(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】歯科修復物/器具を製造するための加工時間を予測するための歯科機械加工システム
(51)【国際特許分類】
A61C 13/38 20060101AFI20241118BHJP
G05B 19/4069 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61C13/38
G05B19/4069
(21)【出願番号】P 2022542709
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2021052158
(87)【国際公開番号】W WO2021152125
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2024-01-26
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュテガー、セバスティアン
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103235556(CN,A)
【文献】特開2015-062691(JP,A)
【文献】特開2018-073136(JP,A)
【文献】特開2007-025945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/20-5/35,5/70-5/88,88/00-13/38
G05B 19/18-19/416,19/42/19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科修復物/器具を製造するための歯科機械加工システムであって、
歯科用ツール機械(1)を備え、前記歯科用ツール機械(1)は、
少なくとも1つの歯科用ブランク(2)を1つ以上の歯科用ツール(3)に対して移動可能に保持するための歯科用ブランクホルダと、
それぞれが1つ以上の歯科用ツール(3)を移動可能に保持するための1つ以上の駆動ユニット(4)と、
前記歯科修復物/器具の構築データ及び前記歯科用ブランク(2)からの前記歯科修復物/器具の製造に特有の複数の機械加工プロセスに基づいて、前記歯科用ブランクホルダ及び前記駆動ユニット(4)を制御するための制御ユニットと
を備え、
前記制御ユニットは、
前記機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、
前記機械加工プロセスに基づいてそれぞれ構築される、前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングと
を含む入力データに基づいて、前記歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するように適合された、訓練された人工知能アルゴリズムを実行するようにさらに適合され
、
前記マッピングは、前記機械加工プロセスそれぞれにおける機械加工方向(z)に対する前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリを記述する第1のタイプのマッピングを含み、前記機械加工方向(z)は、前記歯科用ツール(3)に平行であり、
前記第1のタイプのマッピングは、前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリの表面から前記駆動ユニット(4)の基準面までの距離、又は前記歯科用ブランク(2)の表面から前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリの表面までの距離をさらに記述することを特徴とする、歯科機械加工システム。
【請求項2】
前記第1のタイプのマッピングは、距離マップをそれぞれ定義することを特徴とする、請求項
1に記載の歯科機械加工システム。
【請求項3】
各距離マップが、色、グレースケール、又は数字を通して距離を示すことを特徴とする、請求項
2に記載の歯科機械加工システム。
【請求項4】
前記入力データが、各第1のタイプのマッピング情報について、対応する機械加工プロセスにおいて使用される前記歯科用ツール(3)のタイプに関する情報も含むことを特徴とする、請求項
1から3のいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。
【請求項5】
歯科修復物/器具を製造するための歯科機械加工システムであって、
歯科用ツール機械(1)を備え、前記歯科用ツール機械(1)は、
少なくとも1つの歯科用ブランク(2)を1つ以上の歯科用ツール(3)に対して移動可能に保持するための歯科用ブランクホルダと、
それぞれが1つ以上の歯科用ツール(3)を移動可能に保持するための1つ以上の駆動ユニット(4)と、
前記歯科修復物/器具の構築データ及び前記歯科用ブランク(2)からの前記歯科修復物/器具の製造に特有の複数の機械加工プロセスに基づいて、前記歯科用ブランクホルダ及び前記駆動ユニット(4)を制御するための制御ユニットと
を備え、
前記制御ユニットは、
前記機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、
前記機械加工プロセスに基づいてそれぞれ構築される、前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングと
を含む入力データに基づいて、前記歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するように適合された、訓練された人工知能アルゴリズムを実行するようにさらに適合され、
