(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】スイッチング可能なリアクタンスユニット、可変リアクタンス、HF発生器、及び、スイッチング可能なリアクタンスユニットを有するインピーダンス整合装置
(51)【国際特許分類】
H03H 11/28 20060101AFI20241118BHJP
H03H 7/38 20060101ALI20241118BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H03H11/28
H03H7/38 Z
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2022578784
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2021066633
(87)【国際公開番号】W WO2021255250
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】202020103539.8
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505169226
【氏名又は名称】トゥルンプフ ヒュッティンガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Huettinger GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Boetzinger Strasse 80,D-79111 Freiburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビルガー ノルトマン
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505983(JP,A)
【文献】特表2019-525508(JP,A)
【文献】特表2000-512460(JP,A)
【文献】特表2003-516691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 11/28
H03H 7/38
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線路(114)
に接続するためのHF端子(112)と、
それぞれ1つの駆動端子(G)を有する、複数の並列に
接続されたスイッチング素子(T1~T3)を有するスイッチング装置(116)と、
を有する、スイッチング可能なリアクタンスユニット(100,101)であって、
前記スイッチング装置(116)は、それぞれの前記スイッチング素子(T1~T3)に対して直列に接続されて、それぞれ1つの駆動端子(G’)を有する、複数のさらなるスイッチング素子(T4~T6)をさらに有し、
それぞれの前記スイッチング素子(T1~T3)は、各自に対応付けられかつ当該スイッチング素子(T1,T2,T3)に
それぞれ直列接続された
複数の個別リアクタンス(C11~C13,C21~C23)を介して前記HF端子(112)に接続されており、
前記スイッチング素子(T1~T3)及び前記さらなるスイッチング素子(T4~T6)は、それぞれMOSFETとして構成されており、
前記スイッチング素子(T1~T3)は、それぞれ1つのドレイン端子(D)を有し、
前記個別リアクタンス(C11~C13,C21~C23)は、それぞれ前記ドレイン端子(D)に接続されており、
前記スイッチング素子(T1~T3)の前記ドレイン端子(D)は、ドレインバイアスインダクタンス(L1)を介してドレインバイアス端子(118)に接続されており、
前記ドレインバイアス端子(118)には、ドレインバイアス電圧が接続され、
前記ドレインバイアス電圧は、開放された状態の前記スイッチング素子(T1~T3)の両端に印加される逆符号のHF半波のピーク電圧よりも高く、
複数の前記スイッチング素子(T1~T3)及び複数の前記さらなるスイッチング素子(T4~T6)は、複数の当該スイッチング素子(T1~T3)及び複数の当該さらなるスイッチング素子(T4~T6)が同時にスイッチングされるように、各自の駆動端子(G,G’)を介して駆動可能であり又は駆動される、
ことを特徴とする、スイッチング可能なリアクタンスユニット(100,101)。
【請求項2】
前記複数の個別リアクタンス(C11~C13,C21~C23)がキャパシタンスとして構成され
ている、
請求項1に記載のスイッチング可能なリアクタンスユニット。
【請求項3】
複数の前記キャパシタンスは、
相互に同一のキャパシタンス値を有する、
請求項2に記載のスイッチング可能なリアクタンスユニット。
【請求項4】
前記複数の並列に
接続されたスイッチング素子(T1~T3)は、それぞれ1つのソース端子(S)を有し、
前記それぞれ1つのソース端子(S)は、共通端子点(117)に接続されている、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスイッチング可能なリアクタンスユニット。
【請求項5】
前記複数の個別リアクタンス(C11~C13,C21~C23)がインダクタンスとして構成され
ている、
請求項
1に記載のスイッチング可能なリアクタンスユニット。
【請求項6】
前記スイッチング素子(T1~T3)は
、PINダイオードを含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスイッチング可能なリアクタンスユニット。
【請求項7】
複数
の前記スイッチング素子(T1~T3)の前記ドレイン端子(D)は、それぞれ1つのドレイン接続抵抗(R1,R2)を介して互いに接続されている、
請求項
1に記載のスイッチング可能なリアクタンスユニット。
【請求項8】
それぞれ異なる個数の
前記スイッチング素子(T1~T3)を有する、及び/又は、
