル又は小型ボート等を用いて乗船する。ここで、従来はV字型の下部船体を有するバラストなしの船の喫水線が低すぎる場合、荒海の場合のこれらの動きにより、シャトル等が船の側面に押しつぶされる場合がある。
【0011】
環境上の観点からは、貨物の積載と引き換えにバラスト水の少なくとも一部が投棄されるため、バラスト水の輸送は、在来の水生生物及び病原体がある地域から別の地域へと移動することにつながる。このため、一部の国の大きな港の近くの海域では、深刻な生態学的問題が発生している。このことは最近、水バラストの処理に関する国際規制の変更につながっており、投棄の前に除染及び/又は滅菌を行うことが課されている。これは、海水バラストを有する全ての船に義務付けられつつある備えである。
【0012】
少ない海水量で同じバラスト条件を得るために船の船首と船尾との間の流量を与える海水管理用複合システムと、平坦底部ではなくV字型の下部船体を有するバラストなしの船とをそれぞれ開示する文献WO03010044及びWO2012083687が知られている。文献CN201980382、CN201932341、及びCN201932335はまた、海水バラストを回避するような、船体及び貨物用の船内空間の形状の変更を開示している。
【0013】
これらの技術的実施形態のいずれも、バラストを有しない輸送船の空荷での航行時における耐航性を可能にする、又はさらに改善するための効果的な解決策を開示していない。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、外洋における、又は港湾区域への接近時及び港湾区域内でのこれらの船の耐航性を改善することによって、又はさらに単に許可することによって、海水バラストを有しない既存の船の問題及び欠点に対処することを意図する。より具体的には、ただし限定するものではないが、本発明は、LNGを輸送する船などの特に大量又は大容積の貨物を輸送可能な船、これらの船の耐航性にとって重要となる喫水が低減する現象、船のトリムが傾斜する現象、又は喫水線が下がる現象のための解決策を提案することを意図する。
【0015】
出願人は、様々な調査及び分析の結果、海水バラストを有する船と同等又は準同等な空荷時の耐航性を確保しつつ、それらのバラストシステムに固有な全ての欠点を回避又は排除することを可能とする、技術的に簡単に実現できる解決策を見出した。
【0016】
したがって、本発明は、海水バラストを有しない輸送船であって、船の長手軸x’xに沿った長さL及び船の横軸(y’y)に沿った幅lを有し、傾斜が同一の2つの側面がそれぞれ延びる船の平坦底部を形成する部分を含む、断面が台形状である下部船体を含み、
前記船は、所与の最大積載重量PTCを考慮すると、式:PT=Pv+PTCに従う、その総重量PTの20%以上60%以下の空荷時重量Pvを有する、船に関する。
【0017】
そのような、断面が台形状である下部船体により、他の船体断面形状と比較して、例えば一部のメタンタンカーが有するような長方形断面の船体形状と比較して、船の喫水を増加させることが可能となる。
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、船は、比重が1に等しい液体で完全に充填されたときの総重量PRTが空荷時重量PVの2%から8%、好ましくは3%から6%に相当する、海と連通しない少なくとも1つの第1閉鎖液体タンク及び1つの第2閉鎖液体タンクを含み、
前記タンクは、一方から他方に液体を移送するための少なくとも1つのラインを介して連通し、前記タンクは、
-実質的に長手軸(x’x)に沿って互いに対向して、かつ、前記タンク(2、3、3’、3’’)の各々のそれぞれの幾何学的中心を考えてL/4に少なくとも等しい距離dを互いに空けて配置され、すなわちd≧L/4である、少なくとも2つのタンク、及び/又は、
-実質的に横軸(y’y)に沿って互いに対向して、かつ、前記タンク(3’、3’’)の各々のそれぞれの幾何学的中心を考えてl/2に少なくとも等しい距離dを互いに空けて配置され、すなわちd≧l/2である、少なくとも2つのタンク
を含む。
【0019】
