(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/20 20170101AFI20241118BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G06T7/20 300Z
H04N7/18 G
(21)【出願番号】P 2022020444
(22)【出願日】2022-02-14
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 智一
(72)【発明者】
【氏名】堺 浩
(72)【発明者】
【氏名】助川 寛
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-182100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0379079(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/20
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを処理する演算部を備え、
前記演算部は、
異なる視点から撮影された複数の元映像を合成した合成映像を生成し、
前記合成映像に対して前記合成映像に含まれる追跡対象の移動を追跡する追跡処理を行い、
前記追跡処理により取得された、前記合成映像における前記追跡対象の移動に関する第1追跡情報を、各前記元映像における前記追跡対象の移動に関する第2追跡情報に変換する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記合成映像を構成する複数の合成画像のそれぞれは、複数の前記元映像のそれぞれから抽出された複数の元画像を含み、
前記合成画像における複数の前記元画像の間には、前記追跡対象が表示されない隙間領域が形成される、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記合成画像に含まれる複数の前記元画像のそれぞれに、前記追跡処理の対象となる追跡領域を設定し、
前記追跡領域に存在する前記追跡対象に対してのみ前記追跡処理を行う、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記合成画像に含まれる複数の前記元画像のそれぞれに、前記追跡対象を認識する認識処理の対象となる認識領域を設定し、
前記認識領域に存在する前記追跡対象に対してのみ前記認識処理を施す、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記演算部は、
1つの前記合成画像に含まれる複数の前記元画像のうちの1つの前記元画像に前記追跡対象が認識された場合に、当該複数の元画像のうちの他の前記元画像を前記追跡対象が表示されない画像に加工する、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記追跡対象は、人の顔である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記元映像は、自動改札機を含む映像である、
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
異なる視点から撮影された複数の元映像を合成した合成映像を生成する工程と、
前記合成映像に対して前記合成映像に含まれる追跡対象の移動を追跡する追跡処理を行う工程と、
前記追跡処理により取得された、前記合成映像における前記追跡対象の移動に関する第1追跡情報を、各前記元映像における前記追跡対象の移動に関する第2追跡情報に変換する工程と、
を含む画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
異なる視点から撮影された複数の元映像を合成した合成映像を生成する処理と、
前記合成映像に対して前記合成映像に含まれる追跡対象の移動を追跡する追跡処理を行う処理と、
前記追跡処理により取得された、前記合成映像における前記追跡対象の移動に関する第1追跡情報を、各前記元映像における前記追跡対象の移動を示す第2追跡情報に変換する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、監視対象となる場所に設置された撮像装置により撮影された映像(動画像)を解析することにより人物等の移動体を追跡する追跡システムが利用されている。このような追跡システムにおいては、映像を構成する複数のフレーム(静止画像)のそれぞれで認識される追跡対象(例えば人の顔等)を複数のフレーム間で対応付けることにより当該追跡対象の移動に関する情報を取得する追跡処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の撮像装置により取得される複数の映像を利用して追跡処理を実施しようとする場合、従来技術においては、各映像を個別に解析する必要がある。