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特許7589394ヘテロシクリデンアセトアミド誘導体を含む配合剤
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  • 特許-ヘテロシクリデンアセトアミド誘導体を含む配合剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ヘテロシクリデンアセトアミド誘導体を含む配合剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20241118BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241118BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241118BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20241118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61K31/353
A61K9/10
A61K31/196
A61K31/56
A61K31/57
A61K31/7072
A61K31/728
A61K38/13
A61K47/26
A61K47/34
A61P27/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024521733
(86)(22)【出願日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2023035548
(87)【国際公開番号】W WO2024071349
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2022156062
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199175
【氏名又は名称】千寿製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山下 有希
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/066144(WO,A1)
【文献】特開平10-287552(JP,A)
【文献】特開昭62-129226(JP,A)
【文献】特開平11-029463(JP,A)
【文献】特開平11-279052(JP,A)
【文献】特開2018-203648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分と第2成分とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤。
【請求項2】
さらに非イオン界面活性剤を含む、請求項1に記載の水性懸濁液剤。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤がチロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の水性懸濁液剤。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤がチロキサポールである、請求項2に記載の水性懸濁液剤。
【請求項5】
前記非イオン界面活性剤の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.0001w/v%~約1w/v%である、請求項2に記載の水性懸濁液剤。
【請求項6】
前記第1成分の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約5w/v%である、請求項1に記載の水性懸濁液剤。
【請求項7】
前記ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.3w/v%~約10w/v%であり、
前記シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.005w/v%~約0.5w/v%であり、
前記ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%であり、
前記エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.025w/v%~約2.5w/v%であり、
前記ブロムフェナク、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%であり、
前記フルオロメトロン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%である、請求項1に記載の水性懸濁液剤。
【請求項8】
前記第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬、ヘルスケア、生物学およびバイオテクノロジー等の分野に関する。本開示は、とりわけ、ヘテロシクリデンアセトアミド誘導体を含有する懸濁液の再分散性の向上技術、またこれに基づく製剤技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本でのドライアイ患者人口は少なくとも約800万人、通院しないで市販点眼剤を使用している潜在患者も含めると約2,200万人いると見込まれ、世界では10億人以上存在するともいわれる。現代社会ではテレビ、コンピュータ、携帯端末等の利用により画面を注視する場面が多くなり瞬目回数が減少し、更にはエアコンの使用等により空気が乾燥し、結果的に涙液の蒸発が亢進し、ドライアイを引き起こすことが広く知られている。また、屈折矯正手術およびコンタクトレンズの使用により、結果的にドライアイになる。ドライアイに伴う症状としては、眼表面の眼不快感、乾燥感、灼熱感および刺激感などが挙げられる。
【0003】
ドライアイになると、上記症状が自覚症状として現れ、その治療には長期間にわたって定期的な点眼が必要とされる。そのため、一般的に現在市販されているドライアイ治療薬は頻回投与型が多くなっており、例えば、ジクアス(登録商標)点眼液は通常1日6回点眼すること、ヒアレイン(登録商標)点眼液は1日5~6回点眼すること、ムコスタ(登録商標)点眼液は通常1日4回点眼することが必要とされる。
【0004】
ドライアイを治療するための、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む組成物、又はその使用が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:国際公開第2021/066144号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1成分としてヘテロシクリデンアセトアミド誘導体の一つである、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、第2成分としてジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、優れた再分散性を有する水性懸濁液剤を提供する。
【0007】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
第1成分と第2成分とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤。
(項目2)
さらに非イオン界面活性剤を含む、上記項目に記載の水性懸濁液剤。
(項目3)
前記非イオン界面活性剤がチロキサポール、ポリソルベート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目4)
前記非イオン界面活性剤がチロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目5)
前記非イオン界面活性剤がチロキサポールである、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目6)
前記非イオン界面活性剤の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.0001w/v%~約1w/v%である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目7)
前記第1成分の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約5w/v%である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目8)
