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特許7589195水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム
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  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図1
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図2
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図3
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図4
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図5A
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図5B
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図6
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図7A
  • 特許-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図7B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/023 20210101AFI20241118BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241118BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241118BHJP
【FI】
C25B15/023
C25B1/04
C25B9/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022111319
(22)【出願日】2022-07-11
(65)【公開番号】P2024009641
(43)【公開日】2024-01-23
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 光留
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173082(JP,A)
【文献】特開2014-062311(JP,A)
【文献】特開2020-090412(JP,A)
【文献】特開2017-198236(JP,A)
【文献】特開2017-137913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0344407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造装置の運転を制御するための制御装置であって、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間を算出するように構成された予想到達時間算出部と、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間を取得するように構成された起動時間取得部と、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定するように構成された決定部と、
を備える水素製造装置用の制御装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記起動時間が前記予想到達時間よりも長くなった時点を前記起動タイミングとして決定するように構成された
請求項1に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記予想到達時間と前記起動時間との比較、及び、予め設定された規定起動時刻に基づいて前記起動タイミングを決定するように構成された
請求項1又は2に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記起動時間が前記予想到達時間以下であるとき、前記規定起動時刻を前記起動タイミングとして決定するように構成された
請求項3に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項5】
前記水素製造装置は、
水を電気分解するように構成された電解槽と、
前記電解槽にて水の電気分解により発生した水素又は酸素が導かれる気液分離器と、
を含み、
前記起動時間取得部は、前記水素製造装置における前記水の温度及び前記気液分離器の圧力に基づいて、前記起動時間を算出するように構成された
請求項1又は2に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項6】
前記水素製造装置の状態と前記起動時間との対応関係を示す情報が記憶される記憶部を備え、
前記起動時間取得部は、前記水素製造装置の状態に基づき、該状態に応じた前記起動時間を前記記憶部から取得するように構成された
請求項1又は2に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項7】
水素製造装置と、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部と、
