(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
H04L25/02 303Z
H04L25/02 V
(21)【出願番号】P 2023099256
(22)【出願日】2023-06-16
(62)【分割の表示】P 2020118437の分割
【原出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】卯尾 豊明
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199536(WO,A1)
【文献】米国特許第07302247(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力された少なくとも1つの入力信号が第1論理レベルである場合に、キャリア信号を出力する発振器と、
第1信号生成回路であって、
前記入力信号の立ち上がりを検知すると1つ目のパルスを生成し、
前記入力信号の立ち上がりが検知された時に前記キャリア信号が第1論理レベルと異なる第2論理レベルである場合に、前記キャリア信号と同相の前記キャリア信号に基づく信号を2つ目のパルス以降の信号として出力し、
前記入力信号の立ち上がりが検知された時に前記キャリア信号が前記第1論理レベルである場合に、前記キャリア信号と位相が反転した前記キャリア信号に基づく信号を2つ目以降のパルス信号として出力する、第1信号生成部と、
前記第1信号生成部の出力信号を増幅する第1駆動回路と、
を含む第1信号生成回路と、
前記第1駆動回路の出力に接続された第1絶縁素子と、
前記第1駆動回路の出力信号に基づいた信号を、前記第1絶縁素子を介して受信し、外部に出力する第1出力回路と、
を備える、通信装置。
【請求項2】
第2信号生成回路であって、
前記入力信号と異なる他の入力信号の立ち上がりを検知すると1つ目のパルスを生成し、
前記他の入力信号の立ち上がりが検知された時に前記キャリア信号が前記第2論理レベルである場合に、前記キャリア信号と同相の前記キャリア信号に基づく信号を2つ目のパルス以降の信号として出力し、
前記入力信号の立ち上がりが検知された時に前記キャリア信号が前記第1論理レベルである場合に、前記キャリア信号と位相が反転した前記キャリア信号に基づく信号を2つ目のパルス以降の信号として出力する、第2信号生成部と、
前記第2信号生成部の出力信号を増幅する第2駆動回路と、
を含む第2信号生成回路と、
前記第2駆動回路の出力に接続された第2絶縁素子と、
前記第2駆動回路の出力信号に基づいた信号を、前記第2絶縁素子を介して受信し、外部に出力する第2出力回路と、
をさらに備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1信号生成部は、
前記入力信号と前記キャリア信号とが入力され、入力された前記入力信号と前記キャリア信号とに基づいて第1制御信号と第2制御信号とを生成するクロック遷移検出回路と、
前記入力信号と前記第1制御信号と前記第2制御信号とに基づいて第1信号を生成するパルス生成回路と、
前記第1制御信号と前記第2制御信号とに基づいて、第3制御信号と第4制御信号とを生成する位相検出回路と、
前記第3制御信号と前記第4制御信号と前記キャリア信号に基づいた信号とに基づいて内部キャリア信号を生成するセレクタ回路と、
前記第1信号と前記内部キャリア信号との論理和演算を実行し、演算結果が前記第1駆動回路によって増幅及び出力される第1論理和回路と、
を備え、
前記クロック遷移検出回路は、前記入力信号が立ち上がった後に、前記キャリア信号の立ち上がりを検出した場合に前記第1制御信号を前記第2論理レベルから前記第1論理レベルに遷移させ、前記キャリア信号の立ち下がりを検出すると前記第2制御信号を前記第2論理レベルから前記第1論理レベルに遷移させ、
前記パルス生成回路は、前記入力信号の立ち上がりを検知すると前記第1信号を前記第2論理レベルから前記第1論理レベルに遷移させ、前記入力信号の立ち上がりを検知した後に前記第1制御信号と前記第2制御信号との両方が前記第1論理レベルになったことに応じて前記第1信号を前記第1論理レベルから前記第2論理レベルに遷移させ、
前記位相検出回路は、前記第1制御信号と前記第2制御信号との両方が前記第1論理レベルになった際に、前記第1制御信号が前記第2制御信号よりも先に前記第1論理レベルに遷移した場合に、前記第3制御信号を前記第2論理レベルから前記第1論理レベルに遷移させ、前記第2制御信号が前記第1制御信号よりも先に前記第1論理レベルに遷移した場合に、前記第4制御信号を前記第2論理レベルから前記第1論理レベルに遷移させ、
前記セレクタ回路は、前記第3制御信号が前記第1論理レベルである際に、前記キャリア信号と同相の前記キャリア信号に基づいた信号を前記内部キャリア信号として生成し、前記第4制御信号が前記第1論理レベルである際に、前記キャリア信号と位相が反転した前記キャリア信号に基づいた信号を前記内部キャリア信号として生成する、
請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1信号生成部は、
前記第1制御信号と前記第2制御信号との否定論理積演算を実行し、演算結果を第2信号として出力する第1否定論理積回路と、
前記第2信号と前記内部キャリア信号との否定論理和演算を実行し、演算結果が前記第1駆動回路によって増幅及び出力される第1否定論理和回路と、
をさらに備え、
前記第1駆動回路は、前記第1論理和回路の出力と前記第1否定論理和回路の出力とを差動増幅する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1信号生成部は、前記入力信号の立ち上がりを検出した後に、前記入力信号の立ち下がりを検出すると、前記第2論理レベルの信号を前記第1駆動回路に出力する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧機器と低電圧機器とを接続する通信装置が備える素子として、ガルバニック絶縁素子が知られている。ガルバニック絶縁素子は、高電圧機器と低電圧機器との間のノイズの回り込みや感電を回避するために使用され、入出力の電気的絶縁を確保しつつ信号のみを伝達することが出来る。ガルバニック絶縁素子が信号の伝達に用いる媒体としては、例えば光、電界、及び磁界が挙げられる。
【0003】
例えば、信号の伝達媒体として光信号を用いるガルバニック絶縁素子としては、光発生素子としての発光ダイオード(LED)と、光受信素子としてのフォトダイオード(PD)とを備えるフォトカプラが知られている。フォトカプラは、LEDとPDとの間に設けられた樹脂により、電気的絶縁を確保している。このため、フォトカプラは、絶縁機能に対する信頼性が高い。
【0004】
しかしながら、通信装置が複数の信号を伝送する場合には、フォトカプラが、伝送される信号の数と同数のLED及びPDの組を備える必要がある。一つのフォトカプラに複数のLEDと複数のPDとが実装された場合、伝送される複数の信号の間でクロストークが発生し得る。また、フォトカプラに複数のLEDと複数のPDとを実装することは、組み立てが複雑になることによる信頼性の低下や、コストの増大の原因になり得る。
【0005】
これに対して、信号の伝達媒体として電界又は磁界を用いるガルバニック絶縁素子は、上記のフォトカプラの懸念点を解消し得る。信号の伝達媒体として電界又は磁界を用いるガルバニック絶縁素子は、デジタルアイソレータとも呼ばれている。電界が信号の伝達媒体として使用される場合には、例えば絶縁層の両端に金属板が形成された絶縁容量が使用される。磁界が信号の伝達媒体として使用される場合には、例えば絶縁層の両端にコイルを形成した絶縁トランスが使用される。絶縁容量や絶縁トランスを同一の半導体基板上に複数個実装することは、容易に実現され得る。従って、複数の信号を伝送する通信装置は、ガルバニック絶縁素子としてデジタルアイソレータを使用することによって、フォトカプラを使用する場合よりもコストを抑制することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5952849号明細書
【文献】米国特許第7302247号明細書
【文献】米国特許第9660848号明細書
【文献】米国特許第7376212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多チャンネルの通信装置におけるジッタを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の通信装置は、発振器と、信号生成回路と、絶縁素子と、出力回路と、を含む。発振器は、外部から入力された少なくとも1つの入力信号が第1論理レベルである場合に、キャリア信号を出力する。信号生成回路は、信号生成部と、駆動回路とを含む。信号生成部は、入力信号の立ち上がりを検知すると1つ目のパルスを生成し、入力信号の立ち上がりが検知された時にキャリア信号が第1論理レベルと異なる第2論理レベルである場合に、キャリア信号と同相のキャリア信号に基づく信号を2つ目のパルス以降の信号として出力し、入力信号の立ち上がりが検知された時にキャリア信号が第1論理レベルである場合に、キャリア信号と位相が反転したキャリア信号に基づく信号を2つ目以降のパルス信号として出力する。駆動回路は、信号生成部の出力信号を増幅する。絶縁素子は、駆動回路の出力に接続される。出力回路は、駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第1絶縁素子を介して受信し、外部に出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る通信装置の備えるRF発生器の回路構成の一例を示す回路図。
【
図3】第1実施形態に係る通信装置の備える信号生成回路の回路構成の一例を示す回路図。
【
図4】第1実施形態に係る通信装置の備える絶縁素子の回路構成の一例を示す回路図。
【
図5】入力信号の変調動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図6】第1実施形態に係る通信装置における動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図7】第1実施形態の比較例に係る通信装置における動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図8】第1実施形態の第1変形例に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図9】第1実施形態の第2変形例に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図10】第1実施形態の第3変形例に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図11】第2実施形態に係る通信装置の備える信号生成回路の回路構成の一例を示す回路図。
【
図12】第2実施形態に係る通信装置の備える絶縁素子の回路構成の一例を示す回路図。
【
図13】第2実施形態に係る通信装置における動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図14】第2実施形態の変形例に係る通信装置の備える絶縁素子の回路構成の一例を示す回路図。
【
図15】第2実施形態の変形例に係る通信装置の備える信号生成回路の回路構成の一例を示す回路図。
【
図16】第3実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図17】第3実施形態の第1変形例に係る通信装置の備えるRF発生器の回路構成の一例を示す回路図。
【
図18】第3実施形態の第1変形例に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図19】第3実施形態の第2変形例に係る通信装置の備えるRF発生器の回路構成の一例を示す回路図。
【
図20】第3実施形態の第2変形例に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図21】第3実施形態の第2変形例に係る通信装置の備えるRF発生器の回路構成の一例を示す回路図。
【
図22】第3実施形態の第3変形例に係る通信装置の備えるRF発生器の回路構成の一例を示す回路図。
【
図23】第4実施形態に係る通信装置の備える信号生成回路の回路構成の一例を示す回路図。
【
図24】第4実施形態に係る通信装置における動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図25】第4実施形態に係る通信装置における動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図26】第4実施形態に係る通信装置における動作の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0011】
尚、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。参照符号を構成する文字の後の数字は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。同様に、参照符号を構成する数字の後の文字は、同じ数字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。
【0012】
[1]第1実施形態
第1実施形態は、ガルバニック絶縁素子を用いて2つの信号を伝送する通信装置、すなわち多チャンネルの通信装置に関する。以下に、ガルバニック絶縁素子として絶縁トランスが使用される場合を一例として、第1実施形態に係る通信装置1について説明する。
