(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】異物除去装置、石膏系建築用面材製造装置、異物除去方法
(51)【国際特許分類】
B07B 4/08 20060101AFI20241119BHJP
B03B 5/46 20060101ALI20241119BHJP
B07B 13/08 20060101ALI20241119BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B07B4/08 B
B03B5/46
B07B13/08 Z
B09B5/00 L ZAB
(21)【出願番号】P 2023520882
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013255
(87)【国際公開番号】W WO2022239488
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2021081546
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】谷 浩一
【審査官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/171176(WO,A1)
【文献】特開平09-276800(JP,A)
【文献】特開平10-085714(JP,A)
【文献】特開昭62-110787(JP,A)
【文献】特開2006-150288(JP,A)
【文献】特開2020-065975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 5/46
B07B 4/08、13/08
B09B 1/00- 5/00
C04B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体中の異物を除去する異物除去装置であって、
前記粉粒体を前記粉粒体の供給口から排出口まで搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の搬送経路上の前記供給口と前記排出口との間に配置され、前記粉粒体中の前記異物を沈降させる異物沈降装置と、を有し、
前記異物沈降装置は、高さ方向の最も低い位置に配置された異物排出口と、前記異物排出口に向かって傾斜した底面とを有
し、
前記粉粒体が石膏を含む異物除去装置。
【請求項2】
前記異物沈降装置は、前記異物沈降装置内に供給された前記粉粒体を流動させる流動性付与装置を備える請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項3】
前記異物沈降装置は、前記異物を排出する異物排出装置を有し、
前記異物排出装置は前記異物排出口に配置されている請求項1または請求項2に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記異物排出口から排出された前記異物を含む前記粉粒体から、前記異物を分離する異物分離装置を備える請求項3に記載の異物除去装置。
【請求項5】
前記異物分離装置により前記異物を分離した前記粉粒体を前記搬送装置の搬送経路上に戻す循環装置を備える請求項4に記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記石膏が焼石膏を含む請求項
1から請求項5のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の異物除去装置を、石膏を含む原料の搬送経路上に備えた石膏系建築用面材製造装置。
【請求項8】
粉粒体中の異物を除去する異物除去方法であって、
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の異物除去装置を用いて、前記粉粒体中の前記異物を除去する異物除去工程を有する異物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去装置、石膏系建築用面材製造装置、異物除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、石膏ボードを粗破砕(粗粉砕)する破砕手段(粉砕手段)と、粗破砕(粗粉砕)した石膏ボードを石膏成分と、石膏成分と紙成分の両方が混入した破砕片(粉砕片)とに分離する一次選別手段と、前記一次選別手段で得られた石膏成分と紙成分の両方が混入した破砕片(粉砕片)を更に細かく粉砕するインパクトクラッシャと、前記インパクトクラッシャで粉砕した粉砕物を石膏成分と、紙成分と、石膏成分と紙成分の両方が混入した粉砕物とに分離する二次選別手段と、前記二次選別工程で得られた石膏成分と紙成分の両方が混入した粉砕物を石膏成分と紙成分とに分離する風力選別機とを備えていることを特徴とする石膏ボードの分別処理装置が開示されている。