前記第1成分の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.3w/v%~約1w/v%である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目9)
前記第2成分の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.005w/v%~約10w/v%である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目10)
前記ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.3w/v%~約10w/v%であり、
前記シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.005w/v%~約0.5w/v%であり、
前記ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%であり、
前記エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.025w/v%~約2.5w/v%であり、
前記ブロムフェナク、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%であり、
前記フルオロメトロン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目11)
前記第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目12)
さらにホウ酸を含む、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目13)
前記水性懸濁液のpHが約4~約8である、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目14)
前記水性懸濁液中の前記(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の再分散性が向上している、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目15)
前記再分散性の向上が、転倒操作で評価した場合に、約30回以下の転倒回数で懸濁粒子が再分散することである、上記項目のいずれか一項に記載の水性懸濁液剤。
(項目A1)
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤。
(項目A2)
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤。
(項目A3)
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該第1成分の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約5w/v%であり、
該第2成分の前記水性懸濁液剤中の濃度が、約0.005w/v%~約10w/v%であり、
該非イオン界面活性剤の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.0001w/v%~約1w/v%である、水性懸濁液剤。
(項目A4)
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該第1成分の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約5w/v%であり、
該ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.3w/v%~約10w/v%であり、
該シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.005w/v%~約0.5w/v%であり、
該ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%であり、
該エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.025w/v%~約2.5w/v%であり、
該ブロムフェナク、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%であり、
該フルオロメトロン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約1w/v%であり、
該非イオン界面活性剤の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.0001w/v%~約1w/v%である、水性懸濁液剤。
(項目A5)
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該第1成分の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.3w/v%~約1w/v%であり、
該ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約3w/v%であり、
該シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.05w/v%であり、
該ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.1w/v%であり、
該エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.25w/v%であり、
該非イオン界面活性剤の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約0.05w/v%である、水性懸濁液剤。
(項目A6)
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤と、ホウ酸とを含む水性懸濁液剤であって、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該第1成分の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.3w/v%であり、
該ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約3w/v%であり、
該シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.05w/v%であり、
該ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.1w/v%であり、
該エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.25w/v%であり、
該ブロムフェナク、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.1w/vであり、
該フルオロメトロン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.1w/v%であり、
該非イオン界面活性剤の該水性懸濁液剤中の濃度が、約0.01w/v%~約0.05w/v%であり、
該水性懸濁液のpHが、約4~約8であり、
該水性懸濁液の再分散性を転倒操作で評価した場合に、約30回以下の転倒回数で懸濁粒子が再分散される、水性懸濁液剤。
(項目B1)
水性懸濁液剤を製造する方法であって、
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、方法。
(項目C1)
水性懸濁液剤の再分散性を向上させる方法であって、
第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、
該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、優れた再分散性を有する水性懸濁液剤を提供することができる。
【0009】
本開示は、上記特徴を提供することにより、懸濁粒子が均一に分散されないという現象を抑制し、必要量の有効成分を安定的に投与することができ、薬理効果を安定的に十分に発揮することを実現する。患者のアドヒアランスや利便性の向上に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例で使用した各容器のボトルの胴部の各波長における透過率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
(定義)
本明細書において、「約」とは、特に断らない限り、後に続く数値の±10%を意味する。
