(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】個別被覆型ストランドを製造するための方法、得られるストランド、およびストランド製造設備
(51)【国際特許分類】
D07B 1/16 20060101AFI20241118BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20241118BHJP
B05D 7/20 20060101ALI20241118BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241118BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
D07B1/16
B05D7/14 P
B05D7/20
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
(21)【出願番号】P 2021505321
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 FR2019051727
(87)【国際公開番号】W WO2020025872
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-06
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509167338
【氏名又は名称】ソレタンシュ フレシネ
【氏名又は名称原語表記】SOLETANCHE FREYSSINET
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ファブリー
(72)【発明者】
【氏名】イヴィチャ・ジバノビッチ
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538298(JP,A)
【文献】特開2002-201577(JP,A)
【文献】特開平05-179586(JP,A)
【文献】特開2002-235291(JP,A)
【文献】特開2000-045193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0174530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00-9/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別被覆型ストランド(10)を製造するための方法であって、前記方法は、
金属ワイヤ(16)のグループを提供するステップと、
フィラー製品塗布ステーション(26)に進入した金属ワイヤの前記グループを拡げるステップと、
フィラー製品塗布ステーション(26)において、該フィラー製品塗布ステーション(26)内での金属ワイヤの前記グループの前進に応じて、拡げられた前記金属ワイヤに第1フィラー製品(17)および第2フィラー製品(18)を選択的に塗布するステップであって、前記第1フィラー製品(17)は、前記ストランドの第1部分に塗布され、前記第2フィラー製品(18)は、前記ストランドの第2部分に塗布され、それにより前記第1および第2部分(11,12)は、前記ストランドの長さに沿って交互に連続して延在する、ステップと、
前記フィラー製品塗布ステーション(26)を離れるときに、前記グループの前記金属ワイヤを押し固めるステップと、
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の下流において、金属ワイヤ(16)の前記グループをダイ(52)を通過して搬送するステップと、
前記ダイ(52)を通過する金属ワイヤ(16)の前記グループの周りにプラスチック材料を押出し、それにより、前記押出されたプラスチック材料で形成された連続被覆(15)内に前記第1および第2フィラー製品(17,18)でコーティングされた金属ワイヤの前記グループを包むステップと、を含み、
前記第2フィラー製品(18)は、前記第1フィラー製品(17)よりも、金属ワイヤ(16)の前記グループおよび前記被覆(15)に対してより大きな接着力を有する、方法。
【請求項2】
