(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】抗PD-1/抗VEGFA二官能性抗体、その医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241118BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241118BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241118BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241118BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/13 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183148
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2021510912の分割
【原出願日】2019-08-30
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】201811002548.4
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519063026
【氏名又は名称】中山康方生物医▲藥▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AKESO BIOPHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】6 Shennong Road,Torch Development Zone Zhongshan,Guangdong 528437 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】李 百 勇
(72)【発明者】
【氏名】夏 瑜
(72)【発明者】
【氏名】王 忠 民
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/133837(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106967172(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105175545(CN,A)
【文献】国際公開第2017/181111(WO,A2)
【文献】特表2017-526635(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106977602(CN,A)
【文献】抗体医薬の最前線,2007年07月20日,p.4- 11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 39/00
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む、がんを患う対象の処置における使用のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は対象に静脈投与される、ならびに
前記二重特異性抗体は、以下:
抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号15、配列番号16および配列番号17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号18、FTSおよび配列番号20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2およびLHCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片;および
抗PD-1抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号21、配列番号22および配列番号23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号24、RANおよび配列番号26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2およびLHCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片、を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)
2
、Fv、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体およびダイアボディから選択され;
ならびに/あるいは、
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)
2
、Fv、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体およびダイアボディから選択される、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片が免疫グロブリンであり、ここで前記免疫グロブリンが配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号18、FTSおよび配列番号20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む軽鎖可変領域を含む;ならびに
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片が一本鎖抗体であり、ここで前記一本鎖抗体が配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号24、RANおよび配列番号26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片が一本鎖抗体であり、ここで前記一本鎖抗体が配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号18、FTSおよび配列番号20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む軽鎖可変領域を含む;ならびに
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片が免疫グロブリンであり、ここで前記免疫グロブリンが配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号24、RANおよび配列番号26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されている;および
前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されている;
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されている;および
前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されている;
請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記免疫グロブリンがIgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMアイソタイプである、請求項3~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記免疫グロブリンが2対のポリペプチド鎖を含み、ここで各対は重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記二重特異性抗体は2つの一本鎖抗体を含み、それぞれの一本鎖抗体の1つの末端が、前記免疫グロブリンの2つの重鎖ポリペプチドのそれぞれのC末端またはN末端に連結されている、請求項3~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記免疫グロブリンが、ヒト抗体に由来する定常領域を含む、請求項3~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記免疫グロブリンの定常領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の定常領域から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記免疫グロブリンが重鎖定常領域および軽鎖定常領域を含み、ここで前記重鎖定常領域がヒトIgガンマ-1鎖C領域またはヒトIgガンマ-4鎖C領域であり、前記軽鎖定常領域がヒトIgカッパ鎖C領域である、
請求項3~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片および前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片が、直接的に、またはリンカー断片によって連結される、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記リンカー断片が(GGGGS)mであり、式中、mが正の整数である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
mが1、2、3、4、5または6である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記二重特異性抗体中の前記抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片および前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の数が、それぞれ独立して、1、2またはそれ以上である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片が抗VEGFA IgG1免疫グロブリンであり、かつ2対のポリペプチド鎖を含む、ここで各対が重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含む、ここで
(i)前記重鎖ポリペプチドが配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変領域、およびヒトIgガンマ-1鎖C領域を含む;および
(ii)前記軽鎖ポリペプチドが配列番号18、FTSおよび配列番号20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む軽鎖可変領域、およびヒトIgカッパ鎖C領域を含む;ここで
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片が2つの抗PD-1一本鎖抗体である、ここで各一本鎖抗体は、
(i)配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む重鎖可変領域;および
(ii)配列番号24、RANおよび配列番号26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む軽鎖可変領域を含む;
ここで抗PD-1一本鎖抗体のそれぞれの重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、配列番号13に記載されたアミノ酸配列を有する第1のリンカー断片によって連結される;ならびに
ここで各抗PD-1一本鎖抗体の1つの末端は配列番号13に記載されたアミノ酸配列を有する第2のリンカー断片を介して前記抗VEGFA IgG1免疫グロブリンの各重鎖ポリペプチドのC末端に連結されている、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記がんが結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、リンパ腫および白血病からなる群より選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記肺がんが、非小細胞肺がんである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が、対象に複数回投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬組成物が、約0.02~50mg/kg、0.1~50mg/kg、0.1~25mg/kgまたは1~10mg/kgの用量で投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が、約10mg/kg、20mg/kgまたは30mg/kgの用量で投与される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物が化学療法剤と組み合わせて投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記化学療法剤が、前記医薬組成物の投与前に、その投与と同時に、あるいはその投与後に投与される、請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍治療および免疫生物学の分野に関し、詳しくは抗PD-1/抗VEGFA二官能性抗体(bifunctional antibody)、その医薬組成物およびその使用に関する。詳しくは、本発明は、抗ヒトPD-1/抗ヒトVEGFA二官能性抗体、その医薬組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
腫瘍、特に悪性腫瘍は、今日の世の中では健康を脅かす重篤な疾患であり、各種疾患の中で死亡の第2の主要原因である。近年、その発病率は著しく増加している。悪性腫瘍は、治療反応性が悪く、後期の転移率が高く、予後が不良であることが特徴である。現在臨床的に採用されている従来の治療方法(例えば、放射線療法、化学療法および外科治療など)は、疼痛を大幅に緩和し、生存時間を延ばすが、それらの方法には大きな制限があり、さらにそれらの効果を向上させるのは困難である。
【0003】
腫瘍増殖の2つの異なる段階、すなわち、血管が関与しない緩慢な成長段階から血管が関与する急速な増殖段階がある。血管新生によって、血管切り替え段階を完了するのに十分な栄養を腫瘍は獲得することができ、血管新生が生じない場合、原発腫瘍は1~2mm未満になり、したがって、転移は起こり得ない。
【0004】
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、内皮細胞の分裂および増殖を促進し、新しい血管の形成を促進し、血管透過性を改良することができる増殖因子であり、またこれは、細胞表面上の血管内皮細胞増殖因子受容体に結合し、チロシンキナーゼシグナル伝達経路の活性化によって役割を果たす。腫瘍組織において、腫瘍細胞、ならびに腫瘍へ侵入するマクロファージおよびマスト細胞は高レベルのVEGFを分泌し、パラクリン様式で腫瘍血管内皮細胞を刺激し、内皮細胞の増殖および移動を促進し、血管新生を誘導し、腫瘍の連続的な増殖を促進し、血管透過性を強化し、周囲組織内の線維素沈着を引き起こし、単核細胞、繊維芽細胞および内皮細胞の浸潤を促進し、これは腫瘍ストロマの形成と腫瘍細胞の新たな血管への侵入を容易にし、また腫瘍転移を促進することができる。したがって、腫瘍血管新生を抑制することが、現在最も有望な腫瘍治療方法の1つであると考えられる。VEGFファミリーには、VEGFA、VEGFB、VEGFC、VEGFDおよびPIGFが含まれる。血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)には、VEGFR1(Flt1としても知られている)、VEGFR2(KDRまたはFlk1としても知られている)、VEGFR3(Flt4としても知られている)、およびニューロピリン-1(NRP-1)が含まれる。最初の3つの受容体は構造において類似しており、チロシンキナーゼスーパーファミリーに属し、膜外領域、膜貫通セグメントおよび膜内領域から構成されており、膜外領域は免疫グロブリン様ドメインから構成され、膜内領域はチロシンキナーゼ領域である。VEGFR1およびVEGFR2は、主として血管内皮細胞の表面に位置しており、VEGFR3は、主としてリンパ内皮細胞の表面に位置している。
【0005】
VEGFファミリーの分子は、これらの受容体に対して異なる親和性を有する。VEGFAは、主に、VEGFR1、VEGFR2およびNRP-1と共に作用する。VEGFR1は、最も初期に発見された受容体であり、通常の生理学的条件下でVEGFR2よりもpVEGFAに対して高い親和性を有しているが、細胞内セグメント内のチロシナーゼ活性はVEGFR2より低い(Ma Li、J. Chinese Journal of Birth Health and Heredity、24巻(5号):146~148頁(2016))。
【0006】
VEGFR2は血管新生および血管工学の主要な制御因子であり、VEGFR1よりもはるかに高いチロシンキナーゼ活性を有する。VEGFR2は、リガンドVEGFAに結合した後、血管内皮細胞の増殖、分化など、ならびに血管の形成プロセスおよび血管の浸透性を媒介する(Roskoski R Jr.ら、Crit Rev Oncol Hematol、62巻(3号):179~213頁(2007))。VEGFAは、VEGFR2に結合した後、下流のPLC-γ-PKC-Raf-MEK-MAPKシグナル経路を介して細胞内の関連タンパク質遺伝子の転写発現を媒介し、それにより血管内皮細胞の増殖を促進する(Takahashi Tら、Oncogene、18巻(13号):2221~2230頁(1999))。
