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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】メチル-D3置換されたイリジウム錯体
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/12 20230101AFI20241118BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20241118BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241118BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20241118BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20241118BHJP
【FI】
H10K50/12
C07F15/00 E CSP
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K85/30
H10K101:10
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178304
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2021099373の分割
【原出願日】2010-04-28
(65)【公開番号】P2023001242
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】61/173,346
(32)【優先日】2009-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】12/768,068
(32)【優先日】2010-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュアンジュン・シャ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・フィオーデリーソ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・シー・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】バート・アレイン
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-270737(JP,A)
【文献】特開2009-076865(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006051975(DE,A1)
【文献】国際公開第2009/150151(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/086089(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/075421(WO,A2)
【文献】特開2010-171205(JP,A)
【文献】国際公開第2008/029670(WO,A1)
【文献】特表2007-522126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/12
C07F 15/00
C09K 11/06
H10K 85/30
H10K 101/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光デバイスの発光層であって、ホスト材料と、Ir及び重水素置換を有する配位子を含み且つ前記配位子が前記Irに配位している化合物とを含み、かつ、前記配位子が、アルキル鎖を有し且つ前記アルキル鎖の末端に重水素を有する配位子であり、かつ、前記化合物がヘテロレプティック化合物である、発光層(但し、以下に挙げるIr化合物のうちヘテロレプティック化合物であって、かつ、その配位子が、アルキル鎖を有し且つ前記アルキル鎖の末端に重水素を有する配位子である化合物とホスト材料を含む、発光デバイスの発光層を除く):
(i)下記一般式(1)、(2)、又は(3)のイリジウム錯体
【化1】
(式中、R11~R17は水素原子又は置換基を表し、R11~R17のうち少なくとも一つは重水素原子である。L11は配位子を表す。n11は1~3の整数を表し、n12は0~4の整数を表し、n11、n12はIrの配位数が6となるように定められた数を表す);
【化2】
(R21~R27は水素原子または置換基を表し、R21~R24 、R26、R27の少なくとも一つは重水素原子である。L21は配位子を表す。n21は1~3の整数を表し、n22は0~4の整数を表し、n21、n22はIrの配位数が6となるように定められた数を表す);
【化3】
(R31~R37は水素原子又は置換基を表し、R31~R36のうち少なくとも一つは重水素原子である。L31は配位子を表す。n31は1~3の整数を表し、n32は0~4の整数を表し、n21、n22はIrの配位数が6となるように定められた数を表す);
(iv)下記一般式(II)の金属錯体:
【化4】
[Y、Zは、互いに無関係に、CD、CR、CH 、又はNを意味する;
Dは重水素である;
は、Nを意味する;
、X、Y、Y、及びYは、互いに無関係に、NもしくはCを意味する;
はCD、CR、CH,N、NR、S、もしくはOである;
はCDである;
及びYは、互いに無関係に、CD、CR、CH、N、NR、S、もしくはOである;
、Z、Zは、互いに無関係に、CD、CR、CH、Nであり、その際、Z、Z、もしくはZは、n=0の場合に、さらにS、O、もしくはNRを意味してよい;
は、互いに無関係に、非置換もしくは置換のアルキル、非置換もしくは置換のシクロアルキル、非置換もしくは置換のヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換のアリール、非置換もしくは置換のヘテロアリール、非置換もしくは置換のアルケニル、非置換もしくは置換のシクロアルケニル、非置換もしくは置換のアルキニル、SiR 、ハロゲン、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基を意味し、その際、RがN原子と結合されている場合には、Rは、互いに無関係に、非置換もしくは置換のアルキル又は非置換もしくは置換のアリール又は非置換もしくは置換のヘテロアリールを意味し、その際、2個の任意の基Rは、更に、一緒になって、1個のアルキレン架橋もしくはアリーレン架橋を形成してよい;
は、互いに無関係に、非置換もしくは置換のアルキル又は非置換もしくは置換のアリール又は非置換もしくは置換のヘテロアリールを意味する;
m、nは、互いに無関係に、0もしくは1を意味し、その際、基ZもしくはYは、n もしくはmが0である場合には、存在しない;及び、
前記金属錯体は、少なくとも1個の重水素原子を含む;
Mは、可能な酸化段階のIr金属原子である;
Jは、モノアニオン性もしくはジアニオン性の配位子であって、一座もしくは二座であってよい;
Kは、中性の、一座もしくは二座の配位子であって、一般に光活性でないものを意味する;
oは、M=Ir(III)の場合に、1、2もしくは3を意味する;
pは、0、1、2、3もしくは4であり、その際、pは、M=Ir(III)の場合に、0、1、2、3もしくは4を意味し、その際、pは、金属Mに対する結合箇所の数を意味し、すなわちp=2の場合に、2個の一座の配位子もしくは1個の二座の配位子であってよい;
qは、0、1、2、3もしくは4であり、その際、qは、M=Ir(III)の場合に、0、1もしくは2を意味し、その際、qは、金属M に対する結合箇所の数を意味し、すなわちq=2の場合に、2個の一座の配位子もしくは1個の二座の配位子であってよい;
その際、o、p及びqは、使用される金属原子の酸化段階及び配位数と、配位子の電荷に
依存している。];
(v)下記式(2)または式(3)の基M(L)を含む式(1)の化合物
M(L)n(L’)m 式(1)
【化5】
(式中:使用される記号と添え字は以下のとおりである:
Mは、Irであり;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、C、NおよびBから成る群より選ばれ、全てのXは一緒になって14π電子系を表し、
~Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、Si(R、B(OR 、C (=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、2~40個のC原子を有するアルケニル若しくはアルキニル基、または3~40個のC 原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R 、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se 、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S若しくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられてよい。) 、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rにより置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基Rにより置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有するアラルキル若しくはヘテロアラルキル基または1以上の基R8により置換されてよい10~40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基若しくはアリールヘテロアリールアミノ基であって、RとRおよび/またはRとRおよび/またはRとRおよび/またはRとRおよび/またはRとRは、ここで、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環構造を形成してもよく、さらに、RとRは、互いにモノ-或いはポリ環状脂肪族環構造を形成してもよく;
