(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ライブセルイメージング(live cell imaging)動的BH3プロファイリング
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20241118BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241118BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
(21)【出願番号】P 2021549847
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 US2020019999
(87)【国際公開番号】W WO2020176689
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-27
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・レタイ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ボーラ
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・ジャーマン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514210(JP,A)
【文献】国際公開第2008/152405(WO,A2)
【文献】Bhola, P. D. et al.,"Functionally identifiable apoptosis-insensitive subpopulations determine chemoresistance in acute myeloid leukemia",J. Clin. Invest.,2016年,Vol. 126,pp. 3827-3836,Supplementary Materials and Methods
【文献】Murschhauser, A. et al.,"A high-throughput microscopy method for single-cell analysis of event-time correlations in nanoparticle-induced cell death",Commun. Biol.,2019年01月24日,Vol. 2; 35,pp. 1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療するための推定上の治療剤を同定する方法であって、
a. 原発がん細胞を含む細胞集団の、試験薬剤と接触させた被験細胞部分を用意する工程、
b. 前記被験細胞部分をBH3ペプチドと接触させる工程、
c. 前記被験細胞部分の一連の画像を、ライブセルイメージングによりある期間にわたって取り込む工程、
d. 前記被験細胞部分において、取り込んだ画像に基づき前記期間の異なる時点にBH3ペプチド誘導性ミトコンドリア外膜透過化(MOMP)を測定する工程、
e. 前記被験細胞部分において測定したBH3ペプチド誘導性MOMPを、前記試験薬剤と接触させなかった、前記細胞集団の対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比較する工程
を含み、前記対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比べた、前記被験細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPの上昇が、前記試験薬剤が前記細胞集団のがん細胞を治療するための推定上の治療剤であることを示す、方法。
【請求項2】
前記比較する工程が、デルタプライミングの値を決定する工程を含み、デルタプライミングは、前記被験細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと前記対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPとの差異である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デルタプライミングの値を複数の異なる時点で決定する、又は、
前記デルタプライミングの値が、前記期間にわたって生じるMOMPの最大差に相当するピーク値である、又は、
前記デルタプライミングの値が、前記期間の一部にわたって生じるMOMPの最大変化に相当するピーク値である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記期間にわたって生じるMOMPの全体的な変化に相当するデルタプライミングの集計値を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
更に、
i)前記試験薬剤と接触させなかった、前記細胞集団の前記対照細胞部分を用意する工程、
ii)前記対照細胞部分を前記BH3ペプチドと接触させる工程、
iii)前記対照細胞部分の一連の画像を、ライブセルイメージングにより前記期間にわたって取り込む工程、
iv)前記対照細胞部分において、取り込んだ画像に基づき異なる時点にBH3ペプチド誘導性MOMPを測定する工程
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被験細胞部分を、第1のペプチド濃度で前記BH3ペプチドと接触させ、前記方法が更に、前記第1のペプチド濃度でBH3ペプチド誘導性MOMPを測定した後、前記被験細胞部分を、第2の上昇したペプチド濃度で前記BH3ペプチドと接触させる工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分が、がん細胞の検出マーカーを含み、BH3ペプチド誘導性MOMPを、前記検出マーカーを含む細胞においてのみ測定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
更に、前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分を、前記検出マーカーに対する抗体で染色する工程、並びに前記抗体の染色を検出してがん細胞を同定する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分の細胞が固体表面に付着している、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記付着させた細胞が、少なくとも100細胞から10,000細胞まで、少なくとも100細胞且つ1,000細胞以下、少なくとも1,000細胞、少なくとも1,000細胞且つ5,000細胞以下、又は少なくとも5,000細胞で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分の細胞を、BH3ペプチドと接触させる前に透過処理する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
BH3ペプチド誘導性MOMPを、電位差測定色素の発光の検出により測定する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電位差測定色素が、テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)、5,5',6,6'-テトラクロロ-1,1',3,3'-テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニンヨージド(JC-1)及びジヒドロローダミン123からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞集団が、コア生検試料、ヒト原発腫瘍試料、又は患者由来異種移植片(PDX)から得られる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記BH3ペプチドが、BIM、BID、BAD、Noxa A、Noxa B、PUMA、BMF、HRK及びBIKからなる群から選択されるポリペプチドのBH3ドメインに由来する、又は、
前記BH3ペプチドが、MS1、MS2、MS3及びFS1からなる群から選択される非天然BH3ペプチドである、
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ライブセルイメージングが、ライブシングルセルイメージングである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
がん細胞中で試験薬剤を評価する方法であって、
a. 試験薬剤と接触させたがん細胞を含む、細胞の試料をBH3ペプチドと接触させる工程、
b. 前記試料中の個別細胞の一連の画像を、ライブセルイメージングによりある期間にわたって取り込む工程、
c. 複数の前記個別細胞において、取り込んだ画像に基づき前記期間の異なる時点にBH3ペプチド誘導性MOMPのレベルを測定する工程、
d. 前記複数の個別細胞を評価して、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルが前記期間の一時点においてプリセット値に達するかを決定する工程、
e. 前記複数の各個別細胞に対して、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの前記プリセット値に達する前記時点を決定する工程
を含み、前記試験薬剤が、前記期間のより遅い時点で前記プリセット値に達する細胞と比べてより早い時点で前記プリセット値に達する細胞中ではより高い細胞傷害性を有し、前記プリセット値に達しない細胞は前記試験薬剤に対して耐性である、方法。
【請求項18】
前記プリセット値が、一個別細胞でのBH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、対照レベルに対するプリセット変化である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対照レベルが、前記BH3ペプチドとの接触前に前記個別細胞中で測定したMOMPのレベルである、又は、
前記対照レベルが、前記BH3ペプチドとの接触後に前記個別細胞中で測定したMOMPのレベルである、又は、
前記対照レベルが、2つ以上の時点で測定した前記MOMPのレベルに基づく平均値である、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの
、20%か
ら80%
、40%か
ら60%の間、又は
、50%の変化率である、
請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルを、
i) ミトコンドリア膜電位の測定、
ii) ミトコンドリアからのシトクロムcの放出の測定、及び
iii) ミトコンドリア内でのシトクロムcの保持の測定
のうちの1つ又は複数により決定する、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記がん細胞が原発がん細胞である、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下で、参照により本明細書にその全体が組み込まれている、2019年2月26日に出願した米国仮出願第62/810,928号に対する優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
がんのプレシジョンメディシンにおけるほとんどの努力は、静的遺伝情報をがんの生物学と関連付けることを試み、そこから、臨床応答を予測する。このアプローチでの限界は、このアプローチが死細胞の静的観察を表すことであり、研究に向けて、がん細胞の機能的複雑性の莫大な量が失われることである。動的BH3プロファイリング(「DBP」)は、がん細胞を薬物に曝し、ex vivoでの短時間の処理期間後にアポトーシス促進性シグナルの早期の変化を測定する、機能的表現型リードアウトによるプレシジョンメディシン技術である。患者原発腫瘍試料を用いたDPBは、様々な薬物組み合わせに対する臨床応答を予測するために行うことができる。しかしながら、患者試料量は、頻繁に、DPBにより試験される薬物の数を限定し得る。例えば、進行した転移性固形腫瘍を患う患者からの試料は、細胞収率が低いコア針生検を使用してしか収集できない。低い細胞収率は、細胞を曝せる条件を制限し得る。更に先行技術の方法では、がん細胞及び非がん細胞の両方の領域において、単一細胞ベースでのアポトーシス促進性シグナルの決定が可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/047342号
【文献】国際公開第2015/042249号
【文献】国際公開第2016/176299号
【文献】米国特許出願公開第2009/0299196号
【文献】米国特許出願公開第2018/0021090号
【文献】米国特許出願公開第2006/0089554号
【文献】米国特許第6537211号
【文献】米国特許出願公開第2016/0231314号
【文献】米国特許出願公開第2017/0184567号
【文献】米国特許出願公開第2018/0128813号
【文献】米国特許第10393733号
【文献】米国特許出願公開第2018/0120297号
【非特許文献】
【0004】
【文献】「The Cancer Cell Line Encyclopedia enables predictive modelling of anticancer drug sensitivity」Nature、2012年3月28日、483(7391):603~7頁、doi: 10.1038/nature11003
【文献】Foight等、ACS Chem Biol.、2014年9月19日、9(9):1962~8頁
【文献】Liu CCとSchultz PG、Annu Rev Biochem.、2010年、79:413~44頁
【文献】Samson等、Endocrinology、137:5182~5185頁(1996)
【文献】DeGrado、Adv Protein Chem.、39:51~124頁(1988)
【文献】Gao等、J. Cell Sci. (2001) 114(Pt 15):2855~2862頁
【文献】Waterhouse等、Cell Death and Differentiation (2003) 10:853~855頁
【文献】Maes等(2017) PLOS One (2017) 12(9):e0184434
【文献】Al-Zubaidi等、Molecular Human Reproduction (2019) 25:11
【文献】Mitra等、Curr. Protoc. Cell Biol. (2010) 4.25:1~21頁
【文献】Walsh等、Scientific Reports (2017) 7:46684
【文献】Brock等、Sci Transl Med 6: 217ra2 (2014)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの態様では、本開示は、がんを治療するための推定上の治療剤を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該方法は、原発がん細胞を含む細胞集団の、試験薬剤と接触させた被験細胞部分を用意する工程を含む(例えば、該被験細胞部分を該試験薬剤で前処理した)。該方法は更に、該被験細胞部分をBH3ペプチドと接触させる工程を含む。該方法は更に、該被験細胞部分の一連の画像を、ライブセルイメージングによりある期間にわたって取り込む工程を含む。いくつかの実施形態では、該方法は更に、該被験細胞部分において、取り込んだ画像に基づき該期間の異なる時点にBH3ペプチド誘導性ミトコンドリア外膜透過化(MOMP)を測定する工程を含む。いくつかの実施形態では、該方法は更に、該被験細胞部分において測定したBH3ペプチド誘導性MOMPを、該試験薬剤と接触させなかった、該細胞集団の対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比較する工程を含む。いくつかの実施形態では、該対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比べた、該被験細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPの上昇が、該試験薬剤が該細胞集団のがん細胞を治療するための推定上の治療剤であることを示す。
