(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】大腸菌O抗原多糖のバイオコンジュゲートを製造する方法、その組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/04 20060101AFI20241118BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241118BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241118BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20241118BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20241118BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20241118BHJP
C12R 1/19 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
C12P19/04 C ZNA
C12P21/02 C
C12N1/21
C12N9/10
C12N15/31
C12N15/54
C12R1:19
(21)【出願番号】P 2021556239
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 US2020023415
(87)【国際公開番号】W WO2020191088
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-16
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514010601
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘールツェン,イェロン
(72)【発明者】
【氏名】ビュルフハウト,ピーター,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールデンビュルフ,エフェリーネ,マルレーン
(72)【発明者】
【氏名】プールマン,ヤン,トゥーニス
(72)【発明者】
【氏名】ファエ,ケレン,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】イバッラ ヨン,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】アッバナット,ダレン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ケムラー,シュテファン,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】コワリク,ミヒャエル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マリー,マヌエラ
(72)【発明者】
【氏名】ガンビッラーラ,フォンク,ヴェロニカ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,マーティン,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】カランサ サンドマイヤー,マリア,パウラ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/107818(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/107819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)O
x抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法であって、該製造方法が、
(i)a.O
x抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)(式中、XはPro以外の任意のアミノ酸でありうる)(配列番号1
)を含む、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglB
yをコードするヌクレオチド配列
、ここで前記PglB
y
は、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
を含む組換え原核生物宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え原核生物宿主細胞を培養することを含み、
ここで、
O
x抗原がO1A抗原多糖である場合、PglB
yはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
O
x抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglB
yはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え原核生物宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも
90%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも
90%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、該トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、該グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であ
り、
O
x抗原がO8抗原多糖である場合、PglB
yは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
O
x抗原がO15抗原多糖である場合、PglB
yはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
O
x抗原がO16抗原多糖である場合、PglB
yはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
O
x抗原がO18A抗原多糖である場合、PglB
yは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
O
x抗原がO75抗原多糖である場合、PglB
yはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4
、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、式(O1A):
【化1】
(O4-Glc+):
【化2】
(O8):
【化3】
(O15):
【化4】
(O16):
【化5】
(O18A):
【化6】
および(O75):
【化7】
の構造を有し、各nは、独立して、1~10
0の整数である、製造方法。
【請求項2】
担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)O
x抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法であって、該製造方法が、
(i)a.O
x抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)(式中、XはPro以外の任意のアミノ酸でありうる)(配列番号1
)を含む、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglB
yをコードするヌクレオチド配列、ここで前記PglB
yは、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
を含む組換え原核生物宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え原核生物宿主細胞を培養することを含み、
O
x
抗原がO6A抗原多糖であり、PglB
y
が配列番号6に対する位置N311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
O6Aは、式(O6A):
【化8】
[式中、nは、独立して、1~100の整数である]
の構造を有する、前記方法。
【請求項3】
各nは、独立して、5~40の整数である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
O
x抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglB
yが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
組換え原核生物宿主細胞が、配列番号4のアミノ酸配列を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)O
x抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法であって、該製造方法が、
(i)a.O
x抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)(式中、XはPro以外の任意のアミノ酸でありうる)(配列番号1
)を含む、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglB
yをコードするヌクレオチド配列
、ここで前記PglB
y
は、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
を含む組換え原核生物宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え原核生物宿主細胞を培養することを含み、
PglB
yは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vを含み、
O
x抗原はO1A抗原多糖、グルコシル化O4抗原多糖、O6A抗原多糖、O15抗原多糖、O16抗原多糖またはO75抗原多糖であり、
かつ、O
x抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、該組換え原核生物宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも
90%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも
90%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、該トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、該グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O15、O16およびO75抗原多糖は、それぞれ、
式(O1A):
【化9】
(O4-Glc+):
【化10】
(O6A):
【化11】
(O15):
【化12】
(O16):
【化13】
および(O75):
【化14】
の構造を有し、各nは、独立して、1~10
0の整数である、製造方法。
【請求項7】
各nは、独立して、5~40の整数である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
組換え原核生物宿主細胞からバイオコンジュゲートを単離することを更に含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
担体タンパク質が、グリコシル化コンセンサス配列Asp(Glu)-X-Asn-Z-Ser(Thr)(式中、XおよびZは、独立して、Pro以外の任意のアミノ酸から選択される)(配列番号2)を含む、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
担体タンパク質が、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択され
る、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
担体タンパク質がEPA担体タンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
EPA担体タンパク質が、配列番号2のグリコシル化コンセンサス配列を含む、2~4のグリコシル化部位を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
担体タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
組換え原核生物宿主細胞が大腸菌細
胞である、請求項1~
13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
大腸菌が、株W3110である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)O
x抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造のための組換え原核生物宿主細胞であって、該組換え原核生物宿主細胞が、
(a)O
x抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
(b)グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)(式中、XはPro以外の任意のアミノ酸でありうる)(配列番号1
)を含む、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglB
yをコードするヌクレオチド配列
、ここで前記PglB
y
は、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
を含み、
ここで、
O
x抗原がO1A抗原多糖である場合、PglB
yはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
O
x抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglB
yはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え原核生物宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも
90%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも
90%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、該トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、該グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり
、
O
x抗原がO8抗原多糖である場合、PglB
yは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
O
x抗原がO15抗原多糖である場合、PglB
yはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
O
x抗原がO16抗原多糖である場合、PglB
yはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
O
x抗原がO18A抗原多糖である場合、PglB
yは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
O
x抗原がO75抗原多糖である場合、PglB
yはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4
、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、式(O1A):
【化15】
(O4-Glc+):
【化16】
(O8):
【化17】
(O15):
【化18】
(O16):
【化19】
(O18A):
【化20】
および(O75):
【化21】
の構造を有し、各nは、独立して、1~10
0の整数である、組換え原核生物宿主細胞。
【請求項17】
担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)O
x
抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造のための組換え原核生物宿主細胞であって、該組換え原核生物宿主細胞が、
(a)O
x
抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
(b)グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)(式中、XはPro以外の任意のアミノ酸でありうる)(配列番号1)を含む、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglB
y
をコードするヌクレオチド配列、ここで前記PglB
y
は、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
を含み、
ここで、
O
x
抗原がO6A抗原多糖であり、PglB
y
が配列番号6に対する位置N311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
O6Aは、式(O6A):
【化22】
[式中、nは、独立して、1~100の整数である]
の構造を有する、前記組換え原核生物宿主細胞。
【請求項18】
各nは、独立して、5~40の整数である、請求項16又は17に記載の組換え原核生物宿主細胞。
【請求項19】
O
x抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglB
yが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む、請求項
16に記載の組換え原核生物宿主細胞。
【請求項20】
組換え原核生物宿主細胞が、配列番号4のアミノ酸配列を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む、請求項
19に記載の組換え原核生物宿主細胞。
【請求項21】
担体タンパク質が、グリコシル化コンセンサス配列Asp(Glu)-X-Asn-Z-Ser(Thr)(式中、XおよびZは、独立して、Pro以外の任意のアミノ酸から選択される)(配列番号2)を含む、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む、請求項16~20のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項22】
担体タンパク質が、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択され
る、請求項
16~21のいずれか1項に記載の組換え原核生物宿主細胞。
【請求項23】
担体タンパク質がEPA担体タンパク質である、請求項21に記載の組換え原核生物宿主細胞。
【請求項24】
EPA担体タンパク質が、配列番号2のグリコシル化コンセンサス配列を含む、2~4のグリコシル化部位を含む、請求項23に記載の原核生物宿主細胞。
【請求項25】
担体タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の原核生物宿主細胞。
【請求項26】
組換え原核生物宿主細胞が大腸菌細
胞である、請求項
16~25のいずれか1項に記載の組換え原核生物宿主細胞。
【請求項27】
大腸菌が株W3110である、請求項26に記載の組換え原核生物宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大腸菌(E. coli)O抗原多糖のバイオコンジュゲート、その製造方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2019年3月18日付出願の米国仮特許出願第62/819,762号に基づく優先権を主張するものであり、その開示の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0003】
電子的に提出された配列表に対する言及
本出願は、ファイル名「004852_11612_Sequence-Listing」、2020年3月11日の作成日および199 KBのサイズを有するASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含む。EFS-Webを介して提出された該配列表は本明細書の一部であり、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0004】
発明の背景
腸外病原性エシェリキア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)(ExPEC)株は、通常、共生大腸菌株と共にヒトの胃腸管の無害な生息菌である。多数のクローン系統は、O抗原、莢膜および鞭毛抗原の血清型(O:K:H、例えばO25:K1:H4と略記される)による特徴づけではExPECが優勢であるが、ExPEC分離菌は血清型によっては共生分離菌から容易に区別できない。共生大腸菌とは対照的に、ExPEC株は広範な病原性因子を発現し、該病原性因子は、該株が胃腸管にコロニー形成すること、ならびに広範な腸外感染を該株が引き起こすことを可能にし、これは入院および死亡による著しい医療費負担に関連づけられる。特に、新生児、高齢者および免疫無防備状態の患者は、侵襲性ExPEC疾患(IED)を含むExPEC感染症に罹患しやすい。
【0005】
ExPEC株は尿路感染症(UTI)の最も一般的な原因であり、手術部位感染症および新生児髄膜炎の重要な寄与因子である。該株は腹部および骨盤感染ならびに院内肺炎にも関連しており、時には他の腸外感染症、例えば骨髄炎、蜂巣炎および創傷感染症に関与する。全てのこれらの初感染部位はExPEC菌血症を引き起こしうる。ExPECは市中発生(community-onset)菌血症の最も一般的な原因であり、院内菌血症の主要病原体であり、臨床的に重要な血中分離菌の約17%~37%において見出される。ExPEC陽性血液培養を示す患者は、典型的には、敗血症症候群、重症敗血症または敗血症性ショックに罹患している。セファロスポリン、フルオロキノロンおよびトリメトプリム/スルファメトキサゾールを含む第1選択抗生物質に対するExPECの耐性の増加が観察されている。ExPEC配列型131(ST131)の出現および急速な世界的蔓延は、多剤耐性を含む薬剤耐性の増加の主要推進要因と考えられている。このクローンは全てのExPEC臨床分離菌の12.5%~30%に見出され、主に血清型O25B:H4を示し、高レベルのフルオロキノロン耐性を示し、これは、しばしば、トリメトプリム/スルファメトキサゾール耐性を伴い、また、セファロスポリンに対する耐性を付与する拡張スペクトルベータラクタマーゼを伴う。
【0006】
O抗原は、大腸菌を含むグラム陰性菌における細胞壁リポ多糖(LPS)の免疫優性成分を含む。現在、180個を超える血清学的に固有の大腸菌O抗原が特定されており、ExPEC分離菌の大多数は20個未満のO抗原血清型に分類されている。完全長大腸菌O抗原は、典型的には、高度に保存されたLPSコア構造に結合した約10~25個の反復糖単位から構成され、各成分は、主にそれぞれrfbおよびrfa遺伝子クラスターにおいてコードされる酵素により別々に合成される。O-抗原の重合の後、O-抗原多糖骨格は、典型的には、アセチルまたはグルコース残基の付加により修飾されうる。これらの修飾は、共通の多糖骨格を共有するが側枝が異なる抗原的に異なる血清型を生成させることにより、血清型多様性を有効に増加させる。O抗原修飾酵素をコードする遺伝子は、典型的には、染色体上のrfbクラスターの外部に存在し、場合によっては、これらの遺伝子は溶原性バクテリオファージ内に見出される。
【0007】
O4血清群に属するExPEC分離菌は米国およびEUの血中分離菌の最新サーベイランス研究において一般的に特定されている。O4多糖の構造は、大腸菌O4:K52株から、--> 2)α-L-Rha(1-> 6)α-D-Glc(1-> 3)α-L-FucNAc(1-> 3)β-D-GlcNAc(1->と決定された(Jannら, Carbohydr. Res. (1993) v. 248, pp.241-250)。O4:K3、O4:K6およびO4:K12株に関して、O4多糖構造の、異なる形態が決定された。この場合、前記構造が、該多糖のラムノース残基に連結されたα-D-Glc(1-> 3)の付加により修飾されており(Jannら, 1993, 前掲)、この多糖形態は以下においては「グルコシル化O4」と称される。大腸菌O4株内のO-抗原修飾をもたらす酵素は特定されなかった。
【0008】
ExPEC感染を予防するためのワクチンの開発に向けた努力はO抗原多糖コンジュゲートに焦点が合わされている。12価O抗原コンジュゲートワクチンがO抗原多糖の抽出および精製ならびに無毒化シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)外毒素Aへの化学的コンジュゲート化により合成され、第1相臨床試験において安全性および免疫原性に関して試験された(Crossら, J. Infect. Dis. (1994) v.170, pp.834-40)。この候補ワクチンは臨床使用には認可されなかった。大腸菌におけるバイオコンジュゲート化系が最近開発された。この系においては、多糖抗原と担体タンパク質との両方がin vivoで合成され、ついで、大腸菌内で発現されるカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)酵素オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBの活性によりin vivoでコンジュゲート化される(Wackerら, Proc. Nat. Acad. Sci. (2006) v. 103, pp. 7088-93)。このN-結合タンパク質グリコシル化系は多様な多糖を担体タンパク質に転移させることが可能であり、コンジュゲートを精製するための簡便な方法を可能にする。
【0009】
バイオコンジュゲート化は、大腸菌4価O抗原候補ワクチン用のコンジュゲート多糖を製造するために成功裏に用いられている(PoolmanおよびWacker, J. Infect. Dis. (2016) v.213(1), pp. 6-13)。しかし、ExPECワクチンの開発の成功のためには優勢血清型をカバーすることを要し、ExPEC分離菌のサブセットにおける更なるO抗原修飾の存在は、未修飾LPSおよび修飾LPSを提示する分離菌をカバーする上でなお一層の難題を提起する。さらに、複数の血清型をカバーするより複雑なワクチン組成物のための複数成分の製造の効率性がより重要となり、したがって、特定のO抗原の個別のバイオコンジュゲートの製造についての改善の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
発明の簡潔な概要
ExPEC分離菌間の抗生物質耐性の増加および優勢なO血清型間の更なるO抗原修飾の存在を考慮して、これらの感染症の予防的治療および治療的治療の改善が必要とされている。O抗原修飾酵素をコードする遺伝子を特定することを含む、現在の臨床分離菌の遺伝的組成を定めて、選択されたO抗原修飾を含むバイオコンジュゲートを含むO抗原のバイオコンジュゲートを合成しうる組換え宿主細胞の操作を可能にすることにより、本発明はこの要求を満足させるものである。さらに、本発明のある態様において、オリゴ多糖トランスフェラーゼ(OST)のバリアントを用いることにより、特定のO抗原のバイオコンジュゲートの産生を改良するための宿主細胞および方法が提供され、これは予測不可能な血清型依存的様式における特定の大腸菌O抗原のバイオコンジュゲートに対する特定のOSTバリアントの使用の利点に基づく。かかるOSTバリアントの使用は、場合によっては、例えば野生型またはOSTの他のバリアントを用いて生成されたバイオコンジュゲートと比較して担体タンパク質に結合したグリカンの相対的な数を増やすことにより、バイオコンジュゲートのグリコシル化パターンにも影響を与え得る。したがって、そのような方法によって生成された新規のバイオコンジュゲートも本発明の一の態様として提供される。
【0011】
1つの態様においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法を提供し、該製造方法は、
(i)a.Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含む組換え宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え宿主細胞を培養することを含み、
ここで、
Ox抗原がO1A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO8抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO15抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO16抗原多糖である場合、PglByはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO18A抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO75抗原多糖である場合、PglByはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O18A)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0012】
1つの実施形態においては、Ox抗原がO1A抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む。
【0013】
1つの実施形態においては、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vを含む。1つの実施形態においては、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む。1つの実施形態においては、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、組換え宿主細胞は、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む。
【0014】
1つの実施形態においては、Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む。
【0015】
1つの実施形態においては、Ox抗原がO8抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない。
【0016】
1つの実施形態においては、Ox抗原がO15抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む。
【0017】
1つの実施形態においては、Ox抗原がO16抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含む。
【0018】
1つの実施形態においては、Ox抗原がO18A抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0019】
1つの実施形態においては、Ox抗原がO75抗原多糖である場合、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311Vのアミノ酸突然変異を含む。
【0020】
特定の態様においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法を提供し、該製造方法は、
(i)a.Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含む組換え宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え宿主細胞を培養することを含み、
ここで、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vを含み、
ここで、Ox抗原はO1A抗原多糖、グルコシル化O4抗原多糖、O6A抗原多糖、O15抗原多糖、O16抗原多糖またはO75抗原多糖である;そして、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O15、O16およびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O15)、(O16)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0021】
特定の実施形態においては、該方法は、組換え宿主細胞からバイオコンジュゲートを単離することを更に含む。
【0022】
特定の実施形態においては、担体タンパク質は、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択される。
【0023】
特定の実施形態においては、担体タンパク質はシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)である。好ましくは、EPA担体タンパク質は1~10個、好ましくは2~4個、好ましくは4個のグリコシル化部位を含む。特定の実施形態においては、各グリコシル化部位は、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む。特定の実施形態においては、EPA担体タンパク質は配列番号3を含む。
【0024】
特定の実施形態においては、組換え宿主細胞は大腸菌細胞、例えば大腸菌K-12株、例えば株W3110である。
【0025】
もう1つの態様においては、本明細書に記載されているとおりに担体タンパク質に共有結合しているOx抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法により製造されるバイオコンジュゲートを提供する。
【0026】
もう1つの態様においては、そのようなバイオコンジュゲートを含む組成物を提供する。幾つかの実施形態においては、該組成物は少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも5個、より一層好ましくは少なくとも7個のそのようなバイオコンジュゲートを含む。