但し、これら基R~Rが結合する基Xが、飽和価を有する窒素原子であるならば、R ~Rは遊離電子対を表し、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、Si(R 、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、2~40個のC原子を有するアルケニル若しくはアルキニル基または3~40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O 、S若しくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられてよい。) 、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rにより置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基R9により置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有するアラルキル若しくはヘテロアラルキル基または1以上の基R9により置換されてよい10~40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基若しくはアリールヘテロアリールアミノ基であって、ここで、2以上の隣接するRは、互いにモノ-或いはポリ環状脂肪族若しくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、または、1~20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であって、さらに、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよく; ここで、2以上の置換基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状脂肪族若しくは芳香族環構造を形成してもよく;
L’は、出現毎に同一であるか異なり、任意の所望のコリガンドであり;
nは、1 、2 、3 または4 であり:
mは、0 、1 、2 、3 、4 、5 または6 であり;
ここで、複数のリガンドLは、互いに連結してもよいか、Lは、任意の所望のブリッジV を介してL’と連結して、三座、四座、五座若しくは六座配位系を形成してもよい;
ここで、R~Rの少なくとも1個は重水素原子である。];
(vi)以下のものからなる群から選択されるイリジウム錯体:
【化6】
【請求項2】
重水素置換を有する配位子が、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール環のいずれも含まない、請求項1に記載の有機発光デバイスの発光層。
【請求項3】
前記の重水素置換を有する配位子が下記式Iで表されるものではない、請求項1に記載の有機発光デバイスの発光層:
【化7】
(式中、Aは、イミダゾール、ピラゾール、又はオキサゾールであり;
Bは6員の芳香族環であり;
、A、B、及びBは独立にC又はNであり;
及びRは、モノ、ジ、又はトリ置換を表すことができ;
及びXは独立にC又はヘテロ原子であり;
、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含み;
、R、R、及びRは連結されていてもよく;
、R、R、及びRは縮合していてもよく;
前記配位子はIrに配位している。)
【請求項4】
前記の重水素置換を有する配位子が下記式Iで表されるものではない、請求項1に記載の有機発光デバイスの発光層:
【化8】
(式中、Aは、5員のヘテロ芳香族環であり;
Bは6員の芳香族環であり;
、A、B、及びBは独立にC又はNであり;
及びRは、モノ、ジ、又はトリ置換を表すことができ;
及びXは独立にC又はヘテロ原子であり;
、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含み;
、R、R、及びRは連結されていてもよく;
、R、R、及びRは縮合していてもよく;
前記配位子Irに配位している。)
【請求項5】
前記の重水素化されたアルキル鎖が、CDである、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光層。
【請求項6】
前記配位子が、メチル-d3置換を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光層。
【請求項7】
請求項1に記載の有機発光デバイスの発光層を調製するための配合物であって、Ir及び重水素置換を有する配位子を含み且つ前記配位子が前記Irに配位しているヘテロレプティック化合物であって、前記配位子がアルキル鎖を有し且つ前記アルキル鎖の末端に重水素を有する配位子である化合物と、ホスト材料とを含む、配合物。
【請求項8】
前記の重水素置換を有する配位子が、イミダゾール、ピラゾール、又はオキサゾール環のいずれも含んでいない、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
前記の重水素置換を有する配位子が下記式Iで表されるものではない、請求項7に記載の配合物:
【化9】
(式中、Aは、イミダゾール、ピラゾール、又はオキサゾールであり;
Bは6員の芳香族環であり;
、A、B、及びBは独立にC又はNであり;
及びRは、モノ、ジ、又はトリ置換を表すことができ;
及びXは独立にC又はヘテロ原子であり;
、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含み;
、R、R、及びRは連結されていてもよく;
、R、R、及びRは縮合していてもよく;
前記配位子はIrに配位している。)
【請求項10】
前記の重水素置換を有する配位子が下記式Iで表されるものではない、請求項7に記載の配合物:
【化10】
(式中、Aは、5員のヘテロ芳香族環であり;
Bは6員の芳香族環であり;
、A、B、及びBは独立にC又はNであり;
及びRは、モノ、ジ、又はトリ置換を表すことができ;
及びXは独立にC又はヘテロ原子であり;
、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含み;
、R、R、及びRは連結されていてもよく;
、R、R、及びRは縮合していてもよく;
前記配位子はIrに配位している。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2009年4月28日に出願した米国仮出願No.61/173,346号、及び2010年4月27日に出願した米国出願No.12/768,068号に対する優先権を主張し、それらの開示を、その全体を参照により本明細書に明示して援用する。
【0002】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサルディスプレイコーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は、有機発光デバイスに有利に用いることができる新規な有機化合物に関する。さらに詳細には、本発明は、新規なメチル-d3置換されたイリジウム錯体とOLEDにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
有機材料を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの材料はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対して、コスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機材料固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機材料は、従来の材料に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの材料と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本願に援用する。
【0006】
リン光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式を有する。
【化1】
【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特定に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性に寄与しない場合には「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の性質を変えうる。