【0007】
VEGFR3はチロシンキナーゼファミリーメンバーのうちの1つであり、主に胚血管内皮細胞および成体リンパ内皮細胞を発現し、またVEGFCおよびVEGFDはVEGFR3に結合してリンパ内皮細胞の増殖および移動を刺激し、リンパ管の新生を促進する;NRP-1は非チロシンキナーゼ膜貫通型タンパク質であり、生体シグナルを独立して伝達することはできず、VEGFチロシンキナーゼ受容体と複合体を形成した後でのみ、シグナル伝達を媒介することができる(Ma Li、Chinese Journal of Birth Health and Heredity、24巻(5号):146~148頁(2016))。
【0008】
VEGFAおよびVEGFR2は、主に、VEGFAがVEGFR2に結合する前後の血管新生の調節に関与しており、上流および下流の経路での多数の中間シグナルのカスケード反応が形成され、最後に、生理機能が、内皮細胞の増殖、生存、移動、浸透性増加および末梢組織への浸潤などで変化する(Dong Hongchaoら、2014年9月、Journal of Modern Oncology、22巻(9号):2231~3)。
【0009】
現在、ヒトVEGF、特にVEGFA、例えばベバシズマブを標的とするいくつかのヒト化モノクローナル抗体があり、ベバシズマブは、2004年に連続して様々な腫瘍、例えば、非小細胞肺がん、腎細胞がん、子宮頸がんおよび転移性結腸直腸がんなどの治療用として米国食品医薬品局によって承認されている。
【0010】
CD279としても知られている、プログラム細胞死受容体-1(PD-1)は、I型膜貫通糖タンパク質膜表面受容体であり、CD28免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、一般に、T細胞、B細胞および骨髄細胞において発現される。PD-1には、2つの天然リガンド、PD-L1およびPD-L2がある。PD-L1およびPD-L2は両方ともB7スーパーファミリーに属しており、非造血細胞および様々な腫瘍細胞を含む、様々な細胞の膜表面で構成的または誘導的に発現される。PD-L1は、主に、T細胞、B細胞、DCおよび微小血管内皮細胞、ならびに様々な腫瘍細胞で発現されるが、PD-L2は、抗原提示細胞、例えば樹状細胞およびマクロファージでのみ発現される。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用は、リンパの活性化、T細胞の増殖、ならびにサイトカイン、例えばIL-2およびIFN-γの分泌を抑制することができる。
【0011】
多くの研究から、腫瘍微細環境は腫瘍細胞を免疫細胞による損傷から保護することができること、腫瘍微細環境に浸潤したリンパ球におけるPD-1の発現がアップレギュレートされること、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、結腸がんおよび神経膠腫などの様々な原発腫瘍組織が免疫組織化学分析においてPD-L1陽性であることが明らかになっている。それと同時に、腫瘍におけるPD-L1の発現は、がん患者の予後不良と有意に関連している。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用の遮断は、腫瘍特異的T細胞免疫を促進し、腫瘍細胞の免疫除去効率を増強し得る。多数の臨床試験からは、PD-1またはPD-L1を標的とする抗体がCD8+ T細胞の腫瘍組織への浸潤を促進し、抗腫瘍免疫エフェクター因子、例えばIL-2、IFN-γ、グランザイムBおよびパーフォリンなどをアップレギュレートし、それによって腫瘍の増殖を効果的に抑制することができることが明らかである。
【0012】
さらに、抗PD-1抗体はまた、ウイルス慢性感染症の治療においても使用することができる。ウイルス慢性感染症は、多くの場合、ウイルス特異的エフェクターT細胞の機能の喪失とその数の減少を伴っている。PD-1とPD-L1との間の相互作用はPD-1抗体を注射することにより遮断され、それによって、ウイルス慢性感染症におけるエフェクターT細胞の枯渇を有効に抑制することができる。
【0013】
PD-1抗体の広範囲の抗腫瘍に関する可能性と驚くべき効果により、PD-1経路を標的とする抗体が様々な腫瘍の治療で:非小細胞肺がん、腎細胞がん、卵巣がんおよび黒色腫の治療において(Homet M. B., Parisi G.ら、Anti-PD-1 therapy in melanoma. Semin Oncol. 2015年6月;42巻(3号):466~473頁)、ならびにリンパ腫および貧血において(Held SA, Heine Aら、Advances in immunotherapy of chronic myeloid leukemia CML. Curr Cancer Drug Targets 2013年9月;13巻(7号):768~74頁)、飛躍的進歩をもたらすことが業界において広く容認されている。
【0014】
二重特異性抗体としても知られている二官能性抗体は、2つの異なる抗原を同時に標的とする特定の医薬であり、免疫選択精製によって製造することができる。さらに、二重特異性抗体はまた、遺伝子工学によっても製造することができ、それは結合部位の最適化、合成の型の検討および収量などの面における対応の柔軟性から特定の利点を有する。現在、二重特異性抗体は、45種を超えて存在することが示されている(Muller D,
Kontermann RE. Bispecific antibodies for cancer immunotherapy: current perspectives. BioDrugs 2010;24巻:89~98頁)。多くの二重特異性抗体は、IgG-ScFv型、すなわちMorrison型で開発されており(Coloma M. J., Morrison S. L. Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies. Nat Biotechnol.、1997;15巻:159~163頁)、天然に存在するIgG型とのその類似性と、抗体の操作、発現および精製における利点から、二重特異性抗体の理想の型のうちの1つであることが実証されている(Miller B. R., Demarest S. J.ら、Stability engineering of scFvs for the development
of bispecific and multivalent antibodies. Protein Eng Des Sel 2010;23巻:549~57頁;
Fitzgerald J, Lugovskoy A. Rational engineering of antibody therapeutics targeting multiple oncogene pathways. MAbs 2011;3巻:299~309頁)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
現在、PD-1とVEGF(例えばVEGFA)の両方を標的とする二官能性抗体医薬を開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
概要
徹底的な調査と創意的取り組みによって、また市販のVEGFAモノクローナル抗体アバスチン(Avastin)(ベバシズマブ)および以前に得た14C12H1L1(中国公開特許公報第CN106977602A号を参照)に基づいて、本発明者らは、VP101と命名したヒト化二官能性抗体を得たが、この抗体は、VEGFAとPD-1に同時結合することが可能であり、VEGFAのVEGFR2への結合とPD-1のPD-L1への結合を遮断することができる。
【0017】
本発明者らは、驚いたことに、VP101が、
ヒト免疫細胞の表面上のPD-1に有効に結合することと、PD-L1およびPD-1によって媒介される免疫抑制を取り除くことと、ヒト免疫細胞によるIFN-γおよびIL-2の分泌を促進すること;
血管内皮細胞のVEGFA誘導性増殖を有効に抑制し、それにより、腫瘍誘導性血管新生を抑制すること;ならびに/あるいは、
悪性腫瘍、例えば、肝臓がん、肺がん、黒色腫、腎腫瘍、卵巣がんおよびリンパ腫などを予防および治療するための医薬の調製に使用される可能性を有すること
が可能であることを見出した。
【0018】
本発明を以下に詳述する。
【0019】
本発明の一態様は、
VEGFAを標的とする第1のタンパク質機能領域と、
PD-1を標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む、二重特異性抗体であって;
好ましくは、
第1のタンパク質機能領域が、抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片、配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む抗VEGFA抗体の重鎖可変領域、および配列番号18~20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む前記抗VEGFA抗体の軽鎖可変領域であり;
第2のタンパク質機能領域が、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片、配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む前記抗PD-1抗体の重鎖可変領域、配列番号24~26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む前記抗PD-1抗体の軽鎖可変領域である、
二重特異性抗体に関する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、抗VEGFA抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、およびダイアボディから選択され;
ならびに/あるいは、
抗PD-1抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、およびダイアボディから選択される、
二重特異性抗体が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG-scFv型である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、第1のタンパク質機能領域は、免疫グロブリン、配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む免疫グロブリンの重鎖可変領域、および配列番号18~20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む免疫グロブリンの軽鎖可変領域であり;第2のタンパク質機能領域は、一本鎖抗体、配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む一本鎖抗体の重鎖可変領域、および配列番号24~26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む一本鎖抗体の軽鎖可変領域であり;
または、
第1のタンパク質機能領域は、一本鎖抗体、配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む一本鎖抗体の重鎖可変領域、および配列番号24~26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む一本鎖抗体の軽鎖可変領域であり;第2のタンパク質機能領域は、免疫グロブリン、配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む免疫グロブリンの重鎖可変領域、および配列番号18~20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む免疫グロブリンの軽鎖可変領域である。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、VEGFAを標的とする第1のタンパク質機能領域と、PD-1を標的とする第2のタンパク質機能領域を含む、二重特異性抗体であって;
第1のタンパク質機能領域が、免疫グロブリン、配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む免疫グロブリンの重鎖可変領域、および配列番号18~20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む免疫グロブリンの軽鎖可変領域であり;第2のタンパク質機能領域が、一本鎖抗体、配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む一本鎖抗体の重鎖可変領域、および配列番号24~26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む一本鎖抗体の軽鎖可変領域であり;
または、
第1のタンパク質機能領域が、一本鎖抗体、配列番号21~23にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む一本鎖抗体の重鎖可変領域、および配列番号24~26にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む一本鎖抗体の軽鎖可変領域であり;第2のタンパク質機能領域が、免疫グロブリン、配列番号15~17にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む免疫グロブリンの重鎖可変領域、および配列番号18~20にそれぞれ記載されたアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む免疫グロブリンの軽鎖可変領域である、
二重特異性抗体が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、
免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されており;
または、
一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されており;免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されている、
二重特異性抗体が提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、
免疫グロブリンがマウス以外の種に由来した、例えばヒト抗体に由来した非CDR領域を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、
免疫グロブリンがヒト抗体に由来した定常領域を含み;
好ましくは、免疫グロブリンの定常領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の定常領域から選択される、
二重特異性抗体が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、
免疫グロブリンの重鎖定常領域がヒトIgガンマ-1鎖C領域またはヒトIgガンマ-4鎖C領域であり、その軽鎖定常領域がヒトIgカッパ鎖C領域である、
二重特異性抗体が提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域はヒト化されている。例えば、各重鎖定常領域はIgガンマ-1鎖C領域、ACCESSION:P01857であり、各軽鎖定常領域はIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、
第1のタンパク質機能領域および第2のタンパク質機能領域が、直接的に、またはリンカー断片によって連結され;
好ましくは、リンカー断片が(GGGGS)mであり、式中、mが正の整数、例えば1、2、3、4、5、または6であり、GGGGS(配列番号14)がリンカーの構成単位である、
