(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】冷菓
(51)【国際特許分類】
A23G 9/24 20060101AFI20241118BHJP
A23G 9/32 20060101ALI20241118BHJP
A23G 9/48 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A23G9/24
A23G9/32
A23G9/48
(21)【出願番号】P 2023500901
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006199
(87)【国際公開番号】W WO2022176916
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021025267
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 かおり
(72)【発明者】
【氏名】有澤 英司
(72)【発明者】
【氏名】岩井 大
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198019(JP,A)
【文献】特開昭59-173048(JP,A)
【文献】特開昭61-056045(JP,A)
【文献】実開昭62-139289(JP,U)
【文献】特開2000-262220(JP,A)
【文献】特開2001-054358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有し、
前記コーティング層は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されて
おり、
前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、包装袋入りの冷菓。
【請求項2】
前記組成物における前記特定成分の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
前記コア部の凍結点が-5℃以上である、請求項1または2に記載の冷菓。
【請求項4】
前記特定成分は、前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷菓。
【請求項5】
コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓の製造方法であって、
前記コア部の表面の少なくとも一部に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物を用いてコーティング層を形成する工程を有す
し、
前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、製造方法。
【請求項6】
プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を含有し、
冷菓の
-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で前記冷菓の製造に用いられる、氷生成抑制剤。
【請求項7】
冷菓の
-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法であって、
前記冷菓の表面を構成する組成物に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を添加する工程を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷菓は年間を通じて食される代表的な嗜好食品となっている。新しい味、食感、形態等に対する消費者の関心も高く、新商品の開発が盛んに行われている。冷菓において、冷凍保存中に品質を維持することは重要な課題の一つである。
【0003】
国際公開第2005/060763号(特許文献1)には、冷凍保存中の食品本体内での氷晶の成長を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、冷凍保存中に冷菓表面に氷が生成されることがあり、この氷により冷菓の食感、美観が低下し、冷菓の品質低下を生じさせる問題に着目した。本発明は、冷凍保存中に冷菓表面での氷の生成が抑制された冷菓、さらには冷菓の製造に使用される氷生成抑制剤、冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に例示する[1]~[7]に関する。
[1] プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されている、冷菓。
【0007】
[2] 前記組成物における前記特定成分の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下である、[1]に記載の冷菓。
【0008】
[3] 前記冷菓は、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有し、前記コーティング層は前記組成物より構成されている、[1]または[2]に記載の冷菓。
【0009】
[4] 前記特定成分は、前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の冷菓。
【0010】
[5] コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓の製造方法であって、
前記コア部の表面の少なくとも一部に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物を用いてコーティング層を形成する工程を有する、製造方法。
【0011】
[6] プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を含有し、
冷菓の冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で前記冷菓の製造に用いられる、氷生成抑制剤。
【0012】
[7] 冷菓の冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法であって、
