(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】紙製ダンボールの加工器具、成形方法
(51)【国際特許分類】
B31F 5/00 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
B31F5/00
(21)【出願番号】P 2023219860
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】720009929
【氏名又は名称】鈴木 忍
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忍
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-125595(JP,A)
【文献】実開昭54-097365(JP,U)
【文献】特開2011-183837(JP,A)
【文献】特開2004-358702(JP,A)
【文献】実開昭50-004073(JP,U)
【文献】特開平06-278203(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1343615(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/99
B31F 1/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚が2~3Tである板状体の小口部に板厚方向と同方向に切り欠き溝部が設けられており、かつ電源が不要で手動操作が可能な紙製ダンボー
ルの加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が円弧形状であり、かつその上部が前記小口部表面に開口している断面U字形状となっており、さらに、前記切り欠き溝部のU字形状は、
(1)その断面底面の円弧半径が0.5~0.6Tである。
(2)その断面底面から前記小口部表面までの深さが0.8~1.5Tである。
(3)その断面底面の円弧両端に接する2直線の開き角が5~10°である。
(4)その内壁面と、前記小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取りが半径0.5~1.0Tである。
(5)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に当接させる加工器具の板厚の方向に沿った幅長さ(1h)が0.5~1.0Tである平坦部と面取り半径が0.5~1.0Tである角丸部とからなる圧接摺動部が設けられている。
さらに
(6)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法が1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具。
【請求項2】
端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚が2~3Tである板状体の小口部に板厚方向と同方向に切り欠き溝部が設けられており、かつ電源が不要で手動操作が可能な紙製ダンボー
ルの加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が角部に丸みをつけた略W字形状であり、かつその上部が前記小口部表面に開口しており、さらに、前記切り欠き溝部の略W字形状は、
(1)その断面底面の略W字形状両端の丸みの半径が0.1~0.2Tである。
(2)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸みの半径が0.1~0.5Tである。
(3)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差が0.05~0.16Tである。
(4)その断面底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点間距離が1.0~1.1Tである。
(5)その断面底面の最深部から前記小口部表面までの深さが0.8~1.5Tである。
(6)その断面底面の略W字形状両端の丸みに接する2直線の開き角が5~10°である。
(7)その内壁面と、前記小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取りが半径0.5~1.0Tである。
(8)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に当接させる加工器具の板厚の方向に沿った幅長さ(2h)が0.5~1.0Tである平坦部と面取り半径が0.5~1.0Tである角丸部とからなる圧接摺動部が設けられている。
さらに
(9)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法が1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具。
【請求項3】
