(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法、リソグラフィ装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20241118BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2022030176
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 渉
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-302504(JP,A)
【文献】特開2002-372406(JP,A)
【文献】特開平10-270347(JP,A)
【文献】特開2019-028352(JP,A)
【文献】特開2006-295023(JP,A)
【文献】特開2018-081201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0291479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24,
9/00-9/02
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの位置を計測する計測装置であって、
前記ターゲットを、第1波長の光、及び、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光で照明する照明系と、
前記ターゲットからの光における波面収差を変更する波面変更部と、
前記波面変更部を制御する制御部と、を有し、
前記波面変更部は、前記第1波長の光が入射する第1領域と、前記第2波長の光が入射する第2領域と、を含み、
前記制御部は、
前記第1波長の光における第1波面収差及び前記第2波長の光における第2波面収差に基づいて、光軸に対して非対称な波面収差を補正するための補正波面を求め、前記補正波面に基づいて、前
記第1波面収差を補正するための第1補正波面が前記第1領域に生成され、前
記第2波面収差を補正するための第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御することを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記第1波長の光における第1波面収差及び前記第2波長の光における第2波面収差を検出する波面検出部を更に有し、
前記制御部は、前記波面検出部で検出された前記第1波面収差に基づいて、前記第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記波面検出部で検出された前記第2波面収差に基づいて、前記第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記波面検出部は、前記波面変更部を介して入射される前記第1波長の光及び前記第2波長の光を含む光に基づいて、前記第1波面収差及び前記第2波面収差を検出することを特徴とする請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1領域と前記第2領域とに対応させて前記第1波面収差と前記第2波面収差とを繋ぎ合わせた第3波面収差から、前記第1波面収差及び前記第2波面収差を補正するための補正波面を求め、
前記補正波面に基づいて、前記第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1波面収差と前記第2波面収差とを瞳面において径方向に繋ぎ合わせることで前記第3波面収差を求めることを特徴とする請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1領域と前記第2領域とに対応させて前記第1補正波面と前記第2補正波面とを繋ぎ合あわせて、前記第1波面収差及び前記第2波面収差を補正するための補正波面を求め、
前記補正波面に基づいて、前記第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1補正波面と前記第2補正波面とを瞳面において径方向に繋ぎ合わせることで前記補正波面を求めることを特徴とする請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記波面変更部は、前記ターゲットからの光を反射する反射面を形成する反射膜と、前記反射膜の形状を変形させるアクチュエータと、を含む形状可変ミラーを含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第1波面収差、前記第2波面収差、及び、前記ターゲットからの光における波面収差と前記ターゲットの位置の計測誤差との関係を示す情報に基づいて、前記第1波面収差及び前記第2波面収差を補正するための補正波面を求め、
前記補正波面に基づいて、前記波面変更部を制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記ターゲットからの光における波面収差と前記ターゲットの位置の計測値との関係を示す情報、及び、前記第1波面収差に基づいて、前記ターゲットの位置の計測値が目標値となる補正波面を求め、
前記補正波面に基づいて、前記第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項11】
前記波面変更部を介して前記ターゲットからの光を検出する検出部を更に有し、
前記制御部は、前記検出部で検出された前記ターゲットからの光に基づいて、前記ターゲットの位置を求めることを特徴とする請求項1乃至
10のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項12】
前記検出部と前記ターゲットとの間に配置された対物光学系を更に有し、
前記波面変更部は、前記対物光学系の瞳面に配置されていることを特徴とする請求項
11に記載の計測装置。
【請求項13】
前記第1波面収差及び前記第2波面収差は、前記検出部における波面収差を含むことを特徴とする請求項
11又は
12に記載の計測装置。
【請求項14】
前記ターゲットは、第1パターンと、第2パターンと、を含み、
前記制御部は、前記第1パターンと前記第2パターンとの相対位置を求めることを特徴とする請求項
11乃至
13のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項15】
ターゲットの位置を計測する計測装置であって、
前記ターゲットを、第1波長の光、及び、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光で照明する照明系と、
前記ターゲットからの光における波面収差を変更する波面変更部と、
前記波面変更部を制御する制御部と、を有し、
前記波面変更部は、前記第1波長の光が入射する第1領域と、前記第2波長の光が入射する第2領域と、を含み、
前記制御部は、前記第1波長の光における第1波面収差及び前記第2波長の光における第2波面収差に基づいて、前記第1波面収差を補正するための第1補正波面及び前記第2波面収差を補正するための第2補正波面が予め定められた焦点位置となる補正波面を求め、前記補正波面に基づいて、前記第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御することを特徴とする計測装置。
【請求項16】
ターゲットの位置を計測する計測装置であって、
前記ターゲットを、第1波長の光、及び、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光で照明する照明系と、
前記ターゲットからの光における波面収差を変更する波面変更部と、
前記波面変更部を介して前記ターゲットからの光を検出する検出部と、
前記波面変更部を制御する制御部と、を有し、
前記波面変更部は、前記第1波長の光が入射する第1領域と、前記第2波長の光が入射する第2領域と、を含み、
前記制御部は、前記第1波長の光における第1波面収差を補正するための第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2波長の光における第2波面収差を補正するための第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御し、前記検出部で検出された前記ターゲットからの光に基づいて、前記ターゲットの位置を求め、
前記第1波面収差及び前記第2波面収差は、前記検出部における波面収差を含むことを特徴とする計測装置。
