(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】トーリック面を有する調節式眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2022520573
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 US2020053763
(87)【国際公開番号】W WO2021067575
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-21
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー アール.ウォルツ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アンゲロプロス
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン ルイス
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0106534(US,A1)
【文献】特表2008-543465(JP,A)
【文献】特表2018-532562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方光学面を有する前方要素と、後方光学面を有する後方要素と
、それらの間に画定される流体で満たされた光学流体室と
、を有する光学
部を備え、
前記前方光学面と前記後方光学面のうち少なくとも1つは、前記前方光学面と前記後方光学面のうち
の少なくとも1つの曲率半径が、異なる光学表面子午線に沿って異なったものであ
り、
前記光学部のベース度数は前記流体で満たされた光学流体室内の圧力に基づいて変化し、
前記光学部の円柱度数は前記光学部のベース度数が前記流体で満たされた光学流体室の前記圧力の変化に応じて前記変化を行う間に概ね不変である、
トーリック調節式眼内レンズ。
【請求項2】
前記後方光学面は、前記後方光学面の前記曲率半径が前記後方光学面の異なる光学表面子午線に沿って異なるように形成されている、請求項1に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項3】
前記後方光学面の前記曲率半径は前記後方光学面の周囲で周期的に変化する、請求項2に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項4】
前記後方要素は回転対称である後方内面を更に備える、請求項2に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項5】
前記後方要素は、前記後方光学面から前記後方内面へ計測した後方要素厚さを有し、前記後方要素厚さは前記後方要素の周囲で周期的に変化する、請求項4に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項6】
前記前方光学面は非球面である、請求項2に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項7】
前記前方光学面は、前記前方光学面の前記曲率半径が前記前方光学面の異なる光学表面子午線に沿って異なるように形成されている、請求項1に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項8】
前記前方光学面の前記曲率半径は前記前方光学面の周囲で周期的に変化する、請求項7に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項9】
前記前方要素は回転対称である前方内面を更に備える、請求項8に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項10】
前記前方要素は、前記前方光学面から前記前方内面へ計測した前方要素厚さを有し、前記前方要素厚さは前記前方要素の周囲で周期的に変化する、請求項9に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項11】
前記後方光学面は非球面である、請求項7に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項12】
前記光学部の円柱軸配向は、前記光学部のベース度数が前記流体で満たされた光学流体室内の前記圧力の変化に応じて前記変化を行う間に概ね不変である、
請求項1に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項13】
前記前方光学面及び前記後方光学面のうち前記少なくとも1つは平坦子午線と、前記平坦子午線に概ね直角に配された急峻子午線とを有し、前記曲率半径は前記急峻子午線に沿って
最小であり、前記曲率半径は前記平坦子午線に沿って
最大である、請求項1に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項14】
前記平坦子午線は前記光学部を概ね二分する正中線に対して斜角に配置される、
請求項13に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項15】
前記斜角は時計回りに
30度から60度の間の回転角である、
請求項14に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項16】
第1のハプティック-光学インターフェースにて前記光学部に接続された第1のハプティックと、前記第1のハプティック-光学インターフェースと直径方向に対向して位置する第2のハプティック-光学インターフェースにて前記光学部に接続された第2のハプティックとを更に備え、前記正中線は前記第1のハプティック-光学インターフェースと前記第2のハプティック-光学インターフェースを概ね二分する、
請求項14に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項17】
前記光学部は、前記流体で満たされた光学流体室をハプティック流体室と流体連通させる第1の流体チャネルの対と前記流体で満たされた光学流体室をもう1つのハプティック流体室と流体連通させる第2の流体チャネルの対とを備え、前記正中線は前記第1の流体チャネルの対の間と前記第2の流体チャネルの対の間に延びる、
請求項14に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項18】
光学部であって、光学外表面と、前記光学部内に画定された流体で満たされた光学流体室と、を備えた光学部を備え、
前記光学外表面の屈折度数は前記光学外表面の急峻子午線に沿って最大であり、前記光学外表面の前記屈折度数は前記光学外表面の平坦子午線に沿って最小であ
り、
前記光学部のベース度数は前記流体で満たされた光学流体室内の圧力に基づいて変化し、
前記平坦子午線と前記急峻子午線との間の相対屈折度数は前記光学部の前記ベース度数が前記流体で満たされた光学流体室の前記圧力の変化に応じて前記変化を行う間に概ね不変である、
トーリック調節式眼内レンズ。
【請求項19】
前記平坦子午線の方向は、前記光学部の前記ベース度数が前記流体で満たされた光学流体室内の前記圧力の変化に応じて前記変化を行う間に概ね不変である、
請求項18に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項20】
前記光学外表面の反対のもう1つの光学面は非球面である、
請求項18に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項21】
前記平坦子午線は前記光学部を概ね二分する正中線に対して斜角に配置される、
請求項18に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項22】
第1のハプティック-光学インターフェースにて前記光学部に接続された第1のハプティックと、前記第1のハプティック-光学インターフェースと直径方向に対向して位置する第2のハプティック-光学インターフェースにて前記光学部に接続された第2のハプティックとを更に備え、前記正中線は前記第1のハプティック-光学インターフェースと前記第2のハプティック-光学インターフェースを概ね二分する、
請求項21に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項23】
前記光学部は、前記流体で満たされた光学流体室をハプティック流体室と流体連通させる第1の流体チャネルの対と前記流体で満たされた光学流体室をもう1つのハプティック流体室と流体連通させる第2の流体チャネルの対とを備え、前記正中線は前記第1の流体チャネルの対の間と前記第2の流体チャネルの対の間に延びる、
請求項21に記載のトーリック調節式眼内レンズ。
【請求項24】
光学外表面を備えた変形光学部を備え、
前記光学外表面の屈折度数は前記光学外表面の急峻子午線に沿って最大であり、前記光学外表面の前記屈折度数は前記光学外表面の平坦子午線に沿って最小であり、
前記変形光学部のベース度数は前記変形光学部による
変形に応じて変化
し、
トーリック調節式眼内レンズが患者の体内に移植されたときに、前記変形光学部は前記患者の生理的な筋肉の動きに応じて変形し、
前記平坦子午線と前記急峻子午線との間の相対屈折度数は前記変形光学部の前記ベース度数が変化を行う間に概ね不変である、
トーリック調節式眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月4日に出願されその内容が参照により本明細書に援用される米国特許仮出願第62/911020号明細書の利益を主張する。
【0002】
本開示は概して眼内レンズの分野に関し、より具体的には、トーリックレンズ面を有する調節式眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
白内障は、患者の眼内の、正常であれば透明な水晶体が曇る病気である。白内障は、加齢、遺伝、外傷、炎症、代謝異常、又は放射線被曝などの原因により発生する。加齢に関係する白内障が最も一般的な種類の白内障である。白内障の治療として、外科医は患者の水晶体基盤を水晶体被膜から取り外し、眼内レンズ(IOL)と置換する。従来のIOLは、患者が遠見視力を得られるよう、1つ以上の選択された焦点距離を提供する。しかし患者の眼は、物体の鮮明な画像を維持したり、物体への距離は様々である故に物体へ焦点を合わせたりする目的で物体へ焦点を合わせること(又は光学的な度数を変更すること)がもはやできないので、従来のIOLを装着した患者は、多くの場合、白内障手術後、特定の活動のために眼鏡又は補正用アイウエアを必要とする。
【0004】
調節式IOLのようなより新しいIOLにより、眼はいくらかの焦点を合わせる能力を取り戻すことができる。調節式IOL(AIOL)は眼内の力を使用して光学システムのある部分を変化させることにより、遠くの、又は近くの対象に焦点を合わせる。これは動的デフォーカス、及び低次の収差と考えられる。AIOLの例は、その内容が参照により本明細書に援用される、以下の米国特許出願公開第2018/0256315号明細書、米国特許出願公開第2018/0153682号明細書、及び米国特許出願公開第2017/0049561号明細書、並びに以下の米国特許明細書米国特許第10299913号明細書、米国特許第10195020号明細書及び米国特許第8968396号明細書にて議論される。
【0005】
低次の乱視に加えて、高次の乱視もまた視覚の妨害を起こし、人工レンズにより補正するのが一般的である。これらの乱視には円柱状の非点収差及び球面収差が含まれ得る。円柱状の非点収差は一般的に角膜に自然に発生し、白内障の既往の患者の多くはある程度の乱視を有する。トーリックIOLは白内障の手術時に乱視を補正するために使用されてきた一方、従来のIOLは視力調節ができないため、このようなトーリックIOLは従来のIOLと同様な欠点を有する。
【0006】
更に、全てのトーリックレンズ製造者が直面する困難として、レンズは子午線ごとに異なる度数を有するため、移植後にレンズの円柱軸配向を維持することが極めて重要であるということがある。このような困難は視力調節と同時に乱視の補正が試みられる場合、又は視力調節と同時に球面収差の補正が試みられる場合に更に難しくなる。
【0007】
従って、従来のIOL及びトーリックIOLの上述の欠点及び不利益に対処する解決策が必要である。そのような解決策は過度に複雑でなく、コスト効率良く製造できるものであるべきである。
【発明の概要】
【0008】
角膜乱視を補正する調節式眼内レンズ及び角膜無非点収差と球面収差を補正する調節式眼内レンズが開示される。ある実施形態では、前方要素と後方要素を備える光学部を備えるトーリック調節式眼内レンズが開示される。前方要素は前方光学面を備えていてもよい。後方要素は後方光学面を備えていてもよい。前方要素と後方要素の間に流体で満たされた光学流体室を画定してもよい。前方光学面と後方光学面のうち少なくとも1つは、前方光学面と後方光学面のうち少なくとも1つの曲率半径が、異なる光学表面子午線に沿って異なったものでるよう形成されていてもよい。
【0009】
幾つかの実施形態では、後方光学面の曲率半径は後方光学面の周囲にて周期的に変化してもよい。特定の実施形態において、曲率半径は後方光学面の周囲にて周期的に(例えば正弦曲線として)変化する。
【0010】
後方要素は更に後方内面を備えていてもよい。後方内面は光学流体室に面した後方要素の面であってもよい。後方内面は回転対称、又は概ね回転対称であってもよい。後方内面の曲率半径が全ての表面子午線に沿って同じ又は概ね同じ場合に、後方内面は回転対称であってもよい。
【0011】
後方要素は更に後方光学面から後方内面へ計測した後方要素厚さを有してもよい。後方要素厚さは、後方要素厚さが異なる光学表面子午線に沿って異なるように、後方要素の周囲で周期的に変化してもよい。後方要素厚さは後方要素の周囲にて正弦曲線的に変化してもよい。
【0012】
