(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄電池用正極及びこれを含むリチウム-硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241118BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241118BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20241118BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/60
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2023518303
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 KR2022007156
(87)【国際公開番号】W WO2022265234
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0077210
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・イ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509120(JP,A)
【文献】特開2010-095390(JP,A)
【文献】国際公開第2020/060199(WO,A1)
【文献】特表2013-527579(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105980(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0068066(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0132248(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に位置する正極活物質層と、を含むリチウム-硫黄電池用正極であって、
前記正極活物質層は、第1の炭素材及び硫黄を含む第1の硫黄-炭素複合体と、第2の炭素材及び硫黄を含む第2の硫黄-炭素複合体とを含み、
前記第1の炭素材と第2の炭素材は互いに異なる形状を有し、
前記第1の炭素材は
比表面積が200m
2/g~400m
2/gであり、
前記第2の炭素材は比表面積が600m
2/g以上、1000m
2/g未満である、リチウム-硫黄電池用正極。
【請求項2】
前記第1の炭素材は比表面積が200m
2/g~300m
2/gである、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項3】
前記第1の炭素材は平均粒径(D
50)が20μm~70μmである、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項4】
前記第2の炭素材は比表面積が600m
2/g~950m
2/gである、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項5】
前記第1の炭素材及び第2の炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、炭素繊維、黒鉛、及び活性炭素からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項6】
前記硫黄は、無機硫黄、Li
2S
n(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー((C
2S
x)
n、x=2.5~50、n≧2)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項7】
前記第1の硫黄-炭素複合体と第2の硫黄-炭素複合体の重量比は90:10~50:50である、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項8】
前記第1の硫黄-炭素複合体と第2の硫黄-炭素複合体の重量比は80:20~60:40である、請求項7に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項9】
前記第1の硫黄-炭素複合体と第2の硫黄-炭素複合体の重量比は75:25~70:30である、請求項7に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項10】
前記硫黄は、正極活物質層の全体100重量%を基準として60重量%~90重量%で含まれる、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項11】
前記正極活物質層の気孔度は、正極活物質層の総体積を基準として72%以下である、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項12】
前記正極活物質層の気孔度は、正極活物質層の総体積を基準として68%~72%である、請求項11に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項13】
前記正極活物質層は、算術平均粗さ(Sa)が5μm以下であり、最大高さ粗さ(Sz)が60μm以下である、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極;
負極及び
電解質を含むリチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム-硫黄電池用正極及びこれを含むリチウム-硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2021年6月15日付け韓国特許出願第10-2021-0077210号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含む。
【0003】
リチウム二次電池の活用範囲が携帯用電子機器及び通信機器だけでなく、電気自動車(electric vehicle;EV)、電力貯蔵装置(electric storage system;ESS)にまで拡大し、これらの電源として使用されるリチウム二次電池の高容量化に対する要求が高まっている。
【0004】
種々のリチウム二次電池の中でリチウム-硫黄電池は、硫黄-硫黄結合(sulfur-sulfur bond)を含む硫黄系物質を正極活物質として用い、リチウム金属、リチウムイオンの挿入/脱挿入が起こる炭素系物質またはリチウムと合金を形成するシリコンや錫などを負極活物質として用いる電池システムである。
【0005】
リチウム-硫黄電池において正極活物質の主材料である硫黄は低い原子当たりの重量を有し、資源が豊富で、需給が容易であり、コストが安く、毒性がなく、環境に優しい物質という利点がある。
【0006】