【請求項17】
ターゲットを、第1波長の光、及び、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光で照明する照明系と、前記ターゲットからの光における波面収差を変更する波面変更部とを有する計測装置を用いて、前記ターゲットの位置を計測する計測方法であって、
前記波面変更部は、前記第1波長の光が入射する第1領域と、前記第2波長の光が入射する第2領域と、を含み、
前記計測方法は、
前記第1波長の光における第1波面収差、及び、前記第2波長の光における第2波面収差
に基づいて、光軸に対して非対称な波面収差を補正するための補正波面を求める工程と、
前記補正波面に基づいて、前記第1波面収差を補正するための第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2波面収差を補正するための第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御する工程と、
を有することを特徴とする計測方法。
【請求項18】
ターゲットを、第1波長の光、及び、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光で照明する照明系と、前記ターゲットからの光における波面収差を変更する波面変更部とを有する計測装置を用いて、前記ターゲットの位置を計測する計測方法であって、
前記波面変更部は、前記第1波長の光が入射する第1領域と、前記第2波長の光が入射する第2領域と、を含み、
前記計測方法は、
前記第1波長の光における第1波面収差及び前記第2波長の光における第2波面収差に基づいて、前記第1波面収差を補正するための第1補正波面及び前記第2波面収差を補正するための第2補正波面が予め定められた焦点位置となる補正波面を求める工程と、
前記補正波面に基づいて、前記第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御する工程と、
を有することを特徴とする計測方法。
【請求項19】
ターゲットを、第1波長の光、及び、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光で照明する照明系と、前記ターゲットからの光における波面収差を変更する波面変更部と、前記波面変更部を介して前記ターゲットからの光を検出する検出部とを有する計測装置を用いて、前記ターゲットの位置を計測する計測方法であって、
前記波面変更部は、前記第1波長の光が入射する第1領域と、前記第2波長の光が入射する第2領域と、を含み、
前記計測方法は、
前記第1波長の光における第1波面収差、及び、前記第2波長の光における第2波面収差を取得する工程と、
前記第1波面収差を補正するための第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2波面収差を補正するための第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御する工程と、
前記検出部で検出された前記ターゲットからの光に基づいて、前記ターゲットの位置を求める工程と、
を有し、
前記第1波面収差及び前記第2波面収差は、前記検出部における波面収差を含むことを特徴とする計測方法。
【請求項20】
パターンを基板に形成するリソグラフィ装置であって、
前記基板に設けられたマークをターゲットとし、前記ターゲットの位置を計測する請求項1乃至16のうちいずれか1項に記載の計測装置と、
前記計測装置で計測された前記ターゲットの位置に基づいて、前記基板を位置決めするステージと、
を有することを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項21】
レチクルのパターンを前記基板に投影する投影光学系を更に有することを特徴とする請求項
20に記載のリソグラフィ装置。
【請求項22】
請求項17
乃至19のうちいずれか1項に記載の計測方法を用いて、基板に設けられたマークをターゲットとし、前記ターゲットの位置を計測する計測工程と、
前記計測工程で計測された前記ターゲットの位置に基づいて、前記基板を位置決めする位置決め工程と、
前記位置決め工程で位置決めされた前記基板にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程で前記パターンが形成された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測方法、リソグラフィ装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化及び微細化が進み、基板上に形成すべきパターンの線幅が非常に小さくなってきているため、基板上にパターン(レジストパターン)を形成するリソグラフィ工程には、更なる微細化が要求されている。リソグラフィ工程で用いられるステップ・アンド・リピート方式やステップ・アンド・スキャン方式の露光装置は、原版からの光(露光光)を、投影光学系を介して基板上の所定の位置に結像させることで、基板上にパターンを形成する。従って、パターンの微細化の要求を満たすためには、原版と基板との相対位置を高精度に位置合わせ(アライメント)することが重要となる。また、パターンの微細化に伴い、基板上に形成されたパターンの重ね合わせ誤差の計測においても、基板上の異なる層(レイヤー)に形成されたパターンを高精度に計測することが重要となる。
【0003】
そこで、基板上に形成されたパターンなどのターゲットの位置を高精度に計測する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、ターゲット領域及びターゲット周辺領域(の物理的特性又は光学的特性)に対して、互いに異なる複数の波長の光を照射し、ターゲットからの光を検出する技術が開示されている。基板のプロセス処理においては、材料の物性や膜厚、ターゲットの形状などが変動する、所謂、プロセス変動が生じる場合がある。複数の波長の光を用いてターゲットの位置情報を取得することで、プロセス変動に対する計測誤差が低減されるため、ターゲットの位置を高精度に求めることが可能となる。特許文献1に開示された技術では、異なる波長の光を分割して透過させる分割波長選択フィルタを、光学系の内部に配置することで、異なる波長の光を同時に検出し、高速、且つ、高精度な計測を実現可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板上に形成されたターゲットからの光を検出する検出光学系において、収差補正が不十分である場合には、互いに異なる複数の波長の光を同時に検出する際に計測誤差が生じ、計測精度の低下を招いてしまう。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、ターゲットの位置を計測するのに有利な計測装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての計測装置は、ターゲットの位置を計測する計測装置であって、前記ターゲットを、第1波長の光、及び、前記第1波長とは異なる第2波長の光を含む光で照明する照明系と、前記ターゲットからの光における波面収差を変更する波面変更部と、前記波面変更部を制御する制御部と、を有し、前記波面変更部は、前記第1波長の光が入射する第1領域と、前記第2波長の光が入射する第2領域と、を含み、前記制御部は、前記第1波長の光における第1波面収差及び前記第2波長の光における第2波面収差に基づいて、光軸に対して非対称な波面収差を補正するための補正波面を求め、前記補正波面に基づいて、前記第1波面収差を補正するための第1補正波面が前記第1領域に生成され、前記第2波面収差を補正するための第2補正波面が前記第2領域に生成されるように、前記波面変更部を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、ターゲットの位置を計測するのに有利な計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一側面としての計測装置を説明するための図である。
【
図2】第1実施形態における計測部の計測処理を説明するための図である。
【
図3】第2実施形態における計測部を説明するための図である。
【
図4】第3実施形態における計測部を説明するための図である。
【
図5】第4実施形態における計測部を説明するための図である。
【
図6】第5実施形態における計測部を説明するための図である。
【
図7】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略図である。
