(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20241118BHJP
G01T 1/36 20060101ALI20241118BHJP
A61N 5/10 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G01T1/36 B
A61N5/10
(21)【出願番号】P 2023546119
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2021018656
(87)【国際公開番号】W WO2022164011
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0013059
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518460417
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・ラディオロジカル・アンド・メディカル・サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グン・ア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・グク・キム
(72)【発明者】
【氏名】イル・ハン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】カン・ヒョン・ソン
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-209965(JP,A)
【文献】特開平06-265639(JP,A)
【文献】特開平08-136658(JP,A)
【文献】特開2007-093471(JP,A)
【文献】特開2019-219340(JP,A)
【文献】特表2020-528149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0069147(US,A1)
【文献】Teemu SIISKONEN et al.,New Approach to Alpha Spectrum Analysis: Iterative Monte Carlo Simulations and Fitting,Progress in Nuclear Science and Technology,日本,Atomic Energy Society of Japan,2011年10月,Vol. 2,pp. 437-441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/167
G01T 1/36
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法であって、
前記放射線源は、互いに異なる第1核種および第2核種を含み、
前記第1核種および前記第2核種の放射能関数を利用したシミュレーションによって、前記第1核種および前記第2核種から放出されるα線に対する模倣スペクトルを得るステップ;
前記放射線源から放出されるα線を測定して、前記α線スペクトルを得るステップ;および
前記模倣スペクトルを基底(basis)として、前記α線スペクトルを前記第1核種から放出された第1α線スペクトルと前記第2核種から放出された第2α線スペクトルとに分解(decomposition)するステップ;
を含
み、
前記測定は、
体の一部を模倣した模倣体を対象として行われる、分析方法。
【請求項2】
前記第2核種は、前記第1核種の娘核種である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記第1核種および前記第2核種は、[
225Ac,
213Bi]、[
211At,
212Po]、[
212Bi,
212Po]、[
213Bi,
213Po]、[
212Pb,
212Po]、[
223Ra,
212Bi]、[
227Th,
211Bi]の組み合わせから選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の分析方法。
【請求項4】
前記放射線源は、第1放射線源および第2放射線源を含み、
前記第1放射線源および前記第2放射線源は、前記第1核種および前記第2核種の分布が相異する、請求項2に記載の分析方法。
【請求項5】
前記測定で、
前記第1放射線源および前記第2放射線源が離隔して配置されている、請求項4に記載の分析方法。
【請求項6】
分離以後に、
特定測定位置での前記第1放射線源からのα線と前記第2放射線源からのα線との比率を導出するステップをさらに含む、請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
前記放射能関数は、前記第1核種および前記第2核種の半減期情報および放出確率情報を利用して得られる、請求項1に記載の分析方法。
【請求項8】
