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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】組電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20241118BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241118BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20241118BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241118BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20241118BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20241118BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20241118BHJP
【FI】
H01M50/262 Z
H01M10/052
H01M10/0587
H01M50/209
H01M50/264
H01M50/46
H01M50/491
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022123731
(22)【出願日】2022-08-03
(65)【公開番号】P2024021125
(43)【公開日】2024-02-16
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】泉本 貴昭
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225167(JP,A)
【文献】特開2013-125650(JP,A)
【文献】特開2013-182778(JP,A)
【文献】特開2018-170221(JP,A)
【文献】特開2019-053983(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極基材の相反する方向に面する2つの面に正極合剤層が塗工された正極板を形成する工程と、
負極基材の相反する方向に面する2つの面に負極合剤層が塗工された負極板を形成する工程と、
前記正極板と前記負極板とをセパレータを介して積層して、一対の平面部を有した偏平な電極体を形成する工程と、
ケースが備えるケース側壁と前記電極体の前記平面部とが対向するように、前記電極体を前記ケースに収容し、さらに、前記ケース内に非水電解液を注入し、リチウムイオン二次電池である単電池を形成する工程と、
複数の前記単電池が備える前記ケース側壁同士が互いに近接するように、複数の前記単電池に拘束荷重を加える拘束工程と、
前記単電池を初充電する工程と、を含み、
前記正極基材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属箔であり、
前記正極合剤層は、リチウム含有複合酸化物を含む正極活物質を含み、
前記負極基材は、銅または銅合金からなる金属箔であり、
前記負極合剤層は、炭素材料を含む負極活物質を含み、
前記セパレータは、多孔性ポリオレフィン膜であり、
前記非水電解液は、非水溶媒としてのエチレンカーボネートと、リチウム塩としてのリチウムビスオキサレートボレートと、を含み、
前記ケースは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されており、
前記ケース側壁の板厚は、0.3mm以上0.5mm以下であり、
前記拘束荷重を加える前の状態において、
前記電極体の1つの層を構成する前記正極板について、前記正極基材の各面における単位面積あたりの前記正極合剤層が含む前記正極活物質の質量の和をA〔mg/cm〕とし、前記正極基材の各面における単位面積あたりの前記正極合剤層が含む空孔の体積の和をC〔cm/cm〕とし、
前記電極体の1つの層を構成する前記負極板について、前記負極基材の各面における単位面積あたりの前記負極合剤層が含む前記負極活物質の質量の和をB〔mg/cm〕とし、前記負極基材の各面における単位面積あたりの前記負極合剤層が含む空孔の体積の和をD〔cm/cm〕とし、
前記電極体の1つの層を構成する前記セパレータについて、単位面積あたりの前記セパレータが含む空孔の体積をE〔cm/cm〕とし、
前記拘束工程において、前記ケース側壁のうち前記平面部と対向する対向部に対して、単位面積あたりに作用する圧力をF〔N/mm〕としたときに、
(A+B)/{(C+D+E)/F}の値が1300以上3000以下である
組電池の製造方法。
【請求項2】
(A+B)/{(C+D+E)/F}の値が1500以上2500以下である
請求項1に記載の組電池の製造方法。
【請求項3】
Bの値は、(A+B)の値に対して37%以上43%以下である
請求項1または2に記載の組電池の製造方法。
【請求項4】
Fの値は、0.4N/mm以上0.9N/mm以下である