そのため、処理負荷が高くなり、大きな計算資源が必要になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、複数の映像を利用した追跡処理を低い処理負荷で実現可能にする画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の画像処理装置は、演算部を備える。演算部は、異なる視点から撮影された複数の元映像を合成した合成映像を生成する。演算部は、合成映像に対して合成映像に含まれる追跡対象の移動を追跡する追跡処理を行う。演算部は、追跡処理により取得された、合成映像における追跡対象の移動に関する第1追跡情報を、各元映像における追跡対象の移動に関する第2追跡情報に変換する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の追跡システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の画像処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の画像処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の第1元画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の第2元画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の合成画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第1追跡情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の第2追跡情報の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の変換後の第1元画像の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の変換後の第2元画像の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の合成画像の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態の合成画像の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態の第2元画像の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態の合成画像の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態の加工後の合成画像の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第5実施形態の合成画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の追跡システム1の構成の一例を示すブロック図である。追跡システム1は、所定の監視領域を異なる視点から撮影して得られた複数の映像(動画像)を解析することにより、当該監視領域に存在する所定の追跡対象の動きを追跡するシステムである。監視領域は、特に限定されるべきものではないが、例えば、電車等の公共交通機関の自動改札機周辺の領域、企業等の出入口に設置されたセキュリティゲート周辺の領域等であり得る。追跡対象は、特に限定されるべきものではないが、例えば、人物の顔等であり得る。
【0010】
本実施形態の追跡システム1は、複数の撮像装置11A,11B、画像処理装置12及びネットワーク15を含む。複数の撮像装置11A,11Bのそれぞれは、監視領域を撮影して得られる映像の画像データを生成する電子機器であり、例えばレンズ、光電変換回路、マイクロプロセッサ等を利用して構成されるデジタルビデオカメラ等であり得る。画像処理装置12は、撮像装置11A,11Bにより生成された画像データに対して所定の演算処理を行う情報処理装置である。ネットワーク15は、画像処理装置12と他の電子機器との間での通信を可能にするコンピュータネットワークであり、例えば、適宜なLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を利用して構成され得る。なお、ここでは画像処理装置12と通信可能な電子機器の例として2つの撮像装置11A,11Bが例示されているが、3つ以上の撮像装置、映像の画像データを格納するファイルサーバ等がネットワーク15に接続されていてもよい。
【0011】