二重特異性抗体が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、第1のタンパク質機能領域および第2のタンパク質機能領域の数が、それぞれ独立して、1、2またはそれ以上である、二重特異性抗体が提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、1つの免疫グロブリンおよび2つの一本鎖抗体が存在し、好ましくは2つの同一の一本鎖抗体が存在する、二重特異性抗体が提供される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫グロブリンがIgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMであり、好ましくはIgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である、二重特異性抗体が提供される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、一本鎖抗体が免疫グロブリンの重鎖のC末端に連結されている、二重特異性抗体が提供される。免疫グロブリンは2つの重鎖を有するので、2つの一本鎖抗体分子は1つの免疫グロブリン分子に連結される。好ましくは、2つの一本鎖抗体分子は同一である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、2つの一本鎖抗体が存在し、それぞれの一本鎖抗体の1つの末端が免疫グロブリンの2つの重鎖のうちの1つのC末端またはN末端に連結されている、二重特異性抗体が提供される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、ジスルフィド結合は、一本鎖抗体のVHとVLの間に存在する。抗体のVHとVLの間にジスルフィド結合を導入する方法は、当技術分野においては周知であり、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,747,654号;Rajagopalら、Prot. Engin.10巻(1997)1453~1459頁;Reiterら、Nat. Biotechnol.14巻(1996)1239~1245頁;Reiterら、Protein Engineering 8巻(1995)1323~1331頁;Webberら、Molecular Immunology 32巻(1995)249~258頁;Reiterら、Immunity 2巻(1995)281~287頁;Reiterら、JBC 269巻(1994)18327~18331頁;Reiterら、Inter. J. of Cancer 58巻(1994)142~149頁;またはReiterら、Cancer Res.54巻(1994)2714~2718頁を参照されたい。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体が10-5M未満、例えば10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M以下または未満のKDでVEGFAタンパク質および/またはPD-1タンパク質に結合し;好ましくは、KDがFortebio分子間相互作用装置によって測定される、二重特異性抗体が提供される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体が1nM未満、0.5nM未満、0.2nM未満、0.15nM未満、または0.14nM未満のEC50でVEGFAタンパク質に結合し;好ましくは、EC50が間接的ELISAによって検出され;
および/または、
二重特異性抗体が1nM未満、0.5nM未満、0.2nM未満、0.17nM未満、0.16nM未満または0.15nM未満のEC50でPD-1タンパク質に結合し;好ましくは、EC50が間接的ELISAによって検出される、
二重特異性抗体が提供される。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸分子に関する。
【0039】
本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含むベクターに関する。
【0040】
本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含むか、または本発明のベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0041】
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体を調製する方法であって、本発明の宿主細胞を適切な条件で培養することと、二重特異性抗体を細胞培養物から単離することを含む、方法に関する。
【0042】
本発明の別の態様は、二重特異性抗体と複合部分を含む複合体であって、二重特異性抗体が本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体であり、複合部分が検出可能な標識であり;好ましくは、複合部分が放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、発色物質または酵素である、複合体に関する。
【0043】
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体を含むか、または本発明の複合体を含むキットであって;
好ましくは、キットが、二重特異性抗体に特異的に結合することが可能な二次抗体をさらに含み;任意選択で、二次抗体が、検出可能な標識、例えば、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、発色物質または酵素をさらに含む、キットに関する。
【0044】
本発明の別の態様は、サンプル中のVEGFAおよび/またはPD-1の存在またはレベルを検出するためのキットの調製における、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体の使用に関する。
【0045】
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体を含むか、または本発明の複合体を含む、医薬組成物に関し;任意選択で、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0046】
本発明の二重特異性抗体または本発明の医薬組成物は、製薬の分野において公知の任意の剤形、例えば、錠剤、丸剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、ゲル、カプセル、粉末、顆粒、エリキシル、トローチ、坐薬、注射剤(注射溶液、注射用滅菌粉末および注射用濃縮溶液を含む)、吸入剤、ならびに噴霧剤などに製剤化することができる。好ましい剤形は、投与および治療用途の意図した様式によって決まる。本発明の医薬組成物は、製造条件および保存条件下で無菌であり安定化するものとする。好ましい剤形の1つは、注射剤である。そのような注射剤は、無菌注射溶液であり得る。例えば、無菌注射溶液は、以下の方法によって調製することができる:本発明の必要量の二重特異性抗体が適切な溶媒に加えられ、任意選択で、他の所望する成分(限定するものではないが、pH調節剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、等張剤、保存剤、希釈剤、またはそれら任意の組合せを含む)が同時に加えられ、続いて濾過および滅菌される。さらに、滅菌注射溶液は、便利な保存および使用のために、無菌凍結乾燥粉末剤(例えば真空乾燥または凍結乾燥による)として調製することができる。そのような無菌凍結乾燥粉末剤は、使用前に、適切な担体(例えば、無菌発熱性物質除去蒸留水)に分散させることができる。
【0047】
さらに、本発明の二重特異性抗体は、投与を容易にするために、単位用量剤形の医薬組成物中に存在させることができる。いくつかの実施形態では、単位用量は、少なくとも1mg、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、または少なくとも100mgである。医薬組成物が液体(例えば注射)剤形である場合、それは本発明の二重特異性抗体を少なくとも0.1mg/mL、例えば、少なくとも0.25mg/mL、少なくとも0.5mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも5mg/mL、少なくとも8mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも15mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも75mg/mL、または少なくとも100mg/mLなどの濃度で含むことができる。
【0048】
本発明の二重特異性抗体または医薬組成物は、限定するものではないが、経口経路、口腔経路、舌下経路、眼内経路、局所経路、非経口経路、直腸経路、髄腔内経路、嚢内経路、鼠蹊部経路、膀胱内経路、局所経路(例えば粉末剤、軟膏もしくは点滴剤)、または経鼻経路を含む、当技術分野において公知の任意の適切な方法によって投与され得る。しかし、多くの治療用途においては、投与の好ましい経路/形式は、非経口である(例えば、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射および筋肉内注射)。投与の経路および/または形式が意図した目的に応じて変わるということは、当業者には認識されよう。好ましい実施形態では、本発明の二重特異性抗体または医薬組成物は、静脈点滴または注射によって投与される。
【0049】
本明細書で提供された二重特異性抗体または医薬組成物は、単独でもしくは組合せて使用することができるか、または追加の薬学的に有効な薬剤(例えば腫瘍化学療法剤)と組み合わせて使用することができる。そのような追加の薬学的に有効な薬剤は、本発明の二重特異性抗体または本発明の医薬組成物の投与前に、その投与と同時に、あるいはその投与後に投与することができる。
【0050】
本発明では、投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答または予防応答)を達成するように調節され得る。例えば、それは単回投与であってもよく、ある期間にわたっての複数回投与であってもよく、また、治療の緊急程度に伴って用量を比例して低減または増加させることを特徴とし得る。
【0051】
本発明の別の態様は、悪性腫瘍を予防および/または治療するための医薬の調製における本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または本発明の複合体の使用であって、好ましくは、悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、例えば非小細胞肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍および白血病から選択される、使用に関する。
【0052】
本発明の別の態様は、
(1)サンプル中のVEGFAのレベルを検出するための医薬もしくは薬剤、
VEGFAのVEGFR2への結合を遮断するための医薬もしくは薬剤、
VEGFAの活性もしくはレベルをダウンレギュレートするための医薬もしくは薬剤、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激を軽減するための医薬もしくは薬剤、
血管内皮細胞増殖を抑制するための医薬もしくは薬剤、または、
腫瘍血管新生を遮断するための医薬もしくは薬剤;
ならびに/あるいは、
(2)PD-1のPD-L1への結合を遮断するための医薬もしくは薬剤、
PD-1の活性もしくはレベルをダウンレギュレートするための医薬もしくは薬剤、
生体におけるPD-1の免疫抑制を軽減するための医薬もしくは薬剤、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌を促進するための医薬もしくは薬剤、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌を促進するための医薬もしくは薬剤
の調製における、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または本発明の複合体の使用に関する。
【0053】
本発明の一実施形態では、使用は、非治療的および/または非診断的である。
【0054】
本発明の別の態様は、有効量の本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または本発明の複合体を細胞に投与することを含むin vivoでの方法またはin vitroでの方法であって、
(1)サンプル中のVEGFAのレベルを検出する方法、
VEGFAのVEGFR2への結合を遮断する方法、
VEGFAの活性もしくはレベルをダウンレギュレートする方法、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激を軽減する方法、
血管内皮細胞増殖を抑制する方法、または、
腫瘍血管新生を遮断する方法;
ならびに/あるいは、
(2)PD-1のPD-L1への結合を遮断する方法、
PD-1の活性もしくはレベルをダウンレギュレートする方法、
生体におけるPD-1の免疫抑制を軽減する方法、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌を促進する方法、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌を促進する方法
から選択される、方法に関する。
【0055】
本発明の一実施形態では、in vitroでの方法は、非治療的および/または非診断的である。
【0056】
本発明のin vitro実験では、抗VEGFA抗体および抗VEGFA/抗PD-1二官能性抗体は両方とも、HUVEC細胞の増殖を抑制することができ、抗PD-1抗体および抗VEGFA/抗PD-1二官能性抗体は両方とも、IFN-γおよび/またはIL-2の分泌を促進し、免疫反応を活性化することができる。
【0057】
本発明の別の態様は、有効量の本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または本発明の複合体を必要とする対象に投与することを含む、悪性腫瘍を予防および/または治療する方法であって、好ましくは、悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、例えば非小細胞肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍および白血病から選択される、方法に関する。
【0058】
本発明の二重特異性抗体の治療有効量または予防有効量の非限定的な典型的範囲は、0.02~50mg/kg、例えば0.1~50mg/kg、0.1~25mg/kgまたは1~10mg/kgである。用量は、治療しようとする病状のタイプおよび重症度に応じて変わり得ることに留意されたい。さらに、任意の特定の患者に関して、特定の投与レジメンが患者の必要性および医師の専門的判断によって経時的に調節され;本明細書で示した用量範囲が単なる説明目的のためであり、本発明の医薬組成物の使用および範囲を限定するものではないことは、当業者には理解されよう。
【0059】
本発明では、対象は哺乳動物、例えばヒトであり得る。
【0060】
悪性腫瘍の予防および/または治療において使用するための本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または複合体であって、好ましくは、悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、例えば非小細胞肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍および白血病から選択される、二重特異性抗体または複合体が提供される。
【0061】
(1)サンプル中のVEGFAのレベルの検出、
VEGFAのVEGFR2への結合の遮断、
VEGFAの活性もしくはレベルのダウンレギュレート、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激の軽減、
血管内皮細胞増殖の抑制、または、
腫瘍血管新生の遮断;
ならびに/あるいは、
(2)PD-1のPD-L1への結合の遮断、
PD-1の活性もしくはレベルのダウンレギュレート、
生体におけるPD-1の免疫抑制の軽減、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌の促進、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌の促進
において使用するための、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または複合体が提供される。
【0062】
抗体薬剤、特にモノクローナル抗体は、各種疾患の治療において良好な効果を達成した。これらの治療用抗体を取得するための従来の実験方法は、動物を抗原で免疫にすること、免疫動物において抗原を標的とする抗体を得ること、または抗原に対して親和性の低いそれらの抗体を親和性成熟によって改良することである。
【0063】
軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原の結合を決定する;それぞれの鎖の可変領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域を含む(重鎖(H鎖)のCDRはHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、軽鎖(L鎖)のCDRはLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、なお、これらはKabatらによって命名されており、Bethesda M.d.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication (1~3巻)1991:91~3242頁を参照されたい)。
【0064】
好ましくは、CDRはまたIMGT番号方式によっても規定することができ、Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas,およびMarie-Paule Lefranc. 「IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign:a database and a tool
for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.」 Nucleic acids research 38巻.補遺1(2009):D301~D307頁を参照されたい。