【0027】
特定の実施形態においては、本発明の組成物は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、グルコシル化O4抗原多糖は、表1に示されている式(O4-Glc+)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。特定の実施形態においては、本発明の組成物は更に、少なくとも、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、O25B抗原多糖は、表1に示されている式(O25B)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。特定の実施形態においては、本発明の組成物は更に、少なくとも、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O2抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、O2抗原多糖は、表1に示されている式(O2)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0028】
特定の実施形態においては、本発明の組成物は、(i)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O1A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(ii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O2抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iv)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O6A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(v)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O8抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vi)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O15抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O16抗原多糖のバイオコンジュゲート、(viii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲート、および(ix)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O75抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、O1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O25BおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O2)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O25B)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。特定の実施形態においては、そのような組成物は更に、(x)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O18A抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、大腸菌O18A抗原多糖は、表1に示されている式(O18A)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。特定の実施形態においては、本発明の組成物は免疫原性組成物である。
【0029】
他の態様においては、本明細書に記載されているそのようなバイオコンジュゲートまたは組成物を対象に投与することを含む、腸外病原性大腸菌(ExPEC)に対して対象にワクチン接種する方法を提供する。更に他の態様においては、腸外病原性大腸菌(ExPEC)に対するワクチン接種における使用のための、本明細書に記載されているそのようなバイオコンジュゲートまたは組成物を提供する。
【0030】
他の態様においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造のための組換え宿主細胞を提供し、該組換え宿主細胞は、
(a)Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
(b)配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含み、
ここで、
Ox抗原がO1A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO15抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO16抗原多糖である場合、PglByはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO18A抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO75抗原多糖である場合、PglByはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O18A)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0031】
特定の実施形態においては、Ox抗原がO1A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、そのような宿主細胞を提供する。
【0032】
特定の実施形態においては、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vを含む、本発明の組換え宿主細胞を提供する。特定の実施形態においては、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む、本発明の組換え宿主細胞を提供する。特定の実施形態においては、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、組換え宿主細胞が、配列番号4のアミノ酸配列を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0033】
特定の実施形態においては、Ox抗原がO6A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0034】
特定の実施形態においては、Ox抗原がO8抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0035】
特定の実施形態においては、Ox抗原がO15抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0036】
特定の実施形態においては、Ox抗原がO16抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含む、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0037】
特定の実施形態においては、Ox抗原がO18A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0038】
特定の実施形態においては、Ox抗原がO75抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311Vのアミノ酸突然変異を含む、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0039】
特定の実施形態においては、担体タンパク質が、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択される、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0040】
特定の実施形態においては、担体タンパク質がシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)である、本発明の組換え宿主細胞を提供する。特定の実施形態においては、EPA担体タンパク質は1~10個、好ましくは2~4個、好ましくは4個のグリコシル化部位を含む。特定の実施形態においては、各グリコシル化部位は、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む。特定の実施形態においては、EPA担体タンパク質は配列番号3を含む。
【0041】
特定の実施形態においては、組換え宿主細胞が大腸菌細胞、例えば大腸菌K-12株、例えば株W3110である、本発明の組換え宿主細胞を提供する。
【0042】
本発明の宿主細胞に関する特定の実施形態、および本発明の、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法に関する特定の実施形態においては、大腸菌O4抗原多糖のrfb遺伝子クラスターは、大腸菌O4抗原多糖(表1における式(O4-Glc-))を産生する酵素をコードする配列を含み、配列番号9に対して少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%同一である。特定の実施形態においては、rfb遺伝子クラスターは配列番号9を含む。
【0043】
本発明の宿主細胞に関する特定の実施形態、および本発明の、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法に関する特定の実施形態においては、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうるグルコシルトランスフェラーゼは配列番号4に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。特定の実施形態においては、グルコシルトランスフェラーゼは配列番号4を含む。
【0044】
本発明の宿主細胞に関する特定の実施形態、および本発明の、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法に関する特定の実施形態においては、トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、配列番号7に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。特定の実施形態においては、トランスロカーゼは配列番号7を含む。
【0045】
本発明の宿主細胞に関する特定の実施形態、および本発明の、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法に関する特定の実施形態においては、グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、配列番号8に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。特定の実施形態においては、グリコシルトランスフェラーゼは配列番号8を含む。
【0046】
図面の簡潔な説明
前記概要および本発明の以下の詳細な説明は、添付図面と共に読めば、より深く理解されるであろう。本発明は、図面に示されている厳密な実施形態に限定されないと理解されるべきである。図面には以下のことが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、実施例4に記載されているとおり、Glc修飾O4多糖バイオコンジュゲートで免疫化された2匹のウサギからの血清中の非修飾(GLC-)またはグルコース修飾(GLC+)O4 LPSに対するELISA IgG力価を示す。ELISA力価は4重反復して測定した。
【
図2】
図2は、実施例4に記載されているとおりに特徴付けられたgtrS状態を有する大腸菌O4分離菌に対するGlc修飾O4バイオコンジュゲートで免疫化されたウサギからのプール血清を使用した全細胞ELISAにおけるIgG力価を示す。以下の分離菌はGtrS陰性であった:A2625、stGVXN4988、OC24784、OC24787およびOC24788。以下の分離菌はgtrS陽性であった:Y1382、E551、OC24334、stGVXN4983、stGVXN4994およびOC24794。陰性対照株OC9487(ATCC 35383;血清型O75)も含めた。
【
図3】
図3は、修飾O4多糖で免疫化されたウサギからのプール血清でプローブされたgtrS陽性O4分離菌およびgtrS陰性O4分離菌から抽出されたLPSのウエスタンブロットを示す。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、グルコシル化O4(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートにより誘導された抗体応答を示す。
図4Aは、免疫化後第0日、第14日および第42日にELISAにより測定された血清抗体レベルを示す。個々の力価(log10 EC50力価)およびGMT±95% CIが示されている。灰色の点線は閾値を示し、これを超えるとサンプルの希釈曲線が4PLフィッティングを有する。
図4Bは、グルコシルO4(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲート(4.0μg)での免疫化の後の第42日に得られた血清サンプルにおける抗体の機能を決定するためのオプソニン食作用(OPK)アッセイの結果を示す;ウィルコクソン順位和検定およびボンフェローニ補正;
* P ≦ 0.05、
*** P ≦ 0.0001。
【
図5】
図5は、実施例4に記載されているとおりに3つの異なる用量で免疫化されたSprague Dawleyラットにおけるグルコシル化O4(O4 Glc+)-EPAバイオコンジュゲートのブースト効果を示す。血清抗体レベルを免疫後第0日、第14日、第42日にELISAにより測定した。個々の力価(log10 EC50力価)が各動物に関して示されている。データ点間の線は各動物のIgG力価を経時的に連結するものである。灰色の点線は閾値を示し、これを超えるとサンプルの希釈曲線が4PLフィッティングを有する。統計分析は、多重比較のためのボンフェローニ補正およびウィルコクソン符号順位検定を用いて行った(第14日対第0日, 4.0μg/用量でP = 0.012、全用量でP = 0.006;第42日対第14日、全用量でP = 0.006)。
【
図6】
図6は、O4-Glc+ -EPAバイオコンジュゲートにより誘導された抗体の機能を示す。Sprague Dawleyラットを製剤バッファーまたはO4(Glc+)-EPAバイオコンジュゲート(4.00μg/用量)で筋肉内に3回免疫化した。O4(Glc+)およびO4(Glc-)大腸菌株を使用するオプソニン食作用殺傷アッセイ(OPKA)により抗体の機能を測定した。個々のオプソニン力価(OI)およびGMT±95% CIが示されている。
【
図7】
図7は、ペリプラズム画分中のO4-Glc+バイオコンジュゲートを検出するためにモノクローナル抗体を使用してブロット様イメージで各試験株に関してO4-Glc+バイオコンジュゲート産生を可視化するPglBスクリーンのキャピラリー電気泳動読出しを示す。モノグリコシル化産物は約180kDa、ジグリコシル化産物は約320kDa、トリグリコシル化産物は約450kDaである。A)第1スクリーニングラウンド。レーン3におけるWt PglB、レーン2および4におけるN311V-PglB、レーン1における空(empty)対照株ならびにレーン5および6における他のPglB変異体。B)第2スクリーニングラウンド。レーン3におけるN311V PglB、レーン9におけるN311V + Y77H PglB、レーン1および2における空対照株、残りのレーンにおける他のPglB変異体。
【
図8-1】
図8は、New Zealand WhiteウサギにおいてExPEC10Vワクチンにより誘導された抗体応答を示す。ExPEC10Vまたは生理食塩水を2週間隔で投与して、動物に筋肉内免疫化を3回行った。ExPEC10Vワクチンは、3つの異なる濃度(群1:高用量、群2:中用量、および群3:低用量;表11)で投与し、対照群は生理食塩水のみの投与を受けた(群4、0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液)。第0日(ワクチン接種前)ならびに第14日、第27日および第42日(ワクチン接種後)にELISAにより抗体レベルを測定した。個々の力価(EC50力価)および幾何平均力価(GMT)± 95% CIが示されている。多重比較のためのボンフェローニ補正を用いたウィルコクソン順位和検定。ExPEC10Vワクチン接種動物(群1、2および3)と生理食塩水対照(群4)との比較。
* P ≦ 0.05、
** P ≦ 0.01;
*** P ≦ 0.001;
**** P ≦ 0.0001。LOD:検出限界。
【
図8-2】
図8は、New Zealand WhiteウサギにおいてExPEC10Vワクチンにより誘導された抗体応答を示す。ExPEC10Vまたは生理食塩水を2週間隔で投与して、動物に筋肉内免疫化を3回行った。ExPEC10Vワクチンは、3つの異なる濃度(群1:高用量、群2:中用量、および群3:低用量;表11)で投与し、対照群は生理食塩水のみの投与を受けた(群4、0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液)。第0日(ワクチン接種前)ならびに第14日、第27日および第42日(ワクチン接種後)にELISAにより抗体レベルを測定した。個々の力価(EC50力価)および幾何平均力価(GMT)± 95% CIが示されている。多重比較のためのボンフェローニ補正を用いたウィルコクソン順位和検定。ExPEC10Vワクチン接種動物(群1、2および3)と生理食塩水対照(群4)との比較。
* P ≦ 0.05、
** P ≦ 0.01;
*** P ≦ 0.001;
**** P ≦ 0.0001。LOD:検出限界。
【
図9-1】
図9は、ExPEC10Vにより誘導された抗体応答を示す。New Zealand WhiteウサギにExPEC10V(105.6μgの総多糖)または0.9% w/v塩化ナトリウム溶液(対照)で3回の筋肉内免疫化を行った。第1日(免疫化前、n = 20/群)、第31日(免疫化後、n = 20/群)および第50日(免疫化後、n = 10/群)にIgG力価をELISAにより測定した。プロットは各群に関する個々の力価および幾何平均±95% 信頼区間を示す。ExPEC10Vと対照群との間のIgG力価の差異を、尤度比検定を用いるTobitモデルを使用して分析した。0.05以下のP値は有意だと見なされた。
* P ≦ 0.05、
**** P ≦ 0.0001。
【
図9-2】
図9は、ExPEC10Vにより誘導された抗体応答を示す。New Zealand WhiteウサギにExPEC10V(105.6μgの総多糖)または0.9% w/v塩化ナトリウム溶液(対照)で3回の筋肉内免疫化を行った。第1日(免疫化前、n = 20/群)、第31日(免疫化後、n = 20/群)および第50日(免疫化後、n = 10/群)にIgG力価をELISAにより測定した。プロットは各群に関する個々の力価および幾何平均±95% 信頼区間を示す。ExPEC10Vと対照群との間のIgG力価の差異を、尤度比検定を用いるTobitモデルを使用して分析した。0.05以下のP値は有意だと見なされた。
* P ≦ 0.05、
**** P ≦ 0.0001。
【
図10-1】
図10は、ヒトにおける、ExPEC10Vワクチンを用いた1/2a相臨床試験の全体的な試験設計を示す。
図10Aはコホート1に関する全体的な試験設計を示し、
図10Bは、コホート2に関する全体的な試験設計を示す。詳細は実施例11を参照されたい。
【
図10-2】
図10は、ヒトにおける、ExPEC10Vワクチンを用いた1/2a相臨床試験の全体的な試験設計を示す。
図10Aはコホート1に関する全体的な試験設計を示し、
図10Bは、コホート2に関する全体的な試験設計を示す。詳細は実施例11を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
種々の刊行物、論文および特許が、前記の「背景技術」および本明細書の全体にわたって引用または記載されている。これらの参考文献のそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。本明細書に含まれている文書、法律、材料、装置、物品などの考察は、本発明の背景情報を提供することを目的としている。そのような考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示または特許請求されているいずれかの発明に関して先行技術の一部を形成すると認めるものではない。
【0049】
特に定められていない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、本発明が関連する分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。そうでなければ、本明細書中で用いる或る用語は、本明細書に記載されている意味を有する。
【0050】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、複数形対象物を含むことに留意しなければならない。
【0051】
特に示されていない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」なる語はその一連のものにおける各要素を指すと理解されるべきである。
【0052】
当業者は、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多数の均等物を認識し、または単なる常套的実験を用いて確認しうるであろう。そのような均等物は本発明に含まれると意図される。
【0053】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体において、文脈に矛盾しない限り、「含む」なる語ならびに「含み」および「含んで」のような変形は、示されている整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を含むことを意味し、いずれの他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群をも除外することを意味しないと理解される。本明細書中で用いる「含む」なる語は「含有する」または「包含する」なる語で置換可能であり、あるいは、本明細書中で用いる場合、時には、「有する」なる語で置換可能である。
【0054】
本明細書中で用いる「からなる」は、特許請求の範囲の要素において特定されていないいずれの要素、工程または成分をも除外する。本明細書中で用いる「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさない材料または工程を除外しない。「含む」、「含有する」、「包含する」および「有する」の前記用語のいずれもは、本発明の態様または実施形態の文脈において本明細書中で用いられる場合には常に、本開示の範囲を変更するために「からなる」または「から本質的になる」なる語で置換可能である。
【0055】
本明細書中で用いる、複数の列挙要素の間の接続詞「および/または」は個々の選択肢および組合された選択肢の両方を含むと理解される。例えば、2つの要素が「および/または」により連結されている場合、第1の選択肢は第2の要素の非存在下の第1の要素の適用可能性を指す。第2の選択肢は、第1の要素の非存在下の第2の要素の適用可能性を指す。第3の選択肢は第1の要素と第2の要素との両方の適用可能性を指す。これらの選択肢のいずれか1つがその意味の範囲内であると理解され、したがって、本明細書中で用いる「および/または」なる語の要件を満たす。それらの選択肢の2以上の同時適用可能性もその意味の範囲内であると理解され、したがって、「および/または」なる語の要件を満たす。
【0056】
大腸菌O4血清型におけるO抗原構造修飾、すなわち、グルコース分岐の特定(Jannら, 1993)は、この血清型における細菌分離菌を標的化する複合糖質(グリココンジュゲート)ワクチンの発見および開発のための課題となる。O4 O抗原の未修飾(グルコース側枝を有さない)形態および修飾(グルコース側枝を有する)形態を発現する臨床的な現在のO4分離菌の割合は不明である。この特性に関する情報の入手は、関連抗原構造を選択するために決定的に重要である。また、O4多糖の一形態に対して誘導されたワクチン誘導抗体がその他の形態と交差反応する度合は決定されていない。リピドAを含有しないO抗原の精製、およびそれに続く担体タンパク質への化学的コンジュゲート化は、時間のかかる面倒なプロセスである。また、精製、リピドAの無毒化および化学的コンジュゲート化のプロセスはコンジュゲート化多糖のエピトープの喪失、抗原不均一性および免疫原性の低下をもたらしうる。バイオコンジュゲート化による複合糖質の合成は古典的な精製および化学的コンジュゲート化のこれらの制約を克服しうるが、グルコース分岐O4 O抗原のインビボ合成は、rfb遺伝子クラスターの外部に位置する多糖分岐酵素の活性を要する。現在のところ、O4大腸菌株におけるグルコース分岐をもたらすO抗原修飾酵素は特定されていない。PglBを発現するバイオコンジュゲート化大腸菌株内へのO4 rfb遺伝子クラスターのクローニングは、グルコース分岐O4複合糖質を合成するのに十分ではなく、それどころか、非グルコース分岐O4バイオコンジュゲートを産生するに過ぎない(そのグリカンの構造は表1における式(O4)に示されている)。本明細書中で用いる「グルコシル化O4」、「グルコース分岐O4」、「O4 Glc+」および「Glc+ O4」O抗原なる語は、グルコース側枝を有するO4 O抗原を意味し、その構造は表1における式(O4-Glc+)に示されている。
【0057】
本明細書は、大腸菌O4抗原多糖のグルコース分岐をもたらすO抗原修飾酵素をコードする遺伝子を開示する。また、本明細書は、担体タンパク質に共有結合しているグルコシル化O4抗原多糖を含むバイオコンジュゲートをインビボで産生しうる酵素をコードする核酸を含む宿主細胞、例えば組換え操作宿主細胞も開示する。そのような宿主細胞は、担体タンパク質に連結されたグルコシル化O4抗原を含むバイオコンジュゲートを製造するために使用可能であり、これは、例えば、治療用および/または予防用組成物(例えば、ワクチン)の製剤化(処方)において使用可能である。本発明は更に、グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを単独で又は他の大腸菌抗原(例えば、O1、O2、O6、O8、O15、O16、O18、O25および/またはO75抗原多糖ならびにそれらの亜血清型)と共に含む組成物を提供する。該組成物は、予防方法および/または治療方法、例えば、大腸菌感染に対する宿主のワクチン接種において使用可能であり、抗体の産生において有用であり、これは、例えば、対象の免疫化のような治療方法において使用可能である。
【0058】
本明細書中で用いる「O抗原」、「O抗原多糖」、「O抗原糖」および「OPS」なる語はグラム陰性菌のO抗原を意味する。典型的には、O抗原は免疫原性反復多糖単位のポリマーである。特定の実施形態においては、「O抗原」、「O抗原多糖」および「OPS」なる語は、大腸菌のO抗原を意味する。大腸菌の血清型が異なれば、それが発現するO抗原も異なる。大腸菌においては、O抗原生合成に関与する遺伝子産物はrfb遺伝子クラスターによりコードされている。
【0059】
本明細書中で用いる「rfbクラスター」および「rfb遺伝子クラスター」は、O抗原骨格構造を合成しうる酵素機構をコードする遺伝子クラスターを意味する。rfbクラスターなる語は任意のO抗原生合成クラスターに適用可能であり、好ましくは、エシェリキア(Escherichia)属、特に大腸菌(E. coli)由来の遺伝子クラスターを意味する。
【0060】
本明細書中で用いる「O1A」なる語は大腸菌のO1A抗原(大腸菌血清型O1の亜血清型)を意味する。「O2」なる語は大腸菌のO2抗原(大腸菌血清型O2)を意味する。「O6A」なる語は大腸菌のO6A抗原(大腸菌血清型O6の亜血清型)を意味する。「O8」なる語は大腸菌のO8抗原(大腸菌血清型O8)を意味する。「O15」なる語は大腸菌のO15抗原(大腸菌血清型O15)を意味する。「O16」なる語は大腸菌のO16抗原(大腸菌血清型O16)を意味する。「O18A」なる語は大腸菌のO18A抗原(大腸菌血清型O18の亜血清型)を意味する。「O25B」なる語は大腸菌由来のO25B抗原(大腸菌血清型O25の亜血清型)を意味する。「O75」なる語は大腸菌のO75抗原(大腸菌血清型O75)を意味する。
【0061】
本出願の全体において言及される大腸菌O抗原多糖の構造を以下の表1に示す。各大腸菌O抗原多糖に関する単一反復単位が示されている。
【0062】
【0063】
本明細書に記載されている全ての単糖は、当技術分野で公知のそれらの一般的な意味を有する。単糖はDまたはL配置を有しうる。DまたはLが特定されていない場合、糖はD配置を有すると理解される。単糖は、典型的には、当技術分野で一般に公知であり使用されている略語により表記される。例えば、Glcはグルコースを意味し、D-GlcはD-グルコースを意味し、L-GlcはL-グルコースを意味する。単糖に関する他の一般的な略語は以下のとおりである:Rha、ラムノース;GlcNAc、N-アセチルグルコサミン;GalNAc、N-アセチルガラクトサミン;Fuc、フコース;Man、マンノース;Man3Me、3-O-メチル-マンノース;Gal、ガラクトース;FucNAc、N-アセチルフコサミン;およびRib、リボース。接尾辞「f」はフラノースを意味し、接尾辞「p」はピラノースを意味する。
【0064】
O抗原に関して用いられる「RU」、「反復単位」および「繰返し単位」なる語は、細胞機構(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ)によりインビボで合成されるO抗原の生物学的反復単位(BRU)を意味する。O抗原のRU数は血清型によって異なる可能性があり、本発明の実施形態においては、典型的には、約1~100 RU、好ましくは約1~50 RU、例えば1~50 RU、1~40 RU、1~50 RU、1~30 RU、1~20 RUおよび1~10 RU、より好ましくは少なくとも3 RU、少なくとも4 RU、少なくとも5 RU、例えば3~50 RU、好ましくは5~40 RU、例えば7~25 RU、例えば10~20 RUである。しかし、場合によっては、O抗原のRU数は1~2でありうる。本明細書で具体的に記載されている各O抗原の構造は、RU数を示す変数「n」を伴う1つのRUを含有するものとして示されている。本発明のバイオコンジュゲートにおける各O抗原多糖において、nは、独立して、1~100、例えば1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも5、例えば3~50、好ましくは5~40の整数(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40)であるが、場合によっては、1~2である。幾つかの実施形態においては、nは独立して、約7~25、例えば約10~20の整数である。その値は組成物における個々のO抗原多糖によって異なる可能性があり、ここでは平均値として示されている。すなわち、バイオコンジュゲートが、独立して5~40の整数であるnを有するものとして本明細書に記載されている場合、組成物は、5~40個の反復単位を有する大多数のO抗原多糖を含有するが、5個未満の反復単位または40個を超える反復単位を有する幾つかのO抗原多糖をも含有しうる。
【0065】
「複合糖質(グリココンジュゲート)」なる語は、タンパク質、ペプチド、脂質など(これらに限定されるものではない)を含む別の化学種に連結された糖または糖抗原(例えば、オリゴ糖および多糖)-タンパク質コンジュゲートを意味する。複合糖質は、例えばタンパク質と糖または糖抗原との化学的(合成的)結合により、化学的に製造されうる。複合糖質なる語はバイオコンジュゲートをも含む。
【0066】
「バイオコンジュゲート」なる語は、タンパク質(例えば、担体タンパク質)と、宿主細胞環境、好ましくは細菌宿主細胞、例えば大腸菌宿主細胞において産生された糖または糖抗原(例えば、オリゴおよび多糖)とのコンジュゲートを意味し、この場合、宿主細胞機構が抗原をタンパク質に連結(例えば、N結合)する。好ましくは、「バイオコンジュゲート」なる語は、タンパク質(例えば、担体タンパク質)と、宿主細胞環境において産生されたO抗原、好ましくは大腸菌O抗原(例えば、O1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25B、O75など)とのコンジュゲートを意味し、この場合、宿主細胞機構が抗原をタンパク質に連結(例えば、N結合)する。バイオコンジュゲートは宿主細胞機構により宿主細胞内で産生されるため、抗原とタンパク質とはバイオコンジュゲートにおけるグリコシド連結または結合によって共有結合される。バイオコンジュゲートは、O抗原を合成するのに必要な、および/またはO抗原を標的タンパク質に連結するのに必要な細胞機構を発現するように操作された組換え宿主細胞において製造されうる。グリカンが細菌細胞壁から精製され、ついで担体タンパク質に化学的に結合されることにより化学的に製造される複合糖質と比べて、本明細書に記載されているバイオコンジュゲートは有利な特性を有する。例えば、バイオコンジュゲートは、製造に必要な化学物質がより少数であり、産生される最終産物に関して、より一貫しており、遊離(すなわち、担体タンパク質に結合していない)グリカンをほとんど又は全く含有しない。したがって、典型的な実施形態においては、バイオコンジュゲートは、化学的に製造された複合糖質より好ましい。
【0067】
数値と共に用いられる場合の「約」なる語は、参照される数値の±1、±5または±10%以内の任意の数値を意味する。
【0068】