【
図8】基板を露光する露光処理のシーケンスを説明するためのフローチャートである。
【
図9】計測装置に用いられる一般的な計測部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1(a)は、本発明の第1実施形態における計測装置100の構成を示す概略図である。計測装置100は、基板73(対象物上)の異なる層に設けられた複数のパターン(ターゲット)の相対位置を計測する重ね合わせ計測装置(重ね合わせ検査装置)としての機能を有する。また、計測装置100は、基板73に設けられたパターン(ターゲット)の位置を計測する位置計測装置としての機能も有する。計測装置100は、
図1(a)に示すように、基板73を保持する基板ステージWSと、計測部50と、制御部1100とを有する。
【0013】
基板73は、計測装置100によって位置合わせ誤差や重ね合わせ誤差が計測される対象物である。基板73は、例えば、半導体素子や液晶表示素子などのデバイスを製造するのに用いられる基板であって、具体的には、ウエハ、液晶基板、その他の被処理基板などを含む。
【0014】
基板ステージWSは、基板チャック(不図示)を介して基板73を保持し、基板駆動機構(不図示)に接続されている。基板駆動機構は、リニアモータなどを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向に基板ステージWSを駆動することで、基板ステージWSに保持された基板73を移動させることができる。また、基板ステージWSの位置は、例えば、6軸のレーザ干渉計LIなどで監視され、制御部1100の制御下において、基板ステージWSは所定の位置に駆動される。
【0015】
制御部1100は、CPUやメモリなどを含むコンピュータ(情報処理装置)で構成され、例えば、記憶部に記憶されたプログラムに従って計測装置100の各部を統括的に制御して計測装置100を動作させる。制御部1100は、本実施形態では、計測装置100における計測処理や計測装置100で得られた計測値の補正処理(演算処理)を制御する。
【0016】
図1(b)を参照して、計測部50の構成について説明する。計測部50は、光源60からの光を用いて基板73を照明する照明系ISと、基板73に設けられている計測用のターゲット72からの光を検出部90に導く検出系DSと、を含む。検出部90は、ターゲット72からの光を検出する複数の画素を含み、かかる複数の画素によってターゲット72からの光の強度を検出するための検出領域を形成する光強度検出部として機能する。
【0017】
基板73に設けられているターゲット72は、本実施形態では、基板73における重ね合わせ誤差や位置合わせ誤差を計測するためのパターンである。具体的には、ターゲット72は、重ね合わせ検査用のパターンであって、基板73の第1レイヤーに形成された第1パターンと、第1レイヤーとは異なる第2レイヤーに形成された第2パターンとから構成される。従って、第1パターン及び第2パターンのそれぞれの位置を計測することで、ターゲット72における重ね合わせ誤差を求めることができる。
【0018】
本実施形態における計測部50の詳細を説明する前に、
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)を参照して、計測装置100に用いられる一般的な計測部950の構成について説明する。
【0019】
図9(a)は、計測部950の構成を示す概略図である。光源60から射出された光(照明光)は、照明光学系61を介して、照明開口絞り機構62に導かれる。光源60は、例えば、レーザ光源やLED、ハロゲンランプなどの光源を含み、第1波長の光、及び、第1波長とは異なる第2波長の光を含む光を射出する。照明開口絞り機構62は、互いに異なる複数の照明開口絞りが設けられた照明開口絞り板(不図示)と、かかる照明開口絞り板を駆動する駆動機構と、を含む。駆動機構は、リニアモータなどを含み、例えば、Y軸方向、Z軸方向、ωX方向に照明開口絞り板を駆動することで、照明光に対して所望の照明開口絞りを位置合わせすることができる。また、照明開口絞り機構62は、例えば、エンコーダや干渉計などで監視され、制御部1100の制御下において、照明開口絞りが所定の位置に駆動される。光源60から射出された広帯域な波長の光に対して、照明開口絞り機構62において、照明開口絞りを選択する(駆動させる)ことで、基板73(ターゲット72)に対する計測条件や照明光の入射角度を調整(変更)することができる。照明開口絞り機構62を通過した光は、照明光学系63及び64を介して、ビームスプリッタ65に導かれる。ビームスプリッタ65で反射される光は、対物光学系71を介して、基板73に設けられたターゲット72を照明する。
【0020】
基板73に設けられたターゲット72で反射、回折、散乱された光は、対物光学系71を介して、ビームスプリッタ65、開口絞り69及び結像光学系79を通過して、検出視野絞り80に導かれる。検出視野絞り80からの光は、結像光学系81及び検出開口絞り87を通過し、楔部材88及び結像光学系89を介して、検出部90に導かれる。
【0021】
図9(b)は、基板73に設けられたターゲット72に入射する光(照明光)BI、0次回折光BO、+1次回折光B+1、及び、-1次回折光B-1を示す図である。例えば、照明開口絞り機構62において、照明光の入射角度を調整することで、ターゲット72で回折された-1次回折光B-1及び0次回折光BOは、対物光学系71を介して、検出開口絞り87に導かれる。検出開口絞り87は、0次回折光BOを遮断するように構成されている。従って、ZX平面における光BIの入射角度を+θとすると、照明開口絞り機構62を介して、入射角度が+θ及び-θの両方の光を照明することで、検出部90には、ターゲット72からの1次回折光が導かれる。楔部材88は、屈折や回析を利用して、1次回折光の角度を変更することで、検出部90の検出面(XY面)における両者の相対位置をずらす。これにより、
図9(a)に示すように、ターゲット72に対して、光軸に対称な入射角度で光を入射させることで、+1次回折光と、-1次回折光とを、検出部90で同時に検出することが可能となる。
【0022】
図9(c)は、瞳共役の関係にある照明開口絞り、開口絞り69及び検出開口絞り87について、瞳面における開口部内径の相対位置を示す図である。上述したように、計測部950では、開口絞り69を通過した0次回折光BOが検出開口絞り87で遮断されることになる。従って、瞳面における光BI及び0次回折光BOの位置は、開口絞り69(の開口)の内側を通過する位置、且つ、検出開口絞り87(の開口)の外側で遮断される位置となる。
図9(c)において、B91及びB92は、それぞれ、第1波長の光及び第2波長の光における+1次回折光を示し、いずれも検出開口絞り87の内側を通過して、検出部90で検出される。
【0023】
一般的に、ターゲット72のパターン(格子パターン)の周期をd、ターゲット72に対する光の入射角度をα、回折角度をβ、波長をλ、回折次数をmとすると、以下の式(1)が成り立つ。
【0024】
d(sinα+sinβ)=m・λ ・・・(1)
従って、複数の波長の光を同一の角度でターゲット72に入射させた場合には、光の回折角度が波長に応じて変化し、瞳面において回折光が通過する位置に違いが生じる。なお、
図9(c)は、瞳共役の関係にある3つの開口絞りの位置関係の概要を説明するための図であって、それぞれの開口絞りの開口径は異なる大きさとしてもよい。
【0025】
計測部950においては、上述した特徴を利用して、瞳共役の位置である照明開口絞り機構62及び検出開口絞り87のそれぞれに、位置に応じて異なる波長の光を通過(透過)させる分割式波長フィルタを適用する。これにより、不要な光の混入を回避して、複数の波長の光を、高精度に、且つ、同時に検出することができる。
【0026】
次に、計測部950において、ターゲット72の位置を計測する精度(計測精度)が低下する理由について説明する。複数の波長の光をターゲット72に入射させて回折光を検出する構成においては、高NAのレンズと、高精度な収差補正とを両立させることが必要となる。例えば、対物光学系71のNAが小さい場合には、ターゲット72からの回折光の検出範囲が狭くなるため、回折光の検出や分割式波長フィルタによる波長分離が困難となり、計測精度の低下を招く。また、対物光学系71や結像光学系79において、設計時の収差補正が不十分である場合や製造や組み立ての際に偏芯誤差が発生する場合には、検出部90に導かれるターゲット72からの光に非対称性やボケが生じて、計測精度が低下する。従って、高NAのレンズと、高精度な収差補正とが両立できていない場合には、複数の波長の光を同時に検出した際に計測誤差が生じて、計測精度が低下することになる。