前記冷菓の表面を構成する組成物に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を添加する工程を有する、方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷凍保存中に冷菓表面での氷の生成が抑制された冷菓、さらには冷菓の製造に使用される氷生成抑制剤、冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の冷菓の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す冷菓をA-Aで切断した状態を示す概略図である。
【
図4】包装袋に冷菓が収容された状態を示す概略図である。
【
図5】冷菓の表面での氷の生成の評価の各基準に当てはまるサンプルの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は冷菓に係る形態であり、前記冷菓は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含む組成物(以下、「特定組成物」とも称する。)により構成されている。
【0017】
図1は、本実施形態の冷菓の一例を示す概略図である。
図1に示す冷菓2は、スティック4が挿入されたアイスバーの形態である。
図2は、
図1に示す冷菓2をA-Aで切断した状態を示す概略図であり、
図3は
図2のA-A断面図である。冷菓2は、コア部21とコア部21を被覆するコーティング層22とを有する。コア部21は、コア部組成物より構成されており、コーティング層22は、コーティング層組成物より構成されている。
【0018】
冷菓2は、好ましくは、包装体に収容された状態で冷凍保存される。冷凍保存の温度は、通常-18℃~-35℃である。本発明者らは、冷菓2は、冷凍保存中に、冷菓2の表面で空気層と接する表面に氷が生成しやすく、保存期間が長くなるほど氷の生成範囲が広がりかつ氷の大きさが大きくなるという問題を知見した。冷菓2の表面に生成する氷は、冷菓の美観、食感を低下させ、冷菓の品質を低下させる。本発明者らは、冷菓2において、コーティング層組成物として特定組成物を用いることにより、冷菓2の表面に氷が生成するのを抑制することができることを見出した。本発明によると、冷凍保存期間が、例えば3ヶ月以上であっても、冷菓2の表面に氷が生成するのを抑制することができる。
【0019】
冷菓2において、コーティング層22の厚みは、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上とすることができる。コーティング層の厚みは、好ましくは5.0mm以下であり、より好ましくは3.0mm以下である。コーティング層22の厚みは例えば、コア部の表面温度、コーティング時間、コーティング液の温度によって調整できる。
【0020】
冷菓は
図1に示されるようなアイスバーの形態に限定されることなく、カップアイス、コーンアイス等であってもよい。これらの形態においても、冷菓の表面の少なくとも一部が空気層と接することにより、表面に生成する氷の問題が顕在化されやすい。本発明によると、冷菓について特定の形態に限定されることなく、冷凍保存時に冷菓の表面に氷が生成するのを抑制することができる。
【0021】
冷菓は、表面の少なくとも一部が、特定組成物の凍結物より構成されているものである形態が好ましく、
図1に示される冷菓2のように、コーティング層を有する形態に限定されることはない。冷菓の、表面の少なくとも一部が、特定組成物の凍結物より構成されていることにより、冷凍保存時に冷菓の表面での氷の生成を抑制することができる。冷菓は、単層からなる形態であってもよく、複数層からなる形態であってもよい。単層からなる冷菓は、1種類の冷菓組成物を用いて製造することができる。複数層からなる冷菓は、各層に対応する冷菓組成物を用いて製造することができる。単層からなる冷菓は1種類の冷菓組成物を用いて製造することができ、この場合、かかる冷菓組成物として特定組成物を用いる。複数層からなる冷菓は、表面の少なくとも一部を構成する冷菓組成物として特定組成物を用いる。
【0022】
冷菓の表面の中で、特に、空気層と接する表面、視認されやすい表面、及び一つの平面上の面積が大きい表面については、少なくとも一部が、好ましくは全部が、特定組成物の凍結物で構成されていることが好ましい。このような表面は、冷凍保存中に氷が生成されやすく、または氷が生成された場合に美観の低下への影響が大きいからである。冷菓の表面の中で、特定組成物の凍結物により構成されている表面の面積割合は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上である。冷菓の表面の中で、特定組成物の凍結物により構成されている面積の割合は、例えば100%以下であり、90%以下であってもよい。
冷菓の表面の中で、特定組成物の凍結物により構成されている表面の面積割合は、以下の方法で測定できる。コア部の外面がコーティング層で覆われた冷菓において、コア部が露出している領域を目視で確認し、その面積を画像解析ソフト(Image J)を用いて解析する。具体的には冷菓を撮影し、撮影画像を白黒の16bit画像に変換する。その後、Threshold処理を行ってBlack & Whiteモードで適切なバイナリ画像(白:コア部、黒:コーティング層)とする。バイナリ画像をヒストグラム機能で白(0)と黒(255)のドット数をカウントし、白面積割合(=白のカウント数÷(黒のカウント数+白のカウント数)×100)を計算する。特定組成物の凍結物により構成されている表面積に占めるコア部が露出していない領域の割合を被覆率と定義する。なお、コア部とコーティング層の色が近い場合は、画像中のコア部が露出している領域をあらかじめ白く塗りつぶすことで、適切なバイナリ画像を得られる。
【0023】
<冷菓>
本実施形態の冷菓は、乳等省令で規定されるアイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、シャーベット、「食品の添加物等の規格基準」で規定される氷菓(アイスキャンデー、かき氷、みぞれなど)、フローズンヨーグルト等である。
【0024】
本実施形態は、これらの中でも、アイスクリーム、アイスミルク、又はラクトアイス、氷菓であることが好適である。