前記被覆(15)は、一定の外部セクションを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィラー製品塗布ステーション(26)は、前記第1フィラー製品(17)を前記グループの前記拡げられた金属ワイヤに塗布するために選択的にアクティブにされる第1部分(38)と、前記第2フィラー製品(18)を前記グループの前記拡げられた金属ワイヤに塗布するために選択的にアクティブにされる第2部分(33)と、を備え、前記第2部分(33)は、前記ダイ(52)に対して前記第1部分よりも上流にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の前記第1部分(38)は、前記グループの前記拡げられた金属ワイヤに向かって集まるように方向づけられた前記第1フィラー製品(17)を噴霧するためのノズル(41)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の前記第1部分(38)は、前記噴霧ノズル(41)の下で前記第1フィラー製品(17)を回収するためのトレイ(42)と、前記トレイに回収された前記第1フィラー製品を再循環させて前記噴霧ノズルに戻すためのシステムと、をさらに備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の第2部分(33)は、複数の成分(R,H)を混合するためのミキサー(35)と、前記グループの前記拡げられた金属ワイヤ上に混合物を堆積させるためのヘッド(36)と、を備える、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
空気カーテンは、前記フィラー製品塗布ステーション(26)の第1部分(38)と第2部分(33)との間の拡げられた金属ワイヤの前記グループ上に吹き付けられる、請求項3から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の上流の金属ワイヤ(16)の前記グループを80℃以上140℃以下の温度に加熱するステップを含む請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
金属ワイヤ(16)の前記グループは、前記フィラー製品塗布ステーション(26)の上流で誘導により加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の下流の押し固めた金属ワイヤの前記グループの温度を調整するステップを含み、金属ワイヤの前記グループは、60℃以上120℃以下の温度で、前記被覆(15)の前記プラスチック材料が押出される前記ダイ(52)に到達する、請求項3から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の下流の金属ワイヤの前記グループの前記温度の前記調整は、
金属ワイヤの前記グループを10℃以上30℃以下の温度に冷却するステップと、
次に、
金属ワイヤの前記グループを60℃以上120℃以下の前記温度に再加熱するステップと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
金属ワイヤ(16)の前記グループは、空気の流れにより冷却され、誘導により加熱される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ダイ(52)は、押出ヘッド(29)の一部分であり、そこでは、
接着プライマー(B)と、
前記被覆(15)の前記プラスチック材料(PE)と、が、金属ワイヤの前記グループ上に連続的に堆積される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記押出ヘッド(29)が、金属ワイヤの前記グループが前記第1フィラー製品(17)でコーティングされている前記ストランドの
第1部分(11)により通過されたとき、前記接着プライマー(B)の射出率は、前記押出ヘッドが、金属ワイヤの前記グループが前記第2フィラー製品(18)でコーティングされている前記ストランドの
第2部分(12)を通過する瞬間と比較して減少する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ダイ(52)の下流において、
前記被覆に包まれた金属ワイヤの前記グループを水浴(30)で冷却するステップを含む請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
個別被覆型ストランドであって、
金属ワイヤ(16)のグループと、