前記水素製造装置の運転を制御するように構成された請求項1又は2に記載の制御装置と、
を備える水素製造設備。
【請求項8】
水素製造装置の運転を制御するための制御方法であって、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間を算出するステップと、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間を取得するステップと、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定するステップと、
を備える水素製造装置の制御方法。
【請求項9】
水素製造装置の運転を制御するための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間を算出する手順と、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間を取得する手順と、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定する手順と、
を実行させるための水素製造装置用の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素をエネルギー源として用いる機器や、水素製造に係る技術の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、固体電解質膜を有する水電解装置で水を電気分解することで水素を製造するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-129372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水素製造装置で製造された水素が貯蔵される貯留部(貯蔵ヘッダ等)から水素消費設備に対して水素を安定的に供給するためには、貯留部の圧力を規定圧以上に保持する必要がある。ここで、貯留部の圧力が規定圧以上に保持されるようにするため、貯留部の圧力に基づき水素製造装置のオン・オフ運転をすること、すなわち、貯留部の圧力が所定値以下になったら水素製造装置の起動及び運転を行い、貯留部の圧力が所定値以上になったら水素製造装置の運転を停止することが考えられる。
【0006】
しかし、水素消費設備における水素消費速度が大きいと、水素製造装置の起動が完了する前に貯留部の圧力が規定圧を下回ってしまい、水素消費設備に水素を適切に供給できなくなる。一方、水素消費設備における水素消費速度が小さいと、水素製造装置の起動完了時(即ち、水素製造開始時)において貯留部の圧力があまり低下していないため、水素製造装置の運転1回あたり(即ち起動1回あたり)に製造可能な水素の量(貯留部の圧力の上昇幅)が少なくなるため、水素製造装置の運転効率が低下する。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、水素を適切に供給しながら、水素製造装置の効率的な運転が可能な水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置用の制御装置は、
水素製造装置の運転を制御するための制御装置であって、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間を算出するように構成された予想到達時間算出部と、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間を取得するように構成された起動時間取得部と、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定するように構成された決定部と、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造設備は、
水素製造装置と、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部と、
前記水素製造装置の運転を制御するように構成された上述の制御装置と、
を備える。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置の制御方法は、
水素製造装置の運転を制御するための制御方法であって、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間を算出するステップと、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間を取得するステップと、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定するステップと、
を備える。
【0011】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置用の制御プログラムは、
水素製造装置の運転を制御するための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間を算出する手順と、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間を取得する手順と、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定する手順と、
を実行させるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、水素を適切に供給しながら、水素製造装置の効率的な運転が可能な水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る制御装置が適用される水素製造設備の概略図である。
