(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20241118BHJP
H02M 7/487 20070101ALI20241118BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/487
H02P27/06
(21)【出願番号】P 2022144051
(22)【出願日】2022-09-09
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】猪又 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 明
(72)【発明者】
【氏名】井脇 隆議
(72)【発明者】
【氏名】蛭子 譲治
(72)【発明者】
【氏名】福丸 伸吾
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184309(JP,A)
【文献】特開2018-057157(JP,A)
【文献】特開2012-100385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/487
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位を有する第1点と、前記第1電位よりも高い第2電位を有する第2点と、前記第1電位と前記第2電位との間の中性電位を有する中性点とのそれぞれと、モータとの間を接続・遮断することで、前記モータに電流を供給するスイッチング回路と、
前記中性電位を目標範囲内に維持するように前記スイッチング回路を制御する中性電位制御部と、
少なくとも前記中性電位制御部が前記スイッチング回路を制御する際に、前記モータが発生する駆動力に影響しないように前記モータへの供給電流を大きくする電流制御部と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記電流制御部は、少なくとも前記中性電位制御部が前記スイッチング回路を制御する際に、前記モータが発生する駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくして、前記供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するように前記スイッチング回路を制御する、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1点と前記中性点とに接続された第1コンデンサと、
前記第2点と前記中性点とに接続された第2コンデンサと、
を更に備え、
前記中性電位制御部は、前記スイッチング回路が前記第1コンデンサと前記モータとの間で電流を通流させる期間の長さと、前記スイッチング回路が前記第2コンデンサと前記モータとの間で電流を通流させる期間の長さとの関係を変更することで、前記中性電位を前記目標範囲内に維持する、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記スイッチング回路は、前記中性電位と前記第1電位との差に対応する電圧を前記モータに印加する第1期間と、前記第2電位と前記中性電位との差に対応する電圧を前記モータに印加する第2期間と、を含むスイッチングパターンを繰り返し、
前記中性電位制御部は、前記スイッチングパターンにおける前記第1期間の長さと前記第2期間の長さとの関係を変更することで、前記中性電位を前記目標範囲内に維持する、
請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記中性電位制御部は、前記供給電流の供給方向と、前記中性電位とに基づいて、前記中性電位を前記目標範囲内に維持するように前記第1期間の長さと前記第2期間の長さとの関係を変更する、
請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電流制御部は、
前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくする際に、前記モータの磁極方向に対応する第1電流指令を算出し、
目標駆動力に応じた前記駆動力を前記モータに発生させるように、前記磁極方向に垂直な方向に対応する第2電流指令を前記第1電流指令に基づいて算出し、
前記第1電流指令及び前記第2電流指令に前記供給電流を対応させるように前記スイッチング回路を制御する、
請求項1~5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくする制御を行う第1制御モードと、前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくする制御を行わない第2制御モードと、を前記中性電位の変動の大きさに基づいて切り替える制御モード切替部を更に備える、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくする制御を行う第1制御モードと、前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくする制御を行わない第2制御モードと、を前記供給電流の大きさに基づいて切り替える制御モード切替部を更に備える、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電流制御部は、
前記第1制御モードにおいては、
前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくするように電流指令を算出し、
前記第2制御モードにおいては、
目標駆動力に応じた前記駆動力を前記モータに発生させるための前記供給電流を最小化するように前記電流指令を算出し、
前記電流指令に前記供給電流を対応させるように前記スイッチング回路を制御する、
請求項7又は8記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記電流制御部は、
前記第1制御モードにおいては、
前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくするように電流指令を算出し、
前記第2制御モードにおいては、
前記スイッチング回路から前記モータへの印加電圧を所定の上限電圧レベルに維持しつつ、目標駆動力に応じた前記駆動力をモータに発生させるように前記電流指令を算出し、
前記電流指令に前記供給電流を対応させるように前記スイッチング回路を制御する、
請求項7又は8記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記電流制御部は、
所定の制御目標値と、所定の制御対象値との偏差を縮小しつつ、目標駆動力に応じた前記駆動力を前記モータに発生させるように電流指令を算出する第1演算部と、
前記駆動力に影響しないように前記供給電流を大きくするように電流指令を補正する第2演算部と、
前記電流指令に前記供給電流を対応させるように前記スイッチング回路を制御する制御部と、
を有する、請求項1~5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記第1演算部は、
前記第2演算部により前記電流指令が補正されない場合に、前記偏差を積分し、前記偏差と前記偏差の積分結果とに基づいて前記電流指令を算出し、
前記第2演算部により前記電流指令が補正される場合に、前記偏差の積分を停止し、前記偏差に基づいて前記電流指令を算出する、
請求項11記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記電流制御部は、
前記スイッチング回路から前記モータへの印加電圧が所定の基準電圧レベルを超えている場合には、前記駆動力に影響しないように前記モータに生じる逆起電力を弱める電流を付加して前記供給電流
を大きくし、
前記印加電圧が前記基準電圧レベルを下回っている場合には、前記駆動力に影響しないように前記逆起電力を強める電流を付加して前記供給電流
を大きくする、
請求項1~5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項記載の前記電力変換装置と、
前記モータと、
を備え、
前記モータは同期モータである、駆動システム。
【請求項15】
第1電位を有する第1点と、前記第1電位よりも高い第2電位を有する第2点と、前記第1電位と前記第2電位との間の中性電位を有する中性点と、のそれぞれと、モータとの間をスイッチング回路により接続・遮断することで、前記モータに電流を供給することと、
前記中性電位を目標範囲内に維持するように前記スイッチング回路を制御する中性電位制御を行うことと、
少なくとも前記中性電位制御を行う際に、前記モータが発生する駆動力に影響しないように前記モータへの供給電流を大きくすることと、
を含む電力変換方法。
【請求項16】
少なくとも前記中性電位制御を行う際に、前記モータが発生する駆動力に影響しないように前記モータへの供給電流を大きくして、前記供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するように前記スイッチング回路を制御する、
請求項15記載の電力変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及び電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三相中性点クランプ式PWMインバータが開示されている。三相中性点クランプ式PWMインバータは、三相分の中性点クランプ式PWMインバータのレグを有する。中性点クランプ式PWMインバータのレグは、正母線と相電圧出力端子間に直列接続された第1及び第2のスイッチ素子と、負母線と相電圧出力端子間に直列接続された第3及び第4のスイッチ素子とを有する。第1と第2のスイッチ素子の接続点、及び第3と第4のスイッチ素子の接続点は、それぞれクランプ素子を介して中性線に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、マルチレベルで電圧を出力する電力変換において、電力の制御性を向上させるのに有効な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、第1電位を有する第1点と、第1電位よりも高い第2電位を有する第2点と、第1電位と第2電位との間の中性電位を有する中性点とのそれぞれと、モータとの間を接続・遮断することで、モータに電流を供給するスイッチング回路と、中性電位を目標範囲内に維持するようにスイッチング回路を制御する中性電位制御部と、少なくとも中性電位制御部がスイッチング回路を制御する際に、モータが発生する駆動力に影響しないようにモータへの供給電流を大きくする電流制御部と、を備える。
【0006】
本解除の他の側面に係る電力変換方法は、第1電位を有する第1点と、第1電位よりも高い第2電位を有する第2点と、第1電位と第2電位との間の中性電位を有する中性点と、のそれぞれと、モータとの間をスイッチング回路により接続・遮断することで、モータに電流を供給することと、中性電位を目標範囲内に維持するようにスイッチング回路を制御する中性電位制御を行うことと、少なくとも中性電位制御を行う際に、モータが発生する駆動力に影響しないようにモータへの供給電流を大きくすることと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、マルチレベルで電圧を出力する電力変換において、電力の制御性を向上させるのに有効な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】駆動システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】電流指令生成部の構成を例示するブロック図である。