【0025】
アイスクリーム類とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和二十六年十二月二十七日厚生省令第五十二号)により、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3.0%以上を含むもの(はっ酵乳を除く)をいう。アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。
【0026】
乳固形分3.0%未満のものは、食品衛生法に基づく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により、氷菓として規定されている。
【0027】
フローズンヨーグルトは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令により、種類別「発酵乳」に分類され、「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう」と定められている。成分規格は、「無脂乳固形分8.0%以上、乳酸菌数又は酵母数1000万/ml以上」と規定されている。
【0028】
<冷菓組成物>
本実施形態に係る冷菓は、冷菓組成物を用いて製造される。冷菓組成物は、通常冷菓を製造する際に一般的に用いられる成分(乳原料、糖類、植物汁、増粘剤、pH調整剤、卵、油脂、安定剤、乳化剤、色素などの着色料、甘味料、香料、酸味料、風味原料など)等を適宜配合して調製されたものである。冷菓が、多層構成である場合、各層毎に組成が異なる冷菓組成物を準備する。例えば、
図1に示す冷菓2の製造においては、冷菓組成物としてコア部組成物とコーティング層組成物とを準備する。
【0029】
(油脂)
冷菓組成物に用いられる油脂とは、動物性油脂、植物性油脂、これらの加工油脂などを意味し、これらの中から1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
動物性油脂としては、例えば、乳脂(牛乳脂など)、牛脂、豚脂、魚油等が挙げられる。植物性油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、シア脂、サル脂、カカオ脂等が挙げられる。植物性油脂及び/又は動物性油脂を水素添加等の加工を行った加工油脂としては、例えば、マーガリン、ショートニング等が挙げられる。
【0031】
冷菓組成物において、油脂含有量は、物性、嗜好等を考慮し、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下である。前記冷菓組成物としてコア部組成物とコーティング層組成物が用いられる場合は、コア部組成物の油脂含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下であって、0質量%でも良い。油脂を含むコア部組成物を用いてコア部を形成することにより、冷菓にボディ感や滑らかな食感を付与できる点で好ましい。コーティング層組成物の油脂含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であって、0質量%でも良い。コーティング層組成物において、油脂の含有量が少ないほど、冷菓の表面に氷が生成するという問題が顕著となる傾向にあるものの、本発明によると、コーティング層組成物の油脂含有量が上述の範囲内であっても、冷菓の表面に氷が生成することを抑制することができる。本明細書における油脂分の含有量は、レーゼゴットリーブ法により定量することができる。
【0032】
(乳脂肪)
冷菓組成物において、乳脂肪含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、0質量%でも良い。冷菓組成物としてコア部組成物とコーティング層組成物が用いられる場合は、コア部組成物の乳脂肪含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、0%でも良い。コーティング層組成物の乳脂肪含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、0質量%でも良い。上記範囲にする事により良好な風味、口当たりを得ることが出来る。
【0033】
冷菓組成物の油脂と乳脂肪の含有量は、例えば、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の、アイスクリーム類の乳脂肪分の定量法に準拠する方法で測定する。
【0034】
(乳原料)
冷菓組成物に用いられる乳原料としては、例えば、生乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、発酵乳、発酵乳パウダー、ブロックミルク等が挙げられる。本実施形態においては、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
乳原料としてより好ましくは、生乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、バター、ホエイパウダー等であり、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(甘味料)
冷菓組成物に用いられる甘味料は、冷菓に甘味を付与する原料を意味し、糖類及び糖類以外の甘味を付与する原料をも含む概念である。その具体例としては、例えば、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒砂糖など)、砂糖混合異性化糖、異性化糖、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、転化糖、還元麦芽水あめ、蜂蜜、パラチノース、D-キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、シクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等が挙げられる。冷菓組成物においては、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