それぞれ異なるサイズの対応する個別リアクタンス(C11~C13)を有する、複数の
前記スイッチング装置(116)が設けられている、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のスイッチング可能なリアクタンスユニット。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載
のスイッチング可能なリアクタンスユニット(100)を有する、
可変リアクタンス(18,20,22)。
【請求項10】
前記可変リアクタンス(18,20,22)は、複数の並列に接続された
前記スイッチング可能なリアクタンスユニット(100,101)を有する、
請求項
9に記載の可変リアクタンス(18,20,22)。
【請求項11】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載
のスイッチング可能なリアクタンスユニット(100,101)を有する、インピーダンス整合装置(11)であって、
前記インピーダンス整合装置(11)は、制御装置(32)と、
当該制御装置(32)に接続された測定手段(25)とを有する、
インピーダンス整合装置(11)。
【請求項12】
請求項
9又は10に記載
の可変リアクタンス(18,20,22)を有する、
インピーダンス整合装置(11)。
【請求項13】
HF電力発生器(40)であって、
当該HF電力発生器(40)は、
a)1kHz未満の周波数を有する電力から1MHz~200MHzの周波数範囲内の高周波電力に変換するため
の電力変換器と、
b)請求項1乃至
8のいずれか一項に記載
のスイッチング可能なリアクタンスユニット(100,101)と、
を有する、HF電力発生器(40)。
【請求項14】
請求項
9又は10に記載
の可変リアクタンス(18,20,22)を有する、
HF電力発生器(40)。
【請求項15】
HF電力発生器(40)と、
基板をコーティング又はエッチングするための、高周波によって動作させられるプラズマプロセスの形態の負荷(28)と、
請求項
11又は
12に記載のインピーダンス整合装置(11)と、
を有するプラズマ供給システム(1)。
【請求項16】
請求項
13又は
14に記載のHF電力発生器(40)と、
基板をコーティング又はエッチングするための、高周波によって動作させられるプラズマプロセスの形態の負荷(28)と、
請求項
11又は
12に記載
のインピーダンス整合装置(11)と、
を有するプラズマ供給システム(1)。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載のプラズマ供給システム(1)において、請求項
11又は
12に記載のインピーダンス整合装置(11)、及び/又は、請求項
13又は
14に記載のHF電力発生器(40)を動作させるための方法であって、
当該方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
a)
MOSFETとして構成された1つ又は複数のスイッチング素子(T1,T2,T3)のゲート端子(G)とソース端子(S)との間
の正の電圧によって、
前記1つ又は複数のスイッチング素子(T1,T2,T3)をスイッチオンする方法ステップ、
b)
前記ゲート端子(G)と
前記ソース端子(S)との間
の負の電圧によって、前記1つ又は複数のスイッチング素子(T1,T2,T3)をスイッチオフする方法ステップ、
c)前記1つ又は複数のスイッチング素子(T1,T2,T3)
のドレイン端子(D)に、
ドレインバイアス電圧を接続する方法ステップであって、前記
ドレインバイアス電圧は、
開放された状態の前記スイッチング素子(T1,T2,T3)の両端に印加される逆符号のHF半波のピーク電圧よりも高い、方法ステップ、
d)前記1つ又は複数のスイッチング素子(T1,T2,T3)の前記ドレイン端子(D)から、前記
ドレインバイアス電圧を切断する方法ステップ
のうちの1つ又は複数を有する、方法。
【請求項18】
前記方法は、前記方法ステップb)及びc)を有し、前記方法ステップb)とc)とは、同時に実施される、
請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記方法ステップa)及びd)を有し、前記方法ステップa)とd)とは、同時に実施される、
請求項
17又は
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、スイッチング可能なリアクタンスユニット(switchable reactance unit)であって、当該スイッチング可能なリアクタンスユニットは、1~200MHzの範囲内の周波数で信号を伝送するための伝送線路にスイッチング可能なリアクタンスユニットを接続するための高周波端子(HF端子)と、複数の並列に使用されるスイッチング素子を備えたスイッチング装置とを有し、複数の並列に使用されるスイッチング素子は、それぞれ1つの駆動端子を有する、スイッチング可能なリアクタンスユニットに関する。スイッチング可能なリアクタンスユニットとは、例えば、キャパシタンス及び/又はインダクタンスを接続又は切断することができる電気回路ユニットを意味する。スイッチング可能なリアクタンスユニットは、通常、これらのリアクタンス及びスイッチング素子、例えば、トランジスタ、PINダイオード、又は、同様の電子部品を有する。
【0002】
本発明は、少なくとも1つの、特に複数のそのようなスイッチング可能なリアクタンスユニットを有する、可変リアクタンスも含む。
【0003】
本発明は、1つの、特に複数のそのようなスイッチング可能なリアクタンスユニットを有する、及び/又は、1つの、特に複数のそのような可変リアクタンスを有する、インピーダンス整合装置も含む。
【0004】
本発明は、少なくとも1つの、特に複数のそのようなスイッチング可能なリアクタンスユニットを有する、及び/又は、少なくとも1つの、特に複数のそのような可変リアクタンスを有する、高周波電力発生器(HF電力発生器)も含む。
