IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社秤の特許一覧

特許7589396分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法
<>
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図1
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図2
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図3
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図4
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図5
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図6
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図7
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図8
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図9
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図10
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図11
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図12
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図13
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図14
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図15
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図16
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図17
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図18
  • 特許-分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0242 20230101AFI20241118BHJP
【FI】
G06Q30/0242
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024543524
(86)(22)【出願日】2024-05-03
(86)【国際出願番号】 JP2024016919
【審査請求日】2024-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523059590
【氏名又は名称】株式会社秤
(74)【代理人】
【識別番号】100209886
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 寛
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴史
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-013451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムにおける、該サーバ装置において実行可能な分析プログラムであって、
前記サーバ装置を、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段
として機能させる、分析プログラム。
【請求項2】
前記調査結果に、回答者の属性、および平均購入単価を含み、
前記サーバ装置をさらに、
前記所定の原因の接触者数、前記第二効果、前記平均購入単価、及び所定の消費者購買の確率モデルから推定した平均購入回数を用いて、前記原因各々に基づいて前記属性毎の売上貢献の度合いを推定する売上貢献推定機能
として機能させる、請求項1に記載の分析プログラム。
【請求項3】
前記所定の原因が、施策に関する内容と、要因に関する内容とを含み、
前記売上貢献推定機能が、施策の内容ごとに推定した第二効果と、要因の内容ごとに推定した第二効果とを用いて前記属性毎の売上貢献の度合いを推定する、請求項2に記載の分析プログラム。
【請求項4】
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムであって、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段と、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段と
を備える、分析システム。
【請求項5】
コンピュータ装置を
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段
として機能させる分析プログラム。
【請求項6】
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段と、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段と
を備える、コンピュータ装置。
【請求項7】
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムにおける、該サーバ装置において実行する分析方法であって、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定するステップと、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定するステップと
を有する分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析プログラム、分析システム、コンピュータ装置、及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、売上データ、及びテレビCMなどの広告の投下量に関する時系列データを用いて広告などの施策がどれだけ売上に影響を与えたのかを推定できるように、マーケティング施策のデータを統計的に分析してモデル化する手法として、マーケティング・ミックス・モデリング(以下、MMMともいう)という手法がある。発明者は、MMMを用いたコンサルティング業務を生業としている。