図2】一実施形態に係る制御装置が適用される水素製造設備の概略図である。
図3】一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。
図4】一実施形態に係る水素製造装置の制御方法のフローチャートである。
図5A】一実施形態に係る水素製造装置の制御方法が適用された場合の貯留部の圧力の時間変化を示すグラフである。
図5B】一実施形態に係る水素製造装置の制御方法が適用された場合の貯留部の圧力の時間変化を示すグラフである。
図6】一実施形態に係る水素製造装置の制御方法が適用された場合の貯留部の圧力の時間変化を示すグラフである。
図7A】貯留部の圧力に基づき水素製造装置のオン・オフ運転をする場合の貯留部の圧力の時間変化の一例を示すグラフである。
図7B】貯留部の圧力に基づき水素製造装置のオン・オフ運転をする場合の貯留部の圧力の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0015】
(水素製造設備の構成)
図1及び図2は、一実施形態に係る制御装置が適用される水素製造設備の概略図である。図1及び図2に示すように、水素製造設備100は、水素を生成するように構成された水素製造装置10と、水素製造装置10で生成された水素を貯留するための貯留部30と、水素製造装置10の運転を制御するための制御装置50と、を備える。
【0016】
貯留部30には、ガス状の水素が貯留されるようになっている。貯留部30に貯留された水素は、水素消費設備40に供給されるようになっていてもよい。貯留部30は、水素消費設備40への水素の供給に適した特性を有していてもよい。貯留部30は、例えば貯蔵ヘッダ(ヘッダタンク)を含んでもよい。
【0017】
貯留部30には、貯留部30の圧力を計測するように構成された圧力センサ60が設けられていてもよい。圧力センサ60は制御装置50に電気的に接続され、圧力センサ60による計測結果を示す信号が制御装置50に送られるようになっていてもよい。
【0018】
水素消費設備40は特に限定されない。水素消費設備40は、例えば、水素を燃焼するように構成された水素燃焼設備(例えばガスタービン設備又は製鉄設備等)、水素を液化するように構成された水素液化設備、水素を燃料として化学反応により電気を生成する設備(例えばSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)等の燃料電池を含む発電設備等)、水素を原料として燃料を製造する設備(例えば燃料合成設備等)又は、水素を機器に供給するように構成された水素ガスステーションを含んでもよい。
【0019】
水素製造装置10は、水の電気分解により水素を生成するように構成された水電解装置を含んでもよい。水電解装置のタイプは限定されない。水電解装置は、例えば、アルカリ型水電解装置、固体高分子膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)型水電解装置、アニオン交換膜(Anion Exchange Membrane:AEM)型水電解装置、又は、固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell: SOEC)水電解装置であってもよい。あるいは、水素製造装置10は、化石燃料等の改質により水素を生成するように構成された改質器、又は、副次的に水素が発生するプラント等を含んでもよい。
【0020】
図2に示す水素製造装置10は、水を電気分解するための電解槽12を含む水電解装置を備える。電解槽12を含む水電解装置には、不図示の水供給ラインを介して水が供給される。水供給ラインは、例えば、後述する気液分離器14又は20に水を供給するようになっていてもよい。電解槽12に設けられた一対の電極間に電圧をかけることで電解槽12内の水が電気分解され、陰極側で水素が発生し、陽極側で酸素が発生する。電解槽12内には、電解質が溶解した水(電解質溶液)が供給されていてもよい。電解質は、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ性物質であってもよい。
【0021】
陰極側で発生した水素ガスは、水(電解質溶液等)を含んだ状態で、陰極側ライン16を介して気液分離器14に導かれる。気液分離器14では、水を含む水素ガスが水素ガスと水とに分離される。気液分離器14で分離された水素ガスは、水素ガスライン15を介して、貯留部30に導かれる。気液分離器14で分離された水は、戻りライン18を介して、電解槽12に戻される。
【0022】
陽極側で発生した酸素ガスは、水(電解質溶液等)を含んだ状態で、陽極側ライン22を介して気液分離器20に導かれる。気液分離器20では、水を含む酸素ガスが酸素ガスと水とに分離される。気液分離器20で分離された酸素ガスは、酸素ガスライン21を介して気液分離器20から排出される。なお、気液分離器20から排出された酸素ガスは、酸素消費設備に供給されるようになっていてもよく、あるいは、外部に放出されるようになっていてもよい。気液分離器20で分離された水は、戻りライン24を介して、電解槽12に戻される。
【0023】
