(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ジッパーテープ、ジッパーテープ付き袋およびジッパーテープ付き袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20241118BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D33/25 C
(21)【出願番号】P 2021572820
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002272
(87)【国際公開番号】W WO2021149807
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020010324
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 匠
(72)【発明者】
【氏名】片田 亮
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207631(WO,A1)
【文献】特開2018-020843(JP,A)
【文献】特開2019-189333(JP,A)
【文献】国際公開第2006/062136(WO,A1)
【文献】特開2007-331805(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112448(WO,A1)
【文献】特開平09-207948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/16
B65D33/00-33/38
B65D65/00-65/46
B65D67/00-79/02
B31B50/00-70/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面および第2面を有する袋本体に接合されるジッパーテープであって、
前記第1面に接合されるように構成された第1基部条片と、前記第1基部条片に部分的に対向し、前記第1基部条片とは対向しない領域における接合部で前記第1面に接合されるように構成された第2基部条片と、前記第1および第2基部条片からそれぞれ突出し互いに係合可能な第1および第2の係合部と、を有するジッパーテープ本体と、
前記第2基部条片が前記第1面に対向し前記第1基部条片に対向しない領域に配置される切裂き条片部と、を備え、
前記ジッパーテープ本体は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、
前記切裂き条片部は、
前記ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、前記第1面に接合されるように構成された切裂き条片本体と、
少なくとも前記第1面に接合される面とは反対側の面の少なくとも一部で前記切裂き条片本体に積層され、前記ポリオレフィン系樹脂に対し剥離性を有する樹脂組成物で形成される剥離層と、を有し、
前記剥離層は、前記切裂き条片本体よりも薄く形成され
、前記第1面に接合される面以外のすべての面で前記切裂き条片本体に積層されるジッパーテープ。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンである、請求項1に記載のジッパーテープ。
【請求項3】
前記剥離層は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている、請求項2に記載のジッパーテープ。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンである、請求項1に記載のジッパーテープ。
【請求項5】
前記剥離層は、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている、請求項4に記載のジッパーテープ。
【請求項6】
前記第2基部条片は、前記第1基部条片よりも幅広に形成されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項7】
前記切裂き条片部は、前記第1基部条片の前記接合部側の端部に前記第1基部条片と一体となるように接続されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項8】
前記切裂き条片部は、前記第2基部条片に積層されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項9】
前記剥離層は、前記切裂き条片部の幅方向の少なくとも一部に積層される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項10】
前記切裂き条片部は、前記第1面に接合される面とは反対側の面で前記剥離層の上にさらに積層され、前記ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成される追加の層をさらに有する、請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項11】
前記ジッパーテープを形成する前記樹脂組成物における前記ポリオレフィン系樹脂の配合量は、70質量%以上100%以下である、請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項12】
前記ポリオレフィン系樹脂は、バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含有する、請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項13】
前記第1基部条片の前記第1面に接合される面には第1のシール層が形成され、前記接合部の前記第1面に接合される面には第2のシール層が形成され、前記切裂き条片本体の前記第1面に接合される面には第3のシール層が形成されている、請求項1から請求項
12のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
【請求項14】
互いに対向する第1面および第2面を有する袋本体に接合されるジッパーテープであって、
前記第1面に接合されるように構成された第1基部条片と、前記第1基部条片に部分的に対向し、前記第1基部条片とは対向しない領域における接合部で前記第1面に接合されるように構成された第2基部条片と、前記第1および第2基部条片からそれぞれ突出し互いに係合可能な第1および第2の係合部と、を有するジッパーテープ本体と、
前記第2基部条片が前記第1面に対向し前記第1基部条片に対向しない領域に配置される切裂き条片部と、を備え、
前記ジッパーテープ本体は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、
前記切裂き条片部は、
前記ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、前記第1面に接合されるように構成された切裂き条片本体と、
少なくとも前記第1面に接合される面とは反対側の面の少なくとも一部で前記切裂き条片本体に積層され、前記ポリオレフィン系樹脂に対し剥離性を有する樹脂組成物で形成される剥離層と、を有し、