一定の外部セクションの連続プラスチック材料被覆(15)と、
前記ストランドの第1部分(11)において金属ワイヤの前記グループと共に前記被覆に収容された第1フィラー製品(17)と、
前記第1部分とは異なる前記ストランドの第2部分(12)において金属ワイヤの前記グループと共に前記被覆に収容された第2フィラー製品(18)であって、該第2フィラー製品(18)は、前記金属ワイヤ(16)および前記被覆(15)の内面の両方に接着し、前記第1および第2部分は、前記ストランドの長さに沿って交互に連続して延在し、前記第2フィラー製品は、前記第1フィラー製品よりも金属ワイヤの前記グループおよび前記被覆に対してより大きな接着力を有する、第2フィラー製品と、を備える個別被覆型ストランド。
【請求項17】
第1部分(11)と第2部分(12)との間に位置づけられる少なくとも1つの遷移部分(13)を有し、前記第1および第2フィラー製品(17,18)の混合物は、金属ワイヤ(16)の前記グループと共に前記被覆(15)に含まれる、請求項16に記載の個別被覆型ストランド。
【請求項18】
それぞれの前記遷移部分(13)は、20cm以上3m以下の長さを有する、請求項17に記載の個別被覆型ストランド。
【請求項19】
ストランド(10)の長さに沿って交互に連続して延在した第1部分(11)および第2部分(12)を備えた個別被覆型ストランド(10)を製造するための設備であって、
金属ワイヤのグループを受容して、該グループの金属ワイヤ(16)を拡げるスプレッダー(32)と、
該スプレッダーの下流のフィラー製品塗布ステーション(26)と、
第1フィラー製品(17)および第2フィラー製品(18)のうちから、前記フィラー製品塗布ステーション内での拡げられた金属ワイヤ(16)の前記グループの前進に応じて塗布されるフィラー製品の組成を選択するための、前記フィラー製品塗布ステーション(26)のコントローラ(50)であって、前記第1フィラー製品(17)は、前記ストランドの第1部分(11)に塗布され、前記第2フィラー製品(18)は、前記ストランドの第2部分(12)に塗布されて、それにより前記第1および第2部分(11,12)は、前記ストランドの長さに沿って交互に連続して延在する、コントローラと、
前記フィラー製品塗布ステーション(26)の下流側で、金属ワイヤ(16)の前記グループを受容するためのダイ(52)と、
前記ダイ(52)を通って搬送された金属ワイヤ(16)の前記グループの周りにプラスチック材料を押出し、それにより、前記押出されたプラスチック材料により形成された連続被覆(15)内に前記フィラー製品でコーティングされた金属ワイヤの前記グループを包むためのシステム(29)と、
を備え、
前記第2フィラー製品(18)は、前記第1フィラー製品(17)よりも、金属ワイヤ(16)の前記グループおよび前記被覆に対してより大きな接着力を有する、個別被覆型ストランド(10)を製造するための設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプレストレスにまたは構造物部分を吊るすために土木構造物で使用される個別保護型ストランドに関する。
【背景技術】
【0002】
個別被覆型ストランドは、通常は7本の、共に撚られた金属ワイヤのグループを備える。金属ワイヤは頻繁に電気化学的処理(亜鉛メッキ、ガルファンコーティングなど)を受け、腐食へのある程度の耐性を得る。
【0003】
日常的に使用されるのは、プラスチック材料の、通常は高密度ポリエチレン(PEHD)またはエポキシの、被覆により個別に保護されており、この被覆は、金属ワイヤの周りに密封されたバリアを作成する。さまざまな種類(ワックス、グリース、ポリマーなど)のフィラー製品が、金属ワイヤと個々の被覆の間に存在する隙間を埋め、ストランドの腐食からの保護を強化する。
【0004】
フィラー製品は、ストランドの金属ワイヤが個別の被覆に対してスライドすることを可能にするか(被覆されてグリースを塗られた、または被覆されてワックスを塗られたストランド)、または反対に、接着に対して被覆とストランドとの間でせん断力を伝達することを可能にする(密着型(coherent)ストランド)。
【0005】
密着型ストランドでは、フィラー製品は、典型的には、金属ワイヤおよび被覆の内部に接着するポリマーである。密着型ストランドは、特に、接線方向の力を被覆から金属ワイヤに伝達する必要があるときに使用可能である。例えば、特許文献1を参照されたい。これは、例えば、それぞれの吊下手段によって伝達される荷重が吊下部材取付カラーと同じ高さでケーブルに接線方向の力を引き起こす、吊り橋を支持するケーブル、またはアンカー構造物のマストに設置された方向変更具においても同様である。