【0005】
本発明は、少なくとも1つの、特に複数のそのようなスイッチング可能なリアクタンスユニットをそれぞれ有する、及び/又は、少なくとも1つの、特に複数のそのような可変リアクタンスをそれぞれ有する、そのようなインピーダンス整合装置及び/又はHF電力発生器を有する、プラズマ供給システムも含む。このようなインピーダンス整合装置は、制御装置と、特に当該制御装置に接続された測定手段とをさらに有することができる。
【0006】
本発明は、特に上述したプラズマ供給システムにおいて、上述したインピーダンス整合装置、及び/又は、上述したHF電力発生器を動作させるための方法も含む。
【背景技術】
【0007】
インピーダンス整合装置は、HF励起式のプラズマプロセスにおいて使用されることが多い。HF励起式のプラズマプロセスは、例えば、建築用ガラス、半導体、光起電力素子、薄型テレビ、ディスプレイ等を製造する際における基板のコーティング(スパッタリング)及び/又はエッチングのために使用される。このようなプロセスにおけるインピーダンスは、非常に急速に変化することが多く、したがって、多くの場合、インピーダンス整合を、非常に急速(数ミリ秒以内)に整合させることが求められる。このようなプロセスの電力は、数100W(例えば、300W以上)であるが、数キロワット又は数10kWになることも珍しくない。このような電力の場合、インピーダンス整合装置の内部の電圧は、多くの場合、数100V(例えば、300V以上)であり、1000V以上になることも珍しくない。このような回路における電流は、数アンペアになる可能性があり、数10A、往々にして100A以上になる可能性も多い。このような電圧及び電流においてインピーダンス整合装置を実装することは、従前から常に大きな課題である。このようなインピーダンス整合回路におけるリアクタンスの急速な変動性も、追加的な非常に大きな課題である。
【0008】
このようなインピーダンス整合装置は、例えば、独国特許出願公開第102015220847号明細書に示されており、同明細書においては、インピーダンス整合ネットワークと呼ばれている。同明細書に示されているリアクタンス18,20,22は、インピーダンス整合を調整することができるようにするために、可変に調整可能である。可変に調整するための1つの手段は、電子制御式の半導体スイッチを用いてそれぞれ異なる値の複数のリアクタンスを接続及び切断することである。
【0009】
このようなインピーダンス整合装置の場合には、接続されているインピーダンス整合装置内のリアクタンス、特にキャパシタンスをHF経路に動的に接続するという要求が存在する。電子的に接続可能及び切断可能なリアクタンスを用いることにより、例えばロータリーコンデンサのような機械式の可変リアクタンスを用いる従来のインピーダンス整合装置の場合よりも、はるかに急速にインピーダンス整合を実施することができる。したがって、インピーダンス整合装置内に1つ又は複数のスイッチング可能なリアクタンスユニットを有するそのようなインピーダンス整合装置を開発することが、非常に望ましい。しかしながら、このようなインピーダンス整合装置は、重大な欠点を有する。通常、動作中にインピーダンスを整合させなければならないので、スイッチング可能なリアクタンスユニット内のスイッチング素子は、非常に大きな電流をスイッチオン及びスイッチオフすることが可能でなければならないのである。このために、多くの場合、非常に高価なスイッチング素子が使用される。したがって、従来の機械式の可変リアクタンスの欠点が依然として甘受させられることが多い。大電流を、複数の並列に接続された構成素子に分割することが一般的に知られてはいる。しかしながら、このような並列回路は、スイッチング素子の場合には常に特に危機的である。なぜなら、スイッチオン抵抗と、スイッチオン及びスイッチオフのダイナミクスとの誤差が相当に強力に変動するので、全ての並列に接続されたスイッチング素子に電流がいつでも十分に均等に分配されるということを保証することができないからである。特に、これは、上述した大電流の場合には、スイッチング素子の急速な摩耗及び突然の破壊をももたらす可能性がある。これは、極めて望ましくないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許出願公開第102015220847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の課題
はるかにより安価なスイッチング可能なリアクタンスユニットと、特にこのようなスイッチング可能なリアクタンスユニットが設けられたインピーダンス整合装置及び/又はHF電力発生器とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の説明
上記の課題は、本発明によれば、スイッチング可能なリアクタンスユニットであって、当該スイッチング可能なリアクタンスユニットは、1~200MHzの範囲内の周波数で信号を伝送するための伝送線路にスイッチング可能なリアクタンスユニットを接続するためのHF端子と、複数の並列に使用されるスイッチング素子を備えたスイッチング装置とを有し、複数の並列に使用されるスイッチング素子は、それぞれ1つの駆動端子を有し、それぞれのスイッチング素子は、各自に対応付けられかつ当該スイッチング素子に直列接続された少なくとも1つの個別リアクタンスを介して、HF端子に接続されており、複数のスイッチング素子は、複数の当該スイッチング素子が同時にスイッチングされるように、各自の駆動端子を介して駆動可能であり又は駆動される、スイッチング可能なリアクタンスユニットによって解決される。
【0013】
1つの実施形態においては、可変リアクタンスは、少なくとも1つの、特に複数のスイッチング可能なリアクタンスユニット、特に複数の並列に接続されたスイッチング可能なリアクタンスユニットを有し、特に、複数のスイッチング可能なリアクタンスユニットは、それぞれ異なるリアクタンス、特にそれぞれ2倍ずつ異なっている値を有するリアクタンスをスイッチングするように構成されている。
