(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】空気浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/18 20060101AFI20241119BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20241119BHJP
F24F 8/20 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
A61L9/18
F24F7/003
F24F8/20
(21)【出願番号】P 2020142495
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】524379181
【氏名又は名称】OH LABO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】杉原 修
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111569134(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0004063(US,A1)
【文献】特開2006-313065(JP,A)
【文献】特開2001-204805(JP,A)
【文献】特開2006-055227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/18
B01J 19/12
F24F 7/00 - 7/007
F24F 8/192
F24F 8/20
F24F 8/80
A61L 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物やウイルスを含む汚染物質を除去して清浄な空気を得るための空気浄化装置であって、
幅広の金属板を一次元方向に渦巻きして、両端部を開放した螺旋筒と、
前記螺旋筒の外側巻き端の遊端縁に沿って形成した空気取り入れ用の開口に外界から処理前空気を送り込む如く設置した送風機と、
前記螺旋筒の一方の端部を閉栓するフロントキャップと、
前記螺旋筒の他方の端部に設置して、前記螺旋筒を通過した浄化済空気を外界に放出するリアキャップと、
前記フロントキャップに、前記螺旋筒の内部にマイクロ波を放射するためのマイクロ波注入窓を有し、
前記螺旋筒と前記リアキャップの間に設置した金属板から成る有孔電磁シールド板と、前記マイクロ波注入窓に接続したマイクロ波発振器とを有し、
前記螺旋筒を通過する空気中に存在する微生物やウイルスを含む汚染物質を除去して清浄な空気を得るようにしたことを特徴とする空気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄技術にかかり、特に、空気中の細菌やウイルスを含む有害物質を除去して清浄な空気を得るための空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の細菌やウイルスを含む汚染物質を除去するための手段として、消毒・殺菌剤の使用以外に、ストリーマ放電(電撃ストリーマ)で発生させたイオンやラジカルを用いる方法が知られている(特許文献1)。また、高エネルギー電磁波の共鳴吸収で細菌やウイルスを破壊する方法も提案されている(特許文献2)。
【0003】
なお、病原体を媒介する生物(ハマダラ蚊、ツエツエバエなど)が飛翔している空気中に電磁波を照射し、その蛋白質を加熱破壊する方法も既知である(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005- 21319号公報
【文献】特開2000-245813号公報
【文献】特開2009-297008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストリーマ放電を用いる特許文献1に記載の空気浄化装置は、高電圧放電により高速電子を発生させて、空中に浮遊している細菌、ウイルスなどのDNA、RNAを破壊して除去するものである。高圧放電を行う電極対は空気の流通路に交差するような放電場を形成し、この放電領域を空気流が通過する際に当該空気中に含まれる最近、ウイルスなどを破壊するものである。
【0006】
また、特許文献2は細菌やウイルスの固有振動周波数に同調する電磁波を照射することで共鳴吸収させ、共鳴吸収容量を超過させることで当該細菌、ウイルスの組織を破壊させるものである。
【0007】
特許文献3は、2GHz~10GHz前後の電磁波(マイクロ波)を、人体に影響を与えない程度の出力で空気中に放射することで、当該空気中を飛翔しているハマダラ蚊やツエツエバイを加熱して死滅させる方法と装置を開示する。
【0008】
上記した先行技術の何れも環境に対する電磁波の漏れ、人体に対する電磁波の影響を防止する具体的な手段を開示しない。また、構成も複雑である。
本発明の目的は、屋内などの閉じられた空間で安全に使用できると共に、構成を簡素化した高エネルギー電磁波使用の空気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、下記に記載する代表的な構成としたことを特徴とする。なお、ここでは、本発明の構成を明確にするため、各構成に後述する実施例の図面で使用される参照符号を付すが、本発明はこの参照符号を付した構成に限定されるものではない。
