(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】再配置可能なオーバーザスコープクリップ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20241118BHJP
A61B 17/122 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B17/122
(21)【出願番号】P 2023553117
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2022032649
(87)【国際公開番号】W WO2023009221
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522368684
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック メディカル デバイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】モリー、スボード
(72)【発明者】
【氏名】シン、ラジブクマール
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502785(JP,A)
【文献】特開2002-17665(JP,A)
【文献】国際公開第2021/021536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/08―17/10
A61B 17/12―17/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を処置するためのクリッピングシステムであって、
挿入デバイスの遠位端の上に取り付けられるように構成されたホルダであって、近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを通って長手方向に延在するチャネルを含む、ホルダと、
前記ホルダの長さに沿って積み重ねられるように前記ホルダ上に取り付け可能な複数のクリップであって、各クリップは、第1の端部から第2の端部まで湾曲部に沿って延在し、前記湾曲部は、その中に組織受け入れ空間を画定し、各クリップは、前記クリップが前記ホルダの周りに延在し、前記ホルダの外面が前記クリップを開構成に
広げられた状態に保持するように、前記ホルダ上に取り付け可能であり、前記開構成では、前記クリップの第1の端部および第2の端部が互いから離隔されるとともに、前記組織受け入れ空間がその中に組織を受け入れるように構成されており、前記クリップが前記ホルダから解放されると、前記クリップが付勢された閉構成に戻ることが可能であるように、各クリップは、前記ホルダから独立して展開可能であり、前記閉構成では、前記第1の端部および前記第2の端部が互いに向かって移動されて、前記組織受け入れ空間のサイズを縮小し、それにより組織がその中に把持される、複数のクリップと、
前記複数のクリップの近位で前記ホルダ上に取り付けられたプッシャ要素と
を備え、前記プッシャ要素は、前記ホルダに沿って遠位に動かされて、前記クリップのうちの最も遠位のクリップから前記クリップのうちの最も近位のクリップまで、前記ホルダから前記複数のクリップの各々を独立して展開するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記ホルダは、透明材料で形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記クリップは、その内面に沿って複数の把持特徴部を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記把持特徴部は、前記クリップの内面から前記組織受け入れ空間内に半径方向に延在する歯を含む、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ホルダの遠位部分は、それに沿ってかつその壁を通って延在する複数の長手方向スロットを含み、前記長手方向スロットは、前記ホルダの前記遠位端において開いており、前記長手方向スロットは、前記クリップが前記開構成で前記ホルダ上に取り付けられる場合に、その中に前記クリップの
前記歯を受け入れるように構成されている、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記プッシャ要素は、前記ホルダ上に取り付けられたリングとして構成されており、前記プッシャ要素は、前記クリップのうちの最も近位のクリップの近位で前記ホルダの周りに延在している、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記クリップは、形状記憶合金で形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プッシャ要素に取り付けられた遠位端から延在するとともに、前記ホルダの外部に沿ってそこから遠位に延在し、前記挿入デバイスの遠位開口部内に受け入れられる
ように構成された制御要素をさらに備え、前記制御要素は、前記挿入デバイスのチャネルを通って近位に延在し、前記制御要素が前記挿入デバイスに対して近位に引かれると、前記プッシャ要素は、前記ホルダに対して遠位に動かされて、前記クリップのうちの最も遠位のクリップを前記ホルダから押し出す、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
組織クリッピングシステムであって、
近位端から遠位端まで長手方向に延在する内視鏡と、
近位端から遠位端まで長手方向に延在する透明なホルダであって、前記ホルダは、それを通って長手方向に延在するチャネルを含み、前記ホルダは、前記ホルダの前記チャネルが前記内視鏡の長手方向軸と実質的に整列するように、前記内視鏡の前記遠位端に取り付けられ、前記ホルダは、内視鏡シャフトに結合されるように構成された近位部分と、前記内視鏡の前記遠位端を越えて遠位に延在する遠位部分とを含む、ホルダと、
前記ホルダの長さに沿って積み重ねられるとともに、前記内視鏡の視覚化システムを介して視認可能であるように、前記ホルダの前記遠位部分上に取り付け可能な複数のクリップであって、各クリップは、第1の端部から第2の端部まで湾曲部に沿って延在し、前記湾曲部は、その中に組織受け入れ空間を画定し、各クリップは、前記クリップが前記ホルダの周りに延在し、前記ホルダの外面が前記クリップを開構成に
