(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】アクセスポイント装置とデバイスを含む通信システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/04 20090101AFI20241118BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20241118BHJP
H04W 84/22 20090101ALI20241118BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20241118BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W84/12
H04W84/22
H04W92/20 110
(21)【出願番号】P 2023134365
(22)【出願日】2023-08-22
(62)【分割の表示】P 2019109376の分割
【原出願日】2019-06-12
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】中川 利之
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152766(JP,A)
【文献】特開2007-049522(JP,A)
【文献】特開2003-348662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.11シリーズ規格に準拠する第1ネットワークを構築するアクセスポイント装置
と前記第1ネットワークに参加したデバイスとを含む通信システムであって、
前記アクセスポイント装置の動作に関する設定情報を記憶する記憶手段と、
前記アクセスポイント装置のタイプを特定する特定手段と、
前記特定手段によって前記アクセスポイント装置のタイプが第1タイプであると特定された後に、前記設定情報を示す
第1バックアップデータを、前記アクセスポイント装置が構築した前記第1ネットワークとは異なる第2ネットワーク上の外部装置に対して
前記アクセスポイント装置から送信する
よう制御する第1の送信
制御手段と、
前記特定手段によって前記アクセスポイント装置のタイプが第2タイプであると特定された後に、前記設定情報を示す第2バックアップデータを、前記デバイスに対して前記アクセスポイント装置から送信するよう制御する第2の送信制御手段と、
前記アクセスポイント装置から送信される前記第2バックアップデータを前記デバイスによって受信するように制御する受信制御手段と、
を有し、
前記
第1バックアップデータ
及び前記第2バックアップデータには少なくともSSID(Service Set Identifier)とチャネル設定が含まれることを特徴とする
通信システム。
【請求項2】
前記チャネル設定は、無線LANのチャネルを示す設定であることを特徴とする請求項1に記載の
通信システム。
【請求項3】
前記
第1の送信
制御手段は、前記設定情報を構成する少なくとも1つの設定が変更されたことに従って、前記
変更後の設定情報に対応する第3バックアップデータを前記外部装置へ送信することを特徴とする請求項1または2に記載の
通信システム。
【請求項4】
前記
第1の送信
制御手段は、時間経過に基づいて、前記
アクセスポイント装置に現在設定されている前記設定情報に対応する第3バックアップデータを前記外部装置へ送信することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の
通信システム。
【請求項5】
前記アクセスポイント装置は、更に、IEEE802.3規格に準拠した有線通信を実行することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の
通信システム。
【請求項6】
前記アクセスポイント装置は、前記第1ネットワークに接続したステーション装置と、WAN(Wide Area Network)上の外部装置との通信を中継する機能を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の
通信システム。
【請求項7】
前記アクセスポイント装置が構築する前記第1ネットワークは、Wi-Fi EasyMesh規格にも準拠する
メッシュネットワークであることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の
通信システム。
【請求項8】
前記設定情報には、前記メッシュネットワーク全体を制御するための設定が更に含まれることを特徴とする請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記デバイスは、前記Wi-Fi EasyMesh規格のエージェントとして前記第1ネットワークを前記アクセスポイント装置とともに構築する他のアクセスポイント装置又は、前記第1ネットワーク内の記憶部を有する装置であることを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記
第1バックアップデータ
及び前記第2バックアップデータには更に認証用のパスワードが含まれることを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の
通信システム。
【請求項11】
前記
第1バックアップデータ
及び前記第2バックアップデータには更に証明書が含まれることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の
通信システム。
【請求項12】
IEEE802.11シリーズ規格に準拠する第1ネットワークを構築するアクセスポイント装置と前記第1ネットワークに参加したデバイスとにより実行される制御方法であって、
前記アクセスポイント装置の動作に関する設定情報を記憶領域に記憶する記憶工程と、
前記アクセスポイント装置のタイプを特定する特定工程と、
前記特定工程で前記アクセスポイント装置のタイプが第1タイプであると特定された後に、前記設定情報を示す第1バックアップデータを、前記アクセスポイント装置が構築した前記第1ネットワークとは異なる第2ネットワーク上の外部装置に対して前記アクセスポイント装置から送信するよう制御する第1の送信制御工程と、
前記特定工程で前記アクセスポイント装置の種別が第2タイプであると特定された後に、前記設定情報を示す第2バックアップデータを、前記デバイスに対して前記アクセスポイント装置から送信するよう制御する第2の送信制御工程と、
前記アクセスポイント装置から送信される前記第2バックアップデータを前記デバイスによって受信するように制御する受信制御工程と、
を有し、
前記第1バックアップデータ及び前記第2バックアップデータには少なくともSSID(Service Set Identifier)とチャネル設定が含まれることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークのアクセスポイント装置を含む通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
Wi-Fi Allianceにおいて策定されたWi-Fi EasyMesh(登録商標)規格は、複数のアクセスポイント(以下、「AP」ともいう)により構成されるネットワークにおける各種制御を規定している。このような複数のAPにより構成されるネットワークを「マルチAPネットワーク」という。
Wi-Fi EasyMesh規格において、マルチAPネットワークを構成するAPは、他のAPから各種情報を取得し、当該情報を用いて複数AP間における効率的なネットワーク制御を実現することができる。
【0003】
マルチAPネットワークを構成するAPは、Multi-AP Controller(以下、「コントローラ」という)と、Multi-AP Agent(以下、「エージェント」という)とのいずれかとして動作する(特許文献1)。
