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特許7589246検査のためにエレベータを動作させるための方法
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  • 特許-検査のためにエレベータを動作させるための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】検査のためにエレベータを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20241118BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B1/14 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022537041
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020083673
(87)【国際公開番号】W WO2021121905
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】19217052.0
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トロットマン,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ビッラ,バレリオ
(72)【発明者】
【氏名】ゾッティ,テレーザ
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/047783(US,A1)
【文献】国際公開第2019/029862(WO,A1)
【文献】特開2006-327748(JP,A)
【文献】特開2001-171957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
B66B 5/00-5/28
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査のためにエレベータ(1)を動作させるための方法であって、
エレベータ(1)は、
エレベータシャフト(5)に沿って移動可能であるキャビン(3)、
キャビン(3)を移動させるための駆動エンジン(11)、
複数のシャフトドア(23)であって、シャフトドア(23)のうちの少なくとも1つは、最下フロア(21’)および少なくとも1つの上部フロア(21’’、21’’’)を含む複数のフロア(21)の各々に配置され、シャフトドア(23)の各々は、シャフトドア(23)を相互に開閉するための関連するアクティブドア駆動装置(25)を有する、複数のシャフトドア(23)、
複数の信号レセプタ(33)であって、信号レセプタ(33)のうちの少なくとも1つは複数のフロア(21)の各々に配置される、複数の信号レセプタ(33)、
駆動エンジン(11)の動作を制御するためのエンジンコントローラ(13)、
シャフトドア(23)のアクティブドア駆動装置(25)の動作を制御するためのドアコントローラ(29)
を備え、
方法は、
フロア(21)のうちの1つに配置された信号レセプタ(33)のうちの1つで要求信号を受信することと、
要求信号の受信に応答して、
フロア(21)のうちの1つが最下フロア(21’)でない場合、キャビン(3)の屋根(41)がフロア(21)のうちの1つにおけるシャフトドア(23)に隣接するよう、キャビン(3)を第1の位置に移動させるために駆動エンジン(11)を制御するようエンジンコントローラ(13)に命令することと、
フロア(21)のうちの1つが最下フロア(21’)である場合、キャビン(3)を最下フロア(21’)の上方の第2の位置に移動させるように駆動エンジン(11)を制御するようエンジンコントローラ(13)に命令することと、
次いで、アクティブに開くようにフロア(21)のうちの1つにおけるシャフトドア(23)のドア駆動装置(25)を制御するようドアコントローラ(29)に命令することと、
エンジンコントローラ(13)を検査モードに切り替えることと
を含む方法。
【請求項2】
検査モードでは、エンジンコントローラ(13)は、キャビン(3)が第1の位置および第2の位置のうちの1つにそれぞれ到達した後に、駆動エンジン(11)がキャビン(3)を移動させることを防止する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フロア(21)のうちの1つが最下フロア(21’)でない場合、エンジンコントローラ(13)は、キャビン(3)の屋根(41)がフロア(21)のうちの1つの底部(37)と同一平面になるような位置にキャビン(3)を移動させるように駆動エンジン(11)を制御する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
要求信号の受信を可能にするため、受信信号の送信を開始する技術者(39)は、フロア(21)に配置され、エレベータシャフト(5)の外側に配置されている信号レセプタ(33)のうちの1つに近接したフロア(21)のうちの1つにいなければならない、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
信号レセプタ(33)は、データ通信デバイス(45)から短距離無線データ通信を介して要求信号を受信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
要求信号は、技術者によって携行されるモバイルデータ通信デバイス(45)によって送信される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
信号レセプタ(33)は、技術者(39)によって信号レセプタ(33)を手動で作動させることによって要求信号を受信する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法は、
1つの信号レセプタ(33)でファイナライジング信号を受信することと、
ファイナライジング信号の受信に応答して、
アクティブに閉じるようにフロア(21)のうちの1つにおけるシャフトドア(23)のドア駆動装置(25)を制御するようドアコントローラ(29)に命令することと、
エンジンコントローラ(13)を通常動作モードに戻すことと
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
要求信号を受信すると、要求信号の送信を開始する技術者(39)の識別が検出される、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ファイナライジング信号を受信すると、ファイナライジング信号の送信を開始する技術者(39)の識別が検出され、要求信号の送信を開始する技術者(39)の識別がファイナライジング信号の送信を開始する技術者(39)の識別と同一である場合にのみ、エンジンコントローラ(13)は通常動作モードに戻される、