前記剥離層は、前記切裂き条片本体よりも薄く形成され、
前記切裂き条片部は、前記第1基部条片の前記接合部側の端部に接続面を介して前記第1基部条片と一体となるように接続され、
前記剥離層は、少なくとも前記切裂き条片本体の前記第1面に接合される面とは反対側の面に積層され、
さらに前記剥離層は、少なくとも前記切裂き条片本体の前記第1基部条片側とは反対側の面、前記切裂き条片本体の前記第1基部条片側の面であって前記接続面よりも前記第2面側の面、および前記切裂き条片本体の前記第1基部条片側の面であって前記接続面よりも前記第1面側の面のうち、少なくとも一の面に積層される
、ジッパーテープ。
【請求項15】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンであり、
前記剥離層は、ポリプロピレンを主成分とし、ポリエチレンを含有する樹脂組成物で形成されている、請求項
14に記載のジッパーテープ。
【請求項16】
前記ポリエチレンが、直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項
15に記載のジッパーテープ。
【請求項17】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンであり、
前記剥離層は、ポリエチレンを主成分とし、ポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成されている、請求項
14に記載のジッパーテープ。
【請求項18】
互いに対向する第1面および第2面を有する袋本体と、
前記第1面に前記第1基部条片、前記切裂き条片部および前記接合部が接合された請求項1から請求項
17のいずれか一項に記載のジッパーテープと、を備え、
少なくとも前記第1面および前記切裂き条片部に形成された第1の切り込みによってタブが形成される、ジッパーテープ付き袋。
【請求項19】
前記タブは、前記第1面および前記第2面がシールされるシール部に形成され、
前記第1の切り込みは、前記第1面から前記第2面まで貫通して形成され、
前記第2面側から形成されて、前記切裂き条片部を貫通しない第2の切り込みがさらに形成される、請求項
18に記載のジッパーテープ付き袋。
【請求項20】
前記タブを囲む領域で前記第1面および前記第2面がシールされる囲みシール部を有する、請求項
18に記載のジッパーテープ付き袋。
【請求項21】
請求項
19に記載のジッパーテープ付き袋の製造方法であって、
前記袋本体に、シール装置を用いて前記シール部を形成する工程と、
前記シール部に、前記袋本体を挟んで対向する切断刃および受台を用いて
前記第2の切り込みを形成する工程とを含むジッパーテープ付き袋の製造方法。
【請求項22】
請求項
20に記載のジッパーテープ付き袋の製造方法であって、
前記袋本体に、シール装置を用いて前記囲みシール部を形成する工程と、
前記囲みシール部で囲まれた領域に、前記袋本体を挟んで対向する切断刃および受台を用いて
前記第1の切り込みを形成する工程とを含むジッパーテープ付き袋の製造方法。
【請求項23】
互いに対向する第1面および第2面を有する袋本体と、
前記第1面に接合された第1基部条片と、前記第1基部条片に部分的に対向し、前記第1基部条片とは対向しない領域における接合部で前記第1面に接合された第2基部条片と、前記第1および第2基部条片からそれぞれ突出し互いに係合可能な第1および第2の係合部と、を有するジッパーテープ本体と、
前記第2基部条片が前記第1面に対向し前記第1基部条片に対向しない領域に配置される切裂き条片部と、を備え、
前記ジッパーテープ本体は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、
前記切裂き条片部は、
前記ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、前記第1面に接合された切裂き条片本体と、
少なくとも前記第1面に接合された面とは反対側の面の少なくとも一部で前記切裂き条片本体に積層され、前記ポリオレフィン系樹脂に対し剥離性を有する樹脂組成物で形成される剥離層と、
を有し、
前記剥離層は、前記切裂き条片本体よりも薄く形成され
、前記第1面に接合される面以外のすべての面で前記切裂き条片本体に積層される、ジッパーテープ付き袋。
【請求項24】
前記第1基部条片と前記第1面、前記接合部と前記第1面、または前記切裂き条片本体と前記第1面の少なくともいずれかは、シール層を介して接合されている、請求項
23に記載のジッパーテープ付き袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッパーテープ、ジッパーテープ付き袋およびジッパーテープ付き袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジッパーテープ付き袋において、カットテープを用いて袋本体に開口を形成する技術が知られている。カットテープは、袋本体に貼り付けることで袋の直線的な開封を可能にしている。
例えば、特許文献1には、ジッパーテープを形成する材料(例えばポリエチレン)に対して剥離性を有する材料(例えばポリプロピレン)でカットテープを形成することで、カットテープとジッパーテープとを界面剥離させ、開封時の抵抗感を少なくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、プラスチック製品のリサイクル適性を向上させるために、材料の全量、または少なくとも所定の割合以上を単一の化合物とするモノマテリアル化が進められている。上述したようなカットテープを備えるジッパーテープの場合、ジッパーテープ部分を例えばポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成し、全体として単一の樹脂の配合量をさらに高めることによるモノマテリアル化が検討されている。
しかしながら、カットテープとジッパーテープを同一の樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成すると、カットテープで袋を開封する際にジッパーテープからカットテープが剥離しにくくなり、抵抗となる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、開封時の抵抗感を損なうことなく、カットテープ付きのジッパーテープにおける単一の樹脂の配合割合を高めることができるジッパーテープ、ジッパーテープ付き袋およびジッパーテープ付き袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]互いに対向する第1面および第2面を有する袋本体に接合されるジッパーテープであって、第1面に接合されるように構成された第1基部条片と、第1基部条片に部分的に対向し、第1基部条片とは対向しない領域における接合部で第1面に接合されるように構成された第2基部条片と、第1および第2基部条片からそれぞれ突出し互いに係合可能な第1および第2の係合部と、を有するジッパーテープ本体と、第2基部条片が第1面に対向し第1基部条片に対向しない領域に配置される切裂き条片部と、を備え、ジッパーテープ本体は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、切裂き条片部は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、第1面に接合されるように構成された切裂き条片本体と、少なくとも第1面に接合される面とは反対側の面の少なくとも一部で切裂き条片本体に積層され、ポリオレフィン系樹脂に対し剥離性を有する樹脂組成物で形成される剥離層と、を有するジッパーテープ。