【0006】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチド誘導性MOMPを比較する工程が、デルタプライミングの値を決定する工程を含み、デルタプライミングは、被験細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPとの差異である。いくつかの実施形態では、デルタプライミングの値を複数の異なる時点で決定する。いくつかの実施形態では、デルタプライミングの値が、期間にわたって生じるMOMPの最大差に相当するピーク値である。いくつかの実施形態では、デルタプライミングの値が、期間の一部にわたって生じる、MOMPの最大変化に相当するピーク値である。いくつかの実施形態では、MOMPの該最大変化が、該複数の異なる時点で決定したデルタプライミングの値に由来する曲線下面積測定に相当する。いくつかの実施形態では、該方法が更に、期間にわたって生じるMOMPの全体的な変化に相当するデルタプライミングの集計値を決定する工程を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法が更に、(i)試験薬剤と接触させなかった、細胞集団の対照細胞部分を用意する工程、(ii)対照細胞部分をBH3ペプチドと接触させる工程、(iii)対照細胞部分の一連の画像を、ライブセルイメージングにより期間にわたって取り込む工程、(iv)対照細胞部分において、取り込んだ画像に基づき異なる時点にBH3ペプチド誘導性MOMPを測定する工程を含む。いくつかの実施形態では、対照細胞部分を、試験薬剤による前処理をしないこと以外は被験細胞部分と同じ条件に付す。いくつかの実施形態では、方法が更に、被験細胞部分を試験薬剤と接触させる前処理工程を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、被験細胞部分を、第1のペプチド濃度でBH3ペプチドと接触させ、方法が更に、該第1のペプチド濃度でBH3ペプチド誘導性MOMPを測定した後、時間的により遅く、被験細胞部分を、第2の上昇したペプチド濃度でBH3ペプチドと接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、前記の方法を、該第2の上昇したペプチド濃度で行う。いくつかの実施形態では、該第1のペプチド濃度が、少なくとも0.001μM且つ1μM以下、少なくとも0.001μM且つ0.1μM以下、少なくとも0.001μM且つ0.01μM以下、少なくとも0.005μM且つ0.1μM以下、又は少なくとも0.005μM且つ0.01μM以下である。
【0009】
いくつかの実施形態では、被験細胞部分及び対照細胞部分が、がん細胞の検出マーカーを含み、BH3ペプチド誘導性MOMPを、該検出マーカーを含む細胞においてのみ測定する。いくつかの実施形態では、該検出マーカーが、細胞内腫瘍マーカー、細胞外腫瘍マーカー又は細胞表面腫瘍マーカーである。いくつかの実施形態では、方法が更に、被験細胞部分及び対照細胞部分を、該検出マーカーに対する抗体で染色する工程、並びに該抗体の染色を検出してがん細胞を同定する工程を含む。いくつかの実施形態では、検出マーカーが、上皮細胞接着分子(EpCam)、ケラチンタンパク質、平滑筋アクチンタンパク質、c-kitタンパク質、S100タンパク質又はビメンチンタンパク質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、検出マーカーが、がん細胞を非がん細胞と区別する1つ又は複数の形態的特徴である。いくつかの実施形態では、検出マーカーが、細胞表面マーカー、例えば、前立腺特異的膜抗原又はHer2である。いくつかの実施形態では、検出マーカーが、非がん細胞の細胞表面マーカーである。いくつかの実施形態では、MOMPを非がん細胞中では検出せず、別の実施形態では、MOMPを非がん細胞において検出し、そのMOMP値を、がん細胞に対して決定したMOMP値から差し引く。実施形態のうちのいずれかでは、がん細胞を非がん細胞と区別するためにマーカーを使用でき、但し、がん細胞のMOMPをより選択的に決定してもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、被験細胞部分及び対照細胞部分の細胞が固体表面に付着している。いくつかの実施形態では、付着させた細胞が、ある濃度で存在し、但し、細胞の少なくとも90%、95%、98%、更には少なくとも99%さえも、互いに接触していない。いくつかの実施形態では、付着させた細胞が10,000細胞以下である。いくつかの実施形態では、付着させた細胞が、少なくとも100細胞から10,000細胞まで、少なくとも100細胞且つ1,000細胞以下、少なくとも1,000細胞、少なくとも1,000細胞且つ5,000細胞以下、又は少なくとも5,000細胞で存在する。いくつかの実施形態では、該固体表面が1つ又は複数の接着促進剤(pro-adhesive agent)で被覆されている。いくつかの実施形態では、該1つ又は複数の接着促進剤が、コラーゲン1、ラミニン、コラーゲン4及びフィブロネクチンからなる群から選択される細胞外マトリクスタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、細胞が接着細胞である。いくつかの実施形態では、該固体表面が、マルチウェルプレート中のウェルである。
【0011】
いくつかの実施形態では、被験細胞部分及び対照細胞部分の細胞を、BH3ペプチドと接触させる前に透過処理する。いくつかの実施形態では、細胞を、透過処理試薬及びBH3ペプチドを含む溶液と接触させることにより、被験細胞部分及び対照細胞部分の細胞を透過処理する。いくつかの実施形態では、該透過処理試薬が界面活性剤である(例えば、ジギトニン、サポニン)。
【0012】
いくつかの態様では、本開示が、がん細胞中で試験薬剤を評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該方法が、試験薬剤と接触させたがん細胞を含む、細胞の試料をBH3ペプチドと接触させる工程を含む(例えば、試料を試験薬剤で前処理した)。いくつかの実施形態では、該方法が更に、該試料中の個別細胞の一連の画像を、ライブセルイメージングによりある期間にわたって取り込む工程を含む。該方法は更に、複数の該個別細胞において、取り込んだ画像に基づき該期間の異なる時点にBH3ペプチド誘導性MOMPのレベルを測定する工程を含む。該方法は更に、該複数の個別細胞を評価して、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルが該期間の一時点においてプリセット値に達するかを決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、該方法が更に、該複数の各個別細胞に対して、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの該プリセット値に達する該時点を決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、試験薬剤が、期間のより遅い時点でプリセット値に達する細胞と比べてより早い時点でプリセット値に達する細胞中ではより高い細胞傷害性を有する。いくつかの実施形態では、プリセット値に達しない細胞が、試験薬剤に対して耐性である。
【0013】
いくつかの実施形態では、プリセット値が、一個別細胞でのBH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、対照レベルに対するプリセット変化である。いくつかの実施形態では、該対照レベルが、BH3ペプチドとの接触前に該個別細胞中で測定したMOMPのレベルである。いくつかの実施形態では、該対照レベルが、BH3ペプチドとの接触後に該個別細胞中で測定したMOMPのレベルである。いくつかの実施形態では、該対照レベルが、2つ以上の時点で測定したMOMPのレベルに基づく平均値である。いくつかの実施形態では、プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約20%から約80%の間の変化率である。いくつかの実施形態では、プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約40%から約60%の間の変化率である。いくつかの実施形態では、プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約50%の変化率である。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法が更に、プリセット値に達しない細胞を、MOMP以外の細胞の特性の更なる解析に付す工程を含む。いくつかの実施形態では、該更なる解析が、ゲノム解析、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析及び形態学的解析の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、該更なる解析を行って、試験薬剤に対する耐性と相関する細胞の1つ又は複数の特性を評価する。
【0015】
前記の実施形態のいずれかに従い、BH3ペプチド誘導性MOMP(例えば、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベル又は量)は、ミトコンドリア完全性の測定により決定してもよい。いくつかの実施形態では、BH3ペプチド誘導性MOMPを、ミトコンドリア膜電位の測定、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出の測定、及びミトコンドリア内でのシトクロムcの保持の測定のうちの1つ又は複数により決定する。いくつかの実施形態では、BH3ペプチド誘導性MOMPを、電位差測定色素の発光の検出により測定する。いくつかの実施形態では、該電位差測定色素が、ローダミン色素又はシアニン色素である。いくつかの実施形態では、該電位差測定色素が、テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)、5,5',6,6'-テトラクロロ-1,1',3,3'-テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニンヨージド(JC-1)及びジヒドロローダミン123からなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、細胞集団、又は細胞の試料は、原発がん細胞(例えば、単離された原発がん細胞)を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団、又は細胞の試料は、コア生検試料、ヒト原発腫瘍試料、又は患者由来異種移植片(PDX)から得られる。
【0017】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、BIM、BID、BAD、Noxa A、Noxa B、PUMA、BMF、HRK及びBIKからなる群から選択されるポリペプチドのBH3ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、MS1、MS2、MS3及びFS1からなる群から選択される非天然BH3ペプチドである。
【0018】
いくつかの実施形態では、ライブセルイメージングが、ライブシングルセルイメージングである。
【0019】
本発明の別の態様では、試験薬剤による撹乱(perturbation)を伴わない、細胞の天然状態を決定するために、最初は試験薬剤と接触させていない細胞上でBH3プロファイリングを行う。いくつかの実施形態では、方法が、原発がん細胞を含む細胞集団の被験細胞部分を用意する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法が更に、該被験細胞部分をBH3ペプチドと接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法が更に、該被験細胞部分の一連の画像を、ライブセルイメージングによりある期間にわたって取り込む工程を含む。いくつかの実施形態では、方法が更に、該被験細胞部分において、取り込んだ画像に基づき該期間の異なる時点にBH3ペプチド誘導性ミトコンドリア外膜透過化(MOMP)を測定する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法が更に、該被験細胞部分において測定したBH3ペプチド誘導性MOMPを、該BH3ペプチドと接触させなかった、該細胞集団の対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比較する工程を含む。いくつかの実施形態では、該対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比べた、該被験細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPの上昇が、該被験細胞部分のBH3プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、細胞の天然状態に関する(例えば、処理に対する細胞の耐性に関する、抗アポトーシスBCL-2タンパク質依存性に関する、細胞傷害性化学療法による治療に対する感受性に関する)付加情報を得るために、本明細書に記載される1つ又は複数の異なるBH3ペプチドを使用して、該細胞集団の更なる1つ又は複数の被験細胞部分を用いてBH3プロファイリングを行う。
【0020】
いくつかの実施形態では、被験細胞部分を、第1のペプチド濃度でBH3ペプチドと接触させ、方法が更に、該第1のペプチド濃度でBH3ペプチド誘導性MOMPを測定した後、時間的により遅く、被験細胞部分を、第2の上昇したペプチド濃度でBH3ペプチドと接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、前記の方法を、該第2の上昇したペプチド濃度で行う。いくつかの実施形態では、該第1のペプチド濃度が、少なくとも0.001μM且つ1μM以下、少なくとも0.001μM且つ0.1μM以下、少なくとも0.001μM且つ0.01μM以下、少なくとも0.005μM且つ0.1μM以下、又は少なくとも0.005μM且つ0.01μM以下である。別の条件、例えば、個別がん細胞を検出するための検出マーカー及び固定面の使用、並びに上昇するBH3濃度の使用は前記のとおりである。
【0021】
前記の実施形態のいずれかでは、注目する細胞を認識してMOMPを測定するために、がん細胞の同定及びMOMPの測定を、手動で行ってもよく、又はソフトウェアを使用して行ってもよい。
【0022】
本発明の特定の実施形態の詳細は、以下に記載する特定の実施形態の詳細な説明において示す。本発明の別の特徴、主題及び利点は、定義、実施例、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0023】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様を更に明示するために含まれる。該態様は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてそれらの図面の1つ又は複数を参照すると更に良く理解できる。なお、図面に示すデータは決して本開示の範囲を限定するものではないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本開示に従うワークフロー及び分析の例を示す。ライブセルイメージング動的BH3プロファイリング(LCI-DBP)のワークフローを示す。
【
図1B】本開示に従うワークフロー及び分析の例を示す。異なる薬物処理が、異なる時点にミトコンドリア電位の損失を促進し得る様子を示し(上図)、この情報が、アポトーシスプライミングの薬物誘導性の上昇に対応する様子を示す(下図)。
【
図1C】本開示に従うワークフロー及び分析の例を示す。混合細胞試料中での免疫蛍光による細胞特異的染色を用いたLCI-DBPのワークフローを示す。
【
図2-1】
図2A。薬物処理に対して異なる感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。溶媒対照(上図)又はBcl-XL阻害剤であるA1331852(下図)で処理したPanc8902細胞の画像を示す。処理細胞をBH3ペプチドと接触させ、核染色及びミトコンドリア膜内外電位差を測定する電位差測定色素TMREを使用して異なる時点に撮像した。
