(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの運転方法、および、ガスタービンコジェネシステムの改造方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/40 20060101AFI20241118BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20241118BHJP
F02C 6/18 20060101ALI20241118BHJP
F02C 3/30 20060101ALI20241118BHJP
F02C 9/48 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
F02C9/40 A
F02C7/22 A
F02C6/18 A
F02C3/30 C
F02C9/48
(21)【出願番号】P 2022189714
(22)【出願日】2022-11-29
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】麻尾 孝志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 陵
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173572(JP,A)
【文献】特開2018-17480(JP,A)
【文献】特開2013-217251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/40
F02C 7/22
F02C 6/18
F02C 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
前記燃焼器に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備と、
単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料を供給するための第2燃料供給設備と、
前記タービンから排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を蒸気需要体に供給するための蒸気供給ラインと、
前記蒸気供給ラインから抽気した前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側及び前記ヘッドエンドよりも前記タービン側の双方に供給するための蒸気抽気ラインと、
前記蒸気抽気ラインによる前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備および前記第2燃料供給設備を制御するための燃料制御部と、
を備えるガスタービンコジェネシステム。
【請求項2】
前記燃料制御部は、前記圧縮機における圧力比が許容上限圧力比未満となる条件を充足させながら、前記第2燃料の供給量を増やすように構成される
請求項1に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項3】
前記圧縮機の前記圧力比を計測するための空気圧力計測器の計測結果に基づいて算出される前記圧力比が前記許容上限圧力比以下であるかを判定するための圧力比判定部をさらに備え、
前記燃料制御部は、前記圧力比が前記許容上限圧力比を上回ると判定された場合、前記第2燃料の供給量を低減させるための第2燃料低減制御部を含む
請求項2に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項4】
前記蒸気需要体への前記蒸気の供給量を増加させるための需要体蒸気増加指令によって示される量の前記蒸気が供給されていると判定された後に計測される前記ガスタービンの出力と、前記ガスタービンの目標出力とに基づいて、前記第1燃料の供給量及び前記第2燃料の供給量を取得する燃料供給量取得部をさらに備え、
前記燃料制御部は、前記燃料供給量取得部によって取得された前記供給量だけ前記第1燃料及び前記第2燃料が供給されるよう、前記第1燃料供給設備及び前記第2燃料供給設備を制御するように構成される
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項5】
前記排熱回収ボイラの前記排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収システムと、
前記水回収システムによって回収された回収水を、前記排熱回収ボイラに供給するためのボイラ給水を貯める補給水タンクと、
をさらに備える
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項6】
前記第1燃料は、天然ガス、オフガス、または、水素ガスを主成分とする水素ガス燃料のいずれかである
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項7】
前記第2燃料は、アンモニア又はメタノールのいずれかを主成分とする燃料である
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項8】
ガスタービンコジェネシステムの運転方法であって、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
前記燃焼器に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備と、
単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料を供給するための第2燃料供給設備と、
前記タービンから排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を蒸気需要体に供給するための蒸気供給ラインと、
前記蒸気供給ラインから抽気した前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側及び前記ヘッドエンドよりも前記タービン側の双方に供給するための蒸気抽気ラインと、
を含み、
前記蒸気抽気ラインによる前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備及び前記第2燃料供給設備を制御するための燃料制御ステップを備える
ガスタービンコジェネシステムの運転方法。
【請求項9】
ガスタービンコジェネシステムの改造方法であって、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
前記燃焼器に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備と、
前記タービンから排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を蒸気需要体に供給するための蒸気供給ラインと、
前記蒸気供給ラインから抽気した前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側及び前記ヘッドエンドよりも前記タービン側の双方に供給するための蒸気抽気ラインと、
を含み、
前記第1燃料が専ら燃焼するように構成される前記燃焼器を、前記第1燃料と、単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料とが混焼するように構成される燃焼器に交換する燃焼器交換工程と、
前記第2燃料を供給するための第2燃料供給設備を追設する燃料供給設備追設工程と、
燃料として専ら前記第1燃料が供給されるように前記第1燃料供給設備を制御するためのコントローラを、前記蒸気抽気ラインによる前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備および前記第2燃料供給設備を制御するためのコントローラに変更するコントローラ変更工程と、
を備える