また、リチウム-硫黄電池は、正極でリチウムイオンと硫黄の変換(conversion)反応(S8+16Li++16e-→8Li2S)から出る理論放電容量が1,675mAh/gに達し、負極としてリチウム金属(理論容量:3,860mAh/g)を用いる場合、2,600Wh/kgの理論エネルギー密度を示す。これは、現在研究されている他の電池システム(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO2電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の理論エネルギー密度に比べて非常に高い数値を持つため、現在まで開発されている二次電池の中で高容量、親環境及び低コストのリチウム二次電池として注目を浴びており、次世代電池システムとして様々な研究が行われている。
【0007】
リチウム-硫黄電池において、正極活物質として用いられる硫黄は電気伝導度が5×10-30S/cmで、電気伝導性のない不導体であるため、電気化学反応で生成された電子の移動が難しい問題がある。そこで、電気化学的反応サイトを提供することができる炭素材を共に複合化して硫黄-炭素複合体として使用されている。
【0008】
しかし、リチウム-硫黄電池の充・放電過程において生成されるリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide、Li2Sx、x=8、6、4、2)の溶出問題に加え、正極活物質である硫黄及びその放電生成物であるリチウムスルフィド(lithium sulfide、Li2S)の低い電気伝導性により、正極活物質である硫黄-炭素複合体の電気化学的反応性が減少する問題がある。
【0009】
これにより、リチウム-硫黄電池は実際の駆動時に初期放電容量は高いが、サイクルが進むにつれて容量及び充・放電効率特性が急激に低下し、これによりエネルギー密度と寿命特性も減少するようになるので、十分な性能及び駆動安定性が確保されにくく商用化されていない実情である。
【0010】
商用化可能な水準のエネルギー密度と寿命特性を有するリチウム-硫黄電池を具現するために、正極、具体的には正極活物質である硫黄-炭素複合体の電気化学的反応性及び安定性を改善するための様々な技術が提案されている。
【0011】
一例として、高エネルギー密度及び長寿命特性を確保するために、炭素ナノチューブのような高比表面積及び高気孔度を有する炭素材を硫黄の担持体として用いて正極内の硫黄の含有量を高めると共に、リチウムポリスルフィドの溶出を制御しようとする試みが行われている。
【0012】
しかし、このように、硫黄の担持体として高比表面積及び高気孔度を有する炭素材を用いる場合、正極の気孔度が高く表面均一度が低いため、これを改善するための圧延工程が必ず伴う問題がある。また、正極の厚さが厚くなりながら、物質伝達を阻害して正極の電気化学的反応性に影響を受け、最終的には容量が低下する問題が生じる。したがって、正極の電気化学的反応性及び安定性を向上させ、優れた性能及び駆動安定性を具現することができるリチウム硫黄電池への開発が依然として必要な事情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】大韓民国公開特許第2016-0037084号(2016年4月5日)、硫黄-炭素ナノチューブ複合体、この製造方法、これを含むリチウム-硫黄電池用カソード活物質及びこれを含むリチウム-硫黄電池
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明者らは前記問題を解決しようと多角的に研究を行った結果、互いに異なる形状及び比表面積を有する炭素材をそれぞれ含む2種の硫黄-炭素複合体を正極活物質として用いる場合、正極の気孔度及び表面均一度が改善され、向上した電気化学的反応性及び安定性を有することを確認し、本発明を完成した。
【0015】
したがって、本発明の目的は、電気化学的反応性及び安定性に優れたリチウム硫黄電池用正極を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、前記正極を含むリチウム硫黄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一面に位置する正極活物質層を含むリチウム-硫黄電池用正極であって、前記正極活物質層は、第1の炭素材及び硫黄を含む第1の硫黄-炭素複合体、及び第2の炭素材及び硫黄を含む第2の硫黄-炭素複合体を含み、前記第1の炭素材と第2の炭素材は互いに異なる形状を有し、前記第1の炭素材は非表面積が200m2/g~400m2/gであり、前記第2の炭素材は比表面積が600m2/g~1000m2/g未満である、リチウム-硫黄電池用正極を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記リチウム硫黄電池用正極を含むリチウム硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るリチウム-硫黄電池用正極は、形状と比表面積が互いに異なる炭素材をそれぞれ含む2種の硫黄-炭素複合体を正極活物質として含むことにより、気孔度が低くかつ優れた表面均一度を示し、正極の電気化学的反応性及び安定性を改善させることにより正極の容量発現を最大化することができ、これにより、高容量及び高エネルギー密度を有するリチウム-硫黄電池の具現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1及び比較例1に係るリチウム-硫黄電池の容量特性の評価結果を示すグラフである。
【
図2】実施例2、実施例3及び比較例1に係るリチウム-硫黄電池の容量特性の評価結果を示すグラフである。
【
図3】比較例1及び7に係るリチウム-硫黄電池の容量特性の評価結果を示すグラフである。
【
図4】比較例1及び2に係るリチウム-硫黄電池の容量特性の評価結果を示すグラフである。
【
図5】比較例1及び3に係るリチウム-硫黄電池の容量特性の評価結果を示すグラフである。
【
図6】実施例1及び比較例1に係るリチウム-硫黄電池の寿命特性の評価結果を示すグラフである。
【
図7】実施例2、実施例3及び比較例1に係るリチウム-硫黄電池の寿命特性の評価結果を示すグラフである。
【
図8】比較例1及び4~6に係るリチウム-硫黄電池の寿命特性の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本明細書及び請求の範囲に使用された用語や単語は通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0023】
本発明において使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の方法で意味ない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとすることで、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0024】
本明細書において使用されている用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料を組み合わせて物理的・化学的に互いに異なる相(phase)を形成しながらより有効な機能を発現する物質を意味する。
【0025】
本明細書において使用されている用語「ポリスルフィド」とは、「ポリスルフィドイオン(Sx
2-、x=8、6、4、2))」及び「リチウムポリスルフィド(Li2SxまたはLiSx
-、x=8、6、4、2)」の両方を含む概念である。
【0026】
リチウム-硫黄電池は、高い放電容量及び理論エネルギー密度を有するだけでなく、正極活物質として用いられる硫黄は埋蔵量が豊富で価格が安いため、電池の製造単価が低く環境に優しいという利点により次世代二次電池として脚光を浴びている。