測定スペクトルの分離は、
特定測定位置での前記第1α線スペクトルと前記第2α線スペクトルとの係数比を得るステップを含む、請求項1に記載の分析方法。
【請求項9】
放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法において、
前記放射線源は、
親核種を含む第1放射線源;および
前記第1放射線源から離隔されており、前記親核種の娘核種を含む第2放射線源を含み、
前記親核種および前記娘核種の放射能関数を利用したシミュレーションによって、前記親核種および前記娘核種から放出されるα線に対する模倣スペクトルを得るステップ;
前記放射線源から放出されるα線を測定して、前記α線スペクトルを得るステップ;
前記模倣スペクトルを基底として、前記α線スペクトルを前記親核種から放出された第1α線スペクトルと前記娘核種から放出された第2α線スペクトルとに分解するステップ;および
特定測定位置で測定されたα線に対して、前記親核種からのα線と前記娘核種からのα線に区分するステップ;を含
み、
前記測定は、
体の一部を模倣した模倣体を対象として行われる、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α線放出核種を利用した放射線治療(Targeted alpha therapy、TAT)が最近注目されている。
【0003】
TATにおいて、当該核種(親核種)が崩壊して娘核種を生成する場合、治療をしようとする位置に娘核種も存在するようになる。
【0004】
計画された量のα線放出娘核種は、治療効果を極大化することができるが、過剰な娘核種は、毒性(toxicity)を増加させる原因になる。
【0005】
したがって、当該娘核種が治療をしようとする位置の親核種によって生成された娘核種であるのか、または他の位置の親核種によって生成された娘核種が生理作用によって当該位置に流入したものであるのかに対する分析が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的は、放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法において、前記放射線源は、互いに異なる第1核種および第2核種を含み、前記第1核種および前記第2核種の放射能関数を利用したシミュレーションによって、前記第1核種および前記第2核種から放出されるα線に対する模倣スペクトルを得るステップ;前記放射線源から放出されるα線を測定して、前記α線スペクトルを得るステップ;および前記模倣スペクトルを基底(basis)として、前記α線スペクトルを前記第1核種から放出された第1α線スペクトルと前記第2核種から放出された第2α線スペクトルとに分解(decomposition)するステップ;を含むことによって達成される。
【0008】
前記第2核種は、前記第1核種の娘核種であってもよい。
【0009】
前記第1核種と前記第2核種は、[225Ac,213Bi]、[211At,212Po]、[212Bi,212Po]、[213Bi,213Po]、[212Pb,212Po]、[223Ra,212Bi]、[227Th,211Bi]の組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよい。
【0010】
前記放射線源は、第1放射線源および第2放射線源を含み、前記第1放射線源および前記第2放射線源は、前記第1核種と前記第2核種の分布が相異してもよい。
【0011】
前記測定で、前記第1放射線源および前記第2放射線源が離隔して配置されてもよい。
【0012】
前記分離以後に、特定測定位置での前記第1放射線源からのα線と前記第2放射線源からのα線との比率を導出するステップをさらに含んでもよい。
【0013】
前記測定は、体の一部を模倣した模倣体を対象として行われてもよい。
【0014】
前記放射能関数は、前記第1核種および前記第2核種の半減期情報および放出確率情報を利用して得られてもよい。
【0015】
前記測定スペクトルの分離は、特定測定位置での前記第1α線スペクトルと前記第2α線スペクトルとの係数比を得るステップを含んでもよい。
【0016】
上記本発明の目的は、放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法において、前記放射線源は、親核種を含む第1放射線源;および前記第1放射線源から離隔されており、前記親核種の娘核種を含む第2放射線源を含み、前記親核種および前記娘核種の放射能関数を利用したシミュレーションによって、前記親核種および前記娘核種から放出されるα線に対する模倣スペクトルを得るステップ;前記放射線源から放出されるα線を測定して、前記α線スペクトルを得るステップ;前記模倣スペクトルを基底として、前記α線スペクトルを前記親核種から放出された第1α線スペクトルと前記娘核種から放出された第2α線スペクトルとに分解するステップ;および特定測定位置で測定されたα線に対して、前記親核種からのα線と前記娘核種からのα線に区分するステップ;を含むことによって達成される。