【
図3】FB型省エネ演算部の構成を例示するブロック図である。
【
図4】FB型定出力演算部の構成を例示するブロック図である。
【
図5】電流調節部の構成を例示するブロック図である。
【
図6】制御回路のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図7】電力変換手順を例示するフローチャートである。
【
図8】中性電位の制御手順を例示するフローチャートである。
【
図9】電流指令の生成手順を例示するフローチャートである。
【
図10】FB型省エネ演算手順を例示するフローチャートである。
【
図11】FB型定出力演算手順を例示するフローチャートである。
【
図12】電流調節手順を例示するフローチャートである。
【
図13】電流調節手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
〔駆動システム〕
図1に示す駆動システム1は、モータ2が発生する駆動力により対象物を駆動するシステムである。駆動システム1は、モータ2と、電力変換装置3とを備える。モータ2は、電力の供給に応じて駆動力を発生させる。モータ2は、例えばSPM(Surface Permanent Magnet)モータ、IPM(Interior Permanent Magnet)モータ、又はシンクロナスリラクタンスモータ等の同期モータである。モータ2はインダクションモータであってもよい。モータ2は、パルスジェネレータ4を有してもよい。パルスジェネレータ4は、磁極位置の移動(例えばロータの回転)に応じてパルス信号を生成する。電力変換装置3は、電源9から供給された一次側電力を二次側電力に変換し、二次側電力をモータ2に供給する。
【0011】
電源9の一例としては、電力会社により運用される電力系統等が挙げられる。一次側電力及び二次側電力は、直流電力であってもよく、交流電力であってもよい。二次側電力は交流電力である。以下、一次側電力及び二次側電力の両方が三相交流電力である場合の構成を例示する。
【0012】
図1に示すように、電力変換装置3は、電力変換回路10と、制御回路100とを備える。電力変換回路10は、一次側電力を二次側電力に変換する。電力変換回路10は、第1電位と、第1電位よりも高い第2電位と、第1電位と第2電位との間の中性電位との組合せにより、二次側の相間に交流電圧を印加する。二次側の相間に交流電圧が印加されることにより、モータ2に交流電流が供給される。
【0013】
例えば電力変換回路10は、第1点11と、第2点12と、中性点13と、第1コンデンサ14と、第2コンデンサ15と、スイッチング回路16とを有する。第1点11は第1電位を有する。第2点12は第2電位を有する。中性点13は中性電位を有する。第1コンデンサ14は第1点11と中性点13とに接続されている。第2コンデンサ15は第2点12と中性点13とに接続されている。中性点13の中性電位は、第1コンデンサ14に蓄積された電荷と、第2コンデンサ15に蓄積された電荷との関係によって定まる。スイッチング回路16は、第1点11と、第2点12と、中性点13とのそれぞれと、モータ2との間を接続・遮断することで、モータ2に電流を供給する。第1電位と、第2電位と、中性電位との3レベルの電位を組み合わせる。このようなスイッチング回路を有する電力変換回路10は、「中性点クランプ式インバータ」又は「スリーレベルインバータ」等と称される場合もある。
【0014】
一例として、電力変換回路10は、入力端子71R,71S,71Tと、出力端子72U,72V,72Wと、第1回路モジュール20と、第1コンデンサ14と、第2コンデンサ15と、突入防止回路61と、第2回路モジュール40と、電流センサ81と、電圧センサ82,83とを有する。入力端子71R,71S,71Tは、電源9(一次側)の三相(例えばR相、S相、及びT相)にそれぞれ接続される。出力端子72U,72V,72Wは、モータ2(二次側)の三相(例えばU相、V相、及びW相)にそれぞれ接続される。
【0015】
第1回路モジュール20は、樹脂モールド等によって複数の半導体デバイスが一つのパッケージにまとめられた集積回路であり、一次側端子24R,24S,24Tと、整流回路21と、一次側直流端子25P,25Nと、二次側直流端子26P,26Nと、スイッチング回路22と、ブレーキ回路23と、二次側端子27U,27V,27Wとを有する。一次側端子24R,24S,24Tは、第1回路モジュール20外において入力端子71R,71S,71Tにそれぞれ接続されており、電源9から一次側の三相交流の供給を受ける。
【0016】
整流回路21は、複数のダイオードにより構成されたダイオードブリッジ回路であり、一次側の三相交流を直流に変換して一次側直流端子25P,25Nに出力する。一次側直流端子25P,25Nは、第1回路モジュール20外において二次側直流端子26P,26Nに接続されている。このため、一次側直流端子25P,25Nに出力された直流は、二次側直流端子26P,26Nに入力される。第2点12は、一次側直流端子25Pと二次側直流端子26Pとの間に構成される。第1点11は、一次側直流端子25Nと二次側直流端子26Nとの間に構成される。
【0017】
スイッチング回路22は、二次側直流端子26P,26Nに入力された直流を二次側の三相交流に変換して二次側端子27U,27V,27Wに出力する。例えばスイッチング回路22は、アーム30U,30V,30Wを有する。アーム30Uは、二次側直流端子26P,26Nと、二次側端子27Uとの間の接続状態を、少なくとも以下の三状態のいずれかに切り替える。正極オン状態: 二次側直流端子26Pから二次側端子27Uへの電流を通し、二次側端子27Uから二次側直流端子26Nへの電流をブロックする。負極オン状態: 二次側直流端子26Pから二次側端子27Uへの電流をブロックし、二次側端子27Uから二次側直流端子26Nへの電流を通す。両極オフ状態: 二次側直流端子26Pから二次側端子27Uへの電流と、二次側端子27Uから二次側直流端子26Nへの電流との両方をブロックする。
【0018】
例えばアーム30Uは、スイッチング素子31,32と、ダイオード33,34とを有する。スイッチング素子31は、二次側直流端子26Pと二次側端子27Uとに接続されており、二次側直流端子26Pから二次側端子27Uへ電流を通すオン状態と、二次側直流端子26Pから二次側端子27Uへの電流をブロックするオフ状態とを切り替える。ダイオード33は、スイッチング素子31に対して逆並列となるように接続されており、二次側端子27Uから二次側直流端子26Pへ電流を通し、二次側直流端子26Pから二次側端子27Uへの電流をブロックする。ダイオード33により、二次側端子27Uから二次側直流端子26Pへは常時通流が可能である。スイッチング素子32は、二次側直流端子26Nと二次側端子27Uとに接続されており、二次側端子27Uから二次側直流端子26Nへ電流を通すオン状態と、二次側端子27Uから二次側直流端子26Nへの電流をブロックするオフ状態とを切り替える。ダイオード34は、スイッチング素子32に対して逆並列となるように接続されており、二次側直流端子26Nから二次側端子27Uへ電流を通し、二次側端子27Uから二次側直流端子26Nへの電流をブロックする。ダイオード34により、二次側直流端子26Nから二次側端子27Uへは常時通流が可能である。
【0019】
スイッチング素子31がオン状態であり、スイッチング素子32がオフ状態であれば、二次側直流端子26P,26Nと二次側端子27Uとの間の接続状態は上記正極オン状態である。スイッチング素子31がオフ状態であり、スイッチング素子32がオン状態であれば、二次側直流端子26P,26Nと二次側端子27Uとの間の接続状態は上記負極オン状態である。スイッチング素子31,32の両方がオフ状態であれば、二次側直流端子26P,26Nと二次側端子27Uとの間の接続状態は上記両極オフ状態である。
【0020】
スイッチング素子31,32は、例えば例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であり、ゲート駆動信号に応じてオン状態とオフ状態とを切り替える。
【0021】
アーム30Vについては、アーム30Uの説明における二次側端子27Uを二次側端子27Vに入れ替えることにより説明される。アーム30Wについては、アーム30Uの説明における二次側端子27Uを二次側端子27Wに入れ替えることにより説明される。よって、アーム30V,30Wについての詳細な説明は省略する。
【0022】
二次側端子27U,27V,27Wは、第1回路モジュール20外において出力端子72U,72V,72Wにそれぞれ接続されており、モータ2に二次側の三相交流を供給する。ブレーキ回路23は、互いに並列に接続されたダイオードと抵抗とを有し(不図示)、必要に応じてモータ2から二次側端子27U,27V,27Wへの回生電力を上記抵抗で消費させる。
【0023】
第2コンデンサ15は、一次側直流端子25Pと二次側直流端子26Pとの間の第2点12と、中性点13とに接続される。第1コンデンサ14は、一次側直流端子25Nと二次側直流端子26Nとの間の第1点11と、中性点13とに接続される。突入防止回路61は、例えば互いに並列に接続された抵抗素子とリレーとを含み、一次側直流端子25Pと第2点12との間に抵抗素子を挿入することで、電力変換装置3が電源9に接続される電源オンの際に一次側直流端子25Pから第1コンデンサ14及び第2コンデンサ15への電流を制限し、突入電流を防止する。一次側電力を二次側電力に変換する際に、突入防止回路61は、は上記リレーの接点で一次側直流端子25Pと第2点12との間を短絡する。
【0024】
第2回路モジュール40は、樹脂モールド等によって、複数の半導体デバイスが一つのパッケージにまとめられた集積回路であり、一次側端子41と、二次側端子42U,42V,42Wと、双方向アーム50U,50V,50Wとを有する。一次側端子41は、第2回路モジュール40外において中性点13に接続されている。二次側端子42U,42V,42Wは、第2回路モジュール40外において出力端子72U,72V,72Wにそれぞれ接続されている。
【0025】
双方向アーム50Uは、一次側端子41と二次側端子42Uとの間の接続状態を、少なくとも以下の二状態のいずれかに切り替える。双方向オン状態: 中性点13から二次側端子42Uへの電流と、二次側端子42Uから中性点13への電流との両方を通す。双方向オフ状態: 中性点13から二次側端子42Uへの電流と、二次側端子42Uから中性点13への電流との両方をブロックする。
【0026】
例えば双方向アーム50Uは、スイッチング素子51,52と、ダイオード53,54とを有する。スイッチング素子51,52は、一次側端子41と二次側端子42Uとの間に直列に接続されている。スイッチング素子51は、一次側端子41から二次側端子42Uへ電流を通すオン状態と、一次側端子41から二次側端子42Uへの電流をブロックするオフ状態とを切り替える。スイッチング素子52は、二次側端子42Uから一次側端子41へ電流を通すオン状態と、二次側端子42Uから一次側端子41への電流をブロックするオフ状態とを切り替える。