【0027】
リチウム-硫黄電池において正極活物質である硫黄は、不導体で電気伝導性を補完するために、伝導性物質である炭素材と複合化した硫黄-炭素複合体の形態で用いられている。
【0028】
しかし、リチウム-硫黄電池は、充・放電時に生成されるリチウムポリスルフィドの溶出により電気化学反応に関与する硫黄の損失が発生し、硫黄の還元物質であるリチウムスルフィドの電気伝導性が非常に低いことにより正極活物質である硫黄-炭素複合体の電気化学的反応性が低下し、その結果、実際の駆動においては理論放電容量及び理論エネルギー密度の全てを具現できないだけでなく、電池の性能及び駆動安定性の低下が加速化する問題がある。また、硫黄はリチウムスルフィドに変化しながら約80%の体積膨張が起こり、これにより、正極内部の空隙容積が減って電解質との接触が難しくなるので、正極活物質の電気化学的反応性がさらに減少する問題がある。
【0029】
このため、従来の技術では硫黄のローディング量を高めたり、硫黄の担持体として高比表面積の炭素材を用いたりする方法などが提案されたが、リチウム-硫黄電池の性能が効果的に改善されていないだけでなく、正極の気孔度(または空隙率)及び表面均一度を改善するための圧延などの追加工程が必要となり、工程費用が上昇し、電解液含浸時の膨潤(swelling)現象による圧延厚さや粗さ維持の困難などの問題が発生するようになる。
【0030】
そこで、本発明においては、正極活物質として、それぞれ異なる形状及び物性を有する炭素材を含む2種の硫黄-炭素複合体を含むことにより、気孔度が低くかつ優れた表面均一度を有し、正極の電気化学的反応性及び安定性を改善させることにより、容量及び寿命特性が向上したリチウム-硫黄電池を具現することができるリチウム-硫黄電池用正極を提供する。
【0031】
具体的に、本発明に係るリチウム-硫黄電池用正極は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一面に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、第1の炭素材及び硫黄を含む第1の硫黄-炭素複合体、及び第2の炭素材及び硫黄を含む第2の硫黄-炭素複合体を含み、このとき、前記第1の炭素材と第2の炭素材はその形状が互いに異なるだけでなく、互いに異なる比表面積を有する。
【0032】
特に、本発明においては、形状と比表面積が互いに異なる第1の炭素材及び第2の炭素材を硫黄の担持体としてそれぞれ含む2種の硫黄-炭素複合体を含むことにより、既存の正極に比べて低い気孔度と向上した表面均一度の特性を同時に確保することができる。本発明において、前記気孔度は正極を製造した直後に測定した初期気孔度と定義し、ガス吸着法、水銀圧入法、透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡のような光学顕微鏡法などの通常の方法により測定することができる。具体的に、本発明に係るリチウム-硫黄電池用正極は、気孔度が低く緻密な(dense)構造を有するにもかかわらず、互いに異なる形状と比表面積を有する炭素材をそれぞれ含む2種の硫黄-炭素複合体を正極活物質として用いて電池化学的反応時、硫黄の利用率を向上させることができる構造を有することにより、正極内の抵抗向上を最小化し、優れた電気化学的反応性を示すことができる。また、これを通じて、リチウム-硫黄電池の容量及び寿命特性が向上するだけでなく、充・放電時の硫黄の損失又は体積変化が発生しても最適な充・放電性能を示すようになる。これに加えて、前述のように、2種の硫黄-炭素複合体を含む本発明に係るリチウム-硫黄電池用正極は、優れた表面均一度を有することにより、構造的に安定して電池に導入時に駆動安定性が向上し、正極の製造時に別途の圧延工程が不要であり、製造工程が容易で簡素化することができる。
【0033】
本発明において、前記正極は、正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に形成された正極活物質層を含むことができる。
【0034】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を誘発することなくかつ高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム―カドミウム合金などを用いることができる。
【0035】
前記正極集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0036】
前記正極活物質層は正極活物質を含み、導電材、バインダーまたは添加剤などをさらに含むことができる。
【0037】
前記正極活物質は、多孔性炭素材及び前記多孔性炭素材の内部及び外部表面のうちの少なくとも一部に硫黄を含む硫黄-炭素複合体を含む。前記正極活物質に含まれる硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため、炭素材のような伝導性物質と複合化して用いられる。これにより、前記硫黄は硫黄-炭素複合体の形態で含まれ、前記正極活物質は硫黄-炭素複合体である。
【0038】
前記硫黄は、硫黄元素(S8)及び硫黄化合物からなる群より選択される1種以上を含むことができる。前記正極活物質は、無機硫黄、Li2Sn(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n、x=2.5~50、n≧2)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、前記硫黄は無機硫黄であってもよい。
【0039】
前記硫黄は、正極活物質層の全体100重量%を基準として60~90重量%、好ましくは65~80重量%で含まれてもよい。前記正極活物質層内の硫黄の含有量が60重量%未満の場合、電池のエネルギー密度を高めることに限界がある。
【0040】
前記多孔性炭素材は、前述の硫黄が均一かつ安定的に固定され得る骨格を提供するだけでなく、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学的反応が円滑に進行できるようにする。
【0041】
本発明において、正極活物質は、第1の炭素材及び硫黄を含む第1の硫黄-炭素複合体、及び第2の炭素材及び硫黄を含む第2の硫黄-炭素複合体を含む。
【0042】
前記第1及び第2の炭素材は、硫黄の担体として用いられる多孔性炭素材で、様々な炭素材質の前駆体を炭化させることによって製造することができる。前記第1及び第2の炭素材は内部に一定でない気孔を含み、前記気孔の平均直径は1~200nmの範囲であり、炭素材の気孔度は炭素材の全体体積の10~90%の範囲であってもよい。もし、前記気孔の平均直径が前記範囲未満の場合、気孔サイズが分子水準に過ぎず硫黄の含浸が不可能であり、逆に前記範囲を超える場合、炭素材の機械的強度が弱くなり、電極の製造工程に適用するのに好ましくない。
【0043】
前記第1及び第2の炭素材の形態は互いに異なるが、球状、棒状、針状、板状、チューブ状またはバルク状で、リチウム-硫黄電池に通常用いられるものであれば制限なく用いることができる。
【0044】
前記第1及び第2の炭素材は、多孔性及び伝導性を有する炭素系物質で、当業界において通常用いられるものであればいずれでも構わない。例えば、前記第1及び第2の炭素材は、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛及び活性炭素からなる群より選択された1種以上であってもよい。好ましくは、前記第1の炭素材としては炭素ナノチューブを、前記第2の炭素材としてはカーボンブラックをそれぞれ含むことができる。
