(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】印刷するための方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20241118BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241118BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241118BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241118BHJP
【FI】
C09D11/101
B41J2/01 127
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 112
B41M5/00 120
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2021543449
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2020051875
(87)【国際公開番号】W WO2020156977
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-20
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516255493
【氏名又は名称】キャノン プロダクション プリンティング ホールディング ビー. ヴィ.
【氏名又は名称原語表記】Canon Production Printing Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】Van der Grintenstraat 10, 5914 HH Venlo, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン リーウヴェン,オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレムゼ,ロビン イクス.エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルスレイイェン,メア アー.ハー.
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03222684(EP,A1)
【文献】特開2016-069580(JP,A)
【文献】特開2016-069571(JP,A)
【文献】特開2010-165038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/101
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性インク組成物であって、当該放射線硬化性インク組成物は少なくとも放射線硬化性媒体、ゲル化剤及びアクリル酸アミンオリゴマーを含み、該アクリル酸アミンオリゴマーは2-アミノエタノールとジアクリレートとの反応生成物であり、該ゲル化剤は第1の反応物と第2の反応物との縮合生成物であり、該第1の反応物は少なくとも3つの第1の官能基を含む化合物Aであり、該第2の反応物は少なくとも1つの化合物Bを含み、該少なくとも1つの化合物Bは第2の官能基を含み、該第1の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第1の基であり、該第2の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第2の基であり、該第1の官能基は該第2の官能基とは異なり、
前記少なくとも1つの化合物Bは、式R-C(O)OHに係る化合物であり、式中、Rはアルキル基、アリール基又はアルキルアリール基であり、Rは5~30個の炭素原子を有する基であり、
前記ゲル化剤はペンタエリスリトールテトラステアレートである、放射線硬化性インク組成物。
【請求項2】
前記ジアクリレートは、式H
2CCHC(O)O(CH
2)
nOC(O)CHCH
2に係る成分であり、式中nは3~10の範囲の整数である、請求項1に記載の放射線硬化性インク組成物。
【請求項3】
前記ジアクリレートは1,6-ヘキサンジアクリレートである、請求項2に記載の放射線硬化性インク組成物。
【請求項4】
前記アクリル酸アミンオリゴマーは少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放射線硬化性インク組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線硬化性インク組成物を含むインクセット。
【請求項6】
インク組成物を調製する方法であって、当該方法は、
(a)放射線硬化性媒体、ゲル化剤及びアクリル酸アミンオリゴマーを提供するステップであって、該アクリル酸アミンオリゴマーは、2-アミノエタノールとジアクリレートとの反応生成物であり、該ゲル化剤は第1の反応物と第2の反応物との縮合生成物であり、該第1の反応物は、少なくとも3つの第1の官能基を含む化合物Aであり、該第2の反応物は少なくとも1つの化合物Bを含み、該少なくとも1つの化合物Bは第2の官能基を含み、該第1の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第1の基であり、該第2の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第2の基であり、該第1の官能基は該第2の官能基とは異なり、前記少なくとも1つの化合物Bは、式R-C(O)OHに係る化合物であり、式中、Rはアルキル基、アリール基又はアルキルアリール基であり、Rは5~30個の炭素原子を有する基である、ステップと、