【0013】
[1-1]構成
[1-1-1]通信装置1の全体構成について
図1は、第1実施形態に係る通信装置1の構成の一例を示している。
図1に示すように、第1実施形態に係る通信装置1は、例えば、入力回路10A及び10B、RF(Radio Frequency)発生器20、信号生成回路30A及び30B、絶縁素子40A及び40B、受信回路50A及び50B、並びに出力回路60A及び60Bを備えている。
【0014】
入力回路10は、外部の機器からの信号の通信装置1への入力に使用され、例えばバッファ回路を含んでいる。入力回路10A及び10Bには、外部の装置から、入力信号IN1及びIN2がそれぞれ入力される。そして、入力回路10Aは、入力信号IN1に基づく入力信号Vin1を、RF発生器20及び信号生成回路30Aに出力する。入力回路10Bは、入力信号IN2に基づく入力信号Vin2を、RF発生器20及び信号生成回路30Bに出力する。
【0015】
RF発生器20は、例えばリングオシレータ回路のような信号発生器である。RF発生器20は、入力回路10Aから入力された入力信号Vin1と、入力回路10Bから入力された入力信号Vin2とに基づいて、キャリア信号CSを生成及び出力する。キャリア信号CSは、信号生成回路30A及び30Bに入力される。
【0016】
信号生成回路30は、キャリア信号CSを用いて、入力回路10から入力された入力信号Vin(変調信号)を変調する。そして、信号生成回路30は、変調された電気信号(被変調信号)を絶縁素子40に出力する。具体的には、信号生成回路30Aは、入力信号Vin1を変調して、絶縁素子40Aに出力する。信号生成回路30Bは、入力信号Vin2を変調して、絶縁素子40Bに出力する。
【0017】
絶縁素子40は、OOK(On-Off Keying)方式で使用されるガルバニック絶縁素子であり、例えば絶縁トランスを含んでいる。第1実施形態において、絶縁素子40は、磁界結合を利用して信号を伝送する。絶縁素子40Aは、信号生成回路30Aから入力された電気信号を、受信回路50Aに伝送する。絶縁素子40Bは、信号生成回路30Bから入力された電気信号を、受信回路50Bに伝送する。
【0018】
受信回路50は、復調回路を含んでいる。受信回路50Aは、絶縁素子40Aから伝送された電気信号を検知及び復調して、出力回路60Aに出力する。受信回路50Bは、絶縁素子40Bから伝送された電気信号を検知及び復調して、出力回路60Bに出力する。
【0019】
出力回路60は、通信装置1内で絶縁素子40を介して伝送された信号の外部への出力に使用され、例えばバッファ回路を含んでいる。出力回路60Aは、受信回路50Aから入力された信号に基づいて、出力信号OUT1を外部の機器に出力する。出力回路60Bは、受信回路50Bから入力された信号に基づいて、出力信号OUT2を外部の機器に出力する。
【0020】
以上で説明された通信装置1の構成では、入力回路10A、信号生成回路30A、絶縁素子40A、受信回路50A、及び出力回路60Aの組が、通信装置1の第1チャンネルに対応している。同様に、入力回路10B、信号生成回路30B、絶縁素子40B、受信回路50B、及び出力回路60Bの組が、通信装置1の第2チャンネルに対応している。このように、第1実施形態に係る通信装置1は、2種類の信号を伝送し得る、2チャンネルの通信装置である。
【0021】
また、第1実施形態に係る通信装置1では、例えば、入力回路10A及び10B、RF発生器20、並びに信号生成回路30A及び30Bの組が、第1の基板に実装された半導体素子によって構成される。一方で、絶縁素子40A及び40B、受信回路50A及び50B、並びに出力回路60A及び60Bの組は、第1の基板と異なる第2の基板に実装された半導体素子によって構成される。第1の基板に設けられた回路と、第2の基板に設けられた回路とは、例えばボンディングワイヤを用いて電気的に接続される。
【0022】
以下では、第1の基板に実装された回路と第1の基板との組を、チップCP1と呼び、第2の基板に実装された回路と第2の基板との組を、チップCP2と呼ぶ。例えば、チップCP1内の回路は、グラウンドGND1に接続され、チップCP1内の回路には、電源電圧VDD1が印加される。チップCP2内の回路は、グラウンドGND2に接続され、チップCP2内の回路には、電源電圧VDD2が印加される。例えば、電源電圧VDD1及びVDD2の一方が高電圧系、他方が低電圧系に対応している。
【0023】
[1-1-2]通信装置1の回路構成について
以下に、第1実施形態に係る通信装置1における、RF発生器20、信号生成回路30、及び絶縁素子40のそれぞれの回路構成の一例について順に説明する。
【0024】
(RF発生器20の回路構成について)
図2は、第1実施形態に係る通信装置1の備えるRF発生器20の回路構成の一例を示している。
図2に示すように、第1実施形態におけるRF発生器20は、例えば、OR回路21、NAND回路22、並びにインバータ23、24及び25を含んでいる。
【0025】
OR回路21の第1入力端には、入力回路10Aから出力された入力信号Vin1が入力される。OR回路21の第2入力端には、入力回路10Bから出力された入力信号Vin2が入力される。OR回路21の出力端が、NAND回路22の第1入力端に接続される。NAND回路22の出力端が、インバータ23の入力端に接続される。インバータ23の出力端が、インバータ24の入力端に接続される。インバータ24の出力端が、インバータ25の入力端とNAND回路22の第2入力端とに接続される。インバータ25から出力される信号が、キャリア信号CSに対応している。
【0026】
ここで、RF発生器20によるキャリア信号CSの生成方法について簡潔に説明する。以下では、NAND回路22の出力端に対応するノードのことを“N1”と呼ぶ。インバータ23の出力端に対応するノードのことを“N2”と呼ぶ。インバータ24の出力端に対応するノードのことを“N3”と呼ぶ。
【0027】
入力信号Vin1及びVin2の両方が“L”レベルである場合、OR回路21は、“L”レベルの電圧を出力する。そして、第1入力端に“L”レベルの電圧が入力されたNAND回路22は、“H”レベルの電圧を出力する。これにより、ノードN1、N2及びN3の電圧が、それぞれ“H”、“L”及び“H”レベルになり、インバータ25が、“L”レベルの電圧を出力する。また、ノードN3の電圧が“H”レベルである場合、NAND回路22の第1入力端と第2入力端との入力電圧が異なるため、NAND回路22の出力が“H”レベルに維持される。これにより、入力信号Vin1及びVin2の両方が“L”レベルである場合に、キャリア信号CSは“L”レベルを維持する。
【0028】
一方で、入力信号Vin1及びVin2の少なくとも一つが“H”レベルである場合、OR回路21は、“H”レベルの電圧を出力する。そして、第1入力端に“H”レベルの電圧が入力されたNAND回路22は、例えば第2入力端の電圧が “Hレベルのときに、“L”レベルの電圧を出力する。これにより、ノードN1、N2及びN3の電圧が、それぞれ“L”、“H”及び“L”レベルになり、インバータ25が、“H”レベルの電圧を出力する。
【0029】
また、ノードN3の電圧が“L”レベルになった場合、NAND回路22の第1入力端に “H”レベルの電圧が、第2入力端に“L”レベル入力されるため、NAND回路22の出力電圧が、“L”レベルから“H”レベルに変化する。これにより、ノードN1、N2及びN3の電圧が、それぞれ“H”、“L”及び“H”レベルになり、インバータ25が、“L”レベルの電圧を出力する。入力信号Vin1及びVin2の少なくとも一方が“H”レベルである場合には、これらの動作が繰り返し行われ、キャリア信号CSの出力が発振する。
【0030】
以上のように、第1実施形態におけるRF発生器20は、入力信号Vin1と入力信号Vin2とのOR信号を用いて、キャリア信号CSを生成することが出来る。尚、以上で説明されたRF発生器20の回路構成は、あくまで一例である。RF発生器20は、入力信号Vin1及びVin2の少なくとも一つが“H”レベルになったことに基づいてキャリア信号CSを生成することが可能であれば、その他の回路構成であっても良い。
【0031】
(信号生成回路30の回路構成について)
図3は、第1実施形態に係る通信装置1の備える信号生成回路30の回路構成の一例を示している。
図3に示すように、第1実施形態における信号生成回路30は、例えば、信号生成部31、及び駆動部32を含んでいる。信号生成回路30は、例えば、AND回路311、遅延回路312、NAND回路313、及びAND回路314を含んでいる。
駆動部32は、例えば、駆動回路321を含んでいる。
【0032】
AND回路311の第1入力端には、入力信号Vin(変調信号)が入力される。AND回路311の第2入力端には、遅延回路312を介して遅延された入力信号Vinに対応する入力信号Vindが入力される。遅延回路312は、例えば直列に接続された遇数個のインバータである。遅延回路312としては、その他の回路が使用されても良い。
【0033】
NAND回路313の第1入力端には、AND回路311の出力端が接続される。NAND回路313の第2入力端には、キャリア信号CSが入力される。AND回路314の第1入力端には、入力信号Vinが入力される。AND回路314の第2入力端には、NAND回路313の出力端が接続される。AND回路314は、被変調信号MSを出力する。駆動回路321は、被変調信号MSを増幅して、出力電圧Voutを出力する。
【0034】
以上で説明された第1実施形態における信号生成回路30は、入力信号Vinをキャリア信号CSに基づいて変調させることが出来る。例えば、信号生成回路30の出力電圧Voutは、入力信号Vinが“L”レベルである場合に“L”レベルの電圧になり、入力信号Vinが“H”レベルである場合にRF発生器20によって生成されたキャリア信号CSに基づいた電圧になる。尚、以上で説明された信号生成回路30の回路構成は、あくまで一例である。信号生成回路30は、入力信号Vinをキャリア信号CSに基づいて変調させることが可能であれば、その他の回路構成であっても良い。
【0035】
(絶縁素子40の回路構成について)
図4は、第1実施形態に係る通信装置1の備える絶縁素子40の回路構成の一例を示している。
図4に示すように、第1実施形態における絶縁素子40は、例えば、コイル41及び42を含んでいる。
【0036】
コイル41とコイル42とは、絶縁体層ISOを介して対面している。絶縁体層ISOとしては、酸化膜が使用されても良いし、ポリイミドが使用されても良い。コイル41の一端には、チップCP1内の信号生成回路30によって、出力電圧Voutが印加される。コイル41の他端は、例えばチップCP1で接地される。コイル42の一端は、受信回路50に接続される。コイル42の他端は、例えばチップCP2で接地される。
【0037】
以上で説明された第1実施形態における絶縁素子40では、コイル41とコイル42との間に磁界結合が形成される。これにより、コイル41に印加された出力電圧Voutは、磁界結合によってコイル42に伝送され、伝送された出力電圧Voutが受信回路50に印加される。尚、以上で説明された絶縁素子40の回路構成は、あくまで一例である。絶縁素子40は、出力電圧Voutを磁界結合を用いて伝送することが可能であれば、その他の回路構成であっても良い。
【0038】
[1-2]動作
[1-2-1]入力信号の変調について
絶縁トランス又は絶縁容量を用いた通信方法は、入力信号を高周波帯に変調することによって、効率を向上させることが出来る。デジタルアイソレータの変調方式としては、エッジエンコード方式や、OOK(On Off Keying)方式が知られている。低速通信時の消費電流の観点ではエッジエンコード方式が有利であり、高速通信時の消費電流および伝達遅延時間の観点では、OOK方式が有利である。第1実施形態に係る通信装置1は、OOK方式を使用する。
【0039】
図5は、入力信号の基本的な変調動作の一例を示している。
図5に示すように、入力信号は、“L”レベル又は“H”レベルの電圧であり、1ビットの情報を含んでいる。入力信号が“H”レベルになると、RF発生器20がオン状態になり、入力信号が“L”レベルになると、RF発生器20がオフ状態になる。RF発生器20は、入力信号が“H”レベルになったことに基づいて動作するため、キャリア信号は、入力信号が“H”レベルである期間において発振する。被変調信号は、入力信号が“H”レベルである期間において、キャリア信号に基づいて生成される信号である。このため、被変調信号は、入力信号が“H”レベルである期間において、例えばキャリア信号と同様に発振する。
【0040】
[1-2-2]通信装置1の動作について
図6は、第1実施形態に係る通信装置1における動作のタイミングチャートの一例を示している。“MSA”は、入力信号Vin1に対応する被変調信号のことを示している。“MSB”は、入力信号Vin2に対応する被変調信号を示している。(1)~(4)は、入力信号Vinが“L”レベルから“H”レベルに遷移する際のキャリア信号CSの位相を示している。
【0041】
図6(1)に示すように、入力信号Vin2が“L”レベルの状態で入力信号Vin1が“H”レベルになると、RF発生器20がオン状態になり、キャリア信号CSが発振する。このとき、信号生成回路30Aでは、AND回路314の第1入力端の電圧が、入力信号Vin1に基づいて“H”レベルになり、AND回路314の第2入力端の電圧が、キャリア信号CSと、AND回路311と、遅延回路312と、NAND回路313とに基づいたレベルになる。
【0042】
