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特許7589209ガイド治具、並びに、ケーブル接続部の解体方法及び組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ガイド治具、並びに、ケーブル接続部の解体方法及び組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20241118BHJP
   H02G 15/064 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G15/064
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022158658
(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公開番号】P2024052148
(43)【公開日】2024-04-11
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 達郎
(72)【発明者】
【氏名】松澤 俊輔
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-015031(JP,A)
【文献】特開平08-223729(JP,A)
【文献】特開平07-193936(JP,A)
【文献】特開平04-145819(JP,A)
【文献】特開2003-189453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H02G 15/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体及び内部導体の外周に配置されるブッシング本体を有するブッシングに、電力ケーブルにストレスコーンが取り付けられたケーブル端末部を装着してなるケーブル接続部の解体又は組立てに用いられるガイド治具であって、
筒状体で構成され、
前記筒状体は、内径が前記ストレスコーンの最大外径と略同じであるガイド部分を有する、
ガイド治具。
【請求項2】
複数のガイド部材からなる分割構造を有する、
請求項1に記載のガイド治具。
【請求項3】
前記ストレスコーンは、先端側に向けて縮径するテーパー部を有し、
前記ブッシング本体は、前記テーパー部の外周面に適合する形状の内周面を有する第1受容部と、前記第1受容部に連設され内周面の内径が一定である第2受容部とを有し、
前記ガイド部分の長さをL1、前記第2受容部の長さをL2、前記ストレスコーンの最大外径部から前記ケーブル端末部の先端部までの長さをL3としたとき、
前記ガイド部分の長さL1は、
L1≧L3-L2
を満たすように設定される、
請求項1に記載のガイド治具。
【請求項4】
前記ストレスコーンは、先端側に向けて縮径するテーパー部を有し、
前記ブッシング本体は、前記テーパー部の外周面に適合する形状の内周面を後端側に有する端末受容部を有し、
前記ガイド部分の長さをL1、前記ストレスコーンの最大外径部から前記ケーブル端末部の先端部までの長さをL3としたとき、
前記ガイド部分の長さL1は、
L1≧L3
を満たすように設定される、
請求項1に記載のガイド治具。
【請求項5】
内部を視認可能な開口窓を有する、
請求項1に記載のガイド治具。
【請求項6】
内部導体及び内部導体の外周に配置されるブッシング本体を有するブッシングに、電力ケーブルにストレスコーン及びケーブル固定材料が取り付けられたケーブル端末部を装着してなるケーブル接続部の解体方法であって、
前記ケーブル固定材料を取り外して前記ケーブル端末部を抜去可能な状態とする工程と、
請求項1に記載のガイド治具を前記ブッシングに、同軸となるように取り付ける工程と、
前記ケーブル端末を抜去する工程と、
を含む解体方法。
【請求項7】
内部導体及び内部導体の外周に配置されるブッシング本体を有するブッシングに、電力ケーブルにストレスコーン及びケーブル固定材料が取り付けられたケーブル端末部を装着してなるケーブル接続部の組立て方法であって、
請求項1に記載のガイド治具を前記ブッシングに、同軸となるように取り付ける工程と、
前記ケーブル端末を挿入する工程と、
前記ガイド治具を取り外して、前記ケーブル固定材料を取り付ける工程と、