広げられた状態に保持するように、前記ホルダ上に取り付け可能であり、前記開構成では、前記クリップの第1の端部および第2の端部が互いから離隔されるとともに、前記組織受け入れ空間がその中に組織を受け入れるように構成されており、前記クリップが前記ホルダから解放されると、前記クリップが付勢された閉構成に戻ることが可能であるように、各クリップは、前記ホルダから独立して展開可能であり、前記閉構成では、前記第1の端部および前記第2の端部が互いに向かって移動されて、前記組織受け入れ空間のサイズを縮小し、それにより組織がその中に把持される、複数のクリップと、
前記複数のクリップの近位で前記ホルダ上に取り付けられたプッシャ要素と
を備え、前記プッシャ要素は、前記ホルダに沿って遠位に動かされて、前記クリップのうちの最も遠位のクリップから前記クリップのうちの最も近位のクリップまで、前記ホルダから前記複数のクリップの各々を独立して展開するように構成されている、システム。
【請求項10】
各クリップは、前記クリップが前記ホルダから遠位に押し出されると、前記クリップが前記閉構成に向かって戻るように、前記クリップを前記閉構成に向かって付勢する形状記憶合金で形成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
各クリップは、前記クリップの内面から前記組織受け入れ空間内に半径方向に延在して、その中での組織の把持を容易にする歯を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記ホルダの
前記遠位部分は、それに沿ってかつその壁を通って延在する複数の長手方向スロットを含み、前記長手方向スロットは、前記ホルダの前記遠位端において開いており、前記長手方向スロットは、前記クリップが前記開構成で前記ホルダ上に取り付けられる場合に、その中に前記クリップの
前記歯を受け入れるように構成されている、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プッシャ要素に取り付けられた遠位端から延在するとともに、前記ホルダの外部に沿ってそこから遠位に延在し、挿入デバイスの遠位開口部内に受け入れられる
ように構成された制御要素をさらに備え、前記制御要素は、前記挿入デバイスのチャネルを通って前記システムのユーザがアクセス可能な近位端まで近位に延在している、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記内視鏡の近位端に取り付けられたハンドル部材と、前記ハンドル部材に回転可能に取り付けられたホイールと含むアクチュエータアセンブリをさらに備え、
前記制御要素の近位端は、前記ホイールの回転が前記制御要素を前記内視鏡に対して近位に移動させ、前記プッシャ要素を前記ホルダに対して遠位に移動させるように、前記ホイールに接続されている、請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
前記内視鏡の近位端に取り付けられたハンドル部材と、前記ハンドル部材に回転可能に取り付けられたホイールと含むアクチュエータアセンブリをさらに備え、前記ホイールは、ラチェット機構を介して
前記ハンドル部材に接続されており、1つのラチェット歯に沿った前記ハンドル部材に対する前記ホイールの回転が、前記ホルダからの単一のクリップの展開に対応している、請求項9
~13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡デバイスに関し、特に、胃腸管に沿って組織を処置するための内視鏡クリッピングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、積極的な介入的および治療的内視鏡胃腸(GI)処置をより進んで実行するようになってきており、これにより、GI管の壁を穿孔するリスクが増加する可能性があり、または処置の一部としてGI管壁の閉鎖が必要となる可能性がある。そのような処置は、例えば、大きな病巣の除去、粘膜の下の病変を治療するためのGI管の粘膜層の下のトンネリング、組織の全層除去、GI管の外側を通過させることによる他の器官上の病変の治療、ならびに手術後の病変(例えば、手術後漏出、手術ステープルラインの損傷、および吻合部漏出)の内視鏡的治療/修復を含んでいてよい。現在は、組織は、スルーザスコープ(through-the-scope)クリップまたはオーバーザスコープ(over-the-scope)クリップを含む内視鏡用閉鎖デバイスを介して処置され得る。オーバーザスコープクリップは、より大きな組織異常の閉鎖を達成するために特に有用であり得る。これらの内視鏡用閉鎖デバイスは、病院の費用を節約することができ、患者に利益を提供し得る。
【0003】
しかしながら、いくつかの場合において、現在の内視鏡用閉鎖デバイスは、使用することが困難であるか、配置するのに時間がかかるか、または特定の穿孔、状態、および解剖学的構造に対して不十分であり得る。例えば、現在のオーバーザスコープクリップは、一般に、オペレータがクリップ自体を視認できない位置からクリップを送り出す必要がある。すなわち、クリッピングに先立って、オペレータは、クリッピングされるべき標的組織を視認し、標的組織のこの可視化に基づいて、デバイスの遠位端およびクリップが、標的組織に対して所望の位置にあることを判断し得る。次いで、標的組織の観察に基づいて、オペレータは、クリップが展開されるまでクリップ自体を見ることができない状態でクリップを展開する。加えて、現在のオーバーザスコープクリップデバイスは、体内への内視鏡の挿入時に1つのクリップしか配置することができない。