具体的には、AND回路311は、遅延回路312による遅延時間tdが経過するまでは、第1入力端に“H”レベルの電圧が印加され、且つ第2入力端に“L”レベルの電圧が印加されるため、“L”レベルの信号を出力する。これにより、NAND回路313の第1入力端の電圧が“L”レベルになるため、NAND回路313は、キャリア信号CSの状態に依らずに、“H”レベルの電圧をAND回路314の第2入力端に入力する。その結果、AND回路314の出力が、“H”レベルに維持される。
【0043】
一方で、遅延時間tdが経過した後には、AND回路311の第1入力端及び第2入力端のそれぞれに“H”レベルの電圧が印加される。その結果、AND回路311が“H”レベルの信号を出力し、NAND回路313の第1入力端の電圧が“H”レベルになる。キャリア信号CSは発振しているため、NAND回路313は、AND回路314の第2入力端に対して、キャリア信号CSの反転信号を入力する。その結果、AND回路314の出力が、キャリア信号CSに基づいて発振する。
【0044】
以上のように、AND回路314の出力、すなわち被変調信号MSAは、例えば入力信号Vin1が“H”レベルになったことに基づいて“H”レベルになり、その後、遅延時間tdが経過するまで“H”レベルを維持する。そして、遅延時間tdが経過すると、被変調信号MSAは、キャリア信号CSに基づいて発振する。それから、入力信号Vin1が“L”レベルになると、RF発生器20がオフ状態になり、キャリア信号CSの発振と、被変調信号MSAの発振とが停止する。
【0045】
図6(2)に示すように、入力信号Vin1が“L”レベルの状態で入力信号Vin2が“H”レベルになると、RF発生器20がオン状態になり、キャリア信号CSが発振する。この際の信号生成回路30Bの動作は、
図6(1)における信号生成回路30Aの動作と同様である。
図6(1)及び(2)のそれぞれでは、“H”レベルになる入力信号Vinに基づいてキャリア信号CSが発振する。すなわち、入力信号Vinとキャリア信号CSとの同期がとれるため、入力信号Vinが“L”レベルから“H”レベルに遷移する際のキャリア信号CSの位相が0°になる。
【0046】
図6(3)に示すように、入力信号Vin2が“H”レベルの状態で入力信号Vin1が“H”レベルになると、入力信号Vin1は、既に発振しているキャリア信号CSに基づいて変調される。つまり、RF発生器20のキャリア信号CSと入力回路10Aの入力信号Vin1とが、非同期の関係になる。このため、入力信号Vin1が“L”レベルから“H”レベルに遷移するタイミングに基づいて、当該タイミングとキャリア信号CSの位相との間でずれが生じ得る。
図6(3)は、入力信号Vin1が入力された際のキャリア信号CSの位相が90°である場合を示している。
【0047】
このような場合においても、信号生成回路30Aでは、AND回路314が、入力信号Vin1が“H”レベルになったことに基づいて直ちに“H”レベルの電圧を出力する。すなわち、被変調信号MSAは、入力信号Vin1が“H”レベルになったことに基づいて“H”レベルになる。そして、被変調信号MSAは、遅延時間tdが経過した後に、キャリア信号CSに基づいて発振する。
【0048】
そして、入力信号Vin1及びVin2のそれぞれが“H”レベルになった後に、入力信号Vin2のみが“L”レベルに変化している。この場合、入力信号Vin2が“H”レベルから“L”レベルに遷移したことに基づいて、被変調信号MSBの発振が停止する。一方で、入力信号Vin1は“H”レベルを維持しているため、RF発生器20はオン状態を維持する。つまり、いずれかの入力信号Vinが“H”レベルである期間では、RF発生器20は、キャリア信号CSを発振させた状態に維持する。
【0049】
図6(4)に示すように、入力信号Vin1が“H”レベルの状態で入力信号Vin2が“H”レベルになると、入力信号Vin2は、既に発振しているキャリア信号CSに基づいて変調される。つまり、RF発生器20のキャリア信号CSと入力回路10Bの入力信号Vin2とが非同期の関係になる。
図6(4)は、
図6(3)と同様に、入力信号Vin2が入力された際のキャリア信号CSの位相が90°である場合を示している。
【0050】
このような場合においても、信号生成回路30Bでは、AND回路314が、入力信号Vin2が“H”レベルになったことに基づいて直ちに“H”レベルの電圧を出力する。すなわち、被変調信号MSBは、入力信号Vin2が“H”レベルになったことに基づいて“H”レベルになる。そして、被変調信号MSBは、遅延時間tdが経過した後に、キャリア信号CSに基づいて発振する。
【0051】
それから、再び入力信号Vin1及びVin2のそれぞれが“H”レベルになった後に、入力信号Vin1のみが“L”レベルに変化している。この場合、入力信号Vin1が“H”レベルから“L”レベルに遷移したことに基づいて、被変調信号MSAの発振が停止する。一方で、入力信号Vin2は“H”レベルを維持しているため、RF発生器20はオン状態を維持する。それから、入力信号Vin2が“L”レベルになると、被変調信号MSBの発振が停止する。さらに、入力信号Vin1及びVin2のそれぞれが“L”レベルになると、RF発生器20がオフ状態になるため、キャリア信号CSが“L”レベルになる。
【0052】
以上のように、第1実施形態に係る通信装置1では、入力信号Vinが“H”レベルになったことに基づいて、対応する被変調信号MSが直ちに“H”レベルになる。そして、遅延時間tdが経過した後、すなわち遅延時間td分のパルスが印加された後に、被変調信号MSが、キャリア信号CSに基づいたパルスになる。
【0053】
[1-3]第1実施形態の効果
以上で説明された第1実施形態に係る通信装置1に依れば、1つのRF発生器を用いた通信装置におけるジッタを抑制することが出来る。以下に、第1実施形態に係る通信装置1における効果の詳細について説明する。
【0054】
OOK方式を用いた通信装置の変調方法として、RFキャリア(例えば、キャリア信号CS)と入力信号とのAND信号を利用する方法が知られている。通信装置が多チャンネルである場合、RFキャリアを発生させるRF発生器は、チャンネル毎に設けられることが好ましい。一方で、RF発生器を複数設けることは、消費電力の増大や、チップ面積の増加に繋がり得る。そこで、多チャンネルの通信装置において、消費電力を抑制するために、1つのRF発生器を複数のチャンネルで共有する方法が考えられている。
【0055】
ここで、第1実施形態の比較例として、複数の入力を有する通信装置が、1つのRF発生器20を利用し、且つ入力信号Vinとキャリア信号CSとがAND演算された信号を被変調信号MSとして使用する場合について説明する。簡潔に述べると、第1実施形態の比較例に係る通信装置は、例えば、
図3で説明された信号生成回路30からAND回路311、遅延回路312、及びNAND回路313が省略され、RF発生器20がAND回路314の第2入力端に直結された構成を有する。
【0056】
図7は、第1実施形態の比較例に係る通信装置における動作のタイミングチャートの一例を示し、
図6と同様のタイミングで入力信号Vin1及びVin2が“H”レベルになる場合を例示している。入力信号Vin1及びVin2のAND信号を用いてRF発生器20が動作する場合、
図7に示すような被変調信号MSA及びMSBが得られる。
【0057】
図7に示すように、入力信号Vin1及びVin2のいずれも“L”レベルの状態から、入力信号Vin1及びVin2のいずれかが“H”レベルになった場合、例えば被変調信号MSA又はMSBがキャリア信号CSと同様に発振する。また、
図7(1)及び(2)に示すように、入力信号Vinとキャリア信号CSとの同期がとれている場合に、入力信号Vinが“L”レベルから“H”レベルに遷移するタイミングにおけるキャリア信号CSの位相は、0°になる。
【0058】
一方で、
図7(3)及び(4)に示すように、一方の入力信号Vinが“H”レベルである状態で、他方の入力信号Vinが“L”レベルから“H”レベルに遷移する場合、入力信号Vinとキャリア信号CSとが非同期になる。この場合には、入力信号Vinが“L”レベルから“H”レベルに遷移するタイミングに基づいて、当該タイミングとキャリア信号CSの位相との間でずれが生じ得る。
図7(3)は、入力信号Vin1が入力された際のキャリア信号CSの位相が90°である場合を示し、
図7(4)は、入力信号Vin2が入力された際のキャリア信号CSの位相が90°である場合を示している。
【0059】
第1実施形態の比較例に係る通信装置1では、入力信号Vinの遷移タイミングとキャリア信号CSとの同期が取れている場合、すなわちRF発生器20がオフ状態の時に入力信号Vinが入力される場合に、キャリア信号CSの立ち上がりの波形と被変調信号MSの立ち上がりの波形とをほぼ同じにすることが出来る。この場合、通信装置1は、出力信号OUT1及びOUT2の波形をほぼ同じにすることが出来る。
【0060】
一方で、第1実施形態の比較例に係る通信装置1では、RF発生器20がオン状態の時に入力信号Vinが入力される場合に、入力信号Vinの遷移タイミングとキャリア信号CSとの同期が取れないため、入力信号Vinの立ち上がりとキャリア信号CSの位相との間でずれが生じ得る。入力信号Vinの立ち上がりとキャリア信号CSの位相とがずれた場合、AND回路314に入力されるキャリア信号CSの電圧の値にばらつきが生じ、被変調信号MSの立ち上がりの波形の形状がランダムになる。このような被変調信号MSの立ち上がりの波形の形状のばらつきは、出力信号OUT1及びOUT2の波形のばらつきに反映される。そして、入力信号Vinとキャリア信号CSとの動作タイミングに基づく被変調信号MSの立ち上がりの波形の変化が、ジッタの発生や、受信回路50の動作安定性の低下の要因となる。
【0061】
これに対して、第1実施形態に係る通信装置1は、遅延回路312を有する信号生成回路30を入力信号Vinの変調に利用している。簡潔に述べると、第1実施形態に係る通信装置1は、第1入力端に入力信号Vinが入力され、第2入力端に遅延回路312を介した入力信号Vinが入力されるAND回路311と、第1入力端にAND回路311の出力が接続され、第2入力端にRF発生器20の出力が接続され、出力端がAND回路314の第2入力端に接続されたNAND回路313を備えている。
【0062】
第1実施形態における信号生成回路30で、入力信号Vinが“H”レベルになると、AND回路314が、キャリア信号CSの状態に依らずに、被変調信号MSを“H”レベルにする。また、RF発生器20が、入力信号Vinの入力に伴いオン状態になる。一方で、AND回路311、遅延回路312、及びNAND回路313によって、キャリア信号CSに基づいて発振した信号のAND回路314への入力が遅延される。このため、被変調信号MSは、入力信号Vinが“H”レベルになってから遅延回路312による遅延時間tdが経過するまで、“H”レベルに維持される。そして、遅延時間tdが経過すると、AND回路311の出力が“H”レベルになり、NAND回路313が、キャリア信号CSに基づいて発振した信号を出力する。その結果、入力信号Vinは、“H”レベルになってから遅延時間tdが経過すると、キャリア信号CSに基づいて変調される。
【0063】
以上のように、第1実施形態に係る通信装置1は、RF発生器20がオン状態であるか否かに依らずに、入力信号Vinに基づいて被変調信号MSを“H”レベルにする。つまり、第1実施形態に係る通信装置1では、比較例と異なり、入力信号Vinとキャリア信号CSとが同期している場合と非同期の場合とのそれぞれにおいて、被変調信号MSの立ち上がりの波形が同じになる。
【0064】
これにより、第1実施形態に係る通信装置1では、被変調信号MSの立ち上がりのバラツキが抑制されるため、出力信号OUT1及びOUT2の波形のばらつきが抑制される。そして、第1実施形態に係る通信装置1は、遅延回路312による遅延時間tdの経過後に、キャリア信号CSに基づいて発振した信号をAND回路314に入力することが出来るため、比較例と同様にOOK方式の通信を実行することが出来る。
【0065】
その結果、第1実施形態に係る通信装置1は、出力信号OUTのジッタを抑制することが出来、受信回路50の動作を安定させることが出来る。従って、第1実施形態に係る通信装置1は、多チャンネル構成でOOK方式を用いて信号伝送するデジタルアイソレータにおいて、1つのRFキャリア生成回路を用いて高品質の信号を伝送することが出来る。また、第1実施形態に係る通信装置1は、1つのRF発生器20のみで複数のチャンネルを動作せるため、消費電力を抑制し、且つチップ面積を縮小することが出来る。
【0066】
尚、第1実施形態に係る通信装置1は、上述したように、各絶縁デバイスに関連するキャリア信号CSを同期して使用している。そこで、第1実施形態に係る通信装置1では、各絶縁デバイスの位相が調整されても良い。第1実施形態に係る通信装置1は、各絶縁デバイスの位相が調整されることによって、EMI(Electro Magnetic Interference)を抑制することが出来る。
【0067】
[1-4]第1実施形態の変形例
以上で説明された第1実施形態に係る通信装置1は、種々の変形が可能である。以下に、第1実施形態の第1変形例、第2変形例、及び第3変形例について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0068】
[1-4-1]第1実施形態の第1変形例
図8は、第1実施形態の第1変形例に係る通信装置1の構成の一例を示している。
図8に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る通信装置1は、第1実施形態に対してチップCP1に含まれる回路と、チップCP2に含まれる回路との組み合わせが異なる。
【0069】