請求項3に記載の組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池を並べて配置した組電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池は、組電池として構成された状態で車両駆動用の高出力電源等に広く用いられている。組電池は、電極体をケースに収容して構成された複数の単電池と、隣り合う単電池の間に1つずつ介在される複数のスペーサとを備える。組電池は、複数の単電池と複数のスペーサとが、拘束バンドによって単電池の配列方向に一定の拘束荷重を加えられた状態で拘束されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-84550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単電池の充電時には、電極体が備える正負の合剤層からガスが発生する。合剤層から発生したガスは、合材層中の空孔やセパレータ中の空孔内に留まることで、電極体の内部抵抗を増加させる。充電時に単電池の電極体から発生するガスを電極体外に排出する観点では、拘束バンドによる拘束荷重を大きくすることで、ケースに収容された電極体に作用する圧力を高めることが好ましい。一方で、拘束バンドによる拘束荷重が過剰になると、ケースや電極体が塑性変形することで、単電池のばね定数が増加する。単電池のばね定数が高い状態では、温度変化や充放電に伴う単電池の収縮が生じると拘束荷重が大きく減少する。その結果、ケース内での単電池及び組電池の収容状態が不安定となるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための組電池の製造方法は、正極基材の相反する方向に面する2つの面に正極合剤層が塗工された正極板を形成する工程と、負極基材の相反する方向に面する2つの面に負極合剤層が塗工された負極板を形成する工程と、前記正極板と前記負極板とをセパレータを介して積層して、一対の平面部を有した偏平な電極体を形成する工程と、ケースが備えるケース側壁と前記電極体の前記平面部とが対向するように、前記電極体を前記ケースに収容して単電池を形成する工程と、複数の前記単電池が備える前記ケース側壁同士が互いに近接するように複数の前記単電池に拘束荷重を加える拘束工程と、前記単電池を初充電する工程と、を含み、前記拘束荷重を加える前の状態において、前記電極体の1つの層を構成する前記正極板について、前記正極基材の各面における単位面積あたりの前記正極合剤層が含む正極活物質の質量の和をA〔mg/cm〕とし、前記正極基材の各面における単位面積あたりの前記正極合剤層が含む空孔の体積の和をC〔cm/cm〕とし、前記電極体の1つの層を構成する前記負極板について、前記負極基材の各面における単位面積あたりの前記負極合剤層が含む負極活物質の質量の和をB〔mg/cm〕とし、前記負極基材の各面における単位面積あたりの前記負極合剤層が含む空孔の体積の和をD〔cm/cm〕とし、前記電極体の1つの層を構成する前記セパレータについて、単位面積あたりの前記セパレータが含む空孔の体積をE〔cm/cm〕とし、前記拘束工程において、前記ケース側壁のうち前記平面部と対向する対向部に対して、単位面積あたりに作用する圧力をF〔N/mm〕としたときに、(A+B)/{(C+D+E)/F}の値が1300以上3000以下である。
【0006】
正負の活物質量の和(A+B)は、充電時に電極体から発生するガスの量の指標となる。また、{(C+D+E)/F}の値は、拘束前の状態における電極体が含む空孔の体積を基準とした拘束荷重による空孔の体積の減少量の指標となる。すなわち、{(C+D+E)/F}の値は、拘束後の状態における電極体が含む空孔の体積の指標となる。したがって、拘束後の空孔体積の指標の値に対する電極体から発生するガスの量の指標の値の割合が上記の範囲を満たすように拘束荷重を決定することで、電極体から好適にガスを排出しつつ、単電池に対して過剰な圧力が作用することを抑制できる。
【0007】
上記組電池の製造方法において、(A+B)/{(C+D+E)/F}の値が1500以上2500以下であることが好ましい。上記製造方法によれば、電極体から発生するガスの滞留に伴う単電池の電気抵抗値の増加を好適に抑制できる。
【0008】
上記組電池の製造方法において、Bの値は、(A+B)の値に対して37%以上43%以下であることが好ましい。負極活物質は、正極活物質よりも充電時にガスを発生させ易い。Bの値を(A+B)の値の37%以上43%以下とすることで、負極活物質の必要量を確保しつつ、充電時に発生するガスの量が過剰に増加することを抑制できる。
【0009】
上記組電池の製造方法において、Fの値は、0.4N/mm以上0.9N/mm以下であることが好ましい。上記製造方法によれば、単電池同士の拘束に伴う単電池のばね定数の過剰な増加を抑制しつつ、電極体から発生するガスを好適に排出できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単電池のばね定数の過剰な増加を抑制しつつ、電極体から発生するガスを好適に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、組電池の斜視図である。
図2図2は、組電池を構成する単電池を示す斜視図である。
図3図3は、電極体を展開した状態を示す斜視図である。
図4図4は、電極体を展開した状態の断面構造を示す模式図である。
図5図5は、単電池とスペーサとを示す側面図である。
図6図6は、スペーサの正面図である。
図7図7は、組電池の製造方法を示すフローチャートである。
図8図8は、電極体の平面部と対向する視点から見た電極体の正面図である。
図9図9は、実施例1~6及び比較例1~4の各パラメータを示す表である。
図10図10は、パラメータGの値に対する初充電工程後の単電池の反応抵抗及びばね定数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、組電池の一実施形態について図1図10を参照して説明する。
[組電池の構成]
図1に示すように、組電池1は、複数の単電池10と、複数のスペーサ40と、一対のエンドプレート50と、複数の拘束バンド51とを備える。複数の単電池10は、所定の一方向である配列方向Xに配列される。一対のエンドプレート50は、配列方向Xにおいて、組電池1の両端に配置される。各拘束バンド51は、一対のエンドプレート50を架橋するように取り付けられる。スペーサ40は、配列方向Xにおいて、各単電池10の間、及び、単電池10とエンドプレート50との間に1つずつ介在する。
【0013】