【0045】
前記第1の炭素材は比表面積が200m2/g~400m2/g、好ましくは200m2/g~300m2/g、より好ましくは200m2/g~250m2/gであってもよい。このとき、比表面積はBET(Brunauer-Emmett-Teller)式を用いて計算した。前記第1の炭素材の比表面積が前記範囲未満の場合、電気化学的反応面積が減少し、逆に前記範囲を超える場合、正極内の高い気孔度で正極構成に問題が発生することがある。
【0046】
前記第1の炭素材は平均粒径(D50)が20μm~70μm、好ましくは40μm~60μmであってもよい。このとき、平均粒径(D50)は粒子の粒径分布曲線において、体積累積量が50%に該当する粒径を意味するものであり、例えばレーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記第1の炭素材の平均粒径が前記範囲未満の場合、正極の密度が高く電気化学的反応性が低下し、逆に前記範囲を超える場合、正極気孔度が大きく増加し、ピンホール(pin hole)が生じる問題が発生することがある。
【0047】
前記第2の炭素材は比表面積が600~1000m2/g未満、好ましくは600~950m2/g、より好ましくは700~850m2/gであってもよい。このとき、比表面積は前述の通りである。前記第2の炭素材の比表面積が前記範囲未満の場合、正極の抵抗が大きく増加し、逆に前記範囲を超える場合、電解質と副反応による急激な寿命減少の問題が発生することがある。
【0048】
前記第2の炭素材は平均粒径(D50)が10~100μm、好ましくは20~40μmであってもよい。このとき、平均粒径(D50)の定義及び測定方法は前述の通りである。
【0049】
本発明の第1及び第2の硫黄-炭素複合体において、前記硫黄は、前記第1及び前記第2の炭素材のそれぞれの内部及び外部表面のいずれか一カ所に位置し、一例として、前記第1及び前記第2の炭素材の内部及び外部の全表面の100%未満、好ましくは1~95%、より好ましくは40~96%の領域に存在することができる。前記硫黄が第1及び前記第2の炭素材のそれぞれの内部及び外部表面に前記範囲内に存在するとき、電子伝達面積及び電解質との濡れ性の面で最大の効果を示すことができる。具体的に、前記硫黄が前述の範囲領域において前記第1及び前記第2の炭素材の内部及び外部表面に薄く均一に含浸されるので、充・放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が前記第1及び前記第2の炭素材の内部及び外部の全表面の100%の領域に位置する場合、前記第1及び前記第2の炭素材が完全に硫黄で覆われて電解質に対する濡れ性が落ち、接触性が低下して電子伝達を受けられず、電気化学反応に参与できなくなる。
【0050】
前記第1及び第2の硫黄-炭素複合体は、第1及び第2の硫黄-炭素複合体の全体100重量%を基準としてそれぞれ前記硫黄を65~90重量%、好ましくは70~85重量%、より好ましくは、72~80重量%で含むことができる。前記硫黄の含有量が前述の範囲未満の場合、第1及び第2の硫黄-炭素複合体内の第1及び第2の炭素材の含有量が相対的に多くなるにつれて比表面積が増加し、正極の製造時にバインダーの含有量が増加する。このようなバインダーの使用量の増加は、結局、正極の面抵抗を増加させ、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役割を果たすようになり、電池の性能を低下させる可能性がある。逆に、前記硫黄の含有量が前述の範囲を超える場合、第1及び第2の炭素材と結合していない硫黄がそれら同士が塊になったり、第1及び第2の炭素材の表面に再溶出したりすることにより電子を受けにくくなり、電気化学的反応に参与できなくなり、電池の容量損失が発生することがある。
【0051】
前記第1及び第2の硫黄-炭素複合体は、前記硫黄と第1及び第2の炭素材とを単純に混合して複合化するか、またはコア-シェル構造のコーティング形態または担持形態を有することができる。前記コア-シェル構造のコーティング形態は、硫黄または第1及び第2の炭素材のいずれかが他の物質をコーティングしたもので、一例として、第1及び第2の炭素材の表面を硫黄で包み込むか、またはその逆になり得る。また、担持形態は、第1及び第2の炭素材の内部に硫黄が担持された形態であってもよい。前記硫黄-炭素複合体の形態は、前記硫黄と第1及び第2の炭素材の含有量比を満たすものであればいずれの形態でも使用可能であり、本発明において限定されない。
【0052】
前記第1及び第2の硫黄-炭素複合体の製造方法は本発明において特に限定されず、当業界において通常使用される方法を使用することができる。一例として、前記第1及び第2の炭素材のそれぞれと前記硫黄とを単純に混合した後、熱処理して複合化する方法を使用することができる。
【0053】
本発明に係るリチウム-硫黄電池用正極において、前記正極活物質層は、前記第1の硫黄-炭素複合体と第2の硫黄-炭素複合体を90:10~50:50、好ましくは80:20~60:40、より好ましくは75:25~65:35、最も好ましくは75:25~70:30の重量比で含むことができる。本発明において、前記重量比は、「第1の硫黄-炭素複合体の重量%」:「第2の硫黄-炭素複合体の重量%」の比に対応する。前記第1及び第2の硫黄-炭素複合体の重量比が前述の範囲に該当する場合、正極の気孔度を下げながらも表面均一度を向上させることができ、効果的である。前記第1の硫黄-炭素複合体の割合が増加する場合、気孔度を下げることができず、前記第2の硫黄-炭素複合体の割合が増加する場合、正極の電気化学的反応性の確保が困難な問題がある。
【0054】
また、本発明のリチウム-硫黄電池用正極は、前述の第1及び第2の硫黄-炭素複合体を含む前記正極活物質を正極活物質層の全体100重量%を基準として50~95重量%、好ましくは70~90重量%で含むことができる。前記正極活物質の含有量が前記範囲未満の場合、導電材、バインダーなどの副資材の相対的含有量が増え、正極活物質の含有量が減少して高容量、高エネルギー密度の電池を具現することが難しく、逆に前記範囲を超える場合、導電材またはバインダーの含有量が相対的に不足して正極の物理的性質が低下する問題がある。
【0055】
本発明の正極活物質層は、前記正極活物質の他に、遷移金属元素、3族元素、4族元素、これら元素の硫黄化合物、及びこれら元素と硫黄の合金中から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0056】
前記遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれ、前記3族元素としては、Al、Ga、In、Tlなどが含まれ、前記4族元素としては、Ge、Sn、Pbなどが含まれることができる。
【0057】
前記正極活物質層は、前述の正極活物質、または選択的に前述の添加剤と共に、電子が正極内で円滑に移動するようにするための導電材、及び正極活物質を集電体によく付着させるためのバインダーをさらに含むことができる。
【0058】
