(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】オフセットが低減された垂直ホール素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 52/00 20230101AFI20241118BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20241118BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20241118BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20241118BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241118BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241118BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241118BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241118BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241118BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H10N52/00 P
H10N52/00 Z
H01L21/88 J
H01L27/04 A
H01L27/06 102Z
H01L27/088 331A
G01R33/07
(21)【出願番号】P 2021514486
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2019062866
(87)【国際公開番号】W WO2019219941
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516140753
【氏名又は名称】エルファウンドリー エッセ.エッレ.エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュミット カルステン
(72)【発明者】
【氏名】スピッツルスパーガー ゲルハルト
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-531757(JP,A)
【文献】特表昭62-502928(JP,A)
【文献】特表2015-514207(JP,A)
【文献】特表2017-504041(JP,A)
【文献】特開2004-207477(JP,A)
【文献】特開昭63-073113(JP,A)
【文献】特開2006-210731(JP,A)
【文献】特開平04-026170(JP,A)
【文献】特開2016-070829(JP,A)
【文献】特開2016-102702(JP,A)
【文献】特開平06-186103(JP,A)
【文献】特開平08-330646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0067970(US,A1)
【文献】特表2018-536143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0021027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 52/00
H01L 21/3205
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/088
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直ホール素子であって、
・第1の表面(101a)および第2の表面(101b)を有している第1の導電型の基板(101)と、
・前記基板(101)内に配置され、第2の導電型を有しているウェル(102)と
を備える垂直ホール素子において、
前記ウェル(102)は、前記基板(101)の前記第2の表面(101b)に露出し、当該垂直ホール素子は、前記基板(101)の前記第1の表面(101a)に配置されて前記ウェル(102)に接触した少なくとも2つの端子(1、2)と、前記基板(101)の前記第2の表面(101b)に配置されて前記ウェル(102)に接触した少なくとも2つの端子(3、4)を備え、前記基板(101)の前記第2の表面(101b)の前記少なくとも2つの端子(3、4)は、前記基板(101)への正射影にて前記基板(101)の前記第1の表面(101a)の前記少なくとも2つの端子(1、2)の下方に配置されており、
・前記少なくとも2つの端子(1、2)は、前記基板(101)の前記第1の表面(101a)に隣同士に配置された第1の端子(1)および第2の端子(2)を含み、
・前記少なくとも2つの端子(3、4)は、前記基板(101)の前記第2の表面(101b)に隣同士に配置された第3の端子(3)および第4の端子(4)を含み、
・前記第4の端子(4)は、前記第1の端子(1)の中心と前記第4の端子(4)の中心との間の仮想の直線が前記基板(101)の第1および第2の表面(101a、101b)に垂直になるように、前記第1の端子(1)の直下に位置し、
・前記第3の端子(3)は、前記第2の端子(2)の中心と前記第3の端子(3)の中心との間の仮想の直線が前記基板(101)の第1および第2の表面(101a、101b)に垂直になるように、前記第2の端子(2)の直下に位置する、ことを特徴とし、
・前記第1および第2の端子(1、2)間の距離P、および前記第3および第4の端子(3、4)間の対応する距離と、
・前記第1の表面(101a)と前記第2の表面(101b)との間の厚さTと、
・
前記第1および第2の端子(1、2)が整列する方向における、前記第1および第4の端子(1、4)の縁と前記ウェル(102)の境界との間の距離D、および
前記第1および第2の端子(1、2)が整列する前記方向における、前記第2および第3の端子(2、3)の縁と前記ウェル(102)との境界の間の対応する距離と、
・前記第1および第2の端子(1、2)の
前記第1および第2の端子(1、2)が整列する方向に沿ったサイズL、および前記第3および第4の端子(3、4)の
前記第1および第2の端子(1、2)が整列する前記方向に沿ったサイズL’と、
を含む前記垂直ホール素子の設計パラメータが、前記垂直ホール素子が前記4つの端子に関して4回対称性であるように最適化され、前記4回対称性は、ブリッジの4つの脚に配置される4つの抵抗R1、R2、R3、およびR4がすべて同じ値を有するホール素子を表すホイートストンブリッジ等価回路によって表されていることをさらに特徴とする、垂直ホール素子。
【請求項2】
前記基板(101)の前記第1の表面(101a)の前記少なくとも2つの端子(1、2)の各々は、前記第1の表面(101a)から前記基板(101)内に延びる浅い高ドープ領域(103)を備え、前記高ドープ領域(103)は、前記第2の導電型を有する、請求項1に記載の垂直ホール素子。
【請求項3】
・前記基板(101)の前記第1の表面(101a)上に配置された誘電体層(104)と、
・前記誘電体層(104)に埋め込まれた配線(105、・・・、108)と
を備える、請求項1に記載の垂直ホール素子。
【請求項4】
前記基板(101)の前記第1の表面(101a)の前記少なくとも2つの端子(1、2)は、前記誘電体層(104)に埋め込まれた前記配線の第1の金属層(106)に接続されている、請求項3に記載の垂直ホール素子。
【請求項5】
前記誘電体層(104)の上面(104a)に接合されたキャリア基板(201)を備え、
前記誘電体層(104)の前記上面(104a)は、前記基板(101)の前記第1の表面(101a)上に配置された前記誘電体層の表面の反対側である、請求項3または4に記載の垂直ホール素子。
【請求項6】
前記基板(101)の前記第2の表面(101b)の前記少なくとも2つの端子(3、4)の各々は、前記第2の表面(101b)から前記基板(101)内に延びる浅い高ドープ領域(303)を備え、前記高ドープ領域(303)は、前記第2の導電型を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の垂直ホール素子。
【請求項7】
・第2の誘電体層(304)と、
・パッシベーション層(308)と
を備え、
前記第2の誘電体層(304)は、前記基板(101)の前記第2の表面(101b)上に配置され、前記パッシベーション層(308)は、前記
第2の誘電体層(304)上に配置される、請求項6に記載の垂直ホール素子。
【請求項8】
前記第3および第4の端子(3、4)の一方を前記誘電体層(104)内の前記配線へと接続するための前記基板(101)を貫く垂直方向の導電経路をもたらす導電性の充てん材(305)で満たされたシリコン貫通ビア(TSV)
を備える、請求項3に記載の垂直ホール素子。
【請求項9】
前記シリコン貫通ビア(TSV)の前記導電性の充てん材(305)は、前記シリコン貫通ビア(TSV)の内面に配置された誘電体ライナ(306)によって前記基板(101)から分離されている、請求項8に記載の垂直ホール素子。
【請求項10】
前記基板(100)の前記第1の表面(101a)から前記基板の前記第2の表面(101b)まで延びるディープトレンチアイソレーション構造(601)
を備え、
前記ウェル(102)は、前記ディープトレンチアイソレーション構造(601)によって前記基板(101)から分離されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の垂直ホール素子。
【請求項11】
垂直ホール素子であって、
・第1の表面(101a)および第2の表面(101b)を有している第1の導電型の基板(101)と、
・前記基板(101)内に配置され、第2の導電型を有しているウェル(102)と
を備える垂直ホール素子において、