【0003】
また、実世界のデータから因果を読む観察データ,とくに再現不可能な現実データから因果関係を読み取る方法もある(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】岩波データサイエンス刊行委員会編「岩波データサイエンス Vol.3」、2016年6月発刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでの時系列データを元に分析する手法では、消費者の行動メカニズムを把握できたとは言えず、広告等のマーケティング施策それぞれが売上を増やす効果の推定に不十分であった。そこで、消費者調査データを用いて、テレビCMなどの施策によってブランドの店舗に行ったことで売上が増えた等、消費者の行動メカニズムを把握しつつ、効果を推定できる方法を発明者は考案した。
【0006】
本開示の少なくとも1つの実施の形態の目的は、消費者調査を活用してマーケティングの成果を売上の増分として、より正しく推定可能な分析プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
非限定的な観点によると、本開示に係る分析プログラムは、端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムにおける、該サーバ装置において実行可能な分析プログラムであって、前記サーバ装置を、消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段
として機能させる、分析プログラムである。
【0008】
非限定的な観点によると、本開示に係る分析システムは、端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムであって、消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段と、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段とを備える、分析システムである。
【0009】
非限定的な観点によると、本開示に係る分析プログラムは、コンピュータ装置を消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段として機能させる分析プログラムである。
【0010】
非限定的な観点によると、本開示に係る分析方法は、消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定するステップと、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定するステップとを有する分析方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の各実施形態により1または2以上の不足が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、サーバ装置の構成を示すブロック図である。
図2】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、プログラム実行処理のフローチャートである。
図3】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、分析システムの構成を示すブロック図である。
図4】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、分析システムの構成を示すブロック図である。
図5】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、調査データの例を説明する図である。
図6】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、調査データの例を説明する図である。
図7】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、調査データの例を説明する図である。
図8】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、調査データの例を説明する図である。
図9】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、調査データの例を説明する図である。
図10】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、調査データの例を説明する図である。
図11】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、実行処理のフローチャートである。
図12】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、消費者調査データから導出した属性別の接触率をクロス集計した例を説明する図である。
図13】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、消費者調査データから導出した属性別の単リーチ率を集計した例を説明する図である。
図14】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、複数の観点から年代別の接触率を集計した図である。
図15】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、20代女性の接触率に関するデータの補正を説明するための図である。
図16】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、重複調整用係数の算出方法を説明するための図である。
図17】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、施策ごとの売上貢献金額の算出結果の一例を示す図である。
図18】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、要因ごとの売上貢献金額の算出結果の一例を示す図である。
