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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】光変調素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
G02F1/035
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022500293
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2021001823
(87)【国際公開番号】W WO2021161745
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2020020814
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】岩塚 信治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 謙二
(72)【発明者】
【氏名】原 裕貴
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-179165(JP,A)
【文献】特開2016-071241(JP,A)
【文献】特開2016-014698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0093266(US,A1)
【文献】特開2019-174619(JP,A)
【文献】特開2012-078759(JP,A)
【文献】特開2015-014715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた少なくとも一つの相互作用部と
入力部と、
終端部と、を備え、
前記相互作用部は、
前記基板上に形成された互いに隣り合う第1及び第2の光導波路と、
前記第1及び第2の光導波路と対向して設けられ、差動信号が印加される第1及び第2の信号電極とを備え、
前記相互作用部の近傍領域にはグランド電極が配置されておらず、
前記入力部と前記終端部は前記基板のエッジ近傍に備えられ、且つ前記第1及び第2の信号電極と電気的に接続され
前記入力部及び前記終端部の少なくとも一方の近傍にはグランド電極が配置されており、
前記入力部は、前記第1の信号電極の一端と電気的に接続された第1の信号電極パッドと、前記第2の信号電極の一端と電気的に接続された第2の信号電極パッドを有し、
前記グランド電極は、前記第1の信号電極パッドに隣接する第1のグランド電極パッドと、前記第2の信号電極パッドに隣接する第2のグランド電極パッドを含み、
前記第1のグランド電極パッドと前記第2のグランド電極パッドは、前記基板上の第1の短絡パターンを介して電気的に接続されており、
前記第1の短絡パターンは、前記第1及び第2のグランド電極パッドと同じ電極層内に設けられていることを特徴とする光変調素子。
【請求項2】
前記第1の信号電極の一端は、第1の引き出し部を介して前記基板のエッジ近傍まで引き出されており
前記第2の信号電極の一端は、第2の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第1の信号電極パッドは前記第1の引き出し部に接続されており、
前記第2の信号電極パッドは前記第2の引き出し部に接続されている、請求項1に記載の光変調素子。
【請求項3】
前記第1のグランド電極パッド、前記第2のグランド電極パッド及び前記第1の短絡パターンは、前記基板の前記エッジに配置されており、
前記第1の信号電極パッド及び第2の信号電極パッドは、前記第1の短絡パターンよりも前記基板の内側に配置されている、請求項2に記載の光変調素子。
【請求項4】
前記終端部は、前記第1の信号電極の他端と電気的に接続された第1の終端電極パッドと、前記第2の信号電極の他端と電気的に接続された第2の終端電極パッドを有し、
前記グランド電極は、前記第1の終端電極パッドに隣接する第3のグランド電極パッドと、前記第2の終端電極パッドに隣接する第4のグランド電極パッドを含み、
前記第3のグランド電極パッドと前記第4のグランド電極パッドは、前記基板上の第2の短絡パターンを介して電気的に接続されており、
前記第2の短絡パターンは、前記第3及び第4のグランド電極パッドと同じ電極層内に設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光変調素子。
【請求項5】
前記第1の信号電極の他端は、第3の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第2の信号電極の他端は、第4の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第1の終端電極パッドは前記第3の引き出し部に接続されており、
前記第2の終端電極パッドは前記第4の引き出し部に接続されている、請求項4に記載の光変調素子。
【請求項6】
前記第3のグランド電極パッド、前記第4のグランド電極パッド及び前記第2の短絡パターンは、前記基板の前記エッジに配置されており、
前記第1の終端電極パッド及び第2の終端電極パッドは、前記第2の短絡パターンよりも前記基板の内側に配置されている、請求項5に記載の光変調素子。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に設けられた少なくとも一つの相互作用部と
入力部と、
終端部と、を備え、
前記相互作用部は、
前記基板上に形成された互いに隣り合う第1及び第2の光導波路と、
前記第1及び第2の光導波路と対向して設けられ、差動信号が印加される第1及び第2の信号電極とを備え、
前記相互作用部の近傍領域にはグランド電極が配置されておらず、
前記入力部と前記終端部は、前記基板のエッジ近傍に備えられ、且つ前記第1及び第2の信号電極と電気的に接続され
前記入力部及び前記終端部の少なくとも一方の近傍にはグランド電極が配置されており、
前記終端部は、前記第1の信号電極の他端に電気的に接続された第1の終端電極パッドと、前記第2の信号電極の他端に電気的に接続された第2の終端電極パッドを有し、
前記グランド電極は、前記第1の終端電極パッドに隣接する第3のグランド電極パッドと、前記第2の終端電極パッドに隣接する第4のグランド電極パッドを含み、
前記第3のグランド電極パッドと前記第4のグランド電極パッドは、前記基板上の第2の短絡パターンを介して電気的に接続されており、
前記第2の短絡パターンは、前記第3及び第4のグランド電極パッドと同じ電極層内に設けられていることを特徴とする光変調素子。
【請求項8】
前記第1の信号電極の他端は、第3の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第2の信号電極の他端は、第4の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第1の終端電極パッドは前記第3の引き出し部に接続されており、
前記第2の終端電極パッドは前記第4の引き出し部に接続されている、請求項7に記載の光変調素子。
【請求項9】
前記第3のグランド電極パッド、前記第4のグランド電極パッド及び前記第2の短絡パターンは、前記基板の前記エッジに配置されており、
前記第1の終端電極パッド及び第2の終端電極パッドは、前記第2の短絡パターンよりも前記基板の内側に配置されている、請求項8に記載の光変調素子。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に設けられた少なくとも一つの相互作用部と
入力部と、
終端部と、を備え、
前記相互作用部は、
前記基板上に形成された互いに隣り合う第1及び第2の光導波路と、
前記第1及び第2の光導波路と対向して設けられ、差動信号が印加される第1及び第2の信号電極とを備え、
前記相互作用部の近傍領域にはグランド電極が配置されておらず、
前記入力部及び前記終端部は、前記基板のエッジ近傍に備えられ、且つ前記第1及び第2の信号電極と電気的に接続され
前記入力部及び前記終端部の両方の近傍にはグランド電極が配置されており、
前記入力部は、前記第1の信号電極の一端と電気的に接続された第1の信号電極パッドと、前記第2の信号電極の一端と電気的に接続された第2の信号電極パッドを有し、
前記終端部は、前記第1の信号電極の他端と電気的に接続された第1の終端電極パッドと、前記第2の信号電極の他端と電気的に接続された第2の終端電極パッドを有し、
前記グランド電極は、前記第1の信号電極パッドに隣接する第1のグランド電極パッドと、前記第2の信号電極パッドに隣接する第2のグランド電極パッドと、前記第1の終端電極パッドに隣接する第3のグランド電極パッドと、前記第2の終端電極パッドに隣接する第4のグランド電極パッドを含み、