幾つかの実施形態では、前方光学面の曲率半径は前方光学面の周囲にて周期的に変化してもよい。前方光学面の曲率半径は、1つの光学表面子午線に沿った曲率半径が前方光学面の別の光学表面子午線に沿った曲率半径と異なる場合に、前方光学面の周囲にて周期的に変化してもよい。特定の実施形態において、曲率半径は前方光学面の周囲を周期的に(例えば正弦曲線として)変化する。
【0013】
前方要素は更に前方内面を備えていてもよい。前方内面は光学流体室に面した前方要素の面であってもよい。幾つかの実施形態では、前方内面の少なくとも一部と後方内面とは光学流体室の室壁の役割を果たしてもよい。前方内面は回転対称、又は概ね回転対称であってもよい。前方内面の曲率半径が全ての表面子午線に沿って同じ又は概ね同じ場合に、前方内面は回転対称であってもよい。
【0014】
前方要素は前方光学面から前方内面へ計測した前方要素厚さを有してもよい。前方要素厚さは、前方要素厚さが異なる光学表面子午線に沿って異なるように、前方要素の周囲で周期的に変化してもよい。前方要素厚さは前方要素の周囲にて正弦曲線的に変化してもよい。
【0015】
前方光学面と後方光学面のうち少なくとも1つは平坦子午線と、平坦子午線に対して概ね直角に配された急峻子午線とを備えていてもよい。曲率半径は急峻子午線に沿って最小であり、曲率半径は平坦子午線に沿って最大である。
【0016】
トーリック調節式眼内レンズの光学外表面(後方光学面又は前方光学面)の屈折度数は光学外表面の急峻子午線に沿って最大になってもよく、光学外表面の屈折度数は同じ光学外表面の平坦子午線に沿って最小になってもよい。急峻子午線と平坦子午線とはレンズの主子午線であってもよい。平坦子午線はまたトーリックレンズの円柱軸又は単に「軸」のことであってもよい。
【0017】
例えば、後方光学面の曲率半径は後方光学面の急峻子午線に沿って最小であってもよい。後方光学面の曲率半径は同じ後方光学面の平坦子午線に沿って最大であってもよい。更に、後方要素厚さは平坦子午線に沿って最大であっても(又は最も厚くても)よい。後方要素厚さは急峻子午線に沿って最小であっても(又は最も薄くても)よい。
【0018】
また、例えば、前方光学面の曲率半径は前方光学面の急峻子午線に沿って最小であってもよい。前方光学面の曲率半径は同じ前方光学面の平坦子午線に沿って最大であってもよい。更に、前方要素厚さは平坦子午線に沿って最大であっても(又は最も厚くても)よい。前方要素厚さは急峻子午線に沿って最小であっても(又は最も薄くても)よい。
【0019】
光学部はベース度数又はベース球面度数を有してもよい。光学部のベース度数は流体で満たされた光学流体室の内部の流体圧力に基づいて変化してもよい。光学流体室へ流体が出入りするに従って光学部のベース度数が減少又は増加してもよい。光学流体室への流体の出入りに応じて光学部の形状が変化してもよい。特定の実施形態においては、光学流体室への流体の出入りに応じて光学部の前方要素の形状が変化してもよい。他の実施形態において、光学流体室への流体の出入りに応じて光学部の後方要素の形状が変化してもよい。更なる実施形態においては、光学流体室への流体の出入りに従って光学部の前方要素と後方要素双方の形状が変化してもよい。
【0020】
変形光学部(例えば前方要素、後方要素、又はそれらの組み合わせ)による変形に応じて光学部のベース度数が変化してもよい。トーリック調節式眼内レンズが患者の体内に移植されたときに、変形光学部は患者の生理的な筋肉の動き(例えば毛様体筋の運動)に応じて変形する。
【0021】
幾つかの実施形態では、トーリック調節式眼内レンズは光学部に接続され光学部から延びる1つ以上のハプティックを備えていてもよい。1つ以上のハプティックのそれぞれはハプティック内にハプティック流体室を備えていてもよい。ハプティック流体室から光学流体室へ流体が流入するに従って光学部のベース度数が増加してもよい。光学流体室からハプティック流体室へ流体が流出する、又は引き出されるに従って光学部のベース度数が減少してもよい。
【0022】
光学流体室はハプティック流体室と流体連通であるか又は流体接続されてもよい。光学流体室はハプティック流体室と1対の流体チャネルを通して流体連通であってもよい。流体チャネルは光学流体室をハプティック流体室へ流体接続する導管又は通路であってもよい。流体チャネルの対は互いに間隔を空けて配置されてもよい。例えば、流体チャネルの対は約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。
【0023】
幾つかの実施形態では、流体チャネルの対は光学部の一部を通って画定され、そして延びていてもよい。より具体的には、流体チャネルの対は後方要素を通って画定され、そして延びていてもよい。
【0024】
1つ以上のハプティックはハプティック-光学インターフェースにて光学部に接続されてもよい。1つ以上のハプティックは光学部に沿った補強部にて光学部に接続されてもよい。補強部はハプティック-光学インターフェースの一部であってもよい。流体チャネルの対は補強部内にて画定又は形成されていてもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、トーリック調節式眼内レンズは光学部に接続され光学部から延びる2つのハプティックを備えていてもよい。第1のハプティックは、第1のハプティック内に第1のハプティック流体室を備えていてもよい。第2のハプティックは、第2のハプティック内に第2のハプティック流体室を備えていてもよい。第1のハプティックは第1のハプティック-光学インターフェースにて光学部へ接続されてもよく、第2のハプティックは第2のハプティック-光学インターフェースにて光学部へ接続されてもよい。
【0026】
これらの実施形態では、光学流体室は第1のハプティック流体室と第2のハプティック流体室の双方と流体連通であってもよい。光学流体室は、第1のハプティック流体室と、第1の流体チャネルの対を通して流体連通であってもよい。光学流体室は、第2のハプティック流体室と、第2の流体チャネルの対を通して流体連通であってもよい。
【0027】
第1の流体チャネルの対は互いに間隔を空けて配置されてもよい。第1の流体チャネルの対は約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。第2の流体チャネルの対は互いに間隔を空けて配置されてもよい。第2の流体チャネルの対は約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。
【0028】
第1の流体チャネルの対と第2の流体チャネルの対は光学部の一部を通って画定され、そして延びていてもよい。第1の流体チャネルの対と第2の流体チャネルの対は後方要素を通って画定され、そして延びていてもよい。
【0029】
光学部はまた光学部の概ね対向する位置、又は互いに概ね直径方向に対向する位置に第1の補強部と第2の補強部とを備えていてもよい。第1の流体チャネルの対は第1の補強部内にて画定又は形成されていてもよい。第2の流体チャネルの対は第2の補強部内にて画定又は形成されていてもよい。
【0030】
第1の流体チャネルの対は、光学部内に画定された第1の開口の対を終端としてもよい。第1の流体チャネルの対は、後方要素内に画定された第1の開口の対を終端としてもよい。第1の開口の対は約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。第2の流体チャネルの対は、光学部内に画定された第2の開口の対を終端としてもよい。第2の流体チャネルの対は、後方要素内の第2の開口の対を終端としてもよい。第2の開口の対は約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、第1の流体チャネルの対と第2の流体チャネルの対は光学部の概ね対向する位置に配されてもよい。第1の流体チャネルの対は第2の流体チャネルの対から概ね直径方向に対向する位置に配されてもよい。
【0032】
これらの実施形態では、第1の開口の対と第2の開口の対は光学部の概ね対向する位置に配されてもよい。第1の開口の対は第2の開口の対から概ね直径方向に対向する位置に配されてもよい。
【0033】
前に議論したように、光学部のベース度数又はベース球面度数は流体で満たされた光学流体室の内部の流体圧力に基づいて変化してもよい。トーリック調節式眼内レンズはまた円柱度数を有していてもよい。
【0034】
トーリック調節式眼内レンズの円柱度数はトーリック調節式眼内レンズの急峻子午線に沿った屈折度数であってもよい。円柱度数は、多くの場合、急峻子午線に沿ったトーリックレンズの急な曲率によりもたらされる、屈折度数の差(例えば+1.0D又は+3.0D)で表現される。
【0035】
幾つかの実施形態では、トーリック調節式眼内レンズは約+0.75Dから約+6.00Dの間の円柱度数を有してもよい。例えば、トーリック調節式眼内レンズは約+0.75D、+1.50D、+2.25D、+3.00D、+3.75D、+4.50D、+5.25D又は+6.00Dの円柱度数を有してもよい。幾つかの実施形態では、トーリック調節式眼内レンズは約+0.75Dの円柱度数を有してもよい(低円柱度数と称される)。他の実施形態では、トーリック調節式眼内レンズは約+6.0Dの円柱度数を有してもよい(高円柱度数と称される)。
【0036】
出願者が直面する1つの技術的な問題は、レンズの視力調節又は視力調節解除時にベース度数の変化が起こったときに、調節式眼内レンズの円柱度数が概ね不変又は安定するように調節式眼内レンズに円筒度又はトーリック面をどのように導入するか(例えば約±1.0から約10.0の間のベース度数の変化)である。
【0037】
出願者により発見された1つの解決法は、光学外表面の反対側の内面(例えば後方内面又は前方内面)を回転対称に保ちながら、光学外表面(例えば後方光学面又は前方光学面)の曲率半径を変化させることである。本開示によるもう1つの解決法は光学外表面の平坦子午線の方向を、光学部を概ね二分する正中線に対して斜角にすることである。平坦子午線の方向を変えることについてこの後の章でより詳しく議論する。
【0038】
トーリック調節式眼内レンズをこのように設計することにより、光学部の円柱度数を、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室の流体圧力の変化に応じて変化する間に概ね不変又は安定した状態に維持することができる。例えば、光学部のベース度数が視力調節又は視力調節解除の際に変化する場合に、急峻子午線と平坦子午線の間の相対的な屈折度数を概ね不変又は安定した状態に維持することができる。
【0039】
トーリック調節式眼内レンズはまた円柱軸配向を有していてもよい。円柱軸配向はレンズの子午線の方向又は位置のことであってもよい。例えば、円柱軸配向は平坦子午線(すなわち円柱軸)急峻子午線、又はそれらの組み合わせの、レンズのその他の要素に対する相対的な方向又は位置のことであってもよい。円柱軸配向はまた、レンズのある子午線の別の子午線に対する相対的な方向又は位置のことであってもよい。
【0040】
出願者が直面する別の技術的問題は、レンズの視力調節又は視力調節解除におけるベース度数の変化を通してどのようにしてトーリック調節式眼内レンズの円柱軸配向を概ね不変又は固定にするかということである。眼内に移植されたときに大きく変化する円柱軸配向を有するトーリック眼内レンズは良く言えばメリットがなく(又は乱視補正効果がなく)、悪く言えば患者の視力に悪影響を与える(例えばその他の子午線上に乱視を誘発する)。
【0041】
出願者が発見した1つの解決法は、トーリック調節式眼内レンズの平坦子午線の方向を光学部を概ね二分する正中線に対して斜角にすることである。トーリック調節式眼内レンズをこのように設計することにより、光学部の円柱軸配向を、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室の内部の流体圧力の変化に応じて変化する間に概ね不変に維持することができる。例えば、トーリック調節式眼内レンズの平坦子午線の方向又は位置は、視力調節又は視力調節解除を通して光学部のベース度数が変化しても眼の角膜乱視軸に対して概ね不変又は固定に維持することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、斜角は正中線に対して時計回りに回転した角度であってもよい。例えば、斜角は時計回りに約30度と60度の間の回転角であってもよい。より具体的には、平坦子午線は正中線に対して約30度と60度の間の時計回りの回転角であってもよい。特定の実施形態では、斜角は時計回りに約45度回転した角度であってもよい。より具体的には、平坦子午線は正中線に対して約45度の回転角であってもよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、正中線は光学部を概ね二分する、又は光学部を半分に分ける線又は軸であってもよい。これらの、及びその他の実施形態では、正中線はハプティック-光学インターフェースを概ね二分するか、又はハプティック-光学インターフェースの中央部を通って延びてもよい。例えば、正中線は第1のハプティック-光学インターフェース及び第2のハプティック-光学インターフェースの双方を概ね二分してもよい。この正中線はまた第1の補強部及び第2の補強部の内部を通るか、概ね二分してもよい。
【0044】
前に議論したように、光学部は、流体で満たされた光学流体室をハプティック流体室と流体連通状態にする少なくとも1対の流体チャネルを備えていてもよい。正中線は流体チャネルの対の間に延びているか、又は流体チャネルの対を分離する光学部の一部分を概ね二分してもよい。幾つかの実施形態では、正中線は開口の対の間に延びてもよく、又は流体チャネルの対の端部に設けられた開口の対を分離する光学部の一部分を二分してもよい。例えば、光学部は第1の流体チャネルの対及び第2の流体チャネルの対を備えていてもよく、正中線は第1の流体チャネルの対及び第2の流体チャネルの対を分離する光学部の一部分の間に延びるか、又はその光学部の一部分を概ね二分してもよい。
【0045】