【0010】
本発明は、微生物やウイルスを含む汚染物質を除去して清浄な空気を得るための空気浄化装置であって、本装置は次の構成を有する。すなわち、
【0011】
(1)幅広の金属板を一次元方向に渦巻きして、両端部を開放した螺旋筒1と、螺旋筒1の外側巻き端の遊端縁に沿って形成した空気取り入れ用の開口1aに外界から処理前空気7を送り込む如く設置した送風機3と、螺旋筒1の一方の端部1bを閉栓するフロントキャップ4と、螺旋筒1の他方の端部1cに設置して、螺旋筒を通過した浄化済空気8を外界に放出するリアキャップ6と、フロントキャップ4の底面等に、螺旋筒1の内部に対してマイクロ波を放射するためのマイクロ波注入窓41を有し、
螺旋筒1とリアキャップ6の間に設置した金属板からなる電磁シールド板2と、マイクロ波注入窓41に接続したマイクロ波発振器5を備えた構成とする。
これにより、螺旋筒1を通過する空気中に存在する微生物やウイルスを含む汚染物質をマイクロ波Eの誘電加熱により破壊してリアキャップから清浄な空気を得る。
【0012】
(2)金属の電磁シールド板2は螺旋筒を通過して到達するマイクロ波を螺旋筒内に反射させる効果と螺旋筒からマイクロ波が漏れ出ないように遮蔽する機能を有する。電磁シールド板2に有する開孔21の大きさをマイクロ波の波長未満で、かつ十分に小さいもの(具体的には、マイクロ波波長の半分程度)としたことで、空気を通過させると共にマイクロ波注入窓41から注入されるマイクロ波の螺旋筒1から漏洩を安全値以下に低減することができる。
【0013】
(3)電磁シールド板2に有する開孔21はマイクロ波が通過し難い大きさであれば形状を問わないが、通常は円形とする。そして、その直径をマイクロ波の波長の半分程度とする。マイクロ波の周波数を2.45GHzとした場合、波長は0.012mなので、その半分程度のとし、具体的には0.005~0.006m(5mm~6mm)とする。必要な空気流量の確保と他の電磁シールド手段を用いる場合は、この開孔21の直径を上記より拡大したものとすることができる。
【0014】
(4)マイクロ波発振器5をマグネトロン発振器とする。このマグネトロン発振器の発振素子として、マイクロ波調理器に使用されているように、広く普及し安全設計に定評のあるマグネトロンとすることで、低コスト化と安全対策を容易に得ることができる。なお、パワー半導体等の他の素子を用いることもできる。
【0015】
(5)螺旋筒1の内壁に、送風機3で送り込まれた空気を当該螺旋筒内での通過速度を遅らせるための偏流板11を備えることで、マイクロ波と空気中の微生物やウイルスを含む汚染物質との接触時間が大きくなり、清浄化効率が向上する。
【0016】
(6)偏流板1を金属板で構成し、マイクロ波発振器5から放射されるマイクロ波を螺旋筒1内で乱反射させることで、通過する空気流中の微生物やウイルスを含む汚染物質とマイクロ波の接触機会が更に増加し、清浄化効率がより向上する。
【0017】
本発明は、上記の構成および後述する実施の形態で開示する構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく種々の変形が可能である。
例えば、螺旋筒を通過させる空気流の流れ方向を後述する実施例とは逆にすること、単純には送風機3を実施例とは逆回転させるとか、リアキャップ6に空気吸込み用あるいは空気排出用のプロペラファンを設ける等の設計変更が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、事務所の室内、住居の屋内はもとより、画工等の教室・講堂や体育館などの被空調ボリュウムの大きい空間にも安全に使用可能な空気浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る螺旋筒を用いた空気浄化装置の実施例1を説明する分解斜視図
【
図2】
図1の螺旋筒を流通する空気の流を説明する模式図
【
図3】本発明に係る螺旋筒を用いた空気浄化装置の実施例2を説明する分解斜視図
【
図4】本発明に係る螺旋筒を用いた空気浄化装置の実施例3を説明する螺旋筒の要部を破断して示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る空気浄化装置の実施の形態を実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係る螺旋筒を用いた空気浄化装置の実施例1を説明する分解斜視図である。本実施例の空気浄化装置は、幅広の金属板(矩形を推奨)を一次元方向に渦巻きして、両端部を開放した螺旋筒1を備える。渦巻の間には空気が自由に流通する隙間を設ける。
螺旋筒1の外側巻き端の遊端縁に沿って空気取り入れ用の開口1aが形成されており、この開口に沿って(螺旋筒1の長手方向に沿って)送風機3が設置され、外界(本装置が設置された雰囲気)から空気(浄化処理前空気)7を送り込むように構成されている。本実施例では、送風機3にシロッコファンを用いている。
【0022】