[2]ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンである、[1]に記載のジッパーテープ。
[3]剥離層は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている、[2]に記載のジッパーテープ。
[4]ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンである、[1]に記載のジッパーテープ。
[5]剥離層は、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている、[4]に記載のジッパーテープ。
[6]第2基部条片は、第1基部条片よりも幅広に形成されている、[1]から[5]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[7]切裂き条片部は、第1基部条片の接合部側の端部に第1基部条片と一体となるように接続されている、[1]から[6]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[8]切裂き条片部は、第2基部条片に積層されている、[1]から[6]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[9]剥離層は、切裂き条片部の幅方向の少なくとも一部に積層される、[1]から[8]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[10]剥離層は、第1面に接合される面以外のすべての面で切裂き条片本体に積層される、[1]から[9]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[11]切裂き条片部は、第1面に接合される面とは反対側の面で剥離層の上にさらに積層され、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成される追加の層をさらに有する、[1]から[10]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[12]前記ジッパーテープを形成する前記樹脂組成物における前記ポリオレフィン系樹脂の配合量は、70質量%以上である、[1]から[11]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[13]前記ポリオレフィン系樹脂は、バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含有する、[1]から[12]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[14]前記第1基部条片の前記第1面に接合される面には第1のシール層が形成され、前記接合部の前記第1面に接合される面には第2のシール層が形成され、前記切裂き条片本体の前記第1面に接合される面には第3のシール層が形成されている、[1]から[13]のいずれか一項に記載のジッパーテープ。
[15]前記切裂き条片部は、前記第1基部条片の前記接合部側の端部に接続面を介して前記第1基部条片と一体となるように接続され、前記剥離層は、少なくとも前記切裂き条片本体の前記第1面に接合される面とは反対側の面に積層される、[1]に記載のジッパーテープ。
[16]さらに前記剥離層は、少なくとも前記切裂き条片本体の前記第1基部条片側とは反対側の面、前記切裂き条片本体の前記第1基部条片側の面であって前記接続面よりも前記第2面側の面、および前記切裂き条片本体の前記第1基部条片側の面であって前記接続面よりも前記第1面側の面のうち、少なくとも一以上に積層される、[15]に記載のジッパーテープ。
[17]前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンであり、前記剥離層は、ポリプロピレンを主成分とし、ポリエチレンを含有する樹脂組成物で形成されている、[15]または[16]に記載のジッパーテープ。
[18]前記ポリエチレンが、直鎖状低密度ポリエチレンである、[17]に記載のジッパーテープ。
[19]前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンであり、前記剥離層は、ポリエチレンを主成分とし、ポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成されている、[15]または[16]に記載のジッパーテープ。
[20]互いに対向する第1面および第2面を有する袋本体と、前記第1面に前記第1基部条片、前記切裂き条片部および前記接合部が接合された[1]から[19]のいずれか一項に記載のジッパーテープと、備え、少なくとも前記第1面および前記切裂き条片部に形成された第1の切り込みによってタブが形成される、ジッパーテープ付き袋。
[21]前記タブは、前記第1面および前記第2面がシールされるシール部に形成され、前記第1の切り込みは、前記第1面から前記第2面まで貫通して形成され、前記第2面側から形成されて、前記切裂き条片部を貫通しない第2の切り込みがさらに形成される、[20]に記載のジッパーテープ付き袋。
[22]前記タブを囲む領域で前記第1面および前記第2面がシールされる囲みシール部を有する、[20]に記載のジッパーテープ付き袋。
[23][21]に記載のジッパーテープ付き袋の製造方法であって、前記袋本体に、シール装置を用いて前記シール部を形成する工程と、前記シール部に、前記袋本体を挟んで対向する切断刃および受台を用いて第2の切り込みを形成する工程とを含むジッパーテープ付き袋の製造方法。
[24][22]に記載のジッパーテープ付き袋の製造方法であって、前記袋本体に、シール装置を用いて前記囲みシール部を形成する工程と、前記囲みシール部で囲まれた領域に、前記袋本体を挟んで対向する切断刃および受台を用いて第1の切り込みを形成する工程とを含むジッパーテープ付き袋の製造方法。
[25]互いに対向する第1面および第2面を有する袋本体と、前記第1面に接合された第1基部条片と、前記第1基部条片に部分的に対向し、前記第1基部条片とは対向しない領域における接合部で前記第1面に接合された第2基部条片と、前記第1および第2基部条片からそれぞれ突出し互いに係合可能な第1および第2の係合部と、を有するジッパーテープ本体と、前記第2基部条片が前記第1面に対向し前記第1基部条片に対向しない領域に配置される切裂き条片部と、を備え、前記ジッパーテープ本体は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、前記切裂き条片部は、前記ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成され、前記第1面に接合された切裂き条片本体と、少なくとも前記第1面に接合された面とは反対側の面の少なくとも一部で前記切裂き条片本体に積層され、前記ポリオレフィン系樹脂に対し剥離性を有する樹脂組成物で形成される剥離層と、を有する、ジッパーテープ付き袋。