エンドプレート50は、複数の単電池10と複数のスペーサ40とを配列方向Xに挟み込む。拘束バンド51の各端は、ビスによってエンドプレート50に固定される。拘束バンド51は、配列方向Xに所定の拘束荷重が加わるように取り付けられる。組電池1は、複数の単電池10と複数のスペーサ40とに対して、エンドプレート50と拘束バンド51とによって配列方向Xから拘束荷重が加えられることで一体的に保持される。本実施形態では、一対のエンドプレート50と、複数の拘束バンド51とによって拘束機構が構成されている。
【0014】
[単電池の構成]
図2に示すように、単電池10は、例えば、非水二次電池であって、一例としてリチウムイオン二次電池である。単電池10は、ケース11を備える。ケース11は、収容部11Aと、蓋体12とを備える。収容部11Aは、電極体20と非水電解液とを収容する。収容部11Aは、上側に開口を有した偏平な有底角型(直方体形状)の外形を有する。
【0015】
蓋体12は、収容部11Aの開口を閉塞する。ケース11は、収容部11Aに蓋体12を取り付けることで密閉された電槽が構成される。収容部11Aは、配列方向Xにおいて、互いに向かい合うケース側壁11Bを備える。ケース側壁11Bは、組電池1の状態でスペーサ40に押圧される平坦面を有する。収容部11A及び蓋体12は、アルミニウム、もしくはアルミニウム合金等の金属で構成される。収容部11Aの厚み(板厚)は、概ね1mm以下、好ましくは0.3mm以上0.5mm以下、例えば、0.4mmである。
【0016】
蓋体12には、正極の外部端子13Aと、負極の外部端子13Bとが設けられる。外部端子13A,13Bは、電力の充放電に用いられる。電極体20における正極側の端部である正極側集電部20Aは、正極の集電部材14Aを介して正極の外部端子13Aに電気的に接続される。電極体20における負極側の端部である負極側集電部20Bは、負極の集電部材14Bを介して負極の外部端子13Bに電気的に接続される。なお、外部端子13A,13Bの形状は、図2に示す形状に限定されず、任意の形状であってよい。隣り合う単電池10の正極の外部端子13Aと負極の外部端子13Bとは、バスバー52(図1参照)で電気的に接続されている。これにより、隣り合う単電池10は、直列に電気接続されている。
【0017】
なお、集電部材14A,14Bと蓋体12との間には、絶縁性を有したガスケットが配置される。ガスケットは、集電部材14A,14Bと蓋体12とを電気的に絶縁するとともに、集電部材14A,14Bと蓋体12との間をシールする。また、蓋体12は、非水電解液を注入するための注入口15を備える。
【0018】
[電極体]
図3に示すように、電極体20は、長尺の正極板21と負極板24とがセパレータ27を介して積層した積層体を捲回した偏平な捲回体である。正極板21、負極板24、及びセパレータ27は、それぞれの長手となる方向が長手方向D1と一致するように積層される。捲回前の積層体は、正極板21、セパレータ27、負極板24、セパレータ27の順に、積層方向(厚さ方向)に積層される。電極体20は、セパレータ27を挟んで積層された正極板21と負極板24とが、その帯形状の幅方向D2に延びる捲回軸L1周りに捲回された構造を有している。したがって、正極板21及び負極板24は、それぞれ電極体20において複数の層を構成する。同様に、各セパレータ27は、それぞれ電極体20において複数の層を構成する。
【0019】
[正極板]
図4に示すように、正極板21は、正極基材22と、正極合剤層23とを備える。正極基材22は、長尺状に形成された箔状の部材である。正極合剤層23は、正極基材22の相反する方向に面する2つの面の各々に設けられる。正極基材22は、幅方向D2の一端に、正極合剤層23が形成されずに正極基材22が露出した正極側未塗工部22Aを備える。
【0020】
正極基材22は、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。正極基材22が備える正極側未塗工部22Aは、捲回体の状態において、向かい合う面が互いに圧接されて正極側集電部20Aを構成する。
【0021】
正極合剤層23は、液状体の正極合剤ペーストの硬化体である。正極合剤ペーストは、正極活物質、正極溶媒、正極導電材、及び、正極結着材を含む。正極合剤層23は、正極合剤ペーストが乾燥されて正極溶媒が気化することで形成される。したがって、正極合剤層23は、正極活物質、正極導電材、及び、正極結着材を含む。
【0022】
正極活物質は、単電池10における電荷担体であるリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なリチウム含有複合金属酸化物が用いられる。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、リチウム以外の他の金属元素とを含む酸化物である。リチウム以外の他の金属元素は、例えば、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、チタン、タングステン、アルミニウム、リチウム含有複合酸化物にリン酸鉄として含有される鉄からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0023】
例えば、リチウム含有複合酸化物は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する三元系リチウム含有複合酸化物である。例えば、三元系リチウム含有複合酸化物は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMnO)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、リン酸鉄リチウム(LiFePO)である。
【0024】
正極溶媒は、有機溶媒の一例であるNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液が用いられる。正極導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバ等の炭素繊維、黒鉛が用いられる。正極結着材は、正極合剤ペーストに含まれる樹脂成分の一例である。正極結着材は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等が用いられる。