前記導電材は、集電体(current collector)と正極活物質とを電気的に連結させて集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役割を果たす物質で、導電性を有するものであれば制限なく用いることができる。
【0059】
例えば、前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、カーボンブラックなどのカーボンブラック;炭素ナノチューブやフラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化炭素、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;あるいはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して用いることができる。
【0060】
前記導電材は、正極活物質層の全体100重量%を基準として0.01~30重量%で含まれてもよい。前記導電材の含有量が前記範囲未満であると、正極活物質と集電体との間の電子伝達が容易ではなく、電圧及び容量が減少する。逆に、前記範囲を超えると、相対的に正極活物質の割合が減少して電池の総エネルギー(電荷量)が減少する可能性があるため、前述の範囲内で適正含有量を決定することが好ましい。
【0061】
前記バインダーは、正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結させてこれら間の結着力をより高めるもので、当該業界において公知の全てのバインダーを用いることができる。
【0062】
例えば、前記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride,PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群より選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を用いることができる。
【0063】
前記バインダーは、正極活物質層の全体100重量%を基準として0.5~30重量%で含まれてもよい。前記バインダーの含有量が前記範囲未満であると、正極の物理的性質が低下し、正極内の正極活物質、添加剤または導電材が脱落する可能性があり、前記範囲を超えると、正極において正極活物質と導電材の割合が相対的に減少し、電池容量が減少することができるので、前述の範囲内で適正含有量を決定することが好ましい。
【0064】
本発明において、前記リチウム-硫黄電池用正極の製造方法は特に限定されず、通常の技術者によって公知の方法またはそれを変形する様々な方法が使用可能である。
【0065】
一例として、前記リチウム-硫黄電池用正極は、前述の組成を含む正極スラリー組成物を製造した後、これを前記正極集電体に少なくとも一面に塗布することにより前記正極活物質層を形成して製造されたものであってもよい。
【0066】
前記正極スラリー組成物は、前述の正極活物質、添加剤、導電材及びバインダーを含み、その他に溶媒をさらに含むことができる。
【0067】
前記溶媒としては、正極活物質、添加剤、導電材及びバインダーを均一に分散させることができるものを用いる。このような溶媒としては水系溶媒として水が最も好ましく、このとき、水は蒸留水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)であってもよい。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、必要な場合、水と容易に混合が可能な低級アルコールを用いることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどがあり、好ましくはこれらは水と共に混合して用いることができる。
【0068】
前記溶媒の含有量は、コーティングを容易にすることができる程度の濃度を有する水準で含有することができ、具体的な含有量は塗布方法及び装置により異なる。
【0069】
前記正極スラリー組成物は、必要に応じて当該技術分野においてその機能の向上などを目的として通常用いられる物質を必要に応じてさらに含むことができる。例えば、粘度調整剤、流動化剤、充填剤などが挙げられる。
【0070】
前記正極スラリー組成物の塗布方法は、本発明において特に限定されず、例えば、ドクターブレード(doctor blade)、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などの方法が挙げられる。また別途の基材(substrate)上に成形した後、プレッシング(pressing)またはラミネーション(lamination)方法により正極スラリーを正極集電体上に塗布することもできる。
【0071】
前記塗布後、溶媒除去のための乾燥工程を行うことができる。前記乾燥工程は、溶媒を十分に除去することができる水準の温度及び時間で行い、その条件は溶媒の種類によって変わり得るので、本発明に特に制限されない。一例として、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線及び電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥速度は、通常、応力集中によって正極活物質層に亀裂が生じたり、正極活物質層が正極集電体から剥離しない程度の速度範囲内でできるだけ早く溶媒を除去できるように調整する。
【0072】
前述の組成及び製造方法で製造された前記正極、具体的に前記正極活物質層の気孔度は、正極活物質層の総体積を基準として72%以下、好ましくは68~72%であってもよい。一般的に、正極の気孔度が高いほど電解質を含むことができる経路が生成され、正極の電気化学的反応性の向上には有利である。しかし、電池の実際の駆動側面では、正極の気孔度が高いと必要な電解質の量が増加するため、重量当たりのエネルギー密度に限界があるので、72%以下の水準に維持させることが好ましい。前述のように、本発明において気孔度は正極を製造した直後に測定した初期気孔度で、本発明に係る正極は別途の圧延工程を追加しなくても好ましい気孔度を確保することができ、これにより製造工程が単純で効率的であり、経済的という利点がある。
【0073】
前記正極の気孔度が前記下限値に満たない場合には、正極活物質層の充填度が高くなりすぎ、正極活物質の間に十分な電解質が維持できなくなり、電池の容量や寿命特性が低下することがあり、電池の過電圧及び放電容量の減少がひどくなる問題がある。逆に、前記正極の気孔度が前記上限値を超えて高すぎる気孔度を有する場合、正極集電体と物理的及び電気的連結が低くなり、接着力が低下し、反応が難しくなり、電池のエネルギー密度が低くなることがある。
【0074】
また、前記正極活物質層は、算術平均粗さ(Sa)が5μm以下であり、最大高さ粗さ(Sz)が60μm以下と規定される表面特性を有していてもよい。このとき、前記算術平均粗さ(Sa)は表面の平均面に対して各点間の高さ差の絶対値の平均値であり、前記最大高さ粗さ(Sz)は面の最大高さ粗さで、単一面内で最高点と最低点との距離を意味する。前記正極活物質層は、前述のような算術平均粗さ(Sa)と最大高さ粗さ(Sz)を満足することにより正極として最適な表面粗さを有するようになり、これにより正極の表面均一度が改善されるため、電池の適用時に優れた駆動安定性を示すことができる。
【0075】