【
図2-2】
図2B。薬物処理に対して異なる感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。溶媒対照(左図)又はA1331852(右図)で処理した細胞中でのTMRE損失の単一細胞データプロットを示す。各行は唯一の細胞を表し、各列は単一時点を表す。
【
図2-3】
図2C。薬物処理に対して異なる感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。薬物処理ごとに、細胞の単一細胞トレースの平均TMRE強度を示す。
図2D。薬物処理に対して異なる感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。薬物処理ごとに、細胞のTMRE強度のデルタプライミングを示す。
【
図2-4】
図2E。薬物処理に対して異なる感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。
図2Dでのデルタプライミングの定量に関する曲線下面積測定(AUC)を示す。
図2F。薬物処理に対して異なる感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。デルタプライミングに関するLCI-DBP測定の、従来の固定細胞測定に対する比較を示す。
【
図3A】薬物処理に対して異なる感受性を示すMMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBPの一例を示す。溶媒対照(上図)又は標的がん治療剤(targeted cancer therapeutic)17-DMAG(下図)で処理したMMTV-PyMT-T1細胞の画像を示す。処理細胞をBH3ペプチドと接触させ、核染色及びTMREを使用して異なる時点に撮像した。
【
図3B】薬物処理に対して異なる感受性を示すMMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBPの一例を示す。薬物処理ごとに、細胞の単一細胞トレースの平均TMRE強度を示す。
【
図3C】薬物処理に対して異なる感受性を示すMMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBPの一例を示す。薬物処理ごとに、細胞のTMRE強度のデルタプライミングを示す。
【
図3D】薬物処理に対して異なる感受性を示すMMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBPの一例を示す。
図3Cでのデルタプライミングの定量に関する曲線下面積測定(AUC)を示す。
【
図3E】薬物処理に対して異なる感受性を示すMMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBPの一例を示す。溶媒対照(左図)又は17-DMAG(右図)で処理した細胞中でのTMRE損失の単一細胞データプロットを示す。各行は唯一の細胞を表し、各列は単一時点を表す。
【
図3F】薬物処理に対して異なる感受性を示すMMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBPの一例を示す。異なる薬物に対するin vivo応答を示す。
【
図3G】薬物処理に対して異なる感受性を示すMMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBPの一例を示す。異なる薬物処理についてLCI-DBPの、in vivo応答に対する比較を示す。
【
図4】肝転移由来のヒト結腸直腸コア生検の細胞に関するBH3ペプチド特異的なミトコンドリア電位の損失の一例を示す。細胞をDMSOで処理し、該処理細胞を、BH3ペプチドと接触後(下図)又はBH3ペプチドと接触させずに(上図)、TMREを使用して異なる時点に撮像した。
【
図5A】薬物処理に対して感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。溶媒対照で処理した細胞中でのTMRE損失の単一細胞データプロットを示す。各行は唯一の細胞を表し、各列は単一時点を表す。
【
図5B】薬物処理に対して感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。Bcl-2及びBcl-XLの阻害剤であるナビトクラックスで処理した細胞中でのTMRE損失の単一細胞データプロットを示す。各行は唯一の細胞を表し、各列は単一時点を表す。
【
図5C】薬物処理に対して感受性を示す膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBPの一例を示す。溶媒対照又はナビトクラックスで処理した単一細胞中でのTMRE損失の半減期を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
動的BH3プロファイリングは、がん細胞をex vivoで異なる試験薬剤に一時的に曝して、ミトコンドリア中での純アポトーシス促進性シグナルの早期の変化を測定する技術である。ミトコンドリア外膜透過化(MOMP)の測定により定量されるこの薬物誘導性変化は、明白な細胞死が起こる前に都合よく生じ、in vitro及びin vivoでの標的薬剤によるがん細胞の最終的な明白な細胞死を血液腫瘍及び固形腫瘍の両方に関して予測できる。したがって、動的BH3プロファイリングは、患者にとって最も役立ちそうである治療剤の同定を可能にする。
【0026】
MOMPに基づく細胞のプロファイリングは、技術分野において記載された。この技術は、PCT刊行物、国際公開第2014/047342号、国際公開第2015/042249号、国際公開第2016/176299号、及び国際公開第2016/176299号に詳細に記載されており、それらの各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0027】
過去に行われたプロファイリング戦略には数々の制限が存在する。例えば、それらの戦略は、非常に限られた細胞集団との作業には適さず、それは、コア針生検、及び簡単には切除できない腫瘍を扱う場合に頻繁に当てはまる。それらの戦略は、同じく、単一細胞内においてライブセル測定させないため、そのような測定は、がん細胞と、集団、例えば、特定の場合にはその集団の細胞の50%程度であり得る、生検中に存在する別の細胞との間で区別できない。更に以前の戦略は、同じ細胞一式を用いて多数のプロファイリングアッセイを行うために適切でない。例えば、以前の戦略は、BH3ペプチド濃度を連続的に上昇させて細胞を繰り返し曝すことを許容しない。
【0028】
いくつかの態様では、本開示は、BH3ペプチドに曝す経過中の異なる時点にMOMPを測定できるという発見及び貴重な測定値(measurements)がそこから得られ得るという発見に関する。いくつかの実施形態では、BH3ペプチド誘導性MOMPを、ライブセルイメージングにより、異なる時点に測定する。ライブセルイメージングは、複数の異なる時点を含むある期間にわたって一連の画像を取り込むために使用し得る。
【0029】
ライブセルイメージング動的BH3プロファイリング(LCI-DBP)のワークフローの一例を
図1Aに示す。図示するように、いくつかの実施形態では、細胞をウェル(例えば、マルチウェルプレートのウェル)中に播く。いくつかの実施形態では、播いた細胞を、試験薬剤又は対照溶液(例えば、試験薬剤と共に使用する媒体(vehicle)溶液、例えば、水、緩衝液又は溶媒)と接触させて、試験薬剤を、処理期間にわたり細胞とインキュベートする。いくつかの実施形態では、処理細胞を、イメージング用の所望のマーカーで染色する(例えば、核マーカー及び/又はミトコンドリアマーカー)。いくつかの実施形態では、細胞を、次いで、MOMP測定用の試薬、例えば電位差測定色素で処理する。いくつかの実施形態では、染色した処理細胞を、次いでBH3ペプチドと接触させる。
【0030】
BH3ペプチドで処理した細胞を、MOMP測定用の試薬を検出するためにライブセルイメージングにより撮像する。
図1Aに示すように、いくつかの実施形態では、電位差測定色素からの発光の低下を経時的に測定するために細胞を撮像する。いくつかの実施形態では、電位差測定色素からの発光の低下が、MOMPの代替的測定として利用されるミトコンドリア膜電位の損失を示す。いくつかの実施形態では、電位差測定色素からの発光の損失を、試験薬剤で処理した細胞に関して、試験薬剤で処理しなかった細胞と比べて評価する。いくつかの実施形態では、本明細書でデルタプライミングと呼ぶパラメータを得るために、処理細胞と非処理細胞との間での発光の差異を決定する。発光の差異を決定するために、画像解析ソフトウェア若しくは当業者には公知の任意の適切なアルゴリズムを使用してもよく、又は手動で決定してもよい。
【0031】
本明細書のいくつかの実施形態で使用されるように、デルタプライミングは、ある特定の試験薬剤に応答した、アポトーシスの閾値近傍での細胞の短期変化の程度を表す動的BH3プロファイリングのリードアウトである。いくつかの実施形態では、試験薬剤で処理した細胞中でのBH3ペプチド誘導性MOMPと試験薬剤で処理しなかった細胞中でのBH3ペプチド誘導性MOMPとの間の差異に基づいてデルタプライミングを決定する。
【0032】
したがって、いくつかの実施形態では、試料の細胞中での、1つ又は複数の試験薬剤に対するデルタプライミングを決定するためにLCI-DBPを使用する。いくつかの実施形態では、例えば、
図1A中の棒グラフで示されるように、試料中での異なる処理に対する比較パラメータとしてデルタプライミングを使用する。この例では、ABT263が、デルタプライミングの最高値を有すると言うことができるため、この例で使用される最も有効な殺細胞処理であり得る。
【0033】
いくつかの態様では、本開示は、BH3ペプチドに曝す経過中の異なる時点にデルタプライミングを評価するためにライブセルイメージングを使用できるという驚くべき発見に関し、それは、ペプチド曝露に続く単一時点に基づいてデルタプライミングを評価する以前の単一細胞技術と比べてより貴重な情報を提供できる。
図1Bは、その解析の一例を提供し、本開示に従って得られ得る貴重な情報を示す。
【0034】
前記のように、いくつかの実施形態では、様々な試験薬剤に応答した細胞のミトコンドリア膜内外電位差の損失の測定により、ライブセルイメージングを行い得て、それは、BH3ペプチド処理に続く経時的な電位差測定色素からの発光強度のプロット101により可視化され得る。図示のように、測定の約10分と約40分との間で、異なる試験薬剤は、異なる時点に発光の損失を促進した。以前のプロファイリング戦略は、MOMP測定の唯一の固定的な終点に注目し、それは一般的に60分である。プロット101に示されるように、60分の時点でのミトコンドリア完全性の記録は、最小限の情報を提供するか、又は薬物感受性の情報を何も提供しないであろう。更に、10分の時点と40分の時点との間にある貴重な情報が失われるであろう。より低いBH3ペプチド濃度は、60分の時点でのアポトーシス薬物感受性を区別させるかもしれないが、ある特定の細胞試料に関して使用するためのBH3ペプチドの最適濃度を先験的に知るすべもなく、それは、限られた試料が存在する場合には問題となる(例えば、コア生検由来)。したがって、LCI-DBPは、この限定を克服し、各実験からより多くの情報を得ること、及び所定の試料を用いてより多くの実験を行うことを可能にする。
【0035】
いくつかの実施形態では、ライブセルイメージングによるMOMPの測定を更に、唯一の固定的な終点ではなくて複数の時点にデルタプライミングを決定することにより評価できる。個々の時点でのデルタプライミングを、本明細書に記載されるように計算し、異なる試験薬剤が引き起こすアポトーシスプライミングの上昇を示す、経時的なデルタプライミングのプロット102により可視化してもよい。いくつかの実施形態では、デルタプライミングのピークに相当する単一時点に基づいて最適処理を同定する。いくつかの実施形態では、BH3ペプチドに曝す経過中の複数の時点に基づいて、又はBH3ペプチドに曝す経過に相当する期間の一部内の複数の時点に基づいて最適処理を同定する。プロット102の各処理曲線を、ある特定の処理に対する曲線下面積(AUC)の決定により得られるデルタプライミング集計パラメータ(summary delta priming parameter)の計算により、更に解析してもよい。
【0036】
本発明の一態様は、同一細胞集団内の個別細胞を越えた試験薬物の示差的効果を評価する能力である。MOMPのレベルは個別細胞中で経時的に測定可能であるため、試験薬剤は、細胞集団内の各細胞がMOMPのレベルのプリセット値に達するために要する時間の決定により評価できる。このやり方で、比較的遅い時点でプリセット値に達する(又はまったく達しない)細胞は、細胞集団内の、試験薬剤に対して最も耐性の細胞である。
【0037】
本発明者らは驚くべきことに、一細胞株の細胞であり同じ又は類似の特性を有すると予期される薬物処理細胞が、個別細胞を越えて、薬物に対して示差的応答を示すことを見出した。非限定的な一例として、
図5Bは、薬物処理細胞中での120分にわたるBH3ペプチド誘導性MOMPの単一細胞測定(電位差測定色素からの発光により測定)を示す実験結果を示す。この実験の目的で、細胞を評価するために0.50のプリセット値(発光の50%損失に相当)を使用した。図示するように、破線より上方の個別細胞は、120分の経過中、プリセット値に達しなかった。理論に拘束されることは望まないが、これらの細胞(Cell ID(約)450-500)は、薬物に対する耐性を与える1つ又は複数の特性を有すると考えられる。これらの細胞を、処理耐性を評価するための更なる解析に付すことにより、それらの細胞に対してより効果的な治療戦略が決定され得る(例えば、併用療法又は代替単剤療法)。
【0038】
いくつかの実施形態では、ライブセルイメージングによるBH3ペプチド誘導性MOMPの測定を、個別細胞中でのMOMPのレベルがプリセット値に達するかの決定によって評価できる。いくつかの実施形態では、プリセット値が、個別細胞のMOMPのレベルの、対照レベルに対するプリセット変化(例えば、上昇又は低下)である。該対照レベルは、BH3ペプチドとの接触前又は接触後の細胞内で測定したMOMPのレベルであり得る。いくつかの実施形態では、異なる時点でのMOMPのレベルを、対照レベルに基づいて正規化してもよい。MOMPのレベルは、例えば、各時点でのMOMPのレベルを対照レベルで割ることで正規化してもよい。いくつかの実施形態では、対照レベルを、2つ以上の時点で測定したMOMPのレベルに基づく平均値として決定する。
【0039】
いくつかの実施形態では、プリセット値が、MOMPのレベルの変化率である。いくつかの実施形態では、プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%又はそれ以上)の変化率である。いくつかの実施形態では、プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約20%から約80%の間、約25%から約75%の間、約40%から約60%の間、又は約50%から約75%の間の変化率である。いくつかの実施形態では、プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約50%の変化率である。
【0040】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルがプリセット値に達する一時点の決定により、個別細胞を評価する。いくつかの実施形態では、該時点が、MOMPのレベルを測定する複数の異なる時点のうちの1つである。いくつかの実施形態では、該時点を、該複数の異なる時点のうちの1つ又は複数において測定したMOMPのレベルに基づく推論又は外挿法により決定する。いくつかの実施形態では、期間中にプリセット値に達しないと決定された個別細胞に、最後の測定時点、外挿により推定された時点を割り当てるか、又は時点を有さないと別個に分類してもよい。個別細胞に対する時点は、手動手段又は自動手段(例えばソフトウェア)により決定し得る。
【0041】