幾つかの実施形態では、前方要素は、前方光学面が非球面であってもよく、又は、流体で満たされた光学流体室へ流体が流入することに応じて球面構成から非球面構成へ変形してもよい。幾つかの実施形態では、流体は流体で満たされた光学流体室へ、光学部に接続されたハプティックの1つ以上のハプティック流体室から流入してもよい。
【0046】
他の実施形態では、後方要素は、後方光学面が非球面であってもよく、又は、流体で満たされた光学流体室へ流体が流入することに応じて球面構成から非球面構成へ変形してもよい。非球面構成は球面収差のような高次乱視を補正することができる。
【0047】
出願者が直面する追加の技術的問題は、どのようにして調節式眼内レンズへ円筒度/円環性、及び非球面性を導入するかということである。角膜乱視及び球面収差の双方を補正できる調節式眼内レンズにより、そのような高次の乱視に苦しむ白内障患者が、ただ1対の調節式眼内レンズにより乱視を補正することが可能になり得る。
【0048】
出願者により発見された1つの解決策は、トーリックレンズ表面を有する光学外表面から、非球面構成に変化する光学外表面を分離することである。例えば、調節式眼内レンズは、非球面である光学面が、トーリック光学面を有するレンズ要素の反対のレンズ要素上にあるように構成することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、後方要素は後方光学面の異なる光学表面子午線に沿った曲率半径が異なる形状であり、前方要素が非球面であってもよい。
【0050】
他の実施形態では、前方要素は前方光学面の異なる光学表面子午線に沿った曲率半径が異なる形状であり、後方要素が非球面であってもよい。
【0051】
円柱度数及び円柱軸配向と同様に、視力調節又は視力調節解除時の特定の又は全てのベース度数の変化を通して、光学外表面の非球面性が維持されるか、又は安定していてもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、光学外表面(前方光学面又は後方光学面)は流体が前方要素と後方要素とで画定される流体で満たされた光学流体室へ流入する際に加圧され非球面構成となってもよい。光学外表面が加圧され、光学要素(前方要素又は後方要素)の中心又は中心部が、接着剤又は接着層により抑えられている光学要素の外周部よりも外側に屈曲又は膨出し、非球面構成となってもよい。
【0053】
接着剤又は接着層は後方要素へ前方要素を接着させるか、接合させてもよい。接着剤又は接着層は概ね環状であってもよい。
【0054】
これらの、及びその他の実施形態では、光学要素は
中心又は中心部における厚さが周辺部と比較してより大きくてもよい。この厚さの違いは、流体が流体で満たされた光学流体室へ流入する際に、光学外表面が球面構成から非球面構成へと変形することに寄与し得る。例えば、前方要素の中心又は中心部の厚さは前方要素の周辺部の厚さよりも大きくてもよい。この厚さの違いは、光学流体室の内部流体圧力が増加する際に前方光学面が球面構成から非球面構成へと変形することに寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】
図1Aはトーリック調節式眼内レンズの実施形態の平面図である。
【
図1B】
図1Bはトーリック調節式眼内レンズの実施形態の断面図である。
【
図1C】
図1Cはトーリック調節式眼内レンズの実施形態の分解図である。
【
図2A】
図2Aはトーリック調節式眼内レンズの実施形態の後方要素の平面図である。
【
図3A】
図3Aはトーリック調節式眼内レンズの実施形態の前方要素の平面図である。
【
図4】
図4は、トーリック調節式眼内レンズの正中線に対する平坦子午線の方向を示す図である。
【
図5】
図5はトーリック調節式眼内レンズの特定の度数の変化をレンズの光学流体室の内部流体圧力の関数として示すグラフである。
【
図6】
図6はトーリック回転の量に対する円柱の安定性を、眼内レンズの正中線に対する円柱軸の角度の関数として表すグラフである。
【詳細な説明】
【0056】
図1Aは角膜乱視、球面収差、又はそれらの組み合わせを補正するトーリック調節式眼内レンズ(AIOL)100の実施形態の平面図である。トーリックAIOL100は光学部102及び、本実施形態では光学部102に接続され、光学部102から周辺へ延びる第1のハプティック104A及び第2のハプティック104Bを含む1つ以上のハプティック104を備える周辺部を備えていてもよい。トーリックAIOL100は生来の水晶体が除去された後の、生来の水晶体嚢に配置される。
【0057】
生来の水晶体嚢内に移植されると、光学部102は、眼に進入し網膜に達する光を屈折させるように適合され得る。1つ以上のハプティック104は水晶体嚢に係合してもよく、水晶体嚢の再形成に関連して毛様体筋の動き(例えば筋肉の弛緩、筋肉の収縮、またはその組み合わせ)に応じて変形するように適合する。ハプティック104が水晶体嚢と係合することに関してはこの後の章でより詳しく議論する。
【0058】
図1Bは、トーリックAIOL100の実施形態の、
図1AのA-Aに沿った断面図である。
図1Bに示されるように、光学部102は前方要素106及び後方要素108を備えていてもよい。前方要素106と後方要素108の間に流体で満たされた光学流体室110を画定してもよい。
【0059】
前方要素106は前方光学面112及び前方光学面112の反対側に前方内面114を備えていてもよい。後方要素108は後方光学面116及び後方光学面116の反対側に後方内面118を備えていてもよい。前方光学面112、後方光学面116、又はそれらの組み合わせのうち任意のものは光学外表面と考えられ、称されてもよい。前方内面114及び後方内面118は光学流体室110に面していてもよい。前方内面114の少なくとも一部及び後方内面118の少なくとも一部は光学流体室110の室壁の役割を果たしてもよい。
【0060】
1つ以上のハプティック104のそれぞれはハプティック104内にハプティック流体室120を備えていてもよい。例えば、第1のハプティック104Aは第1のハプティック104A内に第1のハプティック流体室120Aを備えてもよく、第2のハプティック104Bは第2のハプティック104B内に第2のハプティック流体室120Bを備えていてもよい。ハプティック流体室120(例えば第1のハプティック流体室120A、第2のハプティック流体室120B、又はそれらの組み合わせのうち任意のもの)は光学流体室110と流体連通であるか又は流体接続されていてもよい。
【0061】
光学流体室110は1つ以上のハプティック流体室120と1対の流体チャネル122(
図1A参照)を通して流体連通であってもよい。流体チャネル122は光学流体室110をハプティック流体室120へ流体接続する導管又は通路であってもよい。流体チャネル122の対は互いに間隔を空けて配置されてもよい。例えば、流体チャネル122の対は約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。幾つかの実施形態では、流体チャネル122の対のそれぞれは約0.4mmから約0.6mmの間の直径を有してもよい。
【0062】
幾つかの実施形態では、流体チャネル122の対は光学部102の一部を通って画定され、そして延びていてもよい。より具体的には、流体チャネル122の対は後方要素108を通って画定され、そして延びていてもよい。
【0063】
図1Aは1つ以上のハプティック104がハプティック-光学インターフェース124にて光学部102に接続されてもよいことを示す。例えば、1つ以上のハプティック104は光学部102に沿った補強部126(
図1C参照)にて光学部に接続されてもよい。補強部126はハプティック-光学インターフェース124の一部であってもよい。流体チャネル122の対は補強部126内にて画定又は形成されていてもよい。
【0064】
光学流体室110は、第1のハプティック流体室120Aと、第1の流体チャネルの対122Aを通して流体連通であってもよい。光学流体室110は、第2のハプティック流体室120Bと、第2の流体チャネルの対122Bを通して流体連通であってもよい。
【0065】
第1の流体チャネル122Aの対の2つの流体チャネルは互いに間隔を空けて配置されてもよい。第1の流体チャネル122Aの対の2つの流体チャネルは互いに約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。第2の流体チャネル122Bの対の2つの流体チャネルは互いに間隔を空けて配置されてもよい。第2の流体チャネル122Bの対の2つの流体チャネルは互いに約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。
【0066】
幾つかの実施形態では、第1の流体チャネル122Aの対と第2の流体チャネル122Bの対は光学部102から概ね対向する位置に配されてもよい。第1の流体チャネル122Aの対は第2の流体チャネル122Bの対から概ね直径方向に対向する位置に配されてもよい。
【0067】
第1の流体チャネル122Aの対と第2の流体チャネル122Bの対は光学部102の一部を通って画定され又は延びていてもよい。第1の流体チャネル122Aの対と第2の流体チャネル122Bの対は後方要素108を通って画定され又は延びていてもよい。
【0068】
1つのチャネルよりも2つの流体チャネル122を有する設計により、曲げやすく薄い構成要素の製造時に重要となり得る、製造時の寸法安定性を維持することができる。加えて、2つの流体チャネル122を有する設計により、視力調節の範囲全体に渡って、特定の1チャネル設計よりもより良い光学品質が提供されたことが実験により観察された。2つの流体チャネル設計により剛性がより高まることで、流体チャネルの圧力の変化による偏向がより少なくなった。
【0069】
図1Cに示されるように、光学部102は、光学部102の互いに概ね対向する位置、又は概ね直径方向に対向する位置に第1の補強部126Aと第2の補強部126Bとを備えていてもよい。第1の流体チャネル122Aの対は第1の補強部内126Aにて画定又は形成されていてもよい。第2の流体チャネル122Bの対は第2の補強部内126Bにて画定又は形成されていてもよい。
【0070】
流体チャネル122の対(例えば第1の流体チャネル122Aの対又は第2の流体チャネル122Bの対のうち任意のもの)は流体チャネル122の対の一端に設けられた内部開口128及び流体チャネル122の他端に設けられた外部開口130の対を有してもよい。内部開口の対128は後方要素108の一部に画定又は形成されていてもよい。
図1B及び
図1Cに示されるように、内部開口128は後方要素108の隆起内面132に画定又は形成されていてもよい。幾つかの実施形態では、隆起内面132は傾斜面又は面取りされた面であってもよい。
【0071】
外部開口の対130は後方要素108の隆起外面134に画定又は形成されていてもよい。隆起外面134は補強部126の一部であってもよい。隆起外面134もまたハプティック-光学インターフェース124の一部であってもよい。
【0072】
例えば、
図1Cは第1の流体チャネル122Aの対の一端に設けられ後方要素108の隆起内面132に沿って画定された内部開口128の対を示す。
図1Cはまた第2の流体チャネル122Bの対の端部として機能し後方要素108の隆起外面134に沿って画定された外部開口130の対を示す。第1の流体チャネル122Aの対の外部開口130の対及び第2の流体チャネル122Bの対の内部開口128の対は
図1Cでは不明瞭である。
【0073】
内部開口128の対の2つの開口は互いに約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。外部開口130の対の2つの開口は互いに約0.1mmから約1.0mmの間隔が空いていてもよい。第1の流体チャネル122Aの対の内部開口128の対は、隆起内面132において、第2の流体チャネル122Bの対の内部開口128の概ね直径方向に対向する位置又は反対側に配されてもよい。
【0074】
図1Cはまた各ハプティック104(例第1のハプティック104A又は第2のハプティック104Bのうち任意のもの)は光学接続端136及び閉鎖自由端138を有してもよいことを示す。ハプティック流体ポート140がハプティック104の光学接続端136にて画定されてもよい。ハプティック流体ポート140はハプティック流体室120の開口として機能してもよい。ハプティック104が光学部102と接続されているとき、ハプティック流体室120内の流体はハプティック流体ポート140を通ってハプティック流体室120から流出し、流体チャネル122の対を介して光学流体室110へ流入してもよい。同様に、光学流体室110内の流体は流体チャネル122の対を通って光学流体室110から流出し、ハプティック流体ポート140を通ってハプティック流体室120へ流入してもよい。
【0075】
図1A及び
図1Cに示されるように、ハプティック104は補強部126にて光学部102へ接続されてもよい。例えば、第1のハプティック104Aは光学部102へ第1の補強部126Aにて接続又は取り付けられもよく、第2のハプティック104Bは光学部102へ第2の補強部126Bにて接続又は取り付けられてもよい。
【0076】
より具体的には、ハプティック接続端136は後方要素108の隆起外面134に接続されてもよい。隆起外面134はまた「ランディング」又は「ハプティック接続端ランディング」と称されてもよい。隆起外面134は光学部102の外周面142から放射状に延びてもよい。例えば、隆起外面134は光学部102の後方要素108の外周面142から放射状に延びてもよい。隆起外面134は外周面142から約10ミクロンから1.0mmの間、又は約10ミクロンから500ミクロンの間、放射状に延びてもよい。
【0077】
隆起外面134の概ね平坦な面に接着、さもなければ接続するために、ハプティック接続端136は概ね平坦な表面を有してもよい。ハプティック接続端136が隆起外面134に接続されているとき、ハプティック流体ポート140は流体チャネル122の外部開口130を包囲していてもよい。ハプティック104は光学部102に生体適合性の接着剤を用いて接続又は接着されていてもよい。幾つかの実施形態では、接着剤は前方要素106を後方要素108に接続又は接着するために使用した接着剤と同じ接着剤であってもよい。