(b)前記放射線硬化性媒体、前記ゲル化剤及び前記アクリル酸アミンオリゴマーを混合するステップと、
を含み、
前記ゲル化剤はペンタエリスリトールテトラステアレートである、方法。
【請求項7】
粘着性媒体に印刷する方法であって、当該方法は、
(a)放射線硬化性インクを記録媒体に適用するステップであって、該放射線硬化性インクは請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線硬化性インク組成物である、ステップと、
(b)前記放射線硬化性インク組成物を硬化するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記放射線硬化性インク組成物を硬化するステップは、前記放射線硬化性インク組成物に放射線を照射することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粘着性媒体は粘着ビニル媒体である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
印刷製品であって、当該印刷製品は印刷層を備えた粘着性媒体を含み、該印刷層は請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線硬化性インク組成物を含む、印刷製品。
【請求項11】
前記インク層は硬化されている、請求項10に記載の印刷製品。
【請求項12】
物体に画像を適用する方法であって、当該方法は、
(a)請求項10又は11に記載の印刷製品を前記物体に適用するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性インク組成物及びそのようなインク組成物を調製する方法に関する。本発明は粘着性媒体(adhesive medium)上に印刷するための方法にさらに関する。本発明は印刷製品にも関する。加えて、本発明は、物体上に画像を適用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野において放射線硬化性インク組成物が公知である。これらのインク組成物は1つ以上の放射線硬化性成分を含む。これらのインク組成物は、例えばインクジェットプリンタを用いて記録媒体上に画像を適用するために用いることができる。放射線硬化性インク組成物は、水性インク組成物又は溶媒ベースのインク組成物等の他の種類のインク組成物に対して利点を有する。放射線硬化性インク組成物は、印刷画像が屋外用途でも散られる場合でも、優れたカラー堅牢性を有する丈夫な画像を形成することができる。屋外用途の例としては、バス、自動車又は列車への広告等の広告が挙げられる。
【0003】
印刷は物体上に直接適用され得るが、印刷は実用的な理由から、先ず粘着性媒体等の中間媒体上に適用されるのが一般的である。粘着性媒体の例としては、粘着ビニル媒体が挙げられる。粘着性媒体は、粘着性媒体上に画像を印刷することによって画像が適用され得る。その後に、画像が設けられた媒体が物体、例えばバスに後で適用され得る。
【0004】
画像が設けられるべき物体のサイズは中間媒体のサイズを超えることがある。したがって、実際には複数の中間媒体が適用される場合が多く、各中間媒体には物体に設けられるべき画像のサブ画像が提供される。中間媒体上に設けられるサブ画像は物体上の非印刷区画を防止するために部分的に重複する場合がある。中間部材は、各中間部材に設けられる画像に従ってそれらが部分的に重なるように物体に対して適用され得る。重複した部分は後の工程で取り除かれ、その結果として画像が設けられた物体が得られ、物体に対して適用された中間媒体はもはや重なっていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中間媒体を部分的に重なるように適用する場合、別の中間媒体で部分的に覆われた中間部材に適用されたインク層又はその一部がその別の中間媒体に転移することがある。重なり合った媒体間での色素の転移現象は、接着剤相互作用(glue interaction)と呼ばれる。接着剤相互作用の発生は、光学濃度の低下又はさらには印刷物の損傷をもたらすため望ましくない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、顔料の転移が低減された記録媒体に画像を適用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は放射線硬化性インク組成物で実現される。放射線硬化性インク組成物は少なくとも放射線硬化性媒体、ゲル化剤及びアクリル酸アミンオリゴマー(amine acrylate oligomer)を含み、該アクリル酸アミンオリゴマーは2-アミノエタノールとジアクリレートとの反応生成物であり、ゲル化剤は第1の反応物と第2の反応物との縮合生成物であり、第1の反応物は少なくとも3つの第1の官能基を含む化合物Aであり、第2の反応物は少なくとも1つの化合物Bを含み、少なくとも1つの化合物Bは第2の官能基を含み、第1の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第1の基であり、第2の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第2の基であり、第1の官能基は第2の官能基とは異なる。