前記マッピングは、シミュレーションを介して取得された第2のタイプのマッピングを含み、対応する機械加工プロセスのシミュレートされて完了した後の前記歯科修復物/器具の前記ターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリを記述することを特徴とする
、歯科機械加工システム。
【請求項6】
前記第2のタイプのマッピングは、前記対応する機械加工プロセスがシミュレートされて完了した後の、前記歯科修復物/器具の前記ターゲットジオメトリの表面に対する前記残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリの表面の距離、又はその逆を記述することを特徴とする、請求項
5に記載の歯科機械加工システム。
【請求項7】
前記実際のジオメトリ又はターゲットジオメトリの表面は、前記距離をそれぞれ含む属性を有する三角測量を通して記述されることを特徴とする、請求項
6に記載の歯科機械加工システム。
【請求項8】
前記第2のタイプのマッピングは、距離マップをそれぞれ定義することを特徴とする、請求項
6又は7に記載の歯科機械加工システム。
【請求項9】
各距離マップは、色、グレースケール、又は数字を通して距離を示すことを特徴とする、請求項
8に記載の歯科機械加工システム。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記歯科修復物/器具の前記構築データに基づいて、前記入力データを生成するように適合されることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。
【請求項11】
前記入力データ及び前記構築データを受信する入力手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1から
10のうちのいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。
【請求項12】
前記制御ユニットは、
前記機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、
前記機械加工プロセスに基づいてそれぞれ構築される前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングと、
前記機械加工プロセスがそれぞれ完了するのに必要とされる実際の機械加工時間と
を含む入力データに基づいて、前記歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するための前記人工知能アルゴリズムを訓練するように適合されることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の歯科用ツールを使用することによって歯科用ブランクから歯科修復物/器具を製造するための歯科用ツール機械を有する歯科機械加工システムに関する。本発明は、より詳細には、歯科機械加工システムを用いて歯科修復物又は歯科器具を製造するための機械加工時間を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯科機械加工システムは、典型的にはセラミックから作製される歯科用ブランクを機械加工するための歯科用ツール機械を有する。歯科用ツール機械は、一般に、歯科用ブランクを機械加工するための少なくとも1つの歯科用ツールを各々移動可能に保持する1つ以上の駆動ユニットを有する。歯科用ツールは、駆動ユニット中のツールモータにそれぞれ取り付けられる。歯科用ツールは、それらの耐用年数が過ぎた後に交換することができる。歯科用ブランクは、歯科用ツールに対して相対的に移動可能な歯科用ブランクホルダに取り付けられる。制御手段は、歯科用ツール機械の動作を制御する。一般に、CAD/CAMソフトウェアは、歯科機械加工システム内の制御ユニットに接続されたPC上で動作する。CAD/CAMソフトウェアは、歯科修復物/器具をデジタル的に構築し、機械加工プロセスのリストを提供するために使用される。機械加工プロセスは、歯科用ツール機械において歯科用ツールの時間的軌跡を生成するために使用される。通常、機械加工プロセスを完了するために必要な機械加工時間は、時間的軌跡を生成する前に推定される。様々な推定方法が知られている。一般的に知られている推定方法によれば、まず、歯科修復物/器具のクラス、歯科修復物/器具におけるキャップの数、歯科用ブランクの材料、歯科修復物/器具における詳細度、及び歯科用ツール機械の機械加工モードなどのパラメータに基づいて、経験値を使用することによって大まかな推定が行われる。その後、歯科修復物/器具を製造するために具体的に識別された機械加工プロセスに基づいて、精密な推定が行われる。文献では、機械学習方法が、機械加工時間を推定するために代替的に使用される。International Journal of Simulation Modelling 15(2016)4, 663-675で発表された「Estimation of Machining Time for CNC Manufacturing Using Neural Computing」と題された著者Saric,T.;Simunovic,G.;Simunovic,K;及びSvalina,I.の論文を参照することができる。この方法では、機械加工プロセスのプロセスパラメータが入力データとして使用される。
【0003】