【0078】
各ハプティック104はまた、トーリックAIOL100が水晶体嚢内に移植されたときに患者の水晶体嚢の内表面に面し接触する、半径方向に外側の部分144を備えていてもよい。各ハプティック104はまた光学部102の外周面142に面する半径方向に内側の部分146を備えていてもよい。水晶体嚢がハプティック104の半径方向に外側の部分144と係合することに関してはこの後の章でより詳しく議論する。
【0079】
光学部102はベース度数又はベース球面度数を有してもよい。光学部102のベース度数は流体で満たされた光学流体室110の内部の流体圧力に基づいて変化してもよい。光学流体室110へ流体が出入りするに従って光学部102のベース度数が減少又は増加してもよい。
【0080】
ハプティック流体室120から光学流体室110へ流体が流入するに従って光学部102のベース度数が増加してもよい。光学流体室110からハプティック流体室120へ流体が流出する、又は引き出されるに従って光学部102のベース度数が減少してもよい。
【0081】
光学部102の一部は変形可能な、又は曲げやすい材料でできていてもよい。幾つかの実施形態では、光学部102の一部は変形可能な、又は曲げやすい高分子材料でできていてもよい。例えば、前方要素106、後方要素108、又はそれらの組み合わせの一部は、変形可能な又は曲げやすい高分子材料でできていてもよい。1つ以上のハプティック104(例えば第1のハプティック104A、第2のハプティック104B、又はそれらの組み合わせ)の一部は、光学部102と同じ、変形可能な又は曲げやすい材料でできていてもよい。
他の実施形態では、1つ以上のハプティック104の一部は光学部102と異なる材料でできていてもよい。
【0082】
幾つかの実施形態では、光学部102の一部は共重合体混合物を含む架橋共重合体でできていてもよい。共重合体混合物はアルキルアクリレート又はメタクリレート、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、及びフェニルアルキルアクリレートを含んでもよい。本明細書では、これらの型のアクリル架橋共重合体は一般には複数のアクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの組み合わせの共重合体であると考え、このことは当業者によって理解されるべきであり、本明細書で使用される用語「アクリレート」はアクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの組み合わせを、別に特定されない限り交換可能に意味するよう理解され得る。光学部102の作製に使用される架橋共重合体は、約3%から20%(wt%)の量のアルキルアクリレート、約10%から35%(wt%)の量のフルオロアルキルアクリレート、そして約50%から80%(wt%)の量のフェニルアクリレートを含むか、又は一部がこれらから成っていてもよい。より具体的には、幾つかの実施形態では、架橋共重合体は、約3%から20%(wt%)の量(例えば約12%から16%の間)のnブチルアクリレート、約10%から35%(wt%)の量(例えば約17%から21%の間)のトリフルオロエチルメタクリレート、約50%から80%(wt%)(例えば約64%から67%の間)の量のフェニルエチルアクリレートを含むか、一部がそれらから成っていてもよい。光学部102を作製するために使用される架橋共重合体の最終組成はまた、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)のような架橋剤を含んでいてもよい。
例えば、架橋共重合体の最終組成は約1.0%の量の架橋剤(例えばEGDMA)を含んでいてもよい。光学部102を作製するために使用される架橋共重合体の最終組成はまた、開始材(例えばパーカドックス16)及びUV吸収材を含んでいてもよい。
【0083】
ハプティック104はまた共重合体混合物を含む架橋共重合体を含むか、一部が共重合体混合物を含む架橋共重合体から成っていてもよい。共重合体混合物はアルキルアクリレート、フルオロアルキルアクリレート、及びフェニルアクリレートを含んでもよい。例えば、ハプティック104の作製に使用される架橋共重合体は、約10%から25%(wt%)の量のアルキルアクリレート、約10%から35%(wt%)の量のフルオロアルキルアクリレート、そして約50%から80%(wt%)の量のフェニルアクリレートを含むか、又は一部がこれらから成っていてもよい。より具体的には、幾つかの実施形態では、架橋共重合体は、約10%から25%(wt%)の量(例えば約19%から約23%の間)のnブチルアクリレート、約10%から35%(wt%)の量(例えば約14%から約18%の間)のトリフルオロエチルメタクリレート、約50%から80%(wt%)の量(例えば約58%から約62%の間)のフェニルエチルアクリレートを含むか、一部がそれらから成っていてもよい。ハプティック104を作製するために使用される架橋共重合体の最終組成は、EGDMAのような架橋剤を含んでいてもよい。例えば、ハプティック104は約1.0%の量の架橋剤(例えばEGDMA)を含んでいてもよい。ハプティック104はまた多数の光重合開始材を含んでいてもよい。
【0084】
幾つかの実施形態では、光学部102の作製に使用される高分子材料又は複合材料の屈折率は約1.48から約1.53の間であってもよい。特定の実施形態では、光学部102の作製に使用される高分子材料又は複合材料の屈折率は約1.50から約1.53の間(又は約1.5178)であってもよい。
【0085】
光学流体室110への流体の出入りに応じて光学部102は変形、又は屈曲してもよい。光学部102は、前述の光学部102の材料組成(例えば高分子組成)の結果として、変形、又は屈曲してもよい。ハプティック104はまた、トーリックAIOL100が患者の眼内に移植された際に患者の水晶体嚢との相互作用や係合に応じて変形してもよい。ハプティック104は、前述のハプティック104の材料組成(例えば高分子組成)の結果として変形してもよい。
【0086】
幾つかの実施形態では、光学流体室110へ流体が出入りするに従って前方要素106は変形、又は屈曲(例えば曲率が変化)してもよい。他の実施形態では、光学流体室110へ流体が出入りするに従って後方要素108は変形、又は屈曲(例えば曲率が変化)してもよい。更なる実施形態においては、光学流体室110へ流体が出入りするに従って前方要素106と後方要素108双方が変形又は屈曲してもよい。
【0087】
幾つかの実施形態では、光学流体室110内、及びハプティック流体室120、又はそれらの組み合わせの内部の流体は油であってもよい。より具体的には、特定の実施形態では、光学流体室110、ハプティック流体室120、又はそれらの組み合わせの内部の流体は、シリコンオイル又は流体であってもよい。ハプティック104、光学部の構成要素102(例えば前方要素106、後方要素108、又はそれらの組み合わせ)、又はそれらの組み合わせの起こす屈曲又は変形に応じて流体は光学流体室110とハプティック流体室120の間を流れてもよい。
【0088】
光学流体室110、及びハプティック流体室120、又はそれらの組み合わせの内部の流体は、ジフェニルシロキサンを含むか一部がジフェニルシロキサンから成る、シリコンオイル又は流体であってもよい。他の実施形態では、シリコンオイル又は流体は、2単位のジメチルシロキサンに対して1単位のジフェニルシロキサンの割合を含むか、一部が上記から成っていてもよい。より具体的には、幾つかの実施形態では、シリコンオイル又は流体はジフェニルテトラメチルシクロトリシロキサンであってもよい。追加の実施形態では、シリコンオイル又は流体は、ジフェニルシロキサン及びジメチルシロキサン共重合体を含むか、一部がそれらから成っていてもよい。
【0089】
流体(例えばシリコンオイル)は光学部102の作製に使用した高分子材料又は複合材料にインデックスマッチしてもよい。流体が光学部102の作製に使用した高分子材料又は複合材料とインデックスマッチすると、流体を含んだ光学部102全体は単一のレンズとしてふるまう。例えば、流体は屈折率が約1.48から1.53の間(又は約1.5178のように約1.50から1.53の間)であるように選択されてもよい。幾つかの実施形態では、流体(例えばシリコンオイル)は、約1.2から1.3の間の多分散指数を有してもよい。他の実施形態では、流体(例えばシリコンオイル)は、約1.3から1.5の間の多分散指数を有してもよい。他の実施形態では、流体(例えばシリコンオイル)は、約1.1から1.2の間の多分散指数を有してもよい。その他の流体の例は、その内容が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2018/0153682号明細書に説明される。
【0090】
変形光学部102(例えば前方要素106、後方要素108、又はそれらの組み合わせ)の変形構成要素による変形に応じて光学部102のベース度数が変化してもよい。光学部102はトーリックAIOL100が患者の眼の水晶体嚢内に移植された際に患者の生理的な筋肉の動き(例えば毛様体筋の運動)に応じて変形してもよく、毛様体筋に関連した水晶体嚢の再形成に応じてトーリックAIOL100は変形する。
【0091】
トーリックAIOL100は水晶体嚢から生来の水晶体が取り外された後に患者の水晶体嚢に移植又は導入されてもよい。患者の水晶体嚢は、患者の毛様体筋に接続されたチン小帯線維に接続されている。水晶体嚢は伸縮自在であり、毛様体筋の運動により、チン小帯線維を介して水晶体嚢が変形する。例えば、毛様体筋が弛緩すると、チン小帯が伸びる。この伸びにより水晶体嚢が半径方向外向きの力により、概して半径方向外側に引っ張られる。この水晶体嚢の引張により、水晶体嚢が引き延ばされ、水晶体嚢内に場所ができる。水晶体嚢内に患者の生来の水晶体が存在する場合は、通常は生来の水晶体は(前方から後方の方向に)より平坦になり、レンズの度数が下がり、遠方の視界が得られる。本構成では、患者の生来の水晶体は視力調節解除された状態、又は視力調節解除を行っている最中である。
【0092】
しかし、近くの物体に焦点を合わせようとする際に起こるように毛様体筋が収縮すると、毛様体筋の半径方向内側の部分が半径方向内側へ運動し、チン小帯が弛緩する。チン小帯の弛緩により伸縮自在である水晶体嚢が収縮し、水晶体嚢内の水晶体に半径方向内向きの力を働かせる。水晶体嚢内に患者の生来の水晶体が存在するとき、生来の水晶体は通常より湾曲し(例えば水晶体の前方部分がより湾曲する)、レンズの度数が上がり、眼がより近い物体に焦点を合わせることができる。本構成では、患者の生来の水晶体は視力調節が行われた状態、又は視力調節を行っている最中である。
【0093】
従って、水晶体嚢に移植されたAIOLもまた、毛様体筋が収縮した時にAIOLのベース度数が上昇し毛様体筋が弛緩したときにAIOLのベース度数が下降する機構を有するべきである。
【0094】
今回のケースでは、トーリックAIOL100が患者の生来の水晶体嚢に移植されるか、又は導入された時、トーリックAIOL100のハプティック104の半径方向に外側の部分144は、チン小帯又はチン小帯線維と接続された水晶体嚢の一部分と、直接係合又は物理的に接触する。従って、ハプティック104の半径方向に外側の部分144は、毛様体筋の運動の結果としてチン小帯が弛緩及び伸展する際に、半径方向に加わる水晶体嚢の変形力に応じる構成であってもよい。
【0095】
毛様体筋が収縮すると、伸縮自在な水晶体嚢の周辺部が変形し、ハプティック104の半径方向に外側の部分144に対して、半径方向に内向きの力が印加される(例えば、伸縮自在な水晶体嚢は第1のハプティック104Aの半径方向に外側の部分144及び第2のハプティック104Bの半径方向に外側の部分144に対して半径方向に内向きの力を印加する)。ハプティック104の半径方向に外側の部分144は変形し、この変形によりハプティック流体室120の体積が減少する。ハプティック流体室120の体積が減少すると、ハプティック流体室120内の流体が光学部102内の光学流体室110へ移動又は押し出される。前述のように、ハプティック流体室120から光学流体室110へ、光学部102内に形成された流体チャネル122(例えば流体チャネル122の対)を通って流体が移動する。
【0096】
光学部102(前方要素106、後方要素108、又はそれらの組み合わせのうち任意のもの)はハプティック流体室120から光学流体室110に流体が流入することに応じて変形(曲率が上昇)してもよい。これによりトーリックAIOL100のベース度数又はベース球面度数が上昇し、トーリックAIOL100を患者の眼内に移植された患者が近くの物体に焦点を合わせることが可能になる。トーリックAIOL100はまた視力調節状態又は視力調節を経たと考えられてもよい。
【0097】
毛様体筋が弛緩すれば、伸縮自在な水晶体嚢の周辺部は半径方向の外向きに伸展し、水晶体嚢が引き延ばされ、水晶体嚢内により多くの場所ができる。ハプティック104の半径方向に外側の部分144は変形していない構成又は力が印加されていない構成に戻ることにより、この水晶体嚢の変形に応じてもよい。
これによりハプティック流体室120の体積が増加するか、又は変形前の体積に戻る。このハプティック流体室120の体積の増加により、光学流体室110内の流体が光学流体室110から引き出されるか又は流出し、ハプティック流体室120へ戻る。前述のように、流体が光学流体室110からハプティック流体室120へ、光学部102内に形成された同じ流体チャネル122(例えば流体チャネル122の対)を通って移動する。
【0098】
前述のように、光学部102(前方要素106、後方要素108、又はそれらの組み合わせのうち任意のもの)はハプティック流体室120へ光学流体室110から流体が流出することに応じて変形しても(曲率が減少するか、又は平坦になっても)よい。これによりトーリックAIOL100のベース度数又はベース球面度数が下降し、トーリックAIOL100を患者の眼内に移植された患者が遠くの物体に焦点を合わせること、又は遠くの視界を提供することが可能になる。トーリックAIOL100はまた視力調節解除状態又は視力調節解除を経たと考えられてもよい。