本発明において、前記正極活物質層の算術平均粗さ(Sa)は5μm以下、好ましくは3~4.8μm、より好ましくは3.5~4.5μmであってもよい。前記正極活物質層の最大高さ粗さ(Sz)は60μm以下、好ましくは30~55μm、より好ましくは40~50μmであってもよい。前記正極活物質層の算術平均粗さ(Sa)と最大高さ粗さ(Sz)が前記範囲を満たす場合、正極が優れた表面均一度を示すようになり、電池の駆動安定性の確保に有利であり、これと逆に前記範囲を外れる場合、対向電極(counter electrode)であるリチウム金属表面の不安定な反応をもたらし、電池の寿命を減少させる問題が発生することがある。
【0076】
また、本発明は、リチウム硫黄電池用正極を含むリチウム硫黄電池を提供する。
【0077】
前記リチウム-硫黄電池は、正極;負極及びこれらの間に介在する電解質を含み、前記正極として本発明に係るリチウム-硫黄電池用正極を含む。
【0078】
前記正極は本発明に係るもので、前述のことに従う。
【0079】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体の一面または両面に塗布された負極活物質層を含むことができる。または、前記負極はリチウム金属板であってもよい。
【0080】
前記負極集電体は、負極活物質層を支持するためのもので、正極集電体において説明した通りである。
【0081】
前記負極活物質層は、負極活物質と選択的に導電材、バインダーなどをさらに含むことができ、前記導電材及びバインダーは前述のことに従う。
【0082】
前記負極活物質は、リチウム(Li+)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)することができる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0083】
前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に挿入または脱挿入することができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化錫、チタンナイトレートまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)からなる群より選択される金属の合金であってもよい。
【0084】
好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であってもよく、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0085】
前記負極の製造方法は特に限定されず、当業界において通常用いられる層または膜の形成方法を用いることができる。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を用いることができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電により金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0086】
前記電解質は、前述の正極と負極との間に位置し、これを媒介として前記正極と負極で電気化学的酸化または還元反応を引き起こすためのもので、リチウム塩及び非水系有機溶媒を含む。
【0087】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池に通常使用可能なものであれば制限なく用いることができる。
【0088】
前記リチウム塩の具体例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSO3CH3、LiSO3CF3、LiSCN、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide;LiTFSI)、LiN(C2F5SO2)2、LiN(SO2F)2(lithium bis(fluorosulfonyl)imide;LiFSI)、及び低級脂肪族カルボン酸リチウムからなる群より1つ以上であってもよい。
【0089】
前記リチウム塩の濃度は、電解質の組成、リチウム塩の溶解度、溶解したリチウム塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウム二次電池の分野において公知の他の要因のような種々の要因により、0.2~4M、具体的に0.6~2M、より具体的に0.7~1.7Mであってもよい。前記リチウム塩の濃度を0.2M未満で用いると電解質の伝導度が低くなり、電解質の性能が低下することがあり、4Mを超えて用いると電解質の粘度が増加し、リチウムイオンの移動性が減少することがある。
【0090】
前記非水系有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものを制限なく用いることができる。例えば、前記有機溶媒は、エーテル、エステル、アミド、線状カーボネート、環状カーボネートなどをそれぞれ単独でまたは2種以上混合して用いることができる。その中で代表的にはエーテル系化合物を含むことができる。
【0091】
一例として、前記エーテル系化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランからなる群より選択される1種以上を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記有機溶媒中のエステルとしては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンからなる群より選択されるいずれか1つまたはこれらのうちの2種以上の混合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
前記線状カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選択されるいずれか1つまたはこれらのうちの2種以上の混合物などを代表的に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0094】
また、前記環状カーボネート化合物の具体例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか1つまたはこれらのうちの2種以上の混合物がある。これらのハロゲン化物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)などがあり、これに限定されるものではない。
【0095】
また、前述の有機溶媒の他に、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランフラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン、2-エチルフラン、2-プロピルフラン、2-ブチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2,4-ジメチルフラン、2,5-ジメチルフラン、ピラン、2-メチルピラン、3-メチルピラン、4-メチルピラン、ベンゾフラン、2-(2-ニトロビニル)フラン、チオフェン、2-メチルチオフェン、2-エチルチオフェン、2-プロピルチオフェン、2-ブチルチオフェン、2,3-ジメチルチオフェン、2,4-ジメチルチオフェン及び2,5-ジメチルチオフェンからなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0096】