具体的には、第1実施形態の第1変形例に係る通信装置1では、入力回路10A及び10B、RF発生器20、信号生成回路30A及び30B、並びに絶縁素子40A及び40Bの組が、チップCP1に実装される。一方で、受信回路50A及び50B、並びに出力回路60A及び60Bの組は、チップCP2に実装される。
【0070】
このように、通信装置1において、絶縁素子40A及び40Bは、チップCP2ではなく、チップCP1に実装されても良い。通信装置1は、チップCP1及びCP2のいずれに絶縁素子40A及び40Bを実装させたとしても、第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。このように、1つの絶縁素子40がチャンネル毎に設けられ、且つチップCP1及びCP2のどちらかに1つの絶縁素子40が実装される通信装置1の方式は、シングル絶縁方式とも呼ばれる。
【0071】
[1-4-2]第1実施形態の第2変形例
図9は、第1実施形態の第2変形例に係る通信装置1の構成の一例を示している。
図9に示すように、絶縁素子40A及び40Bは、チップCP1及びCP2の両方に実装されても良い。
【0072】
具体的には、第1実施形態の第2変形例に係る通信装置1では、入力回路10A及び10B、RF発生器20、信号生成回路30A及び30B、並びに絶縁素子40A-1及び40B-1の組が、チップCP1に実装される。一方で、絶縁素子40A-2及び40B-2、受信回路50A及び50B、並びに出力回路60A及び60Bの組は、チップCP2に実装される。
【0073】
そして、信号生成回路30Aと受信回路50Aとの間に、絶縁素子40A-1及び40B-2が直列に接続される。信号生成回路30Bと受信回路50Bとの間に、絶縁素子40B-1及び40B-2が直列に接続される。言い換えると、チップCP1内の信号生成回路30とチップCP2内の受信回路50との間に、チップCP1の絶縁素子40とチップCP2の絶縁素子40とが直列に接続される。このように、2つの絶縁素子40がチャンネル毎に設けられ、且つチップCP1及びCP2の両方に絶縁素子40が実装される通信装置1の方式は、ダブル絶縁方式とも呼ばれる。
【0074】
[1-4-3]第1実施形態の第3変形例
図10は、第1実施形態の第3変形例に係る通信装置1の構成の一例を示している。
図10に示すように、第1実施形態の第3変形例に係る通信装置1は、第1実施形態に係る通信装置1に対して、入力回路10C及び10D、信号生成回路30C及び30D、絶縁素子40C及び40D、受信回路50C及び50D、並びに出力回路60C及び60Dが追加された構成を有している。
【0075】
入力回路10C及び10Dには、外部の装置から、入力信号IN3及びIN4がそれぞれ入力される。そして、入力回路10C及び10Dは、それぞれ入力信号Vin3及びVin4を出力する。入力信号Vin3は、RF発生器20と信号生成回路30Cとに入力される。入力信号Vin4は、RF発生器20と信号生成回路30Dとに入力される。
【0076】
第1実施形態の第3変形例におけるRF発生器20では、図示が省略されているが、OR回路21の第1入力端、第2入力端、第3入力端、及び第4入力端に、それぞれ入力信号Vin1、Vin2、Vin3、及びVin4が入力される。そして、第1実施形態の第3変形例におけるRF発生器20は、入力信号Vin1、Vin2、Vin3、及びVin4に基づいて、キャリア信号CSを生成及び出力する。第1実施形態の第3変形例におけるRF発生器20のその他の構成及び動作は、第1実施形態と同様である。
【0077】
信号生成回路30Cは、入力信号Vin3を変調して、絶縁素子40Cに出力する。信号生成回路30Dは、入力信号Vin4を変調して、絶縁素子40Dに出力する。絶縁素子40Cは、信号生成回路30Cから入力された電気信号を、受信回路50Cに伝送する。絶縁素子40Dは、信号生成回路30Dから入力された電気信号を、受信回路50Dに伝送する。
【0078】
受信回路50Cは、絶縁素子40Cから伝送された電気信号を復調して、出力回路60Cに出力する。受信回路50Dは、絶縁素子40Dから伝送された電気信号を復調して、出力回路60Dに出力する。出力回路60Cは、受信回路50Cから入力された信号に基づいて、出力信号OUT3を外部の機器に出力する。出力回路60Dは、受信回路50Dから入力された信号に基づいて、出力信号OUT4を外部の機器に出力する。第1実施形態の第3変形例に係る通信装置1のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0079】
以上のように、第1実施形態の第3変形例に係る通信装置1は、入力回路10、信号生成回路30、絶縁素子40、受信回路50、及び出力回路60の組(チャンネル)を4つ備えている。そして、1つのRF発生器20が、各チャンネルに含まれた信号生成回路30によって共有されている。このように、第1実施形態におけるRF発生器20は、4つのチャンネルにおいて共有されても良く、N個(Nは3以上の整数)のチャンネルによって共有されても良い。通信装置1は、N個の入力信号のOR信号に基づいてRF発生器20を動作させることによって、第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0080】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る通信装置2は、信号生成回路30が差動信号を生成及び出力する構成を有する。以下に、第2実施形態に係る通信装置2について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0081】
[2-1]構成
図11は、第2実施形態に係る通信装置2の備える信号生成回路30の回路構成の一例を示している。
図11に示すように、第2実施形態における信号生成回路30は、第1実施形態における信号生成回路30に対して、信号生成部31にインバータ315及びAND回路316が追加され、駆動部32の駆動回路321がトランジスタ322、323、324、及び325、並びに電流源326に置き換えられた構成を有している。
【0082】
インバータ315の入力端は、NAND回路313の出力端に接続される。AND回路316の第1入力端には、入力信号Vinが入力される。AND回路316の第2入力端には、インバータ315の出力端が接続される。AND回路314及び316は、それぞれ被変調信号MS1及びMS2を出力する。被変調信号MS1及びMS2は、相補的な関係にあり、例えば、それぞれ正相及び逆相の信号に対応している。
【0083】
トランジスタ322及び323は、例えばP型のMOSトランジスタである。トランジスタ322及び323のそれぞれのソースには、電源電圧VDD1が印加される。トランジスタ322のゲートは、AND回路316の出力端に接続される。トランジスタ323のゲートは、AND回路314の出力端に接続される。
【0084】
トランジスタ324及び325は、例えばN型のMOSトランジスタである。トランジスタ324のドレインは、トランジスタ322のドレインに接続される。トランジスタ325のドレインは、トランジスタ323のドレインに接続される。トランジスタ324のゲートは、AND回路316の出力端に接続される。トランジスタ325のゲートは、AND回路314の出力端に接続される。
【0085】
電流源326の入力端は、トランジスタ324及び325のそれぞれのソースに接続される。電流源326の出力端は、グラウンドGND1に接続される。これにより、電流源326は、トランジスタ322及び324を介した電流と、トランジスタ323及び325を介した電流との合計を、一定に維持する。
【0086】
以上で説明された第2実施形態における信号生成回路30では、トランジスタ323及び325間のノードから出力電流Iout1が出力され、トランジスタ322及び324間のノードから出力電流Iout2が出力される。出力電流Iout1及びIout2は差動信号に対応し、当該差動信号が、絶縁素子40に入力される。
【0087】
言い換えると、信号生成回路30の信号生成部31は、入力回路10からの入力信号VinとRF発生器20からのキャリア信号CSとに基づいて、差動出力電圧を出力する。そして、信号生成回路30の駆動部32が、当該差動出力電圧を絶縁素子40に伝送する。第2実施形態では、絶縁トランスを駆動するための典型例として、信号生成回路30の駆動部32が、電流制限付きのHブリッジ型である場合が例示されている。
【0088】
図12は、第2実施形態に係る通信装置2の備える絶縁素子40の回路構成の一例を示している。
図12に示すように、第2実施形態における絶縁素子40は、第1実施形態に対して、コイル41及び42の接続等が異なる。
【0089】
具体的には、コイル41の一端には、チップCP1内の信号生成回路30によって、出力電流Iout1が供給される。コイル41の他端には、チップCP1内の信号生成回路30によって、出力電流Iout2が供給される。コイル42の一端及び他端は、受信回路50に接続される。
【0090】
以上で説明された第2実施形態における絶縁素子40では、第1実施形態と同様に、コイル41とコイル42との間に磁界結合が形成される。具体的には、このような絶縁トランスは、電流が入力されることによって、磁界を発生させる。この磁界の向きは、信号生成回路30内のトランジスタ323及び324がオン状態になって電流が流れる経路と、信号生成回路30内のトランジスタ322及び325がオン状態になって電流が流れる経路とが切り替えられることによって変化する。
【0091】
これにより、コイル41に印加された出力電流Iout1及びIout2に基づいた電圧が、磁界結合によってコイル42に伝送され、伝送された電圧が受信回路50に印加される。言い換えると、絶縁素子40は、コイル41とコイル42との間の電磁誘導の原理に基づいて被変調信号を伝達し、受信回路50に電圧を印加することが出来る。そして、受信回路50は、コイル42の一端及び他端の電圧に基づいた電圧を復調して、出力回路60に出力する。第2実施形態に係る通信装置2のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0092】
[2-2]動作
図13は、第2実施形態に係る通信装置2における動作のタイミングチャートの一例を示し、
図6と同様のタイミングで入力信号Vin1及びVin2が“H”レベルになる場合を例示している。“MS1A”及び“MS2A”は、入力信号Vin1に対する正相の被変調信号MSと逆相の被変調信号MSとをそれぞれ示している。“MS1B”及び“MS2B”は、入力信号Vin2に対する正相の被変調信号MSと逆相の被変調信号MSとをそれぞれ示している。
【0093】
図13に示すように、第2実施形態において、入力信号Vin1に対する正相の被変調信号MS1Aと入力信号Vin2に対する正相の被変調信号MS1Bとは、それぞれ第1実施形態で説明された被変調信号MSA及びMSBと同様に変化する。一方で、入力信号Vin1に対する逆相の被変調信号MS2Aと入力信号Vin2に対する逆相の被変調信号MS2Bとは、それぞれ被変調信号MS1A及びMS1Bの反転信号になる。
【0094】
簡潔に述べると、正相に対応するAND回路314は、第1実施形態のAND回路314と同様に動作する。そして、逆相に対応するAND回路316は、第1入力端に入力信号Vinが入力され、第2入力端にNAND回路313の出力がインバータ315によって反転された信号が入力される。すなわち、AND回路314の第1入力端とAND回路316の第1入力端とは、同じ信号が入力される。一方で、AND回路314の第2入力端とAND回路316の第2入力端とは、反転信号が入力される。その結果、AND回路316が、AND回路314の反転信号を出力する。
【0095】
また、第2実施形態に係る通信装置2では、入力信号Vinが“L”レベルである場合に、AND回路314及び316のそれぞれが“L”レベルの信号を出力する。すると信号生成回路30の駆動部32において、電源及びグラウンド間の電流経路が遮断される。その結果、信号生成回路30の駆動部32は、絶縁素子40に対する電圧の印加を停止する。第2実施形態に係る通信装置2のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0096】
[2-3]第2実施形態の効果
第2実施形態に係る通信装置2のように、Hブリッジ回路によって絶縁素子40が駆動される場合、差動信号が必要になる。しかしながら、入力信号Vinが“L”レベルである場合に、絶縁素子40に対して電流及び電圧を印加することは、消費電力の増加やノイズの発生の原因となるため好ましくない。
【0097】
これに対して、第2実施形態に係る通信装置2は、入力信号Vinが“L”レベルである場合に、被変調信号の正相電圧(すなわち、被変調信号MS1)と被変調信号の逆相電圧(すなわち、被変調信号MS2)とを共に“L”レベルにする。これにより、第2実施形態に係る通信装置2は、絶縁素子40をHブリッジ回路によって駆動する場合における、消費電力及びノイズを抑制することが出来る。
【0098】
さらに、第2実施形態に係る通信装置2は、第1実施形態と同様に、入力信号Vinとキャリア信号CSとが同期しているか否かに依らずに正相の被変調信号MS1の立ち上がりの波形を一定にすることが出来る。また、Hブリッジ回路を駆動するための被変調信号MS2は、被変調信号MS1の反転信号であるため、入力信号Vinが“H”レベルになった時点では“L”レベルである。従って、被変調信号MS2においても、ノイズの発生が抑制され得る。その結果、第2実施形態に係る通信装置2は、信号生成回路30による出力信号のジッタを抑制することが出来、動作の安定性を向上させることが出来る。
【0099】
[2-4]第2実施形態の変形例