【0006】
被覆されてグリースを塗られた、または被覆されてワックスをかけられたストランドにおいて、フィラー製品は潤滑剤であり、この潤滑剤は、特にその金属ワイヤ間の接触を潤滑することによりストランドの疲労挙動を改善するという利点を有する。例えば、特許文献2を参照されたい。さらに、被覆されてグリースを塗られた、または被覆されてワックスを塗られたストランドに使用されるグリースまたはワックスは、一般に、密着型ストランドに使用される樹脂よりも安価であり、その結果、被覆されてグリースを塗られた、または被覆されてワックスを塗られたストランドは、より低い単価を有する。
【0007】
特許文献3は、金属ワイヤと被覆との間の衝突により引き起こされるノイズを妨げることを目的としたストランドを開示する。この目的のために、ストランドは、ストランドに沿って交互に、金属ワイヤのグループとその管状ポリエチレン被覆との間にウレタンフォームの層が形成される部分と、被覆が締め付けられて金属ワイヤのグループと接触する部分と、を含む。
【0008】
特許文献4は、密着型の部分を有するストランドに沿って交互に配置された密着型の部分を有するストランドを開示する。このストランドは、被覆されてワックスを塗られたストランドから製造されており、このストランドの被覆は、接着特性を得る樹脂を塗布する前に、ワックスと同様に、局所的に除去されている。この方法は、いくらか非工業的であり、したがって比較的費用がかかるため、完成したストランドの被覆が不連続になる。さらに、密着型ストランドに必要な接着を妨げないようにワックスを除去することは実際には困難である。これらの部分を完全にかつ容易にグリース除去できないことは、(一度硬化した)樹脂の鋼への良好な接着を制限しまたは妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第0855471号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1211350号明細書
【文献】特開2005-048405号公報
【文献】欧州特許出願公開第2601344号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、接着被覆を有する1つ以上の部分と、同じ被覆が金属ワイヤに接着することを必要とすることなく延在する1つ以上の部分と、を有するストランドを製造するための信頼できかつ経済的な技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
個別被覆型ストランドを製造するための方法が提案される。この方法は、
金属ワイヤのグループをダイを通して搬送するステップと、
ダイの上流で、ストランドの少なくとも第1部分に第1フィラー製品を塗布するステップと、
ダイの上流で、第1部分とは異なるストランドの少なくとも第2部分に第2フィラー製品を塗布するステップであって、第2フィラー製品は、第1フィラー製品よりも金属ワイヤのグループに対してより大きな接着力を有する、ステップと、
ダイを通過する金属ワイヤのグループの周りにプラスチック材料を押出し、それにより、押出されたプラスチック材料で形成された連続被覆内に第1および第2フィラー製品でコーティングされた金属ワイヤのグループを包むステップと、を含む。
【0012】
方法は、十分に制御された工業的条件下で、複合フィラーを有する被覆型ストランドを製造する。被覆は、一般に一定の外部セクションであり、必要に応じて、接着を得る製品または潤滑製品により、コーティングされた金属ワイヤの信頼性できかつ連続した保護を提供する。
【0013】
本発明は、それぞれの部分に必要な機械的特性を保証する一方で、すべての部分を覆う連続被覆の製造を可能にする。特に、硬化した樹脂の接着は、密着型ストランド部分にワックスが存在することにより妨げられることはない。
【0014】
方法の1つの特定の実施形態は、
フィラー製品塗布ステーションを含む、ダイまでの一連のステーションに沿って金属ワイヤのグループを移動させるステップと、
フィラー製品塗布ステーションに入るときにグループの金属ワイヤを拡げるステップと、
フィラー製品塗布ステーション内の金属ワイヤのグループの前進に応じて、フィラー製品塗布ステーション内の拡げられた金属ワイヤに第1フィラー製品および第2フィラー製品を選択的に塗布するステップと、