【0013】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも一つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」および「或いは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0014】
本明細書において、「水性懸濁液剤」とは、本分野で通常使用される用語と同様の意味で用いられ、少なくとも一部に水を含む液状の剤であって、混合される成分が懸濁している状態であり、固体粒子が液体中に存在した状態にあるものをいう。第1成分である(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、水に対する溶解性が極めて低いため、本開示の水性懸濁液剤では、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が懸濁粒子になるが、一部は溶解している状態となる。また、第1成分に加え、第2成分も懸濁粒子になる場合もあり得る。
【0015】
本明細書において、「薬学的に許容可能な塩」とは、比較的非毒性の、本開示の化合物の無機または有機の酸付加塩、または無機または有機の塩基付加塩をいう。
【0016】
本明細書において、「溶媒和物」とは、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩と任意の溶媒とが相互作用によって1つの集団を形成するものをいい、例えば有機溶媒との溶媒和物(例えば、アルコール(エタノール等)和物)、水和物等を包含する。水和物を形成するときは、任意の数の水分子と配位していてもよい。水和物としては、1水和物、2水和物等を挙げることができる。
【0017】
本明細書において、「再分散性」とは、懸濁液などの、粒子(懸濁液の場合、「懸濁粒子」ともいう。)を含む液を一定期間保存することによって、その液の溶媒中で沈降が生じた粒子をその液全体に均一に再び分散させる場合の分散のし易さのことをいう。本明細書において「再分散性」は、振盪操作または転倒操作による試験によって評価する。
【0018】
本明細書において、「振盪操作」とは、「水性懸濁液剤」が充填された容器を手に持って上下方向に振り動かす動作をいう。「振盪操作」は、上下10~15cm幅で容器を振り下ろし、振り上げてから元の位置に戻るまでを振盪1回とし、1.1秒/セットの速度で5回を1セットとして振り動かす。「振盪操作」による再分散性の試験は、1処方につき3~6検体で行い、各検体が再分散に要したセット数から平均セット数を求め、振盪回数に換算した回数を用いる。
【0019】
本明細書において、「転倒操作」とは、「水性懸濁液剤」が充填された容器を手に持って上下を反転させる動作をいう。「転倒操作」による再分散性の試験は、1処方につき3~6検体で行い、容器を1秒/回の速度で、上下に180°反転した後に再度180°反転して正立状態とする操作を転倒回数1回とする。
【0020】
本明細書において、「再分散性の向上」とは、懸濁液などの粒子を含む液において沈降が生じた粒子が再び分散し易くなることをいい、任意の処方の比較において、上記の「振盪操作」または「転倒操作」の動作回数が減少した場合に、再分散性が向上したといえる。
【0021】
本明細書において、「懸濁粒子の平均粒子径」は、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の粒子の粒子径のメジアン径(D50)を指し、レーザー回析式粒子径分布測定装置を用いて測定される値である。
【0022】
本明細書において、「非イオン界面活性剤」とは、非イオン性界面活性剤とも称され、界面活性剤の親水基の部分が非イオン性のものをいう。非イオン界面活性剤かどうかは、当業者には容易に判定することができ、水に溶解したときに電離しない(イオン性を示さない)ことを確認することで判断することができる。例えば、非イオン界面活性剤としては、チロキサポール、ステアリン酸ポリオキシル類(モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40(MYS-40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール400等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)等)が挙げられる。
【0023】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0024】
(水性懸濁液剤)
本開示において、第1成分と第2成分とを含む水性懸濁液剤であって、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、他の有効成分、およびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤が提供され得る。
【0025】
本開示において、第1成分と第2成分とを含む水性懸濁液剤であって、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤が提供され得る。
【0026】
本開示において、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを含む水性懸濁液剤であって、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤が提供され得る。
【0027】
本開示において、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを含む水性懸濁液剤であって、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤が提供され得る。
【0028】
本開示において、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤と、ホウ酸とを含む水性懸濁液剤であって、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤が提供され得る。
【0029】
本開示の他の局面において、第1成分と、第2成分とを含む水性懸濁液剤であって、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、レバミピド、オロダテロール、デルコシチニブおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤、または、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤と、ホウ酸とを含む水性懸濁液剤であって、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、レバミピド、オロダテロール、デルコシチニブおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、水性懸濁液剤が提供され得る。
【0030】
本開示の一局面において、水性懸濁液剤を製造する方法であって、第1成分と第2成分とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0031】
また他の局面において、水性懸濁液剤を製造する方法であって、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0032】
また他の局面において、水性懸濁液剤を製造する方法であって、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0033】
また他の局面において、水性懸濁液剤を製造する方法であって、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤と、ホウ酸とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0034】
本開示の別の一局面において、水性懸濁液剤の再分散性を向上させる方法であって、第1成分と第2成分とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0035】
また他の局面において、水性懸濁液剤の再分散性を向上させる方法であって、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0036】
また他の局面において、水性懸濁液剤の再分散性を向上させる方法であって、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0037】