下部船体が台形状である断面は、従来、船の船尾から考えて前記船の長さLの20%から70%の間に長手軸x’xに沿って配置される。
【0020】
「下部船体」という用語は、上記で「側面」という用語により示される船体の2つの側壁が傾斜した平面内で垂直にではなくなって延びる箇所から考えて、船が(通常は海上で)正常に機能しているときの船の下側部分を意味する。換言すれば、ここで、下部船体は、平坦底部から、同一に傾斜した2つの側面の2つの対向し合う端部まで延びる船の下側部分と見なされる。理解を助けるために、添付の
図5aは特に、ここで「下部船体」と称される船のこの下側部分を示す(参照符号20を付したプリムソルラインよりも下側の船の部分)。プリムソルライン20は、傾斜した側壁の上端を示し、船の平坦底部と平行に延びる。
【0021】
「比重が1に等しい液体」という表現は、純粋な水、又はミネラルをわずかに含有する水を意味し、例えばその質量は、1リットルあたり1キログラム(0.95kgから1.05kgの間)又は1立方メートル(m3)あたり1メートルトンに略等しくなるように定められる。
【0022】
本発明により、今後、改善された耐航特性を有し、(従来の空荷時の船よりも喫水が低いために)同じ航行に必要なエネルギー消費がより少なく、生態学的な類の欠点をなくし在来の生態系を尊重する必要があるために海水バラストを有する船に課せられる追加の設備コストを回避する、大量の商品を輸送するための船、通常はLNGの輸送用に専用設計された船が利用可能となる。
【0023】
さらに、本発明が特に示される船の2つの例であるメタンタンカー又は液化ガス輸送機に本発明が適用される場合、本解決手段による利点としては以下が考えられる。
-下部船体のV字型の形状による、貯蔵タンクの底部における1つ又は複数のサンプの設置の容易さ。
-一般には近くに配置される海水バラストがないことによる、2つの貯蔵タンク間の、該当する場合は2連の船体スペースである「コファダム」又は「複数のコファダム」の分割の除去。鋼壁を摂氏零度超又はそれに近い比較的高温に維持することを目的として、前記コッファダム又は複数のコッファダムを加熱するための現在のシステムに代えて、又はそれに加えて、周囲空気を熱交換流体とすることも考えられる。
-海水バラストがないために船の浮力特性が改善される(したがって砕け波により沈没の危険が生じた場合に港に到達する能力が向上する)ことによる、貯蔵タンクの数及び関連する処理システムの削減(ポンプ、バルブ、検出システムなどの数の削減)、つまり、船を区画化する必要性の削減。通常、タンク数を3つ又は4つから2つのみ、又はさらには1つのみにまで削減することが可能となる。このタンク数の削減により、特に次の3つの点によって、輸送船の全体的な熱性能が改善される。すなわち、断熱すべき領域が大幅に削減されること、(通常はコファダムのレベルにおける)加熱システムが必要とするカロリーが大幅に削減されること、そして最後に、海水バラストがないために船体を通り抜けるカロリーが大きく削減されること、である。
【0024】
本発明の他の有利な特徴を以下に特定する。
-本発明の1つの好適な実施形態によれば、タンクが実質的に長手軸x’xに沿って互いに対向して配置される場合、タンクの一方は、船の船首における最初の3分の1、好ましくは最初の4分の1に位置し、他方のタンクは、船の船尾における最後の3分の1、好ましくは最後の4分の1に位置する。
-本発明に係る船は、有利には、船の長さLの40%から60%の間を含む区域の間に位置する第3のタンクを含み、第1のタンクと第2のタンクとの間での液体の移送のための連通は、好ましくは前記第3のタンクを介して行われる。
-本発明の好適な実施形態によれば、タンクが実質的に横軸y’yに沿って互いに対向して配置される場合、タンクの一方は、船の横方向における最初の3分の1、好ましくは最初の4分の1に位置し、他方のタンクは、船の横方向における最後の3分の1、好ましくは最後の4分の1に位置する。
-本発明に係る船は、有利には、液体の到達又は不達及びタンクの各々におけるその流量を管理するためのバルブのセットと、タンクの1つから別のタンクに液体を移送するための少なくとも1つのポンプと、タンクの少なくとも1つに液体を導入するための手段と、を含む。