【0003】
特許文献1にはさらに、無端ベルトの少なくとも一端に設けられたマグネットプーリからなる金属異物除去手段を備えることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リサイクルやリユースを目的として回収した資源や、原料中の異物を除去すること等を目的として、異物除去装置が従来から検討されてきた。
【0006】
上述のように、特許文献1には、風力選別機と、マグネットプーリからなる金属異物除去手段を備えた分別処理装置が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された分別処理装置によれば、紙等の非常に軽量な異物や、磁性を有する異物を除去できるのみであった。このため、特許文献1に開示された石膏ボードの分別処理装置では、非磁性である非鉄系の金属や、小石等の比重の大きい異物は、上記磁性を有する異物を除いて除去できなかった。
【0007】
上記従来技術の問題点に鑑み本発明の一側面では、比重の大きい異物を除去できる異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一形態によれば、粉粒体中の異物を除去する異物除去装置であって、
前記粉粒体を前記粉粒体の供給口から排出口まで搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の搬送経路上の前記供給口と前記排出口との間に配置され、前記粉粒体中の前記異物を沈降させる異物沈降装置と、を有し、
前記異物沈降装置は、高さ方向の最も低い位置に配置された異物排出口と、前記異物排出口に向かって傾斜した底面とを有する異物除去装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態によれば、比重の大きい異物を除去できる異物除去装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一態様に係る異物除去装置の説明図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様に係る異物除去装置の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[異物除去装置]
本実施形態の異物除去装置の一構成例について説明する。
【0012】
本実施形態の異物除去装置は、粉粒体中の異物を除去する異物除去装置であり、以下の搬送装置と、異物沈降装置とを有することができる。
【0013】
上記搬送装置は、粉粒体を粉粒体の供給口から排出口まで搬送できる。
【0014】
上記異物沈降装置は、搬送装置の搬送経路上の供給口と排出口との間に配置され、粉粒体中の異物を沈降させることができる。異物沈降装置は、高さ方向の最も低い位置に配置された異物排出口と、異物排出口に向かって傾斜した底面とを有することができる。
【0015】
図1、
図2を用いながら、本実施形態の異物除去装置の構成例について説明する。
図1は、本実施形態の異物除去装置10の、異物沈降装置13の異物排出口131を通り、粉粒体の搬送経路に沿った面での側面図となる。
図2は、本実施形態の異物除去装置の変形例の説明図であり、後述するようにエアボックス等を設ける場合の説明図になる。このため、
図2は必要な場合に用い、主に
図1を用いながら説明を行う。
【0016】
なお、
図1、
図2においては、本実施形態の異物除去装置が有することができる任意の部材も合わせて示しており、係る形態に限定されるものではない。また、
図1、
図2では処理を行う粉粒体は記載を省略している。
【0017】
図1、
図2中、X軸方向が搬送装置12による粉粒体の搬送方向、Y軸方向が搬送装置12の幅方向、Z軸方向が高さ方向になる。
【0018】
以下、本実施形態の異物除去装置が有する部材について説明する。
(1)搬送装置
本実施形態の異物除去装置10は、粉粒体を、供給口111から排出口112まで搬送する搬送装置12を有することができる。
【0019】