また他の局面において、水性懸濁液剤の再分散性を向上させる方法であって、第1成分と、第2成分と、非イオン界面活性剤と、ホウ酸とを混合して水性懸濁液剤を調製する工程を含み、該第1成分が、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、該第2成分が、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該非イオン界面活性剤が、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選択される少なくとも1種である、方法が提供され得る。
【0038】
本開示において、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドには、R体(CAS.No.920332-28-1)、S体(CAS.No.920332-29-2)、またはラセミ体(CAS.No.920332-27-0)が含まれるが、より好ましくは、R体((E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド(本開示において化合物(1)とも称する))である。本開示において使用され得る化合物(1)は、どのような形態で提供されてもよく、例えば、滅菌処理された化合物(1)であってもよいが、滅菌処理されていない化合物(1)であってもよい。滅菌処理の方法としては、乾熱滅菌、高圧蒸気滅菌、ろ過滅菌、電子線滅菌、ガンマ線、エチレンオキサイドガス滅菌、または過酸化水素ガス滅菌などが挙げられるが、乾熱滅菌が好適に用いられる。乾熱滅菌の処理温度としては、特に限定されず、通常約100~約175℃、好ましくは約100~約170℃、より好ましくは約150~約170℃が挙げられる。
【0039】
本開示において、ジクアホソルとは、その塩の形態が有効成分(IUPAC: Tetrasodium P1,P4-bis(5’-uridul)tetraphosphate/CAS.No.211427-08-6)としてジクアス点眼液に配合されている化合物である。また、ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0040】
本開示において、シクロスポリンとは、有効成分(IUPAC: cyclo{-[(2S, 3R, 4R, 6E)-3-Hydroxy-4-methyl-2-methylaminooct-6-enoyl]-L-2-aminobutanoyl-N-methylglycyl-N-methyl-L-leucyl-L-valyl-N-methyl-L-leucyl-L-alanyl-D-alanyl-N-methyl-L-leucyl-N-methyl-L-leucyl-N-methyl-L-valyl-}/CAS.No.59865-13-3)としてRESTASIS点眼液に配合されている化合物である。また、シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0041】
本開示において、ヒアルロン酸とは、その塩の形態が有効成分(IUPAC: [→3)-2-Acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl-(1→4)-β-D-glucopyranosyluronic acid-(1→]n/CAS.No.9067-32-7)としてヒアレイン点眼液に配合されている化合物である。また、ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の重量平均分子量は、通常50万~120万、好ましくは60万~120万である。また、ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0042】
本開示において、エタボン酸ロテプレドノールとは、有効成分(IUPAC: Chloromethyl 17-ethoxycarbonyloxy-11-hydroxy-10,13-dimethyl-3-oxo-7,8,9,11,12,14,15,16-octahydro-6H-cyclopenta[a]phenanthrene-17-carboxylate/CAS.No.82034-46-6)としてEYSUVIS点眼液に配合されている化合物である。また、エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0043】
本開示において、ブロムフェナクとは、その塩の形態が有効成分(Sodium 2 -[2-amino-3-(4-bromobenzoyl)phenyl acetate sesquihydrate/CAS.No.120638-55-3)としてブロナック点眼液に配合されている化合物である。また、ブロムフェナク、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0044】
本開示において、フルオロメトロンとは、有効成分(IUPAC: 9-Fluoro-11β,17-dihydroxy-6α-methylpregna-1,4-diene-3,20-dione/CAS.No.426-13-1)としてフルメトロン点眼液に配合されている化合物である。また、フルオロメトロン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0045】
本開示において、レバミピドとは、有効成分(IUPAC: (2RS)-2-(4-Chlorobenzoylamino)-3-(2-oxo-1, 2-dihydroquinolin-4-yl)propanoic acid/CAS.No.90098-04-7)としてムコスタ点眼液に配合されている化合物である。また、レバミピド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0046】
本開示において、オロダテロールは、その塩の形態が有効成分(6-Hydroxy-8-((1R)-1-hydroxy-2-{[1-(4-methoxyphenyl)-2-methylpropane-2-yl]amino}ethyl)-2H-1,4-benzooxazine-3(4H)-one・hydrochloride/CAS.No.869477-96-3)としてスピオルトレスピマット28吸入剤に配合されている化合物である。また、オロダテロール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0047】
本開示において、デルコシチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬として知られている化合物(IUPAC: 3-[(3S,4R)-3-Methyl-6-(7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)-1,6-diazaspiro[3.4]octan-1-yl]-3-oxopropanenitrile/CAS.No.869477-96-3)である。また、デルコシチニブ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物としては、市販化合物や文献公知の方法により製造された化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を用いることができる。
【0048】
本開示の第1成分および第2成分の薬学的に許容可能な塩としては、それぞれ独立して、薬学的に許容可能な塩であれば特に限定されないが、具体的には、塩酸、臭化水素酸、よう化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、エナント酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、乳酸、ソルビン酸、マンデル酸等の脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸、しゅう酸、マロン酸、こはく酸、フマル酸、マレイン酸、りんご酸、酒石酸等の脂肪族ジカルボン酸、クエン酸等の脂肪族トリカルボン酸などの有機カルボン酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸などの有機スルホン酸類等との酸付加塩、およびナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属等の金属との無機塩基付加塩、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、ピリジン、リシン、アルギニン、オルニチン等の有機塩基付加塩等が挙げられる。
【0049】
これらの塩は常法,例えば、当量の本開示の化合物と所望の酸或いは塩基等を含む溶液を混合し、所望の塩をろ取するか、または溶媒を留去して集めることにより得られうる。また、本開示の化合物またはその塩は、水、またはエタノールなどの溶媒と溶媒和物を形成しうる。
【0050】
(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドは、優れたTransient Receptor Potential Vanilloid 1(以下、「TRPV1」と記す。TRPV1は、「一過性受容体電位バニロイド1」、または「バニロイド受容体1(VR1)」とも称される)拮抗作用を有する。