水素製造装置10には、電解槽12からの水素又は酸素が導かれる気液分離器14又は20の圧力を計測するように構成された圧力センサ64が設けられていてもよい。図2に示す例示的な実施形態では、圧力センサ64は、気液分離器14の圧力を計測するように構成されている。他の実施形態では、圧力センサ64は、気液分離器20の圧力を計測するように構成されていてもよい。また、水素製造装置10には、水素製造装置10における水(電解質溶液等)の温度を計測するように構成された温度センサ62が設けられていてもよい。図2に示す例示的な実施形態では、温度センサ62は、陰極側ライン16内の水の温度を計測するように構成されている。他の実施形態では、温度センサ62は、戻りライン18、陽極側ライン22、又は戻りライン24内の水の温度を計測するように構成されていてもよい。圧力センサ64及び温度センサ62は制御装置50に電気的に接続され、圧力センサ64及び温度センサ62による計測結果を示す信号が制御装置50に送られるようになっていてもよい。
【0024】
図3は、一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。制御装置50は、圧力センサ60、温度センサ62及び/又は圧力センサ64による計測結果等に基づいて、水素製造装置10の運転を制御するように構成される。
【0025】
図3に示すように、制御装置50は、予想到達時間算出部52と、起動時間取得部54と、決定部56と、を含む。制御装置50は、記憶部58を含む。
【0026】
予想到達時間算出部52は、貯留部30の圧力の変化速度に基づいて、現時点を基準とした、貯留部30の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間を算出するように構成される。貯留部30の圧力の変化速度は、複数の時点において圧力センサ60によって取得される貯留部30の圧力の計測値に基づいて算出されてもよい。
【0027】
起動時間取得部54は、水素製造装置10の状態に応じた該水素製造装置10の起動時間(水素製造装置10の起動に要する時間)を取得するように構成される。
【0028】
起動時間取得部54は、後述する記憶部58に記憶された、水素製造装置10の状態と水素製造装置10の起動時間との対応関係を示す情報に基づいて、水素製造装置10の現在の状態に基づき、該状態に応じた起動時間を取得するようになっていてもよい。あるいは、水素製造装置10が水電解装置を含む場合、起動時間取得部54は、電解槽12における水の温度及び気液分離器14の圧力に基づいて、水素製造装置10の起動時間を算出するようになっていてもよい。
【0029】
決定部56は、予想到達時間算出部52で算出された予想到達時間と、起動時間取得部54で取得された起動時間との比較に基づいて、水素製造装置10を起動する起動タイミングを決定するように構成される。一実施形態では、決定部56は、上述の予想到達時間と上述の起動時間との比較、及び、予め設定された規定起動時刻に基づいて水素製造装置10の起動タイミングを決定するように構成されてもよい。
【0030】
記憶部58は、水素製造装置10の状態と水素製造装置10の起動時間との対応関係を示す情報を記憶するように構成される。また、記憶部58は、水素製造装置10の予め設定された規定起動時刻を記憶するように構成される。
【0031】
上述の水素製造装置10の状態は、水素製造装置10の前回の運転が終了してからの経過時間、水素製造装置10の構成機器の温度、水素製造装置10の構成機器における圧力、又は、電解槽における水(電解質溶液等)の温度のうち1つ以上であってもよい。水素製造装置10の状態が異なる場合、水素製造装置10の起動時間も異なると考えられる。記憶部58には、水素製造装置10の複数の状態、及び、該複数の状態にそれぞれ対応した複数の起動時間が記憶されていてもよい。水素製造装置10の状態と水素製造装置10の起動時間との対応関係は、水素製造装置10を事前に運転することにより予め取得されたものであってもよい。
【0032】
制御装置50は、プロセッサ(CPU等)、主記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶装置及びインターフェース等を備えた計算機を含む。制御装置50は、インターフェースを介して、圧力センサ60、温度センサ62及び/又は圧力センサ64からの信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、主記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の予想到達時間算出部52、起動時間取得部54及び決定部56の機能が実現される。なお、上述の記憶部58は、制御装置50を構成する計算機の主記憶装置又は補助記憶装置を含んでもよい。
【0033】
制御装置50での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、例えば補助記憶装置に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは主記憶装置に展開される。プロセッサは、主記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0034】
(水素製造装置の制御フロー)
次に、幾つかの実施形態に係る水素製造装置の制御方法について説明する。なお、以下において、上述の制御装置50を用いて上述の水素製造装置10を制御する場合について説明するが、幾つかの実施形態では、他の装置を用いて水素製造装置の制御方法を実行するようにしてもよく、あるいは、以下に説明する手順の一部又は全部を手動で行ってもよい。
【0035】
以下に説明する水素製造装置の制御方法は、水素製造装置の起動、運転(水素製造)、及び停止を繰り返す運転が行われる(即ち、水素製造設備が間欠的に運転される)ことが前提となる。このような運転方法は、例えば、水素の需要や電力需給状況等に応じて行われる。
【0036】