-本発明によって提供される1つの可能性によれば、船は、それを充填する/空にするための(適用可能な場合は海水との)少なくとも1つの連通ラインを配置した、液体タンクから独立した少なくとも1つの係留タンクを含み、前記タンクは、船の船首の最初の3分の1、好ましくは船首の最初の4分の1に位置する。
この係留タンクは、船がドック入りするときに使用され、特に、積荷の積み降ろし時に船のトリムを変更又は修正するために使用される。この係留タンクは、船が移動しているとき、又は港内若しくは港湾区域内を移動しているときにのみ充填されることを意図していないため、海水バラストとは異なる。
【0025】
前記連通ラインは、好ましくは、そのタンクの排出を非常に容易に行えるように、その排出口が船の空荷時の喫水線よりも上に位置する。
【0026】
さらに、本発明の好適な実施形態によれば、前記係留タンクの上壁のレベルに位置するライン又は入口を介して充填が行われる。
【0027】
メタンタンカー型の船が積荷を輸送せず傾斜したトリムを有する状況において、この種の係留タンクは、船が港湾区域に入る若しくは港湾区域内で航行するとき、又は修理又はメンテナンスのために乾ドックに入るときに船のトリムを回復することを可能とするため、特に有用である。実際、この種の係留タンクにより、船のトリムを回復し、したがって喫水線を水面と平行にすることが可能となる。特に、船が乾ドック内にある状況において、乾ドック内に存在する水を除去した際に船のトリムが傾斜している場合、最初には船の重量の全体が船体の同じ部分、この事例ではメタンタンカー型の船の状況における船の機能的機器を収容する船尾にかかり、これは、船体の局所的な部分にかかる船の重量が大きいために船体の劣化につながる場合がある。乾ドック内に存在する水を除去したときに、船のトリムをリセットすることにより、船を乾ドックに均一に載せることが可能となり、したがって、支持力の船の船体における分布のバランスが取れ、それにより船体の劣化を防ぐことが可能となる。
【0028】
さらに、この種の係留タンクは、船のトリムを修正するために、局地的に、すなわち同じ港湾区域で充填されたり空にされたりするため、生態学的リスクを発生させることがない。そのため、ある港湾区域の水が別の港湾区域から来た水によって汚染されるリスクがない。
-本発明に係る船は、好ましくは、その総重量PTの30%以上50%以下の空荷時重量Pvを有する。
-本発明に係る船は、有利には、少なくとも1つの封止された断熱タンクを含み、前記タンクは、2つの連続した封止バリアを含み、一次封止バリアはタンクに収容される製品と接触し、二次封止バリアは、一次バリアと、好ましくは船の壁の少なくとも一部からなる支持構造との間に配置され、これら2つの封止バリアは、一次バリアと支持構造との間に配置された2つの断熱バリア又は単一の断熱バリアと交互になっている。
【0029】
このタイプのタンクは、例えばMARKIII(登録商標)型タンクなど、国際海事機関(IMO)のコードで従来から指定されている一体型タンクである。
-本発明によって提供される別の可能性によれば、船は、少なくとも1つの封止された断熱タンクを含み、前記タンクは、封止バリア及び断熱バリアを含む。このタイプの構造は、例えばタイプCのタンクなど、IMOコードに従ったいわゆる独立タンクによってより具体的に例示される。
-最初の2つの仮定では、タンクは、好ましくは液化天然ガス(LNG)又は液化ガス(LG)を収容する。
-有利には、タンクを囲む空間の少なくとも一部が分割されていない。
「分割されていない空間」という表現は、2つの隣接するタンク間、又はタンクと船の別の部分との間の容積(これらの空間はコファダムとして当業者に知られている)が開いた又は閉じていない空間になっていて、例えば前記容積及び隣接する容積との間での周囲空気の循環が可能であることを意味する。
-船が積荷を収容していないとき、前記側面の傾斜は、それら側面の先端が水位よりも上方に最大0.8メートルの高さ、好ましくは水位よりも上方に最大1メートルの高さに位置するような傾斜である(ここで、海又は海洋が水位を構成している)。
