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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両用ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20241119BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241119BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20241119BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20241119BHJP
【FI】
E05F15/643
B60J5/04 C
B60J5/06 A
E05F15/655
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021003580
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108535
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直也
(72)【発明者】
【氏名】時松 英樹
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123792(JP,A)
【文献】特開2018-178696(JP,A)
【文献】米国特許第6802154(US,B1)
【文献】特開2021-95761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
E05F 11/54
E05F 15/00-15/79
B60J 5/04- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
スライドドアの開閉方向に沿うように車体に固定されるガイド手段と、
前記ガイド手段における長手方向の一端部及び他端部にそれぞれ掛け回されると共に、前記モータの駆動に伴って、前記ガイド手段の長手方向に沿って循環移動可能なベルトと、
前記ベルトに固着されると共に、前記ガイド手段にその長手方向へ移動可能に組付けられるガイドローラユニットを介して前記スライドドアに連結されるベルト接続部材と、を備え、
前記ガイド手段は、前記ベルト接続部材が前記ベルトに固着され、かつ前記ガイドローラユニットに未接続の状態において、前記ベルトを捩じれ状態として、前記ベルト接続部材を前記ガイド手段の所定位置に着脱自在に保持する保持部を有し、
前記ベルト接続部材は、車外斜め上方に傾いた姿勢又は上方を向く姿勢で前記保持部に着脱自在に保持されることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
前記保持部を、前記ガイド手段の側壁部に設けられる開口孔としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
前記ベルト接続部材は、前記ベルトをその厚み方向から挟み込む挟持部と、前記挟持部よりも下位にあって、前記ガイドローラユニットに連結される連結部と、前記挟持部よりも上位にあって、前記開口孔に差し込まれることで係合する係合部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項4】
前記ガイド手段は、前記開口孔の下位にあって、前記ベルト接続部材における前記係合部の前記開口への差込量を規制するストッパ部を有することを特徴とする請求項3に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項5】
前記ベルト接続部材は、前記保持部に保持された状態にあるとき、前記ガイドローラユニットの移動軌跡外に退避した位置に保持されることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の車両用ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスライドドアを自動開閉させるための車両用ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両前後方向に延在するガイド手段(支持部材)と、ガイド手段に回動可能に支持される複数のプーリと、複数のプーリに巻き掛けられる駆動ベルトと、駆動ベルトに固着されるベルト接続部材(ブラケット)と、を備え、ガイド手段は、ベルト接続部材を着脱自在に保持するための切欠きにより形成された保持部を有する車両用ドア開閉装置が開示されている。この車両用ドア開閉装置においては、ベルトに固着され、かつ保持部に着脱自在に保持されるベルト接続部材は、保持部から外されることで、スライドドアに取り付けられたガイドローラユニットに連結される。これにより、駆動ベルトが駆動プーリの回動に伴ってガイド手段の長手方向に沿って循回移動することで、スライドドアを前後方向に開閉作動させる。
【0003】