前記第3のグランド電極パッドは、前記基板上の第3の短絡パターンを介して前記第1のグランド電極パッドに接続されており、
前記第4のグランド電極パッドは、前記基板上の第4の短絡パターンを介して前記第2のグランド電極パッドに接続されており、
前記第3及び第4の短絡パターンは、前記第1乃至第4のグランド電極パッドと同じ電極層内に設けられていることを特徴とする光変調素子。
【請求項11】
前記第1の信号電極の一端は、第1の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており
前記第2の信号電極の一端は、第2の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第1の信号電極の他端は、第3の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第2の信号電極の他端は、第4の引き出し部を介して前記基板の前記エッジ近傍まで引き出されており、
前記第1の信号電極パッドは前記第1の引き出し部に接続されており、
前記第2の信号電極パッドは前記第2の引き出し部に接続されており、
前記第1の終端電極パッドは前記第3の引き出し部に接続されており、
前記第2の終端電極パッドは前記第4の引き出し部に接続されている、請求項10に記載の光変調素子。
【請求項12】
前記第3の短絡パターンは、前記相互作用部の周りを周回するように形成されており、
前記第4の短絡パターンは、前記基板の前記エッジに沿って形成されている、請求項11に記載の光変調素子。
【請求項13】
前記第1及び第2の信号電極パッド、前記第1及び第2の終端電極パッド並びに前記第1乃至第4のグランド電極パッドは、前記基板の前記エッジに配置されている、請求項12に記載の光変調素子。
【請求項14】
前記相互作用部の近傍領域は、前記相互作用部の中心から前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との間隔の5倍以下の範囲内の領域である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光変調素子。
【請求項15】
前記基板は単結晶基板であり、
前記第1及び第2の光導波路は、前記基板上にリッジ状に形成されたニオブ酸リチウム膜からなる、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光変調素子。
【請求項16】
前記相互作用部は、
前記第1及び第2の光導波路を含み、前記基板の主面に形成された導波層と、
少なくとも前記第1及び第2の光導波路の上面に形成されたバッファ層と、
前記第1及び第2の信号電極を含み、前記バッファ層の上面に形成された電極層を含み、
前記第1及び第2の信号電極は、前記バッファ層を挟んで前記第1及び第2の光導波路とそれぞれ対向している、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の光変調素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調素子に関し、特に、マッハツェンダー型光変調素子の電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及に伴い通信量は飛躍的に増大しており、光ファイバ通信の重要性が非常に高まっている。光ファイバ通信は、電気信号を光信号に変換し、光信号を光ファイバにより伝送するものであり、広帯域、低損失、ノイズに強いという特徴を有する。
【0003】
電気信号を光信号に変換する方式としては、半導体レーザによる直接変調方式と光変調器を用いた外部変調方式が知られている。直接変調は光変調器が不要で低コストであるが、高速変調には限界があり、高速で長距離の用途では外部変調方式が使われている。
【0004】
光変調器としては、ニオブ酸リチウム単結晶基板の表面付近にTi(チタン)拡散により光導波路を形成したマッハツェンダー型光変調器が実用化されている(例えば特許文献1参照)。マッハツェンダー型光変調器は、1つの光源から出た光を2つに分け、異なる経路を通過させた後、再び重ね合わせて干渉を起こさせるマッハツェンダー干渉計の構造を有する光導波路(マッハツェンダー光導波路)を用いるものであり、40Gb/s以上の高速の光変調器が商用化されているが、全長が10cm前後と長いことが大きな欠点になっている。
【0005】
これに対して、特許文献2及び3には、c軸配向のニオブ酸リチウム膜を用いたマッハツェンダー型光変調器が開示されている。ニオブ酸リチウム膜を用いた光変調器は、ニオブ酸リチウム単結晶基板を用いた光変調器と比較して大幅な小型化及び低駆動電圧化が可能である。
【0006】
特許文献2に記載された従来の光変調素子20Aの断面構造を図12(a)に示す。サファイア基板21上にはニオブ酸リチウム膜による一対の光導波路22a,22bが形成され、光導波路22a、22bの上部にはバッファ層23を介して信号電極24a及びグランド電極24bがそれぞれ配置されている。この光変調素子20Aは1つの信号電極24aを有するいわゆるシングル駆動型であり、信号電極24aとグランド電極24bは対称構造なので、光導波路22a,22bに印加される電界は大きさが等しく、符号が逆となっており、変調光の波長チャープが発生しない構造である。しかし、グランド電極24bの面積が狭いため、高周波で動作しないという問題がある。
【0007】
特許文献3に記載された従来の光変調素子20Bの断面構造を図12(b)に示す。ニオブ酸リチウム膜による一対の光導波路22a,22bの上部にはバッファ層23を介して2つの信号電極24a,24aが配置されると共に、信号電極24a,24aと離間して3つのグランド電極24c,24d,24eが配置されている。2つの信号電極24a,24aに大きさが等しく符号が逆の電圧を加えることで、一対の光導波路22a,22bに印加される電界は大きさが等しく、符号が逆となり、変調光の波長チャープは発生しない。また、一対の光導波路22a,22bに加える電圧を調整することで、チャープ量を調整可能という特徴を有している。さらに左右のグランド電極24c,24dの面積が十分に確保されているので、高周波で動作可能な構造である。しかしながら、この光変調素子20Bは2つの信号電極24a,24aを有するデュアル駆動型であるため、電極構造が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4485218号公報
【文献】特開2006-195383号公報
【文献】特開2014-6348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光変調素子において、現状の32Gbaudから64Gbaudへの高速化のためには35GHz以上の広帯域化が必要であり、96Gbaudへの高速化のためには50GHz以上の広帯域化が必要である。このような広帯域化を実現するためには、(1)高周波での電極損失の低減、(2)光とマイクロ波との速度整合、(3)インピーダンス整合の3つが重要であり、(1)が特に重要である。高周波では表皮効果により電流が電極の表面近傍にしか流れず、電極損失が増加するからである。
【0010】
図12(b)に示した従来の光変調素子20Bにおいて電極損失を低減するためには、信号電極の断面積を大きくすることが効果的であり、そのためには信号電極24a,24aの厚さTを厚くするか、信号電極24a,24aの幅Wを広くする必要がある。
【0011】
しかしながら、信号電極24a,24aの厚さTを厚くすると、マイクロ波の実効誘電率が低下して速度整合させることができなくなると共に、インピーダンスの低下によりインピーダンス整合が取れなくなるという問題がある。また、信号電極24a,24aの幅Wを広げると、マイクロ波の実効誘電率とインピーダンスは大きく変化しないものの、光導波路に印加される電界効率が悪くなり、半波長電圧が増加するという問題がある。したがって、従来の電極構造では64Gbaudの高速化に対応した35GHz以上の広帯域化の実現が困難であった。特に、64Gbaudを超える高速通信においては、50GHz以上の高周波における放射損失の急激な増加が問題となる。
【0012】