第1の端子(A)、第2の端子(B)、第3の端子(C)、および第4の端子(D)を備え、前記第1および第3の端子(A、C)の各々は、接続領域(151a、151c)を備え、前記それぞれの接続領域(151a、151c)は、前記第1および第
3の端子(A、C)の、前記基板の前記第1の表面(101a)への接続をもたらし、前記第1および第3の端子(A、C)の各々は、ドープ領域(151a、151c)の内部の前記基板(101)の前記第1の表面(101a)から延びる前記ドープ領域(103a、103c)を介してアクセスされ、前記第2の端子(B)は、前記基板(101)の前記第1の表面(101a)に配置され、前記第4の端子(D)は、前記第2の端子(B)に対向して前記基板の前記第2の表面(101b)に配置されており、
・前記第2の端子(B)は、前記基板(101)の前記第1の表面(101a)から前記基板(101)内に延びる導電性領域(103b)を備え、
・前記第4の端子(D)は、前記基板(101)の前記第2の表面(101b)から前記基板(101)内に延びる導電性領域(303d)を備え、
・前記第4の端子(D)は、前記第2の端子(B)の前記導電性領域(103b)の中心と前記第4の端子(4)の前記導電性領域(303d)の中心との間の仮想の直線が前記基板(101)の第1および第2の表面(101a、101b)に垂直になるように、前記第2の端子(B)の直下に位置し、
前記第1および第3の端子(A、C)の各々は、前記ウェル(102)に埋め込まれた導電性の埋め込み領域(152a、152c)を備え、前記それぞれの接続領域(151a、151c)は、前記導電性の埋め込み領域(152a、152c)の、前記基板の前記第1の表面(101a)への接続をもたらし、
・前記導電性の埋め込み領域(152a、152c)の深さと、
・前記導電性の埋め込み領域(152a、152c)の間の横方向の間隔と、
・前記導電性領域(103b、303d)の空間的寸法と、
・前記第1の表面(101a)と前記第2の表面(101b)との間の厚さと、
を含む前記垂直ホール素子の設計パラメータが、前記垂直ホール素子が前記4つの端子(A、B、C、D)に関して4回対称性であるように最適化され、前記4回対称性は、ブリッジの4つの脚に配置される4つの抵抗R1、R2、R3、およびR4がすべて同じ値を有するホール素子を表すホイートストンブリッジ等価回路によって表されている、ことを特徴とする垂直ホール素子。
【請求項12】
・前記基板(101)の前記第1の表面(101a)上に配置された誘電体層(104)と、
・前記誘電体層(104)の上面(104a)に取り付けられたキャリア(201)と
を備え、
前記誘電体層(104)の前記上面(104a)は、前記基板(101)の前記第1の表面(101a)上に配置された前記誘電体層の表面の反対側である、請求項
11に記載の垂直ホール素子。
【請求項13】
・前記基板(101)の前記第1の表面(101a)から前記ウェル(102)へと前記第1の端子(A)の前記埋め込み領域(152a)まで延びる第1のドーピングウェル(153)と、
・前記基板(101)の前記第1の表面(101a)から前記ウェル(102)へと前記第3の端子(C)の前記埋め込み領域(152c)まで延びる第2のドーピングウェル(153)と
を備える、請求項
12に記載の垂直ホール素子。
【請求項14】
・前記第1の端子(A)の前記接続
領域(151a)は、第1の誘電体構造(154)によって取り囲まれ、
・前記第3の端子(C)の前記接続
領域(151c)は、第2の誘電体構造(154)によって取り囲まれる
請求項
11~
13のいずれか一項に記載の垂直ホール素子。
【請求項15】
前記基板(101)の前記第1の表面(101a)から前記第2の表面(101b)まで延びるディープトレンチアイソレーション構造(301)
を備えており、
前記ウェル(102)は、前記ディープトレンチアイソレーション構造(301)によって前記基板(101)から分離されている、請求項
11~
14のいずれか一項に記載の垂直ホール素子。
【請求項16】
・請求項1~
15のいずれか一項に記載の垂直ホール素子と、
・前記垂直ホール素子を動作させるための回路と
を備え、
前記回路は、前記基板(101)内に形成された集積回路として構成されている、半導体デバイス。
【請求項17】
・前記回路は、前記基板(101)の前記第2の表面(101b)に形成されたボンディングパッド(309)を備え、
・前記回路は、前記ボンディングパッド(309)と前記基板(101)の前記第1の表面(101a)上の誘電体層(104)内に配置された配線との間の接続をもたらすシリコン貫通ビア(311)を備える、請求項
16に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オフセットが低減された垂直ホール素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサICは、典型的には、信号の調整および増幅に必要な電気回路とモノリシックに統合されたシリコンベースのホール素子を使用する。モノリシックに統合されたホール素子を備える典型的な市販の製品は、ホールスイッチIC、直線位置測定用ホールIC、角度位置センサホールIC、電流検出用ホールIC、および3DホールセンサICである。製品の種類に応じて、ホールICは、水平ホール素子、垂直ホール素子、またはその両方を含むことができる。シリコン表面の平面内に位置する方向の磁場の強さを感知する垂直ホール素子は、角度位置センサホールICにおいて使用され、水平ホール素子と一緒に3DホールセンサICにおいて使用される。
【0003】
従来からの垂直ホール素子は、次のように形成され、すなわち低ドープのp型シリコン基板にn型の導電性を有するウェルが形成される。n型ウェルは、p-n接合によって基板から分離されているセンサのホールプレートを構成する。3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のホール端子が、n型ウェルの領域内のシリコン表面に形成され、典型的には一列または円形に配置される(R.S.Popovic,”Hall Effect Devices”,Institute of Physics Publishing,Bristol and Philadelphia 2004)。
【0004】
これらの従来からの垂直ホール素子において、感度は、ホール端子が配置されるn型ウェルの有限の深さによって制限される。このため、垂直ホール素子を有するホールICの製造には、多くの場合に、深いウェルを有する高電圧CMOSプロセスが使用される。これらのプロセスであっても、ウェルの深さは、通常は数マイクロメートル程度にすぎない。
【0005】
低い感度に加えて、従来からの垂直ホール素子は、典型的に、高い残留オフセットに悩まされる。ホール素子のオフセット、すなわち磁場の強さがゼロであるときに測定されるホール電圧を、電流スピニング、直交結合、またはそれらの組み合わせなどの既知の技術によって低減することができる。効果的なオフセット低減は、ホール端子の転流およびホールデバイスの4回対称性に依存する。端子がすべて同じシリコン表面に配置されている単一の従来からの垂直ホール素子は、必然的に、理想的な4回対称性から逸脱する。
【0006】
従来からの垂直ホール素子のもう1つの欠点は、その非線形性である。n型ホールプレートがp型基板内に形成されるため、ホール素子の動作時、すなわちホール素子を通って電流が流されるときに、p-n接合に沿って空乏ゾーンが形成される。空乏ゾーンの幅は、空間的に変動し、正確な動作条件に依存する。いずれにせよ、空乏領域の形成は、ホールプレートの実効抵抗を変化させ、垂直ホール素子の非線形挙動を引き起こす。非線形性により、ホール素子のオフセットのキャンセルも、より困難になる。
【0007】
効果的なオフセット低減、高感度、および高度の線形性など、改善された特性パラメータを有する垂直ホール素子を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0008】
改善された特性パラメータを提供する垂直ホール素子の第1の実施形態が、請求項1に示される。さらなる実施形態が、請求項2~13に示される。
【0009】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、第1の表面および第2の表面を有する第1の導電型の基板を備える。垂直ホール素子は、基板内に配置されたウェルをさらに備え、ウェルは、第2の導電型を有する。ウェルは、基板の第2の表面に露出する。垂直ホール素子は、基板の第1の表面に配置されてウェルに接触した少なくとも2つの端子を備える。垂直ホール素子は、基板の第2の表面に配置されてウェルに接触した少なくとも2つの端子をさらに備える。
【0010】
基板の第2の表面の少なくとも2つの端子は、基板への正射影にて基板の第1の表面の少なくとも2つの端子の下方に配置される。
【0011】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、基板の第1の表面の少なくとも2つの端子は、基板の第1の表面上に隣同士に配置された第1の端子および第2の端子を備える。基板の第2の表面の少なくとも2つの端子は、基板の第2の表面上に隣同士に配置された第3の端子および第4の端子を備える。第4の端子は、第1の端子の中心と第4の端子の中心との間の仮想の直線が基板の第1および第2の表面に垂直になるように、第1の端子の真下に配置される。第3の端子は、第2の端子の中心と第3の端子の中心との間の仮想の直線が基板の第1および第2の表面に垂直になるように、第2の端子の真下に配置される。
【0012】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、基板の第1の表面の少なくとも2つの端子の各々は、第1の表面から基板内に延びる浅い高ドープ領域を備え、この高ドープ領域は、第2の導電型を有する。
【0013】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、基板の第1の表面上に配置された誘電体層と、誘電体層に埋め込まれた配線とを備える。基板の第1の表面上の少なくとも2つの端子を、誘電体層に埋め込まれた配線の第1の金属層に接続することができる。