コントローラは、他のAPを制御して、マルチAPネットワーク全体を制御するAPである。一方、エージェントは、コントローラの管理下に入り、各種のネットワーク情報をコントローラに報知するAPである。
コントローラは、エージェントから報知されるネットワーク情報に基づいて、マルチAPネットワークを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、Wi-Fi EasyMesh規格では、マルチAPネットワーク上のコントローラは常に1つであるものと規定されている。そのため、コントローラの役割を担うAPの故障や何らかの障害時には、マルチAPネットワークにおいてコントローラとして動作するためのコントローラ設定情報を別のAPへ引き継ぐことができない。
同様に、コントローラの役割を担うAPの電源を切断した後や、コントローラの役割を担うAPがマルチAPネットワークから離脱した後に別のAPを新たなコントローラとして選択した場合にも、コントローラ設定情報を別のAPへ引き継ぐことができない。
【0006】
このような場合、コントローラ設定情報を別のAPへ引き継ぐことができないため、ユーザが新たにコントローラの役割を担うAPに対して、改めてコントローラ設定情報を設定しなければならず、ユーザの操作を煩雑にしていた。
また、APネットワーク上で1つであるコントローラに設定されたコントローラ設定情報を、予め別のAPへ引き継ごうとしても、現在のコントローラに替わって次にコントローラとなるべきAPは通常未定である。このため、コントローラは、次のコントローラとなるべきAPが1つであるにもかかわらず、他の全てのAPのそれぞれとの間で、予めコントローラ設定情報を共有しなければならず、無線通信リソースを無駄にしてしまう。
【0007】
本発明の目的の1つの側面は、無線ネットワークに関する設定情報を他のアクセスポイント等へ引き継ぐ際の利便性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信システムは、IEEE802.11シリーズ規格に準拠する第1ネットワークを構築するアクセスポイント装置と前記第1のネットワークに参加したデバイスとを含む通信システムであって、前記アクセスポイント装置の動作に関する設定情報を記憶する記憶手段と、前記アクセスポイント装置のタイプを特定する特定手段と、前記特定手段によって前記アクセスポイント装置のタイプが第1タイプであると特定された後に、前記設定情報を示す第1バックアップデータを、前記アクセスポイント装置が構築した前記第1ネットワークとは異なる第2ネットワーク上の外部装置に対して前記アクセスポイント装置から送信するよう制御する第1の送信制御手段と、前記特定手段によって前記アクセスポイント装置のタイプが第2タイプであると特定された後に、前記設定情報を示す第2バックアップデータを、前記デバイスに対して前記アクセスポイント装置から送信するよう制御する第2の送信制御手段と、前記アクセスポイント装置から送信される前記第2バックアップデータを前記デバイスによって受信するように制御する受信制御手段と、を有する。前記第1バックアップデータ及び第2バックアップデータには少なくともSSID(Service Set Identifier)とチャネル設定が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の1つの側面によれば、無線ネットワークに関する設定情報を他のアクセスポイント等へ引き継ぐ際の利便性を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る通信システムのネットワーク構成の一例を示す図。
【
図2】実施形態1に係る通信装置のハードウエアおよび機能構成の一例を示すブロック図。
【
図3】実施形態1に係る通信装置がマルチAPネットワークのコントローラとして動作する場合に実行する処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図4】通信装置1がコントローラ設定情報のバックアップ先の情報を通知するため使用するメッセージのフォーマットの一例を示す図。
【
図5】実施形態1に係る通信装置がマルチAPネットワークのエージェントとして動作する場合に実行する処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】マルチAPネットワークのエージェントとして動作する実施形態1に係る通信装置1、コントローラの機能が起動された場合に実行する処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】実施形態1に係る通信システムにおける通信装置間の処理シーケンスの一例を示すシーケンス図。
【
図8】実施形態2に係る通信装置がマルチAPネットワークのコントローラとして動作する場合に実行する処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図9】実施形態2に係る通信装置がマルチAPネットワークのエージェントとして動作する場合に実行する処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図10】実施形態2に係る通信システムにおける通信装置間の処理シーケンスの一例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正または変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0012】
以下、通信装置が、マルチAPネットワークを許容するWi-Fi EasyMesh規格に準拠する通信装置である例を説明するが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、通信装置は、複数のアクセスポイント(AP)により構成される無線ネットワークであるマルチAPネットワークで無線通信を可能とする他の通信方式を使用してもよい。
【0013】
(実施形態1)
<本実施形態のネットワーク構成>
図1は、本実施形態に係る通信システムのネットワーク構成の一例を示す図である。
図1に示す通信システムは、1つ以上のAPで構成されるネットワークであるマルチAPネットワーク5に接続される通信装置1~4を備え、マルチAPネットワーク5上で無線通信を実行する。
【0014】
通信装置1および通信装置2は、それぞれ、IEEE802.11シリーズ規格に準拠する無線LAN(Local Area Network)を構築するアクセスポイント(AP)として動作する(以下、「AP1」、「AP2」ともいう)。一方、通信装置3および通信装置4は、それぞれ、APである通信装置1および通信装置2により構築された無線LANに接続するステーション(以下、「STA」という)として動作する。
図1において、通信装置1は、WAN(Wide Area Network)6に接続され、他の通信装置2~4の通信を中継してWAN6に接続させることが可能なゲートウェイとして動作するものとする。通信装置1に替えて、通信装置2がゲートウェイとして動作してもよい。なお、通信装置1および2は、無線通信に加えて、あるいは無線通信に替えて、有線通信を実行可能であってよい。
【0015】
本実施形態において、APである通信装置1と通信装置2のいずれか一方は、マルチAPネットワーク5において他のAPを制御してマルチAPネットワーク5全体を制御する機能を有するコントローラの役割を担う。
一方、コントローラの役割を担わない他方のAPである通信装置1と通信装置2の他方は、コントローラの管理下に入り、ネットワーク情報をコントローラに報知する機能を有するエージェントの役割を担う。
【0016】
コントローラは、例えば、所定の制御メッセージをエージェントに送信することにより、エージェントの接続チャネルや送信パワーを制御する。さらにコントローラは、エージェントを異なるAP配下の異なるBSS(Basic Service Set)へ移行させたり、STAのローミング等のステアリングを制御したり、その他、データトラフィックの制御、ネットワークの診断等を実行する。