第2実施形態に係る通信装置2は、種々の変形が可能である。例えば、信号生成回路30は、入力信号Vinが“L”レベルである場合に、被変調信号MS1及びMS2を“H”レベルとする回路構成を有していても良い。この場合、例えば、AND回路314及び316のそれぞれが、NAND回路に置き換えられる。このような場合においても、通信装置2は、第2実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0100】
また、第2実施形態に係る通信装置2は、第1実施形態の第3変形例と組み合わせることが出来る。
図14は、第2実施形態の変形例に係る通信装置2の備える絶縁素子40の回路構成の一例を示している。
図14に示すように、第2実施形態の変形例における絶縁素子40は、第2実施形態におけるコイル41及び42が、キャパシタ43及び44に置き換えられた構成を有している。
【0101】
具体的には、キャパシタ43の一方電極には、チップCP1内の信号生成回路30によって、出力電流Iout1が印加される。キャパシタ43の他方電極は、受信回路50の一端に接続される。キャパシタ44の一方電極には、チップCP1内の信号生成回路30によって、出力電流Iout2が供給される。キャパシタ44の他方電極は、受信回路50の他端に接続される。この場合、キャパシタ43の一方電極と他方電極との間に設けられる絶縁体と、キャパシタ44の一方電極と他方電極との間に設けられる絶縁体とのそれぞれが、絶縁体層ISOに対応している。
【0102】
第2実施形態の変形例における絶縁素子40では、キャパシタ43の一方電極と他方電極との間と、キャパシタ44の一方電極と他方電極との間とのそれぞれに、電界結合が形成される。これにより、キャパシタ43の一方電極に供給された出力電流Iout1に基づいた電圧が、電界結合によってキャパシタ43の他方電極に伝送され、伝送された出力電圧Voutが受信回路50の一端に印加される。同様に、キャパシタ44の一方電極に供給された出力電流Iout2に基づいた電圧が、電界結合によってキャパシタ44の他方電極に伝送され、伝送された出力電圧Voutが受信回路50の他端に印加される。
【0103】
このように、第2実施形態に係る通信装置2で使用される絶縁素子40は、絶縁トランスではなく絶縁容量であっても良い。通信装置2は、絶縁素子40として絶縁容量を用いた場合においても、第2実施形態と同様の効果を得ることが出来る。尚、以上で説明された絶縁素子40の回路構成は、あくまで一例である。絶縁素子40は、出力電流Iout1及びIout2を電界結合を用いて伝送することが可能であれば、その他の回路構成であっても良い。
【0104】
図15は、第2実施形態の変形例に係る通信装置2の備える信号生成回路30の回路構成の一例を示している。
図15に示すように、第2実施形態の変形例における信号生成回路30は、絶縁素子40が容量結合を用いることに伴い、第2実施形態における信号生成回路30から電流源326が省略された構成を有している。具体的には、トランジスタ324及び325のそれぞれのソースが、グラウンドGND1に接続される。
【0105】
このように、絶縁デバイスとして絶縁容量が使用される場合には、例えば、信号生成回路30の駆動部32にインバータ回路が使用される。そして、絶縁素子40内の絶縁容量(キャパシタ43及び44)が、当該インバータ回路による電圧により駆動される。第2実施形態の変形例に係る通信装置2のその他の構成及び動作は、第2実施形態と同様である。これにより、第2実施形態の変形例に係る通信装置2は、第2実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0106】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る通信装置3は、RF発生器20が複数種類のキャリア信号CSを生成及び出力する構成を有する。以下に、第3実施形態に係る通信装置3について、第1及び第2実施形態と異なる点を説明する。
【0107】
[3-1]構成
図16は、第3実施形態に係る通信装置3の構成の一例を示している。
図16に示すように、第3実施形態に係る通信装置3は、第1実施形態の第3変形例と同様に4つのチャンネルを有している。また、第3実施形態に係る通信装置3は、第1実施形態の第3変形例に対して、RF発生器20が4種類のキャリア信号CSを出力する点が異なっている。
【0108】
具体的には、第3実施形態におけるRF発生器20は、入力回路10Aから入力された入力信号Vin1と、入力回路10Bから入力された入力信号Vin2と、入力回路10Cから入力された入力信号Vin3と、入力回路10Dから入力された入力信号Vin4とに基づいて、キャリア信号CS1、CS2、CS3、及びCS4を生成及び出力する。キャリア信号CS1、CS2、CS3、及びCS4は、それぞれ信号生成回路30A、30B、30C、及び30Dに入力される。
【0109】
図17は、第3実施形態に係る通信装置3の備えるRF発生器20の回路構成の一例を示している。
図17に示すように、例えば、ノードN1から出力される信号が、キャリア信号CS4に対応している。ノードN2から出力される信号が、キャリア信号CS2に対応している。ノードN3から出力される信号が、キャリア信号CS1に対応している。インバータ25から出力される信号が、キャリア信号CS3に対応している。
【0110】
以上で説明されたRF発生器20では、キャリア信号CS1~CS4の位相が、互いに異なっている。第3実施形態において、ノードN1、N2、及びN3並びにインバータの出力端に対するキャリア信号CSの割り当ては、任意に変更され得る。第3実施形態に係る通信装置3のその他の構成は、第1実施形態の第3変形例と同様である。
【0111】
[3-2]第3実施形態の効果
Nビットの信号を入力することが可能な通信装置では、N個の信号生成回路30が同期して動作し、N個の絶縁素子40に同期したキャリア信号が流れる。その結果、信号生成回路30及び絶縁素子40から放射されるEMIもN倍になる。第1及び第2実施形態では、各信号生成回路30によって出力される信号(パルス)が、キャリア信号CSと完全に同期している。EMIを改善する方法としては、複数の絶縁素子40間で駆動する位相を変えることが考えられる。
【0112】
そこで、第3実施形態に係る通信装置3は、複数種類のキャリア信号CSを生成することが可能なRF発生器20を備えている。簡潔に述べると、第3実施形態におけるRF発生器20では、直列に接続されたインバータ23~25の何れかに接続された複数のノードのうち、異なる4箇所のノードから4種類のキャリア信号CS1~CS4が取り出される。そして、信号生成回路30A、30B、30C、及び30Dが、それぞれキャリア信号CS1、CS2、CS3、及びCS4を用いて入力信号Vinを変調し、対応する絶縁素子40を駆動する。
【0113】
ここで、絶縁素子x(絶縁素子40に対応し、xは1から4の整数)に流れるキャリア信号をAx・sin(ω0・t+φx)とする。この場合、4つの絶縁素子から放射されるEMI信号は、下記の(1)式のように表される。尚、ω0は、RF発生器20の発振角周波数に対応している。Axは、絶縁素子xに流れるキャリア信号の片側振幅に対応している。
【0114】
【0115】
(1)式において、φ1=0[rad]である場合、φ2=2π/3[rad]、φ3=π[rad]、φ4=4π/3[rad]となる。また、(1)式の合成振幅Aは、下記の(2A)式のように表され、(1)式の位相φは、下記の(2B)式のように表される。
【0116】
【0117】
【0118】
φ1=0[rad]、φ2=2π/3[rad]、φ3=π[rad]、及びφ4=4π/3[rad]である場合、A1=0且つA2=A3=A4=1の時に、最大の合成振幅A=2となる。一方で、φ1=φ2=φ3=φ4=0[rad]である場合、A1=A2=A3=A4=1の時に、最大の合成振幅A=4となる。これらの場合を比較すると、第3実施形態に係る通信装置3は、φ1=0[rad]、φ2=2π/3[rad]、φ3=π[rad]、及びφ4=4π/3[rad]にすることにより、合成振幅Aを半分にすることが出来、EMIを6dB改善することが出来る。
【0119】
同様の議論により、2倍波のEMIに関する議論も可能である。高調波のEMIを考慮する場合には、例えば(1)式が下記の(3A)式のように書き換えられる。
【0120】
【0121】
すなわち、2倍波の場合には、ω=2ω0となる。このため、基本波に対する場合に比べて、2倍波に対する位相は2倍になる。N倍波であるω=nω0が考慮された場合、絶縁素子xに流れるキャリア信号は下記の(3B)式のように表される。
【0122】
【0123】
また、(3B)式の合成振幅Aは、下記の(4A)式のように表され、(3B)式の位相φは、下記の(4B)式のように表される。
【0124】
【0125】
【0126】
φ1=0[rad]、φ2=2π/3[rad]、φ3=π[rad]、及びφ4=4π/3[rad]である場合、A1=A3=1、且つA2=A4=1の時に、最大の合成振幅A=2となる。一方で、φ1=φ2=φ3=φ4=0[rad]である場合、A1=A2=A3=A4=1の時に、最大の合成振幅A=4となる。これらの場合を比較すると、第3実施形態に係る通信装置3は、基本波に対する場合と同様に、φ1=0[rad]、φ2=2π/3[rad]、φ3=π[rad]、及びφ4=4π/3[rad]にすることにより、合成振幅Aを半分にすることが出来、高調波のEMIを6dB改善することが出来る。
【0127】
[3-3]第3実施形態の変形例
以上で説明された第3実施形態に係る通信装置3は、種々の変形が可能である。例えば、第3実施形態では、φ1=0[rad]、φ2=2π/3[rad]、φ3=π[rad]、及びφ4=4π/3[rad]という位相の異なる4種類のキャリア信号が使用された場合について例示したが、これに限定されない。通信装置3は、キャリア信号の種類が4種類以外である場合においても同様に、高調波のEMIを改善させることが出来る。以下に、第3実施形態の第1変形例、及び第2変形例について、第3実施形態と異なる点を説明する。
【0128】
[3-3-1]第3実施形態の第1変形例
図18は、第3実施形態の第1変形例に係る通信装置3の構成の一例を示している。
図18に示すように、第3実施形態の第1変形例に係る通信装置3は、第3実施形態に対して、RF発生器20が3種類のキャリア信号CSを出力する点が異なっている。
【0129】
具体的には、第3実施形態の第1変形例におけるRF発生器20は、入力回路10Aから入力された入力信号Vin1と、入力回路10Bから入力された入力信号Vin2と、入力回路10Cから入力された入力信号Vin3と、入力回路10Dから入力された入力信号Vin4とに基づいて、キャリア信号CS1、CS2、及びCS3を生成及び出力する。例えば、キャリア信号CS1は、信号生成回路30A及び30Bに入力される。キャリア信号CS2及びCS3は、それぞれ信号生成回路30C及び30Dに入力される。
【0130】
図19は、第3実施形態の第1変形例に係る通信装置3の備えるRF発生器20の回路構成の一例を示している。
図19に示すように、第3実施形態の第1変形例におけるRF発生器20は、第1実施形態におけるRF発生器20からインバータ25が省略され、複数のノードから複数のキャリア信号CSが出力される構成を有している。
【0131】
具体的には、第3実施形態の第1変形例では、例えば、ノードN1から出力される信号が、キャリア信号CS3に対応している。ノードN2から出力される信号が、キャリア信号CS2に対応している。ノードN3から出力される信号が、キャリア信号CS1に対応している。尚、第3実施形態の第1変形例において、ノードN1、N2、及びN3に対するキャリア信号CSの割り当ては、任意に変更され得る。第3実施形態の第1変形例に係る通信装置3のその他の構成は、第3実施形態と同様である。
【0132】
以上で説明された第3実施形態の第1変形例に係る通信装置3では、φ1=φ2=0[rad]、φ3=2π/3[rad]、φ4=4π/3[rad]となる。これにより、第3実施形態の第1変形例に係る通信装置3は、第3実施形態と同様に、φ1=φ2=φ3=φ4=0[rad]である場合と比べて、基本波及び2倍波のEMI性能を6dB改善させることが出来る。
【0133】
尚、第3実施形態の第1変形例では、キャリア信号CS1が2つの信号生成回路30A及び30Bに入力される場合について例示したが、その他のキャリア信号CSが2つの信号生成回路30A及び30Bに入力されても良い。キャリア信号CS2が信号生成回路30A及び30Bに入力される場合、φ1=0[rad]、φ2=φ3=2π/3[rad]、φ4=4π/3[rad]となる。キャリア信号CS3が信号生成回路30A及び30Bに入力される場合、φ1=0[rad]、φ2=2π/3[rad]、φ3=φ4=4π/3[rad]となる。いずれの場合においても、通信装置3は、第3実施形態と同様に、基本波及び2倍波のEMI性能を6dB改善させることが出来る。
【0134】
[3-3-2]第3実施形態の第2変形例
図20は、第3実施形態の第2変形例に係る通信装置3の構成の一例を示している。
図20に示すように、第3実施形態の第2変形例に係る通信装置3は、第3実施形態に対して、RF発生器20が2種類のキャリア信号CSを出力する点が異なっている。
【0135】
具体的には、第3実施形態の第2変形例におけるRF発生器20は、入力回路10Aから入力された入力信号Vin1と、入力回路10Bから入力された入力信号Vin2と、入力回路10Cから入力された入力信号Vin3と、入力回路10Dから入力された入力信号Vin4とに基づいて、キャリア信号CS1及びCS2を生成及び出力する。例えば、キャリア信号CS1は、信号生成回路30A及び30Bに入力される。キャリア信号CS2は、信号生成回路30C及び30Dに入力される。