【0051】
((E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドの、R体(化合物(1))、S体、またはラセミ体に関しては、国際公開第2007/010383号パンフレット、日本特許第4754566号、日本特許第6230743号、国際公開第2018/221543号パンフレット、日本特許第6830569号、国際公開第2021/038889号パンフレットおよび国際公開第2021/039023号パンフレットに記載されている。前記R体(化合物(1))、S体、またはラセミ体は、当該公報記載の製造方法により製造することができる。当該公報の記載内容は、そのすべてが本明細書において援用される。
【0052】
TRPV1は、後根神経節(DRG)からカプサイシンに応答するカチオンチャネルとしてクローニングされ、43℃以上の熱やプロトンにも感受性を持ち、侵害受容の主要分子として研究されているTRPチャネルである(生化学第85巻第7号:561~565)。TRPV1は、炎症時や組織損傷時にはその活性が高まり、痛覚過敏を惹起することが知られている。そのため、TRPV1は疼痛治療に使用できる薬剤標的候補として着目されている。
【0053】
TRPV1拮抗剤は従来から炎症性疼痛、神経障害性疼痛や変形性関節症等の様々な疼痛モデルに対して有効性を示すことが報告されている(生化学第85巻第7号:561~565)。
【0054】
本開示においては、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種とを混合して水性懸濁液剤とすることで(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の再分散性を向上させることができる。
【0055】
本開示の他の局面において、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む水性懸濁液剤の再分散性を向上するための組成物であって、該組成物は、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を含む組成物を提供することができる。
【0056】
本開示の他の局面において、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む水性懸濁液剤の再分散性を向上するための組成物であって、該組成物は、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種および非イオン界面活性剤を含む組成物を提供することができる。
【0057】
本開示の他の局面において、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む水性懸濁液剤の再分散性を向上するための組成物であって、該組成物は、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種と、非イオン界面活性剤と、ホウ酸とを含む組成物を提供することができる。
【0058】
本開示の一実施形態において、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、本開示の水性懸濁液中において、通常約0.01w/v%~約5w/v%、好ましくは約0.1w/v%~約3w/v%、より好ましくは約0.2w/v%~約2w/v%、特に好ましくは約0.2w/v%~約1.5w/v%、さらに好ましくは約0.3w/v%~約1.0w/v%の濃度で存在することができる。
【0059】
本開示の一実施形態において、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物のR体を用いる場合、本開示の水性懸濁液剤中において、通常約0.01w/v%~約5w/v%、好ましくは約0.1w/v%~約3w/v%、より好ましくは約0.2w/v%~約2%w/v%、特に好ましくは約0.2w/v%~約1.5w/v%、さらに好ましくは約0.3w/v%~約1.0w/v%の濃度で存在することができる。
【0060】
本開示の一実施形態において、非イオン界面活性剤としては、薬学的に許容されるものであれば、特に限られるものではないが、チロキサポール、ステアリン酸ポリオキシル類(モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40(MYS-40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール400等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)等)が挙げられる。また、これらの非イオン界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。非イオン性界面活性剤は水性懸濁液剤の再分散性または安定性の観点から、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましく、チロキサポール、ポリソルベート80、モノステアリン酸ポリエチレングリコールがより好ましく、チロキサポールがさらに好ましい。
【0061】
本開示の一実施形態において、非イオン界面活性剤は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.0001w/v%~約1w/v%、好ましくは約0.0005w/v%~約0.5w/v%、より好ましくは約0.001w/v%~約0.5w/v%、特に好ましくは約0.005w/v%~約0.1w/v%、さらに好ましくは約0.01w/v%~約0.05w/v%の濃度で存在することができる。
【0062】
本開示の一実施形態において、非イオン界面活性剤としてチロキサポールを用いる場合、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.0001w/v%~約1w/v%、好ましくは約0.0005w/v%~約0.5w/v%、より好ましくは約0.001w/v%~約0.5w/v%、特に好ましくは約0.005w/v%~約0.1w/v%、さらに好ましくは約0.01w/v%~約0.05w/v%の濃度で存在することができる。
【0063】
本開示の一実施形態において、該第2成分は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.005w/v%~約12w/v%、好ましくは約0.005w/v%~約10w/v%の濃度で存在することができる。
【0064】
本開示の一実施形態において、ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.3w/v%~約12w/v%、好ましくは約0.3w/v%~約10w/v%、より好ましくは約3w/v%~約5w/v%の濃度で存在することができる。理論に縛られるものではないが、ジクアホソルは、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に混合することにより、その水性懸濁液剤中の再分散性を向上させることができる。また、本明細書において、ジクアホソル、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の濃度は、特に明記しない限り、ジクアホソルナトリウムに換算された濃度である。
【0065】
本開示の一実施形態において、シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.005w/v%~約1w/v%、好ましくは約0.005w/v%~約0.5w/v%、より好ましくは約0.05w/v%~約0.1w/v%の濃度で存在することができる。また、本明細書において、シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の濃度は、特に明記しない限り、シクロスポリン(フリー体)に換算された濃度である。
【0066】
本開示の一実施形態において、ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.01w/v%~約2w/v%、好ましくは約0.01w/v%~約1w/v%、より好ましくは約0.1w/v%~約0.5w/v%の濃度で存在することができる。また、本明細書において、ヒアルロン酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の濃度は、特に明記しない限り、ヒアルロン酸ナトリウムに換算された濃度である。
【0067】