また、エージェントがコントローラへ報知するネットワーク情報は、エージェント自体の能力情報、および当該エージェントに接続しているSTAやAPの能力情報を含む。ここで、能力情報とは、IEEE802.11シリーズ準拠のHT(High Throughput) Capability、VHT(Very High Throughput) Capabilityであってよい。なお、ここで、エージェントに接続しているAPとは、具体的には、Backhaul STAと呼ばれるマルチAPネットワークのデバイスにおけるSTA機能を実行してエージェントに接続しているAPをいう。
【0017】
エージェントがコントローラへ報知するネットワーク情報はさらに、無線LAN接続チャネルの情報、電波干渉に関する情報、STAのリンク情報(リンクの接続や切断の通知等)、ネットワークトポロジの変化を通知するための情報を含んでよい。ネットワーク情報はさらにまた、Beaconフレームのメトリクス情報等を含んでよい。
【0018】
なお、コントローラの役割を担うAPは、エージェントの機能を同時に備えてよい。本実施形態では、
図1に示す通信装置1および通信装置2のいずれもが、コントローラとエージェントの双方の機能を備えているものとして説明するが、コントローラとエージェントのいずれか一方の機能を備えてもよい。
Wi-Fi EasyMesh規格では、1つのマルチAPネットワークにおいて、コントローラは1つと規定されており、一方、複数のエージェントが許容されている。このため、本実施形態では、
図1の通信装置1および通信装置2のいずれか一方のAP(AP1またはAP2)がコントローラとして動作し、他方のAPがエージェントとして動作するものとして説明する。
図1に示す通信装置1および通信装置2は、Wi-Fi EasyMesh規格に準拠するAPとして動作可能な通信装置であって、
図2を参照して後述するハードウエアおよび機能構成を備える通信装置であればよい。通信装置1および通信装置2は、例えば、無線LAN(Local Area Network)ルータ、PC、タブレット端末、スマートフォン、テレビ、プリンタ、複写機、プロジェクタ等のデバイスであってよいが、これらに限定されない。また、通信装置1と通信装置2は相互に異なるデバイスであってよい。
【0019】
<通信装置のハードウエアおよび機能構成>
図2は、本実施形態に係る通信装置のハードウエアおよび機能構成の一例を示す図である。以下、
図2に示すハードウエアおよび機能構成を備える通信装置として、
図1の通信装置1を参照して説明するが、通信装置2もまた、
図2に示すハードウエアおよび機能構成を備えるものとする。
図2の通信装置1は、記憶部11、制御部12、機能部13、入力部14、出力部15、通信部16、およびアンテナ17を備える。
図2の通信装置1の各部は、システムバス18により通信可能に相互接続される。なお、通信装置1は、上記のモジュール全てを備えなくともよく、
図2の構成に加えて追加のモジュール等を備えてもよい。
【0020】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリにより構成され、後述する各種動作を実行するためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の情報を記憶する。なお、記憶部11として、ROMやRAM等のメモリの他、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、DVD等の記憶媒体を用いてよい。また、記憶部11は、複数のメモリを備えてよい。
【0021】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つまたは複数のプロセッサにより構成される。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、通信装置1全体を統括的に制御する。
【0022】
本実施形態において、制御部12は、マルチAPコントローラ部121、およびマルチAPエージェント部122を備える。マルチAPコントローラ部121は、通信装置1をマルチAPネットワークにおけるコントローラとして動作させる。マルチAPエージェント部122は、通信装置1を、マルチAPネットワークにおけるエージェントとして動作させる。通信装置1は、当該通信装置1への設定や操作に従って、マルチAPコントローラ部121、およびマルチAPエージェント部122のうち少なくとも一方の機能を実行する。
【0023】
制御部12は、マルチAPコントローラ部121、およびマルチAPエージェント部122を個別に有効化および無効化することができる。
具体的には、通信装置1がコントローラの役割とエージェントの役割を同時に担う場合、制御部12は、マルチAPコントローラ部121およびマルチAPエージェント部122の双方の機能を有効化する。一方、通信装置1がコントローラの役割のみを担う、つまりエージェントの役割を担わない場合には、制御部12は、マルチAPコントローラ部121の機能を有効化し、マルチAPエージェント部122の機能を無効化する。逆に、通信装置1がエージェントの役割のみを担う、つまりコントローラの役割を担わない場合には、制御部12は、マルチAPコントローラ部121の機能を無効化し、マルチAPエージェント部122の機能を有効化する。
【0024】
マルチAPコントローラ部121の機能を使用して、通信装置1は、エージェントから受信したネットワークのトポロジ情報やディスカバリー情報に基づいてエージェントに指示を発行することにより、マルチAPネットワーク5を制御する。
ここで、トポロジ情報は、例えばIEEE1905.1規格に規定されたTopology Notificationメッセージや、Topology Responseメッセージであってよい。ディスカバリー情報は、例えばIEEE1905.1規格に規定されたAP-Autoconfiguration SearchメッセージやAP-Autoconfiguration Responseメッセージであってよい。これらはいずれも、Wi-Fi EasyMesh規格の仕様に基づくメッセージである。
【0025】
コントローラは、これらトポロジ情報やディスカバリー情報に基づいて、Wi-Fi EasyMesh規格の仕様でマルチAP制御メッセージとして規定されるClient Association Control Requestメッセージを送信する。これにより、マルチAPネットワーク5における他のBSSにSTAが接続することを禁止させ、所定のBSSへ明示的にSTAをステアリング(ローミング)して、BSS間で効率的なSTAのステアリングを可能とする。
なお、通信装置1は、コントローラの役割を担わない場合には、マルチAPコントローラ部121を備えなくてもよい。同様に、通信装置1は、エージェントの役割を担わない場合には、マルチAPエージェント部122を備えなくてもよい。
【0026】
制御部12は、記憶部22に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により、通信装置1全体を制御するようにしてもよい。また、制御部12は、マルチコア等の複数のプロセッサを備え、複数のプロセッサにより通信装置1全体を制御するようにしてもよい。
【0027】
機能部13は、制御部12の制御の下、印刷や投影等の所定の処理を実行する。機能部13は、通信装置1が所定の処理を実行するためのハードウェアを含んでよい。例えば、通信装置1がプリンタである場合、機能部13は印刷部であり、印刷処理を実行する。この場合、機能部13が印刷処理するデータは、記憶部11に記憶されているデータであってもよく、後述する通信部16を介して他の通信装置から送信されるデータであってもよい。
入力部14は、マウス等のポインティングデバイスや音声入力、ボタン操作等を介してユーザからの各種操作の受付を行う。