【0027】
そこで、本実施形態では、計測部50において、波面検出系WDSを用いて、検出系DSにおける波面収差に関する波面収差情報(第1波面収差及び第2波面収差)を取得する。そして、波面変更部75を2つの領域(第1領域及び第2領域)に分割し、それぞれの領域に、検出系DSにおける波面収差が補正されるように、補正波面(第1補正波面及び第2補正波面)を設定(生成)する。これにより、計測精度の低下が低減(防止)され、ターゲット72の位置を計測するのに有利となる。
【0028】
以下、
図1(b)を参照して、本実施形態における計測部50の構成について詳細に説明する。計測部50において、波面変更部75、及び、ビームスプリッタ82から波面検出部86までの波面検出系WDSを除いた構成は、計測部950と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0029】
基板73に設けられたターゲット72で反射、回折、散乱された光は、対物光学系71、ビームスプリッタ65及び開口絞り69を介して、波面変更部75に導かれる。波面変更部75は、ターゲット72から光における波面収差を変更する機能を有する。波面変更部75は、例えば、光軸断面において2次元的に光の位相を変更可能な空間変調素子、或いは、基板に液晶分子を平行に配向させた液晶層を光変調部とする液晶空間光位相変調器を含む。
【0030】
波面変更部75からの光は、結像光学系78、検出視野絞り80及び結像光学系81を通過して、ビームスプリッタ82に導かれる。ビームスプリッタ82は、入射した光を、所望の光量比で2つの光に分割する。ビームスプリッタ82を透過する光は、検出開口絞り87、楔部材88及び結像光学系89を介して、検出部90に導かれる。
一方、ビームスプリッタ82で反射される光は、ピンホール83、瞳結像光学系84及びレンズアレイ85を介して、波面検出部86に導かれる。ピンホール83は、検出開口絞り87と共役な位置に配置されることが好ましい。
【0031】
計測部50において、波面検出部86を介して、対物光学系71、結像光学系78及び81を含む検出系DSにおける波面収差に関する波面収差情報が取得(検出)される。そして、制御部1100において、波面検出部86で取得された波面収差情報に基づいて、検出系DSにおける波面収差を補正するための補正波面を生成して、かかる補正波面を波面変更部75に設定する。このように、本実施形態では、検出系DSにおける波面収差を補正するための補正波面を波面変更部75に設定することで、検出系DSにおける波面収差を低減し、複数の異なる波長の光を用いていても、ターゲット72を高精度に検出することができる。なお、波面収差情報の取得や補正波面の生成については、後で詳細に説明する。
【0032】
図2(a)を参照して、本実施形態における計測部50の計測処理(計測方法)について説明する。かかる計測処理は、波面変更部75と波面検出部86とを用いることを特徴とし、上述したように、制御部1100が計測装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0033】
S121では、ターゲット72からの光が計測部50における検出部90(の検出領域)に導かれるように、基板73を保持した基板ステージWSを位置決めする。また、計測部50に対する基板73のZ方向の位置について、例えば、ターゲット72からの光強度を取得して、かかる光強度やその変化が目標値以上となるように、基板73を保持した基板ステージWSを位置決めする。なお、計測部50に対する基板73のXY平面上の位置については、ターゲット72からの光が検出部90に導かれる位置である必要はない。例えば、ターゲット72からの光強度に基づいて、基板ステージWS(基板73)のZ方向の位置を決める。その後、基板ステージWSをXY平面上で駆動して、検出部90に対して基板上のターゲット72が形成されていない領域が位置するように、基板ステージWSを位置決めしてもよい。また、基板73の代わりに、基板ステージ上に配置される基準プレートに設けられた基準パターンからの光が検出部90に導かれるように、基板ステージWSを位置決めしてもよい。
【0034】
S122では、波面検出系WDS、即ち、波面検出部86において、検出系DSにおける波面収差に関する波面収差情報を取得する。上述したように、ピンホール83、瞳結像光学系84及びレンズアレイ85を通過した光を波面検出部86で検出することで、波面収差情報が取得される。本実施形態において、検出系DSにおける波面収差に関する波面収差情報は、第1波長の光における第1波面収差と、第2波長の光における第2波面収差と、を含む。
【0035】
S123では、S122で取得した波面収差情報に基づいて、検出系DSにおける波面収差を補正するための補正波面を生成する。
【0036】
ここで、S122における波面収差情報の取得について説明する。
図2(b)は、波面検出部86で取得される検出系DSにおける波面収差の一例を示す図であって、縦軸は、参照球面からの位相ずれ量(波面収差)を示し、横軸は、瞳面上の位置を示している。
図2(b)において、W1は、第1波長の光における第1波面収差を表し、W2は、第2波長の光における第2波面収差を表す。上述したように、検出系DSが大きな波面収差を有していると、検出部90に導かれるターゲット72からの光に非対称性やボケが生じて、計測精度が低下するため、検出系DSにおける波面収差の影響を抑えることが好ましい。
【0037】
複数の波長の光における波面収差情報を取得する手法の1つとして、基板73(又は基準プレート)を複数の波長の光で照明し、ターゲット72で回折される複数の波長の光を、波面検出部86で検出する手法がある。例えば、波長に応じて回析角度が異なる光を、波面検出部86(の検出面上)の異なる位置で検出して、波面収差情報を取得してもよい。また、別の手法として、例えば、照明系ISにおいて、波長フィルタ(不図示)を切り替えることで、基板73を第1波長の光及び第2波長の光で順次照明して、複数の波長の光における波面収差情報を取得してもよい。
【0038】
次いで、S123における補正波面の生成について説明する。
図2(c)は、制御部1100において、
図2(b)に示す波面収差、即ち、検出系DSにおける波面収差に関する波面収差情報に基づいて生成(算出)される補正波面を示す図である。かかる補正波面は、検出系DSにおける波面収差を補正するための補正波面である。
図2(c)において、CW1は、第1波長の光における第1波面収差を補正するための第1補正波面を表し、CW2は、第2波長の光における第2波面収差を補正するための第2補正波面を表す。例えば、第1補正波面CW1は、検出系DSにおいて生じる第1波面収差W1を打ち消すように生成され、第2補正波面CW2は、検出系DSにおいて生じる第2波面収差W2を打ち消すように生成される。
【0039】
図2(d)は、制御部1100において、
図2(c)に示す第1補正波面CW1及び第2補正波面CWから生成される補正波面CWの一例を示す図である。補正波面CWは、第1補正波面CW1及び第2補正波面CW2に加えて、波面変更部75において第1波長の光及び第2波長の光が透過する位置に基づいて生成される。
図2(d)において、P21及びP12は、波面変更部75において第1波長の光及び第2波長の光が透過する位置の境界部を表す。具体的には、ターゲット72の位置を計測する際に、波面変更部75において、第1波長の光は、第1領域(P21<P<
P12)を透過し、第2波長の光は、第2領域(P<
P21、P12<P)を透過する。なお、各波長の光が波面変更部75を透過する位置は、ターゲット72の周期構造の情報に基づいて算出される回折角度から求めてもよい。
【0040】
補正波面CWの生成において、制御部1100は、第1領域(P21<P<P12)における第1補正波面CW1と、第2領域(P<P21、P12<P)における第2補正波面CW2とを滑らかに繋ぎ合わせてもよい。換言すれば、第1領域と第2領域とに対応させて第1補正波面CW1と第2補正波面CW2とを繋ぎ合あわせて、第1波面収差W1及び第2波面収差W2を補正するための補正波面CWを求めてもよい。この際、第1領域における補正波面CW1と第2領域における第2補正波面CW2とを瞳面の径方向において繋ぎ合わせて補正波面CWを生成してもよい。また、第1波面収差W1と第2波面収差W2とを滑らかに繋ぎ合わせて、第1波面収差W1及び第2波面収差W2を補正するための補正波面CWを求めてもよい。換言すれば、第1領域と第2領域とに対応させて第1波面収差W1と第2波面収差W1とを繋ぎ合わせた第3波面収差から、第1波面収差W1及び第2波面収差W2を補正するための補正波面CWを求めてもよい。この際、第1波面収差W1と第2波面収差W1とを瞳面の径方向において繋ぎ合わせて補正波面CWを生成してもよい。なお、補正波面CWは、第1波面収差W1及び第2波面収差W2を補正するための補正波面に限定されるものではなく、第1波面収差W1及び第2波面収差W2のうちの少なくとも一方を補正する補正波面であってもよい。例えば、第1波面収差W1及び第2波面収差W2のうちの一方の波面収差が許容範囲に収まっているような場合には、許容範囲外となる波面収差のみを補正する補正波面を生成するようにすればよい。