図4は、一実施形態に係る水素製造装置の制御方法のフローチャートである。図5A図5B及び図6は、それぞれ、一実施形態に係る水素製造装置の制御方法が適用された場合の貯留部の圧力の時間変化を示すグラフである。
【0037】
図4のフローチャートに係る方法は、水素製造装置10が停止中の状態で開始される。図4に示すように、一実施形態では、まず、予想到達時間算出部52は、貯留部30の圧力の変化速度に基づいて、貯留部30の圧力が規定値Pに到達するまでの予想到達時間Tを算出する(S2)。ここで、水素製造装置10の停止中における貯留部30の圧力の変化速度(減少速度)は、貯留部30から水素消費設備40への水素供給量、あるいは、水素消費設備40における水素消費速度を示すものである。規定値Pは、貯留部30からの水素を水素消費設備40に適切に供給するために維持されるべき貯留部30の圧力である。
【0038】
貯留部30の圧力の変化速度は、例えば、異なる2時点における貯留部30の圧力の差を、該2時点間の長さで除することにより算出することができる。なお、貯留部30の圧力は、圧力センサ60による計測値として取得することができる。図5A図5B及び図6に示す例では、時刻t10、t20又はt30以降に、貯留部30から水素消費設備40への水素の供給に伴い貯留部30の圧力が低下し、貯留部30の圧力の変化速度は、図5A及び図6に示す例ではX1、図5Bに示す例ではX2となっている。
【0039】
予想到達時間Tは、例えば、現時点(貯留部30の圧力の変化速度が計算される時点)における貯留部30の圧力P及び圧力の変化速度Xの絶対値|X|を用いて、該変化速度が維持された場合に現時点から規定圧Pに到達するまで(圧力が規定圧Pに減少するまで)にかかる時間の長さ(T=(P-P)/)として算出することができる。
【0040】
次に、起動時間取得部54は、水素製造装置10の状態に応じた水素製造装置10の起動時間Tを取得する(S4)。ここで、水素製造装置の起動時間とは、停止状態の水素製造装置が起動を開始してから、水素製造装置の起動が完了して水素供給可能な状態になるまでの時間をいう。
【0041】
水素製造装置10が水電解装置を含む場合(図2参照)、水素製造装置の起動手順は概ね以下のとおりである。まず、気液分離器14及び20に窒素ガスを供給して昇圧し、次にその窒素ガスを放出する。これを数回繰り返す事で気液分離器14及び20内が窒素ガスでパージされる。次に、電解槽12の電極に電圧を与えて、水の電気分解を開始する。これにより水素の生成が開始して気液分離器14及び20等の圧力が上昇するとともに水の温度が上昇する。次に、気液分離器14又は20の圧力が所定値に上昇するまで待機する。次に、生成される水素の純度が上昇するまで待機する。また、その他の機器(例えば、セパレータからの水素ガスを除湿するための除湿器や、製造された水素ガスを圧縮するための圧縮機等)を起動させる。以上のようにして、水電解装置を含む水素製造装置10が起動される。
【0042】
水素製造装置10が水電解装置を含む場合(例えば図2参照)、ステップS4では、水電解装置における水の温度(電解質溶液の温度;即ち、温度センサ62で計測される温度)、及び、気液分離器14又は20の圧力(即ち、圧力センサ64で計測される圧力)に基づいて起動時間Tを算出してもよい。水電解装置における水の温度(電解質溶液の温度)、及び、気液分離器14又は20の圧力と、起動時間Tとの相関関係(該相関関係を示す関数等)は、試運転等により予め取得され、記憶部58に記憶されていてもよい。起動時間取得部54は、当該相関関係を記憶部58から取得するとともに、水分解装置における水の温度(電解質溶液の温度)の計測値、及び、気液分離器14又は20の圧力の計測値を用いて、当該相関関係から起動時間Tを算出するようにしてもよい。なお、水電解装置における水の温度は、温度センサ62による計測値として取得することができる。気液分離器14又は20の圧力は、圧力センサ64による計測値として取得することができる。
【0043】
あるいは、ステップS4では、水素製造装置10の状態と起動時間Tとの対応関係を示す情報に基づいて、水素製造装置10の現在の状態に対応する起動時間Tを取得するようにしてもよい。
【0044】
水素製造装置10の状態は、水電解装置における水(電解質溶液)の温度(即ち、温度センサ62で計測される温度)を含んでもよい。例えば、水電解装置における水(電解質溶液)の温度が規定温度未満のコールドモードにおいては、水素製造装置10の起動時において昇圧前に水(電解質溶液)を昇温させる必要があるため、電解槽12における水(電解質溶液)の温度が規定温度以上のホットモードに比べて、水素製造装置10の起動時間Tが長くなる。よって、水電解装置における水(電解質溶液)の温度帯に応じて異なる起動時間T(固定値)を対応付けることができる。すなわち、水素製造装置10の状態と起動時間Tとの対応関係を定義することができる。
【0045】
水素製造装置10の状態と起動時間Tとの対応関係は、水素製造装置10の過去の運転時における計測値等から予め取得されていてもよく、当該対応関係を示す情報は、予め記憶部58に記憶されていてもよい。起動時間取得部54は、記憶部58から上述の対応関係を示す情報を取得して、該対応関係から、水素製造装置10の現在の状態に対応する起動時間Tを取得してもよい。水素製造装置10の現在の状態は、水素製造装置10に設けられたセンサ(例えば温度センサ62)から取得するようにしてもよい。
【0046】
次に、決定部56は、ステップS2で算出された予想到達時間Tと、ステップS4で取得された水素製造装置10の起動時間Tとの比較に基づいて、水素製造装置10を起動する起動タイミングを決定する(S6)。幾つかの実施形態では、決定部56は、ステップS4で取得された水素製造装置10の起動時間Tとの比較(ステップS6)に加え、予め設定された規定起動時刻tに基づいて水素製造装置10の起動タイミングを決定する(S8)。