出力部15は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部15による出力とは、例えば、LED(Light Emitting Diode)への表示や画面上への表示、スピーカによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含んでよい。あるいは、タッチパネル等のように、入力部14と出力部15の双方を1つのモジュールで実現してもよい。
【0028】
通信部16は、データリンク層のプロトコルであるIEEE802.11シリーズ規格に準拠した無線LANの制御や、IEEE802.3規格に準拠した有線LAN等の有線通信の制御を実行する。通信部16はさらに、ネットワーク層の通信プロトコルであるIP(Internet Protocol)通信の制御等を行う。
本実施形態において、通信部16は、IEEE802.11規格やIEEE802.3規格に従った通信上で、IEEE1905.1規格に従ったプロトコルを実行する。通信部16はさらに、Wi-Fi EasyMesh規格に従って、コントローラ、および/またはエージェントの制御を実行する。なお、IEEE1905.1規格は、データリンク層とネットワーク層の間の階層に位置するプロトコルを規定した規格である。
ただし、通信部16が利用可能な通信方式は上記に限定されない。例えば、Bluetooth(登録商標)、NFC、UWB、ZigBee、MBOA等の他の無線通信方式に準拠した通信装置や他の有線通信方式に準拠した通信装置にも、本実施形態の構成を適用可能である。ここで、NFCは、Near Field Communicationの略である。UWBは、Ultra Wide Bandの略である。MBOAは、Multi Band OFDM Allianceの略である。また、UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、WINETなどが含まれる。
通信部16は、アンテナ17を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を実行する。
【0029】
<コントローラとして動作する通信装置が実行する処理>
図3は、通信装置がマルチAPネットワーク5におけるコントローラとして動作する場合に実行されるコントローラ設定情報のバックアップ処理の一例を示すフローチャートである。以下、
図1の通信装置1がコントローラとして動作するものとして便宜上説明するが、通信装置1に替えて通信装置2がコントローラとして
図3に示す処理を実行してもよい。
なお、
図3の各ステップは、通信装置1の記憶部11に記憶されたプログラムを制御部12が読み出し、実行することで実現される。また、
図3に示すフローチャートの少なくとも一部をハードウェアにより実現してもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現するようにしてもよい。
【0030】
S1で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、通信装置1をマルチAPネットワーク5におけるコントローラとして動作させるための設定(以下、「コントローラ設定」という)を実行する。また、通信装置1をコントローラとして動作させるため設定すべき情報を、コントローラ設定情報という。
具体的なコントローラ設定の手法としては、例えば、入力部14を介してユーザが入力した情報を設定してもよいし、予め記憶部11に記憶されたコントローラ設定情報を読み込んで設定してもよい。あるいは、通信部16を介してエージェントから取得したネットワーク情報に基づいて、各エージェントの接続チャネルや送信パワーの設定など、マルチAPネットワーク5全体を制御するための設定を自動的に実行してもよい。
コントローラ設定情報は、SSID(Service Set Identifier)やチャネル設定、認証用のパスワードや証明書、エージェントの管理情報やネットワークトポロジ情報、ディスカバリー情報等の情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
S2で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、ステップS1で設定されたコントローラ設定情報をバックアップするか否かを判定する。具体的には、コントローラ設定情報をバックアップすべきか否かは、例えば、コントローラ設定が完了したか否かから判定することが可能であり、S1のコントローラ設定が完了した場合に、バックアップすると判定してよい。なお、判定手法はこれに限らず、コントローラ設定の少なくとも一部を変更したか否か、所定の周期時間が経過したか否か、等から判定してもよい。あるいは、通信装置1がコントローラとしての動作を停止する際、すなわち、機器の動作を停止する際、通信装置1の役割をエージェントへ変更する際、マルチAPネットワーク5から離脱する際等に、バックアップすると判定してもよい。
【0032】
S2で、コントローラ設定情報をバックアップしないと判定された場合(S2:N)、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、S3~S6をスキップしてコントローラ設定情報のバックアップ処理を実行せず、S7に進む。
S7で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、S1で設定されたコントローラ設定情報に基づいて、マルチAPネットワーク5を制御する。
【0033】
一方、コントローラ設定情報をバックアップすると判定された場合(S2:Y)、S3で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、自装置がゲートウェイか否かを判定する。自装置がゲートウェイか否かは、ゲートウェイの機能であるローカルネットワークをインターネットや広域ネットワーク(WAN5)に接続するためのプロトコル変換機能やネットワークアドレス変換機能を備えているか否かで判定することができる。また、自装置に、プロトコル変換機能やネットワークアドレス変換機能を実行するための各種設定が行われているか否かで判定することができる。
【0034】
自装置がゲートウェイと判定された場合(S3:Y)、S4で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、マルチAPネットワーク5内の通信装置1以外の記憶装置へ、S1で設定されたコントローラ設定情報をバックアップする。ここで、コントローラ設定情報をバックアップすべき記憶装置は、マルチAPネットワーク5に参加している他のエージェント、またはマルチAPネットワーク5内に参加している他のエージェントからアクセス可能な記憶装置を備える装置であってよい。
コントローラがゲートウェイの場合、コントローラが故障すると、新たにコントローラの役割を担うエージェントが、マルチAPネットワーク5の外からゲートウェイを介して設定情報を取得できなくなる。そのため、コントローラである通信装置1は、自身がゲートウェイの場合、マルチAPネットワーク5内の記憶装置へコントローラ設定情報をバックアップする。
【0035】
一方、S3で自装置がゲートウェイでないと判定された場合(S3:N)、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、S5で、所定のバックアップ先へコントローラ設定情報をバックアップする。S5でのバックアップ先は、S4の場合と異なり、マルチAPネットワーク5内の記憶装置や他のエージェントに限定されない。新たにコントローラの役割を担うエージェントは、ゲートウェイを介してマルチAPネットワーク5外にアクセス可能であるため、S5でのバックアップ先は、マルチAPネットワーク5外のクラウドや任意の記憶装置等であってもよい。また、バックアップ先は予めユーザにより指定された装置であってもよい。