一般に、歯科修復物/器具のジオメトリの違いは、機械加工時間の推定を複雑にする。推定を複雑にする典型的な要因は、機械加工される非常に不均一な修復/器具特有のエリア、特にアンダーカットから残りの材料を選択的に除去する必要があることである。そのため、一般的に機械加工時間は低い精度で推定されることがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の問題を克服し、歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を正確に予測するための歯科機械加工システムを提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1に定義されるような歯科機械加工システムによって達成される。従属請求項の主題事項は、更なる展開に関する。
【0006】
本発明は、歯科修復物/器具を製造するための歯科機械加工システムを提供する。歯科機械加工システムは、歯科用ツール機械を備え、歯科用ツール機械は、少なくとも1つの歯科用ブランクを1つ以上の歯科用ツールに対して移動可能に保持するための歯科用ブランクホルダと、それぞれが1つ以上の歯科用ツールを移動可能に保持するための1つ以上の駆動ユニットと、歯科修復物/器具の構築データ及び歯科用ブランクからの歯科修復物/器具の製造に特有の複数の機械加工プロセスに基づいて、歯科用ブランクホルダ及び駆動ユニットを制御するための制御ユニットと、を備えている。制御ユニットは、機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、前記機械加工プロセスに基づいてそれぞれ構築される、歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングとを含む入力データに基づいて、歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するように適合された、訓練された人工知能アルゴリズムを実行するようにさらに適合される。
【0007】
本発明の主な有利な効果は、歯科機械加工システムが、歯科修復物/器具のターゲットジオメトリを十分に考慮して、訓練された人工知能アルゴリズムを通して機械加工時間を正確に予測することができることである。これは、機械加工される修復物/器具特有のエリア、特にアンダーカットから残りの材料を選択的に除去するときの機械加工時間を正確に予測することを可能にする。本発明の別の主要な有利な効果は、機械加工時間の予測を歯科用ツール軌跡計算方式の変化に適応させるように人工知能アルゴリズムを訓練できることである。本発明の別の主要な有利な効果は、訓練された人工知能アルゴリズムベースの予測が、機械加工時間に影響を及ぼす未知の要因も考慮に入れることができることである。
【0008】
本発明によれば、異なるタイプのマッピングを入力データとして使用することができる。本発明の実施形態では、第1のタイプのマッピングを使用して、それぞれの機械加工プロセスにおける機械加工方向に対する歯科修復物/器具のターゲットジオメトリを記述する。歯科用ツール機械によって実行される機械加工プロセスは、好ましくは、順序リストで提供される。リスト内の各機械加工プロセスはまた、駆動ユニットを制御するために使用されるプロセスパラメータに関する情報を含む。例えば、リスト内の各機械加工プロセスは、歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに対する機械加工方向と、使用される歯科用ツールのタイプとを含む。機械加工方向は歯科用ツールに平行である。これらの第1のタイプのマッピングは、好ましくは、歯科修復物/器具の表面から駆動ユニットの基準面までの距離を記述する。あるいは、第1のタイプのマッピングは、好ましくは、歯科用ブランクの表面から歯科修復物/器具の表面までの距離を記述することができる。第1のタイプのマッピングは、2次元の距離マップを定義することが好ましい。距離マップは、距離を数値で示したものである。あるいは、カラー又はグレースケールが使用されてもよい。入力データはまた、各第1のタイプのマッピング情報について、対応する機械加工プロセスに使用される歯科用ツールのタイプに関する情報を含んでもよい。第1のタイプのマッピングのおかげで、残りの材料の量は、距離マップに基づいて決定されることができ、機械加工時間を予測するために、訓練された人工知能アルゴリズムによって、好ましくは歯科用ツールのタイプと一緒に考慮されることができる。
【0009】
本発明の代替実施形態では、第2のタイプのマッピングが入力データとして使用される。第2のタイプのマッピングは、シミュレーションを介して取得され、対応する機械加工プロセスのシミュレートされて完了した後の歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランクの実際のジオメトリを記述する。また、この実施形態では、歯科用ツール機械によって実行されるべき機械加工プロセスは、好ましくは、順序リストで提供される。対応する機械加工プロセスの完了後の残りの歯科用ブランクの実際のジオメトリは、シミュレーションを介して見出される。第2のタイプのマッピングは、好ましくは、対応する機械加工プロセスのシミュレートされて完了した後の歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランクの実際のジオメトリの表面の距離を記述する。第2のタイプのマッピングは、3次元の距離マップを定義することが好ましい。また、本実施形態では、各距離マップは、シミュレートされた距離を数値で示している。あるいは、カラー又はグレースケールが使用されてもよい。実際のジオメトリの表面は、シミュレーションされた距離をそれぞれ含む属性を有する三角測量を通して記述されることが好ましい。属性は、頂点又は三角形に配置されてもよい。