また光変調素子の小型化や多重化のため、複数本の光導波路を並列に配置して光導波路アレイを構成する場合、隣接チャンネル間の光導波路が近づくことにより、EO特性のリップルやクロストークノイズが増加して高周波特性が悪化しやすいという問題がある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、50GHz以下の低周波において電極損失を抑制しつつ、50GHz以上の高周波において放射損失を抑制することが可能な光変調素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明による光変調素子は、基板と、前記基板上に設けられた少なくとも一つの相互作用部とを備え、前記相互作用部は、前記基板上に形成された互いに隣り合う第1及び第2の光導波路と、前記第1及び第2の光導波路と対向して設けられ、差動信号が印加される第1及び第2の信号電極とを備え、前記相互作用部の近傍領域にはグランド電極が配置されておらず、前記第1及び第2の信号電極と電気的に接続された入力部及び終端部の少なくとも一方の近傍にはグランド電極が配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、50GHz以下の低周波においてリップルやクロストークノイズを低減することができるだけでなく、50GHz以上の高周波において放射損失を抑制することができる。したがって、64Gbaudを超える高速通信が可能な光変調素子を提供することができる。
【0016】
本発明において、前記入力部は、第1及び第2の信号電極パッドを有し、前記グランド電極は、前記第1の信号電極パッドに隣接する第1のグランド電極パッドと、前記第2の信号電極パッドに隣接する第2のグランド電極パッドを含むことが好ましい。この構成により、第1及び第2の信号電極の入力部側の放射損失及び漏れ損失を低減することができる。
【0017】
本発明において、前記第1のグランド電極パッドと前記第2のグランド電極パッドは電気的に接続されていることが好ましい。この場合において、前記第1のグランド電極パッドと前記第2のグランド電極パッドは、前記基板上に設けられた第1の短絡パターンを介して電気的に接続されていてもよく、前記第1及び第2の信号電極パッドに前記差動信号を印加するドライバ回路内のグランドラインを介して電気的に接続されていてもよい。これにより、第1及び第2の信号電極の入力部側の基準電位のさらなる安定化を図ることができ、高周波特性が良好な光変調素子を実現することができる。
【0018】
本発明において、前記終端部は、第1及び第2の終端電極パッドを有し、前記グランド電極は、前記第1の終端電極パッドに隣接する第3のグランド電極パッドと、前記第2の終端電極パッドに隣接する第4のグランド電極パッドを含むことが好ましい。この構成により、第1及び第2の信号電極の終端部側の放射損失及び漏れ損失を低減することができる。
【0019】
本発明において、前記第3のグランド電極パッドと前記第4のグランド電極パッドは、前記基板上の第2の短絡パターンを介して電気的に接続されていてもよく、前記第1及び第2の終端電極パッドに接続された終端器内のグランドラインを介して電気的に接続されていてもよい。さらにまた、前記第3のグランド電極パッドは、前記基板上の第3の短絡パターンを介して前記第1のグランド電極パッドに接続されており、前記第4のグランド電極パッドは、前記基板上の第4の短絡パターンを介して前記第2のグランド電極パッドに接続されていてもよい。これにより、第1及び第2の信号電極の終端部側の基準電位の安定化を図ることができ、高周波特性が良好な光変調素子を実現することができる。
【0020】
本発明において、前記相互作用部の近傍領域は、前記相互作用部の中心から前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との間隔の5倍以下の範囲内の領域であることが好ましい。相互作用部の中心から導波路間隔の5倍以下の近傍領域にグランド電極がない場合には、50GHz以下の低周波においてリップルやクロストークノイズを抑制することができる。
【0021】
本発明において、前記基板は単結晶基板であり、前記第1及び第2の光導波路は、前記基板上にリッジ状に形成されたニオブ酸リチウム膜からなることが好ましい。さらに、前記相互作用部は、前記第1及び第2の光導波路を含み、前記基板の主面に形成された導波層と、少なくとも前記第1及び第2の光導波路の上面に形成されたバッファ層と、前記第1及び第2の信号電極を含み、前記バッファ層の上面に形成された電極層を含み、前記第1及び第2の信号電極は、前記バッファ層を挟んで前記第1及び第2の光導波路とそれぞれ対向していることが好ましい。これにより、小型で高周波特性が良好な光変調素子を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、50GHz以下の低周波において電極損失を抑制しつつ、50GHz以上の高周波において放射損失を抑制することが可能な光変調素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図であり、図1(a)は光導波路のみ図示し、図1(b)は進行波電極を含めた光変調素子の全体を図示している。
図2図2は、図1(a)及び(b)のX-X線に沿った光変調素子1Aの略断面図である。
図3図3(a)及び(b)は、光変調素子の透過損失(Sdd21)の周波数特性を示すグラフである。
図4図4は、本発明の第2の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図5図5は、本発明の第3の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図6図6は、本発明の第4の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図7図7は、本発明の第5の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図8図8は、本発明の第6の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図9図9は、本発明の第7の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図10図10は、本発明の第8の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図11図11は、本発明の第9の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
図12図12(a)及び(b)は、従来の光変調素子の構造を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図であり、図1(a)は光導波路のみ図示し、図1(b)は進行波電極を含めた光変調素子の全体を図示している。
【0026】
図1(a)及び(b)に示すように、この光変調素子1Aは、基板2上に形成され、互いに平行に設けられた第1及び第2の光導波路10a,10bを有するマッハツェンダー光導波路10と、第1の光導波路10aに沿って設けられた第1の信号電極7aと、第2の光導波路10bに沿って設けられた第2の信号電極7bと、第1の光導波路10aに沿って設けられた第1のバイアス電極9aと、第2の光導波路10bに沿って設けられた第2のバイアス電極9bとを備えている。第1及び第2の信号電極7a,7bは、第1及び第2の光導波路10a,10bと共に、マッハツェンダー光変調素子の相互作用部MZを構成している。
【0027】
マッハツェンダー光導波路10は、マッハツェンダー干渉計の構造を有する光導波路である。一本の入力導波路10iから分波部10cによって分岐した第1及び第2の光導波路10a,10bを有し、第1及び第2の光導波路10a,10bは合波部10dによって一本の出力導波路10oにまとめられる。入力光Siは、分波部10cで分波されて第1及び第2の光導波路10a,10bをそれぞれ進行した後、合波部10dで合波され、変調光Soとして出力導波路10oから出力される。
【0028】
第1及び第2の信号電極7a,7bは平面視で第1及び第2の光導波路10a,10bと重なる線状の電極パターンであり、その両端は基板2の外周端付近まで引き出されている。すなわち、第1及び第2の信号電極7a,7bの一端側は引き出し部7a,7bを介して基板2のエッジ近傍まで引き出されており、基板2のエッジ近傍に設けられた第1及び第2の信号電極パッド7a,7bと電気的に接続されている。また、第1及び第2の信号電極7a,7bの他端側は引き出し部7a,7bを介して基板2のエッジ近傍まで引き出されており、基板2のエッジ近傍に設けられた第1及び第2の終端電極パッド7a,7bと電気的に接続されている。
【0029】
第1及び第2の信号電極7a,7bの一端側の第1及び第2の信号電極パッド7a,7bは信号入力端子であり、ドライバ回路に接続される。第1及び第2の信号電極7a,7bの他端側の第1及び第2の終端電極パッド7a,7bは、終端抵抗12を介して互いに接続されている。これにより、第1及び第2の信号電極7a,7bは、差動のコプレーナ型進行波電極として機能する。