端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚が2~3Tである円盤状板体の外周表面に円周方向に沿って切り欠き溝部が設けられており、その円盤状板体が軸着されて回動可能に構成され、かつ電源が不要で手動操作が可能な紙製ダンボー
ルの加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が角部に丸みをつけた略W字形状であり、かつその上部が前記円盤状板体の外周表面に開口しており、さらに、前記切り欠き溝部の略W字形状は、
(1)その断面底面の略W字形状両端の丸みの半径が0.1~0.2Tである。
(2)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸みの半径が0.1~0.5Tである。
(3)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差が0.05~0.16Tである。
(4)その断面底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点間距離が1.0~1.1Tである。
(5)その断面底面の最深部から前記円盤状板体の外周表面までの深さが0.8~1.5Tである。
(6)その断面底面の略W字形状両端の丸みに接する2直線の開き角が5~10°である。
(7)その内壁面と前記円盤状板体の外周表
面とで構成される面取りが半径0.5~1.0Tである。
(8)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に圧接転動させる環状当接部が設けられている。
さらに
(9)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法が1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具。
【請求項4】
前記加工器具の材質がプラスチックまたは木材であることを特徴とする請求項1、請求項2のいずれか1項に記載の前記紙製ダンボールの加工器具。
【請求項5】
前記円盤状板体の材質がプラスチックまたは木材であることを特徴とする請求項3に記載の前記紙製ダンボールの加工器具。
【請求項6】
前記切り欠き溝部の内壁面、および面取りされた部分の表面粗さは、JIS B 0601で規定されたRa12.5以下であることを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3のいずれか1項に記載の前記紙製ダンボー
ルの加工器具。
【請求項7】
請求項1、請求項2、または請求項3のいずれか1項に記載の紙製ダンボー
ルの加工器具を用いて
、紙製ダンボールの端部断面
を成形する
前記紙製ダンボールの成形方法。
【請求項8】
請求項6に記載の紙製ダンボー
ルの加工器具を用いて
、紙製ダンボールの端部断面
を成形する前記紙製ダンボールの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンボール端部の形状を加工する器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンボール端部に加工を行う場合、テープを貼付する方法があった。この場合、美観が向上すると共に、端部で手を切る心配がなくなるという長所がある。例えば特許文献5では、端部をふさぐようダンボールの両側面にテープを連続して貼付する器具が開示されている。これは器具上に設けられた長い直線状の溝にダンボールを押し込む方式のため、端部は直線に限定されている。
【0003】
また、プラスチック製中空シートやプラスチック製ダンボールに対しては、加熱成形する方法が知られている。特許文献1、特許文献6では、中空シートやダンボールを加熱して軟化した後、円弧状の型で成形し、その後、冷却して形状を固定する装置が開示されている。これも端部は直線に限定され、装置は大型である。
【0004】
また、内部が中空の車両用ボード部材に対しても、加熱成形する方法が知られている。特許文献2では、ボード部材の両側面を厚さ中央方向に折り返す装置が開示されている。これも装置が大型である。
【0005】
また、プラスチック製中空シートやプラスチック製ダンボールに対し加熱成形する方法の中で、ローラーを用いて成形する方法も知られている。特許文献3、特許文献4では、端部を円弧形状に成形する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-358702号公報
【文献】特開2011-183837号公報
【文献】特開昭51-125595号公報
【文献】特開平6-278203号公報
【文献】実願昭52-170241号
【文献】実願昭48-059568号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5のように端部に装飾用テープを貼付する場合、あらかじめダンボールの片側にテープを貼付したものを準備する必要があるため、構成部品が増え手間がかかる。また、端部が曲線の場合、片側から反対の面に折り返す際、前記装飾用テープには必ずしわが生じるため、きれいに貼ることができない。
【0008】