を含む組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続部の解体時又は組立て時の作業に用いられるガイド治具、並びに、ケーブル接続部の解体方法及び組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス中終端接続部、油中終端接続部、気中終端接続部などのケーブル接続部が知られている。一般的に、ケーブル接続部は、内部導体及び内部導体の外周に配置されるエポキシ樹脂等からなる硬質の絶縁体を有する本体材料(「ブッシング」と呼ばれる)に、接続材料が取り付けられたケーブル端末部を接続することで形成される。例えば、ガス絶縁開閉装置や変圧器等の電力用機器では、機器ケースにブッシングが取り付けられる。
【0003】
ケーブル接続部においては、ブッシングの内周面とケーブル端末部のプレモールド絶縁体(ストレスコーン)の先端側の外周面とが密着することにより、絶縁性能が維持される。ブッシングの内周面又はプレモールド絶縁体の密着面に傷があると、その部分に電界が集中して絶縁性能が低下する虞がある。そのため、ケーブル接続部の組立て作業は、ブッシングの内周面及びプレモールド絶縁体の密着面が損傷しないように、ブッシングとケーブル端末部を位置合わせ(軸心出し)した上で、慎重に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-15031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ブッシングを再利用することを前提に、ケーブル接続部を解体することがある。ケーブル接続部の解体においては、電力ケーブルの根元を持って、ブッシングからケーブル端末部が引き抜かれる。しかしながら、導体接続部の構造や経年劣化による固着等により大きな引き抜き力が必要となる場合が多く、また、電力ケーブル自体が重量物であることから、電力ケーブルの取り回しが難しい。そのため、ケーブル接続部の解体時に、ケーブル端末部(特に、先端側の導体接続材料)がブッシングの内周面に接触し、内周面を損傷させる虞がある。内周面が損傷したブッシングは、もはや再利用することができなくなる。
【0006】
特に、ケーブル端末部のプレモールド絶縁体がブッシングの外部に抜出されるまでは、ブッシングの内周面によってプレモールド絶縁体がガイドされるために、ブッシングからケーブル端末が真っ直ぐに引き抜かれ、ブッシングの内周面に損傷が生じることは少ない。しかしながら、その後の引き抜き作業では、作業員のスキルに頼るしかないというのが現状である。
【0007】
特許文献1には、ケーブル接続部の組立て又は解体に利用できるケーブル端末の着脱治具が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の着脱治具は、非常に大きく、使用する状況も限定的で、治具の組立てだけでも非常に煩雑である。また、ブッシングの下方(後端側)に変流器(CT:Current Transformer)等が設置されている場合など、着脱治具を設置するスペースを確保できないこともある。
【0008】
本開示の目的は、ブッシングの絶縁筒に損傷を与えることなく、ケーブル接続部の解体及び組立ての作業性を向上できるケーブル接続部用のガイド治具、並びに、ケーブル接続部の解体方法及び組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るケーブル接続部用の治具は、
内部導体及び内部導体の外周に配置されるブッシング本体を有するブッシングに、電力ケーブルにストレスコーンが取り付けられたケーブル端末部を装着してなるケーブル接続部の解体又は組立てに用いられるガイド治具であって、
筒状体で構成され、
前記筒状体は、内径が前記ストレスコーンの最大外径と略同じであるガイド部分を有する。
【0010】
本開示に係るケーブル接続部の解体方法は、
内部導体及び内部導体の外周に配置されるブッシング本体を有するブッシングに、電力ケーブルにストレスコーン及びケーブル固定材料が取り付けられたケーブル端末部を装着してなるケーブル接続部の解体方法であって、
前記ケーブル固定材料を取り外して前記ケーブル端末部を抜去可能な状態とする工程と、
上記のガイド治具を前記ブッシングに、中心軸が一致するように取り付ける工程と、
前記ケーブル端末を抜去する工程と、を含む。
【0011】
本開示に係るケーブル接続部の組立方法は、
内部導体及び内部導体の外周に配置されるブッシング本体を有するブッシングに、電力ケーブルにストレスコーン及びケーブル固定材料が取り付けられたケーブル端末部を装着してなるケーブル接続部の組立て方法であって、