【0030】
第1及び第2のバイアス電極9a,9bは、第1及び第2の光導波路10a,10bに直流電圧(DCバイアス)を印加するために第1及び第2の信号電極7a,7bとは独立に設けられている。第1及び第2のバイアス電極9a,9bの一端9a,9bはDCバイアスの入力端である。本実施形態において、第1及び第2のバイアス電極9a,9bの形成領域は、第1及び第2の信号電極7a,7bの形成領域よりもマッハツェンダー光導波路10の出力端側に設けられているが、入力端側に設けられていてもよい。また、第1及び第2のバイアス電極9a,9bを省略し、DCバイアスを予め重畳させた変調信号を第1及び第2の信号電極7a,7bに入力することも可能である。
【0031】
第1及び第2の信号電極パッド7a,7bには、絶対値が同じで正負の異なる差動信号(変調信号)が入力される。第1及び第2の光導波路10a,10bはニオブ酸リチウムなどの電気光学効果を有する材料からなるので、第1及び第2の光導波路10a,10bに与えられる電界によって第1及び第2の光導波路10a,10bの屈折率がそれぞれ+Δn、-Δnのように変化し、一対の光導波路間の位相差が変化する。この位相差の変化により変調された信号光が出力導波路10oから出力される。
【0032】
このように、本実施形態による光変調素子1Aは、一対の信号電極で構成されたデュアル駆動型であるため、一対の光導波路に印加される電界の対称性を高めることができ、波長チャープを抑制することができる。
【0033】
本実施形態において、相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極は設けられていない。ここで、相互作用部MZの近傍領域NZは、相互作用部MZの幅方向の中心から左右に広がる第1及び第2の光導波路10a,10bの間隔Wの5倍以下(W≦5W)の領域として定義される。またグランド電極とは、電位の基準点となる電極のことを言う。
【0034】
相互作用部MZを構成する第1及び第2の信号電極7a,7bの近傍にはグランド電極を設けることが一般的である(図12(b)等参照)。しかし、光変調素子の小型化に伴いグランド電極の十分な幅又は面積を確保することが難しくなっており、中途半端な大きさのグランド電極は高周波特性を悪化させる要因となる。しかし、本実施形態のように相互作用部MZの近傍領域NZからグランド電極を排除した場合には、小型化しても高周波特性が悪化することがなく、相互作用部MZの多重化も容易である。
【0035】
説明の便宜上、図1において第1及び第2の光導波路10a,10bの間隔Wは実際よりも十分に広く描かれている。実際の導波路間隔Wは非常に狭く、5~50μmである。一方、第1の信号電極7aの一端側及び他端側の引き出し部7a,7a及び第2の信号電極7bの一端側及び他端側の引き出し部7b,7bの長さは100μm以上である。そのため、第1及び第2の信号電極パッド7a,7b、第1及び第2のグランド電極パッド8a,8b、第1及び第2の終端電極パッド7a,7b、及び第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bは、相互作用部MZの近傍領域NZの外側に位置し、相互作用部MZから遠く離れている。
【0036】
基準電位の安定化のため、基板2の裏面側にはグランド電極が設けられていてもよい。上記のように、相互作用部MZの近傍領域NZにはグランド電極が設けられていないことが必要であるが、基板2の裏面側は対象外である。すなわち、基板2の裏面側における相互作用部MZの近傍領域NZにはグランド電極が設けられていてもかまわない。
【0037】
一方、相互作用部MZの近傍領域NZの外側に位置する第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部の近傍には第1及び第2のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第1のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの入力部を構成する第1の信号電極パッド7aに隣接して設けられており、第2のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの入力部を構成する第2の信号電極パッド7bに隣接して設けられている。
【0038】
第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部と同様に、相互作用部MZの近傍領域NZの外側に位置する第1及び第2の信号電極7a,7bの終端部の近傍には第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第3のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの終端部を構成する第1の終端電極パッド7aに隣接して設けられており、第4のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの終端部を構成する第2の終端電極パッド7bに隣接して設けられている。
【0039】
本実施形態において、第1のグランド電極パッド8aと第2のグランド電極パッド8bはそれらと同じ電極層内に設けられた短絡パターン8c(第1の短絡パターン)を介して電気的に接続されている。第3のグランド電極パッド8aと第4のグランド電極パッド8bもそれらと同じ電極層内に設けられた短絡パターン8c(第2の短絡パターン)を介して電気的に接続されている。短絡パターン8c,8cは基板2のエッジに沿って形成されているので、第1及び第2の信号電極パッド7a,7b及び第1及び第2の終端電極パッド7a,7bは、基板2のエッジよりも内側に配置されている。このように、互いに近接する2つのグランド電極パッド同士を短絡することにより、グランド電極パッド上の基準電位の安定化を図ることができ、高周波特性を改善することができる。
【0040】
図2は、図1(a)及び(b)のX-X線に沿った光変調素子1Aの略断面図である。
【0041】
図2に示すように、本実施形態による光変調素子1Aは、基板2、導波層3、保護層4、バッファ層5、及び電極層6がこの順で積層された多層構造を有している。
【0042】
基板2は例えばサファイア基板であり、基板2の主面にはニオブ酸リチウムに代表される電気光学材料からなる導波層3が形成されている。導波層3はリッジ部3rからなる第1及び第2の光導波路10a、10bを有している。第1及び第2の光導波路10a、10bを構成するリッジ部3rの幅W10は例えば1μmとすることができる。
【0043】
保護層4は第1及び第2の光導波路10a,10bと平面視で重ならない領域に形成されている。保護層4は、導波層3の上面のうちリッジ部3rが形成されていない領域の全面を覆っており、リッジ部3rの側面も保護層4に覆われているので、リッジ部3rの側面の荒れによって生じる散乱損失を防ぐことができる。保護層4の厚さは導波層3のリッジ部3rの高さとほぼ同じである。保護層4の材料は特に限定されないが、例えば酸化シリコン(SiO)を用いることができる。
【0044】
バッファ層5は、第1及び第2の光導波路10a,10b中を伝搬する光が第1及び第2の信号電極7a,7bに吸収されることを防ぐため、導波層3のリッジ部3rの上面に形成されるものである。バッファ層5は、導波層3よりも屈折率が小さく、透明性が高い材料からなることが好ましく、例えば、Al、SiO、LaAlO、LaYO、ZnO、HfO、MgO、Yなどを用いることができる。リッジ部3rの上面上のバッファ層5の厚さは0.2~1μm程度であればよい。バッファ層5は誘電率が高い材料からなることがより好ましい。本実施形態において、バッファ層5は、第1及び第2の光導波路10a,10bの上面のみならず保護層4の上面を含む下地面の全面を覆っているが、第1及び第2の光導波路10a,10bの上面付近だけを選択的に覆うようにパターニングされたものであってもよい。また保護層4を省略し、導波層3の上面全体にバッファ層5を直接形成してもよい。
【0045】
バッファ層5の膜厚は、電極の光吸収を低減するためには厚いほど良く、光導波路に高い電界を印加するためには薄いほど良い。電極の光吸収と電極の印加電圧とは、トレードオフの関係にあるので、目的に応じて適切な膜厚を設定する必要がある。バッファ層5の誘電率は高い程、VπL(電界効率を表す指標)を低減できるので好ましく、バッファ層5の屈折率は低い程、バッファ層5を薄くできるので好ましい。通常、誘電率が高い材料は屈折率も高くなるので、両者のバランスを考慮して、誘電率が高く、かつ、屈折率が比較的低い材料を選定することが重要である。一例として、Alは、比誘電率が約9、屈折率が約1.6であり、好ましい材料である。LaAlOは、比誘電率が約13、屈折率が約1.7であり、またLaYOは、比誘電率が約17、屈折率が約1.7であり、特に好ましい材料である。