【0041】
また、補正波面CWを生成する別の手法として、ターゲット72を複数の波長の光で照明し、ターゲット72で回折される複数の波長の光における波面収差を同時に取得して、かかる波面収差を打ち消すように補正波面CWを生成してもよい。これにより、複数の異なる波長の光における波面収差を順次取得する場合に比べて、補正波面CWを生成するまでに要する時間(処理時間)を短縮できる利点がある。
【0042】
なお、本実施形態では、第1波長の光及び第2波長の光について補正波面を生成する場合について説明したが、波長の数は2つに限定されるものではなく、3つ以上の異なる波長の光について補正波面を生成することも可能である。
【0043】
補正波面に関しては、検出系DSにおける波面収差を打ち消す(低減する)ことに限らず、検出系DSに起因する計測誤差となる非対称な成分(例えば、コマ収差などの非対称波面収差)を低減するように生成することで、計測誤差を低減することが可能となる。また、例えば、第1補正波面と第2補正波面における焦点位置の違いを補正するように補正波面を生成することで、ターゲット72で回折された複数の波長の光を同時に検出する際に、焦点位置のずれに起因する計測誤差を低減することができる。更に、波面収差情報とターゲット72の位置を計測する際の誤差(計測誤差)との関係を示す情報(「位置計測情報」と称する)に基づいて、計測誤差が許容値以下となる波面収差を求めることで、補正波面を生成してもよい。例えば、制御部1100において、波面収差情報と計測誤差とに関するデータ(位置計測情報)を事前に収集してライブラリを作成し、ターゲット72の位置を計測する際に取得された波面収差情報とライブラリとから最適な補正波面を生成(決定)してもよい。ライブラリの作成においては、他の光学式の重ね合わせ計測装置や走査電子顕微鏡の計測値を参照して、計測装置100の計測値との差分から計測誤差を算出してもよい。これにより、ターゲット72の位置を計測する際に位置計測情報を取得する場合に比べて、補正波面を生成するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0044】
図2(e)は、
図2(d)に示す
補正波面CWを波面変更部75に設定した場合に、波面検出部86で検出される波面収差の一例を示す図である。なお、
補正波面CWを波面変更部75に設定することは、第1補正波面CW1が波面変更部75の第1領域に生成され、第2補正波面CW2が波面変更部75の第2領域に生成されるように、波面変更部75を制御することを意味する。
図2(e)において、W1Aは、第1波長の光における波面収差を表し、W2Aは、第2波長の光における波面収差を表す。
【0045】
図2(e)を参照するに、
図2(b)に示す第1波面収差W1は、波面変更部75の第1領域(P21<P<12)において、補正波面CW(第1補正波面CW1)に打ち消されて(補正されて)、波面収差W1Aとなる。同様に、
図2(b)に示す第2波面収差W2は、波面変更部75の第2領域(P<21、P12<P)において、補正波面CW(第2補正波面CW2)に打ち消されて(補正されて)、波面収差W2Aとなる。このように、波面変更部75に補正波面CWを設定することで、ターゲット72で回折される第1波長の光及び第2波長の光について、検出系DSにおける波面収差を低減することが可能となる。従って、計測装置100では、ターゲット72の位置(重ね合わせ誤差)を高精度に計測することができる。
【0046】
なお、検出系DSにおける波面収差を補正するための補正波面の設定に関しては、制御部1100による波面変更部75の制御に限定されるものではない。例えば、波面検出部86で取得された波面収差情報に基づいて、第1波面収差及び第2波面収差を補正する補正波面を生成し、かかる補正波面と同等の特性を有する光学部材(例えば、非球面レンズ)を、波面変更部75の位置に配置してもよい。互いに異なる波面収差を有する複数の光学部材から、波面収差情報や補正波面に基づいて、適切な光学部材を選択することで、波面収差情報に応じた補正波面を、波面変更部75の位置に設定することができる。
【0047】
本実施形態における計測装置100では、波面変更部75を介して、ターゲット72からの光を、検出部90及び波面検出部86のそれぞれで検出する。そして、波面変更部75において、第1領域には、第1波面収差W1を補正するように第1補正波面CW1を設定し、第2領域には、第2波面収差W2を補正するように第1補正波面CW1とは異なる第2補正波面CW2を設定する。これにより、検出系DSにおける波面収差に起因する計測誤差を低減して、ターゲット72の位置、即ち、ターゲット72の重ね合わせ誤差を高精度に計測することができる。
【0048】
<第2実施形態>
本実施形態では、
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)を参照して、ターゲット72からの光を、波面変更部175で反射させて検出部90で検出する形態について説明する。
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)は、本実施形態の計測部150を説明するための図である。
【0049】
図3(a)は、計測部150の構成を示す図である。計測部150は、
図1(b)に示す計測装置100における計測部50に相当する。計測部150は、第1実施形態における計測部50と比較して、ターゲット72からの光が、波面変更部175で反射され、ミラー176で更に反射され、結像光学系78、81及び89を介して、検出部90で検出される点で異なる。
【0050】
波面変更部175は、例えば、
図3(b)に示すように、形状可変ミラー151を含む。
図3(b)は、形状可変ミラー151の構成の一例を示す図である。形状可変ミラー151は、ターゲット72からの光を反射する反射面を形成する反射膜157と、反射膜157の下方に2次元的に配列された複数のアクチュエータ151a~151chと、を含む。アクチュエータ151a~151chは、機械式又は圧電素子式のアクチュエータで構成されている。アクチュエータ151a~151chのそれぞれを個別に制御することで、形状可変ミラー151の表面(反射面)を構成する反射膜157の形状を動的に変形させることができる。
【0051】
図3(c)は、
図3(b)に示す形状可変ミラー151の断面構造を示す図である。形状可変ミラー151では、ミラー基板152の上に構成されたコイル153に電流を流すことで、磁石154をPz方向に駆動させて、反射膜157の形状を変形させることができる。従って、制御部1100において形状可変ミラー151を制御して、形状可変ミラー151に入射する光(検出光)MBに対して所望の位相差を与えることで、補正波面を設定することが可能となる。なお、
図3(c)に示すように、磁石154と反射膜157との間には、フレーム155及びスプリング156が配置されているため、反射膜157に対して、磁石154の駆動が高速、且つ、高精度に伝達される。反射膜157については、金属コーティングを行うことで、高い反射率を実現することができる。
【0052】
本実施形態では、波面変更部175の構成として、形状可変ミラー151を例に説明したが、これに限定されるものではなく、反射型の空間変調素子であればよい。また、波面収差を動的に制御可能である必要はなく、例えば、補正波面と同等の特性を有する非球面ミラーを配置してもよい。
【0053】
本実施形態においては、反射型の波面変更部175を介して、ターゲット72からの光を、検出部90及び波面検出部86のそれぞれで検出する。そして、波面変更部175において、第1領域には、第1波面収差W1を補正するように第1補正波面CW1を設定し、第2領域には、第2波面収差W2を補正するように第1補正波面CW1とは異なる第2補正波面CW2を設定する。これにより、検出系DSにおける波面収差に起因する計測誤差を低減して、ターゲット72の位置、即ち、ターゲット72の重ね合わせ誤差を高精度に計測することができる。