請求項8を参照する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エレベータ(1)であって、
エレベータシャフト(5)に沿って移動可能であるキャビン(3)、
キャビン(3)を移動させるための駆動エンジン(11)、
複数のシャフトドア(23)であって、少なくとも1つのシャフトドア(23)は、最下フロア(21’)および少なくとも1つの上部フロア(21’’、21’’’)を含む複数のフロア(21)の各々に配置され、シャフトドア(23)の各々は、シャフトドア(23)を相互に開閉するための関連するアクティブドア駆動装置(25)を有する、複数のシャフトドア(23)、
複数の信号レセプタ(33)であって、少なくとも1つの信号レセプタ(33)は複数のフロア(21)の各々に配置される、複数の信号レセプタ(33)、
駆動エンジン(11)の動作を制御するためのエンジンコントローラ(13)、
シャフトドア(23)のアクティブドア駆動装置(25)の動作を制御するためのドアコントローラ(29)
を備え、
エレベータ(1)は、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行および制御することのうちの1つを行うように構成される、エレベータ(1)。
【請求項12】
信号レセプタ(33)の各々は、フロア(21)のうちの1つに配置され、エレベータシャフト(5)の外側に配置される、
請求項11に記載のエレベータ(1)。
【請求項13】
複数の信号レセプタ(33)、エンジンコントローラ(13)、ドアコントローラ(29)ならびに複数の信号レセプタ(33)、エンジンコントローラ(13)、およびドアコントローラ(29)間で信号を交換するために確立された通信の各々は、SIL3要件を満たすように構成される、
請求項11または12に記載のエレベータ。
【請求項14】
コンピュータプログラム製品であって、
請求項11から13のいずれか一項に記載のエレベータ(1)におけるプロセッサによって実行されると、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行および制御することのうちの1つをエレベータ(1)に命令するコンピュータ可読命令と、
モバイルデータ通信デバイス(45)におけるプロセッサによって実行されると、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行および制御することのうちの1つを行うように、請求項11から13のいずれか一項に記載のエレベータ(1)をトリガするための要求信号およびファイナライジング信号のうちの1つを送信するようにモバイルデータ通信デバイス(45)に命令するコンピュータ可読命令と
のうちの1つを備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
記憶された、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品を備えるコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査のためにエレベータを動作させるための方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法を実行するように構成されたエレベータ、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、駆動エンジンを使用して建物の複数のフロアの間でエレベータシャフトに沿って移動させることができる少なくとも1つのキャビンを備える。典型的には、キャビンは、キャビンへのアクセスを提供および遮断するためにそれぞれ開閉させることができる少なくとも1つのキャビンドアを備える。そのような目的のために、キャビンドアの、1つ以上のキャビンドアブレードは、一般に、例えばキャビンドアブレードを移動させるためのモータを備えるアクティブキャビンドア駆動装置に結合される。さらに、フロアの各々には、エレベータシャフトへのアクセスを選択的に提供または遮断するために開閉させることができる少なくとも1つのシャフトドアが設けられる。シャフトドアは、乗場(landing)ドアと呼ばれることもある。従来、シャフトドアは、アクティブドア駆動装置を有していない。その代わりに、キャビンがフロアの1つで停止されると、キャビンドアは、このフロアでシャフトドアに機械的に結合されることができ、シャフトドアはキャビンドアと共に開閉されることができる。言い換えると、キャビンドア駆動装置は、エレベータキャビンがその前で現在停止しているシャフトドアを間接的に開閉する。さらに、キャビンドアがシャフトドアに結合されていない限り、シャフトドアは一般に閉状態でロックされる。
【0003】
エレベータの検査中、技術者は、例えばエレベータシャフト内に含まれるエレベータの構成要素の完全性を検査できるようにするために、エレベータシャフトへのアクセスを必要とする。そのような目的のため、従来のエレベータでは、技術者は、フロアの1つに近づくようにキャビンを呼び出し、乗場動作パネルまたはキャビン動作パネルからの呼び出しが無視される検査モードにエレベータを設定しなければならなかった。その後、技術者はシャフトドアのロックを解除しなければならなかった。そのようなロック解除のために、技術者は、例えば、シャフトドアをロック解除するために、シャフトドア内の特定の機構と協働する三角形のキーなどの特定のツールを使用しなければならなかった。次いで、技術者は、シャフトドアを手動で開き、例えば待機キャビンの屋根に上がらなければならなかった。そのような屋根には、典型的には制御ユニットが設けられた。そのような制御ユニットを使用して、技術者は、キャビンをエレベータシャフト内の所望の位置に移動させるための検査モードにある間に駆動エンジンを制御することができた。そのような移動動作中に技術者が怪我をしないことを保証するために、実質的なセキュリティ対策が講じられる必要があった。例えば、検査中に、キャビンが、その屋根の上の技術者または例えばエレベータシャフトのピットの別の技術者が危険にさらされる場所に駆動されないことが保証されなければならなかった。最後に、検査が完了すると、技術者はエレベータシャフトを出て、関連するシャフトドアを手動で再ロックする必要があった。
【0004】
エレベータの乗場ドアのロックを開くためのアプローチは、例えば、国際公開第2017/212105A1号パンフレットおよび国際公開第2017/212106A1号パンフレットに提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/212105号