冷菓組成物において、甘味料の含有量は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。また、冷菓組成物において、甘味料の含有量は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物とが用いられる場合は、コア部組成物の甘味料の含有量は、保存性の観点から、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、また、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。コーティング層組成物の甘味料の含有量は、保存性の観点から、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、また、好ましくは1質量%以上である。上記範囲にする事により良好な風味、口当たりを得ることが出来る。
【0038】
(安定剤)
冷菓組成物に用いられる安定剤としては、例えば、ペクチン、繊維素グルコール酸ナトリウム(カルボキシメチルセルロース)、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、微結晶セルロース、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、大豆多糖類等が挙げられる。冷菓組成物においては、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(乳化剤)
冷菓組成物に用いられる乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、レシチン、クエン酸又は乳酸等の有機酸モノグリセリド類、有機酸ジグリセリド類等が挙げられる。冷菓組成物においては、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(他の成分)
冷菓組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の材料を1種又は2種以上自由に選択して含有していてもよい。他の材料としては、例えば、酸味料、植物タンパク質、卵加工品、着香料、着色料、果汁や果肉(イチゴ、ブドウ、メロン、柑橘類など)、ジャム類、プレザーブ類、野菜類(ニンジン、スイカなど)、コーヒー類、茶類(抹茶、紅茶、緑茶、烏龍茶など)、チョコレート類、キャラメル類、各種食材等が挙げられる。
【0041】
(全固形分)
冷菓組成物の全固形分は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、また、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物とが用いられる場合は、コア部組成物の全固形分は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、また、好ましくは10質量%以上であり、より好ましく20質量%以上である。コーティング層組成物の全固形分は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、または、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。上記範囲にする事により良好な風味、食感、保形性を得ることが出来る。本明明細書において、全固形分の含有量は、固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出した値である。水分含有量は、常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)により測定した値である。
【0042】
(無脂乳固形分)
冷菓組成物の無脂乳固形分は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、0質量%でも良い。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物とが用いられる場合は、コア部組成物の無脂乳固形分は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、0質量%でも良い。コーティング層組成物は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、0質量%でも良い。上記範囲にする事により良好な風味、食感を得ることが出来る。
【0043】
冷菓組成物の無脂乳固形分の測定法は、例えば、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の、発酵乳及び乳酸菌飲料の無脂乳固形分の定量法に準拠する方法で測定する。
【0044】
(乳固形分)
冷菓組成物の乳固形分は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、0質量%でも良い。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物とが用いられる場合は、コア部組成物の乳固形分は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、0質量%でも良い。コーティング層組成物は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%でも良い。上記範囲にする事により良好な風味、食感を得ることが出来る。
【0045】
冷菓組成物の乳固形分は、上述した乳脂肪の含有量と無脂乳固形分との合計を乳固形分とする。
【0046】
(凍結点)
冷菓組成物の凍結点は、口どけを良好にする観点から、好ましくは-2.0℃以下であり、より好ましくは-2.5℃以下である。冷菓組成物の凍結点は、冷凍保存性を向上させる観点から、好ましくは-10℃以上であり、より好ましくは-5℃以上である。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物とが用いられる場合は、コア部組成物の凍結点は、口どけを良好にする観点から、好ましくは-2.0℃以下であり、より好ましくは-2.5℃以下である。コア部組成物の凍結点は、冷凍保存性を向上させる観点から、好ましくは-10℃以上であり、より好ましくは-5℃以上である。コーティング層組成物の凍結点は、口どけを良好にする観点から、好ましくは-2.0℃以下であり、より好ましくは-2.5℃以下である。喫食時の溶け易さ、冷凍保存性を向上させる観点から、好ましくは-10℃以上であり、より好ましくは-5℃以上である。