【0027】
ダイオード53は、スイッチング素子51に対して逆並列となるように接続されており、二次側端子42Uから一次側端子41へ電流を通し、一次側端子41から二次側端子42Uへの電流をブロックする。ダイオード54は、スイッチング素子52に対して逆並列となるように接続されており、一次側端子41から二次側端子42Uへ電流を通し、二次側端子42Uから一次側端子41への電流をブロックする。
【0028】
スイッチング素子51,52の両方がオン状態であれば、スイッチング素子51とダイオード54とを経て一次側端子41から二次側端子42Uへ電流が通され、スイッチング素子52とダイオード53とを経て二次側端子42Uから一次側端子41へ電流が通される。このため、一次側端子41と二次側端子42Uとの間の接続状態は上記双方向オン状態となる。スイッチング素子51,52の両方がオフ状態であれば、スイッチング素子51とダイオード53とによって一次側端子41から二次側端子42Uへの電流がブロックされ、スイッチング素子52とダイオード54とによって二次側端子42Uから一次側端子41への電流がブロックされる。このため、一次側端子41と二次側端子42Uとの間の接続状態は上記双方向オフ状態となる。
【0029】
スイッチング素子51,52は、例えば例えばパワーMOSFET又はIGBT等であり、ゲート駆動信号に応じてオン状態とオフ状態とを切り替える。双方向アームは、互いに逆並列接続されたRG-IGBTにより構成されてもよい。
【0030】
双方向アーム50Vについては、双方向アーム50Uの説明における二次側端子42Uを二次側端子42Vに入れ替えることにより説明される。双方向アーム50Wについては、双方向アーム50Uの説明における二次側端子42Uを二次側端子42Wに入れ替えることにより説明される。よって、双方向アーム50V,50Wについての詳細な説明は省略する。
【0031】
第1回路モジュール20のスイッチング回路22と、50とは、上述したスイッチング回路16を構成する。例えばスイッチング回路16は、アーム30Uを正極オン状態とし、双方向アーム50Uを双方向オフ状態とすることで出力端子72Uを第2電位とし、アーム30Uを負極オン状態とし、双方向アーム50Uを双方向オフ状態とすることで出力端子72Uを第1電位とし、アーム30Uを両極オフ状態都とし、双方向アーム50Uを双方向オン状態とすることで出力端子72Uを中性電位とする。
【0032】
出力端子72Vに対するスイッチング回路16の機能は、出力端子72Uに対するスイッチング回路16の機能の説明において、アーム30Uをアーム30Vに入れ替え、双方向アーム50Uを双方向アーム50Vに入れ替え、出力端子72Uを出力端子72Vに入れ替えることで説明される。出力端子72Wに対するスイッチング回路16の機能は、出力端子72Uに対するスイッチング回路16の機能の説明において、アーム30Uをアーム30Wに入れ替え、双方向アーム50Uを双方向アーム50Wに入れ替え、出力端子72Uを出力端子72Wに入れ替えることで説明される。
【0033】
電流センサ81は、出力端子72U,72V,72Wに流れる二次側電流(スイッチング回路16からモータ2への供給電流)を検出する。例えば電流センサ81は、出力端子72U,72V,72Wのそれぞれの電流を検出するように構成されていてもよいし、出力端子72U,72V,72Wのいずれか二相の電流を検出するように構成されていてもよい。零相電流が生じない限り、出力端子72U,72V,72Wの電流の合計はゼロなので、二相の電流を検出する場合にも全相の電流の情報が得られる。電圧センサ82は、第2点12と中性点13との間の電位差を検出する。電圧センサ83は、中性点13と第1点11との間の電位差を検出する。
【0034】
電圧センサ82,83による検出結果は、中性点13の中性電位を表す。例えば、電圧センサ82による検出結果と、電圧センサ83による検出結果との差の半分は、第1電位と第2電位との平均電位と中性電位との差に相当する。
【0035】
以上に示した電力変換回路10の構成はあくまで一例である。第1電位を有する第1点と、第2電位を有する第2点と、中性電位を有する中性点とのそれぞれと、モータとの間を接続・遮断することで、モータに電流を供給するものである限り、電力変換回路10の構成は適宜変更可能である。例えば、整流回路21と、スイッチング回路22とが互いに別のモジュールとして設けられていてもよい。スイッチング回路22が、整流回路21及びブレーキ回路23とは別のモジュールとして設けられていてもよい。一次側電力が蓄電池等の直流電力であれば、整流回路21とブレーキ回路23が省略され、スイッチング回路22が単独でモジュール化されていてもよい。図示において、内部の双方向アーム50U,50V,50Wは、コレクタ、カソード同士が接続された直列接続にて構成されているが、双方向アーム50U,50V,50Wは、エミッタ、アノードまたはMOS-FETの場合はソース同士が接続された直列接続にて構成されていてもよく、RB-IGBTの逆並列接続にて構成されていてもよい、双方向アーム50U,50V,50Wは、それぞれ個別のモジュールに分割されていてもよく、IGBTやRG-IGBT、MOS-FET,ダイオードのディスクリート部品を使って構成されていてもよい。
【0036】
制御回路100は、第1電位と、第2電位と、中性電位との組合せにより、二次側の相間に交流電圧を印加するように電力変換回路10を制御する。例えば制御回路100は、電圧指令の大きさが所定の基準値より小さい場合に、二次側のいずれの二相間にも同じ電位同士の組合せ、第1電位と中性電位との組合せ、又は第2電位と中性電位との組み合わせによって電圧を印加する。例えば制御回路100は、同じ電位同士に対応するゼロ電圧を相間に印加する0電位期間と、中性電位と第1電位との差に対応する電圧を相間に印加する第1期間と、第2電位と中性電位との差に対応する電圧を相間に印加する第2期間とを含み、第2電位と第1電位との差に対応する電圧を相間に印加する第3期間を含まず、第1電位と第2電位と中性電位とをそれぞれの相に印加する第4期間も含まないスイッチングパターンを繰り返すようにスイッチング回路16を制御する。
【0037】
制御回路100は、電圧指令の大きさが上記基準値より大きい場合に、二次側の少なくともいずれか二相間に第1電位と第2電位との組合せによって電圧を印加する。例えば制御回路100は、上記第1期間及び第2期間に加えて、上記第3期間及び第4期間とを含むスイッチングパターンを繰り返すようにスイッチング回路16を制御する。
【0038】
このように、第1電位及び第2電位に加え、中性電位によっても相間に交流電圧を印加する構成において、電力の制御性を向上させるためには、中性電位の安定化が必要である。上述したように、中性点13の中性電位は、第1コンデンサ14に蓄積された電荷と、第2コンデンサ15に蓄積された電荷との関係によって定まる。このため、第1コンデンサ14に蓄積された電荷と、第2コンデンサ15に蓄積された電荷との関係は、例えば中性電位と第1電位との差に対応する電圧を相間に印加する第1期間の長さと、第2電位と中性電位との差に対応する電圧を相間に印加する第2期間の長さとの関係によって調節可能である。
【0039】
しかしながら、駆動力の発生のためにモータに出力される電流が小さい場合(例えば無負荷運転時)においては、第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更しても、第1コンデンサ14の電荷と第2コンデンサ15の電荷とが増減し難いため、中性電位が変化し難い。そこで、制御回路100は、中性電位を目標範囲内に維持するようにスイッチング回路16を制御する中性電位制御を行うことと、少なくとも中性電位制御を行う際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくすることと、を実行するように構成されている。
【0040】
この構成によれば、モータ2に発生させる駆動力が小さい場合であっても、モータへの供給電流が下限電流レベル以上に維持される。これにより、スイッチング回路16の制御による中性電位の変更が容易になる。なお、無負荷運転時等において中性電位を変更し難くなる状況は、特に同期モータにおいて顕著に発生し得るが、高効率のインダクションモータ等においても発生し得る。
【0041】
例えば制御回路100は、機能上の構成要素(以下、「機能ブロック」という。)として、中性電位制御部111と、電流制御部112とを有する。中性電位制御部111は、上記中性電位制御を繰り返し行う。例えば中性電位制御部111は、スイッチング回路16が第1コンデンサ14とモータ2との間で電流を通流させる期間の長さと、スイッチング回路16が第2コンデンサ15とモータ2との間で電流を通流させる期間の長さとの関係を変更することで、中性電位を目標範囲内に維持する。更に、スイッチング回路16が第1電位と第2電位と中性電位とをそれぞれの相に印加して第1コンデンサ14及び第2コンデンサ15とモータ2との間で電流を通流させる期間の長さを変更することで、中性電位を目標範囲内に維持してもよい。目標範囲は、第1電位と第2電位との平均電位を含む。例えば目標範囲は、上記平均電位を中心として所定の幅を有する範囲である。
【0042】
一例として中性電位制御部111は、上述したスイッチングパターンにおける第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更することで、中性電位を目標範囲内に維持する、中性電位を目標範囲内に維持するために、第1期間の長さと第2期間の長さとをいかなる関係にすべきかは、供給電流の方向によっても変わる。そこで、中性電位制御部111は、供給電流の供給方向と、中性電位とに基づいて、中性電位を目標範囲内に維持するように第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更してもよい。
【0043】
例えば中性電位制御部111は、電流センサ81の検出結果に基づいて供給電流の供給方向を算出し、電圧センサ82,83の検出結果に基づいて中性電位を算出し、算出した供給方向と、算出した中性電位とに基づいて、中性電位を目標範囲内に維持するように第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更する。
【0044】
電流制御部112は、少なくとも中性電位制御部111がスイッチング回路16を制御する際(中性電位制御を行う際)に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するようにスイッチング回路16を制御する。例えば電流制御部112は、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するように電流指令を変更し、供給電流を変更済みの電流指令に対応させるようにスイッチング回路16を制御する。
【0045】
下限電流レベルは、例えば電流の大きさ(電流ベクトルの長さ、又は電流の振幅)の下限を表す数値である。例えば下限電流レベルは、中性電位を目標範囲内に維持する制御に必要な大きさに予め定められている。中性電位を目標範囲内に維持する制御に必要な大きさは、例えばモータ2の定格電流に対し所定の比率(例えば数%~数十%)を乗算した値に設定される。制御回路100は、下限電流レベルをユーザが任意に設定し得るように構成されていてもよい。
【0046】