前記電解質は、前述の組成の他に、当該技術分野において通常用いられる硝酸系化合物をさらに含むことができる。一例として、硝酸リチウム(LiNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸セシウム(CsNO2)などが挙げられる。
【0097】
前記電解質の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性により、電池の製造工程のうち適切な段階で行うことができる。すなわち、電池の組み立て前または組み立ての最終段階などで適用されることができる。
【0098】
前記正極と負極との間にはさらに分離膜が含まれることができる。
【0099】
前記分離膜は、前記正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極との間でリチウムイオン輸送を可能にするもので、多孔性非伝導性または絶縁性物質からなってもよく、通常、リチウム二次電池において分離膜として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。このような分離膜はフィルムのような独立した部材であってもよく、正極及び/又は負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0100】
前記分離膜としては、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解質に対する含湿能力に優れることが好ましい。
【0101】
前記分離膜は多孔性基材からなってもよく、前記多孔性基材は通常二次電池に用いられる多孔性基材であればいずれも使用が可能であり、多孔性高分子フィルムを単独で又はこれらを積層して用いることができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0102】
前記多孔性基材の材質としては本発明において特に限定されず、通常電気化学素子に用いられる多孔性基材であればいずれも使用が可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群より選択された1つ以上の材質を含むことができる。
【0103】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1~100μm、好ましくは5~50μmであってもよい。前記多孔性基材の厚さ範囲が前述の範囲に限定されるものではないが、厚さが前述の下限より薄すぎる場合には、機械的物性が低下し、電池使用中に分離膜が容易に損傷することがある。
【0104】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔も特に制限されないが、それぞれ0.001~50μm及び10~95%であってもよい。
【0105】
本発明のリチウム-硫黄電池は、形状によって円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これらの電池の構造と製造方法はこの分野において広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0106】
また、本発明は、前記リチウム硫黄電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。
【0107】
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0108】
前記中大型デバイスの例は、電池的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle;EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle;HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(piug-in hybrid eletric vehicle;PLEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(eletric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0109】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で種々の変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0110】
実施例及び比較例
[実施例1]
(1)硫黄-炭素複合体の製造
第1の炭素材として比表面積が220m2/gであり、平均粒径(D50)が50μmの炭素ナノチューブと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて第1の硫黄-炭素複合体を製造した。
【0111】
第2の炭素材として比表面積が680m2/gのカーボンブラックと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて第2の硫黄-炭素複合体を製造した。
【0112】
(2)リチウム-硫黄電池の製造
正極活物質として前記で製造された第1の硫黄-炭素複合体と第2の硫黄-炭素複合体を7:3の重量比で含む硫黄-炭素複合体90重量%、導電材としてデンカブラック5重量%、及びバインダーとしてスチレン-ブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=7:3、重量比)5重量%を混合して、正極スラリー組成物を製造した。
【0113】
このようにして製造された正極スラリー組成物を20μm厚さのアルミニウムホイル上に250μm厚さで塗布した後、50℃で12時間乾燥して正極を製造した。
【0114】
前記製造された正極と40μm厚さのリチウム金属負極を対面するように位置させた後、これらの間に分離膜を介在した後、電解質70μlを注入してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0115】
このとき、分離膜としては厚さ16μm、気孔度46%のポリエチレンを用い、電解質としては2-メチルフランとジメトキシエタンを33:77の体積比で混合した有機溶媒に、0.75M濃度のLiFSIと3重量%の硝酸リチウムを溶解させた混合液を用いた。
【0116】
[実施例2]
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質として第1の硫黄-炭素複合体と第2の硫黄-炭素複合体を5:5の重量比に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造する。
【0117】
[実施例3]
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質として第1の硫黄-炭素複合体と第2の硫黄-炭素複合体を2:8の重量比に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造する。
【0118】
[比較例1]
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質として第1の硫黄-炭素複合体のみを用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造した。