ガスタービンコジェネシステムの改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排熱回収ボイラで生成された蒸気を蒸気需要体とガスタービンとに供給するガスタービンコジェネシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示されるガスタービンシステムでは、ガスタービンの燃焼器に、アンモニアガスおよび水蒸気を含む混合気体と、天然ガスなどの燃料とが供給される。アンモニアガスは、ガスタービンシステムの排熱回収ボイラから排出されるタービン用の駆動媒体流体である排ガスを熱源にして、被処理液から生成される。排熱回収ボイラで生成される蒸気は、蒸気需要体としての蒸気利用設備に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のガスタービンシステムにおいて、ガスタービンの出力の向上を目的に、排熱回収ボイラで生成された蒸気の一部をタービンの入口側に供給することが考えられる。しかしながら、蒸気需要体に供給する蒸気の量を増大させると、タービンに供給する蒸気の供給量が減少し、ガスタービンの出力が低下してしまう。その低下を補う方法として、燃料の供給量を増加して駆動媒体流体の温度を上げることが考えられる。しかし、燃焼器やタービン翼などの高温部品においてはその高温強度/耐久性の点からその温度には限界があり、また駆動媒体流体の高温化によりNOxが増加する。このため燃料の供給量を増加させることには限界がある。
【0005】
本開示の目的は、蒸気需要体に供給する蒸気量を増大させても、ガスタービンの出力を維持できるガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの運転方法、および、ガスタービンコジェネシステムの改造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
前記燃焼器に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備と、
単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料を供給するための第2燃料供給設備と、
前記タービンから排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を蒸気需要体に供給するための蒸気供給ラインと、
前記蒸気供給ラインから抽気した前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側及び前記ヘッドエンドよりも前記タービン側の双方に供給するための蒸気抽気ラインと、
前記蒸気抽気ラインによる前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備および前記第2燃料供給設備を制御するための燃料制御部と、
を備える。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態では、
ガスタービンコジェネシステムの運転方法であって、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
前記燃焼器に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備と、
単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料を供給するための第2燃料供給設備と、
前記タービンから排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を蒸気需要体に供給するための蒸気供給ラインと、
前記蒸気供給ラインから抽気した前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側及び前記ヘッドエンドよりも前記タービン側の双方に供給するための蒸気抽気ラインと、
を含み、
前記蒸気抽気ラインによる前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備および前記第2燃料供給設備を制御するための燃料制御ステップを備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態では、
ガスタービンコジェネシステムの改造方法であって、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
前記燃焼器に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備と、
前記タービンから排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を蒸気需要体に供給するための蒸気供給ラインと、
前記蒸気供給ラインから抽気した前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側及び前記ヘッドエンドよりも前記タービン側の双方に供給するための蒸気抽気ラインと、
を含み、
前記第1燃料が専ら燃焼するように構成される前記燃焼器を、前記第1燃料と、単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料とが混焼するように構成される燃焼器に交換する燃焼器交換工程と、
前記第2燃料を供給するための第2燃料供給設備を追設する燃料供給設備追設工程と、
燃料として専ら前記第1燃料が供給されるように前記第1燃料供給設備を制御するためのコントローラを、前記蒸気抽気ラインによる前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備および前記第2燃料供給設備を制御するためのコントローラに変更するコントローラ変更工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、蒸気需要体に供給する蒸気量を増大させても、ガスタービンの出力を維持できるガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの運転方法、および、ガスタービンコジェネシステムの改造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るガスタービンコジェネシステムを示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る燃焼器を示す概略図である。
【
図3】一実施形態に係るガスタービンのT-S線図である。
【
図4】一実施形態に係る水回収システムを示す概略図である。
【
図5】一実施形態に係るコントローラを示す概略図である。
【
図6】一実施形態に係るコジェネシステム制御処理のフローチャートである。
【
図7】
図6に続く、コジェネシステム制御処理のフローチャートである。
【
図8】一実施形態に係るコジェネシステムの改造方法を示すフローチャートである。
【
図9】一実施形態に係る改造前のコジェネシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
<ガスタービンコジェネシステム100の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム100(以下、「コジェネシステム100」という場合がある)を示す概略図である。例えば発電プラントであってもよいコジェネシステム100は、ガスタービン9と排熱回収ボイラ14とを備える。ガスタービン9は、大気6から圧縮空気7を生成するための圧縮機1と、圧縮空気7中の酸素を酸化剤として燃料を燃焼させるとともに圧縮空気7を高温化して燃焼ガス12を生成するための燃焼器3と、燃焼器3から排出される燃焼ガス12を駆動源として回転するためのタービン2と、タービン2に連結される発電機5とを備える。燃焼器3に供給される燃料は第1燃料と第2燃料を含む(詳細は後述する)。排熱回収ボイラ14は、タービン2から排出される排ガス13から回収した熱を利用してボイラ給水から蒸気を生成するように構成される。なお、ボイラ給水は排熱回収ボイラ14に供給されるための水である。