例えば電流制御部112は、機能ブロックとして、電流指令生成部113と、磁極位置検出部116と、座標変換部117と、電圧指令生成部114と、PWM制御部115とを有する。電流指令生成部113は、上記電流指令を生成する。
【0047】
例えば電流指令生成部113は、回転座標系におけるd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refを所定の制御周期で繰り返し生成する。回転座標系は、磁極位置の移動と共に回転する座標系であり、d軸及びq軸を有する。d軸は磁極位置へ向かう座標軸であり、q軸はd軸に対して垂直な座標軸である。d軸電流指令Id_refは、d軸電流に対する指令であり、q軸電流指令Iq_refは、q軸電流に対する指令である。d軸電流は、d軸方向に沿った磁束をモータ2に発生させる電流であり、q軸電流は、q軸方向に沿った磁束をモータ2に発生させる電流である。
【0048】
一例として、電流指令生成部113は、目標駆動力(例えば目標トルクT_ref)に対応する駆動力(例えばトルク)をモータ2に発生させるようにd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refを生成する。電流指令生成部113によるd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refの生成手法については後述する。
【0049】
磁極位置検出部116は、モータ2の磁極位置θを検出する。磁極位置θは、例えば固定座標系における磁極方向の位相角(電気角)により表される。例えば磁極位置検出部116は、パルスジェネレータ4が生成するパルス信号に基づいて磁極位置θを検出する。モータ2がパルスジェネレータ4を有しない場合、磁極位置検出部116は、モータ2に印加される電圧、及びモータ2に通流する電流等に基づいて磁極位置θを推定してもよい。
【0050】
座標変換部117は、電流センサ81により検出された相電流Iu,Iv,Iwに対し座標変換を行って、d軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。
【0051】
電圧指令生成部114は、供給電流を電流指令に対応させるための電圧指令を生成する。例えば電圧指令生成部114は、電流指令生成部113によりd軸電流指令Id_refとq軸電流指令Iq_refとが算出される度に、d軸電流指令Id_refとd軸電流Idとの偏差と、q軸電流指令Iq_refとq軸電流Iqとの偏差とを縮小するようにd軸電圧指令Vd_ref及びq軸電圧指令Vq_refを算出する。d軸電圧指令Vd_refはd軸電圧に対する指令であり、q軸電圧指令Vq_refはq軸電圧に対する指令である。d軸電圧は、d軸電流と同じ方向に印加される電圧であり、q軸電圧は、q軸電流と同じ方向に印加される電圧である。
【0052】
PWM制御部115は、電圧指令に対応する電圧をモータ2に印加するようにスイッチング回路16を制御する。例えばPWM制御部115は、d軸電圧指令Vd_refとq軸電圧指令Vq_refとが算出される度に、d軸電圧指令Vd_refとq軸電圧指令Vq_refとに対応する電圧をモータ2に印加するように上述したスイッチングパターンを算出し、スイッチングパターンを繰り返すようにスイッチング回路16を制御する。これにより、d軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refに供給電流を対応させるようにスイッチング回路16が制御されることとなる。
【0053】
上述した中性電位制御部111は、PWM制御部115が算出したスイッチングパターンにおいて、第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更する。例えば中性電位制御部111は、第1期間の長さと第2期間の長さとの合計長さを変更することなく、第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更する。
【0054】
このような電流制御部112の構成において、電流指令生成部113は、少なくとも中性電位制御部111がスイッチング回路16を制御する際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するように電流指令を算出する。例えば電流指令生成部113は、スイッチング回路16が二次側に供給し得る最大電流の範囲内において、定トルク曲線に沿って、供給電流を大きくする。定トルク曲線とは、駆動力が一定に保たれる場合におけるd軸電流Idとq軸電流Iqとの関係を回転座標系において表す曲線である。
【0055】
例えば電流指令生成部113は、供給電流の大きさを下限電流レベル以上にするように、モータ2の磁極方向に対応する第1電流指令を算出し、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させるように、磁極方向に垂直な方向に対応する第2電流指令を第1電流指令に基づいて算出する。一例として、電流指令生成部113は、供給電流の大きさを下限電流レベル以上にするようにd軸電流指令Id_refを算出し、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させるように、q軸電流指令Iq_refをd軸電流指令Id_refに基づいて算出する。
【0056】
電流指令生成部113は、所定の制御目標値と、所定の制御対象値との偏差を縮小しつつ、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させるように電流指令を算出する第1演算部と、中性電位制御部111が中性電位制御を行う際には、駆動力に影響しないように供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するように電流指令を補正する第2演算部とを有してもよい。
【0057】
第1演算部は、第2演算部により電流指令が補正されない場合に、上記偏差を積分し、偏差と偏差の積分結果とに基づいて電流指令を算出し、第2演算部により電流指令が補正される場合に、偏差の積分を停止し、偏差に基づいて電流指令を算出してもよい。
【0058】
図2は、電流指令生成部113の構成を例示するブロック図である。
図2に示す電流指令生成部113は、FF型省エネ演算部121と、FB型省エネ演算部122と、探査信号重畳部124と、FB型定出力演算部123と、電流調節部125とを有する。FB型省エネ演算部122は上記第1演算部の一例であり、FB型定出力演算部123も上記第1演算部の一例である。電流調節部125は上記第2演算部の一例である。
【0059】
FF型省エネ演算部121は、目標駆動力(例えば目標トルクT_ref)に応じた駆動力(例えばトルク)をモータ2に発生させるための供給電流を最小化するように電流指令(例えばd軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0)を算出する。例えばFF型省エネ演算部121は、目標トルクT_refとd軸電流指令Id_ref0との関係を表すように予め生成されたトルク-電流プロファイルと、目標トルクT_refの現在値とに基づいてd軸電流指令Id_ref0を算出し、目標トルクT_refとd軸電流指令Id_ref0とに基づいてq軸電流指令Iq_ref0を算出する。トルク-電流プロファイルは、シミュレーション又は実機試験などにより生成される。
【0060】
FB型省エネ演算部122は、目標トルクT_refに対して供給電流が最小化されているか否かを表すフィードバック値に基づいて、目標トルクT_refに対する供給電流を最小化するように、d軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0を補正してd軸電流指令Id_ref1及びq軸電流指令Iq_ref1を算出する。例えばFB型省エネ演算部122は、駆動力の変動を抑えつつ電流の位相(回転座標系においてd軸電流Id及びq軸電流Iqにより表される電流ベクトルの位相角)を変動させた場合に、電流の位相変動に対応して電力に生じる変動をフィードバック値として取得する。以下、電流の位相変動に対応して電力に生じる変動を、単に「電力変動」という。FB型省エネ演算部122は、電力変動をゼロに近付けるように、d軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0の位相角を変更してd軸電流指令Id_ref1及びq軸電流指令Iq_ref1を算出する。FB型省エネ演算部122が行うFB型省エネ演算の詳細については、特許第5526975号等にも記載されている。
【0061】
例えば
図3に示すように、FB型省エネ演算部122は、機能ブロックとして、有効電力算出部131と、探査成分抽出部132と、補正角算出部133と、電流補正部134とを有する。有効電力算出部131は、固定座標系における電流と、固定座標系における電圧指令とに基づいて、スイッチング回路16からモータ2に供給される有効電力Pを算出する。
【0062】
固定座標系は、例えばα軸及びβ軸を有する。α軸は、例えば二次側のいずれか一相の方向に合わせられた座標軸であり、β軸はα軸に垂直な座標軸である。固定座標系における電流は、α軸に対応するα軸電流Iαと、β軸に対応するβ軸電流Iβとを含む。固定座標系における電圧は、α軸に対応するα軸電圧Vαと、β軸に対応するβ軸電圧Vβとを含む。α軸電流Iα及びβ軸電流Iβは、例えば、相電流Iu,Iv,Iwに基づいて座標変換部117により算出される(
図2参照)。α軸電圧Vα及びβ軸電圧Vβは、例えばd軸電圧指令Vd_ref及びq軸電圧指令Vq_refに基づいて座標変換部117により算出される。
【0063】
探査成分抽出部132は、有効電力Pから、上述の位相変動に対応する電力変動P0を抽出する。補正角算出部133は、電力変動P0と、所定の変動目標値P_ref(例えばゼロ)との偏差に基づいて、d軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0に対する位相補正角θadjを算出する。電力変動P0は、第1演算部の制御対象値の一例であり、変動目標値P_refは、第1演算部の制御目標値の一例である。補正角算出部133は、電力変動P0と変動目標値P_refとの偏差を積分し、偏差と、偏差の積分結果とに基づいて位相補正角θadjを算出する。電流補正部134は、位相補正角θadjにてd軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0の位相角を補正して、d軸電流指令Id_ref1及びq軸電流指令Iq_ref1を算出する。
【0064】
図2に戻り、FB型定出力演算部123は、スイッチング回路16からモータ2への印加電圧を所定の上限電圧レベルに維持しつつ、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるように電流指令を算出する。例えばFB型定出力演算部123は、電圧指令の大きさを表す電圧指令値V_ref(d軸電圧指令Vd_refとq軸電圧指令Vq_refとの二乗和の平方根)が、上限電圧値V_limを超える場合に、電圧指令値V_refを上限電圧値V_limに近付けるように、d軸電流補正値dId1を算出し、d軸電流指令Id_ref1に加算する。
【0065】