【0013】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占軌道」(HOMO)又は「最低空軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合は、第二のHOMO又はLUMOのエネルギー準位よりも大きいか又は高い。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIP(より少ない負のIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)(より少ない負のEA)に相当する。従来のエネルギー準位ダイヤグラム上では、上端(トップ)を真空準位とし、物質のLUMOエネルギー準位は、同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも上である。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのようなダイヤグラムの上端(トップ)近くに現れる。
【0014】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「仕事関数」は、その仕事関数がより大きな絶対値を有する場合には第二の仕事関数「より大きい」あるいは「より高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より大きな」仕事関数は、より負である(よりマイナスである)ことを意味する。上端(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位ダイヤグラム上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下の方向へ、より離れたものとして図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣習に従う。
【0015】
OLEDについてのさらに詳細、及び上に記載した定義は米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を本明細書に参照して援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第5,844,363号明細書
【文献】米国特許第6,303,238号明細書
【文献】米国特許第5,707,745号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】Baldoら,「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」, Nature, vol.395, 151~154頁, 1998
【文献】Baldoら, 「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」, Appl. Phys. Lett., vol.75, No.3, 4~6頁(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
[本発明のまとめ]
下記構造を有する配位子を含む化合物。
【化2】
式中、A及びBは独立に5員又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環を表す。好ましくは、Aは、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンからなる群から選択される。好ましくは、Bは、ベンゼン、ピリジン、フラン、ピロール、及びチオフェンからなる群から選択される。A、A、B、及びBは独立にC又はNである。R及びRは、モノ、ジ、又はトリ置換を表すことができる。X及びXは独立にC又はヘテロ原子である。R、R、R、及びRは独立に、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル(arylkyl)、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含む。好ましくは、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCDを含む。R、R、R、及びRは連結されていてもよい。R、R、R、及びRは縮合していてもよい。この配位子は40より大きな原子量を有する金属に配位している。好ましくはその金属はIrである。
【0019】
一つの側面では、この配位子は下記構造を有する。
【化3】
【0020】
一つの側面では、X及びXは独立にC又はNであり、且つXがNである場合はRはアリールである。別の側面では、X及びXは独立にC又はNであり、XがNである場合はRはアルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される基で置換されたフェニルであり、その基は少なくとも1つのCD、CD、又はCDを含む。
【0021】
一つの側面では、R及びRの置換基のうち少なくとも1つが、環A、環B、又は環Aもしくは環Bに共役もしくは縮合した環に直接結合したCDである化合物を提供する。
【0022】
特に、配位子が以下のものからなる群から選択される配位子を含む化合物を提供する。
【化4】
【0023】
、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つがCDである。
【0024】
別の側面では、化合物は、式II、III、IV、V、VI、及びVIIから選択される配位子を含む。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つはCDを含む。
【0025】
なお別の側面では、下記のものからなる群から選択される配位子を含む化合物を提供する。
【化5】
【0026】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は連結されていてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は縮合していてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11のうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含むアルキル基を含む。
【0027】
メチル-重水素置換(本明細書ではメチル-d又はCDともいう)されたイリジウム錯体の具体例を提供し、それには化合物2~42からなる群から選択される化合物が含まれる。一つの側面では、式IIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物2~4を提供する。別の側面では、式IIIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物5~9を提供する。なお別の側面では、式IVを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物10~14及び27~40を提供する。なお別の側面では、式Vを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物15~19を提供する。なお別の側面では、式VIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物20~23を提供する。なお別の側面では、式VIIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物24~26、41、及び42を提供する。
【0028】
重水素置換化合物の追加の具体例には、化合物43~化合物82からなる群から選択される化合物が含まれる。一つの側面では、式IIIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物58、59、68~70、及び75~77を提供する。別の側面では、式IVを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物43~52、62~67、及び80~82を提供する。なお別の側面では、式Vを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物55~57、73、及び74を提供する。さらなる側面では、式VIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物60、61、78、及び79を提供する。なお別の側面では、式VIIIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物53、54、71、及び72を提供する。
【0029】
一つの側面では、ホモレプティック化合物を提供する。特に、式Iを有する配位子がホモレプティック化合物中の配位子である化合物を提供する。別の側面では、ヘテロレプティック化合物を提供する。特に、式Iを有する配位子がヘテロレプティック化合物中の配位子である化合物を提供する。
【0030】
有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置された有機発光層を含むことができる。この有機層は、上述した式Iの構造を有する配位子をさらに含む。