【0047】
一実施形態では、ステップS6において、水素製造装置10の起動時間Tが予想到達時間Tよりも長くなったとき(即ちT<T;ステップS6でYes)、決定部56は、その時点を水素製造装置10の起動タイミングとして決定し、水素製造装置10の起動を開始させる(S10)。また、一実施形態では、決定部56は、水素製造装置10の起動時間Tが予想到達時間T以下であるとき(即ちT≧T;ステップS6でNo)、予め設定された規定起動時刻tが到来したら(ステップS8でYes)、その時点を水素製造装置10の起動タイミングとして決定し、水素製造装置10の起動を開始させる(S10)。
【0048】
なお、起動時間Tが予想到達時間T以下であり(即ちT≧T)、かつ、予め設定された規定起動時刻tが到来していない場合には(ステップS6でNo、かつ、ステップS8でNo)、ステップS2の手順に戻る。
【0049】
図5A及び図5Bに示す例では、図5Aにおける時刻t10からt11の間、及び、図5Bにおける時刻t20からt21の間は、水素製造装置10の起動時間Tが予想到達時間T以下であり(ステップS6でNo、かつ、ステップS8でNo)、水素製造装置10は起動されない。そして、図5Aにおける時刻t11、及び、図5Bにおける時刻t21以降においては、水素製造装置10の起動時間Tが予想到達時間Tよりも長くなるので(ステップS6のYes)、この時刻t11,t21を水素製造装置10の起動タイミングとして決定し、該起動タイミング(時刻t11,t21)にて水素製造装置10の起動を開始させる(S10)。なお、図5A及び図5Bに示すように、起動タイミング(時刻t11,t21)にて水素製造装置10の起動が開始してから起動時間Tの長さの時間が経った時刻t12,t22において、水素製造装置10の起動が完了し、水素の供給が開始されるため、製造された水素が貯留される貯留部30の圧力が上昇し始める。なお、図5A図5B及び図6におけるP1は、水素製造装置10の運転時における貯留部30の最大圧力であってもよい。
【0050】
図6に示す例では、時刻t31が予め設定された規定起動時刻tとして設定されている。図6に示す例では、時刻t30からt31の間は、水素製造装置10の起動時間Tが予想到達時間T以下であり(ステップS6でNo)、水素製造装置10は起動されない。
時刻t31において、予め設定された規定起動時刻tが到来すると(ステップS8でYes)、その時点(tA=t31)を水素製造装置10の起動タイミングとして決定し、この起動タイミングにて水素製造装置10の起動を開始させる(S10)。図6に示すように、起動タイミング(tA=t31)にて水素製造装置10の起動が開始してから起動時間Tの長さの時間が経った時刻t32において、水素製造装置10の起動が完了し、水素の製造が開始されるため、製造された水素が貯留される貯留部30の圧力が上昇し始める。
【0051】
一般に、水素製造装置で製造された水素が貯蔵される貯留部(貯蔵ヘッダ等)から水素消費設備に対して水素を安定的に供給するためには、貯留部の圧力を規定圧P以上に保持する必要があり、貯留部の圧力が規定値未満になると、貯留部からの水素を水素消費設備に適切に供給できなくなる。
【0052】
ここで、貯留部の圧力が規定圧P以上に保持されるようにするため、貯留部の圧力に基づいて水素製造装置のオン・オフ運転をすること、すなわち、貯留部の圧力が規定圧PA
よりも大きく設定された所定値P以下になったら水素製造装置の起動及び運転を行い、貯留部の圧力が所定値P以上になったら水素製造装置の運転を停止することを考える。ここで、図7A及び図7Bは、それぞれ、貯留部の圧力に基づき水素製造装置のオン・オフ運転をする場合の貯留部の圧力の時間変化の一例を示すグラフである。図7A及び図7BにおけるTは、水素製造装置の起動に要する時間を示す。
【0053】
仮に、図7Aに示すように、水素消費設備における水素消費速度が大きい場合、貯留部の圧力が所定値P以下になった時点(図7Aの時刻t40)で水素製造装置の起動を開始すると、水素製造装置の起動が完了する時点(図7Aの時刻t41)より前に貯留部の圧力が規定圧Pを下回ってしまい、水素消費設備に水素を適切に供給できなくなる。一方、仮に、図7Bに示すように、水素消費設備における水素消費速度が小さい場合、貯留部の圧力が所定値P以下になった時点(図7Bの時刻t50)で水素製造装置の起動を開始すると、水素製造装置の起動完了時(即ち、水素製造開始時;図7Bの時刻t51)において貯留部の圧力があまり低下していないため、水素製造装置の運転1回あたり(即ち起動1回あたり)に製造可能な水素の量(貯留部の圧力の上昇幅)が少なくなるため、水素製造装置の運転効率が低下する。
【0054】
この点、上述の実施形態に係る制御装置50又は制御方法によれば、貯留部30の圧力の変化速度に基づき算出される予想到達時間Tと、水素製造装置10の起動に要する起動時間Tとの比較に基づいて、水素製造装置10の起動タイミングを決定する。よって、水素の消費速度に応じて水素製造装置10の起動タイミングを決定することができる。これにより、水素の適切な供給と、水素製造装置10の効率的な運転の両立が可能となる。
【0055】
幾つかの実施形態では、上述したように、水素製造装置10の起動時間Tが予想到達時間Tよりも長くなった時点を起動タイミングとして決定する。これにより、水素の消費速度に応じて、貯留部30の圧力が規定値P未満になる前に水素製造装置10の起動を完了可能な、なるべく遅い起動タイミングを決定することができる。よって、水素の適切な供給と、水素製造装置10の効率的な運転とを両立しやすくなる。