【0013】
コジェネシステム100は、排熱回収ボイラ14から排出される蒸気を蒸気需要体10に供給するための蒸気供給ライン21を備える。蒸気供給ライン21は、排熱回収ボイラ14と蒸気需要体10とに接続される蒸気配管21Aと、蒸気配管21Aに設けられる蒸気流調弁21Bとを含む。蒸気流調弁21Bの開度が後述のコントローラ90により制御されることで、蒸気需要体10に供給される蒸気の量である需要体蒸気供給量は制御される。なお、蒸気需要体10は例えば蒸気タービンである。蒸気需要体10は、複合発電プラントの蒸気タービン、或いは産業用プロセス装置などであってもよい。さらに、コジェネシステム100は、蒸気供給ライン21から抽気した蒸気を燃焼器3に供給するための蒸気抽気ライン130を備える。蒸気抽気ライン130の構成の詳細は後述する。
【0014】
本開示の必須の構成要素ではないが、コジェネシステム100は、排熱回収ボイラ14から排出される排ガス13に含まれる水分を回収するための水回収システム40と、水回収システム40から回収した水分を含む回収水をボイラ給水として貯める補給水タンク17と、補給水タンク17にボイラ給水を供給するための給水ライン15と、補給水タンク17と排熱回収ボイラ14とに接続される給水ライン19と、給水ライン19に設けられる給水ポンプ18とを備える。給水ポンプ18が駆動すると、補給水タンク17に貯留されるボイラ給水は給水ライン19を流れて排熱回収ボイラ14に供給される。排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の温度は高い方が好ましい。排熱回収ボイラ14が蒸気を生成するために必要とする熱量が低減し、コジェネシステム100の効率は向上するからである。
【0015】
本開示の必須の構成要素ではないが、コジェネシステム100は、排熱回収ボイラ14から水回収システム40までの排ガス13の供給ラインである排ガス供給ライン57と、排ガス供給ライン57から分岐して設けられる排気ライン29と、排気ライン29に設けられる排気ダンパ31とを備える。排気ライン29を流れる排ガス13は、排気塔30から外部に排出される。本開示の一実施形態では、コジェネシステム100から水回収システム40に排ガス13が供給される場合、排気ダンパ31が閉止されて、排気ライン29には排ガス13が流れない。
【0016】
<燃焼器3の概略構成>
図2は、本開示の一実施形態に係る燃焼器3を示す概略図である。燃焼器3は、筒状に形成される燃焼器ケーシング23と、燃焼器ケーシング23の一端部に設けられるヘッドエンド24と、ヘッドエンド24に設けられる燃料ノズル25と、未燃の空気と既燃の燃焼ガス12を隔てる円筒状の燃焼器ライナ26と、燃焼器ライナ26の下流側に連結した燃焼器尾筒27とを備える。圧縮空気7は燃焼器ケーシング23に供給される。燃焼器ケーシング23内において、圧縮空気7は、燃焼器ライナ26の外側に形成される環状空間を通って、ヘッドエンド24側に向かって流れる。環状空間を流れる圧縮空気7は、燃焼器ライナ26の内部に流入し、燃料ノズル25から燃焼器ライナ26の内部に噴射される燃料と混ざる。燃焼器ライナ26の内部で燃料は燃焼し、火炎28が燃焼器ライナ26の内部で発生する。燃焼器ライナ26の内部で発生した燃焼ガス12は、燃焼器尾筒27から排出されてタービン2に流入するようになっている。
【0017】
<燃焼器3の燃料の供給系統>
図1に戻り、燃焼器3に供給される燃料は第1燃料と第2燃料を含む。コジェネシステム100は、燃焼器3に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備51と、燃焼器3に第2燃料を供給するための第2燃料供給設備52とを備える。第1燃料供給設備51は、第1燃料の供給源である第1供給源53と、第1燃料を第1供給源53から燃焼器3の燃料ノズル25(
図2参照)に導くための第1配管151と、第1配管151に設けられる第1燃料流調弁153とを含む。同様に、第2燃料供給設備52は、第2燃料の供給源である第2供給源54と、第2供給源54から燃料ノズル25に第2燃料を導くための第2配管152と、第2配管152に設けられる第2燃料流調弁154とを含む。第1燃料流調弁153の開度と第2燃料流調弁154の開度とが後述のコントローラ90によって制御されることで、第1燃料の供給量である第1燃料供給量と第2燃料の供給量である第2燃料供給量とが調整される。つまり、コントローラ90は、燃焼器3における第2燃料混焼率を調整可能である。第2燃料混焼率は、燃焼器3に供給される燃料のうち第2燃料が占める割合である。当該割合は、熱量ベースまたは重量ベースで算出される値である。
【0018】
第2燃料の単位質量における熱量は第1燃料のそれよりも低い。第1燃料は、高カロリーな発熱量の燃料ガスであって、例えば天然ガス、オフガス、または、水素ガスを主成分とする水素ガス燃料のいずれかである。第2燃料は、第1の燃料の40%程度の発熱量を有する高水素化合物の中カロリーな発熱量の燃料ガスであって、例えばアンモニアまたはメタノールのいずれかを主成分とする燃料である。より好ましくは、第1燃料は天然ガスまたはオフガスであり、第2燃料はアンモニアガスを主成分とする燃料である。この場合、第2燃料混焼率はいわゆるアンモニア混焼率である。
【0019】
なお前述した課題解決のために、アンモニアガス専焼のガスタービンを使用するか、または、専ら第1燃料を燃焼させるためのガスタービンをアンモニアガス専焼のガスタービンに改造することも課題解決のための選択肢としてありうる。しかしながら現時点では燃料コストの点で、本開示の実施形態で対処することが有利である。
【0020】
図3は、本開示の一実施形態に係るガスタービン9のT-S線図である。同図のグラフにおいて、実線は第1燃料専焼時の運転サイクル図でであり、破線は第2燃料混焼率の高い運転時のサイクル図を示す。実線で示すサイクルと破線で示すサイクルとでは一部重なる範囲がある。同図で示される通り、第2燃料混焼率が上昇する方が、サイクル図の面積が小さいため、ガスタービン9の運転効率は向上することが了解される。
【0021】
なお、第2燃料が例えばアンモニアのような燃焼に伴って発生する水の量が第1燃料と比べて多い燃料である場合、燃焼により発生する水の蒸発潜熱により燃焼ガス12の温度が大きく下がるため、タービン2の入口温度の上昇を抑制することができる。
図3におけるΔTは、タービン2の入口温度(タービン入口温度)の低下量を示す。このことから、第1燃料供給量の許容上限供給量よりも、第2燃料供給量の許容上限供給量の方が高いことが了解される。燃料の許容上限供給量は、ガスタービン入口温度がタービン2の耐熱温度を上回るのを回避するための燃料供給量である。第2燃料は、発熱量が第1燃料の発熱量の40%程度となる水素化合物(高水素化合物)であるため、第1燃料と同等の燃焼器投入エネルギーを第2燃料で達成するためには、第2燃料の専焼時に質量流量で第1燃料の2.5倍の流量が必要であり、燃焼生成水分量もこの質量流量の変化に対応して増加する。
【0022】
<蒸気抽気ライン130の構成>
図1、
図2で示される蒸気抽気ライン130は、蒸気供給ライン21から抽気した蒸気を燃焼器3におけるヘッドエンド24側および燃焼器3におけるタービン2側の双方に供給するように構成される。燃焼器3におけるヘッドエンド24側とは、燃焼器ケーシング23において火炎28が形成される領域よりも、燃焼ガス流れ方向において上流側を示す。また、燃焼ガス流れ方向は燃焼器ライナ26において燃焼ガス12が流れる方向を示し、矢印Cによって例示される。さらに、燃焼器3におけるタービン2側とは、燃焼器ケーシング23において火炎28が形成される領域よりも燃焼ガス流れ方向において下流側を示す。
【0023】
図2に示すように、蒸気抽気ライン130は、蒸気供給ライン21の蒸気配管21Aから抽気した蒸気を燃焼器3におけるヘッドエンド24側に供給するための上流側蒸気ライン131と、抽気した蒸気を燃焼器3におけるタービン2側に供給するための下流側蒸気ライン132とを含む。