【0008】
放射線硬化性媒体
放射線硬化性インク組成物は放射線硬化性媒体を含み得る。放射線硬化性媒体は少なくとも1つの放射線硬化性成分を含み得る。放射線硬化性成分は、電磁放射線、例えば紫外線(UV)放射線等の適切な放射線の影響下で反応(例えば重合)し得る成分である。放射線硬化性成分の例としてはエポキシド及び(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレートは、アクリレート重合体を形成するための1つ以上の反応基を含み得る。放射線硬化性媒体は1つの種類の放射線硬化性化合物を含み得るか、あるいは、放射線硬化性媒体は放射線硬化性化合物の混合物を含み得る。
【0009】
放射線硬化性媒体は少なくとも1つの阻害剤をさらに含み得る。阻害剤は、放射線硬化性化合物の望ましくない重合を防止(阻害)する成分である。阻害剤は、放射線硬化性インクジェットインク組成物の保存寿命を延ばすためにインク組成物に添加され得る。
【0010】
放射線硬化性媒体は少なくとも1つの光開始剤をさらに含み得る。光開始剤は硬化の効率を改善、即ち、インク組成物がUV放射線等の好適な放射線で照射された場合に重合速度を高める成分である。
【0011】
放射線硬化性媒体は、水又は有機溶媒等の溶媒をさらに含み得る。溶媒は、粘度等のインク特性を調整するために放射線硬化性媒体に添加され得る。
【0012】
さらに、放射線硬化性媒体に追加の成分が添加され得る。例えば、放射線硬化性媒体は界面活性剤、抗細菌成分及び抗真菌成分を含み得る。
【0013】
着色剤
放射線硬化性インク組成物は、顔料、染料又はそれらの混合物等の着色剤をさらに含み得る。さらに、放射線硬化性インクジェットインク組成物は染料の混合物及び/又は顔料の混合物を含み得る。着色剤は所定の色を有するインク組成物を提供し得る。
【0014】
ゲル化剤
放射線硬化性インク組成物はゲル化剤を含むことが好ましい。ゲル化剤は脂肪酸エステルを含む。
【0015】
ゲル化剤は第1の反応物と第2の反応物との縮合生成物を含み得る。第1の反応物は少なくとも3つの第1の官能基を含む化合物Aであり、第2の反応物は少なくとも1つの化合物Bを含み、少なくとも1つの化合物Bは第2の官能基を含み、第1の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第1の基であり、第2の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第2の基であり、第1の官能基は第2の官能基とは異なる
したがって、エステル化合物は基本的に第1の反応物と第2の反応物との縮合生成物で構成され、第1の反応物は少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む化合物Aであり、第2の反応物は少なくとも1つの化合物Bを含み、少なくとも1つの化合物Bはカルボン酸官能基を含む。あるいは、エステル化合物は基本的に第1の反応物と第2の反応物との縮合生成物で構成され、第1の反応物は少なくとも3つのカルボン酸官能基を含む化合物Aであり、第2の反応物は少なくとも1つの化合物Bを含み、少なくとも1つの化合物Bはヒドロキシル官能基を含む。
【0016】
化合物Bは1つの官能基だけを含むことが好ましい。
【0017】
第1の反応物と第2の反応物とを反応させることにより形成されるエステル化合物は非線形のエステル化合物(nonlinear ester compound)であり得る。エステル化合物は少なくとも3つのエステル基を含み得る。エステル化合物は放射線硬化性インクジェットインク組成物にゲル化特性を提供し得る。
【0018】
一実施形態において、化合物Bは下記式Iに係る化合物であり、ここで、Rはアルキル基、アリール基又はアルキルアリール基であり、Rは5~30個の炭素原子を有する基である。
式I:R-C(O)OH
式Iに係る化合物は、本発明に係るエステル化合物を形成するのに適している。エステル化合物の特性は官能基Rの選択により影響を受け得る。、例えば、R基の性質はエステル化合物の融点及びインクジェットインク組成物中のエステル化合物の拡散速度に影響を及ぼし得る。Rはアルキル基、アリール基又はアルキルアリール基であり得る。官能基Rが芳香族ユニットを含む場合、π-π相互作用が起こり得る。π-π相互作用は、エステル化合物を含むインク組成物の冷却の際に分子間ネットワークの形成を支援し得る。これは、冷却時のインク組成物の粘度の増加に有益であり得る。
【0019】
官能基Rは、炭素原子を5~40個、好ましくは10~25個含む基であり得る。官能基Rが5未満の炭素原子を含む場合、エステル化合物は印刷条件下でゲル化挙動を示さないことがある。官能基Rが40個より多い炭素原子を含む場合、エステル化合物は噴射条件で流体でない場合があり、インクジェットインク組成物の噴射の妨げとなり得る。エステル化合物は1種類の官能基Rのみを含み得る。あるいは、エステル化合物は複数の異なる官能基Rを含み得る。
【0020】