本実施形態の異物除去装置10の被処理物である上記粉粒体とは、微細な粒子からなる粉体、および粒径が粉体よりも大きな粒子からなる粒状体から選択された1種類以上を含むことができる。すなわち、粉粒体は、粒子の集合体であれば構成する粒子の粒径や、粒度分布、形状等に限定されず用いることができる。このため、粉粒体には、例えば石膏ボード等の各種建材の粉砕物や、鉱石等の粒子径の大きな粒子、さらには鉱石等の粉砕物である粒子径の小さな粒子等や、これらの混合物を含むこともできる。
【0020】
本実施形態の異物除去装置によれば、比重の大きな異物、例えば各種金属や小石等の被処理物である粉粒体を構成する材料のうち、相対的に比重の大きな異物を除去できる。なお、除去する異物について、磁性の有無は問わない。本実施形態の異物除去装置によれば、例えば非鉄系の金属等の非磁性の異物も除去できる。なお、非磁性の異物とは、磁力による吸着力が弱いか、該吸着力がない異物を意味し、非鉄系金属や、小石等を例示できる。
【0021】
本実施形態の異物除去装置には、係る比重の大きな、すなわち高比重の異物を除去することが求められる粉粒体であれば、適用できる。なお、比重の大きな異物を除去できるとは、該異物を完全に除去することのみを意味するものではなく、粉粒体中に含まれる相対的に比重の大きな異物の一部を除去し、その含有量を低減する場合も含む。
【0022】
上記粉粒体の種類は特に限定されないが、石膏は、天然資源であり、また近年では石膏ボード等として使用した後、回収して再利用される場合も多い。そして、天然資源の石膏、もしくは再利用した石膏いずれの場合でも比重の大きな異物を含むことが多く、該比重の大きな異物を除去することが求められていた。このため、粉粒体は石膏を含むことが好ましく、石膏であることがより好ましい。粉粒体が石膏を含む場合に、該石膏の種類は特に限定されず、例えば二水石膏、焼石膏(半水石膏)、無水石膏から選択された1種類以上とすることができる。ただし、焼石膏は石膏ボード等の原料に用いられること、および二水石膏や無水石膏に比べて流動性が良いことから、焼石膏について異物の低減、除去が求められることが多い。このため、粉粒体が石膏を含む場合、該石膏は、焼石膏を含むことが好ましい。なお、焼石膏は硫酸カルシウム・1/2水和物ともいい、水硬性を有する無機化合物である。
【0023】
搬送装置12は、後述する異物沈降装置13を通過する際に、該異物沈降装置13内に搬送している粉粒体を一旦供給し、該異物沈降装置13の上端部近傍にある沈降処理後の粉粒体を回収、搬送し、排出口112へ排出できる装置であればよい。このため、搬送装置12としては、例えばチェーンコンベアや、スクリューコンベアを用いることができる。
【0024】
なお、
図1では搬送装置12のケーシングを示しており、具体的な搬送手段は記載を省略している。
【0025】
図1において搬送装置12は、水平に配置した例、すなわちX軸と平行な例を示したが、係る形態に限定されず、傾斜していてもよい。すなわち、
図1中に示した水平面Pとの間に角度が形成されていてもよい。ただし、水平面Pとの間の角度は90度未満であることが好ましく、60度以下であることがより好ましい。水平面Pは、
図1中のX軸と平行な平面となる。
【0026】
搬送装置12は、異物を含む粉粒体が、異物沈降装置13の分離槽133内を通るように、特に分離槽133の上端部を通るように配置することが好ましい。
【0027】
上述のように分離槽133内を通るように搬送装置12を配置することで、搬送装置12が搬送している異物を含む粉粒体は、異物沈降装置13の上部を通過する際に、異物沈降装置13の入口13A近傍で一旦分離槽133内に落下し、分離槽133に供給される。その際、異物は、粉粒体よりも高比重であること、および分離槽133の底面が傾斜していることにより異物排出口131近傍に集められる。このため、分離槽133の上部側、特に出口13B近傍には異物の含有量が低減された粉粒体が配置されることになる。
【0028】
異物を含む粉粒体を搬送し、該粉粒体を一旦異物沈降装置13の分離槽133に落下させた搬送装置12は、異物沈降装置13の出口13B近傍にある粉粒体を回収し、排出口112へと搬送することになる。そして、上述のように分離槽133の出口13B近傍には、沈降処理により異物の含有量が低減された粉粒体が配置されているため、搬送装置12は、沈降処理後の異物の含有量が低減された粉粒体を回収、搬送できる。
(2)異物沈降装置
本実施形態の異物除去装置10は、異物沈降装置13を有することができ、異物沈降装置13は、搬送装置12の搬送経路上の、供給口111と排出口112との間に配置できる。