【0025】
なお、正極板21は、正極側未塗工部22Aと正極合剤層23との境界に、絶縁層を備えてもよい。絶縁層は、絶縁性を有した無機成分と、結着材として機能する樹脂成分とを含む。無機成分は、粉末状のベーマイト、チタニア、及びアルミナからなる群から選択される少なくとも1つである。樹脂成分は、PVDF、PVA、アクリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
[負極板]
負極板24は、負極基材25と、負極合剤層26とを備える。負極基材25は、長尺状に形成された箔状の部材である。負極合剤層26は、負極基材25の相反する方向に面する2つの面の各々に設けられる。負極基材25は、幅方向D2の一端であって、正極側未塗工部22Aと反対に位置する端部において、負極合剤層26が形成されずに負極基材25が露出した負極側未塗工部25Aを備える。
【0027】
負極基材25は、銅または銅を主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。負極側未塗工部25Aは、捲回体の状態において、向かい合う面が互いに圧接されて負極側集電部20Bを構成する。
【0028】
負極合剤層26は、液状体の負極合剤ペーストの硬化体である。負極合剤ペーストは、負極活物質、負極溶媒、負極分散材、及び、負極結着材を含む。負極合剤層26は、負極合剤ペーストが乾燥されて負極溶媒が気化することで形成される。したがって、負極合剤層26は、負極活物質、負極分散材、及び、負極結着材を含む。なお、負極合剤層26は、導電材のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0029】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料である。負極活物質は、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が用いられる。負極溶媒は、一例として、水である。負極分散材は、一例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることができる。負極結着材は、正極結着材と同様のものを用いることができる。負極結着材は、一例としてSBRである。
【0030】
[セパレータ]
セパレータ27は、正極板21と負極板24との接触を防ぐとともに、正極板21及び負極板24の間で非水電解液を保持する。非水電解液に電極体20を浸漬させると、セパレータ27の端部から中央部に向けて非水電解液が浸透する。
【0031】
セパレータ27は、ポリプロピレン製等の不織布である。セパレータ27としては、例えば、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、及びイオン導電性ポリマー電解質膜等を用いることができる。
【0032】
[非水電解液]
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。非水溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートからなる群から選択された一種または二種以上の材料である。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)である。
【0033】
本実施形態では、非水溶媒としてエチレンカーボネートを採用している。非水電解液には、添加剤としてのリチウム塩としてのリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)が添加される。例えば、非水電解液におけるLiBOBの濃度が0.001以上0.1以下[mol/L]となるように、非水電解液にLiBOBを添加する。
【0034】
図5に示すように、電極体20は、捲回体の湾曲部分が上下に並ぶように、捲回軸L1が収容部11Aの底面に平行に延在する状態で配置される。捲回軸L1は、電極体20がケース11に収容された状態で、上下方向において、電極体20のほぼ中心に位置する。
【0035】
電極体20は、偏平部31と、上湾曲部32と、下湾曲部33とを備える。偏平部31は、相反する方向に面する一対の平面部31Sを備える。上湾曲部32は、偏平部31の上部に位置する。上湾曲部32は、偏平部31の上端から上側に膨らむように、一対の平面部31Sの上縁を繋ぐ湾曲面を備える。下湾曲部33は、偏平部31の下部に位置する。下湾曲部33は、偏平部31の下端から下側に膨らむように、一対の平面部31Sの下縁を繋ぐ湾曲面を備える。
【0036】
電極体20は、下湾曲部33が収容部11Aの底面側に位置し、かつ、上湾曲部32が蓋体12側に位置するようにケース11内に収容される。ケース側壁11Bは、対向部11B1を備える。対向部11B1は、ケース側壁11Bのなかで平面部31Sと対向する部分である。組電池1の状態では、隣り合う単電池10が備えるケース側壁11B同士が互いに近接するように、複数の単電池10に拘束荷重が加えられる。
【0037】
[スペーサ]
図5に示すように、スペーサ40は、基板部41と、突出部42とを備える。基板部41は、一例として矩形平板で構成される。突出部42は、一例として、基板部41の一方の面に櫛歯状に並んで設けられる複数のリブである。突出部42の先端面は、隣り合う単電池10の一方が備えるケース側壁11Bと面接触し得るように平面、かつ、基板部41の一方の面からの高さが同じになるように構成されている。また、基板部41の他方の面は、隣り合う単電池10の他方が備えるケース側壁11Bに押し当てられる押し当て面である。スペーサ40は、拘束荷重が加えられた状態で、ケース側壁11Bの対向部11B1を介して電極体20を押圧する。
【0038】