上記のガイド治具を前記ブッシングに、中心軸が一致するように取り付ける工程と、
前記ケーブル端末を挿入する工程と、
前記ガイド治具を取り外して、前記ケーブル固定材料を取り付ける工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ブッシングの内周面に損傷を与えることなく、ケーブル接続部の解体及び組立ての作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1A図1Bは、一般的なケーブル接続部の構造を示す図である。
図2図2A図2Bは、ガイド治具の一例を示す斜視図である。
図3図3A図3Dは、ガイド治具の正面図、側面図、上面図及び底面図である。
図4図4A図4Dは、ケーブル接続部の解体方法の一例を示す図である。
図5図5A図5Dは、ケーブル接続部の組立て方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1A図1Bは、一般的なケーブル接続部1の構造を示す断面図である。ケーブル接続部1は、例えば、地面から所定高さの位置において機器ケース40に設置されたブッシング10に、地下ピットに敷設された電力ケーブル50のケーブル端末部20を下方から接続してなる縦型タイプのケーブル接続部である。ケーブル接続部1の後端側(実施の形態では下方側)には、例えば、変流器(CT)が配置されてもよい。
【0015】
本開示では、ケーブル接続部1のブッシング10が配置されている上側を「先端側」、ブッシング10から電力ケーブル50が延在する下側を「後端側」として説明する。
【0016】
図1に示すように、ケーブル接続部1は、ブッシング10にケーブル端末部20が装着されることにより構成される。図1Aは、ブッシング10にケーブル端末部20が装着された組立て状態を示し、図1Bは、ブッシング10からケーブル端末部20が抜去された分解状態を示している。なお、図1A図1Bでは、ケーブル端末部20に装着されるストレスコーンを押圧するための圧縮装置、ケーブル保護金具等のケーブル固定材料、防食層を省略している。
【0017】
ブッシング10は、内部導体11及び内部導体11の外周に配置されるブッシング本体12を備える。ブッシング10は、例えば、内部導体11がT字形状を有する、いわゆるT型ブッシングである。なお、ブッシング10は、内部導体11がL字形状を有し、L型ブッシングであってもよいし、内部導体がI字形状(直型形状)のI型ブッシングであってもよい。
【0018】
内部導体11及びブッシング本体12は、例えば、モールド成形により一体的に形成される。ブッシング本体12の外周面には、遮へい層(図示略)が形成される。遮へい層は、例えば、ブッシング本体12の外周面に塗布された導電性塗料によって形成される。遮へい層は、外部への漏電を防止する遮へい部及びブッシング10内の電界を緩和する電界緩和部として機能する。
【0019】
内部導体11は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。内部導体11には、電力ケーブル50のケーブル導体51が接続される導体接続部13が配置される。導体接続部13は、例えば、図1に示すような、いわゆるチューリップコンタクトで形成され、ブッシング10に対してケーブル端末部20をプラグイン接続により装着可能となっている。なお、導体接続部13として、チューリップコンタクトに代えてマルチラムバンド等の多面接触子を適用してもよい。
【0020】
ブッシング本体12は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など)で形成される。ブッシング本体12は、ケーブル端末部20を受け入れる端末受容部121を有する。端末受容部121の内部空間は、内部導体11のケーブル導体51を収容する導体収容空間112と連通する。
【0021】
端末受容部121は、ケーブル端末部20のストレスコーン22の形状に適合する。具体的には、端末受容部121は、先端側の第1受容部121aと第1受容部121aに連設される後端側の第2受容部121bを有する。第1受容部121aの内周面は、ストレスコーン22の先端部22bの外周面に適合する形状を有する。第2受容部121bの内周面は、内径が一定、または先端側から後端側に向けて若干拡径するように形成される。
【0022】