(2-1)異物沈降装置の構成について
(2-1-1)異物排出口、底面
異物沈降装置13は、高さ方向の最も低い位置に配置された異物排出口131を有することができる。また、異物沈降装置13は、異物排出口131に向かって傾斜した底面132A、132Bを有することができる。なお、高さ方向とは、
図1中のZ軸方向に当たる。
【0029】
図1に示すように、異物排出口131は、異物沈降装置13内で最も低い部分となるように設けることができ、該異物排出口131に向かって傾斜する底面132A、132Bを有することができる。係る異物排出口131と、底面132A、132Bとで囲まれた領域が、粉粒体中の異物を沈降させる分離槽133となる。
【0030】
分離槽133の形状は特に限定されないが、例えば
図1に示すように、高さ方向に沿った断面形状が、底面132A、132Bに囲まれた台形形状の部分と、異物排出口131の配管による四角形状の部分とにより、漏斗型の形状を有することができる。なお、分離槽133内の容積を十分に大きくするために、分離槽133は底面132A、132Bの上方に、さらにZ軸に沿った側壁を有することもできる。ただし、側壁を設ける場合、搬送装置12による粉粒体の搬送を阻害しないような形状、大きさとすることが好ましい。
【0031】
分離槽133の上面から見た場合の形状、すなわち
図1中の矢印Aに沿って見た上面形状は特に限定されず、例えば四角形等の多角形形状や、円や楕円等の円形形状とすることができる。
【0032】
底面132A、132Bの傾斜角、例えば図中に示した異物排出口131を通る水平面Pとの間に形成する角度θ132A、θ132Bは特に限定されず、例えば5度以上90度未満とすることが好ましく、7度以上60度以下とすることがより好ましい。底面132A、132Bの傾斜角を5度以上90度未満とすることで、分離槽133内での粉粒体の流動性を高めることができる。
【0033】
底面132Aの傾斜角である角度θ132Aと、底面132Bの傾斜角であるθ132Bとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
図1では、底面132A、132Bとして、傾斜角が均一な面とした例を示したが、係る形態に限定されず、異物排出口131に至る途中で傾斜角が変化してもよい。すなわち、底面132A、132Bは傾斜角の異なる複数の面で構成することもできる。
【0034】
異物排出口131は、上述のように高さ方向の最も低い位置に配置できる。異物排出口131を高さ方向の最も低い位置に設け、かつ分離槽133内で粉粒体を流動させることで、比重差により分離された高比重の異物が、異物排出口131に集まり、粉粒体から異物を分離できる。異物排出口131は、分離した異物を排出するための開口部であれば足りるが、分離した異物を貯めておけるように、一定の厚みを有する領域、例えば筒状形状配管等として構成することもできる。
【0035】
水平方向における異物沈降装置13内での異物排出口131の位置は特に限定されないが、例えば粉粒体の搬送経路に沿った異物沈降装置13の一方の端部である入口13Aと、他方の端部である出口13Bとの間に配置できる。異物排出口131は、特に上記入口13Aと出口13Bとの間の中央位置を含むように配置することが好ましい。
【0036】
搬送装置12により、異物沈降装置13には連続して異物を含む粉粒体が供給されている。また、異物沈降装置13は、上述のように底面132A、132Bが傾斜面となっている。このため、異物沈降装置13に供給された異物を含む粉粒体は異物沈降装置13の分離槽133内で流動し、粉粒体と比重が異なる高比重の異物は異物排出口131へと沈降し、粉粒体と、異物とを分離できる。本実施形態の異物除去装置10においては比重差により、異物と、粉粒体とを分離するため、異物が非磁性であったとしても分離、除去することができる。
【0037】
異物沈降装置13は、必要に応じて、以下の異物排出装置や、流動性付与装置を有することもできる。
(2-1-2)異物排出装置
異物沈降装置13の異物排出口131は、開口部としておくことで、分離された異物を異物沈降装置13の外に排出し、粉粒体から異物を除去できる。ただし、異物排出口131から、異物と共に、一部粉粒体も排出されることになるため、異物沈降装置13の運転を一定時間行い、異物が異物排出口131近傍に集まったタイミングで異物排出口131から異物を排出することが好ましい。
【0038】