試験薬剤で前処理した細胞の試料に関して、特定細胞中での、別の細胞と比べて早期の時点は、それらの細胞中での、試験薬剤に対するより著しい細胞傷害性応答を示す。いくつかの実施形態では、期間中のより遅い時点でプリセット値に達するか、又はまったく達しないと特定された個別細胞を、処理に対する耐性と相関する、細胞の特性を決定するための更なる解析にさらしてもよい。処理耐性は、ゲノム解析、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析及び形態学的解析用の任意の適切な技術を含む、技術分野では公知の方法により解析可能である。
【0042】
本発明の一態様は、限られた数のがん細胞から重要な測定をする能力である。測定は個別細胞ベースで行えるため、必要とされる細胞の量が非常に低下する。測定はがん細胞を用いて選択的に行えることから、背景雑音が低下するため、必要とされる細胞の量が非常に低下する。
【0043】
本発明の一態様は、数が限られた原発がん細胞を、2セット以上の条件に曝露する能力である。測定が行われる際に細胞は生存中であるため、同じ細胞を、本発明の一態様により2回以上試験できる。例えば、使用するBH3ペプチドの濃度がMOMPを検出するために低すぎるか、又は高すぎるため経時的なMOMPの測定中に差異が見られないかを前もって知ることは難しい。本発明のこの態様によると、被験細胞部分を、第1のペプチド濃度のBH3ペプチドと接触させ(例えば、第1の接触工程)、MOMPの測定を経時的に行う。次いで、BH3ペプチドの濃度が低すぎると決定された場合、方法は更に、該第1のペプチド濃度でBH3ペプチド誘導性MOMPを測定した後に該被験細胞部分を、第2の上昇したペプチド濃度でBH3ペプチドと接触させる工程(例えば、第2の接触工程)を含む。これにより、一定分量の細胞を使用して、前記の測定に適切なBH3濃度で画像を撮影することが可能になる。適切な濃度は、例えば、少なくとも0.001μM且つ1μM以下の範囲にある。初期濃度及び続く濃度は、例えば、少なくとも0.001μM、少なくとも0.005μM、少なくとも0.01μM、少なくとも0.1μM、及び少なくとも0.5μMであり得る。
【0044】
それ故、いくつかの実施形態では、被験細胞部分を含む試料を、初期ペプチド濃度を含む試料をもたらす(例えば、試験薬剤と接触させる前処理工程に続く)第1の接触工程においてBH3ペプチドと接触させる。いくつかの実施形態では、BH3ペプチド誘導性MOMPを測定するために、試料の被験細胞部分を該初期ペプチド濃度において撮像する。いくつかの実施形態では、試料中での該初期ペプチド濃度と比べて上昇したペプチド濃度を含む試料をもたらす第2の接触工程において、試料をBH3ペプチドと接触させる。いくつかの実施形態では、BH3ペプチド誘導性MOMPを測定するために、試料の被験細胞部分を、該上昇したペプチド濃度において撮像する。いくつかの実施形態では、試料中でのBH3ペプチドの濃度を更に上昇させるために、1つ又は複数の付加接触工程(例えば、第3、第4、第5等)を行ってもよく、各接触工程後に、上昇した濃度でのBH3ペプチド誘導性MOMPを測定するために、試料の被験細胞部分を撮像できる。
【0045】
いくつかの実施形態では、各接触工程が、試料(例えば、被験細胞部分を含む試料)へのBH3ペプチドの別個の添加を含む。例えば、試料を溶液状のBH3ペプチドと接触させる場合、第1の接触工程は、第1の試料体積中での初期ペプチド濃度を含む試料をもたらす。第2の接触工程は、第2の試料体積中での上昇したペプチド濃度を含む試料をもたらし、該第2の試料体積は、該第1の試料体積と比べて、試料に添加したBH3ペプチド溶液の体積に相当する量だけ上昇している。それ故、溶液状のBH3ペプチドは、接触後の試料体積の上昇が、試料中でのペプチド濃度の低下(又は無変化)をもたらさないような十分な濃度であるべきである(例えば、希釈により)。
【0046】
いくつかの実施形態では、接触工程が、試料中のBH3ペプチド濃度の、約0.001μMから約1.0μMの間での上昇を含む。接触工程において、BH3ペプチド濃度を、例えば、少なくとも0.001μM、少なくとも0.005μM、少なくとも0.01μM、少なくとも0.1μM、少なくとも0.5μM、又は少なくとも1.0μMだけ上昇させてもよい。接触工程において、BH3ペプチド濃度を、該接触工程前のBH3ペプチド濃度と比べて10%、25%、50%、75%、100%、150%、250%、500%、1,000%だけ又はそれ以上上昇させてもよい。続く(例えば第2の)接触工程では、BH3ペプチド濃度を上昇させる量は、先行する(例えば第1の)接触工程において測定したBH3ペプチド誘導性MOMPに基づいて決定してもよい。但し、上昇は、既定量に基づいてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、一接触工程を、続く接触工程と、約10秒から約60分の間だけ隔ててもよい。例えば、第1の接触工程を、第2の接触工程と少なくとも10秒且つ最高で60分だけ隔ててもよい。いくつかの実施形態では、一接触工程を、続く接触工程と、約10秒から約30分の間(例えば、約10秒から約10分の間、約10秒から約5分の間、約10秒から約2分の間、約10秒から約1分の間、約30秒から約10分の間、約30秒から約3分の間、又は約1分から10分の間)だけ隔てる。
【0048】
本発明の一態様によると、がん細胞の検出マーカーを用いて細胞(例えば、細胞の試料、細胞集団の被験細胞部分及び対照細胞部分中の細胞)を同定でき、該検出マーカーを含む細胞においてのみBH3ペプチド誘導性MOMPを測定する。そのようなマーカーは、周知であり、例えば、細胞内腫瘍マーカー及び細胞外腫瘍マーカーを含む。一態様では、標的細胞を該検出マーカー用の抗体で染色してから、がん細胞を同定するために該抗体を検出できる。検出マーカーの例は、上皮細胞接着分子(EpCam)、ケラチンタンパク質、平滑筋アクチンタンパク質、c-kitタンパク質、S100タンパク質又はビメンチンタンパク質を含む。別の例は、例えば、標識ペプチド、小分子、核酸又は色素を含む。別の例は、がん細胞を非がん細胞と区別する1つ又は複数の形態的特徴を含む。
【0049】
本発明の別の態様によると、非がん細胞の検出マーカーを用いて細胞(例えば、細胞の試料、細胞集団の被験細胞部分及び対照細胞部分中の細胞)を同定でき、該検出マーカーを含む細胞をBH3ペプチド誘導性MOMPの測定から除外する。このやり方で、試料中のがん細胞の解析から、非がん細胞及び様々な試料破片由来の情報を除外できる。いくつかの実施形態では、非がん細胞の該検出マーカーが、がん性でないと知られている細胞型のマーカーである(例えば、非がん細胞を含む試料中に存在し得る、良性であると知られている細胞又は健常若しくは正常な細胞型のマーカー)。
【0050】
いくつかの実施形態では、がん細胞及び/又は非がん細胞の検出マーカーが、非がん細胞をがん細胞と区別する1つ又は複数の形態的特徴である。例えば、いくつかの実施形態では、がん細胞及び/又は非がん細胞を、画像に基づく1つ又は複数の形態的特徴により互いに区別する。細胞の形態的特徴は、手動で、又は自動プロセス、例えば、イメージングソフトウェア若しくはアルゴリズムにより評価され得る。形態的特徴の例は、制限なしに、細胞増殖速度及び細胞分裂速度、細胞サイズ、細胞形態、細胞サイズ又は細胞形態の変化、核サイズ、核の色、染色体配列、及び/又は検出される染色体の数、及び細胞境界を含む。
【0051】
ソフトウェア、蛍光色素、及びがん細胞(又は非がん細胞)を選択的に検出し画像を処理するための、光学センサによるイメージングを可能にするシステムを含む技術は、技術分野において公知であり、例えば、US刊行物、米国特許出願公開第2009/0299196号明細書、米国特許出願公開第2018/0021090号明細書、米国特許出願公開第2006/0089554号明細書及び米国特許第6537211号明細書に記載されており、それらの各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態では、がん細胞の同定を、計器により自動化する。例えば、いくつかの実施形態では、混合細胞集団中のがん細胞を、蛍光検出器、又はがん細胞を非がん細胞と区別する1つ又は複数の形態的特徴(例えば、細胞サイズ、細胞形態、細胞膜の特徴等)の検出器によって検出する。いくつかの実施形態では、混合細胞集団中のがん細胞を手動で、例えば、細胞画像の目視検査により検出し、蛍光強度又は発光強度の標準データと関連付ける。
【0052】
本発明の一態様は、がん細胞を別の細胞と区別することを可能にするため、MOMPの測定は、標的細胞集団であるがん細胞中でのMOMPに基づくことになる。本発明の別の異なる態様は、個別細胞中でのMOMPの測定を可能にする。これらのすべては、前記の段落で記載したような技術を使用して自動化可能である。
【0053】
いくつかの態様では、本出願に従ってがん細胞を評価する。いくつかの実施形態では、がん細胞が、コア生検試料、ヒト原発腫瘍試料、又は患者由来異種移植片(PDX)から得られる。いくつかの実施形態では、がん細胞が、不死化がん細胞株を含む。いくつかの実施形態では、細胞が、不死化マウス細胞株又は不死化ヒトがん細胞株である。確立されたがん細胞株は技術分野では周知であり、例えば、膵臓がん細胞株(例えば、YAPC、Panc02.03及びSU86.86等)、乳がん細胞株(例えば、AU565、BT-20、CAL-120、HMEL及びKPL-1等)、腎臓がん細胞株(例えば、769-P、ACNH、HEK TE、SLR 20及びUMRC2等)、骨がん細胞株(例えば、CAL-78、HOS、MG-63及びSK-ES-1等)、及びリンパ球系がん細胞株(例えば、AML-193、BDCM、CML-T1及びJM1等)を含む。当業者は、例えば、Barretina等に開示される別のがん細胞株を認める(「The Cancer Cell Line Encyclopedia enables predictive modelling of anticancer drug sensitivity」Nature、2012年3月28日、483(7391):603~7頁、doi: 10.1038/nature11003)。
【0054】
いくつかの実施形態では、細胞が患者由来である。例えば、がん細胞を、外科的手法(例えば、生検、切除)によって患者から単離してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、細胞が原発腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、細胞が、がん性原発腫瘍を免疫不全マウスへと移植することで生成された組織に関する患者由来異種移植片(PDX)を含む。
【0055】
細胞集団(例えば、細胞の試料)は、患者に存在する1つ又は複数の細胞型を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞集団が、リンパ球(例えば、白血球細胞)を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団が、リンパ球を含まない。細胞型の非限定的な例は、制限なしに、リンパ球、筋細胞、神経細胞、心筋細胞、グリア細胞、上皮細胞、造血幹細胞、幹細胞、赤血球、肺胞、破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、肝細胞(hepatocyte)、胸腺細胞(thymocyte)、腎細胞、脂肪細胞、クッパー細胞、錐体細胞、胸腺細胞(thymus cell)、リンパ節細胞、甲状腺細胞、胃細胞、口腔細胞、食道細胞、気管細胞、小腸細胞、大腸細胞、直腸細胞、虫垂細胞、膣細胞、膵臓細胞、肝細胞(liver cell)、胆嚢細胞、肺細胞、脳細胞、眼細胞、及び皮膚細胞を含む。
【0056】
細胞集団は、患者の組織に由来してもよい。提供される方法の細胞が由来し得る組織の非限定的な例は、制限なしに、血液、脾臓、胸腺、リンパ節、甲状腺、心臓、神経(例えば、中枢又は末梢)、骨、骨格筋、平滑筋、胃、口腔、食道、気管、小腸、大腸、直腸、虫垂、膣、膵臓、肝臓、胆嚢、肺、脳、眼、皮膚、及び毛髪を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、細胞ががん細胞である。該がん細胞は、原発(例えば、第1の事例の)がん及び/又は再発(例えば、第2若しくは続く事例の)がんに由来してもよい。がん細胞は、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、肺がん、食道がん、気管がん、口腔がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、リンパ腫、白血病、甲状腺がん、脳がん、骨がん、肉腫、眼のがん、卵巣がん、乳がん、子宮がん、黒色腫、筋肉腫、多発性骨髄腫、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、頭部がん、頸部がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、肛門がん、星細胞腫、噴門がん、子宮頸がん、胆管癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、子宮内膜がん、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、陰茎がん、咽頭がん、及び横紋筋肉腫を含む任意の型のがんに由来し得る。
【0058】
提供される方法の任意のいくつかの実施形態では、細胞(例えば、被験細胞部分及び対照細胞部分の細胞)が固体表面に付着している。いくつかの実施形態では、該固体表面が1つ又は複数の接着促進剤で被覆されている。いくつかの実施形態では、該1つ又は複数の接着促進剤が、細胞外マトリクス(ECM)タンパク質である。いくつかの実施形態では、該ECMタンパク質が、コラーゲン1、ラミニン、コラーゲン4及びフィブロネクチンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該1つ又は複数の接着促進剤が抗体である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の接着促進化合物が、ストレプトアビジン又はニュートラビジンである。
【0059】
いくつかの実施形態では、イメージング装置から見て細胞の重複を最小限にするように細胞を播く。それ故、いくつかの実施形態では、ウェルの表面積に基づく細胞数で細胞を播く。いくつかの実施形態では、付着させた細胞がある濃度で存在し、細胞の95%が互いに接触していない。いくつかの実施形態では、付着させた細胞が10,000細胞以下である。いくつかの実施形態では、付着させた細胞が、少なくとも100細胞から10,000細胞まで、少なくとも100細胞且つ1,000細胞以下、少なくとも1,000細胞、少なくとも1,000細胞且つ5,000細胞以下、又は少なくとも5,000細胞で存在する。
【0060】
BH3プロファイリング及び動的BH3プロファイリング
いくつかの実施形態では、本開示の方法が、細胞(例えば、試験薬剤で前処理したがん細胞)をBH3ペプチドと接触させる工程を含む。該細胞をBH3ペプチドと接触させた後、該細胞内でBH3ペプチド誘導性ミトコンドリア外膜透過化(MOMP)を測定する。MOMPは、内因性アポトーシス経路を介するアポトーシスへの細胞運命決定における帰還不能点と見なされる。MOMPは、B細胞リンパ腫2(BCL-2)ファミリータンパク質によって制御され、DNA損傷、成長因子又は栄養不足、及び細胞傷害性薬剤での処理を含む、様々な細胞ストレッサーによって活性化され得る。ミトコンドリアアポトーシス経路の基礎状態は、細胞の最終的な運命を変え得る。なぜなら、異なる細胞は、MOMPを起こすためにプライムされる程度の点で異なり得るからである。
【0061】