フィラー製品塗布ステーションを離れるときにグループの金属ワイヤを押し固める(compact)ステップと、を含む。
【0015】
フィラー製品塗布ステーションは、第1フィラー製品をグループの拡げられた金属ワイヤに塗布するために選択的にアクティブにされる第1部分と、第2フィラー製品をグループの拡げられた金属ワイヤに塗布するために選択的にアクティブにされる第2部分と、を備え得、第2部分は、ダイに対して第1部分よりも上流にある。
【0016】
フィラー製品塗布ステーションの一実施形態では、第1部分は、グループの拡げられた金属ワイヤがフィラー製品塗布ステーション内を移動する線に向かけて集まるように方向づけられた第1フィラー製品を噴霧するためのノズルを備える。この第1部分は、噴霧ノズルの下で第1フィラー製品を回収するためのトレイと、トレイに回収された第1フィラー製品を再循環させて噴霧ノズルに戻すためのシステムと、をさらに備え得る。
【0017】
フィラー製品塗布ステーションの一実施形態では、フィラー製品塗布ステーションの第2部分は、複数の成分を混合するためのミキサーと、グループの拡げられた金属ワイヤ上に混合物を堆積させるためのヘッドと、を備える。
【0018】
空気カーテンは、フィラー製品塗布ステーションの第1部分と第2部分との間の拡げられた金属ワイヤのグループ上に吹き付けられ得る。
【0019】
方法の一実施形態は、例えば誘導により、フィラー製品塗布ステーションの上流の金属ワイヤのグループを80℃以上140℃以下の温度に加熱するステップを含む。
【0020】
方法の一実施形態は、フィラー製品塗布ステーションの下流の押し固めた金属ワイヤのグループの温度を調整するステップを含み、金属ワイヤのグループは、60℃以上120℃以下の温度で、被覆のプラスチック材料が押出されるダイに到達する。フィラー製品塗布ステーションの下流の金属ワイヤのグループの温度の調整は、金属ワイヤのグループを10℃以上30℃以下の温度に冷却し、次に金属ワイヤのグループを60℃以上120℃以下の温度に再加熱することを含み得る。冷却は空気の流れにより引き起こされ、加熱は誘導により引き起こされる。
【0021】
方法の一実施形態では、ダイは、押出ヘッドの一部分であり、そこでは、接着プライマーと被覆のプラスチック材料とが、金属ワイヤのグループ上に連続的に堆積される。
【0022】
押出ヘッドが金属ワイヤのグループが第1フィラー製品でコーティングされているストランドの一部分を通過させたとき、接着プライマーの射出率は、押出ヘッドが金属ワイヤのグループが第2フィラー製品でコーティングされているストランドの一部分を通過させる瞬間と比較して減少し得る。
【0023】
ダイの下流において、被覆に包まれた金属ワイヤのグループは、水浴で冷却され得る。
【0024】
本発明の別の側面は、個別被覆型ストランドに関し、ストランドは、
金属ワイヤのグループと、
一定の外部セクションの連続プラスチック材料被覆と、
ストランドの少なくとも第1部分において金属ワイヤのグループと共に被覆に収容された第1フィラー製品と、
第1部分とは異なるストランドの少なくとも第2部分において金属ワイヤのグループと共に被覆に収容された第2フィラー製品であって、第2フィラー製品は、第1フィラー製品よりも金属ワイヤのグループおよび被覆に対してより大きな接着力を有する、第2フィラー製品と、を備える。
【0025】
個別被覆型ストランドは、第1部分と第2部分との間に位置づけられる少なくとも1つの第3部分を有し得、第1および第2フィラー製品の混合物は、金属ワイヤのグループと共に被覆に収容されている。それぞれの第3部分は、20cm以上1m以下の長さを有し得る。
【0026】
本発明のさらなる側面は、個別被覆型ストランドを製造するための設備に関し、設備は、
金属ワイヤのグループを受容するためのダイと、
ダイの上流側で、金属ワイヤのグループにフィラー製品を塗布するためのシステムと、
ダイを通って搬送された金属ワイヤのグループの周りにプラスチック材料を押出し、それにより、押出されたプラスチック材料により形成された連続被覆内にフィラー製品でコーティングされた金属ワイヤのグループを包むためのシステムと、
フィラー製品塗布システムのコントローラであって、フィラー製品塗布システム内の金属ワイヤのグループの前進に応じて、塗布されるフィラー製品の組成を、第1製品と第1製品よりも金属ワイヤのグループおよび被覆に対してより大きな接着力を有する第2製品とから選択するための、コントローラと、を備える。