「配列同一性の割合(%)」または「同一性(%)」なる語は、アミノ酸配列の全長を構成するアミノ酸残基の数と比較した場合の、2以上の整列アミノ酸配列の同一アミノ酸の一致(マッチ)(「ヒット」)の数を示す。言い換えれば、アラインメントを用いて、2以上の配列に関して、同一であるアミノ酸残基の割合(%)(例えば、90%、95%、97%または98%の同一性)が決定可能であり、この場合、当技術分野で公知の配列比較アルゴリズムを使用して測定した場合または手動でアライメントし目視検査した場合に最大の一致が得られるように、それらの配列を比較し、アラインメントする。したがって、配列同一性を決定するために比較される配列はアミノ酸の置換、付加または欠失において異なりうる。タンパク質配列をアライメント(整列)させるための適切なプログラムは当業者に公知である。タンパク質配列の配列同一性の割合は、例えばNCBI BLASTアルゴリズム(Altschul SFら, (1997), Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)を使用して、CLUSTALW、Clustal Omega、FASTAまたはBLASTのようなプログラムで決定されうる。
【0069】
例えば、アミノ酸配列に関しては、配列同一性および/または類似性は、SmithおよびWaterman, 1981, Adv. Appl. Math. 2:482のローカル配列同一性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443の配列同一性アライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman, 1988, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、Devereuxら, 1984, Nucl. Acid Res. 12:387-395に記載されているBest Fit配列プログラム(これらに限定されるものではない)を含む当技術分野で公知の標準的な技術により(好ましくはデフォルト設定を使用して、または検査により)決定されうる。特定の実施形態においては、同一性(%)は、以下のパラメーターに基づいてFastDBにより計算される:1のギャップペナルティ;0.33のギャップサイズペナルティ;および30の結合ペナルティ(“Current Methods in Sequence Comparison and Analysis”, Macromolecule Sequencing and Synthesis, Selected Methods and Applications, pp 127-149 (1988), Alan R. Liss, Inc.)。
【0070】
有用なアルゴリズムのもう1つの例は、Altschulら, 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410; Altschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; およびKarinら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873-5787に記載されているBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschulら, 1996, Methods in Enzymology 266:460-480から得られたWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は幾つかの検索パラメータを使用し、そのほとんどはデフォルト値に設定される。
【0071】
追加的な有用なアルゴリズムは、Altschulら,1993, Nucl. Acids Res. 25:3389-3402により報告されているギャップ化(gapped)BLASTである。
【0072】
「侵襲性腸外病原性大腸菌(ExPEC)疾患(IED)」なる語は、本明細書においては、全身性細菌感染に合致する急性疾患として定義され、これは、血液もしくは通常は無菌の他の身体部位からの大腸菌の分離および同定、または侵襲性疾患(全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症または敗血症性ショック)の徴候および症状の存在を伴い他の特定可能な感染源を有さない患者における尿からの大腸菌の分離および同定によって微生物学的に確認される。
【0073】
大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート
1つの態様においては、本発明は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを提供する。本明細書中で用いる「O4」なる語は大腸菌由来のO4抗原(大腸菌血清型O4)を意味する。O抗原構造修飾は大腸菌O4血清型内に存在することが公知である。特に、幾つかのO4血清型は、分岐グルコース単位を有する修飾O抗原を発現する。本明細書中で用いる「グルコシル化O4抗原」、「グルコシル化O4抗原多糖」、「O4-Glc+抗原多糖」および「O4-Glc+抗原」は、グルコース分岐を有するO4抗原(例えば、大腸菌O4抗原)を意味し、D-グルコースは反復単位L-Rha→D-Glc→L-FucNAc→D-GlcNAcにおいてL-ラムノースに連結されている。特定の実施形態においては、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖は、表1に示されている式(O4-Glc+)の構造を含み、nは1~100の整数である。好ましい実施形態においては、nは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0074】
大腸菌O4株は、グルコース分岐状態には無関係に、O4抗原多糖の産生をもたらす遺伝子をコードする実質的に同一のrfb遺伝子クラスターを含有する。しかし、グルコース分岐を有する修飾O4抗原のインビボ合成は、rfb遺伝子クラスターの外部に存在する多糖分岐酵素の活性を要する。本発明者らの知る限りにおいては、O4抗原のグルコース修飾をもたらす多糖分岐酵素の正体は現在のところ依然として知られていない。本発明において、本発明者らは、O4抗原のグルコース修飾をもたらす多糖分岐酵素の配列を見出した。この酵素の特定は、グルコース分岐を有する修飾O4抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造を可能にする。O4抗原多糖のグルコース修飾形態は主要血清型において存在し、したがって、例えば予防的または治療的使用のために、改善された免疫応答を得るために使用されうる。
【0075】
特に、本発明は、O4抗原をグルコシル化する大腸菌血清型O4に特異的なグルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするgtrS遺伝子の配列を提供する。一般に、gtrA、gtrBおよびgtrS遺伝子は、O抗原のグリコシル化をもたらす酵素をコードする。異なる血清型におけるgtrA遺伝子およびgtrB遺伝子は高度に相同であり互換性であるが、gtrS遺伝子は血清型特異的O抗原グルコシルトランスフェラーゼをコードする。大腸菌血清型O4のgtrS遺伝子は、グルコース分岐を導入することによりO4抗原を修飾するGtrS酵素をコードする。O4血清型の現在の臨床大腸菌分離菌の特徴づけは被検分離菌の78%におけるgtrSの存在を示した。このことは、グルコース残基の付加により修飾された大腸菌O4抗原多糖が現在の感染分離菌において優勢であることを示している。
【0076】
1つの実施形態においては、本発明は、配列番号4のアミノ酸配列を含むGtrSグルコシルトランスフェラーゼをコードする大腸菌血清型O4由来のgtrS遺伝子の核酸を提供する。もう1つの実施形態においては、gtrS核酸は、配列番号4のアミノ酸配列に対して約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、好ましくは、配列番号4のアミノ酸配列に対して98%、99%または100%同一である大腸菌血清型O4由来のGtrSタンパク質をコードする。配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるGtrSタンパク質は大腸菌O4抗原多糖を特異的にグルコシル化して、表1に示されている式(O4-Glc+)の構造を有するグルコシル化O4抗原を与える。当業者は、本開示を参照して、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列番号4のGtrSタンパク質の突然変異形態を製造し、大腸菌O4抗原のグルコシル化活性に関して、そのような配列を試験することが可能である。大腸菌血清型O4のグルコシルトランスフェラーゼgtrS遺伝子をコードする核酸配列を含む組換え宿主細胞ならびにグルコース修飾O4抗原多糖およびそのバイオコンジュゲートの製造における組換え宿主細胞の使用は後記で更に詳細に説明される。
【0077】
バクトプレノール結合グルコーストランスロカーゼ(GtrA;バクトプレノール結合グルコースを内膜上でペリプラズムに転移させる)およびバクトプレノールグルコシルトランスフェラーゼ(GtrB;グルコースをバクトプレノールに連結する)として機能するそれぞれgtrAおよびgtrBコード化タンパク質の配列は、それぞれ配列番号7および8に対して少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含みうる。特定の実施形態においては、それぞれ配列番号7および8に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であり、それぞれバクトプレノール結合グルコーストランスロカーゼおよびバクトプレノールグルコシルトランスフェラーゼ活性を有するGtrAおよびGtrBタンパク質をコードする核酸配列も、大腸菌グルコシル化O4血清型(表1における式(O4-Glc+)のグリカン構造を含む)のバイオコンジュゲートを産生させるために、O4特異的rfb遺伝子座、前記のO4特異的GtrSコード配列、本明細書に記載されているオリゴサッカリルトランスフェラーゼ、および本明細書に記載されている1以上のグリコシル化コンセンサス配列を有する担体タンパク質をコードする配列を更に含む本発明の宿主細胞内に存在する。
【0078】
本発明で提供される大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートは、好ましくはグリコシド結合により、担体タンパク質に共有結合している。本開示を考慮して、当業者に公知の任意の担体タンパク質が使用されうる。適切な担体タンパク質には、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDが含まれるが、これらに限定されるものではない。必要なコンセンサスグリコシル化配列を含有する種々の異なる担体タンパク質とのバイオコンジュゲート化が記載されており、この技術を使用して広範なタンパク質がグリコシル化されうることが示されている(例えば、WO 06/119987、WO 2015/124769、WO 2015/158403、WO 2015/82571、WO 2017/216286およびWO 2017/67964を参照されたい;バイオコンジュゲート化において成功裏に使用された多種多様な担体タンパク質が共に示されている)。
【0079】
特定の実施形態においては、担体タンパク質は修飾され、例えば、タンパク質がより低毒性となり、および/またはグリコシル化に対して、より感受性となるように修飾される。特定の実施形態においては、本発明において使用される担体タンパク質は、より低濃度のタンパク質が投与されることを可能にする様態で、例えば免疫原性組成物において、特にそのバイオコンジュゲート形態において、担体タンパク質中のグリコシル化部位の数が最大になるように修飾される。
【0080】
したがって、特定の実施形態においては、本明細書に記載されている担体タンパク質は、担体タンパク質に通常伴うものより(例えば、その天然/自然形態、すなわち「野生型」状態の担体タンパク質に伴うグリコシル化部位の数と比較して)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上多いグリコシル化部位を含むように修飾される。担体タンパク質へのグリコシル化部位の導入は、例えば、グリコシル化部位を生成させるためにタンパク質内の既存アミノ酸を突然変異させることにより、またはグリコシル化部位が完全または部分的に付加されるようにタンパク質の一次構造に新たなアミノ酸を付加することにより、タンパク質の一次構造の任意の位置にグリコシル化コンセンサス配列を挿入することにより達成されうる。当業者に公知のアプローチ、例えば、タンパク質をコードする核酸配列の修飾を含む組換えアプローチを用いて、タンパク質のアミノ酸配列は容易に修飾されうると、当業者は認識するであろう。特定の実施形態においては、グリコシル化コンセンサス配列は、担体タンパク質の特定の領域、例えば、該タンパク質の表面構造、該タンパク質のNもしくはC末端、および/または該タンパク質の基部のジスルフィド架橋により安定化されるループに導入される。幾つかの実施形態においては、グリコシル化コンセンサス配列は、より効率的なグリコシル化のためにリジン残基を付加することにより拡張されうる。
【0081】
担体タンパク質内に挿入されうる又は担体タンパク質において生成されうるグリコシル化コンセンサス配列の典型例には、Asn-X-Ser(Thr)(ここで、XはPro以外の任意のアミノ酸でありうる)(配列番号1)およびAsp(Glu)-X-Asn-Z-Ser(Thr)(ここで、XおよびZは、独立して、Pro以外の任意のアミノ酸から選択される)(配列番号2)が含まれる。
【0082】
幾つかの実施形態においては、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖は担体タンパク質中のアスパラギン(Asn)残基に共有結合され(例えば、N結合型)、Asn残基は、配列番号1を有する、より好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含むグリコシル化部位に存在する。典型的には、担体タンパク質は1~10個のグリコシル化部位、好ましくは2~4個のグリコシル化部位、最も好ましくは4個のグリコシル化部位、例えば1~10個、好ましくは2~4個、より好ましくは4個のグリコシル化部位を含み、それらのそれぞれは、配列番号1のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む。
【0083】
特定の実施形態においては、担体タンパク質はピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素Aである。EPAに関して、種々の無毒化タンパク質変異体が文献に記載されており、担体タンパク質として使用されうる。例えば、Lukacら, 1988, Infect Immun, 56: 3095-3098およびHoら, 2006, Hum Vaccin, 2:89-98に従い、触媒に必須の残基であるL552VおよびΔE553を突然変異および欠失させることにより、無毒化が達成されうる。本明細書中で用いる「EPA」はピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素Aを意味する。担体タンパク質がEPAであるそれらの実施形態においては、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖は、配列番号1を有するグリコシル化コンセンサス配列を含むグリコシル化部位におけるAsn残基に共有結合されることが可能であり、好ましくは、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含むグリコシル化部位における残基Asn残基に共有結合されうる。好ましくは、EPA担体タンパク質は、1~10個のグリコシル化部位、好ましくは2~4個のグリコシル化部位、最も好ましくは4個のグリコシル化部位、例えば1~10個、好ましくは2~4個、より好ましくは4個のグリコシル化部位を含み、それらのそれぞれは、配列番号1のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む。
【0084】
幾つかの実施形態においては、EPA担体タンパク質は、グリコシル化コンセンサス配列をそれぞれが含む4個のグリコシル化部位を含み、例えば、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含むグリコシル化部位を含む。本明細書中で用いる「EPA-4担体タンパク質」および「EPA-4」は、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列をそれぞれが含む4個のグリコシル化部位を含むピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)担体タンパク質の無毒化外毒素Aを意味する。EPA-4担体タンパク質の2の例示的な好ましい例は、配列番号3のアミノ酸配列を含むEPA担体タンパク質である。
【0085】
組成物
もう1つの態様においては、本発明は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む組成物を提供する。本発明において提供する組成物は、本明細書に記載されている担体タンパク質(例えば、EPA)に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖の任意のバイオコンジュゲートを含みうる。
【0086】
幾つかの実施形態においては、組成物は免疫原性組成物である。本明細書中で用いる「免疫原性組成物」は、組成物が投与される宿主または対象において免疫応答を誘導しうる組成物を意味する。免疫原性組成物は、薬学的に許容される担体を更に含みうる。幾つかの実施形態においては、組成物は、薬学的に許容される担体を更に含む医薬組成物である。本明細書中で用いる「薬学的に許容される担体」は、組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを意味し、これらは無毒性であり、有効成分の有効性を妨げるものであるべきではない。例えば、生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も、特に注射溶液用の液体担体として使用されうる。適切な賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。適切な薬学的に許容される担体の他の例はE.W. Martin, “Remington's Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
【0087】
1つの実施形態においては、本発明の組成物はトリス緩衝生理食塩水(TBS)pH7.4(例えば、トリス、NaClおよびKClを、例えばそれぞれ25mM、137mMおよび2.7mMで含有するもの)中に本発明のバイオコンジュゲートを含む。他の実施形態においては、本発明の組成物は約7.0のpHの約10mMのKH2PO4/Na2HPO4バッファー、約5%(w/v)のソルビトール、約10mMのメチオニンおよび約0.02%(w/v)のポリソルベート80中に本発明のバイオコンジュゲートを含む。他の実施形態においては、本発明の組成物は、約7.0のpHの約10mMのKH2PO4/Na2HPO4バッファー、約8%(w/v)のスクロース、約1mMのEDTAおよび約0.02%(w/v)のポリソルベート80中に本発明のバイオコンジュゲートを含む(例えば、EPA担体タンパク質に共有結合している大腸菌O抗原のバイオコンジュゲートのための適切なバッファーに関してはWO 2018/077853を参照されたい)。
【0088】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている組成物は1価製剤であり、例えば、単離された形態で、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部として(例えば、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖)、1つの大腸菌O抗原多糖を含む。本発明はまた、多価組成物、例えば2価、3価、4価などの組成物である組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)も提供する。例えば、多価組成物は、大腸菌O抗原、複合糖質またはそれらのバイオコンジュゲートのような2以上の抗原を含む。特定の実施形態においては、本発明において提供する多価組成物は大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートよび少なくとも1つの追加的な抗原を含む。
【0089】
1つの実施形態においては、組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)は、本明細書に記載されている担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む1価組成物である。
【0090】
もう1つの実施形態においては、組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)は、本明細書に記載されている担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖および少なくとも1つの追加的な抗原を含む多価組成物である。
【0091】
幾つかの実施形態においては、追加的な抗原は抗原糖または多糖、より好ましくは大腸菌O抗原多糖、例えばO1、O2、O6、O8、O15、O16、O18、O25およびO75血清型ならびにそれらの亜血清型の1以上の大腸菌O抗原である。幾つかの実施形態においては、追加的な大腸菌O抗原多糖のそれぞれは複合糖質であり、このことは、大腸菌O抗原多糖が別の化学種、例えばタンパク質、ペプチド、脂質など、最も好ましくは担体タンパク質に、例えば化学的または酵素的方法によって共有結合していることを意味する。好ましい実施形態においては、追加的な大腸菌O抗原多糖のそれぞれは、宿主細胞機構によって酵素的にグリコシド結合を介して、例えば担体タンパク質にO抗原多糖が共有結合しているバイオコンジュゲートである。特定の実施形態において本発明で提供される組成物は、1~20個の追加的な複合糖質、より好ましくは大腸菌O抗原多糖のバイオコンジュゲート、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の追加的な複合糖質、または好ましくは、大腸菌O抗原多糖のバイオコンジュゲートを含みうる。本発明において提供する組成物中にはペプチド、タンパク質または脂質抗原などのような他の抗原が含まれうる。
【0092】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)は、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートと、大腸菌O1A抗原多糖、大腸菌O2抗原多糖、大腸菌O6A抗原多糖、大腸菌O8抗原多糖、大腸菌O15抗原多糖、大腸菌O16抗原多糖、大腸菌O18A抗原多糖、大腸菌O25B抗原多糖および大腸菌O75抗原多糖からなる群から選択される少なくとも1つの追加的な抗原多糖とを含む。好ましくは、追加的なO抗原多糖のそれぞれは担体タンパク質に共有結合しており、より好ましくは、バイオコンジュゲートである。
【0093】
1つの実施形態においては、O1A抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O1A抗原多糖は、表1に示されている式(O1A)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O1A抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0094】
1つの実施形態においては、O2抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O2抗原多糖は、表1に示されている式(O2)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O2抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0095】
1つの実施形態においては、O6A抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O6A抗原多糖は、表1に示されている式(O6A)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O6A抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0096】
1つの実施形態においては、O8抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O8抗原多糖は、表1に示されている式(O8)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O8抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0097】
1つの実施形態においては、O15抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O15抗原多糖は、表1に示されている式(O15)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O15抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0098】
1つの実施形態においては、O16抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O16抗原多糖は、表1に示されている式(O16)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O16抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0099】
1つの実施形態においては、O18A抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O18A抗原多糖は、表1に示されている式(O18A)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O18A抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0100】
1つの実施形態においては、O25B抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O25B抗原多糖は、表1に示されている式(O25B)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O25B抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0101】
1つの実施形態においては、O75抗原多糖(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)が、本発明で提供する組成物において(例えば、グルコシル化O4抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートと組合せて)使用される。特定の実施形態においては、O75抗原多糖は、表1に示されている式(O75)の構造を含み、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O75抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0102】
もう1つの実施形態においては、組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)は少なくとも大腸菌O1A、O2、グルコシル化O4、O6AおよびO25B抗原多糖、好ましくは、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合しているO1A、O2、グルコシル化O4、O6AおよびO25B抗原多糖のバイオコンジュゲート(すなわち、5価組成物)を含む。
【0103】
もう1つの実施形態においては、組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)は少なくとも大腸菌O1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O25BおよびO75抗原多糖、好ましくは、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合しているO1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O25BおよびO75抗原多糖のバイオコンジュゲート(すなわち、9価組成物)を含む。
【0104】
もう1つの実施形態においては、組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)は少なくとも大腸菌O1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75抗原多糖、好ましくは、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合しているO1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75抗原多糖のバイオコンジュゲート(すなわち、10価組成物)を含む。
【0105】
本発明においては、他の大腸菌血清型由来の追加的なO抗原(例えば、単離された形態、または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートの一部)を所望により更に含んでいてもよい組成物も想定される。
【0106】
幾つかの実施形態においては、追加的な大腸菌O1A、O2、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25Bおよび/またはO75抗原多糖のそれぞれは担体タンパク質に共有結合している。O抗原多糖は化学的または他の合成方法により担体タンパク質に結合可能であり、あるいは、O抗原多糖はバイオコンジュゲートの一部であることが可能であり、好ましくはバイオコンジュゲートの一部である。本開示を考慮して当業者に公知である任意の担体タンパク質が使用されうる。適切な担体タンパク質には、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDが含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、担体タンパク質はEPAである。
【0107】
幾つかの実施形態においては、追加的な大腸菌O1A、O2、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25Bおよび/またはO75抗原多糖のそれぞれは、特にバイオコンジュゲートの一部である場合には、担体タンパク質におけるアスパラギン(Asn)残基に共有結合しており、Asn残基は、グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)(ここで、XはPro以外の任意のアミノ酸でありうる)(配列番号1)を含むグリコシル化部位に存在し、好ましくは、Asn残基は、グリコシル化コンセンサス配列Asp(Glu)-X-Asn-Z-Ser(Thr)(ここで、XおよびZは、独立して、Pro以外の任意のアミノ酸から選択される)(配列番号2)を含むグリコシル化部位に存在する。担体タンパク質は1~10個のグリコシル化部位、好ましくは2~4個のグリコシル化部位、最も好ましくは4個のグリコシル化部位を含むことが可能であり、それらのそれぞれはグリコシル化コンセンサス配列を含む。特定の実施形態においては、担体タンパク質はEPA-4担体タンパク質、例えば、配列番号3のアミノ酸配列を含むEPA-4担体タンパク質である。
【0108】
特定の実施形態においては、本発明は、(i)配列番号3を含むピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)無毒化外毒素A担体タンパク質(EPA-4担体タンパク質)に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートであって、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖が式(O4-Glc+)の構造を含む、バイオコンジュゲート、(ii)大腸菌O1A抗原多糖が式(O1A)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O1A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iii)大腸菌O2抗原多糖が式(O2)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O2抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iv)大腸菌O6A抗原多糖が式(O6A)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O6A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(v)大腸菌O8抗原多糖が式(O8)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O8抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vi)大腸菌O15抗原多糖が式(O15)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O15抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vii)大腸菌O16抗原多糖が式(O16)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O16抗原多糖のバイオコンジュゲート、(viii)大腸菌O25B抗原多糖が式(O25B)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲート、(ix)大腸菌O75抗原多糖が式(O75)の構造を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O75抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)を提供し、該式のそれぞれは表1に示されており、該式のそれぞれに関して、独立して、nは1~100、例えば1~50、好ましくは3~50、例えば5~40の整数である。