BH3プロファイリングは、細胞ミトコンドリアのアポトーシスプライミング又はアポトーシスの閾値近傍を測定する機能的アッセイである。BH3プロファイリングは、米国特許出願公開第2016/0231314号明細書、米国特許出願公開第2017/0184567号明細書及び米国特許出願公開第2018/0128813号明細書に記載されており、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれている。簡単に言うと、BH3プロファイリングは、異なるアポトーシス促進性死シグナル(BH3ペプチド)をミトコンドリアへと運ぶことにより、MOMPをモニタリングしながら、アポトーシスプライミングを直接的に測定する。このアッセイは、ミトコンドリアからの応答を引き起こすために、アポトーシス促進性BH3-onlyタンパク質のBH3ドメインに由来するペプチドを使用する。アポトーシスプライミング又はミトコンドリアプライミングとも呼ばれるプライミングは、BH3ペプチド誘導性MOMPの決定により、例えば、本明細書に記載されるミトコンドリア完全性のモニタリングにより測定可能である。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示の方法が、アポトーシスプライミングの値を決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、該アポトーシスプライミングの値が、個別細胞中のBH3ペプチド誘導性MOMPのレベルがプリセット値に達する時点である。いくつかの実施形態では、該時点が、MOMPのレベルを測定する複数の異なる時点のうちの1つである。いくつかの実施形態では、該時点を、該複数の異なる時点のうちの1つ又は複数において測定したMOMPのレベルに基づく推論又は外挿法により決定する。いくつかの実施形態では、アポトーシスプライミングの値を、試料中の複数の細胞に対して、複数の異なる時点で測定したMOMPのレベルに関する曲線下面積の測定により決定する。アポトーシスプライミングの値は、手動手段又は自動手段(例えばソフトウェア)により決定し得る。いくつかの実施形態では、アポトーシスプライミングを、前記のようにBH3プロファイリングの目的で決定してもよい。いくつかの実施形態では、アポトーシスプライミングを、薬物処理細胞を対象に、試料の個別細胞中での処理応答を評価するために決定してもよい。
【0063】
動的BH3プロファイリングは、アポトーシスプライミングの薬物誘導性変化を直接に測定するプレシジョンメディシンアッセイである。動的BH3プロファイリングは、米国特許第10393733号明細書及び米国特許出願公開第2018/0120297号明細書に記載されており、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれている。簡単に言うと、動的BH3プロファイリングは、治療による処理後にBCL-2ファミリーメンバーの純変化を積分し、全アポトーシス促進シグナルを測定する。細胞を試験薬物で前処理し、プライミングへの効果をBH3プロファイリングにより測定する。薬物処理細胞中での、非処理細胞と比べたプライミングの上昇を、デルタプライミングと呼ぶ。デルタプライミングは、治療によって殺滅され得る細胞を区別するため、様々なモデル及び患者試料でのイベント以前に、細胞傷害性効果を有するであろう治療を予測する。デルタプライミングは、in vitro、in vivo及び臨床での、治療に対する細胞傷害性応答を予測するために使用できる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示の方法が、デルタプライミングの値を決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、デルタプライミングが、試料の薬物処理細胞中でのBH3ペプチド誘導性MOMPと該試料の非処理細胞中でのBH3ペプチド誘導性MOMPとの間の差異である。いくつかの実施形態では、デルタプライミングを、ある期間の1つ又は複数の時点において、式:Δ(t)=MOMP非処理(t)-MOMP処理(t)により計算する。デルタプライミングの値を決定する別の適切な方法は、本明細書中で提供され、技術分野では公知である(例えば、米国特許第10393733号明細書及び米国特許出願公開第2018/0120297号明細書を参照)。
【0065】
BH3ペプチド
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、アポトーシス促進性BCL-2ファミリータンパク質のBCL-2相同ドメイン3(BH3ドメイン)に相当するアミノ酸配列を含む。BH3ペプチドがそれに由来し得るアポトーシス促進性BCL-2ファミリータンパク質の非限定的な例は、BIM(細胞死のBCL-2相互作用メディエータ)、BID(BH3相互作用ドメイン死アゴニスト)、BAD(BCL-2関連死プロモータ)、Noxa、PUMA(アポトーシスのp53アップレギュレートモジュレータ)、BMF(BCL-2調節因子)、HRK(ハラキリ)、及びBIK(BCL-2相互作用キラー)を含む。いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、操作されたBH3ペプチドのアミノ酸配列を含む。操作されたBH3ペプチドは、特定抗アポトーシスBCL-2タンパク質をターゲティングするための所望の親和性及び特異性を示すように設計されている。操作されたBH3ペプチドの例は、MS1、MS2、MS3及びFS1を含む(例えば、Foight等、ACS Chem Biol.、2014年9月19日、9(9):1962~8頁を参照)。
【0066】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、Table 1(表1)から選択されるアミノ酸配列を含む。PUMA2Aは、ミトコンドリアの非脱分極の代表的な測定を提供するために使用され得る陰性対照ペプチドである。
【0067】
【0068】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、Table 1(表1)から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%等しいアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、Table 1(表1)から選択されるアミノ酸配列と約70%から約80%の間、約80%から約90%の間、約80%から約95%の間、又は約90%から約95%の間等しいアミノ酸配列を含む。
【0069】
BH3ペプチドは、N末端残基、C末端残基、内部残基、又はそれらの任意の組み合わせにおいて修飾されていてもよい。ペプチド修飾は、制限なしに、アセチル化、アミド化、ビオチン化、シンナモイル化、ファルネシル化、ホルミル化、ミリストイル化、パルミトイル化、リン酸化(例えば、セリン、チロシン及び/又はスレオニン残基でのリン酸化)、ステアロイル化、スクシニル化、スルフリル化、及び環化(例えば、ジスルフィド架橋又はアミド環化)を含み得る。いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、ポリペプチド上に2つ以上の種類の修飾を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Table 1(表1)から選択されるBH3ペプチドアミノ酸配列が、アセチル化されたN末端残基及びアミド化されたC末端残基を含む。
【0070】
BH3ペプチド修飾は更に、Table 1(表1)から選択されるBH3ペプチドアミノ酸配列への1つ又は複数のアミノ酸付加を含む。いくつかの実施形態では、付加が、ペプチド濃度の測定(例えば、UV吸光度測定)を可能にする又は高めるために、芳香族アミノ酸付加である。例えば、Table 1(表1)に示されるように、BID、Noxa B、HRK、BMF及びBIKのBH3ペプチドに相当するアミノ酸配列は、芳香族アミノ酸を含まない。それ故、いくつかの実施形態では、BH3ペプチド(例えば、BID、Noxa B、HRK、BMF、BIK)が更に、N末端又はC末端に、付加された芳香族アミノ酸を含む。20個の正準アミノ酸のうちの芳香族アミノ酸の例は、チロシン、トリプトファン及びフェニルアラニンを含む。BH3ペプチドに付加され得る芳香族アミノ酸の更なる例は、芳香族側鎖を有する非天然アミノ酸を含む(例えば、Liu CCとSchultz PG、Annu Rev Biochem.、2010年、79:413~44頁を参照)。BH3ペプチド修飾は更に、1つ又は複数のアミノ酸欠失を含み得る(例えば、Table 1(表1)から選択されるBH3ペプチドアミノ酸配列に対して)。
【0071】
BH3ペプチド修飾は更に、1つ又は複数のアミノ酸置換を含んでもよい(例えば、Table 1(表1)から選択されるBH3ペプチドアミノ酸配列に対して)。アミノ酸置換は、保存的置換(例えば、疎水性アミノ酸に代わる疎水性アミノ酸)又は非保存的置換(例えば、疎水性アミノ酸に代わる芳香族アミノ酸)であり得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換が、非芳香族アミノ酸に対する芳香族アミノ酸(例えば、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン)置換を含む。芳香族アミノ酸置換は、そうでない場合は1つ又は複数の芳香族アミノ酸を欠くアミノ酸配列において有用であり得る。なぜなら、芳香族側鎖は、吸光及び/又は蛍光分光法において使用され得るからである(例えば、濃度を測定するために)。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換が、天然(例えば正準)アミノ酸に対する非天然アミノ酸置換を含む。非天然アミノ酸の非限定的な例は、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、N-メチルアミノ酸、アルファメチルアミノ酸、ベータ(ホモ)アミノ酸、ガンマアミノ酸、へリックス/ターン安定化モチーフ、及び骨格修飾(例えば、ぺプトイド)を含む。
【0072】
場合により、BH3ペプチドを導入ドメインに付着させる。導入ドメインは、その中に導入ドメインが存在するペプチドを、所望の細胞内目的地へと導く。したがって、該導入ドメインは、該ペプチドを、原形質膜を横切って細胞質内へと導き得る(例えば、細胞外部から、原形質膜を通って細胞質内へと)。それ故、導入ドメインは、細胞膜の透過処理を必要とすることなく、本開示の方法において使用できる。代替的又は付加的に、導入ドメインは、ペプチドを、細胞内の所望の部位、例えば、核、リボゾーム、小胞体、ミトコンドリア、リソソーム又はペルオキシソームに導くことができる。いくつかの実施形態では、導入ドメインが、公知の膜移行配列に由来する。代替的に、導入ドメインは、膜取込みを促進することが知られている化合物、例えば、ポリエチレングリコール、コレステロール部分、オクタン酸及びデカン酸である。該導入ドメインは、BH3ペプチドのN末端又はC末端のいずれか一方に連結されていてもよい。
【0073】
BH3ペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸又は両方ともの組み合わせのポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、BH3ドメインペプチドが環状ペプチド又はステープルペプチドである。環状ペプチドは、技術分野では公知の方法により調製される。例えば、大環化は、頻繁には、ペプチドのN末端とC末端との間でのアミド結合の形成、側鎖とN末端若しくはC末端との間でのアミド結合の形成(例えば、Samson等、Endocrinology、137:5182~5185頁(1996)を参照)、又は2つのアミノ酸側鎖間でのアミド結合の形成(例えば、DeGrado、Adv Protein Chem.、39:51~124頁(1988)を参照)により行われる。
【0074】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、組換え分子又は合成分子である。それ故、BH3ペプチドは、最新クローン技術、組換えDNA技術を使用して調製してもよく、又は標準的ペプチド合成技術を使用して化学的に合成してもよい。いくつかの実施形態では、天然BH3ドメインペプチドを、標準的タンパク質精製技術を使用して適切な精製プランにより、細胞又は組織源から単離してもよい。いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、その二次構造、例えば、αヘリックス構造を維持するために修飾されている。ヘリックス安定化の方法は、技術分野では公知である。
【0075】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、単離された又は精製されたBH3ペプチドである。「単離された」又は「精製された」BH3ドメインペプチドは、BH3ドメインペプチドが由来する細胞源若しくは組織源からの細胞物質若しくは別の混在タンパク質を実質的に含まないか、又は化学的に合成した場合、化学的前駆体若しくは別の化学品を実質的に含まない。
【0076】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、195アミノ酸長未満、例えば、150、100、75、50、40、35、30、25、20又は15アミノ酸長と同等以下である。いくつかの実施形態では、BH3ペプチドが、約10アミノ酸長から約150アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約100アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約75アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約50アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約40アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約35アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約30アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約25アミノ酸長の間、約10アミノ酸長から約20アミノ酸長の間、又は約10アミノ酸長から約15アミノ酸長の間である。
【0077】
いくつかの実施形態では、本出願に従う方法において、該方法が、BH3ペプチドとの接触後、接触前、又は接触と同時に、細胞を透過処理する工程を含む。一般的に、透過処理は、ミトコンドリア外膜を透過性にすることなく細胞膜が透過性になるような試薬で細胞を処理するプロセスに関する。透過処理に使用する試薬は、有機溶媒(例えば、アセトン及びメタノール)並びに界面活性剤(例えば、ジギトニン、サポニン、Triton X-100及びTween-20)を含む。任意の特定の理論に拘束されることは望まないが、BH3ペプチドの、ミトコンドリアへのアクセスを可能にするために細胞を透過処理する。細胞は、技術分野では公知の方法により透過処理する。例えば、細胞を、ジギトニン、サポニン、メタノール、Triton X-100又は技術分野で認められている別の細胞透過処理試薬と接触させることにより、細胞を透過処理する。いくつかの実施形態では、細胞を、透過処理試薬、例えば、ジギトニン又はサポニンを含むBH3プロファイリング緩衝液と接触させる。
【0078】
いくつかの実施形態では、BH3ペプチドとの接触から3時間以内に細胞を撮像する。例えば、いくつかの実施形態では、BH3ペプチドとの接触から3時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内、20分以内、10分以内、5分以内、又は1分以内に細胞を撮像する。いくつかの実施形態では、細胞を撮像している間、例えば、ライブセルイメージングの期間中、BH3ペプチドを細胞と接触させる。
【0079】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、ミトコンドリア完全性の測定により、BH3ペプチド誘導性MOMPを決定する。ミトコンドリア完全性は、例えば、ミトコンドリア膜電位の測定により測定可能である。いくつかの実施形態では、電位差測定色素の発光の検出により、ミトコンドリア膜電位を測定する。電位差測定色素は、電圧変化に応じてその分光特性を変化させる色素である。多数の生理的プロセスは、電位差測定色素を用いて検出され得る、細胞膜電位の変化、例えば、ミトコンドリア膜内外電位差の変化を伴う。プログラム細胞死の初期の際立つ特徴は、電位差測定色素により測定され得る、活動中のミトコンドリアの崩壊である。電位差測定色素の例は、制限なしに、テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)、5,5',6,6'-テトラクロロ-1,1',3,3'-テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニンヨージド(JC-1)及びジヒドロローダミン123を含む。ミトコンドリア完全性(例えば、BH3ペプチド誘導性MOMP)は更に、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出又はミトコンドリア内でのシトクロムcの保持の測定により測定可能である。ライブセルイメージングによるシトクロムcのモニタリング法は、技術分野では記載されている(例えば、それらの各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれているGao等、J. Cell Sci. (2001) 114(Pt 15):2855~2862頁; Waterhouse等、Cell Death and Differentiation (2003) 10:853~855頁;及びMaes等(2017) PLOS One (2017) 12(9):e0184434を参照)。