d軸電流補正値dId1の加算により、d軸電流指令Id_ref1が変更されるが、これによりトルクが目標トルクT_refから乖離することが無いように、後述の電流調節部125によってq軸電流指令Iq_refが算出される。このため、FB型定出力演算部123が、電圧指令値V_refを上限電圧値V_lim以下にするようにd軸電流補正値dId1を算出し、d軸電流補正値dId1をd軸電流指令Id_ref1に加算すれば、電圧指令値V_refを上限電圧値V_limの近傍(上限電圧レベル)に維持しつつ、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるように電流指令が算出される。速度制御器(不図示)により速度制御を行う場合には、d軸電流補正値dId1の加算により、d軸電流指令Id_ref1が変更されてもモータ2の速度が速度指令から乖離することがないように、速度制御器が出力する目標トルクT_refが調整される場合もある。
【0066】
例えば
図4に示すように、FB型定出力演算部123は、機能ブロックとして、電流補正値算出部141と、リミッタ142とを有する。電流補正値算出部141は、上限電圧値V_limと、電圧指令値V_refとの偏差を積分し、偏差と、偏差の積分結果とに基づいてd軸電流補正値dId1を算出する。リミッタ142は、d軸電流補正値dId1をゼロ以下に制限するリミット処理を行う。このため、電圧指令値V_refが上限電圧値V_limよりも小さい場合には、d軸電流補正値dId1はゼロとなり、FB型定出力演算部123によるd軸電流指令Id_ref1の変更は行われないこととなる。電圧指令値V_refは、第1演算部の制御対象値の一例であり、上限電圧値V_limは、第1演算部の制御目標値の一例である。
【0067】
リミッタ142は、リミット処理済みのd軸電流補正値dId1をd軸電流指令Id_ref1に加算する。また、リミッタ142は、FB型定出力演算部123によるd軸電流指令Id_ref1の変更が行われるか否かを表す制御信号Cnt1をFB型省エネ演算部122に出力する。例えばリミッタ142は、d軸電流補正値dId1がゼロであるか否かを表す信号をFB型省エネ演算部122に出力する(
図2参照)。FB型省エネ演算部122の補正角算出部133は、制御信号Cnt1に基づき、FB型定出力演算部123によるd軸電流指令Id_ref1の変更が行われることを認識した場合に、電力変動P0と変動目標値P_refとの偏差の積分を停止し、偏差に基づいて位相補正角θadjを算出する。
【0068】
図2に戻り、探査信号重畳部124は、d軸電流指令Id_ref1(d軸電流補正値dId1が加算されたd軸電流指令Id_ref1)と、q軸電流指令Iq_ref1とに、上述した位相変動を発生させるように、d軸電流指令Id_ref1及びq軸電流指令Iq_ref1に探査信号を重畳してd軸電流指令Id_ref2及びq軸電流指令Iq_ref2を算出する。
【0069】
電流調節部125は、少なくとも中性電位制御部111がスイッチング回路16を制御する際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するように電流指令を算出する。一例として、電流調節部125は、供給電流の大きさを下限電流レベル以上にするようにd軸電流指令Id_ref2の大きさを変更してd軸電流指令Id_refを算出し、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるように、q軸電流指令Iq_refをd軸電流指令Id_refに基づいて算出する。
【0070】
電流調節部125は、d軸電流指令Id_ref2の大きさを変更するか否かを表す制御信号Cnt2,Cnt3をFB型省エネ演算部122及びFB型定出力演算部123にそれぞれ出力する。FB型省エネ演算部122の補正角算出部133は、制御信号Cnt2に基づき、電流調節部125によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われることを認識した場合に、電力変動P0と変動目標値P_refとの偏差の積分を停止し、偏差に基づいて位相補正角θadjを算出する。FB型定出力演算部123の電流補正値算出部141は、制御信号Cnt3に基づき、電流調節部125によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われることを認識した場合に、上限電圧値V_limと、電圧指令値V_refとの偏差の積分を停止し、偏差に基づいてd軸電流補正値dId1を算出する。
【0071】
例えば
図5に示すように、電流調節部125は、機能ブロックとして、モード切替部151と、電流算出部152と、電流調節値算出部153と、強め・弱め切替部154と、駆動力調節部155と、動作フラグ生成部156とを有する。モード切替部151は、供給電流の大きさを下限電流レベル以上に維持する制御を行う第1制御モードと、供給電流の大きさを下限電流レベル以上に維持する制御を行わない第2制御モードと、を中性電位の変動の大きさに基づいて切り替える。例えばモード切替部151は、例えば、電圧センサ82による検出結果と、電圧センサ83による検出結果との差に基づいて、第1電位と第2電位との平均電位と中性電位との差(平均電位からの中性電位の変動)の大きさを評価し、評価結果に基づいて第1制御モードと第2制御モードとを切り替える。
【0072】
例えばモード切替部151は、電圧センサ82により検出された電位差Vpmと、電圧センサ83により検出された電位差Vmnとの差の絶対値を中性電位の変動レベルとして算出し、変動レベルが所定の変動閾値よりも大きい場合に、供給電流目標値Iampをゼロより大きい所定値にする。変動レベルが上記変動閾値よりも小さい場合に、モード切替部151は供給電流目標値Iampをゼロにする。所定値は、上述した下限電流レベルであってもよく、下限電流レベルに所定のマージンを加算した値であってもよい。後述するように、供給電流目標値Iampがゼロより大きい場合には第1制御モードによる制御が実行され、供給電流目標値Iampがゼロより小さい場合には第2制御モードによる制御が実行される。このため、供給電流目標値Iampをゼロより大きい所定値にするか、供給電流目標値Iampをゼロにするかによって、第1制御モードと第2制御モードとが切り替えられることとなる。
【0073】
なお、モード切替部151は、中性電位の変動レベルに代えて、供給電流の大きさに基づいて第1制御モードと第2制御モードとを切り替えてもよい。例えばモード切替部151は、供給電流の大きさが所定の電流閾値よりも小さい場合に、供給電流目標値Iampをゼロより大きい所定値にし、供給電流の大きさが上記電流閾値よりも大きい場合に、供給電流目標値Iampをゼロとしてもよい。
【0074】
電流算出部152は、供給電流の大きさを算出する。例えば電流算出部152は、一つ前の制御周期におけるd軸電流指令Id_refとq軸電流指令Iq_refとに基づいて、次式により供給電流値Ioutを算出する。
【数1】
【0075】
電流調節値算出部153は、供給電流値Ioutを供給電流目標値Iamp以上に維持するようにd軸電流指令Id_refを算出する。例えば電流調節値算出部153は、供給電流目標値Iampと供給電流値Ioutとの偏差にゲインを乗算し、乗算結果がゼロ以下となる場合は乗算結果をゼロに制限するリミット処理を行い、リミット処理結果にローパス型のフィルタ処理を行ってd軸電流調節値dId2を算出する。電流調節値算出部153は、d軸電流調節値dId2をd軸電流指令Id_ref2に加算してd軸電流指令Id_refを算出する。
【0076】
電流調節値算出部153が供給電流目標値Iampと供給電流値Ioutとの偏差に乗算するゲインと、電流調節値算出部153が行うフィルタ処理の時定数は、例えば以下のように設定される。供給電流目標値Iampと、供給電流目標値Iampに応じて生成される供給電流値Ioutとの間の伝達関数は次式により表される。
【数2】
K:ゲイン
ωn:カットオフ周波数
【0077】
式(2)から、応答周波数はωn(1+K)となるが、定常値としてK/(1+K)に収束することがわかる。これらの関係と、所望の定常値及び所望の応答周波数とに基づいて、ゲインとカットオフ周波数とを設定することができる。
【0078】
強め・弱め切替部154は、スイッチング回路16からモータ2への印加電圧Vが所定の基準電圧レベルを超えているか否かに基づいて、d軸電流調節値dId2の正負を切り替える。
【0079】
印加電圧Vの大きさは、変調率(第2電位と第1電位との電位差Vpnに対する印加電圧Vの比率)により表し得る。印加電圧Vは、例えばd軸電圧指令Vd_refとq軸電圧指令Vq_refとの二乗和の平方根である。印加電圧Vの大きさが変調率によって表される場合、基準電圧レベルも変調率により表される。以下、変調率によって表された基準電圧レベルを、「基準変調率」という。
【0080】
例えば強め・弱め切替部154は、変調率が基準変調率(例えば0.5)を超えているか否かに基づいてd軸電流調節値dId2の正負を切り替える。変調率が基準変調率を超えている場合、強め・弱め切替部154はd軸電流調節値dId2を負の値にする。これにより、d軸電流指令Id_ref2に対し、逆起電力を弱める電流が付加されることになる。変調率が基準変調率を下回っている場合、強め・弱め切替部154はd軸電流調節値dId2を正の値にする。これにより、d軸電流指令Id_ref2に対し、逆起電力を強める電流が付加されることになる。
【0081】
駆動力調節部155は、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるように、q軸電流指令Iq_refをd軸電流指令Id_refに基づいて算出する。例えば駆動力調節部155は、q軸電流指令Iq_refを次式により算出する。
【数3】
Ke:モータの誘起電圧定数
Ld:d軸インダクタンス
Lq:q軸インダクタンス
【0082】
動作フラグ生成部156は、上述したd軸電流調節値dId2に基づいて制御信号Cnt2,Cnt3を生成し、FB型省エネ演算部122及びFB型定出力演算部123にそれぞれ出力する。例えば動作フラグ生成部156は、d軸電流調節値dId2の絶対値が所定の閾値を超えている場合には、電流調節部125によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われることを示す制御信号Cnt2,Cnt3を生成する。d軸電流調節値dId2の絶対値が上記閾値を下回っている場合、動作フラグ生成部156は、電流調節部125によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われないことを示す制御信号Cnt2,Cnt3を生成する。
【0083】
供給電流値Ioutが供給電流目標値Iampよりも小さい場合には、電流調節値算出部153によるリミット処理結果がゼロよりも大きい値となる。このため、d軸電流調節値dId2の加算により、供給電流目標値Iampと供給電流値Ioutとの偏差を縮小するように変更されたd軸電流指令Id_ref2がd軸電流指令Id_refとなる。これにより、供給電流値Ioutが下限電流レベル以上に維持されるので、上述した第1制御モードにてスイッチング回路16が制御されることとなる。供給電流値Ioutが供給電流目標値Iampよりも大きい場合には、電流調節値算出部153によるリミット処理結果がゼロとなり、d軸電流調節値dId2もゼロとなる。このため、d軸電流指令Id_ref2は変更されることなくそのままd軸電流指令Id_refとなる。供給電流目標値Iampがゼロとされる場合には、d軸電流調節値dId2は常にゼロとなる。このため、供給電流値Ioutを下限電流レベル以上にするための制御は行われないので、上述した第2制御モードにてスイッチング回路16が制御されることとなる。