さらなる実施形態では、化合物Bは脂肪酸である。脂肪酸はカルボン酸基及び脂肪族長鎖を含む化合物であり、飽和又は不飽和のいずれかである。ほとんどの天然の脂肪酸は偶数個の炭素原子からなる非分枝鎖を有する。しかしながら、分枝鎖及び/又は奇数個の炭素原子を有する脂肪酸も、本発明に係るゲル化剤として使用され得る。脂肪酸の例としてはオクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)及びドデカン酸が挙げられる。
【0021】
アクリル酸アミンオリゴマー
インク組成物はアクリル酸アミンオリゴマーを含み得る。アクリル酸アミンオリゴマーは、2-アミノエタノールとジアクリレートとの反応生成物であり得る。アクリル酸アミンオリゴマーは、300g/モル~1200g/モルの範囲の分子量Mwを有し得る。
【0022】
アクリル酸アミンは遊離アクリレート基を含み得る。遊離アクリレート基は重合反応の間にラジカル成分と反応し得る。重合反応は硬化工程で開始し得る。アクリル酸アミンオリゴマーは酸素と結合可能であると考えられている。酸素は重合反応を、特に印刷物の表面で阻害することが知られているので、アクリル酸アミンオリゴマーの存在はインク組成物の反応性を改善し、それにより硬化の程度を改善し、硬化後に粘着性の表面が形成されるのを防止し得る。
【0023】
アクリル酸アミンオリゴマーは、放射線硬化性インクジェットインク組成物の全重量を基準に3.0重量%~40重量%の量で存在することが好ましい。例えば、アクリル酸アミンオリゴマーは放射線硬化性インクジェットインク組成物の全重量を基準に5.0重量%から25重量%の量、例えば、放射線硬化性インクジェットインク組成物の全重量を基準に8.0重量%~15重量%の量で存在し得る。
【0024】
本発明に係るインク組成物を用いた場合、接着剤相互作用のレベルの低下を示すか又は接着剤相互作用を全く示さない印刷物が得られ得る。
【0025】
一実施形態において、ジアクリレートは、式H2CCHC(O)O(CH2)nOC(O)CHCH2(式中、nは3~10の範囲の整数である)に係る成分である。
【0026】
さらなる実施形態においては、ジアクリレートは1,6-ヘキサンジアクリレートである。したがって、この実施形態では、アクリル酸アミンオリゴマーは、2-アミノエタノールと1,6-ヘキサンジアクリレートとの反応生成物である。このアクリル酸アミンオリゴマーは、CN3755(商標)の商品名でSartomer社から、またPhotomer(商標)4771及びPhotomer(商標)477の商品名でIGMレジン社から市販されている。
【0027】
一実施形態では、アクリル酸アミンオリゴマーは少なくとも1つのヒドロキシル基を含む。任意で、アクリル酸アミンオリゴマーは複数のヒドロキシル基を含み得る。
【0028】
一実施形態では、ゲル化剤は、放射線硬化性インクジェットインク組成物の全重量を基準に0.05重量%~4.0重量%の量で存在する。例えば、ゲル化剤は、放射線硬化性インクジェットインク組成物の全重量を基準に0.1重量%~3.0重量%の量で、例えば放射線硬化性インクジェットインク組成物の全重量を基準に0.2重量%~2.0重量%の量で存在し得る。
【0029】
ゲル化剤が放射線硬化性インクジェットインク組成物の全重量に基づいて0.10重量%未満の量で存在する場合、インクを記録媒体に塗布した際にインクのゲル化が不十分になり得る。ゲル化が不十分であると色泣き(color bleeding)等の印刷アーチファクトが生じ得る。ゲル化剤が4.0重量%を超える量で存在する場合、記録媒体に塗布した際にインクのゲル化が強すぎて、印刷品質が低下し得る。
【0030】
一実施形態では、ゲル化剤は、脂肪酸と、ペンタエリトリトール、シクロデキストリン、グリセロール、ジペンタエリスリトール、2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びトリメチロールペンタンからなる群から選択される成分との縮合反応によって得ることが可能な脂肪酸エステルである。
【0031】
これらの化合物は、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む化合物である。酸と反応させると、エステル化合物が生成される。
【0032】
脂肪酸と、上記で列挙した基から選択される化合物Aとを反応させることにより得ることが可能なエステルは、分枝構造を有するエステル(すなわち、非線形のエステル)であり得る。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、分枝構造は、冷却の際にエステル化合物が結晶化する傾向を低減させると考えられる。
【0033】
複数のヒドロキシル官能基を含む化合物及びカルボン酸基を含む化合物から出発するエステル化合物を合成する方法は、当技術分野で公知である。
【0034】
さらなる実施形態では、ゲル化剤はペンタエリスリトールの脂肪酸エステルである。
【0035】
脂肪酸は、ヒドロキシル官能基を含む化合物と反応させた場合にエステルを形成するのに適している。脂肪酸は飽和脂肪酸又は非飽和脂肪酸であり得る。非飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸又は多価不飽和脂肪酸であり得る。非飽和脂肪酸はアルケン官能基を含む。インクの硬化に際して、アルケン官能基が反応し、エステル化合物が、放射線硬化性成分によって形成されるネットワークに組み込まれ得る。脂肪酸は飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0036】