【0014】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、誘電体層の上面に接合されたキャリア基板を備える。誘電体層の上面は、誘電体層のうちの基板の第1の表面上に配置された表面の反対側である。
【0015】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、基板の第2の表面の少なくとも2つの端子の各々は、第2の表面から基板内に延びる浅い高ドープ領域を備え、この高ドープ領域は、第2の導電型を有する。
【0016】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、第2の誘電体層およびパッシベーション層を備える。第2の誘電体層は、基板の第2の表面上に配置され、パッシベーション層は、この誘電体層上に配置される。
【0017】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、第3および第4の端子の一方を誘電体層内の配線へと接続するための基板を貫く垂直方向の導電経路をもたらす導電性の充てん材で満たされたシリコン貫通ビアを備える。シリコン貫通ビアの導電性の充てん材は、シリコン貫通ビアの内面に配置される誘電体ライナによって基板から絶縁される。
【0018】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、基板の第1の表面から基板の第2の表面まで延びるディープトレンチアイソレーション構造を備え、これによりウェルは、ディープトレンチアイソレーション構造によって基板から分離される。
【0019】
垂直ホール素子について考えられる別の実施形態によれば、垂直ホール素子は、円形垂直ホール素子として構成される。ウェルは、リング状のウェルとして形成される。垂直ホール素子は、第1の円にて基板の第1の表面に位置してウェルに接触した複数の少なくとも2つの端子と、第2の円にて基板の第2の表面に位置してウェルに接触した複数の前記少なくとも2つの端子とを有する。基板の第2の表面の複数の少なくとも2つの端子のうちのそれぞれの端子は、基板への正射影にて基板の第1の表面の複数の少なくとも2つの端子のうちのそれぞれの端子の下方に配置される。
【0020】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、2つのリング状のアイソレーション構造を備える。2つのリング状のアイソレーション構造は、基板の第1の表面から基板の第2の表面まで延び、リング状のウェルと同心であり、したがってウェルは、横方向において2つのリング状のアイソレーション構造によって囲まれ、基板から分離される。
【0021】
考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、第1の導電型の薄くされた半導体基板の第1の表面上の2つの端子および第2の表面上の2つの端子を有する。4つの端子は、第1の表面上の1つの端子および第2の表面上の1つの端子の各々が同一であるが対向する位置を有するように配置される。第1の表面上の2つの端子は、第2の導電型を有するウェル内に形成される。ウェルは、第2の表面上の端子もウェルに接触するように、第2の表面に露出している。垂直ホール素子の形状は、4つの端子の間の4つの抵抗がほぼ等しくなるように定められる。第2の表面の端子は、シリコン貫通ビアによって第1の表面上の配線に接続される。
【0022】
考えられる別の実施形態によれば、垂直ホール素子は、第1の導電型の薄くされた半導体基板の第1の表面上の2つの端子および第2の表面上の2つの端子を有する。4つの端子は、第1の表面上の1つの端子および第2の表面上の1つの端子の各々が同一であるが対向する位置を有するように配置される。第1の表面上の2つの端子は、第2の導電型を有するウェル内に形成される。ウェルは、第2の表面上の端子もウェルに接触するように、第2の表面に露出している。ウェルは、薄くされた半導体基板の第1の表面から第2の表面まで延びるディープトレンチアイソレーションによって囲まれている。垂直ホール素子の形状は、4つの端子の間の4つの抵抗がほぼ等しくなるように定められる。第2の表面の端子は、シリコン貫通ビアによって第1の表面上の配線に接続される。
【0023】
考えられる別の実施形態によれば、垂直ホール素子は、第1の導電型の薄くされた半導体基板の第1の表面上の2つの端子および第2の表面上の2つの端子を有する。4つの端子は、第1の表面上の1つの端子および第2の表面上の1つの端子の各々が同一であるが対向する位置を有するように配置される。4つの端子は、薄くされた半導体基板の第1の表面から第2の表面まで延びるディープトレンチアイソレーションによって囲まれている。垂直ホールセンサの形状は、4つの端子の間の4つの抵抗がほぼ等しくなるように定められる。第2の表面の端子は、シリコン貫通ビアによって第1の表面上の配線に接続される。
【0024】
考えられる別の実施形態によれば、垂直ホール素子は、第1の導電型の薄くされた半導体基板の第1の表面上のN個の端子および第2の表面上のN個の端子を有する。第1の表面上のN個の端子は、同じサイズを有し、等間隔で円形に配置されている。やはり同じサイズを有する第2の表面上のN個の端子は、第1の表面上の各端子について同一であるが対向する位置を有する第2の表面上の1つの端子が存在するように配置される。第1の表面上のN個の端子は、第2の導電型を有するリング状のウェル内に形成される。ウェルは、第2の表面上のN個の端子もこのリング状のウェルに接触するように、第2の表面に露出している。垂直ホール素子の形状は、円に沿って形成することができる各々の一時的な垂直ホール素子の4つの端子の間の4つの抵抗がほぼ等しくなるように定められる。第2の表面のN個の端子は、N個のシリコン貫通ビアによって第1の表面上の配線に接続される。
【0025】
考えられる別の実施形態によれば、垂直ホール素子は、第1の導電型の薄くされた半導体基板の第1の表面上のN個の端子および第2の表面上のN個の端子を有する。第1の表面上のN個の端子は、同じサイズを有し、等間隔で円形に配置されている。やはり同じサイズを有する第2の表面上のN個の端子は、第1の表面上の各端子について同一であるが対向する位置を有する第2の表面上の1つの端子が存在するように配置される。第1の表面上のN個の端子は、第2の導電型を有するリング状のウェル内に形成される。ウェルは、第2の表面上のN個の端子もこのリング状のウェルに接触するように、第2の表面に露出している。リング状のウェルは、2つのディープトレンチアイソレーションリングによって半導体基板から横方向に分離される。2つのディープトレンチアイソレーションリングは、薄くされた半導体基板の第1の表面から第2の表面まで延びる。垂直ホール素子の形状は、円に沿って形成することができる各々の一時的な垂直ホール素子の4つの端子の間の4つの抵抗がほぼ等しくなるように定められる。第2の表面のN個の端子は、N個のシリコン貫通ビアによって第1の表面上の配線に接続される。
【0026】
改善された特性パラメータを提供する垂直ホールセンサ素子の第2の実施形態が、請求項13~20に示される。
【0027】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、ホール素子は、第1の表面および第2の表面を有する第1の導電型の基板と、基板内に配置されたウェルとを備える。ウェルは、第2の導電型を有する。垂直ホール素子は、第1の端子、第2の端子、第3の端子、および第4の端子を備える。第1および第3の端子の各々は、接続領域を備える。それぞれの接続領域は、基板の第1の表面への第1および第2の端子の接続をもたらす。第1および第3の端子の各々は、ドープ領域の内部の基板の第1の表面から延びるドープ領域を介してアクセスされる。第2の端子は、基板の第1の表面に配置される。第4の端子は、第2の端子に対向して基板の第2の表面に配置される。
【0028】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、第2の端子は、基板の第1の表面から基板内に延びる導電性領域を備える。第4の端子は、基板の第2の表面から基板内に延びる導電性領域を備える。第4の端子は、第2の端子の導電性領域の中心と第4の端子の導電性領域の中心との間の仮想の直線が基板の第1および第2の表面に垂直になるように、第2の端子の真下に配置される。
【0029】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、基板の第1の表面上に配置された誘電体層を備える。垂直ホール素子は、誘電体層の上面に取り付けられたキャリアをさらに備え、誘電体層の上面は、基板の第1の表面上に配置された誘電体層の表面の反対側である。
【0030】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、第1および第3の端子の各々は、ウェルに埋め込まれた導電性の埋め込み領域を備える。それぞれの接続領域は、導電性の埋め込み領域の、基板の第1の表面への接続をもたらす。
【0031】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、基板の第1の表面からウェル内へと第1の端子の埋め込み領域まで延びる第1のドーピングウェルを備える。垂直ホール素子は、基板の第1の表面からウェル内へと第3の端子の埋め込み領域まで延びる第2のドーピングウェルを備える。
【0032】
垂直ホール素子について考えられる一実施形態によれば、第1の端子の接続ウェルは、第1の誘電体構造によって囲まれる。第3の端子の接続ウェルは、第2の誘電体構造によって囲まれる。
【0033】
ホール垂直要素について考えられる一実施形態によれば、垂直ホール素子は、基板の第1の表面から第2の表面まで延びるディープトレンチアイソレーション構造を備える。ウェルは、ディープトレンチアイソレーション構造によって基板から分離される。
【0034】