【0136】
図21は、第3実施形態の第2変形例に係る通信装置3の備えるRF発生器20の回路構成の一例を示している。
図21に示すように、第3実施形態の第2変形例におけるRF発生器20は、第3実施形態の第1変形例におけるRF発生器20に対して、ノードN2からのキャリア信号CSの出力が省略された構成を有している。
【0137】
第3実施形態の第2変形例では、例えば、ノードN1から出力される信号が、キャリア信号CS2に対応している。ノードN3から出力される信号が、キャリア信号CS1に対応している。尚、第3実施形態の第2変形例において、ノードN1及びN3に対するキャリア信号CSの割り当ては、任意に変更され得る。第3実施形態の第2変形例に係る通信装置3のその他の構成は、第3実施形態の第1変形例と同様である。
【0138】
以上で説明された第3実施形態の第2変形例に係る通信装置3では、φ1=φ2=0[rad]、φ3=φ4=2π/3[rad]となる。これにより、第3実施形態の第2変形例に係る通信装置3は、第3実施形態と同様に、φ1=φ2=φ3=φ4=0[rad]である場合と比べて、基本波及び2倍波のEMI性能を6dB改善させることが出来る。
【0139】
[3-3-3]第3実施形態の第3変形例
図22は、第3実施形態の第3変形例に係る通信装置3の備えるRF発生器20の回路構成の一例を示している。
図22に示すように、第3実施形態の第3変形例におけるRF発生器20は、第3実施形態の第1変形例におけるRF発生器20に対して、ノードN1からのキャリア信号CSの出力が省略された構成を有している。
【0140】
第3実施形態の第3変形例では、例えば、ノードN2から出力される信号が、キャリア信号CS1に対応している。ノードN3から出力される信号が、キャリア信号CS2に対応している。尚、第3実施形態の第3変形例において、ノードN2及びN3に対するキャリア信号CSの割り当ては、任意に変更され得る。第3実施形態の第3変形例に係る通信装置3のその他の構成は、第3実施形態の第1変形例と同様である。
【0141】
以上で説明された第3実施形態の第3変形例に係る通信装置3では、φ1=φ2=0[rad]、φ3=φ4=4π/3[rad]となる。これにより、第3実施形態の第3変形例に係る通信装置3は、第3実施形態と同様に、φ1=φ2=φ3=φ4=0[rad]である場合と比べて、基本波及び2倍波のEMI性能を6dB改善させることが出来る。
【0142】
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る通信装置4は、第2実施形態で説明された正相及び逆相の被変調信号を用いる信号生成回路30の変形例である。以下に、第4実施形態に係る通信装置4について、第2実施形態と異なる点を説明する。
【0143】
[4-1]構成
図23は、第4実施形態に係る通信装置4の備える信号生成回路30の回路構成の一例を示している。
図23に示すように、第4実施形態における信号生成回路30は、第2実施形態に対して、異なる回路構成の信号生成部31を備えている。第4実施形態における信号生成部31は、例えば、第1遅延回路330、第2遅延回路331、クロック遷移検出回路332、パルス生成回路333、NAND回路334、位相検出回路335、セレクタ回路336、OR回路337、及びNOR回路338を含んでいる。
【0144】
第1遅延回路330には、入力信号Vinが入力される。そして、第1遅延回路330は、遅延させた入力信号Vinを、パルス生成回路333に入力する。第1遅延回路の遅延量は、例えば、クロック遷移検出回路332を介した信号の遅延量と同等に設計される。以下では、第1遅延回路によって遅延された入力信号Vinのことを、遅延入力信号VinDと呼ぶ。
【0145】
第2遅延回路331には、キャリア信号CSが入力される。そして、第2遅延回路331は、遅延させたキャリア信号CSを、セレクタ回路336に入力する。第2遅延回路の遅延量は、例えば、クロック遷移検出回路332を介した信号の遅延量と位相検出回路335を介した信号の遅延量との合計と同等に設計される。以下では、第2遅延回路によって遅延されたキャリア信号CSのことを、遅延キャリア信号CSdと呼ぶ。
【0146】
クロック遷移検出回路332は、入力信号Vinとキャリア信号CSとが入力され、入力された入力信号Vinとキャリア信号CSとに基づいてクロック遷移信号CT1及びCT2を生成する。そして、クロック遷移検出回路332は、生成したクロック遷移信号CT1及びCT2を、パルス生成回路333、NAND回路334、及び位相検出回路335のそれぞれに入力する。
【0147】
パルス生成回路333は、入力された遅延入力信号VinDとクロック遷移信号CT1及びCT2とに基づいて、正相入力信号VinNPを生成する。そして、パルス生成回路333は、生成した正相入力信号VinNPを、OR回路337に入力する。
【0148】
NAND回路334は、入力されたクロック遷移信号CT1及びCT2のNAND演算を実行する。そして、NAND回路334は、演算結果を逆相入力信号VinRPとして、NOR回路338に入力する。
【0149】
位相検出回路335は、入力されたクロック遷移信号CT1及びCT2に基づいて、位相検出信号PD1及びPD2を生成する。そして、位相検出回路335は、生成した位相検出信号PD1及びPD2を、セレクタ回路336に入力する。
【0150】
セレクタ回路336は、入力された位相検出信号PD1及びPD2と遅延キャリア信号CSdとに基づいて、内部キャリア信号Vcsを生成する。そして、セレクタ回路336は、生成した内部キャリア信号Vcsを、OR回路337及びNOR回路338に入力する。
【0151】
OR回路337は、信号生成回路30の正相出力に対応している。具体的には、OR回路337は、入力された正相入力信号VinNP及び内部キャリア信号VcsのOR演算を実行する。そして、OR回路337は、演算結果を正相の被変調信号MS1として、駆動部32に出力する。
【0152】
NOR回路338は、信号生成回路30の逆相出力に対応している。具体的には、NOR回路338は、入力された逆相入力信号VinRP及び内部キャリア信号VcsのNOR演算を実行する。そして、NOR回路338は、演算結果を逆相の被変調信号MS2として、駆動部32に出力する。
【0153】
第4実施形態に係る通信装置4のその他の構成は、第2実施形態と同様である。つまり、信号生成部31によって生成された被変調信号MS1及びMS2が、図示が省略された駆動部32に入力される。そして、駆動部32が、被変調信号MS1及びMS2を差動増幅して、増幅した電圧を絶縁素子40に出力する。尚、第4実施形態における信号生成回路30は、後述する動作を実行可能であれば、その他の回路構成を有していても良い。
【0154】
[4-2]動作
第4実施形態に係る通信装置4の動作は、RF発生器20の状態と入力信号Vinが立ち上がるタイミングとに応じて変化し得る。以下に、第4実施形態に係る通信装置4の動作の具体例について、
図24~
図26を用いて説明する。
図24~
図26のそれぞれは、第4実施形態に係る通信装置4における動作のタイミングチャートの一例を示し、1つの信号生成回路30に対応する各信号の電圧を表示している。
【0155】
尚、以下の説明において、RF発生器20がオン状態であることは、他の信号生成回路30に対応する少なくとも1つの入力信号Vinが立ち上がった状態であり、キャリア信号CSが既に発振していることを示している。一方で、RF発生器20がオフ状態であることは、他の信号生成回路30に対応する入力信号Vinのいずれも立ち下がった状態であり、キャリア信号CSが発振していない状態であることを示している。
【0156】
また、入力信号Vinと、遅延入力信号VinDと、クロック遷移信号CT1及びCT2と、位相検出信号PD1及びPD2と、内部キャリア信号Vcsと、正相入力信号VinNPとのそれぞれの初期状態の電圧は、“L”レベルに設定されている。このとき、NAND回路334は、“H”レベルの逆相入力信号VinRPを出力している。OR回路337は、“L”レベルの被変調信号MS1を出力している。NOR回路338は、“L”レベルの被変調信号MS2を出力している。
【0157】
(RF発生器20がオン状態、CS=“L”レベルの際にVinが立ち上がる場合)
図24は、RF発生器20がオン状態であり、且つキャリア信号CSが“L”レベルの際に入力信号Vinが立ち上がる場合の動作に対応している(RF:オン、“L”→“H”検出)。
図24に示すように、本例の初期状態では、キャリア信号CSが発振しており、遅延キャリア信号CSdがキャリア信号CSに対して遅延して発振している。
【0158】
入力信号Vinが立ち上がると、第1遅延回路330が、遅延入力信号VinDを入力信号Vinよりも遅延させて“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図24(1))。すると、遅延入力信号VinDが“H”レベルになったことに基づいて、パルス生成回路333が、正相入力信号VinNPを“L”レベルから“H”レベルに遷移させる。これにより、“H”レベルの正相入力信号VinNPがOR回路337に入力され、OR回路337が、被変調信号MS1を“H”レベルにする。
【0159】
また、入力信号Vinが立ち上がると、クロック遷移検出回路332が、キャリア信号CSの状態の監視を開始する。このとき、クロック遷移検出回路332は、まずキャリア信号CSが立ち上がったことに基づいて、クロック遷移信号CT1を“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図24(2))。続けて、クロック遷移検出回路332は、キャリア信号CSが立ち下がったことに基づいて、クロック遷移信号CT2を“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図24(3))。クロック遷移信号CT1及びCT2が共に“H”レベルになると、パルス生成回路333が、正相入力信号VinNPを“H”レベルから“L”レベルに遷移させ、NAND回路334が、逆相入力信号VinRPを“H”レベルから“L”レベルに遷移させる。また、位相検出回路335が、クロック遷移信号CT1がクロック遷移信号CT2よりも先に“H”レベルに遷移したことに基づいて、位相検出信号PD1を“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図24(4))。
【0160】
すると、セレクタ回路336は、位相検出信号PD1が“H”レベルになっていることに基づいて、遅延キャリア信号CSdの位相と同じ位相を有する信号を内部キャリア信号Vcsとして出力する(
図24(5))。OR回路337は、“L”レベルの正相入力信号VinNPがOR回路337に入力されると、被変調信号MS1を“L”レベルにしてから、内部キャリア信号Vcsの位相を維持した位相を有する被変調信号MS1を出力する状態になる。NOR回路338は、“L”レベルの逆相入力信号VinRPがNOR回路338に入力されると、内部キャリア信号Vcsの位相を反転させた位相を有する被変調信号MS2を出力する状態になる。
【0161】
以上のように、本例では、入力信号Vinが立ち上がると、被変調信号MS1の1つ目のパルス信号が、パルス生成回路333によって直ちに生成され、2つ目以降のパルス信号が、キャリア信号CSと同じ位相に対応する内部キャリア信号Vcsに基づいて生成される。その後、入力信号Vinが立ち下がると、第1遅延回路330が、遅延入力信号VinDを“H”レベルから“L”レベルに遷移させ、クロック遷移検出回路332が、クロック遷移信号CT1及びCT2を“H”レベルから“L”レベルに遷移させる(
図24(6))。クロック遷移信号CT1及びCT2が共に“L”レベルになったことに基づいて、NAND回路334が、“H”レベルの逆相入力信号VinRPを出力し、位相検出回路335が、位相検出信号PD1を“H”レベルから“L”レベルに遷移させ、セレクタ回路336が、内部キャリア信号Vcsを“L”レベルに維持する。その結果、当該信号生成回路30は、初期状態に戻る。
【0162】
(RF発生器20がオン状態、CS=“H”レベルの際にVinが立ち上がる場合)
図25は、RF発生器20がオン状態であり、且つキャリア信号CSが“H”レベルの際に入力信号Vinが立ち上がる場合の動作に対応している(RF:オン、“H”→“L”検出)。
図25に示すように、本例の初期状態では、キャリア信号CSが発振しており、遅延キャリア信号CSdがキャリア信号CSに対して遅延して発振している。
【0163】
入力信号Vinが立ち上がると、第1遅延回路330が、遅延入力信号VinDを入力信号Vinよりも遅延させて“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図25(1))。すると、遅延入力信号VinDが“H”レベルになったことに基づいて、パルス生成回路333が、正相入力信号VinNPを“L”レベルから“H”レベルに遷移させる。これにより、“H”レベルの正相入力信号VinNPがOR回路337に入力され、OR回路337が、被変調信号MS1を“H”レベルにする。
【0164】