【文献】国際公開第2017/212106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査のためにエレベータを動作させるための代替方法が必要とされる場合がある。特に、技術者が最小限の労力でエレベータシャフトにアクセスすることができ、および/または技術者の安全レベルが高められることができる、検査のためにエレベータを動作させる方法が必要とされる場合がある。さらに、エレベータ、コンピュータプログラム製品、および/またはそのような方法を実施するように構成されたコンピュータ可読媒体が必要とされる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのような必要性は、独立請求項の1つの主題によって満たされることができる。利点となる実施形態は、従属請求項および以下の明細書で定義される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、検査のためにエレベータを動作させるための方法が提案される。その中では、エレベータは、エレベータシャフトに沿って移動可能なキャビンと、キャビンを移動させるための駆動エンジンと、複数のシャフトドアと、複数の信号レセプタと、駆動エンジンの動作を制御するためのエンジンコントローラと、シャフトドアのアクティブドア駆動装置の動作を制御するためのドアコントローラとを備える。シャフトドアのうちの少なくとも1つは、最下フロアおよび少なくとも1つの上部フロアを含む複数のフロアの各々に配置される。シャフトドアの各々は、シャフトドアを相互に開閉するための関連するアクティブドア駆動装置を有する。信号レセプタのうちの少なくとも1つは、複数のフロアの各々に配置される。本方法は、少なくとも以下のステップを含む:
フロアのうちの1つに配置される信号レセプタのうちの1つで要求信号を受信するステップと、
要求信号の受信に応答して:
フロアのうちの1つが最下フロアでない場合、キャビンの屋根がフロアのうちの1つにおけるシャフトドアに隣接するような位置(本明細書では「第1の位置」と呼ぶ)にキャビンを移動させるように駆動エンジンを制御するようエンジンコントローラに命令するステップと、
フロアのうちの1つが最下フロアである場合、キャビンを最下フロアの上方の位置(本明細書では「第2の位置」と呼ぶ)に移動させるように駆動エンジンを制御するようエンジンコントローラに命令するステップと、
次いで、ドアコントローラに、フロアのうちの1つでのシャフトドアのドア駆動装置を制御してアクティブに開くように命令するステップと、
エンジンコントローラを検査モードに切り替えるステップである。
【0009】
方法ステップは、好ましくは示された順序で実行されることができる。安全上の理由から、少なくともキャビンが移動される場合、キャビンがその目的位置に到達して停止される前に、シャフトドアの開放が命令されてはならない。しかしながら、他の方法ステップでは、異なる順序で実行されてもよい。例えば、検査モードは、要求信号を受信すると、すなわちキャビンを移動させる前および/またはシャフトドアを開く前に、すぐに開始されてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、エレベータが提案され、エレベータは、本発明の第1の態様について上述した特徴を備え、本発明の第1の態様の一実施形態による方法を実行および制御することのうちの1つを行うように構成される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータプログラム製品が提案される。コンピュータプログラム製品は、本発明の第2の態様の一実施形態によるエレベータのプロセッサによって実行されると、本発明の第1の態様の一実施形態による方法を実行および制御することのうちの1つをエレベータに命令するコンピュータ可読命令を含む。代替的に、コンピュータプログラム製品は、モバイルデータ通信デバイスにおけるプロセッサによって実行されると、本発明の第2の態様の一実施形態によるエレベータをトリガするための要求信号およびファイナライジング信号のうちの1つを、本発明の第1の態様の一実施形態による方法を実行および制御することのうちの1つに送信するようにモバイルデータ通信デバイスに命令するコンピュータ可読命令を含む。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、コンピュータ可読手段が提案される。コンピュータ可読手段は、本発明の第3の態様の一実施形態によるコンピュータプログラム製品をそこに記憶している。
【0013】
本発明の基礎となる実施形態の考えは、とりわけ、以下の観察および認識に基づくものとして解釈されることができる。
【0014】
簡潔に要約すると、本明細書で提案される方法の実施形態は、検査プロセス中にエレベータを動作させるための代替アプローチを実施するための最新のエレベータに含まれる技術的特徴から利点を得る。従来のエレベータは一般にパッシブシャフトドアを有していたが、いくつかの最新のエレベータは、エレベータの他の構成要素とは独立して、特にキャビンおよびそのキャビンドアとは独立して、シャフトドアブレードを開閉するためのアクティブドア駆動装置が設けられたアクティブシャフトドアを有する。検査手順を開始し、検査手順中にエレベータを動作させる代替アプローチを実施するために、そのような機能を使用することが提案される。
【0015】
最初に、本明細書で提案されるエレベータの構成要素のいくつかの特徴およびその機能がより詳細に説明される。
【0016】
キャビン、エレベータシャフト、駆動エンジン、およびエンジンコントローラの基本機能に関して、本明細書で提案されるエレベータは、従来のエレベータと同様であり得る。その中で、エンジンコントローラは、例えば建物の各フロアに設けられた複数の乗場動作パネルの1つから、および/またはエレベータキャビン内に設けられたキャビン動作パネルから受信した呼び出しに応答して、通常動作中にキャビンを移動させるように駆動エンジンを制御することができる。
【0017】
しかしながら、ほとんどの従来のエレベータと比較して、本明細書で提案されるエレベータは、そのシャフトドアおよびこれらのシャフトドアが開閉されることができる方法に関して異なる。特に、本エレベータでは、複数のフロアの各々のシャフトドアの各々は、それ自体の関連するアクティブドア駆動装置を有するものとする。そのようなドア駆動装置は、一般に、アクチュエータを含む。そのようなアクチュエータは、例えば、電気モータ、油圧、空気圧、または同様の手段を使用して実施されることができる。アクチュエータは、1つ以上のシャフトドアブレードと協働して、シャフトドアがフロアからエレベータシャフトへのアクセスを可能にする開状態と、そのようなアクセスがブロックされる閉状態との間で1つ以上のシャフトドアブレードを移動させることができる。
【0018】
アクティブドア駆動装置およびそのアクチュエータは、ドアコントローラによって制御されてもよい。各シャフトドアは、そのドア駆動装置を制御するためのそれ自体のドアコントローラを有することができる。代替的に、中央ドアコントローラが、複数のシャフトドアのドア駆動装置を制御することができる。
【0019】