【0014】
1つの実施形態においては、インピーダンス整合装置は、少なくとも1つの、特に複数の本発明に係るスイッチング可能なリアクタンスユニットを有する、及び/又は、少なくとも1つの、特に複数の可変リアクタンスを有する。
【0015】
1つの実施形態においては、HF電力発生器は、
a)1kHz未満の周波数を有する電力から1MHz~200MHzの周波数範囲内の高周波電力に変換するために適した電力変換器と、
b)少なくとも1つの、特に複数の本発明に係るスイッチング可能なリアクタンスユニット、及び/又は、少なくとも1つの、特に複数の可変リアクタンスと、
を有する。
【0016】
「同時にスイッチング」とは、複数のスイッチング素子が、技術的に通常で可能な限り同時にスイッチングされることを意味する。完全に同一ではないスイッチング素子同士は、それぞれ異なるスイッチング遅延を有することが多い。したがって、実際のスイッチング時間は、それぞれわずかに異なっていてしかるべきである。典型的には100ns以下、特に10ns以下のスイッチング差は、本発明の意味においては同時であるとみなされる。スイッチング可能なリアクタンスユニットによってスイッチングされるべき総リアクタンスを、それぞれ1つのスイッチング素子に対応付けられている複数の個別リアクタンスに分割することにより、基本的に、それぞれのスイッチング素子には、各自に対応付けられたこの個別リアクタンスの電流のみが印加されることとなる。このことにより、スイッチングオンプロセス及びスイッチングオフプロセス中の複数のスイッチング素子のそれぞれ異なるスイッチング遅延によって、総リアクタンスが分割されていない場合にそうであったように個々のスイッチング素子が過負荷になることが阻止される。
【0017】
スイッチング可能なリアクタンスユニットを流れる電流は、定義されたように個別リアクタンスによって分割されているので、この装置は、複数のスイッチング素子を1つのリアクタンスのみに直接的に並列接続した場合に起こり得るような、それぞれ異なるスイッチオン抵抗による個々のスイッチング素子の過負荷も、阻止する。供給線路のような回路の構造又は構成素子のパラメータの変動が電流に対して与える影響は、最小限に抑制される。
【0018】
本明細書における高周波(HF)は、1MHz以上の周波数を意味する。特に、本明細書における高周波(HF)は、1~200MHzの範囲内の周波数を意味する。
【0019】
好ましい実施形態においては、スイッチング可能なリアクタンスユニット、可変リアクタンス、インピーダンス整合装置、及び/又は、HF電力発生器は、9MHz~30MHzの範囲内、特に13.56MHz又は27.12MHzのそれぞれ±10%の周波数のために構成されている。
【0020】
リアクタンスは、インダクタンス若しくはキャパシタンス、又は、これらの両方の組合せであってよい。
【0021】
スイッチング可能なリアクタンスユニットは、それぞれ個別リアクタンスが対応付けられている2つより多くの、特に3つより多くの、特に4つより多くの並列に使用されるスイッチング素子を有することができる。これにより、非対称な電流分布による破壊を阻止することができる。
【0022】
少なくとも1つの個別リアクタンスをキャパシタンスとして構成することができ、特に複数の個別リアクタンスをキャパシタンスとして構成することができ、特に好ましくは全ての個別リアクタンスをキャパシタンスとして構成することができる。したがって、1つの大きな総キャパシタンスをスイッチングする代わりに、この1つの大きな総キャパシタンスを複数の小さな個々のキャパシタンスに分割して、これらの小さな個々のキャパシタンスが、それぞれ対応付けられたスイッチング素子に対して直列に接続されるようにすることが可能である。個々のキャパシタンスの合計が、スイッチングされるべき元々のキャパシタンスになる。
【0023】
キャパシタンスは、それぞれ同等のキャパシタンス値を有することができる。これにより、全てのスイッチング素子を通って実質的に同等の電流が流れることが保証される。
【0024】
複数の並列に使用されるスイッチング素子は、それぞれ1つのソース端子を有することができ、それぞれ1つのソース端子を、共通端子点に接続することができる。これにより、複数の並列に使用されるスイッチング素子が全て同一の電位に位置することを保証することができる。
【0025】
特に、共通端子点をアースに接続することができる。これに代えて、共通端子点を高周波電位に接続してもよい。
【0026】
少なくとも1つの個別リアクタンスをインダクタンスとして構成することができ、特に複数の個別リアクタンスをインダクタンスとして構成することができ、特に好ましくは全ての個別リアクタンスをインダクタンスとして構成することができる。
【0027】
1つの総キャパシタンスをより小さな個々のキャパシタンスに分割する代わりに、1つの整合された総キャパシタンスを使用することができ、この1つの整合された総キャパシタンスには、複数のインダクタンスがスター状に接続される。次に、これらのインダクタンスをそれぞれスイッチング素子に対して直列に接続することができる。その場合、上記の定義によれば、これらのインダクタンスは、個別リアクタンスである。その場合、整合された総キャパシタンスと、複数の並列に接続されたインダクタンスとからなるこの直列回路を、この直列回路が、動作周波数において元々の所望の総キャパシタンスと同一のインピーダンスを有するように調整することができる。
【0028】
スイッチング素子は、トランジスタ、特に電界効果トランジスタ、好ましくはMOSFET、LDMOSとして構成可能であり、又は、PINダイオードを含み得る。特に、スイッチング素子は、ボディダイオードを有することができる。これらの構成要素、特にボディダイオードを有するMOSFETを用いることにより、スイッチング素子を特に低コストに実現することができる。この価格の利点は、スイッチング素子及びリアクタンスを複数使用するためのコストを相殺する以上になるほど、非常に大きいものであろう。