【0031】
A及びBは独立して、5員又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環を表すことができる。A、A、B、及びBは独立にC又はNである。R及びRはモノ、ジ、又はトリ置換を表すことができる。X及びXは独立にC又はヘテロ原子である。R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含む。好ましくは、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCDを含む。R、R、R、及びRは連結していてもよい。R、R、R、及びRは縮合していてもよい。この配位子は40より大きな原子量を有する金属に配位している。
【0032】
一つの側面では、X及びXは独立にC又はNであり、XがNである場合にはRはアリールである。別の側面では、X及びXは独立にC又はNであり、XがNである場合は、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される基でさらに置換されたフェニルであり、その基は少なくとも1つのCD、CD、又はCDを含む。
【0033】
式Iを有する配位子を含む化合物に対して好ましいと記載した芳香族環、金属、及び置換基についての選択は、式Iを有する配位子を含む化合物を含むデバイスにおいて用いるためにも好ましい。これらの選択には、金属M、環A及びB、並びに置換基R、R、A、A、B、B、R、及びRについての選択が含まれる。
【0034】
好ましくは、R及びRの置換基の少なくとも1つは、環A、環B、又は環Aもしくは環Bに共役もしくは縮合した環に直接結合したCDである。
【0035】
好ましくは、金属はIrである。
【0036】
好ましくは、Aは、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンからなる群から選択される。好ましくは、Bは、ベンゼン、ピリジン、フラン、ピロール、及びチオフェンからなる群から選択される。
【0037】
特に、上記デバイスの有機層は、式II~VIIからなる群から選択される配位子を有する化合物を含み、式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10の少なくとも1つはCDである。好ましくは、有機層は、化合物2~42からなる群から選択される化合物を含む。
【0038】
さらに、上記デバイスの有機層は、式II~VIIからなる群から選択される配位子を有する化合物を含んでいてもよく、式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つはCDを含む。
【0039】
さらに、上記デバイスの有機層は、式III~VIIIからなる群から選択される配位子を有する化合物を含んでいてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は連結されていてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は縮合していてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11のうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含むアルキル基を含む。好ましくは、上記有機層は、化合物43~82からなる群から選択される化合物を含む。
【0040】
一つの側面では、上記有機層は、本明細書において提供した化合物を含む発光層であり、発光層中でその化合物は発光ドーパントである。この有機層はホストをさらに含んでいてもよい。好ましくは、このホストは下記式:
【化6】
を有する。
R′、R′、R′、R′、R′、及びR′は、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;R′、R′、R′、R′、R′、及びR′は独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。さらに好ましくは、ホストはH1である。
【0041】
デバイスを含む消費者製品も提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含む。この有機層は、上述した式Iの構造を有する配位子を含む化合物を含む。
【0042】
A及びBは独立に、5員又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環を表す。A、A、B、及びBは独立にC又はNである。R及びRはモノ、ジ、又はトリ置換を表すことができる。X及びXは独立にC又はヘテロ原子である。R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、CD、CD、又はCDを含む。好ましくは、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCDを含む。R、R、R、及びRは連結していてもよい。R、R、R、及びRは縮合していてもよい。この配位子は40より大きな原子量を有する金属に配位している。
【0043】
式Iを有する配位子を含む化合物について好ましいと記載した芳香族環、金属、及び置換基についての選択は、式Iを有する配位子を有する化合物を含むデバイスを含んでなる消費者製品において用いるにも好ましい。これらの選択には、金属M、環A及び環B、並びにR、R、A、A、B、B、R、及びRについての選択が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、有機発光デバイスを示す。
図2図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
図3図3は、重水素置換を含む配位子の一般的構造を示す。
図4図4は、メチル-d3置換された配位子の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[詳細な説明]
一般にOLEDは、アノードとカソードの間に配置され且つこれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、その有機層(単数又は複数)中にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子は、それぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。同じ分子上に電子と正孔が局在した場合、励起エネルギー状態を有する、局在化した電子-正孔対である「励起子」が形成される。この励起子が発光機構によって緩和する時に光が発せられる。ある場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在することもできる。非放射機構、例えば熱緩和も起こることがあるが、通常は好ましくないと考えられている。
【0046】
初期のOLEDでは、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(その全体を参照により援用する)に開示されているように、一重項状態から発光する(「蛍光」)発光分子を用いた。蛍光発光は一般に、10ナノ秒未満の時間フレームで起こる。
【0047】
より最近、三重項状態から光を発する(「リン光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)(“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。リン光は、米国特許第7,279, 704号明細書の第5~6欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0048】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6~10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0049】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材及びアノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F4-TCNQでドープしたm-MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報により詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0050】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0051】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省かれうる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0052】