図2は、第1実施形態の画像処理装置12のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の画像処理装置12は、CPU(Central Processing Unit)21(演算部の一例)、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、ストレージ24、通信I/F(Interface)25及びユーザI/F26を備える。
【0012】
CPU21は、ROM23やストレージ24に記憶されたプログラムに従いRAM22を作業領域として使用して所定の演算処理を実行する。ストレージ24は、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリであり、プログラム、CPU21の処理に必要なデータ、CPU21の処理により生成されたデータ等の書き込み及び読み出しを可能にする。通信I/F25は、ネットワーク15を介して接続する撮像装置11A,11B等の電子機器と所定の規格に準ずる通信を確立するためのデバイスである。ユーザI/F26は、ユーザ(追跡システム1の管理者等)からの入力の受け付け、ユーザへの情報の出力等を可能にするデバイスであり、例えばキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル機構、ディスプレイ、スピーカ、マイク等であり得る。CPU21、RAM22、ROM23、ストレージ24、通信I/F25及びユーザI/F26は、データバスを介して接続されている。
【0013】
なお、
図2に示される構成は例示であり、画像処理装置12のハードウェア構成は上記に限られるものではない。画像処理装置12は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を利用して構成されてもよいし、複数のコンピュータが連携して動作するシステムであってもよい。
【0014】
図3は、第1実施形態の画像処理装置12の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の画像処理装置12は、入力部101、合成部102、追跡部103、変換部104及び出力部105を有する。これらの機能的構成要素101~105は、例えば、
図2に示すようなハードウェア構成及びプログラムの協働により実現され得る。なお、これらの機能的構成要素101~105は、物理的に分割された複数のハードウェアにより構成されてもよい。
【0015】
入力部101は、複数の撮像装置11A,11Bのそれぞれにより撮影された複数の元映像を入力する。本実施形態では、第1撮像装置11Aにより撮影された映像である第1元映像と、第2撮像装置11Bにより撮影された映像である第2元映像とを入力する場合について説明する。各元映像は、複数のフレームを構成する複数の元画像(静止画)が時系列に配列されて構成される。すなわち、第1元映像は、第1撮像装置11Aにより取得された複数の第1元画像が時系列に配列されて構成され、第2元映像は、第2撮像装置11Bにより取得された複数の第2元画像が時系列に配列されて構成される。第1元映像及び第2元映像は、撮像装置11A,11Bから直接入力されてもよいし、ファイルサーバ等を介して入力されてもよい。
【0016】
合成部102は、入力部101により入力された複数の元映像(本実施形態では第1元映像及び第2元映像)を合成した合成映像を生成する。合成映像は、複数のフレームを構成する複数の合成画像が時系列に配列されて構成される。複数の合成画像のそれぞれは、複数の元映像のそれぞれから抽出された複数の元画像を含む。すなわち、本実施形態の各合成画像は、第1撮像装置11Aにより撮影された第1元映像から抽出された第1元画像と、第2撮像装置11Bにより撮影された第2元映像から抽出された第2元画像とを含む。
【0017】
本実施形態の合成部102は、分解部111、調整部112及び連結部113を有する。分解部111は、元映像を複数の元画像(フレーム)に分解する。本実施形態では、第1元映像が複数の第1元画像に分解され、第2元映像が複数の第2元画像に分解される。調整部112は、分解部111により分解された複数の元画像を予め定められた指定フレームレートで連結部113に出力する。指定フレームレートは、全元映像に対して共通である。指定フレームレートが元映像のフレームレートより低い場合には、当該元映像の元画像は間引いて出力される。指定フレームレートが元映像のフレームレートより高い場合には、当該元映像の次の元画像が分解部111から出力されるまで、最後に出力された元画像を連結部113に出力し続ける。指定フレームレートは、適宜設定され得るものであるが、例えば、複数の元映像のフレームレートのうち、最も低いフレームレート、最も高いフレームレート、平均のフレームレート等であり得る。連結部113は、調整部112から同一タイミングで出力された複数の元画像を所定の配置で連結して1つの合成画像を生成し、順次生成される複数の合成画像を連結して合成映像を生成する。
【0018】