[26]前記第1基部条片と前記第1面、前記接合部と前記第1面、または前記切裂き条片本体と前記第1面の少なくともいずれかは、シール層を介して接合されている、[25]に記載のジッパーテープ付き袋。
【0007】
本発明によれば、ジッパーテープ本体と切裂き条片とを、単一のポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成したことによって、ジッパーテープ本体と切裂き条片を異なるポリオレフィン系樹脂で形成する構成と比較して、ジッパーテープ全体における単一のポリオレフィン系樹脂の配合割合を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の平面図である。
【
図2】
図1に示したジッパーテープ付き袋のII-II線断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の部分的な平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の変形例に係るジッパーテープ付き袋の断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の部分的な平面図である。
【
図8】本発明の実施形態の第1の変形例に係るジッパーテープの断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の第2の変形例に係るジッパーテープの部分的な断面図である。
【
図10】本発明の実施形態の第3の変形例に係るジッパーテープの部分的な断面図である。
【
図11】本発明の実施形態の第3の変形例に係るジッパーテープが第2基部条片に接合された様子を示す断面図である。
【
図12】本発明の実施形態の第4の変形例に係るジッパーテープの部分的な断面図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係るジッパーテープの断面図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態の変形例に係るジッパーテープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の平面図であり、
図2は
図1に示したジッパーテープ付き袋のII-II線断面図である。図示されているように、ジッパーテープ付き袋100は、収納空間SPに面する第1面111Aを有するフィルム110によって形成される袋本体と、フィルム110の第1面111Aに接合されるジッパーテープ120を含む。
【0011】
本実施形態において、フィルム110は第1面111Aに加えて第1面111Aに対向する第2面111Bを有し、第1面111Aおよび第2面111Bはそれぞれ収納空間SPに面する。すなわち、フィルム110によって形成される袋本体は、互いに対向する第1面111Aおよび第2面111Bを有する。
【0012】
フィルム110は、例えば単層または多層の熱可塑性樹脂で形成される。より具体的には、フィルム110は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成されてもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)のいずれであってもよい。フィルム110が多層である場合、表基材に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)、または二軸延伸ナイロン(ONy)を用いてもよい。これらは、化石燃料由来の樹脂に限られず、環境に配慮したバイオプラスチックであってもよいし、化石燃料由来の樹脂とバイオプラスチックの混合物を用いてもよい。また、フィルム110はアルミニウム蒸着やアルミニウム箔の積層などによって形成された無機材料の層を含んでもよい。
【0013】
なお、本実施形態では、2枚のフィルム110がトップシール部112、ボトムシール部113およびサイドシール部114において互いに接合されることによって袋本体を形成しているが、別の実施形態では、1枚のフィルム110がサイドシール部114に対応する部分で折り返されてもよい。また、ボトムシール部113またはサイドシール部114に対応する部分でフィルム110が内側に折り込まれた部分、いわゆるガセットが形成されてもよい。この場合、ガセットは、フィルム110によって形成されてもよいし、フィルム110に接合された別のフィルムによって形成されてもよい。また、ジッパーテープ付き袋100は、底部にガセットが形成されることによって立てて置くことが可能なスタンディングパウチであってもよい。
【0014】
ジッパーテープ120は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片部140を断面形状に含む長尺状の部材である。ジッパーテープ120は、ヒートシールまたは超音波シールなどによって接合されることによって、フィルム110に取り付けられる。
【0015】
ジッパーテープ本体130は、第1基部条片131Aと、第1基部条片131Aに対向する第2基部条片131Bと、基部条片131A,131Bからそれぞれ突出し互いに係合可能な第1および第2の係合部132A,132Bを含む。第2基部条片131Bは、第1基部条片131Aよりも幅広に形成されており、第1基部条片131Aに部分的に対向している。第2基部条片131Bは、第1基部条片131Aとは対向しない領域(延長部)を有する。
なお、第2基部条片131Bは、必ずしも第1基部条片131Aよりも幅広に形成されていなくてもよい。
【0016】
第1基部条片131Aは、フィルム110の第1面111Aに接合されるように構成されている。第1基部条片131Aは、第1の係合部132Aが形成されている面と反対側の面で第1面111Aに接合される。
【0017】
第2基部条片131Bは、第1基部条片131Aとは対向しない領域における接合部134で第1面111Aと接合されるように構成されている。
すなわち、本実施形態のジッパーテープ付き袋100では、第1基部条片131Aがフィルム110の第1面111Aに接合され、第1基部条片131Aよりもトップシール部112側に第2基部条片131Bの接合部134が接合される。
【0018】
ジッパーテープ本体130は、第1および第2の係合部132A,132Bが互いに係合および係合解除が可能な形状であることによって、ジッパーテープ付き袋100を封止および再封することを可能にする。なお、第1および第2の係合部132A,132Bの形状は、図示された例に限られず、爪状、鉤状、または瘤状などを組み合わせた公知の各種のジッパーの係合部の形状にすることが可能である。図示された例では第1の係合部132Aが雄型、第2の係合部132Bが雌型であるが、逆であってもよい。また、図示された例では1対の係合部が配置されているが、複数対の係合部が配置されてもよい。
【0019】