特許文献1、特許文献6の事例は、加工する対象が熱で軟化する素材であるが、紙製ダンボールでは成形部位の変形抵抗と摺動抵抗が大きいため、
図9に示すようにダンボールが折れてしまい成形できないことが予見できる。
【0009】
特許文献2の事例も、加工する対象が熱で軟化する素材であるが、紙製ダンボールでは成形部位の変形抵抗が大きいため、
図10に示すように、成形部位近傍でダンボールがつぶれて“しわ”ができるため、美観を損ねることが予見できる。
【0010】
特許文献1、特許文献6の事例は、直線状の型に沿ってダンボールを押し込む構造のため端部が曲線の場合は加工できないこと、および軽量かつ小型の装置は実現できないことが明白である。また、ダンボールの端部断面が両角部を直角に折り曲げ中央で突き合せた形状の成形形態は実現できていない。
【0011】
特許文献3、特許文献4の事例は、加工する対象が熱で軟化する素材であるが、ローラータイプの加工器具であれば、加工器具が作用する部位は局所的で、成形を完了させる際、加工器具での圧接転動を何回かに分けて行えば、成形部位の1回当りの変形抵抗は小さく、また、加工器具とダンボールとの接触面積が小さいため摩擦抵抗も小さいので、紙製ダンボールにも適用が可能である。しかし、これまでに開示されている端部成形形状は円弧形状のみで、ダンボールの端部断面が両角部を直角に折り曲げ中央で突き合せた形状の成形形態は実現できていない。
【0012】
本発明は、装飾用テープ等の副資材を用いることなく、紙製ダンボールにも端部の成形が可能で、端部が直線に限らず曲線にも対応でき、断続的な加工も可能で、小型・軽量のため手動操作できる器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明は、端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚が2~3Tである板状体の小口部に板厚方向と同方向に切り欠き溝部が設けられており、かつ電源が不要で手動操作が可能な紙製ダンボールの加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が円弧形状であり、かつその上部が前記小口部表面に開口している断面U字形状となっており、さらに、前記切り欠き溝部のU字形状は、
(1)その断面底面の円弧半径が0.5~0.6Tである。
(2)その断面底面から前記小口部表面までの深さが0.8~1.5Tである。
(3)その断面底面の円弧両端に接する2直線の開き角が5~10°である。
(4)その内壁面と、前記小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取りが半径0.5~1.0Tである。
(5)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に当接させる加工器具の板厚の方向に沿った幅長さ(1h)が0.5~1.0Tである平坦部と面取り半径が0.5~1.0Tである角丸部とからなる圧接摺動部が設けられている。
さらに
(6)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法が1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具である。
【0014】
第2発明は、端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚が2~3Tである板状体の小口部に板厚方向と同方向に切り欠き溝部が設けられており、かつ電源が不要で手動操作が可能な紙製ダンボールの加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が角部に丸みをつけた略W字形状であり、かつその上部が前記小口部表面に開口しており、さらに、前記切り欠き溝部の略W字形状は、
(1)その断面底面の略W字形状両端の丸みの半径が0.1~0.2Tである。
(2)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸みの半径が0.1~0.5Tである。
(3)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差が0.05~0.16Tである。
(4)その断面底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点間距離が1.0~1.1Tである。
(5)その断面底面の最深部から前記小口部表面までの深さが0.8~1.5Tである。
(6)その断面底面の略W字形状両端の丸みに接する2直線の開き角が5~10°である。
(7)その内壁面と、前記小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取りが半径0.5~1.0Tである。
(8)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に当接させる加工器具の板厚の方向に沿った幅長さ(2h)が0.5~1.0Tである平坦部と面取り半径が0.5~1.0Tである角丸部とからなる圧接摺動部が設けられている。
さらに