【0084】
第2制御モードにおいて、電圧指令値V_refが上限電圧値V_limよりも小さい場合には、FF型省エネ演算部121及びFB型省エネ演算部122と、電流調節部125とにより、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるための供給電流を最小化するようにd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refが生成される。第2制御モードにおいて、電圧指令値V_refが上限電圧値V_limよりも大きい場合には、FB型定出力演算部123と電流調節部125とにより、スイッチング回路16からモータ2への印加電圧を所定の上限電圧レベルに維持しつつ、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるようにd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refが生成される。速度制御器(不図示)により速度制御を行う場合には、第2制御モードにおいて、電圧指令値V_refが上限電圧値V_limよりも大きい場合には、FB型定出力演算部123と速度制御器とにより、スイッチング回路16からモータ2への印加電圧を所定の上限電圧レベルに維持しつつ、速度指令に応じた速度をモータ2に発生させるようにd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refを生成してもよい。
【0085】
第1制御モードにおいて、駆動力に影響しないように供給電流を大きくする手法は、必ずしも、供給電流を予め定められた下限電流レベル以上に維持する手法に限られない。例えば電流調節部120は、中性電位の検出値に基づいて、下限電流レベルを動的に変化させるように構成されていてもよい。例えば電流調節部120は、中性電位の検出値と中性電位の目標値との偏差に比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分演算等を行って下限電流レベルを動的に算出してもよい。更に、電流調節部120は、中性電位の検出値と中性電位の目標値との偏差に比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分演算を行って電流補正量を算出し、算出した電流補正量に基づいて電流指令(例えばd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_ref)を生成するように構成されていてもよい。
【0086】
図6は、制御回路100のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図6に示すように、例えば制御回路100は、一以上のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、スイッチング制御回路195とを有する。
【0087】
ストレージ193は、フラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性の記憶媒体を含む。ストレージ193は、ことを制御回路100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックを制御回路100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0088】
メモリ192は、ストレージ193からロードされたプログラムと、当該プログラムの実行過程で生成されるデータとを一時的に記憶する。一以上のプロセッサ191は、メモリ192が記憶するプログラムを実行することで、各機能ブロックとして制御回路100を機能させる。入出力ポート194は、一以上のプロセッサ191からの指令に応じて、電流センサ81と、電圧センサ82,83との間で電気信号の入出力を行う。スイッチング制御回路195は、一以上のプロセッサ191からの指令に応じて、スイッチング回路16を制御する。以上のハードウェア構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、各機能ブロックの少なくともいずれかが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の回路素子により構成されていてもよい。
【0089】
以上においては、目標トルクT_refに基づいてd軸電流指令Id_refとq軸電流指令Iq_refとを算出し、d軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refに供給電流を対応させるようにスイッチング回路16を制御する制御系にて、駆動力に影響しないように供給電流を下限電流レベル以上に維持する構成を示したが、これはあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、磁束の大きさと磁束の位相とに基づいてトルクを制御する制御系においても、駆動力に影響しないように供給電流を下限電流レベル以上に維持することが可能である。この場合、例えば、供給電流を下限電流レベル以上に維持するように磁束の大きさを変更し、大きさを変更済みの磁束にて、目標駆動力に対応する駆動力をモータ2に発生させるように磁束の位相を算出することができる。また、インダクションモータの制御系においても、駆動力に影響しないように供給電流を下限電流レベル以上に維持することが可能である。この場合、例えば、供給電流を下限電流レベル以上に維持するように励磁電流の大きさを変更し、大きさを変更済みの励磁電流にて、目標駆動力に対応する駆動力をモータ2に発生させるようにトルク電流を算出することができる。
【0090】
〔電力変換方法〕
電力変換方法の一例として、電力変換装置3による電力変換手順を例示する。この手順は、第1点11と、第2点12と、中性点13と、のそれぞれと、モータ2との間をスイッチング回路16により接続・遮断することで、モータ2に電流を供給することと、中性電位を目標範囲内に維持するようにスイッチング回路16を制御する中性電位制御を行うことと、少なくとも中性電位制御を行う際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するようにスイッチング回路16を制御することと、を含む。以下、この手順を、電流制御手順と、中性電位制御手順とに分けて詳細に例示する。以下、各手順を例示する。
【0091】
(電流制御手順)
図7に示すように、制御回路100は、ステップS01,S02,S03,S04,S05を順に実行する。ステップS01では、座標変換部117が、磁極位置検出部116により検出された磁極位置θに基づいて、電流センサ81により検出された相電流Iu,Iv,Iwに対し座標変換を行って、d軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。
【0092】
ステップS02では、電流指令生成部113が、回転座標系におけるd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refを所定の制御周期で繰り返し生成する。電流指令生成部113によるd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refの生成手法については後述する。
【0093】
ステップS03では、電圧指令生成部114が、供給電流をd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refに対応させるためのd軸電圧指令Vd_ref及びq軸電圧指令Vq_refを生成する。ステップS04では、PWM制御部115が、d軸電圧指令Vd_ref及びq軸電圧指令Vq_refに対応する電圧をモータ2に印加するようにスイッチング回路16を制御する。例えばPWM制御部115は、d軸電圧指令Vd_refとq軸電圧指令Vq_refとに対応する電圧をモータ2に印加するように上述したスイッチングパターンを算出し、スイッチングパターンを繰り返すようにスイッチング回路16を制御する。ステップS05では、電流指令生成部113が制御周期の経過を待機する。その後、制御回路100は処理をステップS01に戻す。制御回路100は以上の処理を繰り返し実行する。
【0094】
(中性電位制御手順)
中性電位制御手順は、上述した電流制御手順と並行して実行される。
図8に示すように、制御回路100は、まずステップS11,S12を実行する。ステップS11では、中性電位制御部111が、電流センサ81により検出された相電流Iu,Iv,Iwと、電圧センサ82,83による検出された電位差Vpm及び電位差Vmnとを取得する。ステップS12では、電位差Vpmが電位差Vmnより大きいか否かを中性電位制御部111が確認する。中性電位制御部111は、電位差Vpmと電位差Vmnとの差が所定の差分値dVlimより大きいか否かに基づいて、電位差Vpmが電位差Vmnより大きいか否かを判定してもよい。電位差Vpmと電位差Vmnとの差に基づく判定にヒステリシスが設けられていてもよい。
【0095】
ステップS12において、電位差Vpmは電位差Vmn以下であると判定した場合、制御回路100はステップS13を実行する。ステップS13では、電位差Vmnが電位差Vpmより大きいか否かを中性電位制御部111が確認する。ステップS13において、電位差Vmnは電位差Vpm以上であると判定した場合、制御回路100は処理をステップS11に戻す。例えば中性電位制御部111は、電位差Vmnと電位差Vpmとの差が所定の差分値dVlimより大きいか否かに基づいて、電位差Vmnが電位差Vpmより大きいか否かを判定してもよい。電位差Vmnと電位差Vpmとの差に基づく判定にヒステリシスが設けられていてもよい。
【0096】
ステップS12において、電位差Vpmは電位差Vmnより大きいと判定した場合、制御回路100はステップS14,S15を実行する。ステップS14では、中性電位制御部111が、電流センサ81の検出結果に基づいて供給電流の供給方向を算出し、供給電流の供給方向に基づいて、上述の第1期間の長さ及び上述の第2期間の長さと、中性電位との関係を特定する。
【0097】
ステップS15では、中性電位制御部111が、ステップS14で特定した関係に基づいて、電位差Vpmを下降させ、電位差Vmnを上昇させるように第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更する。
【0098】
ステップS13において、電位差Vmnは電位差Vpmより大きいと判定した場合、制御回路100はステップS16,S17を実行する。ステップS16では、中性電位制御部111が、電流センサ81の検出結果に基づいて供給電流の供給方向を算出し、供給電流の供給方向に基づいて、上述の第1期間の長さ及び上述の第2期間の長さと、中性電位との関係を特定する。
【0099】
ステップS17では、中性電位制御部111が、ステップS16で特定した関係に基づいて、電位差Vpmを上昇させ、電位差Vmnを下降させるように第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更する。