ジッパーテープ本体130の幅方向で切裂き条片部140側に位置する第1基部条片131Aの端部には、第1基部条片131Aよりも厚肉に形成された第1凸部133が形成される。
【0020】
上記のようなジッパーテープ本体130は、ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている。より具体的には、ジッパーテープ本体130は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成することができる。これらのポリエチレンは、化石燃料由来の樹脂に限られず、環境に配慮したバイオプラスチック(例えば、バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂等)であってもよいし、化石燃料由来の樹脂とバイオプラスチックの混合物を用いてもよい。バイオプラスチックとしては、バイオポリエチレンが好ましい。樹脂組成物には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、または着色剤などが添加されてもよい。
【0021】
切裂き条片部140は、第2基部条片131Bが第1面111Aに対向し第1基部条片131Aに対向しない領域Rに配置される。具体的には、切裂き条片部140は、ジッパーテープ本体130の幅方向について、接合部134と第1基部条片131Aの端部(トップシール部112側の端部)との間に配置される。
【0022】
図示された例において、切裂き条片部140は、第1基部条片131Aの端部に第1基部条片131Aと一体となるように接続されている。切裂き条片部140は、第1面111Aに接合されるように構成された切裂き条片本体141と、第1面111Aに接合される面とは反対側の面で切裂き条片本体141に積層された剥離層142と、を有する。
切裂き条片本体141は、ジッパーテープ本体130と同様に、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている。図示された例において、切裂き条片本体141の厚さは、第1凸部133と同程度である。
【0023】
本実施形態の剥離層142は、切裂き条片本体141の第2基部条片131Bを向く面に形成される。剥離層142は、ポリエチレンに対し剥離性を有する樹脂組成物で形成されている。ここで、「剥離性を有する」とは、対象物に対する剥離強度が、20N/15mm以下であり、好ましくは16N/15mm以下であり、さらに好ましくは10N/15mm以下であることをいう。
剥離層142は、具体的には、例えば、ポリプロピレン(PP)を主成分とする樹脂組成物で形成される。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)のいずれであってもよいし、これらの混合物でもよい。切裂き条片本体141の第2基部条片131Bを向く面に積層される剥離層142がポリエチレンに対し剥離性を有する樹脂組成物で形成されることによって、開封時に切裂き条片部140を第2基部条片131Bから容易に剥離させることができる。
なお、本発明において、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物と、ポリプロピレン、またはポリスチレンを主成分とする樹脂組成物、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物と、ポリプロピレンとポリスチレンの混合物を主成分とする樹脂組成物、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物と、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物を主成分とする樹脂組成物、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物と、ポリスチレンおよびポリエチレンの混合物を主成分とする樹脂組成物、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物と、ポリプロピレンとポリエステル、およびポリエチレンの混合物を主成分とする樹脂組成物は、上記の通り剥離性を有するが、本発明における、他の樹脂組成物の組み合わせである場合における剥離性は、熱傾斜試験により確認できる。
熱傾斜試験では、熱傾斜試験機を用い、230℃、0.2MPaで1秒間シールした際の剥離強度が20N/15mm以下であり、好ましくは16N/15mm以下であり、さらに好ましくは10N/15mm以下であることを確認する。
【0024】
図3は第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋100の部分的な平面図であり、
図4は
図3のIV-IV線断面図である。
本実施形態では、ジッパーテープ120の端部付近で、サイドシール部114が袋本体の幅方向中央に向かって張り出したシール部148が形成され、シール部148に、第1の切り込み144Aによって開封用のタブ145が形成されている。
図4(a)に示されるように、第1の切り込み144Aは、第1面111A、切裂き条片部140、第2基部条片131Bおよび第2面111Bを貫通して形成されている。
【0025】
さらに、シール部148には、タブ145に隣接して、第2面111B側からの第2の切り込み144Bが形成されている。第2の切り込み144Bは、第2面111B側から形成されて第2基部条片131Bを貫通している。第2の切り込み144Bは、第1面111Aおよび切裂き条片部140を貫通しない。なお、第2の切り込みは、第2基部条片131Bを完全に貫通させる必要はない。
ユーザは、
図4(b)に示されるようにタブ145を起点にして第1面111Aから第2面111Bまでの4層を引き起こすことができる。ユーザがタブ145を摘持して引っ張ると、第2の切り込み144Bによって、切裂き条片本体141と第2基部条片131Bとの間が分離され、第1面111Aだけが切裂き条片本体141に沿って切り裂かれることによって袋100が開封される。
この際、第2基部条片131Bと剥離層142との間の界面で剥離が発生するが、切裂き条片本体141と剥離層142との間の界面で剥離が発生する場合もある。
【0026】
次に、第1の切り込み144A(タブ145)と、第2の切り込み144Bを有するジッパーテープ付き袋の製造方法について説明する。
ジッパーテープ付き袋の製造方法は、袋本体にシール装置を用いてシール部148を形成する工程と、シール部148に、袋本体を挟んで対向する切断刃および受台を用いて第1の切り込み144Aおよび第2の切り込み144Bを形成する工程とを含む。
【0027】
以上で説明した本発明の第1の実施形態によれば、ジッパーテープ本体130と切裂き条片本体141とを、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成したことによって、例えば切裂き条片本体141をポリプロピレンで形成する構成と比較して、ジッパーテープ120全体におけるポリエチレンの配合割合を高め、リサイクル適性を向上させることができる。