螺旋筒1の一方の端部1bはフロントキャップ4で閉鎖されている。フロントキャップ4は略円盤状で、略筒状の螺旋筒1の一端(前端)1bに装着される。このフロントキャップ1の中央部分にはマイクロ波注入窓41が形成されており、マイクロ波発振器5としてのマグネトロン発信出力端(アンテナ)51を嵌入してマイクロ波を螺旋筒1に注入(放射)する様になっている。
【0023】
螺旋筒1の他方の端部(後端)1cは、螺旋筒1を通過した浄化済空気8を外界に放出するリアキャップ6が取り付けてある。リアキャップ6の内周には段差61が形成されており、螺旋筒1の内径に亘って閉栓する電磁シールド板2を取り付けてある。電磁シールド板2には多数の細孔21が形成されており、螺旋筒1の内部あら流出する空気を外部に通過させるようになっている。
【0024】
電磁シールド板2は金属板からなり、細孔21の大きさはマグネトロンから出力するマイクロ波の波長未満で、かつ十分に小さい孔とされている。この細孔21は円形とされている。その直径は、マイクロ波発振器5の発振波長を0.125m(周波数2.45GHz)とした場合には0.005~0.006m(5~6mm)とする。細孔21をあまり小さくすると、空気流の通過が大きく妨げられるので、マイクロ波の漏洩を安全値以下に低減することを考慮し、実用的にはこのサイズが適当である。
【0025】
なお、電磁シ-ルド板2はマイクロ波を乱反射させる効果も有し、螺旋筒内の空気中に含まれる最近やウイルス、その他の汚染物質とマイクロ波の接触量を増加させることができる。
【0026】
図2は、
図1の螺旋筒を流通する空気の流を説明する模式図であり、
図1の螺旋筒1を、その前端1b側から見た内部の空気流の様子を説明する概念図である。送風機(シロッコファン)3により最外筒に取り込まれた浄化処理前の空気7は、螺旋筒の螺旋壁を中心方向に、かつ軸方向(長手方向)に沿って螺旋状に回転しながら後端1cにから放出される。
この螺旋状に流過通る空気流に対して、マイクロ波Eが照射されることで、当該空気流に含まれている細菌、ウイルス、或いは他の汚染物質がマイクロ波Eの誘電加熱により破壊して清浄な空気を得ることができる。
【0027】
なお、本実施例では、マイクロ波発振器5をマグネトロン発振器とする。このマグネトロン発振器の発振素子として、マイクロ波調理器(所謂、電子レンジ)に使用されているマグネトロン、すなわち広く普及し安全設計に定評のあるマグネトロンとすることで、低コスト化と安全化を容易に得ることができる。
また、マグネトロンに限らず、同様のマイクロ波を生成する半導体素子などを使用する発振器の採用を妨げるものではない。
【実施例2】
【0028】
図3は、本発明に係る螺旋筒を用いた空気浄化装置の実施例2を説明する分解斜視図ある。
図1と同一符号を付した
図3の構成部分は同一部分に対応する。以下、本実施例が実施例1と異なる点について説明し、実施例1と共通部分の説明は必要最小限とする。
【0029】
螺旋筒1の後端1cに設置されるリアキャップ6は、その内部に空気流の方向を変更するための反射板62が設置され、側壁に開口63が開けられている。また、この開口63にはガイド9が設けてあり、螺旋筒から出て来る浄化済空気8を反射板62とガイド板9を用いて所望の方向に放流できるように構成されている。ガイド板9は設置姿勢が変更可能である。なお、電磁シールド板2は、図面表示の都合で螺旋筒1の外側に示してある。
【0030】
本実施例によれば、前記の実施例1の効果に加えて清浄化処理済の空気流を所望の方向に放流できるため、本装置の設置スペースに裕度が増す。狭い設置スペースにも対応できる。
【実施例3】
【0031】
図4は、本発明に係る螺旋筒を用いた空気浄化装置の実施例3を説明する螺旋筒の要部を破断して示す模式図である。本実施例は、螺旋筒1の内壁に、送風機3で送り込まれた空気を当該螺旋筒内での通過速度を遅らせるための偏流板11を備えたことを特徴とする。この偏流板11を設けることで、送風機3で吸入された未処理の空気流が螺旋筒1の内部に存在する時間を増加させることができる。この偏流板11は、実施例1、実施例2の何れの形式の装置にも適用できる。
【0032】
これにより、マイクロ波と空気中の微生物やウイルスを含む汚染物質との接触時間を大きくすることができ、清浄化効率が向上する。
【0033】
本実施例によっても、前記の各実施例の効果に加えて清浄化処理の効率化が達成できる。
【0034】
なお、上記で説明した各実施例の装置は、別途にプアスチックや金属で構成した化粧筐体(外箱)に収納することもできる。化粧筐体をファラデーケージとすればなお好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
小規模、大規模に関わらず、医療機関全般の建物の屋内全般、イベント会場などの閉鎖空間、カラオケ、レストラン、その他の遊興施設に本発明の空気浄化装置を導入することで、流行しているウイルスを撲滅する手段として有効である。
【符号の説明】
【0036】
1・・・螺旋筒
1a・・・開口部
1b・・・一方の端部(前端)
1c・・・他方の端部(後端)
11・・・偏流板
2・・・電磁シールド板
21・・・細孔
3・・・送風機
4・・・フロントキャップ
41・・・マイクロ波注入窓
5・・・電磁波発振器
51・・・アンテナ
6・・・リアキャップ
61・・・段部
61・・・反射板
62・・・空気放出口
63・・・開口
6a・・・空気放出口
7・・・処理前空気
8・・・浄化済空気
9・・・ガイド板