【0065】
下記の(1)~(13)のモノクローナル抗体配列のCDR領域のアミノ酸配列は、当業者に周知の技術的手段によって、例えばVBASE2データベースによって、またIMGT規定に従って分析されたが、それらの結果は以下のとおりである:
(1)ベバシズマブ
重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号5に記載されており、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7に記載されている。
【0066】
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
HCDR1: GYTFTNYG(配列番号15)
HCDR2: INTYTGEP(配列番号16)
HCDR3: AKYPHYYGSSHWYFDV(配列番号17)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
LCDR1: QDISNY(配列番号18)
LCDR2: FTS(配列番号19)
LCDR3: QQYSTVPWT(配列番号20)
(2)14C12H1L1
重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号9に記載されており、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号11に記載されている。
【0067】
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
HCDR1:GFAFSSYD(配列番号21)
HCDR2: ISGGGRYT(配列番号22)
HCDR3: ANRYGEAWFAY(配列番号23)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
LCDR1: QDINTY(配列番号24)
LCDR2: RAN(配列番号25)
LCDR3: LQYDEFPLT(配列番号26)
(3)VP101
その重鎖の9つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
HCDR1: GYTFTNYG(配列番号15)
HCDR2: INTYTGEP(配列番号16)
HCDR3: AKYPHYYGSSHWYFDV(配列番号17)
HCDR4:GFAFSSYD(配列番号21)
HCDR5: ISGGGRYT(配列番号22)
HCDR6: ANRYGEAWFAY(配列番号23)
HCDR7: QDINTY(配列番号24)
HCDR8: RAN(配列番号25)
HCDR9: LQYDEFPLT(配列番号26)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:LCDR1: QDISNY(配列番号18)
LCDR2: FTS(配列番号19)
LCDR3: QQYSTVPWT(配列番号20)
本発明では、別段の規定のない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学および免疫学の実験室での操作は、対応する分野で広く使用されている日常的な方法である。それと同時に、本発明をより理解するために、関連用語の規定および説明を以下で提供する。
【0068】
本明細書で使用される場合、VEGFAタンパク質(GenBank ID:NP_001165097.1)のアミノ酸配列に言及する場合には、これは完全長のVEGFAタンパク質、ならびにVEGFAの融合タンパク質、例えば、マウスIgGまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)に融合された断片を含む。しかし、VEGFAタンパク質のアミノ酸配列で、変異または変種(限定するものではないが、置換、欠失および/または付加を含む)が、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然で生成され得るか、または人工的に導入され得ることは当業者には理解されよう。したがって、本発明では、用語「VEGFAタンパク質」とは、それらの天然バリアントまたは人工バリアントを含む、すべてのそのような配列を含んでいるものとする。さらに、VEGFAタンパク質の配列断片を記載する場合、これはまたその天然バリアントまたは人工バリアントの対応する配列断片も含む。本発明の一実施形態では、VEGFAタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1の下線部分として示されている(最後の6個のHisがない、合計で302アミノ酸)。
【0069】
本明細書で使用される場合、VEGFR2タンパク質(KDRとしても知られている、GenBank ID:NP_002244)のアミノ酸配列に言及する場合には、これは完全長のVEGFR2タンパク質、またはVEGFR2の細胞外断片VEGFR2-ECD、またはVEGFR2-ECDを含む断片を含み、またさらに、これはVEGFR2-ECDの融合タンパク質、例えば、マウスIgGまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)に融合された断片を含む。しかし、VEGFR2タンパク質のアミノ酸配列で、変異または変種(限定するものではないが、置換、欠失および/または付加を含む)が、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然で生成され得るか、または人工的に導入され得ることは当業者には理解されよう。したがって、本発明では、用語「VEGFR2タンパク質」とは、それらの天然バリアントまたは人工バリアントを含む、すべてのそのような配列を含んでいるものとする。さらに、VEGFR2タンパク質の配列断片を記載する場合、これはまたその天然バリアントまたは人工バリアントの対応する配列断片も含む。本発明の一実施形態では、VEGFR2の細胞外断片VEGFR2-ECDのアミノ酸配列は、配列番号4の波状下線部分として示されている(766アミノ酸)。
【0070】
本発明では、別段の明示のない限り、VEGFRは、VEGFR1および/またはVEGFR2である;その特定のタンパク質配列は先行技術において公知の配列であり、既存の文献またはGenBankで開示されている配列を参照することができる。例えば、VEGFR1(VEGFR1、NCBI Gene ID:2321);VEGFR2(VEGFR2、NCBI Gene ID:3791)。
【0071】
本明細書で使用される場合、PD-1タンパク質(プログラム細胞死タンパク質1、NCBI GenBank:NM_005018)のアミノ酸配列に言及する場合には、これは完全長のPD-1タンパク質、またはPD-1の細胞外断片PD-1ECD、またはPD-1ECDを含む断片を含み、これはまた、PD-1ECDの融合タンパク質、例えば、マウスIgGまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)に融合された断片も含む。しかし、PD-1タンパク質のアミノ酸配列で、変異または変種(限定するものではないが、置換、欠失および/または付加を含む)が、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然で生成され得るか、または人工的に導入され得ることは当業者には理解されよう。したがって、本発明では、用語「PD-1タンパク質」とは、それらの天然バリアントまたは人工バリアントを含む、すべてのそのような配列を含んでいるものとする。さらに、PD-1タンパク質の配列断片を記載する場合、これはまたその天然バリアントまたは人工バリアントの対応する配列断片も含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語のEC50とは、最大効果の50%に対する濃度、すなわち、最大効果の50%を引き起こす濃度を意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、一般に2対のポリペプチド鎖(各対は「軽」(L)鎖および「重」(H)鎖を有する)からなる免疫グロブリン分子を意味する。一般的な意味において、重鎖は、抗体中のより大きな分子量を有するポリペプチド鎖として解釈することができ、軽鎖は、抗体中のより小さな分子量を有するポリペプチド鎖を意味する。軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεとして一般に分類され、抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして規定される。軽鎖および重鎖において、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約3個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。抗体の定常領域は、古典的補体系の第1の成分(C1q)への免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)の結合を含む、免疫グロブリンの宿主組織または因子への結合を媒介し得る。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域の間に分散される、高度可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)へとさらに細分化され得る。それぞれのVHおよびVLは、以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端からカルボキシル末端へ配置されている3個のCDRおよび4個のFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VHおよびVL)は、抗体結合部位をそれぞれ形成する。領域またはドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1987および1991))、またはChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196巻(1987):901~917頁;Chothiaら、Nature 342巻(1989):878~883頁、あるいはIMGT番号方式の規定、Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas,およびMarie-Paule Lefranc. 「IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.」 Nucleic acids research 38巻 補遺_1(2009):D301~D307頁を参照、に基づき得る。特に、重鎖はまた、3個よりも多くの、例えば6、9、または12個のCDRを含んでいてもよい。例えば、本発明の二重特異性抗体では、重鎖は、別の抗体に連結されたIgG抗体の重鎖のC末端を有するScFvであってもよく、またこの場合、重鎖は9個のCDRを含む。用語「抗体」は、抗体を産生するためのいずれかの特定の方法によって限定されるものではない。例えば、抗体は、特に、組換え抗体、モノクローナル抗体およびポリクロナール抗体を含む。抗体は、異なるアイソタイプ、例えばIgG(例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体であり得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部分」としても知られている、用語「抗原結合断片」とは、完全長抗体が結合するのと同じ抗原に特異的に結合し、および/または抗原への特異的結合について完全長抗体と競合する能力を維持する、完全長抗体の断片を含むポリペプチドを意味している。全体的には、Fundamental Immunology、Ch.7(Paul, W.編、第2版、Raven Press、 N.Y.(1989)を参照されたく、またこれはすべての目的に対して参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。抗体の抗原結合断片は、組換えDNA技術により、またはインタクト抗体の酵素的切断または化学的切断によって生成することができる。いくつかの場合には、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAbおよび相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体断片(例えばscFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、およびポリペプチドに特異的抗原結合能力を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドを含む。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「Fd断片」とは、VHドメインおよびCH1ドメインからなる抗体断片を意味し;用語「Fv断片」とは、抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなる抗体断片を意味し;用語「dAb断片」は、VHドメインからなる抗体断片を意味し(Wardら、Nature 341巻(1989):544~546頁);用語「Fab断片」とは、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる抗体断片を意味し;用語「F(ab’)2断片」とは、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab断片を含む抗体断片を意味する。
【0076】
いくつかの場合においては、抗体の抗原結合断片は、VLドメインとVHドメインが対形成され、単一ポリペプチド鎖の生成を可能にするリンカーを介して1価分子を形成されている、一本鎖抗体(例えばscFv)である(例えば、Birdら、Science 242巻(1988):423~426頁、およびHustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻(1988):5879~5883頁を参照)。このようなscFv分子は、一般構造:NH2-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH2-VH-リンカー-VL-COOHを有し得る。先行技術における適切なリンカーは、反復GGGGSアミノ酸配列またはそのバリアントからなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)4を有するリンカーを使用することができ、また、そのバリアントも使用することができる(Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻(1993):6444~6448頁)。本発明において有用である他のリンカーは、Alfthanら、Protein Eng. 8巻(1995):725~731頁、Choiら、Eur. J. Immunol. 31巻(2001):94~106頁、Huら、Cancer Res. 56巻(1996):3055~3061頁、Kipriyanovら、J. Mol. Biol. 293巻(1999):41~56頁、およびRooversら、Cancer Immunol.(2001)によって開示されている。
【0077】
いくつかの場合においては、抗体の抗原結合断片は、VHドメインとVLドメインが単一ポリペプチド鎖で発現される、ダイアボディ、すなわち二価抗体である。しかし、使用されるリンカーが短すぎるので同じ鎖の2つのドメインは対形成することができず、そのため、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対形成することとなり、2つの抗原結合部位が生成される(例えば、Holliger P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻(1993):6444~6448頁、およびPoljak RJら、Structure 2巻(1994):1121~1123頁を参照)。
【0078】