【0054】
<第3実施形態>
本実施形態では、
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)を参照して、ターゲット72からの光を、波面変更部75を介して検出部90で検出して、ターゲット72の位置を計測する形態について説明する。
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)は、本実施形態の計測部250を説明するための図である。
【0055】
図4(a)は、計測部250の構成を示す図である。計測部250は、
図1(b)に示す計測装置100における計測部50に相当する。第1実施形態における計測部50は、波面変更部75及び波面検出部86の両方を備えているが、本実施形態における計測部250は、波面変更部75のみを備え、波面検出部86を備えていない。計測部250では、ターゲット72からの光が、波面変更部75を介して、結像光学系78、81及び89を通過して検出部90で検出される。
【0056】
本実施形態では、計測部250において、波面変更部75に第1波面収差を設定した状態でターゲット72の位置を計測して第1計測値を取得する。そして、制御部1100において、波面収差情報とターゲット72の位置の計測値との関係を示す情報に基づいて、計測値が目標値となる波面収差を求めることで、補正波面を生成する。
【0057】
図4(b)を参照して、本実施形態における計測部250の計測処理について説明する。かかる計測処理は、上述したように、制御部1100が計測装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0058】
S221では、ターゲット72からの光が計測部250における検出部90(の検出領域)に導かれるように、基板73を保持した基板ステージWSを位置決めする。基板ステージWSの位置決めについては、
図2(a)に示すS121と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0059】
S222では、波面変更部75に第1波面収差を設定し、ターゲット72の位置を計測して第1計測値を取得する。第1波面収差には、任意の波面収差を設定してもよい。例えば、波面収差がない状態(波面収差がゼロである状態)を設定してもよいし、事前に取得されたデータに基づいて求めた波面収差を設定してもよい。
【0060】
S223では、S222で取得された第1計測値、及び、波面収差情報とターゲット72の位置の計測値との関係を示す情報に基づいて、検出系DSにおける波面収差を補正するための補正波面を生成する。
【0061】
図4(c)は、波面収差情報とターゲット72の位置の計測値との関係を示す情報の一例である曲線295を示す図である。曲線295は、例えば、波面変更部75に互いに異なる複数の波面収差を設定し、それぞれについて、ターゲット72の位置の計測値を取得することで事前に求めることができる。なお、波面変更部75には、光軸に対して非対称な波面収差(例えば、コマ収差)を、異なる大きさで設定してもよい。
【0062】
図4(c)において、M1は、S222で取得された第1計測値を表し、W1は、第1計測値M1が取得される際の波面収差、即ち、S222で設定された第1波面収差を表し、M2は、ターゲット72の位置の計測値の目標値を表す。W2は、ターゲット72の位置の計測値として目標値M2が取得される際の波面収差を表し、目標値M2と曲線295とに基づいて算出される。S223では、波面収差W2と第1波面収差W1との差分を補正波面CWとして生成し、かかる補正波面CWを波面変更部75に設定することで、ターゲット72の位置を計測した際の計測値を目標値M2とすることができる。
【0063】
本実施形態においては、波面変更部75を介して、ターゲット72からの光を、検出部90で検出し、その計測値と第1波面収差とに基づいて、ターゲット72の位置の計測値が目標値となる補正波面を生成する。そして、波面変更部75において、第1領域には、第1波面収差を補正するように第1補正波面を設定し、第2領域には、第2波面収差を補正するように第1補正波面とは異なる第2補正波面を設定する。これにより、検出系DSにおける波面収差に起因する計測誤差を低減して、ターゲット72の位置、即ち、ターゲット72の重ね合わせ誤差を高精度に計測することができる。
【0064】
<第4実施形態>
本実施形態では、
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)及び
図5(d)を参照して、ターゲット72からの光を、波面変更部75を介して、瞳面強度検出部390で検出する形態について説明する。
【0065】
図5(a)は、計測部350の構成を示す図である。計測部350は、
図1(b)に示す計測装置100における計測部50に相当する。計測部350は、第1実施形態における計測部50と比較して、ターゲット72からの光が、波面変更部75を介して、結像光学系78及び81を通過して瞳面強度検出部390で検出される点で異なる。
【0066】
ここで、
図5(b)及び
図5(c)を参照して、計測部350において、ターゲット72の位置、即ち、重ね合わせ誤差を計測する原理について説明する。計測部350では、瞳面強度検出部390において、ターゲット72で回折された光の瞳面強度分布を検出する。ターゲット72は、重ね合わせ計測用のパターンであって、基板73の第1レイヤーL1に形成された第1パターンT1と、第1レイヤーL1とは異なる第2レイヤーL2に形成された第2パターンT2と、を含む。
図5(b)及び
図5(c)に示すように、第1パターンT1と第2パターンT2との相対位置に応じて、ターゲット72で回折される+1次回折光B+1と-1次回折光B-1との間に強度の違いが生じる。具体的には、
図5(b)では、-1次回折光B-1の強度が+1次回折光B+1の強度よりも高く、
図5(c)では、-1次回折光B-1の強度が+1次回折光B+1の強度よりも低い。従って、瞳面強度分布と計測値との関係を予め求めておくことで、瞳面強度検出部390で検出された瞳面強度分布に基づいて、ターゲット72の重ね合わせ誤差を求めることが可能となる。なお、瞳強度分布と計測値(ターゲット72の重ね合わせ誤差)との関係については、例えば、他の光学式の重ね合わせ計測装置や走査電子顕微鏡の計測値を参照して求めることが好ましい。
【0067】
図5(d)を参照して、本実施形態における計測部350の計測処理について説明する。かかる計測処理は、上述したように、制御部1100が計測装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0068】
S321では、ターゲット72からの光が計測部350における瞳面強度検出部390(の検出領域)に導かれるように、基板73を保持した基板ステージWSを位置決めする。基板ステージWSの位置決めについては、
図2(a)に示すS121と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0069】
S322では、波面検出系WDS、即ち、波面検出部86において、検出系DSにおける波面収差に関する波面収差情報を取得する。具体的には、S122と同様に、ピンホール83、瞳結像光学系84及びレンズアレイ85を通過した光を波面検出部86で検出することで、波面収差情報が取得される。
【0070】
S323では、S322で取得した波面収差情報に基づいて、検出系DSにおける波面収差を補正するための補正波面を生成する。補正波面の生成については、S123と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施形態においては、波面変更部75を介して、ターゲット72からの光を、瞳面強度検出部390で検出することによって、ターゲット72の重ね合わせ誤差を計測する。また、波面変更部75において、第1領域には、第1波面収差を補正するように第1補正波面を設定し、第2領域には、第2波面収差を補正するように第1補正波面とは異なる第2補正波面を設定する。これにより、検出系DSにおける波面収差に起因する計測誤差を低減して、ターゲット72の位置、即ち、ターゲット72の重ね合わせ誤差を高精度に計測することができる。
【0072】
<第5実施形態>
本実施形態では、
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)を参照して、ターゲット72からの光を、波面変更部75を介して検出部90で検出し、ターゲット72の位置を計測する形態について説明する。