このため、異物沈降装置13は、異物を排出する異物排出装置134を有することが好ましい。異物排出装置134は、異物排出口131に配置できる。
【0039】
異物排出装置134の具体的な構成は特に限定されず、異物を排出するタイミングで異物沈降装置13から異物を排出できる装置であればよい。異物排出装置134としては、異物排出口131を開閉する開閉弁や、異物排出口131近傍に集まった異物を強制的に排出できる装置を用いることができる。異物排出装置134としては、例えばダンパーや、ロータリーフィーダー、スクリューコンベア、ロータリーバルブ等から選択された1種類以上を用いることができる。異物排出装置134は、上述のように異物排出口131に配置され、異物排出口131の一部を構成できる。
【0040】
既述のように異物が異物排出口131近傍に集まったタイミングで異物排出口131から異物を排出することが好ましい。このため、異物排出装置134は、間欠的に作動させることが好ましい。例えばオペレーターが任意のタイミングで作動させてもよく、異物排出装置134に図示しない制御装置を接続しておき、該制御装置により予め定められた、もしくは任意のタイミングで作動させてもよい。
(2-1-3)流動性付与装置
上述のように、異物沈降装置13は、その底面132A、132Bを傾斜面とすることで、異物沈降装置13に供給された異物を含む粉粒体を流動させることができる。ただし、供給された粒状体の流動性を高めるため、異物沈降装置13は、異物沈降装置13内に供給された粉粒体を流動させる流動性付与装置135を備えることもできる。
【0041】
流動性付与装置135は、分離槽133に供給された粉粒体に流動性を付与できる装置であれば特に限定されないが、エアスライダーや、バイブレーター等から選択された1種類以上を好適に用いることができる。
【0042】
なお、エアスライダーは、分離槽133内に空気等の気体を吹き込み、粉粒体に流動性を付与する装置である。バイブレーターは、分離槽133内の粉粒体に振動を付与する装置である。
【0043】
流動性付与装置としてエアスライダーを用いる場合、粉粒体が外部に流出せず、空気等の気体を通過させる布地や、セラミックスや金属製の多孔質体等の気体透過部を底面132A、132Bに設けることが好ましい。そして、該気体透過部を介してブロア、ファン、およびコンプレッサー等から選択された1種類以上の気体供給装置により空気等の気体を供給するように構成することが好ましい。なお、底面132A、132Bに効率的に気体を供給できるように、例えば
図2に示すように、底面132A、132Bの外側の面を鉄板等で覆い、底面132A、132Bとの間に空間を形成するエアボックス21A、21Bを設けることもできる。エアボックス21A、21Bには、配管23A、23Bを介して気体供給装置22を接続しておくことができる。気体供給装置22から配管23A、23Bを介してエアボックス21A、21B内に気体を供給することで底面132A、132Bに均一に圧力をかけることができるため好ましい。
【0044】
流動性付与装置135は、任意の場所に配置でき、その形態も限定されるものではないが、
図1に示す例の様に、底面132A、132Bに流動性付与装置135を設けるのが好ましい。また、流動性付与装置135を用いる場合にエアスライダーとバイブレーターを併用しても良い。
(2-2)異物沈降装置の配置について
上述のように異物沈降装置13は、搬送装置12の搬送経路上の、供給口111と排出口112との間、すなわち
図1に示す搬送経路の長さLの領域に配置できる。ただし、異物沈降装置13は、排出口112のすぐ近傍に配置しないことが好ましく、搬送経路上の排出口112に粉粒体を排出する領域と重複しない領域に配置することが好ましい。
【0045】
また、異物沈降装置13は、異物を沈降させ、除去できる十分な長さがあれば、供給口111から粉粒体を供給する領域と重複する領域を含むように配置してもよい。
【0046】
異物沈降装置13を上記領域に設けることで、異物沈降装置13を設置する場所や異物沈降装置13のサイズの自由度が高くなる。このため、例えば要求される異物除去の程度等に応じて異物沈降装置13のサイズ等を選択できる。なお、粉粒体の搬送量と搬送速度にもよるが異物沈降装置13の粉粒体の搬送方向に沿った長さL13が長い方が、異物沈降装置13内で粉粒体を適切に流動させ、異物の除去効率を高められる。
【0047】