【0100】
ステップS15,S17を実行した後、制御回路100は処理をステップS11に戻す。制御回路100は、以上の処理を繰り返し実行する。
【0101】
(電流指令生成手順)
ステップS03におけるd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refの生成手順を例示する。
図9に示すように、制御回路100は、ステップS21,S22,S23,S24,S25を順に実行する。
【0102】
ステップS21では、FF型省エネ演算部121が、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるための供給電流を最小化するようにd軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0を算出する。ステップS22では、FB型省エネ演算部122が、上述した電力変動P0をフィードバック値として取得し、電力変動P0をゼロに近付けるように、d軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0の位相角を変更してd軸電流指令Id_ref1及びq軸電流指令Iq_ref1を算出する。ステップS23では、FB型定出力演算部123が、スイッチング回路16からモータ2への印加電圧を上述した上限電圧レベルに維持しつつ、d軸電流指令Id_ref1を補正する。ステップS24では、探査信号重畳部124が、d軸電流指令Id_ref1(d軸電流補正値dId1が加算されたd軸電流指令Id_ref1)と、q軸電流指令Iq_ref1とに、上述した探査信号を重畳してd軸電流指令Id_ref2及びq軸電流指令Iq_ref2を算出する。ステップS25では、電流調節部125が、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するようにd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refを算出する。以上で電流指令の生成手順が完了する。
【0103】
図10は、ステップS22におけるd軸電流指令Id_ref1及びq軸電流指令Iq_ref1の算出手順を例示するフローチャートである。
図10に示すように、制御回路100は、まずステップS31,S32,S33を実行する。ステップS31では、有効電力算出部131が、座標変換部117により算出されたα軸電流Iα、β軸電流Iβ、α軸電圧Vα、及びβ軸電圧Vβに基づいて有効電力Pを算出する。ステップS32では、探査成分抽出部132が、有効電力Pから上述の位相変動に対応する電力変動P0を抽出する。ステップS33では、補正角算出部133が、電力変動P0と、上述の変動目標値P_ref(例えばゼロ)との偏差を算出する。以下、この偏差を「電力偏差」という。
【0104】
次に、制御回路100はステップS34を実行する。ステップS34では、上述のd軸電流補正値dId1によるd軸電流指令Id_ref1の変更が行われていないかを、上述の制御信号Cnt1に基づいて補正角算出部133が確認する。ステップS34において、d軸電流補正値dId1によるd軸電流指令Id_ref1の変更は行われていないと判定した場合、制御回路100はステップS35を実行する。ステップS35では、上述のd軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われていないかを、上述の制御信号Cnt2に基づいて補正角算出部133が確認する。
【0105】
ステップS35において、d軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更は行われていないと判定した場合、制御回路100はステップS36を実行する。ステップS36では、補正角算出部133が、電力偏差を積分し、電力偏差と、電力偏差の積分結果とに基づいて位相補正角θadjを算出する。
【0106】
ステップS34においてd軸電流補正値dId1によるd軸電流指令Id_ref1の変更が行われていると判定した場合、又はステップS35においてd軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われていると判定した場合、制御回路100はステップS37を実行する。ステップS37では、補正角算出部133が、電流偏差の積分を停止し、電流偏差の積分結果に基づくことなく電流偏差に基づいて位相補正角θadjを算出する。
【0107】
ステップS36,S37を実行した後、制御回路100はステップS38を実行する。ステップS38では、電流補正部134が、位相補正角θadjにてd軸電流指令Id_ref0及びq軸電流指令Iq_ref0の位相角を補正して、d軸電流指令Id_ref1及びq軸電流指令Iq_ref1を算出する。
【0108】
図11は、ステップS23におけるd軸電流指令Id_ref1の補正手順を例示するフローチャートである。
図11に示すように、制御回路100は、まずステップS41,S42を実行する。ステップS41では、電流補正値算出部141が、上限電圧値V_limと、電圧指令値V_refとの偏差を算出する。以下、この偏差を「電圧偏差」という。ステップS42では、上述のd軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われていないかを、上述の制御信号Cnt3に基づいて電流補正値算出部141が確認する。
【0109】
ステップS42において、d軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更は行われていないと判定した場合、制御回路100はステップS43を実行する。ステップS43では、電流補正値算出部141が、電圧偏差を積分し、電圧偏差と、電圧偏差の積分結果とに基づいてd軸電流補正値dId1を算出する。ステップS42において、d軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更は行われていると判定した場合、制御回路100はステップS44を実行する。ステップS44では、電流補正値算出部141が、電圧偏差の積分を停止し、電圧偏差の積分結果に基づくことなく電圧偏差に基づいてd軸電流補正値dId1を算出する。
【0110】
ステップS43,S44を実行した後、制御回路100はステップS45を実行する。ステップS45では、d軸電流補正値dId1がゼロより大きいか否かをリミッタ142が確認する。ステップS45において、d軸電流補正値dId1がゼロより大きい(電圧指令値V_refが上限電圧値V_limより小さい)と判定した場合、制御回路100はステップS46,S47を実行する。
【0111】
ステップS46では、リミッタ142が、d軸電流補正値dId1をゼロにする。ステップS47では、リミッタ142が、d軸電流補正値dId1によるd軸電流指令Id_ref1の変更は行われないことを示す制御信号Cnt1を生成する。
【0112】
ステップS45において、d軸電流補正値dId1がゼロ以下であると判定した場合、制御回路100はステップS48を実行する。ステップS48では、リミッタ142が、d軸電流補正値dId1によるd軸電流指令Id_ref1の変更が行われることを示す制御信号Cnt1を生成する。
【0113】
ステップS47,S48を実行した後、制御回路100はステップS51を実行する。ステップS51では、リミッタ142が、d軸電流補正値dId1をd軸電流指令Id_ref1に加算する。
【0114】
図12は、ステップS25におけるd軸電流指令Id_ref及びq軸電流指令Iq_refの算出手順を例示するフローチャートである。
図12に示すように、制御回路100は、まずステップS61を実行する。モード切替部151は、電圧センサ82により検出された電位差Vpmと、電圧センサ83により検出された電位差Vmnとの差の絶対値である上記変動レベルが、所定の変動閾値よりも大きいか否かを確認する。変動レベルが変動閾値以下であると判定した場合、制御回路100はステップS62を実行する。ステップS62では、変動レベルが変動閾値よりも小さいか否かを確認する。
【0115】
ステップS61における変動閾値と、ステップS62における変動閾値とは互いに異なっていてもよい。例えば、ステップS61における変動閾値が、ステップS62における変動閾値より大きくてもよい。
【0116】
ステップS61において、変動レベルが変動閾値よりも大きいと判定した場合、制御回路100はステップS63を実行する。ステップS63では、モード切替部151が、上述の供給電流目標値Iampをゼロより大きい所定値にする。
【0117】
ステップS62において、変動レベルが変動閾値よりも小さいと判定した場合、制御回路100はステップS64を実行する。ステップS64では、モード切替部151が、上述の供給電流目標値Iampをゼロにする。
【0118】
ステップS63,S64を実行した後、制御回路100はステップS65,S66を実行する。ステップS62において、変動レベルが変動閾値以上であると判定した場合、制御回路100は、ステップS63,S64のいずれも実行せずにステップS65,S66を実行する。この場合、供給電流目標値Iampは、一つ以上前の制御周期において設定された値に保たれる。
【0119】
ステップS65では、電流算出部152が供給電流値Ioutを算出する。ステップS66では、電流調節値算出部153が、供給電流値Ioutを供給電流目標値Iamp以上に維持するようにd軸電流指令Id_refを算出する。例えば電流調節値算出部153は、供給電流目標値Iampと供給電流値Ioutとの偏差にゲインを乗算し、乗算結果をゼロ以上に制限するリミット処理を行う。
【0120】
次に、制御回路100はステップS67を実行する。ステップS67では、上述の変調率が上述の基準変調率より大きいかを強め・弱め切替部154が確認する。ステップS67において、変調率が基準変調率より大きいと判定した場合、制御回路100はステップS68を実行する。ステップS68では、強め・弱め切替部154がd軸電流調節値dId2を負の値にする。ステップS67において、変調率が基準変調率以上であると判定した場合、制御回路100はステップS69を実行する。ステップS69では、強め・弱め切替部154がd軸電流調節値dId2を正の値にする。ステップS67,S68,S69の判定にはヒステリシスが設けられていてもよい。
【0121】
ステップS68,S69を実行した後、制御回路100は、
図13に示すように、ステップS71,S72を実行する。ステップS71では、電流調節値算出部153が、d軸電流調節値dId2に対して上述したローパス型のフィルタ処理を行う。
【0122】
ステップS72では、d軸電流調節値dId2の絶対値が所定の閾値よりも小さいか否かを動作フラグ生成部156が確認する。ステップS72において、d軸電流調節値dId2の絶対値が上記閾値よりも小さいと判定した場合、制御回路100はステップS73を実行する。ステップS73では、動作フラグ生成部156が、d軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われないことを示す制御信号Cnt2,Cnt3を生成する。ステップS72において、d軸電流調節値dId2の絶対値が上記閾値以上であると判定した場合、制御回路100はステップS74を実行する。ステップS74では、動作フラグ生成部156が、d軸電流調節値dId2によるd軸電流指令Id_ref2の変更が行われることを示す制御信号Cnt2,Cnt3を生成する。