第1受容部121aの最大内径R1(後端側の内径)は、典型的には、ストレスコーン22の最大外径R2と同じである。なお、第1受容部121aの最大内径R1は、ブッシング10にケーブル端末部20を装着したときに、端末受容部121の内周面とストレスコーン22の最大外径部22aの外周面が密着する程度であればよく、ストレスコーン22の最大外径R2よりも若干小さくてもよい。
【0023】
ケーブル端末部20は、電力ケーブル50の先端部に、導体接続端子21及びストレスコーン22等の接続材料が取り付けられて構成される。図示を省略するが、接続材料は、ストレスコーン22をブッシング本体12に押し付けた状態で固定する圧縮装置や、圧縮装置等の外周部を保護する保護金具等のケーブル固定材料を含む。
【0024】
電力ケーブル50は、例えば、ゴム又はプラスチックで絶縁された電力ケーブルである。電力ケーブル50は、中心から順に、ケーブル導体51、ケーブル絶縁体52、ケーブル外部半導電層53、ケーブル遮へい層(符号略)及びケーブルシース54等を有する。ケーブル端末部20において、電力ケーブル50の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。
【0025】
なお、電力ケーブル50がフリーストリッピングタイプ(フリストタイプとも呼ばれる)の場合は、ケーブル外部半導電層53の先端部とケーブル絶縁体52との段差部分を埋めるために、ケーブル外部半導電層53の先端側に外部半導電処理部(符号略)を設けるのが好ましい。外部半導電処理部は、ケーブル外部半導電層53の段剥ぎされた先端側に、導電性塗料を塗布する、またはポリエチレンなどの半導電性テープを巻き付けてモールド処理することで形成される。外部半導電処理部を設けた場合は、外部半導電処理部も含めて、以下、ケーブル外部半導電層53と称する。
【0026】
ケーブル導体51には、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性の導体接続端子21が圧縮接続される。ケーブル導体51と導体接続端子21とは、電気的かつ機械的に接続される。ケーブル絶縁体52から外部半導電層53の先端部にわたる外周面にストレスコーン22が装着される。ストレスコーン22の後端側に、圧縮装置等のケーブル固定材料が装着される。
【0027】
ストレスコーン22は、先端側の絶縁部(符号略)と後端側の半導電部(符号略)が、モールド成型により一体的に形成されたプレモールド絶縁体である。絶縁部は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)又はシリコーンゴム等の絶縁性ゴム材料で形成され、半導電部は、例えば、半導電性のエチレンプロピレンゴム(EPゴム)又はシリコーンゴム等の半導電性ゴム材料で形成されている。
【0028】
ストレスコーン22は、全体として紡錘形状を有する。具体的には、ストレスコーン22の先端部22bは、絶縁部で形成され、先端側に向けて縮径するテーパー形状を有している(以下、「先端側テーパー部22b」と称する)。ストレスコーン22の後端部22cは、半導電部で形成され、後端側に向けて縮径するテーパー形状を有している。
【0029】
先端側テーパー部22bの外周面は、ブッシング本体12の第1受容部121aに対応する形状を有し、ストレスコーン22が圧縮装置により押圧されることでブッシング本体12の端末受容部121に圧接される。ストレスコーン22の後端部22cは、電力ケーブル50のケーブル外部半導電層53に電気的に接続される。
【0030】
電力ケーブル50の先端部を段剥ぎした後、保護金具及び圧縮装置を含むケーブル固定材料(図示略)と、ストレスコーン22を電力ケーブル50に順に装着し、ケーブル導体51に導体接続端子21を取り付けることにより、ケーブル端末部20が組み立てられる。ケーブル端末部20は、例えば、ブッシング10の後端側から(実施の形態では下方から)挿入され、ブッシング本体12の後端部(実施の形態では下端部)の取付面12aに対して、ケーブル固定材料である押し金具フランジ(図示略)をボルト締結することにより固定される。ストレスコーン22の先端部22bの外周面は、ブッシング本体12の第1受容部121aの内周面に押し付けられ、両者は密着する。導体接続端子21は、導体接続部13を介して内部導体11と電気的かつ機械的に接続される。
【0031】
図2A図2Bは、本発明に係るガイド治具30の構造を示す斜視図である。図3A図3Dは、それぞれ、ガイド治具30の正面図、側面図、上面図及び底面図である。
【0032】