【0046】
電極層6には、第1の信号電極7a及び第2の信号電極7bが設けられている。第1の信号電極7aは、第1の光導波路10a内を進行する光を変調するために第1の光導波路10aに対応するリッジ部3rに重ねて設けられ、バッファ層5を介して第1の光導波路10aと対向している。第2の信号電極7bは、第2の光導波路10b内を進行する光を変調するために第2の光導波路10bに対応するリッジ部3rに重ねて設けられ、バッファ層5を介して第2の光導波路10bと対向している。
【0047】
図2に示すように、第1及び第2の光導波路10a,10bの進行方向と直交する断面において、電極構造は左右対称である。そのため、第1及び第2の信号電極7a,7bから第1及び第2の光導波路10a,10bにそれぞれ印加される電界の大きさをできるだけ同じにして波長チャープを低減することができる。
【0048】
導波層3は電気光学材料であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム(LiNbO)からなることが好ましい。ニオブ酸リチウムは大きな電気光学定数を有し、光変調素子等の光学デバイスの構成材料として好適だからである。以下、導波層3をニオブ酸リチウム膜とした場合の本実施形態の構成について詳しく説明する。
【0049】
基板2としてはニオブ酸リチウム膜より屈折率が低いものであれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル膜として形成させることができる基板が好ましく、サファイア単結晶基板もしくはシリコン単結晶基板が好ましい。単結晶基板の結晶方位は特に限定されない。ニオブ酸リチウム膜はさまざまな結晶方位の単結晶基板に対して、c軸配向のエピタキシャル膜として形成されやすいという性質を持っている。c軸配向のニオブ酸リチウム膜は3回対称の対称性を有しているので、下地の単結晶基板も同じ対称性を有していることが望ましく、サファイア単結晶基板の場合はc面、シリコン単結晶基板の場合は(111)面の基板が好ましい。
【0050】
ここで、エピタキシャル膜とは、下地の基板もしくは下地膜の結晶方位に対して、揃って配向している膜のことである。膜面内をX-Y面とし、膜厚方向をZ軸としたとき、結晶がX軸、Y軸及びZ軸方向にともに揃って配向しているものである。例えば、第1に2θ-θX線回折による配向位置でのピーク強度の確認と、第2に極点の確認を行うことで、エピタキシャル膜を証明できる。
【0051】
具体的には、第1に2θ-θX線回折による測定を行ったとき、目的とする面以外の全てのピーク強度が目的とする面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である必要がある。例えば、ニオブ酸リチウムのc軸配向エピタキシャル膜では、(00L)面以外のピーク強度が、(00L)面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である。(00L)は、(001)や(002)などの等価な面を総称する表示である。
【0052】
第2に、極点測定において、極点が見えることが必要である。前述の第1の配向位置でのピーク強度の確認の条件においては、一方向における配向性を示しているのみであり、前述の第1の条件を得たとしても、面内において結晶配向が揃っていない場合には、特定角度位置でX線の強度が高まることはなく、極点は見られない。LiNbOは三方晶系の結晶構造であるため、単結晶におけるLiNbO(014)の極点は3つとなる。
【0053】
ニオブ酸リチウム膜の場合、c軸を中心に180°回転させた結晶が対称的に結合した、いわゆる双晶の状態にてエピタキシャル成長することが知られている。この場合、3つの極点が対称的に2つ結合した状態になるため、極点は6つとなる。また、(100)面のシリコン単結晶基板上にニオブ酸リチウム膜を形成した場合は、基板が4回対称となっているため、4×3=12個の極点が観測される。なお、本発明では、双晶の状態にてエピタキシャル成長したニオブ酸リチウム膜もエピタキシャル膜に含める。
【0054】
ニオブ酸リチウム膜の組成はLixNbAyOzである。Aは、Li、Nb、O以外の元素を表している。xは0.5~1.2であり、好ましくは、0.9~1.05である。yは、0~0.5である。zは1.5~4であり、好ましくは2.5~3.5である。Aの元素としては、K、Na、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Zn、Sc、Ceなどがあり、2種類以上の組み合わせでも良い。
【0055】
ニオブ酸リチウム膜の膜厚は2μm以下であることが望ましい。膜厚が2μmよりも厚くなると、高品質な膜を形成することが困難になるからである。一方、ニオブ酸リチウム膜の膜厚が薄すぎる場合は、ニオブ酸リチウム膜における光の閉じ込めが弱くなり、基板2やバッファ層5に光が漏れることになる。ニオブ酸リチウム膜に電界を印加しても、光導波路(10a、10b)の実効屈折率の変化が小さくなるおそれがある。そのため、ニオブ酸リチウム膜は、使用する光の波長の1/10程度以上の膜厚が望ましい。
【0056】
ニオブ酸リチウム膜の形成方法としては、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などの膜形成方法を利用することが望ましい。ニオブ酸リチウムのc軸が基板2の主面に垂直に配向されており、c軸に平行に電界を印加することで、電界に比例して光学屈折率が変化する。単結晶基板としてサファイアを用いる場合は、サファイア単結晶基板上に直接、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長させることができる。単結晶基板としてシリコンを用いる場合は、クラッド層(図示せず)を介して、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長により形成する。クラッド層(図示せず)としては、ニオブ酸リチウム膜より屈折率が低く、エピタキシャル成長に適したものを用いる。例えば、クラッド層(図示せず)としてYを用いると、高品質のニオブ酸リチウム膜を形成できる。
【0057】
なお、ニオブ酸リチウム膜の形成方法として、ニオブ酸リチウム単結晶基板を薄く研磨したりスライスしたりする方法も知られている。この方法は、単結晶と同じ特性が得られるという利点があり、本発明に適用することが可能である。
【0058】
第1及び第2の信号電極7a,7bの幅Wは、リッジ状に形成されたニオブ酸リチウム膜からなる第1及び第2の光導波路10a,10bのリッジ幅W10よりも少し広い程度である。第1及び第2の信号電極7a,7bからの電界を第1及び第2の光導波路10a、10bに集中させるためには、第1及び第2の信号電極7a,7bの幅Wは、第2の光導波路10bのリッジ幅W10の1.1~15倍であることが好ましく、1.5~10倍であることがより好ましい。なお、信号電極間隔とは、第1の信号電極7aの幅方向中央から第2の信号電極7bの幅方向中央までの距離のことを言う。また導波路間隔とは、第1の光導波路10aの幅方向中央から第2の光導波路10bの幅方向中央までの距離のことを言う。本実施形態において、信号電極間隔と導波路間隔は実質的に等しい。
【0059】
相互作用部MZの近傍領域NZの電極層6にグランド電極は設けられていない。第1及び第2の信号電極7a,7b間の電極分離領域Dや第1及び第2の信号電極7a,7bの外側の近傍領域D1a,D1bにグランド電極が設けられている場合には、リップルやクロストークが大きくなり、高周波特性が悪化する。このような高周波特性の悪化は、光変調素子の小型化に伴ってグランド電極の幅や面積を十分に確保することができず、基準電位が不安定になっていることが原因と考えられる。本実施形態のようにグランド電極を設けない場合には、リップルやクロストークを低減することができ、高周波特性を改善することができる。
【0060】
上述した第1乃至第4のグランド電極パッド8a,8b,8a,8b及び短絡パターン8c,8cは、第1及び第2の信号電極7a,7bの信号電極パッド7a,7b及び第1及び第2の終端電極パッド7a,7bと共に、電極層6に設けられている。これらのグランド電極は相互作用部MZの近傍領域NZの外側に存在するので、50GHz以下の低周波においてリップルやクロストークの発生原因とならならず、さらに50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。