第2のクリップを配置するために、オペレータは、第1のクリップの展開後に内視鏡を取り外し、内視鏡に新しいクリップを再装填し、内視鏡を標的部位に再挿入して、第2のクリップを標的組織の上に配置および展開しなければならない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、組織を処置するためのクリッピングシステムに関し、システムは、挿入デバイスの遠位端の上に取り付けられるように構成されたホルダであって、近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを通って長手方向に延在するチャネルを含む、ホルダと、ホルダの長さに沿って積み重ねられるようにホルダ上に取り付け可能な複数のクリップであって、各クリップは、第1の端部から第2の端部まで湾曲部に沿って延在し、湾曲部は、その中に組織受け入れ空間を画定し、各クリップは、クリップがホルダの周りに延在し、ホルダの外面がクリップを開構成に保持するように、ホルダ上に取り付け可能であり、開構成では、クリップの第1の端部および第2の端部が互いから離隔されるとともに、組織受け入れ空間がその中に組織を受け入れるように構成されており、クリップがホルダから解放されると、クリップが付勢された閉構成に戻ることが可能であるように、各クリップは、ホルダから独立して展開可能であり、閉構成では、第1の端部および第2の端部が互いに向かって移動されて、組織受け入れ空間のサイズを縮小し、それにより組織がその中に把持される、複数のクリップと、複数のクリップの近位でホルダ上に取り付けられたプッシャ要素とを含み、プッシャ要素は、ホルダに沿って遠位に動かされて、クリップのうちの最も遠位のクリップからクリップのうちの最も近位のクリップまで、ホルダから複数のクリップの各々を独立して展開するように構成されている。
【0005】
一実施形態では、ホルダは、透明材料で形成されている。
一実施形態では、クリップは、その内面に沿って複数の把持特徴部を含む。
一実施形態では、把持特徴部は、クリップの内面から組織受け入れ空間内に半径方向に延在する歯を含む。
【0006】
一実施形態では、ホルダの遠位部分は、それに沿ってかつその壁を通って延在する複数の長手方向スロットを含み、長手方向スロットは、ホルダの遠位端において開いており、長手方向スロットは、クリップが開構成でホルダ上に取り付けられる場合に、その中にクリップの歯を受け入れるように構成されている。
【0007】
一実施形態では、プッシャ要素は、ホルダ上に取り付けられたリングとして構成されており、プッシャ要素は、クリップのうちの最も近位のクリップの近位でホルダの周りに延在している。
【0008】
一実施形態では、クリップは、形状記憶合金で形成されている。
一実施形態では、システムは、プッシャ要素に取り付けられた遠位端から延在するとともに、ホルダの外部に沿ってそこから遠位に延在し、挿入デバイスの遠位開口部内に受け入れられる制御要素をさらに含み、制御要素は、挿入デバイスのチャネルを通って近位に延在し、制御要素が挿入デバイスに対して近位に引かれると、プッシャ要素は、ホルダに対して遠位に動かされて、クリップのうちの最も遠位のクリップをホルダから押し出す。
【0009】
加えて、本開示は、組織クリッピングシステムに関し、システムは、近位端から遠位端まで長手方向に延在する内視鏡と、近位端から遠位端まで長手方向に延在する透明なホルダであって、ホルダは、それを通って長手方向に延在するチャネルを含み、ホルダは、ホルダのチャネルが内視鏡の長手方向軸と実質的に整列するように、内視鏡の遠位端に取り付けられ、ホルダは、内視鏡シャフトに結合されるように構成された近位部分と、内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在する遠位部分とを含む、ホルダと、ホルダの長さに沿って積み重ねられるとともに、内視鏡の視覚化システムを介して視認可能であるように、ホルダの遠位部分上に取り付け可能な複数のクリップであって、各クリップは、第1の端部から第2の端部まで湾曲部に沿って延在し、湾曲部は、その中に組織受け入れ空間を画定し、各クリップは、クリップがホルダの周りに延在し、ホルダの外面がクリップを開構成に保持するように、ホルダ上に取り付け可能であり、開構成では、クリップの第1の端部および第2の端部が互いから離隔されるとともに、組織受け入れ空間がその中に組織を受け入れるように構成されており、クリップがホルダから解放されると、クリップが付勢された閉構成に戻ることが可能であるように、各クリップは、ホルダから独立して展開可能であり、閉構成では、第1の端部および第2の端部が互いに向かって移動されて、組織受け入れ空間のサイズを縮小し、それにより組織がその中に把持される、複数のクリップと、複数のクリップの近位でホルダ上に取り付けられたプッシャ要素とを含み、プッシャ要素は、ホルダに沿って遠位に動かされて、クリップのうちの最も遠位のクリップからクリップのうちの最も近位のクリップまで、ホルダから複数のクリップの各々を独立して展開するように構成されている。
【0010】
一実施形態では、各クリップは、クリップがホルダから遠位に押し出されると、クリップが閉構成に向かって戻るように、クリップを閉構成に向かって付勢する形状記憶合金で形成されている。
【0011】
一実施形態では、各クリップは、クリップの内面から組織受け入れ空間内に半径方向に延在して、その中での組織の把持を容易にする歯を含む。
一実施形態では、ホルダの遠位部分は、それに沿ってかつその壁を通って延在する複数の長手方向スロットを含み、長手方向スロットは、ホルダの遠位端において開いており、長手方向スロットは、クリップが開構成でホルダ上に取り付けられる場合に、その中にクリップの歯を受け入れるように構成されている。
【0012】
一実施形態では、システムは、プッシャ要素に取り付けられた遠位端から延在するとともに、ホルダの外部に沿ってそこから遠位に延在し、挿入デバイスの遠位開口部内に受け入れられる制御要素をさらに含み、制御要素は、挿入デバイスのチャネルを通ってシステムのユーザがアクセス可能な近位端まで近位に延在している。
【0013】
一実施形態では、システムは、内視鏡の近位端に取り付けられたハンドル部材と、ハンドル部材に回転可能に取り付けられたホイールとを含むアクチュエータアセンブリをさらに含み、制御部材の近位端は、ホイールの回転が制御要素を内視鏡に対して近位に移動させ、プッシャ要素をホルダに対して遠位に移動させるように、ホイールに接続されている。
【0014】
一実施形態では、ホイールは、ラチェット機構を介してハンドル部材に接続されており、1つのラチェット歯に沿ったハンドル部材に対するホイールの回転が、ホルダからの単一クリップの展開に対応している。
【0015】