【0080】
いくつかの実施形態では、ライブセルイメージングにより得られた一連の画像に基づいてBH3ペプチド誘導性MOMPを測定する。測定値は、技術分野では公知の数々の方法のいずれかを使用したイメージングデータから得られ得る。例えば、イメージングデータは、自動化手段によって測定値に変換可能である(例えば、イメージング装置と連結していても連結していなくてもよい、ソフトウェア又は任意の自動化アルゴリズムを使用)。イメージングによるミトコンドリア完全性の解析及び測定は、記載されている(例えば、それらの各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれているAl-Zubaidi等、Molecular Human Reproduction (2019) 25:11;Mitra等、Curr. Protoc. Cell Biol. (2010) 4.25:1~21頁;及びWalsh等、Scientific Reports (2017) 7:46684を参照)。
【0081】
試験薬剤
本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、本開示が、がん細胞中で試験薬剤を評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、試験薬剤が化合物を含む。いくつかの実施形態では、試験薬剤が、2つ以上の化合物を含む。いくつかの実施形態では、試験薬剤が、1,000、900、800、700、600、500、450、400、350、300、250、200又は150g/mol未満の分子量を有する。いくつかの実施形態では、試験薬剤が、約100g/mol以上約500g/mol以下の分子量を有する。いくつかの実施形態では、試験薬剤が、約200g/mol以上約800g/mol以下の分子量を有する。いくつかの実施形態では、試験薬剤が、約500g/mol以上約1,000g/mol以下の分子量を有する。例示的な試験薬剤は、小有機分子、小無機分子、ペプチド、タンパク質、タンパク質類似体、酵素、核酸、核酸類似体、抗体、抗原、ホルモン、脂質、多糖、成長因子、ウイルス、細胞、生物活性剤、医薬品、並びにそれらの組み合わせ及びプロドラッグを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、試験薬剤が、抗がん剤、例えば、化学療法剤、標的がん治療剤、又は1つ又は複数の抗アポトーシスBCL-2タンパク質の阻害剤(例えば、BH3ミメティック)である。更なる例示的な試験薬剤は、ガス、微粒子、放射線、電磁放射線及びエアロゾルを含むが、それらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施形態では、試験薬剤が化学療法剤である。化学療法剤の非限定的な例は、小分子、ペプチド又はタンパク質(例えば、ペプチド系抗生物質及びペプチド抗体)、並びにRNA干渉(RNAi)分子を含む。小分子化学療法剤の例は、アルキル化剤(シクロホスファミド、クロルメチン、テモゾロミド)、アントラサイクリン(ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(ボリノスタット、ロミデプシン)、トポイソメラーゼI/II阻害剤(イリノテカン、トポテカン、エトポシド)、キナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ、イマチニブ、ボルテゾミブ)、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体(アザシチジン、フルオロウラシル、メトトレキサート)、白金ベース剤(シスプラチン、カルボプラチン)、レチノイド(アリトレチノイン、ベキサロテン)、Hsp90阻害剤(17-DMAG)、並びにビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)を含む。ペプチド及びタンパク質の例は、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、及び抗腫瘍抗体(抗HER2/neu、アレムツズマブ、トラスツズマブ、ブレンツキシマブ)を含む。当業者は、化学療法RNAi分子を、がんに関する遺伝子の発現を標的とするRNAi分子と認める。例えば、HoxA1に対するRNAi分子は、Brock等、Sci Transl Med 6: 217ra2 (2014)に記載されるように、乳腺腫瘍細胞の形成を阻害し得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤が、キナーゼ阻害剤、アポトーシス誘導剤、血管新生阻害剤、及びモノクローナル抗体を含むが、それらに限定されない。
【0083】
当業者は、本開示の態様が治療目的での試験薬剤の最適化において有用であり得ることを評価するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、試験薬剤(例えば、治療剤、がん治療剤)が、非がん(例えば健常)細胞中では最小限の毒性を有し、がん細胞中では最大限の毒性を有することが有利である。本明細書に記載されるように、そのような試験薬剤は、非がん細胞中でのデルタプライミングの極小値及びがん細胞中でのデルタプライミングの極大値を有すると顕在化するあろう。
【0084】
いくつかの態様では、本開示の方法が、創薬に使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示により記載される方法が、がんを治療するための推定上の治療剤、例えば、ミトコンドリアプライミングを上昇させる薬剤を同定する目的での、異なる試験薬剤の大きなライブラリーのスクリーニングに有用である。いくつかの実施形態では、試験薬剤のライブラリーが、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、150以上、200以上、250以上、又は300以上の試験薬剤を含む。
【0085】
いくつかの態様では、本開示の方法を、個別化医療において使用し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法が、化学療法レジメンのカスタマイズに有用である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書中で提供される方法を使用して、非がん細胞及びがん細胞の両方における試験薬剤の毒性を、両方の細胞型中で決定されるデルタプライミングパラメータに基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、非がん細胞及びがん細胞を一患者から得る。該患者からの非がん細胞(例えば、正常細胞、健常細胞)中での試験薬剤の毒性の決定及び該患者からのがん細胞中での該試験薬剤の毒性の決定により、該試験薬剤が、該患者の治療にある程度適切であると同定できる。いくつかの実施形態では、がん細胞中でのデルタプライミング集計パラメータの、非がん細胞中でのデルタプライミング集計パラメータに対する比が上昇するにつれて、試験薬剤が、患者の治療により適切になる。例えば、がんを有すると分かっているか、又はがんを有すると疑われる患者の治療に適切な試験薬剤の決定においては、該患者の非がん細胞中では最小限の毒性(例えば、デルタプライミングの極小値)を有し、該患者のがん細胞中では最大限の毒性(例えば、デルタプライミングの極大値)を有する試験薬剤を使用することが好ましい。そのような薬剤は、好ましくは、治療を意図した細胞を標的とし、不利な末梢効果は最小限にするであろう。
【0086】
いくつかの実施形態では、被験細胞部分をBH3ペプチドと接触させる前に、該被験細胞部分を、処理インキュベーション時間にわたり試験薬剤で処理する。いくつかの実施形態では、該処理インキュベーション時間が、約6時間から約48時間の間である。例えば、いくつかの実施形態では、該処理インキュベーション時間が、約6時間から約36時間の間、約6時間から約24時間の間、約6時間から約18時間の間、約6時間から約12時間の間、約12時間から約48時間の間、約12時間から約36時間の間、約12時間から約24時間の間、約12時間から約18時間の間、約18時間から約48時間の間、約18時間から約36時間の間、約18時間から約24時間の間、又は約24時間から約48時間の間である。いくつかの実施形態では、該処理インキュベーション時間が、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間又はそれ以上である。
【0087】
いくつかの態様では、本開示が、試験薬剤の毒性を決定する方法であって、試験薬剤と接触させた被験細胞中でのBH3ペプチド誘導剤MOMPを、試験薬剤と接触させなかった対照細胞中でのBH3ペプチド誘導性MOMPと比較することにより試験薬剤の毒性を決定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対照細胞を、いかなる薬剤とも接触させなかった。いくつかの実施形態では、対照細胞を、緩衝液又は溶媒、例えば、薬剤用の媒体として使用した緩衝液又は溶媒と接触させた。例えば、被験細胞部分を、適切な緩衝液又は溶媒(例えば、DMSO)中に溶解した試験薬剤と接触させてもよく、対照細胞部分を、薬剤を欠く適切な緩衝液又は溶媒(例えば、DMSO)と接触させてもよい。
【0088】
当業者は、試験薬剤又は溶媒、BH3ペプチド、及び/又は1つ若しくは複数の染料若しくは色素を細胞に添加するためのいくつかの方法を認める。一般的に、例えば自動化液体処理システムを、ハイスループット薬物スクリーニングに利用する。自動化液体処理システムは、ロボティックアームにより制御される、液体分注容器のアレイを利用して、アッセイプレートのウェルに定量の液体を分配する。一般的に、該アレイは、プレートのウェルに対応する96個、384個又は1536個の液体分注チップを含む。自動化液体処理ステムの非限定的な例は、デジタルディスペンサ(例えば、HP D300 Digital Dispenser)及びピンニングマシン(例えば、MULTI-BLOT(商標)Replicator System、CyBio、Perkin Elmer Janus)を含む。非自動化方法も本開示により意図され、手動デジタル反復マルチチャネルピペットを含むが、それに限定されない。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
材料及び方法
LCI-DBP緩衝液
LCI-DBP初期染色液を、温めた培地4mL、核染色用のHoechst 33342(ビスベンズイミド)8μl、及びミトコンドリア染色用の1mM MitoTracker(登録商標)Green 8μlを混合して調製した。温めた1×DTEBバッファ20mL、10mg/mLオリゴマイシン40μL、及びミトコンドリア膜内外電位差の変化測定用の100μM TMRE 40μLを混合してLCI-DBP洗浄バッファを調製した。
【0090】
【0091】
1×DTEBバッファは、オートクレーブしたフラスコに水800μLを加えて調製した。Table 2(表2)の材料を合わせて、フラスコに加えて、フラスコを、ドラフト中の撹拌プレート上に置いた。フラスコ中の材料を撹拌し、KOHを用いて溶液のpHを7.4に調整した。溶液をメスシリンダに入れて、合計1Lにした。溶液を吸引ろ過によりろ過し、4℃で保管した。
【0092】
LCI-DBPジギトニンバッファは、洗浄バッファ5mLと5%ジギトニン2μLとを混合して調製した。LCI-DBP BIMバッファ(100μM)は、ジギトニンバッファ200μLと10mM BIM 2μLとを混合して調製した。LCI-DBP BIMバッファ(10、1、0.1、0.01及び0.001μM)は、ジギトニンバッファ180μLとLCI-DBP BIMバッファ(100μM)20μLとを混合して、残りの濃度については段階希釈して調製した。
【0093】
コラゲナーゼIV-コア生検
このプロトコル用の材料が含むもの:10%FBSを含む温めた培地(AD. DMEM/F12で開始)、バッファC中の10,000U/mL DNAseI(メーカ説明書による)、POBS中の10,000U/mLヒアルロニダーゼ(滅菌ろ過)、PBS中の100mg/mLコラゲナーゼIV(約16,000U/mL)(滅菌ろ過)、50mLコニカルチューブ、60cmペトリディッシュ、96ウェルプレート、カミソリ刃及び安全手袋、200μLピペットチップ(組織片をピペットできるようにカミソリでカット)、100ミクロンフィルタ、氷冷HBSS(任意)。
【0094】
コラゲナーゼIV溶液は、コニカルチューブに培地5mLを加えて、その培地にDNAseI 65μL、ヒアルロニダーゼ50μL、及びコラゲナーゼIV 100μLを加えることにより新鮮に調製した。コラゲナーゼIV溶液100μLを、96ウェルプレートのウェルに入れた。
【0095】
解離プロトコルは次のとおり。組織を60cmペトリディッシュに移した。該組織のコアをできるだけ薄くスライスして小片に切断した。該組織を、コラゲナーゼIV溶液を含む96ウェルプレートのウェルに入れて、カットしたチップを用いて数回、溶液を上下にピペッティングした。プレートを37℃で5~10分間インキュベートした。ウェルを顕微鏡下で観察して、更なる解離が必要であるかどうかを決定した。試料の解離が十分でなければ、インキュベーション工程を繰り返した。解離した細胞を、1mLの培地を含む15mLコニカルチューブに入れた。解離した細胞を、100ミクロンフィルタを通してろ過し、600gで5分間スピンした。次いで細胞を、コラーゲンコートプレート上に播いた。
【0096】
コラーゲンコートプレートプロトコル
コラーゲン溶液を、以下のプロトコルに従って酢酸中で調製した。酢酸溶液(0.1M)は、水50mLをコニカルチューブに入れて氷酢酸288μLを加えることにより調製した。0.1M酢酸にコラーゲンI(Sigma社C7661)を加えて、1mg/mLコラーゲン溶液を得た。該コラーゲン溶液は、溶解するまで1~3時間にわたり室温で撹拌した。
【0097】
低容積アッセイには、ポリスチレン製384ウェルプレート(Corning(登録商標)3542プレート)を使用した。3542プレート中のウェル当たり表面積は0.0319cm2である。ウェル当たり10μLのプレーティング総容積及び20μg/cm2のコラーゲンを、次の式に従って計算した:
i)プレート×ウェル/プレート×10μL=総溶液(μL)
ii)20μg/cm2×0.0319cm2/ウェル×ウェル/プレート=μg/プレート
iii)μg/プレート×プレート=総コラーゲン(μg)
iv)総溶液-コラーゲン必要量=PBS必要量
【0098】
Thermo Scientific(商標)Multidrop(商標)Combi(高スピード、フルプレート、384標準、10μL、デフォルトのプロトコル)を使用して、溶液を数回に分けてプレーティングし、4℃で一晩置いた。自動プレート洗浄機を使用してプレートをPBSで3回洗浄し、PBS残量5μLを残した。プレートにフィットするように高級ペーパータオルを切断して、プレートを覆い、プレートを転倒させて遠心分離した(400RPM又は50gで3分間)。プレートを、場合によりUV照射してもよい。
【0099】
LCI-DBPプロトコル
細胞を含むプレートを、ウェル当たり10μLのLCI染色液により、3307 Steri-Cultインキュベータ、クラス100HEP中、37℃で20分間染色した。次いで、EL406(商標)コンビネーションマイクロプレートウォッシャーディスペンサを使用して、ウェル内の容積を10μLまで吸引した。EL406(商標)コンビネーションマイクロプレートウォッシャーディスペンサを使用して、細胞を含むプレートを、LCI洗浄バッファで3回洗浄し、ウェルごとの最終残量を10μLとした。次いで、プレートを、必要とされるセッティングのImageXpress(登録商標)Micro 4ハイコンテントスクリーニングシステム上に配置し、2分ごとに画像を撮影した。2画像後に、選択したLCI-DBP BIMペプチドバッファ10μLを、ウェルに加えた。次いでプレートを、最高で2時間撮像した。