また、入力信号Vinが立ち上がると、クロック遷移検出回路332が、キャリア信号CSの状態の監視を開始する。このとき、クロック遷移検出回路332は、まずキャリア信号CSが立ち下がったことに基づいて、クロック遷移信号CT2を“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図25(2))。続けて、クロック遷移検出回路332は、キャリア信号CSが立ち上がったことに基づいて、クロック遷移信号CT1を“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図25(3))。クロック遷移信号CT1及びCT2が共に“H”レベルになると、パルス生成回路333が、正相入力信号VinNPを“H”レベルから“L”レベルに遷移させ、NAND回路334が、逆相入力信号VinRPを“H”レベルから“L”レベルに遷移させる。また、位相検出回路335が、クロック遷移信号CT2がクロック遷移信号CT1よりも先に“H”レベルに遷移したことに基づいて、位相検出信号PD2を“L”レベルから“H”レベルに遷移させる(
図25(4))。
【0165】
すると、セレクタ回路336は、位相検出信号PD2が“H”レベルになっていることに基づいて、遅延キャリア信号CSdの位相を反転させた位相を有する信号を内部キャリア信号Vcsとして出力する(
図25(5))。OR回路337は、“L”レベルの正相入力信号VinNPがOR回路337に入力されると、被変調信号MS1を“L”レベルにしてから、内部キャリア信号Vcsの位相と同じ位相を有する被変調信号MS1を出力する状態になる。NOR回路338は、“L”レベルの逆相入力信号VinRPがNOR回路338に入力されると、内部キャリア信号Vcsの位相を反転させた位相を有する被変調信号MS2を出力する状態になる。
【0166】
以上のように、本例では、入力信号Vinが立ち上がると、被変調信号MS1の1つ目のパルス信号が、パルス生成回路333によって直ちに生成され、2つ目以降のパルス信号が、キャリア信号CSの反転出力に対応する内部キャリア信号Vcsに基づいて生成される。その後、入力信号Vinが立ち下がると、第1遅延回路330が、遅延入力信号VinDを“H”レベルから“L”レベルに遷移させ、クロック遷移検出回路332が、クロック遷移信号CT1及びCT2を“H”レベルから“L”レベルに遷移させる(
図25(6))。クロック遷移信号CT1及びCT2が共に“L”レベルになったことに基づいて、NAND回路334が、“H”レベルの逆相入力信号VinRPを出力し、位相検出回路335が、位相検出信号PD2を“H”レベルから“L”レベルに遷移させ、セレクタ回路336が、内部キャリア信号Vcsを“L”レベルに維持する。その結果、当該信号生成回路30は、初期状態に戻る。
【0167】
(RF発生器20がオフ状態の際にVinが立ち上がる場合)
図26は、RF発生器20がオフ状態の際に入力信号Vinが立ち上がる場合の動作に対応している(RF:オフ→オン)。
図26に示すように、本例の初期状態では、キャリア信号CSがオフ状態(“L”レベル)になっている。
【0168】
入力信号Vinが立ち上がると、RF発生器20がオン状態になり、キャリア信号CSの発振が開始される(RFオン)。この場合、クロック遷移検出回路332は、キャリア信号CSの立ち上がりを先に検出し、キャリア信号CSの立ち下がりを後に検出する。すなわち、本例では、入力信号Vinが立ち上がった後に、クロック遷移信号CT1が先に“H”レベルになり、クロック遷移信号CT2が後に“H”レベルになる。
図26に示されたその他の動作は、
図24を用いて説明された動作と同様である。尚、他の入力信号Vinが“L”レベルを維持している場合には、入力信号Vinが立ち下がった際に、RF発生器20がオフ状態になる(RFオフ)。
【0169】
[4-3]第4実施形態の効果
以上で説明されたように、第4実施形態に係る通信装置4の備える信号生成回路30は、入力信号Vinの立ち上がりタイミングに応じて、内部キャリア信号Vcsの位相を変更する信号生成部31を備えている。
【0170】
簡潔に述べると、第4実施形態における信号生成部31は、入力信号Vinが立ち上がったことを検知すると、RF発生器20がオン状態であるかオフ状態であるかに依らずに、1つ目のパルス信号(被変調信号MS1)を生成する。この1つ目のパルス信号のパルス幅は、入力信号Vinの立ち上がりタイミングに応じて、キャリア信号CSの周期の0.5~1.0倍になる。そして、第4実施形態における信号生成部31は、キャリア信号CSが“L”レベルである時に入力信号Vinの立ち上がりを検知した場合に、遅延されたキャリア信号CSの位相に基づいた内部キャリア信号Vcsを生成する。一方で、第4実施形態における信号生成部31は、キャリア信号CSが“H”レベルである時に入力信号Vinの立ち上がりを検知した場合に、遅延されたキャリア信号CSの位相を反転させた位相に基づいた内部キャリア信号Vcsを生成する。
【0171】
以上のように、1つ目のパルス信号がRF発生器20の状態に依らずに生成されることによって、入力信号Vinとキャリア信号CSとが同期しているか否かに依らずに、正相の被変調信号MS1の立ち上がりの波形が一定になる。言い換えると、入力信号Vinとキャリア信号CSとが非同期で動作させた場合においても、OOK方式で使用される被変調信号MSの先頭波形が揃えられる。これにより、第4実施形態に係る通信装置4は、検波回路の立ち上がり時間を安定させることが出来、第1及び第2実施形態と同様に、信号生成回路30による出力信号のジッタを抑制することが出来る。
【0172】
さらに、2つ目以降のパルス信号が、入力信号Vinの立ち上がりタイミングに応じた反転又は非反転の内部キャリア信号Vcsに基づいて生成されることによって、1つ目のパルス信号の立ち下がりと2つ目以降のパルス信号の立ち上がりとが滑らかに接続される。言い換えると、第4実施形態における信号生成部31は、2つ目以降のパルスを安定して発生させることが出来る。その結果、第4実施形態に係る通信装置4は、グリッジのような高周波パルスの発生を抑制することが出来る。従って、第4実施形態に係る通信装置4は、第2実施形態よりも動作の安定性を向上させることが出来る。
【0173】
尚、第4実施形態では、信号生成回路30が正相の被変調信号MS1と逆相の被変調信号MS2を用いる場合について例示したが、これに限定されない。例えば、信号生成回路30が、第1実施形態と同様に、1つの被変調信号MSを取り扱っても良い。この場合に、信号生成部31は、例えば
図23に示された構成から、NAND回路334及びNOR回路338が省略された構成を有している。このような信号生成回路30を有する通信装置は、第4実施形態と同様の効果を得ることが出来、第1実施形態よりも動作の安定性を向上させることが出来る。
【0174】
[5]その他
上記実施形態は、組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態は、第1実施形態の第1変形例~第4変形例のいずれと組み合わされても良い。第3実施形態は、第1実施形態、第1実施形態の第1及び第2変形例、第2実施形態、第2実施形態の変形例のいずれとも組み合わされても良い。第4実施形態は、第3実施形態、及び第3実施形態の第1~第3変形例とのいずれとも組み合わされても良い。第4実施形態の信号生成回路30は、第1実施形態の第3変形例のような、N個のチャンネルのそれぞれに対して適用されても良い。複数の実施形態や変形例が組み合わされた通信装置1は、組み合わされた実施形態や変形例のそれぞれの効果を得ることが出来る。第3実施形態のように、各絶縁素子40の位相を調整してEMIを抑制することは、第1及び第2実施形態に対しても適用され得る。つまり、第3実施形態は、信号生成回路30の構成や、通信装置1が備えるチャンネルの数や、使用する絶縁素子の種類に依らずに適用することが出来る。
【0175】
本明細書において“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオン状態になる電圧である。“第1論理レベル”及び“第2論理レベル”のそれぞれは、“H”レベル及び“L”レベルのいずれかに対応している。RF発生器20によって出力される発振した信号は、“RF信号”もしくは“クロック信号”と呼ばれても良い。RF発生器20は、“発振器”と呼ばれても良い。受信回路50及び出力回路60の組が、“出力回路”と呼ばれても良い。
【0176】
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。また、明細書において“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。“信号が立ち上がる”とは、当該信号の電圧が“L”レベルから“H”レベルに変化することを示している。“信号が立ち下がる”とは、当該信号の電圧が“H”レベルから“L”レベルに変化することを示している。“信号が立ち上がった状態”は、“H”レベルに対応している。“信号が立ち下がった状態”は、“L”レベルに対応している。“1つのパルス信号”は、例えば信号が“L”レベル→“H”レベル→“L”レベルに遷移した部分に対応している。“パルス幅”は、例えば信号が“L”レベル→“H”レベル→“L”レベルに遷移した期間に対応している。
【0177】
本明細書の請求項案につき、以下に付記する。
【0178】
<1> 通信装置は、発振器と、第1信号生成回路と、第2信号生成回路と、第1絶縁素子と、第2絶縁素子と、第1出力回路と、第2出力回路と、を含む。発振器は、外部から入力された第1信号及び第2信号の少なくとも1つが第1論理レベルである場合に、キャリア信号を出力する。第1信号生成回路は、第1信号生成部と、第1駆動回路とを含む。第1信号生成部は、第1信号の立ち上がりを検知すると1つ目のパルス信号を生成し、第1信号の立ち上がりが検知された時にキャリア信号が第1論理レベルと異なる第2論理レベルである場合に、キャリア信号の位相と同じ位相の信号を2つ目以降のパルス信号として出力し、第1信号の立ち上がりが検知された時に前記キャリア信号が第1論理レベルである場合に、キャリア信号の位相を反転させた信号を2つ目以降のパルス信号として出力する。第1駆動回路は、第1信号生成部の出力信号を増幅する。第2信号生成回路は、第2信号生成部と、第2駆動回路とを含む。第2信号生成部は、第2信号の立ち上がりを検知すると1つ目のパルス信号を生成し、第2信号の立ち上がりが検知された時にキャリア信号が第2論理レベルである場合に、キャリア信号の位相と同じ位相の信号を2つ目以降のパルス信号として出力し、第1信号の立ち上がりが検知された時にキャリア信号が第1論理レベルである場合に、キャリア信号の位相を反転させた位相の信号を2つ目以降のパルス信号として出力する。第2駆動回路は、第2信号生成部の出力信号を増幅する。第1絶縁素子は、第1駆動回路の出力に接続される。第2絶縁素子は、第2駆動回路の出力に接続される。第1出力回路は、第1駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第1絶縁素子を介して受信し、外部に出力する。第2出力回路は、第2駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第2絶縁素子を介して受信し、外部に出力する。
【0179】
<2> <1>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。第1信号生成部は、クロック遷移検出回路と、パルス生成回路と、位相検出回路と、セレクタ回路と、第1論理和回路と、を含む。クロック遷移検出回路は、第1信号とキャリア信号とが入力され、入力された第1信号とキャリア信号とに基づいて第1制御信号と第2制御信号とを生成する。パルス生成回路は、第1信号と第1制御信号と第2制御信号とに基づいて第1入力信号を生成する。位相検出回路は、第1制御信号と第2制御信号とに基づいて、第3制御信号と第4制御信号とを生成する。セレクタ回路は、第3制御信号と第4制御信号とキャリア信号とに基づいて内部キャリア信号を生成する。第1論理和回路は、第1入力信号と内部キャリア信号との論理和演算を実行し、演算結果が第1駆動回路によって出力される。クロック遷移検出回路は、第1信号が立ち上がった後に、キャリア信号の立ち上がりを検出した場合に第1制御信号を第2論理レベルから第1論理レベルに遷移させ、キャリア信号の立ち下がりを検出すると第2制御信号を第2論理レベルから第1論理レベルに遷移させる。パルス生成回路は、第1信号の立ち上がりを検知すると第1入力信号を第2論理レベルから第1論理レベルに遷移させ、第1信号の立ち上がりを検知した後に第1制御信号と第2制御信号との両方が第1論理レベルになったことに応じて第1入力信号を第1論理レベルから第2論理レベルに遷移させる。位相検出回路は、第3制御信号と第4制御信号との両方が第1論理レベルになった際に、第3制御信号が第4制御信号よりも先に第1論理レベルに遷移した場合に、キャリア信号と同じ位相の内部キャリア信号を生成し、第4制御信号が第3制御信号よりも先に第1論理レベルに遷移した場合に、キャリア信号の位相が反転された位相の内部キャリア信号を生成する。
【0180】
<3> <2>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。第1信号生成部は、第1遅延回路と、第2遅延回路とをさらに含む。第1遅延回路は、クロック遷移検出回路の遅延量と同等の遅延を発生させる。第2遅延回路は、クロック遷移検出回路と位相検出回路との合計の遅延量と同等の遅延を発生させる。パルス生成回路には、第1遅延回路を介した第1信号が入力され、パルス生成回路は、遅延した第1信号に基づいて第1入力信号を生成する。セレクタ回路には、第2遅延回路を介したキャリア信号が入力され、セレクタ回路は、遅延したキャリア信号に基づいて内部キャリア信号を生成する。
【0181】