【0010】
本発明によれば、歯科機械加工システムの制御ユニットは、歯科修復物/装具の構築データに基づいて入力データを生成する。あるいは、歯科機械加工システムは、入力手段を通して入力データ及び構築データを受信してもよい。
【0011】
本発明の実施形態によれば、歯科機械加工システムは、訓練モードと推論モードとを有する。推論モードにおいて、制御ユニットは、機械加工時間を予測するために訓練された人工知能アルゴリズムを実行する。訓練モードでは、制御ユニットは、前記機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、前記機械加工プロセスにそれぞれ基づいて構築される歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングと、機械加工プロセスをそれぞれ完了するのに必要とされる実際の機械加工時間とを含む入力データに基づいて、歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するための人工知能アルゴリズムを訓練するように適合される。本発明によると、訓練された人工知能アルゴリズムは、ニューラルネットワークに、好ましくは畳み込みニューラルネットワークに基づいている。
【0012】
訓練モードでは、歯科機械加工システムは、実験的又は実際の製造作業から導出された以前に生成又は受信された入力データを使用する。実際の機械加工時間は、機械加工プロセスを監視することによって得られる。データベースは、訓練モードのためのそのような入力データで継続的に更新されることができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、歯科機械加工システムは、CAD/CAMソフトウェアを実行するPCなどのコンピュータステーションを含むことが好ましいCAD/CAMモジュールも有することができる。訓練された人工知能アルゴリズムは、CAD/CAMモジュールの一部として提供されることが好ましい。CAD/CAMモジュールは、歯科用ツール機械の外部にあり、ネットワーク又はこれに類するものを通してアクセス可能であることが好ましい。複数の異なる歯科用ツール機械は、推論のために訓練された人工知能アルゴリズムを使用することができる。CAD/CAMモジュールは、歯科用ツール機械の一部として提供されてもよい。本発明はまた、歯科機械加工システムの上述の機能を実施するためのCAD/CAMソフトウェアを提供する。CAD/CAMソフトウェアは、コンピュータ化された歯科機械加工システムに機能を実行させるためのコンピュータ読取可能コードを有する。CAD/CAMソフトウェアは、コンピュータ読取可能記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、携帯型であってもよいし、一体化されていてもよい。記憶媒体は、歯科機械加工システムの外部又は内部に配置されてもよい。記憶媒体は、ネットワーク等を通してアクセス可能であってもよい。本発明は、歯科用ブランク及び歯科用ツールを移動させるための様々なタイプの運動学を有する歯科用ツール機械に適用することができる。
【0014】
以下の説明では、例示的な実施形態を使用し、図面を参照することによって、本発明のさらなる態様及び有利な効果をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による歯科機械加工システムの歯科用ツール機械の概略部分斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による歯科用ツールに平行な機械加工方向に沿って見た歯科修復物/器具の2次元のグレースケール距離マップである。
【
図3】
図3は、本発明の別の実施形態による歯科用ツールに平行な機械加工方向に沿って見た歯科修復物/器具の2次元のグレースケール距離マップである。
【
図4】
図4は、アンダーカット機械加工プロセスのシミュレーション完了前の、歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランクの実際の形状のグレースケール距離マップである。
【
図5】
図5は、アンダーカット機械加工プロセスのシミュレートされた完了後の、歯科修復物/器具の目標形状に対する残りの歯科用ブランクの実際のジオメトリのグレースケール距離マップである。
【0016】
図面に示される参照番号は、以下に列挙される要素を示し、例示的な実施形態の以下の説明において参照される。
【符号の説明】
【0017】
1.歯科用ツール機械
2.歯科用ブランク
2’残りの歯科用ブランク
2a.シャフト
3.歯科用ツール
4.駆動ユニット
4a.アーム
4b.シャフト
5a.、5b.グレースケール距離マップ
X,Y,Z:方向
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、歯科修復物/器具を製造するための歯科機械加工システムを示し、歯科機械加工システムは、歯科用ツール(3)に対して歯科用ブランク(2)を移動可能に保持するための歯科用ブランクホルダと、それぞれが歯科用ツール(3)を移動可能に保持するための2つの駆動ユニット(4)と、歯科修復物/器具の構築データ及び歯科用ブランク(2)からの歯科修復物/器具の製造に特有の複数の機械加工プロセスに基づいて、歯科用ブランクホルダ及び駆動ユニット(4)を制御するための制御ユニットとを備える歯科用ツール機械(1)を備える。各駆動ユニット(4)は、シャフト(4b)と、シャフト(4b)に径方向に固定されたアーム(4a)とを有する。各シャフト(4b)は、それぞれの駆動ユニット(4)の駆動機構を通してz軸に移動することができる。