【0029】
スイッチング素子は、それぞれ1つのゲート端子を有することができ、このゲート端子を介してスイッチング素子をスイッチオンすることができる。複数のスイッチング素子を同時にスイッチオンするために、ゲート端子同士を互いに直接的又は間接的に接続することができる。
【0030】
スイッチング素子は、それぞれ1つのドレイン端子を有することができ、個別リアクタンスを、それぞれドレイン端子に接続することができる。
【0031】
スイッチング素子のドレイン端子を、ドレインバイアスインダクタンスを介してドレインバイアス端子に接続することができる。このドレインバイアス端子には、ドレインバイアス電圧を接続することができる。例えばボディダイオードの導通を阻止するために、このドレインバイアス電圧を、開放された状態のスイッチング素子の両端に印加される逆符号のHF半波のピーク電圧よりも高くすることができる。この場合、複数の、特に全てのスイッチング素子のドレイン端子を、それぞれ1つのドレイン接続抵抗を介して互いに接続することができる。ドレインバイアス電圧は、さらなるスイッチング素子を介して接続可能及び切断可能であってよい。
【0032】
それぞれの並列に使用されるスイッチング素子のためにHFチョークを有するバイアス電源を使用しなくてよいようにするために、ドレイン端子を、抵抗を介して接続することができる。したがって、ドレインバイアス電圧を、インダクタンスを介して、特にHFチョークを介してドレインのうちの1つのみに印加し、この電圧を、ドレイン接続抵抗を介して他のスイッチング素子に分配すれば十分である。
【0033】
1つの、特にそれぞれのドレイン接続抵抗の抵抗値を、閉成された状態の複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子のインピーダンスよりも大きくすることができる。このようにして、スイッチングプロセス中の抵抗を通るHF横流を制限して、ドレイン接続抵抗の破壊を阻止することができる。
【0034】
スイッチング素子をスイッチオフした際に、及び、ドレインバイアス電圧をドレインバイアス端子に印加した際に、個々のキャパシタンスをドレインバイアス電圧まで十分急速に充電することができるようにするために、1つの、特にそれぞれのドレイン接続抵抗の抵抗値を、それぞれ、τ=R*Cが所定の値を上回らないように、寸法設定することができる。
【0035】
ドレイン接続抵抗の代わりに、インダクタンスを使用することもできる。
【0036】
スイッチング装置は、複数の、特に2つの、特に3つの、特に4つの並列に使用されるスイッチング素子を有することができ、これらのスイッチング素子は、それぞれ対応する、好ましくは同等の個別リアクタンスを有する。したがって、非対称な電流分布が、個々のスイッチング素子を破壊することがないようにすることができる。
【0037】
それぞれ複数の並列に使用されるスイッチング素子、特にそれぞれ異なる個数の並列に使用されるスイッチング素子を有する、及び/又は、それぞれ複数の対応する個別リアクタンス、特にそれぞれ異なるサイズの対応する個別リアクタンスを有する、複数のスイッチング装置を設けることができる。これにより、インピーダンス整合装置を用いて、それぞれ異なる所要のインピーダンス整合に対して特に柔軟に反応することができる。
【0038】
複数のスイッチング可能なリアクタンスユニットを、それぞれ2倍ずつ異なっているリアクタンスをスイッチングするように構成することができる。これにより、2nのスイッチング可能なリアクタンスユニット装置を、非常に省コストに構築することができる。
【0039】
スイッチング可能なリアクタンスユニットは、それぞれのスイッチング素子に対して直列に、さらなるスイッチング素子を有することができる。これにより、より高い電圧をスイッチングすることができ、スイッチング可能なリアクタンスユニットをさらにより確実に動作させることができる。
【0040】
さらなるスイッチング素子は、それぞれ1つの駆動端子を有することができ、スイッチング素子及びさらなるスイッチング素子は、当該スイッチング素子及び当該さらなるスイッチング素子が同時にスイッチングされるように、各自の駆動端子を介して駆動可能であるものとしてよく又は駆動されるものとしてよい。これにより、より高い電圧をスイッチングすることができ、スイッチング可能なリアクタンスユニットをさらにより確実に動作させることができる。
【0041】
それぞれ1つのスイッチング素子と、さらなるスイッチング素子とを有するそれぞれのスイッチング素子直列回路を、2つの同一構造のスイッチング素子から構築することができる。
【0042】
それぞれ1つのスイッチング素子と、さらなるスイッチング素子とを、各自のソース端子において接続することができる。
【0043】
それぞれ1つのスイッチング素子と、さらなるスイッチング素子とを、各自のドレイン端子において接続することができる。
【0044】
それぞれ1つのスイッチング素子と、さらなるスイッチング素子とを、それぞれソース端子及びドレイン端子において互いに接続することができる。
【0045】
本発明の枠内にはさらに、HF電力発生器と、基板をコーティング又はエッチングするための、高周波によって動作させられるプラズマプロセスの形態の負荷と、本発明に係るインピーダンス整合装置とを有する、プラズマ供給システムが含まれる。
【0046】
本発明の枠内にはさらに、上述した本発明に係るHF電力発生器と、基板をコーティング又はエッチングするための、高周波によって動作させられるプラズマプロセスの形態の負荷とを有する、プラズマ供給システムが含まれる。このようなプラズマ供給システムは、追加的なインピーダンス整合装置を用いて又は用いることなく動作可能である。このようなプラズマ供給システムは、追加的なインピーダンス整合装置を用いて動作させられる場合には、本発明に係る可変リアクタンスを有する又は有さないインピーダンス整合装置であってよく、また、本発明に係るスイッチング可能なリアクタンスユニットを有する又は有さないインピーダンス整合装置であってよい。