例えば、異物沈降装置13の長さL13は、上記搬送装置12の搬送経路の長さLより短く、かつ、搬送装置12の搬送経路の幅に対して1.5倍以上10倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることがより好ましい。搬送装置12の搬送経路の幅とは、
図1における紙面と垂直な方向、すなわちY軸方向の搬送経路の幅を意味する。例えば搬送装置のケーシングで囲まれた領域の幅とすることができる。
【0048】
なお、異物沈降装置13は、搬送経路上に複数個、すなわち2個以上設けることもできる。異物沈降装置13を搬送経路上に複数個設ける場合、各異物沈降装置の長さL13の合計の長さは上記搬送装置12の搬送経路の長さLより短くできる。また、各異物沈降装置は、上記排出口112のすぐ近傍に配置しないことが好ましく、搬送経路上の排出口112に粉粒体を排出する領域と重複しない領域に配置することが好ましい。
(3)異物分離装置、循環装置
既述のように、異物排出口131からは分離された異物と共に、一部粉粒体も排出されることになる。係る粉粒体からさらに異物を除去し、粉粒体を回収することで、異物と共に廃棄される粉粒体を低減できる。
【0049】
このため、本実施形態の異物除去装置10はさらに、異物排出口131から排出された異物を含む粉粒体から、異物を分離する異物分離装置14を有することもできる。
【0050】
異物分離装置14は、異物排出口131から排出された異物を含む粉粒体から異物を分離できる装置であればよく、例えば振動篩等の篩や、トロンメルとも呼ばれる回転式選別機等から選択された1種類以上が挙げられる。
図1では1つの異物分離装置14を用いた例を示しているが、複数の異物分離装置14を粉粒体の搬送方向に沿って直列に配置し、用いることもできる。
【0051】
異物分離装置14と、異物排出口131とが離れている場合、異物除去装置10は、例えば
図1に示すように、異物排出口131から異物分離装置14まで、排出された異物を含む粉粒体を搬送する異物分離用搬送装置152を有することもできる。異物分離用搬送装置152は、粉粒体を搬送できる装置であればよい。異物分離用搬送装置152は、例えばスクリューコンベアや、チェーンコンベア、ベルトコンベア等の粉粒体を搬送可能な装置から選択された1種類以上とすることができる。
【0052】
異物分離装置14により異物を分離し、回収した粉粒体は、原料のホッパー等に戻すこともできるが、粉粒体の搬送経路上に戻すこともできる。この場合、本実施形態の異物除去装置10は、例えば
図1に示すように、異物分離装置14により異物を分離した粉粒体を、搬送装置12の搬送経路上に戻す循環装置151を有することもできる。
【0053】
循環装置151は、異物分離装置14と、搬送装置12との間で、粉粒体を搬送できる装置であればよい。例えば
図1に示すように、搬送装置12の上方に異物分離装置14を設けた場合、自由落下により粉粒体を搬送経路に戻すことができるため、循環装置151は、単なる配管であってもよい。また、異物分離装置14と、搬送装置12とが離れている場合には、循環装置151は、スクリューコンベアや、チェーンコンベア、ベルトコンベア等の粉粒体を搬送可能な装置から選択された1種類以上とすることができる。
【0054】
以上に説明した本実施形態の異物除去装置によれば、搬送装置による搬送経路上に、既述の異物沈降装置を設けることで、粉粒体中に含まれる非磁性の異物を容易に除去することができる。
[石膏系建築用面材製造装置]
本実施形態の石膏系建築用面材製造装置は、既述の異物除去装置を、石膏を含む原料の搬送経路上に備えることができる。
【0055】
具体的には例えば、焼石膏等の石膏を含む原料の搬送経路上に既述の異物除去装置を設け、原料中の異物を低減、除去できる。
【0056】
焼石膏等の石膏を含む原料の搬送経路上とは、例えば、原料石膏(二水石膏)の粉砕装置から焼成装置への搬送経路、焼成装置から出た焼石膏の貯蔵サイロ等への搬送経路、同じく焼石膏の貯蔵サイロから計量装置までの搬送経路、続く焼石膏の計量装置からスラリー調整ミキサーまでの搬送経路等の内の少なくとも1つが挙げられる。
【0057】
以上の点以外は、通常の石膏系建築用面材製造装置と同様に構成できるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
本実施形態の石膏系建築用面材製造装置により製造する石膏系建築用面材の種類は特に限定されず、例えばガラスマット石膏ボード、ガラス繊維不織布入石膏含有板、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量もしくは重量である石膏ボード(以下、上記JISで規定される石膏ボードや、JISで規定される石膏ボードよりも軽量もしくは重量である石膏ボードをまとめて「石膏ボード」ともいう)、スラグ石膏板等が挙げられる。