【0061】
図3(a)及び(b)は、光変調素子の透過損失(Sdd21)の周波数特性を示すグラフである。
【0062】
相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極を配置した従来の電極構造を有する光変調素子の透過損失は、図3(a)のグラフGLに示すように、50GHz以下の低周波においてリップルやクロストークが発生する。これに対し、相互作用部MZの近傍領域NZを含む基板全面からグランド電極を排除した光変調素子の場合、図3(a)及び図3(b)のグラフGLに示すように、50GHz以下の低周波においてリップルやクロストークは発生しない。しかし、第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にもグランド電極が設けられていないことから、50GHz以上の高周波において透過損失が大きくなる。
【0063】
一方、相互作用部MZの近傍領域NZにはグランド電極を設けていないが、第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にグランド電極を設けた本発明による光変調素子の透過損失は、図3(b)のグラフGLに示すように、50GHz以下の低周波においてリップルやクロストークが抑制されるだけでなく、50GHz以上の高周波において透過損失を小さくすることができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態による光変調素子1Aは、相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極が設けられていないので、電極損失を低減することができ、光導波路に印加される電界効率の向上により低電圧駆動が可能な光変調素子を提供することができる。また、本実施形態による光変調素子1Aは、相互作用部MZの近傍領域NZから離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の少なくとも一方の近傍にグランド電極が設けられているので、50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。したがって、高周波特性が良好な光変調素子を提供することができる。
【0065】
図4は、本発明の第2の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0066】
図4に示すように、この光変調素子1Bの特徴は、第1の信号電極7aの入力部側の第1のグランド電極パッド8aと終端部側の第3のグランド電極パッド8aとが相互作用部MZの周りを大きく周回する短絡パターン8c(第3の短絡パターン)を介して電気的に接続されており、また入力側の第2のグランド電極パッド8bと終端側の第4のグランド電極パッド8bとが短絡パターン8c(第4の短絡パターン)を介して電気的に接続されている点にある。また、第1及び第2の信号電極パッド7a,7bは基板2のエッジに近接して配置されており、第1及び第2の終端電極パッド7a,7bも基板2のエッジに近接して配置されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0067】
短絡パターン8c,8cは、第1乃至第4のグランド電極パッド8a,8b,8a,8bと同様に、相互作用部MZの近傍領域NZの外側に配置されている。そのため、相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極は設けられていない。本実施形態によれば、第1の実施の形態と同様に、50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。
【0068】
本実施形態において、入力部側の第1のグランド電極パッド8aと第2のグランド電極パッド8bは短絡パターンを介して接続されておらず、終端部側の第3のグランド電極パッド8aと第4のグランド電極パッド8bは短絡パターンを介して接続されていないが、第1の実施の形態と同様に構成することも可能である。その場合、第1及び第2の信号電極パッド7a,7b及び第1及び第2の終端電極パッド7a,7bは、基板2のエッジから離れて配置されることになる。
【0069】
図5は、本発明の第3の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0070】
図5に示すように、この光変調素子1Cの特徴は、第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部側の第1のグランド電極パッド8aと第2のグランド電極パッド8bとが基板2を貫通するコンタクトプラグ8d,8d及び基板2の裏面に形成された短絡パターン8cを介して電気的に接続されており、また第1及び第2の信号電極7a,7bの終端部側の第3のグランド電極パッド8aと第4のグランド電極パッド8bとが基板2を貫通するコンタクトプラグ8d,8d及び基板2の裏面に形成された短絡パターン8cを介して電気的に接続されている点にある。短絡パターン8cと短絡パターン8cは単一のグランドパターンとして形成されてもよく、さらに基板2の裏面全体にグランドパターンが形成されてもよい。さらに、第1及び第2の信号電極パッド7a,7bは基板2のエッジに近接して配置されており、第1及び第2の終端電極パッド7a,7bも基板2のエッジに近接して配置されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0071】
短絡パターン8c,8cは、第1乃至第4のグランド電極パッド8a,8b,8a,8bと同様に、相互作用部MZの近傍領域NZの外側に配置されている。そのため、相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極は設けられていない。本実施形態によれば、第1の実施の形態と同様に、50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。
【0072】
図6は、本発明の第4の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0073】
図6に示すように、この光変調素子1Dの特徴は、第1のグランド電極パッド8aと第2のグランド電極パッド8bとが第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部に接続されたドライバ回路200内のグランドラインを介して電気的に接続されており、また第3のグランド電極パッド8aと第4のグランド電極パッド8bとが第1及び第2の信号電極7a,7bの終端部に接続された終端器300内のグランドラインを介して電気的に接続される点にある。また、第1及び第2の信号電極パッド7a,7bは基板2のエッジに近接して配置されており、第1及び第2の終端電極パッド7a,7bは基板2のエッジに近接して配置されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0074】
ドライバ回路200内のグランドライン及び終端器300内のグランドラインは、相互作用部MZの近傍領域NZの外側に配置されている。そのため、相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極は設けられていない。本実施形態によれば、第1の実施の形態と同様に、50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。
【0075】
図7は、本発明の第5の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0076】
図7に示すように、この光変調素子1Eは、第4の実施の形態による光変調素子1Dの変形例であって、図6に示したドライバ回路200及び終端器300が基板2上にフリップチップ実装されていることを特徴とするものである。その他の構成は第4の実施の形態と同様である。そのため、本実施形態による光変調素子1Eは、第4の実施の形態と同様の効果に加えて光変調素子全体の小型化を図ることができる。
【0077】
図8は、本発明の第6の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0078】