一般に、エレベータの通常動作中、ドアコントローラ(複数可)は、エンジンコントローラおよび/またはエレベータの他の構成要素から受信した信号に応答してシャフトドアのアクティブドア駆動装置の動作を制御し、これらの信号は、キャビンがフロアの1つで現在停止していることを示し、その結果、ドアコントローラは次に、その関連するドア駆動装置を作動させることによって、フロアのこの1つでシャフトドアを開くことを制御することができる。
【0020】
通常運転中、シャフトドアは、エレベータキャビンがこのシャフトドアに隣接して停止されているときにのみ開放されるものとする。そのような状況では、キャビンドアとそれぞれのシャフトドアとは、互いに正反対である。
【0021】
しかしながら、エレベータの検査を可能にするために、この一般的な規則からの例外が実施されなければならない場合がある。特に、技術者は、エレベータシャフトにアクセスするために、キャビンがこのシャフトドアに直接隣接して停止されていない間に、シャフトドアを開くことができるものとする。
【0022】
安全上の理由から、キャビンがシャフトドアに停止されていない間、権限のない人がシャフトドアを開ける可能性がないことを保証しなければならない。さらに、キャビンがこのシャフトドアにない間に技術者がシャフトドアを開くときに、技術者に対するあらゆる危険を回避するための措置を講じるべきである。
【0023】
そのような要件を満たすために、複数のフロアの各々に信号レセプタを設けることが提案される。そのような信号レセプタは、別のデバイスから送信された、または技術者によって入力された信号を受信することができるデバイスであり得る。例えば、信号レセプタは、センサ、スイッチ、プッシュボタンまたは同様のデバイスであってもよい。
【0024】
特に、信号レセプタは、いわゆる要求信号を受信するように構成されてもよい。要求信号は、エレベータが点検のために準備されるものであることを示すものとする。要求信号は、認可された技術者のみがそのような要求信号を信号レセプタに提供することができるようなものであってもよく、および/または送信されてもよい。例えば、要求信号は、秘密コードまたは暗号化を含んでもよい。さらに、要求信号は、一般に認可された技術者によってのみアクセス可能なデバイスによって生成されてもよい。追加的または代替的に、要求信号は、一般に認可された技術者によってのみアクセス可能なコードまたはコンピュータプログラムを使用して生成されてもよい。
【0025】
さらに、上記の要件を満たすために、技術者がエレベータシャフトに落下するのを防止することができる場所にキャビンが以前に駆動されたときにのみ技術者がシャフトドアを開くことを可能にする技術的対策が実施される。
【0026】
したがって、本明細書で提案される方法では、要求信号の提供は技術者によって開始されることができる。以下でさらに説明するように、そのような要求信号は様々な方法で提供されることができる。次いで、要求信号は、技術者が現在位置されるフロアに配置される信号レセプタによって受信されることができる。
【0027】
要求信号を受信すると、まず、要求信号を受信した信号レセプタが配置されるフロアが、エレベータによってサービスされる最下フロアであるか、またはこの最下フロアより上のフロアであるかが決定される。
【0028】
要求信号が最下フロアの信号レセプタによって受信された場合、これは、技術者がこの最下フロアのシャフトドアでエレベータシャフトに入りたいことを意味する。そのような場合、技術者はエレベータシャフトのピットに入りたいと想定されることができる。そのようなピットに入ることを可能にするために、キャビンは、最下フロアの上の位置、すなわち、例えば、第1のフロアの隣の位置またはより高い上部フロアの1つに駆動されるように最初に制御される。次いで、エレベータシャフトがキャビンから空にされると、最下フロアのシャフトドアのドアコントローラは、このシャフトドアのドア駆動装置を制御してアクティブに開くことができる。したがって、技術者は、このシャフトドアを通ってエレベータシャフトに入り、エレベータシャフトのピットで検査サービスを提供することができる。
【0029】
要求信号が最下フロアではなく上部フロアの1つに配置される信号レセプタの1つによって受信された場合、エンジンコントローラは、最初に、キャビンの屋根が、要求信号が受信されたフロアのシャフトドアに隣接するような位置にキャビンを移動させるように駆動エンジンを制御するように命令される。言い換えると、キャビンは、そのキャビンドアがシャフトドアの真向かいではなく、その屋根がシャフトドアの隣にある位置に駆動される。例えば、キャビンは、その屋根がシャフトドアの下端部の隣になるように、移動および停止させられることができる。そのようにしてキャビンが移動して停止した後にのみ、ドアコントローラは、それぞれのシャフトドアのドア駆動装置を制御してシャフトドアをアクティブに開くように命令される。したがって、技術者がこのシャフトドアを通ってエレベータシャフトに入ると、技術者は停止されたキャビンの屋根に乗ることができる。特に、技術者は、キャビンがその屋根を開いたシャフトドアに隣接させて停止されることによって、エレベータシャフト内に落下することが防止されることができる。
【0030】
さらに、信号レセプタの1つで要求信号を受信したことに応答して、エレベータのエンジンコントローラは検査モードに切り替えられることができる。そのような検査モードへの切り替えは、要求信号を受信した直後、すなわちキャビンを移動させる前に行ってもよい。代替的に、検査モードへの切り替えは、キャビンが最下フロアの上のその目的位置に、または要求している技術者が待機しているフロアのシャフトドアに隣接したその屋根で移動される間または後に行うように実施されてもよい。この検査モードは、少なくとも乗場動作パネルおよび/またはキャビン動作パネルで乗客によって入力された呼び出しが無視される点で、前の通常動作モードと異なる。したがって、検査モード中、エレベータはもはや乗客に搬送サービスを提供しなくてもよい。こうして、検査モード中、乗客の呼び出しに応答してキャビンが移動される危険性はない。
【0031】
本明細書で提案される方法およびそのような方法を実施するように構成されたエレベータにより、エレベータの検査は技術者にとってより簡単かつより安全にされることができる。特に、要求信号をエレベータの信号レセプタの1つに単に提供することによって、技術者は、技術者がエレベータシャフトのピットのレベルまたは上部フロアの1つのレベルのいずれかでエレベータシャフトに確実に入ることができるような位置にキャビンが自動的に駆動される手順を開始することができる。さらに、技術者が待機して要求信号をローカル信号レセプタに提供するシャフトドアは、エレベータシャフトへのアクセスを提供するために自動的に開かれることができる。
【0032】
一実施形態によれば、検査モードでは、エンジンコントローラは、キャビンが第1および第2の位置の1つにそれぞれ到達した後に、駆動エンジンがキャビンを移動させることを防止する。