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)は、本実施形態の計測部450を説明するための図である。
【0073】
図6(a)は、計測部450の構成を示す図である。計測部450は、
図1(b)に示す計測装置100における計測部50に相当する。第1実施形態における計測部50は、基板上の異なるレイヤーに形成されたパターンの相対位置(重ね合わせ誤差)を計測する。一方、本実施形態における計測部450は、計測部450(検出部90の検出領域)に対してターゲット72の位置を変更(移動)させながら、ターゲット72で回折された光を検出することで、ターゲット72の位置を計測する。
【0074】
計測部450では、制御部1100の制御下において、検出部90(の検出領域内)の光軸断面でターゲット72の位置を変更しながら、検出部90で検出されるターゲット72からの光の強度変化に基づいて、ターゲット72の位置を求める。ターゲット72の位置を変更する手法としては、例えば、制御部1100によって、基板73を保持する基板ステージWSを、XY断面において等速駆動する手法がある。
【0075】
光源60から射出された光は、照明光学系61、照明開口絞り機構62、照明光学系63及び64を介して、ミラー465に導かれる。ミラー465で反射される光は、対物光学系71を介して、基板73に設けられたターゲット72を照明する。
【0076】
基板73に設けられたターゲット72で反射、回折、散乱された光は、対物光学系71を介して、開口絞り69、波面変更部75及び結像光学系78を通過して、検出視野絞り80に導かれる。検出視野絞り80からの光は、結像光学系81、プリズム488及び結像光学系89を介して、検出部90に導かれる。検出部90の構成については、分光部材を介した光を撮像素子で検出することで、異なる複数の波長の光を、撮像素子における異なる画素で検出する構成としてもよい。また、検出部90の構成については、ダイクロイックプリズムを介して異なる複数の波長を波長ごとに分離し、それぞれの波長の光強度を、光検出器を用いて検出する構成としてもよい。ビームスプリッタ82から波面検出部86までの波面検出系WDSの構成は、第1実施形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0077】
ここで、
図6(b)及び
図6(c)を参照して、計測部450において、ターゲット72の位置を計測する原理について説明する。計測部450では、照明系ISを介して基板73を照明し、ターゲット72で回折された光を、検出系DSを介して検出する。
図6(b)には、基板73に垂直に入射する光(照明光)BI、ターゲット72からの+1次回折光B+1及び-1次回折光B-1を示す。なお、ターゲット72の位置を計測する際に不要となる光(0次回折光を含む光)については、検出系DSで遮断されるように、ミラー465や開口絞り69の形状を決定してもよい。
【0078】
図6(c)は、開口絞り69における開口部内径と、ターゲット72で回折された光との相対位置を示す図である。
図6(c)において、BOは、ターゲット72で回折される0次回折光を表す。0次回折光BOについては、上述したように、例えば、ミラー465で遮断されるため、検出部90には導光されない。41mは、第1波長の光における-1次回折光を表し、41pは、第1波長の光における+1次回折光を表す。また、42mは、第2波長の光における-1次回折光を表し、42pは、第2波長の光における+1次回折光を表す。ターゲット72で回折された-1次回折光41m及び42m、+1次回折光41p及び42pは、開口絞り69(の開口)の内側を通過し、波面変更部75を介して、波面検出部86及び検出部90のそれぞれで検出される。なお、波面収差情報の取得及び補正収差の生成については、S122及びS123と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0079】
図6(d)は、計測部450におけるプリズム488の機能を説明するための図である。プリズム488は、検出系DSの瞳面に配置され、ターゲット72で回折された光を分離及び反転して重ね合わせる光学部材である。
図6(d)に示すように、プリズム488によって、+1次回折光B+1と-1次回折光B-1が分離及び反転され、更に、重ね合わされて検出部90に導かれる。検出部90では、+1次回折光B+1と-1次回折光B-1とが干渉した光の強度が検出される。+1次回折光B+1及び-1次回折光B-1の強度は、検出部90(の検出領域内)におけるターゲット72の位置に応じて変化するため、検出部90で検出される光の強度も変化する。従って、ターゲット72の位置情報と、検出部90で検出される光の強度情報とに基づいて、ターゲット72の位置を求めることができる。
【0080】
また、計測部450においては、ターゲット72からの光を、波面変更部75を介して検出部90で検出する。制御部1100の制御下において、波面変更部75に設定される補正波面の生成については、S123と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0081】
本実施形態においては、波面変更部75を介して、ターゲット72からの光を、検出部90で検出することによって、ターゲット72の位置を計測する。また、波面変更部75において、第1領域には、第1波面収差を補正するように第1補正波面を設定し、第2領域には、第2波面収差を補正するように第1補正波面とは異なる第2補正波面を設定する。これにより、検出系DSにおける波面収差に起因する計測誤差を低減して、ターゲット72の位置を高精度に計測することができる。
【0082】
<第6実施形態>
図7は、露光装置EXAの構成を示す概略図である。露光装置EXAは、半導体素子や液晶表示素子などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に用いられ、基板73にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置EXAは、原版であるレチクル31を介して基板73を露光して、レチクル31のパターンを基板73に転写する。露光装置EXAは、本実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式を採用しているが、ステップ・アンド・リピート方式、その他の露光方式を採用することも可能である。
【0083】
露光装置EXAは、
図7に示すように、照明光学系801と、レチクル31を保持するレチクルステージRSと、投影光学系32と、基板73を保持する基板ステージWSと、計測装置100と、制御部1200とを有する。
【0084】
照明光学系801は、光源部800からの光を用いて、被照明面を照明する光学系である。光源部800は、例えば、レーザを含む。レーザは、波長約193nmのArFエキシマレーザ、波長約248nmのKrFエキシマレーザなどを含むが、光源の種類をエキシマレーザに限定するものではない。例えば、光源部800は、光源として、波長約157nmのF2レーザや波長20nm以下のEUV(Extreme ultraviolet)を使用してもよい。
【0085】
照明光学系801は、本実施形態では、光源部800からの光を露光に最適な所定の形状を有するスリット光に成形し、レチクル31を照明する。照明光学系801は、レチクル31を均一に照明する機能や偏光照明する機能を有する。照明光学系801は、例えば、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレータ、絞りなどを含み、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順に配置することで構成される。
【0086】
レチクル31は、例えば、石英で構成される。レチクル31には、基板73に転写すべきパターン(回路パターン)が形成されている。
【0087】
レチクルステージRSは、レチクルチャック(不図示)を介してレチクル31を保持し、レチクル駆動機構(不図示)に接続されている。レチクル駆動機構は、リニアモータなどを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にレチクルステージRSを駆動することで、レチクルステージRSに保持されたレチクル31を移動させることができる。なお、レチクル31は、その位置が光斜入射系のレチクル位置計測部(不図示)によって計測され、レチクルステージRSを介して、所定の位置に配置される。
【0088】