(9)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法が1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具である。
【0015】
第3発明は、端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚が2~3Tである円盤状板体の外周表面に円周方向に沿って切り欠き溝部が設けられており、その円盤状板体が軸着されて回動可能に構成され、かつ電源が不要で手動操作が可能な紙製ダンボールの加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が角部に丸みをつけた略W字形状であり、かつその上部が前記円盤状板体の外周表面に開口しており、さらに、前記切り欠き溝部の略W字形状は、
(1)その断面底面の略W字形状両端の丸みの半径が0.1~0.2Tである。
(2)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸みの半径が0.1~0.5Tである。
(3)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差が0.05~0.16Tである。
(4)その断面底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点間距離が1.0~1.1Tである。
(5)その断面底面の最深部から前記円盤状板体の外周表面までの深さが0.8~1.5Tである。
(6)その断面底面の略W字形状両端の丸みに接する2直線の開き角が5~10°である。
(7)その内壁面と、前記円盤状板体の外周表面とで構成される面取りが半径0.5~1.0Tである。
(8)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に圧接転動させる環状当接部が設けられている。
さらに
(9)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法が1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具である。
【0016】
第4発明は、前記加工器具の材質がプラスチックまたは木材であることを特徴とする第1発明、第2発明のいずれか1項に記載の前記紙製ダンボールの加工器具である。
【0017】
第5発明は、前記円盤状板体の材質がプラスチックまたは木材であることを特徴とする第3発明に記載の前記紙製ダンボールの加工器具である。
【0018】
第6発明は、前記切り欠き溝部の内壁面、および面取りされた部分の表面粗さは、JIS B 0601で規定されたRa12.5以下であることを特徴とする第1発明、第2発明、または第3発明のいずれか1項に記載の前記紙製ダンボールの加工器具である。
【0019】
第7発明は、第1発明、第2発明、または第3発明のいずれか1項に記載の紙製ダンボールの加工器具を用いて、紙製ダンボールの端部断面を成形する前記紙製ダンボールの成形方法である。
【0020】
第8発明は、第6発明に記載の紙製ダンボールの加工器具を用いて、紙製ダンボールの端部断面を成形する前記紙製ダンボールの成形方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ダンボール端部において、装飾用テープ等の副資材を用いることなく、切断されたままの角部で手を切る心配の解消、美観向上、端部接着のしやすさ、に優れた紙製ダンボールを、得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1発明の実施例に係る加工器具であって、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は断面図、(E)は部分拡大図、(F)は拡大断面図。
【
図2】第2発明の実施例に係る加工器具であって、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は断面図、(E)は部分拡大図、(F)は拡大断面図。
【
図3】第3発明の実施例に係る加工器具であって、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は断面図、(E)は部分拡大図。
【
図4】第1発明の加工器具で加工した場合の加工工程を示す斜視図。
【
図5】第1発明の加工器具にて、端部が凸形状曲線のダンボールを加工した場合の斜視図で、(A)は加工前、(B)は加工後を示す。
【
図6】第1発明の加工器具にて、端部が凹形状曲線のダンボールを加工した場合の斜視図で、(A)は加工前、(B)は加工後を示す。
【
図7】第1発明の加工器具にて、曲面形状ダンボールの端部を加工した場合の斜視図で、(A)は加工前、(B)は加工後を示す。
【
図8】第2発明の加工器具で加工した場合の加工工程を示す斜視図。
【
図9】背景技術、たとえば、特許文献1、特許文献6の事例と類似した方法で紙製ダンボールを加工した場合に想定される加工工程を示す斜視図。
【
図10】背景技術、たとえば、特許文献2の事例と類似した方法で紙製ダンボールを加工した場合に想定される加工工程を示す斜視図。