<4> <2>又は<3>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。第1信号生成部は、第1否定論理積回路と、第1否定論理和回路とをさらに含む。第1否定論理積回路は、第1制御信号と第2制御信号との否定論理積演算を実行し、演算結果を第2入力信号として出力する。第1否定論理和回路は、第2入力信号と内部キャリア信号との否定論理和演算を実行し、演算結果が前記第1駆動回路によって出力される。第1駆動回路は、第1論理和回路の出力と第1否定論理和回路の出力とを差動増幅する。
【0182】
<5> <1>乃至<4>のいずれかに記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。第1信号生成部は、第1信号の立ち上がりを検出した後に、第1信号の立ち下がりを検出すると、第2論理レベルの信号を第1駆動回路に出力する。
【0183】
<6> 通信装置は、発振器と、第1信号生成回路と、第2信号生成回路と、第1絶縁素子と、第2絶縁素子と、第1出力回路と、第2出力回路と、を含む。発振器は、外部から入力された第1信号及び第2信号の少なくとも1つが第1論理レベルである場合に、キャリア信号を出力する。第1信号生成回路は、第1遅延回路と、第1論理回路と、第2論理回路と、第3論理回路と、第1駆動回路とを含む。第1論理回路は、第1入力端に第1信号が入力され、且つ第2入力端に第1遅延回路を介した第1信号が入力される。第2論理回路は、第1入力端に第1論理回路の出力端が接続され、且つ第2入力端にキャリア信号が入力される。第3論理回路は、第1入力端に第1信号が入力され、且つ第2入力端に第2論理回路の出力端が接続される。第1駆動回路は、第3論理回路によって出力された電圧を増幅する。第2信号生成回路は、第2遅延回路と、第4論理回路と、第5論理回路と、第6論理回路と、第2駆動回路とを含む。第4論理回路は、第1入力端に第2信号が入力され、且つ第2入力端に第2遅延回路を介した第2信号が入力される。第5論理回路は、第1入力端に第4論理回路の出力端が接続され、且つ第2入力端にキャリア信号が入力される。第6論理回路は、第1入力端に第2信号が入力され、且つ第2入力端に第5論理回路の出力端が接続される。第2駆動回路は、第6論理回路によって出力された電圧を増幅する。第1絶縁素子は、第1駆動回路の出力に接続される。第2絶縁素子は、第2駆動回路の出力に接続される。第1出力回路は、第1駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第1絶縁素子を介して受信し、外部に出力する。第2出力回路は、第2駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第2絶縁素子を介して受信し、外部に出力する。
【0184】
<7> <6>に記載の通信装置において、第1論理回路、第3論理回路、第4論理回路、及び第6論理回路は、論理積回路であり、第2論理回路、及び第5論理回路は、否定論理積回路である。
【0185】
<8> <6>又は<7>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。第1信号生成回路は、第4インバータと、第13論理回路とをさらに含む。第4インバータは、入力端に第2論理回路の出力端が接続される。第13論理回路は、第1入力端に第1信号が入力され、且つ第2入力端に第4インバータの出力端が接続される。第2信号生成回路は、第5インバータと、第14論理回路とを更に含む。第2信号生成回路は、入力端に第5論理回路の出力端が接続される。第14論理回路は、第1入力端に第2信号が入力され、且つ第2入力端に第5インバータの出力端が接続される。第1駆動回路は、第3論理回路の出力と第13論理回路の出力とを差動増幅する。第2駆動回路は、第6論理回路の出力と第14論理回路の出力とを差動増幅する。
【0186】
<9> <1>乃至<8>のいずれかに記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。第1絶縁素子が、第1コイルと、第2コイルとを含む。第1コイルは、第1駆動回路の出力に接続される。第2コイルは、絶縁体層を介して第1コイルと対向し、第1出力回路に接続される。第2絶縁素子が、第3コイルと、第4コイルとを含む。第3コイルは、第2駆動回路の出力に接続される。第4コイルは、絶縁体層を介して第3コイルと対向し、第2出力回路に接続される。
【0187】
<10> <1>乃至<8>のいずれかに記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。第1絶縁素子が、第1キャパシタを含む。第1キャパシタは、一方電極が第1駆動回路の前記出力に接続され、且つ他方電極が第1出力回路に接続される。第2絶縁素子が、第2キャパシタを含む。第2キャパシタは、一方電極が第2駆動回路の出力に接続され、且つ他方電極が第2出力回路に接続される。
【0188】
<11> <1>乃至<10>のいずれかに記載の通信装置は、第1の基板と、第2の基板とをさらに含む。第1の基板には、発振器と、第1信号生成回路と、第2信号生成回路とが実装される。第2の基板には、第1出力回路と、第2出力回路とが実装される。第1絶縁素子と第2絶縁素子とは、第1の基板と第2の基板とのいずれかに実装される。
【0189】
<12> <1>又は<6>に記載の通信装置において、第1信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相と、第2信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相とが異なる。
【0190】
<13> <12>に記載の通信装置において、発振器は、第2論理和回路と、第2否定論理積回路と、第1インバータと、第2インバータとを含む。第2論理和回路は、第1入力端に第1信号が入力され、第2入力端に第2信号が入力される。第2否定論理積回路は、第1入力端に第2論理和回路の出力端が接続される。第1インバータは、入力端に第2否定論理積回路の出力端が接続される。第2インバータは、入力端に第1インバータの出力端が接続され、出力端が第2否定論理積回路の第2入力端に接続される。第2否定論理積回路の出力端が、第2信号生成回路に接続される。第2インバータの出力端が、第1信号生成回路に接続される。
【0191】
<14> <12>に記載の通信装置において、発振器は、第2論理和回路と、第2否定論理積回路と、第1インバータと、第2インバータとを含む。第2論理和回路は、第1入力端に第1信号が入力され、第2入力端に第2信号が入力される。第2否定論理積回路は、第1入力端に第2論理和回路の出力端が接続される。第1インバータは、入力端に第2否定論理積回路の出力端が接続される。第2インバータは、入力端に第1インバータの出力端が接続され、出力端が第2否定論理積回路の第2入力端に接続される。第1インバータの出力端が、第2信号生成回路に接続される。第2インバータの出力端が、第1信号生成回路に接続される。
【0192】
<15> <6>に記載の通信装置は、第3信号生成回路と、第3絶縁素子と、第3出力回路とをさらに含む。第3信号生成回路は、第3遅延回路と、第7論理回路と、第8論理回路と、第9論理回路と、第3駆動回路とを含む。第7論理回路は、第1入力端に通信装置の外部から第3信号が入力され、且つ第2入力端に第3遅延回路を介した第3信号が入力される。第8論理回路は、第1入力端に第7論理回路の出力端が接続され、且つ第2入力端にキャリア信号が入力される。第9論理回路は、第1入力端に第3信号が入力され、且つ第2入力端に第8論理回路の出力端が接続される。第3駆動回路は、第9論理回路によって出力された電圧を増幅する。第3絶縁素子は、第3駆動回路の出力に接続される。第3出力回路は、第3駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第3絶縁素子を介して受信し、外部に出力する。
【0193】
<16> <15>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。発振器は、第1信号、第2信号、及び第3信号の少なくとも1つが第1論理レベルである場合に、キャリア信号を出力する。第1信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相と、第2信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相と、第3信号生成回路に入力される前記キャリア信号の位相とが、互いに異なる。
【0194】
<17> <16>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。発振器は、第2論理和回路と、第2否定論理積回路と、第1インバータと、第2インバータとを含む。第2論理和回路は、第1入力端に第1信号が入力され、第2入力端に第2信号が入力され、第3入力端に第3信号が入力される。第2否定論理積回路は、第1入力端に第2論理和回路の出力端が接続される。第1インバータは、入力端に第2否定論理積回路の出力端が接続される。第2インバータは、入力端に第1インバータの出力端が接続され、出力端が第2否定論理積回路の第2入力端に接続される。第2否定論理積回路の出力端が、第3信号生成回路に接続される。第1インバータの出力端が、第2信号生成回路に接続される。第2インバータの出力端が、第1信号生成回路に接続される。
【0195】
<18> <15>に記載の通信装置は、第4信号生成回路と、第4絶縁素子と、第4出力回路とをさらに含む。第4信号生成回路は、第4遅延回路と、第10論理回路と、第11論理回路と、第12論理回路と、第4駆動回路とを含む。第10論理回路は、第1入力端に通信装置の外部から第4信号が入力され、且つ第2入力端に第4遅延回路を介した第4信号が入力される。第11論理回路は、第1入力端に第10論理回路の出力端が接続され、且つ第2入力端にキャリア信号が入力される。第12論理回路は、第1入力端に第4信号が入力され、且つ第2入力端に第11論理回路の出力端が接続される。第4駆動回路は、第12論理回路によって出力された電圧を増幅する。第4絶縁素子は、第4駆動回路の出力に接続される。第4出力回路は、第4駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第4絶縁素子を介して受信し、外部に出力する。
【0196】
<19> <18>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。発振器は、第1信号、第2信号、第3信号、及び第4信号の少なくとも1つが第1論理レベルである場合に、キャリア信号を出力する。第1信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相と、第2信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相と、第3信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相と、第4信号生成回路に入力されるキャリア信号の位相とが、互いに異なる。
【0197】
<20> <19>に記載の通信装置は、続いて述べられた構成を有する。発振器は、第2論理和回路と、第2否定論理積回路と、第1インバータと、第2インバータと、第3インバータとを含む。第2論理和回路は、第1入力端に第1信号が入力され、第2入力端に第2信号が入力され、第3入力端に第3信号が入力され、第4入力端に第4信号が入力される。第2否定論理積回路は、第1入力端に第2論理和回路の出力端が接続される。第1インバータは、入力端に第2否定論理積回路の出力端が接続される。第2インバータは、入力端に第1インバータの出力端が接続され、出力端が第2否定論理積回路の第2入力端に接続される。第3インバータは、入力端に第2インバータの出力端が接続される。第2否定論理積回路の出力端が、第4信号生成回路に接続される。第1インバータの出力端が、第2信号生成回路に接続される。第2インバータの出力端が、第1信号生成回路に接続される。第3インバータの出力端が、第3信号生成回路に接続される。
【0198】
<21> 通信装置は、発振器と、第N信号生成回路と、第N絶縁素子と、第N受信回路と、第N出力回路とを含む。発振器は、外部から入力された第1信号及び第2信号の少なくとも1つが第1論理レベルである場合に、キャリア信号を出力する。第N信号生成部は、複数の信号のうち、第N信号(Nは1以上の整数)の第1論理レベルを検知すると第1のパルス信号を生成し、第1のパルス信号の後ろがキャリア信号であり、第N信号が第2論理レベルになるとキャリア信号が停止するようなパルス信号を出力する。第N駆動回路は、第N信号生成部の出力信号を増幅する。第N絶縁素子は、第N駆動回路の出力に接続される。第N受信回路は、第N駆動回路の出力信号に基づいた信号を、第N絶縁素子を介して受信し、受信信号から信号を復調する。第N出力回路は、第N受信回路の出力信号に基づいた信号を、外部に出力する。
【0199】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0200】
1…通信装置、10…入力回路、20…RF発生器、21…OR回路、22…NAND回路、23~25…インバータ、30…信号生成回路、31…信号生成部、32…駆動部、40…絶縁素子、41,42…コイル、43,44…キャパシタ、50…受信回路、60…出力回路、311,314,316…AND回路、312…遅延回路、313…NAND回路、315…インバータ、321…駆動回路、322~325…トランジスタ、326…電流源、330…第1遅延回路、331…第2遅延回路、332…クロック遷移検出回路、333…パルス生成回路、334…NAND回路、335…位相検出回路、336…セレクタ回路、337…OR回路、338…NOR回路、CP1,CP2…チップ、CS…キャリア信号