【0027】
本発明の他の特定の特徴および利点は、添付の図面を参照して与えられる非限定的な実施形態の以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による個別被覆型ストランドの一実施形態の概略側面図である。
【
図2】
図1に示される平面II-IIの断面での個別被覆型ストランドの図である。
【
図3】
図1に示される平面III-IIIの断面での個別被覆型ストランドの図である。
【
図4】本発明による製造設備の一例の概略図である。
【
図5】ストランドの金属ワイヤにワックスを塗布するために使用される設備の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1から
図3は、個別被覆型ストランド10を示し、このストランドは、ストランドの長さに沿って、ストランドの被覆15が金属ワイヤ16のグループに接着しない部分11と、被覆15が金属ワイヤ16のグループに接着する部分12と、を連続して有する。
【0030】
示される例では、グループの金属ワイヤ16は、(ストランド10自身が直線状であるとき)実質的に直線状の中心ワイヤと、中心ワイヤの周りに撚られた6本の周辺ワイヤと、を含む7本である。
【0031】
可撓性フィラー製品は、曲線三角形形状セクションで隙間を埋め、これら曲線三角形形状セクションは、中心ワイヤの回りに螺旋状に延在し、周辺ワイヤの外部をも覆う。このフィラー製品は、金属ワイヤ16のグループと共に被覆15の内側に収容される。
【0032】
被覆15は、例えば、PEHDで作成される。
【0033】
ストランド10の部分11において、フィラー製品17は、潤滑特性を有する。それは、特にワックスまたはグリースであり得る。本発明を限定することなく、本説明の残りの部分では、フィラー製品17はワックスであると見なされる。
【0034】
ストランド10の部分12において、フィラー製品18は、金属ワイヤ16と被覆15の内側表面との両方に接着する。したがって、接線方向の力が被覆15からワイヤ16に伝達されるときに発生するせん断応力に抵抗することが可能である。本発明を限定することなく、本説明の残りの部分では、フィラー製品18は樹脂であると見なされる。
【0035】
被覆15は、ストランド10すべてに沿って金属ワイヤ16のグループの周りに連続的に延在する。部分11および部分12は、ストランドの長さに沿って交互にある。
【0036】
図1が示すように、それらの間には、金属ワイヤ16のグループを有する被覆15に含まれる製品17および18(例えば、ワックスおよび樹脂)の混合物である遷移部分13が存在し得る。遷移部分13は、典型的には、20cm以上3m以下の長さを有する。その長さは、例えば、40cmから50cmまでであり得る。
【0037】
一用途例では、個別被覆型ストランド10は、ブリッジなどのアンカー構造物のアンカーの一部分である。一部のアンカー構造物の設計では、アンカーはマストに取り付けられたサドルにおいて方向転換される。そのサドルでは、アンカーを構成するストランドは、機械的強度を低下させることなく方向転換される。ストランドとサドルのダクトとの間には十分な摩擦が存在しなければならず、それぞれのサドルは、アンカーがマストのいずれかの側で受ける差分力のサドルを受容するマストによって最適に取り込むために、ストランドを受容する。この用途では、アンカーを構成するストランド10は、接着を有する部分12がサドルの本体に配置され、接着を有しない部分11がストランドの残りの部分に形成されてアンカーの主要部分を構成するように製造することができる。一般にアンカーの長さの大部分を構成するこの主要部分では、ストランドの金属ワイヤ16の間に存在する摩擦は、ワックス17により提供される潤滑により制限される。さらに、ワックス17は一般に接着性樹脂18よりも安価であるため、サドルと同じ高さで接着を有する必要性により生じる追加のコストは制限されたままである。
【0038】
個別被覆型ストランドを製造する方法の結果である遷移部分13は、ストランドの機械的挙動を妨げない。反対に、それらは、接着を有する部分12と接着を有しない部分11との間の急激な遷移を回避するため有利である。
【0039】
この種の個別被覆型ストランドを製造するための設備は、
図4に概略的に示される。
【0040】