各アーム(4a)は、駆動機構を通してz軸の周りを移動することができる。歯科用ツール(3)は、アーム(4a)中のツールモータにそれぞれ取り付けられる。歯科用ブランク(2)は、y軸に沿って移動でき、別の駆動機構を通してy軸の周りを回転できるシャフト(2a)に連結される。制御ユニットは、訓練モード及び推論モードを有する。推論モードでは、制御ユニットは、機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、前記機械加工プロセスにそれぞれ基づいて構築される、歯科修復物/歯科器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングとを含む入力データに基づいて、歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するように適合された訓練された人工知能アルゴリズムを実行するようにさらに適合される。プロセスパラメータは、例えば、経路距離、最大送り、最大加速度、及びこれらに類するものを含む。訓練モードについては後述する。制御ユニットは、歯科修復物/器具の構築データに基づいて入力データを生成するように適合される。あるいは、入力データ及び構築データは、入力手段を通して歯科機械加工システムに入力される。
【0019】
第1の実施形態では、マッピングは、前記機械加工プロセスそれぞれにおける機械加工方向(z)に対する歯科修復物/器具のターゲットジオメトリを記述する第1のタイプのマッピングを含む。入力データはまた、対応する機械加工プロセスに使用される歯科用ツール(3)のタイプに関する情報を含む。機械加工方向(z)は、歯科用ツール(3)に平行である。第1のタイプのマッピングは、歯科修復物/器具の表面から駆動ユニット(4)の基準面までの距離、又は歯科用ブランク(2)の表面から歯科修復物/器具の表面までの距離をさらに記述する。第1のタイプのマッピングは、それぞれ距離マップを定義する。
図2及び
図3はそれぞれ、本発明の別の実施形態による、歯科用ツールに平行な機械加工方向から見た歯科修復物/器具の2次元のグレースケール距離マップを示す。あるいは、各距離マップは、色又は数字を通して距離を示してもよい。
図2において、薄いグレースケールは、残りの材料の選択的な除去のための小さな歯科用ツールの広範な使用に起因して長い機械加工時間につながる深い亀裂を示す。
図3において、ターゲットジオメトリは単純であり、短い機械加工時間をもたらす。したがって、ターゲットジオメトリの詳細は、結果として生じる機械加工時間に大きな影響を及ぼす。
【0020】
第2の実施形態では、マッピングは、代替的に、シミュレーションを介して取得された第2のタイプのマッピングを含み、対応する機械加工プロセスのシミュレートされた完了後の歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリを記述する。第2のタイプのマッピングは、対応する機械加工プロセスのシミュレーション完了後の、残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリの表面から歯科修復物/器具のターゲットジオメトリまでの距離、又はその逆の距離を記述する。特に、シミュレーションは、ターゲットジオメトリから実際のジオメトリまでの距離を計算することができる。これらの距離は、対応する機械加工プロセスのシミュレーションによって得られる。実際のジオメトリの表面は、それぞれシミュレートされた距離を含む属性を用いて三角測量を通して記述される。第2のタイプのマッピングは、シミュレーションによってそれぞれ得られた距離マップを定義する。
図4は、アンダーカット機械加工プロセスのシミュレートされた完了前の、歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリのグレースケール距離マップを示す。
図5は、アンダーカット機械加工プロセスのシミュレートされた完了後の、歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリのグレースケール距離マップを示す。
図4及び
図5のグレースケール距離マップは、シミュレーションによって得られる。あるいは、
図4及び
図5の距離マップは、色又は数字によってシミュレートされた距離を示してもよい。
図5において、薄いグレースケールは、アンダーカット機械加工のシミュレーションによって得られた修復物/器具特有のエリアを示す。
【0021】
訓練モードでは、制御ユニットは、前記機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、前記機械加工プロセスにそれぞれ基づいて構築される歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングと、機械加工プロセスをそれぞれ完了するのに必要とされる実際の機械加工時間とを含む入力データに基づいて、歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するための人工知能アルゴリズムを訓練するように適合される。
【0022】