【0123】
ステップS73,S74を実行した後、制御回路100はステップS75,S76を実行する。ステップS75では、電流調節値算出部153が、d軸電流調節値dId2をd軸電流指令Id_ref2に加算してd軸電流指令Id_refを算出する。
【0124】
ステップS76では、駆動力調節部155が、目標トルクT_refに応じたトルクをモータ2に発生させるように、q軸電流指令Iq_refをd軸電流指令Id_refに基づいて算出する。
【0125】
〔まとめ〕
以上に説明した実施形態は、以下の構成を含む。
(1) 第1電位を有する第1点11と、第1電位よりも高い第2電位を有する第2点12と、第1電位と第2電位との間の中性電位を有する中性点13とのそれぞれと、モータ2との間を接続・遮断することで、モータ2に電流を供給するスイッチング回路16と、中性電位を目標範囲内に維持するようにスイッチング回路16を制御する中性電位制御部111と、少なくとも中性電位制御部111がスイッチング回路16を制御する際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きする電流制御部112と、を備える電力変換装置3。
本電力変換装置3によれば、少なくとも、中性電位と第1電位との差、又は第2電位と中性電位との差に対応する第1電圧レベルと、第2電位と第1電位との差に対応する第2電圧レベルとを含むマルチレベルで電圧を出力する電力変換が可能となる。電力の制御性を向上させるには、中性電位の安定化が必要であるが、駆動力の発生のためにモータ2に出力される電流が小さい場合(例えば無負荷運転時)においては、スイッチング回路16を制御しても中性電位を変更し難い。このため、中性電位の不安定化に起因して電力の制御性が低下する可能性がある。本電力変換装置3によれば、モータ2に発生させる駆動力が小さい場合であっても、電流制御部112によって、駆動力に影響しないように駆動電流が大きくされる。これにより、スイッチング回路16の制御による中性電位の変更が容易になる。従って、本電力変換装置3は、電力の制御性を向上させるのに有効である。
【0126】
(2) 電流制御部112は、少なくとも中性電位制御部111がスイッチング回路16を制御する際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないように供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するようにスイッチング回路16を制御する、(1)記載の電力変換装置3。
供給電流が下限電流レベル以上に維持されるので、スイッチング回路16の制御による中性電位の変更が更に容易になる。
【0127】
(3) 第1点11と中性点13とに接続された第1コンデンサ14と、第2点12と中性点13とに接続された第2コンデンサ15と、を更に備え、中性電位制御部111は、スイッチング回路16が第1コンデンサ14とモータ2との間で電流を通流させる期間の長さと、スイッチング回路16が第2コンデンサ15とモータ2との間で電流を通流させる期間の長さとの関係を変更することで、中性電位を目標範囲内に維持する、(1)又は(2)記載の電力変換装置3。
出力電流の大きさを下限電流レベル以上に維持することが、中性電位の安定化に対しより有効である。
【0128】
(4) スイッチング回路16は、中性電位と第1電位との差に対応する電圧をモータ2に印加する第1期間と、第2電位と中性電位との差に対応する電圧をモータ2に印加する第2期間と、を含むスイッチングパターンを繰り返し、中性電位制御部111は、スイッチングパターンにおける第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更することで、中性電位を目標範囲内に維持する、(3)記載の電力変換装置3。
中性電位を目標範囲内に更に容易に維持することができる。
【0129】
(5) 中性電位制御部111は、供給電流の供給方向と、中性電位とに基づいて、中性電位を目標範囲内に維持するように第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更する、(4)記載の電力変換装置3。
電流制御部112が、駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくする際には、供給電流の供給方向も変更されることとなる。中性電位を目標範囲内に維持するために、第一期間の長さと第2期間の長さとをいかなる関係にすべきかは、供給電流の方向によっても変わる。中性電位制御部111が、供給電流の供給方向と中性電位との両方に基づいて第1期間の長さと第2期間の長さとの関係を変更する構成によれば、電流制御部112により供給電流の方向が変更されても、その影響を受けることなく中性電位を容易に制御することができる。
【0130】
(6) 電流制御部112は、駆動力に影響しないように供給電流を大きくする際に、モータ2の磁極方向に対応する第1電流指令を算出し、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させるように、磁極方向に垂直な方向に対応する第2電流指令を第1電流指令に基づいて算出し、第1電流指令及び第2電流指令に供給電流を対応させるようにスイッチング回路16を制御する、(1)~(5)のいずれか一項記載の電力変換装置3。
モータ2における駆動力の発生に寄与しない電流を、迅速且つ適切に変更することができる。
【0131】
(7) 駆動力に影響しないように供給電流を大きくする制御を行う第1制御モードと、駆動電流に影響しないように供給電流を大きくする制御を行わない第2制御モードと、を中性電位の変動の大きさに基づいて切り替えるモード切替部151を更に備える、(1)~(6)のいずれか一項記載の電力変換装置3。
中性電位の変動が小さい場合には第1制御モードを第2制御モードとし、中性電位の制御とは別の要請(例えば効率化の要請等)に応じて電流を制御することが可能となる。従って、電力制御の多様性と、電力制御の制御性との両立を図ることができる。
【0132】
(8) 駆動力に影響しないように供給電流を大きくする制御を行う第1制御モードと、駆動力に影響しないように供給電流を大きくする制御を行わない第2制御モードと、を供給電流の大きさに基づいて切り替えるモード切替部151を更に備える、(1)~(6)のいずれか一項記載の電力変換装置3。
駆動力の発生のためにモータ2に供給される電流が大きい場合には第1制御モードを第2制御モードとし、中性電位の制御とは別の要請(例えば効率化の要請等)に応じて電流を制御することが可能となる。従って、電力制御の多様性と、電力制御の制御性との両立を図ることができる。
【0133】
(9) 電流制御部112は、第1制御モードにおいては、駆動力に影響しないように供給電流を大きくするように電流指令を算出し、第2制御モードにおいては、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させるための供給電流を最小化するように電流指令を算出し、電流指令に供給電流を対応させるようにスイッチング回路16を制御する、(7)又は(8)記載の電力変換装置3。
第2制御モードを、駆動力の発生効率の最大化に容易に活用することができる。
【0134】
(10) 電流制御部112は、第1制御モードにおいては、駆動力に影響しないように供給電流を大きくするように電流指令を算出し、第2制御モードにおいては、スイッチング回路16からモータ2への印加電圧を所定の上限電圧レベルに維持しつつ、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させるように電流指令を算出し、電流指令に供給電流を対応させるようにスイッチング回路16を制御する、(7)~(9)のいずれか一項記載の電力変換装置3。
印加電圧を上限電圧レベルに維持しつつ、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させる制御に、第2制御モードを容易に活用することができる。
【0135】
(11) 電流制御部112は、所定の制御目標値と、所定の制御対象値との偏差を縮小しつつ、目標駆動力に応じた駆動力をモータ2に発生させるように電流指令を算出する第1演算部122,123と、駆動力に影響しないように供給電流を大きくするように電流指令を補正する第2演算部125と、電流指令に供給電流を対応させるようにスイッチング回路16を制御する制御部115と、を有する、(1)~(6)のいずれか一項記載の電力変換装置3。
第2演算部125が電流指令の補正を行わない制御モードと、第2演算部125が電流指令の補正を行う制御モードとの間の移行に際し、モータ2の動作の変化を抑制することができる。
【0136】
(12) 第1演算部122,123は、第2演算部125により電流指令が補正されない場合に、偏差を積分し、偏差と偏差の積分結果とに基づいて電流指令を算出し、第2演算部125により電流指令が補正される場合に、偏差の積分を停止し、偏差に基づいて電流指令を算出する、(11)記載の電力変換装置3。
モータ2の動作の変化を更に抑制することができる。
【0137】
(13) 電流制御部112は、スイッチング回路16からモータ2への印加電圧が所定の基準電圧レベルを超えている場合には、駆動力に影響しないようにモータ2に生じる逆起電力を弱める電流を付加して供給電流の大きさを下限電流レベル以上にし、印加電圧が基準電圧レベルを下回っている場合には、駆動力に影響しないように逆起電力を強める電流を付加して供給電流の大きさを下限電流レベル以上にする、(1)~(6)のいずれか一項記載の電力変換装置3。
モータ2における駆動力の発生に寄与しない電流の変更代を大きくすることができる。
【0138】
(14) (1)~(13)のいずれか一項記載の電力変換装置3と、モータ2と、を備え、モータ2は同期モータ2である、駆動システム1。
同期モータ2においては、モータ2に発生させる駆動力が小さい場合に、駆動力の発生のためにモータ2に出力される電流がより小さい傾向がある。このため、駆動力の発生に寄与しない電流を補うことがより有効である。
【0139】
(15) 第1電位を有する第1点11と、第1電位よりも高い第2電位を有する第2点12と、第1電位と第2電位との間の中性電位を有する中性点13と、のそれぞれと、モータ2との間をスイッチング回路16により接続・遮断することで、モータ2に電流を供給することと、中性電位を目標範囲内に維持するようにスイッチング回路16を制御する中性電位制御を行うことと、少なくとも中性電位制御を行う際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくすることと、を含む電力変換方法。
【0140】
(16) 少なくとも中性電位制御を行う際に、モータ2が発生する駆動力に影響しないようにモータ2への供給電流を大きくして、供給電流の大きさを所定の下限電流レベル以上に維持するようにスイッチング回路16を制御する、(15)記載の電力変換方法。
【符号の説明】
【0141】
1…駆動システム、2…モータ、3…電力変換装置、10…電力変換回路、11…第1点、12…第2点、13…中性点、14…第1コンデンサ、15…第2コンデンサ、16…スイッチング回路、111…中性電位制御部、112…電流制御部、115…制御部、122,123…第1演算部、125…第2演算部、151…モード切替部。