さらに、本開示は、組織をクリップするための方法に関し、方法は、内視鏡を体管腔内の標的領域に挿入すること、内視鏡の遠位端を第1の標的組織の上に配置することを含み、複数のクリップは、透明なホルダを介して内視鏡の遠位端の上に取り付けられ、複数のクリップは、ホルダの長さに沿って積み重ねられるとともに、内視鏡の可視化システムを介して視認可能であるように、ホルダの上に取り付けられ、各クリップは、第1の端部から第2の端部まで湾曲部に沿って延在し、開構成でホルダ上に取り付けられ、開構成では、クリップの第1の端部および第2の端部が互いに離隔されるとともに、湾曲部によって画定される組織受け入れ空間がその中に組織を受け入れるように構成されており、方法は、第1の標的組織がホルダのチャネル内およびクリップのうちの第1の最も遠位のクリップの組織受け入れ空間内に引き込まれるように、内視鏡の作業チャネルを通して吸引力を印加すること、第1のクリップが第1の標的組織に対して所望の位置にあるかどうかを判定すること、第1のクリップがホルダから遠位に押し出されるまで、複数のクリップの近位に配置されたプッシャ要素を介して複数のクリップをホルダに沿って遠位に押して、付勢された閉構成に戻ることを含み、閉構成では、第1の端部および第2の端部が互いに向かって引き寄せられて、組織受け入れ空間のサイズを縮小し、それにより、第1の標的組織がその中に把持される。
【0016】
一実施形態では、方法は、第1のクリップが第1の標的組織に対して所望の位置にないと判定された場合、内視鏡の遠位端を第1の標的組織に対して再配置することをさらに含む。
【0017】
一実施形態では、プッシャ要素は、制御部材を内視鏡に対して近位に引くことによってホルダに沿って遠位に動かされ、制御部材は、制御部材が内視鏡のチャネルを通って近位に延びるように、プッシャ要素に取り付けられた遠位端からホルダの外部に沿って遠位に延びるとともに、内視鏡の遠位開口部内に受け入れられている。
【0018】
一実施形態では、制御部材の動きは、内視鏡の近位端に取り付けられたハンドル部材と、ラチェット機構を介してハンドル部材に回転可能に取り付けられたホイールとを含むアクチュエータアセンブリを介して作動され、制御部材の近位端は、1つのラチェット歯に沿ったホイールの回転がホルダからの単一クリップの展開に対応するようにホイールに接続されている。
【0019】
一実施形態では、方法は、内視鏡の遠位端を第2の標的組織上に配置すること、第2の標的組織がホルダのチャネル内および現在最も遠位の第2のクリップの組織受け入れ空間内に引き込まれるように、内視鏡の作業チャネルを通して吸引力を印加すること、第2のクリップが第2の標的組織に対して所望の位置にあるかどうかを判定すること、第2のクリップがホルダから遠位に押し出されるまで、複数のクリップの近位に配置されたプッシャ要素を介して複数のクリップをホルダに沿って遠位に押して、付勢された閉構成に戻ることを含み、閉構成では、第2のクリップの第1の端部および第2の端部が互いに向かって引き寄せられて、第2のクリップの組織受け入れ空間のサイズを縮小し、それにより、第2の標的組織がその中に把持される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本開示の例示的な実施形態によるシステムの遠位部分の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムの遠位部分の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のシステムによるクリップの斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1のシステムの遠位部分の長手方向断面図である。
【
図8】
図8は、
図1のシステムによるアクチュエータアセンブリの側面図である。
【
図9】
図9は、
図8のアクチュエータアセンブリのホイールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、以下の説明および添付の図面を参照してさらに理解することができ、同様の要素は同じ参照番号で参照される。本開示は、クリッピングシステムに関し、特に、クリップの再装填のために内視鏡を取り外す必要なく、複数の組織異常および/またはより大きい組織異常を処置するために複数のクリップを配置することができる、オーバーザスコープ内視鏡クリッピングシステムに関する。本開示の例示的な実施形態は、クリップホルダを介して内視鏡の遠位端上に取り付け可能な複数のクリップを備え、クリップホルダは、クリップの各々がそこから独立して解放可能であるように、内視鏡の遠位端に結合されている。クリップの各々は、例えば、その端部が、クリップが開構成にあるときに互いから離隔され、クリップが(例えば、その自然な付勢の下で)閉構成に引かれるときにクリップの側部が重なるように、互いに向かって引かれる、またはさらには互いを通り越して引かれる、伸長性のあるC字形サークリップとして構成され得る。クリップの各々は、クリップホルダの外面がクリップの各々を開構成に保持するように、クリップホルダ上に取り付け可能である。
【0022】
この開構成では、各クリップは、クリップホルダの周りに延在し、クリップは、クリップホルダの長さに沿って順次整列されている。使用時、クリップホルダを含む内視鏡は、クリップホルダの遠位端が組織の第1の標的部分に隣接して配置されるまで、身体の標的部位に挿入される(例えば、自然に存在する身体開口部を介してアクセスされる自然の体管腔を通して)。クリップホルダは、第1の標的組織に対するクリップの位置が、クリップホルダの開放遠位端を通して、および内視鏡の光学系を介してクリップホルダの側壁を通して可視化され得るように、透明であってよい。組織の第1の標的部分がクリップホルダに対して所望の位置にあることが確認されると、組織の第1の標的部分は、クリップホルダ内に引き込まれ(例えば、内視鏡の作業チャネルを通した吸引または挿入された把持器を使用して)、クリップのうちの最遠位の第1のクリップは、第1のクリップがその自然な付勢の下で閉構成に向かって戻るにつれて、クリップホルダ内に引き込まれた組織の第1の標的部分の上で閉じるように、クリップホルダから遠位に動かされる。
【0023】