図4は、第1実施形態の第1元画像51Aの一例を示す図である。
図5は、第1実施形態の第2元画像51Bの一例を示す図である。第1元画像51Aは、第1撮像装置11Aにより取得された画像(第1元映像を構成する複数のフレームのうちの1つ)である。第2元画像51Bは、第1撮像装置11Aとは異なる位置に設置された第2撮像装置11Bにより取得された画像(第2元映像を構成する複数のフレームのうちの1つ)である。第1元画像51Aの出力タイミング(撮影時刻)と第2元画像51Bの出力タイミングとは対応している。
【0019】
本例の第1元画像51Aは、自動改札機55の2つの通路うちの一方を出場側から入場側に向かって撮影した画像であり、本例の第2元画像51Bは、自動改札機55の2つの通路うちの他方を出場側から入場側に向かって撮影した画像である。すなわち、第1撮像装置11Aは、自動改札機55の一方の通路を出場側から入場側へ向かって撮影できる位置に設置され、第2撮像装置11Bは、自動改札機55の他方の通路を出場側から入場側へ向かって撮影できる位置に設置されている。第1元画像51Aには、第1人物P1が自動改札機55の一方の通路を通過している状況が写されている。第2元画像51Bには、第2人物P2が自動改札機55の他方の通路に侵入しようとしている状況が写されている。本実施形態では、これらの人物P1,P2の顔F1,F2が追跡対象となる。
【0020】
図6は、第1実施形態の合成画像61の一例を示す図である。合成画像61は、第1元画像51Aと第2元画像51Bとを合成した画像であり、第1元画像51Aと第2元画像51Bとの間には隙間領域63が形成されている。隙間領域63は、追跡対象(本実施形態では人物の顔)が表示されない(含まれていない)領域である。隙間領域63の表示態様は特に限定されるものではないが、例えば、白色、黒色等の所定の色で塗りつぶされた領域を隙間領域63とすることができる。また、隙間領域63の幅Dは、隣接する2つの元画像(本実施形態では第1元画像51A及び第2元画像51B)の一方に表示された追跡対象(例えば第1元画像51A内の顔F1)が他方の元画像(第2元画像51B)に表示されないように設定される。このような構成を有する複数の合成画像61を時系列に配列することにより合成映像が生成される。
【0021】
図3に戻り、追跡部103は、合成部102により生成された合成映像に対して当該合成映像に含まれる追跡対象(本実施形態では顔F1,F2)の移動を追跡する追跡処理を行い、当該合成映像における追跡対象の移動に関する第1追跡情報を生成する。追跡処理には、合成画像61に存在する追跡対象を認識する認識処理(本実施形態では顔F1,F2を認識する顔認識処理)が含まれる。認識処理により、各合成画像61における検出対象の位置の特定、顔F1,F2の識別等が行われる。
図6において、認識処理により認識された顔F1,F2を囲むように設定された認識矩形65A,65Bが例示されている。当該認識矩形65A,65Bは、認識処理の結果に基づいて合成画像61毎に設定される。各合成画像61における認識矩形65A,65Bに基づいて、合成映像における各顔F1,F2の移動に関する第1追跡情報を取得できる。
【0022】
図7は、第1実施形態の第1追跡情報91の一例を示す図である。第1追跡情報91において、フレーム番号、認識矩形ID、矩形左上のX座標、矩形左上のY座標、矩形右下のX座標及び矩形右下のY座標の対応関係が規定されている。フレーム番号は、合成映像のフレーム列における位置、すなわち合成画像61を特定する情報であり、同一の合成画像61には同一のフレーム番号が付される。認識矩形IDは、合成画像61において認識された追跡対象(顔F1,F2)を囲むように設定された認識矩形65A,65Bを特定する情報であり、同一の追跡対象には同一の認識矩形IDが付される。矩形左上のX座標及び矩形左上のY座標は、合成画像61における各認識矩形65A,65Bの左上の点の位置(座標)を示す情報である。矩形右下のX座標及び矩形右下のY座標は、合成画像61における各認識矩形65A,65Bの右下の点の位置を示す情報である。例えば、点(X1,Y1)は、フレーム番号F1に対応する合成画像(例えば合成画像61)における認識矩形ID「I1」に対応する認識矩形(例えば認識矩形65A)の左上の座標を示し、点(X2,Y2)は、当該合成画像における認識矩形の右下の座標を示している。矩形左上のX座標、矩形左上のY座標、矩形右下のX座標及び矩形右下のY座標に基づいて、各合成画像61における各認識矩形65A,65Bの位置及びサイズを特定できる。
【0023】
図3に戻り、変換部104は、追跡部103により生成された第1追跡情報91を、各元映像(本実施形態では第1元映像又は第2元映像)における追跡対象の移動に関する第2追跡情報に変換する。変換部104は、合成画像61における認識矩形65A,65Bの位置及びサイズ(第1追跡情報91における矩形左上のX座標、矩形左上のY座標、矩形右下のX座標及び矩形右下のY座標)を、各元画像(第1元画像51A及び第2元画像51B)における認識矩形の位置及びサイズに変換する。