ガイド治具30は、ケーブル接続部1の解体又は組立てに用いられる治具である。ガイド治具30は、筒状体で構成され、内径が略一定であるガイド部分を有する。本実施の形態では、ガイド治具30は、全長にわたって内径R3が略一定であり、ガイド治具30の全部がガイド部分となっている。ガイド治具30は、ガイド部分において、ブッシング10からケーブル端末部20を抜去するとき、又はブッシング10に対してケーブル端末部20を挿入するときに、ケーブル端末部20の径方向(軸方向と直交する方向)への移動(振れ)を規制する。
【0033】
以下において、「ガイド治具30の内径」とは、ガイド治具30のガイド部分の内径である。また、「ガイド治具30の軸方向の長さ」とは、ガイド治具30のガイド部分の長さである。
【0034】
ガイド治具30の内径R3は、典型的には、ストレスコーン22の最大外径R2と同じで一定あることが好ましい。この場合、ガイド治具30の内径R3は、ブッシング10の第1受容部121aの最大内径R1と同じであるともいえる。
【0035】
なお、ガイド治具30の内径R3は、厳密にはストレスコーン22の最大外径R2と同じでなくてもよく、ケーブル端末部20をブッシング10から抜去するとき、又は、ケーブル端末部20をブッシング10に挿入するときに、ケーブル端末部20の先端部(導体接続端子21)がブッシング本体12の内周面と接触することがないように設定されればよい。つまり、ガイド治具30の内径R3は、ストレスコーン22の最大外径R2と略同じであれば、必ずしも一定でなくてもよい。
【0036】
ストレスコーン22の最大外径R2と略同じとは、ストレスコーン22の最大外径部22aがガイド治具30の内周面の大部分と接触する場合に限らず、ストレスコーン22の最大外径部22aの外周面がガイド治具30の内周面と接触して摺擦状態となる程度であってもよい。ガイド治具30は、少なくとも先端側(取付フランジ部32側)に、そのような状態となるガイド部分を有することが好ましい。
【0037】
また、ガイド治具30は、ガイド部分よりも内径が大きい部分を有していてもよい。例えば、ガイド治具30は、全長にわたって、ガイド治具30の先端側(取付フランジ部32側)から後端側に向かって拡径するテーパー形状に形成され、先端側の部分がガイド部分として機能するようにしてもよい。この場合、ガイド部分の後端側の部分は、ガイド部分よりも内径が大きくなる。ただし、ガイド部分以外の内径が大きいほど、ケーブル端末部20が径方向への振れやすくなるため、作業性の観点からは、ガイド部分以外においても、内径はストレスコーン22の最大外径R2の2倍以下であることが好ましい。
【0038】
ガイド治具30の軸方向の長さL1は、ケーブル端末部20をブッシング10から抜去するとき、又は、ケーブル端末部20をブッシング10に挿入するときに、ケーブル端末部20の先端部(導体接続端子21)がブッシング本体12の第1受容部121aの内周面と接触することがないように設定される。例えば、ブッシング本体12の第2受容部121bの長さをL2、ストレスコーン22の最大外径部22aからケーブル端末部20の先端部(接続端子21)までの長さをL3とした場合、ガイド治具30の長さL1は、L1≧L3-L2を満たすように設定される。ただし、ガイド治具30の長さL1が長すぎると、ケーブル接続部1の下方に変流器等が設置されている場合等、作業スペースが制限される場合に不適であるので、ガイド治具30の長さL1は、上記の関係を満たす範囲で短い方が好ましい。
【0039】
図2A等に示すように、ガイド治具30は、例えば、複数のガイド部材からなる分割構造を有する。図2A等に示す実施の形態では、ガイド治具30は、第1ガイド部材30A及び第2ガイド部材30Bからなる2分割構造を有する。第1ガイド部材30A及び第2ガイド部材30Bは、例えば、それぞれに設けられた係合凸部33と係合凹部34が係合することにより一体化され、全体として筒形状を呈する。以下において、第1ガイド部材30Aと第2ガイド部材30Bを区別しない場合は、「ガイド部材30A、30B」と称する。
【0040】
ガイド部材30A、30Bは、それぞれ、本体部31及び取付フランジ部32を有する。ガイド部材30A、30Bは、例えば、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のプラスチック材料で形成される。また、アルミニウム、ステンレス等の金属材料で形成されてもよい。作業性の観点からは軽量で強度が高いプラスチック材料が好ましい。第1ガイド部材30A及び第2ガイド部材30Bは、ほぼ同様の構成を有する。
【0041】