抗体の抗原結合断片(例えば、上記で言及した抗体断片)は、当業者に公知の従来の技術(例えば、組換えDNA技術または酵素的もしくは化学的切断)を使用することにより、所定の抗体から得ることができ、抗体の抗原結合断片は、インタクト抗体の場合と同じように特異性についてスクリーニングすることができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、文脈において明らかに規定されない限り、用語「抗体」に言及する場合には、それはインタクト抗体だけでなく、抗体の抗原結合断片も含む。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語の「mAb」および「モノクローナル抗体」とは、自然発生的に起こり得る自然突然変異を除き、高度に同種な抗体の群に由来する、すなわち同一の抗体分子の群に由来する抗体またはその断片を意味する。モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対して高い特異性を有する。ポリクロナール抗体は、モノクローナル抗体に対して、一般に抗原上の異なるエピトープを認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を一般に含む。モノクローナル抗体は、一般に、Kohlerら(Nature、256号:495頁、1975)によって最初に報告されたハイブリドーマ技術によって得ることができ、また組換えDNA技術によっても得ることができる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」とは、軽鎖および/または重鎖の一部が(特定の種に由来し得るか、特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属し得る)抗体に由来し、軽鎖および/または重鎖の別の部分が(同一のもしくは異なる種に由来し得るか、同一のもしくは異なる抗体クラスもしくはサブクラスに属し得る)別の抗体に由来する、抗体を意味する。しかしいずれの場合にも、これは、標的抗原に対する結合活性を保持する(Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81号(1984):6851~6855頁)。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」とは、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)のCDR領域の全てまたは一部が、非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDR領域と置き換えられる場合に得られた抗体または抗体断片であって、そのドナー抗体が、予期した特異性、親和性または反応性を有する非ヒト(例えばマウス、ラットまたはウサギ)抗体であり得る、抗体または抗体断片を意味する。さらに、受容体抗体のフレームワーク領域(FR)の一部のアミノ酸残基はまた、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基と置き換えることができるか、または抗体の性能をさらに改善もしくは最適化する他の抗体のアミノ酸残基と置き換えることができる。ヒト化抗体についてのさらなる詳細については、例えば、Jonesら、Nature、321巻(1986):522~525頁;Reichmannら、Nature、332巻:323~329頁(1988);Presta、Curr. Op. Struct. Biol.、2巻(1992):593~596頁、およびClark、Immunol. Today 21巻(2000):397~402頁を参照されたい。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」とは、免疫グロブリンまたは抗体が特に結合する抗原上の部位を意味する。「エピトープ」はまた、当技術分野において「抗原決定基」とも呼ばれる。エピトープまたは抗原決定基は、一般に、分子の化学的に活性のある表面基、例えばアミノ酸または炭水化物または糖側鎖などからなり、通常、特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。例えば、エピトープは、一般に、特有の空間的立体構造に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続または非連続のアミノ酸を含んでおり、これは「直鎖状」または「立体構造的」であり得る。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、66巻、G. E. Morris編(1996)を参照されたい。直鎖エピトープにおいて、タンパク質と相互作用分子(例えば抗体)との間の全ての相互作用部位は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直鎖状に存在する。立体構造的なエピトープにおいては、相互作用部位は、相互に隔てられているタンパク質アミノ酸残基にわたって存在する。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語の「単離された」とは、自然状態から人工的手段によって得られたことを意味する。ある特定の「単離された」物質または成分が天然に生じる場合、その自然環境に変化が生じるということ、または自然環境から単離されたということ、またはその両方であり得る。例えば、ある特定の単離されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、ある特定の生存動物において存在しており、そのような自然状態から単離された高純度の同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドと呼ばれる。用語の「単離された」は、その物質の活性に影響を及ぼさない、人工物質もしくは合成物質、または他の不純物の存在を除外しない。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸ビヒクルを意味する。挿入されたポリヌクレオチドによってコードされたタンパク質をベクターが発現させることができる場合、そのベクターは発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、ベクターによって保有された遺伝物質エレメントを宿主細胞において発現することができるように、形質転換、形質導入またはトランスフェクションによって宿主細胞へ導入することができる。ベクターは当業者に周知であり、限定するものではないが、プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来の人工染色体(PAC);ファージ、例えばラムダファージまたはM13ファージ、および動物ウイルスなどが含まれる。ベクターとして使用することができる動物ウイルスは、限定するものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウィルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えばSV40)を含む。ベクターは、限定するものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメントおよびレポーター遺伝子を含む、発現を調節する様々なエレメントを含有することができる。さらに、ベクターは複製開始部位を含んでいてもよい。
【0086】
本明細書に使用される場合、用語「宿主細胞」とは、ベクターが導入され得る細胞を意味し、限定するものではないが、原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)もしくは枯草菌(bacillus subtilis)、真菌細胞、例えば酵母細胞もしくはアスペルギルス属(aspergillus)、昆虫細胞、例えばS2ショウジョウバエ細胞もしくはSf9、または動物細胞、例えば繊維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、またはヒト細胞が含まれる。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語の「特異的に結合する」とは、2つの分子間の非無作為の結合反応、例えば、抗体とそれが標的とする抗原との間の反応を意味する。いくつかの実施形態では、抗原(または抗原に特異的な抗体)に特異的に結合する抗体とは、抗体が約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M未満または10-10M以下の親和性(KD)で抗原に結合することを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、用語「標的」とは、特異的結合を意味する。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「KD」とは、特異的抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を意味し、これは抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される。平衡解離定数が小さいほど、抗体-抗原結合は強く、抗体と抗原との間の親和性は高い。一般に、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してBIACORE装置で決定した場合、抗体は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M未満または10-10M以下の解離平衡定数(KD)で抗原に結合する。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」および「mAb」は同じ意味を有しており、交換可能に使用することができる;用語「ポリクロナール抗体」および「PcAb」は同じ意味を有しており、交換可能に使用することができる;用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は同じ意味を有しており、交換可能に使用することができる。さらに、本発明においては、アミノ酸は、一般に、当技術分野で公知の1文字および3文字の略語によって表される。例えば、アラニンは、AまたはAlaによって表すことができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語の「薬学的に許容される賦形剤」とは、対象および活性成分と薬理学的におよび/または生理学的に適合性のある担体および/またはビヒクルを意味し、それは当技術分野において周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences. Gennaro AR編、第19版
Pennsylvania: Mack Publishing Company、1995を参照)、限定するものではないが、pH調節剤、界面活性剤、アジュバントおよびイオン強度促進剤が含まれる。例えば、pH調節剤は、限定するものではないが、リン酸塩緩衝液を含み;界面活性剤は、限定するものではないが、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤、例えばTween-80を含み;イオン強度促進剤は、限定するものではないが、塩化ナトリウムを含む。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「アジュバント」とは、非特異的免疫促進剤を意味し、これは抗原への生体の免疫応答を促進することができるか、または抗原と一緒に生体に送達されるか、事前に生体に送達される場合に、免疫応答のタイプを変化させることができる。限定するものではないが、アルミニウムアジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(例えば完全フロイントアジュバントおよび不完全フロイントアジュバント)、コリネバクテリウム・パルヴム(corynebacterium parvum)、リポ多糖類、サイトカインなどを含む、様々なアジュバントがある。フロイントアジュバントは、動物実験において最も一般的に使用されているアジュバントである。水酸化アルミニウムアジュバントは、臨床試験において多用されている。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、所望の効果を得るか、または少なくとも部分的に得るのに十分な量を意味する。例えば、予防的有効量(例えば、PD-1のPD-L1への結合またはVEGFの過剰発現に関連した疾患、例えば腫瘍に対する)は、その疾患(例えば、PD-1のPD-L1への結合またはVEGFの過剰発現に関連した疾患、例えば腫瘍)の発症を予防、抑止または遅延するのに十分な量であり;治療有効量とは、その病気に罹患している患者の疾患およびその合併症を治癒するか、または少なくとも部分的に抑止するのに十分な量である。そのような有効量を決定することは、疑いもなく当業者の範囲内である。例えば、治療使用における有効量は、治療しようとする疾患の重症度、患者の免疫系の全体的な状態、患者の一般的状態、例えば年齢、体重および性別、薬剤投与形式、ならびに同時に行われる他の治療などによって決まる。
【発明の効果】
【0093】
二重特異性抗体VP101は、良好にVEGFAに特異的に結合し、VEGFAのVEGFR2への結合を有効に遮断し、生体におけるVEGFAの免疫抑制および血管新生に対するVEGFAの促進効果を特異的に軽減することができる;VP101は、良好にPD-1に特異的に結合し、PD-1のPD-L1への結合を有効に遮断し、生体におけるPD-1の免疫抑制を特異的に軽減し、免疫応答を活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】
図1は、二官能性抗体VP101のSDS-PAGE検出の結果を示す。左から右への4つのレーンのサンプルとそれぞれのローディング量は次のとおりである:非還元性タンパク質電気泳動用ローディングバッファー中の抗体、1μg;還元性タンパク質電気泳動用ローディングバッファー中の抗体、1μg;マーカー、5μL;BSA、1μg。
【
図2】
図2は、抗体VP101のPD-1への結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図3】
図3は、抗体BsAbB7のPD-1への結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図4】
図4は、抗体BsAbB8のPD-1への結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図5】
図5は、抗体14C12H1L1のPD-1への結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図6】
図6は、抗体ニボルマブのPD-1への結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図7】
図7は、抗体VP101のVEGFへの結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図8】
図8は、抗体BsAbB7のVEGFへの結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図9】
図9は、抗体BsAbB8のVEGFへの結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図10】
図10は、抗体ベバシズマブのVEGFへの結合に関するキネティック特性パラメーターの検出結果を示す。
【
図11】
図11は、間接ELISAによって検出された、抗体VP101のVEGFAへの結合活性を示す。
【
図12】
図12は、間接ELISAによって検出された、抗体VP101、BsAbB7、BsAbB8およびベバシズマブのVEGFA-hisへのそれぞれの結合活性を示す。
【
図13】
図13は、間接ELISAによって検出された、抗体VP101のPD-1への結合活性を示す。
【
図14】
図14は、間接ELISAによって検出された、抗体VP101、BsAbB7、BsAbB8、14C12H1L1およびニボルマブのPD-1へのそれぞれの結合活性を示す。
【
図15】
図15は、競合ELISAによって検出された、VEGFAへの結合に対するVEGFR2との競合における抗体VP101の活性を示す。
【
図16】
図16は、競合ELISAによって検出された、PD-1への結合に対するPD-L1との競合における抗体VP101の活性を示す。
【
図17】
図17は、FACSによって検出された、293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1への抗体14C12H1L1およびVP101の結合EC
50を示す。
【
図18】
図18は、FACSによって検出された、293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1への抗体VP101、BsAbB7およびBsAbB8の結合EC
50を示す。
【
図19】
図19は、FACSによって検出された、293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1への結合に対するPD-L1との競合における抗体VP101および14C12H1L1の活性を示す。
【
図20】
図20は、FACSによって検出された、293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1への結合に対するPD-L1との競合における抗体14C12H1L1、VP101、BsAbB7、BsAbB8、14C12H1Lおよびニボルマブの活性を示す。
【
図21】
図21は、NFATシグナル経路を活性化するためのVEGFのブロッキングにおける抗体VP101、BsAbB7およびBsAbB8の中和生物活性を示す。
【
図22】
図22は、HUVEC細胞増殖に対するベバシズマブおよびVP101の効果を示す。
【
図23】
図23は、DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるIFN-γの分泌に対するVP101の効果を示す。
【
図24】
図24は、DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるIFN-γの分泌に対するVP101、BsAbB7およびBsAbB8の効果を示す。
【
図25】
図25は、DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるIL-2の分泌に対するVP101、BsAbB7およびBsAbB8の効果を示す。
【
図26】