閉構成では、クリップの端部は、互いに向かって引き寄せられ、クリップ内の空間(例えば、クリップの湾曲部内に半径方向に画定される空間)のサイズを縮小し、組織の第1の標的部分は、この縮小された空間内で第1のクリップを介してクリップされる。特に、組織の第1の標的部分は、クリップによって取り囲まれ、圧縮される。次いで、内視鏡の遠位端は、所望に応じて、組織の第2の標的部分に隣接して配置され得る。次いで、組織の第2の標的部分は、クリップホルダ内に引き込まれてよく、次いで、第2の(現在最も遠位の)クリップは、第2のクリップが組織の第2の標的部分を覆って閉じるように、クリップホルダから遠位に引き抜かれる。このプロセスは、クリップの各々が組織のそれぞれの標的部分の上に展開されるまで、または組織の標的部分の全てが所望のようにクリッピングされるまで、繰り返されてもよい。近位および遠位という用語は、本明細書で使用される場合、それぞれ、デバイスのユーザに向かう方向およびユーザから離れる方向を指すように意図されることが、当業者によって理解されるであろう。
【0024】
図1~
図10は、本開示の例示的な実施形態による、組織異常および/または穿孔を処置するためのクリッピングシステム100を示す。クリッピングシステム100は、クリップホルダ108上に取り付けられるように構成された複数のクリップ102を備え、クリップホルダ108は、クリッピングされる組織が位置する体内の標的部位に到達するように、介在する解剖学的構造を通して挿入されるように構成された内視鏡104または他の挿入デバイスの遠位端106に取り付けられるように構成されている。この実施形態のクリップ102は、ホルダ108から独立して解放可能であり、それにより、各クリップ102は、組織の別個の対応する標的部分に展開されて、複数のクリップ102が、複数の組織異常および/またはより大きな組織異常の複数の別個の部分を処置するために展開されることを可能にする。
【0025】
クリップ102の各々は、第1の端部112から第2の端部114まで湾曲しており、クリップ102の湾曲部内に画定された空間116内に組織を受け入れることができるように、第1の端部112および第2の端部114が互いに離隔されている開構成と、湾曲部によって画定された空間116の面積が減少して、その中の組織を把持するように、第1の端部112および第2の端部114が互いに向かって引き寄せられる閉構成との間で移動可能である。本実施形態のクリップ102は、閉構成に向かって付勢され、クリップホルダ108は、クリップ102がホルダ108上に取り付けられる場合に、ホルダ108の外面118が、クリップ102の各々を開構成に広げられた状態に保持するようなサイズとされている。1つの例示的な実施形態では、クリップ102の各々は、ホルダ108の外周(例えば、直径)の周りに延在し、クリップ102は、クリップ102のうちの第1の最も遠位のクリップから、クリップ102のうちの最も近位のクリップまで、ホルダ108の長さに沿って順次配置されている。
【0026】
一実施形態では、ホルダ108は、組織がクリップホルダ108のチャネル174の中に引き込まれ(例えば、内視鏡104の作業チャネルを通して適用される吸引または組織把持器を介して)、組織が空間116の中に引き込まれる場合に、組織およびそれに対するクリップ102の位置が、内視鏡104の可視化システムを使用して、チャネル174を通して、およびクリップホルダ108を通して可視化され得るように、透明材料で形成されている。可視化時に、システムのオペレータ(例えば、外科医)が、クリップ102が標的組織に対して所望の位置にあると判定した場合、クリップ102のうちの第1の最も遠位のクリップが、チャネル174内に引き込まれた標的組織を把持するように展開される。ユーザが、この時点で、組織の第1の標的部分が所望のように配置されていないと判定した場合、クリップホルダ108は、適切な配置が達成されるまで、再配置され得る。
【0027】
適切な配置が達成され、組織の第1の標的部分が所望に応じてホルダ108内に引き込まれると、一実施形態では、クリップ102のうちの最も近位のクリップの近位にホルダ108に沿って配置されたプッシャ要素110が、ホルダ108に対して遠位に動かされて、最も近位のクリップ102をホルダ108に沿って遠位に押す。この遠位方向の押す力は、第1の最も遠位のクリップ102がクリップホルダ108の遠位端から遠位に押し出されるまで、介在するクリップ102を介して順次伝達される。第1の最も遠位のクリップ102がホルダ108から遠位に移動させられると、第1の最も遠位のクリップ102は、その自然な付勢の下で、組織の第1の標的部分の周囲で半径方向に圧縮し、それを把持する閉構成に戻るように解放される。次いで、把持された組織の第1の標的部分は、解放されてもよく(例えば、吸引を中断するか、または把持器を解放することによって)、次いで、内視鏡104は、クリップホルダ108が組織の第2の標的部分に隣接するまで、標的部位内の異なる領域に動かされてもよい。
【0028】
次いで、組織の第2の標的部分が、上記で説明されるように、ホルダ108の中に引き込まれてよく、第2の(今は最も遠位の)クリップ102が、第1のクリップ102について上記で説明されたのと同一の方法で、組織のこの第2の標的部分をクリップするように展開されてよい。このプロセスは、必要に応じて、標的部位が所望のように治療されるまで、または利用可能なクリップ102の全てが展開されるまで、繰り返されてもよい。以下でさらに詳細に説明され、
図8および
図9に示されるように、プッシャ要素110は、内視鏡104の近位端146においてアクチュエータアセンブリ120を介して作動され得る。
【0029】
クリップホルダ108は、例えば、摩擦嵌合を介して、任意の数の内視鏡104の遠位端106の上に取り付けられ得るように、種々のサイズおよび/または形状で構成され得る。当業者によって理解されるように、内視鏡104は、体管腔を通して身体内の標的領域に挿入される(さらに、例えば、NOTES処置において、管腔の外側の標的部位に到達するように管腔から外に通過されてもよい)ように構成された細長い可撓性シャフトであり、したがって、標的部位に到達するように体管腔の蛇行経路でもナビゲートできるほど十分な可撓性を有していなければならない。例示的な実施形態では、ホルダ108は、近位端122から遠位端124まで長手方向に延在し、そこを通って、クリップされる標的組織が引き込まれ得る遠位開口部まで長手方向に延在するチャネル174を含む。
【0030】
図1および