【0109】
特定の実施形態においては、該組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)は更に、(x)大腸菌O18A抗原多糖が、表1に示されている式(O18A)の構造(この構造におけるnは1~100、例えば1~50、好ましくは3~50、例えば5~40の整数である)を含む、EPA-4担体タンパク質に共有結合している大腸菌O18A抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む。
【0110】
幾つかの実施形態においては、本発明において提供する組成物は大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートと、少なくとも大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートとを含み、大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートは、組成物中に存在するその他のいずれのバイオコンジュゲートの濃度よりも約1.5~6倍、例えば約2~4倍高い濃度、例えば1.5、2、3、4、5または6倍高い濃度で組成物中に存在する。
【0111】
特定の実施形態においては、組成物は大腸菌O1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O25BおよびO75抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、O1A:O2:グルコシル化O4:O6A:O8:O15:O16:O25B:O75のバイオコンジュゲートは1:1:1:1:1:1:1:2:1、または2:1:1:2:1:1:1:4:1の比(O抗原多糖の重量に基づく)で存在する。
【0112】
特定の実施形態においては、組成物は大腸菌O1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、O1A:O2:グルコシル化O4:O6A:O8:O15:O16:O18A:O25B:O75のバイオコンジュゲートは1:1:1:1:1:1:1:1:2:1、または2:1:1:2:1:1:1:1:4:1の比(O抗原多糖の重量に基づく)で存在する。
【0113】
幾つかの実施形態においては、本発明において提供する組成物は大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートと、少なくとも大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートとを含み、大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートは、2~50μg/ml、好ましくは8~40μg/ml、より好ましくは16~32μg/ml、例えば16、18、20、22、24、26、28、30または32μg/mLの濃度で組成物中に存在する。そのような実施形態においては、大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートの濃度は、組成物中に存在するその他のいずれのバイオコンジュゲートの濃度よりも、好ましくは約1.5~6倍、例えば約2~4倍、例えば1.5、2、3、4、5または6倍高い。
【0114】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている組成物(例えば、医薬および/または免疫原性組成物)はアジュバントを含み、またはアジュバントと組合せて投与される。本明細書に記載されている組成物との組合せ投与のためのアジュバントは該組成物の投与の前(例えば、72時間、48時間、24時間、12時間、6時間、2時間、1時間、10分以内)、それと同時、またはその後(例えば、72時間、48時間、24時間、12時間、6時間、2時間、1時間、10分以内)に投与されうる。本明細書中で用いる「アジュバント」なる語は、本明細書に記載されている組成物と共に又はその一部として投与された場合にはバイオコンジュゲートにおける大腸菌O抗原多糖に対する免疫応答を増強、増大および/または強化するが、アジュバント化合物が単独で投与された場合にはバイオコンジュゲートにおける大腸菌O抗原多糖に対する免疫応答を生成しない化合物を意味する。幾つかの実施形態においては、アジュバントはそのバイオコンジュゲートにおける大腸菌O抗原多糖に対する免疫応答を生成し、アレルギーまたは他の有害な反応を生成しない。アジュバントは、例えばリンパ球リクルートメント、Bおよび/またはT細胞の刺激ならびにマクロファージの刺激を含む幾つかのメカニズムにより免疫応答を増強しうる。
【0115】
適切なアジュバントの例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび酸化アルミニウム、例えば、ミョウバンまたはナノミョウバン製剤を含むナノ粒子)、リン酸カルシウム、モノホスホリル脂質A(MPL)または3-デ-O-アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL)(例えば、英国特許GB2220211、EP0971739、EP1194166、US6491919を参照されたい)、AS01、AS02、AS03およびAS04(全てGlaxoSmithKline;例えば、AS04に関しては、EP1126876、US7357936、AS02に関しては、EP0671948、EP0761231、US5750110を参照されたい)、MF59(Novartis)、イミダゾピリジン化合物(WO2007/109812を参照されたい)、イミダゾキノキサリン化合物(WO2007/109813を参照されたい)、デルタ-イヌリン、STING活性化合成環状ジヌクレオチド(例えば、US20150056224)、レシチンとカルボマーホモポリマーとの組合せ(例えば、US6676958)、ならびにサポニン、例えばQuilAおよびQS21(例えば、Zhu DおよびW Tuo, 2016, Nat Prod Chem Res 3:e113(doi:10.4172/2329-6836.1000e113)を参照されたい)、Matrix M、Iscoms、Iscomatrixなどであって、所望によりQS7と組合されうるもの(Kensilら, in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell & Newman編, Plenum Press, NY, 1995);米国特許第5,057,540号を参照されたい)。幾つかの実施形態においては、アジュバントはフロイントアジュバント(完全または不完全)である。他のアジュバントとして、水中油型エマルション(例えば、スクアレンまたはラッカセイ油)が挙げられ、これは、所望により、免疫刺激物質、例えばモノホスホリルリピドAと組合されうる(Stouteら, 1997, N. Engl. J. Med. 336, 86-91)。もう1つのアジュバントとして、CpGが挙げられる(Bioworld Today, Nov. 15, 1998)。アジュバントの更に他の例としては、AS01EおよびAS01BにおけるようなMPLおよびQS21のような免疫刺激物質を含有するリポソームが挙げられる(例えば、US2011/0206758)。アジュバントの他の例としては、CpG(Bioworld Today, Nov. 15, 1998)およびイミダゾキノリン(例えば、イミキモド(imiquimod)およびR848)が挙げられる。例えば、Reed G,ら, 2013, Nature Med, 19: 1597-1608を参照されたい。特定の実施形態においては、アジュバントはトール様受容体4(TLR4)アゴニストを含有する。TLR4アゴニストは当技術分野でよく知られており、例えば、Ireton GCおよびSG Reed, 2013, Expert Rev Vaccines 12: 793-807を参照されたい。特定の実施形態においては、アジュバントは、リピドAまたはその類似体もしくは誘導体、例えば、MPL、3D-MPL、RC529(例えば、EP1385541)、PET-リピドA、GLA(グリコピラノシル脂質アジュバント、合成二糖糖脂質;例えば、US20100310602、US8722064)、SLA(例えば、Carter Dら, 2016, Clin Transl Immunology 5: e108 (doi: 10.1038/cti.2016.63);これは、ヒトワクチン用にTLR4リガンドを最適化するための構造機能アプローチを記載している)、PHAD(リン酸化ヘキサアシル二糖)、3D-PHAD(構造はGLAと同じ)、3D-(6-アシル)-PHAD(3D(6A)-PHAD)(PHAD、3D-PHADおよび3D(6A)PHADは合成リピドA変異体である;例えば、これらの分子の構造も記載しているavantilipids.com/divisions/adjuvantsを参照されたい)、E6020(CAS番号287180-63-6)、ONO4007、OM-174などを含むTLR4アゴニストを含む。
【0116】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている組成物はアジュバントを含まず、アジュバントと組合せて投与されない。
【0117】
特定の実施形態においては、本明細書に記載される組成物は、対象への意図される投与経路に適するように製剤化(処方)される。例えば、本明細書に記載されている組成物(例えば、医薬および/または免疫原性)は皮下、非経口、経口、舌下、頬側、皮内、経皮、結腸直腸、腹腔内、直腸投与、静脈内、鼻腔内、気管内、筋肉内、局所、経皮または皮内投与用に製剤化されうる。特定の実施形態においては、本発明において提供する組成物(例えば、医薬および/または免疫原性)は筋肉内注射用に製剤化される。
【0118】
使用方法
本発明において提供するバイオコンジュゲートおよび組成物は、対象において大腸菌グルコシル化O4抗原に対する抗体を誘導するために、および大腸菌、特に腸外病原性大腸菌(ExPEC)に対して対象にワクチン接種するために使用されうる。本明細書中で用いる「対象」は、本発明において提供するバイオコンジュゲートまたは組成物が投与される又は投与されている任意の動物、好ましくは哺乳動物を意味する。本明細書中で用いる「哺乳動物」なる語は任意の哺乳動物を含む。哺乳動物の例には、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、非ヒト霊長類(NHP)、例えばサルまたは類人猿、ヒトなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態においては、対象はヒトである。ヒト対象は任意の年齢でありうる。特定の実施形態においては、対象は約2月齢~約18歳、例えば1歳~18歳のヒトである。特定の実施形態においては、対象は少なくとも18歳のヒトである。特定の実施形態においては、対象は15~50歳、例えば18~45歳、例えば20~40歳のヒトである。特定の実施形態においては、対象はヒト男性である。特定の実施形態においては、対象はヒト女性である。特定の実施形態においては、対象は免疫無防備状態である。特定の実施形態においては、対象は少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳のヒトである。特定の実施形態においては、対象は100歳以下、95歳以下、90歳以下、85歳以下、80歳以下または75歳以下のヒトである。特定の実施形態においては、対象は少なくとも60歳かつ85歳以下のヒトである。特定の実施形態においては、対象は安定な健康状態のヒトである。特定の実施形態においては、対象は安定な健康状態の少なくとも60歳かつ85歳以下の成人である。特定の実施形態においては、対象は、尿路感染症(UTI、すなわち、尿道、膀胱、尿管および/または腎臓における細菌感染症)の病歴を有するヒト、すなわち、その人生において少なくとも1つのUTIエピソードを有するヒトである。特定の実施形態においては、対象は、過去20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1年において尿路感染症の病歴を有するヒトである。特定の実施形態においては、対象は、過去2年間にUTIの病歴を有するヒトである。特定の実施形態においては、対象は、再発性UTIの病歴を有するヒト対象、すなわち、6ヶ月間に少なくとも2つのUTIを有する、または1年間に少なくとも3つのUTIを有するヒト対象である。特定の実施形態においては、対象は、過去2年間に再発性UTIの病歴を有するヒト対象である。特定の実施形態においては、対象は安定な健康状態の60歳以上のヒトである。特定の実施形態においては、対象は、過去2年間にUTIの病歴を有する60歳以上のヒトである。特定の実施形態においては、対象は、過去2年間にUTIの病歴を有する少なくとも60歳かつ75歳未満のヒトである。特定の実施形態においては、対象は、過去2年間にUTIの病歴を有する75歳以上のヒト対象である。特定の実施形態においては、対象は、待機的(elective)泌尿生殖器および/または腹部処置または手術、例えば、経直腸的超音波ガイド下前立腺針生検(TRUS-PNB)を受ける予定の患者である。
【0119】
1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートのいずれか、またはタンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートを含む組成物を、単独で、または他の大腸菌O抗原多糖またはその複合糖質もしくはバイオコンジュゲートと更に組合せて、対象に投与することを含む、対象において大腸菌グルコシル化O4抗原に対する抗体を誘導する方法を提供する。
【0120】
特定の実施形態においては、大腸菌グルコシル化O4抗原に対して誘導、誘発または特定された抗体はオプソニン食作用活性を有する。特定の実施形態においては、誘導、誘発または特定された抗体は、大腸菌グルコシル化O4株および非グルコシル化O4株の両方のオプソニン食作用性死滅をもたらしうる交差反応性抗体である。
【0121】
特定の実施形態においては、大腸菌グルコシル化O4抗原に対して誘導、誘発または特定された抗体は非修飾O4抗原多糖およびグルコース修飾O4抗原多糖を特異的に認識する。特定の実施形態においては、大腸菌グルコシル化O4抗原に対して誘導、誘発または特定された抗体はO4血清型の大腸菌を特異的に認識する。特定の実施形態においては、大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートにより誘導された抗体は、非グルコシル化O4抗原と比較してグルコシル化O4抗原に優先的に結合する。
【0122】
本明細書に記載されているバイオコンジュゲートおよび組成物により誘導された抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、大腸菌O抗原多糖、例えばグルコシル化O4抗原多糖に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を含みうる。
【0123】
本発明において提供するバイオコンジュゲートまたは組成物を使用して誘導、誘発または特定された抗体は、治療の有効性および/または疾患の進行をモニターするために使用されうる。ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、電気化学発光(ECL)に基づくイムノアッセイ、「サンドイッチ」イムノアッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、免疫放射測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイおよび免疫電気泳動アッセイのような技術を用いる競合アッセイ系および非競合アッセイ系(これらに限定されるものではない)を含む当技術分野で公知の任意のイムノアッセイ系がこの目的に使用されうる。これらのアッセイの幾つか、例えばECLに基づくイムノアッセイは、多重(マルチプレックス)形態で実施可能であり、典型的には、多重アッセイ形態が好ましい。
【0124】
大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを使用して誘導、誘発または特定された抗体は、大腸菌O4株、特にグルコシル化O4株を、例えば複数の大腸菌株から検出するために、および/または大腸菌O4もしくはグルコシル化O4株による感染を診断するために使用されうる。
【0125】
もう1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートのいずれか、または担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートを含む組成物を、単独で、または他の大腸菌O抗原またはその複合糖質もしくはバイオコンジュゲートと更に組合せて、対象に投与することを含む、大腸菌(例えば、腸外病原性大腸菌、ExPEC)に対して対象にワクチン接種する方法を提供する。投与される組成物中に存在するO抗原または複合糖質もしくはバイオコンジュゲートに対応する大腸菌株に対して対象がワクチン接種される、と当業者は理解するであろう。例えば、O1A、O2、グルコシル化O4、O6AおよびO25B抗原多糖を含む組成物の投与は、大腸菌血清型O1A、O2、O4、O6AおよびO25Bに対して対象にワクチン接種するために行われうる。
【0126】
特定の実施形態においては、ワクチン接種は、侵襲性ExPEC疾患(IED)、例えば尿路性敗血症、細菌血症、敗血症などを予防するためのものである。特定の実施形態においては、ワクチン接種は、尿路感染症の発生または重症度を予防または低減するためのものである。特定の実施形態においては、IEDは、例えば、泌尿生殖器および/または腹部の処置または手術を受けている患者において院内感染しうる。特定の実施形態においては、IEDは、例えば、病院、通院外科診療所、末期腎疾患施設、長期療養施設などにおいて、例えば、中心線(central line)、カテーテルなどを介して、別の状態に関する健康管理を受けている患者における健康管理に関連したものでありうる。特定の実施形態においては、IEDは、例えば、医療上のリスクに最近さらされていない患者において、市中感染したものでありうる。
【0127】
もう1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートのいずれか、または担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートを含む組成物を、単独で、または他の大腸菌O抗原またはその複合糖質もしくはバイオコンジュゲートと更に組合せて、対象に投与することを含む、大腸菌(例えば、ExPEC)に対する免疫応答を対象において誘導する方法を提供する。1つの実施形態においては、対象は投与時に大腸菌(例えば、ExPEC)感染を有する。好ましい実施形態においては、対象は投与時に大腸菌(例えば、ExPEC)感染を有しない。
【0128】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている組成物およびバイオコンジュゲートは、抗体、好ましくはオプソニン食作用活性を有する抗体の産生を含む免疫応答を誘導するために対象に投与されうる。そのような抗体は、当業者に公知の技術(例えば、免疫アフィニティクロマトグラフィー、遠心分離、沈殿など)を用いて単離されうる。
【0129】
本明細書に記載されているバイオコンジュゲートおよび組成物が対象において免疫応答を生成する能力は、当業者に公知である又は本明細書に記載されている任意のアプローチを用いて評価されうる。幾つかの実施形態においては、対象において免疫応答を生成するバイオコンジュゲートの能力は、本明細書に記載されているバイオコンジュゲートで対象(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはサル)または対象群を免疫化すること、および対照(PBS)で追加的な対象(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはサル)または対象群を免疫化することにより評価されうる。ついで対象または対象群はExPECでチャレンジされることが可能であり、対象または対象群においてExPECが疾患(例えば、UTI、細菌血症または他の疾患)を引き起こす能力が決定されうる。対照で免疫化された対象または対象群はExPECでのチャレンジの後で疾患に罹患したが、本明細書に記載されているバイオコンジュゲートまたはその組成物で免疫化された対象または対象群はより軽度に疾患に罹患した又は疾患に罹患しなかった場合には、そのバイオコンジュゲートは対象において免疫応答を生成しうる、と当業者は認識するであろう。本明細書に記載されているバイオコンジュゲートまたはその組成物が、ExPECからのO抗原と交差反応する抗血清を誘導する能力は、例えば、ELISA(例えば、Van den Dobbelsteenら, 2016, Vaccine 34: 4152-4160を参照されたい)のようなイムノアッセイ、またはECLに基づくイムノアッセイにより試験されうる。
【0130】
例えば、本明細書に記載されているバイオコンジュゲートが対象において免疫応答を生成する能力は、血清殺菌力アッセイ(SBA)またはオプソニン食作用性殺傷アッセイ(OPKアッセイまたはOPKA)を用いて評価可能であり、これらは、複合糖質に基づくワクチンの承認を得るために用いられている確立された許容されている方法に相当する。そのようなアッセイは当技術分野でよく知られており、簡潔に説明すると、関心標的(例えば、O抗原多糖、例えば大腸菌グルコシル化O4抗原多糖)に対する抗体を、そのような抗体を誘導する化合物を対象(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはサル)に投与することにより産生させ、単離する工程を含む。ついで、例えば、問題の細菌(例えば、関連血清型の大腸菌)を該抗体および補体ならびにアッセイによっては好中球の存在下で培養し、例えば標準的な微生物学的アプローチを用いて、該抗体が該細菌の殺滅および/または中和をもたらす能力をアッセイすることにより、該抗体の殺細菌能を評価することが可能である。大腸菌バイオコンジュゲートワクチンのOPKアッセイの例に関しては、Abbanatら, 2017, Clin. Vaccine Immunol. 24: e00123-17を参照されたい。OPKアッセイは一重(モノプレックス)または多重形態で実施可能であり、そのなかで、典型的には、多重形態(例えば、複数の血清型を同時に試験するもの)が好ましい。多重OPKアッセイは本明細書中で「MOPA」と称されることもある。
【0131】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている方法は、本明細書に記載されている担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲート、または担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原のバイオコンジュゲートを含む組成物の有効量を、単独で、または他の大腸菌O抗原またはその複合糖質もしくはバイオコンジュゲートと更に組合せて投与することを含む。1つの実施形態においては、「有効量」は、大腸菌(例えば、ExPEC)に対して対象にワクチン接種する量である。もう1つの実施形態においては、「有効量」は、抗体、好ましくはオプソニン食作用活性を有する抗体の産生を含む免疫応答のような、対象における大腸菌(例えば、ExPEC)に対する免疫応答を誘導する量である。
【0132】
特定の実施形態においては、本発明において提供する組成物が、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートと、少なくとも大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートとを含む場合、大腸菌O25B抗原多糖の有効量は、組成物中に存在するその他のいずれのバイオコンジュゲートの濃度よりも約1.5~6倍、例えば約2~4倍、例えば1.5、2、3、4、5または6倍高い。そのような実施形態においては、大腸菌O25B抗原多糖の有効量は、例えば約5~18μg/投与、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18μg/投与である。
【0133】
特定の実施形態においては、本発明のバイオコンジュゲートまたは組成物は対象に1回投与される。特定の実施形態においては、本発明のバイオコンジュゲートまたは組成物は、例えば、初回免疫-追加免疫レジメンにおいて、対象に2回以上投与される。特定の実施形態においては、2回の投与の間の時間は少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年または少なくとも15年である。ヒトにおいては、所望の免疫応答は、典型的には、本発明のバイオコンジュゲートまたは組成物の単回投与により生成されうる。特定の実施形態においては、例えば10年後の反復投与が行われる。
【0134】
宿主細胞
本発明は、大腸菌O抗原およびそのような大腸菌O抗原を含むバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞、例えば原核宿主細胞を提供する。本発明において提供する宿主細胞は、好ましくは、大腸菌O抗原多糖および/またはそのバイオコンジュゲートを産生するために使用される宿主細胞機構(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ)をコードする核酸の1以上を含むように(例えば、遺伝子工学により)修飾される。
【0135】
本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖(例えば、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖)および本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖を含むバイオコンジュゲート(例えば、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート)を製造するためには、古細菌、原核宿主細胞および真核宿主細胞を含む当業者に公知の任意の宿主細胞が使用される。好ましい実施形態においては、宿主細胞は原核宿主細胞である。本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖および本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖を含むバイオコンジュゲートの製造における使用のための例示的な原核宿主細胞には、エシェリキア(Escherichia)属種、シゲラ(Shigella)属種、クレブシエラ(Klebsiella)属種、キサントモナス(Xhantomonas)属種、サルモネラ(Salmonella)属種、エルシニア(Yersinia)属種、ラクトコッカス(Lactococcus)属種、ラクトバシラス(Lactobacillus)属種、シュードモナス(Pseudomonas)属種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属種、ストレプトミセス(Streptomyces)属種、ストレプトコッカス(Streptococcus)属種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属種、バシラス(Bacillus)属種およびクロストリジウム(Clostridium)属種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖および本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖を含むバイオコンジュゲートを製造するために使用される宿主細胞は原核宿主細胞であり、好ましくは大腸菌である。
【0137】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖およびバイオコンジュゲートを製造するために使用される宿主細胞は、異種核酸、例えば、所望のO抗原血清型のrfb遺伝子クラスターを含む異種核酸、1以上の担体タンパク質および/またはグリコシルトランスフェラーゼをコードする異種核酸を含むように操作される。特定の実施形態においては、異種rfb遺伝子、および/またはグリコシル化経路(例えば、原核生物および/または真核生物のグリコシル化経路)に関与するタンパク質をコードする異種核酸が、本明細書に記載されている宿主細胞内に導入されうる。そのような核酸は、オリゴ糖トランスフェラーゼおよび/またはグリコシルトランスフェラーゼ(これらに限定されるものではない)を含むタンパク質をコードしうる。
【0138】
例えば大腸菌O抗原多糖およびそのバイオコンジュゲートを製造するために使用されうる組換え宿主細胞を作製するのに有用なグリコシルトランスフェラーゼをコードする種々の遺伝子および遺伝子クラスターの配列が本明細書に記載されている。遺伝暗号の縮重ゆえに、特定のアミノ酸配列を有するタンパク質は複数の異なる核酸によりコードされうる、と当業者は理解するであろう。したがって、本発明において提供する核酸は、該核酸によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼすことなく、その配列が、本発明で提供する配列と異なるように改変されうる、と当業者は理解するであろう。
【0139】
本発明は、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖、O1A抗原多糖、O2抗原多糖、O6A抗原多糖、O8抗原多糖、O15抗原多糖、O16抗原多糖、O18A抗原多糖、O25B抗原多糖またはO75抗原多糖のバイオコンジュゲートを製造するための宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)を提供する。本発明において提供する宿主細胞は、大腸菌O抗原多糖を産生しうる酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ)をコードする核酸を含む。本発明において提供する宿主細胞は、関心のあるO抗原を産生しうる核酸を天然に発現し、または宿主細胞は、そのような核酸を発現するようになされうる。特定の実施形態においては、核酸は宿主細胞に対して異種であり、当技術分野で公知の遺伝的アプローチを用いて宿主細胞内に導入される。例えば、核酸は遺伝的操作により宿主細胞内に導入されうる(例えば、遺伝子クラスターは1以上のプラスミド上で発現可能であり、または宿主細胞ゲノム内に組み込まれうる(例えば、国際特許出願公開WO 2014/037585、WO 2014/057109、WO 2015/052344を参照されたい))。
【0140】
1つの実施形態においては、本発明は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)を提供する。そのような宿主細胞は、好ましくは前駆体細胞を操作することにより、gtrS遺伝子をコードする核酸配列を含み、これは、本発明者らの知る限りにおいて、大腸菌O4抗原へ、特にα-1,3-グリコシド結合によりL-Rhaへグルコースを転移させうる多糖分岐酵素(すなわち、大腸菌O4抗原多糖に特異的なグルコシルトランスフェラーゼ)をコードするものとして本発明において初めて特定された。そのような分枝酵素のアミノ酸配列の一例は配列番号4に示されている。他の例は、それと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。大腸菌O4抗原多糖に特異的なgtrS遺伝子をコードする核酸配列の典型例には、配列番号5、またはそれに対する縮重核酸配列であって配列番号4をコードするもの、または配列番号4と少なくとも80%の同一性を有する機能的O4特異的GtrS酵素をコードする核酸配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
特定の実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、配列番号4に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、95%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。遺伝暗号の重複を考慮して、当業者は、例えば、所望によりコドン最適化配列を使用して、グルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸の変異体を作製しうる。
【0142】
特定の実施形態においては、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼ(GtrS)をコードするヌクレオチド配列を含む、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は、配列番号7に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバクトプレノール結合グルコーストランスロカーゼ(GtrA)をコードするヌクレオチド配列、および配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバクトプレノールグルコシルトランスフェラーゼ(GtrB)をコードするヌクレオチド配列を更に含む。特定の実施形態においては、該ヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号7および8に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、そしてそれぞれバクトプレノール結合グルコーストランスロカーゼ(配列番号7)活性およびバクトプレノールグルコシルトランスフェラーゼ(配列番号8)活性を有するGtrAタンパク質およびGtrBタンパク質をコードしている。遺伝暗号の重複を考慮して、当業者は、例えば、所望によりコドン最適化配列を使用して、バクトプレノール結合グルコーストランスロカーゼおよびバクトプレノールグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸の変異体を作製しうる。
【0143】
本発明において提供する担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は大腸菌O4抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を更に含む。大腸菌O4抗原多糖の産生に有用なrfb遺伝子クラスターの一例は配列番号9として本明細書中に示されている。もう1つの例はGenBank遺伝子座AY568960において見出されうる。この配列によりコードされるのと同じ酵素をコードする縮重核酸配列、または少なくとも80%同一である、好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である酵素をコードする配列も使用されうる。