【0100】
がん細胞の細胞特異的染色には、プレートを顕微鏡から取り外し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)20μL/ウェルで固定する。室温で15分間インキュベーション後、EL406(商標)コンビネーションマイクロプレートウォッシャーディスペンサを使用して、残量20μLまで吸引する。N2バッファを使用して、室温で5分のインキュベーション時間にわたり、プレートを中和する。マイクロプレートウォッシャーディスペンサを用いて、プレートを再び残量20μLまで吸引する。(選択した抗体を加えた)3x染色液10μLを各ウェルに添加し、4℃で一晩、密封放置する。少なくとも24時間経過後に、プレートをマイクロプレートウォッシャーディスペンサで3回、1xPBSを使用して残量20μLまで洗浄してもよい。次いで、プレートを、必要なセッティングで再撮像する。
【0101】
LCI-DBP及び免疫蛍光染色のワークフローの一例を
図1Cに示す。図示するように、細胞を、コラーゲンコートプレート上に播き、試験薬剤の存在下に16~24時間インキュベートする。インキュベートした細胞を、次いで、Hoechst 33342及びMitoTracker(登録商標)Greenで20分間染色する。染色した細胞を、TMRE及びオリゴマイシンを含むDTEB中で洗浄し、プレートを顕微鏡上に置く。BH3ペプチドをウェルに添加する場合は、洗浄した細胞を、次いで、界面活性剤(例えばジギトニン)で透過処理する。ハイコンテント広視野顕微鏡(IXM4、Molecular Devices社)を使用して、ミトコンドリアからのペプチド誘導性TMRE損失の動態を測定するために、細胞を連続的に撮像する。全画像を取り込んだ後、画像解析ソフトウェアを使用して、薬物処理細胞と溶媒処理細胞との間でTMRE放出の差異を定量する。
【0102】
ライブセルイメージングに続いて、細胞を、室温で15分間、PFAバッファで固定する。固定した細胞を、室温で5分間、N2バッファで中和する。次いで細胞を、所望の抗体、例えば、腫瘍マーカー用又はシトクロムcのようなアポトーシスマーカー用の特異的抗体で染色する。染色した細胞を、4℃で12~24時間インキュベートする。インキュベートした細胞を、次いで、顕微鏡上で撮像し、所望の染色を検出する。
【0103】
(実施例2)
膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBP
異なる薬物処理に対する細胞の感受性を評価するために、膵臓8902(Panc8902)細胞株を用いてLCI-DBPを行った(
図2A~
図2F)。Panc8902細胞を、384ウェルプレート中にウェル当たり2,000細胞で播いた。細胞を、DMSO(溶媒)又はA1331852(Bcl-XL阻害剤)のいずれか一方で処理した。DMSOで処理した細胞を含有するウェルは、薬物非添加の対照基準として利用した。播いた細胞を一晩処理後、細胞を、LCI-DBP初期染色液で染色してから、LCI-DBP洗浄バッファで洗浄した。細胞をジギトニンで透過処理して、LCI-DBP BIMバッファ(100μM)の添加により、BIM BH3ペプチド(各ウェル中で最終濃度10μM)で処理した。
【0104】
BH3ペプチドの添加から18分、40分、48分、58分及び120分後に、ライブシングルセルイメージングにより、細胞を撮像した(
図2A)。核染色は、Hoechst 33342の青色発光として検出し、ミトコンドリア膜内外電位差の染色は、TMREの緑色染色として検出した。図示するように、薬物非添加細胞(上図)と比べて、薬物処理細胞は著しく加速したミトコンドリア電位損失を有し(下図)、TMRE発光の経時的な損失により検出された。この差異を
図2Bで更に可視化し、DMSO(左図)又はA1331852(右図)で処理したPanc8902細胞中でのTMRE損失の単一細胞データプロットを示す。プロットの各行は唯一の細胞を表し、各列は単一時点を表す。破線を、約0.60のTMRE発光強度(正規化したTMRE発光強度での約40%の損失)に相当する、各プロット上のオーバーレイとして示す。
【0105】
更なる試験薬物(エトポシド、イダルビシン及びSTS)に関して、Panc8902細胞中で、記載のようにLCI-DBPを行った。ライブセルイメージングにより測定した、処理にわたるミトコンドリア電位の相対的損失を
図2Cに示し、この図は、薬物処理ごとの、単一細胞トレースの平均TMRE強度のプロットである(細胞トレースごとに最大相対蛍光単位(RFU)に対して正規化)。
【0106】
Panc8902細胞中での相対的な薬物誘導性変化を、各薬物に対する異なる時点でのデルタプライミングの決定により評価した(
図2D)。デルタプライミングは、異なる時点に、式:Δ(t)=TMRE
DMSO(t)-TMRE
薬物(t)に従って計算した。各薬物に対する、異なる時点の経過にわたるデルタプライミングの集計パラメータを、
図2Dのデルタプライミング定量に関する曲線下面積の計算により決定した。試験した異なる薬物の集計パラメータを、
図2Eに比較で示す。LCI-DBPにより決定した集計パラメータを、次いで、デルタプライミングの固定細胞測定と比較した(
図2F)。異なるDPB測定の相関性は、0.72のR
2値で特徴づけられた(p値:0.002)。
【0107】
(実施例3)
MMTV乳がんPDXモデルを用いたLCI-DBP
異なる薬物処理に対する細胞の感受性を評価するために、MMTV乳がんPDXモデルを用いてLCI-DBPを行った(
図3A~
図3G)。MMTV-PyMT-T1細胞を、384ウェルコラーゲンコートプレート中にウェル当たり4,000細胞で播いた。細胞を、DMSO(溶媒)又は17-DMAG(Hsp90阻害剤)のいずれか一方で処理した。DMSOで処理した細胞を含有するウェルは、薬物非添加の対照基準として利用した。播いた細胞を一晩処理後、細胞を、LCI-DBP初期染色液で染色してから、LCI-DBP洗浄バッファで洗浄した。細胞をジギトニンで透過処理して、LCI-DBP BIMバッファ(100μM)の添加により、BIM BH3ペプチド(各ウェル中で最終濃度10μM)で処理した。
【0108】
BH3ペプチドの添加から0分、42分、50分、66分及び120分後に、ライブシングルセルイメージングにより、細胞を撮像した(
図3A)。核染色は、Hoechst 33342の青色発光として検出し、ミトコンドリア膜内外電位差の染色は、TMREの緑色染色として検出した。図示するように、薬物非添加細胞(上図)と比べて、薬物処理細胞は著しく加速したミトコンドリア電位損失を有し(下図)、TMRE発光の経時的な損失により検出された。
【0109】
更なる試験薬物(ラパチニブ、スニチニブ、AZD2014及びデサチニブ)に関して、MMTV-PyMT-T1細胞中で、記載のようにLCI-DBPを行った。ライブセルイメージングにより測定した、処理にわたるミトコンドリア電位の相対的損失を
図3Bに示し、この図は、薬物処理ごとの、単一細胞トレースの平均TMRE強度のプロットである(細胞トレースごとに最大相対蛍光単位(RFU)に対して正規化)。
【0110】
MMTV-PyMT-T1細胞中での相対的な薬物誘導性変化を、各薬物に対する異なる時点でのデルタプライミングの決定により評価した(
図3C)。デルタプライミングは、異なる時点に、前記のように計算した。各薬物に対する、異なる時点の経過にわたるデルタプライミングの集計パラメータを、
図3Cのデルタプライミング定量に関する曲線下面積の計算により決定した。試験した異なる薬物の集計パラメータを、
図3Dに比較で示す。
【0111】
薬物処理細胞の非処理細胞に対するミトコンドリア電位の示差的な損失を
図3Eで更に可視化し、DMSO(左図)又は17-DMAG(右図)で処理したMMTV-PyMT-T1細胞中でのTMRE損失の単一細胞データプロットを示す。プロットの各行は唯一の細胞を表し、各列は単一時点を表す。破線を、約0.60のTMRE発光強度(正規化したTMRE発光強度での約40%の損失)に相当する、各プロット上のオーバーレイとして示す。
【0112】
MMTV-PyMT-T1細胞のin vivoでの処理応答を、
図3Fに示すように、異なる薬物での処理に続く腫瘍容積の変化の測定により決定した。LCI-DBPにより評価した単剤療法に加えて、併用療法(17-DMAGとデサチニブ)に対するin vivo応答を決定した。測定したin vivo処理応答を、次いで、LCI-DBPにより測定した集計パラメータと比較した(
図3G)。in vivo処理応答の、LCI-DBPにより決定した処理応答に対する相関性は、0.66のR
2値で特徴づけられた(p値:0.0476)。
【0113】
(実施例4)
ライブセルイメージングによるコア生検中でのBH3ペプチド応答
肝転移由来のヒト結腸直腸コア生検を用いたBH3ペプチド特異的なミトコンドリア電位の損失を、ライブセルイメージングにより評価した(
図4)。コア生検試料の細胞をDMSOで処理し、処理細胞を、10μMのBIM BH3ペプチドの不在下(上図)又は存在下(下図)、ライブセルイメージングにより撮像した。ペプチド処理ウェルへのBIM BH3ペプチドの添加に続く異なる時点に、両方のペプチド処理条件の画像を取り込んだ。ミトコンドリア膜内外電位差の変化を、TMRE発光の経時的な低下の追跡により測定した。図示するように、BH3ペプチドを欠くウェルと比べてペプチド処理ウェル中ではTMRE発光の著しい損失が存在した。
【0114】
(実施例5)
膵臓8902細胞株を用いたLCI-DBP
薬物処理に対する細胞の感受性を評価するために、膵臓8902(Panc8902)細胞株を用いてLCI-DBPを行った(
図5A~
図5C)。Panc8902細胞を、384ウェルプレート中にウェル当たり2,000細胞で播いた。細胞を、DMSO(溶媒)又はナビトクラックス(Bcl-2及びBcl-XLの阻害剤)(1μM)のいずれか一方で処理した。DMSOで処理した細胞は、ナビトクラックス薬物処理に対する薬物非添加の対照基準として利用した。播いた細胞を一晩処理後、細胞を、LCI-DBP初期染色液で染色してから、LCI-DBP洗浄バッファで洗浄した。細胞をジギトニンで透過処理して、LCI-DBP BIMバッファ(100μM)の添加により、BIM BH3ペプチド(各ウェル中で最終濃度1μM)で処理した。
【0115】
ライブシングルセルイメージングにより、細胞を撮像した。ミトコンドリア膜電位を、BH3ペプチドでの処理に続く120分にわたりモニタリングし、TMREの緑色染色として検出した。DMSO(
図5A)又はナビトクラックス(
図5B)で処理したPanc8902細胞中でのTMRE損失を示す単一細胞データプロットを生成した。
図5A~
図5Bに示すように、プロットの各行は唯一の細胞を表し、各列は単一時点を表す。破線を、約0.50のTMRE発光強度(正規化したTMRE発光強度での約50%の損失)に相当する、各プロット上のオーバーレイとして示す。120分では、破線上側の個別細胞は0.50超の発光強度を有し、破線下側の個別細胞は0.50未満の発光強度を有した。
【0116】
単一細胞中でのTMRE損失の半減期(単一細胞がその最大TMREシグナルの50%を不可逆的に失う時間)を、アポトーシスプライミングの測定として定量した。単一細胞の結果のヒストグラムを
図5Cに示す。ナビトクラックス処理細胞中ではTMRE損失の半減期が短くなり、細胞が、平均的に、アポトーシスに関してよりプライムされたことを示す。ヒストグラムに示される半減期の最大値(120分)は、最短でも120分の半減期を有する単一細胞に相当するため、このデータ点は、測定の経過にわたって最大TMREシグナルの50%まで低下しなかった単一細胞を含むことになる。
【0117】
均等物及び範囲
特許請求の範囲における冠詞、例えば、「a」、「an」及び「the」は、反する指定がないか、又は文脈から特に明白でない限り、1つ又は2つ以上を意味し得る。一群の1つ又は複数の一員の間での「or」を含む特許請求の範囲又は明細書は、反する指定がないか、又は文脈から特に明白でない限り、該群の一員のうちの1つ、2つ以上、又はすべてが、任意の製品若しくは方法中に存在する、任意の製品若しくは方法中で使用される、又は別のやり方で任意の製品若しくは方法に関連する場合に、満たされると見なす。本発明は、該群のまさに一員が、任意の製品若しくは方法中に存在する、任意の製品若しくは方法中で使用される、又は別のやり方で任意の製品若しくは方法に関連する実施形態を含む。本発明は、該群の2つ以上の一員又は全員が、任意の製品若しくは方法中に存在する、任意の製品若しくは方法中で使用される、又は別のやり方で任意の製品若しくは方法に関連する実施形態を含む。
【0118】
更に本発明は、列挙されるクレームの1つ又は複数からの1つ又は複数の限定、要素、節及び記述用語を別のクレームへと導入するすべての変形形態、組み合わせ、及び置換を含む。例えば、別のクレームに従属する任意のクレームは、同じ基本クレームに従属する任意の別のクレーム中に見出される1つ又は複数の限定を含むように修飾されてもよい。要素が、例えばマーカッシュ群形式のリストとして提示される場合、該要素の各々の下位群も開示され、任意の要素を該群から除去してもよい。本発明又は本発明の態様が、特定の要素及び/又は特徴を含むと称される場合は概して、本発明の特定の実施形態又は本発明の態様が、そのような要素及び/又は特徴からなる、又は実質的にそれらからなると理解されるべきである。簡素化するため、それらの実施形態は、本明細書中、特にそのとおりの言葉では規定しなかった。
【0119】
本明細書の記載及びクレームで使用する表現「及び/又は(and/or)」は、そのように結合される要素の「いずれか一方又は両方」、すなわち、いくつかの場合には結合的に存在し別の場合には選言的に存在する要素を意味すると理解される。「及び/又は」で列挙される複数要素は、同じやり方で解釈され、すなわち、要素の「1つ又は複数」がそのように結合されると解釈される。「及び/又は」節によって特別に同定される要素以外の別の要素が、それらの特別に同定される要素と関連しようと無関連であろうと、場合により存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、オープンエンド言語、例えば「含む(comprising)」による結合で使用する場合、一実施形態ではAのみに関し得て(場合によりB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみに関し得て(場合によりA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方に関し得る(場合により別の要素を含む)、等々。
【0120】
本明細書の記載及びクレームで使用する「又は」は、前記の「及び/又は」と同じ意味を有すると理解される。例えば、あるリスト中の項目を隔てる場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち、要素の数又はリストのうちの少なくとも1つの包括と、要素の数又はリストのうちの1つ又は複数、場合により付加的な列挙されない項目を含むとも解釈される。明らかに逆に指定される用語のみ、例えば、「のうちの唯一」若しくは「のうちのまさに1つ」、又はクレーム「からなる」で使用する場合、要素の数又はリストのうちのまさに1つの要素の包括に関する。概して、本明細書で使用する用語「又は」は、排他性の用語、例えば、「一方」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」又は「のうちのまさに1つ」が先行する場合に限り、排他的な代案(すなわち、「一方又は他方であり両方ではない」)を示唆すると解釈される。「から本質的になる」は、クレームで使用する場合、特許法の分野で使用するその通常の意味を有する。
【0121】