本開示の一実施形態において、エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.025w/v%~約3w/v%、好ましくは約0.025w/v%~約2.5w/v%、より好ましくは約0.25w/v%~約1w/v%の濃度で存在することができる。また、本明細書において、エタボン酸ロテプレドノール、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の濃度は、特に明記しない限り、エタボン酸ロテプレドノール(フリー体)に換算された濃度である。
【0068】
本開示の一実施形態において、ブロムフェナク、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.01w/v%~約2w/v%、好ましくは約0.01w/v%~約1w/v%、より好ましくは約0.1w/v%~約0.5w/v%の濃度で存在することができる。また、本明細書において、ブロムフェナク、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の濃度は、特に明記しない限り、ブロムフェナクナトリウム1.5水和物に換算された濃度である。
【0069】
本開示の一実施形態において、フルオロメトロン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、本開示の水性懸濁液剤中において、約0.01w/v%~約2w/v%、好ましくは約0.01w/v%~約1w/v%、より好ましくは約0.1w/v%~約0.5w/v%の濃度で存在することができる。また、本明細書において、フルオロメトロン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の濃度は、特に明記しない限り、フルオロメトロン(フリー体)に換算された濃度である。
【0070】
本開示の一実施形態において、本開示の水性懸濁液剤は、第1成分と第2成分に加えて、任意の追加の有効成分を含むことができる。
【0071】
(再分散性)
(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、水に対する溶解性が低いため、非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤または水溶性高分子等の分散剤の非存在下では、粒子が水面上に浮遊して、水性懸濁液の調製が不可能である。加えて、非イオン界面活性剤以外の分散剤を用いる場合には、実質的に薬学的に許容される濃度を超える濃度の分散剤を配合する必要があるため、水性懸濁液剤中には、非イオン界面活性剤の配合が不可欠である。本開示により、分散剤として非イオン界面活性剤が存在する状態において、任意の量のジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を配合することによって、再分散性が向上している水性懸濁液剤を提供することができる。
【0072】
本開示の一実施形態において、(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に、ジクアホソル、シクロスポリン、ヒアルロン酸、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナク、フルオロメトロンおよびそれら薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を配合することで、再分散性が向上している水性懸濁液剤を提供することができる。
【0073】
転倒操作での測定は、何らかの障害や症状により手の力が弱くなり、振盪による再分散が困難な患者が利用する場合の評価を再現していると言えることから、これらの患者や高齢者の利用時の再分散性を評価しているともいえる。
【0074】
一実施形態において、前述する再分散に要する転倒操作の回数は、通常約44回以下、好ましくは約40回以下、より好ましくは約35回以下、特に好ましくは約30回以下、さらに好ましくは約25回以下、最も好ましくは約20回以下となった場合に再分散性が向上していると判断することができる。
【0075】
一実施形態において、再分散性は、任意の手段で評価することができ、例えば、本開示の水性懸濁液を容器に充填させ、その容器を任意の速度および/または任意の振盪幅での振盪操作、または転倒操作をすることによって懸濁粒子が再分散するまでの回数を計測することで評価することもできる。
【0076】
一実施形態において、本開示の水性懸濁液中の(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の平均粒子径(D50)は、特に限られるものではないが、通常約0.1μm~約50μm、好ましくは約0.5μm~約10μm、特に好ましくは約1μm~約10μm、さらに好ましくは約1μm~約5μmとすることができる。平均粒子径をこのような範囲とすることで、再分散性を向上させることができる。
【0077】
一実施形態において、本開示の水性懸濁液中の(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-(7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は結晶形として用いることができ、結晶形は、再分散性に影響しなければ、特に制限されない。例えば、本開示においては、国際公開第2018/221543号パンフレット、日本特許第6230743号等に開示される(E)-2-(7-トリフルオロメチルクロマン-4-イリデン)-N-((7R)-7-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドのI型結晶、II型結晶、III型結晶またはこれらの混合物を用いることができる。好ましくは該I型結晶が用いられる。
【0078】
(剤形)
本開示の一実施形態において、水性懸濁液剤は、眼科用懸濁液剤であり、眼注射液、点眼剤または眼灌流液として提供され得る。例えば、眼科用懸濁液剤は、水性の溶媒(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)に有効成分を懸濁させた懸濁液の形態、或いは溶解させた液剤の形態で提供され得る。
【0079】
本開示の一実施形態において、水性懸濁液剤は、ドライアイを治療するための点眼剤であり得る。ドライアイは眼の不快感などの自覚症状を伴う疾患であり、長期かつ定期的な治療が必要とされる。加えて、ドライアイ治療薬は一般的に投与回数が多く設定されるため、患者のアドヒアランスや利便性が良い製剤が強く求められる。さらに、再分散性が悪い懸濁液の場合、懸濁粒子が均一に分散されず、所望の有効成分が投与されず、薬理効果が十分に発揮されないことも懸念される。これらの観点からも、ドライアイを治療するための点眼剤において、再分散性は大きな課題であり、本開示の優れた再分散性を有する水性懸濁液剤の提供は、高い価値を有する。
【0080】
本開示の水性懸濁液剤は、当業者によって決定される任意の適切な経路によって投与することができ、特に限定されるものではないが、眼注射、局所適用(眼への適用を含む)、点眼、静脈注射、点滴、経口、非経口、経皮等から選択される投与経路による投与に適するように製剤化され得る。
【0081】
(添加物および/または賦形剤)
本開示の水性懸濁液剤は、当該技術分野で公知の任意の薬学的に許容される添加物および/または賦形剤を含んでよい。添加剤としては、粘稠剤、安定化剤、pH調節剤、緩衝剤、および保存剤(防腐剤)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
粘稠剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。再分散性の観点から、セルロース系高分子が好ましく、メチルセルロースが特に好ましい。
【0083】
安定化剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、モノエタノールアミン、シクロデキストリン、デキストラン、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸塩等が挙げられ、その含有量は、組成物全量に対して約0.001w/v%~約1w/v%が好ましい。
【0084】
pH調節剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩酸、酢酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン-アミノカプロン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ等が挙げられ、その含有量は、水性懸濁液剤全量に対して例えば0~約20w/v%が挙げられる。
【0085】
本開示の一実施形態において、本開示の水性懸濁液は必要に応じて上記のようなpH調節剤を混合することにより、pHを通常約4~約8、好ましくは約5.0~約8.0、より好ましくは約6.0~約8.0、特に好ましくは約7.0~約8.0、さらに好ましくは約7.2~約7.8とすることができる。