【0036】
S6で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、S4またはS5のいずれかでコントローラ設定情報をバックアップしたバックアップ先の所在情報を、マルチAPネットワーク5に参加中の他のエージェントへ通知する。具体的には、バックアップ先の所在情報を通知する手法は、例えば、上述したIEEE1905.1規格で規定される各種制御メッセージを用いることが可能である。例えば、IEEE1905.1規格で規定されるTLV(type-length-value)フォーマットでバックアップ先の所在情報を記述して制御メッセージに含めることができるが、その詳細は
図4を参照して後述する。
なお、S6でコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する通知先のエージェントは、マルチAPネットワーク5に参加中の全てのエージェントであってもよいし、その一部のエージェントであってもよい。例えば、現在のコントローラに替わり、次にコントローラの役割を担うエージェントが事前に決まっている場合、少なくとも事前に決められたエージェントへ通知すれば足りる。
【0037】
S7で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、ステップS1で設定されたコントローラ設定情報に基づいて、マルチAPネットワーク5を制御し、処理を終了する。
図3に示すフローチャートの処理が実行された結果、本実施形態に係る通信装置1は、コントローラとして動作するために必要となるコントローラ設定情報をバックアップするともに、バックアップ先の所在情報をエージェントへ通知することができる。
【0038】
図4は、本実施形態において、通信装置1がコントローラ設定情報をバックアップするバックアップ先の所在情報を通知する際に使用するフォーマット(Controller Backup Info TLV format)の一例を示す。
図4では、コントローラ設定情報のバックアップ先を、IEEE1905.1規格に規定されるTLV(type-length-value)フォーマット40で記述する例が示されている。
図4のTLVフォーマット40は、tlvType41、tlvLength42、およびtlvValue43の3つのフィールドを含む。
なお、本実施形態では、
図4に示すとおり、各フィールドの長さをそれぞれ1オクテット、2オクテット、nオクテットとして定義しているが、TLVフォーマット40は
図4に示されるフィールド及びフィールド長に限定されない。また、TLVフォーマット40により記述されたコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報は、マルチAPネットワーク5のコントローラからエージェントへ通知されるIEEE1905.1規格に規定される制御メッセージに含まれてよい。
【0039】
図4を参照して、tlvTypeフィールド41へは、当該メッセージがコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を記述するTLVフォーマットであることを示す所定の値を設定する。なお、tlvTypeフィールド41の値は、マルチAPのTLVフォーマットのタイプを識別するために定義された、フォーマット毎に固有の値である。本実施形態では、現在Wi-Fi EasyMesh規格で定義されていない任意の値を利用してよい。
tlvLengthフィールド42へは、後続するフィールドにおけるオクテット数を示す可変の値を設定する。本実施形態では、tlvLengthフィールド42へは、後続のtlvValueフィールド43のオクテット数である2を設定するものとする。
【0040】
tlvValueフィールド43へは、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を設定する。コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報は、例えば、URL(Universal Resource Locator)、IPアドレス、MAC(Media Access Control)アドレス、ファイルパス等の文字列情報を含んでよい。また、tlvValueフィールド43へは、上記の所在情報の他、マルチAPネットワーク5に参加する他のAPにコントローラ設定情報をバックアップした記憶装置にアクセスさせるための識別情報が設定されてよい。
なお、コントローラ設定のバックアップ先の所在情報を含む構成であれば、TVLフォーマット40の各フィールド値は上述した値に限定されず、任意の値が使用されてよい。
このように、本実施形態では、コントローラ設定のバックアップ先の所在情報に関する情報を含むようIEEE 1905.1規格に規定される各種制御メッセージを拡張して、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知するため使用する。
ただし、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する手法も、上述したIEEE1905.1規格で規定される各種制御メッセージを使った通知手法に限定されず、任意の通知手法が使用されてよい。
【0041】
<エージェントとして動作する通信装置の処理>
図5および
図6は、通信装置がマルチAPネットワーク5のエージェントとして動作する場合に実行される処理を示すフローチャートである。
図5および
図6の各ステップは、
図3と同様に、記憶部11に記憶されたプログラムを制御部12が読み出し、実行することで実現されてもよく、少なくともその一部がハードウェアにより実現されてもよい。
以下、
図1の通信装置2がエージェントとして動作するものとして便宜上説明するが、通信装置2に替えて通信装置1がエージェントとして
図5および
図6に示す処理を実行してもよい。
【0042】
図5は、通信装置2がコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報の通知を受信する場合に実行される処理の一例を示すフローチャートである。
S51で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、コントローラからコントローラ設定情報のバックアップ先に関する通知があるか否かを判定する。具体的には、コントローラからコントローラ設定情報のバックアップ先に関する通知があるか否かは、例えば、通信部16を介してコントローラから通知メッセージを受信したか否かを判定することにより判定することが可能である。なお、通知手法の詳細は、
図3のステップS6と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
コントローラからコントローラ設定情報のバックアップ先の通知があると判定された場合(S51:Y)、S52で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、通知されたコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を記憶部11へ記憶する。一方、コントローラからコントローラ設定情報のバックアック先の通知がないと判定された場合(S51:N)、コントローラからのバックアップ先に関する通知を受信することなく処理を終了する。
【0044】
図6は、エージェントとして動作する通信装置2がコントローラの機能を起動する際に実行される処理の一例を示すフローチャートである。
S61で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、コントローラの機能を起動するか否かを判定する。具体的には、コントローラの機能を起動するか否かの判定は、入力部14を介してユーザからコントローラの役割を有効化する指示を受け付けたか否かを判定することで可能である。ただしユーザからの指示入力に限らず、例えば、通信部16を介してサービスプロバイダのオペレータからコントローラの役割を有効化する指示を受け付けたか否かを判定してもよい。あるいは、マルチAPネットワーク5のコントローラ自動選択アルゴリズムにより、コントローラとして選択されたか否かを判定してもよい。