人工知能アルゴリズムは、ニューラルネットワーク、特に畳み込みニューラルネットワークに基づく。使用される歯科用ツールの指示と組み合わせた歯科修復物/器具の距離マップに関して、畳み込みニューラルネットワークは、訓練例によってジオメトリ特性を学習することができ、これは、薄い歯科用ツールによる選択的再加工(残留材料除去)を必要とするかもしれない。さらに、低速送りのみが可能である領域、又は特別な材料浸漬プロセス(ZigAg)が必要とされるエリアを識別することが可能であるかもしれない。これらのジオメトリ依存特性は、結果として生じる機械加工時間にも大きな影響を及ぼす。ニューラルネットワークベースの人工知能アルゴリズムの訓練中に、ニューラルネットワークのパラメータは、逆伝搬法(back-propagation)を通して学習される。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 歯科修復物/器具を製造するための歯科機械加工システムであって、
歯科用ツール機械(1)を備え、前記歯科用ツール機械(1)は、
少なくとも1つの歯科用ブランク(2)を1つ以上の歯科用ツール(3)に対して移動可能に保持するための歯科用ブランクホルダと、
それぞれが1つ以上の歯科用ツール(3)を移動可能に保持するための1つ以上の駆動ユニット(4)と、
前記歯科修復物/器具の構築データ及び前記歯科用ブランク(2)からの前記歯科修復物/器具の製造に特有の複数の機械加工プロセスに基づいて、前記歯科用ブランクホルダ及び前記駆動ユニット(4)を制御するための制御ユニットと
を備え、
前記制御ユニットは、
前記機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、
前記機械加工プロセスに基づいてそれぞれ構築される、前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングと
を含む入力データに基づいて、前記歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するように適合された、訓練された人工知能アルゴリズムを実行するようにさらに適合されることを特徴とする、歯科機械加工システム。
[2] 前記マッピングは、前記機械加工プロセスそれぞれにおける機械加工方向(z)に対する前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリを記述する第1のタイプのマッピングを含み、前記機械加工方向(z)は、前記歯科用ツール(3)に平行であることを特徴とする、[1]に記載の歯科機械加工システム。
[3] 前記第1のタイプのマッピングは、前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリの表面から前記駆動ユニット(4)の基準面までの距離、又は前記歯科用ブランク(2)の表面から前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリの表面までの距離をさらに記述することを特徴とする、[2]に記載の歯科機械加工システム。
[4] 前記第1のタイプのマッピングは、距離マップをそれぞれ定義することを特徴とする、[3]に記載の歯科機械加工システム。
[5] 各距離マップが、色、グレースケール、又は数字を通して距離を示すことを特徴とする、[4]に記載の歯科機械加工システム。
[6] 前記入力データが、各第1のタイプのマッピング情報について、対応する機械加工プロセスにおいて使用される前記歯科用ツール(3)のタイプに関する情報も含むことを特徴とする、[2]から[5]のいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。
[7] 前記マッピングは、シミュレーションを介して取得された第2のタイプのマッピングを含み、対応する機械加工プロセスのシミュレートされて完了した後の前記歯科修復物/器具の前記ターゲットジオメトリに対する残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリを記述することを特徴とする、[1]に記載の歯科機械加工システム。
[8] 前記第2のタイプのマッピングは、前記対応する機械加工プロセスがシミュレートされて完了した後の、前記歯科修復物/器具の前記ターゲットジオメトリの表面に対する前記残りの歯科用ブランク(2')の実際のジオメトリの表面の距離、又はその逆を記述することを特徴とする、[7]に記載の歯科機械加工システム。
[9] 前記実際のジオメトリ又はターゲットジオメトリの表面は、前記距離をそれぞれ含む属性を有する三角測量を通して記述されることを特徴とする、[8]に記載の歯科機械加工システム。
[10] 前記第2のタイプのマッピングは、距離マップをそれぞれ定義することを特徴とする、[8]又は[9]に記載の歯科機械加工システム。
[11] 各距離マップは、色、グレースケール、又は数字を通して距離を示すことを特徴とする、[10]に記載の歯科機械加工システム。
[12] 前記制御ユニットは、前記歯科修復物/器具の前記構築データに基づいて、前記入力データを生成するように適合されることを特徴とする、[1]から[11]のいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。
[13] 前記入力データ及び前記構築データを受信する入力手段をさらに含むことを特徴とする、[1]から[12]のうちのいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。
[14] 前記制御ユニットは、
前記機械加工プロセスをそれぞれ定義するプロセスパラメータと、
前記機械加工プロセスに基づいてそれぞれ構築される前記歯科修復物/器具のターゲットジオメトリに関する情報を含むマッピングと、
前記機械加工プロセスがそれぞれ完了するのに必要とされる実際の機械加工時間と
を含む入力データに基づいて、前記歯科修復物/器具を製造するための機械加工時間を予測するための前記人工知能アルゴリズムを訓練するように適合されることを特徴とする、[1]から[13]のいずれか一項に記載の歯科機械加工システム。