図26は、ELISAによって検出された、PBMC細胞およびRaji-PD-L1細胞の混合培養によって誘導されたサイトカインIL-2の分泌に対する抗体14C12H1L1およびVP101の効果を示す。
【
図27】
図27は、ELISAによって検出された、PBMC細胞およびRaji-PD-L1細胞の混合培養によって誘導されたサイトカインIFN-γの分泌に対する抗体14C12H1L1およびVP101の効果を示す。
【
図28】
図28は、ELISAによって検出された、PBMC細胞およびRaji-PD-L1細胞の混合培養によって誘導されたサイトカインIFN-γの分泌に対する抗体14C12H1L1、VP101、BsAbB7およびBsAbB8の効果を示す。
【
図29】
図29は、ELISAによって検出された、PBMC細胞およびRaji-PD-L1細胞の混合培養によって誘導されたサイトカインIL-2の分泌に対する抗体14C12H1L1、VP101、BsAbB7およびBsAbB8の効果を示す。
【
図30】
図30は、異なる濃度のVP101による腫瘍増殖の抑制を示す。
【
図31】
図31は、マウスの体重に対する異なる濃度のVP101の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
詳細な説明
本発明の実施形態を、実施例を参照して以下で詳細に説明する。以下の実施例が本発明を例示するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されないことは、当業者には理解されよう。技術または条件の明確な説明のない場合は、当技術分野の文献に開示されている技術または条件に従って(例えば、Guide to Molecular Cloning Experiments、J. Sambrookら著、およびHuang Peitangら訳、第3版、Science Pressを参照)または製品マニュアルに従って実施した。使用した試薬または機器は、それらの製造業者が明示されていない場合、すべて市販されている従来の製品である。
【0096】
本発明の以下の実施例において、同一標的用の市販抗体ベバシズマブ(商品名アバスチン(登録商標))は、対照抗体としてRocheから購入したか、または調製実施例4に従って調製した。
【0097】
本発明の以下の実施例において、同一標的用の市販抗体ニボルマブ(商品名Opdivo(登録商標))は、対照抗体としてBMSから購入した。本発明の以下の実施例において、対照抗体BsAbB7およびBsAbB8のアミノ酸配列は、中国公開特許公報第CN105175545A号のBsAbB7およびBsAbB8のアミノ酸配列とそれぞれ同一であった。
【0098】
調製実施例1:融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFcおよびPD-L1-hFcの調製
融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFcおよびPD-L1-hFcの調製と、SDS-PAGE電気泳動検出は、中国公開特許公報第CN106632674A号の調製実施例1を十分に参照することにより実施する。
【0099】
この調製実施例の融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFcおよびPD-L1-hFcのアミノ酸配列およびコードヌクレオチド配列は、中国公開特許公報第CN106632674A号の調製実施例1のPD-1-mFc、PD-1-hFcおよびPDL-1-hFcのものとそれぞれ同じである。
【0100】
融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFcおよびPD-L1-hFcはこのようにして得た。
【0101】
調製実施例2:融合タンパク質VEGFA-Hisの発現および精製
1.プラスミドVEGFA-Hisの構築
PCR増幅は鋳型としてVEGFAヒトcDNA(Origeneから購入)を使用して実施し、hVEGFA-His断片は、通常のDNA産物精製キットを使用して精製および単離した。単離したhVEGFA-His断片および発現ベクターpcDNA3.1は、XbaIおよびHindIII-HFで酵素的に消化し、標的遺伝子断片はゲル抽出によって単離し、T4リガーゼによって直鎖状発現ベクターと連結させた。次いで、全ての連結産物をDH5a化学的コンピテント細胞に形質転換させ、Ampを含む寒天平板上にコーティングした。十分に分離された単一コロニーをコロニーPCR同定用に選択し、PCR陽性のクローンを培養用のLB培養培地に播種し、細菌溶液を取得し、配列決定を検証するためにGuangzhou Invitrogen Biotechnologyに送った。配列決定結果のアラインメントからは、陽性リコン(recon)の挿入配列が完全に正確であったことが示された。
【0102】
2. 融合タンパク質VEGFA-Hisの発現および精製
組換えプラスミドVEGFA-hisを、リポフェクタミントランスフェクションキット(Invitrogenから購入)のマニュアルに従って、7日間293F細胞(Invitrogenから購入)にトランスフェクトした後、培養培地を高速遠心分離にかけ、上清を濃縮し、結合用バッファーAにバッファー交換し、次いで、HisTrapカラムにロードし、溶出バッファーAを用いてタンパク質を直線的に溶出させた。一次精製サンプルをHiTrap脱塩カラムの結合用バッファーBにバッファー交換し、HiTrap Qカラムにロードし、タンパク質を溶出バッファーBで直線的に溶出させ、標的サンプルを単離し、PBSにバッファー交換した。精製したサンプルを、SDS-PAGE電気泳動検出用の還元性タンパク質電気泳動ローディングバッファーに加えた。
【0103】
融合タンパク質VEGFA-Hisをこのようにして得た。
VEGFA-Hisのアミノ酸配列は、以下のとおりである(171aa):
APMAEGGGQNHHEVVKFMDVYQRSYCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGLECVPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKCECRPKKDRARQENPCGPCSERRKHLFVQDPQTCKCSCKNTDSRCKARQLELNERTCRCDKPRRHHHHHH(配列番号1)
ここで、下線部分はVEGFAのアミノ酸配列である。
【0104】
VEGFA-Hisをコードするヌクレオチド配列(513bp)
GCACCCATGGCCGAGGGCGGCGGCCAGAACCACCACGAGGTGGTGAAGTTCATGGACGTGTACCAGAGAAGCTACTGCCACCCCATCGAGACCCTGGTGGACATCTTCCAGGAGTACCCCGACGAGATCGAGTACATCTTCAAGCCCAGCTGCGTGCCCCTGATGAGATGCGGCGGCTGCTGCAACGACGAGGGCCTGGAGTGCGTGCCCACCGAGGAGAGCAACATCACCATGCAGATCATGAGAATCAAGCCCCACCAGGGCCAGCACATCGGCGAGATGAGCTTCCTGCAGCACAACAAGTGCGAGTGCAGACCCAAGAAGGACAGAGCCAGACAGGAGAACCCCTGCGGCCCCTGCAGCGAGAGAAGAAAGCACCTGTTCGTGCAGGACCCCCAGACCTGCAAGTGCAGCTGCAAGAACACCGACAGCAGATGCAAGGCCAGACAGCTGGAGCTGAACGAGAGAACCTGCAGATGCGACAAGCCCAGAAGACATCATCACCATCACCAC(配列番号2)
調製実施例3:融合タンパク質VEGFR2-hFcの発現および精製 1.遺伝子VEGFR2-hFcの合成:
遺伝子VEGFR2(血管内皮細胞増殖因子受容体2、NCBI GenBank:NP_002244)の細胞外断片VEGFR2 ECDに対応するアミノ酸を、TEVおよびヒトIgG(hFc)のFcタンパク質断片とそれぞれ融合させた(配列番号3)。Genscriptに対応するコードヌクレオチド配列の合成を委託した(配列番号4)。
【0105】
VEGFR2、血管内皮細胞増殖因子受容体2、NCBI GenBank NP_002244;
hFc:Igガンマ-1鎖C領域、ACCESSION: P01857,106-330;
融合タンパク質VEGFR2-hFcのアミノ酸配列:(998aa)
【0106】
【0107】
ここで、波状下線部分はVEGFR2のECD部分であり、枠付きの部分はTEV酵素消化部位であり、実線部分はhFc部分である。
【0108】
融合タンパク質VEGFR2-hFcをコードするヌクレオチド配列:(2997bp)
【0109】
【0110】
ここで、波状下線部分はVEGFR2のECD部分であり、枠付きの部分はTEV酵素消化部位であり、実線部分はhFc部分である。
【0111】
2.プラスミドpUC57simple-VEGFR2-hFcの構築:
Genscriptによって合成されたVEGFR2-hFcコード遺伝子を発現ベクターpUC57simple(Genscriptにより提供)にクローニングし、pUC57simple-VEGFR2-hFcプラスミドを得た。
【0112】
3.組換えプラスミドpcDNA3.1-VEGFR2-hFcの構築: プラスミドpUC57simple-VEGFR2-hFcを酵素消化し(Xba IおよびBamH I)、電気泳動によって単離された融合遺伝子断片VEGFR2-hFcを発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogenから購入)と連結させ、pcDNA3.1-VEGFR2-hFcを得て、これをコンピテント大腸菌細胞DH5a(TIANGENから購入)にトランスフェクトした;トランスフェクションおよび培養は、マニュアルに従って実施した。陽性pcDNA3.1-VEGFR2-hFcコロニーをスクリーニングし、大腸菌を従来の方法に従って増幅させ、次いで、キット(Tiangen Biotech (Beijing) Co., Ltd.から購入、DP103-03)を使用し、組換えプラスミドpcDNA3.1-VEGFR2-hFcをキットのマニュアルに従って抽出した。
【0113】
4.組換えプラスミドpcDNA3.1-VEGFR2-hFcの293F細胞へのトランスフェクション
組換えプラスミドpcDNA3.1-VEGFR2-hFcを、リポフェクタミントランスフェクションキット(Invitrogenから購入)により、293F細胞(Invitrogenから購入)にトランスフェクトした。
【0114】
5.VEGFR2-hFcタンパク質のSDS-PAGE電気泳動検出
7日間組換えプラスミドpcDNA3.1-VEGFR2-hFcを293F細胞にトランスフェクトした後、培養培地を高速遠心分離、微細孔膜減圧濾過、およびMabselect SuReカラム精製にかけ、VEGFR2-hFc融合タンパク質サンプルを得て、サンプルの一部を、SDS-PAGE電気泳動検出用の還元性タンパク質電気泳動ローディングバッファーへ加えた。
【0115】
融合タンパク質VEGFR2-hFcをこのようにして得た。
【0116】
調製実施例4:抗VEGFA抗体ベバシズマブの調製
中国公開特許公報第CN1259962A号には、市販のVEGFAモノクローナル抗体アバスチン(ベバシズマブ)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列が言及されている。Genscriptに、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列の合成を委託した。
【0117】
ベバシズマブの重鎖可変領域のアミノ酸配列:(123aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTNYGMNWVRQAPGKGLEWVGWINTYTGEPTYAADFKRRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYPHYYGSSHWYFDVWGQGTLVTVSS(配列番号5)
ベバシズマブの重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(369bp)
GAGGTGCAGCTGGTCGAGTCCGGGGGGGGGCTGGTGCAGCCAGGCGGGTCTCTGAGGCTGAGTTGCGCCGCTTCAGGGTACACCTTCACAAACTATGGAATGAATTGGGTGCGCCAGGCACCAGGAAAGGGACTGGAGTGGGTCGGCTGGATCAACACTTACACCGGGGAACCTACCTATGCAGCCGACTTTAAGCGGCGGTTCACCTTCAGCCTGGATACAAGCAAATCCACTGCCTACCTGCAGATGAACAGCCTGCGAGCTGAGGACACCGCAGTCTACTATTGTGCTAAATATCCCCACTACTATGGGAGCAGCCATTGGTATTTTGACGTGTGGGGGCAGGGGACTCTGGTGACAGTGAGCAGC(配列番号6)
ベバシズマブの軽鎖可変領域のアミノ酸配列:(107aa)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKVLIYFTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSTVPWTFGQGTKVEIK(配列番号7)
ベバシズマブの軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(321bp)
GATATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCATCACATGCAGTGCTTCACAGGATATTTCCAACTACCTGAATTGGTATCAGCAGAAGCCAGGAAAAGCACCCAAGGTGCTGATCTACTTCACTAGCTCCCTGCACTCAGGAGTGCCAAGCCGGTTCAGCGGATCCGGATCTGGAACCGACTTTACTCTGACCATTTCTAGTCTGCAGCCTGAGGATTTCGCTACATACTATTGCCAGCAGTATTCTACCGTGCCATGGACATTTGGCCAGGGGACTAAAGTCGAGATCAAG(配列番号8) 重鎖定常領域は、全てIgガンマ-1鎖C領域、ACCESSION:P01857であった;軽鎖定常領域は、全てIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834であった。
【0118】
ベバシズマブの重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAをベクターpcDNA3.1にクローニングし、抗体ベバシズマブの組換え発現プラスミドを得た。組換えプラスミドを293F細胞にトランスフェクトした。293F細胞の培養培地を精製し、次いで検出した。
【0119】
抗VEGFAモノクローナル抗体アバスチン(ベバシズマブ)をこのようにして得た。
【0120】
調製実施例5:抗PD-1ヒト化抗体14C12H1L1の調製および検出
この調製は、中国公開特許公報第CN106977602A号に開示されている実施例3~4に従って実施した。
【0121】
ヒト化抗体14C12H1L1の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列、ならびにそれらをコードするヌクレオチド配列もまた、中国公開特許公報第CN106977602A号の実施例3~4に開示されているものと同じであり、本明細書においても以下に提供する:
ヒト化抗体14C12H1L1の重鎖可変領域のアミノ酸配列:(118aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号9)
ヒト化抗体14C12H1L1の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(354bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGT(配列番号10)
ヒト化抗体14C12H1L1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列:(107aa)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(配列番号11)
ヒト化抗体14C12H1L1の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(321bp)
GACATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCATGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCTTCACATGCCGCGCTAGTCAGGATATCAACACCTACCTGAGCTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGGAAAAGCCCCAAGACACTGATCTACCGGGCTAATAGACTGGTGTCTGGAGTCCCAAGTCGGTTCAGTGGCTCAGGGAGCGGACAGGACTACACTCTGACCATCAGCTCCCTGCAGCCTGAGGACATGGCAACCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCACTGACCTTTGGCGCCGGGACAAAACTGGAGCTGAAG(配列番号12)