【0099】
図1B及び
図1Cに示されるように、ハプティック104に前方から後方の方向の剛性又は弾力性を提供するために、ハプティック104の半径方向に内側の部分146は(半径方向に外側の部分144と比較して)より厚く、又は大きくてもよい。このようにして、ハプティック104に対して水晶体嚢の力が前から後ろの方向へ印加されると、半径方向の力が印加された時よりもより少ない変形が起こり、ハプティック流体室120と光学流体室110の間でより少ない流体の移動が起こる。より少ない流体の移動が起こることにより、トーリックAIOL100に前から後ろの方向に力が印加されたときはトーリックAIOL100のベース度数の変化はより少なくなる。従って、ハプティック104及び光学部102の設計及び材料属性により、毛様体筋の運動による水晶体嚢の変形によりハプティック104に対して印加される半径方向の力に対して、トーリックAIOL100は高い感度を維持することができる。
【0100】
幾つかの実施形態では、前方要素106について、光学流体室110へ流体が流入することに応じて前方光学面112が球面構成から非球面構成へ変形してもよい。非球面構成は球面収差のような高次の乱視を補正することができる。毛様体筋の動きに応じて、光学部102に接続された1つ以上のハプティック流体室120から流体が光学流体室110に流入することができる。
【0101】
前方光学面112は、加圧され、前方要素106の中心又は中心部が接着剤又は接着層148(
図1B参照)により抑えられている前方要素106の外周部よりも外側に屈曲又は膨出し、非球面構成となってもよい。
【0102】
他の実施形態では、後方要素108について、光学流体室110へ流体が流入することに応じて後方光学面116が球面構成から非球面構成へ変形してもよい。
【0103】
後方光学面116は、加圧され、後方要素108の中心又は中心部が接着剤又は接着層148により抑えられている前方要素106の外周部よりも外側に屈曲又は膨出し、非球面構成となってもよい。
【0104】
前方要素106は後方要素108に接着層148を介して取り付けられ、又は接着されてもよい。接着層148は概ね環状であってもよい。接着層148は光学部102の外周縁150(
図1C参照)にて、前方要素106と後方要素108との間に位置してもよい。例えば、接着層148は後方要素108の隆起内面132の上に位置してもよい。
【0105】
接着層148又は接着剤は生体適合性の接着剤であってもよい。接着層148又は接着剤は生体適合性のポリマー接着剤であってもよい。
【0106】
接着層148又は接着剤は架橋性ポリマー前駆体組成物を含むか、一部が架橋ポリマー前駆体組成物から成っていてもよい。架橋性ポリマー前駆体組成物は共重合体混合物、ヒドロキシル官能性アクリルモノマー、及び光重合開始材(例えばDarocur4265、又はジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンとの50対50の混合物)を含むか、又は一部がこれらから成っていてもよい。共重合体混合物は(例えば約41%から約45%(wt%)の量のnブチルアクリレートのような)アルキルアクリレート、(例えば約20%から約24%(wt%)の量のトリフルオロエチルメタクリレートのような)フルオロアルキルアクリレート、及び(例えば約28%から約32%(wt%)の量のフェニルエチルアクリレートのような)フェニルアルキルアクリレートを含んでもよい。ヒドロキシル官能性アクリルモノマーは、約0.5から5.0wt%の量、好ましくは約1.0%から約2.0wt%のアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)であってもよい。光重合開始材はヒドロキシル官能性プレポリマーの硬化を促進するために使用されてもよい。
【0107】
接着剤の作製の最初のステップは、架橋性ポリマー前駆体組成物を光重合することによりヒドロキシル官能性ポリマー前駆体を用意し、硬化した組成物を得ることである。第2のステップは、メタクリル酸無水物又はメタクリル酸クロリドと反応させることにより、アルキルアクリレート又はメタクリレート(例えばnブチルアクリレート)、フルオロアルキル(メタ)アクリレート(例えばトリフルオロエチルメタクリレート)、フェニルアルキルアクリレート(フェニルエチルアクリレート)、及び2-(2-メチルアクリロイルオキシ)エチルアクリレートを備えるメタクリル官能性の架橋性ポリマーを形成する、前駆体ポリマーのペンダント水酸部分又はペンダント水酸基の、ペンダントメタクリレート官能基への化成処理である。
【0108】
メタクリル官能性の架橋性ポリマーは、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)及び同じ光重合開始材(例えばDarocur4265)のような反応性アクリルモノマー希釈剤と混合してもよい。例えば、接着剤の最終組成は、約50%から約85%(wt%)(例えば約61%から約65%)の量のメタクリル官能性の架橋性ポリマー、約10%から約40%(wt%)(32%から約36%)の量の反応性アクリルモノマー希釈剤、及び約2%から約3%(wt%)の量の光重合開始材(例えばDarocur4265)を含んでいてもよい。
【0109】
接着剤又は接着層148は後方要素108へ前方要素106を接着させるか、接合させてもよい。接着剤はハプティック104を光学部102に接着させるか、接合させてもよい。
【0110】
幾つかの実施形態では、前方要素106の前方光学面112は、トーリックAIOL100が患者の眼内に移植される前に非球光学面を有するように製造されてもよい。これらの実施形態では、前方光学面112は、光学流体室110の流体圧力変化に関わらず、非球であってもよい。これらの実施形態では、前方光学面112はベース度数の変化に関わらず非球性を維持してもよい。
【0111】
他の実施形態では、後方要素108の後方光学面116は、トーリックAIOL100が患者の眼内に移植される前に非球光学面を有するように製造されてもよい。これらの実施形態では、後方光学面116は、光学流体室110内の流体圧力変化に関わらず、非球であってもよい。これらの実施形態では、後方光学面116はベース度数の変化に関わらず非球性を維持してもよい。
【0112】
幾つかの実施形態では、前方要素106は中心又は中心部における厚さが周辺部と比較してより大きくてもよい。特定の実施形態では、後方要素108においてもまた中心又は中心部における厚さが周辺部と比較してより大きくてもよい。
【0113】
図1B及び
図1Cに示されるように、光学部102は光軸152を有してもよい。光軸152は前から後ろの方向へ光学部102の中心又は中心点を通って延びていてもよい。光軸152は前方要素106と後方要素106の双方の中心又は中心点を通って延びていてもよい。
【0114】
前方要素106の厚みは光軸152にて、又は光軸152の近傍にて、前方要素106の周辺部と比較してより大きくてもよい。幾つかの実施形態では、前方要素106の厚みは、前方要素106の周辺部から光軸152に向かって徐々に増加してもよい。
【0115】
特定の実施形態では、光軸152における、又は光軸152の近傍における前方要素106の厚みは約0.200mmから約0.300mmの間(又は約0.280mm)であってもよい。これらの、そしてその他の実施形態では、周辺部近傍における前方要素106の厚みは約0.100mmから約0.200mmの間(又は約0.135mm)であってもよい。この厚さの違いは、流体が流体で満たされた光学流体室110へハプティック流体室120から流入する際に、前方光学面112が球面構成から非球面構成へと変形することに寄与し得る。
【0116】
更に、前方要素106の前方内面114は、前方光学面112より小さい曲率を有するか、又はより平坦であってもよい。この前方内面114と前方光学面112との間における表面曲率の違いもまた、流体が流体で満たされた光学流体室110へハプティック流体室120から流入する際に、前方光学面112が球面構成から非球面構成へと変形することに寄与し得る。
【0117】
他の実施形態では、後方要素108の厚みは、光軸152にて、又は光軸152の近傍にて、光軸152から半径方向に外側であるが隆起内面132に到達する以前の後方要素108の一部よりも、より大きくてもよい。後方要素108の厚みは、光軸152から、光軸152から半径方向に外側へ向かって(しかし隆起内面132に到達する以前に)、次第に減少してもよい。後方要素108の厚みは隆起内面132の開始から外周縁150に向かって再び増加してもよい。
【0118】
特定の実施形態では、光軸152における、又は光軸152の近傍における後方要素108の厚みは約0.40mmから約0.50mmの間(又は約0.43mm)であってもよい。これらの、及びその他の実施形態では、光軸152から半径方向に外側(しかし隆起内面132に到達する以前)における後方要素108の厚みは約0.30mmから約0.40mmの間(又は約0.38mm)であってもよい。外周縁150近傍における後方要素108の厚みは約1.00mmから1.20mmの間(又は約1.188mm)であってもよい。この厚さの違いは、流体が流体で満たされた光学流体室110へハプティック流体室120から流入する際に、後方光学面116が球面構成から非球面構成へと変形することに寄与し得る。
【0119】
更に、後方要素108の後方内面118は、後方光学面116より小さい曲率を有するか、又はより平坦であってもよい。この後方内面118と後方光学面116との間の表面曲率の違いもまた、流体で満たされた光学流体室110へハプティック流体室120から流体が流入する際に、後方光学面116が球面構成から非球面構成へと変形することに寄与し得る。
【0120】
出願者が直面する1つの技術的問題は、どのようにして調節式眼内レンズへ円環性及び非球面性を導入するかということである。角膜乱視及び球面収差の双方を補正できる調節式眼内レンズにより、そのような高次の乱視に苦しむ白内障患者が1対の調節式眼内レンズのみを使用して、未だに補正眼鏡に依存するよりも、乱視を補正することが可能になり得る。
【0121】
出願者により発見された1つの解決策は、トーリックレンズ表面又は円柱を有する光学外表面から、非球面構成に変化する光学面を分離することである。例えば、トーリックAIOL100は、非球面である光学面が、トーリック光学面又は円柱を有するレンズ要素の反対のレンズ要素上にあるように構成することができる。
【0122】
幾つかの実施形態では、後方要素108はトーリックレンズ面又は円柱プロファイルを有する形状であってもよく、前方要素106は、前方光学面112が非球面であるか、ハプティック流体室120から流体で満たされた光学流体室110へ流体が流入することに応じて球面構成から非球面構成へ変形してもよい。
【0123】
他の実施形態では、前方要素106はトーリックレンズ面又は円柱プロファイルを有する形状であってもよく、後方要素108は、後方光学面116が非球面であるか、ハプティック流体室120から流体で満たされた光学流体室110へ流体が流入することに応じて球面構成から非球面構成へ変形してもよい。
【0124】
図1Aに示すように、トーリックAIOL100は正中線154により配向されてもよい。正中線154は光学部102を概ね二分するか、光学部102を概ね半分に分ける線又は軸であってもよい。幾つかの実施形態では、正中線154はハプティック-光学インターフェース124を概ね二分するか、又はハプティック-光学インターフェース14の中央部を通って延びてもよい。例えば、正中線154は第1のハプティック-光学インターフェース及び第1のハプティック-光学インターフェースから直径方向に対向する位置にある第2のハプティック-光学インターフェースの双方を概ね二分してもよい。この正中線154はまた第1の補強部126A及び第2の補強部126Bの内部を通るか、概ね二分してもよい。
【0125】
前に議論したように、光学部102は、流体で満たされた光学流体室110をハプティック流体室120と流体連通状態にする少なくとも1対の流体チャネル122を備えていてもよい。正中線154は流体チャネル122の対の間に延びているか、又は流体チャネル122の対を分離する光学部102の一部分を概ね二分してもよい。
【0126】
幾つかの実施形態では、正中線154は開口の対(内部開口128又は外部開口130のうち任意のもの)の間に延びてもよく、又は流体チャネル122の対の端部に設けられた開口の対を分離する光学部102の一部分を二等分してもよい。例えば、光学部102は第1の流体チャネル122Aの対及び第2の流体チャネル122Bの対を有していてもよい。
正中線154は第1の流体チャネル122Aの対と第2の流体チャネル122Bの対とを分離する部分の間に延びるか、又はその光学部の一部分を概ね二分してもよい。正中線154については、トーリックAIOL100の特定の子午線の方向又は配置に関連してより詳しく議論する。
【0127】
図2AはトーリックAIOL100の後方要素108の実施形態の平面図である。後方光学面116は、異なる光学表面子午線に沿って、後方光学面116の曲率半径が異なるよう形成されてもよい。例えば、後方光学面116の平坦子午線200に沿った曲率半径は後方光学面116の急峻子午線202に沿った曲率半径と異なる。
【0128】
幾つかの実施形態では、後方光学面116の曲率半径は後方光学面116の周囲にて周期的に変化してもよい。後方光学面116の曲率半径は、異なる光学表面子午線に沿って曲率半径が継続的に周期的に変化する時(例えば、光学表面子午線が光軸152又は後方光学面116の中心点を中心に回転する時)に、後方光学面116の周囲にて周期的に変化してもよい。特定の実施形態では、後方光学面116の曲率半径は後方光学面116の周囲にて正弦曲線的に変化してもよい。
【0129】
図2Aに示されるように、後方光学面116は平坦子午線200と、平坦子午線200に概ね直角に配された急峻子午線202とを備えていてもよい。例えば、平坦子午線200は急峻子午線202から約90度回転した分だけ離れていてもよい。