【0033】
言い換えれば、本明細書で提案される方法を実行する際の第1の動作として、キャビンは、意図された目的位置に駆動され、すなわち、キャビンは、その屋根が、要求信号が提供されたフロアのシャフトドアに隣接するように第1の位置に駆動されるか、または要求信号が最下フロアで提供された場合には、キャビンは最下フロアの上の第2の位置に駆動される。そのような目的位置に到達すると、エンジンコントローラは、それ以上キャビンを移動させることができないモードに切り替わる。したがって、後続の検査中、キャビンの位置は固定される。したがって、少なくともそれぞれのシャフトドアが開かれ、技術者がピットにアクセスするためにエレベータシャフトに入るかまたはキャビン屋根に乗ることができるとすぐに、キャビンはもはや移動することができない。したがって、そのような検査状況では、キャビンの移動によって技術者が傷つく危険性はない。こうして、そのような検査モードでは、技術者の安全性が向上される。
【0034】
さらに、シャフトドアの1つが開いており、技術者がエレベータシャフトにアクセスできる限り、キャビンの移動は一般に許容されないため、検査手順中にキャビンの移動を制御するために技術者に特定の制御手段が提供される必要はもはやない。
【0035】
別の言い方をすれば、従来のアプローチでは、検査中に技術者がキャビンを移動させることを可能にするために、特定の制御手段がキャビンの屋根および/またはエレベータシャフトのピットに設けられていたが、本明細書に記載のアプローチは、技術者がエレベータシャフト内にいる間に技術者がエレベータを移動させることを可能にする選択肢を意図的に省くことができる。これにより、技術者の安全性を高めることができるだけでなく、ピットまたはキャビン屋根からの検査中の何らかの移動を制御するために技術者に提供されなければならない特定の制御手段などのハードウェアも必要なく、そのようなハードウェアのコストを回避することができる。
【0036】
一実施形態によれば、提案された方法の間、フロアのうちの1つが最下フロアではない場合、エンジンコントローラは、キャビンの屋根がフロアのうちの1つの底部と同一平面になるような位置にキャビンを移動させるように駆動エンジンを制御する。
【0037】
言い換えると、第1の位置は、キャビン屋根の上側のレベルが、要求信号がローカル信号レセプタに提供されたフロアの底部のレベルに実質的に対応することができるように設定されてもよい。したがって、例えば、フロアの底部とキャビン屋根との間に危険なステップが生成されず、技術者は、シャフトドアが開くとすぐにキャビン屋根に容易かつ確実に乗ることができる。
【0038】
これに関連して、「同一平面」という用語は、例えば、許容公差内で互いに対応するフロアの底部のレベルおよびキャビン屋根の上側のレベルとして解釈されることができる。そのような公差は、例えば、50cm未満、好ましくは20cm未満、または5cm未満、またはさらには2cm未満であってもよい。
【0039】
一実施形態によれば、提案された方法中に要求信号の受信を可能にするため、受信信号の送信を開始する技術者は、フロアに配置され、エレベータシャフトの外側に配置されている信号レセプタのうちの1つに近接したフロアのうちの1つにいなければならない。
【0040】
言い換えれば、信号レセプタは、要求信号が信号レセプタに提供される方法が、受信信号の送信を開始する技術者がエレベータから遠く離れたどこかに位置されなくてもよく、または特にエレベータシャフト内に位置されなくてもよいことが保証されるように実現されるように構成される。代わりに、技術者は、技術者がエレベータシャフトに入りたいフロアに配置される信号レセプタの近くに位置されることが保証されなければならず、信号レセプタはエレベータシャフトの外側に配置されなければならない。特に、技術者は、技術者がこの信号レセプタに十分に近い限り、要求信号を信号レセプタに提供することができさえすればよい。
【0041】
「近接」は、その場合、技術者と信号レセプタとの間の距離が、それぞれのフロアでの信号レセプタとシャフトドアとの間の最短距離よりも小さくなければならないことを意味することができる。例えば、「近接」は、技術者と信号レセプタとの間の距離が10m未満、好ましくは3m未満、またはさらには1m未満でなければならないことを意味することができる。
【0042】
したがって、技術者は、技術者がそれぞれのフロア内に位置され、技術者がエレベータシャフト内にいない限り、要求信号を提供するだけでよいことが保証されることができる。したがって、技術者は、彼自身がそれぞれのフロアにいない間に要求信号を提供することによって提案された方法を開始する可能性が防止されることができる。これにより、本方法中、技術者が近くにいなくてもそれぞれのフロアのフロアドアが開くことが防止されることができる。さらに、技術者は、例えばエレベータシャフト内にいる間、すなわち例えばエレベータキャビン内にいる間に要求信号を提供することによって提案された方法を開始する可能性が防止されることができる。したがって、検査手順全体は、技術者ならびに他の人の両方にとってより安全にされることができる。
【0043】
一実施形態によれば、信号レセプタは、データ通信デバイスからの短距離無線データ通信を介して要求信号を受信することができる。
【0044】
これは、技術者が、要求信号を生成し、要求信号を信号レセプタに提供するためにデータ通信デバイスを使用することができることを意味する。その場合、信号レセプタおよびデータ通信デバイスは、短距離無線データ通信技術を使用して要求信号を交換する必要がある。そのような短距離無線データ通信技術は、例えば、ブルートゥース通信または任意の他の種類の近距離無線通信(NFC)であってもよい。短距離無線データ通信技術は、データ通信デバイスが信号レセプタに近接している限り、要求信号の送信のみが可能であるような特徴を有してもよい。「近接」は、上記で定義されたように解釈されることができる。
【0045】
例えば、要求信号は、技術者によって携行されるモバイルデータ通信デバイスによって送信されてもよい。
【0046】
そのようなモバイルデータ通信デバイスは、データ処理のためのプロセッサ、データ記憶のための一部のメモリ、および他のデバイスとデータを交換するためのデータ通信インターフェースを有するポータブルデバイスであってもよい。例えば、そのようなモバイルデータ通信デバイスは、技術者のスマート携帯電話、タブレット、ラップトップなどであってもよい。そのようなモバイルデータ通信デバイスは、例えば技術者によって作動されると、要求信号を生成および送信するための特定のアプリケーション(「アプリ」)を使用してプログラムされてもよい。
【0047】
代替として、要求信号は、データが記憶されることができるが処理されることができない、および/またはアクティブに発信されることができないパッシブモバイルデータ通信デバイスを使用して送信されることができる。例えば、そのようなパッシブモバイルデータ通信デバイスは、要求に応じて無線周波数コードを発信することができるRFID(無線周波数識別子)デバイスであってもよい。その中で、無線周波数コードは、要求信号を表すかまたは暗号化することができ、信号レセプタによって受信されることができる。