【0047】
冷菓組成物の凍結点は、液状の冷菓組成物を雰囲気温度-35℃で冷却しながら、冷菓組成物の温度を経時的に測定する。ここで、液体が固体になる反応には発熱反応が生じることから、前記の温度下で液体を冷却していくと、ある温度において一旦温度が下降しないポイント(凍結点)に達する。本明細書において、凍結点は、冷却中に組成物の温度が下降しないポイント(凍結点)における温度を、冷菓組成物の凍結点として測定するものとする。
【0048】
(粘度)
冷菓組成物の粘度は、液状の冷菓組成物の温度5℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは700mPa・s以下であり、また、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは100mPa・s以上である。冷菓組成物が、コーティング層組成物である場合は、そのコーティング時の液温における粘度が、好ましくは50mPa・s~2000mPa・sであり、より好ましくは100mPa・s~1000mPa.sであり、さらに好ましくは200mPa・s~800mPa・sである。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物が用いられる場合は、コア部組成物の温度5℃における粘度は、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは700mPa・s以下であって、また、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは100mPa・s以上である。上記範囲にする事で、氷の析出を抑制しながらも、良好な食感とフレーバーリリースを付与する事ができる。
【0049】
粘度の測定方法は特に限定されないが、例えば、B型粘度計を用いて、回転数60rpm、ローターNo.3として測定する。
【0050】
(糖度)
冷菓組成物の糖度は、好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下、さらに好ましくは30°以下であり、また、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上、さらに好ましくは15°以上である。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物が用いられる場合は、コア部組成物の糖度は、好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下であって、また、好ましくは5°以上である。コーティング層組成物の糖度は、保存性の観点から、好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下であって、また、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上、さらに好ましくは15°以上である。
【0051】
本明細書において、糖度はBrix値を意味し、糖度計(Brix計)で測定することができる。
【0052】
(オーバーラン値)
冷菓に含まれる空気の量は、原料ミックス(原料段階の冷菓組成物)の容量に対する含有空気容量の百分率であるオーバーラン値で表される。例えば、オーバーラン値が100%の場合は、原料ミックスと同容量の空気が含まれていることを意味する。冷菓のオーバーラン値は、好ましくは5~80%、より好ましくは15~60%、さらに好ましくは20~50%である。冷菓が、コア部とコーティング層によって構成される場合は、コア部のオーバーラン値は、好ましくは5~80%、より好ましくは15~60%、さらに好ましくは20~50%であって、コーティング層のオーバーラン値は好ましくは5%以下、0%でも良い。オーバーラン値が上記の範囲内であると、滑らかな食感の冷菓を得ることができる。
【0053】
<特定組成物>
本発明において、冷菓の少なくとも一部の表面をその凍結物により構成する特定組成物は、冷菓組成物の一種である。以下、特定組成物に固有の特徴を説明する。特定組成物について、固有の特徴以外は、上述の冷菓組成物の説明が適用される。
【0054】
特定組成物は特定成分と水を含有する。冷菓の表面を構成する組成物中の水は、冷凍保存時に冷菓の表面での氷の生成の原因の一つになると推測されるものの、本発明においては、特定組成物が特定成分を含むことにより、氷の生成を抑制することができる。特定組成物において、水の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。特定組成物において、水の含有量は、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。水の含有量を調整することにより、特定組成物の凍結点を所望の値にすることができる。
【0055】
特定組成物は、特定成分である、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0056】
プルランとは、Aureobasidum pullulansを培養する際に菌体外に生産される中性単純多糖であり、その構造はα-1,4結合による3個のグルコースで構成されるマルトトリオースがα-1,6結合で繰り返し、鎖状に結合したものである。本発明で使用されるプルランの重量平均分子量については、特に制限されないが、好適な一例として約20万が挙げられる。本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析により算出される値を指す。プルランは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、例えば、プルラン(林原社製)等が挙げられる。
【0057】