図6に示すように、突出部42は、ケース側壁11Bに押し当てられた状態で、各リブの間に通風路43を構成する。通風路43は、単電池10を冷却するための冷却風CWが通過する流路となる。スペーサ40は、通風路43の下方から冷却風CWが流入し、かつ、通風路43の側方から外側に向かって冷却風CWが排出されるように、突出部42が配置される。
【0039】
[組電池の製造方法]
図7に示すように、組電池1の製造方法は、ステップS1~S7を含む。
ステップS1は、正極板21及び負極板24のそれぞれを製造する源泉工程である。正極板21の製造工程は、正極基材22の相反する方向に面する2つの面において、幅方向D2の両端に正極側未塗工部22Aを構成するように正極合剤ペーストを塗工する。その後、正極合剤ペーストを乾燥させて正極合剤層23を形成する。次いで、正極基材22の両面に形成された正極合剤層23を押圧することで、正極合剤層23の厚みを調整する。その後、正極基材22を幅方向D2の中央で切断する。以上の工程によって、一度に2条の正極板21が製造される。
【0040】
負極板24の製造工程は、負極基材25の相反する方向に面する2つの面において、幅方向D2の両端に負極側未塗工部25Aを構成するように負極合剤ペーストを塗工する。その後、負極合剤ペーストを乾燥させて負極合剤層26を形成する。次いで、負極基材25の両面に形成された負極合剤層26を押圧することで、負極合剤層26の厚みを調整する。その後、負極基材25を幅方向D2の中央で切断する。以上の工程によって、一度に2条の負極板24が製造される。
【0041】
ステップS2は、正極板21、負極板24、及びセパレータ27を用いて電極体20を製造する工程である。具体的に、正極板21と負極板24とをセパレータ27を介して積層した後、捲回し、さらに偏平に押圧する。その後、正極側未塗工部22Aを圧接して正極側集電部20Aを形成するとともに、負極側未塗工部25Aを圧接して負極側集電部20Bを形成する。以上の手順により、ステップS2において、電極体20が製造される。
【0042】
ステップS3は、電極体20をケース11内に収容する封缶工程である。このとき、正極側集電部20Aは、正極側集電部材14Aを介して正極の外部端子13Aと電気的に接続される。負極側集電部20Bは、負極側集電部材14Bを介して負極の外部端子13Bと電気的に接続される。収容部11Aの上部は、蓋体12によって塞がれる。
【0043】
ステップS4は、加熱処理によって電極体20の水分を除去する乾燥工程と、ケース11内に非水電解液を注入する注液工程である。以上の手順により、単電池10が組み立てられる。
【0044】
ステップS5は、複数の単電池10と、複数のスペーサ40と、一対のエンドプレート50とを複数の拘束バンド51を用いて拘束する拘束工程である。複数の単電池10は、ケース側壁11Bが配列方向Xと直交するように配置される。各スペーサ40は、配列方向Xにおいて、各単電池10の間、及び、単電池10とエンドプレート50との間に1つずつ介在する。各エンドプレート50は、複数の単電池10と複数のスペーサ40とを配列方向Xに挟み込む。拘束バンド51は、配列方向Xに所定の拘束荷重が加わるように取り付けられる。その後、バスバー52によって隣り合う単電池10の正極の外部端子13Aと負極の外部端子13Bとを電気的に接続する。これにより、組電池1が構成される。
【0045】
ステップS6は、組電池1を構成する各単電池10を充電する初充電工程である。ステップS7は、初充電工程を経た組電池1を高温下で一定期間静置するエージング工程である。エージング工程によって、単電池10のなかの金属異物を溶解させるとともにSEI被膜を安定化させる。その後、検査等を経たうえで、組電池1の製造工程が完了する。
【0046】
[拘束荷重の決定方法]
以下、ステップS5における拘束荷重の決定方法について説明する。
ステップS6の初充電工程のような単電池10の充電時には、電極体20が含む正極活物質及び負極活物質からガスが発生する。充電時に電極体20から発生するガスの量は、電極体20が含む正極活物質の質量、及び、負極活物質の質量のそれぞれに対して正の相関を有する。したがって、正極活物質の質量と負極活物質の質量との和が増えるほど、充電時に電極体20から発生するガスの量が多くなる。
【0047】
電極体20から発生するガスは、正極合剤層23中の空孔、負極合剤層26中の空孔、及びセパレータ27中の空孔内に留まることで、電極体20の内部抵抗を増加させる。そのため、充電時に電極体20から発生するガスを電極体20外に排出する観点から、ステップS5における拘束荷重を大きくすることで、電極体20に作用する圧力を高めることが好ましい。これにより、正極合剤層23、負極合剤層26、及びセパレータ27のそれぞれが含む空孔の体積を小さくすることで、充電時に電極体20から発生するガスが電極体20内に滞留することを抑制できる。
【0048】
一方で、拘束荷重が過剰になると、セパレータ27の過剰な圧縮に伴ってセパレータ27が含む非水電解液が電極体20外に排出されることで、電極体20中の内部抵抗が増加するおそれがある。また、拘束荷重が過剰になると、ケース11や電極体20が塑性変形することで、単電池10のばね定数が増加する。単電池10のばね定数が高い状態では、温度変化や充放電に伴って単電池10が配列方向Xに収縮すると、拘束荷重が大きく減少するため複数の単電池10同士の拘束が不安定となる。そのため、拘束荷重は、電極体20からガスを十分に排出できる程度の圧力が電極体20に作用し、かつ、ケース11及び電極体20が過剰に圧縮されない程度の大きさであることが求められる。
【0049】
ステップS5における拘束荷重は、以下のA~Fのパラメータを用いて表されるGの値が所定の数値範囲内となるように決定される。Gの値は、G=(A+B)/{(C+D+E)/F}として表される。
【0050】