化合物Bが脂肪酸である場合、いわゆるインクのブルーミングは起こらない。ブルーミングは、ゲル化剤を含む放射線硬化性インク組成物等のインク組成物で起こり得る望ましくない現象である。記録媒体に適用された後、インク中に存在するゲル化剤が冷えて固化し、それによりインクの粘度を高める三次元ネットワークが形成される。しかしながら、時間の経過につれてゲル化剤はインク層の表面に移動してマットは印刷外観をもたらし得る。ゲル化剤の移動によって光沢が低下する現象は「ブルーミング」として知られている。何ら理論に縛られることを望むものではないが、化合物Bとして脂肪酸を選択することによってアモルファスエステル化合物が得られ、ブルーミングを示さないインク組成物が得られる。ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルは、放射線硬化性インク中のゲル化剤として好適に用いられ得る。
【0037】
さらなる実施形態では、エステル化合物はペンタエリスリトールテトラステアレートである。ペンタエリスリトールテトラステアレートはペンタエリスリトールとステアリン酸との反応により得ることができるエステルである。ステアリン酸(CH3(CH2)16COOH)は脂肪酸である。
【0038】
一実施形態では、放射線硬化性インク組成物は、2つ以上のアクリレート官能基を有するアクリレートである放射線硬化性成分をさらに含む。アクリレートは、UV放射線等の適切な放射線に照射されると重合反応を起こし得る。そのため、アクリレートを含むインクジェットインク組成物が硬化された場合にポリアクリレートポリマーが形成され、それによりインクが硬化される。2つ以上のアクリレート官能基を有するアクリレート分子は2つ以上の他のアクリレート分子と反応し得るため、ポリマーネットワークが形成され得る。2つ以上のアクリレート官能基を有するアクリレートの例は当技術分野において公知である。
【0039】
さらなる実施形態では、放射線硬化性インク組成物は単官能アクリレートをさらに含む。単官能アクリレートの存在は、硬化後のインク層の硬度及び柔軟性を改善し得る。
【0040】
一実施形態では、インクセットが提供され、インクセットは本発明に係る放射線硬化性インクジェットインク組成物を含む。
【0041】
インクセットは複数の異なるインクを含み得る。例えば、インクセットは、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のインク組成物を含むCMYKインクセットであり得る。インクセット中のインク組成物のうちの少なくとも1つは、ゲル化剤を含み、さらにクエン酸の脂肪アルコールエステルを含むインク組成物であり得る。インクセット中の複数のインク組成物は、本発明に係る放射線硬化性インク組成物であることが好ましい。インクセットは、白色、赤色、緑色、ライトマゼンタ、ライトシアン及び/又は灰色等の追加の色をさらに含み得る。さらに、インクセットは、1つ以上のメタリックインク組成物を含み得る。任意に、インクセットはアンダーコート及び/又はオーバーコート組成物を含み得る。
【0042】
本発明の一態様では、インク組成物を調製する方法が提供され、当該方法は、
(a)放射線硬化性媒体、ゲル化剤及びアクリル酸アミンオリゴマーを提供するステップであって、アクリル酸アミンオリゴマーは、2-アミノエタノールとジアクリレートとの反応生成物であり、ゲル化剤は第1の反応物と第2の反応物との縮合生成物であり、第1の反応物は、少なくとも3つの第1の官能基を含む化合物Aであり、第2の反応物は少なくとも1つの化合物Bを含み、少なくとも1つの化合物Bは第2の官能基を含み、第1の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第1の基であり、第2の官能基はヒドロキシル官能基及びカルボン酸官能基から選択される第2の基であり、第1の官能基は第2の官能基とは異なる、ステップと、
(b)放射線硬化性媒体、ゲル化剤及びアクリル酸アミンオリゴマーを混合するステップと、
を含む。
【0043】
放射線硬化性成分、ゲル化剤及びアクリル酸アミンオリゴマーが提供され得る。任意で、追加の成分、例えば追加の溶媒が準備され得る。放射線硬化性成分及びゲル化剤は純粋な形で提供されてもいいし、溶液又は分散液中に提供されてもよい。任意で、着色剤が提供され得る。着色剤が顔料の場合、顔料は水性顔料分散液等の分散液として提供されることが好ましい。これらの成分は一度に提供されていいし、これらの成分を後で添加してもよい。成分は任意の適切な順序で添加され得る。分散性成分が添加される場合(例えば、顔料)、そのような分散性成分は、インク組成物の他の成分が提供された後で添加されることが好ましい。成分の混合は任意の好適な温度で、例えば室温で行われ得る。
【0044】
本発明のさらなる態様では、粘着性媒体に印刷する方法が提供され、当該方法は、
(a)放射線硬化性インクを記録媒体に適用するステップであって、放射線硬化性インクは本発明に係る放射線硬化性インク組成物である、ステップと、
(b)インク組成物を硬化するステップと、
を含む。
【0045】