事前に製造された金属ワイヤ16のグループ(あるいは亜鉛メッキまたはガルファンコーティングされた裸のストランド)は、ドラム20上に供給され、設備に沿って搬送されるために巻き出される。完成した製品は、個別被覆型ストランド10であり、操作が終了すると、それを保管および輸送することができる別のドラム22上に巻き取られる。
【0041】
設備においてその経路に沿ってストランドを駆動するために、2つのキャタピラートラック駆動装置23,24が提供され、例えば、1つはドラム20上の裸のストランド16を取り上げ、もう1つは個別被覆型ストランド10をドラム22に搬送するために引っ張る。必要に応じて、他の駆動装置が経路に沿って提供され得る。
【0042】
様々な処理ステーション25~30は、設備内のストランドの経路に沿って連続して延在する。
【0043】
駆動装置23の下流に位置づけられる第1ステーションは、裸のストランド16が温度T1に加熱される、コイル25である。温度T1は、典型的には、80℃以上140℃以下である。誘導加熱は効率的であり、加熱要素を金属ワイヤと接触させる必要を回避する。
【0044】
次に、フィラー製品塗布ステーション26は、ストランドの金属ワイヤ16の間および周囲にワックス17または樹脂18を選択的に塗布する。
【0045】
ステーション26は、最初に、ストランドの周辺ワイヤを把持し、それらにねじりを加えてそれらを拡げるスプレッダー32を備える。したがって、金属ワイヤは、拡げられた構成でステーション26を通過する。スプレッダーの後に、ステーション26は、樹脂18を堆積させるための部分33と、ワックス17を塗布するための部分38と、を備える。
【0046】
部分33は、1つ以上の樹脂ビード18をその上に堆積させるために、拡げられたワイヤのグループに方向づけられたヘッド36を備える。その後金属ワイヤを押し固めると、ペースト状の状態で堆積された樹脂18が変形され、ストランドの内側の隙間を埋め、その外面上に溢れ出る。ステーション26の下流端で、シェーパー34は、金属ワイヤ16がそれらの押し固めた構成に正しく戻されたことを確認し、過剰な樹脂18を除去する。
【0047】
樹脂18は、典型的には、2成分樹脂である。ヘッド36は、次に、混合物をヘッド36に送る前に、成分、すなわち樹脂のポリマーベースRおよび硬化剤Hを混合するミキサー35に接続される。
【0048】
樹脂18を堆積させる働きをする部分33の下流で、ステーション26は、ワックス17を塗布する働きをする部分38を備える。
【0049】
被覆されてワックスを塗られたストランドを製造するために、裸のストランドは、通常は流体ワックスの浴中で循環させられ、その後、このようにコーティングされたストランドの周りのテンプレートにより過剰なワックスが除去される。しかしながら、目的は個別被覆型ストランド10の接着により部分12でのワックスの存在を妨げることであるため、その方法は、本発明による方法の文脈では適切ではない。
【0050】
部分38は、好ましくは、ワックスWが搬送され、塗布温度に加熱されて流体状態となるタンク40と、流体状態のワックスをストランドの拡げられた金属ワイヤ上に噴霧するためのノズル41と、ノズル41から滴下したワックスを回収するためのストランド下のトレイ42と、トレイ42で回収されたワックスをタンク40および噴霧ノズル41に戻すための再循環システム(図示されず)と、を含む。
【0051】
噴霧ノズル41は、
図5および
図6に示される本体44に形成され得る。この本体44は、ストランドの拡げられた金属ワイヤが循環するボア45を含む。ノズル41は、ボア45の壁に形成される。示される例では、ストランドの経路に沿って連続して延在する4つのノズル41の2つのセットがある。この例では、それぞれのセットは、このストランドの移動方向に向かって集まる4つのノズルを含み、例えば、
図5に概略的に示されるように、互いに90°の方向を向く。その下方部分において、ボア45は、過剰なワックスをトレイ42に向けて排出するための穴46を含む。
【0052】
図4に概略的に示されるように、ワックスを塗布する働きをする部分38は、ストランドの金属ワイヤ16が押固形態に押し固められるゾーンに位置づけられる。特に、ノズル41の第1セットは、金属ワイヤ16がまだ拡げられている場所に配置され得、一方で、ノズル41の第2セットは、金属ワイヤ16が押し固められるようになるわずかに下流に配置され得る。したがって、これにより、ワックスが過剰に排出されないこと、およびワックスがストランドの隙間に十分に残ることを確実にする。ノズル41の第2セットは、ストランドの周辺の十分なコーティングを確実にする。