本発明において、主成分とは、樹脂組成物中の配合量が50%質量以上であることをいい、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。主成分とする樹脂組成物中の配合量の上限は100%である。この場合であっても、性能に影響を与えない範囲での不純物の含有は許容される。不純物として、一般的な添加剤など、脂肪酸アミド、シリカなどの無機物、酸化チタンなどの顔料などが例示される。
なお、樹脂組成物中の主成分である樹脂は、例えばIR法により確認することができる。なお、ポリエチレン以外の樹脂組成物としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、エラストマー(エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの改質剤)、COCなどが挙げられる。
【0028】
その一方で、本実施形態では、切裂き条片部140の第1面111Aに接合される面とは反対側の面に剥離層142を形成することによって、切裂き条片本体141をジッパーテープ本体130と同じくポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成した場合であっても、開封時の抵抗感を少なくし、ジッパーテープ付き袋100の開封を容易とすることができる。
【0029】
また、第1基部条片131Aの端部に第1凸部133が形成されるため、切裂き条片本体141が引っ張られたときに第1面111Aの切り裂きが第1凸部133に沿って直線状に進展するように誘導される。これによって、第1面111Aに形成される開口の形状を安定させることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としてポリエチレンを採用したが、これに限ることはない。例えば、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレンを採用し、剥離層142をポリプロピレンに対し剥離性を有する樹脂組成物であるポリエチレンで形成してもよい。
また、袋100を構成するフィルム110は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂と同一のポリオレフィン系樹脂で形成することが好ましい。すなわち、本実施形態のフィルム110の主成分は、ポリエチレンであることが好ましい。この場合、ジッパーテープ付き袋100全体において、ポリエチレン以外の樹脂組成物の配合量は、5質量%以下であることが好ましい。同様に、ジッパーテープ本体および切裂き条片本体を形成するポリオレフィン系樹脂がポリプロピレンである場合、フィルムの主成分はポリプロピレンであることが好ましく、ジッパーテープ付き袋全体において、ポリプロピレン以外の樹脂組成物の配合量は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
また、本実施形態では、剥離層142は、切裂き条片本体141の第1面111Aに接合される面とは反対側の面全体に形成されているが、これに限ることはない。例えば、剥離層142は、切裂き条片部140の幅方向(
図2における上下方向)の少なくとも一部に積層されていればよい。
【0032】
また、
図5の変形例に示されるように、第1基部条片131A、接合部134および切裂き条片本体141における第1面111Aに接合される面にシール層を形成してもよい。図示された例では、第1基部条片131Aの第1面111Aに接合される面に第1のシール層146Aが形成される。第1基部条片131Aは、第1の係合部132Aが形成されている面と反対側の面で第1のシール層146Aを介して第1面111Aに接合される。同様に、図示された例では、接合部134の第1面111Aに接合される面に第2のシール層146Bが形成され、切裂き条片本体141の第1面111Aに接合される面に第3のシール層146Cが形成される。
【0033】
また、切裂き条片部140と第1基部条片131Aとの接続部における第1面111Aを向く面にもシール層を形成してもよい。
【0034】
シール層を形成する樹脂は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としてポリエチレンを採用した場合、例えば融点110℃以下のポリエチレンが好ましく、融点105℃以下のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。シール層を形成する樹脂は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレンを採用した場合、融点150℃以下のポリプロピレンが好ましい。
【0035】
〔第2の実施形態〕
図6は、本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の部分的な平面図であり、
図7は
図6のVII-VII線断面図である。なお、以下で説明する囲みシール部およびタブに関する構成を除いて本実施形態の構成は上記の第1の実施形態と同様であるため、重複した詳細な説明は省略する。
図6に示されるように、本実施形態のジッパーテープ付き袋は、サイドシール部114に加えて囲みシール部115を有している。サイドシール部114の一部および囲みシール部115は、囲み形状のシール部を形成する。
本実施形態の第1の切り込み144A(タブ145)は、サイドシール部114および囲みシール部115によって囲まれる領域に形成されている。また、本実施形態のジッパーテープ付き袋100には、第2の切り込み114Bは形成されていない。
【0036】
本実施形態のジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141は、第1の実施形態のジッパーテープ120と同様にポリオレフィン系樹脂であるポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている。なお、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンに限らず、ポリプロピレンを採用してもよく、剥離層をポリプロピレンに対し剥離性を有する樹脂組成物であるポリエチレンで形成してもよい。
【0037】
図7(a)に示されるように、第1の切り込み144Aは第1面111A、引き裂き条片本体141および第2基部条片131Bを貫通して形成されているため、ユーザは
図7(b)に示されるように切り込み144Aによって形成されたタブ145を起点にして第1面111A側から上記の3層を引き起こすことができる。ユーザがタブ145を摘持して引っ張ると、
図7(c)に示されるように囲みシール部115で第2基部条片131Bが破断し、第1面111Aだけが引き裂き条片本体141に沿って引き裂かれることによって、袋が開封される。
【0038】
次に、囲みシール部115を有するジッパーテープ付き袋の製造方法について説明する。
ジッパーテープ付き袋の製造方法は、袋にシール装置を用いて囲みシール部115を形成する工程と、囲みシール部115で囲まれた領域に、袋を挟んで対向する切断刃および受台を用いて第1の切り込み144Aを形成する工程とを含む。ここで、シール部148の形成と、切り込み144A,144Bの形成とはどちらが先に実施されてもよいが、ヒートシールの熱による切り込みの融着を防止するためにはシール部148の形成を先に実施することが好ましい。