【0045】
ステップS61で、コントローラの機能を起動すると判定された場合(S61:Y)、S62で、通信装置2のマルチAPコントローラ部121は、現在のコントローラからコントローラ設定情報を取得できるか否かをさらに判定する。現在のコントローラからコントローラ設定情報を取得できるか否かの判定は、マルチAPネットワーク5において既にコントローラとして動作中のAPを探索し、既に動作中のコントローラが存在するか否かを判定すればよい。
なお、コントローラの探索は、例えばWi-Fi EasyMesh規格の仕様に基づき、IEEE1905.1規格に規定されるAP-Autoconfiguration Searchメッセージをマルチキャスト送信して実行することができる。送信したAP-Autoconfiguration Searchメッセージに対する応答であるAP-Autoconfiguration Responseメッセージを受信した場合には、コントローラが存在すると判定できる。ここで、応答を受信しない場合には、所定期間または所定回数だけ再度探索処理を実行してもよい。また、現在のコントローラの探索手法は上記の手法に限らず、任意のプロトコルや任意のメッセージを利用してもよい。
【0046】
S61に戻り、一方、コントローラの機能を起動しないと判定された場合(S61:N)、S63で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、エージェントとしての機能を継続して、
図6の処理を終了する。
S62で、現在のコントローラからコントローラ設定情報を取得できると判定した場合(S62:Y)、S64で、通信装置2のマルチAPコントローラ部121は、現在のコントローラからコントローラ設定情報を取得する。現在のコントローラからコントローラ設定情報を取得する手法は、IEEE1905.1規格に規定される所定のメッセージを用いることが可能であるが、これに限定されず任意のプロトコルや任意のフォーマットを用いてもよい。
なお、S64で取得されるコントローラ設定情報は、SSIDやチャネル設定、認証に必要となるパスワードや証明書、エージェントの管理情報やネットワークのトポロジ情報、ディスカバリー情報などの情報のうちの少なくとも1つを含む。現在のコントローラは、コントローラ設定情報の取得要求に応じて、現在のコントローラに替えて新たにマルチAPネットワーク5におけるコントローラとして動作を開始するAPへ、コントローラ設定情報を転送する。
【0047】
一方、S62で、現在のコントローラからコントローラ設定情報を取得できないと判定された場合(S62:N)、S65に進む。S65で、通信装置2のマルチAPコントローラ部121は、
図5のS52で記憶したコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を参照して、バックアップ先からコントローラ設定情報を取得する。
なお、現在のコントローラとバックアップ先のいずれからもコントローラ設定情報を取得できない場合、コントローラ設定情報を取得できないことを示すエラー画面を出力部15へ表示してよい。あるいは、コントローラ設定情報の入力を促す画面を出力部15へ表示し、入力部14を介してユーザにコントローラ設定情報を入力させてもよい。
【0048】
S66で、通信装置2の制御部12は、S64またはS65で取得したコントローラ設定情報に基づいて、コントローラの機能を起動し、処理を終了する。
S66以降、通信装置2のマルチAPコントローラ部121は、今までのコントローラに替わる新たなコントローラとして、マルチAPネットワーク5全体を制御する。
【0049】
なお、マルチAPコントローラ部121の機能を起動するタイミングで、通信装置2は、コントローラ設定情報を更新してもよいし、またコントローラ設定情報のバックアップ先を変更してもよい。
また、上記のとおり、コントローラとして起動された通信装置が同時にエージェントとして機能してもよい。この場合、通信装置2の制御部12は、マルチAPエージェント部122の機能を無効化することなく継続したまま、マルチAPコントローラ部121の機能を起動することで、コントローラの機能とエージェントの機能を同時に実行させることが可能である。一方、コントローラである通信装置が同時にエージェントとして機能することができない場合、通信装置2の制御部12は、マルチAPエージェント部122の機能を無効化して、コントローラの機能とエージェントの機能を同時に機能させないよう制御する。
図5および
図6に示されるフローチャートの処理が実行された結果、通信装置2は、マルチAPネットワーク5上の現在のコントローラからコントローラ設定情報を取得できない場合であっても、バックアップ先からコントローラ設定情報を取得できる。これにより、現在のコントローラがその役割を停止した場合であっても、自装置のコントローラの機能を有効化することができる。
【0050】
<マルチAPネットワークにおける通信システム全体の制御シーケンス>
図7は、マルチAPネットワーク5に参加中のエージェントへ、コントローラが、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する場合の通信装置間の制御シーケンスの一例を示す。
なお、
図7では、AP1がコントローラとして機能し、AP2がエージェントとして機能するよう、予め設定されているものとする。APがコントローラやエージェントとして起動する場合、Wi-Fi EasyMesh規格の仕様に基づき所定の機能を立ち上げる。
具体的には、例えば、APがエージェントとして起動すると、マルチAPネットワーク5へ参加するため、まず、Backhaul STAと呼ばれるマルチAPデバイスのSTA機能を立ち上げ、マルチAPネットワーク5への参加処理を開始する。一方、APがコントローラとして起動すると、Fronthaul APと呼ばれるマルチAPデバイスのAP機能を立ち上げ、他のSTA装置や、他のAPで起動されたBackhaul STAからの接続を待ち受ける。
【0051】
S701で、コントローラとして起動したAP1は、自装置にコントローラ設定情報を設定し、または既に設定されたコントローラ設定情報を変更する。
S702で、AP1は、S701でのコントローラ設定の完了や変更に応じて、コントローラ設定情報をバックアップする。ここで、AP1が、
図1に示すように、ゲートウェイの役割を担っている場合、バックアップ先は、マルチAPネットワーク5内の他のエージェントや記憶装置となる。一方、AP1がゲートウェイの役割を担っていないものとすると、バックアップ先をマルチAPネットワーク5外のクラウドとしてもよく、マルチAPネットワーク5内の他のエージェントや記憶装置であってもよい。
【0052】
S703で、AP1は、AP2へコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する。コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報は、
図4に示すTLVフォーマット40を含むようIEEE1905.1規格に準拠する制御メッセージを拡張した所定のメッセージを送信することでAP2へ通知することができる。
なお、上記では、エージェントが1つのみ存在する例を説明したが、エージェントが複数存在する場合、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を複数のエージェントへ通知してもよい。
S704で、AP1からコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報の通知を受けたAP2は、S703で通知されたコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を、記憶部11に記憶する。