【0144】
特定の実施形態においては、本発明は、グルコシル化O4抗原多糖を産生する宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞、好ましくは組換え原核宿主細胞、好ましくは組換え大腸菌宿主細胞)を提供し、該宿主細胞は、gtrS、大腸菌O4抗原多糖のrfb遺伝子クラスター、および担体タンパク質をコードする核酸を含む。そのような宿主細胞は、gtrS遺伝子、rfb遺伝子クラスター、および/または担体タンパク質をコードする核酸を含む1以上のプラスミドを含むように、あるいは、宿主細胞ゲノム内に組み込まれたgtrS遺伝子、rfb遺伝子クラスター、および/または担体タンパク質をコードする核酸のような関連遺伝子の一部または全部を含むように、組換えアプローチを用いて操作されうる。特定の実施形態においては、該遺伝子または遺伝子クラスターは、相同組換えを用いて宿主細胞のゲノム内に組み込まれている。宿主細胞のゲノム内への遺伝子の組み込みの利点は抗生物質選択の非存在下の安定性である。
【0145】
もう1つの特定の実施形態においては、本発明は、グルコシル化O4抗原多糖を産生する宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞、好ましくは組換え原核宿主細胞)を提供し、該宿主細胞は、GtrS(グルコシルトランスフェラーゼ)、およびO4 rfbクラスターによりコードされる酵素を含む。特定の実施形態においては、前記酵素の幾つかまたは全ては宿主細胞に対して異種である。
【0146】
他の特定の実施形態においては、本発明は、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖、好ましくは、大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞、好ましくは組換え原核宿主細胞)を提供し、該宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列および/または担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列を更に含む。1つの特定の実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは宿主細胞に対して異種である。もう1つの特定の実施形態においては、担体タンパク質は宿主細胞に対して異種である。好ましくは、宿主細胞は、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼをコードする異種ヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態においては、O4クラスターのrfb遺伝子は宿主細胞に対して異種である。好ましくは、分岐グルコース側鎖をO4抗原に導入しうる酵素をコードする配列、すなわち、gtrS遺伝子(配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼをコードする)は宿主細胞に対して異種である。核酸が宿主細胞に対して異種と言えるのは、同じ配列が該宿主細胞内に天然で存在しない場合である。異種核酸は、例えば、遺伝子工学により、例えば、形質転換(例えば、化学形質転換またはエレクトロポレーション)および/または組換えにより、親細胞に導入されうる。特定の実施形態においては、所望のrfb遺伝子座、gtrSコード配列、担体タンパク質コード配列および/またはグリコシルトランスフェラーゼコード配列のような異種核酸は、宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞、好ましくは大腸菌宿主細胞のゲノム内に組み込まれる。好ましい実施形態においては、内因性rfb遺伝子座およびgtrSコード配列(適用可能な場合)は不活性化されており、好ましくは、その以前の状態と比較して組換え宿主細胞のゲノムから欠失しており、好ましくは、これらは所望の異種rfb遺伝子座により置換されており、適用可能な場合には、それぞれ、所望のgtrSコード配列により置換されている。特定の実施形態においては、宿主細胞は大腸菌のK-12(非限定的な例としては、大腸菌株W3110はK-12株である)、または大腸菌のB株(非限定的な例としては、大腸菌株BL21はB株である)、または一次野生型分離菌との対照における任意の他の十分に特徴づけられた大腸菌株、例えば実験室株または生産株である。好ましい実施形態においては、宿主細胞は、O4抗原またはグルコシル化O4抗原を発現しない大腸菌から誘導され、これは、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼをコードするgtrS遺伝子およびO4 rfb遺伝子座をそのような大腸菌内に導入することにより行われる。大腸菌K-12または大腸菌Bのような十分に特徴づけられた株を宿主細胞の前駆体として使用する利点は、異なるO抗原バイオコンジュゲートに同様の生産プロセスを使用しうることである。なぜなら、生産株の特徴が十分に定められているからである。異なるO抗原のバイオコンジュゲートが異なって挙動し、発現プロセスが生産株ごとに最適化可能であるとしても、O抗原バイオコンジュゲートの少なくとも基本的な製造方法は、そのような十分に特徴づけられた前駆体株を使用すれば、野生型分離菌のような未知株が宿主株の製造のための前駆体として使用される場合より詳細に予想可能である。このようにして、例えばWO2015/124769およびWO2017/035181に記載されているO1A、O2、O6AおよびO25Bバイオコンジュゲートのような以前に記載されている大腸菌O抗原バイオコンジュゲートの製造の経験が、他の大腸菌O抗原バイオコンジュゲートの製造を設計するための基礎として用いられうる。gtrSとは異なり、gtrA遺伝子およびgtrB遺伝子は血清型特異的ではなく、特定の実施形態においては、これらは宿主細胞に対して同種である(例えば、大腸菌K12株W3110は、配列番号4のグルコシルトランスフェラーゼまたはそれに対して少なくとも80%同一であるグルコシルトランスフェラーゼをコードし内因性gtrS遺伝子に取って代わるO4血清型特異的組換え導入gtrS遺伝子と共に機能しうるgtrAおよびgtrB遺伝子を含む)。他の実施形態においては、gtrA遺伝子およびgtrB遺伝子(それぞれ配列番号7および8に対して少なくとも約80%同一であり、それぞれバクトプレノール結合グルコーストランスロカーゼ活性およびバクトプレノールグルコシルトランスフェラーゼ活性を有するGtrAおよびGtrBタンパク質をコードする)の一方または両方はまた、例えば宿主細胞が内因性gtrAおよび/またはgtrB遺伝子を有しない場合、宿主細胞に組換え的に導入される。
【0147】
また、本発明は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O1A、O2、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BまたはO75抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)を提供する。そのような宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)はO抗原多糖に特異的なrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を含む。rfb遺伝子クラスターは野生型大腸菌株から単離可能であり、目的の大腸菌O抗原またはそのバイオコンジュゲートを産生する組換え宿主細胞を得るために、1つの宿主細胞内でオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、PglB)および担体タンパク質(例えば、EPA)をコードする核酸と組合されうる。例えば、そのような宿主細胞は、rfb遺伝子クラスター、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、PglB)および担体タンパク質(例えば、EPA)を含む1以上のプラスミドを含むように、WO 2014/037585、WO 2009/104074およびWO2009/089396に記載されているようなバイオコンジュゲート化技術を用いて操作されうる。好ましくは、宿主細胞は、そのゲノム内に組み込まれたrfb遺伝子クラスターを含む。オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、担体タンパク質およびgtrS遺伝子(適用可能な場合)をコードする核酸も、特定の実施形態においては、宿主細胞のゲノム内に組み込まれる。異種または同種のgtrA遺伝子およびgtrB遺伝子も、特定の実施形態においては、宿主細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0148】
O1A、O2、O6AおよびO25B抗原用のバイオコンジュゲートの製造はWO 2015/124769およびWO 2017/035181に詳細に記載されている。各大腸菌O抗原の例示的な遺伝子クラスター(rfb遺伝子座)はIguchi Aら, DNA Research, 2014, 1-7 (doi: 10.1093/dnares/dsu043)、およびDebRoy Cら, PLoS One. 2016, 11(1):e0147434 (doi: 10.1371/journal.pone.0147434; 訂正版: Plos One. 2016, 11(4):e0154551, doi: 10.1371/journal.pone.0154551)に記載されている。また、rfbクラスターの核酸配列およびそれにコードされるタンパク質のアミノ酸配列はGenBankのような公開データベースにおいて見出されうる。本明細書に開示されている血清型の多糖抗原を有するバイオコンジュゲートの生産株において使用されうるrfbクラスターの例示的な配列は配列番号9および11~19にも示されている。したがって、前記の所望のバイオコンジュゲートのそれぞれに関して、それぞれのrfbクラスターを宿主細胞内に導入して、オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよび担体タンパク質をコードする核酸を含有するだけでなく所望のO抗原の特異的rfbクラスターをも含有する宿主細胞を得ることが可能である。前記の理由により、好ましくは、宿主細胞は組換え宿主細胞であり、好ましくは、大腸菌実験室株または生産株、例えば大腸菌K12または大腸菌BL21などのような、比較的よく知られた特徴を有する株から誘導される。好ましくは、rfbクラスターは宿主細胞に対して異種であり、例えば、宿主細胞の前駆細胞内に導入され、好ましくは、そのゲノム内に組み込まれる。好ましくは、元のrfb遺伝子クラスターは、それが前駆細胞内に存在する場合には、目的のO抗原のバイオコンジュゲートの産生を可能にするために、宿主細胞において、目的のO抗原のrfb遺伝子クラスターにより置換されている。好ましくは、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは宿主細胞に対して異種であり、特定の実施形態においては、そのようなオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸は宿主細胞のゲノム内に組み込まれている。
【0149】
本発明において提供する任意の宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞、好ましくは組換え原核宿主細胞)は、タンパク質のN-グリコシル化において活性な追加的な酵素をコードする核酸を含み、例えば、本発明において提供する宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸、または他のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸を更に含みうる。
【0150】
本発明において提供する宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸を含む。オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、N-グリコシル化コンセンサスモチーフを含む新生ポリペプチド鎖のアスパラギン残基に脂質結合オリゴ糖を転移させる。オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸は宿主細胞に固有のものであり、または遺伝的アプローチを用いて、宿主細胞内に導入されうる。好ましい実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは宿主細胞に対して異種である。大腸菌はオリゴサッカリルトランスフェラーゼを天然では含まず、したがって、大腸菌をバイオコンジュゲートの製造のための宿主細胞として使用する場合には、例えば遺伝子工学による導入により、そのような宿主細胞内に異種オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含有させる。オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、本開示を考慮して当技術分野で公知である任意の供給源に由来しうる。
【0151】
特定の実施形態においては、N-グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するオリゴサッカリルトランスフェラーゼの代替物、例えばO-グリコシルトランスフェラーゼ、例えば非限定的な一例としてはPglLが、例えばWO 2016/82597に記載されているとおりに、担体タンパク質におけるそれ自身の異なるグリコシル化コンセンサス配列と共に使用されうる。したがって、O-グリコシルトランスフェラーゼのような他のグリコシルトランスフェラーゼも本発明においてオリゴサッカリルトランスフェラーゼとして使用されうる。
【0152】
特定の好ましい実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼはカンピロバクター(Campylobacter)由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである。例えば、1つの実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼはカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである(すなわち、pglB;例えば、Wackerら, 2002, Science 298:1790-1793を参照されたい;また、例えば、NCBI遺伝子ID: 3231775, UniProtアクセッション番号O86154も参照されたい)。もう1つの実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである(例えば、NCBI遺伝子ID7410986を参照されたい)。
【0153】
特定の実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、天然(野生型)タンパク質またはその任意の変異体を含むカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼであり、例えば、国際特許出願公開番号WO 2016/107818およびWO 2016/107819に記載されているものである。PglBは配列番号1および配列番号2のコンセンサス配列におけるアスパラギン残基に脂質結合オリゴ糖を転移させうる。特定の実施形態においては、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは配列番号6またはその変異体を含む。特定の実施形態においては、野生型PglBにおける1以上の内因性グリコシル化コンセンサス配列は、PglB自己グリコシル化を回避するために突然変異されており、例えば、配列番号6は突然変異N534Qを含む。本発明において提供する組換え宿主細胞での使用に適した変異体PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼの例には、N311V、K482R、D483H、A669V、Y77H、S80R、Q287PおよびK289Rからなる群から選択される少なくとも1つの突然変異を含む配列番号6のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼが含まれる。1つの特定の実施形態においては、変異体PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、突然変異N311Vを含む配列番号6を有する。もう1つの特定の実施形態においては、変異体PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、突然変異Y77HおよびN311Vを含む配列番号6を有する。もう1つの特定の実施形態においては、変異体PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、突然変異N311V、K482R、D483HおよびA669Vを含む配列番号6を有する。もう1つの特定の実施形態においては、変異体PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、突然変異Y77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vを含む配列番号6を有する。あるPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体が特定の血清型の大腸菌O抗原バイオコンジュゲートの産生において驚くほど改善された収量を与えることが本発明において見出され、本明細書に記載されている。ある与えられた大腸菌O抗原に関する改善された又は最適なPglB変異体は予測可能でなかった。したがって、特定の態様においては、本発明は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼとして特定のPglB変異体を使用する、特定の大腸菌O抗原のバイオコンジュゲートの製造方法をも提供する。配列番号6に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であり、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を尚も有し、好ましくは、本明細書中に組合せとして開示されている表示位置における特定のアミノ酸(例えば、77Y、80S、287Q、289K、311N、482K、483D、669A;または311V;または311V、482R、483H、669V;または77H、80R、287P、289R、311V;または77H、311Vなど)の1以上を有するPglBの更に他の変異体もバイオコンジュゲートの製造に使用されうる。
【0154】
特定の実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は、配列番号6、または好ましくは突然変異N311Vを含む配列番号6、またはより好ましくは突然変異Y77HおよびN311Vを含む配列番号6のアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を更に含む。
【0155】
他の特定の実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O1A、O6AまたはO15抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は、配列番号6、または好ましくは突然変異N311V、K482R、D483HおよびA669Vを含む配列番号6のアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を更に含む。
【0156】
特定の実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O16抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は、配列番号6、または好ましくは突然変異Y77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vを含む配列番号6のアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を更に含む。
【0157】
特定の実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O75抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は、配列番号6、または好ましくは突然変異N311Vを含む配列番号6のアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を更に含む。
【0158】
特定の実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O8、O18A、O25BまたはO2抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生しうる宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)は、配列番号6のアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を更に含み、配列番号6は77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない。
【0159】
幾つかの実施形態においては、本発明において提供する宿主細胞はいずれも、担体タンパク質(例えば、宿主細胞のグリコシル化機構により産生されたO抗原多糖がバイオコンジュゲートの形成のために結合しうるタンパク質)をコードする核酸を含む。宿主細胞は、本開示を考慮して当業者に公知である任意の担体タンパク質をコードする核酸を含むことが可能であり、これらには、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
好ましい実施形態においては、宿主細胞は、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)をコードする核酸を更に含む。好ましくは、EPA担体タンパク質は1~10個のグリコシル化部位、好ましくは2~4個のグリコシル化部位、最も好ましくは4個のグリコシル化部位、例えば、1~10個、好ましくは2~4個、より好ましくは4個のグリコシル化部位を含み、それらのそれぞれは、配列番号1のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む。特定の実施形態においては、宿主細胞は、配列番号3を含むEPA-4担体タンパク質をコードする核酸を更に含む。
【0161】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている宿主細胞によるバイオコンジュゲートの製造に使用される担体タンパク質は、「タグ」、すなわち、担体タンパク質の単離および/または特定を可能にするアミノ酸の配列を含む。例えば、担体タンパク質へのタグの付加は、そのタンパク質の精製、したがって、タグ付き担体タンパク質を含むコンジュゲートワクチンの精製において有用でありうる。本明細書中で用いられうる例示的なタグには、ヒスチジン(HIS)タグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグまたは6×Hisタグ)、FLAGタグおよびHAタグが含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態においては、本明細書中で用いられるタグは、それらがもはや必要とされなくなった後、例えばタンパク質が精製された後、例えば化学物質または酵素的手段により除去可能である。他の実施形態においては、担体タンパク質はタグを含まない。
【0162】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている担体タンパク質は、担体タンパク質を発現する宿主細胞のペリプラズム腔に担体タンパク質を標的化するシグナル配列を含む。特定の実施形態においては、シグナル配列は大腸菌DsbA、大腸菌外膜ポリンA(OmpA)、大腸菌マルトース結合タンパク質(MalE)、エルウィニア・カロトボランス(Erwinia carotovorans)ペクチン酸リアーゼ(PelB)、FlgI、NikAまたはバシラス(Bacillus)エンドキシラナーゼ(XynA)、熱不安定性大腸菌エンテロトキシンLTIIb、バシラス(Bacillus)エンドキシラナーゼXynAまたは大腸菌フラゲリン(FlgI)に由来する。1つの実施形態においては、シグナル配列は配列番号10を含む。シグナル配列はペリプラズムへのタンパク質の移行の後で切断除去されることが可能であり、したがって、バイオコンジュゲートの最終的な担体タンパク質にはもはや存在しないことが可能である。
【0163】
特定の実施形態においては、本明細書に記載される宿主細胞に、(例えば、組換え技術を用いて)追加的な修飾が導入されうる。例えば、おそらく競合または干渉する(例えば、宿主細胞内に組換え的に導入された、グリコシル化に関与する1以上の異種遺伝子と競合または干渉する)グリコシル化経路の一部を形成するタンパク質をコードする宿主細胞核酸(例えば、遺伝子)は、それを不活性化/機能不全状態にする様態で、宿主細胞バックグラウンド(ゲノム)において欠失または修飾される(すなわち、欠失/修飾された宿主細胞核酸は機能性タンパク質をコードしない)。特定の実施形態においては、本発明において提供する宿主細胞のゲノムから核酸が欠失される場合、それは、所望の配列、例えば、O抗原多糖またはそのバイオコンジュゲートの産生に有用な配列により置換される。
【0164】
宿主細胞において欠失されうる(そして、幾つかの場合には、他の所望の核酸配列で置換されうる)例示的な遺伝子または遺伝子クラスターには、糖脂質生合成に関与する宿主細胞の遺伝子または遺伝子クラスター、例えば、waaL(例えば、Feldmanら, 2005, PNAS USA 102:3016-3021)、脂質Aコア生合成クラスター(waa)、ガラクトースクラスター(gal)、アラビノースクラスター(ara)、コラン酸クラスター(wc)、莢膜多糖クラスター、ウンデカプレノール-p生合成遺伝子(例えば、uppS、uppP)、und-Pリサイクル遺伝子、ヌクレオチド活性化糖生合成に関与する代謝酵素、腸内細菌共通抗原クラスター(eca)、およびgtrABSクラスターまたはその領域のようなプロファージO抗原修飾クラスターが含まれる。特定の実施形態においては、本明細書に記載されている宿主細胞は、それが例えばグルコシル化O4抗原多糖のような所望のO抗原多糖以外のO抗原多糖を産生しないように修飾されている。
【0165】
特定の実施形態においては、waaL遺伝子は、本発明において提供する宿主細胞(例えば、組換え宿主細胞)のゲノムから欠失しており、または機能的に不活性化されている。「waaL」および「waaL遺伝子」なる語は、ペリプラズムに位置する活性部位を含有する膜結合酵素をコードするO抗原リガーゼ遺伝子を意味する。該コード化酵素はウンデカプレニルホスファート(UPP)結合O抗原をリピドAコアに転移させて、リポ多糖を形成する。内因性waaL遺伝子の欠失または破壊(例えば、ΔwaaL株)はリピドAへのO抗原の転移を破壊し、その代わりに担体タンパク質のような別の生体分子へのO抗原の転移を増強しうる。
【0166】
もう1つの特定の実施形態においては、waaL遺伝子、gtrA遺伝子、gtrB遺伝子、gtrS遺伝子およびrfb遺伝子クラスターの1以上は、本発明において提供する原核宿主細胞の元のゲノムから欠失しており、または機能的に不活性化されている。
【0167】
1つの実施形態においては、本明細書中で用いる宿主細胞は、グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する大腸菌であり、waaL遺伝子は宿主細胞のゲノムから欠失しており、または機能的に不活性化され、大腸菌O4抗原多糖に特異的なgtrS遺伝子が挿入されている。グルコシル化O4 O抗原のバイオコンジュゲートの生産株の特定の実施形態においては、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼをコードするgtrS遺伝子を親株のgtrS遺伝子の代わりに挿入して、その親株のgtrS遺伝子を、O4抗原のグルコシル化をもたらす遺伝子で置換する。そのような親株の一例は大腸菌K-12株W3110である。gtrA遺伝子およびgtrB遺伝子は親株と同種であることが可能であり、あるいは、これらの遺伝子の一方または両方は親株に対して異種であることが可能である。典型的には、gtrS遺伝子とは異なり、これらのgtrA遺伝子およびgtrB遺伝子はO抗原構造に特異的ではない。
【0168】
また、本発明は組換え宿主細胞の製造方法も提供する。本明細書に記載されている方法により製造された組換え宿主細胞は、大腸菌O抗原のバイオコンジュゲートを製造するために使用されうる。該方法は、1以上の組換え核酸分子を細胞内に導入して、組換え宿主細胞を製造することを含む。典型的には、組換え核酸分子は異種である。本開示を考慮して当技術分野で公知である任意の方法が、組換え核酸分子を宿主細胞内に導入するために使用されうる。組換え核酸は、当業者に公知の任意の方法、例えばエレクトロポレーション、化学的形質転換、熱ショック、自然形質転換、ファージ形質導入および接合を用いて、本明細書に記載されている宿主細胞内に導入されうる。特定の実施形態においては、組換え核酸は、プラスミドを使用して、本明細書に記載される宿主細胞内に導入される。例えば、異種核酸はプラスミド(例えば、発現ベクター)により宿主細胞において発現されうる。もう1つの特定の実施形態においては、異種核酸は、例えば国際特許出願公開WO 2014/037585、WO 2014/057190またはWO 2015/052344に記載されているゲノム内への挿入方法を使用して、本明細書に記載されている宿主細胞に導入される。
【0169】
1つの実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを製造するための組換え宿主細胞の製造方法は、1以上の組換え核酸分子を細胞、好ましくは大腸菌細胞内に導入して、組換え宿主細胞を製造するすることを含む。そのような実施形態においては、細胞内に導入される組換え核酸分子は、(i)大腸菌O4抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、(ii)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列であって、該グルコシルトランスフェラーゼが大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生することが可能である、ヌクレオチド配列、(iii)担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、ならびに(iv)大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を担体タンパク質に共有結合させてバイオコンジュゲートを生成させうるオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態においては、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は内因性gtrS遺伝子に取って代わる。内因性gtrSの欠失は、それがグルコシル化O4抗原多糖構造の生成を妨げないという利点を有する。特定の実施形態においては、大腸菌O4抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列は、組換え宿主細胞を製造するために使用される親株の内因性rfb遺伝子クラスターに取って代わる。細胞がgtrA遺伝子および/またはgtrB遺伝子をまだコードしていない場合には、それぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の同一性を有するトランスロカーゼ(gtrA)およびグリコシルトランスフェラーゼ(gtrB)をコードするヌクレオチド配列が細胞内に導入されうる。細胞がgtrA遺伝子およびgtrB遺伝子を既にコードしている場合(例えば、大腸菌K-12株W3110の場合)には、これらの遺伝子を導入または改変する必要はない。
【0170】
特定の実施形態においては、グルコシルトランスフェラーゼ(O4抗原にグルコース分岐を付加することに特異的なgtrS)は配列番号4を有する。
【0171】
特定の実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼはシー・ジェジュニ(C. jenuni)由来のPglBである。1つのそのような実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは配列番号6のアミノ酸配列を含む。もう1つのそのような実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、突然変異N311Vを含む配列番号6のアミノ酸配列を含む。もう1つのそのような実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、突然変異Y77HおよびN311Vを含む配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0172】
もう1つの特定の実施形態においては、担体タンパク質は、配列番号1、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む。もう1つの特定の実施形態においては、担体タンパク質はEPA、好ましくはEPA-4、例えば、配列番号3を含むEPA-4である。
【0173】
分子生物学において手段およびモデル生物の両方として常套的に使用される大腸菌株は、例えば、本発明による特定の実施形態における宿主細胞の親細胞として使用されうる。非限定的な例としては、大腸菌K12株(例えば、W1485、W2637、W3110、MG1655、DH1、DH5α、DH10など)、B株(例えば、BL-21、REL606など)、C株またはW株が含まれる。1つの特定の実施形態においては、宿主株は親株W3110に由来する。この株は、例えばエール大学の大腸菌遺伝ストックセンター(E. coli Genetic Stock Center at Yale)から入手可能である。大腸菌に関する更なる詳細は、例えばEcoliwiki.netを参照されたい。