【0017】
前記模倣スペクトルは、前記測定を行う前に、ライブラリ形態で保存されてもよく、前記測定の時には、既に完成された模倣スペクトルライブラリを利用して、前記スペクトル分解ステップを達成することができる。
【0018】
前記測定は、体の一部を模倣した模倣体を対象として行われてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係ると、放射線源から得られたα線スペクトルを分析する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるα線スペクトルの分析方法に対する順序図である。
【
図2】本発明の実験例で得た模倣スペクトルである。
【
図3】本発明の実験例で用いた模倣体と放射線源を示した図である。
【
図4】本発明の実験例で用いた模倣体と放射線源を示した図である。
【
図5】本発明の実験例で得られた2次元α線分布画像である。
【
図6】本発明の実験例で領域2でのα線スペクトルを示した図である。
【
図7a】本発明の実験例で各領域での第1α線スペクトルと第2α線スペクトルを示した図である。
【
図7b】本発明の実験例で各領域での第1α線スペクトルと第2α線スペクトルを示した図である。
【
図7c】本発明の実験例で各領域での第1α線スペクトルと第2α線スペクトルを示した図である。
【
図7d】本発明の実験例で各領域での第1α線スペクトルと第2α線スペクトルを示した図である。
【
図8a】本発明の実験例で
225Acからのα線画像を示した図である。
【
図8b】本発明の実験例で
213Biからのα線画像を示した図である。
【
図9】本発明の実験例で
225Acからのα線と
213Biからのα線画像を合算して示した図である。
【
図10】本発明の実験例で実際に注入された核種の放射能と推定された核種の放射能との比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明をより詳しく説明する。
【0022】
添付図面は、本発明の技術的思想をより具体的に説明するために示した一例に過ぎないので、本発明の思想が添付図面に限定されるものではない。また、添付図面は各構成要素の間の関係を説明するために、大きさと間隔などが実際と異なり、誇張されていてもよい。
【0023】
以下の説明において、α線放出核種を利用した放射線治療での親核種と娘核種の区分を例示して説明するが、本発明はこれに限定されない。本発明は、原子力発電所の安全に必要なα線核種監視またはα線放出核種ミルキングシステム(親核種から娘核種を分離して、放射性同位元素を生成するシステム)での品質管理などに用いられてもよい。
【0024】
図1を参照して、本発明に係るα線スペクトルの分析方法について説明する。
【0025】
まず、分析しようとする放射線源を決める(S100)。
【0026】
放射線源は、第1核種および第2核種を含む。
【0027】
第1核種および第2核種は、親核種と娘核種の関係であってもよく、これに限定されないが、[225Ac,213Bi]、[211At,212Po]、[212Bi,212Po]、[213Bi,213Po]、[212Pb,212Po]、[223Ra,212Bi]、[227Th,211Bi]の組み合わせから選択されてもよい。
【0028】
次に、模倣スペクトルを得る(S200)。
【0029】
模倣スペクトルは、第1核種と第2核種に対する放射能関数を利用して得る。放射能関数は、各核種に対する半減期情報と放出情報から得られ、これに限定されないが、下記の数式1のベイトマン方程式(Bateman equation)に情報を入力して得られる。第1核種に対する放射能関数は、第1核種とその娘核種の情報が反映されており、第2核種に対する放射能関数は、第2核種とその娘核種の情報が反映されている。
【0030】
【0031】
数式1のtは、特定時間であり、λiおよびNiは、それぞれ選定した核種の崩壊曲線にある核種のうち、i番目核種の崩壊定数と量であり、Nn(t)は、特定時間tで存在するn番目核種の量である。
【0032】
得られた放射能関数、第1核種の初期放射能情報(例えば、10kBq)と第2核種の初期放射能情報(例えば、10kBq)を利用して、シミュレーションによって、第1核種と第2核種から放出されるα線に関する模倣スペクトル(模倣エネルギースペクトル)を得る。
【0033】
シミュレーションでは、これに限定されないが、GATE(Geant4 application for tomographic emission)コードを用いたモンテカルロシミュレーションを利用してもよい。他の実施形態では、他のコードとして、FLUKAコード、MCNPXコードまたはGeant4コードを用いてもよい。
【0034】
模倣では、第1核種および第2核種のエネルギー別係数情報を得るようになり、得られたエネルギー別係数情報から模倣スペクトルを得る。
【0035】
次に、放射線源から放出されるα線を測定して、α線スペクトルを得る(S300)。