【0039】
次に、本発明の実施形態の変形例に係るジッパーテープについて説明する。
図8は、第1の変形例のジッパーテープ120Bの断面図である。本変形例のジッパーテープ120Bにおいて、切裂き条片部140は第2基部条片131Bに積層されている。
ジッパーテープ付き袋の製造の際は、シール層146A,146B,146Cを介してジッパーテープ120Bが第1面111A(
図1参照)に接合される。
【0040】
図9は、第2の変形例に係るジッパーテープの部分断面図である。
図9に示されるように、本変形例の切裂き条片部140の剥離層142Bは、第3のシール層146Cが形成される面以外のすべての面で切裂き条片本体141に積層されている。
本変形例によれば、切裂き条片部140の第1基部条片131A側についても剥離しやすくなるため、開封の際の抵抗をより低減することができる。また、例えば切裂き条片本体141または第2基部条片131Bの樹脂が剥離層を回り込んで溶着することを防止し、開封時に切裂き条片部140を第2基部条片131Bから容易かつ確実に分離することができる。
【0041】
図10は、第3の変形例に係るジッパーテープの部分断面図である。
図11は、ジッパーテープが第2基部条片に接合された様子を示す断面図である。
図10に示されるように、本変形例の切裂き条片部140は、第3のシール層146Cとは反対側の面で剥離層142の上にさらに積層された追加の層147を有する。追加の層147は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141と同様に、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている。
図11に示されるように、追加の層147は、ジッパーテープ120をフィルム110にヒートシールなどによって接合したときには第2基部条片131B側に接合される。
【0042】
本変形例によれば、追加の層147が第2基部条片131Bに接合されることで、例えば切裂き条片本体141または第2基部条片131Bの樹脂が剥離層142を回り込んで溶着することを防止し、開封時に切裂き条片部140を第2基部条片131Bから容易かつ確実に分離することができる。
【0043】
なお、追加の層147は、
図12に示されるように第2の変形例に係る切裂き条片部140に設けることもできる。
【0044】
上記第2の変形例および第3の変形例において、第1の実施形態の変形例などと同様に、第1基部条片131A、接合部134(
図5参照)および切裂き条片本体141における第1面111A(
図2参照)に接合される面にシール層を形成してもよい。また、切裂き条片部140と第1基部条片131Aとの接続部に、第1面111Aに接合するためのシール層を形成してもよい。
シール層を形成する樹脂は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としてポリエチレンを採用した場合、例えば融点110℃以下のポリエチレンが好ましく、融点105℃以下のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。シール層を形成する樹脂は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレンを採用した場合、融点150℃以下のポリプロピレンが好ましい。
【0045】
〔第3の実施形態〕
図13は、本発明の第3の実施形態に係るジッパーテープの断面図である。なお、本実施形態の構成において上記の第1の実施形態と同様の部分については詳細な説明は省略する。
【0046】
図13に示されるように、本実施形態の切裂き条片部140の剥離層142Cは、フィルム110の第1面111A(
図2参照)に接合される面(第3のシール層146Cが形成されている面)および第1基部条片131Aとの接続面F1以外のすべての面で切裂き条片本体141に積層されている。
すなわち、剥離層142Cは、切裂き条片本体141の第2基部条片131Bを向く面と、切裂き条片本体141の第1基部条片131Aと接続される側とは反対側の面と、切裂き条片本体141の第1基部条片131Aと接続される側の面であって、第1基部条片131Aとの接続面F1を除く面F2に積層されている。
【0047】
本実施形態の剥離層142Cは、ポリプロピレン(PP)と、ポリエチレン(PE)とを含有する。ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141がポリエチレンを主成分とする樹脂組成物で形成されている場合、剥離層142Cにおけるポリプロピレンとポリエチレンとの質量比PP:PEは、PP:PE=85:15~50:50が好ましく、80:20~55:45がより好ましく、75:25~60:40がさらに好ましい。剥離層142Cにおけるポリエチレンは低密度ポリエチレン(LDPE)であることがより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であることがさらに好ましい。
なお、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンに限らず、ポリプロピレンを採用してもよく、この場合、剥離層142CにおけるPP:PEは、PP:PE=15:85~50:50が好ましく、20:80~45:55がより好ましく、25:75~40:60がさらに好ましい。
また、剥離層142Cは白色顔料などの着色剤を含んでもよい。
【0048】
本実施形態のジッパーテープは、第1実施形態の変形例などと同様に、第1基部条片131A、第2基部条片131Bの接合部134、および切裂き条片本体141における第1面111Aと接合される面に、シール層146A,146B,146Cが形成されてよい。
【0049】
本実施形態において、切裂き条片部140と第1基部条片131Aとの接続部に第1面111A(
図2参照)に接合するためのシール層を形成してもよい。なお、接続部と第1面111Aとの間に隙間が形成される場合は、接続部にシール層はなくてもよい。
シール層を形成する樹脂は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としてポリエチレンを採用した場合、例えば融点110℃以下のポリエチレンが好ましく、融点105℃以下のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。シール層を形成する樹脂は、ジッパーテープ本体130および切裂き条片本体141を形成するポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレンを採用した場合、融点150℃以下のポリプロピレンが好ましい。
【0050】
上記実施形態によれば、剥離層142Cが第1基部条片131Aとの接続面F1に形成されず、切裂き条片本体141と第1基部条片131Aとが剥離層142Cを介することなく接続されている。これにより、例えばジッパーテープの搬送時や、製袋時に機械に挿入する際などに意図せず切裂き条片本体141と第1基部条片131Aとの間で切断が発生することを抑制することができる。
【0051】