図19】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、施策及び要因ごとの売上貢献金額の算出結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態の例について説明する。以下、効果に関する記載は、本開示の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。また、ある実施の形態の例として説明した内容については、他の実施の形態においてその説明を省略している場合がある。さらに、各実施の形態の特徴部分に関係しない動作や処理について、その内容の記載を省略している場合がある。以下で説明するフローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
【0014】
[第一の実施の形態]
以下では、第一の実施の形態として、端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムを例示して説明する。端末装置、及び/又はサーバ装置は、互いに通信により接続可能であり得る。サーバ装置及び/又は端末装置は、分散型台帳ネットワークと接続可能であってもよい。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、サーバ装置の構成を示すブロック図である。サーバ装置10は、第一効果推定部101、及び第二効果推定部102を少なくとも備え得る。
【0016】
第一効果推定部101は、消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する機能を有する。第二効果推定部102は、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する機能を有する。
【0017】
図2は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、プログラム実行処理のフローチャートである。サーバ装置10は、消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する(ステップS1)。次に、サーバ装置10は、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定し(ステップS2)、終了する。
【0018】
第一の実施の形態の一側面として、消費者調査を活用してマーケティングの成果を売上の増分として、より正しく推定可能な分析プログラムを提供することができる。
【0019】
第一の実施の形態において、「端末装置」とは、例えば、据置型ゲーム機、携帯型ゲーム機、ウェアラブル型端末、デスクトップ型又はノート型パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、又は、PDA等をいい、表示画面にタッチパネルセンサを備えるスマートフォン等の携帯型端末であってもよい。「サーバ装置」とは、例えば、端末装置からの要求に応じて処理を実行する装置をいう。
【0020】
第一の実施の形態において、「原因」とは、例えば、消費者の消費活動を活発にする効果を奏する要因であって、より具体的には、テレビCMを見た、ネット配信CMを見た、ブランドの店舗に行った、アプリのプッシュ通知を見た等消費者調査の質問になり得る項目が挙げられる。
【0021】
第一の実施の形態において、「のべ接触者数」とは、例えば、前記原因それぞれに接したと回答した人数をいう。「ユニーク接触者数」とは、例えば、原因のいずれかに接したと回答した人数をいう。すなわち、消費者調査のアンケート全回答数のうち、原因のいずれにも接していないと回答した人数を差し引いた数をいう。
【0022】
[第二の実施の形態]
以下では、第二の実施の形態として、端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムを例示して説明する。端末装置、及び/又はサーバ装置は、互いに通信により接続可能であり得る。サーバ装置及び/又は端末装置は、分散型台帳ネットワークと接続可能であってもよい。
【0023】
[分析システム]
図3は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、分析システムの構成を示すブロック図である。図示するように、分析システム(システム)1は、サーバ装置10と、通信ネットワーク20と、複数のユーザがそれぞれ使用する端末装置30(30A、30B、・・・、30N:Nは任意の文字)とを含む。
【0024】
分析システム1の構成はこれに限定されず、例えば、サーバ装置10が複数のサーバ装置により構成されていてもよく、クラウドコンピューティング技術を利用した仮想的なサーバ装置により構成されていてもよい。また、通信ネットワーク20が分散台帳ネットワークであってもよい。
【0025】
サーバ装置10と端末装置30とはそれぞれ通信可能に接続されている。端末装置30とサーバ装置10とは常時接続していなくてもよく、必要に応じて、接続が可能であればよい。
【0026】
[サーバ装置]
サーバ装置10は、一例として、制御部、RAM、ストレージ部及び通信インタフェースを少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。制御部は内部タイマーを備え得る。また、通信インタフェースにより、外部のサーバと同期し得る。これにより現実の時刻を取得し得る。
【0027】
[通信ネットワーク]
通信ネットワーク20は、例えば、インターネットやLANであってもよく、接続された装置間で通信が可能であればよい。
【0028】
[端末装置]
端末装置30は、一例として、制御部、RAM、ストレージ部、サウンド処理部、グラフィックス処理部、通信インタフェース、インタフェース部を備え、それぞれ内部バスにより接続されている。グラフィックス処理部は表示部に接続されている。表示部は、表示画面と、表示部に対する、ユーザによる接触により入力を受け付けるタッチ入力部とを有し得る。
【0029】
タッチ入力部は、例えば、タッチパネルに用いられる抵抗膜方式、静電容量方式、超音波表面弾性波方式、光学方式、又は、電磁誘導方式等、いずれの方式を用いて、接触した位置を検知できるものであってもよく、ユーザのタッチ操作により操作を認識できれば方式は問わない。タッチ入力部の上面を指やスタイラス等により押圧や移動等の操作をした場合に、指等の位置を検知可能なデバイスである。
【0030】
インタフェース部には外部メモリ(例えば、SDカード等)が接続され得る。外部メモリから読み込まれたデータはRAMにロードされ、制御部により演算処理が実行される。通信インタフェースは無線又は有線により通信ネットワークに接続が可能であり、通信ネットワークを介してデータを受信することが可能である。通信インタフェースを介して受信したデータは、外部メモリから読み込まれたデータと同様に、RAMにロードされ、制御部により演算処理が行われる。
【0031】