【0086】
本開示の水性懸濁液剤に用いられる緩衝剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アミノ酸緩衝剤等が挙げられるが、水性懸濁液剤の再分散性または安定性の観点から、ホウ酸緩衝剤、またはリン酸緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤が特に好ましい。
【0087】
緩衝剤の濃度としては、水性液剤に所望の緩衝能を付与できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば約0.1w/v%~約10w/v%が挙げられ、再分散性或いは安定性を向上されるという観点から好ましくは約1w/v%~約5w/v%、より好ましくは約1w/v%~約3w/v%が挙げられる。
【0088】
ホウ酸緩衝剤としては、薬学的に許容されるものであれば、特に限定されないが、例えば、ホウ酸および/またはその塩が挙げられる。ホウ酸としては、薬学的に許容されるのであれば、特に限定されるものではないが、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸等が挙げられる。ホウ酸の塩としては、薬学的に許容されるのであれば、特に限定されるものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン等の有機アミン塩等が挙げられる。ホウ酸またはその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ホウ酸緩衝剤の好適な一態様として、ホウ酸とホウ砂を組み合わせが挙げられる。
【0089】
ホウ酸とホウ砂を組み合わせて用いる場合のホウ酸とホウ砂の比率としては、特に制限されないが、例えば、ホウ酸100質量部当たり、ホウ砂が10~300質量部、好ましく10~250質量部、より好ましくは30~100質量部、特に好ましくは40~60質量部が挙げられる。
【0090】
リン酸緩衝剤としては、具体的には、リン酸および/またはその塩が挙げられる。リン酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸水素二アルカリ金属塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸二水素アルカリ金属塩;リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等のリン酸三アルカリ金属塩等が挙げられる。また、リン酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよく、例えば、リン酸水素二ナトリウムの場合であれば十二水和物の形態、リン酸二水素ナトリウムの場合であれば二水和物の形態等であってもよい。リン酸緩衝剤として、リン酸およびその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。リン酸およびその塩の中でも、好ましくはリン酸塩、より好ましくはリン酸水素二アルカリ金属塩およびリン酸二水素アルカリ金属塩の少なくとも1種、特に好ましくはリン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムの少なくとも1種が挙げられる。
【0091】
トリス緩衝剤としては、トリス(別名:トリスヒドロキシメチルアミノメタン)および/またはその塩が挙げられる。トリスの塩としては、薬学的に許容されるものであれば、特に限定されないが、例えば、酢酸塩、塩酸塩、マレイン酸塩、スルホン酸塩等の塩が挙げられる。トリス酸緩衝剤は、トリスおよびその塩の中から1種を選択して単独で使用しても良く、また2種以上を組み合わせて使用しても良い。また他の実施形態において、トリス緩衝剤としては、具体的には、トロメタモールおよび/またはその塩が挙げられる。トロメタモールの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、スルホン酸塩等の無機酸塩が挙げられる。トリス酸緩衝剤として、トロメタモールおよびその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。トロメタモールおよびその塩の中でも、好ましくはトロメタモールが挙げられる。
【0092】
クエン酸緩衝剤としては、具体的には、クエン酸および/またはその塩が挙げられる。クエン酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、クエン酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。クエン酸緩衝剤として、クエン酸およびその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。クエン酸およびその塩の中でも、好ましくはクエン酸の塩、より好ましくはクエン酸のアルカリ金属塩、特に好ましくはクエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0093】
酒石酸緩衝剤としては、具体的には、酒石酸および/またはその塩が挙げられる。酒石酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、酒石酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。酒石酸緩衝剤として、酒石酸およびその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
酢酸緩衝剤としては、具体的には、酢酸および/またはその塩が挙げられる。酢酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。また、酢酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。酢酸緩衝剤として、酢酸およびその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
アミノ酸緩衝剤としては、具体的には、酸性アミノ酸および/またはそれらの塩が挙げられる。酸性アミノ酸としては、具体的には、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。酸性アミノ酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。アミノ酸緩衝剤として、酸性アミノ酸およびその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0096】
保存剤としては、薬学的に許容されるものであれば、特に限定されないが、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロロブタノール、ポリクォード、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン等が挙げられ、その含有量はその種類により適宜変えることができるが、水性懸濁液剤全量に対して例えば約0.0001w/v%~約0.2w/v%が挙げられる。
【0097】
点眼剤を調製する場合、例えば、所望の上記成分を滅菌精製水、生理食塩水、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液または酢酸緩衝液等。)等の水性溶剤、または綿実油、大豆油、ゴマ油、落花生油等の植物油等の非水性溶剤に溶解または懸濁させ、所定の浸透圧に調整し、濾過滅菌等の滅菌処理を施すことにより行うことができる。
【0098】
(容器)
本開示の水性懸濁液剤を収容する容器としては、特に限定されず、例えば、ガラス容器またはプラスチック容器等が挙げられる。プラスチック容器としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンまたはポリプロピレン、それらの混合物、それらとそれら以外の混合物などの任意の材料で形成され得る。本開示において用いられる容器は、医療分野で用いられるものであってもよく、それ以外であってもよい。一つの実施形態では、日本国における「点眼剤用プラスチック容器の規格」またはその他の等価の規格に合致しうる任意の材質で形成されることができる。
【0099】
使用される容器の形状は、任意のものであってよく、通常、点眼用の形状であれば任意の形状を用いることができる。
【0100】
ある実施形態において、本開示の水性懸濁液剤は医療分野で常用される任意の点眼容器に充填することができ、例えば、ポリエチレン(好ましくは低密度ポリエチレン)またはポリプロピレン、好ましくは無色ポリプロピレン容器に充填することができる。