ガイド治具30を2分割のガイド部材30A、30Bで形成する場合、本体部31は、軸方向に延在する半円筒形状を有する。また、本体部31には、軸方向に延びるスリット状の開口窓31aが形成されている。本実施の形態では、複数の開口窓31aが、周方向に沿って等間隔で形成されている。なお、開口窓31aの数や形状は特に制限されず、ガイド治具30としての強度が確保されていればよい。
【0042】
取付フランジ部32は、本体部31の軸方向の一端に、径方向の外側に向けて張り出すように設けられる。取付フランジ部32は、ブッシング10に取り付けられる部分である。取付フランジ部32には、複数のボルト穴32aが形成されている。複数のボルト穴32aは、例えば、ブッシング10におけるケーブル固定材料(図示略)を取り付けるためのボルト穴に対応して設けられる。この場合、ケーブル固定材料を取り付けるための固定構造を利用して、ガイド治具30を取り付けることができる。
【0043】
図4A図4Cは、ケーブル接続部1の解体作業を示す図である。
【0044】
ケーブル接続部1の解体作業では、まず、ブッシング10からケーブル固定材料(図示略)を取り外し、ガイド治具30を取り付ける(図4A参照)。ガイド治具30は、ブッシング10と同軸となるように取り付けられる。ガイド治具30の内径R3とブッシング本体12の第1受容部121aの最大内径R1は、ともに、ストレスコーン22の最大外径R2と略同じであるので、ガイド治具30の内周面とブッシング本体12の第2受容部121bの内周面は面一となる。
【0045】
本実施形態のように、ガイド治具30が分割構造を有している場合、電力ケーブル50を切断することなく、ガイド治具30を取り付けることができる。なお、ガイド治具30が一つの成形体であり分割構造を有していない場合は、電力ケーブル50を切断して後端側からガイド治具30を取り付ければよい。
【0046】
次に、ケーブル端末部20を抜去方向に引っ張り、ブッシング10の内部導体11とケーブル端末部20の導体接続端子21との接続を解除する。本実施の形態では、導体接続部13にチューリップコンタクトを使用しているため、内部導体11に取り付けられている導体接続部13とケーブル端末部20の導体接続端子21との係合を解除する(図4B参照)。このとき、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング本体12の第2受容部121bに当接しているため、ケーブル端末部20は、径方向に振れることなく抜去方向に移動する。ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10の外部に引き出されるまでは、第2受容部121bによってケーブル端末部20の径方向への振れが規制される。
【0047】
さらに、ケーブル端末部20を抜去方向に引っ張り、ブッシング10からケーブル端末部20を引き抜く(図4C参照)。ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10の外部に引き出された後は、ストレスコーン22の最大外径部22aがガイド治具30の内周面と当接した状態で引き抜かれることとなる。これにより、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10の外部に引き出された後も、ガイド治具30によってケーブル端末部20の径方向への振れが規制されるので、ケーブル端末部20の先端部(特に導体接続端子21の先端部)がブッシング本体12の内周面(特に第1受容部121aの内周面)に接触して、ブッシング本体12が損傷するのを防止することができる。
【0048】
また、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10の外部に引き出された後は、ガイド治具30の開口窓31aを介して、ケーブル端末部20の先端部を視認することができる。作業者は、ケーブル端末部20の先端部の位置を確認しながら、ケーブル接続部1の解体作業を行うことができる。
【0049】
さらに、ケーブル端末部20を抜去方向に引っ張り、ブッシング10からケーブル端末部20を完全に引き抜いて、解体作業は完了する(図4D参照)。
【0050】
図5A図5Cは、ケーブル接続部1の組立て作業を示す図である。
【0051】
ケーブル接続部1の組立て作業では、まず、ブッシング10にガイド治具30を取り付ける(図5A参照)。ガイド治具30は、ブッシング10と同軸となるように取り付けられる。ガイド治具30の内径R3とブッシング本体12の第1受容部121aの最大内径R1は、ともに、ストレスコーン22の最大外径R2と略同じであるので、ガイド治具30の内周面とブッシング本体12の第2受容部121bの内周面は面一となる。