具体的に記載されていない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように、積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0053】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての堆積、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3~20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0054】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20~25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0055】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0056】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31~32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0057】
本明細書で用いるとおり、アルキル、アリール、及びヘテロアリールの用語には水素の代わりに重水素をも含む。例えば、アルキルにはCHあるいはCD、CHCHあるいはCHCDが含まれる。同様に、アリール及びヘテロアリールには、水素ではなく重水素で置換された芳香族基を含むこともできる。
【0058】
イリジウム錯体において水素を同位体である重水素で置き換えることは、文献に報告されている(例えば、米国特許出願公開第2008/0194853号公報及び米国特許第6,699,599号明細書を参照されたい)。明らかに、環上の直接の重水素原子置換は、色の変化(カラーチューニング)をもたらさないようにみえる。特に、発明者らは重水素原子置換をうけた化合物の発光特性のいかなる変化についてのいかなる報告も知らない。
【0059】
ホスト物質におけるCD置換も報告されている(国際公開WO2008/029670号を参照されたい)。しかし、発光ドーパントの発光特性はその化合物の重要な特性であり、ホスト物質の置換は色の変化に関するいかなる情報ももたらすことができない。特に、フォトルミネッセンススペクトルへの重水素置換の影響(例えば、色の変化(カラーチューニング)特性)は、ここで提供しているように修飾された化合物が発光物質でなくホスト物質である場合には見積もることができない。したがって、メチル置換の有利な特性(すなわち、カラーチューニング、向上した量子効率、及び向上した寿命)並びに重水素に伴う向上した安定性を有する発光化合物は、望ましいであろう。
【0060】
金属錯体のメチル置換は、化合物の光物理特性及びエレクトロルミネッセンス特性を調節(チューニング)するために有用であることが示されている。例えば、特定の位置におけるメチル置換は、量子効率、線形(line shape)を向上させ、OLEDの寿命を向上させるその能力に対して有利でありうる。
【0061】
新規な化合物を本明細書において提供し、その化合物はメチル-d3置換を有する配位子を含む(図3に示されている)。加えて、メチル-d3置換を含む具体的な配位子も提供する(図4に示されている)。明らかに、向上したフォトルミネッセンスと向上したデバイス効率の両方とも、開示した化合物によってもたらされうる。
【0062】
本明細書において提供する化合物は、メチル-d3置換を有する配位子を含んでいる。これらの化合物は、向上した効率、長い寿命、及び改善した色(例えば、カラーチューニング)を有するデバイスを提供するためにOLEDにおいて有利に用いることができる。理論に縛られないが、CD置換は、その強いC-D結合によって安定性を向上させることができると考えられる。C-D結合の強さは、上で論じたようにC-H結合の強さよりも大きい。さらに、重水素のより小さなファンデルワールス半径は、立体的により小さな置換となることができ(例えば、オルト位のCD置換を含む芳香環上の、CH置換よりも小さなねじれ)、それによってCD置換を有するシステムにおける改善された共役をもたらしうる。さらに、メチル-d3に存在するC-D結合が関与する化学過程の反応速度は、その速度論的同位体効果によって遅くなりうる。発光化合物の化学分解にメチルのC-H結合の開裂が関与する場合には、より強いC-D結合はその化合物の安定性を向上させることができる。
【0063】
メチルは、化合物への修飾として付け加えられる最も単純なアルキル置換である。それは、OLEDにおいてホスト及び発光物質の両方の特性を改変するための非常に重要な置換基である。メチルは、固体状態における充填特性(すなわち、昇華特性及び電荷輸送特性)に影響を及ぼし、光物性を変え、デバイスの安定性に影響を及ぼす。メチル基は、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)ファミリーの特性を変えるために導入されている。例えば、発光物質としてトリス(3-メチル-2-フェニルピリジン)イリジウム(III)を用いたデバイスは、発光物質としてトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)を用いたデバイスよりもよい安定性を有する。さらに、トリス(3-メチル-2-フェニルピリジン)イリジウム(III)の発光ピークは約10nm赤方遷移(レッドシフト)している。さらに、トリス(3-メチル-2-フェニルピリジン)イリジウム(III)の蒸発温度は、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)よりも約20℃低い。
【0064】
一方で、メチルはまた、そのベンジル位水素のせいで反応性であると考えられる。理論に縛られないが、そのメチル基に存在する水素原子は特に反応性である可能性があり、したがって、その発光化合物の化学分解の部位となりうる。さらに、当技術分野においては、OLEDの駆動中にドーパント化合物が酸化され始めるということがかなり認められている。酸化された状態において、そのベンジル位は最も弱い位置となり、さらなる化学分解をおこすおそれがある。提案されている機構は、発光ドーパントが特定のホスト、例えばトリフェニレン/DBT複合材料とともに用いる場合により大きく関連し、その他のホスト、例えばBalqと用いる場合にはそれほど関連しない。したがって、そのメチル基の水素原子を重水素原子に置き換えること(メチル-d3)は、発光化合物を安定化させうる。
【0065】
重水素置換は効率及び安定性を向上させることができると考えられ、なぜなら、重水素の原子量は水素の原子量の2倍大きく、このことはより小さなゼロ点エネルギーとより低い振動エネルギー準位をもたらすからである。さらに、重水素が関与する化学結合長と結合角度は、水素が関与するものと異なる。特に、重水素のファンデルワールス半径は、C-H結合と比較したC-D結合の小さな伸縮振幅の大きさのため、水素のものよりも小さい。一般に、C-D結合はC-H結合よりも短く且つ強い。したがって、CD置換は、同じ色調節(カラーチューニング)と、増大した結合強度に伴う全ての利点(すなわち、向上した効率及び寿命)をもたらすことができる。
【0066】
上で論じたように、重水素置換は多くの利点、例えば、増大した効率及び寿命)をもたらす。したがって、重水素置換を有する配位子を含む化合物は、有機発光デバイスに有利に用いることができる。そのような化合物には、例えば、アルキル鎖内に重水素(例えば、C(D)(H)CH、CDCH、及びCHCDCH)、また、アルキル鎖の末端に重水素(例えば、CD)を有する配位子を含む化合物が含まれる。
【0067】
新規な化合物をここに提供し、その化合物は下記の構造を有する配位子を含む。
【化7】
【0068】
式中、A及びBは独立に5員又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環を表す。好ましくは、Aは、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンからなる群から選択される。好ましくは、Bは、ベンゼン、ピリジン、フラン、ピロール、及びチオフェンからなる群から選択される。A、A、B、及びBは独立にC又はNである。R及びRは、モノ、ジ、又はトリ置換を表すことができる。X及びXは独立にC又はヘテロ原子である。R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル(arylkyl)、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含む。好ましくは、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCDを含む。R、R、R、及びRは連結されていてもよい。R、R、R、及びRは縮合していてもよい。この配位子は40より大きな原子量を有する金属に配位している。好ましくはその金属はIrである。
【0069】
一つの側面では、この配位子は下記構造を有する。
【化8】
【0070】
一つの側面では、X及びXは独立にC又はNであり、且つXがNである場合はRはアリールである。別の側面では、X及びXは独立にC又はNであり、XがNである場合はRはアルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される基で置換されたフェニルであり、その基は少なくとも1のCD、CD、又はCDを含む。
【0071】
一つの側面では、R及びRの置換基のうち少なくとも1つが、環A、環B、又は環Aもしくは環Bに共役もしくは縮合した環に直接結合したCDである化合物を提供する。
【0072】
上で論じたように、置換基R及びRは、環A及び/又は環Bに縮合していてもよい。置換基R及びRは、環A及び/又は環Bに連結又は縮合しているかあるいは環A及び/又は環Bに縮合していない置換基を含めた任意の置換基であることができる。