いずれかの請求項に記載の垂直ホール素子を備える半導体デバイスが、請求項21に示される。半導体デバイスは、垂直ホール素子を動作させるための回路をさらに備え、この回路は、基板内に形成されている集積回路として構成される。
【0035】
半導体デバイスについて考えられる一実施形態によれば、回路は、基板の第2の表面上に形成されたボンディングパッドを備える。回路は、ボンディングパッドと基板の第1の表面上の誘電体層内に配置された配線との間の接続をもたらすためのシリコン貫通ビアを備える。
【0036】
さらなる特徴および利点が、以下の詳細な説明に記載され、一部は本明細書から当業者にとって容易に明らかであると考えられ、あるいは本明細書、特許請求の範囲、および添付の図面に記載の実施形態を実施することによって理解されるであろう。以上の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、あくまでも例示であり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図しているにすぎないことを、理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
添付の図面は、さらなる理解をもたらすために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示しており、「発明を実施するための形態」と併せて、種々の実施形態の原理および動作を説明する役に立つ。したがって、本開示は、以下の詳細な説明を添付の図と併せて検討することにより、さらに充分に理解されるであろう。
【
図1-7】垂直ホール素子の第1の実施形態を示している。
【
図8-14】垂直ホール素子の第1の実施形態の変形を示している。
【
図15】垂直ホール素子を備える半導体デバイスの第1の実施形態を示している。
【
図16-26】垂直ホール素子を備える半導体デバイスの第1の実施形態を製造する方法の製造工程を示している。
【
図27】垂直ホールセンサを備える半導体デバイスの第2の実施形態を示している。
【
図28-39】垂直ホール素子を備える半導体デバイスの第2の実施形態を製造する方法の製造工程を示している。
【
図40-42】垂直ホール素子の第1の実施形態の別の変形を示している。
【
図43-49】垂直ホール素子の第2の実施形態を示している。
【
図49-53】垂直ホール素子の第2の実施形態の変形を示している。
【
図54】垂直ホール素子を備える半導体デバイスの第3の実施形態を示している。
【
図55-65】垂直ホール素子を備える半導体デバイスの第3の実施形態を製造する方法の製造工程を示している。
【
図66】垂直ホール素子を備える半導体デバイスの第4の実施形態を示している。
【
図67-78】垂直ホール素子を備える半導体デバイスの第4の実施形態を製造する方法の製造工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで、種々の実施形態を詳細に参照するが、それらの例の一部が添付の図面に示されている。可能な限り、同一または類似の参照番号および記号が、図面の全体を通して、同一または同様の部分を指して使用される。図面は、必ずしも比例尺ではなく、当業者であれば、本開示の重要な態様を説明するために図面がどこで簡略化されているかを、理解できるであろう。以下に記載される特許請求の範囲は、この詳細な説明に組み込まれ、その一部を構成する。
【0039】
図1、
図2、および
図3が、垂直ホール素子100を示している。
図1において、垂直ホール素子は、第1のシリコン表面を見つめて上方から示されている。2つの切断が示されており、1つの切断は、AからA’へとx方向に平行であり、1つの切断は、BからB’へとy方向に平行である。
図2は、切断A-A’に沿った垂直ホール素子100の断面を示し、
図3は、切断B-B’に沿った垂直ホール素子100の断面を示している。垂直ホール素子100は、半導体基板101上に形成されている。半導体基板101は、第1の導電型を有する低ドープのシリコン基板であってよい。第1の導電型は、好ましくはp型である。基板は、第1の表面101aおよび第2の表面101bを有する。2つの表面は、反対向きであり、互いに平行である。第2の表面101bは、基板を裏側から、すなわち第1の表面101aの反対側から薄くすることによって得られる。垂直ホール素子100は、第2の導電型を有するウェル102内に形成される。ウェル102は、第1の表面101aから延び、第2の表面101bに露出している。ウェル102は、垂直ホール素子100のホールプレートを形成し、あるいはホールセンサ領域を定める。垂直ホール素子100は、番号1、2、3、および4によって示される4つの端子を有する。端子1および2は、第1のシリコン表面101aに配置され、端子3および4は、第2のシリコン表面101bに配置される。端子1および2は、第1の表面101aに形成され、ウェル102に接触している。同様に、第2の表面101bに形成された端子3および4は、ウェル102に接触している。第1の表面の2つの端子1および2は、同じ幅および同じ長さを有する。同様に、第2の表面の2つの端子3および4は、同じ幅および同じ長さを有する。端子4は、端子1の中心と端子4の中心との間の仮想の直線がシリコン表面101aに垂直であるという意味で、端子1の真下に位置している。同じ意味で、端子3は端子2の真下に位置している。第1の表面101aに配置された2つの端子の各々について、浅い高ドープ領域103が形成され、第1の表面から基板内へと延びている。高ドープ領域103は、ウェル102の導電型である第2の導電型を有する。高ドープ領域103は、コバルトのような何らかの金属でシリサイド化されてよい。金属コンタクト105が、誘電体層104に形成され、高ドープ領域103を誘電体層104に埋め込まれた第1の金属層106の金属線に接続する。基板101は、誘電体層104の上面104aによってキャリア基板201に接合される。キャリア基板201も、シリコン基板であってよい。第2の表面101bにおいて、浅い高ドープ領域303が、2つの端子3および4の各々について形成され、第2の表面101bから基板内へと延びている。高ドープ領域303は、ウェル102の導電型である第2の導電型を有する。誘電体層304が、第2の表面101b上に配置されている。誘電体層304は、高ドープ領域303を接続するコンタクトホールが形成されるように構造付けられている。金属305が、ホールコンタクトへと配置される。さらに、金属305は、基板の第2の表面に金属配線が形成されるように構造付けられる。パッシベーション層308が、誘電体層304および金属層305上に配置される。
【0040】
図4が、切断方向B-B’に沿った垂直ホール素子100の別の図である。
図3を補足するために、シリコン貫通ビア(TSV)が
図4の右側に示されている。シリコン貫通ビアは、基板101を貫き、第2の表面101bに配置された端子3を第1のシリコン表面に形成された金属配線へと接続する垂直方向の導電経路をもたらす。端子3に組み合わせられたシリコン貫通ビアは、TSV(3)で表される。第2の表面101bに配置された各々の端子について、端子を第1の表面に形成された配線に接続するシリコン貫通ビアが1つ存在する。垂直ホール素子100は、第2の表面に配置された2つの端子を有するため、シリコン貫通ビアも2つ存在する。シリコン貫通ビアTSV(3)は、誘電体層104に埋め込まれた第1の金属層の一部分106に接触している。第2の表面101bにおいて、シリコン貫通ビアTSV(3)は、金属配線305によって端子3に接続されている。このようにして、地点C(3)において端子3にアクセスすることができる。
図4に示されるように、第1の表面101aに形成された端子2に、地点C(2)おいて電気的にアクセスすることができる。シリコン貫通ビアは、第2の表面におけるメタライゼーションに使用される材料と同じ材料であってよい導電性材料305で満たされる。例えば、この材料は、アルミニウムであってよい。しかしながら、他のメタライゼーション方式も考えられる。一方式においては、シリコンを貫通して配置される金属が、銅またはタングステンである一方で、配線および高ドープ領域303を接続するコンタクトホールの充てんに使用される金属は、アルミニウムである。別の方式においては、シリコン貫通ビアに配置される金属および高ドープ領域303を接続するコンタクトホールに配置される金属が、タングステンである一方で、第2の表面の配線に使用される金属は、アルミニウムである。シリコン貫通ビアの導電性の充てん305は、シリコン貫通ビアの内面に配置される誘電体ライナ306によってシリコン基板101から絶縁される。シリコン貫通ビアは、ホール端子が形成されているウェル102から距離Lに配置される。シリコン貫通ビアを通って駆動される電流Iが、シリコン表面に平行な磁場を発生させる。垂直ホール素子の位置における誘起磁場の強さは、B=μ
0/(2πL)・Iである。これの悪影響を最小限に抑えるために、距離Lを充分に大きく設定することができる。例えば、ホール電流が1mAであり、距離Lが100μmに設定される場合、誘起磁場の強さは2μTであり、これは利用可能な垂直ホール素子の測定分解能を充分に下回る。
【0041】
4つの端子を有するホール素子を、
図5に示される等価回路で表すことができる。4つの端子1、2、3、および4が、4つの抵抗R1、R2、R3、およびR4を介して接続されている(ホイートストンブリッジ)。4つの抵抗がすべて等しい場合、オフセット、すなわち磁場が存在しない状態で測定されるホール電圧は、ゼロである。技術的に周知のとおり、4つの抵抗R1、R2、R3およびR4のうちの1つが異なるが、一方で他の3つの抵抗がすべて等しい場合、ホール素子のオフセットを、電流スピニング技術を適用することによってキャンセルすることができる。米国特許出願公開第2016/0154066A1号に、2つの抵抗R1およびR3、あるいは2つの抵抗R2およびR4が等しい場合、オフセットをキャンセルできることが示されている。
【0042】
図6に、4つの抵抗R1、R2、R3、およびR4が、垂直ホール素子100について示されている。