図8に示すように、この光変調素子1Fの特徴は、マッハツェンダー光導波路10が直線部と湾曲部との組み合わせにより構成されている点にある。具体的には、マッハツェンダー光導波路10は、互いに並行に配置された第1乃至第3の直線部10e,10e,10eと、第1の直線部10eと第2の直線部10eとを繋ぐ第1の湾曲部10fと、第2の直線部10eと第3の直線部10eとを繋ぐ第2の湾曲部10fとを有している。第1及び第2の湾曲部10f,10fは、光導波路の進行方向を180度方向転換するため、同心半円状に形成されている。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0079】
本実施形態において、マッハツェンダー光導波路10の第1の直線部10eの大部分と、第2の直線部10e及び第1及び第2の湾曲部10f,10fの全体と、第3の直線部10eの一部は、第1及び第2の信号電極7a,7bと共に、相互作用部MZを構成している。入力光Siは、第1の直線部10eの一端に入力され、第1の直線部10eの一端から他端に向かって進行し、第1の湾曲部10fで折り返して第2の直線部10eの一端から他端に向かって第1の直線部10eとは逆方向に進行し、さらに第2の湾曲部10fで折り返して第3の直線部10eの一端から他端に向かって第1の直線部10eと同じ方向に進行する。
【0080】
マッハツェンダー光変調素子では素子長が長いことが実用上の大きな課題となっているが、図示のように光導波路を折り返すことで素子長を大幅に短くでき、小型化に対する顕著な効果が得られる。特に、ニオブ酸リチウム膜により形成された光導波路は、湾曲部の曲率半径を例えば50μm程度まで小さくしても損失が小さいという特徴があり、本実施形態に適している。
【0081】
本実施形態においても、相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極は設けられていない。相互作用部MZを構成する第1及び第2の信号電極7a,7bの近傍に中途半端な大きさのグランド電極を設けることは高周波特性を悪化させる原因となる。特に、光導波路が第1及び第2の湾曲部10f,10fを有し、第1及び第2の湾曲部10f,10fの近傍にグランド電極が設けられている場合、湾曲部において高周波信号の漏れが大きくなり、高周波特性が悪化しやすい。しかし、本実施形態のようにグランド電極を省略した場合には、グランド電極が原因で高周波特性が悪化することがなく、光変調素子の小型化及び多重化も容易である。
【0082】
本実施形態においても、相互作用部MZの近傍領域NZの外側に位置する第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にはグランド電極が設けられている。具体的には、相互作用部MZから遠く離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部の近傍には第1及び第2のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第1のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの入力部を構成する第1の信号電極パッド7aに隣接して設けられており、第2のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの入力部を構成する第2の信号電極パッド7bに隣接して設けられている。第1及び第2のグランド電極パッド8a,8bは短絡パターン8cを介して相互に接続されている。
【0083】
第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部と同様に、相互作用部MZから遠く離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの終端部の近傍には第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第3のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの終端部を構成する第1の終端電極パッド7aに隣接して設けられており、第4のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの終端部を構成する第2の終端電極パッド7bに隣接して設けられている。第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bは短絡パターン8cを介して相互に接続されている。
【0084】
以上説明したように、本実施形態による光変調素子1Fは、相互作用部MZの近傍領域NZにグランド電極が設けられていないが、近傍領域NZの外側に位置する第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にグランド電極が設けられているので、50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。したがって、高周波特性が良好な光変調素子を提供することができる。
【0085】
図9は、本発明の第7の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0086】
図9に示すように、この光変調素子1Gの特徴は、マッハツェンダー光変調素子の2つの相互作用部を並べた2チャンネルアレイ構造を有し、第1及び第2の相互作用部MZ,MZを用いて入力光Siの直交位相変調(QPSK)又は直交振幅変調(xQAM)を行う点にある。すなわち、本実施形態による光変調素子1Gは、第1及び第2の相互作用部MZ,MZを用いて構成されたIQ光変調素子であり、第2の相互作用部MZの出力側には位相シフタ10gが設けられている。個々の相互作用部MZ,MZの構成は、図1に示したマッハツェンダー光変調素子の単一の相互作用部MZと同様である。第1及び第2の相互作用部MZ,MZの一対のRF信号入力端子(第1及び第2の信号電極パッド7a,7b)にはそれぞれ別の差動信号が印加される。
【0087】
一本の光導波路からなる入力導波路10iは、二段の分波部10cによって4分割されて4本(2対)の光導波路が形成される。すなわち、第1の相互作用部MZを構成する第1及び第2の光導波路10a,10bと、第2の相互作用部MZを構成する第1及び第2の光導波路10a,10bが形成される。光導波路の出力側では、2段の合波部10dを経て一本の出力導波路10oにまとめられる。
【0088】
本実施形態においても、第1及び第2の相互作用部MZ,MZの近傍領域NZにグランド電極は設けられておらず、特に第1の相互作用部MZの第2の信号電極7bと第2の相互作用部MZの第1の信号電極7aとの間のチャンネル間領域にもグランド電極は設けられていない。光変調素子を小型化及び多重化した場合、チャンネル間領域に十分な幅又は面積を持つグランド電極を確保することは難しく、中途半端な大きさのグランド電極はむしろ高周波特性を悪化させる原因となる。しかし、本実施形態のようにグランド電極を省略した場合には、光変調素子を小型化しても高周波特性が悪化することがなく、光変調素子の多重化も容易である。
【0089】
一方、第1及び第2の相互作用部MZ,MZの近傍領域NZから離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にはグランド電極が設けられている。具体的には、第1及び第2の相互作用部MZ,MZから遠く離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部の近傍には第1及び第2のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第1のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの入力部を構成する第1の信号電極パッド7aに隣接して設けられており、第2のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの入力部を構成する第2の信号電極パッド7bに隣接して設けられている。第1及び第2のグランド電極パッド8a,8bは短絡パターン8cを介して相互に接続されている。
【0090】
また、第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部と同様に、第1及び第2の相互作用部MZ,MZの近傍領域NZから離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの終端部の近傍には第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第3のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの終端部を構成する第1の終端電極パッド7aに隣接して設けられており、第4のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの終端部を構成する第2の終端電極パッド7bに隣接して設けられている。第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bは短絡パターン8cを介して相互に接続されている。