【0073】
特に、配位子が以下のものからなる群から選択される配位子を含む化合物を提供する。
【化9】
、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、且つ、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つがCDである。
【0074】
さらに、配位子が以下のものからなる群から選択される配位子を含む化合物を提供する。
【化10】
、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、且つ、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つがCDを含む。
【0075】
以下のものからなる群から選択される配位子を含む化合物。
【化11】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は連結されていてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は縮合していてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11のうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含むアルキル基を含む。
【0076】
メチル-d3置換されたイリジウム錯体の具体例を提供し、これには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
【0079】
【化14】
【0080】
【化15】
【0081】
【化16】
【0082】
【化17】
【0083】
重水素置換されたイリジウム錯体のさらなる具体例を提供し、それには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0084】
【化18】
【0085】
【化19】
【0086】
【化20】
【0087】
【化21】
【0088】
【化22】
【0089】
一つの側面では、式IIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物2~4を提供する。
【0090】
別の側面では、式IIIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物5~9を提供する。
【0091】
別の側面では、式IIIを有する配位子を含むさらなる化合物を提供し、それには化合物58、59、68~70、及び75~77が含まれる。
【0092】
なお別の側面では、式IVを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物10~14及び化合物27~40を提供する。
【0093】
別の側面では、式IVを有する配位子を含むさらなる化合物を提供し、それには化合物43~52、62~67、及び80~82が含まれる。
【0094】
なお別の側面では、式Vを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物15~19を提供する。
【0095】
別の側面では、式Vを有する配位子を含むさらなる化合物を提供し、それには化合物55~57、73、及び74が含まれる。
【0096】
なお別の側面では、式VIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物20~23を提供する。
【0097】
別の側面では、式VIを有する配位子を含むさらなる化合物を提供し、それには化合物60、61、78、及び79が含まれる。
【0098】
なお別の側面では、式VIIを有する配位子を含む化合物、例えば、化合物24~26、41、及び42を提供する。
【0099】
さらなる側面では、式IIIを有する配位子を含む化合物を提供し、それには、化合物53、54、71、及び72が含まれる。
【0100】
式II、式III、式IV、式V、式VI、及び式VIIから選択される式を有する配位子を含む化合物は、特に安定なドーパント化合物でありうる。
【0101】
さらに、式VIIIを有する配位子を含む化合物も特に安定な化合物でありうる。
【0102】
一つの側面では、CDを含むホモレプティック化合物を提供する。特に、式Iを有する配位子がホモレプティック化合物の配位子である化合物を提供する。本明細書で提供するホモレプティック化合物には、例えば、化合物2~19が含まれる。別の側面では、CDを含むヘテロレプティック化合物を提供する。特に、式Iを有する配位子がヘテロレプティック化合物の配位子である化合物を提供する。本明細書で提供するヘテロレプティック化合物には、例えば、化合物20~42が含まれる。CDを含むヘテロレプティック化合物には、発光性配位子及び非発光性配位子を有する化合物、例えば、2つの発光性配位子とacac配位子とを含む化合物20~26が含まれうる。さらに、CDを含むヘテロレプティック化合物には、全ての配位子が発光性配位子であり、且つその発光性配位子が異なる構造を有する化合物が含まれうる。一つの側面では、CDを含むヘテロレプティック化合物はCDを含む2つの発光性配位子とCDを含まない一つの発光性配位子を含んでいてもよい。例えば、化合物27、33、35~40である。別の側面では、CDを含むヘテロレプティック化合物は、CDを含む1つの発光性配位子とCDを含まない2つの発光性配位子を有していてもよい。例えば、化合物29~32、41、及び42である。CDを含む発光性配位子は、1つのCD基を含んでいてもよく(例えば、化合物29~32)、あるいは配位子はいくつかのCD基を含んでいてもよい(例えば、化合物41及び42は2つのCD置換基をもつ1つの発光性配位子を含む)。なお別の側面では、CDを含むヘテロレプティック化合物は、全ての配位子がCDを含む2種以上の発光性配位子を含んでいてもよい。例えば、化合物28及び34である。
【0103】
さらに、有機発光デバイスを提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置された有機発光層を含む。この有機層は、上述した下記の構造を有する配位子を含む化合物を含んでいる。
【化23】
式Iを有する配位子を含む化合物について好ましいと記載した芳香族環、金属、及び置換基についての選択は、式Iを有する配位子を含む化合物を含むデバイスに用いるためにも好ましい。これらの選択には、金属M、環A及び環B、並びに置換基R、R、A、A、B、B、R、及びRに対する選択が含まれる。
【0104】
A及びBは独立して、5員又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環を表すことができる。好ましくは、Aは、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンからなる群から選択される。好ましくは、Bは、ベンゼン、ピリジン、フラン、ピロール、及びチオフェンからなる群から選択される。A、A、B、及びBは独立にC又はNである。R及びRはモノ、ジ、又はトリ置換を表すことができる。X及びXは独立にC又はヘテロ原子である。R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含む。好ましくは、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCDを含む。R、R、R、及びRは連結していてもよい。R、R、R、及びRは縮合していてもよい。この配位子は40より大きな原子量を有する金属に配位している。好ましくは、この金属はIrである。
【0105】
一つの側面では、配位子は下記の構造を有する。
【化24】
【0106】
一つの側面では、X及びXは独立にC又はNであり、XがNである場合にはRはアリールである。別の側面では、X及びXは独立にC又はNであり、XがNである場合は、Rは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される基でさらに置換されたフェニルであり、その基は少なくとも1つのCD、CD、又はCDを含む。
【0107】
一つの側面では、R及びRの置換基のうち少なくとも1つは、環A、環B、又は環Aもしくは環Bに共役もしくは縮合した環に直接結合したCDである。
【0108】
上で論じたように、置換基R及びRは環A及び/又は環Bに縮合していてもよい。置換基R及びRは任意の置換基であることができ、それには環A及び/又は環Bに連結、縮合している置換基、あるいは環A及び/又は環Bに縮合していない置換基が含まれる。
【0109】
特に、上記デバイスの有機層は、式II~VIIからなる群から選択される配位子を有する化合物を含む。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10の少なくとも1つはCDである。好ましくは、有機層は、化合物2~42からなる群から選択される化合物を含む。
【0110】
さらに、上記デバイスの有機層は、式II~VIIからなる群から選択される配位子を有する化合物を含んでいてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つはCDを含む。
【0111】