トレメルガムとは、シロキクラゲ由来の多糖類のことをいう。本発明で使用されるトレメルガムの重量平均分子量については、特に制限されないが、好適な一例として300万~500万が挙げられる。トレメルガムは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとして、UT-WC、UT-WS、UnetI-7800(いずれもユニテックフーズ社製)等が挙げられる。
【0058】
デンプンとしては、その種類は特に制限されないが、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン等、或いはデンプンの一部をα化した部分α化デンプンが挙げられる。デンプンは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、例えば、エリアンGEL100(松谷化学社製)、パインエース#1(松谷化学社製)等が挙げられる。
【0059】
トレハロースとは、グルコースが1,1-グリコシド結合してなる非還元性二糖であり、種々の動植物中に存在する。本発明に使用するトレハロースは、食用に適するものであれば特に限定されない。トレハロースの形態としては、他の原料と均一に混合できる状態で用いればよく、例えば、液状、シロップ状、粉末状、固形状等が挙げられる。トレハロースは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、例えば、トレハ(林原社製)等が挙げられる。
【0060】
粉あめとは、デンプンを酵素糖化した水あめを噴霧乾燥した微粉末である。粉あめは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、マックス2000(松谷化学社製)、ニポテックス25(サンエイ糖化社製)等が挙げられる。
【0061】
ゼラチンは、牛、豚、鶏、魚等の骨、皮膚、靭帯、腱、魚鱗等を酸又はアルカリで処理し、加熱抽出して得られる。これらの材料の中でも、好ましくは、豚皮、魚鱗、豚骨、牛骨、更に好ましくは豚骨、牛骨が挙げられる。本発明において、これらのゼラチンは、1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明において使用されるゼラチンの重量平均分子量は、5万~20万、好ましくは15万~20万が例示される。
【0062】
本発明で使用されるゼラチンは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、例えば、GSN、APH-100、GQS-20、GBL-250,GBL-100等(いずれも重量平均分子量5万~20万:新田ゼラチン社製)が挙げられる。
【0063】
特定組成物は、特定成分を含有することにより、冷凍保存時における冷菓の表面の氷の生成を抑制することができる。特定組成物において、特定成分の合計含有量は、冷菓の表面の氷の生成を効果的に抑制する観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。特定組成物において、特定成分の含有量は、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは8.0質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以下である。
【0064】
特定組成物は、プルランを含有する場合、プルランの含有量の下限値は好ましくは0.1質量%以上であり、上限値は好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下であり、特に好ましくは0.2質量%以下であり、好適な範囲としては好ましくは0.1質量%~1.0質量%である。特定組成物は、トレメルガムを含有する場合、トレメルガムの含有量の下限値は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、上限値は好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下であり、好適な範囲としては好ましくは0.1質量%~1.0質量%である。特定組成物は、デンプンを含有する場合、デンプンの含有量の下限値は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、上限値は好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.7質量%以下であり、好適な範囲としては好ましくは0.1質量%~2.0質量%である。特定組成物は、トレハロースを含有する場合、トレハロースの含有量の下限値としては好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、上限値は好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下であり、好適な範囲としては好ましくは1.0質量%~6.0質量%である。特定組成物は、粉あめを含有する場合、粉あめの含有量の下限値としては好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、上限値は好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下であり、好適な範囲としては好ましくは0.1質量%~10.0質量%である。特定組成物は、ゼラチンを含有する場合、ゼラチンの含有量の下限値としては好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、上限値は好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下であり、好適な範囲としては好ましくは0.1質量%~1.0質量%である。
【0065】
特定組成物が特定成分中の二種以上の成分を含有するものである場合、その組み合わせの一例として、トレハロースとプルランが挙げられる。特定組成物中に含まれるトレハロースとプルランとの含有比は、例えば、1:100~100:1の範囲内であってもよく、好ましくは1:10~100:1であり、より好ましくは1:5~100:1であり、特に好ましくは1:5~60:1である。トレハロースをプルランより多く含んでいてもよく、プルランをトレハロースより多く含んでいてもよい。
【0066】
<包装体>