以下、A~Fの各パラメータについて説明する。Aの値は、拘束前(ステップS1以降かつステップS4までの間)の状態において、電極体20の1つの層を構成する正極板21について正極基材22の各面における単位面積あたりの正極合剤層23が含む正極活物質の質量の和〔mg/cm〕である。Bの値は、拘束前の状態において、電極体20の1つの層を構成する負極板24について負極基材25の各面における単位面積あたりの負極合剤層26が含む負極活物質の質量の和〔mg/cm〕である。(A+B)の値は、充電時に電極体20から発生するガスの量と正の相関を有することから、充電時に発生するガスの量の指標として用いることができる。
【0051】
Aの値は、例えば、ステップS1において、正極板21を作製する際の単位面積あたりの正極合剤層23の目付量〔mg/cm〕と、正極合剤層23中の正極活物質の質量比とを用いて算出できる。同様に、Bの値は、例えば、ステップS1において、負極板24を作製する際の単位面積あたりの負極合剤層26の目付量〔mg/cm〕と、負極合剤層26中の負極活物質の質量比とを用いて算出できる。
【0052】
Bの上限値は、一例として、(A+B)の値に対して43%以下、好ましくは41%以下である。負極活物質は、正極活物質よりも充電時にガスを発生させ易い。そのため、Bの値を上記の上限値以下とすることで、充電時に発生するガスの量が過剰に増加することを抑制できる。また、Bの下限値は、負極活物質の必要量を確保する観点から、一例として(A+B)の値に対して37%以上、好ましくは39%以上である。Bの値は、一例として、(A+B)の値に対して40%である。
【0053】
単電池10の充電時に発生するガスは、正極活物質の表面及び負極活物質の表面から生じる。正極活物質の表面積は、正極活物質の質量と正の相関を有する。同様に、負極活物質の表面積は、負極活物質の質量と正の相関を有する。電極体20の状態において、正極活物質の粒径(メジアン径D50)は、一例として、2.8μm以上6.2μm以下である。電極体20の状態において、負極活物質の粒径(メジアン径D50)は、一例として、6.6μm以上11.9μm以下である。正極活物質の粒径及び負極活物質の粒径が上記の範囲にある状態は、正極活物質の質量と負極活物質の質量との和が、充電時に電極体20から発生するガスの量に対して正の相関を有する状態の一例である。
【0054】
Cの値は、拘束前の状態において、電極体20の1つの層を構成する正極板21について正極基材22の各面における単位面積あたりの正極合剤層23が含む空孔の体積の和〔cm/cm〕である。Dの値は、拘束前の状態において、電極体20の1つの層を構成する負極板24について負極基材25の各面における単位面積あたりの負極合剤層26が含む空孔の体積の和〔cm/cm〕である。
【0055】
Cの値は、拘束前の状態において、正極基材22の各面における単位面積あたりの正極合剤層23の体積及び目付け量、並びに、正極合剤層23を構成する各成分の密度及び重量割合を用いて求めることができる。一例として、正極合剤層23において、正極活物質、正極導電材、及び正極結着材がa:b:cの重量比(a+b+c=1)である場合のCの値の算出方法について説明する。このときの正極活物質、正極導電材、及び正極結着材のそれぞれの密度をρ、ρ、及びρ〔mg/cm〕とする。また、正極基材22の各面における単位面積あたりの正極合剤層23の体積の和をV〔cm/cm〕とする。さらに、正極基材22の各面における単位面積あたりの正極合剤層23の目付量の和をM〔mg/cm〕とする。この場合、C=V-(M×a/ρ+M×b/ρ+M×c/ρ)として算出できる。なお、Dの値もCの値と同様の考え方で算出できる。
【0056】
Eの値は、拘束前の状態において、電極体20の1つの層を構成するセパレータ27について、単位面積あたりのセパレータ27が含む空孔の体積〔cm/cm〕である。Eの値は、拘束前の状態において、単位面積あたりのセパレータ27の体積、重量、及び密度を用いて算出できる。
【0057】
Fの値は、単電池10に対してステップS5における拘束荷重が付与された状態で、ケース側壁11Bのなかで平面部31Sと対向する対向部11B1に作用する圧力〔N/mm〕の値である。対向部11B1の面積は、平面部31Sの面積と一致する。したがって、Eの値は、拘束荷重を平面部31Sの面積で除した値となる。
【0058】
ここで、図8を参照して平面部31Sの詳細について説明する。図8に示すように、電極体20が備える平面部31Sは、偏平部31のうち正極側集電部20A及び負極側集電部20B以外の部分である。すなわち、平面部31Sは、正極合剤層23または負極合剤層26の何れか、もしくはセパレータ27のうち正極合剤層23または負極合剤層26と接する部分によって構成される。拘束荷重が加えられた単電池10は、ケース側壁11Bと平面部31Sとが接する状態となる。なお、図8では、平面部31Sにドットを付して示す。
【0059】
正極合剤層23、負極合剤層26、及びセパレータ27の各々が含む空孔は、電極体20に拘束荷重が作用することで体積が減少する。したがって、{(C+D+E)/F}の値は、拘束前の状態における正極合剤層23、負極合剤層26、及びセパレータ27の各々が含む空孔の体積を基準とした拘束荷重による空孔の体積の減少量の指標となる。すなわち、{(C+D+E)/F}の値は、拘束後の状態における正極合剤層23、負極合剤層26、及びセパレータ27の各々が含む空孔の体積の指標となる。
【0060】
以上より、Gの値は、拘束後の空孔体積の指標である{(C+D+E)/F}に対する電極体20から発生するガスの量の指標である(A+B)の割合である。したがって、Gの値は、電極体20から好適にガスを排出するために必要な拘束荷重を決定するための指標となる。言い換えれば、Gの値は、電極体20に適切な大きさの荷重が作用しているか否かの指標となる。
【0061】
Gの下限値は、1300以上、好ましくは1483以上、より好ましくは1500以上である。Gの値を上記の下限値以上とすることで、電極体20から好適にガスを排出できる。Gの上限値は、3000以下、好ましくは2523以下、より好ましくは2500以下である。Gの値を上記の上限値以下とすることで、電極体20、ひいては単電池10に対して過剰な圧力が作用することを抑制できる。したがって、Gの値が上記の下限値と上限値との範囲内であれば、電極体20に対して適切な大きさの拘束荷重が作用した状態となる。すなわち、Gの値が上記の範囲を満たすように拘束荷重を決定することで、電極体20から好適にガスを排出しつつ、単電池10に対して過剰な圧力が作用することを抑制できる。