図2に示すように、ホルダ108は、内視鏡104の遠位端106に取り付けられるように構成され、ホルダ108がその上に取り付けられると、ホルダ108のチャネル174が、内視鏡104の長手方向軸と実質的に整列され、内視鏡104の作業チャネル126と連通する(すなわち、チャネル126を通過する吸引またはデバイスが、チャネル174内で動作するように)。例示的な実施形態は、内視鏡104に結合されたホルダ108を示し説明しているが、代替的な実施形態では、ホルダ108は、クリッピングされる組織が位置する体内の標的部位にアクセスするのに適した任意の挿入デバイス(可撓性または剛性)の遠位端の上に取り付けられるようなサイズおよび形状であってよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0031】
上述したように、一実施形態では、ホルダ108は、クリップ102がホルダ108を介して内視鏡104の遠位端106の上に取り付けられたときに、クリップ102のすべて、いくつか、または少なくとも最も遠位の1つが内視鏡104の視野内にあるように、透明材料で形成されている。一実施形態では、ホルダ108は、実質的に円筒形である。しかしながら、ホルダ108は、ホルダ108が内視鏡104または他の挿入デバイスの遠位端106の上に取り付けられるように構成される限り、種々の形状およびサイズのうちの任意のものを有していてよく、チャネル174は、クリッピングされる組織の所望の部分のその中への進入を可能にするように十分なサイズを有していることが、当業者によって理解されるであろう。
【0032】
1つの例示的な実施形態では、ホルダ108の近位部分128は、内視鏡104の遠位端106の上に取り付けられるように構成され、ホルダ108の遠位部分130は、遠位端106を越えて遠位に延在している。したがって、遠位部分130の上に取り付けられたクリップ102の一部または全部は、内視鏡104の視野内にあり、内視鏡104の視覚化システムを介してホルダ108の壁150を通してシステム100のオペレータから視認可能である。
図3にも示されるように、遠位部分130は、ホルダ108の壁150を通ってそれに沿って長手方向に延在する長手方向スロット132を含んでいてよく、スロット132は、ホルダ108のチャネル174と連通しており、壁150の外側に開いており、ホルダ108の遠位端124にある。一実施形態では、スロット132の各々は、ホルダ108の円周の周りで互いに対して等距離に離隔されている。しかしながら、以下でさらに詳細に説明するように、スロット132がクリップ102に係合して、クリップがホルダ108上を遠位方向に移動する際にクリップをガイドする限りにおいて、スロット132は互いに対して様々な間隔のうちの任意のものを有してもよいことが当業者には理解されよう。
【0033】
図4~
図6に示すように、クリップ102の各々は、第1の端部112から第2の端部114まで湾曲部に沿って延在し、1つの例示的な実施形態では、実質的にC字形のサークリップである。クリップ102の湾曲部は、クリップ102が開構成(
図4および5に示されるような)にあるときに、標的組織が受け入れられ得る空間116を画定する。したがって、クリップがホルダ108から押し出されると、クリップ102は(
図6に示されるように)閉じて、それを通して引き出された組織を把持/クリップする。換言すれば、クリップ102は、拡張されて、それを通して引き込まれる標的組織を受け入れ、実質的に取り囲むように構成されており、クリップ102が解放されると、この標的組織が半径方向に収縮するクリップ102によってクリップされる。上述したように、一実施形態のクリップ102は、閉構成に向かって付勢された弾性材料または引張材料で形成されている。一実施形態では、クリップ102は、例えば、ニチノールなどの形状記憶合金で形成されていてもよい。また上述したように、クリップ102は、ホルダ108上に受け入れられると、ホルダ108の外面118を介して開構成に保持される。
【0034】
例えば、一実施形態では、ホルダ108の外径は、クリップ102が付勢された閉構成(biased closed configuration)に戻った場合の空間116の直径よりも大きくなるように選択されている。したがって、クリップ102がホルダ108上に取り付けられると、クリップ102は伸張されて、開構成に保持される。一実施形態では、開構成において、第1の端部112および第2の端部114は、互いから離隔されているが、当業者は、これが必要ではないことを理解するであろう。この開構成では、クリップ102の湾曲部を介して画定される空間116は、組織がその中に受け入れられることを可能にするようなサイズを有している。
【0035】
一実施形態では、閉構成において、第1の端部112および第2の端部114は、それらが互いに接触するまで互いに向かって動かされ、実質的に閉じたリングを形成する。別の実施形態では、クリップ102が閉じるとき、第1の端部112および第2の端部114は、開構成で分離されるクリップ102の側部が互いに重なり合ってさらに小さい空間116を形成するように、互いを通過する。さらに別の実施形態では、第1の端部112および第2の端部114は、互いに向かって移動されるが、互いに接触しない。
【0036】
クリップ102のうちの1つまたは複数は、半径方向内向きに面する把持特徴部136を含んでいてもよく、把持特徴部136は、クリップ102が標的組織を覆って閉じるときに、空間116内に受け入れられた組織の把持を促進または向上させるように標的組織に接触し、標的組織を覆ってクリップされるその位置にクリップ102をより固定させる。把持特徴部136は、例えば、その内面134から半径方向内向きに延在する1つまたは複数の歯136を含んでいてよい。一実施形態では、歯136は、クリップ102の内径の周りで円周方向に互いに等しい間隔をあけて配置されている。別の実施形態では、歯136のうちの隣接している歯は、歯136が空間116内に受け入れられた組織を把持することを可能にするために有効であると見なされる任意の態様で、クリップ102の内周の周りに可変的に間隔をあけて配置される。例示的な実施形態は、把持特徴部136を歯として図示および説明するが、把持特徴部は、特徴部が空間116内に受け入れられる組織の把持を容易にする限りにおいて、例えば、他の突起または粗面化された内面134などの種々の構成のうちの任意のものを含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【0037】