【0024】
図8は、第1実施形態の第2追跡情報92の一例を示す図である。第2追跡情報92において、撮像装置番号、フレーム番号、認識矩形ID、矩形左上のX座標、矩形左上のY座標、矩形右下のX座標及び矩形右下のY座標の対応関係が規定されている。撮像装置番号は、元映像を撮影した撮像装置を特定する情報である。第2追跡情報92におけるフレーム番号及び認識矩形IDは、第1追跡情報91におけるフレーム番号及び認識矩形IDと共通である。第2追跡情報92における矩形左上のX座標及び矩形左上のY座標は、元画像(第1元画像51A及び第2元画像51B)における認識矩形の左上の点の位置を示す情報である。第2追跡情報92における矩形右下のX座標及び矩形右下のY座標は、元画像における認識矩形の右下の点の位置を示す情報である。例えば、点(S1,T1)は、第1撮像装置11Aにより撮影された複数の元画像のうちフレーム番号F1に対応する元画像(例えば第1元画像51A)における認識矩形の左上の座標を示し、点(S2,T2)は、当該元画像における認識矩形の右下の位置を示している。
【0025】
図9は、第1実施形態の変換後の第1元画像51Aの一例を示す図である。
図10は、第1実施形態の変換後の第2元画像51Bの一例を示す図である。
図9に示されるように、変換部104による変換後の第1元画像51Aには、顔F1に対応する認識矩形71Aが設定される。また、
図10に示されるように、変換部104による変換後の第2元画像51Bには、顔F2に対応する認識矩形71Bが設定される。認識矩形71A,71Bの位置及びサイズは、上述したような第2追跡情報92における矩形左上のX座標、矩形左上のY座標、矩形右下のX座標及び矩形右下のY座標に基づいて特定される。
【0026】
図3に戻り、出力部105は、変換部104により生成された第2追跡情報92を出力する。第2追跡情報92の出力方法や利用方法は特に限定されるべきものではないが、例えば、第2追跡情報92は、所定の解析装置に出力され、不審者の検知等に利用されてもよい。また、出力部105は、第2追跡情報92に基づいて生成される、
図9及び
図10に示されるような第1元画像51A(第1元映像)及び第2元画像51B(第2元映像)を所定の解析装置に出力してもよい。
【0027】
上記のように、本実施形態によれば、異なる視点から撮影された複数の元映像を合成した合成映像に対して追跡処理が行われる。そして、当該追跡処理の結果として得られる、合成映像における追跡対象の移動に関する第1追跡情報が、各元映像における追跡対象の移動に関する第2追跡情報に変換される。これにより、複数の元映像のそれぞれに対して個別に追跡処理を行う場合よりも処理負荷を軽減でき、複数の元映像を利用した高精度な追跡処理を低い処理負荷で実現できる。
【0028】
以下、他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態と同一又は同様の箇所については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0029】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態の合成画像61の一例を示す図である。本実施形態では、合成画像61に追跡領域81A,81Bが設定され、追跡領域81A,81Bに存在する追跡対象(顔F1,F2)に対してのみ追跡処理が行われる。
【0030】
図11に例示される合成画像61には、第1元画像51Aに対応する追跡領域81Aと、第2元画像51Bに対応する追跡領域81Bとが設定されている。各追跡領域81A,81Bは、所定動作に対応する追跡対象のみを追跡し、当該所定動作に対応しない追跡対象を追跡しないように設定される。本実施形態の所定動作は、自動改札機55の通路を通過する動作である。すなわち、本実施形態においては、自動改札機55の通路を通過する人物の顔のみを追跡し、自動改札機55の通路以外の場所にいる人物の顔を追跡しないように設定される。また、隣接する2つの追跡領域81A,81Bの間隔D1は、一方の追跡領域(例えば追跡領域81A)に表示された追跡対象(例えば顔F1)が他方の追跡領域(例えば追跡領域81B)に表示されないように設定される。当該間隔D1の調整は、隙間領域63の幅Dを調整することにより実現できる。
【0031】
本実施形態によれば、所定動作を行う追跡対象のみを効率的に追跡できる。
【0032】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の合成画像61の一例を示す図である。本実施形態では、合成画像61に認識領域82A,82Bが設定され、認識領域82A,82Bに存在する追跡対象(F1,F2)に対してのみ認識処理が行われる。
【0033】