【0048】
一代替の実施形態によれば、信号レセプタは、技術者によって信号レセプタを手動で作動させることによって要求信号を受信することができる。
【0049】
そのような実施形態では、技術者は、要求信号を生成および提供するためのポータブル技術デバイスをまったく必要としない場合がある。代わりに、技術者は、信号レセプタと直接手動で協働することによって要求デバイスを提供することができる。例えば、信号レセプタは、作動される1つ以上のプッシュボタン、スイッチまたは同様のセンサを有することができる。
【0050】
好ましくは、信号レセプタは、認可された技術者のみが受信信号を提供することができるように、信号レセプタを手動で作動させることによって、および/または要求信号が生成されるように構成される。例えば、信号レセプタは、信号レセプタの作動を防止する保護手段によって保護されてもよく、保護手段は、例えばキーまたは同様の手段を使用することによって、技術者によってのみ解除されてもよい。代替的に、信号レセプタは、誰でも作動させることができるが、要求信号を生成するために作動させなければならない特定の方法は、認可された技術者によってのみ知られている。例えば、信号レセプタは、パターン化された一連の手動作動で作動されなければならない場合があり、パターン化された一連の手動作動によって、要求信号を表す一種のコードが形成される。具体的には、信号レセプタは、ローカルシャフトドアに近いフロアの各々に設けられた乗場動作パネルまたはその一部とすることができ、受信信号は、所定のパターン化された作動シーケンスでそのような乗場動作パネルのプッシュボタン、スイッチまたはセンサを作動させることによって入力されることができる。
【0051】
一実施形態によれば、本明細書で提案される方法は、以下のステップをさらに含む:
1つの信号レセプタでファイナライジング信号を受信するステップと、
ファイナライジング信号の受信に応答して、
フロアのうちの1つにおけるシャフトドアのドア駆動装置を制御してアクティブに閉じるようにドアコントローラに命令するステップと、
エンジンコントローラを通常動作モードに戻すステップである。
【0052】
言い換えれば、本明細書で提案される方法は、キャビンが特定の第1または第2の位置に駆動され、エンジンコントローラが検査モードに切り替えられる(「チェックイン」に対応する)手順に入るための要求信号を受信することを含むだけでなく、ファイナライジング信号を受信することを追加的に含むことができる。そのようなファイナライジング信号を受信することは、検査手順が完了した(「チェックアウト」に対応する)ことを示すことができる。ファイナライジング信号の受信に応答して、要求信号の受信に応答して以前に開かれていたシャフトドアを再び閉じ、エンジンコントローラは通常動作に戻されることができる。
【0053】
したがって、ファイナライジング信号を生成して送信することにより、技術者は検査手順を完了したことを示すことができる。その中で、要求信号の受信に関して上述したのと同様に、信号レセプタが配置される方法および/またはファイナライジング信号が信号レセプタに送信される方法は、技術者がエレベータシャフトを離れ、フロアの信号レセプタの近くに、以前にエレベータシャフトに入ったシャフトドアを通って戻ってきているときにのみファイナライジング信号が送信されることができることが保証されるように適合されることができる。
【0054】
一実施形態によれば、要求信号を受信すると、要求信号の送信を開始する技術者の識別が検出されることができる。
【0055】
これは、信号レセプタの1つが要求信号を受信すると、要求信号の受信が登録されて、キャビンの移動および検査モードへの切り替えなどの後続の反応をトリガするだけでなく、どの人が要求信号を送信したかも検出されることを意味する。
【0056】
その中で、要求信号の送信を開始する技術者の識別は、様々な技術的手段を使用して検出されることができる。例えば、要求信号を送信するために使用されるデータ通信デバイスは、要求信号を表すデータパッケージに識別データを含むことができる。そのような識別データは、例えば、データ通信デバイスの所有者またはユーザを識別することができる。代替的に、要求信号の送信を開始する技術者は、カメラで撮影された写真の画像分析、指紋センサによって撮影された指紋の分析、または他の様々な手段を使用して識別されてもよい。
【0057】
技術者の識別を検出すると、例えば、この技術者が本明細書で提案される方法を開始し、次いでエレベータシャフトに入ることを認可されているかどうかがチェックされることができる。追加的または代替的に、技術者の識別は、例えば、後の時点で、誰がエレベータを検査したかが追跡されることができるように記憶されてもよい。
【0058】
さらに、特定の実施形態によれば、ファイナライジング信号を受信すると、ファイナライジング信号の送信を開始する技術者の識別が検出され、要求信号の送信を開始する技術者の識別がファイナライジング信号の送信を開始する技術者の識別と同一である場合にのみ、エンジンコントローラは通常動作モードに戻される。
【0059】
言い換えれば、技術者の識別は、本明細書で提案される方法の開始時、すなわち要求信号を受信したとき、したがって検査を開始する前、ならびに本明細書で提案される方法の完了時、すなわちファイナライジング信号を受信したとき、したがって検査を完了したときの両方で検出されることができる。その場合、エンジンコントローラは、同じ技術者が最初に要求信号を送信し、後でファイナライジング信号を送信した場合にのみ、通常動作に戻される。
【0060】
これにより、例えば、検査を最初に開始した技術者以外の他の人がエンジンコントローラを通常動作に戻すことができないことが保証されることができる。特に、第1の技術者が要求信号を送信してエレベータシャフトに入ることによって検査を開始した状況では、例えば、検査を開始せず、第1の技術者がエレベータシャフト内にいることを認識しなかった第2の技術者が、エレベータを通常の検査に戻し、それによって第1の技術者を危険にさらす可能性が防止されることができる。
【0061】
本明細書で提案される方法の実施形態を実行または制御するように構成されたエレベータでは、複数のドアコントローラの少なくともそれぞれは、SIL3要件を満たすように構成されてもよい。本明細書で提案される方法の実施形態を実行または制御するように構成された好ましいエレベータでは、複数の信号レセプタ、エンジンコントローラ、ドアコントローラ、および複数の信号レセプタ、エンジンコントローラ、ドアコントローラ間で信号を交換するために確立された通信の各々は、SIL3要件を満たすように構成されることができる。
【0062】