【0091】
以上説明したように、本実施形態による光変調素子1Gは、第1及び第2の相互作用部MZ,MZの近傍領域NZにグランド電極が設けられていないが、近傍領域NZの外側に位置する第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にグランド電極が設けられているので、50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。したがって、高周波特性が良好な光変調素子を提供することができる。
【0092】
図10は、本発明の第8の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0093】
図10に示すように、この光変調素子1Hの特徴は、マッハツェンダー光変調素子の4つの相互作用部を並べた4チャンネルアレイ構造を有し、4つの相互作用部MZ,MZ,MZ,MZを用いて偏波多重直交位相変調(DP-QPSK)を行う点にある。そのため、第1及び第2の相互作用部MZ,MZは第1のIQ変調器を構成しており、第3及び第4の相互作用部MZ,MZは第2のIQ変調器を構成しており、各々の出力は偏波多重導波路10hを介して出力される。個々の相互作用部MZ~MZの構成は、図1に示した光変調素子1Aの単一の相互作用部MZと同様である。
【0094】
本実施形態においても、第1乃至第4の相互作用部MZ,MZ,MZ,MZの近傍領域NZにグランド電極は設けられておらず、特に異なる相互作用部に属し互いに隣り合う第2の信号電極7bと第1の信号電極7aとの間のチャンネル間領域にもグランド電極は設けられていない。光変調素子を小型化及び多重化した場合、チャンネル間領域に十分な幅又は面積を持つグランド電極を確保することは難しく、中途半端な大きさのグランド電極はむしろ高周波特性を悪化させる原因となる。しかし、本実施形態のようにグランド電極を省略した場合には、光変調素子を小型化しても高周波特性が悪化することがなく、光変調素子の多重化も容易である。
【0095】
一方、第1乃至第4の相互作用部MZ,MZ,MZ,MZの近傍領域NZから離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にはグランド電極が設けられている。具体的には、第1乃至第4の相互作用部MZ,MZ,MZ,MZから遠く離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部の近傍には第1及び第2のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第1のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの入力部を構成する第1の信号電極パッド7aに隣接して設けられており、第2のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの入力部を構成する第2の信号電極パッド7bに隣接して設けられている。
【0096】
また、第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部と同様に、第1乃至第4の相互作用部MZ,MZ,MZ,MZから遠く離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの終端部の近傍には第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bが設けられている。第3のグランド電極パッド8aは第1の信号電極7aの終端部を構成する第1の終端電極パッド7aに隣接して設けられており、第4のグランド電極パッド8bは第2の信号電極7bの終端部を構成する第2の終端電極パッド7bに隣接して設けられている。第3及び第4のグランド電極パッド8a,8bは短絡パターン8cを介して相互に接続されている。
【0097】
以上説明したように、本実施形態による光変調素子1Hは、第1乃至第4の相互作用部MZ,MZ,MZ,MZの近傍領域NZにグランド電極が設けられていないが、近傍領域NZから離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の近傍にグランド電極が設けられているので、50GHz以上の高周波における放射損失を低減することができる。したがって、高周波特性が良好な光変調素子を提供することができる。
【0098】
図11は、本発明の第9の実施の形態による光変調素子の構成を示す略平面図である。
【0099】
図11に示すように、この光変調素子1Iの特徴は、図10に示した4チャンネルアレイ構造の光変調素子において、第1乃至第4の相互作用部MZ~MZが直線部と湾曲部との組み合わせにより構成されている点にある。すなわち、第6の実施の形態と第8の実施の形態の組み合わせたものである。
【0100】
本実施形態において、各チャンネルの出力は合波されず個別に出力される。そのため、マッハツェンダー光導波路10は、第1乃至第4の出力導波路10o,10o,10o,10oを有している。
【0101】
上記のように、マルチチャンネル構造において光導波路が湾曲部を有する場合にはクロストークの問題が顕著である。しかし、信号電極近傍にグランド電極が設けられていないので、クロストークを低減することができる。
【0102】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0103】
例えば、上記実施形態においては、相互作用部MZの近傍領域NZから離れた第1及び第2の信号電極7a,7bの入力部及び終端部の両方の近傍にグランド電極を設けているが、両方に設けることは必須ではなく、入力部及び終端部のどちらか一方の近傍だけにグランド電極を設けてもよい。
【0104】
また、上記実施形態においては、基板2上にエピタキシャル成長させたニオブ酸リチウム膜によって形成された一対の光導波路を有する光変調素子を挙げたが、本発明はそのような構造に限定にされず、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛などの電気光学材料により光導波路を形成したものであってもよい。ただし、ニオブ酸リチウム膜によって形成された光導波路であれば光導波路の幅を狭く形成できる一方でグランド電極のレイアウトの問題が顕著であり、本発明の効果が大きい。また、導波層3として、電気光学効果を有する半導体材料、高分子材料などを用いてもよい。
【0105】
また図1等では、信号電極を直角に曲げてなる引き出し部の構成を便宜的に示しているが、これらに限定されることなく、信号電極を円弧状に曲げてなる引き出し部などを高周波特性の観点から用いてもよい。なお、信号電極を円弧状に曲げる際の曲率は、信号電極の幅等に応じて適宜設定される。
【符号の説明】
【0106】
1A~1I 光変調素子
2 基板
3 導波層
3r リッジ部
4 保護層
5 バッファ層
6 電極層
7a 第1の信号電極
7b 第2の信号電極
7a,7a 第1の信号電極の引き出し部
7a 第1の信号電極パッド
7a 第1の終端電極パッド
7b 第2の信号電極
7b,7b 第2の信号電極の引き出し部
7b 第2の信号電極パッド
7b 第2の終端電極パッド
8a 第1のグランド電極パッド
8b 第2のグランド電極パッド
8a 第3のグランド電極パッド
8b 第4のグランド電極パッド
8c~8c 短絡パターン
8d~8d コンタクトプラグ
9a 第1のバイアス電極
9a 第1のバイアス電極の一端
9b 第2のバイアス電極
9b 第2のバイアス電極の一端
10 マッハツェンダー光導波路
10a 第1の光導波路
10b 第2の光導波路
10c 分波部
10d 合波部
10e 第1の直線部
10e 第2の直線部
10e 第3の直線部
10f 第1の湾曲部
10f 第2の湾曲部
10g 位相シフタ
10i 入力導波路
10o 出力導波路
12 終端抵抗
20A,20B 光変調素子
21 サファイア基板
22a,22b 光導波路
23 バッファ層
24a,24a,24a 信号電極
24b グランド電極
200 ドライバ回路
300 終端器
電極分離領域
1a,D1b 近傍領域
MZ 相互作用部
MZ 第1の相互作用部
MZ 第2の相互作用部
MZ 第3の相互作用部
MZ 第3の相互作用部
NZ 相互作用部の近傍領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12