【0130】
図2Bは、後方要素108の急峻子午線202に沿った断面図である(
図2AのA-Aにおける断面として示される)。
図2Cは、後方要素108の平坦子午線200に沿った断面図である(
図2AのB-Bにおける断面として示される)。更に、
図2Dは後方要素108の平坦子午線200及び急峻子午線202の双方から約45度に位置する中間子午線204に沿った断面図である(
図2AのC-Cにおける断面として示される)。
【0131】
後方光学面116の屈折度数は後方光学面116の急峻子午線202に沿って最大であってもよい。後方光学面116の屈折度数は後方光学面116の平坦子午線200に沿って最小であってもよい。急峻子午線202と平坦子午線200とはレンズの主子午線であってもよい。平坦子午線200はトーリックレンズの円柱軸又は単に「軸」とも称されてもよい。
【0132】
図2Bから
図2Dに示されるように、後方光学面116は急峻子午線曲率半径(ROC)206、平坦子午線ROC208、及び中間子午線ROC210を備えるか、又はそれらにより画定されてもよい。より具体的には、
図2Bに示されるように、中間子午線ROC210は急峻子午線ROC206よりも大きくてもよい。後方光学面116の中間子午線204に沿った表面輪郭は
図2B及び
図2C双方において破線で示される。これらの実施形態では、急峻子午線ROC206もまた平坦子午線ROC208よりも小さい。
【0133】
図2Cに示されるように、平坦子午線ROC208は中間子午線ROC210よりも大きくてもよい。加えて、平坦子午線ROC208はまた急峻子午線ROC206よりも大きくてもよい。
【0134】
図2Aから
図2Dに示されるように、後方光学面116の曲率半径は後方光学面116の周囲にて正弦曲線的に変化してもよい。例えば、後方光学面116の曲率半径は急峻子午線202から中間子午線204へと徐々に増加してもよく(異なる表面子午線に沿って曲率半径を見た時)、平坦子午線200に到達するまで増加し続けてもよい。後方光学面116の曲率半径はその後平坦子午線200から中間子午線204へ向けて徐々に減少してもよく、180度の回転後急峻子午線202に再び到達するまで減少し続けてもよい。後方光学面116の曲率半径のこの周期的な変化は360度全体に渡って、又は急峻子午線202に再び到達するまで継続してもよい。
【0135】
図2Bから
図2Dはまた後方要素厚さ212が異なる光学表面子午線に沿って変化してもよいことを示す。後方要素厚さ212は後方内面118から後方光学面116へ計測した後方要素108の厚み又は高さであってもよい。
【0136】
後方要素108の半径方向に外側の部分214における、又は近傍における後方要素厚さ212は異なる光学表面子午線に沿って変化してもよい。半径方向に外側の部分214は後方要素108の外周縁に位置する、後方要素108の一部であってもよい。幾つかの実施形態では、半径方向に外側の部分214は、光軸152と隆起内面132の間に位置する、後方要素108の一部分であってもよい。より具体的には、半径方向に外側の部分214は光軸152よりも(半径距離の観点から)隆起内面132により近い、後方要素108の一部分であってもよい。
【0137】
幾つかの実施形態では、半径方向に外側の部分214における、又は近傍における後方要素厚さ212は、平坦子午線200に沿って最大であって(又は最も厚く)てもよい。これらの実施形態では、半径方向に外側の部分214における、又は近傍における後方要素厚さ212は、急峻子午線202に沿って最小であって(又は最も薄くて)もよい。半径方向に外側の部分214にける、又は近傍における後方要素厚さ212はまた(例えば、光学表面子午線が光軸152又は後方光学面116の中心点の周りを回転したら)後方要素108の周囲で周期的に変化してもよい。更に、半径方向に外側の部分214の又は近傍の後方要素厚さ212はまた、後方要素108の周囲で正弦曲線的に変化してもよい。
【0138】
特定の実施形態では、光軸152の又は近傍の(若しくは後方光学面116の中心点又は近傍の)後方要素厚さ212は異なる光学表面子午線に沿って同じであってもよい。例えば、光軸152の又は近傍の(若しくは後方光学面116の中心点又は近傍の)後方要素厚さ212は急峻子午線202及び平坦子午線200の双方に沿って同じであってもよい。
【0139】
幾つかの実施形態では、平坦子午線200に沿った、半径方向に外側の部分214における、又は近傍における後方要素厚さ212は約0.38mmから約0.45mmの間であってもよい。これらの実施形態では、急峻子午線202に沿った、半径方向に外側の部分214における、又は近傍における後方要素厚さ212は約0.30mmから約0.40mmの間であってもよい。
【0140】
後方要素108は更に後方内面118を備えていてもよい。後方内面118は光学流体室110に面した後方要素108の面であってもよい。幾つかの実施形態では、後方内面118の少なくとも一部は光学流体室110の室壁の役割を果たしてもよい。後方内面118は回転対称、又は概ね回転対称であってもよい。後方内面118の曲率半径が全ての表面子午線に沿って同じ場合に、後方内面118は回転対称であってもよい。例えば、後方内面118の曲率半径は約50.0mmから70.0mmの間(又は約60.0mm)であってもよい。
【0141】
トーリックAIOL100はまた設定円柱度数を有するよう構成又は設計されていてもよい。円柱度数はトーリックAIOL100の、急峻子午線に沿った屈折度数のことであってもよい。円柱度数は、多くの場合、トーリックレンズの急峻子午線に沿った急な曲率によりもたらされる、屈折度数の差(例えば+1.0D又は+3.0D)で表現される。
【0142】
幾つかの実施形態では、前述のトーリック後方光学面116を有するトーリックAIOL100は、約+0.75Dから約+6.00Dの間の円柱度数を有してもよい。例えば、前述のトーリック後方光学面116を有するトーリックAIOL100は約+0.75D、+1.50D、+2.25D、+3.00D、+3.75D、+4.50D、+5.25D又は+6.00Dの円柱度数を有してもよい。
【0143】
以下の表1はトーリック後方光学面116を有する2つのバージョンのトーリックAIOL100(それぞれ異なる円柱度数を有する)における曲率半径の値及び後方要素厚さの値を示す。
表1 低円柱度数及び高円柱度数のトーリックAIOLパラメーター
【表1】
【0144】
前に議論したように、光学部102のベース度数又はベース球面度数は流体で満たされた光学流体室110の内部の流体圧力に基づいて変化してもよい。出願者が直面する1つの技術的な問題は、レンズの視力調節又は視力調節解除時にベース度数の変化が起こったときに、AIOLの円柱度数が概ね不変又は安定するように調節式眼内レンズ(AIOL)に円筒度又はトーリック面をどのように導入するかである。
【0145】
出願者により発見された1つの解決策は、後方内面118(後方光学面116の反対側の面)を回転対称に保ちながら、後方光学面116の曲率半径を変化させることである。
この後の章でより詳しく議論するように、本開示により提供される別の解決策は、後方光学面116の平坦子午線200を、光学部102を概ね二分する正中線154に対して斜角に配することである。
【0146】
トーリックAIOL100をこのように設計することにより、光学部102の円柱度数を、流体で満たされた光学流体室の流体圧力の変化に応じて光学部102のベース度数が変化する間に概ね不変又は安定した状態に維持することができる。例えば、光学部102のベース度数が視力調節又は視力調節解除の際に変化する場合に、急峻子午線202と平坦子午線200との間の相対的な屈折度数を概ね不変又は安定した状態に維持することができる。
【0147】
図2Aはまた、後方光学面116が、後方光学面116上に配された1つ以上のマーキング216を備えていてもよいことを示す。マーキング216はトーリックAIOL100を患者の眼内に移植する臨床医又は医師により視覚的に知覚可能であってもよい。1つ以上のマーキング216は、インクマーキング又は染料マーキングであってもよい。他の実施形態では、1つ以上のマーキング216は後方光学面116上に現れるエッチング又は表面模様であってもよい。
【0148】
図2Aに示される実施形態では、1つ又はマーキング216は小さい点又はスポットとして示される。他の実施形態では、1つ以上のマーキング216は線、点線、又は円形の点以外の形態であってもよい。1つ以上のマーキング216は、臨床医又は医師により、患者の角膜乱視をマークするために以前に患者の眼に付与されたマーキングに対して、平坦子午線200又は円柱軸を方向付けることに役立つ。例えば、臨床医又は医師はトーリックAIOL100が正しく移植されることを補償するために、1つ以上のマーキング216を、患者の角膜乱視を指し示すために使用されるマーキングと揃えてもよい。
【0149】
幾つかの実施形態では、トーリックAIOL100の前方光学面112は回転対称であってもよい一方、後方光学面116はトーリックであるか又は異なる光学表面子午線に沿って異なる曲率半径を有してもよい。他の実施形態では、前に議論した通り、トーリックAIOL100の前方光学面112は非球面であってもよい一方、後方光学面116はトーリックであるか又は異なる光学表面子午線に沿って異なる曲率半径を有してもよい。
【0150】
図3AはトーリックAIOL100の前方要素106の実施形態の平面図である。本実施形態にて、前方要素106は、異なる光学表面子午線に沿って、前方光学面112の曲率半径が異なるよう形成されてもよい。例えば、前方光学面112の平坦子午線300に沿った曲率半径は前方光学面112の急峻子午線302に沿った曲率半径と異なる。
【0151】
幾つかの実施形態では、前方光学面112の曲率半径は前方光学面112の周囲にて周期的に変化してもよい。前方光学面112の曲率半径は、曲率半径が異なる光学表面子午線に沿って継続的に周期的に変化する時(例えば、光学表面子午線が光軸152又は前方光学面112の中心点を中心に回転する時)に、前方光学面112の周囲にて周期的に変化してもよい。特定の実施形態では、前方光学面112の曲率半径は前方光学面112の周囲にて正弦曲線的に変化してもよい。
【0152】
図3Aに示されるように、前方光学面112は平坦子午線300と、平坦子午線300に概ね直角に配された急峻子午線302を備えていてもよい。例えば、平坦子午線300は急峻子午線302から約90度回転した分だけ離れていてもよい。
【0153】
図3Bは、前方要素106の急峻子午線302に沿った断面図である(
図3AのA-Aにおける断面として示される)。
図3Cは、同じ前方要素106の平坦子午線300に沿った断面図である(
図3AのB-Bにおける断面として示される)。
【0154】
前方光学面112の屈折度数は前方光学面112の急峻子午線302に沿って最大であってもよく、前方光学面112の屈折度数は前方光学面112の平坦子午線300に沿って最小であってもよい。急峻子午線302と平坦子午線300とはレンズの主子午線であってもよい。平坦子午線300はトーリックレンズの円柱軸又は単に「軸」とも称されてもよい。
【0155】
図3Bから
図3Cに示されるように、前方光学面112は急峻子午線曲率半径(ROC)304、及び平坦子午線ROC306を備えるか、又はそれらにより画定されてもよい。平坦子午線ROC306は急峻子午線ROC304よりも大きくてもよい。
【0156】
図3Aから
図3Cに示されるように、前方光学面112の曲率半径は前方光学面112の周囲にて正弦曲線的に変化してもよい。例えば、前方光学面112の曲率半径は、急峻子午線302から中間子午線(すなわち平坦子午線300と急峻子午線302の双方から約45度の回転角度に配される子午線)へ向かって徐々に増加してもよく、平坦子午線300に到達するまで増加し続けてもよい。前方光学面112の曲率半径はその後平坦子午線300から中間子午線へ向けて徐々に減少してもよく、180度の回転後急峻子午線302に再び到達するまで減少し続けてもよい。前方光学面112の曲率半径のこの周期的な変化は360度全体に渡って、又は急峻子午線302に到達するまで継続してもよい。
【0157】
図3B及び
図3Cはまた前方要素厚さ308が異なる光学表面子午線に沿って変化してもよいことを示す。前方要素厚さ308は前方内面114から前方光学面112へ計測した前方要素106の厚み又は高さであってもよい。
【0158】
前方要素106の半径方向に外側の部分310における、又は近傍における前方要素厚さ308は異なる光学表面子午線に沿って変化してもよい。半径方向に外側の部分310は前方要素106の外周縁に位置する、前方要素106の一部であってもよい。幾つかの実施形態では、半径方向に外側の部分310は、光軸152と接着層148の間に位置する、前方要素106の一部分であってもよい。より具体的には、半径方向に外側の部分310は光軸152よりも(半径距離の観点から)接着層148により近い、前方要素106の一部分であってもよい。
【0159】
幾つかの実施形態では、半径方向に外側の部分310における、又は近傍における前方要素厚さ308は、平坦子午線300に沿って最大であって(又は最も厚く)てもよい。これらの実施形態では、半径方向に外側の部分310における、又は近傍における前方要素厚さ308は、急峻子午線302に沿って最小であって(又は最も薄く)てもよい。半径方向に外側の部分310の、又は近傍の前方要素厚さ308はまた(例えば、光学表面子午線が光軸152又は前方光学面112の中心点の周りを回転したら)前方要素106の周囲で周期的に変化してもよい。例えば、前方要素厚さ308は前方要素106の周囲にて正弦曲線的に変化してもよい。
【0160】
特定の実施形態では、光軸152の又は近傍の(若しくは前方光学面112の中心点又は近傍の)前方要素厚さ308は異なる光学表面子午線に沿って同じであってもよい。例えば、光軸152の又は近傍の(若しくは前方光学面112の中心点又は近傍の)前方要素厚さ308は急峻子午線302及び平坦子午線300の双方に沿って同じであってもよい。ある実施形態では、光軸152における又は近傍における前方要素厚さ308は約0.40mmであってもよい。