この方法では、画像が記録媒体に適用される。この方法では、ステップ(a)で記録媒体にインクを適用されることにより、記録媒体に画像が適用される。インク組成物は、例えば好適な記憶手段に記憶された画像ファイルに従って、所定の方法で記録媒体に適用され得る。画像は、例えば、インクジェットプリントヘッドを用いて放射線硬化性インクジェットインク組成物の液滴を噴射することにより適用され得る。記録媒体は、シート状の媒体、例えば紙又はビニルのシートであり得る。あるいは、記録媒体はウェブ、例えばエンドレスベルトであり得る。ウェブは好適な材料から作られ得る。記録媒体は粘着性媒体であり得る。この種類の媒体は物体に接着するために用いられ得る。媒体は、接着剤等の接着手段を用いて接着され得る。媒体は粘着性媒体であることが好ましい。粘着性媒体は、接着剤等の接着手段を備えた媒体である。粘着性媒体の例としてはシールが挙げられる。粘着性媒体は、記録媒体に印刷された画像が物体上に適用されることを意図する場合に便利である。
【0046】
この方法では、ステップ(b)で放射線硬化性インクジェットインク組成物が硬化される。インクが硬化するとインク層が硬化され得る。硬化したインク層は頑丈な層であり得る。
【0047】
本発明に係る方法を用いた場合、接着剤相互作用のレベルの低下を示すか又は接着剤相互作用を全く示さない印刷物が得られ得る。
【0048】
一実施形態では、放射線硬化性インク組成物を硬化するステップは、放射線硬化性インク組成物に放射線を照射することを含む。放射線は、UV放射線、可視光線又は電子ビーム放射線等の好適な放射線であり得る。UV放射線が好ましい。インクジェットインク組成物は、ハロゲンランプ、水銀ランプ及び/又はLEDランプ等の好適な放射線源を用いて照射され得る。任意で、インクジェットインク組成物を照射するのに複数の放射線源を用いてもよい。
【0049】
一実施形態では、粘着性媒体は粘着ビニル媒体である。粘着性媒体は本発明に従って好適に用いられ得る。市販の接着ビニル媒体の例としては、Avery Dennison社のMPI2000が挙げられる。
【0050】
本発明の一態様では、印刷製品が提供され、製品は印刷層を備えた粘着性媒体を含み、印刷層はアクリル酸アミンオリゴマーを含み、アミンアクリレートオリゴマーは、2-アミノエタノールとジアクリレートとの反応生成物である。印刷された画像は、粘着性媒体の媒体の接着側と反対の側に適用されることが好ましい。印刷製品は物体に画像を提供するのに用いられ得る。印刷製品の接着側は物体に適用され得る。
【0051】
一実施形態では、インク層が硬化される。硬化されたプリント層を備えた印刷製品は本発明の方法を用いて得ることができる。
【0052】
本発明の一態様では、物体に画像を適用する方法が提供され、当該方法は、
(a)本発明に係る印刷製品を物体に適用するステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0053】
以下、非限定の実施形態を示す添付の図面を参照しながら本発明の上記の及びさらなる特徴並びに利点を説明する。
【
図1A】
図1Aはインクジェット印刷システムの概略図を示す。
【
図1B】
図1Bはインクジェット印刷システムの概略図を示す。 図面において、同一の参照符号は同一の表す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1Aはインクジェット印刷アセンブリ3を示す。インクジェット印刷アセンブリ3は画像受容媒体2を支持するための支持手段を含む。
図1Aでは支持手段を平坦面1として図示しているが、代替的に、支持手段はプラテン、例えば軸を中心に回転する回転ドラムであってもよい。支持手段は支持手段に対して画像受容媒体を固定状態で保持するための吸引孔を任意で備え得る。インクジェット印刷アセンブリ3は、走査印刷キャリッジ5に搭載されたプリントヘッド4a~4dを含む。走査印刷キャリッジ5は好適なガイド手段6によってガイドされて主走査方向Xに往復移動する。プリントヘッド4a~4dのそれぞれはオリフィス面9を含み、オリフィス面9には
図1Bに示すように少なくとも1つのオリフィス8が設けられている。プリントヘッド4a~4dは画像受容媒体2にマーキング材料の液滴を吐出するように構成されている。
【0055】
画像受容媒体2はウェブ又はシート状の媒体であり、例えば紙、段ボール、ラベル紙、コート紙、プラスチック又は布地で構成され得る。あるいは、画像受容媒体2はエンドレス又は非エンドレスの中間部材であってもよい。回転移動し得るエンドレス部材の例としてはベルト又はドラムが挙げられる。画像受容媒体2は、流体マーキング材料を備えた4つのプリントヘッド4a~4dに沿って平坦面1の上で副走査方向Yに動かされる。
【0056】
図1Aに示すように、画像受容媒体2は温度制御領域2aで局所的に加熱又は冷却される。温度制御領域2aでは、加熱及び/又は冷却手段等の温度制御手段(図示せず)が受容媒体2の温度を制御するために設けられ得る。任意で、温度制御手段は画像受容媒体2を支持するための支持手段と統合され得る。温度制御手段は電気温度制御手段であり得る。温度制御手段は画像受容媒体2の温度を制御するために冷却及び/又は加熱液を使用し得る。温度制御手段は画像受容媒体2の温度をモニタリングするためのセンサ(図示せず)をさらに含む。
【0057】