【
図11】第2発明の加工器具で加工した場合の加工部位斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は第1発明の実施例に係る加工器具1を示す。端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚1gが2~3Tである板状体の小口部に板厚方向と同方向に切り欠き溝部が設けられている紙製ダンボール用の加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が円弧形状であり、かつその上部が前記小口部表面に開口している断面U字形状となっており、さらに、前記切り欠き溝部のU字形状は、
(1)その断面底面の円弧1aの半径が0.5~0.6Tである。
(2)その断面底面から前記小口部表面までの深さ1kが0.8~1.5Tである。
(3)その断面底面の円弧両端に接する2直線の開き角1fが5~10°である。
(4)その内壁面と、前記小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取り1jが半径0.5~1.0Tである。
(5)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に当接させる平坦部1h(幅長さ0.5~1.0T)と角丸部1s(面取り半径0.5~1.0T)とからなる圧接摺動部が設けられている。
さらに
(6)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法1mが1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具である。
【0025】
なお、前記“2つの内壁面の離間寸法1m”は、平行でない2平面間の距離を表しており、前記小口部表面からの深さによって変化するが、
図1(E)では一例として切り欠き溝深さ中腹部での距離を示している。
【0026】
図4は前記加工器具1にて直線状端部を加工した場合の加工工程を示す。
図4(B)は加工前の紙製ダンボール4の上面に、前記加工器具1の溝を下向きにして、押し付け力Fを加えながらダンボール厚さと直交する方向に圧接摺動させる加工を開始する前の状態を示す。開始後、ダンボール端部両角部は溝曲面に接するように当り、圧接摺動を何回か繰り返すたびにダンボール厚さ中心方向に、溝形状に倣って変形が進み、遂には
図4(D)に示すように、端部断面が円弧状に成形される。なお、この圧接摺動時にダンボールと接触するのが、
図1(F)において示されている平坦部1hと面取り1jの一部である角丸部1sである。ここではTーT断面が一例として示されているが、
図1(E)における1a、1dの各位置においても
図1(F)と同じ断面形状を有している。
【実施例2】
【0027】
図2は、第2発明の実施例に係る加工器具2を示す。端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚2gが2~3Tである板状体の小口部に板厚方向と同方向に切り欠き溝部が設けられている紙製ダンボール用の加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が角部に丸みをつけた略W字形状であり、かつその上部が前記小口部表面に開口しており、さらに、前記切り欠き溝部の略W字形状は、
(1)その断面底面の略W字形状両端の丸み2aの半径が0.1~0.2Tである。
(2)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸み2bの半径が0.1~0.5Tである。
(3)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差2nが0.05~0.16Tである。
(4)その断面底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点間距離2eが1.0~1.1Tである。
(5)その断面底面の最深部から前記小口部表面までの深さ2kが0.8~1.5Tである。
(6)その断面底面の略W字形状両端の丸みに接する2直線の開き角2fが5~10°である。
(7)その内壁面と、前記小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取り2jが半径0.5~1.0Tである。
(8)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に当接させる平坦部2h(幅長さ0.5~1.0T)と角丸部2s(面取り半径0.5~1.0T)とからなる圧接摺動部が設けられている。
さらに
(9)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法2mが1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具である。
【0028】
なお、前記“2つの内壁面の離間寸法2m”は、平行でない2平面間の距離を表しており、前記小口部表面からの深さによって変化するが、