【0161】
幾つかの実施形態では、平坦子午線300に沿った半径方向に外側の部分310における、又は近傍における前方要素厚さ308は約0.140mmから約0.210mmの間であってもよい。これらの実施形態では、急峻子午線302に沿った、半径方向に外側の部分310における、又は近傍における前方要素厚さ308は約0.050mmから約0.125mmの間であってもよい。
【0162】
前方要素106は更に前方内面114を備えていてもよい。前方内面114は光学流体室110に面した前方要素106の面であってもよい。幾つかの実施形態では、前方内面114の少なくとも一部は光学流体室110の室壁の役割を果たしてもよい。前方内面114は回転対称、又は概ね回転対称であってもよい。前方内面114の曲率半径が全ての表面子午線に沿って同じ場合に、前方内面114は回転対称であってもよい。例えば、前方内面114の曲率半径は約50.0mmから70.0mmの間(又は約60.0mm)であってもよい。
【0163】
トーリックAIOL100はまた設定円柱度数を有するよう構成又は設計されていてもよい。円柱度数はトーリックAIOL100の急峻子午線302に沿った屈折度数のことであってもよい。円柱度数は、多くの場合、トーリックレンズの急峻子午線に沿った急な曲率によりもたらされる、屈折度数の差(例えば+1.0D又は+3.0D)で表現される。
【0164】
幾つかの実施形態では、前述のトーリック前方光学面112を有するトーリックAIOL100は、約+0.75Dから約+6.00Dの間の円柱度数を有してもよい。例えば、前述のトーリック前方光学面112を有するトーリックAIOL100は約+0.75D、+1.50D、+2.25D、+3.00D、+3.75D、+4.50D、+5.25D又は+6.00Dの円柱度数を有してもよい。
【0165】
以下の表2はトーリック前方光学面112を有する2つのバージョンのトーリックAIOL100(それぞれ異なる円柱度数を有する)における曲率半径の値及び前方要素厚さの値を示す。
表2 低円柱度数及び高円柱度数のトーリックAIOLパラメーター
【表2】
【0166】
前に議論したように、光学部102のベース度数又はベース球面度数は流体で満たされた光学流体室110の内部の流体圧力に基づいて変化してもよい。出願者が直面する1つの技術的な問題は、レンズの視力調節又は視力調節解除時にベース度数の変化が起こったときに、AIOLの円柱度数が概ね不変又は安定するように調節式眼内レンズ(AIOL)に円筒度又はトーリック面をどのように導入するかである。
【0167】
出願者により発見された1つの解決策は、前方内面114(前方光学面112の反対側の面)を回転対称に保ちながら、前方光学面112の曲率半径を変化させることである。この後の章でより詳しく議論するように、本開示により提供される別の解決策は、前方光学面112の平坦子午線300を、光学部102を概ね二分する正中線154に対して斜角に配することである。
【0168】
トーリックAIOL100をこのように設計することにより、光学部102の円柱度数を、光学部102のベース度数が流体で満たされた光学流体室の流体圧力の変化に応じて変化する間に概ね不変又は安定した状態に維持することができる。例えば、光学部102のベース度数が視力調節又視力調節解除の際に変化する場合に、急峻子午線302と平坦子午線300との間の相対的な屈折度数を概ね不変又は安定した状態に維持することができる。
【0169】
図3Aはまた、前方光学面112が、前方光学面112上に配された1つ以上のマーキング312を備えていてもよいことを示す。マーキング312はトーリックAIOL100を患者の眼内に移植する臨床医又は医師により視覚的に知覚可能であってもよい。1つ以上のマーキング312は、インクマーキング又は染料マーキングであってもよい。他の実施形態では、1つ以上のマーキング312は前方光学面112上に現れるエッチング又は表面模様であってもよい。
【0170】
図3Aに示される実施形態では、1つ又はマーキング312は小さい点又はスポットとして示される。他の実施形態では、1つ以上のマーキング312は線、点線、又は円形の点以外の形態であってもよい。1つ以上のマーキング312は、臨床医又は医師により、患者の角膜乱視をマークするために以前に患者の眼に付与されたマーキングに対して、平坦子午線300又は円柱軸を方向付けることに役立つ。例えば、臨床医又は医師はトーリックAIOL100が正しく移植されることを補償するために、1つ以上のマーキング312を、患者の角膜乱視を指し示すために使用されるマーキングと揃えてもよい。
【0171】
幾つかの実施形態では、トーリックAIOL100の後方光学面116は回転対称であってもよい一方、前方光学面112はトーリックであるか又は異なる光学表面子午線に沿って異なる曲率半径を有してもよい。他の実施形態では、前に議論した通り、トーリックAIOL100の後方光学面116は非球面であってもよい一方、前方光学面112はトーリックであるか又は異なる光学表面子午線に沿って異なる曲率半径を有してもよい。
【0172】
図4は、トーリックAIOL100の正中線154に対する平坦子午線の円柱軸配向を示す図である。円柱軸配向は、トーリックAIOL100の(正中線154のような)その他の特徴に対するレンズの子午線の方向又は位置のことであってもよい。例えば、円柱軸配向は平坦子午線(すなわち「円柱軸」)急峻子午線、又はそれらの組み合わせの、眼に対する相対的な方向又は位置のことであってもよい。円柱軸配向はまた、レンズのある子午線の別の子午線に対する相対的な方向又は位置のことであってもよい。
【0173】
図4は後方要素108及び後方光学面116に関して示されるが(平坦子午線200と急峻子午線202とを含む)、前方光学面112の平坦子午線300及び急峻子午線302もまた正中線154に対して斜角400に配されてもよいことが、本開示では考慮され当業者によって理解されるべきである。
【0174】
出願者が直面する技術的問題は、レンズのベース度数の変化、すなわち視力調節又は視力調節解除を通して、どのようにしてトーリックAIOLの円柱軸配向を概ね不変又は固定にするかということである。不安定な円柱軸配向は良く言えば利益がなく(すなわち乱視補正効果がなく)、悪く言えば患者の視力に悪影響を与える(例えばその他の子午線上に乱視を誘発する)。
【0175】
出願者により発見された1つの解決策は、平坦子午線(例えば、平坦子午線200又は平坦子午線300のうち任意のもの)を正中線154に対して斜角400に配することである。前に議論したように、幾つかの実施形態では、正中線154は光学部102を概ね二分してもよい。例えば、正中線154は光学部102を概ね二分するか、又は光学部102を半分に分ける線又は軸であってもよい。
【0176】
他の実施形態では、正中線154はハプティック-光学インターフェース124を概ね二分するか、又はハプティック-光学インターフェース124の中央部を通って延びてもよい。例えば、正中線154は(トーリックAIOL100が2つのハプティック104を有する場合に)第1のハプティック-光学インターフェース及び第2のハプティック-光学インターフェースの双方を概ね二分してもよい。
【0177】
正中線154はまた補強部126を通って延びるか、又は概ね二分してもよい。例えば、この正中線154は第1の補強部126A及び第2の補強部126Bの内部を通るか、概ね二分してもよい。
【0178】
前に議論したように、光学部は、流体で満たされた光学流体室110をハプティック流体室120と流体連通状態にする少なくとも1対の流体チャネル122を備えていてもよい。正中線154は流体チャネル122の対の間に延びているか、又は流体チャネル122の対を分離する光学部102の一部分を概ね二分してもよい。幾つかの実施形態では、正中線154は開口の対(例えば内部開口128)の間に延びてもよく、又は流体チャネル122の対の端部に設けられた開口の対(例えば内部開口128)を分離する光学部102の一部分を二分してもよい。例えば、光学部102は第1の流体チャネル122Aの対及び第2の流体チャネル122Bの対を備えていてもよく、正中線154は第1の流体チャネル122Aの対及び第2の流体チャネル122Bの対を分離する光学部102の一部の間に延びるか、又はその光学部102の一部分を概ね二分してもよい。
【0179】
平坦子午線(平坦子午線200又は平坦子午線300のうち任意のもの)は正中線154に対して斜角400に方向づけられるか、配されてもよい。幾つかの実施形態では、斜角400は時計回りに回転した角度であってもよい。例えば、斜角400は時計回りに約30度から60度の間の回転角であってもよい。特定の実施形態では、斜角は時計回りに約45度回転した角度であってもよい。前に議論したように、平坦子午線200は急峻子午線202に対して概ね直角、又は90度の角度であってもよい。
【0180】
トーリックAIOL100をこのように設計することにより、光学部102の円柱軸配向を、光学部102のベース度数が流体で満たされた光学流体室110の内部の流体圧力の変化に応じて変化する間に概ね不変に維持することができる。例えば、一旦トーリックAIOL100が患者の眼内に移植されれば、トーリックAIOL100の平坦子午線及び急峻子午線の方向又は位置は、患者の眼の角膜乱視軸に対して(たとえ光学部のベース度数が視力調節又は視力調節解除を通して変化しても)概ね不変又は固定に維持することができる。
【0181】
図5はトーリックAIOL100の特定の度数の変化を光学流体室110の内部流体圧力の関数として示すグラフである。
図5に示されるように、トーリックAIOL100のベース度数(又はトーリックAIOL100がデフォーカス収差に対処する能力)は流体で満たされた光学流体室110の流体圧力に対して高い応答性を示す。流体で満たされた光学流体室110の内部流体圧力が増加すると、トーリックAIOL100のベース度数が増加する。
【0182】
図5はまた、流体で満たされた光学流体室110内の流体圧力の変化に関わらず、トーリックAIOL100の円柱度数が比較的不変で安定していることを示す。更に、流体で満たされた光学流体室110内の流体圧力の変化に関わらず、トーリックAIOL100の球面収差を補正する能力もまた比較的不変である。
【0183】
図6は円柱の安定性を円柱軸配置の関数として示すグラフである。円柱軸配向(y軸に沿った「トーリック回転」の角度として表される)への変更をトーリックAIOL100の異なる円柱軸配置角を有する異なるバージョンに対して記録した。トーリックAIOL100のこれらの全てのバージョンに対して有限要素解析を使用して軸方向の加重と除荷を行った。
図6に示されるように、全ての円柱軸(すなわち平坦子午線)配置角はトーリックAIOL100の正中線154に対する時計回りの回転角として計測される。好ましい円柱軸配向(すなわち円柱軸配置角)はレンズの視力調節及び視力調節解除の全ての段階を通して円柱の安定性を維持するものである。
【0184】
図6に見られるように、正中線に対して+45度の円柱軸配置角を有するトーリックAIOL100は、軸方向の加重及び除荷にもかかわらずほとんど0度のトーリック回転を示した(又は円柱軸配向がほとんど変化しなかった)。
【0185】
本明細書にて開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方光学面を有する前方要素と、後方光学面を有する後方要素と、及びそれらの間に画定される流体で満たされた光学流体室とを有する光学部とを備え、前方光学面と後方光学面のうち少なくとも1つは、前方光学面と後方光学面のうち少なくとも1つの曲率半径が、異なる光学表面子午線に沿って異なったものである。
【0186】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、後方光学面が、後方光学面の曲率半径が後方光学面の異なる光学表面子午線に沿って異なるように形成されている。
【0187】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、後方光学面の曲率半径が後方光学面の周囲で周期的に変化する。
【0188】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、後方要素が後方内面を更に備える。
【0189】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、後方内面が回転対称である。
【0190】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、後方要素が、後方光学面から後方内面へ計測した後方要素厚さを有し、後方要素厚さは後方要素の周囲で周期的に変化する。
【0191】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方光学面が非球面である。
【0192】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方光学面が、前方光学面の曲率半径が前方光学面の異なる光学表面子午線に沿って異なるように形成されている。
【0193】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方光学面の曲率半径が前方光学面の周囲で周期的に変化する。
【0194】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方要素が回転対称である前方内面を更に備える。
【0195】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方内面が回転対称である。
【0196】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方要素が、前方光学面から前方内面へ計測した前方要素厚さを有し、前方要素厚さは前方要素の周囲で周期的に変化する。
【0197】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、後方光学面が非球面である。