【0030】
本発明はまた、海水バラストを有しない輸送船であって、船の長手軸x’xに沿った長さL及び船の横軸(y’y)に沿った幅lを有し、傾斜が同一の2つの側面がそれぞれ延びる船の平坦底部を形成する部分を含む、断面が台形状である下部船体を含み、
前記船は、所与の最大積載重量PTCを考慮すると、式:PT=Pv+PTCに従う、その総重量PTの20%以上60%以下の空荷時重量Pvを有する、船に関する。
【0031】
本実施形態において、船が積荷を収容していないとき、及び、好ましくは船のトリムを修正するようにタンク内の液体が移送されたとき、側面の2つの上端部は、水位よりも上方に最大で1メートル、好ましくは最大で半(0.5)メートルの高さhにある。
【0032】
本発明はまた、海水バラストを有しない輸送船のトリムを制御するための方法であって、船は、船の長手軸に沿った長さL及び船の横軸に沿った幅lを有し、傾斜が同一の2つの側面がそれぞれ延びる船の平坦底部を形成する部分を含む、断面が台形状である下部船体を含み、
前記船は、所与の最大積載重量PTCを考慮すると、式:PT=Pv+PTCに従う、その総重量PTの20%以上60%以下の空荷時重量Pvを有し、前記船は、少なくとも1つの係留タンクを含み、船は、係留タンクに液体を供給するためのライン及び係留タンクの排出を行うためのラインをさらに含み、前記係留タンクは船の船首に配置され、これにより、供給ラインを介して液体を係留タンクに移送することで、船のトリムの修正が可能となる、方法を提供する。
【0033】
上述した実施形態又は実施態様又は実行の全てが、この上記の特定の実施形態に含まれ得る。
【0034】
2つの側面は、有利には、10°以上45°以下、好ましくは15°以上35°以下の傾斜角を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
添付の図を参照して、以下の説明を単なる非限定的な例示として与える。
【
図1】本発明の一実施形態に係るバラストを有しない船を概略断面図で示す。
【
図2】本発明の別の実施形態に係るバラストを有しない船を概略断面図で示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、タンク内に存在する、4つのタンク間で液体を移送するための回路の機能の概略図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る船の断面図である。
【
図5a】本発明に係る船と、強い横風にさらされているその同じ船であって、乾ドックに配置されているこの船とを概略的に示す。
【
図5b】本発明に係る船と、強い横風にさらされているその同じ船であって、乾ドックに配置されているこの船とを概略的に示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係る船の船体の一部の断面図であり、船が部分的又は全量の積荷を収容している場合と、その同じ船が空荷である、すなわち積荷がない場合とにおける喫水線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明に係る船1の実施形態を示し、本発明を例示するために選択された船1は、商品/貨物を輸送していない、又は比較的少量の商品/貨物を輸送している。
【0037】
本実施形態において、この船1は、2つの液体タンク2、3を含み、その一方2は前方(船首)部分に位置し、他方3は後方(船尾)部分に位置し、これら2つの液体タンク2、3は、一方から他方への液体の移送を可能とするように互いにに連通している。より厳密には、船首タンク2は、船1の船首端5から船1の船尾端6までの船の長さLを基準として、船1の船首の最初の4分の1に配置される。同様に、本実施形態において、船尾タンク3は、船1の船尾の最後の4分の1に配置される。船首液体タンク2は、船1の長さLの最初の12.5%(1/8)に相当する最初の船首部分に位置する、及び/又は、船尾液体タンク3は、船1の長さLの最後の12.5%(1/8)に相当する最後の船尾部分に位置することが想定され得る。