本明細書の記載及びクレームで使用する、1つ又は複数の要素のリストに関する表現「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の要素のいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解され、要素のリスト中に特別に列挙される各々の要素の少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリスト中にある要素の任意の組み合わせを排除しない。この定義は更に、表現「少なくとも1つの」が関連する要素のリスト中で特別に同定される要素以外の要素が、それらの特別に同定される要素と関連しようと無関連であろうと、場合により存在してもよいことを許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は同等に「A又はBの少なくとも1つ」又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bは存在しない、少なくとも1つの、場合により2つ以上のAに関し得て(場合によりB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aは存在しない、少なくとも1つの、場合により2つ以上のBに関し得て(場合によりA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、少なくとも1つの、場合により2つ以上のA及び少なくとも1つの、場合により2つ以上のBに関し得る(場合により別の要素を含む)、等々。
【0122】
更に、明らか反する指定がない限り、2つ以上の工程又は行為を含む、本明細書でクレームされる任意の方法において、該方法の該工程又は該行為の順番は、該方法の該工程及び該行為が列挙される順番に必ずしも限定はされないと理解される。
【0123】
クレーム並びに前記の記載中のすべての移行句、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「含む(holding)」、「で構成される(composed of)」等は、オープンエンドであると理解され、すなわち、含むことを意味するが、それらに限定されない。移行句「からなる」及び「から本質的になる」のみが、米国特許庁の特許審査便覧第2111.03項に規定されるように、それぞれクローズド又はセミクローズドの移行句である。本文書に記載される、オープンエンド移行句(例えば「含む」)を使用する実施形態が更に、代替の実施形態では、オープンエンド移行句により記載される特徴の「からなる」及び「から本質的になる」とも意図されることが評価されるべきである。例えば、本出願が、「A及びBを含む組成物」を記載する場合、本出願は更に、代替の実施形態「A及びBからなる組成物」並びに「A及びBから本質的になる組成物」も意図する。
【0124】
範囲が与えられる場合は終点を含む。更に、異なる指定がないか、又は文脈及び当業者の理解から特に明白でない限り、範囲として表現される値は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、本発明の異なる実施形態での指定範囲内の、該範囲の下限の単位の10分の1までの任意の特定値又は部分範囲を想定し得る。
【0125】
本出願は、様々な交付済み特許、公開された特許出願、雑誌論文及び別の刊行物に関し、それらのすべては、参照により本明細書に組み込まれている。組み込まれた参照のいずれかとこの場の記載との間で矛盾がある場合、本記載が照合すべきである。加えて、先行技術の範囲内に入る、本発明の任意の特定の実施形態は、クレームのいずれか1つ又は複数から明示的に除外され得る。そのような実施形態は、当業者には公知であると思われるため、本明細書中でその除外が明示的に規定されていない場合でさえもそのような実施形態は除外され得る。本発明の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在に関連しようとしなかろうと、何らかの理由で任意のクレームから除外可能である。
【0126】
当業者は、単なる日常の実験を使用して、本明細書に記載される特定の実施形態に対する多数の均等物を認識するか、又は確認できるであろう。本明細書に記載される本実施形態の範囲は、前記の明細書に限定されるものとは意図されず、むしろ添付クレームに明記される。当業者は、以下のクレームで定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に対する様々な変更及び改変を行い得ることを評価するであろう。
【0127】
本明細書の可変基(variable)の任意の定義における化学基(chemical group)のリストの記述は、その可変基の定義を、任意の単一の基又は列挙した基の組み合わせとして含む。本明細書の可変基に関する一実施形態の記述は、その実施形態を、任意の単一の実施形態として又は任意の別の実施形態若しくはその一部との組み合わせで含む。本明細書の一実施形態の記述は、その実施形態を、任意の単一の実施形態として又は任意の別の実施形態若しくはその一部との組み合わせで含む。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
がんを治療するための推定上の治療剤を同定する方法であって、
a. 原発がん細胞を含む細胞集団の、試験薬剤と接触させた被験細胞部分を用意する工程、
b. 前記被験細胞部分をBH3ペプチドと接触させる工程、
c. 前記被験細胞部分の一連の画像を、ライブセルイメージングによりある期間にわたって取り込む工程、
d. 前記被験細胞部分において、取り込んだ画像に基づき前記期間の異なる時点にBH3ペプチド誘導性ミトコンドリア外膜透過化(MOMP)を測定する工程、
e. 前記被験細胞部分において測定したBH3ペプチド誘導性MOMPを、前記試験薬剤と接触させなかった、前記細胞集団の対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比較する工程
を含み、前記対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと比べた、前記被験細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPの上昇が、前記試験薬剤が前記細胞集団のがん細胞を治療するための推定上の治療剤であることを示す、方法。
[発明2]
前記比較する工程が、デルタプライミングの値を決定する工程を含み、デルタプライミングは、前記被験細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPと前記対照細胞部分におけるBH3ペプチド誘導性MOMPとの差異である、発明1に記載の方法。
[発明3]
前記デルタプライミングの値を複数の異なる時点で決定する、発明2に記載の方法。
[発明4]
前記デルタプライミングの値が、前記期間にわたって生じるMOMPの最大差に相当するピーク値である、発明2に記載の方法。
[発明5]
前記デルタプライミングの値が、前記期間の一部にわたって生じるMOMPの最大変化に相当するピーク値である、発明2に記載の方法。
[発明6]
更に、前記期間にわたって生じるMOMPの全体的な変化に相当するデルタプライミングの集計値を決定する工程を含む、発明2に記載の方法。
[発明7]
更に、
i)前記試験薬剤と接触させなかった、前記細胞集団の前記対照細胞部分を用意する工程、
ii)前記対照細胞部分を前記BH3ペプチドと接触させる工程、
iii)前記対照細胞部分の一連の画像を、ライブセルイメージングにより前記期間にわたって取り込む工程、
iv)前記対照細胞部分において、取り込んだ画像に基づき異なる時点にBH3ペプチド誘導性MOMPを測定する工程
を含む、発明1から6のいずれか一つに記載の方法。
[発明8]
前記被験細胞部分を、第1のペプチド濃度で前記BH3ペプチドと接触させ、前記方法が更に、前記第1のペプチド濃度でBH3ペプチド誘導性MOMPを測定した後、前記被験細胞部分を、第2の上昇したペプチド濃度で前記BH3ペプチドと接触させる工程を含む、発明1から7のいずれか一つに記載の方法。
[発明9]
(c)から(e)までを、前記第2の上昇したペプチド濃度で行う、発明8に記載の方法。
[発明10]
前記第1のペプチド濃度が、少なくとも0.001μM且つ1μM以下、少なくとも0.001μM且つ0.1μM以下、少なくとも0.001μM且つ0.01μM以下、少なくとも0.005μM且つ0.1μM以下、又は少なくとも0.005μM且つ0.01μM以下である、発明8に記載の方法。
[発明11]
前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分が、がん細胞の検出マーカーを含み、BH3ペプチド誘導性MOMPを、前記検出マーカーを含む細胞においてのみ測定する、発明1から10のいずれか一つに記載の方法。
[発明12]
前記検出マーカーが、細胞内腫瘍マーカー、細胞外腫瘍マーカー又は細胞表面腫瘍マーカーである、発明11に記載の方法。
[発明13]
更に、前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分を、前記検出マーカーに対する抗体で染色する工程、並びに前記抗体の染色を検出してがん細胞を同定する工程を含む、発明12に記載の方法。
[発明14]
前記検出マーカーが、上皮細胞接着分子(EpCam)、ケラチンタンパク質、平滑筋アクチンタンパク質、c-kitタンパク質、S100タンパク質又はビメンチンタンパク質からなる群から選択される、発明12に記載の方法。
[発明15]
前記検出マーカーが、がん細胞を非がん細胞と区別する1つ又は複数の形態的特徴である、発明11に記載の方法。
[発明16]
前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分が、非がん細胞の検出マーカーを含み、前記検出マーカーを含む細胞をBH3ペプチド誘導性MOMPの測定から除外する、発明1から15のいずれか一つに記載の方法。
[発明17]
前記検出マーカーが、非がん細胞をがん細胞と区別する1つ又は複数の形態的特徴である、発明1から16のいずれか一つに記載の方法。
[発明18]
前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分の細胞が固体表面に付着している、発明1から17のいずれか一つに記載の方法。
[発明19]
前記付着させた細胞がある濃度で存在し、前記細胞の95%が互いに接触していない、発明18に記載の方法。
[発明20]
前記付着させた細胞が10,000細胞以下である、発明19に記載の方法。
[発明21]
前記付着させた細胞が、少なくとも100細胞から10,000細胞まで、少なくとも100細胞且つ1,000細胞以下、少なくとも1,000細胞、少なくとも1,000細胞且つ5,000細胞以下、又は少なくとも5,000細胞で存在する、発明20に記載の方法。
[発明22]
前記固体表面が1つ又は複数の接着促進剤で被覆されている、発明18に記載の方法。
[発明23]
前記1つ又は複数の接着促進剤が、コラーゲン1、ラミニン、コラーゲン4及びフィブロネクチンからなる群から選択される細胞外マトリクスタンパク質を含む、発明22に記載の方法。
[発明24]
前記細胞が接着細胞である、発明18に記載の方法。
[発明25]
前記被験細胞部分及び前記対照細胞部分の細胞を、BH3ペプチドと接触させる前に透過処理する、発明1から24のいずれか一つに記載の方法。
[発明26]
BH3ペプチド誘導性MOMPを、電位差測定色素の発光の検出により測定する、発明1から25のいずれか一つに記載の方法。
[発明27]
前記電位差測定色素が、テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)、5,5',6,6'-テトラクロロ-1,1',3,3'-テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニンヨージド(JC-1)及びジヒドロローダミン123からなる群から選択される、発明26に記載の方法。
[発明28]
前記細胞集団が、コア生検試料、ヒト原発腫瘍試料、又は患者由来異種移植片(PDX)から得られる、発明1から27のいずれか一つに記載の方法。
[発明29]
前記BH3ペプチドが、BIM、BID、BAD、Noxa A、Noxa B、PUMA、BMF、HRK及びBIKからなる群から選択されるポリペプチドのBH3ドメインに由来する、発明1から28のいずれか一つに記載の方法。
[発明30]
前記BH3ペプチドが、MS1、MS2、MS3及びFS1からなる群から選択される非天然BH3ペプチドである、発明1から29のいずれか一つに記載の方法。
[発明31]
前記ライブセルイメージングが、ライブシングルセルイメージングである、発明1から30のいずれか一つに記載の方法。
[発明32]
更に、(a)に先立ち、前記被験細胞部分を前記試験薬剤と接触させる工程を含む、発明1から31のいずれか一つに記載の方法。
[発明33]
前記原発がん細胞が、単離された原発がん細胞である、発明1から32のいずれか一つに記載の方法。
[発明34]
がん細胞中で試験薬剤を評価する方法であって、
a. 試験薬剤と接触させたがん細胞を含む、細胞の試料をBH3ペプチドと接触させる工程、
b. 前記試料中の個別細胞の一連の画像を、ライブセルイメージングによりある期間にわたって取り込む工程、
c. 複数の前記個別細胞において、取り込んだ画像に基づき前記期間の異なる時点にBH3ペプチド誘導性MOMPのレベルを測定する工程、
d. 前記複数の個別細胞を評価して、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルが前記期間の一時点においてプリセット値に達するかを決定する工程、
e. 前記複数の各個別細胞に対して、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの前記プリセット値に達する前記時点を決定する工程
を含み、前記試験薬剤が、前記期間のより遅い時点で前記プリセット値に達する細胞と比べてより早い時点で前記プリセット値に達する細胞中ではより高い細胞傷害性を有し、前記プリセット値に達しない細胞は前記試験薬剤に対して耐性である、方法。
[発明35]
前記プリセット値が、一個別細胞でのBH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、対照レベルに対するプリセット変化である、発明34に記載の方法。
[発明36]
前記対照レベルが、前記BH3ペプチドとの接触前に前記個別細胞中で測定したMOMPのレベルである、発明35に記載の方法。
[発明37]
前記対照レベルが、前記BH3ペプチドとの接触後に前記個別細胞中で測定したMOMPのレベルである、発明35に記載の方法。
[発明38]
前記対照レベルが、2つ以上の時点で測定した前記MOMPのレベルに基づく平均値である、発明35から37のいずれか一つに記載の方法。
[発明39]
前記プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約20%から約80%の間の変化率である、発明34から38のいずれか一つに記載の方法。
[発明40]
前記プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約40%から約60%の間の変化率である、発明34から38のいずれか一つに記載の方法。
[発明41]
前記プリセット値が、BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルの、約50%の変化率である、発明34から40のいずれか一つに記載の方法。
[発明42]
更に、前記プリセット値に達しない細胞を、MOMP以外の前記細胞の特性の更なる解析に付す工程を含む、発明34から41のいずれか一つに記載の方法。
[発明43]
前記更なる解析が、ゲノム解析、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析及び形
態学的解析の少なくとも1つを含む、発明42に記載の方法。
[発明44]
前記更なる解析を行って、前記試験薬剤に対する耐性と相関する前記細胞の1つ又は複数の特性を評価する、発明42又は43に記載の方法。
[発明45]
BH3ペプチド誘導性MOMPのレベルを、
i) ミトコンドリア膜電位の測定、
ii) ミトコンドリアからのシトクロムcの放出の測定、及び
iii) ミトコンドリア内でのシトクロムcの保持の測定
のうちの1つ又は複数により決定する、発明34から44のいずれか一つに記載の方法。
[発明46]
前記がん細胞が原発がん細胞である、発明34から45のいずれか一つに記載の方法。
[発明47]
前記原発がん細胞が、単離された原発がん細胞である、発明46に記載の方法。
[発明48]
更に、(a)に先立ち、前記細胞の試料を前記試験薬剤と接触させる工程を含む、発明34から47のいずれか一つに記載の方法。
【配列表】