それは、エレベータにおいて、シャフトドアの任意のキャビンの動きおよび開放動作の監視および/または制御に関与するすべての構成要素が、SIL3(安全性完全性レベル3)規格で定義されているような高い安全要件を満たさなければならない可能性があることを意味する。したがって、構成要素の1つの故障が、技術者がエレベータシャフト内にいる間にキャビンを移動させること、またはキャビンがシャフトドアに近い第1の位置に駆動されていない間にシャフトドアを開くことなどの潜在的に危険な状況を作り出すことをもたらす可能性がないことが保証されることができる。
【0063】
本明細書で提案されるエレベータに備えられるエンジンコントローラおよび/またはドアコントローラは、プログラム可能であってもよい。それらは、例えば、コンピュータ可読命令を実行し、および/またはデータを処理するためのプロセッサと、命令および/またはデータを記憶するためのメモリとを有することができる。コンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム製品は、任意のコンピュータ可読言語であってもよい。コンピュータ可読命令を実行すると、エンジンコントローラおよび/またはドアコントローラは、本明細書で提案される方法のステップを実行または制御する。任意選択的に、エンジンコントローラおよびドアコントローラは、単一のコントローラデバイスに実現されてもよい。
【0064】
さらに、アプリケーション(「アプリ」)の形態のコンピュータプログラム製品は、エレベータが本明細書で提案する方法を実行または制御するように、エレベータをトリガするための要求信号およびファイナライジング信号のうちの1つを送信するようにスマートフォンなどのモバイルデータ通信デバイスに命令するために使用されることができる。
【0065】
最後に、記憶される上記のコンピュータプログラム製品を含むコンピュータ可読媒体は、一時的または非一時的なデータ記憶のためのCD、CVD、フラッシュメモリなどの任意のポータブルコンピュータ可読媒体であってもよい。代替的に、コンピュータ可読媒体は、コンピュータまたはクラウドもしくはインターネットなどのコンピュータネットワークの一部であってもよく、コンピュータプログラム製品はそこからダウンロードされてもよい。
【0066】
本発明の実施形態の可能な特徴および利点は、本明細書では、検査のためにエレベータを動作させる方法に関して部分的に説明され、そのような方法を実施するように構成されたエレベータに関して部分的に説明されることに留意されたい。当業者は、本発明のさらなる実施形態に到達するために、特徴が1つの実施形態から別の実施形態に適切に移行することができ、特徴は修正、適合、組み合わせ、および/または交換されることができることを認識するであろう。
【0067】
以下、添付の図面を参照して、本発明の利点となる実施形態が説明される。しかしながら、図面も説明も、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本発明の一実施形態による検査のためにエレベータを動作させるための方法を実行するように構成されたエレベータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図は概略図にすぎず、縮尺通りではない。同じ参照符号は、同じまたは類似の特徴を指す。
【0070】
図1は、エレベータ1を示す。エレベータ1が側面図で示されている。さらに、エレベータ1の一部は、破線の枠線の内側の部分図で視覚化されるように、正面図で示されている。
【0071】
エレベータ1は、エレベータシャフト5に沿って移動可能なキャビン3を備える。エレベータキャビン3は、ロープまたはベルトなどのサスペンション牽引手段7によって保持および移動される。その反対側の端部において、サスペンション牽引手段7はカウンタウエイト9に結合されている。サスペンション牽引手段7は、駆動エンジン11によって駆動される。駆動エンジン11は、エンジンコントローラ13によって制御される。図1に示されるサスペンション牽引手段7および駆動エンジン11の構成は、非常に概略的な方法で表されていることに留意されたい。
【0072】
エレベータキャビン3は、エレベータキャビン3へのアクセスを開閉するためのキャビンドア15を備える。キャビンドア15は、キャビンドア駆動装置17によってアクティブに開閉されてもよい。キャビンドア駆動装置17は、キャビンドアコントローラ19によって制御される。
【0073】
複数のフロア21の各々には、少なくとも1つのシャフトドア23が設けられる。シャフトドア23は、エレベータシャフト5へのアクセスを許可または遮断するために開閉されることができる。本明細書に提示されるエレベータ1は、シャフトドアブレード27を横方向に移動させることによってそれぞれのシャフトドア23をアクティブに開閉するために、シャフトドア23のそれぞれにアクティブドア駆動装置25を備える。ドア駆動装置25の各々は、ドアコントローラ29によって制御される。本明細書に提示される例では、ドアコントローラ29はエンジンコントローラ13に統合されている。より簡単に定式化するために、「ドア駆動装置25」および「ドアコントローラ29」という用語は、本明細書ではシャフトドア23のみを指すものとし、キャビンドア15(「キャビンドア駆動装置17」および「キャビンドアコントローラ19」を有する)を指すものではないことに留意されたい。
【0074】
また、複数のフロア21の各々には、乗場動作パネル31がシャフトドア23の近傍に設けられている。例えば、そのような乗場動作パネル31は、キャビン3を呼び出してそのフロア21に来るように乗客によって作動させられることができる1つ以上のプッシュボタン32を備えることができる。
【0075】
加えて、示されている例では、乗場動作パネル31の隣に別個の信号レセプタ33が配置されている。信号レセプタ33は、要求信号およびファイナライジング信号などの信号を受信するように構成される。
【0076】
エレベータ1の通常動作中、エンジンコントローラ13は、乗場動作パネル31の1つを作動させることによって提供される乗客の呼び出しに応答して、キャビン3をフロア21の1つに移動させるように駆動エンジン11を制御する。その際、駆動エンジン11は、キャビン3が乗客を集めるかまたは届けるフロア21においてキャビン底部35が底部37と実質的に同一平面になるように、キャビン3が乗場位置で停止されるように制御される。
【0077】
点検のために、エレベータ1の通常運転を一時的に中断しなければならない。そのような目的のために、本明細書で提案される方法によれば、技術者は、例えば最下フロア21’または複数のフロア21’’、21’’の1つなどのフロア21の1つでエレベータ1にアプローチすることができる。このフロア21でシャフトドア23に近づくと、技術者39は要求信号の発信を開始することができる。次いで、そのような要求信号は、それぞれのフロア21の信号レセプタ33によって受信される。そのような要求信号の受信は、信号レセプタ33から、例えばエンジンコントローラ13および/またはドアコントローラ29に向かって通信することができる。そのような要求信号の受信に応答して、受信信号が最下フロア21’に配置された信号レセプタ33から受信されたか、または上部フロア21’’、21’’’の1つに配置された信号レセプタ33の1つから受信されたかが次にチェックされる。