特許文献1に開示の車両用ドア開閉装置は、駆動ベルトに固着されたベルト接続部材をガイド手段に設けた保持部に着脱自在に保持することにより、車両用ドア開閉装置の運搬時に、駆動ベルトに固着されたベルト接続部材がガイド手段に対して動くことを抑制することで、運搬時のハンドリング性の向上を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-178696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の車両用ドア開閉装置においては、ベルト接続部材がガイド手段の保持部に対して着脱自在に保持されるため、車両用ドア開閉装置の搬送時、及び車体パネルへの組付け作業時に、ベルトが弛みにより横方向にがた付いて他部品やスライドドアに接触するなどし、最悪の場合には、他部品を傷付ける虞がある。駆動ベルトが横方向へガタ付く理由としては、駆動ベルトが駆動プーリ及びその他の従動プーリに巻き掛けられた状態において、駆動プーリから駆動ベルトへの動力伝達が可能となる程度にテンションプーリ等によって駆動ベルトに対してテンションが付与されるが、駆動ベルトの回転時の負荷を抑制するために、駆動ベルトには一定の弛みが残されるためと考えられる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、運搬時及び組付作業時にベルトのガタ付きを抑えて、よりハンドリング性の向上を可能とした車両用ドア開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
車両用ドア開閉装置において、モータと、スライドドアの開閉方向に沿うように車体に固定されるガイド手段と、前記ガイド手段における長手方向の一端部及び他端部にそれぞれ掛け回されると共に、前記モータの駆動に伴って、前記ガイド手段の長手方向に沿って循環移動可能なベルトと、前記ベルトに固着されると共に、前記ガイド手段にその長手方向へ移動可能に組付けられるガイドローラユニットを介して前記スライドドアに連結されるベルト接続部材と、を備え、前記ガイド手段は、前記ベルト接続部材が前記ベルトに固着され、かつ前記ガイドローラユニットに未接続の状態において、前記ベルトを捩じれ状態として、前記ベルト接続部材を前記ガイド手段の所定位置に着脱自在に保持する保持部を有することを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記ベルト接続部材は、車外斜め上方に傾いた姿勢又は垂直方向を向く姿勢で前記保持部に着脱自在に保持される。
【0009】
好ましくは、前記保持部を、前記ガイド手段の側壁部に設けられる開口孔とする。
【0010】
好ましくは、前記ベルト接続部材は、前記ベルトをその厚み方向から挟み込む挟持部と、前記挟持部よりも下位にあって、前記ガイドローラユニットに連結される連結部と、前記挟持部よりも上位にあって、前記開口孔に差し込まれることで係合する係合部と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記ガイド手段は、前記開口孔の下位にあって、前記ベルト接続部材における前記係合部の前記開口への差込量を規制するストッパ部を有する。
【0012】
好ましくは、前記ベルト接続部材は、前記保持部に保持された状態にあるとき、前記ガイドローラユニットの移動軌跡外に退避した位置に保持される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ベルトに固着されたベルト接続部材は、ベルトを所定角度捩った状態でガイド手段の保持部に着脱自在に保持されるため、ベルトの弛みを捩じれ部により吸収して、ベルトのガタ付きを抑止して、ベルト接続部材を保持部に確実に保持でき、車両用ドア開閉装置のハンドリング性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る車両用ドア開閉装置を装着した車両の側面図である。
図2】車両用ドア開閉装置及びセンターガイドレールの斜め前方から見た斜視図である。
図3】車両用ドア開閉装置の斜め前方から見た斜視図である。
図4】車両用ドア開閉装置の車外側から見た側面図である。
図5】車両用ドア開閉装置の平面図である。
図6】モータモジュールの分解斜視図である。
図7図5におけるVII-VII線拡大縦端面図である。
図8図5におけるVIII-VIII線拡大縦端面図である。
図9図4におけるIX-IX線拡大横断面図である。
図10】ベルト接続部材が仮保持姿勢にある状態の要部の斜め後方から見た拡大斜視図である。
図11】ベルトガイドの斜め後方から見た要部の拡大斜視図である。
図12】ベルト接続部材が仮保持姿勢にある状態の斜め前方から見た要部の斜視図である。
図13】ベルト接続部材が仮保持姿勢にある状態の車外側から見た要部の側面図である。
図14】ベルト接続部材がセンターガイドローラユニットに接続された状態の斜め後方から見た要部の斜視図である。
図15】ベルト接続部材がセンターガイドローラユニットに接続された状態の車外側から見た要部の側面図である。
図16図13におけるXVI-XVI線縦端面図である。
図17図15におけるXVII-XVII線縦端面図である。
図18図13におけるXVIII-XVIII線横端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではなく、以下の実施形態から当業者が自明の範囲内で適宜変更したものも含む。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ドア開閉装置1は、小型ワゴンタイプの車両2における左側の車体パネル4の内側に配置されると共に、車体パネル4に前後方向に開閉自在に支持された左側のスライドドア3を後述のモータ10の動力により自動開閉させるものである。
なお、以下の説明における方位は、断りのない限り、車両用ドア開閉装置1を車両2に取り付けた状態での方位を指す。
【0017】
スライドドア3は、前上部に取り付けられたアッパーガイドローラユニット31が車体上部に固定された前後方向へ延伸するアッパーガイドレール41、中央後部に取り付けられたセンターガイドローラユニット32が上下方向の車体中央部に固定された前後方向へ延伸するセンターガイドレール42、また前下部に取り付けられたロアガイドローラユニット33が車体下部に固定された前後方向へ延伸するロアガイドレール43にそれぞれ前後方向に移動自在に支持されることにより前後方向に開閉する。
【0018】