【0053】
S705で、コントローラとして機能するAP1が故障ないし停止した場合、またはマルチAPネットワーク5から離脱した場合、S706で、AP2は、コントローラの機能を起動する。
AP2がコントローラの機能を起動する契機としては、例えばマルチAPネットワーク5全体のパフォーマンス低下を検知したユーザの手動操作により、AP2のコントローラの機能を起動してもよい。あるいは、コントローラであるAP1がマルチAPネットワーク5に存在しなくなったことを検知したAP2が、自動的にコントローラの機能を起動してもよい。ただし、コントローラ機能の起動手法はこれらに限定されず、例えば、マルチAPネットワーク5のコントローラ自動選択アルゴリズムによりAP2が新たなコントローラとして選択された場合に、AP2のコントローラの機能を起動してもよい。
【0054】
なお、S705におけるコントローラの故障とは、ハードウェア上の故障に限定されず、例えば、ファームウェアの更新に失敗し、コントローラとして機能できなくなった場合等も含まれてよい。また、AP1が、コントローラの役割とエージェントの役割を同時に担う場合、コントローラの機能が停止してもエージェントの機能を継続することが可能である。
【0055】
S707で、新たにコントローラとして機能することになったAP2は、まず、現在のコントローラであるAP1に対してコントローラ設定情報を要求する。ここで、AP1が故障していなければ、AP1からコントローラ設定情報を取得できる。しかしながら、
図7のS705では、AP1は故障や停止、あるいはマルチAPネットワーク5から離脱しているため、AP2は、コントローラ設定情報の要求に対する応答を得られない。すなわち、AP2は、AP1からコントローラ設定情報を直接取得できない。
このため、S708で、AP2は、S704で予め記憶したコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を参照して、コントローラ設定情報のバックアップ先へコントローラ設定情報を要求する。
【0056】
S709で、AP2は、コントローラ設定情報のバックアップ先から、AP2に設定すべきコントローラ設定情報を取得し、S710で、取得されたコントローラ設定情報に基づいて、コントローラとしての各種制御を実行する。
なお、AP2は、S707でAP1へコントローラ設定情報を要求する前に現在のコントローラであるAP1の故障や停止、マルチAPネットワーク5からの離脱を検出した場合、S707をスキップしてAP1へコントローラ設定情報を要求しなくともよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、コントローラとして動作する通信装置は、マルチAPネットワーク上(無線ネットワーク上)でコントローラとして動作するため自装置に設定されたコントローラ設定情報を他の記憶装置にバックアップする。また、コントローラとして動作する通信装置は、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を、マルチAPネットワークに参加する他のエージェントへ通知する。
エージェントとして動作する通信装置は、コントローラから通知されるコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を記憶する。また、エージェントとして動作する通信装置は、自装置がコントローラとして起動する際に、バックアップ先の所在情報を参照し、所在情報で識別されるバックアップ先にアクセスしてコントローラ設定情報を取得する。
これにより、マルチAPネットワーク上のコントローラ設定情報を、簡易かつ確実に新たなコントローラへ引き継ぐことができる。ユーザが新たにコントローラの役割を担うAPに対して改めてコントローラ設定を実行する必要がないため、コントローラ設定に関するユーザ操作の煩雑さが低減する。
【0058】
(実施形態2)
以下、
図8から
図10を参照して、実施形態2を、実施形態1と異なる点についてのみ詳細に説明する。
実施形態1では、コントローラは、マルチAPネットワーク5に参加済みの他のエージェントに対して、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知した。これに対して本実施形態では、コントローラは、マルチAPネットワーク5への参加を試みるエージェントに対して、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する。
実施形態2に係る通信装置のハードウエアおよび機能構成は、
図2を参照して説明した実施形態1に係る通信装置と同様であるため、その説明を省略する。
【0059】
図8は、実施形態2に係る通信装置1がマルチAPネットワーク5のコントローラとして動作する場合に実行される処理の一例を示すフローチャートである。
S81で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、マルチAPネットワーク5へエージェントが新たに参加したか否かを判定する。エージェントが新たにマルチAPネットワーク5参加したか否かの判定は、マルチAPネットワーク5へ参加する際にエージェントが送信するコントローラ探索メッセージを受信したか否かで判定することができる。なお、コントローラの探索手法の詳細は、
図6のS62で説明した実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0060】
エージェントがマルチAPネットワークへ参加していないと判定された場合(S81:N)、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、S81に戻り、エージェントがマルチAPネットワーク5へ参加したか否かを判定する処理を繰り返す。なお、S81での判定は、所定時間経過後に終了してもよいし、エージェントがマルチAPネットワーク5へ参加したことが検出されるまで繰り返してもよい。
一方、エージェントがマルチAPネットワークへ参加したと判定された場合(S81:Y)、S82に進む。
S82で、通信装置1のマルチAPコントローラ部121は、マルチAPネットワークへ新たに参加したエージェントに対して、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する。
【0061】
なお、S82でバックアップ先の所在情報を通知する手法には、例えば
図6のS62で説明したコントローラの探索で使用するAP-Autoconfiguration Search/Responseメッセージを用いることが可能である。
具体的には、コントローラは、エージェントから受信したAP-Autoconfiguration Searchメッセージに対する応答としてAP-Autoconfiguration Responseメッセージを送信する。その際、
図4で示されるコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を示すTLVフォーマットを含むよう本応答メッセージを拡張した制御メッセージを送信すればよい。または、任意のMulti-AP制御メッセージによりバックアップ先の所在情報を通知してもよい。なお、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する手法は、上記の方式やプロトコルに限定されない。
図8に示すフローチャートの処理を実行した結果、通信装置1がコントローラとして動作する場合に、マルチAPネットワーク5へ新たに参加したエージェントに対して、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知することができる。
【0062】
図9は、実施形態2に係る通信装置2がマルチAPネットワーク5のエージェントとして動作する場合に実行す処理の一例を示すフローチャートである。