【0052】
次に、ケーブル端末部20を挿入方向に押し込み、ブッシング10に対してケーブル端末部20を挿入する(図5B参照)。ストレスコーン22の最大外径部22aがガイド治具30の内周面と当接した状態で挿入される。これにより、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10内に挿入されるまで、ガイド治具30によってケーブル端末部20の径方向への振れが規制されるので、ケーブル端末部20の先端部がブッシング本体12の内周面(特に第1受容部121aの内周面)に接触して、ブッシング本体12が損傷するのを防止することができる。
【0053】
また、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10内に挿入されるまでは、ガイド治具30の開口窓31aを介して、ケーブル端末部20の先端部を視認することができる。作業者は、ケーブル端末部20の先端部の位置を確認しながら、ケーブル接続部1の組立て作業を行うことができる。
【0054】
さらに、ケーブル端末部20を挿入方向に押し込み、ブッシング10の内部にケーブル端末部20を挿入する(図5C参照)。このとき、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング本体12の第2受容部121bに当接しているため、ケーブル端末部20は、径方向に振れることなく抜去方向に移動する。ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10の内部に挿入された後は、第2受容部121bによってケーブル端末部20の径方向への振れが規制されることとなる。
【0055】
さらに、ケーブル端末部20を挿入方向に押し込み、ブッシング10の内部導体11とケーブル端末部20の導体接続端子21とを接続する。本実施の形態では、導体接続部13にチューリップコンタクトを使用しているため、内部導体11に取り付けられた導体接続部13とケーブル端末部20の導体接続端子21とを係合させる(図5D参照)。そして、ガイド治具30を取り外し、ケーブル固定材料によりケーブル端末部20をブッシング10に固定して、組立作業は完了する。本実施形態のように、ガイド治具30が分割構造を有している場合、ケーブル接続部1を組み立てた後、ガイド治具30を破壊することなく、容易に取り外すことができる。
【0056】
このように、実施の形態に係るガイド治具30は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0057】
すなわち、実施の形態に係るガイド治具30は、内部導体11及び内部導体11の外周に配置されるブッシング本体12を有するブッシング10に、電力ケーブル50にストレスコーン22が取り付けられたケーブル端末部20を装着してなるケーブル接続部1の解体又は組立てに用いられるガイド治具であって、筒状体で構成され、内径R3がストレスコーン22の最大外径R2と略同じであるガイド部分を有する。
【0058】
ガイド治具30によれば、ケーブル接続部1の解体時に、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10の外部に引き出された後も、ストレスコーン22の最大外径部22aがガイド治具30のガイド部分(実施の形態ではガイド治具30の全部)に当接しながら引き抜かれるので、ケーブル端末部20の径方向への振れが防止される。したがって、ケーブル端末部20の先端部がブッシング本体12の内周面に接触してブッシング本体12に損傷を与えることなく、ケーブル接続部1を容易に解体することができ作業性が向上する。また、ブッシング本体12には損傷が生じないので、解体後のブッシング10を再利用することができる。
【0059】
また、ケーブル接続部1の組立て時には、ストレスコーン22の最大外径部22aがブッシング10の内部に挿入されるまで、ストレスコーン22の最大外径部22aがガイド治具30のガイド部分に当接しながら挿入されるので、ケーブル端末部20の径方向への振れが防止される。したがって、ケーブル端末部20の先端部がブッシング本体12の内周面に接触してブッシング本体12に損傷を与えることなく、ケーブル接続部1を容易に組み立てることができ作業性が向上する。また、ブッシング本体12には損傷が生じないので、組み立てられたケーブル接続部1において安定した絶縁性能が確保される。