さらに、上記デバイスの有機層は、式III~VIIIからなる群から選択される配位子を有する化合物を含んでいてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は連結されていてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は縮合していてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11のうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含むアルキル基を含む。好ましくは、上記有機層は、化合物43~82からなる群から選択される化合物を含む。
【0112】
一つの側面では、上記有機層は式Iの配位子を有する化合物を含む発光層であり、その化合物は発光ドーパントである。この有機層はホストをさらに含んでいてもよい。ホストは下記式:
【化25】
を有することが好ましい。R′、R′、R′、R′、R′、及びR′は、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;R′、R′、R′、R′、R′、及びR′は独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。さらに好ましくは、ホストはH1である。
【0113】
デバイスを含む消費者製品も提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含む。この有機層は、上述した下記構造:
【化26】
を有する配位子を含む化合物を含む。
式Iを有する配位子を含む化合物に対して好ましいと記載した芳香環、金属、及び置換基についての選択は、式Iを有する配位子を含む化合物を含むデバイスにおいて用いるためにも好ましい。これらの選択には、金属M、環A及び環B、並びに置換基R、R、A、A、B、B、R、及びRが含まれる。
【0114】
A及びBは独立に、5員又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環を表す。好ましくは、Aは、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンからなる群から選択される。好ましくは、Bは、ベンゼン、ピリジン、フラン、ピロール、及びチオフェンからなる群から選択される。A、A、B、及びBは独立にC又はNである。R及びRはモノ、ジ、又はトリ置換を表すことができる。X及びXは独立にC又はヘテロ原子である。R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCD、CD、又はCDを含む。好ましくは、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つはCDを含む。R、R、R、及びRは連結していてもよい。R、R、R、及びRは縮合していてもよい。この配位子は40より大きな原子量を有する金属に配位している。好ましくは、この金属はIrである。
【0115】
一つの側面では、X及びXは独立にC又はNであり、且つXがNである場合はRはアリールである。別の側面では、X及びXは独立にC又はNであり、XがNである場合はRはアルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される基で置換されたフェニルであり、その基は少なくとも1つのCD、CD、又はCDを含む。
【0116】
上記消費者製品は、式II~VIIからなる群から選択される構造を有する配位子を有する化合物を含む有機層をさらに含むデバイスを含んでいてもよい。特に、この化合物は、化合物2~42からなる群から選択してよい。
【0117】
さらに、このデバイスの有機層は、式III~VIIIからなる群から選択される配位子を有する化合物を含んでいてもよい。この有機層は、化合物43~82からなる群から選択される化合物を含むことが好ましい。
【0118】
一つの側面では、デバイスを含む特定の消費者製品を提供する。好ましくは、このデバイスは、R及びRの置換基のうち少なくとも1つが、環A、環B、又は環Aもしくは環Bに共役もしくは縮合している環に直接結合したCDである化合物を含む。
【0119】
上で論じたように、置換基R及びRは、環A及び/又は環Bに縮合していてもよい。置換基R及びRは任意の置換基であってよく、それには環A及び/又は環Bに連結、縮合し又は環A及び/環Bに縮合していない置換基が含まれる。
【0120】
有機発光デバイスの特定の層に有用であると本明細書において説明した物質は、デバイス中に存在する広範囲のその他の材料と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書で開示した発光ドーパントは、存在しうる広範囲の種類のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載又は言及した物質は、本明細書に開示した化合物と組み合わせて有用でありうる材料の非限定的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の材料を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0121】
本明細書に記載した物質に加えて及び/又はそれらと組み合わせて、多くの正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト材料、ドーパント材料、励起子/正孔阻止層材料、電子輸送及び電子注入材料をOLEDに用いることができる。本明細書に開示した材料と組み合わせてOLEDにおいて用いることができる材料の非限定的な例を下の表1に列挙している。表1には、非限定的な物質群、各群に対する非限定的な化合物例、及びその物質を開示している文献を挙げてある。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
【表11】
【0133】
【表12】
【0134】
【表13】
【0135】
【表14】
【実施例
【0136】
[試験例]
【0137】
[化合物例]
【0138】
例1.化合物10の合成
【0139】
【化27】
【0140】
2-ブロモ-6-フェニルピリジンの合成
凝縮管、窒素導入口、及び2つの密栓を備えた三ツ口の1L丸底フラスコ中、2,6-ジブロモピリジン(15.3 g, 64.58 mmol)、フェニルボロン酸(7.87 g, 64.58 mmol)、及び炭酸カリウム(17.58 g, 129.16 mmol)を、228 mLのジメトキシエタン及び150 mLの水に添加した。窒素をその混合物に直接15分間バブリングした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.85 g, 1.60 mmol)を添加し、反応混合物を加熱し還流させた。反応は3時間加熱後に完了した。それを室温まで冷やし、水及び酢酸エチルで希釈した。層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。その物質を、2%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーと、続いて150℃で生成物を集めるクーゲルロールを使用しての真空蒸留によって精製した。5.2gの生成物を得た(34%)。
【0141】
【化28】
【0142】
2-フェニル-6-メチル-d3-フェニルピリジンの合成
滴下ロート、窒素導入口、及び密栓を備えた三ツ口の500mL丸底フラスコを、真空下でヒートガンで加熱することによって乾燥させた。冷却した乾燥フラスコに、2-ブロモ-6-フェニルピリジン(11.3 g, 48.27 mmol)と100mLの無水THFを添加した。その溶液をドライアイス/アセトン浴中で冷やし、ヨードメタン-dを滴下により添加した(6 mL, 96.54 mmol)。その溶液を冷たいまま1時間撹拌し、夜通し室温まで温めておいた。それを水で希釈し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗物質をカラムクロマトグラフィーによって2%酢酸エチル/ヘキサンで2回溶出させて精製した。5.8gの2-フェニル-6-メチル-d3-ピリジンを得た(70%)。
【0143】
【化29】
【0144】
ダイマーの合成
2-フェニル-6-メチル(d3)ピリジン(1.65 g, 9.58 mmol)、塩化イリジウム(1.6 g, 4.35 mmol)、及び30mLの2-エトキシエタノールの混合物を、夜通し、窒素下で加熱し還流させた。混合物を室温まで冷やし、赤色固体を濾過した。その固体をメタノール及びヘキサンで洗い、ドラフト内で空気乾燥させた。1.09gの生成物を得て(44%)、そのダイマーを次のステップにおいてそのまま用いた。
【0145】
【化30】
【0146】
トリフラート中間体の合成
ダイマー(1.09 g, 0.956 mmol)及び125mLのジクロロメタンの混合物を250mLの丸底フラスコ中で調製した。その赤色混合物に10mLのメタノール中の銀トリフラート(0.51 g, 2.00 mmol)を添加し、混合物は緑色に変わった。フラスコの内容物を窒素下で室温にて夜通し撹拌した。この混合物をセライトパッドを通して濾過し、そのセライトをジクロロメタンで濯いだ。濾液を溶媒留去して緑黄色固体を得た。その固体を高真空下で乾燥させた。1gの固体を得て(71%)、次の反応にそのまま用いた。
【0147】
【化31】
【0148】
化合物10の合成