端末装置30は、近接センサ、赤外線センサ、ジャイロセンサ、又は、加速度センサ等のセンサを備えるものであってもよい。また、端末装置30は、レンズを有し、レンズを介して撮像する撮像部を備えるものであってもよい。さらに、端末装置30は、身体に装着可能(ウェアラブル)な端末装置であってもよい。
【0032】
[機能説明]
第二の実施の形態における分析システム1が備える機能について説明する。図4は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、分析システムの構成を示すブロック図である。
【0033】
分析システム1は、接触者推計部201、第一効果推定部202、第二効果推定部203、及び売上貢献推定部204を備え得る。
【0034】
接触者推計部201は、消費者調査の調査結果から所定の原因に接触した接触者数を推計する機能を有する。第一効果推定部202は、消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する機能を有する。
【0035】
第二効果推定部203は、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する機能を有する。売上貢献推定部204は、前記所定の原因の接触者数、前記第二効果、前記平均購入単価、及び所定の消費者購買の確率モデルから推定した平均購入回数を用いて、前記原因各々に基づいて前記属性毎の売上貢献の度合いを推定する機能を有する。
【0036】
[消費者調査データ]
図5から図10は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、調査データの例を説明する図である。消費者にアンケート形式で回答してもらったデータを解析可能な件数分収集する。
【0037】
消費者調査データには、図5に示すブランドに対する好意度、図6に示すブランドへの接触時期、図7に示すブランドに対する受動的な接触度合い、図8に示すブランドへの能動的な接触度合い、図9に示す回答者のメディアへの接触時間、図10に示すブランドに対する今後の利用意向を含むことが好ましい。
【0038】
また、消費者調査データは、図5に示すように、「知らない」と回答したブランドに関しては、以降の設問の図6図10のブランドとして無効な回答とするように制御してもよい。
【0039】
消費者調査の質問には、図7に示すように、消費者目線ではブランドに対する受動的な態度に対応する質問と、図8に示すように、ブランドに対する能動的な態度に対応する質問とを含めることが好ましい。
【0040】
[実行処理]
図11は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、実行処理のフローチャートである。サーバ装置10は、予め実施された消費者調査の結果に関するデータを読み込んでおくことが好ましい。また、前記消費者調査の調査結果に関するデータには、回答者の属性、および、当該商品を購入たことのある場合には平均購入単価に関する情報が含まれていることが好ましい。
【0041】
消費者調査データは、回答されたデータをそのまま読み込んでもよいし、予め編集したデータを読み込んでもよい。本開示の効果を奏する内容であれば、特に形態は問わない。
【0042】
以下、20代女性約616万人に行った、外食チェーンに関するテレビCMに関する回答を用いて、詳述して説明する。
【0043】
分析システム1は、調査結果から所定の原因に接触した接触者数を推計する(ステップS21)。検証した例では、20代女性の接触率は約59%であったことから、約363万人が接触したものと推計する。
【0044】
次に、サーバ装置10は、消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する(ステップS22)。
【0045】
[第一効果推定処理]
第一効果の推定について説明する。図12は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、消費者調査データから導出した属性別の接触率をクロス集計した例を説明する図である。図12の「施策」として示したデータは、図7に示した質問に対する回答を、図12の「要因」として示したデータは、図8に示した質問に対する回答をそれぞれクロス集計したものである。
【0046】
次に、「単リーチ率」を集計する。単リーチ率とは、施策と要因ごとにそれぞれ、1種類だけ接触していたと回答した割合である。図13は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、消費者調査データから導出した属性別の単リーチ率を集計した例を説明する図である。
【0047】
次に、因果推論を用いて、それぞれの原因に関する浸透率の増分(リフト率)を導出する。例えばテレビCMを見た人と見ていない人の単純比較では、セレクション・バイアスが発生するため、因果推論を用いてバイアスを調整するためである。因果推論を用いる方法として、傾向スコア分析がある。傾向スコア分析に関しては、本開示の内容の本質とは異なるため、詳細な説明は割愛する。
【0048】
本開示のモデルでは予測能力よりも、効果の推定にバイアスをもたらす共変量が2群でバランスが取れているかを重要視した。より具体的には、年代性別ごとに分析を行う際のサンプルサイズが少なくなると(40個が目安)2群のバランスが不安定になってしまうため、サンプルサイズが40個以下の場合は、施策または要因の平均効果を代入する処理を行う。
【0049】
本開示では、ATT(Average Treatment effect on the Treated)により推計した値を浸透率の増分(リフト率)とした。ATTは、傾向スコア分析における共変量を用いて、各標本の傾向スコアを算出し、ウェイトをかけて集計するIPTW推定量のウェイト値である。共変量はインターネット調査の基本属性として得ることできる子供の有無や既婚、居住形態などのデータと、調査回答から得られるブランドへの好意度(図5)、メディア接触時間(図9)、利用意向(図10)などを用いる。好意度や利用意向は原因と結果の中間的な役割となる中間変数となるものは除外する。本開示の具体的な例では、接触者約363万人のうち約4.22%がテレビCMによって利用率が増加したと推定できた。
【0050】
図11の説明に戻る。分析システム1は、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する(ステップS23)。
【0051】
[第二効果推定処理]
まず、分析システム1は、消費者調査の回答データを用いて、「のべリーチ」「ユニークユーザリーチ」「のべ単リーチ」「重複ユニークユーザリーチ」を年代性別で集計する。
【0052】