図7に、垂直ホール素子100の幾何学的寸法が描かれている。Lが、切断A-A’の方向の端子1および2のサイズを示している。L’が、切断A-A’の方向の端子3および4のサイズを示している。端子のサイズは、それぞれ高ドープ領域103および303の横方向の寸法によって定められる。Tが、薄くされた後のシリコン基板の厚さを示している。Pが、第1の表面101a上の端子1の中心と端子2の中心との間の距離を示している。端子4は、端子1の同一であるが反対側の位置にあり、端子3は、端子2と同一であるが反対側の位置にあるため、第2の表面における端子3の中心と端子4の中心との間の距離も、Pである。Dが、切断方向A-A’に沿った端子1の縁とウェル102の境界との間の距離を示している。端子2の縁と
図7の右側のウェル102の境界との間の距離も、Dである。距離Dをゼロにすることも可能である。
【0043】
図6および
図7に示されるような垂直ホール素子100の場合、抵抗R2およびR4は、必ずしも等しいとは限らない。R2とR4との間の差異について考えられる原因は、例えば、ウェル102のドーピング勾配、第1および第2の表面における接触抵抗の差異、またはシリコン貫通ビアに関連する追加の直列抵抗である。しかしながら、実際には、端子3および4のサイズL’を、抵抗R2およびR4がほぼ同じになるように、端子1および2のサイズLに対して調整することができる。
【0044】
同様に、
図6および
図7に示されるような垂直ホール素子100の場合、抵抗R1およびR4は、必ずしも等しいとは限らない。しかしながら、実際のところ、所与の基板の厚さTおよびウェル102の境界までの距離Dについて、端子1と端子2との間の距離Pを、抵抗R1およびR4がほぼ同じになるように調整することができる。
【0045】
幾何学的な理由から、ウェルの境界までの距離Dが端子1と端子2とで同じであるならば、抵抗R1と抵抗R3とが等しくなる。製造プロセスの不完全性ゆえに、端子3および4が端子1および2に対してx方向に(切断A-A’に沿って)ずれている場合や、ウェル102が端子1および2に対してx方向にずれている場合、R1とR3とがもはや等しくなくなる。しかしながら、Dがきわめて大きい場合、R1およびR3は、たとえ端子3および4がx方向にずれていても、ほぼ等しい。また、Dがきわめて大きい場合、R1およびR3は、ウェル102が端子1および2に対してずれていても、ほぼ等しい。
【0046】
設計パラメータP、T、D、L、およびL’を最適化した後に、垂直ホール素子を、4つの抵抗R1、R2、R3、およびR4がすべてほぼ同じ値を有するホイートストンブリッジによって表すことができる。換言すると、垂直ホール素子は、ほぼ4回対称性である。
【0047】
動作時に、垂直ホール素子100の端子1を電流源に接続し、端子3を接地に接続することができる。このようにして、電流は、ホールセンサ領域を通ってほぼ対角線方向に強制される。端子2と端子4との間でホール電圧を取得することができる。ホール電圧は、端子1、2、3、および4の平面に垂直な磁場を表す。また、端子2を電流源に接続し、端子4を接地に接続することも可能である。この場合、端子1と端子3の間でホール電圧を取得することができる。ホール電圧は、やはり端子1、2、3、および4の平面に垂直な磁場を表す。同じ方針に沿って、端子3を電流源に接続し、端子1を接地に接続することができる。端子4と端子2との間で取得されるホール電圧が、やはり端子1、2、3、および4の平面に垂直な磁場を表す。同じ方針に沿って、端子4を電流源に接続し、端子2を接地に接続することができる。端子1と端子3との間で取得されるホール電圧が、やはり端子1、2、3、および4の平面に垂直な磁場を表す。これらは、垂直ホール素子100について考慮されるスピニング電流法の4つの段階である。
【0048】
垂直ホール素子がほぼ4回対称性であるために、動作の個々の各段階におけるオフセットは、すでに小さい。結果として、4つの段階すべてを平均することにより、残留オフセットの値をきわめて小さくすることができる。当業者に知られているように、電流スピニング技術を、2つまたは4つのホール素子の直交結合と組み合わせて、残留オフセットをさらに低減することができる。
【0049】
図40および
図41が、本発明の別の実施形態を表す垂直ホール素子600を示している。
図40において、垂直ホール素子600は、第1のシリコン表面を見つめて上方から描かれている。
図41は、垂直ホール素子600を、
図40に示される切断方向A-A’に沿って示している。垂直ホール素子100と同様に、垂直ホール素子600は、第1の導電型を有する低ドープのシリコン基板であってよい半導体基板101上に形成される。第1の表面101a上に形成されたホール端子1および2が、第1の表面101aから基板内へと延びて第2の表面101bに露出するウェル102に接触している。第2の表面に形成された2つのホール端子3および4が、ウェル102に接触している。ウェル102は、好ましくはn型の導電性を有し、これが第1または第2の導電型であってよい。高ドープ領域103および303は、ウェル102と同じ導電型、すなわちn型を有する。
図40に示されるように、ウェル102内に配置されたホール端子1および2は、ディープトレンチアイソレーション構造601によって完全に囲まれている。ウェル102は、ディープトレンチ囲いの内側にウェル102と基板101との間の境界が存在しないように、xおよびy方向にディープトレンチアイソレーション601の内面601cまで延びている。
図41を参照すると、ディープトレンチアイソレーション構造は、第1の表面101aから第2の表面101bまで延びている。ディープトレンチアイソレーション囲いの内面601cは、あらゆる場所でウェル102に接触している。ディープトレンチアイソレーションは、誘電体材料で構成される。
【0050】
第1の実施形態と同様に、垂直ホール素子600の設計を、おおむね4回対称性が達成されるように最適化することができる。結果として、垂直ホール素子600のオフセットも、効果的に低減することができる。さらに、垂直ホール素子600のホールセンサ領域102が、誘電体アイソレーション囲いによって境界付けられているため、垂直ホール素子600の動作時に、ウェル102の境界に沿って空乏ゾーンが形成されることがない。
【0051】
結果として、第2の実施形態の垂直ホール素子は、高度の線形性をさらに特徴とする。
【0052】
本発明の別の実施形態が、
図42に関連して提示される。垂直ホール素子700は、p型またはn型のいずれかである第1の導電型を有する半導体基板1001上に形成される。端子1および2が、第1の導電型、すなわち基板1001と同じ導電型を有する高ドープ領域103を有する第1の表面1001a上に配置される。端子3および4が、一次基板を第2の側から薄くすることによって得られる第2の表面1001b上に配置される。高ドープ領域303も、第1の導電型を有する。T700が、基板1001の厚さを表す。基板1001の厚さT700は、5マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲内であってよく、より好ましくは、10マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲内であってよい。第1の表面の端子1および2、ならびに第2の表面の端子3および4は、xおよびy方向において、ディープトレンチアイソレーション構造601によって囲まれている。ディープトレンチアイソレーション構造601は、第1の表面1001aから第2の表面1001bまで延びている。ディープトレンチアイソレーションは、誘電体材料で構成される。
【0053】
垂直ホール素子700の実施形態において、ホールセンサ領域は、半導体基板1001のうちのディープトレンチアイソレーション構造601によって囲まれて閉じ込められた部分によって構成されている。第1および第2の実施形態と同様に、垂直ホール素子700の設計を、おおむね4回対称性が4つの端子に関して達成されるように最適化することができる。ホールセンサ領域が、ディープトレンチアイソレーション構造601の誘電体材料によって境界付けられているため、垂直ホール素子700の動作中に空乏ゾーンが発生することがなく、高度の線形性が保証される。垂直ホール素子700の感度は、とりわけ、基板1001の導電型、基板1001のドーピングレベル、および厚さT700に依存する。本発明者の発明者は、n型の導電性および最適なドーピング濃度を有する半導体基板を使用し、厚さT700が10マイクロメートル~50マイクロメートルの好ましい範囲内にある場合に、垂直ホール素子700について比較的高い感度を得ることができると理解した。
【0054】
図8および
図9が、本発明の別の実施形態による円形垂直ホール素子を示している。
図8において、垂直ホール素子200は、半導体基板101の第1の表面101aを見つめて上方から描かれている。
図9は、CとC’との間の示された経路に沿った垂直ホール素子200の円形の切断を示している。円形垂直ホール素子200は、薄くされた半導体基板101の第1の表面101aに配置されたN個の端子と、第2の表面101bに配置されたN個の端子とを有する。第1の表面のN個の端子は、円形に配置され、リング状のウェル102内に形成される。リング状のウェル102は、円形垂直ホール素子200のホールプレートまたはホールセンサ領域を構成する。リング状のウェル102は、第1の表面101aから延び、半導体基板100を第2の側から薄くすることによって得られる第2の表面101bに露出する。第1のシリコン表面のN個の端子は、同じサイズであり、等間隔に配置される。第2の表面に配置されたN個の端子も、円上に配置され、2つの円は同心かつ同じ半径を有する。第2のシリコン表面に配置されたN個の端子も、同じサイズであり、等間隔に配置され、第2の表面に露出しているリング状のウェル102に接触する。さらに、この配置は、第1の表面101a上の各々の端子kについて、端子kの真下に位置する第2の表面101b上の1つの端子k’が存在し、すなわち端子kの中心を端子k’の中心に接続する仮想の直線がシリコン表面101aに垂直であるような配置である。さらに、N=2Mであり、ここでMは2より大きい整数である。