【0036】
測定では、試験片に放射線源を注入し、α線画像化装置で撮影して、2次元ピクセルごとにα線スペクトルを得ることができる。
【0037】
α線画像化装置は、シンチレータと光センサなどを組み合わせて設けられてもよい。
【0038】
試験片は、小動物の薄片や体の一部を模倣した模倣体であってもよい。模倣体は、例えば、腎臓などのような臓器を模倣したものであってもよいが、これに限定されない。
【0039】
測定で、放射線源は互いに離隔されている複数で設けられ、各放射線源の核種分布は相異してもよい。例えば、第1放射線源は第1核種のみ含み、第2放射線源は第2核種のみ含むか、または第1放射線源は第1核種および第2核種を含み、第2放射線源は第2核種のみ含んでもよい。または、第1放射線源および第2放射線源のそれぞれは、第1核種および第2核種を両方含むが、第1核種と第2核種との比率が相異してもよい。
【0040】
その後、α線スペクトルを分離する(S400)。
【0041】
α線スペクトルは、分離によって第1核種から放出されたα線に対する第1α線スペクトルと第2核種から放出されたα線に対する第2α線スペクトルとに分離される。
【0042】
分離過程を詳しく説明すれば、次の通りである。
【0043】
分離は、模倣スペクトルを基礎ないし基底として行われ、具体的には、基底分解(basis decomposition)方式で行われてもよい。
【0044】
x、y位置でのα線スペクトル(bx,y)を模倣スペクトルで得た第1核種と第2核種の模倣スペクトル(A)との係数比に分離する。分離のためには、これに限定されないが、以下の数式2の公式を用いてもよい。
【0045】
【0046】
第1核種として、10kBqの225Acを用い、第2核種として、10kBqの213Biを用いた場合、撮影されたα線スペクトル(bx,y)を上記公式に入れた結果は、w*
x,yである。すなわち、w*
x,yは、bx,yをAで表現した時の係数である。例えば、Aが[3,1]として撮影されたbx,yが19である場合、上記公式は、bx,y=w1*3+w2*1を満たし、特定制約条件があるw*
x,yを捜し、その答えがw*
x,y=[5,4]とすると、特定位置のx,yでの225Acは、5*10kBqである50kBqであり、x,yでの213Biは、4*10kBqである40kBqになる。
【0047】
すなわち、分離ステップは、特定測定位置での前記第1α線スペクトルと前記第2α線スペクトルとの係数比を得るステップを含む。
【0048】
最後に、α線の核種比率を導出する(S500)。
【0049】
このステップでは、特定位置でのα線が第1核種から放出されたのか、または第2核種から放出されたのか、およびその比率を導出する。すなわちα線が放出された線源を区分するのである。
【0050】
前で得たw*
x,yは、2つの値で、1つは、第1α線スペクトルに対する係数比、2番目の値は、第2α線スペクトルに対する係数比である。これによって、特定x,y位置での第1核種と第2核種との存在比を知ることができる。
【0051】
第1核種と第2核種の存在比の把握を二次元(2D)領域全体で行って、核種別放射能分布画像をそれぞれ獲得することができる。これによって追加的に第1核種と第2核種の色を異なるように示した後に融合して、フュージョン(Fusion)画像を獲得し、これを利用して核種別α線分布を可視化することができる。
【0052】
他の実施形態では、別途の画像化作業なしに位置別核種情報を提供することもできる。
【0053】
以上で説明した本発明は、エネルギー分解能が相対的に低い設備を利用した測定でも放出されたα線の放射線源を区分することができるようにする。
【0054】
本発明に係る方法を利用して、画像化システムで核種別分布画像を獲得可能である。
【0055】
また、TATのための非臨床実験で、当該分布画像を利用して、娘核種の生成機構を追跡し、過剰な娘核種による毒性防止、および治療効果を極大化するのに寄与することができる。
【0056】
以下、実験例によって本発明を詳しく説明する。
【0057】
以下の実験例では、分離しようとするα線スペクトルを実際の測定ではないシミュレーションによって得た。
【0058】
実験例での核種は、親核種である225Acと娘核種である213Biである。
【0059】
親核種である225Acの崩壊曲線は次の通りである。
【0060】
親核種に対する模倣スペクトルでは、225Acを含んで、221Fr、213Biなど225Acの全ての娘核種が放出するエネルギースペクトルを示し、娘核種に対する模倣スペクトルでは、213Biを含んで、213Po、209Tlなど213Biの全ての娘核種が放出するエネルギースペクトルのみを含む。
【0061】
【0062】
親核種である
225Acと娘核種である
213Biの両方に対して、10kBqの放射能での模倣スペクトルを
図2のように得た。
図2は、数式2のAに対応する。
【0063】