【0062】
Fの値は、一例として、0.4N/mm以上0.9N/mm以下、より好ましくは0.41N/mm以上0.83N/mm以下である。Fの値を上記範囲内とすることで、単電池10同士の拘束に伴う単電池10のばね定数の過剰な増加を抑制しつつ、電極体20から発生するガスを好適に排出できる。言い換えれば、Fの値が上記範囲内であるときに、Gの値が1300以上3000以下、好ましくは1483以上2523以下、より好ましくは1500以上2500以下となるように単電池10を構成することが好ましい。
【0063】
[実施例]
以下、実施例1~6及び比較例1~4を用いてGの値に対するステップS6の初充電工程後の単電池10の反応抵抗及び単電池10のばね定数の関係について説明する。なお、以下の実施例は、上記実施形態の効果を説明するための一例であって、本発明を限定するものではない。
【0064】
図9には、実施例1~6及び比較例1~4におけるパラメータA、B、F、及びGの値、並びに(A+B)、(C+D+E)、及びB/(A+B)の値を示す。合わせて、パラメータC、D、及びEを算出するために用いた正極合剤層23、負極合剤層26、及びセパレータ27のそれぞれの厚さを図9中の表に示す。また、実施例1~6及び比較例1~4におけるステップS6の初充電工程後の単電池10の反応抵抗及び単電池10のばね定数を図9中の表、及び図10のグラフ100に示す。
【0065】
[実施例1]
実施例1では、(A+B)の値が18.35mg/cm、(C+D+E)の値が0.00681cm/cmであった。また、実施例1では、Fの値を0.55N/mmに設定した。Gの値は、1483であった。B/(A+B)の値は、40.7%であった。
【0066】
[実施例2]
実施例2では、(A+B)の値が18.79mg/cm、(C+D+E)の値が0.00615cm/cmであった。また、実施例2では、Fの値を0.55N/mmに設定した。Gの値は、1682であった。B/(A+B)の値は、40.5%であった。
【0067】
[実施例3]
実施例3では、(A+B)の値が18.79mg/cm、(C+D+E)の値が0.00615cm/cmであった。また、実施例3では、Fの値を0.69N/mmに設定した。Gの値は、2103であった。B/(A+B)の値は、40.5%であった。
【0068】
[実施例4]
実施例4では、(A+B)の値が18.64mg/cm、(C+D+E)の値が0.00606cm/cmであった。また、実施例4では、Fの値を0.69N/mmに設定した。Gの値は、2117であった。B/(A+B)の値は、40.0%であった。
【0069】
[実施例5]
実施例5では、(A+B)の値が18.79mg/cm、(C+D+E)の値が0.00615cm/cmであった。また、実施例5では、Fの値を0.83N/mmに設定した。Gの値は、2523であった。B/(A+B)の値は、40.5%であった。
【0070】
[実施例6]
実施例6では、(A+B)の値が18.84mg/cm、(C+D+E)の値が0.00582cm/cmであった。また、実施例6では、Fの値を0.41N/mmに設定した。Gの値は、1337であった。B/(A+B)の値は、39.8%であった。
【0071】
[比較例1]
比較例1では、(A+B)の値が18.77mg/cm、(C+D+E)の値が0.00599cm/cmであった。また、比較例1では、Fの値を0.28N/mmに設定した。Gの値は、866であった。B/(A+B)の値は、40.8%であった。
【0072】
[比較例2]
比較例2では、(A+B)の値が18.77mg/cm、(C+D+E)の値が0.00601cm/cmであった。また、比較例2では、Fの値を0.41N/mmに設定した。Gの値は、1292であった。B/(A+B)の値は、40.8%であった。
【0073】
[比較例3]
比較例3では、(A+B)の値が18.53mg/cm、(C+D+E)の値が0.00648cm/cmであった。また、比較例3では、Fの値を1.10N/mmに設定した。Gの値は、3159であった。B/(A+B)の値は、40.6%であった。
【0074】
[比較例4]
比較例4では、(A+B)の値が19.07mg/cm、(C+D+E)の値が0.00565cm/cmであった。また、比較例4では、Fの値を1.10N/mmに設定した。Gの値は、3728であった。B/(A+B)の値は、41.2%であった。
【0075】
[評価]
図10に示すように、グラフ100中にプロットされた点P11~P16は、実施例1~6におけるGの値に対する初充電工程後の単電池10の反応抵抗〔mΩ〕を表す。グラフ100中にプロットされた点P21~P24は、比較例1~4におけるGの値に対する初充電工程後の単電池10の反応抵抗〔mΩ〕を表す。グラフ100中の曲線101は、複数の点P11~P16及び点P21~P24に基づく近似曲線であって、Gの値に対する単電池10の反応抵抗の変化を表す近似曲線である。
【0076】
グラフ100中にプロットされた点P31~P36は、実施例1~6におけるGの値に対する初充電工程後の単電池10のばね定数〔kN/mm〕を表す。グラフ100中にプロットされた点P41~P44は、比較例1~4におけるGの値に対する初充電工程後の単電池10のばね定数〔kN/mm〕を表す。グラフ100中の曲線102は、複数の点P31~P36及び点P41~P44に基づく近似曲線であって、Gの値に対する単電池10のばね定数の変化を表す近似曲線である。なお、単電池10のばね定数とは、単電池10の対向部11B1に対して配列方向Xの荷重を作用させた際のケース11及び電極体20を含めた単電池10全体のばね定数を意味する。
【0077】