図14は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、複数の観点から年代別の接触率を集計した図である。のべリーチは、各施策の接触率の合計を表す。ユニークユーザリーチは、施策のいずれかに接触した回答者の割合を表す。重複ユニークユーザリーチは、ユニークユーザリーチからのべ単リーチを引いた値を表す。
【0053】
各施策の効果(浸透率の増分等)が、例えば10%であった場合に、各施策による浸透率の重複リーチがない場合は、各年代性別の人口×リーチ(接触率)(%)×10%=浸透率リフト人数として計算できる。ところが、実際は重複の回答があるため、過大な推定結果となってしまい、マーケティングの成果を正しく評価できない。
【0054】
そこで、具体的な例として、20代女性のユニークユーザリーチ人数が464.7万人であった場合における、第一効果の値の補正方法を説明する。ユニークユーザリーチ数は、消費者調査データの回答データから導出した値である。図15は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、20代女性の接触率に関するデータの補正を説明するための図である。
【0055】
単リーチに関する浸透率の増加人数は、各年代性別の人口、リーチ(接触率)及びATTを乗算して、浸透リフト人数を推定することができる。重複分を考慮した浸透リフト人数は、ユニークユーザリーチの合計人数約464.7万人に合わせるように、のべ重複リーチ人数と重複調整用係数とを乗算して求める。
【0056】
重複調整用係数は、重複分ユニークユーザリーチから重複分のべリーチを年代性別ごとに除算した値である。図16は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、重複調整用係数の算出方法を説明するための図である。補正した接触人数は人口に単リーチ(%)を乗算した値と人口に重複リーチ(%)を乗算し、さらに重複用係数を乗算した値の合計によって求める。効果調整用係数は補正した接触人数を実際の接触人数で除算して求める。
【0057】
本開示のモデルでは、各メディアの単リーチはそのままとして。前述した方法で重複分のユニークユーザリーチ人数を求めるための「リーチ人数」×「効果調整用係数(補正した接触人数/実際の接触人数)」×「浸透リフト率(ATTで推定)」で施策ごとの利用者のリフト人数を推定することで、第二効果である補正後の浸透率を推定することができるものである。
【0058】
本開示の具体的な例として、図15及び図17を用いて説明する。図17は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、施策ごとの売上貢献金額の算出結果の一例を示す図である。図15に示すように、調査で聴取した施策は13種類で、いずれかに接触した回答者は年代全体の約75.3%であった。このとき、施策名「TVCM」における接触者をユニークな人数に戻す補正として、リフト率に「効果調整用係数(補正した接触人数/実際の接触人数)」である約84.4%を乗算することで、前記第一効果として推定した4.22%を約3.55%に補正することができる。この補正後の値が第二効果である。
【0059】
図11の説明に戻る。分析システム1は、前記所定の原因の接触者数、前記第二効果、前記平均購入単価、及び所定の消費者購買の確率モデルから推定した平均購入回数を用いて、前記原因各々に基づいて前記属性毎の売上貢献の度合いを推定し(ステップS24)、終了する。
【0060】
[売上貢献推定機能]
第二効果推定機能により、施策ごとの利用者のリフト人数を推定できた。次に、増加した回数と、1回利用の平均単価(平均購入単価、平均利用単価ともいう)とを求める。
【0061】
増加した回数は、自社で得られる購買データを用いることが好ましいが、自社以外のブランドを対象とする場合は消費者調査を元に消費者購買の確率モデルを用いて導出することが好ましい。消費者購買の確率モデルとして、例えば、図6に示したような、調査対象者が最後に購入した時期を聞いたリーセンシーデータから分析を行う「ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデル」を用いることができる。これらのモデルはすでに研究されており、本開示において使用する確率モデルは既存の確率モデルで足りるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0062】
次に、1回利用の平均単価を求める。これは消費者調査の回答データから集計することが可能である。
【0063】
本開示における売上貢献とは、推定した施策ごとの利用者のリフト人数と、増加回数と、調査から集計した1回利用の平均単価を乗算して得られた、施策ごとのリフト金額をいう。
【0064】
図18は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、要因ごとの売上貢献金額の算出結果の一例を示す図である。本開示のモデルでは、施策で分析した内容(図17)と要因で分析した内容(図18)とをそれぞれ組み合わせて、施策→要因→売上(浸透率増加×回数×単価)の効果を推定することができるものであってもよい。
【0065】
図19は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、施策をテレビCMとしてそれぞれの要因を介した売上貢献金額の算出結果の一例を示す図である。図17のモデル(施策→売上)で直接的に推定したテレビCMによるリフト金額は約5.82億円であった。一方、図19に示した本開示のモデルは、施策(テレビCM)→要因→売上でのリフト金額合計は約12.73億円であり、図17のリフト金額とは差異がある。直接的に推定したモデルと、要因を介したアシストから推定したモデルとで一致しないこともあり得る。
【0066】
施策→要因→売上の分析を行うことで、施策がどのような要因を介して売上に寄与したか詳細に分析することでコミュニケーションの構造を把握することができる。
【0067】
第二の実施の形態の一側面として、マーケティングの成果をより正しく推定可能な分析プログラムを提供することができる。
【0068】
第二の実施の形態における「端末装置」、「サーバ装置」、「原因」、「のべ接触者数」、及び「ユニーク接触者数」は、第一の形態に記載した内容を必要な範囲で採用することができる。
【0069】