【0198】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室内の圧力に基づいて変化する。
【0199】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室の圧力の変化に応じて変化する間に、光学部の円柱度数が概ね不変である。
【0200】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室内の圧力の変化に応じて変化する間に、光学部の円柱軸配向が概ね不変である。
【0201】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、前方光学面及び後方光学面のうち少なくとも1つが平坦子午線と、平坦子午線に概ね直角に配された急峻子午線とを有し、曲率半径は急峻子午線に沿って最小であり、曲率半径は平坦子午線に沿って最大である。
【0202】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、平坦子午線が光学部を概ね二分する正中線に対して斜角に配置される。
【0203】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、斜角が時計回りに約30度から60度の間の回転角である。
【0204】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、斜角は時計回りに約45度の回転角である。
【0205】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、第1のハプティック-光学インターフェースにて光学部に接続された第1のハプティックと、第1のハプティック-光学インターフェースと直径方向に対向して位置する第2のハプティック-光学インターフェースにて光学部に接続された第2のハプティックとを備え、正中線は第1のハプティック-光学インターフェースと第2のハプティック-光学インターフェースとを概ね二分する。
【0206】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学部が、流体で満たされた光学流体室をハプティック流体室と流体連通させる第1の流体チャネルの対と流体で満たされた光学流体室をもう1つのハプティック流体室と流体連通させる第2の流体チャネルの対とを備え、正中線は第1の流体チャネルの対の間と記第2の流体チャネルの対の間に延びる。
【0207】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学外表面と、光学部内に画定された流体で満たされた光学流体室を備えた光学部とを備え、光学外表面の屈折度数は光学外表面の急峻子午線に沿って最大であり、光学外表面の屈折度数は光学外表面の平坦子午線に沿って最小である。
【0208】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室内の圧力に基づいて変化する。
【0209】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室の圧力の変化に応じて変化する間に、平坦子午線と急峻子午線との間の相対屈折度数が概ね不変である。
【0210】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、平坦子午線の方向が、光学部のベース度数が流体で満たされた光学流体室内の圧力の変化に応じて変化する間に概ね不変である。
【0211】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学外表面の反対のもう1つの光学面が非球面である。
【0212】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、平坦子午線が光学部を概ね二分する正中線に対して斜角に配置される。
【0213】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、斜角が時計回りに約30度から60度の間の回転角である。
【0214】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、斜角は時計回りに約45度の回転角である。
【0215】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、第1のハプティック-光学インターフェースにて光学部に接続された第1のハプティックと、第1のハプティック-光学インターフェースと直径方向に対向して位置する第2のハプティック-光学インターフェースにて光学部に接続された第2のハプティックとを更に備え、正中線は第1のハプティック-光学インターフェースと第2のハプティック-光学インターフェースを概ね二分する。
【0216】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学部が、流体で満たされた光学流体室をハプティック流体室と流体連通させる第1の流体チャネルの対と流体で満たされた光学流体室をもう1つのハプティック流体室と流体連通させる第2の流体チャネルの対とを備え、正中線は第1の流体チャネルの対の間と記第2の流体チャネルの対の間に延びる。
【0217】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学外表面を備えた変形光学部を備え、光学外表面の屈折度数が光学外表面の急峻子午線に沿って最大であり、光学外表面の屈折度数は光学外表面の平坦子午線に沿って最小であり、光学部のベース度数が変形光学部による変形に応じて変化する。
【0218】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、トーリック調節式眼内レンズが患者の体内に移植されたときに、変形光学部が患者の生理的な筋肉の動きに応じて変形する。
【0219】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、平坦子午線と急峻子午線との間の相対屈折度数が、光学部のベース度数が変化する間に概ね不変である。
【0220】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、平坦子午線の方向が、光学部のベース度数が変化する間に概ね不変である。
【0221】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学外表面の反対のもう1つの光学面が非球面である。
【0222】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、平坦子午線が光学部を概ね二分する正中線に対して斜角に配置される。
【0223】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、斜角が時計回りに約30度から60度の間の回転角である。
【0224】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、斜角は時計回りに約45度の回転角である。
【0225】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、第1のハプティック-光学インターフェースにて光学部に接続された第1のハプティックと、第1のハプティック-光学インターフェースと直径方向に対向して位置する第2のハプティック-光学インターフェースにて光学部に接続された第2のハプティックとを備え、正中線は第1のハプティック-光学インターフェースと第2のハプティック-光学インターフェースを概ね二分する。
【0226】
本明細書で開示されるトーリック調節式眼内レンズは、光学外表面の曲率半径が急峻子午線に沿って最小であり、光学外表面の曲率半径が平坦子午線に沿って最大である。
【0227】
多数の実施形態が開示された。それでも、実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく本開示に様々な変更及び修正が行われ得ることが当業者によって理解される。実施形態と共に示されたシステム、装置、機器、及び方法は特定の実施形態のために例示されたものであり、本開示内の他の実施形態と組み合わせて、又は他の実施形態にて使用され得る。例えば、図中に示された、又は本開示内で説明された方法は、所望の結果を達成するためには、示され又は説明された特定の順序又は連続的な順序を必要としない。加えて、所望の結果を達成するためには、その他の操作ステップが提供されてもよく、説明した方法又はプロセスからステップ又は操作を削除又は省略してもよい。更に、所望の結果を達成するために、本開示にて説明された、又は図に示された装置又はシステムの構成要素又は部分は、除去、削除、又は省略されてもよい。加えて、本明細書中に説明されたシステム、装置、又は機器の特定の構成要素又は部分は、簡潔さ及び明快さのために省略されている。
【0228】
従って、その他の実施形態は下記の請求項の範囲内であり、明細書及び/又は図は限定的なものというよりも説明的なものとみなされてもよい。
【0229】
各修正又は説明及び例示された実施形態は独立した構成要素及び機能を有し、それらはその他の修正又は実施形態の機能と容易に分離又は結合してもよい。特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの行為又はステップに対して、本発明の目的、精神又は範囲に適合させるために、修正を行ってもよい。
【0230】
本明細書中に挙げられた方法については、事象の挙げられた順序に加えて、挙げた事象を論理的に可能な任意の順序で実行してもよい。更に、所望の結果を達成するために、追加のステップ又は操作が提供されてもよく、又はステップ又は操作が削除されてもよい。
【0231】
更に、値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限の間にある全ての値、及びその他の示された又は示された範囲内の値は発明の範囲に包含される。また、説明された発明の修正の随意の機能は独立して、又は本明細書中に説明された機能のうち任意の1つ以上のものと共に明らかにされ請求されてもよい。例えば、1から5の範囲の説明は、1から3、1から4、2から4、2から5、3から5、等の副範囲、加えて例えば1.5、2.5等のような範囲内の独立した数、及びその間の数の全体又は部分的な増加を開示したと考えられるべきである。
【0232】
本明細書で言及された存在する全ての主題(例えば公開、特許、特許出願)は、主題が本発明の主題と矛盾する場合を除き(その場合は本明細書の内容が優先される)、その内容が参照により本明細書に援用される。参照された項目は本願の出願日より前の開示のみのために提供される。本明細書中のいかなる内容も、本発明が先行発明によってそれらの資料に先行する権利がないことを認めるものと解釈されない。
【0233】
単数の項目への参照は、同項目が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付する請求項にて、単数形の「a」、「an」、及び「前記」は、文脈にて明確に他のものが示されない限り、複数への参照も含む。請求項は随意の構成要素を除外するよう立案されてもよいことを更に留意されたい。従って、この記述は、請求項の要素の詳述に関連した「単独で」「唯一の」等の排他的な用語の使用、又は「否定的な」限定を使用することの先行根拠としての役割を果たすことが意図される。別に定義されない限り、本明細書中にて使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者により共通に理解される意味と同じ意味を有する。
【0234】
「少なくとも1つの」の熟語は、この熟語が複数の物品又は構成要素(又は物品又は構成要素の列挙されたリスト)を修飾するとき、それらの物品又は構成要素のうち1つ以上の組み合わせを示すことを意味する。例えば、「A、B及びCのうち少なくとも1つ」は(i)A、(ii)B、(iii)C、(iv)A、B、及びC、(v)A及びB、(vi)B及びC、又は(vii)A及びCを意味する。
【0235】
本開示の範囲を理解するにあたり、「備える」及びその派生は、本明細書にて使用される場合、言及された機能、要素、構成要素、グループ、整数、及び/又はステップを明示するが、その他の言及されていない機能、要素、構成要素、グループ、整数、及び/又はステップを除外しない、オープンエンド形式の用語であることが意図される。上記は「含む」、「有する」、及びそれらの派生のような、同様の意味を持つ用語にも当てはまる。「部品」、「部分」、「一部」、「部材」、「要素」、又は「構成要素」の用語が単数形で使用された場合は1つの部分と複数の部分の二重の意味を持つ。本明細書で使用されるように、方向を示す用語「前へ、後ろへ、上へ、下へ、垂直に、水平に、下に、横切って、横向きに、及び縦向きに」及び他の類似した方向を示す用語は、装置又は機器の位置、又は装置又は機器が移される、又は移動される方向を示す。
【0236】
最後に、本明細書で使用される「概ね」「約」及び「おおよそ」のような程度を示す用語は、特定の値又は特定の値及び最終結果が著しく又は実質的に変わらないような指定値からの合理的な変動量(例えばそのような変化が適切であるような±0.1%、±1%、±5%、又は±10%までの変動)を意味する
例えば、「約1.0cm」は「1.0cm」又は「0.9cmと1.1cmの間」を意味すると解釈してもよい。「約」又は「おおよそ」のような程度を示す用語は範囲の一部である数字又は値を示すように使用され、用語は最低及び最高の数又は値を修飾するよう使用されてもよい。
【0237】
本開示は特定の形態の範囲に限定されることは意図せず、本明細書で説明される修正又は実施形態の代替、修正、及び同等のものを対象とすることを意図している。更に、本開示の範囲は、本開示に鑑みて当業者にとって明らかになり得る他の修正又は実施形態を完全に包含するものである。