【0078】
受信信号が上部フロア21’’、21’’’の1つの信号レセプタ33の1つで受信されたとき、エンジンコントローラ13は、キャビン3の屋根41が、要求信号が受信されたフロア21
’’’のシャフトドア23に隣接するような位置にキャビン3を移動させるように駆動エンジン11を制御する。好ましくは、キャビン3は、その屋根41の上面がそれぞれのフロア21’’’の底部37と実質的に同一平面になるレベルで停止される。その後、ドアコントローラ29は、それぞれのフロア21’’’のドア駆動装置25を制御して、関連するシャフトドア23をアクティブに開く。したがって、技術者39は、待機キャビン3の屋根41の上に乗ることによってエレベータシャフト5に入ることができる。そのような位置では、技術者39は、例えば、カーガイドシュー、カーブレーキ、フロントブラケット固定、サスペンション牽引手段7およびカウンタウエイト側とキャビン側の端部コネクタ、カウンタウエイトガイドシュー、シャフト情報、荷重測定デバイス、ヘッドルームの偏向プーリ、ならびに/または他の構成要素(図の簡略化および明瞭化のために図示されていない構成要素)などのエレベータ1の様々な構成要素を検査、修正、修理または交換することができる。
【0079】
シャフトドア23に隣接するキャビン3は、必ずしも屋根41がそれぞれのフロア21’’’の底部37と同一平面上にある位置になくてもよい。屋根41がフロア21’’’の底部37のかなり上方にあるような位置にキャビン3を移動させることが賢明な場合がある。例えば、そのようなキャビン位置は、技術者39が駆動エンジン11を検査、修理、または交換しなければならないときに有用であることができ、これは、図1に例示的に示されるように、エレベータシャフトのシャフトヘッドの領域に配置される。この場合、技術者39は、最上部のフロアの底部から約50cm以上上方にあるキャビン屋根41まで上昇することができる。
【0080】
最下フロア21’の信号レセプタ33で受信信号が受信されると、エンジンコントローラ13は、駆動エンジン11を制御して、キャビン3を最下フロア21’の上方の位置に移動させる、すなわち、キャビン底部35がエレベータシャフト5のピット43の十分に上方にあるようにして、技術者39がそのようなピット43に入ることを可能にする。その後、ドアコントローラ29は、最下フロア21’のドア駆動装置25を制御して、関連するシャフトドア23をアクティブに開く。したがって、技術者39は、エレベータシャフト5のピット43に入ることができる。ピット33において、技術者は、例えば、機械上の牽引シーブプーリ、スラックベルト(牽引手段上の張力)、換気装置の電気駆動装置およびモータ、ならびに/または他の構成要素(図の簡略化および明瞭化のために図示されていない構成要素)など、エレベータ1の様々な構成要素を検査、修正、修理、または交換することができる。さらに、技術者39はピット43を清掃してもよい。
【0081】
さらに、エンジンコントローラ13は、要求信号を受信すると、検査モードに切り替えられる。そのような検査モードでは、例えば乗場動作パネル31またはキャビン動作パネルの1つで乗客によって入力された呼び出しは無視される。さらに、要求信号の受信に応答して、フロア21の1つでシャフトドア23が開かれる限り、キャビン3のいかなる移動も防止される。
【0082】
一例示的な実施形態では、技術者39は、要求信号を形成するデータを生成および送信するために、彼のスマートフォンなどのデータ通信デバイス45を使用することができる。そのような目的のために、特定のアプリケーションがプログラムされ、データ通信デバイス45にアップロードされてもよい。このアプリケーションのアクティベーション時に、データ通信デバイス45は、要求信号を形成するデータを、例えば電磁波として送信することができる。電磁波は、信号レセプタ33に備えられる適切なセンサによって受信されることができる。好ましくは、データ通信は、データ通信デバイス45が信号レセプタ33に十分に近接している場合にのみ、信号レセプタ33が要求信号を受信することができるように、短距離無線データ通信として確立される。
【0083】
一代替の実施形態では、信号レセプタ33は、別個のデバイスとして実現されなくてもよく、通常は他の目的で機能する既存のデバイスの一部であってもよい。例えば、信号レセプタ33は、フロア21の各々の乗場動作パネル31に統合されてもよい。そのような実施形態では、技術者39は、例えば乗場動作パネル31を特定の方法で作動させることによって要求信号を提供することができる。例えば、乗場動作パネル31のプッシュボタン32は、特定の作動シーケンスにより作動させられることができ、そのような作動シーケンスは認可された技術者にのみ知られている。
【0084】
検査作業が完了すると、技術者39は、開いたシャフトドア23を通ってエレベータシャフト5から離れることができる。次いで、技術者39は、信号レセプタ33によって受信されることができるファイナライジング信号を送信することができる。ファイナライジング信号を受信すると、ドアコントローラ29は、開かれたシャフトドア23のドア駆動装置25を制御して、このシャフトドア23を閉じるように命令されることができる。その後、エンジンコントローラ13は、その通常動作モードに戻されてもよい。
【0085】
本明細書で提案される方法およびエレベータ1により、エレベータ1の検査は実質的に単純化されることができ、より安全にされることができる。特に、要求信号を送信することによって開始すると、技術者39の隣のシャフトドア21はアクティブかつ自動的に開かれることができる。さらに、キャビン3は、その屋根41がフロア底部37と実質的に同一平面にある適切な位置に既に駆動されているので、技術者39はキャビン屋根41に容易かつ確実に乗ることができる。代替的に、技術者39は、キャビン3がピット43から自動的に取り外された後、ピット43に容易に入ることができる。検査モード中、キャビン3のさらなる移動は許容されないので、技術者39の怪我の危険性は最小限に抑えられる。さらに、キャビン屋根41の上またはピット43の中に制御ユニットをまったく必要としない。一般に、キャビン屋根41上のトーガードおよび/またはキャビンシル上のエプロンも必要としない。したがって、そのようなハードウェアのコストが節約されることができる。
【0086】
最後に、「含む(comprising)」という用語は他の要素またはステップを除外せず、「1つ(a)」または「1つ(an)」は複数を除外しないことに留意されたい。また、異なる実施形態に関連して説明された要素が組み合わされてもよい。特許請求の範囲における参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
図1