【0056】
また、幾つかの実施形態では、上述したように、上述の予想到達時間Tと上述の起動時間Tとの比較、及び、予め設定された規定起動時刻tに基づいて水素製造装置10の起動タイミングを決定する。これにより、水素の消費速度に応じた起動タイミングで、又は、予め設定された適切な起動タイミングで水素製造装置10を起動することができる。よって、水素の適切な供給と、水素製造装置の効率的な運転とを両立しやすくなる。
【0057】
また、幾つかの実施形態では、上述したように、上述の起動時間Tが上述の予想到達時間T以下であるときには、規定起動時刻tを起動タイミングとして決定する。これにより、水素の消費速度が比較的遅い場合であっても、適切なタイミングで水素製造装置を起動して、水素製造装置10を効率的に運転することができる。例えば、電力負荷の低い夜間や、再生エネルギーにより生成された電力に余剰が生じている時間帯を上述の規定起動時刻として設定することで、余剰電力等を有効利用して、効率的に水素を製造することができる。
【0058】
また、貯留部30に貯留された水素を昼間に消費して、夜間に水素製造装置10を稼動させて貯留部30に水素を貯留する(即ち、規定時刻にのみ水素製造装置10を稼動させる)前提では、最大消費分を全て賄うための貯留部30の容量が必要となり、設備コストや設置スペースが大きくなってしまう。この点、上述の実施形態では、貯留部30に貯留された水素を消費しながら水素製造装置10を稼動させて水素製造を行うことができるので、貯留部30の容量を小さくすることができる。よって、設備コストや設置スペースの増大を抑制することができる。
【0059】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0060】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置用の制御装置(50)は、
水素製造装置(10)の運転を制御するための制御装置であって、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部(30)の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間(T)を算出するように構成された予想到達時間算出部(52)と、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間(T)を取得するように構成された起動時間取得部(54)と、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定するように構成された決定部(56)と、
を備える。
【0061】
水素製造装置で生成された水素が貯留される貯留部の圧力が規定値未満になると、貯留部からの水素を水素消費設備に適切に供給できなくなる。ここで、貯留部の圧力の変化速度は、貯留部に貯留された水素が消費される速度を示す。この点、上記(1)の構成によれば、貯留部の圧力の変化速度に基づき算出される予想到達時間と、水素製造装置の状態に応じた該水素製造装置の起動時間との比較に基づいて、水素製造装置の起動タイミングを決定する。よって、水素の消費速度に応じて水素製造装置の起動タイミングを決定することができる。これにより、水素の適切な供給と、水素製造装置の効率的な運転の両立が可能となる。
【0062】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記決定部は、前記起動時間が前記予想到達時間よりも長くなった時点を前記起動タイミングとして決定するように構成される。
【0063】
上記(2)の構成によれば、上述の起動時間が上述の予想到達時間よりも長くなった時点を起動タイミングとして決定するので、水素の消費速度に応じて、貯留部の圧力が規定値未満になる前に水素製造装置の起動を完了可能な、なるべく遅い起動タイミングを決定することができる。よって、水素の適切な供給と、水素製造装置の効率的な運転とを両立しやすくなる。
【0064】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記決定部は、前記予想到達時間と前記起動時間との比較、及び、予め設定された規定起動時刻(t)に基づいて前記起動タイミングを決定するように構成される。
【0065】
上記(3)の構成によれば、上述の予想到達時間と上述の起動時間との比較、及び、予め設定された規定起動時刻に基づいて水素製造装置の起動タイミングを決定する。よって、水素の消費速度に応じた起動タイミングで、又は、予め設定された適切な起動タイミングで水素製造装置を起動することができる。よって、水素の適切な供給と、水素製造装置の効率的な運転とを両立しやすくなる。
【0066】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記決定部は、前記起動時間が前記予想到達時間以下であるとき、前記規定起動時刻を前記起動タイミングとして決定するように構成される。
【0067】
上記(4)の構成によれば、上述の起動時間が上述の予想到達時間以下であるときには、規定起動時刻を起動タイミングとして決定するので、水素の消費速度が比較的遅い場合であっても、適切なタイミングで水素製造装置を起動して、水素製造装置を効率的に運転することができる。例えば、電力負荷の低い夜間や、再生エネルギーにより生成された電力に余剰が生じている時間帯を上述の規定起動時刻として設定することで、余剰電力等を有効利用して、効率的に水素を製造することができる。