【0024】
上流側蒸気ライン131は、抽気した蒸気をヘッドエンド24と燃焼器ライナ26との間に供給するための上流側蒸気配管131Aと、上流側蒸気配管131Aに設けられる上流側蒸気流調弁131Bとを有する。上流側蒸気流調弁131Bの開度が後述のコントローラ90によって制御されることで、上流側蒸気配管131Aによって燃焼器3に導かれる蒸気の流量である上流側蒸気供給量は調整される。上流側蒸気供給量が増えるほど、火炎帯の温度を下げる効果が大きいため、燃焼器3において発生する窒素酸化物の量は低下する。
【0025】
下流側蒸気ライン132は、抽気した蒸気を燃焼器ライナ26の下流側に供給するための下流側蒸気配管132Aと、下流側蒸気配管132Aに設けられる下流側蒸気流調弁132Bとを有する。下流側蒸気流調弁132Bの開度が後述のコントローラ90によって制御されることで、下流側蒸気配管132Aによって燃焼器3に導かれる蒸気の流量である下流側蒸気供給量は調整される。燃焼器への蒸気供給量すなわち上流側蒸気供給量と下流側蒸気供給量の合計量である合計蒸気供給量が増えるほど、タービン2に流入して仕事をする蒸気の流量が増え、ガスタービン9の出力である発電機5の発電量は増大する。反対に合計蒸気供給量が減ると、燃焼器3における燃料供給状態が変わらないのであれば、ガスタービン9の出力は減少する。
【0026】
図1に戻り、本開示の必須の構成要素ではないが、蒸気抽気ライン130は、蒸気供給ライン21から抽気された蒸気の温度を下げるための減温器22をさらに備える。蒸気が流れる方向において上流側蒸気配管131Aおよび下流側蒸気配管132Aよりも上流側に配置される減温器22は、例えば、排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の一部が冷水として流入するように構成されており(矢印B参照)、該冷水が減温器22の内部で噴射されることによって蒸気は冷まされる。冷まされた蒸気は、上流側蒸気配管131Aおよび下流側蒸気配管132Aを流れる。
【0027】
<コジェネシステム100の計測器>
図1で例示されるコジェネシステム100は、発電機5の発電量を計測するための発電機出力計測器65、圧縮機1の入口の空気圧力を計測するための圧縮機入口空気圧力計測器62、圧縮機1の出口の空気圧力を計測するための圧縮機出口空気圧力計測器63、需要体蒸気供給量を計測するための蒸気流量計66、上流側蒸気供給量を計測するための上流側蒸気流量計67、下流側蒸気供給量を計測するための下流側蒸気流量計68、タービン2の出口における窒素酸化物の量を計測するためのタービン出口NOx計測器69、および、排熱回収ボイラ14から排出される排ガス13に含まれる窒素酸化物の量を計測するための排熱回収ボイラ出口NOx計測器70を備える。これらの計測器の計測結果はいずれも、コジェネシステム100の構成要素である後述のコントローラ90に送られるようになっている。以下では、圧縮機入口空気圧力計測器62と圧縮機出口空気圧力計測器63を総称して「空気圧力計測器61」という場合があり、窒素酸化物を「NOx」という場合がある。排熱回収ボイラ出口NOx計測器70とタービン出口NOx計測器69はNOxの濃度を計測するように構成される。
【0028】
<水回収システム40>
図4は本開示の一実施形態に係る水回収システム40を示す概略図である。水回収システム40の概要は以下の通りである。水回収システム40の構成要素である水回収装置33は、排ガス供給ライン57によって導かれる排ガス13と冷媒水とを気液接触させることで排ガス13中の水分を回収水として回収するように構成される。より詳細な一例として、水回収装置33は、排ガス13と冷媒水とが流入する熱交換容器135と、熱交換容器135の内部で冷媒水を散水するための散水装置34と、熱交換容器135の内部で散水装置34の下方に位置する充填物35とを含む。熱交換容器135には、排ガス供給ライン57によって導かれる排ガス13が流入する。散水装置34によって散水される冷媒水は充填物35に付着し、熱交換容器135に流入する排ガス13と熱交換を行う。これにより、排ガス13の水分が凝縮する。凝縮した水分と熱交換を終えた冷媒水とを含む回収水は落下し、熱交換容器135の下部を構成する貯水槽136に貯まる。
【0029】
水回収システム40は、水回収装置33の貯水槽136から排出される回収水を冷却するための回収水冷却装置110と、水回収装置33の貯水槽136から排出される回収水を回収水冷却装置110に導くための回収水排出ライン39と、回収水冷却装置110から排出される冷却された回収水を冷媒水として熱交換容器135に導くための回収水供給ライン42とをさらに備える。本例の回収水冷却装置110は、例えば海水などであってもよい冷却水によって、回収水を冷却するように構成される。回収水冷却装置110に冷却水を供給するための冷却水供給ライン41には冷却水供給ポンプ55が設けられる。
【0030】
なお、水回収システム40は、回収水を補給水タンク17に導くための給水ライン4をさらに備え、給水ライン4は、高温給水ライン44と低温給水ライン47とを含む。高温給水ライン44は、回収水排出ライン39に接続されており、回収水排出ライン39から取り出された回収水を補給水タンク17に導くように構成される。回収水排出ライン39から取り出される回収水は、排ガス13から回収された熱を有するため、比較的高い温度を有する。低温給水ライン47は、回収水供給ライン42に接続されており、回収水供給ライン42から取り出された回収水を補給水タンク17に導くように構成される。回収水供給ライン42から取り出される回収水は、回収水冷却装置110による冷却処理が施されているため、比較的低い温度を有する。
【0031】
低温給水ライン47には、水回収システム40の構成要素である水処理装置46が設けられている。水処理装置46は、低温給水ライン47を流れる回収水に対して例えば硫黄などの不純物を除去する処理を施すように構成される。不純物は燃焼器3(
図1参照)での燃焼に伴って生じ、排ガス13に混入することがある。この不純物の少なくとも一部は、水回収装置33での排ガス13と冷媒水との熱交換により、回収水に溶解する。水処理装置46が、回収水に含まれる不純物を除去することで、補給水タンク17に貯留されるボイラ給水に不純物が含まれることが抑制される。一般に、処理される水の温度が低い方が、水処理装置46における不純物除去の処理能力は向上する。回収水の温度が高い場合、水処理装置46を構成するイオン交換樹脂146が損傷する可能性があり、不純物除去の処理能力が低下する虞がある。
【0032】
高温給水ライン44には高温給水開閉弁48が設けられ、低温給水ライン47には低温給水開閉弁45が設けられており、いずれの開閉弁も上述のコントローラ90によって制御される。例えば、オフガスなどであってもよい第1燃料の燃焼器3への供給量が多い場合(即ち、第2燃料混焼率が低い場合)であって、排ガス13に混入する硫黄成分が許容値より高く、かつ許容上限以下で存在する場合、コントローラ90は、高温給水開閉弁48を閉止し、低温給水開閉弁45を開放する。これにより、不純物の除去処理を要する低温の回収水が、低温給水ライン47に設けられる水処理装置46を経由して、補給水タンク17に流入する。よって、給水ライン19および排熱回収ボイラ14などのコジェネシステム100を構成する機器に不純物が付着するのが回避され、コジェネシステム100の劣化を抑制できる。他方で、第2燃料混焼率が比較的高い場合、即ち、排ガス13に混入する硫黄成分が許容値以下の場合は、コントローラ90は、高温給水開閉弁48を開放し、低温給水開閉弁45を閉止する。これにより、不純物の除去処理を要さない高温の回収水が、高温給水ライン44を経由して補給水タンク17に流入する。補給水タンク17から排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の温度を高くできるので、コジェネシステム100の効率は向上する。このように、本例の水回収システム40では、第2燃料混焼率に応じて、補給水タンク17に送る回収水の供給ラインを切り替えることが可能になる。