【0038】
図1に見られるように、本発明を例示するために選択された船1は従来、従来は上部構造と称されるナビゲーションタワー11と、実質的に船1の船尾に位置する、従来は煙突と称される機器10とを含む。これにより、船1は、長手軸x’xに沿って船尾に向かって傾斜している、換言すれば、船1のプリムソルライン20は、ここでは長手軸x’xに沿って表される海面9に対して傾斜している。
【0039】
船1のこの傾斜は、大きな積荷の輸送を目的とする非常に長い船1の場合に特に重要であり、ナビゲーションタワー11及び機器10は船1の船尾に位置し、船1の船首は商品の格納用に確保される。例えば、メタンタンカー型の船1の状況において、LNGの貯蔵を目的とするタンクは、上部構造の前方の船1の全長にわたって配置される。したがって、船がLNGを輸送していないとき、船1の船首の重量は、船1の船尾の重量よりも大幅に小さいため、海水位に対する船1の傾斜が大きい。この傾斜により、船体の船首部分の大部分、特に船首バルブの少なくとも一部が浮き出て、それにより船の航行条件が悪化する場合がある。
【0040】
本例において、液体の全て又は実質的に全てを船首タンク2に送ることを選択した場合、
図1の喫水線109又は
図2の喫水線209で示すように、船1のプリムソルライン20は海面に対して傾斜しない、又はほとんど傾斜しない。換言すれば、液体を船首タンクに移送することで、海面に対する船1の傾斜を低減することにより、典型的にはプリムソルライン20と喫水線109との間の傾斜を低減することにより、船1のトリムを修正することが可能となる。
【0041】
補足的に、船1は、
図1において破線で描かれているように、係留タンク12を含んでよい。この係留タンク12は、船1の船首に位置する。この種の係留タンクは、特に港湾区域での操縦を容易にし、船1が乾ドック内にあるときに船の重量を均一な分布を確保するために、空荷時の船1のトリムを修正することを目的としている。この係留タンク12は、船1の船首の重量をさらに大きくし、それにより、機器11及び上部構造10を含む船1の船尾と、船1の船首に位置する空の格納区域とのバランスをとることによって船1のトリムを修正するために、液体が充填される。この種の係留タンク12は、典型的には、船が積荷を輸送していないときには海水が充填され、喫水線209をプリムソルライン20に略平行にすることを可能とする。この種の係留タンクは、好ましくは、船首タンク2及び船尾タンク3から独立しており、換言すれば、船首タンク2及び船尾タンク3の機能に用いられる液体は、係留タンク12の機能を可能にする液体と連通していない。
【0042】
この係留タンク12は、港湾区域での使用に限定されており、港湾区域での操縦を容易にするために海水が充填され、船1が港湾区域を離れる必要があるときに空にされ得る。したがって、係留タンク12の充填に使用される海水は、汲み上げられた後同じ地理的領域に排出されるため、港湾区域での航行を目的とするこの種の係留タンク12は、生態系に対するリスクを示さない。さらに、船1が乾ドックに入ったとき、略水平である(すなわち、乾ドック内の水位と平行である)プリムソルライン20により、乾ドックの水が空になって船1が乾ドックの底部に載ったときに、船1の重量が船体の全長にわたって良好に分布することが可能となる。
【0043】
図2は、船1の別の実施形態を示す。この場合、船1は、3つの液体タンク2、3、4、すなわち、
図1に示す船1に存在する船首液体タンク2及び船尾液体タンク3と、それらに加えて船体中央タンク4を含む。この船体中央タンク4は、他の2つのタンク2、3と、一方から他方に液体を移送するように連通している。船体中央タンク4は、その長手軸x’xに沿って船1の略中央に位置し、典型的には、長手軸x’xに沿って船1の船首端5又は船尾端6から見て船1の長さLの30%以上70%以下の区域にある、好ましくは船1の長さLの40%以上60%以下の区域にある。
【0044】
本発明によって提供される1つの可能性によれば、液体は、好ましくは、この船体中央タンク4を介して船首タンク2と船尾タンク3との間で移送される。別の可能性によれば、液体は、この船体中央タンク4とは独立して、船首タンク2と船尾タンク3との間で移送される、又は移送され得る。