[異物除去方法]
次に、本実施形態の異物除去方法の一構成例について説明する。本実施形態の異物除去方法は、既述の異物除去装置を用いて実施できる。このため、既に説明した事項については説明を省略する。
【0059】
本実施形態の異物除去方法は、粉粒体中の異物を除去する方法であり、既述の異物除去装置を用いて粉粒体中の異物を除去する異物除去工程を有することができる。
【0060】
本実施形態の異物除去方法は、具体的には、例えば粉粒体中の異物を除去する異物除去方法であって、異物除去工程は、例えば以下の搬送工程と、異物沈降工程とを有することができる。
【0061】
搬送工程では、粉粒体を粉粒体の供給口から排出口まで搬送装置により搬送できる。
【0062】
異物沈降工程は、上記搬送工程の途中で、粉粒体中の異物を沈降させることができる。
【0063】
なお、異物沈降工程では、高さ方向の最も低い位置に配置された異物排出口と、異物排出口に向かって傾斜した底面とを有する異物沈降装置を用い、粉粒体中の異物を沈降させることができる。
(1)搬送工程
搬送工程では、搬送装置12を用いて、粉粒体を、粉粒体の供給口111から、排出口112まで搬送できる。搬送装置12については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0064】
搬送工程で搬送する粉粒体は、既に説明したが、既述のように粉粒体は石膏を含むことが好ましく、石膏であることがより好ましい。また、粉粒体が石膏を含む場合、該石膏は、焼石膏を含むことが好ましい。
(2)異物沈降工程
異物沈降工程は、搬送工程の途中で実施でき、異物沈降装置を用いて、粉粒体中の異物を沈降させることができる。
【0065】
図1を用いて説明したように、異物沈降装置13は、異物排出口131と、異物排出口131に向かって傾斜した底面132A、132Bとを有している。係る異物排出口131と、底面132A、132Bとで囲まれた領域が、粉粒体中の異物を沈降させる分離槽133となる。
【0066】
搬送工程を実施することで、異物沈降装置13には継続して異物を含む粉粒体が供給されている。また、異物沈降装置13は、上述のように底面132A、132Bが傾斜面となっている。このため、異物沈降工程では、異物沈降装置13に供給された異物を含む粉粒体は異物沈降装置13の分離槽133内で流動し、比重の大きい異物は異物排出口131へと沈降し、粉粒体と、異物と分離できる。
(異物排出装置)
異物沈降装置13は、異物を排出する異物排出装置134を有することもできる。異物排出装置134は異物排出口131に配置できる。
【0067】
既述のように異物が異物排出口131近傍に集まったタイミングで異物排出口131から異物を排出することが好ましい。このため、異物排出装置134は、間欠的に作動させることが好ましい。例えばオペレーターが任意のタイミングで作動させてもよく、異物排出装置134に図示しない制御装置を接続しておき、該制御装置により予め定められた、もしくは任意のタイミングで作動させてもよい。
(流動性付与装置)
上述のように、異物沈降装置13は、その底面132A、132Bを傾斜面とすることで、異物沈降装置13供給された異物を含む粉粒体を流動させることができる。ただし、供給された粒状体の流動性を高めるため、異物沈降装置13は、異物沈降装置13内に供給された粉粒体を流動させる流動性付与装置135を備えることもできる。
【0068】
流動性付与装置についても既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0069】
流動性付与装置は、異物沈降工程の間、継続して運転し、粉粒体に流動性を付与することが好ましいが、任意のタイミングで間欠的に動作させてもよい。
【0070】
異物沈降工程を終え、異物が低減、除去された粉粒体は、再度搬送装置により搬送し、排出口から排出できる。
(3)異物分離工程、循環工程
既述のように、異物排出口131からは分離された異物と共に、一部粉粒体も排出されることになる。係る粉粒体からさらに異物を除去し、粉粒体を回収することで、異物と共に廃棄される粉粒体を低減できる。
【0071】
このため、本実施形態の異物除去方法はさらに、異物排出口131から排出された異物を含む粉粒体から、異物分離装置により異物を分離する異物分離工程を有することもできる。