【0033】
<コントローラ90の基本構成>
図5は、本開示の一実施形態に係るコントローラ90を示す概略図である。コントローラ90はコンピュータによって構成されており、プロセッサ、メモリ、及び外部通信インタフェースを備える。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、又はこれらの組み合わせなどである。他の実施形態に係るプロセッサは、PLD、ASIC、FPGA、またはMCU等の集積回路により実現されてもよい。メモリは、各種データを一時的または非一時的に記憶するように構成され、例えば、RAM、ROM、またはフラッシュメモリの少なくとも1つによって実現される。メモリにロードされたプログラムの命令にしたがって、プロセッサは各種制御処理を実行する。また、コントローラ90は、コジェネシステム100を構成する複数の制御盤の一つを構成するDCS盤であってもよい。
【0034】
このようなハードウェア構成を有するコントローラ90は、蒸気需要体10の出力向上を目的に需要体蒸気供給量を増加させるための制御を実行する。さらにこのとき、コントローラ90は、燃焼器3への上流側蒸気供給量と下流側蒸気供給量の合計量である合計蒸気供給量を低減させるための制御、および、第2燃料混焼率を増大させるための制御を併せて実行する。これらの制御では、コントローラ90が蒸気流調弁21B、上流側蒸気流調弁131B、下流側蒸気流調弁132B、第1燃料流調弁153、および、第2燃料流調弁154に制御信号を送る。このような制御を実行するためのコントローラ90の機能構成は以下の通りである。
【0035】
コントローラ90は、需要体蒸気供給量を増加させる需要体蒸気増加指令を取得するための需要体指令取得部94と、蒸気供給ライン21を制御するための蒸気供給ライン制御部95と、蒸気抽気ライン130を制御するための蒸気抽気ライン制御部96と、ガスタービン9の出力指令に基づいて燃焼器3に供給すべき燃料の供給量を取得するための燃料供給量取得部93を備える。
【0036】
蒸気供給ライン制御部95は、需要体蒸気増加指令が示す需要体蒸気供給量が実現されるよう蒸気供給ライン21の蒸気流調弁21Bの開度を増大させる制御を実行する。需要体蒸気供給量の増大に伴って、ガスタービン9に供給される蒸気の供給量を減らす必要があり、蒸気抽気ライン制御部96は、蒸気抽気ライン130によって導かれる蒸気の流量(供給量)を低減するように構成される。本例の蒸気抽気ライン制御部96は、上流側蒸気流調弁131Bの開度を制御するための上流側蒸気制御部81と、下流側蒸気流調弁132Bの開度を制御するための下流側蒸気制御部82とを含む。上流側蒸気流調弁131Bからの蒸気は、主に燃焼器3でのNOx発生を抑制することを目的としており、ガスタービン9の増出力は副次的な効果である。一方、下流側蒸気流調弁132Bからの蒸気の用途は、専ら増出力用である。本実施形態では、蒸気流調弁21Bの開度は、NOx発生抑制の観点より開度を保持し、下流側蒸気流調弁132Bの開度を減少させる。アンモニア燃焼によりFuel NOx値が増加した場合は、必要に応じて上流側蒸気流調弁131Bの開度を制御し、合計蒸気供給量は減少させつつも上流側蒸気流調弁131Bの開度を増加させる場合もある。
【0037】
燃料供給量取得部93によって取得されるガスタービン9の出力指令について説明する。本例では、需要体蒸気供給量の増大に伴い蒸気抽気ライン130による蒸気の抽気量が減少した後もガスタービン9の出力が維持されるような出力指令が、燃料供給量取得部93によって取得される。このような出力指令は、第1燃料専焼時の燃焼器投入エネルギーと同等になるように第1燃料の供給量を減少させ、かつ第2燃料の供給量を増大させて、第2燃料混焼率を増大させるための指令である。第2燃料の単位質量当たりの発熱量は第1燃料の単位質量当たりの発熱量と比べて低く(40%程度)、また第2燃料は高水素化合物なので、タービン入口温度が耐熱温度を超えるのを避けつつ、第2燃料供給量を増大させることができる。
【0038】
さらに、コントローラ90は、燃料供給量取得部93によって取得された燃料供給が実現されるよう第1燃料供給設備51および第2燃料供給設備52をそれぞれ制御するための第1燃料制御部91および第2燃料制御部92を備える。本開示の一実施形態では、蒸気抽気ライン130による蒸気の抽気量の減少に伴って、第1燃料制御部91は第1燃料流調弁153の開度を減少させる制御を実行し、第2燃料制御部92は第2燃料流調弁154の開度を増大させる制御を実行する。
【0039】
需要体蒸気供給量を増大させることで蒸気需要体10の出力を向上させるためには、蒸気抽気ライン130の抽気量を減少させる必要がある。上記構成によれば、この場合、第1燃料制御部91は第1燃料供給量を減少させ、第2燃料制御部92は第2燃料供給量を増大させて、ガスタービン9の出力を維持する。タービン入口温度が既定の温度を超えないように、すなわちタービン入口から後流に位置するタービン翼などの高温部品の耐熱温度を超えないように第2燃料は供給される必要があるが、第2燃料の単位質量当たりの発熱量が低いので、第2燃料の許容上限供給量は第1燃料の許容上限供給量に比べて高い。つまり、第2燃料の供給によって、ガスタービン9の出力の維持は十分に可能になるので、需要体蒸気供給量を従来よりも増大させることができる。以上より、需要体蒸気供給量を増大させても、ガスタービン9の出力を維持できるコジェネシステム100が実現される。
【0040】
また、第1燃料が、天然ガス若しくはオフガスなどのガス燃料、または、水素ガスを主燃料とする水素ガス燃料となる実施形態によれば、第1燃料の専焼がなされる場合および第1燃料が重油などの油燃料である場合に比べて、炭素排出量を低減することができる。
【0041】
また、第2燃料が、アンモニアまたはメタノールのいずれかを主成分とする燃料である実施形態によれば、第2燃料の燃焼によって生じる水の蒸発潜熱によって、燃焼器出口温度の上昇を抑制できる。第1燃料専焼時の燃焼器投入エネルギーと同等になるように第1燃料供給量を減少させ、かつ第2燃料供給量を増大させてもタービン入口温度の上昇を抑制できるので、第2燃料の許容上限供給量を高めることができる。従って、蒸気抽気ライン130による蒸気の抽気量をより低減することができ、需要体蒸気供給量をさらに増大させることができる。
特に、第2燃料としてアンモニアを第1燃料に混焼する場合、アンモニアは第1燃料と比べ発熱量が40%程度と低い水素化合物(高水素化合物)であるため、第2燃料流量を増加させても燃焼温度の上昇を抑制でき、第2燃料の許容上限供給量をより高めることが可能となり、さらなる出力維持または増出力運転が可能となる。一方、燃料用アンモニアの価格が現状高価であることを踏まえると、熱電可変型ガスタービンコジェネの蒸気需要体側の蒸気増加、出力維持運用においては、アンモニアタンクに燃料用アンモニアを貯蔵し、オンサイト発電が可能なスポット運用になると想定される。なお今後、水素キャリア、脱炭素化燃料の普及で燃料用アンモニアの価格低減も期待でき、各ユーザは燃料転換の意向を示している。
【0042】
蒸気抽気ライン130によって蒸気がガスタービン9に供給されるため、ガスタービン9の排ガス13に含まれる水分が増大する。この点、コジェネシステム100が水回収システム40と補給水タンク17を備える実施形態によれば、水回収システム40によって回収された水分を排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水として再利用でき、コジェネシステム100は造水プラントとしても機能することができる。水回収システム40での回収水は、排ガス13中の水分(燃焼生成水分、蒸気噴射水分)である。蒸気噴射水分は、回収され再利用されるという効果があり、また燃焼生成水分は造水効果がある。
【0043】
<コントローラ90の追加的な機能構成>
図5で示される第2燃料制御部92は、圧縮機1における圧力比が、圧縮機1におけるサージングを回避するための許容上限圧力比を下回る条件を充足させながら、第1燃料供給量を減らしかつ第2燃料供給量を増やすように構成されてもよい。より詳細には、圧縮機1における圧力比が許容上限圧力比以下となるよう、第1燃料制御部91は第1燃料流調弁153の開度を減らし、第2燃料制御部92は第2燃料流調弁154の開度を増大させてもよい。上記構成によれば、圧縮機1のサージングを回避しつつ、ガスタービン9の出力を維持することができる。また、蒸気抽気ライン130による蒸気の抽気量を従来よりも低減させることができる分、圧縮機1の出口側の圧力を従来よりも低減させることができるので、圧縮機1のサージングをより確実に回避することが可能になる。
【0044】
本開示の必須の構成要素ではないが、コントローラ90は圧力比判定部97をさらに備え、第2燃料制御部92は第2燃料低減制御部99を含む。圧力比判定部97は、圧縮機1の圧力比を計測するための上述した空気圧力計測器61の計測結果に基づいて算出される圧力比が、許容上限圧力比以下であるかを判定するように構成される。本例の圧力比判定部97は、圧縮機入口空気圧力計測器62と圧縮機出口空気圧力計測器63の計測結果に基づいて圧力比を算出する。第2燃料低減制御部99は、圧力比が許容上限圧力比を上回ると判定された場合、第2燃料供給量を低減させる制御を実行するように構成される。より詳細には、第2燃料低減制御部99は第2燃料流調弁154の開度を低減させる制御を実行するように構成される。
【0045】
上記構成によれば、圧力比判定部97が許容上限圧力比と実際の圧力比とを比較するので、圧縮機1のサージングをより確実に回避することができる。なお、空気圧力計測器61は圧縮機入口空気圧力計測器62を含まなくてもよい。この場合、圧力比判定部97は、例えば特定のウェブサイトにおいて開示される気象データを取得することで、圧縮機1の入口空気圧力を取得してもよい。この場合であっても実際の圧力比に基づいた判定を圧力比判定部97は実行できる。
【0046】
上述の燃料供給量取得部93は、蒸気流量計66によって計測される需要体蒸気供給量が需要体蒸気増加指令によって示される需要体蒸気供給量に到達したと判定された後に計測されるガスタービン9の出力と、ガスタービン9の目標出力とに基づいて、第2燃料供給量を取得してもよい。そして、第2燃料制御部92は、燃料供給量取得部93によって取得された第2燃料供給量だけ第2燃料が供給されるよう、第2燃料流調弁154を制御してもよい。
【0047】
上記構成によれば、需要体蒸気増加指令に基づく蒸気が蒸気需要体10に供給されるようになった後、ガスタービン9の実際の出力に基づいて第2燃料供給量は増大する。よって、蒸気需要体10に供給する蒸気量を増やしても、ガスタービン9の出力を確実に維持できる。
【0048】
<コジェネシステム100の運転方法>
図6、
図7は、本開示の一実施形態に係るコジェネシステム制御処理を示すフローチャートであり、コジェネシステム100の運転方法の一例を示す。コジェネシステム制御処理は、需要体蒸気供給量を増やし、且つ、第1燃料供給量を減少させ、第2燃料供給量を増加させることで第2燃料混焼率を上昇させるための制御処理である。この制御処理は、コントローラ90のプロセッサによって実行される。以下の説明では、「コントローラ90のプロセッサ」を「プロセッサ」と略記し、「ステップ」を「S」と略記する場合がある。なお、コジェネシステム制御処理の開始前、燃焼器3では第1燃料と第2燃料との混焼が既に起こっている。
【0049】
はじめに、プロセッサは、需要体蒸気増加指令を取得し(S11)、ガスタービン出力指令を取得する(S13)。S11を実行するプロセッサは、需要体指令取得部94の一例である。S13において取得されるガスタービン出力指令は、需要体蒸気供給量が需要体蒸気増加指令に応じて増大した後においてもガスタービン出力を維持するための目標発電量を示す。
【0050】
プロセッサは、S11で取得された需要体蒸気供給量と、S13で取得されたガスタービン出力指令に基づき、第2燃料混焼率を仮決定する(S15)。例えば、需要体蒸気供給量によって規定される蒸気抽気ライン130の抽気量(より詳細には上流側蒸気供給量)と、ガスタービン出力指令によって示される目標発電量とが所定のソフトウェアモジュールに入力され、プロセッサはソフトウェアモジュールから出力される第2燃料混焼率を取得する。ソフトウェアモジュールは、関数式、データテーブル、または、機械学習を終えた学習モデルを記憶する演算装置であり、当該演算装置はコントローラ90に組み込まれてもよい。コントローラ90は、演算装置に記憶される関数式、データテーブル、または、学習モデルを用いて、仮の第2燃料混焼率を取得する。
【0051】
プロセッサは、S15で仮決定された第2燃料混焼率に基づいて、上流側蒸気供給量を低減させる制御を実行する(S17)。より詳細には、プロセッサは、仮決定された第2燃料混焼率において発生すると推定されるNOx量を算出し、さらに、タービン出口におけるNOx量を目標値にするための上流側蒸気量を算出する。このような算出は、プロセッサが所定のソフトウェアモジュールを利用することで実現可能である。そして、プロセッサは、算出された上流側蒸気供給量が実現されるよう、上流側蒸気流調弁131Bの開度を小さくする制御を実行する。さらに詳細な具体例を挙げると、S15で仮決定される第2燃料混焼率は、現在の第2燃料混焼率よりも高い値であり、第1燃料供給量を減らす必要がある。燃焼器3にて発生するNOxの量は低減することとなるので、プロセッサは弁開度を低減させる制御信号を上流側蒸気流調弁131Bに送り。上流側蒸気供給量は低減する。S17を実行するプロセッサは、上流側蒸気制御部81の一例である。
【0052】
プロセッサは、ガスタービン出口の実際のNOx排出量が目標値以下になるかをタービン出口NOx計測器69の計測結果に基づき判定する(S19)。計測により求まる実際のNOx排出量が目標値を上回ると判定された場合(S19:NO)、プロセッサは、上流側蒸気流調弁131Bの開度を増加させる制御を実行する(S21)。上流側蒸気供給量は増大し、プロセッサは処理をS19に戻す。
【0053】
実際のNOx排出量が目標値以下になると判定された場合(S19:YES)、プロセッサは、S11で取得された需要体蒸気増加指令に基づき、需要体蒸気供給量が増大するよう蒸気流調弁21Bの開度を増大させる制御を実行する(S23)。S23を実行するプロセッサは蒸気供給ライン制御部95の一例である。
【0054】
プロセッサは、S11で取得された需要体蒸気増加指令に基づいて、下流側蒸気流調弁132Bの開度を制御する(S25)。より詳細には、プロセッサは、需要体蒸気増加指令によって示される需要体蒸気供給量の増分に応じて下流側蒸気供給量が低減するよう、下流側蒸気流調弁132Bの開度を低減させる制御を実行する。S25を実行するプロセッサは、下流側蒸気制御部82の一例である。
【0055】
プロセッサは、圧縮機1における圧力比が許容上限圧力比以下であるかを空気圧力計測器61の計測結果に基づき判定する(S27)。圧力比が許容上限圧力比を上回ると判定されると(S27:NO)、プロセッサは、下流側蒸気流調弁132Bの開度を低減させる制御を実行する(S29)。下流側蒸気供給量は低減し、ガスタービン9の出力は低減する。プロセッサは処理をS27戻す。
【0056】
圧力比が許容上限圧力比以下であると判定されると(S27:YES)、プロセッサは、現在の需要体蒸気供給量が、S11で取得された需要体蒸気増加指令によって示される目標需要体蒸気供給量に到達したかを、蒸気流量計66の計測結果に基づき判定する(S31)。現在の需要体蒸気供給量が目標需要体蒸気供給量に到達していないと判定された場合(S31:NO)、プロセッサは、蒸気流調弁21Bの開度を増大させる制御を実行する(S33)。需要体蒸気供給量は増大し、プロセッサは処理をS31に戻す。S33の実行時、下流側蒸気流調弁132Bの開度を低減させる制御が併せて実行されてもよい。
【0057】