図8には、考えられる磁場Bの方向も示されている。
【0055】
図10が、
図8に示されるとおりの円形の切断に沿った第1の表面101aおよび第2の表面101b上の端子の概略図である。第1のホールサブ素子が、4つの端子1、2、2’、および1’によって形成される。この垂直ホールサブ素子は、H(1)によって示されている。右側に1ステップ進むと、第2の垂直ホールサブ素子を、4つの端子2、3、3’、および2’によって形成することができる。この垂直ホールサブ素子を、H(2)と示すことができる。k番目の垂直ホールサブ素子は、4つの端子k、k+1、(k+1)’、およびk’によって形成される。この垂直ホールサブ素子は、H(k)によって示される。第1の表面のN個の端子および第2の表面のN個の端子によって、N個のこのような垂直ホールサブ素子を形成することができる。しかしながら、ステップのサイズを大きくすることにより、この方法でN個よりも少ない垂直ホールサブ素子を形成することも可能である。一般に、N個の垂直ホールサブ素子は、同時に測定されることはないため、一時的な垂直ホール素子と呼ばれる。k番目の垂直ホールサブ素子の動作時に、k番目の垂直ホールサブ素子に属さないすべての端子は、開いたままにされる。
【0056】
垂直ホール素子100の場合と同様のやり方で、円形垂直ホール素子200の設計パラメータ(
図9には示されていない)を、各々の一時的なホール素子H(k)がほぼ4回対称性を有するように最適化することができる。結果として、各々の一時的なホール素子について、きわめて小さい残留オフセットを達成することができる。
【0057】
図11a、
図11b、
図11c、および
図11dが、第1の一時的な垂直ホール素子H(1)へのスピニング電流法の適用を示している。
図11aにおいて、端子1が電流源に接続され、端子2’が接地に接続されている。端子2と端子1’との間でホール電圧が取得される。他のすべての端子は接続されていない。ウェル102を通る電流の方向が、矢印によって示されている。これは、電流スピニングの第1の段階である。
図11bに示される第2の段階において、端子2が電流源に接続され、端子1’が接地に接続される。端子2’と端子1との間でホール電圧が取得される。他のすべての端子は接続されていない。やはり電流の方向が図示されており、電流の方向は、第1の段階に対して回転している。
図11cおよび
図11dに、第3の段階および第4の段階がそれぞれ示されている。取得された4つの段階のすべての電圧を平均することにより、第1の一時的な垂直ホール素子H(1)の確定のホール電圧が得られる。同じやり方で、スピニング電流法が次の一時的な垂直ホール素子H(2)に適用される。同じやり方で、スピニング電流法が一時的な垂直ホール素子H(k)に適用される。
【0058】
x-y平面内の磁場の方向を、N個の一時的なホール素子H(k)(k=1,・・・,N)を次々に測定することによって評価することができる。また、N個の一時的なホール素子のうちの適切なサブセットを測定するだけで、磁場の方向を決定するために充分であるかもしれない。また、2つ以上の一時的なホール素子が同時に測定される測定方式も、相互作用が小さいならば考えられる。いずれの場合も、x-y平面内の磁場の方向について可能な測定精度が、各々の一時的なホール素子のオフセット低減によって向上する。
【0059】
図13および
図14が、本発明の別の実施形態を示している。
図13において、円形垂直ホール素子300が、第1の表面101aを見つめて上方から示されている。
図14において、円形垂直ホール素子300は、DからD’へのx方向の図示された切断に沿って示されている。円形垂直ホール素子300は、2つのリング状のアイソレーション構造301aおよび301bが追加されているという点においてのみ、円形垂直ホール素子200から相違する。
図14から分かるように、アイソレーション構造301aおよび301bは、薄くされたシリコン基板の第1の表面101aから第2の表面101bまで延びている。2つのリング状のアイソレーション構造301aおよび301bは、リング状のウェル102と同心である。2つのリング状のアイソレーション構造によって横方向において囲まれた領域は、ウェル102である。このようにして、アイソレーション構造301aおよび301bは、横方向においてウェル102を基板101から絶縁する。ウェル102と基板101との間にp-n接合はもはや存在しない。アイソレーション構造301aおよび301bは、誘電体材料で作られる。アイソレーション構造を、基板の第2の表面101bから第1の表面101aまでの2つのリング状のトレンチをエッチングし、これらのトレンチを酸化ケイ素などの誘電体材料で埋めることによって実現することができる。
【0060】
当業者に知られているように、n型ホールプレートの2つの端子の間に電圧が印加されると、ホールプレートを境界付けるp-n接合に沿って空乏ゾーンが形成される。空乏ゾーンがホールプレートの有効サイズを減少させるため、ホールプレートの抵抗が増加する。この影響により、オフセットのキャンセルを妨げる非線形性が持ち込まれる。これは当業者にとって既知である。円形垂直ホール素子の実施形態300においては、ホールセンサ領域102が、p-n接合によって境界付けられていない。したがって、ホールセンサ領域102の誘電体による分離は、オフセット低減をさらに改善する。
【0061】
図15が、1つ以上の垂直ホール素子を有する半導体デバイス400を示している。半導体デバイス400は、ホールICであってよく、例えば角度位置測定用のホールICであってよい。
図15の左側には、シリコン貫通ビア310を備えた垂直ホール素子が示されている。この図のこの部分は、
図4と同一である。
図15の右側には、垂直ホール素子を動作させるために必要な回路を代表すべき2つのトランジスタ143および153が描かれている。基板がp型である場合、トランジスタ143はNMOSであり、トランジスタ153はPMOSである。
図15の右端に、311で示されるシリコン貫通ビアが図示されている。シリコン貫通ビア311は、半導体デバイス400のI/Oの一部である。309は、ボンディングパッドを指している。ボンディングパッド309は、金属層305で形成される。シリコン貫通ビア311は、基板の第1の表面に形成された配線と、薄くされた基板101の第2の表面に形成されたボンディングパッド309との間の接続を達成する。106bは、シリコン貫通ビア311のランディングパッドを指している。ランディングパッド106bは、誘電体層104内に配置された配線(図示せず)に接続されている。
図15においては、第1の表面上に2つの金属層が示されているが、3つ以上の金属層が存在してもよい。
【0062】
図16~
図26が、半導体デバイス400を製造するための製造工程を示している。基本的な製造工程は、ここに全体が援用される欧州特許出願公開第2913847(A1)号において説明されている。以下では、重要な違いのみを強調する。
【0063】
図16に示されるように、第1の導電型を有する基板101にウェル102が形成される。ウェル102は、第2の導電型を有する。ウェル102を、さまざまな注入エネルギーによる一連のマスクによる注入工程によって形成することができる。一連の注入工程は、MeVの範囲のエネルギーを有する高エネルギー注入を含むことができる。マスクを除去した後に、炉アニールが、1000℃~1200℃の温度で数時間にわたって施される。注入および炉アニールの条件は、垂直方向に均一なドーパント濃度を達成するように最適化される。
図16において、T1が、炉アニール後のウェル102の深さを示している。深さT1は、4μmよりも大きく、好ましくは6μmよりも大きい。
【0064】
後続の一連の図において、シャロートレンチアイソレーション(STI)などのアイソレーション構造の形成は示されていない。しかしながら、シャロートレンチアイソレーションが適用されると想定され、垂直ホール素子の領域にも存在し得る。
【0065】
図17に示されるように、トランジスタウェル112および113が形成される。112が、NMOSトランジスタが形成されるp型ウェルを示し、113が、PMOSトランジスタが形成されるn型ウェルを示している。ウェル112および113のそれぞれの深さT2およびT3は、ウェル102の深さT1よりも小さい。
【0066】
図18に目を向けると、PMOSおよびNMOSのトランジスタゲート115および116、ならびに高ドープ領域103および113が形成される。103は、第2の導電型の浅い高ドープ領域を示し、113は、第1の導電型の浅い高ドープ領域を示す。高ドープ領域103および113は、NMOSおよびPMOSトランジスタのソースおよびドレイン領域をそれぞれ構成し、103は、第1の表面101a上のホール端子の高ドープ領域の形成にも使用される。あるいは、専用のマスクおよび処理工程を使用してホールセンサ領域102内のドーピング領域103を定めてもよい。
【0067】
図19において、相互接続レベルが、この業界において知られている標準的なCMOSメタライゼーション方式を使用して形成される。金属部分106aおよび106bが、シリコン貫通ビアを形成するためのランディングパッドとして使用されるように、誘電体スタック104に埋め込まれる。誘電体スタック104の上面104aは、化学機械研磨によって平坦化される。
【0068】
図20において、キャリアウェーハ201が設けられる。キャリアウェーハ201は、安価なシリコン基板であってよい。基板101が裏返される。
【0069】
図21に目を向けると、基板101は、キャリア基板201に接合され、その後に、基板101は、第2の側から薄くされる。101cが、薄くするプロセスの前の基板の最初の第2の表面を示し、101bが、薄くされた後の基板の第2の表面を示している。Tが、薄くされた後のシリコン基板の厚さを示している。Tは、ウェル102の深さT1よりも小さい。このようにして、ウェル102は、薄くされた後に第2の表面に露出する。
【0070】
図22に目を向けると、高ドープ領域303が、ウェル102内の第2の表面101b上に形成される。高ドープ領域303は、第2の導電型を有し、マスクによる浅くて高投与量の注入と、その後のレーザ熱アニーリングとによって形成される。