第二の実施の形態において「平均購入単価」とは、例えば、商品又はサービスの取得に要した総額を保有数量又は提供回数で割った金額をいう。「売上貢献の度合い」とは、例えば、売上の増加に対して貢献した度合いをいい、数値又は割合で表すものであってもよい。「リーチ」とは例えば、一定期間に特定のサイトやブランドに接触した人の実数、またはそのネットユーザー全体に対する割合をいい、接触者数ともいう。「因果推論」とは、例えば、入力データと出力データから、原因とそれによって生じる結果との関係である因果関係を統計的に推定していく考え方をいう。「傾向スコア」とは、例えば、無作為割付が難しく様々な交絡が生じやすい観察研究において、共変量を調整して因果効果を推定するために用いられるバランス調整の統計手法をいう。
【0070】
本開示の特に第二の実施の形態においては、分析システム1がすべての機能を備えているが、これに限定されない。例えば、サーバ装置10、及び端末装置30に機能を振り分けて実現してもよい。
【0071】
上記各実施の形態に記載した内容は、それぞれ当業者が組み変えることにより、適宜設計し得るものである。
【0072】
[付記]
上で述べた実施の形態の説明は、下記の発明を、発明の属する分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるように記載した。
【0073】
[1]
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムにおける、該サーバ装置において実行可能な分析プログラムであって、
前記サーバ装置を、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段
として機能させる、分析プログラム。
【0074】
[2]
前記調査結果に、回答者の属性、および平均購入単価を含み、
前記サーバ装置をさらに、
前記所定の原因の接触者数、前記第二効果、前記平均購入単価、及び所定の消費者購買の確率モデルから推定した平均購入回数を用いて、前記原因各々に基づいて前記属性毎の売上貢献の度合いを推定する売上貢献推定機能
として機能させる、[1]に記載の分析プログラム。
【0075】
[3]
前記所定の原因が、施策に関する内容と、要因に関する内容とを含み、
前記売上貢献推定機能が、施策の内容ごとに推定した第二効果と、要因の内容ごとに推定した第二効果とを用いて前記属性毎の売上貢献の度合いを推定する、[2]に記載の分析プログラム。
【0076】
[4]
前記サーバ装置をさらに、
前記調査結果から所定の原因に接触した接触者数を推計する接触者数推計手段
として機能させる、[1]又は[2]に記載の分析プログラム。
【0077】
[5]
前記第一効果推定機能が、因果推論を用いて第一効果を推定する、[1]又は[2]に記載の分析プログラム。
【0078】
[6]
前記第一効果推定機能が、傾向スコアを用いて第一効果を推定する、[1]又は[2]に記載の分析プログラム。
【0079】
[7]
前記所定の消費者購買の確率モデルとして、ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデルを用いる、[1]又は[2]に記載の分析プログラム。
【0080】
[8]
[1]又は[2]に記載のプログラムをインストールしたサーバ装置。
【0081】
[9]
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムであって、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段と、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段と
を備える、分析システム。
【0082】
[10]
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムにおける、該端末装置において実行可能な分析プログラムであって、
前記端末装置を、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段
として機能させる、分析プログラム。
【0083】
[11]
[10]に記載のプログラムをインストールした端末装置。
【0084】
[12]
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムのサーバ装置において実行する分析方法あって、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定するステップと、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定するステップと
を有する分析方法。
【0085】
[13]
端末装置と、該端末装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備える分析システムにおいて実行する分析方法あって、
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定するステップと、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定するステップと
を有する分析方法。
【0086】
[14]
コンピュータ装置を
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定する第一効果推定手段、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する第二効果推定手段
として機能させる分析プログラム。
【0087】
[15]
[14]に記載の分析プログラムをインストールしたコンピュータ装置。
【0088】
[16]
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定するステップと、
前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定するステップと
を有する分析方法。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示の実施の形態の一つによれば、マーケティングの成果をより正しく推定可能な分析プログラムを提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 :分析システム
10 :サーバ装置
20 :通信ネットワーク
30 :端末装置
【要約】
マーケティングの成果をより正しく推定可能な分析プログラムを提供することを目的とする。
消費者調査の調査結果から所定の原因の効果である第一効果を推定し、前記調査結果から集計可能な、前記所定の原因各々に接したのべ接触者数と、前記所定の原因のいずれかに接したユニーク接触者数とを用いて前記第一効果を補正し、第二効果を推定する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19