【0053】
ステーション26を離れる際に、シェーパー34は、必要に応じて、過剰な樹脂18または過剰なワックス17を除去する。
【0054】
ステーション26の部分33が部分38に干渉することを妨げるために、これらの2つの部分の間の分離は、コンプレッサー48により吹き付けられた圧縮空気カーテンにより引き起こされ得る。
【0055】
フィラー製品塗布ステーション26の部分33,38は、ヘッド36により塗布される樹脂の流量およびノズル41により噴霧されるワックスの流量が選択されるように、ステーション26におけるストランドの前進に応じて、コントローラ50により制御される。ステーション26内を循環しているものがストランド10の部分11であるとき、コントローラ50は、部分38をアクティブにし、部分33を非アクティブにする。逆に、ステーション26内を循環しているものがストランド10の部分12であるとき、コントローラ50は、部分33をアクティブにし、部分38を非アクティブにする。
【0056】
このため、コントローラ50は、個別被覆型ストランド10の接着を有する部分12および接着を有しない部分11の位置の厳密な制御を可能にする。したがって、部分11,12の空間分布を自由に調節して、ストランドを装備することを意図した構造物に適合するようにストランド10を調節することが可能である。
【0057】
部分11及び12間の遷移において、コントローラ50はまた、必要な方法で遷移部分13を形成するために、フィラー製品の量を調整する。
【0058】
ステーション26の下流で、樹脂またはワックスでコーティングされたストランドの温度は、一方では樹脂18を硬化させるために、他方では、ストランドが押出ヘッド29に接近するために適切な温度を確保するために、ステーション27,28において調整される。
【0059】
最初に、ステーション27は、例えば、コーティングされたストランドを10℃以上30℃以下の温度T2に冷却するための、5mから10mまでの間の長さの空冷トンネルである。
【0060】
その後、ステーション28は、ストランドの金属ワイヤを前述の温度T1よりも低い温度T3に加熱する別のコイルである。温度T3は、例えば、60℃以上120℃以下である。
【0061】
コイル28を離れる際に、ストランドは、押出ヘッド29に貫通する。押出ヘッド29は、その下流端にダイ52を含む。ダイ52のすぐ上流は、ストランドの周辺に、冷却後に被覆15を形成するために、接着プライマーBと、次いで液体状態にされたポリエチレンPEと、を連続的に導入するための射出システムである。接着プライマーBを射出するためのダクト53は、ポリエチレンPEを射出するためのダクト54のすぐ上流に位置づけられ、それら自身は、押出ヘッド29のダイ52のすぐ上流に配置される。
【0062】
プライマーBは、ストランド10の部分12に堆積された樹脂18上への被覆15の接着を確実にする。ある特定の例では、これはアルケマ社による登録商標オレバックとして販売されているポリマーである。ストランド10の部分11では、後者を妨害しないために、射出システムにおける接着プライマーBの流れを止めないことが好ましい。この流量は、しかしながら、セクション11では接着プライマーBは必要でないため、減少し得る。プライマーBは、被覆15の内側表面に接着するが、部分11の潤滑ワックスの挙動を妨げない。
【0063】
ダイ52の下流で、キャタピラートラック駆動装置24の上流の設備の最終ステーションは、被覆15に包まれた金属ワイヤ16のグループが室温、すなわち10℃から30℃までの間に冷却される水浴30である。
【0064】
上記の実施形態は、本発明の単なる例示である。添付の特許請求の範囲から生じる本発明の範囲から逸脱することなく、それらに様々な改変を加えられ得る。
【符号の説明】
【0065】
10…個別被覆型ストランド、11…第1部分、12…第2部分、13…第3部分、15…被覆、16…金属ワイヤ、17…第1フィラー製品、18…第2フィラー製品、25…ステーション、26…フィラー製品塗布ステーション、27…ステーション、28…ステーション、29…押出ヘッド(ステーション)、30…水浴(ステーション)、33…第2部分、35…ミキサー、36…ヘッド、38…第1部分、41…ノズル、50…コントローラ、52…ダイ、B…接着プライマー、H…成分、PE…プラスチック材料、R…成分