上述したように、各クリップ102がホルダ108の周りに延在し、クリップ102がホルダ108の長さに沿って順次積み重ねられるように、伸張されて開構成に保持されたクリップ102が、ホルダ108の上に取り付けられている。一実施形態では、クリップ102は、各クリップ102の歯136の各々が長手方向スロット132の対応する1つを通って延在するように、遠位部分130上に取り付けられている。特に、各クリップ102は、ホルダ108の外部118の周りに延在し、歯136の各々は、長手方向スロット132の対応する1つを通ってホルダ108のチャネル174の中へ半径方向内向きに延在する。これは、最も遠位のクリップが、その近位に取り付けられた一連のクリップ102によって遠位に押されるときに、クリップ102の近位から遠位への動きをガイドするのに役立つ。一実施形態では、チャネル174内に吸引された組織の一部に対する歯136の位置も、内視鏡104を介して視認可能である。一実施形態では、クリップ102は、互いに対して位置合わせされ、それにより、例えば、クリップ102の第1の端部112および第2の端部114が、ホルダ108の長さに沿って整列される(すなわち、ホルダ108の周りで円周方向に実質的に同じ位置に)。
【0038】
プッシャ要素110も、ホルダ108の周囲に延在している。しかしながら、プッシャ要素110は、クリップ102のうちの最も近位のクリップの近位に延在している。一実施形態では、プッシャ要素110は、クリップ102のうちの最も近位のクリップに当接するホルダ108の周囲に延在するリングとして構成されている。したがって、プッシャ要素110がホルダ108に対して遠位に動かされると、クリップ102のうち、2番目に遠位のクリップによって最も遠位のクリップ102に力が印加されるまで、最も近位のクリップ102は、遠位に隣接するクリップを押す次に近位のクリップに対して遠位に押される。ユーザは、ホルダ108に沿ったクリップ102の動きを観察することができ、それにより、ユーザは、チャネル174内に引き込まれた組織をクリップするために、最も遠位のクリップがホルダ108から遠位に押し出されるときを見ることができる。
【0039】
クリップ102のうちの1つを展開することが所望される場合、ユーザは、アクチュエータアセンブリ120を操作して、1つのクリップ102(すなわち、ホルダ108上のクリップ102のうちの最も遠位の1つ)のみをホルダ108から押し出すように選択された特定の距離にわたって、プッシャ要素110をホルダ108に対して遠位に押す。すなわち、例えば、アクチュエータアセンブリのストロークは、アセンブリ120の動きのその完全な範囲にわたる(またはアクチュエータアセンブリ120の動きの単一の展開範囲にわたる)作動が、クリップ102のうちの単一のクリップを展開するために必要とされるプッシャ要素110の動きの範囲に対応するように選択される。組織の新しい部分がチャネル174内に引き込まれたときに、各クリップ102に対して同じプロセスが繰り返されてもよく、それにより、アクチュエータアセンブリ120の動作は、オペレータが、一度に1つだけのクリップ102を展開するプッシャ要素110の制御された動きを生成することを可能にする。
【0040】
図7に示すように、プッシャ要素110の動きは、制御要素138を介して制御され、この制御要素は、一実施形態では、ケーブル、ストランド、糸、ワイヤ、または他の長手方向に延在する要素として構成される。例示的な一実施形態では、制御要素138は、プッシャ要素110に取り付けられた遠位端140から、アクチュエータアセンブリ120に接続された近位端142まで延在している。例示的な実施形態によれば、制御要素138は、ホルダ108の外部118に沿ってプッシャ要素110から遠位に延在し、残りの長さは、チャネル174の遠位開口部144を通って延在し、内視鏡110のチャネル126を通って近位に通されて、アクチュエータアセンブリ120に結合されている。したがって、内視鏡104に対する制御要素138の近位方向の動きにより、プッシャ要素110がホルダ108に対して遠位に動かされて、クリップ102が展開される。一実施形態では、制御要素138は、クリップ102の展開に干渉しないように、クリップ102の第1の端部112と第2の端部114との間で、プッシャ要素110から外部118に沿って延在している。
【0041】
例示的な実施形態によれば、アクチュエータアセンブリ120は、
図8および
図9に示すように、内視鏡104の近位端146に接続されたハンドル部材148と、ハンドル部材148に回転可能に結合されたホイール152とを含む。この実施形態における制御要素138の近位端142は、内視鏡104およびハンドル部材148を通って近位に延在してホイール152に結合され、それにより、ホイール152がハンドル部材148に対して回転されると、制御部材138は、内視鏡104に対して近位に動かされ、プッシャ要素110を動かし、それによってクリップ102をホルダ108に対して遠位に動かす。当業者が理解するように、アクチュエータアセンブリ120は、単一のクリップ102を展開するために必要とされるプッシャ要素110の動きの範囲に対応する動きの量の(例えば、触覚、聴覚、または視覚的)標示を与えるように構成されていてよい。
【0042】
一実施形態では、ホイール152は、ラチェット機構154を介してハンドル部材148に結合され、それにより、ホイール152は、クリップ102のうちの1つだけ(すなわち、ホルダ108に沿った最も遠位のクリップ102)をホルダ108から解放するように構成された特定の量を介して、ハンドル部材148に対してホイール152が回転すると、「クリック」する。一例では、ホイール152は、複数のラチェット歯156を含み、ばね付勢カム158を介してハンドル部材148に係合される。この実施形態におけるラチェット歯156は、ホイール152の内面168からホイール152の中心172に向かって延在している。ラチェット歯156の各々は、歯152のポイント164で交わる第1の傾斜面160および第2の傾斜面162を含む。歯152のうち、隣接する歯の間には谷部166が形成されている。第2の傾斜面162は、第1の傾斜面160よりもはるかに急勾配であり、それにより、ホイール152がハンドル部材148に対して第1の方向に回転すると、ばね付勢カム158が、第1の面160に沿って摺動し、カム158がポイント164を通過して第2の面162に沿って移動するまで圧縮される。
【0043】