抗PD-1ヒト化抗体14C12H1L1は、このようにして得た。
【0122】
調製実施例6:hIgGの調製および同定
ヒト抗ニワトリ卵白リゾチームIgGの配列(抗HEL、すなわちhIgGと略称されるヒトIgG)は、Aciernoらによって公表された研究、標題「Affinity
maturation increases the stability and plasticity of the Fv domain of anti-protein antibodies」(Aciernoら、J Mol Biol. 2007;374巻(1号):130~46頁)のFab F10.6.6配列の可変領域配列に由来する。調製方法は以下のとおりである:
Nanjing Genscript Biologyに、ヒトIgG抗体の重鎖および軽鎖(完全配列または可変領域)遺伝子に対して、「Guide to Molecular Cloning Experiments (第3版)」に導入された標準技術を参照することにより、また標準の分子クローニング技術、例えば、PCR、酵素消化、DNAゲル抽出、ライゲーション形質転換、コロニーPCRまたは酵素消化同定を使用することにより、アミノ酸のコドン最適化および遺伝子合成を実施するために委託し、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を、それぞれ、哺乳動物発現系の抗体重鎖発現ベクターおよび抗体軽鎖発現ベクターにサブクローニングし、それらの組換え発現ベクターの重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子をさらに配列決定し、分析した。配列が正確であることを確認した後、エンドトキシンを含まない発現プラスミドをラージスケールで調製し、組換え抗体を発現させるHEK293細胞に重鎖プラスミドおよび軽鎖プラスミドを一過的にコトランスフェクトした。7日間培養した後、細胞培養培地を回収し、rProtein Aカラム(GE)を使用してアフィニティ精製し、得られた抗体サンプルの品質をSDS-PAGEおよびSEC-HPLC標準分析技術を使用して決定した。
【0123】
hIgGをこのようにして得て、下記の実施例8~9で使用した。
【0124】
実施例1:二官能性抗体VP101の重鎖および軽鎖の配列設計、調製および検出
1.配列設計
本発明の二官能性抗体VP101の構造は、Morrison型(IgG-scFv)であり、すなわち、IgG抗体の2つの重鎖のC末端がそれぞれ別の抗体のscFv断片に結合されており、重鎖および軽鎖の主な構成設計は下記の表1に示した通りである。
【0125】
【0126】
上記の表1において:
(1)右下方の角に表示された「V」を有するものは、対応する重鎖の可変領域または対応する軽鎖の可変領域を意味する。「V」表示のないものについては、対応する重鎖または軽鎖は、定常領域を含む完全長である。上記の調製例で説明した対応する配列は、これらの可変領域または完全長のアミノ酸配列と、それらをコードするヌクレオチド配列について言及されている。
(2)リンカー1のアミノ酸配列は、GGGGSGGGGSGG GGSGGGGS(配列番号13)である。
【0127】
2.抗体VP101の発現および精製
VP101の重鎖cDNA配列および軽鎖cDNA配列を、それぞれ、ベクターpUC57simple(Genscriptにより提供)にクローニングし、それぞれ、プラスミドpUC57simple-VP101HおよびpUC57simple-VP101Lを得た。
【0128】
プラスミドpUC57simple-VP101HおよびpUC57simple-VP101Lを酵素消化し(HindIIIおよびEcoRI)、電気泳動によって単離した重鎖および軽鎖をベクターpcDNA3.1にサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。7日間細胞培養した後、培養培地を高速の遠心分離にかけ、上清を濃縮し、HiTrap MabSelect SuReカラムにロードした。溶出バッファーを用いてタンパク質を1ステップでさらに溶出させ、標的サンプル抗体VP101を単離し、PBSにバッファー交換した。
【0129】
2.抗体VP101の検出
精製したサンプルを、還元性タンパク質電気泳動ローディングバッファーおよび非還元性タンパク質電気泳動ローディングバッファーの両方に加え、次いで、SDS-PAGE電気泳動検出のためにボイルした。VP101の電気泳動図を
図1に示す。還元性タンパク質サンプルの標的タンパク質は75kDおよび25kDにあり、非還元性タンパク質サンプル(単一抗体)の標的タンパク質は200kDにある。
【0130】
別段の定めがない限り、以下の実験において使用したヒト化抗体VP101は、この実施例の方法によって調製した。
【0131】
実施例2:ヒト化抗体VP101のキネティックパラメーターの検出
1.ヒト化抗体VP101のPD-1-mFcへの結合に関するキネティックパラメーターの検出
サンプル希釈バッファーは、PBS(0.02% Tween-20、0.1% BSA、pH7.4)であった。5μg/mLの抗体を、約0.4nMの固定高さでAHCセンサーに固定化した。このセンサーを60秒間バッファー中で平衡化し、センサーに固定化した抗体を120秒間0.62~50nM(3倍勾配希釈)の濃度でPD-1-mFcに結合させ、次いで、抗原と抗体を300秒間バッファー中で解離させた。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。データ収集ソフトウェアはFortebio Data Acquisition 7.0であり、データ分析ソフトウェアはFortebio Data Analysis 7.0であった。抗体VP101、BsAbB7、BsAbB8、14C12H1L1および対照抗体ニボルマブのPD-1-mFcへの結合に関するキネティックパラメーターを表2に示し、キネティック特性パラメーターの検出結果を
図2、
図3、
図4、
図5および
図6にそれぞれ示す。
【0132】
【0133】
KDは親和定数である;konは抗原と抗体の結合速度である;kdisは抗原と抗体の解離速度である;KD=kdis/kon。
【0134】
これらの結果からは、抗体VP101と抗体BsAbB7がPD-1-mFcへの親和性の点から同等であること;PD-1-mFcに対するVP101の親和定数はBsAbB8よりも有意に小さく、VP101がより良好な結合活性を有することを示唆していること;VP101とPD-1-mFcに関する一定の解離速度はBsAbB8および14C12H1L1よりも有意に小さく、VP101が抗原により安定して結合しており、14C12H1L1およびBsAbB8よりも解離速度が遅いことを示唆していることが明らかである。
【0135】
2.ヒト化抗体VP101のVEGF-Hisへの結合に関するキネティックパラメーターの検出
サンプル希釈バッファーはPBS(0.02% Tween-20、0.1% BSA、pH7.4)であった。1μg/mLのVEGF-Hisを20秒間HIS1Kセンサーに固定化し、次いで、このセンサーを60秒間バッファー中で平衡化し、センサーに固定化したVEGFを120秒間12.34~1000nM(3倍勾配希釈)の濃度で抗体に結合させ、次いで、抗原と抗体を300秒間バッファー中で解離させた。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。データ収集ソフトウェアはFortebio Data Acquisition 7.0であり、データ分析ソフトウェアはFortebio Data Analysis 7.0であった。
【0136】
抗体VP101、BsAbB7、BsAbB8および対照抗体ベバシズマブのVEGF-Hisへの結合に関するキネティックパラメーターを表3に示し、キネティック特性パラメーターの検出結果を
図7、
図8、
図9および
図10にそれぞれ示す。
【0137】
【0138】
これらの結果から、抗体VP101と抗体BsAbB7が抗原への親和性の点から同等であり、VP101の親和定数がBsAbB8および対照抗体ベバシズマブよりも有意に小さく、VP101がより良好な結合活性を有していることを示唆していること;VEGF-Hisに対するVP101の解離速度定数がBsAbB8よりも有意に小さく、VP101が抗原により安定して結合しており、BsAbB8よりも解離速度が遅いことを示唆していることが明らかである。
【0139】
実施例3:ELISAによる、抗体VP101の抗原への結合活性の検出
1.間接ELISAによる、抗体VP101の抗原VEGFA-hisへの結合活性の検出
その方法を以下のとおり明示する:
マイクロプレートをVEGFA-Hisでコーティングし、2時間37℃でインキュベートした。洗浄後、マイクロプレートを2時間、1% BSAでブロッキングした。洗浄後、マイクロプレートに勾配的に希釈した抗体を加え、30分間37℃でインキュベートした。洗浄後、マイクロプレートに、酵素標識したヤギ抗ヒトIgG二次抗体希釈標準溶液を加え、37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、マイクロプレートに、光の非存在下で5分間、発色用のTMB発色溶液を加え、次いで、停止液を加え、発色反応を停止させた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレートリーダーに直ちに入れ、マイクロプレートの各ウェルのOD値を450nmで記録した。SoftMax Pro 6.2.1を用いてデータを分析し、プロセシングした。
【0140】
抗体VP101の抗原VEGFA-Hisへの結合についての検出結果を
図11に示す。各用量での吸光度を表4に示す。抗体の結合EC
50は、横座標としての抗体濃度と、縦座標としての吸光度を利用してカーブフィッティングにより算出し、結果を下記の表4に示す。
【0141】
【0142】
この結果から、抗体VP101がVEGFAタンパク質に効率的に結合することができ、その結合効率が用量依存的であり、2つの抗体がヒトVEGFAへの結合活性の点から同等であることが明らかである。
【0143】
2.間接ELISAによる、抗体VP101、BsAbB7およびBsAbB8の抗原VEGFA-Hisへのそれぞれの結合活性の検出
その方法を以下のとおり明示する:
マイクロプレートをVEGFA-Hisでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、マイクロプレートを、2時間、1% BSA(PBSに溶解したもの)でブロッキングした。洗浄後、マイクロプレートに勾配的希釈した抗体を加え、30分間、37℃でインキュベートした。洗浄後、マイクロプレートに、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ヒトIgG Fc(Jackson、109-035-098)希釈標準溶液を加え、37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、マイクロプレートに、光の非存在下で5分間、発色用のTMB(Neogen、308177)を加え、次いで、停止液を加えて発色反応を停止させた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレートリーダーに直ちに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで記録した。SoftMaxプロ6.2.1を使用してデータを分析し、プロセシングした。
【0144】
抗体VP101の抗原VEGFA-Hisへの結合の結果を
図12に示す。各用量の吸光度を表5に示す。抗体の結合EC
50は、横座標としての抗体濃度と、縦座標としての吸光度値を利用して、カーブフィッティングにより算出し、結果を下記の表5に示す。
【0145】
【0146】
これらの結果から、抗体VP101、BsAbB7、BsAbB8およびベバシズマブはすべて、VEGFタンパク質に効率的に結合することができ、それらの結合効率は用量依存的であり、抗体VP101は、BsAbB7およびBsAbB8よりもヒトVEGFへの高結合活性を有することが明らかである。
【0147】
3.間接ELISAによる、抗体VP101の抗原PD-1への結合活性の検出
その方法を以下のとおり明示する:
マイクロプレートをヒトPD-1-mFcでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。2時間37℃で、1% BSAによりブロッキングした後、マイクロプレートに抗体を加え、次いで、30分間37℃でインキュベートした。マイクロプレートを洗浄し、軽く叩いて乾燥させた後、HRP標識したヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Jackson、109-035-088)を加え、マイクロプレートを30分間37℃でインキュベートした。マイクロプレートを洗浄し、軽く叩いて乾燥させた後、TMB(Neogen、308177)を発色のために5分間加え、次いで、停止液を加えて発色現象を停止させた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレートリーダーに直ちに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで記録した。SoftMax Pro
6.2.1を使用してデータを分析し、プロセシングした。
【0148】
抗体VP101の抗原PD-1への結合の検出結果を
図13に示す。各用量の吸光度を表6に示す。結合抗体VP101の定量分析によって、曲線シミュレーションを実施し、抗体の結合効率EC
50を得て、それを下記の表6に示す。
【0149】
【0150】
この結果から、抗体VP101がPD-1タンパク質に効率的に結合することができ、その結合効率が用量依存的であることが明らかである。
【0151】
4.間接ELISAによる、抗体VP101、BsAbB7およびBsAbB8の抗原PD-1へのそれぞれの結合活性の検出
その方法を以下のとおり明示する:
マイクロプレートをヒトPD-1-mFcでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。2時間37℃で1% BSAによりブロッキングした後、マイクロプレートに抗体を加え、次いで、30分間37℃でインキュベートした。マイクロプレートを洗浄し、軽く叩いて乾燥させた後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG Fc(Jackson、109-035-098)を加え、マイクロプレートを30分間37℃でインキュベートした。マイクロプレートを洗浄し、軽く叩いて乾燥させた後、TMB(Neogen、308177)を5分間発色のために加え、次いで、停止液を加えて、発色現象を停止させた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレートリーダーに直ちに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで記録した。SoftMaxプロ6.2.1を使用してデータを分析し、プロセシングした。
【0152】
抗体VP101の抗原PD-1への結合の検出結果を
図14に示す。各用量の吸光度を表7に示す。結合抗体VP101の定量分析によって、曲線シミュレーションを実施して抗体の結合効率EC
50を得て、これを下記の表7に示す。
【0153】
【0154】
この結果から、抗体VP101がPD-1タンパク質に効率的に結合することができ、その結合効率が用量依存的であり、抗体VP101がBsAbB7およびBsAbB8よりもヒトPD-1に高結合活性を有することが明らかである。
【0155】
5.競合ELISAによる、抗原VEGFAへの結合に対するVEGFR2との競合における抗体VP101の活性の検出
その方法は、詳しくは以下のとおりである:
マイクロプレートをVEGF-Hisでコーティングし、2時間37℃でインキュベートした。洗浄後、マイクロプレートを37℃で1時間、1% BSAでブロッキングした。洗浄後、マイクロプレートに、勾配的に希釈した抗体およびヒトVEGFR2 ECD-mFc-bio(最終濃度:0.02μg/mL)を加え、2時間室温でインキュベートした。洗浄後、マイクロプレートに、HRP標識したストレプトアビジンSA-HRP(1:4000)希釈標準溶液を加え、30分間37℃でインキュベートした。洗浄後、マイクロプレートを、光の非存在下で5分間発色のためのTMB発色溶液を加え、次いで、停止液を加え、発色反応を停止させた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレートリーダーに直ちに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで記録した。SoftMax Pro 6.2.1を使用してデータを分析し、プロセシングした。
【0156】
検出結果を
図15に示す。各用量の吸光度を表8に示す。結合抗体の吸光度の定量分析によって、曲線シミュレーションを実施して、抗体の結合効率EC
50を得た(表8)。
【0157】
【0158】
この結果から、抗体VP101が抗原VEGFAに有効に結合することができ、VEGFR2のVEGFAへの結合を抑制し、VEGFR2のVEGFAへの結合の抑制におけるその効率が用量依存的であることが明らかである。
【0159】
6.競合ELISAによる、抗原PD-1への結合に対するPD-L1との競合における抗体VP101の検出
その方法は、詳しくは以下のとおりである:
マイクロプレートをPD-1-hFcでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。マイクロプレートを2時間1% BSAでブロッキングした後、異なる濃度の抗体をそれぞれ10分間PD-L1-hFcと混合した(希釈濃度については表10を参照)。30分間37℃でインキュベーションした後、マイクロプレートを洗浄し、軽く叩いて乾燥させた。次いで、酵素標識した二次抗体を加え、マイクロプレートを30分間37℃でインキュベートした。マイクロプレートを洗浄し、軽く叩いて乾燥させた後、TMBを5分間発色のために加え、次いで、停止液を加えて、発色現象を停止させた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレートリーダーに直ちに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで記録した(表10を参照)。SoftMax Pro 6.2.1を使用してデータを分析し、プロセシングした。
【0160】
検出結果を
図16に示す。各用量の吸光度を表9に示す。結合抗体VP101の定量分析によって、曲線シミュレーションを実施し、抗体の結合効率EC
50を得た(表9)。
【0161】
【0162】
この結果からは、抗体VP101が抗原PD-1に有効に結合することができ、リガンドPD-L1のPD-1への結合を抑制し、PD-L1のPD-1への結合の抑制におけるその効率は用量依存的であることが明らかである。
【0163】
実施例4:抗体VP101の細胞膜表面抗原への結合
最初に、PD-1抗原を発現する293T細胞を構築し、次いで、抗体の細胞膜表面抗原に対する特異的結合能力をフローサイトメトリーによって分析し、確認した。
【0164】
1.PD-1抗原を発現する293T細胞の構築
PD-1のベクターpLenti6.3-PD-1(ベクターpLenti6.3はInvitrogenから購入)を293T細胞にトランスフェクトし、PD-1を安定して発現するクローン群293T-PD-1細胞をスクリーニングによって得た。
【0165】
2.抗体の細胞表面抗原への結合の検出
前ステップで得られた、抗原を発現する293T-PD-1を、従来のパンクレアチン消化法によってパンクレアチンで消化し、それぞれのコレクションチューブ中の細胞数が2×105となるようにした。PBSA(1% BSA)で勾配的に希釈した濃度を有する抗体希釈溶液を、それぞれ、293T-PD-1細胞と氷上で2時間インキュベートし、次いで、それぞれのチューブにFITCヤギ抗ヒトIgG(1:500)100μLを加え、1時間氷上でインキュベートした。次いで、PBSを洗浄に使用し、300μLのPBSAを使用して細胞を再懸濁し、蛍光シグナル(MFI)をフローサイトメーターのFITCチャネルで検出した。
【0166】
結果を
図17に示し、各濃度のMFI値を表10に示す。結合14C12H1L1抗体の蛍光定量化分析およびカーブフィッティングによって、VP101抗体の結合EC
50は3.5nMであると算出された。
【0167】
【0168】
この結果からは、VP101抗体が293T-PD-1宿主細胞表面上のPD-1抗原に有効に結合することができ、その結合効率が用量依存的であり、ベバシズマブが293T-PD-1に対する結合活性を有しておらず、VP101の293T-PD-1への結合が特異的であることを示唆していることが明らかである。
【0169】
3.抗体VP101、BsAbB7およびBsAbB8の細胞表面抗原への結合は、本実施例のステップ2で説明した実験手順を参照することによって検出した。
【0170】
結果を
図18に示し、各濃度のMFI値を表11に示す。結合抗体の蛍光定量化分析およびカーブフィッティングによって、ニボルマブ、14C12H1L1、VP101、BsAbB7およびBsAbB8の結合性EC
50値が、それぞれ、7.853nM、3.607nM、7.896nM、9.943nMおよび10.610nMであると算出された。
【0171】
【0172】
この結果からは、VP101抗体が用量依存的様式で293T-PD1の膜表面PD-1に結合することができることが明らかである。ベバシズマブは293T-PD-1に対して結合活性を有しておらず、VP101の293T-PD-1への結合が特異的であることを示唆している。
【0173】
実施例5:抗体VP101の細胞膜表面抗原への競合的結合
1.競合的フローサイトメトリー法を、細胞膜表面抗原PD-1への結合に対するPD-L1との競合におけるVP101のEC50を検出するために採用し、この方法を以下のとおり明示する:
293T-PD-1細胞を従来の方法で消化し、それぞれについて300,000個の細胞を含むいくつかのサンプルに分け、次いで、それらを遠心分離および洗浄に供した。次いで、それぞれのチューブに、対応する勾配的に希釈した抗体100μLを加え、氷上で30分間インキュベートした;次いで、100μLのPD-L1-mFcをそれぞれのチューブに加え、20nMの最終濃度に達するようにその混合物を十分に混合し、次いで、氷上で1時間インキュベートした。次いで、500μLの1% PBSAを加え、その混合物を5分間5600rpmの遠心分離にかけ、上清を除去した。その後、1:500の比で希釈したFITCコート抗マウス抗体100μLをそれぞれのチューブに加え、その混合物を十分に混合した後、光の非存在下で40分間氷上にてインキュベートした。次いで、その混合物を遠心分離にかけ、洗浄し、再懸濁し、その後、試験用のローディングチューブに移した。
【0174】
結果を
図19に示し、各濃度のMFI値を表12に示す。蛍光定量化分析およびカーブフィッティングによって、抗体VP101および14C12H1L1の結合EC
50値は、それぞれ、8.33nMおよび4.37nMであると算出された。
【0175】
【0176】
この結果から、VP101抗体は、用量依存的様式で、293T-PD-1宿主細胞の表面上のPD-1へのPDL-1の結合を有効に遮断することができることが明らかである。
【0177】
2.細胞膜表面抗原PD-1への結合に対するPD-L1との競合におけるVP101、BsAbB7、BsAbB8、14C12H1L1およびニボルマブのEC50値を、競合的フローサイトメトリーを使用することにより、またこの実施例のステップ1で説明した実験手順を参照することにより検出した。
【0178】
結果を
図20に示し、各濃度のMFI値を表13に示す。蛍光定量化分析およびカーブフィッティングによって、抗体VP101、BsAbB7、BsAbB8、14C12H1L1およびニボルマブの競合的結合EC50値が、それぞれ、15.04nM、22.25nM、19.25nM、9.21nMおよび9.72nMであると算出された。
【0179】
【0180】
この結果から、抗体14C12H1L1の活性が、PD-1を標的とする市販抗体ニボルマブの活性と同等であり、また二官能性抗体VP101の活性より優れていることが明らかである。抗体VP101の活性は、BsAbB7およびBsAbB8の活性よりも優れている。
【0181】
実施例6:NFATシグナル経路を活性化するためのVEGFブロッキングにおける抗体VP101、BsAbB7およびBsAbB8の中和生物活性の検出
1.293T-NFAT-(opv)KDR(C7)細胞の構築
KDR(VEGFR2)ベクターpCDH-KDRFL(OPV)-GFP-Puro(ベクターpCDH-GFP-PuroはYoubioから購入)およびNFATベクターpNFAT-luc-hygro(ベクターpGL4-luc2P-hygroはPromegaから購入)を293T細胞にトランスフェクトし、KDRおよびNFATルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定して発現するクローン群の293T-NFAT-(opv)KDR(C7)細胞をスクリーニングによって得た。
【0182】
2.293T-NFAT-(opv)KDR(C7)細胞を回収し、5分間遠心分離にかけ、上清を除去した;DMEM+10% FBS培地を使用して細胞を再懸濁し、細胞数をカウントし、細胞の生存率を検出した;次いで、細胞濃度を適正範囲にあるように調節し、50000細胞/50μLの細胞懸濁液をブラック96ウェルプレートのそれぞれのウェルに加えた;
対応する抗体(最終濃度は300、100、10、2、0.2、0.02、0.002nM)およびVEGF(最終濃度は30ng/mL)を実験計画に従って希釈し、VEGFを標的とする抗体を、室温で1時間、VEGFとプレインキュベートした後、細胞に加えた。ブランクおよびアイソタイプの対照(それぞれのウェルの最終容量は100μL)を設計し、5% CO2で4時間、37℃の二酸化炭素インキュベーター内でインキュベートした;50μLのルシフェラーゼアッセイ系をそれぞれのウェルに加え、相対的蛍光ユニット(RLU)を5分以内に多重標識マイクロプレート試験装置によって検出した。
【0183】
実験結果を
図21に示し、各抗体に対するEC
50値を表14に示す。
【0184】
【0185】
この結果から、VP101のEC50は1.240nMであり、BsAbB7のEC50は1.217nMであり、BsAbB8のEC50は1.728nMであり、ベバシズマブのEC50は0.773nMであることが明らかであり、また実験結果から、NFATシグナル経路を活性化するためのVEGFのブロッキングにおけるVP101およびBsAbB7の活性がBsAbB8より良好であることが明らかである。
【0186】
実施例7:VEGFA誘導されたHUVEC細胞増殖を抑制するVP101抗体の実験
良好な増殖状態のHUVEC細胞(Allcellから購入)を、細胞濃度が1.5×104/mLとなるように調整した後、200μL/ウェルで96ウェルプレートに播種し、次いで、インキュベーター内で、24時間37℃、5% CO2濃度でインキュベートした。次いで、細胞がウェルに付着したことを確認した後、培養培地を廃棄した。その後、1640を含む2% FBSを使用することにより調製した20nMのVEGFAを、200μL/ウェルで96ウェルプレートに加え、異なる濃度の抗体を添加した後、72時間インキュベートした。72時間後、培養培地を廃棄し、MTTを加えた。4時間後、MTTを廃棄し、DMSOを加えた後、マイクロプレートリーダーを使用して、490nmでOD値を測定した。
【0187】
結果を
図22に示した。この結果から、ヒト化抗体VP101およびベバシズマブは両方とも、用量依存的様式でVEGFA誘導されたHUVEC細胞増殖を有効に抑制することができ、VEGFA誘導されたHUVEC細胞増殖の抑制におけるVP101の薬理活性は、同じ用量のベバシズマブより高いことが明らかである。
【0188】
実施例8:混合リンパ球反応におけるサイトカインIFN-γおよびIL-2の分泌の促進
1.DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるVP101、14C12H1L1およびニボルマブのIFN-γ分泌の促進
PBMCをFicoll-Paque Plus(GE Healthcare)によって単離し、6日間誘導するためにIL-4(Peprotech 200-04、1000U/mL)およびGM-CSF(Peprotech 300-03、1000U/mL)に加え、次いで、TNF-α(Peprotech 300-01A、200U/mL)を、3日間誘導するためにさらに加え、成熟DC細胞を得た。
【0189】
共培養の日に、新鮮なPBMCを別のドナーの末梢血から単離し、得られた成熟DC細胞を、別のドナーの新鮮な単離PBMCと1:10の比で混合し、それと同時に、異なる濃度の抗体(対照としてhIgG)を加えた。5~6日間共培養した後、細胞上清を回収し、ELISAキット(Dakeweから購入)を使用して、IFN-γ含有量についてアッセイした。
【0190】
DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるIFN-γ分泌に対するVP101の効果を
図23に示す。
図23から分かるように、VP101は、用量依存的様式でIFN-γ分泌を効果的に促進することができる。さらに、30nMおよび300nMの用量では、VP101は、同じ14C12H1L1よりIFN-γ分泌の促進においてより大きな活性を有しており、30nMの用量レベルでは、同じニボルマブよりIFN-γ分泌の促進においてより大きな活性を有している。
【0191】
2.DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるVP101、BsAbB7およびBsAbB8bによるIL-2およびIFN-γの分泌の促進
この実施例のステップ1を実験方法について参照し、すなわち、PBMCをFicoll-Paque Plus(GE Healthcare)によって単離し、6日間誘導するためにIL-4(Peprotech 200-04、1000U/mL)およびGM-CSF(Peprotech 300-03、1000U/mL)に加え、次いで、TNF-α(Peprotech 300-01A、200U/mL)を3日間誘導するためにさらに加え、成熟DC細胞を得た。
【0192】
共培養の日に、新鮮なPBMCを別のドナーの末梢血から単離し、得られた成熟DC細胞を、別のドナーの新鮮な単離PBMCと1:10の比で混合し、それと同時に、異なる濃度の抗体(対照としてhIgG)を加えた;5~6日間共培養した後、細胞上清を回収し、ELISAキット(Dakeweから購入)を使用して、IL-2およびIFN-γ含有量についてアッセイした。
【0193】
DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるIFN-γ分泌に対するVP101の効果を
図24に示す。
図24から分かるように、VP101は、用量依存的様式でIFN-γ分泌を効果的に促進することができる。IFN-γの分泌促進におけるVP101の薬理活性は、BsAbB7およびBsAbB8よりも有意に良好である。
【0194】
DC細胞およびPBMC細胞の混合培養系におけるIL-2分泌に対するVP101の効果を
図25に示す。
図25から分かるように、VP101は、用量依存様式でIL-2の分泌を効果的に促進することができ、IL-2の分泌促進におけるVP101の薬理活性は、BsAbB7およびBsAbB8よりも良好である。
【0195】
3.PBMC細胞およびRaji-PD-L1細胞の混合培養系におけるVP101、14C12H1L1およびニボルマブによるIL-2およびIFN-γの分泌促進
PD-L1を、レンチウイルス感染を介してRaji細胞に安定的にトランスフェクトし、PD-L1を安定して発現するRaji-PD-L1細胞が投与およびスクリーニングの後に得られた;PBMCを、SEBによる2日間の刺激の後に、マイトマイシンC処理したRaji-PD-L1と共に培養した。
【0196】
結果を
図26および
図27に示す。この結果から、VP101は、IL-2およびIFN-γの分泌を効果的に促進することができ、300nMの用量レベルでは、IL-2の分泌促進におけるVP101の活性が等量の14C12H1L1およびニボルマブの活性よりも有意に良好であることが明らかである。
【0197】
検討したアイソタイプの対照抗体は、ヒト抗ニワトリリゾチーム(抗HEL、すなわちヒトIgG、hIgGと略記)であり、これは上記の調製実施例6で説明しているようにして調製した。
【0198】
4.PBMC細胞およびRaji-PD-L1細胞の混合培養系におけるVP101、BsAbB7およびBsAbB8によるIL-2およびIFN-γの分泌促進は、この実施例のステップ3で説明した実験方法を参照することにより検討した。
【0199】
IFN-γの分泌の結果を
図28に示す。結果からは、VP101が用量依存的様式でIFN-γの分泌を効果的に促進することができることが明らかである。同時に、VP101は、同じ用量のBsAbB7よりも有意に良好であり、一方、VP101の薬理活性は、3nMおよび30nMの用量レベルでBsAbB8の薬理活性よりも有意に良好である。
【0200】
IL-2の分泌の結果を
図29に示す。結果からは、VP101が用量依存的様式でIL-2の分泌を効果的に促進することができることが明らかである。同時に、VP101の薬理活性は、3nMおよび300nMの用量でBsAbB7の薬理活性よりも有意に良好であり、一方、VP101は同じ用量のBsAbB8と同等である。
【0201】
実施例9:VP101によるin vivoでの腫瘍増殖の抑制実験
VP101のin vivoでの腫瘍抑制活性を検出するために、U87MG細胞(ATCCから購入したヒト神経膠腫細胞)を、5~7週齢のメスScid Beigeマウス(Vital Riverから購入)にまず皮下播種し、投与のモデリングおよび特定様式を表15に示した。投与後、腫瘍の各群の長さおよび幅を測定し、腫瘍体積を算出した。
【0202】
【0203】
結果を
図30に示す。この結果から、アイソタイプ対照抗体hIgG(調製方法は調製実施例6の方法と同じ)と比較して、異なる用量のベバシズマブおよびVP101がマウス腫瘍の増殖を効果的に抑制することができ、高用量のVP101が低用量のVP101よりも腫瘍の抑制においてより良好であることが明らかである。
【0204】
さらに、
図31から明らかなように、VP101は、腫瘍担持マウスの体重に影響を及ぼさない。
【0205】
本発明の内容はその開示した実施形態の完全で明瞭な説明を提供しているが、それはそれらに限定されない。当業者にとって、本発明への改変および置き換えはこれらの説明のガイダンスにより可能であり、またそのような改変および置き換えは本発明の範囲内に含まれる。本発明の完全な範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの任意の等価物により提供される。
【配列表】