図2(E)では一例として切り欠き溝深さ中腹部での距離を示している。
【0029】
図8は前記加工器具2にて直線状端部を加工した場合の加工工程を示す。
図8(B)は加工前の紙製ダンボール4の上面に、前記加工器具2の溝を下向きにして、押し付け力Fを加えながらダンボール厚さと直交する方向に圧接摺動させる加工を開始する前の状態を示す。開始後、ダンボール端部両角部は前記切り欠き溝部底面の略W字形状両端の丸みに接するように当り、圧接摺動を何回か繰り返すたびにダンボール厚さ中心方向に、溝形状に倣って変形が進み、成形開始前の両角部がダンボール板厚中央で突き合わされたところで成形が完了する。この際、前記切り欠き溝部底面の略W字形状中央盛り上がり部があるため、成形完了時のダンボール両角部折り返し部は鋭角になる。成形完了後に加工器具が離れると、両角部折り返し部のスプリングバックのため、折り返し部は直角になり、
図11に示すように、両角部を直角に折り曲げ中央で突き合せた形状が形成される。なお、この圧接摺動時にダンボールと接触するのが、
図2(F)において示されている平坦部2hと面取り2jの一部である角丸部2sである。ここではVーV断面が一例として示されているが、
図2(E)における2a、2b、2dの各位置においても
図2(F)と同じ断面形状を有している。
【実施例3】
【0030】
図3は、第3発明の実施例に係る加工器具3を示す。端部が加工される紙製ダンボールの厚さTに対して板厚が2~3Tである円盤状板体3pの外周表面に円周方向に沿って切り欠き溝部が設けられており、その円盤状板体3pが支持部3qにピン3rにて軸着されて回動可能に構成された紙製ダンボール用の加工器具において、
前記切り欠き溝部は底面が角部に丸みをつけた略W字形状であり、かつその上部が前記円盤状板体3pの外周表面に開口しており、さらに、前記切り欠き溝部の略W字形状は、
(1)その断面底面の略W字形状両端の丸み3aの半径が0.1~0.2Tである。
(2)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸み3bの半径が0.1~0.5Tである。
(3)その断面底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差3nが0.05~0.16Tである。
(4)その断面底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点間距離3eが1.0~1.1Tである。
(5)その断面底面の最深部から前記円盤状板体3pの外周表面までの深さ3kが0.8~1.5Tである。
(6)その断面底面の略W字形状両端の丸みに接する2直線の開き角3fが5~10°である。
(7)その内壁面と、前記円盤状板体3pの外周表面とで構成される面取り3jが半径0.5~1.0Tである。
(8)その切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に圧接転動させる環状当接部が設けられている。
さらに
(9)その切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法3mが1.0~1.2Tである。
少なくとも以上の構成要素を備えたことを特徴とする紙製ダンボールの加工器具である。
【0031】
なお、前記“2つの内壁面の離間寸法3m”は、円錐状2曲面間の距離を表しており、前記円盤状板体3aの外周表面からの深さによって変化するが、
図3(E)では一例として切り欠き溝深さ中腹部での距離を示している。
【0032】
直線状端部をもつ紙製ダンボールに、円盤状板体3pの溝を押し付けながらダンボール厚さと直交する方向に圧接転動を何回か繰り返すと、前記加工器具2と同様、
図11に示すように、両角部を直角に折り曲げ中央で突き合せた形状が形成される。なお、この圧接転動時にダンボールと当接している環状当接部は、
図3(E)において内壁面を構成する部位として示されている3a、3bである。
【実施例4】
【0033】
第6発明の実施例に係る加工器具は、前記切り欠き溝部の内壁面、および面取りされた部分の表面粗さは、Ra12.5(JIS B 0601)以下であることを特徴とする第1発明、第2発明、または第3発明のいずれか1項に記載の前記紙製ダンボールの加工器具である。
【0034】
前記表面粗さがRa12.5(JIS B 0601)以下であることにより、前記加工器具の前記切り欠き溝部を紙製ダンボールの端部に圧接摺動、または圧接転動させる際の摩擦抵抗が小さくなるので成形に必要な力を低減させることができる。また、加工器具表面の凹凸が小さいので、成形面にこすれ跡がつきにくくなる。
【実施例5】
【0035】
本実施例に係る紙製ダンボールは、第1発明、第2発明、または第3発明のいずれか1項に記載の紙製ダンボールの加工器具を用いて成形された前記紙製ダンボールの成形品である。
【実施例6】
【0036】
本実施例に係る紙製ダンボールは、第6発明に記載の紙製ダンボールの加工器具を用いて成形された前記紙製ダンボールの成形品である。
【0037】
加工器具の前記表面粗さがRa12.5(JIS B 0601)以下であることにより、成形面にこすれ跡がつきにくく、きれいである。