【0060】
また、ガイド治具30は、複数のガイド部材からなる分割構造を有する。これにより、ケーブル接続部1の解体時に、電力ケーブル50を切断することなくガイド治具30を取り付けることができる。また、ケーブル接続部1の組立て時には、ガイド治具30を破壊することなく取り外すことができる。
【0061】
また、ストレスコーン22は、先端側に向けて縮径する先端側テーパー部22b(テーパー部)を有し、ブッシング本体12は、先端側テーパー部22bの外周面に適合する形状の内周面を有する第1受容部121aと、第1受容部121aに連設され内周面の内径が一定である第2受容部121bとを有する。ガイド治具30のガイド部分の長さ(実施の形態ではガイド治具30の全長)をL1、第2受容部121bの長さをL2、ストレスコーン22の最大外径部22aからケーブル端末部20の先端部までの長さをL3としたとき、ガイド治具30の長さL1は、L1≧L3-L2を満たすように設定される。これにより、高い絶縁性能が要求されるブッシング本体の第1受容部121aに対して、ケーブル端末部20の先端部が接触して損傷させるのを、確実に防止することができる。
【0062】
また、ガイド治具30は、内部を視認可能な開口窓31aを有する。これにより、作業者は、ケーブル端末部20の先端部の位置を確認しながら、ブッシング本体12の内周面と接触しないように作業を進めることができる。
【0063】
また、ガイド治具30を用いたケーブル接続部1の解体方法は、内部導体11及びブッシング本体12を有するブッシング10に、電力ケーブル50にストレスコーン22及びケーブル固定材料が取り付けられたケーブル端末部20を装着してなるケーブル接続部1の解体方法であって、ケーブル固定材料を取り外してケーブル端末部20を抜去可能な状態とする工程と、ガイド治具30をブッシング10に、同軸となるように取り付ける工程と、ケーブル端末部20を抜去する工程と、を含む。
【0064】
また、ガイド治具30を用いたケーブル接続部1の組立方法は、内部導体11及びブッシング本体12を有するブッシング10に、電力ケーブル50にストレスコーン22及びケーブル固定材料が取り付けられたケーブル端末部20を装着してなるケーブル接続部1の組立て方法であって、ガイド治具30をブッシング10に、同軸となるように取り付ける工程と、ケーブル端末部20を挿入する工程と、ガイド治具30を取り外して、ケーブル固定材料を取り付ける工程と、を含む。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0066】
例えば、ブッシングは、少なくとも内部導体及びブッシング本体を有していればよく、実施の形態で示した電力用機器のブッシングの他、気中終端接続部、油中終端接続部、ガス中終端接続部など、他の形状の本体材料も含まれる。すなわち、本発明は、実施の形態で説明した電力用機器の終端接続部の組立作業だけでなく、鉛直方向の軸心出しを必要とする縦型のケーブル接続部の組立作業に好適である。
【0067】
また例えば、ガイド治具30は、ブッシング10の下部の端面に、直接取り付けられてもよいし、アダプター金具や縁切りのための絶縁筒を介して取り付けられてもよい。また、ガイド治具30は、ボルト以外の適当な固定部材を用いてブッシング10に取り付けられてもよい。
【0068】
また、実施の形態では、ブッシング本体12が、ストレスコーン22のテーパー部22bの外周面に適合する形状の内周面を有する第1受容部121aと、第1受容部121aに連設され内周面の内径が一定である第2受容部121bとを有する場合について説明したが、第2受容部121bを有さないブッシング10の構造でもよい。この場合、ブッシング本体12は、ストレスコーン22のテーパー部22bの外周面に適合する形状の内周面をブッシング本体12の後端側に有する端末受容部121を有し、ガイド治具のガイド部分の長さをL1、ストレスコーン22の最大外径部22aからケーブル端末部20の先端部までの長さをL3としたとき、ガイド治具30のガイド部分の長さL1は、L1≧L3を満たすように設定される。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 ケーブル接続部
10 ブッシング
11 内部導体
12 ブッシング本体
20 ケーブル端末部
22 ストレスコーン
30 ガイド治具
図1
図2
図3
図4
図5