【0071】
図27が、1つ以上の垂直ホール素子300を有する半導体デバイス500を示している。半導体デバイス500は、ホールICであってよく、例えば角度位置測定用のホールICであってよい。半導体デバイス400とは対照的に、半導体デバイス500は、アイソレーション構造301によって閉じ込められたホールセンサ領域102を有する1つ以上の垂直ホール素子300を備える。
【0072】
図28~
図39が、半導体デバイス500を製造するための製造工程を示している。基本的な製造工程は、ここに全体が援用される欧州特許出願公開第2913847(A1)号において説明されている。
【0073】
図35に目を向けると、トレンチ325が、半導体基板101に第2の表面101bからエッチングされ、第1の表面101aまで延びる。トレンチのエッチングのためのマスク324は、ホールセンサ領域102がトレンチ325によって横方向において閉じ込められるようなマスクである。次いで、トレンチ325は、酸化ケイ素などの誘電体材料で満たされる。
【0074】
図43、
図44、および
図45が、垂直ホール素子100の第2の実施形態を示している。
図43において、垂直ホール素子は、第1のシリコン表面を見つめて上方から示されている。2つの切断が示されており、1つの切断は、AからA’へとx方向に平行であり、1つの切断は、BからB’へとy方向に平行である。
図44は、切断A-A’に沿った垂直ホール素子100の断面を示し、
図45は、切断B-B’に沿った垂直ホール素子100の断面を示している。垂直ホール素子100は、半導体基板101上に形成されている。半導体基板101は、第1の導電型を有する低ドープのシリコン基板であってよい。第1の導電型は、好ましくはp型である。基板は、第1の表面101aおよび第2の表面101bを有する。2つの表面は、反対向きであり、互いに平行である。第2の表面101bは、基板を裏側から、すなわち第1の表面101aの反対側から薄くすることによって得られる。第1の表面101aから第2の表面101bまで延びるドーピング領域102が形成される。ドーピング領域102は、第2の導電型を有し、すなわち、領域102は、n型の導電性を有する。領域102を、リンでドープすることができ、ドーパント濃度は、1*10
14/cm
3~1*10
17/cm
3の範囲内であってよい。好ましくは、ドーパント濃度は、垂直方向に均一である。152aおよび152cによって示される2つのドーピング領域が、ウェル102内に配置される。ドーピング領域152aおよび152cは、第2の導電型を有する。それらを、リンによってドープすることができ、ドーパント濃度は、1*10
17/cm
3~1*10
21/cm
3の範囲内であってよい。
【0075】
図44に示されるように、ドーピング領域152aおよび152cは、領域102に埋め込まれる。好ましくは、z方向におけるドーピング領域152aおよび152cの位置は、第1の表面101aと第2の表面101bとの間のほぼ中間である。さらに、第2の導電型を有するウェル103aおよび103cも存在する。ウェル103aは、第1の表面101aからドーピング領域102内に延び、埋め込み領域152aに達する。同様に、ウェル103cは、ウェル103cが埋め込み領域152cに接触するように、第1の表面101aからドーピング領域102内に延びる。第1の表面101aにおいて、浅い高ドープ領域103a、103b、および103cが形成され、第1の表面からドーピング領域102内に延びる。高ドープ領域103a、103b、および103cは、第2の導電型を有する。ドーパント濃度は、1*10
19/cm
3~1*10
22/cm
3の範囲内であってよい。
【0076】
図43に示されるように、高ドープ領域103a、103b、および103cは、x方向に沿って一列に配置される。ドーピング領域103bは、103aと103bとの間の距離および103bと103cとの間の距離が等しくなるように、ドーピング領域103aおよび103cの間に配置される。さらに、高ドープ領域103a、103b、および103cは、領域102の内側に配置される。高ドープ領域103aは、ウェル151aの内部に配置され、高ドープ領域103cは、ウェル151cの内部に配置される。
【0077】
再び
図44に目を向けると、誘電体層104が、第1の表面101a上に配置されている。誘電体層104は、CMOS製造プロセスにおいて典型的に使用されるようなチッ化ケイ素、酸化ケイ素、または低k誘電体のいくつかの層を含むことができる。金属コンタクト105a、105b、および105cが、誘電体層104に埋め込まれる。金属コンタクト105aは、高ドープ領域103a上に配置され、高ドープ領域103a、したがってウェル151a、さらには埋め込み領域152aへの電気的接続を達成する。金属コンタクト105bは、高ドープ領域103b上に配置され、高ドープ領域103bへの電気的接続を達成する。さらに、金属コンタクト105cは、高ドープ領域103c上に配置され、高ドープ領域103c、したがってウェル151c、さらには埋め込み領域152cへの電気的接続を達成する。
【0078】
図45に示されるように、複数の金属コンタクトを、高ドープ領域103bに配置することができ、同様に、高ドープ領域103aおよび103cにも配置することができる。典型的なCMOS製造プロセスで、高ドープ領域103a、103b、および103cに金属シリサイドを形成してもよい。金属コンタクト105a、l05b、およびl05cは、タングステンまたは他の適切な金属で構成されてよい。
図43および
図44に、誘電体層104に埋め込まれている第1の金属層が示されている。一般に、CMOSメタライゼーションは、いくつかの金属層と、垂直方向の相互接続を含むことができる。簡単にするために、
図44および
図45には金属層が1つだけ示されている。l06a、l06b、およびl06cが、この第1の金属層によって形成され、それぞれ金属コンタクト105a、105b、および105cにつながる金属配線を示している。
【0079】
図45に示されるように、金属配線106bは、y方向に沿って配置されている。金属配線106aおよび106cも、y方向に沿って配置されている。キャリア201が、誘電体層104の上面104aに取り付けられている。キャリア201は、シリコンウェーハであってよい。基板101の第2の表面101bに、第4の浅い高ドープ領域が形成されており、303dで指し示されている。高ドープ領域303dは、第2の表面101bからドーピング領域102内に延びている。ドーピング領域303dは、第2の導電型を有し、1*10
19/cm
3~1*10
22/cm
3の範囲内のドーパント濃度を有する。ドーピング領域303dは、ドーピング領域103bと同一であるが反対側の位置を有する。より正確には、第1の表面101aのドーピング領域103bの中心から第2の表面101bのドーピング領域303dの中心まで接続線が引かれる場合、この接続線は、表面101aおよび101bに垂直である。誘電体層304が、第2の表面101b上に配置されている。誘電体層は、酸化ケイ素で構成されてよい。金属コンタクト305dが、高ドープ領域303dへの電気的接続が確立されるように、誘電体層304に形成される。
【0080】
金属コンタクト305dを、
図43および
図44に示されるように、誘電体層304上に形成された金属配線まで延ばすことができる。金属配線は、
図44に示されるように、y方向に平行に配置される。金属コンタクトおよび配線305bを、アルミニウムで構成することができる。あるいは、誘電体層304に形成されたコンタクトホールをタングステンで埋めることができる。その場合、誘電体層304上に配置された305dの配線部分を、アルミニウムまたは銅で構成する異ができる。他のメタライゼーション方式も考えられる。パッシベーション層308が、金属配線305dおよび誘電体層308上に配置される。
【0081】
パッシベーション層308を、酸化ケイ素、チッ化ケイ素、酸チッ化ケイ素、またはこれらの材料の積層で構成することができる。
図43、
図44、および
図45に示される実施形態においては、第1の表面101aからドーピング領域102内に延びるドーピングウェル153がさらに存在する。2つのドーピングウェル153は、中央の高ドープ領域103bと左側および右側の2つの高ドープ領域103aおよび103cとの間にそれぞれ配置されている。
図41および
図42に示されるように、2つのドーピングウェル153の各々は、ウェル151aおよび151cのそれぞれに当接できる。ウェル153は、ウェル151aおよび151cと同様の深さを有することができ、
図43に示されるように、埋め込まれたドーピング領域152aおよび152cに到達することができる。ドーピングウェル153は、第1の導電型を有する。
【0082】
以下で、垂直ホール素子100を切断方向B-B’にて再び示している
図45を参照する。ドーピング領域102は、垂直ホール素子100のホールセンサ領域またはホールプレートを構成する。ドーピング領域102は、横方向、すなわちxおよびy方向において、ウェル102とは逆の極性を有する基板101で形成されたp-n接合によって境界付けられている。以下で、垂直ホール素子100を切断方向A-A’にて再び示している
図46を参照する。垂直ホール素子100は、大文字のA、B、C、およびDで示される4つのホール端子を有する。ホール端子Bは、第1の表面101aに配置されている。動作の観点から、垂直ホール素子100の端子Bは、高導電性領域103bの空間寸法によって定められる。ホール端子Dは、第1の表面101b上かつ端子Bの反対側に配置される。やはり、動作の観点から、垂直ホール素子100の端子Dは、高導電性領域303dの空間寸法によって定められる。ホール端子Aは、高導電性の埋め込み領域152aを含み、ウェル151aが第1の表面への接続をもたらし、第1の表面において、端子Aは、高ドープ領域103aおよび高ドープ領域103a上に配置された金属コンタクトを介してアクセスされる。同じやり方で、端子Cは、高導電性の埋め込み領域152aを含み、ウェル151cが第1の表面101aへの接続をもたらし、第1の表面において、端子Cは、高ドープ領域103cおよび高ドープ領域103c上に配置された金属コンタクトを介してアクセスされる。ドーピング領域102、151a、152a、151c、および152cとは逆の極性を有するウェル153が、4つのホール端子の間の有効センサ領域をウェル151aおよび151cから静電的に遮蔽するように機能する。