【実施例7】
【0038】
第7発明の実施例に係る成形方法は、第1発明、第2発明、または第3発明のいずれか1項に記載の紙製ダンボールの加工器具を用いて、紙製ダンボールの端部断面を成形する前記紙製ダンボールの成形方法である。
【実施例8】
【0039】
第8発明の実施例に係る成形方法は、第6発明に記載の紙製ダンボールの加工器具を用いて、紙製ダンボールの端部断面を成形する前記紙製ダンボールの成形方法である。
【0040】
加工器具の前記表面粗さがRa12.5(JIS B 0601)以下であることにより、前記加工器具の前記切り欠き溝部を紙製ダンボールの端部に圧接摺動、または圧接転動させる際の摩擦抵抗が小さくなるので成形に必要な力を低減させることができる。また、成形面にこすれ跡がつきにくい。
【実施例9】
【0041】
以上、本発明を実施するための事例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0042】
たとえば、加工器具1の前記切り欠き溝部底面の円弧形状は、真円でなく、楕円でもよい。
【0043】
また、加工器具1、加工器具2、および加工器具3において、切り欠き溝部断面底面の曲線に接する2直線の開き角1f、2f、3fは1~30°でもよい。
【0044】
また、加工器具2、加工器具3において、前記切り欠き溝部底面の略W字形状両端の丸み2a、3aの半径は0.08~0.2T、前記切り欠き溝部底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸み2b、3bの半径は0.1~0.8T、前記切り欠き溝部底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差2n、3nは0.04~0.2T、でもよい。更に、前記切り欠き溝部底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点間距離2e、3eは1.0~1.2T、でもよい。
【0045】
また、加工器具1、加工器具2において、板厚1g、2gは1~8T、前記切り欠き溝部底面の最深部から前記小口部表面までの深さ1k、2kは0.6~4T、前記切り欠き溝部の内壁面と、前記小口表面および/または板状体両表面とで構成される面取り1j、2jは半径0.2~2T、平坦部の幅長さ1h、2hは0~7T、でもよい。
【0046】
また、加工器具1、加工器具2、および加工器具3において、切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法1m、2m、3mは1.0~2.6T、でもよい。
【0047】
また、加工器具3において、切り欠き溝部の内壁面と円盤状板体の外周表面とで構成される面取り3jは半径0.2~2Tでもよい。
【0048】
また、成形される紙製ダンボールの端部は直線に限定されることはなく、
図5、
図6に見られるようにダンボール端部が、凸形状曲線、または凹形状曲線でも成形可能である。
【0049】
また、成形される紙製ダンボールは平面に限定されることはなく、
図7に見られるように曲面でもダンボール端部の成形が可能である。
【0050】
構造上、器具の板厚が小さく、ダンボールに接触する部分の幅は更に小さいので、断続的な成形も可能である。
【0051】
また、加工器具1~3で、前記切り欠き溝部の内壁面と面取り部は全てRa12.5(JIS B 0601)以下としたが、Ra6.3(JIS B 0601)以下が望ましい。従来知られていたプラスチック製中空シートやプラスチック製ダンボールを加熱成形する方法に比べ、紙製ダンボールでは成形部位の変形抵抗と摺動抵抗が大きいため、Ra12.5(JIS B 0601)を超えると成形面にこすれ跡がつきやすいという課題があり、この解決のために表面粗さは小さいほうが望ましい。
【0052】
また、切り欠き溝部の内壁面と他の面とで構成される面取りは、半径0.5~1.0Tといった曲面に限定せず、直線的に切って角をおとした形状でもよい。
【0053】
なお、上記実施例の加工器具材質は、ゴム等摩擦係数の大きいものでなければよく、プラスチック・金属・ガラス・陶磁器・木材等、一定の強度を有するものであれば制約はない。
しかし、量産性の観点からはプラスチックが望ましい。
【0054】
第1発明、第2発明、または第3発明のいずれか1項に記載の紙製ダンボール用の加工器具を用いて、前記加工器具の前記切り欠き溝部を紙製ダンボールの端部に圧接摺動、または圧接転動させることにより、一部分の成形が完了したら隣に移動し、加工範囲を広げていくことができる。
【0055】
加工器具が小型・軽量であるため、たとえば、ダンボールの円形穴内周端面の加工も可能である。
【0056】
加工器具1、加工器具2の前記切り欠き溝部内壁面と板状体両表面とで構成される角部には全て面取りを有するため、往復方向での圧接摺動が可能で、作業効率が良い。
【0057】
紙製ダンボールの成形を完了させる際、加工器具での圧接摺動、または圧接転動を何回かに分けて行えば1回当りの変形抵抗は小さく、また、加工器具とダンボールとの接触面積が小さいため摩擦抵抗も小さい。従って、小さな操作力で成形できるので、手動操作での加工が容易である。