走査印刷キャリッジ5は4つのプリントヘッド4a~4dを搬送し、画像受容媒体2を主走査方向Xに走査できるようにプラテン1と平行に主走査方向Xに往復移動し得る。本発明を明示するために4つのプリントヘッド4a~4dのみを図示している。実際には、任意数のプリントヘッドを用いてもよい。いずれの場合も、マーキング材料一色に毎に少なくとも1つのプリントヘッド4a~4dが走査印刷キャリッジ5に配置されている。例えば、白黒プリンタの場合、一般に黒色マーキング材料を含む少なくとも1つのプリントヘッド4a~4dが存在する。あるいは、白黒プリンタは、黒色の画像受容媒体2に適用される白色のマーキング材料を含んでもよい。複数の色を含むフルカラープリンタの場合では、各色(通例、黒、シアン、マゼンタ及び黄色)につき少なくとも1つのプリントヘッド4a~4dが存在する。フルカラープリンタでは、黒色のマーキング材料が他の色のマーキング材料に比べて頻繁に使用されることが多い。そのため、黒色のマーキング材料を含むプリントヘッド4a~4dを、他の色のマーキング材料を含むプリントヘッド4a~4dよりも多く走査プリントキャリッジ5に設けてもよい。あるいは、黒色のマーキング材料を含むプリントヘッド4a~4dは、別の色のマーキング材料を含むプリントヘッド4a~4dよりも大きくてもよい。
【0058】
キャリッジ5はガイド手段6によってガイドされる。これらのガイド手段6は、
図1Aに示すようにロッドであり得る。
図1Aには1つのロッド6しか図示していないが、プリントヘッド4を搬送するキャリッジ5をガイドするのに複数のロッドを用いてもよい。ロッドは好適な駆動手段(図示せず)によって駆動され得る。あるいは、キャリッジ5は、キャリッジ5を移動させることが可能なアーム等の他のガイド手段によってガイドされてもよい。他の代替案としては、画像受容材料2を主走査方向Xに動かすことが挙げられる。
【0059】
各プリントヘッド4a~4dは、少なくとも1つのオリフィス8を有するオリフィス面9を含む。少なくとも1つのオリフィス8は、プリントヘッド4a~4d内に設けられた、流体のマーキング材料を含む圧力室と流体連通されている。オリフィス面9には、
図1Bに示すように複数のオリフィス8が副走査方向Yと平行に一直線に並んでいる。あるいは、ノズルは主走査方向Xに配置されてもよい。
図1Bでは、プリントヘッド4a~4dにつき8つのオリフィス8を図示しているが、実際の実施形態では、プリントヘッド4a~4につき数百のオリフィス8が設けられ、任意でそれらが複数の列で配置され得ることが分かる。
【0060】
図1Aに図示するように、プリントヘッド4a~4dはそれぞれ互いに平行に配置されている。プリントヘッド4a~4dは、プリントヘッド4a~4dのそれぞれの対応するオリフィス8が主走査方向Xに一列に並ぶように配置され得る。これは、それぞれが異なるプリントヘッド4a~4dの一部であるオリフィス8を最大で4つ選択的に作動させることによって主走査方向Xにおける画像ドットの線が形成され得ることを意味する。対応するオリフィス8が一直線に配置されたプリントヘッド4a~4dの平行配置は生産性を高め及び/又は印刷品質を改善するのに有利である。あるいは、複数のプリントヘッド4a~4dは、プリントヘッド4a~4dのそれぞれのオリフィス8が一列の代わりに互い違いに位置するように互いに隣接して印刷キャリッジに配置され得る。例えば、これは印刷解像度を高めるか又は有効印刷領域を拡大するために行われ、主走査方向Xにおける1度の走査で対処され得る。画像ドットはオリフィス8からマーキング材料の液滴を吐出することにより形成される。
【0061】
インクジェット印刷アセンブリ3は硬化手段11a、11bをさらに含み得る。
図1Aに示すように、走査印刷キャリッジ12は2つの硬化手段11a、11bを運ぶとともに、主走査方向Xに画像受容媒体2を走査できるようにプラテン1と平行に主走査方向Xに往復移動し得る。あるいは、3つ以上の硬化手段を適用してもよい。ページワイド型の硬化手段を適用することもできる。ページワイド型の硬化手段が設けられる場合、硬化手段を主走査方向Xに往復移動させる必要はない。第1の硬化手段11aは第1の強度を有するUV放射線の第1のビームを出射し得る。第1の硬化手段11aは前硬化ステップのために放射線を提供するように構成され得る。第2の硬化手段11bは第2の強度を有する放射線の第2のビームを提供するように構成され得る。第2の硬化手段11bは後硬化ステップのために放射線を提供するように構成され得る。
【0062】
キャリッジ12はガイド手段7によってガイドされる。これらのガイド手段7は
図1Aに図示するようにロッドであり得る。
図1Aに図示のロッド7は1つだけであるが、プリントヘッド11を運ぶキャリッジ12をガイドするのに複数のロッドを用いてもよい。ロッド7は好適な駆動手段(図示せず)によって駆動され得る。あるいは、キャリッジ12は、キャリッジ12を動かすことができるアーム等の他のガイド手段によってガイドされてもよい。
【0063】
硬化手段は化学放射線源(actinic radiation source)、加速粒子源又はヒーター等のエネルギー源であり得る。化学放射線源の例としてはUV放射線源又は可視光源が挙げられる。UV放射線源はUV硬化性インクにおいて重合反応を誘発することによりUV硬化性インクを硬化するのにとりわけ好適であるため、UV放射線源が好ましい。そのような放射線の好適な放射線源の例としては水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、発光ダイオード(LED)及びレーザー等のランプが挙げられる。