【0083】
図46に、数字1、2、3、および4で示される4つの矢印が描かれている。各々の矢印は、ホールセンサ領域を通って駆動される動作電流の方向を表す。したがって、4つの矢印は、垂直ホール素子の4つの考えられる動作モードまたは段階を表している。動作モード1から始まって、電流が端子Bと端子Dとの間に流され、端子Bから端子Dの方向に流れる。このモードにおいて、端子Cと端子Dとの間でホール電圧が取得され、これは、y方向を向いた磁場成分を表す。動作モード2において、端子Cと端子Aとの間に電流が流され、端子Cから端子Aの方向に流れる。ホール電圧が、端子Bと端子Cとの間で取得され、これは、やはりy方向を向いた磁場成分を表す。動作モード3は、動作モード1に相当するが、電流の方向が逆にされている点で相違し、ホール電圧は、端子Dと端子Cとの間で必要とされる。同様に、動作モード4は、動作モード2に相当するが、動作モード2に対して電流の方向が逆であり、端子Bと端子Dとが入れ換わっている。第2の表面101bに配置された端子Dのおかげで、基本的にホールセンサ領域102を通って垂直方向に流れる電流を、ホール素子100に流すことができる。高導電性領域152aおよび152cがドーピング領域102に埋め込まれているため、高導電性領域152aおよび152cの深さによって決定される特定の深さにおいて基本的に第1の表面101aに平行に流れる電流を、ホールセンサ素子に流すことができる。
【0084】
2つの埋め込まれた端子(AおよびC)と、第1の表面101a上の1つの端子(B)と、第2の表面101b上の1つの端子(D)とを備える垂直ホール素子100の特定のホール端子の構成は、原則として、すべての端子が基板の主表面に配置される従来からの垂直ホール素子において典型的に得ることができるよりも高い電圧関連の感度を達成可能にする。
【0085】
やはり当業者にとって明らかなように、垂直ホール素子100を、オフセット、すなわち磁場がゼロであるときに測定されるホール電圧が、4つの動作モードの各々において低くなるように設計することができる。重要な設計パラメータは、基板101の厚さ(第1の表面101aと第2の表面101bとの間の距離)、高導電性領域152aおよび152bの深さ、高導電性領域l52aおよびl52bの深さの横方向の間隔、ならびに高ドープ領域103bおよび303dの空間的寸法である。すでに示したように、高ドープ領域103a、103b、および103cは、x方向に沿って一列に配置され、高ドープ領域103bが高ドープ領域103aおよび103cの間の中央に位置する。高ドープ領域303dは、高ドープ領域103bと同一であるが反対側の位置を有する。当業者であれば、4つの動作モードにおける低いオフセット値の達成に向けて最適化することができるさらに多くの設計パラメータが配置およびドーピング条件に関して存在することを、理解できるであろう。TCADシミュレーションおよび実験計画法などの最適化の方法が、技術的に知られている。結果として、4つの端子に関してほぼ4回対称性が得られ、4つの動作モードについて低いオフセット値が達成される。技術的に知られているとおり、オフセットを、4つの動作モードにまたがる平均によってさらに減らすことができる。2つまたは4つのホール素子の電流スピニングおよび直交結合は、この業界においてしばしば採用されており、垂直ホール素子100にも適用することができる既知の技術である。
【0086】
図47に、本発明の考え方の別の実施形態を表す垂直ホール素子200が示されている。ホール素子200は、遮蔽ウェル153が存在しないという点においてのみ、ホール素子から相違する。
【0087】
本発明の別の実施形態が、垂直ホール素子300をx方向に沿った切断にて示している
図48に提示されている。接続ウェル151aおよび151cの各々が、154で示される誘電体構造によって囲まれている。誘電体構造154は、ウェル151aおよび151cと同様の深さを有することができる。ウェル151aを、横方向について(すなわち、x-y平面において)誘電体構造154によって囲むことができ、同じやり方で、ウェル151cを、横方向について第2の誘電体構造154によって囲むことができる。誘電体構造を、酸化ケイ素または別の誘電体材料で構成することができる。誘電体構造154は、酸化ケイ素などの誘電体材料からなるライナを有し、さらにポリシリコンで埋められたトレンチであってもよい。誘電体構造154は、ウェル151aおよび151cの遮蔽を向上させ、端子AおよびCの埋め込まれた性質を強化する。
【0088】
別の実施形態が、
図49に示されている。この垂直ホール素子400は、埋め込み領域152aおよび152cが存在しないという点で、垂直ホール素子300から相違する。この実施形態において、埋め込まれた端子AおよびCは、それぞれウェル151aおよび151cによって定められる。ウェル151aおよび151cは、それぞれ誘電体構造154によって囲まれている。したがって、ウェル151aおよび151cは、それらの底面においてのみホールセンサ領域102に電気的に接触している。
【0089】
垂直ホール素子300と比較して、ウェル151aおよび151cの深さ、したがって誘電体構造154の深さも、増加している。
【0090】
本発明の別の実施形態が、
図50、
図51、および
図52に関連して提示される。垂直ホール素子500は、ホールセンサ領域を確立させるドーピング領域102がディープトレンチアイソレーション構造301によって基板101から分離されているという点で、垂直ホール素子100から相違する。
図51および
図52に示されるように、z方向において、ディープトレンチアイソレーション構造301は、基板101の第1の表面101aから第2の表面101bまで延びている。
【0091】
図50を参照すると、ドーピング領域102は、xおよびy方向において、ディープトレンチアイソレーション構造によって囲まれている。囲いは、エンクロージャは、ドーピング領域102が、xおよびy方向において、あらゆる場所でディープトレンチアイソレーション構造301まで広がるような囲いである。ディープトレンチアイソレーション構造301の内側において、ウェル102は基板101との境界を有さない。
【0092】
ホール素子の動作時に、電流がホールセンサ領域を通って駆動されると、ホールセンサ領域を境界付けているすべてのp-n接合に沿って空乏ゾーンが形成される。垂直ホール素子500のホールセンサ領域102は、周囲の基板101とのp-n接合境界をもはや有さないため、もはやこの境界に空乏ゾーンが形成される可能性はない。しかしながら、空乏ゾーンは、垂直ホール素子500の動作時に、第1の導電性を有する遮蔽ウェル153に沿って形成される。別の実施形態(図示せず)においては、垂直ホール素子500の遮蔽ウェル153が取り除かれ、垂直ホール素子300のように誘電体アイソレーション構造154によって置き換えられる。この実施形態において、ホールセンサ領域102は、いかなる場合においても、もはやp-n接合による境界を有さない。
【0093】
ホール素子の動作時にホールプレートの境界に形成される空乏ゾーンは、ホールプレートの抵抗を変化させ、感度およびオフセットに影響を及ぼす。空乏ゾーンの幅は動作電流の関数であるため、ホール素子は非線形の挙動を示す。この非直線性により、較正の手間および関連のコストが増加する。
【0094】
図53が、切断方向B-B’に沿った垂直ホール素子100の別の図である。
図45を補足して、
図53の右側にシリコン貫通ビア(TSV)が示されている。シリコン貫通ビアは、基板101を貫く垂直方向の導電経路をもたらし、この導電経路は、第2の表面101bに配置されて端子Dを呈する高ドープ領域303dを、第1のシリコン表面に形成された金属配線へと接続する。端子Dに組み合わせられたシリコン貫通ビアは、TSV(D)で表される。シリコン貫通ビアTSV(D)は、誘電体層104に埋め込まれた第1の金属層の一部分106dに接触している。第2の表面101bにおいて、シリコン貫通ビアTSV(D)は、金属配線305dによって端子Dに接続されている。このようにして、地点C(D)において端子Dにアクセスすることができる。第1の表面101aに形成された端子Bに、地点C(B)おいて電気的にアクセスすることができる。シリコン貫通ビアは、第2の表面におけるメタライゼーションに使用される材料と同じ材料であってよい導電性材料305dで満たされる。シリコン貫通ビアの導電性の充てん305dは、シリコン貫通ビアの内面に配置される誘電体ライナ306によってシリコン基板101から絶縁される。シリコン貫通ビアは、ホール端子が形成されているウェル102から距離Lに配置される。シリコン貫通ビアを通って駆動される電流Iが、シリコン表面に平行な磁場を発生させる。垂直ホール素子の位置における誘起磁場の強さは、B=μ
0/(2πL)・Iである。これの悪影響を最小限に抑えるために、距離Lを充分に大きく設定することができる。例えば、ホール電流が1mAであり、距離Lが100μmに設定される場合、誘起磁場の強さは2μTであり、利用可能な垂直ホール素子の測定分解能を充分に下回る。
【0095】
図54は、垂直ホール素子を含む半導体デバイス600の第3の実施形態を示している。
【0096】
図55~
図65は、垂直ホール素子を含む半導体デバイス600の第3の実施形態を製造する方法の製造工程を示している。基本的な製造工程は、ここに全体が援用される欧州特許出願公開第2913847(A1)号において説明されている。
【0097】
図66は、垂直ホール素子を含む半導体デバイス700の第4の実施形態を示している。
【0098】
図67~
図78は、垂直ホール素子を含む半導体デバイス700の第4の実施形態を製造する方法の製造工程を示している。基本的な製造工程は、ここに全体が援用される欧州特許出願公開第2913847(A1)号において説明されている。