【0047】
本発明は、上述したプラズマ供給システムにおいて、上述したインピーダンス整合装置、及び/又は、上述したHF電力発生器を動作させるための方法であって、
当該方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
a)特に、ゲート端子とソース端子との間、又は、ゲート端子とソース端子との間の十分に大きな正の電圧によって、1つ又は複数のスイッチング素子をスイッチオンする方法ステップ、
b)特に、ゲート端子とソース端子との間、又は、ゲート端子とソース接続との間の十分に小さい電圧又は負の電圧によって、1つ又は複数のスイッチング素子をスイッチオフする方法ステップ、
c)1つ又は複数のスイッチング素子のドレイン端子に、高電圧を接続する方法ステップであって、高電圧は、ドレイン端子とソース端子との間の絶対値で最大のHF電圧よりも絶対値でより大きい、方法ステップ、
d)1つ又は複数のスイッチング素子のドレイン端子から、高電圧を切断する方法ステップ
のうちの1つ又は複数を有する、方法も含む。
【0048】
上述した方法ステップb)とc)とは、好ましくは同時に実施可能である。
【0049】
上述した方法ステップa)とd)とは、好ましくは同時に実施可能である。
【0050】
本発明のさらなる利点は、明細書及び図面から得られる。また、上述した特徴及び以下に詳述する特徴は、本発明によれば、それぞれ単独で又は任意の組合せで使用可能である。図示及び記載された実施形態は、排他的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ、本発明を説明するための例示としての性質を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】インピーダンス整合装置を有するプラズマ供給システムを示す図である。
【
図2】スイッチング可能なリアクタンスユニットを示す図である。
【
図3】スイッチング素子に直列接続されたさらなるスイッチング素子を有するスイッチング可能なリアクタンスユニットを示す図である。
【
図4】a~cは、3つのそれぞれ異なる実施形態におけるスイッチング素子直列回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、HF電力発生器40を有するプラズマ供給システム1を示し、このHF電力発生器40は、インピーダンス整合装置11を介して負荷28に、特にプラズマ負荷に接続されている。この場合、HF電力発生器40は、1kHz未満の周波数を有する電力から1MHz~200MHzの周波数範囲内の高周波電力に変換するために適した電力変換器を有することができる。インピーダンス整合装置11は、インピーダンス整合手段9の構成成分である。インピーダンス整合装置11は、図示の実施例においては可変リアクタンス18,20,22を含み、これらの可変リアクタンス18,20,22は、各自のリアクタンス値を変化させるためにそれぞれ駆動回路12,14,16を介して駆動される。駆動回路12,14,16は、制御装置32によって駆動される。制御装置32には、例えば電流及び電圧、順方向電力及び反射電力、及び/又は、インピーダンス絶対値及び位相角度を検出するための測定要素24,26を有することができる測定手段25が接続されている。測定手段25によって特定された量に基づいて、例えば、負荷28において反射された電力又は反射係数を特定することができる。不整合が存在する場合、すなわち、負荷28のインピーダンスが電力発生器40の出力インピーダンスと整合していない場合には、反射電力が発生する。これに代えて又はこれに加えて、対応する測定手段をインピーダンス整合手段9の入力部又は内部に配置してもよい。インピーダンス整合手段9は、負荷28の入力部における負荷インピーダンス27を、インピーダンス整合装置11の入力部、すなわち、発生器側における変換された負荷インピーダンス29に変換するために適している。
【0053】
インピーダンス整合装置11及び/又はインピーダンス整合手段9を、HF電力発生器40内に組み込むこともできる(図示せず)。
【0054】
HF電力発生器40は、1つ又は複数の可変リアクタンス18,20,22を有することもできる。
【0055】
HF電力発生器40は、1つ又は複数のスイッチング可能なリアクタンスユニット100(
図2)を有することもできる。
【0056】
駆動回路12,14,16は、DE202020102084.6という出願番号を有する独国実用新案第202020102084号明細書に記載されているように構成可能であり、特にそのように動作可能でもある。同明細書の開示内容を参照するものとし、本開示の対象とする。同明細書に記載されているインピーダンス整合回路は、本明細書に記載されているインピーダンス整合装置11に対応する。同明細書に記載されているHF端子RFinは、本明細書に記載されているHF端子112に対応する。同明細書に記載されているGND/RFoutは、本明細書に記載されている共通端子117(
図2)又は119(
図3)に対応することができる。
【0057】
図2は、スイッチング可能なリアクタンスユニット100を示す。スイッチング可能なリアクタンスユニット100は、1~200MHzの周波数範囲内の信号を伝送するための伝送線路114にスイッチング可能なリアクタンスユニット100を接続するためのHF端子112を有する。さらに、スイッチング可能なリアクタンスユニット100は、複数の並列に使用されるスイッチング素子T1,T2,T3を有するスイッチング装置116を含み、これらのスイッチング素子T1,T2,T3は、それぞれ1つの駆動端子Gを有する。さらに、スイッチング素子T1,T2,T3は、ドレイン端子D及びソース端子Sを有する。スイッチング素子T1,T2,T3のソース端子Sは、共通端子117に接続されており、この共通端子117は、図示の実施例においてはアースに接続されている。それぞれのスイッチング素子T1,T2,T3は、各自に対応付けられた直列接続された個別リアクタンスC11,C12,C13を介して、HF端子112に接続されている。図示の実施例においては、個別リアクタンスC11,C12,C13がキャパシタンスとして構成されている。