【0174】
コンジュゲートおよびバイオコンジュゲートの製造方法
また、本明細書に記載されている大腸菌O抗原多糖の複合糖質の製造方法も提供する。バイオコンジュゲートを含む複合糖質は、例えば、製造のために本明細書に記載されている組換え宿主細胞を使用して、インビトロまたはインビボで製造されうる。
【0175】
幾つかの実施形態においては、複合糖質(グリココンジュゲート)は化学合成により製造可能であり、すなわち、宿主細胞の外部(インビトロ)で製造可能である。例えば、タンパク質担体および多糖/オリゴ糖における活性化反応性基の使用を含む当業者に公知の方法を用いて、本明細書に記載されている大腸菌O抗原を担体タンパク質にコンジュゲート化(結合)することが可能である。例えば、Pawlowskiら, 2000, Vaccine 18:1873-1885およびRobbinsら, 2009, Proc Natl Acad Sci USA 106:7974-7978(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。そのようなアプローチは、宿主細胞からの抗原性多糖/オリゴ糖の抽出、多糖/オリゴ糖の精製、多糖/オリゴ糖の化学的活性化および担体タンパク質への多糖/オリゴ糖のコンジュゲート化を含む。
【0176】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている宿主細胞は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O抗原多糖を含むバイオコンジュゲートを製造するために使用されうる。宿主細胞を使用するそのようなバイオコンジュゲートの製造方法は当技術分野で公知である。例えば、WO 2003/074687およびWO 2006/119987を参照されたい。そのような方法は、バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、本明細書に記載されている組換え宿主細胞のいずれかを培養することを含む。バイオコンジュゲートは、本開示を考慮して当技術分野で公知である任意の方法を使用して、組換え宿主細胞から単離、分離および/または精製されうる。例えば、バイオコンジュゲートは、タンパク質の精製のための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーおよびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術により精製されうる。例えば、WO 2009/104074に記載されている方法を参照されたい。更に、精製を促進させるために、バイオコンジュゲートは異種ポリペプチド配列に融合されうる。特定のバイオコンジュゲートを精製するために使用される実際の条件は、部分的には、バイオコンジュゲートの正味電荷、疎水性および/または親水性のような要因に左右され、当業者に明らかであろう。O1A、O2、O6AおよびO25Bのバイオコンジュゲートの製造、ならびにこれらを含むワクチン組成物は、例えば、WO 2015/124769およびWO 2017/035181に記載されている。
【0177】
本明細書に記載されている方法により、すなわち、本明細書に記載されている組換え宿主細胞を使用して製造されるバイオコンジュゲートも提供する。
【0178】
幾つかの実施形態においては、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法は、(i)(a)O抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、(b)配列番号1、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位、より好ましくは、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列をそれぞれが含む4個のグリコシル化部位を含む担体タンパク質、好ましくはEPAをコードするヌクレオチド配列、および(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、例えばPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその変異体をコードするヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞を準備することを含む。
【0179】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている組換え宿主細胞を使用して製造された大腸菌O抗原多糖は特定の多糖対タンパク質重量比(w/w)で担体タンパク質に共有結合している。担体タンパク質の重量に対する、それに共有結合しているO抗原多糖の重量のこの比は「グリカン/タンパク質比」または「多糖/タンパク質比」または「PS/タンパク質比」と称される。幾つかの実施形態においては、O抗原多糖は、約1:20~20:1、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは1:3~3:1の多糖対タンパク質(w/w)比で担体タンパク質に共有結合している。本明細書に記載されているバイオコンジュゲートに関する特定の非限定的な実施形態においては、グリカン/タンパク質比は約0.1~0.5、例えば0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45または0.5である。そのような実施形態においては、O抗原多糖:タンパク質の重量比は、個々のO抗原血清型に応じて、約1:10~1:2、例えば1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3または1:2である。特定の実施形態においては、グリカン/タンパク質比は約0.15~約0.45である。一般に、担体タンパク質に対するO抗原多糖のグリカン/タンパク質比が高いほうが好ましい。なぜなら、多量の担体タンパク質は場合によっては免疫学的干渉を引き起こしうるからである。また、より高いグリカン/タンパク質比は、担体タンパク質の量を比較的少なく保つ一方で、十分なO抗原多糖がバイオコンジュゲートの形態で投与されるのに役立ち、これは、例えば、少なくとも4個の異なるO抗原、少なくとも5個の異なるO抗原、少なくとも6個の異なるO抗原、少なくとも7個の異なるO抗原、少なくとも8個の異なるO抗原、少なくとも9個の異なるO抗原、少なくとも10個の異なるO抗原などからのバイオコンジュゲートを含む組成物のような、複数の血清型が組成物に含まれる多価組成物に特に有益である。
【0180】
本発明によるコンジュゲートのグリカン/タンパク質比は、タンパク質量およびグリカン量を決定することにより決定されうる。タンパク質量は280nm(A280)でのUV吸光度の測定により決定されうる。グリカン量は、反復単位内の糖(例えば、表1のO8の場合はMan、表1のその他のグリカンの場合はGlcNAcのもの)のパルスアンペロメトリック検出(IC-PAD)を使用するイオンクロマトグラフィーに基づいて決定可能であり、ついで、反復単位の構造情報を使用して、総グリカン量を計算することが可能である(例えば、O1Aの反復単位は845 Daのモル質量を有し、そのような反復単位の1モルは1モルのGlcNAcを含有しており、GlcNAcの量がIC-PADにより決定されている場合には総グリカン量の計算が可能である)。
【0181】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている細胞および方法による組換え宿主細胞を使用して製造された、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートは、L-Rh糖の2位に或る程度のアセチル化を有する。バイオコンジュゲートにおけるO25B抗原多糖のO-アセチル化の程度は、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%である。
【0182】
同様に、バイオコンジュゲートにおける大腸菌O16抗原多糖のO-アセチル化の程度は、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%である。
【0183】
特定の実施形態においては、O抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法は、製造されるO抗原多糖バイオコンジュゲートに応じて、特定のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素、特にPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその変異体をコードする核酸配列を含む組換え宿主細胞を準備することを含む。前記の特定のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素変異体は、宿主細胞により産生されるバイオコンジュゲートの収量に影響を及ぼしうる。典型的には、より高い収量が好ましい。なぜなら、収量は特定のバイオコンジュゲートの製造コストに影響を及ぼし、これは、幾つかの異なるバイオコンジュゲートを含む多価組成物にとって特に重要だからである。いくつかの実施形態において、方法はさらに、バイオコンジュゲートを組換え宿主細胞から単離することを含む。
【0184】
1つの特定の実施形態においては、O抗原がO1A、O6AまたはO15抗原多糖である場合、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、該アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものである。
【0185】
もう1つの特定の実施形態においては、O抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼはアミノ酸突然変異N311V、またはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものである。
【0186】
もう1つの特定の実施形態においては、O抗原がO16抗原多糖である場合、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、該アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものである。
【0187】
もう1つの特定の実施形態においては、O抗原がO75抗原多糖である場合、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、該アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものである。
【0188】
もう1つの特定の実施形態においては、O抗原がO8、O18A、O25BまたはO2抗原多糖である場合、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは配列番号6のアミノ酸配列を含み、配列番号6は77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない。その特定の実施形態においては、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0189】
幾つかの実施形態においては、担体タンパク質は、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択される。
【0190】
特定の実施形態においては、担体タンパク質はシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)である。好ましくは、EPA担体タンパク質は1~10個、好ましくは2~4個、好ましくは4個のグリコシル化部位を含む。好ましくは、各グリコシル化部位は、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む。特定の実施形態においては、宿主細胞は、配列番号3を含むEPA-4担体タンパク質をコードする核酸を含む。
【0191】
特定の実施形態においては、組換え宿主細胞は大腸菌細胞、例えば大腸菌K-12株、例えば株W3110である。
【0192】
また、本発明は、前記のO抗原/PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼのペアごとに、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素をコードする組換え宿主細胞を使用して製造されるO抗原多糖のバイオコンジュゲートを提供する。また、そのようなバイオコンジュゲートを含む組成物を提供する。特定の実施形態においては、組成物は少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも5個、より一層好ましくは少なくとも7個のそのようなバイオコンジュゲートを含む。
【0193】
幾つかの実施形態においては、前記のO抗原/PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼのペアごとに、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素をコードする組換え宿主細胞により製造されるO抗原多糖のバイオコンジュゲートは、好ましくは、本明細書に記載されている好ましい特性の1以上、例えばグリカン/タンパク質比および/または多グリコシル化担体タンパク質の量もしくは比を有する。
【0194】
実施形態
実施形態1は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法であり、該製造方法は、
(i)a.Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含む組換え宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え宿主細胞を培養することを含み、
ここで、
Ox抗原がO1A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO8抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO15抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO16抗原多糖である場合、PglByはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO18A抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO75抗原多糖である場合、PglByはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O18A)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0195】
実施形態2は、Ox抗原がO1A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態1記載の製造方法である。
【0196】
実施形態3は、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む、実施形態1記載の製造方法である。
【0197】
実施形態4は、組換え宿主細胞が、配列番号4のアミノ酸配列を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む、実施形態3記載の製造方法である。
【0198】
実施形態5は、Ox抗原がO6A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態1記載の製造方法である。
【0199】
実施形態6は、Ox抗原がO8抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない、実施形態1記載の製造方法である。
【0200】
実施形態7は、Ox抗原がO15抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態1記載の製造方法である。
【0201】
実施形態8は、Ox抗原がO16抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態1記載の製造方法である。
【0202】
実施形態9は、Ox抗原がO18A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない、実施形態1記載の製造方法である。
【0203】
実施形態10は、Ox抗原がO75抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態1記載の製造方法である。
【0204】
実施形態11は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法であり、該製造方法は、
(i)a.Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含む組換え宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え宿主細胞を培養することを含み、
ここで、PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vを含み、
ここで、Ox抗原はO1A抗原多糖、グルコシル化O4抗原多糖、O6A抗原多糖、O15抗原多糖、O16抗原多糖またはO75抗原多糖である;そして、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O15、O16およびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O15)、(O16)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0205】
実施形態12は、組換え宿主細胞からバイオコンジュゲートを単離することを更に含む、実施形態1~11のいずれか1項記載の製造方法である。
【0206】
実施形態13は、担体タンパク質が、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択される、実施形態1~12のいずれか1項記載の製造方法である。
【0207】
実施形態14は、担体タンパク質がシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)である、実施形態13記載の製造方法である。
【0208】
実施形態15は、EPA担体タンパク質が1~10個、好ましくは2~4個、好ましくは4個のグリコシル化部位を含む、実施形態14の製造方法である。
【0209】
実施形態16は、各グリコシル化部位が、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む、実施形態15記載の製造方法である。
【0210】
実施形態17は、EPA担体タンパク質が配列番号3を含む、実施形態16記載の製造方法である。
【0211】
実施形態18は、組換え宿主細胞が大腸菌細胞、例えば大腸菌K-12株、例えば株W3110である、実施形態1~17のいずれか1項記載の製造方法である。
【0212】
実施形態19は、実施形態1~18のいずれか1項記載の製造方法により製造されるバイオコンジュゲートである。
【0213】
実施形態20は、実施形態19記載のバイオコンジュゲートを含む組成物である。
【0214】
実施形態21は、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも5個、より一層好ましくは少なくとも7個の実施形態19記載のバイオコンジュゲートを含む組成物である。
【0215】
実施形態22は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む、実施形態20または21記載の組成物であり、グルコシル化O4抗原多糖は、表1に示されている式(O4-Glc+)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0216】
実施形態23は、少なくとも、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲートを更に含む、実施形態20~22のいずれか1項記載の組成物であり、O25B抗原多糖は、表1に示されている式(O25B)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0217】
実施形態24は、少なくとも、担体タンパク質に共有結合している大腸菌O2抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む、実施形態20~23のいずれか1項記載の組成物であり、O2抗原多糖は、表1に示されている式(O2)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0218】
実施形態25は、(i)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O1A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(ii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O2抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iv)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O6A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(v)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O8抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vi)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O15抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O16抗原多糖のバイオコンジュゲート、(viii)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O25B抗原多糖のバイオコンジュゲート、および(ix)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O75抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む、実施形態20~24のいずれか1項記載の組成物であり、O1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O25BおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O2)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O25B)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0219】
実施形態26は、(x)担体タンパク質に共有結合している大腸菌O18A抗原多糖のバイオコンジュゲートを更に含む、実施形態25記載の組成物であり、大腸菌O18A抗原多糖は、表1に示されている式(O18A)の構造を有し、nは1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0220】
実施形態27は、組成物が免疫原性組成物である、実施形態20~26のいずれか1項記載の組成物である。
【0221】
実施形態28は、実施形態19記載のバイオコンジュゲートまたは実施形態20~27のいずれか1項記載の組成物もしくは免疫原性組成物を対象に投与することを含む、大腸菌、特に腸外病原性大腸菌(ExPEC)に対して対象にワクチン接種する方法である。
【0222】
実施形態29は、腸外病原性大腸菌(ExPEC)に対するワクチン接種における使用のための、実施形態19記載のバイオコンジュゲートまたは実施形態20~27のいずれか1項記載の組成物もしくは免疫原性組成物である。
【0223】
実施形態30は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造のための組換え宿主細胞であり、該組換え宿主細胞は、
(a)Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
(b)配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含み、
ここで、
Ox抗原がO1A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO8抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO15抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO16抗原多糖である場合、PglByはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO18A抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO75抗原多糖である場合、PglByはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O18A)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。
【0224】
実施形態31は、Ox抗原がO1A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0225】
実施形態32は、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0226】
実施形態33は、組換え宿主細胞が、配列番号4のアミノ酸配列を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む、実施形態32記載の組換え宿主細胞である。
【0227】
実施形態34は、Ox抗原がO6A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0228】
実施形態35は、Ox抗原がO8抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0229】
実施形態36は、Ox抗原がO15抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0230】
実施形態37は、Ox抗原がO16抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0231】
実施形態38は、Ox抗原がO18A抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較して77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まない、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0232】
実施形態39は、Ox抗原がO75抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してN311Vのアミノ酸突然変異を含む、実施形態30記載の組換え宿主細胞である。
【0233】
実施形態40は、担体タンパク質が、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択される、実施形態30~39のいずれか1項記載の組換え宿主細胞である。
【0234】
実施形態41は、担体タンパク質がシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)である、実施形態30~40のいずれか1項記載の組換え宿主細胞である。
【0235】
実施形態42は、EPA担体タンパク質が1~10個、好ましくは2~4個、好ましくは4個のグリコシル化部位を含む、実施形態41記載の組換え宿主細胞である。
【0236】
実施形態43は、各グリコシル化部位が、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む、実施形態42記載の組換え宿主細胞である。
【0237】
実施形態44は、EPA担体タンパク質は配列番号3を含む、実施形態43記載の組換え宿主細胞である。
【0238】
実施形態45は、組換え宿主細胞が大腸菌細胞、例えば大腸菌K-12株、例えば株W3110である、実施形態30~44のいずれか1項記載の組換え宿主細胞である。
【0239】
実施形態46は、バイオコンジュゲートが、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートである、実施形態19記載のバイオコンジュゲートである。
【0240】
実施形態47は、担体タンパク質が、配列番号3を含むEPA担体タンパク質である、実施形態46記載のバイオコンジュゲートである。
【0241】
実施形態48は、グルコシル化O4抗原多糖が、表1に示されている式(O4-Glc+)の構造を有し、nが5~40の整数である、実施形態46または47記載のバイオコンジュゲートである。
【0242】
実施形態49は、実施形態46~48のいずれか1項記載のバイオコンジュゲートを含む組成物である。
【0243】
実施形態50は、担体タンパク質に共有結合している大腸菌抗原多糖をそれぞれが含む1以上のコンジュゲートを更に含む、実施形態49記載の組成物である。
【0244】
実施形態51は、前記の1以上のコンジュゲートが、以下の大腸菌血清型、すなわち、O1A、O2、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75の1以上の大腸菌抗原多糖を含み、O1A、O2、O6A、O8、O15、O16、O25BおよびO75抗原多糖が、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O2)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O18A)、(O25B)および(O75)の構造を有し、各nが、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である、実施形態50記載の組成物である。
【0245】
実施形態52は、大腸菌血清型O1A、O2、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75のコンジュゲートを含む、実施形態51記載の組成物である。
【0246】
実施形態53は、コンジュゲートのそれぞれがバイオコンジュゲートである、実施形態52記載の組成物である。
【0247】
実施例
本発明の以下の実施例は、本発明の特徴を更に詳しく説明するためのものである。以下の実施例は本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により決定されると理解されるべきである。
【0248】
実施例1:大腸菌感染の疫学データ
細菌血症を引き起こす大腸菌のO血清型分布を決定するために、世界的なサーベイランス(監視)研究を実施した。2011年から2017年の間に、北米、欧州、アジア太平洋地域および南米の国々で入院した60歳以上の患者から3200個を超える大腸菌血流分離体を収集した。古典的な凝集技術、および配列に基づくO遺伝子型決定を用いて、各株をO抗原血清型に関して分析した。表2を参照されたい。
【0249】
単離されたヒト血液サンプルを分析して、それにおける病原体の種類およびそれらの抗生物質耐性パターンを決定した。分析後のサンプルから大腸菌分離菌を得た。大腸菌の種類をMALDI-TOFMSにより検証した。抗血清に基づく凝集アッセイを用いて、大腸菌分離菌の更なる分析を行って、それらのO抗原の血清型を決定した(DebRoyら (2011) Animal health research reviews / Conference of Research Workers in Animal Diseases 12, 169-185)。凝集法によっては型決定不可能な分離菌を、全ゲノム配列決定、ならびにそれに続く、O血清型特異的wzyおよびwzx遺伝子配列に基づくO遺伝子型決定によって更に分析した。
【0250】
【0251】
細菌血症関連大腸菌の世界的な組合せにおける地理的位置の層別化は、位置には無関係な、上位10個のO血清型の保有率を示し、このことは、これらが、細菌血症を引き起こす大腸菌に世界的に関連する主要O血清型であることを示唆している。
【0252】
細菌血症関連多剤耐性大腸菌分離菌(すなわち、臨床的に重要な抗微生物薬の少なくとも3つのクラスに耐性である株)(n = 345)の世界的な組合せにおいて、上位10個のO血清型の保有率は75.4%である。
【0253】
疫学分析からの全ての情報を総合すると、型決定不可能な株の小部分のカバーを仮定して、10個の主要O血清型が大腸菌関連細菌血症感染の推定60~80%をカバーすることが可能であった。
【0254】
細菌血症を引き起こす大腸菌血清型の相当な割合をカバーする多価ワクチンは非常に有用であろう。したがって、表2のO血清型は、O抗原に基づく多価ワクチンの優れた候補となりる。そのようなワクチンは、バイオコンジュゲート化技術を使用して有益に製造可能である。
【0255】
上位10個(表2)における血清型の1つはO4である。したがって、担体タンパク質に結合した大腸菌血清型O4のO抗原多糖を含むバイオコンジュゲートワクチンを製造することは有益であろう。
【0256】
実施例2:O抗原修飾酵素をコードする遺伝子に関する現在のO4臨床分離菌の特徴づけ
大腸菌O4抗原多糖の2つの変異体が記載されており(例えば、Jann B,ら, 1993, Carbohydr. Res. 248: 241-250を参照されたい)、1つは非分岐構造[表1において(O4-Glc-)として示されている構造]を有し、もう1つの変異体は追加的なグルコース側枝で置換されている[表1において(O4-Glc+)として示されている構造]。これらの2つの変異体が現在の臨床分離菌において見出される割合は知られていなかった。両方の変異体はO4抗血清と反応するが、これらの変異体の間に免疫学的差異が存在するかどうかも知られていなかった。更に、(O4-Glc+)抗原多糖を産生するようにグルコース側枝を結合させる酵素はこれまでに特定されておらず、その推定コード配列はO4 rfb遺伝子クラスターの外部に存在する可能性がある。