図12に例示される合成画像61には、第1元画像51Aに対応する認識領域82Aと、第2元画像51Bに対応する認識領域82Bとが設定されている。各認識領域82A,82Bは、所定動作に対応する追跡対象のみを認識し、当該所定動作に対応しない追跡対象を認識しないように設定される。本実施形態の所定動作は、第2実施形態と同様に、自動改札機55の通路を通過する動作である。すなわち、本実施形態においては、自動改札機55の通路を通過する人物の顔のみを認識し、自動改札機55の通路以外の場所にいる人物の顔を認識しないように設定される。また、隣接する2つの認識領域82A,82Bの間隔D2は、一方の認識領域(例えば認識領域82A)に表示された追跡対象(例えば顔F1)が他方の認識領域(例えば認識領域82B)に表示されないように設定される。当該間隔D2の調整は、隙間領域63の幅Dを調整することにより実現できる。
【0034】
本実施形態によれば、所定動作を行う追跡対象のみを効率的に認識できる。
【0035】
(第4実施形態)
本実施形態では、合成画像61に含まれる複数の元画像のうちの1つの元画像(例えば第1元画像51A)に追跡対象(例えば顔F1)が認識された場合に、他の元画像(例えば第2元画像51B)を追跡対象が表示されない(含まれていない)画像に加工する。
【0036】
図13は、第4実施形態の第2元画像51Bの一例を示す図である。本実施形態の第2元画像51Bは、第1元画像51A(
図4参照)と同一の通路を反対側(入場側)から撮影した画像である。すなわち、本実施形態の第2撮像装置11Bは、第1撮像装置11Aが撮影する自動改札機55の通路と同じ通路を第1撮像装置11Aとは反対側から撮影できるように設置されている。
【0037】
図14は、第4実施形態の合成画像61の一例を示す図である。
図14に例示される合成画像61は、
図4に示される第1元画像51Aと
図13に示される第2元画像51Bとを合成した画像である。当該合成画像61において、第1元画像51Aに写される人物P1と第2元画像51Bに写される人物P1とは同一人物であり、第1元画像51Aには当該人物P1の前面が写され、第2元画像51Bには当該人物P1の背面が写されている。この場合、合成画像61の第1元画像51Aが表示される領域で人物P1の顔F1が認識される。
【0038】
本実施形態では、上記のように一方の元画像(第1元画像51A)で顔F1が認識されると、他方の元画像(第2元画像51B)が、追跡対象である顔が表示されない(含まれていない)画像に加工される。
【0039】
図15は、第4実施形態の加工後の合成画像61の一例を示す図である。上記のように第1元画像51Aで顔F1が認識されると、第2元画像51Bが白、黒等の所定の色で塗りつぶされた画像に加工される。なお、追跡対象が表示されない画像に加工する方法はこれに限定されるものではない。
【0040】
本実施形態によれば、同一の追跡対象が複数の元映像に含まれる可能性がない状況において、不必要な認識処理及び追跡処理の発生を回避できる。
【0041】
(第5実施形態)
図16は、第5実施形態の合成画像61の一例を示す図である。本実施形態の合成画像61は、4つの元画像51A,51B,51C,51Dが上下左右に配置されて構成されている。隙間領域63は、左右に隣接する元画像間(元画像51A,51B間及び元画像51C,51D間)だけでなく、上下に隣接する元画像間(元画像51A,51C間及び元画像51B,51D間)にも形成される。
【0042】
上述した他の実施形態においては、2つの元画像51A,51Bが隙間領域63を介して左右に配置される場合について説明したが、本実施形態のように、合成画像61は、3以上の元画像が上下左右に配列されて構成されてもよい。
【0043】
合成画像61を上記のように構成することにより、3以上の元映像が存在する場合であっても、上述した実施形態と同様に、複数の元映像を利用した高精度な追跡処理を低い処理負荷で実現できる。
【0044】
上述したような実施形態の機能を実現するための処理を演算部(コンピュータ)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することが可能なものである。また、当該プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布されてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…追跡システム、11A,11B…撮像装置、12…画像処理装置、15…ネットワーク、101…入力部、102…合成部、103…追跡部、104…変換部、105…出力部、51A,51B…元画像、55…自動改札機、61…合成画像、63…隙間領域、65A,65B,71A,71B…認識矩形、81A,81B…追跡領域、82A,82B…認識領域、91…第1追跡情報、92…第2追跡情報、F1,F2…顔、P1,P2…人物