【0119】
[比較例2]
比表面積が220m2/gであり、ボールミル(ball mill)工程により平均粒径(D50)が10μmの炭素ナノチューブと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて硫黄-炭素複合体を製造した。
【0120】
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質として前記で製造した硫黄-炭素複合体のみを用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造した。
【0121】
[比較例3]
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質として第二硫黄-炭素複合体のみを用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造した。
【0122】
[比較例4]
第2の炭素材として比表面積が1400m2/gのカーボンブラックと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて第2の硫黄-炭素複合体を製造した。
【0123】
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質に含まれる第二硫黄-炭素複合体として前記で製造した第二硫黄-炭素複合体を用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造した。
【0124】
[比較例5]
第1の炭素材として比表面積が170m2/gであり、平均粒径(D50)が30μmの炭素ナノチューブと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて第1の硫黄-炭素複合体を製造した。
【0125】
第2の炭素材として比表面積が1400m2/gのカーボンブラックと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて第2の硫黄-炭素複合体を製造した。
【0126】
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質として前記で製造した第1及び第2の硫黄-炭素複合体を用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造した。
【0127】
[比較例6]
第1の炭素材として比表面積が170m2/gであり、平均粒径(D50)が30μmの炭素ナノチューブと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて第1の硫黄-炭素複合体を製造した。
【0128】
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質に含まれる第1の硫黄-炭素複合体として前記で製造した第1の硫黄-炭素複合体を用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってリチウム-硫黄電池を製造した。
【0129】
[比較例7]
第2の炭素材として比表面積が300m2/gのカーボンブラックと硫黄を25:75の重量比で均一に混合した後、155℃のオーブンで30分間反応させて第2の硫黄-炭素複合体を製造した。
【0130】
正極スラリー組成物の製造時、正極活物質に含まれる第2の硫黄-炭素複合体として前記で製造した第2の硫黄-炭素複合体を用いたことを除いては、実施例1と同様に行ってリチウム硫黄電池を製造した。
【0131】
実験例1.正極の気孔度及び表面粗さの評価
実施例及び比較例で製造した正極の気孔度及び表面粗さを測定した。
【0132】
具体的に、正極の気孔度は、真空下で比表面積測定器(モデル名:BELSORP-MINI、製造社:BEL Japan Inc.)を用いて窒素吸着及び脱着量を測定した。これを通じて、等温吸着脱着曲線を得てBET(Brunaure-Emmett-Teller)式を用いて比表面積を計算した。また、正極の表面粗さは、レーザ照度測定器(モデル名:VK-X150、製造社:KEYENCE)を用いて測定した。このとき得られた結果を表1に示す。
【0133】
【0134】
前記表1を参照して、実施例に係る正極の場合、当該正極を製造した直後に測定した初期気孔度が72%以下であるのに対し、比較例1及び4~6に係る正極の場合、当該正極を製造した直後に測定した初期気孔度が72%を超えるところ、電池に導入する前に気孔度が72%以下となるように別途の圧延工程をさらに行い、このような電池で実験例2の電池性能評価を進行した。また、前記表1に記載したように、実施例に係る正極は、比較例に比べて表面均一度が優れることを確認することができる。具体的に、比較例2の場合、初期気孔度が72%であるにもかかわらず、5μmを超える算術平均粗さと60μmを超える最大高さ粗さを有するところ、表面均一度が良くないことが分かる。また、比較例3及び7の場合、初期気孔度が72%以下であるが、後述するように電池性能が劣ることを確認することができる。
【0135】
実験例2.電池性能の評価
実施例及び比較例で製造された電池について充・放電測定装置を用いて容量及び寿命特性を評価した。
【0136】
具体的に、25℃で0.1Cの電流密度で1.8Vになるまで放電し、0.1Cの電流密度で2.5Vに充電して電池の容量特性を評価した。このとき得られた結果を
図1~5に示す。
【0137】
また、25℃で0.1Cの電流密度で1.8Vになるまで放電し、0.1Cの電流密度で2.5Vまで充電する過程を3回繰り返した後、同一の電圧区間で0.2Cの電流密度で充電と放電を3回進行し、0.3Cの電流密度で放電及び0.2Cの電流密度で充電を進行しながら電池の寿命特性を評価した。このとき得られた結果を
図6~8に示す。
【0138】
図1~5を通じて、実施例1の電池は、低い気孔度にもかかわらず電気化学的反応性に優れ、既存の正極を用いた比較例1(正極活物質として1種の硫黄-炭素複合体を使用)と類似する水準の放電容量を示すことが分かる。一方、2種の硫黄-炭素複合体の重量比を異ならせた実施例2及び3と比表面積が600m
2/g未満の第2の炭素材を含む第2の硫黄-炭素複合体を用いた比較例7の場合、抵抗増加により放電容量が低下したことを確認することができる。また、比較例2、3及び7の場合、正極の気孔度が72%以下であるが、高くなった密度による抵抗増加で過電圧現象が発生して放電容量が低下することが分かる。
【0139】
また、
図6~8を通じて、実施例1に係る電池の場合、他の実施例及び比較例に比べて寿命特性に優れることを確認することができる。具体的に、比較例1に比べて実施例2及び3の場合、寿命特性が非常に良くなく、比較例4の場合、寿命は同程度に維持されるが放電容量が低下したことが分かる。また、比較例5及び6の場合、放電容量は比較例1と同様であるが、早く退化して寿命特性が劣位であることを確認することができる。
【0140】
このような結果から、正極活物質として互いに異なる形状と比表面積を有する炭素材をそれぞれ含む2種の硫黄-炭素複合体を含むことにより、正極の電気化学的反応性及び安定性が向上し、リチウム-硫黄電池の容量及び寿命特性が改善されることが分かり、特に寿命特性の改善効果を確保するためには、2種の硫黄-炭素複合体の混合割合が重要な要素であることを確認することができる。