カム158がポイント164を通過するようにホイール152が回転すると、カム158は、付勢された構成に向かって戻り、谷部166内に受け入れられると「クリック」する。この「クリック(clicking)」は、制御要素138がクリップ102のうちの1つだけ(例えば、第1の最も遠位のクリップ102)を展開するために必要とされる特定の距離だけ動かされたことを示す触覚および/または聴覚フィードバックをユーザに提供する。これは、当業者によって理解されるように、内視鏡の視覚システムを使用して、オペレータによって視覚的に確認されてもよい。
【0044】
別のクリップ102を展開することが望ましい場合、システム100のオペレータは、第2のクリップ102(例えば、第1のクリップの展開後の現在の最も遠位のクリップ)がホルダ108から押し出されたことを示す「クリック」をホイール152が提供するまで、ホイール152をハンドル部材148に対して第1の方向に再び回転させる。このプロセスは、標的領域が所望のように治療されるまで、またはクリップ102の全てが展開されるまで、繰り返されてもよい。第2の面162は、第2の面162がカム158に係合して、ホイール152がハンドル部材148に対して第1の方向とは反対の第2の方向に回転することを防止するように、十分に急勾配である。したがって、制御要素138は、プッシャ要素110をホルダ108に対して遠位に動かすために、内視鏡104に対して近位にのみ動かされ得る。
【0045】
一実施形態では、ホイール152は、ホイール152の内面168に沿って互いに対して等しく配置された3つのラチェット歯156を含む。しかしながら、単一の「クリック」がクリップホルダ108上のクリップ102のうちの単一の最も遠位のクリップの展開に対応するようにラチェット歯156がカム158に係合するように構成されている限りにおいて、ホイール152は、任意の数のラチェット歯156を含んでもよいことが当業者によって理解されるであろう。さらに、当業者は、ラチェット歯156の間の間隔を変更して、クリック毎にプッシャ要素110の等しい遠位の動きを達成できることを理解するであろう。すなわち、ホイール152が回転するにつれて、制御部材138が巻き付けられる直径が増加する場合、この増加した直径のわずかに減少した回転角度が、各クリックと等しい制御部材138の長さをホイール152に巻き付けるように、歯156のうちの第2の歯156と第3の歯との間の間隔をわずかに減少させることが望ましい場合がある。ホイール152の回転は、ユーザに聴覚/触覚フィードバックを提供するようにクリックするが、ホイール152および/またはハンドル部材148は、ホルダ108上の最も遠位のクリップ102が展開されたときにシステム100のオペレータに視覚的標示を提供するマーキング170をその上に含んでいてもよい。
【0046】
クリッピングシステム100を利用する組織閉鎖のための例示的な方法によれば、ホルダ108と、その上に開構成で取り付けられたクリップ102とを含む内視鏡104(または他の挿入デバイス)の遠位端106は、生体内に挿入され(例えば、自然に存在する身体開口部によってアクセスされる体管腔(例えば、GI管)を介して)、体管腔内の標的領域に到達する。遠位端106は、クリップされる組織の第1の標的部分の上に配置され、吸引力(または把持器)が、内視鏡104の作業チャネル126を通して適用され、組織の第1の標的部分をホルダ108のチャネル174の中に引き込む。クリップ102は、開構成でホルダ108の周りに引き伸ばされるので、チャネル174内に引き込まれた組織も、クリップ102のうちの少なくとも最も遠位のクリップの湾曲部によって画定された空間116内にある。オペレータは、次いで、組織の第1の標的部分およびクリップ102のうちの最も遠位のクリップが、互いに対して所望の位置にあるかどうかを可視化し得る。クリップ102が所望の位置にない場合、チャネル174内に引き込まれた組織は解放され、内視鏡104の遠位端106の位置は、標的組織の所望の第1の部分がチャネル174内に引き込まれるまで、周囲組織に対して調節される。
【0047】
クリップ102のうちの最も遠位の1つ(第1のクリップ102)が組織の第1の標的部分に対して所望の位置にあるとオペレータが判定すると、オペレータは、上述のように、アクチュエータアセンブリ120を動かして、ホルダ108から第1のクリップ102を展開する。特に、アクチュエータアセンブリ120の動作により、制御部材138が近位に引かれる。この実施形態では、ホルダ108の遠位端の周りのチャネル174から出て作業チャネル126を通って延在し、プッシャ要素110に戻るように延在する制御部材138が、作業チャネル126を通して近位に引かれると、プッシャ要素120の近位に延在する部分は、ホルダ108上で遠位に引かれ、第1のクリップ102がホルダ108から押し出されるまで、プッシャ要素110を遠位に引く。次いで、第1のクリップ102は、組織の第1の標的部分の周りでその付勢された閉構成に戻り、この組織をクリップする。第1のクリップ102は、第1の標的組織を実質的に包囲し、空間116内の組織を把持することができる。上述したように、例えば歯などの把持特徴部136は、組織がクリップ102を介してクリップ留めされる場合に組織の把持を容易にする。
【0048】
第1のクリップ102の展開時に、クリップされるべきさらなる組織が存在すると判定された場合、標的組織の第1の部分は解放され、内視鏡104の遠位端106は、組織の第2の標的部分の上に配置される。次いで、組織の第2の標的部分は、ホルダ108のチャネル174の中に引き込まれてよく、それによって、オペレータは、組織の第2の標的部分に対するホルダ108上のクリップ102のうちの新たな最も遠位のクリップ(第2のクリップ102)の位置を可視化することができる。第2のクリップ102が組織の第2の標的部分に対して所望の位置にあると判定されると、オペレータは、アクチュエータアセンブリ120を再び作動させて、第2のクリップ102をホルダ108から押し出して、組織の第2の標的部分をクリップし、このプロセスは、クリップされるべき組織の全てがクリップされるまで、またはクリップ102の全てが展開されるまで、所望に応じて繰り返され得る。
【0049】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示において様々な修正が行われ得ることが当業者には明らかであろう。