【0058】
上述した可変リアクタンス18,20,22の各々に、複数のスイッチング可能なリアクタンスユニット100を、特に並列に接続して配置することができる。
【0059】
複数の、特に並列に接続されたスイッチング可能なリアクタンスユニット100を、それぞれ2倍ずつ異なっているリアクタンスをスイッチングするようにそれぞれ構成することができる。これにより、2nのスイッチング可能なリアクタンスユニット装置を、非常に省コストに構築することができる。例えば、1つのスイッチング可能なリアクタンスユニットは、1pFのキャパシタンスをスイッチングすることができ、次のスイッチング可能なリアクタンスユニットは、2pFのキャパシタンスをスイッチングすることができ、次のスイッチング可能なリアクタンスユニットは、4pFのキャパシタンスをスイッチングすることができ、次のスイッチング可能なリアクタンスユニットは、8pFのキャパシタンスをスイッチングすることができ、以下同様である。例えば、8個のこのようなスイッチング可能なリアクタンスユニットが並列に接続されている場合には、最大255pHを1pF刻みで接続及び切断することができる。
【0060】
わずかなキャパシタンス値、例えば8pF以下のキャパシタンス値のみをスイッチングするスイッチング可能なリアクタンスユニットは、少数の、例えば2つ又は1つのみの並列に接続されたスイッチング素子(T1,T2,T3)を有することができる。それより大きいキャパシタンス値、例えば8pFを超えるキャパシタンス値をスイッチングするスイッチング可能なリアクタンスユニットは、より多数の、例えば3つ以上の並列に接続されたスイッチング素子(T1,T2,T3)を有することができる。
【0061】
スイッチング素子T1,T2,T3は、本実施例においてはボディダイオードを有するMOSFETとして構成されている。ボディダイオードは、その構造形式に基づいて大抵の現在入手可能なMOSFETに組み込まれており、ボディダイオードのカソードは、ドレイン端子Dに接続されており、ボディダイオードのアノードは、ソース端子Sに接続されている。
【0062】
スイッチング素子T1,T2,T3は、実質的に同一に構成可能である。スイッチング素子T1,T2,T3の駆動端子Gを、互いに接続することができ、端子111を介して一緒に駆動することができる。これにより、スイッチング素子T1,T2,T3が実質的に同時にスイッチングされることを保証することができる。
【0063】
個別リアクタンスC11,C12,C13は、スイッチング素子T1,T2,T3を流れる高周波電流もまた実質的に同一になるように、好ましくは同一に構成可能である。したがって、スイッチング素子T1~T3を流れる電流の変動は、個別リアクタンスC11~C13の誤差に依存している。
【0064】
スイッチング素子T1,T2,T3のドレイン端子Dを、ドレイン接続抵抗R1,R2を介して互いに接続することができる。さらに、スイッチング素子T1,T2,T3のドレイン端子Dを、ドレインバイアスインダクタンスL1を介してドレインバイアス端子118に接続することができる。遮断時には、ドレインバイアス電圧がドレイン接続抵抗R1,R2によって個々のスイッチング素子T1~T3に分配される。遮断時とは、スイッチング素子T1,T2,T3が開放された状態にある場合、すなわち、非導通状態にある場合である。図示の実施例においては、ドレイン接続抵抗R1,R2は、直列接続されており、スイッチング素子T1,T2,T3のドレイン端子をチェーンの形態で接続する。このことは、プリント基板上での実現のために有利であり得る。なぜなら、その場合にはドレイン接続抵抗R1,R2を明瞭かつ省スペースに配置して接続することができるからである。これに代えて、ドレイン接続抵抗R1,R2を、ドレインバイアスインダクタンスL1に直接的に接続されたドレイン端子Dからさらなるドレイン端子Dまでスター状に接続してもよい。多数の並列に接続されたスイッチング素子T1,T2,T3を使用する場合には、このことは、充電時間τ=R*Cに対してポジティブな影響を与えることができる。ドレイン接続抵抗R1,R2が3つ以上ある場合は、直列結線とスター結線との組合せから接続を実施して、両方の利点を活かすこともできる。
【0065】
ドレインバイアス電圧は、さらなるスイッチング素子(図示せず)を介して接続可能及び切断可能であってよい。対応するスイッチング素子は、独国実用新案第202020102084号明細書においては、
図2においてT3によって開示されている。同明細書においては、ドレインバイアス電圧が、高電圧HVとして記載されている。この高電圧は、直流電圧であってよい。この高電圧は、ドレイン端子Dのうちの1つにおいて発生する最大HF負電圧よりも絶対値で大きくなければならない。この高電圧を、さらなるスイッチング素子を介して接続することができ、すなわち、駆動回路12がスイッチング素子T1,T2,T3をスイッチオフした場合、すなわち、非導通状態にスイッチングした場合には、さらなるスイッチング素子は、動作中にスイッチオンされ、すなわち、導通状態にスイッチングされる。
【0066】
ドレインバイアスインダクタンスL1に対して直列に、ドレインバイアス抵抗(図示せず)を接続することができる。ドレインバイアス抵抗は、使用されるキャパシタンスと、寄生キャパシタンスと、使用されるインダクタンスと、寄生インダクタンスとの組合せによってもたらされる変動を減衰させるように構成可能である。例えば、独国実用新案第202020102084号明細書の開示においては、2つのそのようなドレインバイアス抵抗が、