本技術の冷菓は包装体に収容されてもよい。また、冷菓収容された包装体内に、空気層を有してもよい。包装体内に空気層を有することで、冷菓と包装体との間の緩衝材として機能する。具体的には、包装体内の空気層により、冷菓と包装体との接触の機会を低減し、または接触時の衝撃を低減することができるので、輸送時や冷凍保存時の冷菓の損傷を抑制することができる。
図4は、
図1に示す冷菓2が包装体の一種である包装袋3に収容された状態を示す。
図4において、包装袋3内は、空気層を有する状態で冷菓2が収容されている。
【0067】
包装体は、冷菓を内包しうる包装体であれば、材料及び形状は限定されないが、包装体内の空気層の水分量の変動を抑制することができる包装体であることが好ましい。包装体内の空気層の水分量の上昇が、冷菓の表面に生成される氷の原因の一つになると推測されるからである。包装体は、冷菓を衛生的に冷凍保存する観点から、冷菓の全面を覆っていることが好ましいが、冷菓の一部が露出していてもよい。包装体は冷菓を密封するものであることが好ましいが、密封する構成に限定されない。冷菓は包装体によって、1つ1つ別々に包装(個包装)されていてもよく、複数個ずつ包装されていてもよいが、個包装であることが好ましい包装体は、例えば、袋状の包装袋や、容器状の包装容器の形態である。
【0068】
包装体の材料は、紙、加工紙、樹脂、金属、ゴム、ガラス、陶磁器、ホウロウ引き、木、複合材料、布および不織布が挙げられる。包装体の材料は、樹脂、複合材料を含むことが好ましい。
図1に示す冷菓1において、包装体は樹脂を含む包装袋3である。
【0069】
樹脂は、従来、食品の包装に用いられていた任意の樹脂が使用可能である。合成樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、熱硬化性樹脂およびセロハンが挙げられる。合成樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンおよびポリメチルペンテンからなる群より選択されることが好ましい。
【0070】
上記各種樹脂には、必要に応じて、各種添加剤が配合されてもよい。例えば、可塑剤、着色剤などである。
【0071】
複合材料は、各種ラミネート材であり、例えば、透明性を必要としない場合は、樹脂よりなる基材フィルムにアルミ蒸着を施した積層フィルムを用いることができる。
【0072】
上記樹脂材料又は上記複合材料は、従来公知の各種成形方法により所望の包装体の形状に成形され得る。例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、プレス成形などである。
【0073】
<冷菓の製造方法>
本実施形態に係る冷菓の製造方法は、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓の製造方法であって、前記コア部の表面の少なくとも一部に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物を用いてコーティング層を形成する工程を有する。以下、
図1に示す冷菓2の製造方法の一例を挙げて説明するが、これに限定されない。
【0074】
(冷菓の製造方法)
コア部21を形成するコア部組成物の全原料を混合し、加熱殺菌して原料ミックス(コア部組成物)を調製する。ただし香料等の加熱殺菌時の熱によって変性するものは、加熱殺菌後に添加することが好ましい。原料ミックスの全原料の組成は、その凍結物によりコア部を形成するコア部組成物の組成と同じである。同じく、コーティング層22を形成するコーティング組成物の全原料を混合し、加熱殺菌して原料ミックス(コーティング層組成物)を調製する。原料ミックスの全原料の組成は、その凍結物によりコーティング層を形成するコーティング層組成物の組成と同じである。
【0075】
次にコア部組成物の原料ミックスを成形し、冷却して固化させてコア部21を得る。具体的には、所望の形状の成形型(モールド)に原料ミックスを充填し、冷却して固化させた後、成形型の温度を上げてコア部21を取り出す方法を用いることができる。成形型内の原料ミックスの凍結が開始された後、完全に固化する前に、コア部21にスティック4を挿入する。
【0076】
次いで、得られたコア部21の外面に、流動性のコーティング層組成物(コーティング液)を用いてコーティング層22を形成する。コーティング層組成物のコーティング法としてはディッピング法、スプレー法、又はエンロービング法を用いることができる。ディッピング法は、コア部21をコーティング液に漬けて引き上げ、冷却して固化させることによりコーティング層22を形成する方法である。コーティング液の液温は好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下、また、好ましくは0℃以上である。コア部21をコーティング液中に漬ける時間(保持時間)は、好ましくは0.8~15秒間である。コーティング液の粘度と保持時間でコーティング層22の厚さを調整することができる。
【0077】
ディッピング法では、コア部21のスティック4が挿入されている面を上面として、かつスティック4の長さ方向がコーティング液の液面に対して垂直となるようにスティック4を把持し、コーティング液に浸漬させて引き上げることによって、コーティング層22を形成することができる。コア部21の表面全体のうちコーティング層22で被覆されている部分の面積の割合は、嗜好性や商品の見栄えの点で好ましくは10%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0078】
(冷菓の包装方法)
本実施形態の製造方法は、冷菓を、包装体で包装する工程を包含する。冷菓を包装体で包装するための方法は、当該分野で公知の方法であり得る。包装体がすでに完成した形状で提供される場合には、包装体に冷菓が収容された後、必要に応じて包装体は密閉される。包装方法の例としては、容器成形充填法、真空包装法、シール包装法が挙げられる。
図4に示す冷菓2は、例えば、シール包装法により冷菓2を包装袋3内に収容し包装することができる。
【0079】
シール包装法とは、成形された樹脂材料又は複合材料の包装容器あるいは袋に冷菓を充填し、口を封緘する方法をいう。