【0257】
米国および欧州連合における対象から2011年~2012年の期間に最初に分離された、凝集反応により確認された32個の大腸菌O4臨床分離体の組合せを全ゲノム配列分析に付した。配列決定された32個のO4分離体からの抽出rfb遺伝子クラスター配列を参照株のものとアライメント(整列)させ、ヌクレオチドレベルで比較した。天然に存在する幾つかの一塩基多型を除いて、特徴づけられた分離菌は全て、O4参照株と同一のrfbクラスターを示した。このことは、大腸菌O4株が、それらのGlc分岐状態に無関係に、同一のrfb遺伝子クラスターを含有することを示している。したがって、大腸菌O4-Glc+抗原多糖を産生させるためには、大腸菌O4特異的分岐酵素をコードし、大腸菌O4 rfb遺伝子クラスターの外部のどこかに存在しなければならない未知配列を有する遺伝子が必要となりうる。大腸菌O4-Glc- 抗原多糖を含有するバイオコンジュゲートのみを産生する株において大腸菌O4-Glc+抗原多糖を含有するバイオコンジュゲートを産生させたい場合、この未知遺伝子の配列を特定し、使用する必要がある。
【0258】
ついで、O抗原修飾酵素をコードしうるrfb遺伝子クラスターの外部の遺伝子の存在に関して、全ゲノム配列データを分析した。まず、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)におけるgtrABのホモログを大腸菌O4において特定した。ついで、大腸菌O4抗原へのグルコース分岐の付加をもたらす推定大腸菌O4特異的分岐酵素GtrSをコードしうる大腸菌O4特異的遺伝子gtrSとして、大腸菌におけるgtrABの下流のオープンリーディングフレームを推定的に特定した。
【0259】
O4特異的GtrS酵素のアミノ酸配列は配列番号4として示されている。このタンパク質をコードする例示的な核酸配列は配列番号5として示されている。
【0260】
特徴づけられた大腸菌O4分離菌のうち、約80%が、ここで特定されたgtrS遺伝子を保有することが見出された(32個中26個)。また、米国および欧州連合における対象から2014年~2016年の期間に分離された、凝集反応により確認された20個の大腸菌O4臨床分離菌の独立した組合せにおいて、配列特異的プライマーを使用するPCRにより、大腸菌O4特異的gtrS配列の保有率を決定した。この分析が示したところによると、20個中17個の分離体がO4 gtrS配列を含有し、これは85%の保有率に相当する。
【0261】
実施例3:大腸菌W3110内へのO4 gtrSのクローニング、Glc修飾O4バイオコンジュゲートの製造および構造確認
分岐グルコースで修飾されたO4抗原多糖を含むバイオコンジュゲートが製造可能かどうかを試験するために、推定分岐酵素を含有する大腸菌O4抗原EPAバイオコンジュゲート生産株を構築した。このために、内因性O16-gtrS遺伝子を推定O4-gtrS遺伝子(配列番号5;実施例2を参照されたい)により置換し、O16 rfbクラスターを大腸菌株W3110 ΔwzzE-wecG ΔwaaL ΔwbbI-J-KにおけるO4 rfbクラスターで置換し、これを相同組換えにより行った。あるいは、幾つかの株においては、O4 rfbクラスターがプラスミド上にコードされていた。
【0262】
ついで、オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBおよびシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)担体タンパク質(それぞれ「EPA-2」および「EPA-4」と称される、2個または4個のコンセンサスグリコシル化部位を有する変異体)をコードするプラスミドを該株内に導入した。バイオリアクター培養内での大腸菌生産株の増殖、ならびにそれぞれIPTGおよびアラビノースによるPglBおよびEPAの発現の誘導により、Glcで修飾されたO4-EPAバイオコンジュゲートを産生させた。O4-EPAバイオコンジュゲートをバイオマスペリプラズム抽出物から抽出した。
【0263】
O4-EPAバイオコンジュゲートの詳細な多糖組成および結合を確認するために、EPA-4担体タンパク質を有するバイオコンジュゲートに関して複数のNMR実験を行った(データ非表示)。得られた帰属は、公開されている文献(Jansson, P.E.ら, 1984, Carbohydr. Res. 134(2): 283-291; Jann Bら, 1993, Carbohydr. Res. 248: 241-250)と一致した。313Kで記録された1Dスペクトルは、5個のアノマーシグナル、2個のNAcシグナルおよび2個のH6シグナル(RhaおよびFucNAc)を伴うO4五糖RUからの大きなHODシグナルおよび小さな鋭いシグナルを示した。
【0264】
該1Dプロトン帰属を2Dプロトン-プロトンおよびプロトン-炭素相関NMR実験の実施により確認した。第1に、2D TOCSY(120 ms)実験はO4五糖RUのH1およびH6(RhaおよびFucNAcの場合)からの予想クロスピーク、ならびに末端RUおよびEPAからの小さなピークを示した。メチル領域において、TOCSYはO4 RUにおけるα-FucNAcに関するH6からH5の、およびα-Rhaに関するH6からH1のクロスピークを示した。観察された他のピークはEPAアミノ酸および末端Rha(tRha)からのものであった。第2に、炭素NMRスペクトルは、O4 RUに関する、十分に分散した特徴的な単一ピークを含んでいた。HSQC実験の実施により、結合プロトンを介して、該炭素を間接的にプロファイリングした。HSQC-DEPT実験はCH2群に関する反転ピークを示した。HSQCは特徴領域におけるEPAアミノ酸およびO4五糖RU[5個のアノマー、環、2個のN-アセチルおよび2個のメチル(RhaおよびFucNAc)]基に関するクロスピークを示した。O4に関するプロトン/炭素ペアのそれぞれは、プロトン帰属および文献に基づいて帰属可能であった。
【0265】
したがって、該構造特徴づけ実験は、実施例2において特定された推定大腸菌O4-gtrS遺伝子を使用してGlc分岐O4バイオコンジュゲート(表1における式(O4-Glc+)により示される多糖抗原構造を含む)が製造可能であることを証明した。
【0266】
実施例4:ウサギにおけるGlc分岐O4バイオコンジュゲートの免疫原性
Glc修飾O4バイオコンジュゲート(すなわち、表1に示されている式(O4-Glc+)の構造を有するグリカンを有する)を、迅速ウサギ(speedy-rabbit)プロトコル(Eurogentec)を適用することによるウサギ免疫化に使用した。Glc分岐を含有する(Glc+;すなわち、グルコシル化O4多糖を含有する)またはGlc分岐を含有しない(Glc-;すなわち、非グルコシル化O4多糖を含有する)精製O4リポ多糖(LPS)に対する抗O4 IgG力価に関して、免疫化ウサギからの血清をELISAにより分析した。該バイオコンジュゲートでの免疫化は両方のウサギにおいて高いIgG力価をもたらした(
図1)。どちらの場合も、O4バイオコンジュゲートにより誘導された抗体価は、Glc+ LPSに対しては、Glc- LPSと比較して高かった。
【0267】
また、血清をプールし、特徴づけられたgtrS状態を有する大腸菌O4分離菌の試験セットを用いる全細胞ELISA研究において使用した。5個のgtrS陰性(Glc分岐無し)および6個のgtrS陽性(Glc分岐)大腸菌O4分離菌ならびに陰性対照株を試験した。Glc修飾O4バイオコンジュゲートで免疫化されたウサギからのプール化血清は、試験O4分離菌を特異的に認識する高力価のIgGを含有していた(
図2)。LPS ELISAと合致して、全ての試験O4分離菌は免疫血清により認識された。gtrS陽性分離菌はgtrS陰性分離菌よりも全体的に高い結合を示した(
図2)。特に、以下の分離菌はgtrS陽性であった:Y1382、E551、OC24334、stGVXN4983、stGVXN4994およびOC24794。以下の分離菌はgtrS陰性であった:A2625、stGVXN4988、OC24784、OC24787およびOC24788。免疫血清は、無関係なO血清型大腸菌OC9487(ATCC 35383)の陰性対照株に結合しなかった。
【0268】
銀染色ポリアクリルアミドゲルにおけるgtrS陽性分離菌およびgtrS陰性分離菌の試験セットから抽出されたLPSのプロファイルは、O4抗原の非修飾形態を発現する分離菌と修飾形態を発現する分離菌との間の顕著な差異を示さず、このことは、観察された差異がLPS発現レベルの量的差異によっては説明されないことを証明している(データ非表示)。
【0269】
プール化免疫血清を使用する抽出LPSのウエスタンブロットを行って、Glc修飾O4バイオコンジュゲートでの免疫化に応答して誘導されたIgGによるO4 O抗原の認識を評価した。修飾O4免疫化ウサギからのIgGによる修飾O4 LPSおよび非修飾O4 LPSの両方の結合が観察され、それらの結合は、高分子量LPSバンドを含む広範なサイズにわたるLPSバンドの特異的認識を含んでいた(
図3)。
【0270】
後記の更に詳細な実験において、「O4」バイオコンジュゲートもしくは生産株または「EcoO4」に言及されている場合、特に示されていない限り、それはGlc分岐O4(表1におけるグリカン構造(O4-Glc+)を有する)のバイオコンジュゲートまたは生産株を意味する(したがって、「O4」および「O4-Glc+」なる語は、それらの実験におけるバイオコンジュゲートまたは生産株に関して、互換的に用いられる)。
【0271】
実施例5:ラットにおけるGlc分岐O4バイオコンジュゲートの免疫原性
製剤バッファーまたは(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲート(すなわち、EPA担体タンパク質に共有結合しているグルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート;担体タンパク質は、前記実施例3に記載されているEPA-2であった)の、3つの異なる用量(0.04μg、0.40μgまたは4.0μg)で、Sprague Dawleyラットを筋肉内に3回免疫化した。免疫後第0日、第14日および第42日にELISAにより血清抗体レベルを測定した。
【0272】
0.04μg、0.40μgおよび4.00μgの(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートでの免疫化は、製剤化バッファーと比較した場合、免疫化後第42日にIgG抗体のレベルの有意な増加を誘導した(
図4A)。(O4-Glc+)-コンジュゲートにより誘導された抗体は機能的であり、すなわち、(O4-Glc+)大腸菌株の殺滅をもたすことが可能であった(
図4B)。
【0273】
0.04μg、0.40μgおよび4.0μgの(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートにより誘導された抗体レベルは第42日において、ベースライン(第42日対第0日、全用量に関してP = 0.006)および第14日(第42日対第14日、全用量に関してP = 0.006)で検出されたものと比較して有意に増加した(
図5)。4.0μgのバイオコンジュゲートの投与を受けた群では、力価は第14日においても、第0日と比較して有意に増加した。このことは、4.0μgの(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートの単一用量がIgG力価の有意な増加を誘導することを示している(第14日対第0日、P = 0.012)。試験したバイオコンジュゲートの3つ全ての濃度に関して、第14日から第42日までの間に観察されたIgG力価の有意な増加は、(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートの3回目の投与(第3用量)が抗体応答を増強しうることを示した(
図5)。
【0274】
製剤バッファーまたは該バイオコンジュゲートの4.00μg/用量で筋肉内に3回免疫化されたラットにおいてO4-Glc+ -EPAコンジュゲートにより誘導された抗体の機能性を、O4(Glu+)およびO4(Glu-)大腸菌株を使用するオプソニン食作用殺滅アッセイ(OPKA)により決定した。(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートにより誘導された抗体は機能的であった。すなわち、該抗体は(O4-Glc+)大腸菌株の殺滅をもたらすことが可能であった(
図4B、
図6)。注目すべきことに、(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートにより誘導された抗体は、(O4-Glc+)および(O4-Glc-)[すなわち、表1における式(O4-Glc-)の構造を有するグリカンを有する、すなわち、Glc-分岐を含有しないO4多糖を有する]の両方の大腸菌株の殺滅をもたらすことが可能であった(
図6)。
【0275】
結論として、O4-Glc+ -EPAバイオコンジュゲートにより誘導される抗体は交差反応性であり、グルコース分岐を有する大腸菌O4株、およびグルコース分岐を有しない大腸菌O4株の殺滅をもたらしうる。
【0276】
実施例6:大腸菌O抗原バイオコンジュゲート用の生産株および得られるバイオコンジュゲート産物
前記のとおりに製造された(O4-Glc+)-EPAバイオコンジュゲートに加えて、9個の他のバイオコンジュゲートを製造した。特に、追加的に製造したバイオコンジュゲートには、大腸菌O1A-EPAバイオコンジュゲート、O2-EPAバイオコンジュゲート、O6A-EPAバイオコンジュゲート、O8-EPAバイオコンジュゲート、O15-EPAバイオコンジュゲート、O16-EPAバイオコンジュゲート、O18A-EPAバイオコンジュゲート、O25B-EPAバイオコンジュゲートおよびO75-EPAバイオコンジュゲートが含まれた。これらのコンジュゲートのグリカンの化学構造は表1におけるそれぞれの式で見られうる。前記の10個のバイオコンジュゲートを含む組成物は本明細書においては「ExPEC10V」と称される。O1A-EPA、O2-EPA、O6A-EPAおよびO25B-EPAバイオコンジュゲートを含む組成物は「ExPEC4V」と称される(例えば、WO 2015/124769およびWO 2017/035181に既に記載されている)。
【0277】
大腸菌W3110親株
非病原性大腸菌K12株W3110を10個全ての生産株の構築のための親株として使用した。大腸菌K12株W3110は、Coli Genetic Stock Center(Yale University, New Haven (CT), USA, 製品番号CGSC#4474)から入手した。その関連遺伝子型は既に記載されており(大腸菌W3110, F-, ラムダ-, IN(rrnD-rrnE)1, rph-1)、そのゲノム配列は既に公開されている(Hayashi Kら, 2006, Mol. Syst. Biol. 2006.0007 (doi:10.1038/msb4100049))。大腸菌W3110株は、大腸菌O抗原バイオコンジュゲートのそれぞれの産生を可能にするように遺伝的に修飾された(表3)。
【0278】
バイオコンジュゲート生産株
「ExPEC4V」および「ExPEC10V」組成物は共に、同じ生産株からのO2-EPAおよびO25B-EPAバイオコンジュゲートを含む。「ExPEC4V」組成物はstGVXN4411またはstLMTB10217生産株からのO1A-EPAバイオコンジュゲートを含み、「ExPEC10V」組成物はstLMTB10217生産株からのO1A-EPAバイオコンジュゲートを含む。「ExPEC4V」組成物はstGVXN4112生産株からのO6A-EPAバイオコンジュゲートを含み、「ExPEC10V」組成物はstLMTB10923生産株からのO6A-EPAバイオコンジュゲートを含む。更に、「ExPEC10V」組成物は、「ExPEC4V」に使用されない生産株からのO4-EPA(すなわち、(O4-Glc+)-EPA)、O8-EPA、O15-EPA、O16-EPA、O18A-EPAおよびO75-EPAバイオコンジュゲートを含む。後記のとおり、生産株が異なれば、EPA担体タンパク質および/またはオリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBの発現のためのプラスミドも異なりうる。幾つかの生産株の概要を以下の表3に示す。
【0279】
【0280】
O抗原生合成(rfb)遺伝子クラスター
全ての大腸菌O抗原生産株において、天然に存在する大腸菌W3110ゲノムO16::IS5-抗原生合成(rfb)遺伝子クラスターを、血清型特異的O抗原構造をコードする選択された血清型の大腸菌株に由来する選択されたO抗原特異的生合成クラスターにより置換した(これらのO抗原構造に関しては表1を参照されたい)。大腸菌血液分離体の全ゲノム解析後、前記の10個のドナーrfbクラスターを選択し、または確認した。O抗原生合成における欠損を有するW3110O16::IS5 rfb遺伝子クラスターの置換は単一の相同組換え事象において達成された。O16 rfb遺伝子クラスターおよびO18A rfb遺伝子クラスターの場合、ドナーDNAは隣接gnd遺伝子およびrmlCA遺伝子を介して組換えられ、一方、その他の株のrfb遺伝子クラスターは隣接gnd遺伝子およびgalF遺伝子を介して組換えられた。生産株におけるrfbクラスターの配列は配列番号9および11~19に示されている。
【0281】
O抗原リガーゼ(waaL)遺伝子
全ての大腸菌O抗原生産株は、waaL遺伝子によりコードされる大腸菌W3110ゲノムO抗原リガーゼの人工的導入欠失を含有する。ΔwaaL株においては、リピドAへのO抗原の転移が破壊されており、その代わりに、それは担体タンパク質へのO抗原の転移を導いて産物収量を増加させる。
【0282】
O抗原グルコシル化(gtrABS)遺伝子
大腸菌O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75生産株においては、O16 O抗原のグルコシル化をもたらす大腸菌W3110ゲノムgtrABS遺伝子が欠失している。異なる血清型におけるgtrA遺伝子とgtrB遺伝子とは高度に相同であり交換可能であるが、gtrS遺伝子は血清型特異的O抗原グリコシルトランスフェラーゼをコードする。大腸菌W3110において、GtrSは大腸菌O16 O抗原のα-L-Rha-(1→3)-D-GlcNAcモチーフにおけるGlcNAc糖にグルコース(Glc)残基を転移させうる。大腸菌O1A、O2およびO6A生産株においては、gtrABS遺伝子の欠失も置換も生じていない。これらのO抗原は、大腸菌O16 gtrSの天然基質であるα-L-Rha-(1→3)-D-GlcNAcモチーフを欠失している。大腸菌O4生産株においては、大腸菌O4 O抗原の適切なグリコシル化を受け入れるために、W3110 gtrS遺伝子が大腸菌O4 gtrS遺伝子で置換されている。
【0283】
オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglB
全ての大腸菌O抗原生産株は、N-グリコシル化により担体タンパク質上のアミノ酸コンセンサス配列上にO抗原を転移させうる、シー・ジェジュニ(C. jenuni)グリコシルトランスフェラーゼPglBの変異体を発現した。PglBは広範な基質認識を有するが、低い産物収量ゆえに、修飾された基質特異性を有するPglB変異体を発現する幾つかの生産株を調製し、これは産物収量の改善をもたらした(例えば、WO 2016/107818、WO 2016/107819を参照されたい)。プラスミド上のイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性プロモーターの後方にpglB遺伝子を配置した。以下の表4は、前記のExPEC4V組成物およびExPEC10V組成物用のバイオコンジュゲートのための大腸菌O抗原生産株の製造に使用されるプラスミドによりコードされるPglB変異体を示す。ベクターバックボーンにおける変異、抗生物質耐性マーカーおよび/または代替PglB変異体を含有する他のプラスミドもバイオコンジュゲートの製造に関して成功裏に試験されている。
【0284】
【0285】
担体タンパク質(EPA)
全ての大腸菌O抗原生産株は、O抗原用の担体タンパク質として、遺伝的に無毒化されたピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)ADPリボシルトランスフェラーゼトキソイド(EPA)を発現した。EPAトキソイドは2つの残基において野生型EPA毒素とは異なる。すなわち、Leu552がValに変化しており、Glu553(触媒ドメイン内)が欠失している。Glu553の欠失は毒性を有意に低下させると報告されている。無毒化突然変異に加えて、4個の(EPA-4)コンセンサスN-グリコシル化部位モチーフを導入した。プラスミド上のL-アラビノース(Ara)誘導性プロモーターの後方にepa遺伝子を配置した(表4)。表4は、前記の「ExPEC4V」組成物および「ExPEC10V」組成物において使用されるバイオコンジュゲートのための生産株において使用されるプラスミドに限定されている。ベクターバックボーンにおける変異、抗生物質耐性マーカーおよび/またはEPA変異体[例えば、コンセンサスN-グリコシル化部位モチーフの数の改変(例えば、2個のそのようなモーチーフを有するEPA-2)]を含有するプラスミドもバイオコンジュゲートの製造に関して成功裏に試験されている。
【0286】
実施例7:グルコシル化O4(O4-Glc+)抗原を含有するバイオコンジュゲートの製造のためのオリゴサッカリルトランスフェラーゼの最適化
バイオコンジュゲートの製造のための収量最適化はシー・ジェジュニ(C. jenuni)オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBの修飾により達成可能であり、これは、EPA担体タンパク質への、目的のO抗原の、より効率的またはより高度なN-グリコシル化をもたらしうる。グルコシル化O4(O4-Glc+)O抗原多糖を含有するバイオコンジュゲートの製造のための大腸菌株においては、そのような最適化戦略が適用され、バイオコンジュゲートの産物収量を改善する(O4-Glc+)特異的最適化PglB変異体を与えた。
【0287】
このアプローチにおいては、EPA発現プラスミドを含有するO4-Glc+ O抗原多糖生産株を種々の異なるPglB発現プラスミドで形質転換した。該プラスミドのそれぞれはPglBタンパク質内に異なるアミノ酸置換を含有していて、基質特異性を改変した。各株のバイオコンジュゲート産生レベルおよびプロファイルを浸透圧ショック実験において振とうフラスコレベルで評価し、O4-Glc+特異的モノクローナル抗体を使用する、ペリプラズム抽出物に対するキャピラリー電気泳動イムノアッセイにより、読取りを行った。
【0288】
N311Vアミノ酸置換を含有する試験PglB変異体の1つはグルコシル化O4バイオコンジュゲートの産物収量を有意に改善することが判明した(
図7A)。
【0289】
N311V PglB変異体が更に修飾された更なる改善において、Y77Hアミノ酸置換はO4-Glc+特異的産物収量を更に向上させ、N311V PglB-変異体と比較して、ジ-およびトリ-グリコシル化産物の度合の増加を示し、この場合、他の修飾は中性的であることが判明しており、または産物収量に負の影響を及ぼした(
図7B)。プラスミドpLMTB4008(SpR)は、突然変異Y77HおよびN311Vを含有する、大腸菌コドン使用頻度最適化、(O4-Glc+)基質最適化PglB変異体をコードしている。
【0290】
野生型(wt)シー・ジェジュニ(C. jenuni)グリコシルトランスフェラーゼPglBと比較してN311VおよびY77Hアミノ酸置換を含有する、O4-Glc+ O抗原多糖に対する最適化基質特異性を有するPglB変異体は、第1ラウンド最適化PglB-N311V変異体と比較してバイオコンジュゲート収量を倍加させることが判明した。
【0291】
同様に、スクリーニングを用いて、ExPEC10V組成物中のその他の9個の血清型の大腸菌O抗原バイオコンジュゲート産生に関する最も最適な収量のPglB変異体をも決定した。
【0292】
O1A、O6AまたはO15抗原多糖を有するバイオコンジュゲートの場合、アミノ酸突然変異N311V、K482R、D483HおよびA669Vを有するPglBが最高収量を与えることが判明した。
【0293】
O2、O8、O18AまたはO25B抗原多糖を有するバイオコンジュゲートの場合、野生型PglB(すなわち、77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を有しないもの)が最高収量を与えることが判明した。
【0294】
O16抗原多糖を有するバイオコンジュゲートの場合、アミノ酸突然変異Y77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vを有するPglBが最高収量を与えることが判明した。
【0295】
O75抗原多糖を有するバイオコンジュゲートの場合、アミノ酸突然変異N311Vを有するPglBが最高収量を与えることが判明した。
【0296】
これらの結果から、該最適PglB変異体はO抗原によって異なること、および所与O抗原多糖を含有するバイオコンジュゲートを製造するための最適PglB変異体は予測不可能であると認められうる。
【0297】
実施例8:10個の大腸菌血清型からのO抗原のバイオコンジュゲートおよびそれらの品質特性
標的O抗原のO-グリカン残基は構造的に多様であり、種々の反復単位を有する。グリコシルトランスフェラーゼPglBの特異性およびアフィニティはグリカン構造に関連している。したがって、所望の品質特性、例えば純度、グリカン/タンパク質比などを有するバイオコンジュゲートを製造することは困難かつ非容易な課題である。PglBとEPA担体タンパク質との適切な組合せが収量を決定づけ、グリコシル化効率に影響を及ぼしうる。PglBおよび担体タンパク質を最適化することにより、所望の品質特性を有するバイオコンジュゲートを製造した。1以上のO抗原バイオコンジュゲートを一緒に組合せ、単一の組成物またはワクチン中で投与する場合には特に、担体タンパク質全体の、より低い閾値を維持することも重要でありうる。なぜなら、非常に大量の担体タンパク質は免疫学的干渉を招きうるからである。そのような現象を回避するために、より高いグリカン/タンパク質比を有するコンジュゲートが好ましい。したがって、ExPEC10Vワクチンの場合、(臨床試験に付されている既に記載されているExPEC4Vワクチンと)少なくとも同等のグリコシル化比を有するバイオコンジュゲートを開発した。
【0298】
既に記載されている方法に従い、それぞれの宿主細胞(実施例6、表3)をバイオリアクター(10Lおよび/または200L容量)内で培養し、バイオコンジュゲートを発現させることにより、バイオコンジュゲートのそれぞれを産生させた。対応多糖血清型の発現バイオコンジュゲートを含有するバイオマスを生成させるために、細菌流加発酵により、バッチごとに各原薬を製造した。細胞を培養し、IPTGおよびアラビノースで誘導した。浸透圧ショックおよびそれに続くクロマトグラフィー精製により、バイオリアクター培養物内の細胞のペリプラズムからバイオコンジュゲートを単離した。前記の10個のバイオコンジュゲートのそれぞれに関して、このプロセスを行った。
【0299】
ExPEC10VおよびExPEC4Vの原薬(DS)である、このようにして製造された大腸菌O抗原バイオコンジュゲートは、同等の重要な品質特性を示した。すなわち、(1)プロセス関連純度(RP-HPLCにより測定)は95%より高かった。(2)多糖/タンパク質比は約0.1~0.5の範囲であり、ほとんどは0.15~0.45の範囲であった。(3)細菌内毒素(Ph. Eur. 2.2.3)は0.5 EU/μg多糖未満であった。個々の多糖鎖の平均の長さは、典型的には、約10~20反復単位であった(高分解能SDS-PAGEを使用して測定)。
【0300】
前記のExPEC10V組成物用のDSである10個全てのバイオコンジュゲートに関して、多糖反復単位の構造は、(無傷の又はトリプシン消化されたコンジュゲートのNMRおよびMS/MSにより)、表1における対応血清型に関して式に示されているものであることが確認された。
【0301】
ExPEC10V組成物用にバイオコンジュゲートが製造された10個の血清型のなかで、O18血清型はバイオコンジュゲート産生の最低収量を示した。
【0302】
ExPEC10V医薬品(DP)は前記の10個の1価DSの混合物を含む。
【0303】
実施例9:ExPEC10Vワクチンの毒性学
ExPEC10Vを使用する単回投与(単一用量)パイロット毒性および局所耐性研究(非GLP)を雌NZWウサギにおいて実施した。1つの群(n = 2)は対照(生理食塩水)の筋肉内(IM)注射(第0日)を受け、第2の群(n = 4)は、0.6 mLの投与体積(176μg PS/mL)を用いて、105.6μg/用量(それぞれO血清型O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75に関して、9.6:9.6:9.6:9.6:9.6:9.6:9.6:9.6:19.2:9.6μg PS/用量)の総多糖(PS)のExPEC10VのIM注射を受けた。第2日に剖検を行った。
【0304】
死亡は観察されなかった。また、臨床観察[ドレーズ評価法(Draize scoring)を用いる注射部位の影響を含む]、体重、食物摂取および体温に関して、ワクチン関連の影響は認められなかった。組織病理学的には、投与部位または流入領域(腸骨)リンパ節におけるワクチン関連の変化は観察されなかった。4頭中1頭の処置動物において、脾臓における胚中心形成の最小限の増加が観察され(第2日)、注射ワクチンに対する正常な免疫応答と見なされた。全体として、雌ウサギへのExPEC10Vの単回IM投与は十分に忍容性であった。
【0305】
実施例10:ウサギにおけるExPEC10V混合製剤の免疫原性
ExPEC4Vワクチン(大腸菌O1A、O2、O6AおよびO25B血清型のバイオコンジュゲートを含む)は、ラット、ウサギおよびヒトにおいて、これらの4つの血清型に関して免疫原性であることが既に示されている(例えば、WO 2015/124769; WO 2017/035181; Huttnerら, 2017, Lancet Infect Dis, http://dx.doi.org/10.1016/S1473-3099(17)30108-1; RW Frenck Jrら, abstract 5587, ASM Microbe 2018を参照されたい)。大腸菌グルコシル化O4血清型を有する本発明の新規バイオコンジュゲートは前記の実施例4および5において免疫原性であることが示された。ラットに別々に投与(1価)された場合の大腸菌血清型O8、O15、O16、O18AおよびO75(全てはこの実験における担体タンパク質としてEPA-2を有する)のバイオコンジュゲートの免疫原性は、これらのバイオコンジュゲートのそれぞれも免疫原性であることを証明した。なぜなら、ELISAデータは、これらのバイオコンジュゲートのそれぞれが高レベルの大腸菌O抗原特異的抗体を誘導可能であることを示したからである(非表示)。
【0306】
前記のとおりに10個のバイオコンジュゲートの混合物を含有する10価ワクチンの免疫原性も試験した。New Zealand White(ニュージーランドホワイト)(NZW)ウサギ(雌、12~16週齢)は、2週間隔で投与されるExPEC10Vまたは生理食塩水での3回の筋肉内免疫化を受けた(表5; 第0日、第14日および第27日に投与)。これらの実験で使用されたExPEC10Vワクチンの一部である10個の多糖は、4個のグリコシル化部位を含有する担体タンパク質EPA(EPA-4)にコンジュゲート化(結合)されていた。該ワクチンは3つの異なる用量で製剤化された:群1(「高用量」):8μg/用量のO1A、O2、O6A、O4、O8、O15、O16、O18およびO75、ならびに16μg/用量のO25B;群2(「中用量」):4μg/用量のO2、O4、O8、O15、O16、O18およびO75、8μg/用量のO1AおよびO6A、ならびに16μg/用量のO25B;群3(「低用量」):0.4μg/用量のO2、O4、O8、O15、O16、O18およびO75、0.8μg/用量のO1AおよびO6A、ならびに1.6μg/用量のO25B。対照群(群4)の動物は生理食塩水(0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液)のみの投与を受けた(表5)。
【0307】
第0日(免疫化前)および免疫化後第14日、第27日および第42日に抗体応答を評価した。担体タンパク質EPAおよびワクチンに含まれるバイオコンジュゲートのそれぞれにより誘導された血清抗体レベルを、コーティング材として型特異的LPSを使用して、ELISA(総IgG)により測定した。4パラメーターロジスティック非線形回帰モデルでプロットされた12段階滴定曲線(重複実験)に基づいて、50% 効果濃度に相当するEC50値として、抗体価を表示した。OPKによって機能的活性が確認された。
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
高用量のExPEC10V(群1)は、調べた全ての時点(免疫化後第14日、第27日および第42日)で、O1A、O2、O4、O6A、O16、O18AおよびO25Bに関して、生理食塩水対照と比較して有意に高いIgG抗体レベルを誘導した(
図8、表6)。免疫化後第27日および第42日に、生理食塩水対照と比較して、O8およびO75コンジュゲートにより誘導された有意に高い抗体力価が観察された(
図8、表6)。
【0312】
中用量のExPEC10V(群2)および低用量(群3)は、調べた全ての時点(免疫化後第14日、第27日および第42日)で、O1A、O2、O4、O6A、O16およびO25Bに関して、生理食塩水対照と比較して有意に高い抗体レベルを誘導した(
図8、表6)。免疫化後第27日および第42日に、生理食塩水対照と比較して、O8、O18AおよびO75コンジュゲートにより誘導された有意に高い抗体力価が観察され、このことは、ウサギにおける追加抗原刺激投与がこれらのO血清型に対する応答を増強することを示唆している(
図8、表6)。
【0313】
O15コンジュゲートの場合、外れ値の動物を対照群から除外した感度分析は、ExPEC10Vワクチンの3つ全ての用量が、免疫化後第14日、第27日および第42日に、生理食塩水対照と比較して抗体応答の有意な増強を誘導したことを示した(
図8、表6)。
【0314】
担体タンパク質EPAにより誘導された抗体は、調べた全ての時点(第14日、第27日および第42日)において、試験ExPEC10Vの3つの用量(高、中および低)に関して、生理食塩水処置(対照)群におけるEPA抗体力価よりも有意に高かった(