図1Aに示す実施形態では、第1の硬化手段11a及び第2の硬化手段11bは互いに平行に副走査方向Yに配置されている。第1の硬化手段11a及び第2の硬化手段11bは同じ種類のエネルギー源であってもよいし異なる種類のエネルギー源であってもよい。例えば、第1の硬化手段11a及び第2の硬化手段11bの双方が化学放射線を出射する場合、2つの硬化手段11a、11bのそれぞれによって出射される放射線の波長は同じであってもよいし異なっていてもよい。第1の硬化手段及び第2の硬化手段を異なる装置として図示している。しかしながら、代替的に、放射線スペクトルを出射する1つのUV放射線源を少なくとも2つの異なるフィルターと共に用いてもよい。各フィルターはスペクトルの一部を吸収し、それにより互いに強度が異なる2つの放射線ビームが提供される。
【0064】
平坦面1、温度制御手段、キャリッジ5、プリントヘッド4a~4d、キャリッジ12並びに第1の硬化手段11a及び第2の硬化手段11bは好適な制御手段10によって制御される。
【0065】
実験及び実施例
材料
CN3715、CN3755、SR420、SR606A及びCN2305をSartomer社から入手した。Speedcure ITXはRahn社から入手した。Tegorad2250はEvonik社から入手した。ペンタエリトリトールテトラステアレートをWE-6としてNOF社から入手した。マゼンタ顔料はSun社から入手した。Irgacure819はIGMレジン社から入手した。フェノチアジンをシグマアルドリッチ社から入手した。Etercure6113はEternal Material社から入手した。
【0066】
方法
ロッドコート
ロッドコートは、厚さ12μmのインクの層を受容媒体に塗布することによって作製した。受容媒体としてAvery Dennison MPI2000を用いた。MPI2000は粘着ビニル媒体である。
【0067】
インクは、225×20mmのウインドウサイズを有し、395nmの波長を有する放射線を放出するPhoseon社のFirePowerFP300LEDランプを用いてインク層を照射することにより硬化した。ランプは移動ベルトの35cm上に位置していた。395nm、100%出力で且つ移動ベルトの3cm上の高さで測定したピーク放射照度は16Wcm-2であった。
【0068】
ランプは可変出力レベルで動作された。ロッドコートは移動ベルトを用いてランプの下を7.4m/分の速度で4回搬送された。
【0069】
接着剤相互作用
1つのロッドコートを作成した。白紙(blank)のAvery Dennison MPI2000の裏紙を外し、MPI2000の接着剤側をロッドコートの印刷面に配置した。パッケージを1時間放置した後、白紙のMPI2000を外した。取り外し性(取り外しが容易か又は取り外しにくいか)と、白紙のMPI2000で覆われた印刷物の状態を試験した。
【0070】
比較実験
実施例及び比較例
インク組成物Ex1、CE1は、表1に示す量の表1に示す成分を準備し、成分を混合することにより調製した。
【0071】
第1のインク組成物は、本発明に係るインク組成物であるインク組成物Ex1である。
【0072】
第2のインク組成物は、本発明に係るものではないインク組成物であるインク組成物CE1である。
【0073】
【表1】
インク組成物Ex1及びCE1を用いて作製したロッドコートの印刷の状態及び取り外し性を試験することにより接着剤相互作用試験を行った。結果は表2に要約されている。
【0074】
【表2】
インク組成物Ex1、CE
1をそれぞれ用いて調製したロッドコートについて、取り外し性及び印刷の状態を試験し、以下の点が観察された。ロッドコートからの接着性媒体の取り外しは、本発明に係るインク組成物であるインク組成物Ex1で作製されたロッドコートの場合容易であった。他方、インク組成物CE
1で作製されたロッドコートからの粘着性媒体の取り外しは困難であった。
【0075】
本発明に係るインク組成物であるインク組成物Ex1で作製されたロッドコートでは、接着性媒体を取り外した後印刷が僅かに損傷していた。他方、インク組成物CE1で作製されたロッドコートでは、接着性媒体を取り外した後インク層が完全に剥がれていた。
【0076】
そのため、インク組成物Ex1を用いて作製されたロッドコートは、インク組成物CE1を用いて作製されたロッドコートよりも、取り外し性及び印刷の状態の双方の点で良好な結果を示した。
【0077】
本発明の詳細な実施形態を本明細書で開示してきたが、開示した実施形態は、様々な形で実施可能な本発明の例示に過ぎないことが分かる。したがって、本明細書で開示した具体的な構造及び機能についての詳細を限定的に解釈するのではなく、特許請求の範囲の根拠として及び事実上適切な全ての詳細構造で本発明を様々な形で用いるのを当業者に教示するための例示的根拠として解釈すべきである。とりわけ、別々の従属請求項で提示及び記載の特徴は組み合わせで適用され得る。そのような請求項の任意の有利な組み合わせがここに開示される。また、本明細書で使用の用語及び表現は限定を意図したものではなく、むしろ本発明の理解可能な説明を提供するために用いたものである。本明細書で使用の「a」又は「an」は1つ以上と定義される。本明細書で使用の複数という用語は2つ以上と定義される。本明細書で使用の別のという用語は、少なくとも第2以上と定義される。本明細書で使用の含有する及び/又は有するという用語は、含む(即ち、オープンランゲージ)を意味すると定義される。本明細書で使用の連結されたという用語は、必ずしも直接的ではないが接続されていることと定義される。