S91で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、例えば、ユーザーからの入力部14を介した指示に応じて、マルチAPネットワーク5へ参加する。このマルチAPネットワーク5に参加する手法には、例えば、Wi-Fi EasyMesh仕様に基づいて、Wi-Fi Protected Setup(WPS)を用いることが可能である。あるいは、Device Provisioning Protocol(DPP)を用いてもよい。WPSとDPPはWi-Fi Allianceが策定した規格であり、SSIDや暗号鍵等の無線LAN接続に必要な通信パラメータを通信装置に簡易に設定するための規格である。なお、マルチAPネットワーク5へ参加する手法は、上記の方式やプロトコルに限定されない。
【0063】
S92で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、マルチAPネットワーク5コントローラを探索する。なお、コントローラの探索手法の詳細は、
図6のS62で説明した実施形態1と同様であるため説明を省略する。
S93で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、探索の結果発見されたコントローラから、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を取得する。
S94で、通信装置2のマルチAPエージェント部122は、取得されたコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を、記憶部11に記憶する。
【0064】
例えば、S92でコントローラを探索した際にコントローラから受信した探索応答メッセージ(AP-Autoconfiguration Response)から、コントローラ設定のバックアップ先の所在情報を取得して記憶部11へ記憶すればよい。あるいは、S92での探索の結果発見されたコントローラへ、改めてコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を要求するためのメッセージを送信し、その応答から取得してもよい。
なお、エージェントとして動作する通信装置2が、コントローラからコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を取得した後、コントローラの機能を起動する際の処理は、
図6のS61~S66に示す実施形態1と同様であるため、その説明を省略する。
図9に示すフローチャートの処理が実行された結果、通信装置2がエージェントとして動作する場合に、マルチAPネットワーク5へ新たに参加するタイミングでコントローラからコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を取得することができる。
【0065】
図10は、本実施形態において、マルチAPネットワーク5に新たに参加するエージェントへ、コントローラが、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を通知する場合の通信装置間の制御シーケンスの一例を示す。
なお、
図10では、
図7と同様、AP1がコントローラとして機能し、AP2がエージェントとして機能するよう、予め設定されているものとする。
図10において、S701とS702の処理は、それぞれ
図7に示すS701とS702と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
S101およびS102で、例えばユーザがAP1およびAP2のWPSのプッシュボタンをそれぞれ押下する操作により、エージェントとして動作するAP2は、コントローラとして動作するAP1と同期して、マルチAPネットワーク5への参加を開始する。
【0067】
S103~S105で、WPSのプッシュボタンの押下を契機としたマルチAPネットワークへの参加シーケンスが実行される。
具体的には、S103で、Wi-Fi EasyMesh規格の仕様に基づいて、WPS AuthenticationやWPS Association等の無線フレームが、AP1とAP2の間で送受信される。
S104で、エージェントであるAP2から、コントローラを探索するAP-Autoconfiguration Searchメッセージが、コントローラであるAP1に送信される。
S105で、AP-Autoconfiguration Searchメッセージへの応答として、コントローラであるAP1からエージェントであるAP2へ、AP-Autoconfiguration Responseメッセージが送信される。ここで、AP1からAP2へ送信されるAP-Autoconfiguration Responseメッセージは、
図4のバックアップ先の所在情報を記述するTLVフォーマットが含まれるよう拡張された制御メッセージである。
【0068】
S704で、AP2は、AP1から受信されたAP-Autoconfiguration Responseメッセージを参照し、コントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を取得して、記憶部11に記憶する。
バックアップ先所在情報を記憶した後のS705~S710のシーケンスの詳細は、
図7のS705~S710を参照して説明した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、エージェントとして動作する通信装置が、マルチAPネットワークへ参加する際に、コントローラから受信した探索応答メッセージに含まれるコントローラ設定情報のバックアップ先の所在情報を取得する。これにより、マルチAPネットワークへ新たにエージェントが参加してネットワークトポロジが変化した場合でも、マルチAPネットワーク上のコントローラ設定情報を、簡易かつ確実に引き継ぐことができる。
【0070】
(変形例)
上記の実施形態においては、コントローラ設定情報のバックアップ先としてクラウドや他のエージェントを例示したが、コントローラ設定情報のバックアップ先はこれらに限定されない。たとえば、現在のコントローラに替わり、新たにコントローラとなるべき通信装置からアクセス可能である限り、コントローラとして動作する通信装置は、バックアップ先として、クラウドや他のエージェント以外の記憶装置を備える装置を用いてもよい。また、バックアップ先をユーザが設定できるように構成してもよい。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、Webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
また、本発明は、上述の実施形態の一部または1以上の機能を実現するプログラムによっても実現可能である。すなわち、そのプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)における1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理により実現可能である。また、そのプログラムをコンピュータ可読な記録媒体に記録して提供してもよい。
また、コンピュータが読みだしたプログラムを実行することにより、実施形態の機能が実現されるものに限定されない。例えば、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記した実施形態の機能が実現されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…アクセスポイント(AP)、2…AP、3…ステーション(STA)、4…STA、5…マルチAPネットワーク、6…WAN、11…記憶部、12…制御部、13…機能部、14…入力部、15…出力部、16…通信部、17…アンテナ、18…システムバス、121…マルチAPコントローラ部、122…マルチAPエージェント部