図2においてR1及びR2によって示されている。
【0067】
スイッチング素子が再びスイッチオンされた場合、すなわち、導通状態にスイッチングされた場合には、スイッチング素子を流れる直流電流を阻止するために、ドレインバイアス電圧(高電圧)をスイッチング素子T1,T2,T3から分離すべきであり、すなわち、さらなるスイッチング素子をスイッチオフすべきであり、すなわち、非道通状態にスイッチングすべきである。
【0068】
図2の装置は、プリント基板(PCB)上に実現可能である。
【0069】
図3は、それぞれスイッチング素子T1,T2,T3に直列接続されたさらなるスイッチング素子T4,T5,T6を有するスイッチング可能なリアクタンスユニット101を示す。さらなるスイッチング素子T4,T5,T6は、各自のゲート端子G’において駆動される。さらなるスイッチング素子T4,T5,T6と、直列接続されたスイッチング素子T1,T2,T3との駆動は、全てのスイッチング素子T1~T6が同時にスイッチオン及びスイッチオフされるように実施される。スイッチング素子T1,T2,T3に直列接続されたさらなるスイッチング素子T4,T5,T6は、全てのスイッチング素子T1~T6の電圧負荷の低下をもたらす。したがって、比較的低い電圧耐性値を有する比較的安価なスイッチング素子を使用することができる。ここでも、ドレインバイアス電圧は、ドレイン接続抵抗R1,R2と、追加的なドレイン接続抵抗R3,R4とを介して伝送されるが、ただし、スイッチング素子のスイッチングオンプロセス及びスイッチングオフプロセス中に顕著なHF横流が許容されることはない。この装置においては、それぞれ1つのスイッチング素子T1,T2,T3と、さらなるスイッチング素子T4,T5,T6とが、各自のソース端子Sにおいて接続されている。全てのソース端子Sを、共通端子117において接続することができる。この共通端子117は、例えば独国実用新案第202020102084号明細書の
図2に示されているように、駆動回路12,14,16のための基準電位としても機能することができる。共通端子117は、インダクタンスと抵抗との直列回路によるドリフト及び/又は変動を抑制するために、アースに接続可能である(図示せず)。スイッチング素子T1,T2,T3における上述したドレイン接続抵抗R1,R2と同様に、さらなるスイッチング素子T4,T5,T6のドレイン端子Dにも、ドレイン接続抵抗R3,R4を接続することができる。追加的なドレインバイアスインダクタンスL2は、追加的なドレインバイアス端子115をさらなるスイッチング素子T4,T5,T6のドレイン端子Dに接続することができる。ここで、
図2の元々の個別リアクタンスC11,C12,C13を、それぞれ2つの、特に同一構造の個別リアクタンスC21及びC24と、C22及びC25と、C23及びC26とに分割することができる。このことはつまり、
図2と同等のリアクタンスをスイッチングすることができるようにするために、C21の値にC24の値を加えたものに等しいC11の値と、C22の値にC25の値を加えたものに等しいC12の値と、C23の値にC26の値を加えたものに等しいC13の値とがそれぞれ直列に接続されているということを意味する。追加的な個別リアクタンスC24,C25,C26を、高周波共通端子119において一緒に接続することができ、この高周波共通端子119を、アースに接続することができ、又は、インピーダンス整合装置11内の他の高周波電位に接続することができる。追加的なドレインバイアスインダクタンスL2に対して直列に、ドレインバイアス抵抗(図示せず)を接続することができる。
【0070】
図3の装置は、プリント基板(PCB)上に実現可能である。
【0071】
図4a~
図4cは、3つのそれぞれ異なる実施形態におけるスイッチング素子直列回路を示し、これらも全て、プリント基板(PCB)上に実現可能である。スイッチング素子直列回路は、スイッチング可能なリアクタンスユニット100,101の一部である。
図4cは、例えば、
図3のスイッチング可能なリアクタンスユニット101の右側の部分領域を示す。スイッチング素子T3とT6とは、ここでは各自のソース端子において接続されている。
【0072】
図4bは、同様の回路装置を示し、ここではスイッチング素子T3とT6との直列回路が、各自のドレイン端子Dにおいて接続されている。この直列回路の欠点は、上側のスイッチング素子T3を、完全なHF電圧に対してスイッチオン及びスイッチオフしなければならないことである。
【0073】
図4aは、同様の回路装置を示す。スイッチング素子T3及びT6は、ここではT3のソースS及びT6のドレインDに接続されている。ここでは、それぞれのドレイン-ゲート間電圧を個々に接続する必要があるので、この直列回路は、やや手間がかかる。スイッチング素子T3,T6の直列回路は、全てのスイッチング素子T3,T6の電圧負荷の低下をもたらす。したがって、比較的低い電圧耐性値を有する比較的安価なスイッチング素子を使用することができる。
【0074】
図4cによる回路装置は、直列回路が使用される場合には、好ましい回路装置である。この回路装置は、独国実用新案第202020102084号明細書でも、好ましい回路配置として
図2に示されている。
【0075】
スイッチング素子のために、好ましくは、約1.5~2.5kVの最大ドレイン-ソース間電圧(VDS)と、約0.5Ωのスイッチオン抵抗RDSonと、約30Aの最大ドレイン電流とを有するMOSFETが使用される。このMOSFETは、例えば、IPA95R450P7という構成素子名称を有するInfineon社のMOSFETであってよい。このMOSFETは、市場において非常に安価に入手可能である。なぜなら、このMOSFETは、プラズマプロセスのためのインピーダンス整合装置よりもはるかに多くの用途に向けて構成されており、したがって、大量に製造されているからである。ドレイン接続抵抗は、有利には約10オームのために構成される。