【0058】
加工器具がダンボールに接触する部分においては、前記切り欠き溝部底面から開口部の方向に押す力と、摺動方向に押す力の2種類が成形に寄与しているが、力の向きが90°異なり力が分散されるため、成形時にダンボールがつぶれにくく、成形部位近傍に“しわ”ができる不具合が発生しにくい。
【0059】
前記切り欠き溝部の底面には、紙製ダンボールの端部に当接させる平坦部1h、2hが、ダンボールの厚さTに対して0.5~1.0T分、設けられており、成形完了後はこの部分が加工器具底面に当り接触面積が増大する構造となっている。このため、成形途中に比べ、成形完了後は、成形部位の変形抵抗が大きくなり、手動操作時に力をかけ過ぎた場合でもダンボールがつぶれにくく、成形部位近傍に“しわ”ができる不具合が発生しにくい。
【0060】
加工の際、ダンボールの厚さ方向に対し、加工器具の溝断面中心線〔
図1(E)、
図2(E)の断面中心線〕は直角に保持されるのが望ましいが、手動操作時の手振れにより多少傾くことが想定される。この場合でも、前記切り欠き溝部上部の開口の開き角があるので、ダンボールに接触しているのは前記切り欠き溝部底面の円弧部または略W字形状底部の丸み部のみで、切り欠き溝部両端の平面部がダンボールに接触していない状態を保ちやすい。このため、成形部位以外の場所に加工器具のこすれ跡がつくのを防止することができる。
【0061】
加工器具2、加工器具3において、前記切り欠き溝部は底面が角部に丸みをつけた略W字形状であり、これによりダンボールの端部断面が両角部を直角に折り曲げ中央で突き合せた形状の成形形態を実現できている。この形状を実現させるための手段として、前記切り欠き溝部底面の形状を角部に丸みをつけた水平線に置き換えるのは容易に想定できることである。しかし、この場合、加工器具の切り欠き溝部がダンボールに接触している間は、成形完了後のダンボール両角部が直角に折り曲げられているが、加工器具が離れると折り返し部のスプリングバックのため、折り返し部が鈍角になってしまう。これを防ぐために前記略W字形状が有効で、ダンボール両角部を折り曲げる際、前記中央盛り上がり部により、折り返し部のスプリングバックを見込んで鋭角に折り曲げ、加工器具が離れた後で成形完了後のダンボール両角部が直角になるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ダンボール端部において、角部で手を切る心配の解消、美観向上、端部接着のしやすさ、に優れた紙製ダンボールの提供に利用可能である。ダンボール以外の副資材や電源等の動力も不要なためコスト低減にも寄与できる。
【符号の説明】
【0063】
1、2、3、9、10 加工器具
1a 切り欠き溝部断面底面の円弧形状
1c 切り欠き溝部断面底面の円弧形状と両端2直線との接点
1d、2d、3d 切り欠き溝部断面の開口から底面に向かう2直線
1e、2e、3e 切り欠き溝部断面底面における曲線と直線との接点間距離
1f、2f、3f 切り欠き溝部断面底面の曲線に接する2直線の開き角
1g、2g 板状体の板厚
1h、2h 切り欠き溝部断面底面において紙製ダンボールの端部に当接させる平坦部の幅長さ
1j、2j 切り欠き溝部の内壁面と、小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取り
1k、2k 切り欠き溝部断面底面の最深部から板状体の小口部表面までの深さ
1m、2m、3m 切り欠き溝部を形成して相対峙している2つの内壁面の離間寸法
1s 面取り1jの一部である角丸部
2a、3a 切り欠き溝部断面底面の略W字形状両端の丸み
2b、3b 切り欠き溝部断面底面の略W字形状中央盛り上がり部の丸み
2c、3c 切り欠き溝部断面底面の略W字形状両端の丸みと両端2直線との接点
2n、3n 切り欠き溝部断面底面の略W字形状中央盛り上がり部と両端谷部との高低差
2s 面取り2jの一部である角丸部
3p 円盤状板体
3q 支持部
3r ピン
3j 切り欠き溝部の内壁面と、円盤状板体の外周表面とで構成される面取り
3k 切り欠き溝部断面底面の最深部から円盤状板体の外周表面までの深さ
4、5、6、7 加工前のダンボール
4a、4b、4c、5a、6a、7a、8a 加工後の紙製ダンボール
4x、8x 加工完了部位
4y、8y 加工途中部位
4z、8z 加工未実施部位
9a、10a ダンボールのつぶれによって生じたしわ
F 押し付け力
【要約】
【課題】紙製ダンボールの端部成形が可能な、小型かつ軽量で、手動で操作できる加工器具を提供する。
【解決手段】板状体の小口部に板厚方向と同方向にU字状断面形状をもつ切り欠き溝部が設けられている加工器具1において、U字底面は円弧形状で、その上部は前記小口部表面に開口している。また、紙製ダンボール4の厚さをTとした時、底面の円弧半径が0.5~0.6T、切り欠き溝部内壁面と、前記小口部表面および/または板状体両表面とで構成される面取りが半径0.5~1.0Tである。この加工器具1の切り欠き溝部を紙製ダンボール4の端部に押し付けながら、ダンボール厚さと直交する方向に圧接摺動させると、ダンボール端部は溝底面形状に倣って変形し、端部断面が円弧状に成形される。
【選択図】
図4