【0072】
異物分離工程で、異物分離装置14により異物を分離し、回収した粉粒体は、原料のホッパー等に戻すこともできるが、例えば
図1に示すように、異物分離装置14により異物を分離した粉粒体を、搬送装置12の搬送経路上に戻すこともできる。
【0073】
すなわち、本実施形態の異物除去方法は、異物分離工程で、異物分離装置により分離した粉粒体を、循環装置により搬送装置の搬送経路上に戻す循環工程を有することもできる。循環工程を実施することで、粉粒体を迅速に搬送経路上に戻し、異物処理の速度を高めることができる。
【0074】
異物分離装置や、循環装置については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0075】
以上に説明した本実施形態の異物除去方法によれば、搬送工程の途中で、異物沈降工程を実施することで、粉粒体中に含まれる比重の大きい異物を容易に除去することができる。
【実施例】
【0076】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示した異物除去装置10を用いて、焼石膏内に含まれる比重の大きい異物の除去を行った。
【0077】
図1に示すように、異物除去装置10は、搬送装置12と、異物沈降装置13とを有している。
【0078】
なお、搬送装置12は、粉粒体である焼石膏を、粉粒体の供給口111から排出口112まで搬送するように構成されている。搬送装置12としては、チェーンコンベアを用い、
図1中のX軸に沿って、すなわち水平に配置した。
【0079】
異物沈降装置13は、搬送装置12の搬送経路上の供給口111と排出口112との間に配置され、高さ方向の最も低い位置に配置された異物排出口131と、異物排出口131に向かって傾斜した底面132A、132Bとを有している。なお、底面132A、132Bの傾斜角である角度θ132A、θ132Bはいずれも10度とした。
【0080】
また、異物沈降装置13の長さL13は、搬送装置12の幅の約5倍である1250mmとなるように設置した。
【0081】
さらに、異物沈降装置13の底面132A、132Bに流動性付与装置135であるエアスライダーを設け、異物沈降装置内に粉粒体が供給されている間継続して空気を供給し、流動性を付与した。
【0082】
エアスライダーは、異物沈降装置13の底面132A、132Bに設けた図示しない気体透過部を備えている。そして、
図2に示したエアボックス21A、21Bを設け、エアボックス21A、21Bには配管23A、23Bを介して気体供給装置22が接続されている構成とした。これにより、気体供給装置22からエアボックス21A、21Bに供給した空気が気体透過部を介して分離槽133内に供給されるように構成した。
【0083】
異物排出口131は、粉粒体の搬送経路に沿った異物沈降装置13の一方の端部である入口13Aと、他方の端部である出口13Bとの間の中央位置を含むように配置した。異物排出口131には、異物排出装置134であるスクリューコンベアが設置されており、異物排出口131から異物を排出できるように構成した。
【0084】
異物排出口131から排出された異物を含む粉粒体は、異物分離装置14である振動篩にかけ、異物を除去した粉粒体を、循環装置151により搬送経路上に戻すように構成した。
【0085】
以上の異物除去装置を用いて、焼石膏内に含まれる比重の大きい異物の除去を行ったところ、前記振動篩上に残った異物は、鉄系金属物、非鉄系金属物、および小石等であった。
【0086】
搬送装置12のチェーンコンベアを用いて焼石膏を約500t搬送した場合に、前記振動篩上に残った異物は約500kgであり、比重の大きい異物の多くを分離、除去できた。
【0087】
以上に異物除去装置、石膏系建築用面材製造装置、異物除去方法を、実施形態等で説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0088】
本出願は、2021年5月13日に日本国特許庁に出願された特願2021-081546号に基づく優先権を主張するものであり、特願2021-081546号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0089】
10 異物除去装置
111 供給口
112 排出口
12 搬送装置
13 異物沈降装置
131 異物排出口
132A、132B 底面
134 異物排出装置
135 流動性付与装置
14 異物分離装置
151 循環装置