【0045】
この
図2に見られるように、船首タンク2、船尾タンク3、及び船体中央タンク4の間での液体の配分は、船1のプリムソルライン20が海/海洋の平面(局地的水位)とほぼ平行に延びるような配分である。本事例において、船1のプリムソルライン20は、
図2では喫水線209と一致している。
【0046】
図3は、船が船首タンク2、船体中央タンク4、及び、横軸y’yに沿って互いに対してオフセットされた2つの船尾タンク3’、3’ ’の4つのタンクを有する又は含む、本発明の実施形態を概略的に示す。これら2つの横方向にオフセットされた船尾タンク3’、3’’を有するこの種の実施形態は、これら2つの船尾タンク’、3’’のみが示されている
図4においてより明確に表されている。
【0047】
図3に見られるように、タンク2、3’、3’’及び4の各々は、少なくとも1つの充填/排出ライン30及び1つの液体移送ライン40を有する。充填/排出ライン30は、対象のタンクが、それが連通する他のタンクとは独立して充填される又は空にされることを可能にし、一方、移送ライン40は、液体がそのタンクから又はそのタンクに輸送されることを可能にして、それぞれ、少なくとも部分的にそのタンクを空にして少なくとも部分的に別のタンクを充填し、少なくとも部分的にそのタンクを充填して少なくとも部分的に別のタンクを空にする。もちろん、
図3に示すような様々なタンクを相互接続する液体移送ライン40のネットワークは、この種のネットワークの一例に過ぎず、このネットワークが少なくとも2つのタンク2、3’、3’’、4の間での液体の循環を可能にする又は許可するという目的に適う限り、これらの移送ライン40のどのような配置又はレイアウトも用いることができる。液体移送ライン40のネットワークは、少なくとも1つのポンプ60、好ましくは複数のポンプ60、及び、少なくとも部分的にタンク2、3’、3’’、又は4を空にしてそれが収容する液体を別のタンク2、3’、3’’、又は4に移送することができる、タンク2、3’、3’’、4と同じ数の可能なポンプ60を含む。もちろん、ポンプ60のように遠隔制御される複数のバルブが、液体を適切な/所望のタンクに送るために、この液体移送ラインネットワーク40に設けられている。
【0048】
複数の液体タンク2、3’、3’’、4、及び、それらのタンク2、3’、3’’、4の少なくとも1つから別のタンクへの液体の移送が可能であることは、第一に、船1の傾斜又は船1のプリムソルライン20が、従来、長手軸x’x又は海/海洋の表面が延びる平面と平行になるように変更されることを可能にすることを目的としている。これらのタンク2、3’、3’’、4、及び、少なくとも2つのタンク間での液体の移送が可能であることの第2の目的は、特に特定の港又は港湾区域に入るときに船長が船を導くために乗船するときに、その操縦性を許可又は促進するために必要な最小限のレベルまでではあるが、船1の喫水線を下げる又は喫水を大きくすることにある。
【0049】
図4に示す実施形態において、船1は、横軸y’yに沿って互いに対してオフセットされた少なくとも2つのタンク3’、3’’を含む。より正確には、第1のタンク3’は、横軸y’yに沿った船の幅lに沿った最初の3分の1、好ましくは最初の4分の1に位置し、第2のタンク3’’は、やはり船1の幅lに沿った最後の3分の1、好ましくは最後の4分の1に位置する。
【0050】
本図において、右舷タンク3’がその最大の容積/質量容量の約3分の2(2/3)まで充填されているのに対し、左舷タンク3’は空であることが示されている。この重量差又は勾配があるために、船1は片側に傾く。換言すれば、ここでは横軸y’yと平行に延びる船1のプリムソルライン20は、海面/海洋面の平面50(局地的水位)に対して(非ゼロの)傾斜又は角度を有する。そのため、これら2つのタンク3’、3’’間で液体を移送することにより、船1のプリムソルライン20が右舷側の海/海洋の水位50と同じ高さになり、それにより、添付の図には示さないシャトル等が船1に隣接して配置されるようにすることで、困難な港又は港湾区域への接近及び進入のために船を導くことが可能な船長を引き渡すことができる。