Gの値が1300以上3000以下を満たす実施例1~6では、ステップS6の初充電工程後の単電池10の反応抵抗が39.4mΩから42.0mΩであった。特に、Gの値が1483以上2523以下を満たす実施例1~5では、ステップS6の初充電工程後の単電池10の反応抵抗が39.4mΩから40.1mΩであった。
【0078】
これに対して、Gの値が1300未満である比較例1では、反応抵抗が47.6mΩ、比較例2では、反応抵抗が45.5mΩであった。すなわち、比較例1、2では、実施例1~6と比較して反応抵抗の増加が確認された。比較例1、2における反応抵抗の増加は、電極体20に作用する拘束荷重が不十分であったことで、充電時に電極体20から発生したガスが電極体20内に留まることで、電極体20の内部抵抗が増加したことに起因する。
【0079】
また、Gの値が3000超である比較例3では、反応抵抗が47.9mΩ、比較例4では、反応抵抗が48.8mΩであった。すなわち、比較例3、4では、実施例1~6と比較して反応抵抗の増加が確認された。比較例3、4における反応抵抗の増加は、電極体20に作用する拘束荷重が過剰であったことで、セパレータ27の過剰な圧縮に伴って非水電解液が電極体20外に排出されたため、電極体20中の内部抵抗が増加したことに起因する。
【0080】
実施例1~6では、ステップS6の初充電工程後の単電池10のばね定数が178.5kN/mmから187.9kN/mmであった。比較例1、2では、単電池10のばね定数が実施例1~6と同程度であった。これに対して、Gの値が3000超である比較例3では、単電池10のばね定数が188.8kN/mmであった。すなわち、比較例3では、単電池10のばね定数のわずかな増加が確認された。そして、Gの値が最大である比較例4では、単電池10のばね定数が205.3kN/mmであった。すなわち、比較例4では、実施例1~6と比較して単電池10のばね定数の大幅な増加が確認された。比較例3、4における単電池10のばね定数の増加は、電極体20に作用する拘束荷重が過剰であったことで、ケース11及び電極体20に過剰な塑性変形が生じたことに起因する。
【0081】
以上より、Gの値が1300以上3000以下の範囲内になるように拘束荷重を決定することで、電極体20中の内部抵抗の増加を抑制しつつ、単電池10のばね定数の増加を抑制できることが確認された。特に、Gの値が1483以上2523以下の範囲内になるように拘束荷重を決定することで、電極体20の内部抵抗の増加をより好適に抑制できることが確認された。
【0082】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)Gの値が1300以上3000以下の範囲内になるように拘束荷重を決定することで、電極体20から好適にガスを排出しつつ、単電池10に対して過剰な圧力が作用することを抑制できる。したがって、単電池10のばね定数の過剰な増加を抑制しつつ、電極体20の内部抵抗の増加を抑制できる。
【0083】
(2)Gの値が1483以上2523以下、より好ましくは1500以上2500以下の範囲内になるように拘束荷重を決定することで、電極体20の内部抵抗の増加をより好適に抑制できる。
【0084】
(3)Bの値が(A+B)の値に対して37%以上43%以下、好ましくは39%以上41%以下であることで、負極活物質の必要量を確保しつつ、充電時に発生するガスの量が過剰に増加することを抑制できる。
【0085】
(4)Fの値を0.4N/mm以上0.9N/mm以下、より好ましくは0.41N/mm以上0.83N/mm以下とすることで、単電池10のばね定数の過剰な増加を抑制しつつ、電極体20から発生するガスを好適に排出できる。
【0086】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・Gの値が1300以上3000以下の範囲内になるのであれば、Fの値が0.4N/mm未満であってもよいし、0.9N/mm超であってもよい。
【0087】
・Gの値が1300以上3000以下の範囲内であり、かつ、電極体20の内部抵抗が過剰に増加しないのであれば、Bの値が(A+B)の値に対して37%未満であってもよいし、43%超であってもよい。
【0088】
・単電池10のばね定数が過剰に増加せず、かつ、電極体20の内部抵抗が過剰に増加しないのであれば、Gの値が1300以上1483未満であってもよいし、Gの値が2523超3000以下であってもよい。
【0089】
・組電池1は、複数の単電池10の間にスペーサ40を備えなくてもよい。この場合、組電池1の状態において、隣り合う単電池10が備えるケース側壁11B同士が接するように拘束される。この場合であっても、各単電池10において、ケース側壁11Bのうち電極体20と対向する対向部11B1に対して主として拘束荷重が作用する。
【0090】
・電極体20は、捲回体ではなく、正極板21と負極板24とをセパレータ27を介して積層した積層体をケース11に収容したものであってもよい。この場合、電極体20は、上湾曲部32や下湾曲部33が存在しないことになる。
【0091】
・単電池10は、自動搬送機や荷役用の特殊自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車等の他、コンピュータ、その他の電子機器に搭載されるものであってもよく、これ以外のシステムを構成するものであってもよい。例えば、船舶、航空機等の移動体に設けられるものであってもよく、発電所から変電所等を介して二次電池が設置されたビルや家庭等に電力を供給する電力供給システムであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…組電池
10…単電池
11…ケース
11B…ケース側壁
11B1…対向部
20…電極体
21…正極板
22…正極基材
23…正極合剤層
24…負極板
25…負極基材
26…負極合剤層
27…セパレータ
31…偏平部
31S…平面部
32…上湾曲部
33…下湾曲部
40…スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10