【0080】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、冷菓に係る形態であり、冷菓の表面の少なくとも一部の表面は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物の凍結物より構成され、前記特定成分は、前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する。第2の実施形態の冷菓の詳細は、第1の実施形態の冷菓の説明が適用される。
【0081】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、冷菓の冷凍保存時に冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で冷菓の製造に用いられる氷生成抑制剤に係る形態である。本形態の氷生成抑制剤は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を含有する。氷生成抑制剤としての特定成分の使用方法は、第1の実施形態での特定成分の使用方法の説明が適用される。
【0082】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法に係る形態である。本形態の方法は、冷菓の表面を構成する組成物に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を添加する工程を有する。かかる工程は、第1の実施形態で特定成分を含む特定組成物を調製する工程の説明が適用される。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
[冷菓]
試験例1~12について、アイスバーの形態の冷菓を、試験例毎に評価対象の冷菓として6本製造した。以下に具体的な製造方法を示す。
【0085】
(コア部の製造)
水を70℃まで昇温させ、無塩バターを5.3質量部、グラニュー糖を11.8質量部、水あめを10.7質量部、20%加糖凍結卵黄2.0質量部、乳化安定剤を0.22質量部、安定剤を0.14質量部、乳化剤を0.18質量部、35%脱脂濃縮乳を21.3質量部、48%クリームを8.45質量部混合し、その後、プレート殺菌機にて、90℃、30秒間を標準として殺菌を行った後、10℃以下に冷却した。そして、10℃以下、5時間以上の条件でエージングし、コア部組成物を得た。
【0086】
90mlのコア部組成物をオーバーラン値35%となるようにフリージングして、成形型に充填し、-30℃~-40℃に冷却し、完全に固化する前にスティックを挿入し、その後完全に固化させた。
【0087】
(コーティング層組成物の製造)
試験例1~12において、表1に示す組成のコーティング層組成物を、以下の材料を用いて調製した。
【0088】
甘味料1:グラニュー糖(北海道糖業社製)
安定剤1:ローカストビーンガム、グアーガム、及びカラギーナンを含む混合物(太陽化学社製)
安定剤2:発酵セルロースを20質量%含み、その他にグアーガム及びデキストリンを含む混合物(三栄源エフ・エフ・アイ社製)
果汁1:ラズベリー濃縮果汁(果香社製)
プレザーブ1:ストロベリープレザーブ(太陽化学社製)
粉あめ:マックス2000(松谷化学社製)
トレハロース:トレハ(林原社製)
トレメルガム:UNetI-7800(ユニテックフーズ社製)
プルラン:プルラン(林原社製)
デンプン:エリアンGEL100(松谷化学社製)
ゼラチン:GBL-250(新田ゼラチン社製)
具体的な調製方法は、水を70℃まで昇温させ、プレザーブ1以外の原料を混合し、85℃まで昇温させた。昇温後、ホモミキサーにて5000rpmで5分間攪拌した。その後、果汁1を投入し、規定量までメスアップを行った。メスアップ後、20℃まで攪拌冷却を行い、10℃以下まで緩慢冷却を行って、その後プレザーブ1を混合して、コーティング層組成物を得た。
【0089】
得られたコーティング層組成物について、粘度と糖度Bxとを測定した。粘度は、温度5℃においてB型粘度計を用い、No.3ローターを使用し、60回転/秒で30秒測定した。糖度は、温度5℃においてデジタル糖度計(株式会社アタゴ社製、PR-100)で測定した。
【0090】
(コーティング層の形成)
成形型からコア部を取り出し、コア部の全体を上記のようにして調製した試験例1~12のコーティング層組成物に2~6秒浸漬させた後、引き上げて、液体窒素に1~3秒間浸漬してコア部の表面全体にコーティング層を形成して各試験例の冷菓を製造した。コーティング層組成物への浸漬時間は、コーティング層の質量が18.4g±0.5gとなるように調整した。
【0091】
(包装)
包装体として、透明樹脂(NY15/CPP70東洋製罐社製)からなる包装袋と、透明樹脂シート上にアルミ蒸着が施された複合材料(以下、「アルミ蒸着」とも称する。)(OPP25/印刷/接着剤/VMCPP25、朋和産業社製)からなる包装袋と、を予め準備した。各試験例について、3本の冷菓をそれぞれ透明樹脂からなる包装袋に収容し、3本の冷菓をそれぞれアルミ蒸着からなる包装袋に収容し、各包装袋の口を封緘して各試験例について6本の冷菓を評価対象の冷菓として得た。
【0092】
[評価]
各試験例の冷菓を-18℃の冷凍庫内で冷凍保存した。それぞれの冷菓について、冷凍保存開始後、1か月、2か月、3か月経過後に、冷凍庫から取り出し、包装袋の口を開封して表面に生成されている氷について、下記の基準で評価を行った。評価Aが最も高い評価であり、評価Eが最も低い評価である。
図5は、各基準に当てはまる冷菓のサンプルの写真を示す図である。評価後は再び同じ包装袋に戻して口を封緘し冷凍庫内に載置した。透明樹脂からなる包装袋に収容した3本の冷菓の中で最も低い評価と、アルミ蒸着からなる包装袋に収容した3本の冷菓の中で最も低い評価を、表1に評価結果として示す。
【0093】
A:表面に氷が生成していない、
B:表面のわずかな部分に氷が生成している、
C:表面の面積で半分以下の部分に氷が生成している、
D:表面の面積で半分以上の部分に氷が生成している、
E:表面のほぼ全面に氷が生成している。
【0094】
【0095】
表1に示す結果からわかるように、コーティング層組成物が特定成分を含む試験例2~12において、コーティング層組成物が特定成分を含まない試験例1と比較して、冷菓の表面での氷の生成が抑制されている。
【符号の説明】
【0096】
2 冷菓、3 包装袋、4 スティック、21 コア部、22 コーティング層。