図8)。
【0315】
試験コンジュゲートのほとんど(O1A、O2、O4、O6A、O15、O16、O18AおよびO25B)の場合、ワクチン接種後第14日に、高用量のExPEC10Vは、低用量と比較して有意に高い抗体応答を誘導することを、用量間比較(非表示)は示した。中用量のExPEC10Vも、O1A、O2、O4、O18A、O25BおよびO75の場合、低用量と比較して有意に高い抗体応答を誘導した。O8コンジュゲートの場合、ExPEC10Vの3つ全ての製剤がワクチン接種後第14日に同様のレベルの抗体を誘導した。
【0316】
O1A、O2、O4、O16、O25BおよびO75コンジュゲートの場合、ワクチン接種後第42日(初回投与および2回の追加投与の後)に、低用量のExPEC10Vは、高用量および中用量のExPEC10Vと比較して、抗体応答における有意な増強を誘導した。これらの知見はコンジュゲートワクチンに関する他の知見に合致しており、そのような他の知見においては、例えば、肺炎球菌コンジュゲートワクチンをワクチン接種した乳児において、初回ワクチン接種に対する抗体応答の大きさと用量との間に明確な関係は認められなかった(Poolman JTら, Expert Rev Vaccines. 2013, 12(12):1379-94)。
【0317】
O6A、O8およびO15コンジュゲートの場合には、ワクチン接種後第42日に、試験ExPEC10Vの3つの用量の間に有意差はなかった。O18Aコンジュゲートの場合には、高用量のExPEC10Vは、ワクチン接種後第42日に、中用量と比較して有意に高い抗体応答を誘導した。
【0318】
担体タンパク質(EPA)に関しては、ワクチン接種後第14日に、高用量および中用量のExPEC10Vは、低用量と比較して有意に高い抗体応答を誘導した。高用量のワクチンはまた、ワクチン接種後第42日に、低用量と比較して有意に高い抗体応答を誘導した。
【0319】
結論として、第0日、第14日、第27日に筋肉内注射により投与されたExPEC10V(高、中および低)の3つの製剤はウサギにおいて免疫原性である。
【0320】
現在のところ、ウサギにおいてこのワクチンにより誘導された、大腸菌株を殺滅しうる機能性抗体が、血清型O1A、O2、O4、O6A、O15、O16およびO25Bに関して示された。
【0321】
もう1つの実験において、ExPEC10VワクチンのGMPバッチ(製造に関しては前記実施例8を参照されたい)を製造し、毒性試験の一部としてNZWウサギに注射した(表7)。この研究においては、NZWウサギ(雄および雌)にExPEC10Vワクチン(0.6 mL)を3回筋肉内注射し(第1日、第15日、第29日)、対照群に0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液(生理食塩水)を投与した。ワクチンの各用量は、血清型O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18AおよびO75では9.6μgの多糖(PS)を、そして血清型O25Bでは19.2μgのPSを含有していた。これは105.6μgの総PS(176μg/mLの総PS)および382.8μgの総EPA(638μg/mLのEPA)に相当する。処置前(第1日)ならびに免疫化後第31日および第50日に収集したサンプルから、O抗原および担体タンパク質(EPA)に対するIgG力価を決定した。
【0322】
生理食塩水のみを投与した対照群と比較して、ExPEC10Vを投与した群においては、ワクチン接種後第31日および第50日に、全てのO抗原および担体タンパク質EPAに対する抗体応答の有意な増強が観察された(
図9、表8)。O1A血清型の場合、ワクチン接種動物を対照と比較したところ、第1日(ベースライン)においても、有意に高い抗体応答が観察された。これらの結果は、一部の動物が大腸菌に事前に曝露されていた、またはO1A-LPSと交差反応する抗体を有することを示唆している。
【0323】
【0324】
【0325】
実施例11:ヒトにおいてExPEC10Vワクチンを使用した第1/2a相試験
現在、IEDを予防するために利用可能なワクチンは存在しない。ST131を含む抗菌耐性IEDを引き起こすExPEC分離菌の大部分に相当する臨床的に重要なExPEC株の大部分により引き起こされる侵襲性疾患に対処するために、ExPEC10Vワクチンを構成する血清型(O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75)を選択した。選択された血清型は、ExPECにより引き起こされる血流感染の約70%の原因となり高齢者において血流感染を引き起こす10個の主要なExPEC O血清型の代表例である。
【0326】
侵襲性疾患の予防におけるコンジュゲートワクチンの作用メカニズムは、抗生物質耐性メカニズムによって影響されるとは予想されないため、ExPEC10Vワクチンは、薬物耐性および薬物感受性O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75血清型により引き起こされるIEDに対する防御をもたらすと考えられる。
【0327】
ExPEC10Vにも存在する4つの大腸菌O抗原コンジュゲート(O1A、O2、O6AおよびO25B)のサブセットを含む初期ワクチン候補であるExPEC4Vを使用した先行する臨床的知見が存在する。4つの臨床試験(2つの完了した第1相試験、1つの完了した第2相試験および進行中の第2相試験)の結果に基づけば、ExPEC4Vは試験参加者によって十分に忍容され、血清型(O1A、O2、O6AおよびO25B)当たり多糖(PS)16μgまでの用量では、ワクチン関連安全性シグナルは観察されなかった。ほとんどの有害事象(AE)はグレード1および2であり、グレード3のAEはほとんど報告されなかった。遅発性の非自発的(solicited)局所AE(ワクチン接種後第5日に開始するAE)は、主に、より高い用量のExPEC4Vで観察された。各試験において、ExPEC4Vワクチンは免疫原性であることが示され、用量依存的ワクチン免疫応答およびO抗原特異的免疫グロブリンG(IgG)力価の増加(酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定した場合)を示した。ExPEC4V最適化オプソニン食作用殺傷アッセイ(OPKA)により抗体の機能的活性が示された。ELISAおよびOPKA試験結果の同時分析はアッセイ応答間の相関性を示し(第2相臨床試験[研究4V-BAC2001]において、それぞれ第30日および第360日に関してピアソン相関係数 ≧0.61および≧0.48)、ExPEC4V抗体価の主要尺度としての、および機能的抗体活性を予測するための、ELISAの使用を実証した。免疫原性データの分析はExPEC4Vでのワクチン接種後3年間の免疫応答の持続性を示している。ExPEC4Vでワクチン接種され、高い力価の血清型特異的オプソニン食作用抗体を有していたヒトの血清は、マウスに受身移入され次いでO25BまたはO2血清型の大腸菌株で腹腔内チャレンジされた場合、インビボでの防御をもたらすことが可能であったことも、現在観察された(非表示)。したがって、ExPEC4V特異的オプソニン食作用性ヒト抗体はインビボで殺細菌をもたらし、これは、提示防御メカニズムが、殺細菌をもたらすオプソニン食作用抗体の誘導によるものである、他のコンジュゲートワクチンに合致している。
【0328】
ExPEC10Vは合計10個の血清型を含み、60歳以上の成人においてExPECにより引き起こされる血流感染の防御範囲(カバレッジ)を約50%(ExPEC4V)から約70%へと拡大する。ExPEC4Vでの臨床的知見および前記実施例に記載されているExPEC10Vの前臨床データに基づけば、ExPEC10Vの投与は大腸菌血清型O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75に対する免疫応答をヒトにおいても誘導すると予想される。
【0329】
ExPEC10Vワクチンの3つの異なる用量の安全性、反応原性および免疫原性を評価するための無作為化評価者盲検ヒト初(first-in-human)第1/2a相試験を安定な健康状態の60~85歳のヒトにおいて実施する(研究10V-BAC1001)。試験設計は2つのコホートを含む。すなわち、合計1,004名の参加者を該試験に登録し、このうち、404名の参加者(ExPEC10Vの用量当たり100名の参加者)はコホート1における安定な健康状態の60歳以上かつ85歳以下の者であり、残りの600名の参加者は、コホート2における、過去5年間にUTIの病歴を有する安定な健康状態の60歳以上の者である。
【0330】
ExPEC10Vは60歳以上の成人における侵襲性腸外病原性大腸菌(ExPEC)疾患(IED)の予防のために開発中の10価ワクチン候補である。ExPEC10Vは、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来の外毒素A(EPA)の遺伝的無毒化形態である担体タンパク質に別々にバイオコンジュゲート化されたExPEC血清型O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75のO抗原多糖(PS)からなり、その製造は前記に記載されている。O4 PSは、表1における式(O4-Glc+)の構造を有するグルコシル化形態である。
【0331】
【0332】
全体的設計
これは、2つのコホートを含む無作為化多施設介入性試験である。
【0333】
コホート1においては、試験は評価者盲検実対照設計を有し、UTIの病歴を有する又は有しない安定した健康状態の60歳以上かつ85歳以下の合計404名の成人参加者が含まれる。コホート1の試験設計は以下の3つの期間から構成される:最大28日間のスクリーニング期間、第1日にワクチン接種を行う評価者盲検の181日間の追跡(フォローアップ)期間、および第182日からワクチン接種後3年(第1096日)まで続く非盲検LTFU期間(
図10A)。ExPEC10V選択用量群の参加者(約100名の参加者)およびPrevnar 13群の参加者のみがLTFU期間に進む。コホート1の終わりは最後の参加者の第3年の訪問(第1096日)である。
【0334】
コホート2においては、試験は二重盲検プラセボ対照設計を有し、過去5年間にUTIの病歴を有する安定な健康状態の60歳以上の合計600名の成人参加者が含まれる。コホート1からの第1/2a相1次分析およびExPEC10V用量選択の完了後に登録を開始する。コホート2の試験設計は以下の3つの期間から構成される:最大28日間のスクリーニング期間、第1日にワクチン接種を行う二重盲検の181日間の追跡期間、および第182日からワクチン接種後3年(第1096日)まで続く二重盲検LTFU期間(
図10B)。コホート2における全参加者がLTFU期間に進む。試験の終わりはコホート2における最後の参加者の第3年の訪問(第1096日)である。
【0335】
コホート1:第1相
コホート1の第1相においては、1つの工程から次の工程に進む前に安全性評価を適宜実施する段階的用量漸増手順に従う時差(staggered)アプローチで、合計84名の参加者を登録する。これらの84名の第1相参加者の身体検査データ(ベースラインおよび目標)、ベースライン人口統計データおよびワクチン接種後14日間の安全性データ(非自発的局所性および全身性AE、自発的AE、SAE、臨床検査データおよびバイタルサインを含む)を再検討するために、内部データレビュー委員会(DRC)がこの試験を委託される。該試験のこの相においては、以下の6つの工程で参加者を登録し、無作為化した。
工程1:4名のセンチネル(sentinel)参加者を登録し、無作為化した:ExPEC10V低用量群における2名の参加者(表11)ならびにExPEC4VおよびPrevnar 13群におけるそれぞれ1名の参加者。
工程2:24名の参加者を登録し、無作為化した:ExPEC10V低用量群における18名の参加者(表11)ならびにExPEC4VおよびPrevnar 13群におけるそれぞれ3名の参加者。
工程3:4名のセンチネル参加者を登録し、無作為化した:ExPEC10V中用量群における2名の参加者(表11)ならびにExPEC4VおよびPrevnar 13群におけるそれぞれ1名の参加者。
工程4:24名の参加者を登録し、無作為化した:ExPEC10V中用量群における18名の参加者(表11)ならびにExPEC4VおよびPrevnar 13群におけるそれぞれ3名の参加者。
工程5:4名のセンチネル参加者を登録し、無作為化した:ExPEC10V高用量群における2名の参加者(表11)ならびにExPEC4VおよびPrevnar 13群におけるそれぞれ1名の参加者。
工程6:24名の参加者を登録し、無作為化した:ExPEC10V高用量群における18名の参加者(表11)ならびにExPEC4VおよびPrevnar 13群におけるそれぞれ3名の参加者。
【0336】
全ての参加者は、割り当てられた試験ワクチン接種群ごとに、第1日に、ExPEC10V(3用量のうちの1つ)、ExPEC4VまたはPrevnar 13のいずれかの単回筋肉内(IM)注射を受けた。工程1、3および5のそれぞれにおける4名のセンチネル参加者に、安全情報を収集するために、ワクチン接種の24時間後に電話連絡した。4名のセンチネル参加者の各群における盲検化されたワクチン接種後24時間の安全性データが主任研究者(PI)、試験責任医師(SRP)およびスポンサー医療リード(SML)により再検討された。次工程のための追加的な参加者の無作為化は、この第2日のセンチネル安全性評価が完了するまで中止した。
【0337】
臨床的に有意な所見がない場合には、追加的な24名の参加者(工程2、4および6)を登録し、3つの試験ワクチン接種群(表11)の1つに無作為化して、ExPEC10V(3用量の1つ)、ExPEC4VまたはPrevnar 13のいずれかの単回IM注射を第1日に行った。
【0338】
各用量レベル(工程2における低用量、工程4における中用量および工程6における高用量)における追加的な24名の参加者のワクチン接種の後、28名全て(4名 + 24名)のワクチン接種後14日間の安全性データがDRCにより再検討され、ついで次の用量レベルまたは第2a相に進めた。
【0339】
コホート1:第2a相
最初の84名の参加者に関するワクチン接種後14日間の安全性データの再検討の後にDRCにより決定された許容可能な安全性および反応原性(安全性の懸念または特定の試験中断規定を満たす事象がない場合)に基づき、コホート1からの残りの320名の参加者を試験の第2a相において無作為化し、投与を行う。これらの追加的な320名の参加者を登録し、並行して5つの試験ワクチン接種群の1つに2:2:2:1:1の比で無作為化して、ExPEC10V(3用量の1つ)、ExPEC4VまたはPrevnar 13のいずれかの単回IM注射を第1日に行った(表11)。
【0340】
DRCは、最初の84名の参加者に関する14日間の安全性の再検討を実施することに加えて、試験の経過にわたってコホート1の安全性データを評価し、特定の試験ワクチン接種中断規定を満たす事象または生じうる他の安全性の問題をも再検討する。
【0341】
コホート1においては、全ての参加者が第30日の訪問(訪問4)を完了した際またはそれ以前に中止した際に、1次分析を行う。全ての参加者が第181日の訪問を完了した際またはそれ以前に中止した際に、最終的な分析を行う。非盲検長期追跡(LTFU)期間に進む参加者の場合(ExPEC10V選択用量群およびPrevnar 13群)、毎年の追跡(フォローアップ)分析は、ワクチン接種後第1年(第366日)、第2年(第731日)および第3年(第1096日)の訪問時までに収集された安全性および免疫原性データ(多重ECL系イムノアッセイおよびMOPA)を含む。
【0342】
コホート2
コホート2においては、過去5年間にUTIの病歴を有する安定な健康状態の60歳以上の参加者において、ExPEC10Vの選択された用量の安全性、反応原性および免疫原性(コホート1の1次分析結果に基づくもの)を評価する。コホート2においては、この試験は二重盲検プラセボ対照設計であり、合計600名の参加者を登録し、並行して2:1の比(ExPEC10V群における400名およびプラセボ群における200名)で無作為化する。
【0343】
全ての参加者は、割り当てられた試験ワクチン接種群ごとに、選択された用量のExPEC10Vまたはプラセボのいずれかの単回IM注射を第1日に受ける(表12)。
【0344】
コホート2においては、1次分析は安全性および免疫原性データを含み、全ての参加者が第30日の訪問(訪問4)を完了した際またはそれ以前に中止した際に行われる。全ての参加者が第181日の訪問を完了した際またはそれ以前に中止した際に、最終的な分析を行う。全ての参加者に関して、毎年の追跡分析は、ワクチン接種後第1年(第366日)、第2年(第731日)および第3年(第1096日)の訪問時までに収集された安全性および免疫原性データ(多重ECL系イムノアッセイおよびMOPA)を含む。
【0345】
メタゲノム解析を用いて腸内細菌叢における病原体(例えば、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile))およびExPEC10V血清型の保有率に対するExPEC10Vの効果を評価するために、参加者の選択された部分集団において糞便サンプル分析を行う。
【0346】
参加者の数
合計1004人の参加者が試験に登録されている(コホート1では404名の参加者、コホート2では600名の参加者)。
【0347】
介入群
介入の説明
ExPEC10V:EPA担体タンパク質に別々にバイオコンジュゲート化されたExPEC血清型O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25BおよびO75のO抗原PSを含有するリン酸緩衝溶液中の大腸菌バイオコンジュゲートワクチン。第1日におけるExPEC10Vの3用量(3回の投与)の1つの単回0.5mL IM(三角筋)注射。
【0348】
ExPEC4V:EPA担体タンパク質に別々にバイオコンジュゲート化されたExPEC血清型O1A、O2、O6A、O25B(4:4:4:8μg PS/ExPEC血清型)のO抗原PSを含有する生理食塩バッファー溶液中の大腸菌バイオコンジュゲートワクチン。第1日におけるExPEC4Vの単回0.5mL IM(三角筋)注射。
【0349】
Prevnar 13:無毒性ジフテリアCRM197タンパク質に個々に連結されたストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの莢膜抗原の糖の無菌懸濁液。単一用量予充填シリンジで供給される、第1日における単回0.5mL IM(三角筋)注射。
【0350】
プラセボ:通常の生理食塩水。第1日におけるプラセボの単回0.5mL IM(三角筋)注射。
【0351】
【0352】
ExPEC10Vは10個の1価原薬(DS)から構成される。この臨床試験では、2つの異なる濃度(中濃度および高濃度)の医薬品(DP)を製造する(表10)。臨床において、製剤バッファーと同じ希釈バッファーで高濃度物を1:1で希釈することにより、第3の(低)濃度を得る。pH 7.0のリン酸ナトリウム/リン酸カリウムバッファー(0.02%[w/w]ポリソルベート80、5%[w/w]ソルビトール、10 mMメチオニン)中で各DPを製剤化(処方)する。
【0353】
【0354】
安全性評価
主要安全性評価は非自発的局所性および全身性AE、自発的AE、SAE、身体検査、バイタルサイン測定ならびに臨床検査を含む。
【0355】
免疫原性評価
集められた血清の主要免疫原性評価は、多重ECL系イムノアッセイにより測定される、ワクチンにより誘導されたExPEC10VおよびExPEC4V血清型特異的総IgG抗体レベルの評価、ならびにオプソニン食作用性殺傷アッセイ(OPKA)の多重形態(MOPA)により測定される、ExPEC10VおよびExPEC4V血清型特異的機能性抗体を含む。Prevnar13により誘導された肺炎球菌抗体価の免疫原性評価は実施していない。
【0356】
ExPEC10Vにより誘導された血清抗体のレベルは多重電気化学発光(ECL)系イムノアッセイにより測定される。このアッセイは、種々の大腸菌O-LPS抗原または担体タンパク質EPAでコーティングされたマルチスポット96ウェルフォーマットマイクロプレートにおいて高結合性炭素電極を組合せたものである。血清サンプル中に存在する抗原特異的抗体のレベルは、SULFO-TAGで標識された二次抗体(抗ヒトIgG)を使用して検出される。SULFO-TAGは、電気刺激の存在下で、結合IgG抗体の量に比例して増加する強度で発光する。このアッセイは医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonisation)(ICH)の推奨事項に従い認定された。
【0357】
ExPEC10Vにより誘導された機能性抗体のレベルは多重オプソニン食作用アッセイ(MOPA)により測定される。簡潔に説明すると、熱不活化血清サンプルを系列希釈し、異なるタイプの抗生物質に特異的に耐性である異なる大腸菌株と共にインキュベートする。その後、ヒト補体および食細胞(HL60)を反応に添加し、2回目のインキュベーション期間の後、特定の抗生物質に耐性である株の増殖を選択的に可能にするその特定の抗生物質で補足された培地を含有する異なるPVDF親水性メンブレンフィルタープレートに反応混合物のアリコートを移す。一晩の増殖の後、コロニー形成単位(CFU)を計数して生存細菌の数を決定する。このアッセイはICHの推奨事項に従い認定された。
【0358】
多重ECL系イムノアッセイおよびMOPAにより測定されるExPEC10V血清型抗体ならびに多重ECL系イムノアッセイのみにより測定されるEPAに関しては、免疫原性の以下の尺度が、全ての免疫原性時点について、試験ワクチン接種群により評価され、作表される。
・第1日(ワクチン接種前)からの血清抗体価における2倍および4倍の増加を示す参加者の割合。
・幾何平均力価(GMT)。
・GMR:ベースライン後/ベースライン値から計算された、ベースラインからの変化倍数。
LTFU期間において、免疫原性の説明的要約が各血清型に関して示される。
【0359】
後の相(フェーズ)のための用量選択は、コホート1の1次分析の時点で入手可能な証拠(第30日の結果)の全体を考慮している。
【0360】
【0361】
【0362】
試験のコホート2に登録された参加者の無作為化比は2:1(ExPEC10V:プラセボ)である。コホート2で使用されるExPEC10V用量はコホート1の1次分析(第30日)の結果に基づく。
【0363】
現状
前記の試験のコホート1の登録およびワクチン接種は完了した。試験は盲検的に進行中である。安全性データの進行中の精査に基づけば、安全性の大きな問題は確認されておらず、ExPEC10Vワクチンは許容可能な安全性プロファイルを有する。
【0364】
コホート1臨床サンプルの免疫原性の分析は盲検的に進行中である。ECLデータは100%合格品質水準(AQL)で検査され、データ管理のためにアップロードされた。MOPAサンプルの分析は進行中である。データの非盲検化および統計分析は、臨床研究機関(clinical research organization)(CRO)を利用することにより行われる。
【0365】
コホート1からの第30日の結果の最終的な1次分析に基づいて、コホート2のためのExPEC10V用量が特定されたら、コホート2のワクチン接種が開始される。
【0366】
本発明の広範な発明概念から逸脱することなく、前記の実施形態に変更が加えられうる、と当業者に理解されるであろう。したがって、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本明細書により定められる本発明の精神および範囲における修飾を含むと意図されると理解される。
【0367】
【0368】
【0369】
【0370】
【0371】
【0372】
【0373】
【0374】
【0375】
【0376】
【0377】
【0378】
【0379】
【0380】
【0381】
【0382】
【0383】
【0384】
【0385】
【0386】
【0387】
【0388】
【0389】
【0390】
【0391】
【0392】
【0393】
【0394】
【0395】
【0396】
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
【0401】
【0402】
【0403】
【0404】
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法であって、該製造方法が、
(i)a.Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含む組換え宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え宿主細胞を培養することを含み、
ここで、
Ox抗原がO1A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、該トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、該グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO8抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO15抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO16抗原多糖である場合、PglByはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO18A抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO75抗原多糖である場合、PglByはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O18A)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である、製造方法。
[2] Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む、実施形態1に記載の製造方法。
[3] 組換え宿主細胞が、配列番号4のアミノ酸配列を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む、実施形態2に記載の製造方法。
[4] 担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造方法であって、該製造方法が、
(i)a.Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
b.配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
c.オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含む組換え宿主細胞を準備し、
(ii)バイオコンジュゲートの産生のための条件下で、該組換え宿主細胞を培養することを含み、
PglByは、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vを含み、
Ox抗原はO1A抗原多糖、グルコシル化O4抗原多糖、O6A抗原多糖、O15抗原多糖、O16抗原多糖またはO75抗原多糖であり、
かつ、Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、該トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、該グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O15、O16およびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O15)、(O16)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である、製造方法。
[5] 組換え宿主細胞からバイオコンジュゲートを単離することを更に含む、実施形態1~4のいずれかに記載の製造方法。
[6] 担体タンパク質が、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択され、好ましくは、担体タンパク質がシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)であり、好ましくは、EPA担体タンパク質が1~10個、好ましくは2~4個、好ましくは4個のグリコシル化部位を含み、好ましくは、各グリコシル化部位が、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含み、好ましくは、EPA担体タンパク質が配列番号3を含む、実施形態1~5のいずれかに記載の製造方法。
[7] 組換え宿主細胞が大腸菌細胞、例えば大腸菌K-12株、例えば株W3110である、実施形態1~6のいずれかに記載の製造方法。
[8] 実施形態1~7のいずれかに記載の製造方法により製造されるバイオコンジュゲート。
[9] バイオコンジュゲートが、担体タンパク質に共有結合している大腸菌グルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲートであり、好ましくは、担体タンパク質が、配列番号3を含むEPA担体タンパク質であり、好ましくは、グルコシル化O4抗原多糖が、表1に示されている式(O4-Glc+)の構造を有し、nが5~40の整数である、実施形態8に記載のバイオコンジュゲート。
[10] 担体タンパク質に共有結合している大腸菌抗原多糖をそれぞれが含む1以上のコンジュゲートを好ましくは更に含む、実施形態8または9のバイオコンジュゲートを含む組成物。
[11] 担体タンパク質に共有結合している大腸菌(E. coli)Ox抗原多糖のバイオコンジュゲートの製造のための組換え宿主細胞であって、該組換え宿主細胞が、
(a)Ox抗原多糖のrfb遺伝子クラスターのヌクレオチド配列、
(b)配列番号1を有する、好ましくは配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglByをコードするヌクレオチド配列
を含み、
ここで、
Ox抗原がO1A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖である場合、PglByはアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含み、該組換え宿主細胞は、グルコースの付加により大腸菌O4抗原多糖を修飾して大腸菌グルコシル化O4抗原多糖を産生しうる、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するトランスロカーゼGtrAおよびグリコシルトランスフェラーゼGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含み、該トランスロカーゼはバクトプレノール結合グルコースを転移させることが可能であり、該グリコシルトランスフェラーゼはバクトプレノールをグルコシル化することが可能であり、
Ox抗原がO6A抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO8抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO15抗原多糖である場合、PglByはN311V、K482R、D483HおよびA669Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO16抗原多糖である場合、PglByはY77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
Ox抗原がO18A抗原多糖である場合、PglByは77、80、287、289、311、482、483および669位にアミノ酸突然変異を含まず、
Ox抗原がO75抗原多糖である場合、PglByはN311Vのアミノ酸突然変異を含み、
各場合において、アミノ酸突然変異は、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBに対するものであり、
O1A、グルコシル化O4、O6A、O8、O15、O16、O18AおよびO75抗原多糖は、それぞれ、表1に示されている式(O1A)、(O4-Glc+)、(O6A)、(O8)、(O15)、(O16)、(O18A)および(O75)の構造を有し、各nは、独立して、1~100、好ましくは3~50、例えば5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である、組換え宿主細胞。
[12] Ox抗原がグルコシル化O4抗原多糖であり、PglByが、配列番号6のアミノ酸配列を有する野生型PglBと比較してアミノ酸突然変異N311Vまたはアミノ酸突然変異Y77HおよびN311Vを含む、実施形態11に記載の組換え宿主細胞。
[13] 組換え宿主細胞が、配列番号4のアミノ酸配列を有するGtrSをコードする配列、ならびにそれぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有するGtrAおよびGtrBをコードするヌクレオチド配列を更に含む、実施形態12に記載の組換え宿主細胞。
[14] 担体タンパク質が、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)の無毒化外毒素A(EPA)、大腸菌フラゲリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、エス・アウレウス(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ピー・エルジノーサ(P. aeruginosa)PcrV、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)および分類不能ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDからなる群から選択され、好ましくは、担体タンパク質がシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)無毒化外毒素A(EPA)であり、好ましくは、EPA担体タンパク質が1~10個、好ましくは2~4個、好ましくは4個のグリコシル化部位を含み、好ましくは、各グリコシル化部位が、配列番号2を有するグリコシル化コンセンサス配列を含み、好ましくは、EPA担体タンパク質が配列番号3を含む、実施形態11~13のいずれかに記載の組換え宿主細胞。
[15] 組換え宿主細胞が大腸菌細胞、例えば大腸菌K-12株、例えば株W3110である、実施形態11~14のいずれかに記載の組換え宿主細胞。
【配列表】