そのシャトル等がなければ、海の状態が予測不可能な場合に、船1の船体の側面21によって押し潰される又は損傷する危険性がある。実際、本発明によれば、船1の横軸y’yに沿って(すなわち、その幅に沿って)オフセット又は離隔して配置された2つのタンク3’、3’’からの液体の移送が可能であることにより、特に、(船1に貨物/積荷がないために)海/海洋の水位50よりも明らかに上方に位置する傾斜した側面21によって押しつぶされる/損傷する危険を生じないように小型ボートを横付けするときに、船を必要に応じて傾かせることが可能となる。
【0051】
図5a及び
図5bは、その特定の特性及び寸法をもたらしている、本発明に係る船1の設計上の選択肢の1つを示している。したがって、船1が、特に改修及び場合により修理を受けるために乾ドック内にあるとき、
図5bに示すように、(横軸y’yに沿った)強い横風で転覆する危険がないことが不可欠である。実際、海水バラストがないため、本発明に係る船1は、台形状の下部船体、すなわち特に、2つの傾斜した側面21がそれぞれ延びる2つの端部を有する平面下部22を有する。船1の長さL及び高さを考慮して、船1の平面下部22は、空荷時重量を考慮して、最大の力(その値は国際的な規格又は規制によって定められる)を及ぼす横風に船1が耐えることができるように十分に広く設計される。したがって、本発明に係る船1の平面部分22の幅は、その長さL、その高さ、及びその空荷時重量の関数であり、前記船1が、横方向に、軸y’yに沿って、又はその軸と平行に向けられた極端な力(乾ドックでの安全なメンテナンス作業に関する規制によって定量化される)に耐えることができ、それにより、船1が乾ドック内にあるときは傾斜せず下部船体の平面部分22に載るようなものである。
【0052】
図6は、本発明に係る船1の補足的な態様を示している。本図では、船1の半船体(幅l/2)が垂直断面で表されている。ここで、海水バラストを有しない本発明に係る船1の設計は、第1に、船1が空荷である(貨物/商品がない)ときに、船1の喫水線44が船1のプリムソルライン20、すなわち下部船体から延びる傾斜した側面21が終端する区域に近くなることを確実にすることを目的とする。空荷時の船1の喫水線44と船1のプリムソルライン20との間の差は、最大で1メートルに等しく、好ましくは50cm(センチメートル)未満、又はさらに非常に好ましくは30cm未満である必要がある。この
図6には、船1に積荷があるとき、すなわち貨物及び/又は商品を輸送しているときの船1の喫水線45も示されていることに留意されたい。さらに、2つの側面は、10°以上45°以下、好ましくは15°以上35°以下の角度αによる傾斜を有する。
【0053】
低い高さhに関する、海水バラストを有しない船1のV字型下部船体の製造についてのこれらの要件は、特に、ただし非限定的に、海又は海洋が荒れている場合に船に横付けされる小型ボートを損傷又は破損しないように定められる。
【0054】
図7は、
図1に示すような係留タンク12を含む船の断面における機能概略図を示す。上記で説明したように、この種の係留タンク12は、船1のバランスを取って水平なトリム、すなわち水位に平行なプリムソルライン20を有することを可能とするために、船の船首に位置する。
【0055】
この
図7において、空荷時、すなわち積荷を輸送していないときの船の喫水線が、係留タンク12が空の場合は番号109、充填されている場合は番号209で示されている。係留タンク12は、一方では供給ライン13に接続され、他方では排出ライン14に接続されている。供給ラインは、例えば、港湾区域から海水を汲み上げて係留タンク12を充填するポンプ(不図示)を用いて、前記係留タンク12を充填するために、係留タンク12の上部へと排出する。排出ライン14は、係留タンク12を空にすることを可能とするために、係留タンク12の底部に配置されている。この排出ライン14は、係留タンク12の内容物を海に注ぐために、例えばプリムソルライン20の上方の船1の側面に直接排出する。