模倣スペクトルは、ベイトマン方程式(Bateman equation)によって獲得した時間別核種別放射能情報およびα線画像化装置をGATE(Geant4 application for tomographic emission)コードに適用したモンテカルロシミュレーションによって得た。
【0064】
α線スペクトルを得るためのシミュレーションで用いた模倣体および放射線源は、それぞれ
図3および
図4の通りである。
【0065】
300×300×8次元の腎臓(kidney)形態の薄片ファントムを製作し、横×縦は、29.43×18.11mm
2である。ファントムの厚さは、8つのスライスを合わせて28μmであった。ファントムの材質は、
図4に表示した通りである。領域2と領域3は、密度1.05を有する腎臓(kidney)成分であり、領域4および領域5は、密度1.06を有する血管または血液(blood)成分である。当該ファントムをα線画像化装置の上に置いた状況をGATEを用いて模倣した。
【0066】
シミュレーションで、α線放出核種である
225Acおよび
213Biを、
図4のように、領域1~領域5に注入した。領域2には
225Acと
213Biを両方、領域3および領域5には
225Acのみを、領域4には
213Biのみを注入した状況を模倣した。ベイトマン方程式(Bateman equation)を考慮して、放射平衡を成した状態の
225Acおよび
213Biを注入したので、
225Acのみを注入した場合にも
213Biを含んだ娘核種を含んでいる。
213Biのみを注入した場合にも
213Biの娘核種を含んでいる。
【0067】
注入直後の測定状況を模倣しており、総測定時間は、150秒であった。225Acの崩壊曲線にある核種がβ線とγ線を放出する場合もあるため、これらの影響を減らすために、500keV以上のエネルギーを有する場合のみを計数して(=閾値(Threshold)を500keVに設定して)、エネルギースペクトルをピクセルごとに獲得した。1ピクセルのスペクトルのY値(係数値)を全部加えて1つの値で表現すると、1ピクセルの強度(intensity)を示すことができる。
【0068】
獲得したピクセルの強度を2次元で獲得して画像を獲得した。当該画像は300×300次元で、各ピクセルの面積は100μm
2であるので、全体画像の大きさは30×30mm
2である。得られた画像は、
図5の通りであり、黒白イメージで、この画像ではピクセルごとの放射能を知ることができるだけで、核種別分布情報は分からない。
【0069】
上記のような過程を通じて得られた領域2でのα線スペクトルは、
図6の通りである。
図6は、数式2でのb
x,yにあたる。
【0070】
各位置で、式2を利用した係数導出によって得られた親核種に対する第1α線スペクトル(赤色)と娘核種に対する第2α線スペクトル(青色)は、
図7a~
図7dの通りである。
【0071】
ここで、親核種は、親核種および当該領域の親核種の崩壊で生成された娘核種を指し、娘核種は、他の領域で生成された後に流入された娘核種を指す。
【0072】
図8aおよび
図8bは、それぞれ本発明の実験例で、
225Acからのα線と
213Biからのα線画像を示したものである。
【0073】
分離結果を領域別に合算して領域別分離スペクトルを得、これを
図9のように画像で示した。
図9は、カラーイメージで得られる。
【0074】
図9の画像を得る方法を説明すれば次の通りである。まず、親核種と娘核種に対する全体2次元画像(
図8)を得る。
【0075】
225Ac画像をRGB画像に変え、R:G:B=1:0:0を適用する。値の高いピクセルは濃い赤色で、値の低いピクセルは薄い赤色で表現される。同様に、213Bi画像をRGB画像に変えて、R:G:B=0:1:0を適用する。値の高いピクセルは濃い緑色で、値の低いピクセルは薄い緑色で表現される。この2つの画像を加えると、225Acのみ存在する所は赤色、213Biのみ存在する所は緑色で表現され、この2つが一緒に存在する領域は赤色と緑色の合成値(例えば黄色)で表現される。
【0076】
図9を利用すると、
図5とは異なり、関心領域でのα線がどの放射線源から発生したものであるのかを確認することができる。
【0077】
図9を参照すると、2番領域の
225Acと
213Biが全部存在する領域が赤色と緑色が混じっている黄色で表現されていることから、注入した放射線源の分布をよく推定していることを定性的に確認することができる。
【0078】
次の数式3を用いて、実際に注入された核種放射能と本発明によって推定された核種の放射能を比較した。
【0079】
【0080】
比較の結果、
図10のように、領域別に5%未満の相対誤差のみを示した。
【0081】
上述した実施形態は、本発明を説明するための例示であって、本発明がこれに限定されるものではない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、これから多様に変形して本発明を実施することが可能であるので、本発明の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるべきである。