(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20241118BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20241118BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20241118BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20241118BHJP
D06M 11/46 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
C08L33/06
C08F220/18
D06M15/233
D06M15/263
D06M11/46
(21)【出願番号】P 2022574347
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2020097108
(87)【国際公開番号】W WO2021253405
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、イン
(72)【発明者】
【氏名】チュイ、チャオホイ
(72)【発明者】
【氏名】シー、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シンホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェンピン
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-323210(JP,A)
【文献】特開2011-190150(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109295805(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00- 33/26
C08L 25/00- 25/18
C08F 220/00-220/70
C08F 212/00-212/36
D06M 11/00- 11/84
D06M 15/00- 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物であって、
A)
(a)
55~
80重量%のC
1~C
10アルキルアクリレートと、
(b)
13~
35重量%のビニル芳香族と、
(c)
1~
5重量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、
(d)
1~
5重量%の、1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸と、
(e)0~5重量%の他のエチレン性不飽和モノマー
であって、ヒドロキシ含有エチレン性不飽和モノマー、(メタ)アクリルアミド、又はリン官能性モノマーから選択される前記他のエチレン性不飽和モノマーと
を含むモノマー混合物から重合されたポリマーであって、パーセンテージは、前記モノマー混合物の総重量に基づいて
おり、成分(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の重量パーセントの合計は100重量%である、前記ポリマーと、
B)チタン触媒と
を含
み、
前記水性硬化性組成物はケイ素含有成分を含まない、前記水性硬化性組成物。
【請求項2】
前記C
1~C
10アルキルアクリレートは、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート及びn-ブチル
メタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項3】
前記ビニル芳香族は、スチレン、α-メチルスチレン、又はこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項4】
少なくとも2個のカルボン酸基を有する前記エチレン性不飽和化合物は、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項5】
1個のカルボン酸基を有する前記エチレン性不飽和酸は、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項6】
前記チタン触媒の量は、ポリマーA)の固形分の100重量部当たり0.5~10重量部である、請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項7】
前記チタン触媒は、式Ti(OR)
4を有し、式中、各Rは、1~30個の炭素原子を有するアルキルラジカル、2~30個の炭素原子を有するアルケニルラジカル、3~30個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、6~30個の炭素原子を有するアラルキルラジカル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から独立して選択され、Rの1個以上の水素原子は、ハロゲン、-OH、-COOH、-NH
2、-CN、若しくは-NH(C
1~10アルキル)若しくは-N(C
1~10アルキル)
2で任意選択的に置換されるか、又は-C(=O)-、-C(=O)-NH-、ホスホリル、ホスホリルオキシ、スルホニル、若しくはスルホニルオキシによって任意選択的に割り込まれる、又は
前記チタン触媒は、Ti及び有機ポリ酸の複合体である、請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項8】
前記ポリマーのガラス転移温度は、-40~70℃である、請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項9】
基材と、請求項1~
8のいずれか一項に記載のホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物とを含む物品。
【請求項10】
前記基材は、紙、テキスタイル、又は不織布である、請求項
9に記載の物品。
【請求項11】
紙、テキスタイル、又は不織布を処理する方法であって、請求項1~
8のいずれか一項に記載のホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を基材と接触させることと、次いで、前記ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を乾燥させ、硬化することと、を含む方法。
【請求項12】
前記基材は、紙、テキスタイル、又は不織布である、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物、具体的には、紙、テキスタイル、及び不織布に使用される、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物に関し、また、基材と、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物と、を含む物品に関する。
【0002】
序論
テキスタイル及び不織布用途において使用される従来のバインダーは、硬化後に優れた耐水性(湿潤強度)及び耐溶剤性(イソプロピルアルコール強度)をもたらす、N-メチロールアクリルアミド(NMA)を機能性モノマーとして含有する。しかしながら、NMA含有バインダーは、加熱時にホルムアルデヒドを放出する。硬化後に優れた耐水性(湿潤強度)及び耐溶剤性(イソプロピルアルコール強度)を有する、ホルムアルデヒドを含まないバインダー生成物が望ましい。
【0003】
したがって、硬化後に優れた耐水性(湿潤強度)及び耐溶剤性(イソプロピルアルコール強度)など望ましい性能を有する、代替のホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物が当該技術分野において強く必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、硬化後の優れた耐水性(湿潤強度)及び耐溶剤性(イソプロピルアルコール強度、IPA強度)など望ましい性能を有する、代替のホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を提供する。
【0005】
本発明者らは、ポリエステルの合成において広く使用されているチタン触媒をアクリレートバインダー系に導入することにより、硬化プロセスを加速し、優れた性能をもたらすことができることを見出した。
【0006】
第1の態様では、本開示は、
A)
(a)30~90重量%のC1~C10アルキルアクリレートと、
(b)10~60重量%のビニル芳香族と、
(c)0.5~10重量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、
(d)0~10重量%の、1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸と、
(e)0~5重量%の他のエチレン性不飽和モノマーと、を含む、モノマー混合物から重合されたポリマーであって、
パーセンテージは、モノマー混合物の総重量に基づいている、モノマー混合物から重合されたポリマーと、
B)チタン触媒と、を含む、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を提供する。
【0007】
第2の態様では、本開示は、基材と、
A)
(a)30~90重量%のC1~C10アルキルアクリレートと、
(b)10~60重量%のビニル芳香族と、
(c)0.5~10重量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、
(d)0~10重量%の、1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸と、
(e)0~5重量%の他のエチレン性不飽和モノマーと、を含む、モノマー混合物から重合されたポリマーであって、
パーセンテージは、モノマー混合物の総重量に基づいている、モノマー混合物から重合されたポリマーと、
B)チタン触媒と、を含む、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物と、を含む物品を提供する。
【0008】
第3の態様では、本開示は、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を基材と接触させることと、次いで、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を乾燥させ、硬化することと、を含む、基材を処理する方法を提供し、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物は、
A)
(a)30~90重量%のC1~C10アルキルアクリレートと、
(b)10~60重量%のビニル芳香族と、
(c)0.5~10重量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、
(d)0~10重量%の、1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸と、
(e)0~5重量%の他のエチレン性不飽和モノマーと、を含む、モノマー混合物から重合されたポリマーであって、
パーセンテージは、モノマー混合物の総重量に基づいている、モノマー混合物から重合されたポリマーと、
B)チタン触媒と、を含む。
【0009】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0011】
本明細書に開示される場合、「組成物」、「配合物」、又は「混合物」という用語は、物理的な手段によって異なる成分を単に混合することによって得られる、異なる成分の物理的なブレンドを指す。
【0012】
本明細書に開示されるように、「ガラス転移温度」(Tg)という用語は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)又はFoxの式を使用する計算を含む様々な技術によって測定することができる。
【0013】
この文書全体を通して、「(メタ)アクリル」という語の断片は、「メタクリル」及び「アクリル」の両方を指す。例えば、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸及びアクリル酸の両方を指し、メチル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートの両方を指し、(メタ)アクリルアミドは、メタクリルアミド及びアクリルアミドの両方を指す。
【0014】
本明細書における「水性」組成物又は分散液は、粒子が水性媒体中に分散していることを意味する。本明細書において「水性媒体」とは、水、及び媒体の重量に基づく重量基準で0~30%の、例えば、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステルなど水混和性化合物を意味する。
【0015】
本開示は、
A)
(a)30~90重量%のC1~C10アルキルアクリレートと、
(b)10~60重量%のビニル芳香族と、
(c)0.5~10重量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、
(d)0~10重量%の、1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸と、
(e)0~5重量%の他のエチレン性不飽和モノマーと、を含む、モノマー混合物から重合されたポリマーであって、
パーセンテージは、モノマー混合物の総重量に基づいている、モノマー混合物から重合されたポリマーと、
B)チタン触媒と、を含む、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性バインダー組成物を提供する。
【0016】
好ましくは、C1~C10アルキル(メタ)アクリレートは、C1~C8アルキル(メタ)アクリレートである。C1~C8アルキル(メタ)アクリレートは、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート及びn-ブチルメタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択され得る。より好ましくは、C1~C10アルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、又はこれらの混合物から選択される。
【0017】
好ましくは、モノマー混合物中のC1~C10アルキル(メタ)アクリレート(a)の量は、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上だが、90重量%以下、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下であり得る。より好ましくは、C1~C10アルキル(メタ)アクリレートの量は、モノマー混合物の55~85重量%又はモノマー混合物の70~80重量%である。
【0018】
モノマービニル芳香族(b)は、スチレン、α-メチルスチレン、又はこれらの混合物であり得る。
【0019】
好ましくは、モノマー混合物中のビニル芳香族(b)の量は、10重量%以上、好ましくは12重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更により好ましくは18重量%以上だが、60重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以上、更により好ましくは30重量%以下、なお更により好ましくは25重量%以下、又は20重量%以下であり得る。
【0020】
少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物(c)は、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物である。
【0021】
特に好ましいのは、イタコン酸である。
【0022】
好ましくは、モノマー混合物中の少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン系不飽和化合物(c)の量は、0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、更により好ましくは2重量%以上だが、10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下、更により好ましくは5重量%以下、なお更により好ましくは3重量%以下であり得る。
【0023】
1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸(d)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であり得る。好ましくは、1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸(d)は、アクリル酸である。
【0024】
1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸(d)は、任意成分である。好ましくは、モノマー混合物中の1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸(d)の量は、0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、更により好ましくは2重量%以上だが、10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下、更により好ましくは5重量%以下、なお更により好ましくは3重量%以下であり得る。
【0025】
他のエチレン性不飽和モノマー(e)は、任意成分であり、(a)~(d)を除く任意の種類であり得る。好適な例としては、ヒドロキシ含有エチレン性不飽和モノマー、(メタ)アクリルアミド、又はリン官能性モノマーが挙げられる。ヒドロキシ含有エチレン性不飽和モノマーは、HEMA(ヒドロキシルエチルメタクリレート)であり得る。リン官能性モノマーは、ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、ホスホブチル(メタ)アクリレート、これらの塩、及びこれらの混合物などリン含有(メタ)アクリレート;全てSolvayから入手可能である、SIPOMER PAM-100、SIPOMER PAM-200、及びSIPOMER PAM-300などCH2=C(R)-C(O)-O-(RlO)n-P(O)(OH)2(式中、R=H又はCH3、R1=アルキル、及びn=2~6である);ホスホエチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、これらの塩、及びこれらの混合物などホスホアルコキシ(メタ)アクリレートであり得る。
【0026】
モノマー混合物中のヒドロキシ含有エチレン性不飽和モノマーの量は、0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更により好ましくは0.8重量%以上だが、5重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更により好ましくは2重量%以下、なお更により好ましくは1.5重量%以下であり得る。
【0027】
好ましくは、本出願のモノマー混合物は、C1~C18アルカン酸のビニルエステル、又はエチレン若しくはプロピレンなどα-オレフィンを含まない。
【0028】
好ましい一実施形態において、ポリマーA)は、エマルジョン重合によって調製され、したがって、エマルジョンポリマーである。
【0029】
エマルジョン重合の場合には、好適な界面活性剤系及び/若しくは保護コロイド、又は安定剤を使用する。
【0030】
好適な界面活性剤系の例は、当該技術分野において既知のものであり、アニオン性、非イオン性、カチオン性、又は両性乳化剤、及びそれらの混合物が含まれる。アニオン性界面活性剤の例としては、アルキルサルフェート、エトキシレートアルコールのサルフェート、アリールスルホネート、エトキシル化アルコールのホスフェート、スルホサクシネート、エトキシル化アルキルフェノールのサルフェート及びスルホネート、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の例としては、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性界面活性剤の例としては、エトキシル化脂肪族アミンが挙げられるが、これに限定されない。界面活性剤の典型的な重量は、モノマーの総重量に基づいて、0.1~5.0重量%、より好ましくは0.3~5.0重量%、最も好ましくは0.5~3.0重量%である。界面活性剤は、当技術分野でよく知られている従来の方法によって利用される。一実施形態では、組成物を調製するプロセスは、重合反応の前に、界面活性剤系を用いたモノマーミックスのエマルジョン化を含む。
【0031】
界面活性剤の商品名の例は、AEROSOL(登録商標)A-102、Disponil(登録商標)FES77、Dowfax(商標)2A1、Abex(登録商標)2535、及びRHODACAL(登録商標)DS-4である。
【0032】
エマルジョン重合のための水溶性開始剤は、例えば、ペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩及びアルカリ金属塩、例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、又は有機過酸化物、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシドである。
【0033】
還元-酸化(レドックス)開始剤系として知られているものもまた好適である。
【0034】
レドックス開始剤系は、少なくとも1つの、通常は無機の還元剤、及び1つの有機又は無機の酸化剤から構成される。
【0035】
酸化用成分は、例えば、すでに前述したエマルジョン重合開始剤を含む。
【0036】
還元成分は、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなど亜硫酸のアルカリ金属塩、二亜硫酸ナトリウムなど二亜硫酸のアルカリ金属塩、アセトン重亜硫酸塩など脂肪族アルデヒド及びケトンとの重亜硫酸塩付加化合物、又はヒドロキシメタンスルフィン酸及びその塩、若しくはアスコルビン酸など還元剤を含む。レドックス開始剤系は、その金属成分が複数の原子価状態で存在することができる可溶性金属化合物とともに使用することができる。
【0037】
通常のレドックス開始剤系の例としては、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、tert-ブチルヒドロペルオキシド/亜硫酸水素ナトリウム、及びtert-ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィン酸が挙げられる。個々の成分、例えば還元成分は、混合物、例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と亜硫酸水素ナトリウムとの混合物であり得る。
【0038】
これらの化合物は、大部分が水溶液の形態で使用され、低濃度は分散液中で許容される水の量により決定され、高濃度はそれぞれの化合物の水への溶解度により決定される。濃度は、溶液に基づいて、一般に0.1~30重量%、好ましくは0.5~20重量%、特に好ましくは1.0~10重量%である。
【0039】
開始剤の量は、重合させるモノマーに基づいて、一般に0.1~10重量%、好ましくは0.3~5重量%である。エマルジョン重合に2つ以上の異なる開始剤を使用することも可能である。
【0040】
乳化重合は、一般に30~130℃、好ましくは60~95℃で行われる。重合媒体は、水のみ、又は水とメタノールなど水混和性液体との混合物のいずれかで構成され得る。好ましくは、水のみが使用される。エマルジョン重合は、バッチ操作として、あるいは段階式又は勾配式を含む供給プロセスの形態で実施してよい。好ましいのは、重合混合物の一部を、初期充填物として導入し、重合温度に加熱して、この初期充填物の重合を開始し、次に重合混合物の残部を、通常は2つ以上の空間的に分離された供給流(そのうちの1つ以上は、モノマーをそのままで、又はエマルジョン化した形態で含む)により重合領域に供給し、この添加は、連続的に、段階的に、又は濃度勾配下で行われ、そしてこの添加の間は重合が維持される、供給プロセスである。例えば、粒度をより効果的に調整するために、重合への初期充填物にポリマーシードを含めることも可能である。
【0041】
フリーラジカル水性エマルジョン重合の過程で、開始剤を重合容器に添加する方法は、熟練した研究者に既知である。開始剤は、その全部が重合容器への初期充填物中に含まれるか、あるいはフリーラジカル水性エマルジョン重合の過程で、消費される速度に応じて開始剤が連続的に又は段階的に導入されるかのいずれかであり得る。それぞれの特定の場合において、これは開始剤系の化学的性質と重合温度との両方に依存することになる。開始剤は一部を初期充填物中に含め、かつ開始剤が消費される速度に応じて残部を重合領域に供給することが好ましい。
【0042】
残留モノマーを除去するために、実際のエマルジョン重合の終了後、すなわち、少なくとも95%のモノマーの転化後にも開始剤を添加するのが一般的である。
【0043】
供給プロセスでは、個々の成分を、上部から、側部から、又は下部から、反応器の床を通して反応器に添加することができる。
【0044】
エマルジョン重合の場合、一般に15~75重量%、好ましくは40~75重量%の固形分を有する水性ポリマー分散液が得られる。
【0045】
このように調製されたポリマーは、好ましくは、その水性分散液の形態で使用される。
【0046】
ポリマー分散液のpHは、好ましくは、4.5超のpH、特に5~9の間のpHに調節される。
【0047】
ポリマーのガラス転移温度は、好ましくは-40~70℃、特に好ましくは-30~65℃、特に極めて好ましくは-25~60℃又は-25~5℃である。
【0048】
ガラス転移温度は、示差熱分析又は示差走査熱量測定などの通常の方法で決定できる(例えば、ASTM 3418/82、中点温度を参照のこと)。
【0049】
成分B)は、チタン触媒である。
【0050】
チタン触媒は、Ti(OR)4の式を有し、式中、各Rは、約1~約30個の炭素原子を有するアルキルラジカル、約2~約30個の炭素原子を有するアルケニルラジカル、約3~約30個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、約6~約30個の炭素原子を有するアラルキルラジカル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から独立して選択される。好ましくは、Rは、約1~約12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、約2~約12個の炭素原子を有するアルケニルラジカル、約3~約12個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、約6~約12個の炭素原子を有するアラルキルラジカル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から独立して選択される。Rの1個以上の水素原子は、ハロゲン、-OH、-COOH、-NH2、-CN、若しくは-NH(C1~10アルキル)若しくはN(C1~10アルキル)2で任意選択的に置換されるか、又は-C(=O)-、-C(=O)-NH-、ホスホリル、ホスホリルオキシ、スルホニル、若しくはスルホニルオキシによって任意選択的に割り込まれる。
【0051】
チタン触媒は、Ti及び有機ポリ酸の複合体であり得、有機酸は、二塩基カルボン酸、三塩基カルボン酸、四塩基カルボン酸、又はこれらの混合物であり得、好ましくは有機酸は、クエン酸、酒石酸、EDTA、リンゴ酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、オクタン二酸、イタコン酸、又はこれらの混合物から選択され得る。
【0052】
成分B)の例は、TyzorActivate436であり得る。
【0053】
チタン触媒の量は、ポリマーA)の固形分の100重量部当たり0.5~10重量部、具体的には1~8、特に好ましくはポリマーA)の固形分の100重量部当たり1.5~5重量部、より好ましくはポリマーA)の固形分の100重量部当たり2~4重量部である。
【0054】
成分B)は、プロセスの任意の時点で添加することができる。一実施形態では、それはエマルジョン反応の後に添加される。
【0055】
ポリマーA)、又はポリマーの水性分散液は、簡単な方法で成分B)と混合することができる。
【0056】
水性組成物は、更なる添加剤、すなわち、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、機械的安定剤、顔料、充填剤、凍結融解剤、中和剤、可塑剤、粘着付与剤(粘着付与樹脂)、接着促進剤、及びこれらの組み合わせを含み得る。粘着付与剤の例は、ロジン、並びにその不均化若しくは異性化、重合、二量化及び/又は水素化によって形成された誘導体などの天然樹脂である。これらは、その塩の形態で(例えば、一価又は多価の対イオン(カチオン)との塩の形態で)、又は好ましくは、そのエステル化形態で存在し得る。エステル化に使用されるアルコールは、一価又は多価であり得る。例は、メタノール、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,3-プロパンチオール、及びペンタエリトリトールである。
【0057】
また、炭化水素樹脂、例えば、非水素化脂肪族C5樹脂、水素化脂肪族C5樹脂、芳香族修飾C5樹脂、テルペン樹脂、水素化C9樹脂、及びこれらの組み合わせが使用される。
【0058】
粘着付与剤としてますます使用されている他の化合物には、低モル重量を有するポリアクリレートが含まれる。このポリアクリレートは、好ましくは、30,000未満の重量平均分子量MWを有する。好ましい場合、ポリアクリレートは、少なくとも60重量%、特に少なくとも80重量%のC1~C8アルキル(メタ)アクリレートから構成される。
【0059】
好ましい粘着付与剤は、天然又は化学修飾したロジンである。ロジンは、主にアビエチン酸又はその誘導体から構成される。
【0060】
粘着付与剤の重量による量は、ポリマー100重量部当たり、好ましくは5~100重量部、特に好ましくは10~50重量部である(固体/固体)。
【0061】
硬化性水性組成物は、バインダー組成物の総重量に基づいて、0~5重量パーセントの増粘剤を含み得る。0~5重量パーセントの全ての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書において開示される。例えば、中和剤の重量%は、0、0.5、又は1重量パーセントの下限から1、3、又は5重量パーセントの上限までであり得る。増粘剤の例としては、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から市販されているACRYSOL(商標)、UCAR(商標)、及びCELOSIZE(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
硬化性水性組成物は、バインダー組成物の総重量に基づいて、0~2重量パーセントの中和剤を含み得る。0~2重量パーセントの全ての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書において開示される。例えば、中和剤の重量%は、0、0.3、又は0.5重量パーセントの下限から0.5、1、又は2重量パーセントの上限までであり得る。中和剤は、典型的に、pHを制御して配合されたバインダー組成物に安定性を提供するために使用される。中和剤の例としては、アンモニア水、アミン水溶液、及び他の水性無機塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物は、120~200 ℃の温度、好ましくは150~180℃の温度で硬化し得る。
【0064】
ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物は、紙、テキスタイル、又は不織布など基材に使用されて、物品を形成することができる。
【0065】
基材を処理するために、基材は、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物で、浸漬コーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティングなど従来の方法でコーティングされ得る。通常の塗布量は、例えば、5~50g/m2(固体、水なし)である。
【0066】
本発明の物品は、良好な性能特性、具体的には、特に大きな湿潤強度及び/又はIPA強度を有する。
【0067】
本開示はまた、本明細書に記載するようなホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を基材と接触させることと、次いで、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を乾燥させ、硬化することと、を含む、基材を処理する方法を提供する。
【0068】
基材は、紙、テキスタイル、又は不織布であり得る。
【0069】
本明細書に記載するようなホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を基材と接触させることは、本明細書に記載するようなホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物に基材を浸漬すること、又は本明細書に記載するようなホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を基材にスプレーコーティングすることによって実現され得る。
【実施例】
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例で説明する。全ての部及び百分率は、特に指定がない限り、重量による。
【0071】
原料:
【0072】
【表1】
*TyzorActivate436は、Ti及びクエン酸の複合体であり、Tiの含有量は5重量%である。
【0073】
乳化重合法
【0074】
【0075】
1.アクリルエマルジョン(A)の合成
コポリマーの乾燥重量に基づいて、59重量%のBA、35重量%のSty、2.5重量%のAA、2.5重量%のIA、1重量%のHEMAを含むSWX1321を、以下のプロセスに従って調製した。
【0076】
モノマーエマルジョン(SWX1321)の調製:5.77gのRHODACAL DS-4(DS-4)を475gの脱イオン水(DI水)に溶解した。乳化したモノマー混合物は、以下の化学物質、すなわち、6.84gのIA、13.7gのHEMA、34.2gのAA、806.6gのBA、478.5gのStyを撹拌した溶液にゆっくり添加することによって調製した。
【0077】
50.42gのDS4及び370gの脱イオン水(本明細書では「DI水」)を含有する溶液を、熱電対、冷却コンデンサー、及び撹拌機を備えた5つ口の5リットル丸底フラスコに入れ、窒素下で70℃まで加熱した。255g、60℃のDI水中の27.4gのイタコン酸(IA)をフラスコに入れた。次いで、82.8gのモノマーエマルジョンを、フラスコに入れた。次いで、25gのDI水中の3.72gの過硫酸ナトリウム(SPS)及び20gのDI水中の1.86gの亜硫酸水素ナトリウム(SBS)を、フラスコに入れた。発熱ピークが発生し、温度が70℃になったら、残りのモノマーエマルジョン、SPSの溶液(50gのDI水中2.48g)及びSBSの溶液(50gのDI水中1.24g)を120分で供給した。重合反応温度を、69~71℃に維持した。添加が完了した後、モノマーエマルジョンを含有していた容器及びフラスコに通じる供給管を、90gのDI水ですすぎ、すすぎ液をフラスコに戻した。次いで、フラスコを、70℃で15分間保持した。その後、t-BHP(70%、48gのDI水中5.03g)及びBruggolite FF6(52gのDI水中4.28g)の溶液を60分かけて徐々に添加し、反応物を室温に冷却した。110gの20%水酸化ナトリウム溶液を添加して、pH値を6.5~7.5に調整した。固形分は、46%であった。
【0078】
コポリマーの乾燥重量に基づいて、76重量%のBA、18重量%のSty、2.5重量%のAA、2.5重量%のIA、1重量%のHEMAを含むSWX1331を、以下のプロセスに従って調製した。
【0079】
モノマーエマルジョン(SWX1331)の調製:47.72gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解した。乳化したモノマー混合物は、以下の化学物質、すなわち、6.84gのIA、13.7gのHEMA、34.2gのAA、1039.1gのBA、246.1gのStyを撹拌した溶液にゆっくり添加することによって調製した。
【0080】
8gのDS4及び370gの脱イオン水(本明細書では「DI水」)を含有する溶液を、熱電対、冷却コンデンサー、及び撹拌機を備えた5つ口の5リットル丸底フラスコに入れ、窒素下で70℃に加熱した。255g、60℃のDI水中の27.4gのイタコン酸(IA)をフラスコに入れた。次いで、82.8gのモノマーエマルジョンを、フラスコに入れた。次いで、25gのDI水中2.48gの過硫酸ナトリウム(SPS)及び20gのDI水中1.24gの亜硫酸水素ナトリウム(SBS)を、フラスコに入れた。発熱ピークが発生し、温度が70℃になったら、残りのモノマーエマルジョン、SPSの溶液(50gのDI水中2.48g)及びSBSの溶液(50gのDI水中1.24g)を120分で供給した。重合反応温度を、69~71℃に維持した。添加が完了した後、モノマーエマルジョンを含有していた容器及びフラスコに通じる供給管を、90gのDI水ですすぎ、すすぎ液をフラスコに戻した。次いで、フラスコを、70℃で15分間保持した。その後、t-BHP(70%、48gのDI水中5.03g)及びBruggolite FF6(52gのDI水中4.28g)の溶液を60分かけて徐々に添加し、反応物を室温に冷却した。110gの20%水酸化ナトリウム溶液を添加して、pH値を6.5~7.5に調整した。固形分は、46%であった。
【0081】
SWX1336は、47.72のDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したモノマーエマルジョンのレシピを除いて、SWX1331と同じプロセスに従って調製した。乳化したモノマー混合物は、以下の化学物質、すなわち、6.84gのIA、34.2gのAA、1039.1gのブチルアクリレート、259.8gのスチレンを撹拌した溶液にゆっくり添加することによって調製した。
【0082】
2.乾燥/湿潤/IPA引張強度試験
表2の配合に従って、硬化性水性組成物を得るために、上記の原料を15分間適切に撹拌して配合した。
【0083】
28cm×46cmのWHATMAN(商標)紙の断片を、300mLの配合したエマルジョンに浸漬した。処理された基材は、マチスパダーでパディングし、次いで乾燥させ、150℃で3分間硬化した。紙上へのポリマーの添加を、14~16%に制御した。硬化した基材を1インチ×4インチの断片に切断した。4インチの方向は、紙の横(CD)方向である。乾燥(未処理)、湿潤(0.1重量%のTriton X-100/水溶液中での30分間の浸漬後)、及びIPA(イソプロパノール中での30分間の浸漬後)の各処理を受けて、Instronで試験片の引張強度を試験した。湿潤強度は、接着剤の耐水性を反映し、IPA強度は、接着剤の耐溶剤性を反映する。
【0084】
飽和セルロース基材は、耐水性を評価した。データを下の表3に示す。
【0085】
【表3】
*括弧()内の値は、配合物における固形分比である
【0086】
【表4】
*Δは、配合物中のB成分による湿潤/IPA強度の改善を意味する。
【0087】
より高い強度値は、より良好な性能を表す。表3の結果は、全ての実施例がHCHOを含まないことを示す。比較例1~3と比較して、配合物中にB成分を有する本発明の実施例1~6は、湿潤強度で9%~40%の改善、IPA強度で10~40%の改善を示した。
【0088】
改善は、配合物中のカルボキシル基とテキスタイル及び不織布基材上のヒドロキシル基との反応に対するチタンの触媒作用に由来すると考えられる。
なお、本発明には、下記態様が含まれることを付記する。
[態様1]
ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物であって、
A)
(a)30~90重量%のC
1
~C
10
アルキルアクリレートと、
(b)10~60重量%のビニル芳香族と、
(c)0.5~10重量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、
(d)0~10重量%の、1個のカルボン酸基を有するエチレン性不飽和酸と、
(e)0~5重量%の他のエチレン性不飽和モノマーと、を含む、モノマー混合物から重合されたポリマーであって、
パーセンテージは、前記モノマー混合物の総重量に基づいている、モノマー混合物から重合されたポリマーと、
B)チタン触媒と、を含む、ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物。
[態様2]
前記モノマー混合物中のC
1
~C
10
アルキルアクリレートの量は、55~85重量%である、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様3]
前記C
1
~C
10
アルキルアクリレートは、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート及びn-ブチルメタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様4]
前記ビニル芳香族は、スチレン、α-メチルスチレン、又はこれらの混合物から選択される、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様5]
前記モノマー混合物中のビニル芳香族の量は、15~35重量%である、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様6]
少なくとも2個のカルボン酸基を有する前記エチレン性不飽和化合物は、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様7]
1個のカルボン酸基を有する前記エチレン性不飽和酸は、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの混合物から選択される、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様8]
前記他のエチレン性不飽和モノマー(e)は、ヒドロキシ含有エチレン性不飽和モノマー、(メタ)アクリルアミド、又はリン官能性モノマーから選択される、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様9]
前記チタン触媒の量は、ポリマーA)の固形分の100重量部当たり0.5~10重量部である、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様10]
前記チタン触媒は、式Ti(OR)
4
を有し、式中、各Rは、1~30個の炭素原子を有するアルキルラジカル、2~30個の炭素原子を有するアルケニルラジカル、3~30個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、6~30個の炭素原子を有するアラルキルラジカル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から独立して選択され、Rの1個以上の水素原子は、ハロゲン、-OH、-COOH、-NH
2
、-CN、若しくは-NH(C
1~10
アルキル)若しくは-N(C
1~10
アルキル)
2
で任意選択的に置換されるか、又は-C(=O)-、-C(=O)-NH-、ホスホリル、ホスホリルオキシ、スルホニル、若しくはスルホニルオキシによって任意選択的に割り込まれる、又は
前記チタン触媒は、Ti及び有機ポリ酸の複合体である、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様11]
前記ポリマーのガラス転移温度は、-40~70℃である、態様1に記載の水性硬化性組成物。
[態様12]
基材と、態様1~11のいずれか一項に記載のホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物と、を含む、物品。
[態様13]
前記基材は、紙、テキスタイル、又は不織布である、態様12に記載の物品。
[態様14]
紙、テキスタイル、又は不織布を処理する方法であって、態様1~11のいずれか一項に記載のホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を基材と接触させることと、次いで、前記ホルムアルデヒドを含まない水性硬化性組成物を乾燥させ、硬化することと、を含む、方法。
[態様15]
前記基材は、紙、テキスタイル、又は不織布である、態様14に記載の方法。