また、剥離層142Cが、切裂き条片本体141の第1基部条片131Aと接続される側の面であって、第1基部条片131Aとの接続面F1を除く面F2に積層されていることによって、例えばジッパーテープ付き袋の製袋の際などに切裂き条片本体141の面F2とその他の部分が溶着されるなどし、開封性が損なわれることを防止することができる。
【0052】
また、剥離層142Cにおけるポリプロピレンとポリエチレンとの質量比を上記質量比とし、ポリプロピレンに加えポリエチレンを含有させる構成とすることによって、サイドシール部114(
図1参照)でジッパーテープ120を潰し加工した際に、切裂き条片部140と第2基部条片131Bとの間が界面剥離して、サイドシール部114に隙間が形成されてそこから内容物がリークすることをより抑制することができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、剥離層142Cは、切裂き条片本体141の第1面111Aに接合される面および第1基部条片131Aとの接続面F1以外のすべての面で切裂き条片本体141に積層されているがこれに限ることはない。剥離層142Cは、少なくとも切裂き条片本体141の第1面111Aに接合される面とは反対側の面に積層されていればよい。剥離層142Cは、好ましくは、さらに切裂き条片本体141の第1基部条片131A側の面であって接続面F1よりも第2面111B側の面、切裂き条片本体141の第1基部条片131Aと反対側の面の少なくとも一方に積層されていればよく、これらの両方に積層されていることがより好ましい。すなわち、剥離層142Cは、切裂き条片本体141の第1基部条片131A側の面の全面に積層されている必要はない。
【0054】
また、上記実施形態では、剥離層142Cの主成分がポリプロピレンの場合に剥離層142Cにポリエチレンを含有させ、剥離層142Cの主成分がポリエチレンの場合に剥離層142Cにポリプロピレンを含有させてリークすることを抑制する構成としたが、これに限ることはない。例えば、第2基部条片131Bの切裂き条片部140と対向する部分にポリプロピレンとポリエチレンとを含有する層を設けてもよい。または、第2基部条片131Bにおける切裂き条片部140との対向部分にポリプロピレンを所定量配合してもよい。あるいは、第3変形例(
図10)のように、第3のシール層146Cとは反対側の面で剥離層142の上にさらに積層された追加の層147を設け、追加の層147にポリプロピレンやポリエチレンを含有させてもよい。
【0055】
また、
図14に示されるように、切裂き条片部140と第1基部条片131Aとの接続部の第1面111A向く面F3は、切裂き条片本体141の第1面111Aと接合される面、および第1基部条片131Aの第1面111Aと接合される面と同一面上とする必要はない。この場合、剥離層142Cは、切裂き条片本体141の第1基部条片131A側の面であって接続面F1よりも第1面111A側の面にも形成することが好ましい。また、剥離層142Cは、切裂き条片本体141の第1面111Aに接合される面とは反対側の面以外は、切裂き条片本体141の第1基部条片131A側は反対側の面、接続面F1よりも第1面111A側の面、および接続面F1よりも第2面111B側の面のうち、少なくとも一の面に積層されていればよい。
【実施例】
【0056】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例等の記載内容に何ら制約されるものではない。実施例では、ジッパーテープ付き袋を所定の製造装置を用いて製造した。袋本体を構成するフィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム12μmと直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)50μmをラミネートしたものである。剥離層142Cの原料構成は表1に示すものとした。表1において、PPはポリプロピレンであり、LLDPEは直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0057】
【0058】
<リーク評価>
まず、リーク評価について説明する。リーク評価では、ジッパーテープ付き袋にリーク液(商品名:株式会社タセト製 染色浸透探傷剤 FP-S)を封入した後、リークの有無などを評価した。
【0059】
リーク評価は、以下に示すような方法で行った。
(1)嵌合を開けて、リーク液を封入し、トップシール部112をシールした。その後、切裂き条片部を10回程度揉み込み、-0.06MPaの圧力下で30秒減圧した。
(2)リーク液封入後、3日間にわたって、リーク液が封入されたジッパーテープ付き袋を吊るして静置した。
【0060】
表1にリーク評価の結果を示す。表1のリーク評価の欄において、Aはリークが全く発生しなかったことを示し、Bはリーク液が滲んだものの許容範囲であることを示し、Cは切裂き条片部と第2基部条片との間の剥離によりリークが発生し、使用用途によっては制約が生じる可能性があることを示す。
【0061】
表1に示されるように、剥離層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有する実施例1~3では、切裂き条片部と第2基部条片との間の界面剥離によるリークの発生を抑制できることがわかった。特に、直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が30質量%の実施例2と40質量%の実施例3では、リーク液の滲みもないより良好な結果となった。一方で、剥離層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有しない実施例4では、切裂き条片部と第2基部条片との間の界面剥離によるリークが発生した。
【0062】
<剥離強度評価>
剥離強度評価は、以下に示すような方法で行った。
(1)熱傾斜試験機を用い、ヒートシール条件(ヒートシール温度230℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒)で切裂き条片部140と第2基部条片131Bとをヒートシールした。
(2)切裂き条片部140をプッシュプルゲージ(イマダ社製)を用い300mm/分の速度で引っ張り、シールされた切裂き条片部140と第2基部条片131Bを剥離させる際の最大強度を測定した。
【0063】
表1に示されるように、いずれの実施例も、剥離強度が、20N/15mmを下回る良好な結果となり、特に実施例1、実施例2、実施例4は剥離強度が、10N/15mmを下回るより良好な剥離性を有することが示された。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0065】
100…ジッパーテープ付き袋、111A…第1面、111B…第2面、115…囲みシール部、120…ジッパーテープ、130…ジッパーテープ本体、131A…第1基部条片,131B…第2基部条片,132A…第1の係合部、132B…第2の係合部、134…接合部、140…切裂き条片部、141…切裂き条片本体、142…剥離層、144A…第1の切り込み、144B…第2の切り込み、145…タブ、146A…第1のシール層,146B…第2のシール層,146C…第3のシール層,147…追加の層。