【0101】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M. A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis ,M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、Gait, M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F.(1991).Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M. et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T.(I996).Bioconjugate Techniques, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997等に記載されている。これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0102】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願等の参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0103】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したものではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0104】
(試験例1:再分散性の評価)
懸濁液の調製
表1~6に示す組成に従って、基剤溶液を調製し、そこに化合物(1)を加えて、撹拌分散させて、懸濁液を得た。チロキサポールはAMRI Rensselaer社製(Curia Global,Inc.)、ポリソルベート80は日油製、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40(MYS-40)は日本サーファクタント工業製、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60は日本サーファクタント工業製のものを使用した。化合物(1)は、前記のI型結晶を使用した。ジクアホソルナトリウムはKyоngbо社製、シクロスポリンは東京化成工業製、ヒアルロン酸ナトリウムは生化学工業製、エタボン酸ロテプレドノールはJinan Chenghui Shuangda Chemical社製、ブロムフェナクナトリウムはレジス社製、または、フルオロメトロンはシコール社製を使用した。
【0105】
容器への収容
調製した懸濁液をスターラー撹拌しながら5mLずつ採取し、点眼容器に充填した。点眼容器はポリエチレンからなる無色容器(ガチフロ点眼液0.3%(製造販売元:千寿製薬株式会社)に使用されている容器)を採用した。
【0106】
再分散性評価(転倒操作)
点眼容器に充填された懸濁液中の懸濁粒子が完全に沈降していることを確認した。転倒操作(容器を手に持って上下を反転させる動作)を行い、点眼容器の底面および壁面から沈殿が消失し、再分散するまで繰り返した。再分散するまでに要した転倒操作数をカウントした。容器を1秒/回の速度で、上下に180°反転した後に再度180°反転して正立状態とする操作を転倒回数1回とした。試験は1処方あたり3~6検体で行い、平均した転倒操作回数を算出した。
【0107】
結果
結果を表1~7に示す。化合物(1)を含む水性懸濁液剤は、ジクアホソルナトリウム、シクロスポリン、ヒアルロン酸ナトリウム、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナクナトリウム、またはフルオロメトロンをそれぞれ配合することにより、転倒操作回数を減少させ、良好な再分散性を示した。実施例1を振盪操作で評価した場合、振盪回数は10.0回であった。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
(製造例)
表8~表9に示す組成の水性懸濁液剤を調製することで、点眼剤を製造することができる。なお、化合物(1)および各添加剤の処方量は「g/100mL」として表記する。
【0116】
【表8】
【0117】
【表9】
【0118】
チロキサポール(曇点:90~100℃)はAMRI Rensselaer社製(Curia Global,Inc.)、メチルセルロースは、信越化学工業製メトローズSM-15、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は信越化学工業製60SH-4000、カルボキシメチルセルロース(CMC)は第一工業製薬製セロゲンPR-S、リフィテグラストは、Shanghai Sumway Pharmaceutical Technology社製を使用する。化合物(1)はI型結晶を使用する。
【0119】
各容器の仕様
各容器は、ボトル(無色PE、無色PPまたは褐色PP)、ノズル(PE)、およびキャップ(PP)で構成されている。各容器のボトルの胴部の外観、明度、色度、彩度、および各波長における透過率は、表10および図1に示す仕様のとおりである。また、各容器は製品ラベルとしてシュリンク包装されている。
【0120】
【表10】
【0121】
ボトル形状
ボトルの寸法は、約23m×約17mm×約50mmであり、樹脂重量は約3gである。その形状は、ソフティア(登録商標)点眼液0.02%(製造販売元:千寿製薬株式会社)のボトルと同様である。
【0122】
ボトル材質
ポリエチレンは、低密度ポリエチレンである。ポリプロピレンは、プロピレン成分/エチレン成分=50/50~99.9/0.1として構成されているプロピレン-エチレン共重合体であり、ソフティア(登録商標)点眼液0.02%(製造販売元:千寿製薬株式会社)のボトル材質と同様である。
【0123】
ボトル胴部の明度、彩度、および透過率の測定方法
ボトルの胴部から切り取った側面部(広い方の側面部,1.0cm×2.0~3.0cm)について、分光測色計(CM-5、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、明度(L値)および色度(a値、b値)を測定する。また、式:((a値)+(b値)1/2に従って、彩度(c値)を算出した。また、この側面部について、紫外可視分光光度計(「UV-2450型」、株式会社島津製作所製)を用いて、200~800nmの領域の光の透過率(%)を測定する。
【0124】
ボトルの滅菌方法
EB(電子線照射滅菌):点眼ボトルは電子線を10~60kGy照射により滅菌処理される。
EOG(エチレンオキサイドガス滅菌):点眼ボトルはエチレンオキサイド濃度400~700mg/L、温度40~50℃、相対湿度45~85%、処理時間3時間以上の条件で滅菌処理される。
VHP(過酸化水素ガス滅菌:Vaporous Hydrogen Peroxide):点眼ボトルは、3%VHP噴霧、温度20~50℃、相対湿度30~90%、処理時間約1時間の条件で滅菌処理される。
γ線(γ線滅菌):ボトルはγ線を20~60kGy照射により滅菌処理される。
【0125】
点眼剤の50Lスケールの製造法
30Lステンレス容器に精製水と所定量のホウ酸、ホウ砂、塩化ナトリウムおよび塩化亜鉛を投入して撹拌する。1Lステンレス容器で所定量のチロキサポール水溶液を調製し、この水溶液を30Lステンレス容器に投入する。さらに別の1Lステンレス容器にて所定量のメチルセルロースを熱水で分散(50~90℃)した後、冷却し、このメチルセルロース水溶液を30Lステンレス容器に投入する。30Lステンレス容器において、すべての添加剤が溶解したことを確認し、1.5倍濃度の基剤溶液となるように精製水を投入して重量メスアップを行う。この基剤溶液をろ過滅菌し、精製水(洗い込みを含む)で重量メスアップを行い、所定量の基剤溶液を調製する。この基材溶液に第1成分である化合物(1)及び第2成分(ジクアホソルナトリウム、シクロスポリン、ヒアルロン酸ナトリウム、エタボン酸ロテプレドノール、ブロムフェナクナトリウム、フルオロメトロン、レバミピド、オロダテロール塩酸塩、またはデルコシチニブ)を投入し、撹拌により分散させて、懸濁液を調製する。化合物(1)の液中分散を確認後、消泡のために懸濁液をゆるやかに撹拌する。その後、懸濁液を孔径75μmのフィルターにて粗ろ過を行い、懸濁液を撹拌しながらボトルに充填し、その後、ボトルにノズルとキャップを装着する。
【0126】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、日本国特許庁に出願された特願2022-156062号に対して優先権を主張するものであり、その内容はすべてが本明細書において援用される。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本開示は、医療、医薬品、ヘルスケア、生物学、生化学等の分野において利用可能である。
図1