50mLのガラスチューブ中に上記トリフラート錯体(1g, 1.3 mmol)及び2-フェニル-6-メチル(d)ピリジン(0.7 g, 4.0 mmol)を添加し、そのチューブを脱気し、窒素で置換した。この方法を繰り返し、チューブを次に200℃にて窒素下で夜通し加熱した。チューブを冷やし、ジクロロメタンを添加して物質を溶かしてフラスコに移した。粗物質を20、40、及び50%ジクロロメタン/ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製し、次に250℃での昇華によって精製した。昇華後に0.58gの生成物を得た(63%)。
【0149】
例2.化合物13の合成
【0150】
【化32】
【0151】
3-メチル-d3-2-フェニルピリジンの合成
3-ブロモ-2-フェニルピリジン(9.9 g, 42 mmol)を100mLのテトラヒドロフランに溶かし、-78℃に冷やした。この溶液にBuLi(26.4 mL, ヘキサン中1.6 M)を滴下して添加した。添加の終了後、反応混合物を-78℃で1時間撹拌した。メチル-dアイオダイド(9.3 g, 63 mmol)を添加し、2時間、室温に温めた。反応を次に水で停止させ、酢酸エチルで抽出した。粗生成物を、溶離液としてヘキサン及び酢酸エチルを用いるカラムによって精製した。2.3gの純粋な生成物が精製後に得られた。
【0152】
【化33】
【0153】
化合物13の合成
3-メチル-d3-2-フェニルピリジン(1.8 g, 10.4 mmol)及びIr(acac)(0.64g, 1.3 mmol)を260℃に、48時間、窒素下で加熱した。室温に冷やした後、ジクロロメタンを添加して生成物を溶かした。このジクロロメタン溶液をつぎにヘキサンに注いだ。沈殿物を集め、シリカゲル栓を通した。0.6gの生成物が得られた。この生成物を1,2-ジクロロベンゼンからの再結晶によってさらに精製した。
【0154】
例3.化合物27の合成
【0155】
【化34】
【0156】
化合物27の合成
上記トリフラート錯体(1.4 g)、4-メチル-2,5-ジフェニルピリジン(1.5 g)、及び50mLのエタノールを混合し、窒素下で夜通し加熱して還流させた。沈殿物を濾過した。粗物質を50%ジクロロメタン/ヘキサンで溶出させるカラムクロマトグラフィーによって精製した。1.1gの所望の生成物が得られた。
【0157】
例4.化合物43の合成
【0158】
【化35】
【0159】
化合物43の合成
上記イリジウムトリフラート錯体(1.0 g, 1.3 mmol)及び2-ビフェニル-4-メチルピリジン(1.0 g, 4 mmol)を100mLの丸底フラスコに入れた。20mLのエタノール及びメタノールの50:50溶液をそのフラスコに添加した。反応混合物を8時間還流させた。反応混合物を次に室温まで冷えるままにしておいた。反応混合物をシリカ栓の上に注ぎ、エタノール、次いでヘキサンで洗った。濾液を捨てた。その栓を次にジクロロメタンで洗い、生成物を溶出した。濾液から溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。生成物を溶離液として50:50のジクロロメタン及びヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを使用してさらに精製して0.5g(50%収率)の生成物を得た。
【0160】
例5.化合物50の合成
【0161】
【化36】
【0162】
化合物50の合成
上記イリジウムトリフラート錯体(6.58 g, 9.2 mmol)及び4-(エチル,d)-2,5-ジフェニルピリジン(6.58 g, 25.0 mmol)を1000mLの丸底フラスコに入れた。140mLのエタノール及びメタノールの50:50溶液をそのフラスコに添加した。反応混合物を8時間還流させた。反応混合物を次に室温まで冷えるままにしておいた。その反応混合物をシリカ栓上に注ぎ、エタノール、次にヘキサンで洗った。濾液は捨てた。その栓を次にジクロロメタンで洗って生成物を溶離させた。濾液から溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。生成物を、溶離液として50:50のジクロロメタン及びヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを使用してさらに精製して3.8g(54%)の生成物を得た。
【0163】
〔デバイス例〕
全てのデバイスは、高真空下(<10-7 Torr)での熱蒸着によって作製した。アノード電極は1200Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは、10ÅのLiFと次に1000ÅのAlからなる。全てのデバイスは作製後直ぐに窒素グローブボックス(<1 ppmのH2O及びO2)中でエポキシ樹脂を用いて封止したガラス蓋で密封し、水分吸収剤をそのパッケージに組み込んだ。
【0164】
本発明の化合物である化合物10、化合物13、及び化合物27が発光ドーパントであり、H1がホストである具体的なデバイスを準備した。全てのデバイス例は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100ÅのE1、正孔輸送層(HTL)として300Åの4,4′-ビス-[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)、発光層(EML)として300Åの、7%又は10%の本発明の化合物でドーピングしたホスト材料H1、阻止層(BL)として50ÅのH1、及びETLとして400ÅのAlq(トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム)、からなる有機積層体を有する。
【0165】
比較例1~5は、EML及びBLに用いた材料が異なること以外は上記デバイス例と同様に作製した。特に、E1、E2、又はE3を比較例1及び2、3、4及び5のそれぞれのEMLに用いられる発光ドーパントとして用いた。さらに、HPTは比較例3においてBL材料だった。
【0166】
本明細書で用いるように、以下の化合物は以下の構造を有する。
【0167】
【化37】
【0168】
OLEDに用いるための具体的な化合物を提供する。特に、その物質は、そのようなデバイスの発光層(EML)中の発光ドーパントとして用いることができる。本明細書で提供した化合物は、デバイスにおいて、色、効率、及び寿命を向上させるために用いることができる。
【0169】
【表15】
【0170】
【表16】
【0171】
デバイス例1~6より、発光ドーパントとして本明細書において提供したCD化合物は長い寿命をもたらすことがわかる。特に、提供した化合物を含むデバイス例の寿命RT80%(初期輝度Lが、40mA/cmの一定電流密度で室温にてその値の80%まで低下する時間として定義される)は、対応するCH置換された化合物を含む比較例よりも明らかに高い。特に、デバイス例3及び4に用いた化合物13は、対応するCH置換された化合物を用いた比較例1及び3に対する165時間及び155時間というRT80%と比較して、それぞれ204時間及び220時間のRT80%をもたらした。
【0172】
上のデータはまた、本明細書において提供したヘテロレプティックCD3含有化合物は、向上した寿命及び効率を有するデバイスを提供しうることを実証している。特に、化合物27を含むデバイス例5及び6は、対応するCH置換された化合物(E3)を含む比較例4及び5よりもより良い寿命及び効率をもたらす。特に、化合物27は、対応するメチル置換化合物E3に対する116時間及び128時間のRT80%と比較して174時間及び184時間のRT80%をもたらした。
【0173】
さらに、メチル-d3置換された化合物は、向上した効率をもつデバイスをもたらした。特に、化合物10、13、及び27は、対応するCH置換された化合物を用いる比較例の作動電圧よりも低い作動電圧を達成した。具体的には、化合物10、13、及び27は、6.4V、5.8V、及び5.1Vと比較して、それぞれ5.2V、5.6V、及び4.9Vの作動電圧(V)をもたらした。
【0174】
上のデータは、本明細書で提供したメチル-d3置換された化合物は、燐光OLEDのための優れた発光ドーパントでありうることを示唆している。これらの化合物は、向上した色、効率、及び寿命をもつデバイスを提供する。
【0175】
本明細書で用いるように、以下の化合物は以下の構造を有する。
【化38】
【0176】
【表17】
【0177】
【表18】
【0178】
デバイス例7及び8からわかるように、化合物43はE4に対して同程度の効率及び色を有し、デバイス寿命はずっと長かった。デバイス例7は374時間のRT80%を示し、比較例6は212時間の寿命を示した。デバイス例8は365時間のRT80%を示し、比較例7は283時間の寿命を示した。このデバイスデータは、提供したメチル-d3置換された化合物はデバイス寿命を向上させうることを示している。
【0179】
本明細書に記載した様々な態様は例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、本発明の思想から離れることなく別の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、これは当業者に明らかなとおりである。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定することを意図していないことが理解される。
図1
図2
図3
図4