現在の需要体蒸気供給量が目標需要体蒸気供給量に到達したと判定された場合(S31:YES)、需要体蒸気増加指令によって示される量の蒸気が蒸気需要体10に供給されていると判定されたこととなる。この場合、プロセッサは、現在のガスタービン出力と、ガスタービン9の目標出力とに基づいて、第2燃料混焼率を決定する(S35)。より詳細には、発電機出力計測器65によって計測される現在の発電量と、S13で取得されたガスタービン出力指令が示す目標発電量との偏差を規定値未満にするための第2燃料混焼率をプロセッサは決定する。S35を実行するプロセッサは、燃料供給量取得部93の一例である。
【0058】
プロセッサは、S35で決定された第2燃料混焼率が実現されるよう、第1燃料供給量を制御し(S37)、且つ、第2燃料供給量を制御する(S39)。S37では、第1燃料流調弁153の開度を低減させる制御が実行され、S39では第2燃料流調弁154の開度を増大させる制御が実行される。S37を実行するプロセッサは第1燃料制御部91の一例であり、S39を実行するプロセッサは第2燃料制御部92の一例である。
【0059】
プロセッサは、圧縮機1における圧力比が許容上限圧力比以下であるかを空気圧力計測器61の計測結果に基づき判定する(S41)。S41の処理はS27の処理と同様である。圧力比が許容上限圧力比を上回ると判定された場合(S41:NO)、プロセッサは、第2燃料混焼率を再設定し(S43)、第1燃料供給量と第2燃料供給量を制御し(S45)、処理をS41に戻す。S43では、目標発電量をより低い値に更新する処理が実行される。S45では、第1燃料供給量と第2燃料供給量がいずれも低減するよう、第1燃料流調弁153の開度と第2燃料流調弁154の開度を低減させる処理が実行される。
【0060】
圧力比が許容上限圧力比以下であると判定された場合(S41:YES)、プロセッサは、ガスタービン9の出力である発電量が目標発電量と一致するかを、発電機出力計測器65の計測結果に基づき判定する(S47)。発電機出力計測器65によって計測される発電量が目標発電量に一致しないと判定された場合(S47:NO)、プロセッサは、上述したS43に処理を戻す。例えば、計測される発電量が目標発電量よりも低い場合には、S45において目標発電量をより低い値に更新する処理が実行される。計測される発電量が目標発電量に一致すると判定された場合(S47:YES)、プロセッサはコジェネシステム制御処理を終了する。
【0061】
<コジェネシステム100の改造方法>
図1、
図8、
図9を参照し、コジェネシステム100の改造方法を例示する。
図8は、本開示の一実施形態に係るコジェネシステム100の改造方法を示すフローチャートである。
図9は、本開示の一実施形態に係る改造前のコジェネシステム100であるコジェネシステム100Aを示す概略図である。
図9で示されるコジェネシステム100Aは、
図1に示される第2燃料供給設備52を備えない点と、燃焼器3に代えて燃焼器3Aを備える点と、コントローラ90に代えてコントローラ90Aを備える点で、コジェネシステム100とは異なる。燃焼器3Aは、第1燃料が専ら燃焼するように構成される。コントローラ90Aは、燃料として専ら第1燃料が燃焼器3Aに供給されるように第1燃料供給設備51を制御するように構成される。
【0062】
改造前のコジェネシステム100Aに対して以下の工程が実行されることで、コジェネシステム100は完成する。はじめに、燃焼器3Aを燃焼器3に交換する燃焼器交換工程が実行される(S101)。次いで、第2燃料供給設備52を追設する燃焼供給設備追設工程が実行される(S103)。次いで、コントローラ90Aをコントローラ90に変更するコントローラ変更工程(S105)が実行される。S105では、コントローラ90Aのソフトウェアの変更が行われてもよいし、コントローラ90Aをコントローラ90に物理的に交換する変更が行われてもよい。S101~S105の実行により、コジェネシステム100Aをコジェネシステム100に改造することができる。S101、S103は、人によって実行されてもよいし、人が操作する作業用ロボットによって実行されてもよい。S105は、人がソフトウェアを改変することによって実行されてもよい。あるいは、コントローラ90A,90の交換作業を人が行うことでS105は実行されてもよい。
【0063】
<まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0064】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネレーションシステム(100)は、
圧縮機(1)、燃焼器(3)、および、タービン(2)を含むガスタービン(9)と、
前記燃焼器(3)に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備(51)と、
単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料を供給するための第2燃料供給設備(52)と、
前記タービン(2)から排出される排ガス(13)を用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラ(14)と、
前記排熱回収ボイラ(14)から排出される前記蒸気を蒸気需要体(10)に供給するための蒸気供給ライン(21)と、
前記蒸気供給ライン(21)から抽気した前記蒸気を、前記燃焼器(3)におけるヘッドエンド(24)側及び前記ヘッドエンド(24)よりも前記タービン(2)側の双方に供給するための蒸気抽気ライン(130)と、
前記蒸気抽気ライン(130)による前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備(51)及び前記第2燃料供給設備(52)を制御するための燃料制御部(第1燃料制御部91、第2燃料制御部92)と、
を備える。
【0065】
蒸気需要体(10)に供給する蒸気量を増大させるためには、蒸気抽気ライン(130)による蒸気の抽気量を減少させる必要がある。上記1)の構成によれば、この場合、第1燃料制御部(91)は第1燃料の供給量を減少させ、第2燃料制御部(92)は第2燃料の供給量を増大させて、ガスタービン(9)の出力を維持する。タービン入口温度が既定の温度すなわち後流のタービン翼などに関して元々設定されている耐熱温度を超えないように第2燃料は供給される必要があるが、第2燃料の単位質量当たりの発熱量が低いので、第2燃料の許容上限供給量は第1燃料の許容上限供給量に比べて高い。つまり、第2燃料の供給によって、ガスタービン(9)の出力の維持は十分に可能になるので、蒸気需要体(10)に供給する蒸気量を従来よりも増大させることができる。以上より、タービン出力増強のために燃焼器内に噴射する蒸気を減らして蒸気需要体(10)に供給する蒸気量を増大させても、ガスタービン(9)の出力を維持できるガスタービンコジェネレーションシステム(100)が実現される。
【0066】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガスタービンコジェネレーションシステム(100)であって、
前記燃料制御部(第1燃料制御部91及び第2燃料制御部92)は、前記圧縮機(1)における圧力比が許容上限圧力比未満となる条件を充足させながら、前記第1燃料の供給量を減らし、かつ前記第2燃料の供給量を増やすように構成される。
【0067】
上記2)の構成によれば、圧縮機(1)のサージングを回避しつつ、ガスタービン(9)の出力を維持することができる。また、蒸気抽気ライン(130)による蒸気の抽気量を従来よりも低減させることができる分、圧縮機(1)の出口側の圧力を従来よりも低減させることができるので、圧縮機(1)のサージングをより確実に回避することが可能になる。
【0068】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のガスタービンコジェネレーションシステム(100)であって、
前記圧縮機(1)の前記圧力比を計測するための空気圧力計測器(61)の計測結果に基づいて算出される前記圧力比が前記許容上限圧力比以下であるかを判定するための圧力比判定部(97)をさらに備え、