投影光学系32は、物体面からの光を像面に結像する機能を有する。投影光学系32は、本実施形態では、レチクル31のパターンを経た光(回折光)を基板73に投影し、レチクル31のパターンの像を基板上に形成する。投影光学系32には、複数のレンズ素子からなる光学系、複数のレンズ素子と少なくとも1つの凹面ミラーとを含む光学系(カテディオプトリック光学系)、複数のレンズ素子とキノフォームなどの少なくとも1つの回折光学素子とを含む光学系などが用いられる。
【0089】
基板73には、フォトレジストが塗布されている。基板73は、レチクル31のパターンが転写される被処理体であって、ウエハ、液晶基板、その他の被処理基板などを含む。
【0090】
基板ステージWSは、基板チャック(不図示)を介して基板73を保持する。し、基板駆動機構(不図示)に接続されている。基板駆動機構は、リニアモータなどを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向に基板ステージWSを駆動することで、基板ステージWSに保持された基板73を移動させることができる。また、基板ステージWSには、基準プレート39が設けられている。基準プレート39の表面の高さは、基板ステージWSに保持された基板73の表面と同じ高さになるように定められ、計測装置100は、基準プレート39に設けられた基準マークの位置も計測する。
【0091】
レチクルステージRSの位置及び基板ステージWSの位置は、例えば、6軸のレーザ干渉計LIなどで監視され、制御部1200の制御下において、レチクルステージRSと基板ステージWSとが一定の速度比率で駆動される。
【0092】
計測装置100は、ターゲットとして、基板73に設けられたマークの位置を計測する。計測装置100は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態及び第5実施形態で説明された形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0093】
制御部1200は、CPUやメモリなどを含むコンピュータ(情報処理装置)で構成され、例えば、記憶部に記憶されたプログラムに従って露光装置EXAの各部を統括的に制御して露光装置EXAを動作させる。制御部1200は、レチクル31を介して基板73を露光して、レチクル31のパターンを基板73に転写する露光処理を制御する。また、制御部1200は、本実施形態では、計測装置100における計測処理や計測装置100で得られた計測値の補正処理(演算処理)も制御する。このように、制御部1200は、計測装置100の一部としても機能する。
【0094】
露光装置EXAにおいて、レチクル31を通過した光(回折光)は、投影光学系32を介して、基板73に投影される。レチクル31と基板73とは、光学的に共役の関係に配置されている。レチクル31と基板73とを投影光学系32の縮小倍率比の速度比で走査することによって、レチクル31のパターンが基板73に転写される。
【0095】
次に、
図8を参照して、レチクル31を介して基板73を露光して、
図8を参照して、レチクル31を介して基板73を露光して、レチクル31のパターンを基板73に転写する露光処理のシーケンスについて説明する。かかる露光処理は、上述したように、制御部1200が露光装置EXAの各部を統括的に制御することで行われる。
【0096】
S101では、露光装置EXAに基板73を搬入する。S102では、形状計測装置(不図示)によって、基板73の表面(高さ)を検出して基板73の全域の表面形状を計測する。
【0097】
S103では、キャリブレーションを行う。具体的には、ステージ座標系における基準プレート39に設けられた基準マークの設計上の座標位置に基づいて、計測装置100の光軸上に基準マークが位置するように、基板ステージWSを駆動する。次いで、計測装置100の光軸に対する基準マークの位置ずれを計測し、かかる位置ずれに基づいて、ステージ座標系の原点が計測装置100の光軸と一致するように、ステージ座標系を再設定する。ここで、基準マークの位置ずれを計測するために、
図2(a)を参照して説明したように、ターゲットを基準マークとする計測処理が行われる。なお、複数の基準マークを計測する場合には、
図2(a)に示すS121乃至S123を基準マークごとに行う必要はない。
図2(a)に示すS121乃至S123は、例えば、所定の計測回数ごとや露光処理が行われる基板73の所定の枚数ごとなどに行われてもよい。次に、計測装置100の光軸と投影光学系32の光軸との設計上の位置関係に基づいて、基準マークが露光光の光軸上に位置するように、基板ステージWSを駆動する。そして、TTL(スルー・ザ・レンズ)計測系によって、投影光学系32を介して、露光光の光軸に対する基準マークの位置ずれを計測する。
【0098】
S104では、S103におけるキャリブレーションの結果に基づいて、計測装置100の光軸と投影光学系32の光軸とのベースラインを決定する。
【0099】
S105では、計測装置100によって、基板73に設けられたマークをターゲットとして、かかるマークの位置を計測する。ここで、基板73のマークの位置ずれを計測するために、
図2(a)を参照して説明したように、ターゲットを基板73のマークとする計測処理が行われる。なお、基板73の複数のマークを計測する場合には、
図2(a)に示すS121乃至S123をマークごとに行う必要はない。
図2(a)に示すS121乃至S123は、例えば、所定の計測回数ごとや露光処理が行われる基板73の所定の枚数ごとなどに行われてもよい。
【0100】
S106では、グローバルアライメントを行う。具体的には、S105における計測結果に基づいて、基板73のショット領域の配列に関して、シフト、マグニフィケーション(倍率)、ローテーション(回転)を算出し、ショット領域の配列の規則性を求める。そして、ショット領域の配列の規則性及びベースラインから補正係数を求め、かかる補正係数に基づいて、レチクル31(露光光)に対して基板73を位置合わせ(アライメント)する。
【0101】
S107では、レチクル31と基板73とを走査方向(Y方向)に走査しながら基板73を露光する。この際、形状計測装置によって計測した基板73の表面形状に基づいて、Z方向及び傾き(チルト)方向に基板ステージWSを駆動して、基板73の表面を投影光学系32の結像面に逐次合わせ込む動作も行う。
【0102】
S108では、基板73の全てのショット領域に対する露光が完了したかどうか(即ち、未露光のショット領域が存在していないかどうか)を判定する。基板73の全てのショット領域に対する露光が完了していない場合には、S107に移行し、全てのショット領域に対する露光が完了するまで、S107及びS108を繰り返す。一方、基板73の全てのショット領域に対する露光が完了している場合には、S109に移行して、露光装置EXAから基板73を搬出する。
【0103】
なお、本実施形態では、リソグラフィ装置として、露光装置を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、リソグラフィ装置は、パターン(凹凸)を有する型(モールド、テンプレート)を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であってもよい。また、リソグラフィ装置は、平面部を有する型(平面テンプレート)を用いて基板上の組成物を平坦化(成形)する平坦化装置であってもよい。更に、リソグラフィ装置は、荷電粒子光学系を介して、荷電粒子線(電子線やイオンビームなど)で基板に描画を行って、基板にパターンを形成する描画装置であってもよい。
【0104】
<第7実施形態>
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、デバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)などの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、露光装置EXA(計測方法)を用いて、感光剤が塗布された基板を露光する(パターンを基板に形成する)工程と、露光された基板を現像する(基板を処理する)工程を含む。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0105】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0106】
50:計測部 72:ターゲット 73:基板 75:波面変更部 86:波面検出部 100:計測装置 1100:制御部 IS:照明系 DS:検出系 WDS:波面検出系