【0068】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記水素製造装置は、
水を電気分解するように構成された電解槽(12)と、
前記電解槽にて水の電気分解により発生した水素又は酸素が導かれる気液分離器(14又は20)と、
を含み、
前記起動時間取得部は、前記水素製造装置における前記水の温度及び前記気液分離器の圧力に基づいて、前記起動時間を算出するように構成される。
【0069】
上記(5)の構成によれば、水素製造装置における水(電解質溶液等)の温度及び気液分離器の圧力に基づいて、水素製造装置の状態に応じた該水素製造装置の起動時間を適切に算出することができる。よって、このように算出された起動時間と、上述の予想到達時間との比較に基づいて、水素製造装置の起動タイミングを適切に決定することができる。
【0070】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記制御装置は、
前記水素製造装置の状態と前記起動時間との対応関係を示す情報が記憶される記憶部(58)を備え、
前記起動時間取得部は、前記水素製造装置の状態に基づき、該状態に応じた前記起動時間を前記記憶部から取得するように構成される。
【0071】
上記(6)の構成によれば、水素製造装置の状態に基づき、該状態に応じた起動時間を記憶部から取得する。よって、このように取得された起動時間と、上述の予想到達時間との比較に基づいて、水素製造装置の起動タイミングを適切に決定することができる。
【0072】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造設備(100)は、
水素製造装置(10)と、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部(30)と、
前記水素製造装置の運転を制御するように構成された上記(1)乃至(6)の何れか一項に記載の制御装置(50)と、
を備える。
【0073】
上記(7)の構成によれば、貯留部の圧力の変化速度に基づき算出される予想到達時間と、水素製造装置の起動に要する起動時間との比較に基づいて、水素製造装置の起動タイミングを決定する。よって、水素の消費速度に応じて水素製造装置の起動タイミングを決定することができる。これにより、水素の適切な供給と、水素製造装置の効率的な運転の両立が可能となる。
【0074】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置の制御方法は、
水素製造装置(10)の運転を制御するための制御方法であって、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部(30)の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間(T)を算出するステップ(S2)と、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間(T)を取得するステップ(S4)と、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定するステップ(S6、S10)と、
を備える。
【0075】
上記(8)の方法によれば、貯留部の圧力の変化速度に基づき算出される予想到達時間と、水素製造装置の起動に要する起動時間との比較に基づいて、水素製造装置の起動タイミングを決定する。よって、水素の消費速度に応じて水素製造装置の起動タイミングを決定することができる。これにより、水素の適切な供給と、水素製造装置の効率的な運転の両立が可能となる。
【0076】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置用の制御プログラムは、
水素製造装置(10)の運転を制御するための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記水素製造装置で生成された水素を貯留するための貯留部(30)の圧力の変化速度に基づいて、前記貯留部の圧力が規定値に到達するまでの予想到達時間(T)を算出する手順と、
前記水素製造装置の状態に応じた前記水素製造装置の起動時間(T)を取得する手順と、
前記予想到達時間と前記起動時間との比較に基づいて、前記水素製造装置を起動する起動タイミングを決定する手順と、
を実行させるように構成される。
【0077】
上記(9)の構成によれば、貯留部の圧力の変化速度に基づき算出される予想到達時間と、水素製造装置の起動に要する起動時間との比較に基づいて、水素製造装置の起動タイミングを決定する。よって、水素の消費速度に応じて水素製造装置の起動タイミングを決定することができる。これにより、水素の適切な供給と、水素製造装置の効率的な運転の両立が可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0079】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0080】
10 水素製造装置
12 電解槽
13 水供給ライン
14 気液分離器
15 水素ガスライン
16 陰極側ライン
18 戻りライン
20 気液分離器
21 酸素ガスライン
22 陽極側ライン
24 戻りライン
30 貯留部
40 水素消費設備
50 制御装置
52 予想到達時間算出部
54 起動時間取得部
56 決定部
58 記憶部
60 圧力センサ
62 温度センサ
64 圧力センサ
100 水素製造設備
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B