前記燃料制御部(第2燃料制御部92)は、前記圧力比が前記許容上限圧力比を上回ると判定された場合、前記第2燃料の供給量を低減させるための第2燃料低減制御部(99)を含む。
【0069】
上記3)の構成によれば、圧力比判定部(97)が許容上限圧力比と実際の圧力比とを比較するので、圧縮機(1)のサージングをより確実に回避することができる。
【0070】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)のいずれかに記載のガスタービンコジェネレーションシステム(100)であって、
前記蒸気需要体(10)への前記蒸気の供給量を増加させるための需要体蒸気増加指令によって示される量の前記蒸気が供給されていると判定された後に計測される前記ガスタービン(9)の出力と、前記ガスタービン(9)の目標出力とに基づいて、前記第2燃料の供給量を取得する燃料供給量取得部(93)をさらに備え、
前記燃料制御部(第2燃料制御部92)は、前記燃料供給量取得部(93)によって取得された前記供給量だけ前記第2燃料が供給されるよう、前記第2燃料供給設備(52)を制御するように構成される。
【0071】
上記4)の構成によれば、需要体蒸気増加指令に基づく蒸気が蒸気需要体(10)に供給されるようになった後、実際のガスタービン(9)出力に基づいて第2燃料の供給量は増大する。よって、蒸気需要体(10)に供給する蒸気量を増やしても、ガスタービン(9)の出力を確実に維持できる。
【0072】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載のガスタービンコジェネレーションシステム(100)であって、
前記排熱回収ボイラ(14)の前記排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収システム(40)と、
前記水回収システム(40)によって回収された回収水を、前記排熱回収ボイラ(14)に供給するためのボイラ給水を貯める補給水タンク(17)と、
をさらに備える。
【0073】
蒸気抽気ライン(130)によって蒸気がガスタービン(9)に供給されるため、ガスタービン(9)の排ガスに含まれる水分が増大する。この点、上記5)の構成によれば、水回収システム(40)によって回収された水分を排熱回収ボイラ(14)に供給されるボイラ給水として再利用でき、ガスタービンコジェネレーションシステム(100)は造水プラントとしても機能することができる。
【0074】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載のガスタービンコジェネレーションシステム(100)であって、
前記第1燃料は、天然ガス、オフガス、または、水素ガスを主成分とする水素ガス燃料のいずれかである。
【0075】
上記6)の構成によれば、第1燃料が重油などの油燃料である場合に比べて、炭素排出量を低減することができる。
【0076】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載のガスタービンコジェネレーションシステム(100)であって、
前記第2燃料は、アンモニアまたはメタノールのいずれかを主成分とする燃料である。
【0077】
上記7)の構成によれば、第2燃料の燃焼によって生じる水の蒸発潜熱によって、燃焼器(3)出口温度の上昇を抑制できる。第2燃料の供給量を増大させてもタービン入口温度の上昇を抑制できるので、第2燃料の許容上限供給量を高めることができる。従って、蒸気抽気ライン(130)による蒸気の抽気量をより低減することができる結果、蒸気需要体(10)に供給する蒸気量をさらに増大させることができる。
【0078】
8)本開示の少なくとも一実施形態では、ガスタービンコジェネレーションシステム(100)の運転方法であって、
前記ガスタービンコジェネレーションシステム(100)は、
圧縮機(1)、燃焼器(3)、および、タービン(2)を含むガスタービン(9)と、
前記燃焼器(3)に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備と、
単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料を供給するための第2燃料供給設備(52)と、
前記タービン(2)から排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラ(14)と、
前記排熱回収ボイラ(14)から排出される前記蒸気を蒸気需要体(10)に供給するための蒸気供給ライン(21)と、
前記蒸気供給ライン(21)から抽気した前記蒸気を、前記燃焼器(3)におけるヘッドエンド(24)側及び前記ヘッドエンド(24)よりも前記タービン(2)側の双方に供給するための蒸気抽気ライン(130)と、
を含み、
前記蒸気抽気ライン(130)による前記蒸気の抽気量の減少に伴い、前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備(51)及び前記第2燃料供給設備(52)を制御するための燃料制御ステップ(S37、S39)を備える。
【0079】
上記8)の構成によれば、上記1)と同様の理由により、蒸気需要体(10)に供給する蒸気量を増やしても、ガスタービン(9)の出力を維持できるガスタービンコジェネレーションシステム(100)の運転方法が実現される。
【0080】
9)本開示の少なくとも一実施形態では、ガスタービンコジェネレーションシステム(100A)の改造方法であって、
前記ガスタービンコジェネレーションシステム(100A)は、
圧縮機(1)、燃焼器(3A)、および、タービン(2)を含むガスタービン(9)と、
前記燃焼器(3A)に第1燃料を供給するための第1燃料供給設備(51)と、
前記タービン(2)から排出される排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラ(14)と、
前記排熱回収ボイラ(14)から排出される前記蒸気を蒸気需要体(10)に供給するための蒸気供給ライン(21)と、
前記蒸気供給ライン(21)から抽気した前記蒸気を、前記燃焼器(3A)におけるヘッドエンド(24)側及び前記ヘッドエンド(24)よりも前記タービン(2)側の双方に供給するための蒸気抽気ライン(130)と、
を含み、
前記第1燃料が専ら燃焼するように構成される前記燃焼器(3A)を、前記第1燃料と、単位質量における発熱量が前記第1燃料よりも低い第2燃料とが混焼するように構成される燃焼器(3)に交換する燃焼器交換工程(S101)と、
前記第2燃料を供給するための第2燃料供給設備(52)を追設する燃料供給設備追設工程(S103)と、
燃料として専ら前記第1燃料が供給されるように前記第1燃料供給設備を制御するためのコントローラ(90A)を、前記蒸気抽気ライン(130)による前記蒸気の抽気量の減少に伴い前記第1燃料の供給量が減少し、かつ前記第2燃料の供給量が増大するよう、前記第1燃料供給設備(51)および前記第2燃料供給設備(52)を制御するためのコントローラ(90)に変更するコントローラ変更工程(S105)と、
を備える。
【0081】
上記9)の構成によれば、上記1)と同様の理由により、蒸気需要体(10)に供給する蒸気量を増やしても、ガスタービン(9)の出力を維持できるガスタービンコジェネレーションシステム(100A)の改造方法が実現される。
【符号の説明】
【0082】
1 :圧縮機
2 :タービン
3,3A :燃焼器
3A :燃焼器
9 :ガスタービン
10 :蒸気需要体
13 :排ガス
14 :排熱回収ボイラ
17 :補給水タンク
21 :蒸気供給ライン
24 :ヘッドエンド
40 :水回収システム
51 :第1燃料供給設備
52 :第2燃料供給設備
61 :圧力計測器
62 :圧縮機入口空気圧力計測器
63 :圧縮機出口空気圧力計測器
90,90A :コントローラ
93 :燃料供給量取得部
97 :圧力比判定部
99 :第2燃料低減制御部
100,100A :コジェネシステム(ガスタービンコジェネシステム)
130 :蒸気抽気ライン