図2~5に示すように、車両用ドア開閉装置1は、車体パネル4の内側に配置され、スライドドア3を自動開閉させるための動力を出力するモータモジュール5と、モータモジュール5に連結されると共に、モータモジュール5から出力される動力をスライドドア3に伝達して、スライドドア3を開閉作動させるガイドモジュール6とを備える。なお、図2は、車両用ドア開閉装置1におけるガイドモジュール6の後述のベルト接続部材24をセンターガイドローラユニット32に連結した状態の車両用ドア開閉装置1及びセンターガイドレール42を示し、図3~5は、車両用ドア開閉装置1のみを示している。
【0019】
以下、車両用ドア開閉装置1について説明する。
(モータモジュール5)
図6~9に示すように、モータモジュール5は、ガイドモジュール6における後述の取付プレート22を介してベルトガイド20に固定されるケーシング7と、ケーシング7の上部に固定される金属製ベースプレート8と、回転軸9が上下方向(回転軸9が金属製ベースプレート8の一方側の面に対して直交する方向)を向くように金属製ベースプレート8の上面に固定されるモータ10と、ケーシング7の上面に固定され、モータ10を含むケーシング7の上面全体を覆う合成樹脂製のカバー11と、ケーシング7内に配置される電磁クラッチ12と、電磁クラッチ12の下側に配置されて、モータ10の回転軸9の上下方向を向く回転中心軸線CL1を中心にして回転可能な第1ギヤ13と、第1ギヤ13の回転を減速する第2ギヤ14と、第2ギヤ14の回転をさらに減速する第3ギヤ15とを含む。
【0020】
ケーシング7は、ガイドモジュール6の取付プレート22に直接固定されるロアケーシング7Aと、当該ロアケーシング7Aの上部に固着されるアッパーケーシング7Bとを含んで構成される。ロアケーシング7Aは、下部側面にあって、車外方向に突出する前後の取付部71Aと、車内側底面にあって、下方に突出する取付部72Aとを有する。各取付部71A、72Aは、ボルト25により取付プレート22にそれぞれ締結固定される。
【0021】
金属製ベースプレート8は、アッパーケーシング7Bに固定される。金属製ベースプレート8の上面には、回転軸9が上下方向を向くようにモータ10が直接固定され、同じく下面には、電磁クラッチ12の構成要素の一つである環状の電磁用コイル部121が回転軸9の回転中心軸線CL1を基準として直接固定される。これにより、金属製ベースプレート8の投影面積を小さくした形態で電磁用コイル部121のヒートシンクとして兼用することができ、電磁用コイル部121の発熱を抑えて、電磁クラッチ12の作動効率の低下を抑えることができる。
【0022】
本実施形態においては、金属製ベースプレート8は、特に図7、8に示すように、縦断面形状が略ハット型の第1金属プレート8Aと、第1金属プレート8Aの下側に固着されるロアプレート8Bとに分割して構成される。そして、第1金属プレート8Aの下面とロアプレート8Bの上面との間には、互いに接触しないようにした隙間81を形成する。これにより、金属製ベースプレート8全体の表面積を広くして、金属製ベースプレート8をヒートシンクとしての効果をより高めることができる。
【0023】
また、本実施形態においては、上述のように、金属製ベースプレート8をモータ10が固定される第1金属プレート8Aと、電磁用コイル部121固定される第2金属プレート8Bとにより分割したが、本発明においては、これに限定されるものでなく、第1金属プレート8Aと第2金属プレート8Bとを一体形成しても良い。
【0024】
モータ10は、回転軸9が上下方向を向くように第1金属プレート8Aの上面に固定される。回転軸9における金属製ベースプレート8の中央を下方へ貫通した下端部には、回転軸9と一体的に回転する回転体16が固着される。
【0025】
カバー11は、アッパーケーシング7bの上面に固定されることにより、モータ10、第2ギヤ14及び第3ギヤ15の全てを上方から覆う。カバー11におけるモータ10を覆うモータカバー部11aは、モータ10に接触しないように、モータ10との間に空気層を形成する隙間11Aを設ける。これにより、モータ10の作動音、特に高周波数帯の作動音を空気層によって減衰させることができるため、防音性を高めることができる。
【0026】
電磁クラッチ12は、電磁用コイル部121と、ロータ122と、アーマチュア123を基本的な構成要素としている。
【0027】
電磁用コイル部121は、モータ10の回転軸9の回転中心軸線CL1を基準とする環状の部材であって、第2金属プレート9Bの下面に固着されるフィールドコアと、このフィールドコアに巻かれた電磁用コイルとからなり、通電によって電磁力を発生する。ロータ122は、磁性体であって、回転体16の外周面に回転体16と一体的に回転するように取り付けられる。アーマチュア123は、ロータ122の吸着面(下面)に対向する位置にあって、電磁用コイル部121の電磁力によりロータ122の吸着面に吸引されることによって、ロータ122と共に回転する。アーマチュア123は、回転軸9の回転中心軸線CL1を基準とする円盤状の磁性体からなり、第1ギヤ13の上面に回転軸9の回転中心軸線CL1方向への移動を許容され、かつ相対回転を規制されて取り付けられる。
【0028】
電磁クラッチ12は、電磁用コイル部121に通電されることにより、第1ギヤ13と一体的に回転するアーマチュア123を、回転体16と一体的に回転するロータ122の吸着面に吸引することで、モータ10の回転軸9と第1ギヤ13との間の動力伝達経路を接続して、回転軸9の回転を第1ギヤ13に伝達可能とし、また、電磁用コイル部121の通電を断つことにより、回転軸9と第1ギヤ13との間の動力伝達経路を切断する。
【0029】
回転体16は、概ね鍔付き円柱状を呈し、電磁用コイル部121に対して、回転軸9の回転中心線軸CL1を中心とする回転が許容されるように、回転軸9の下端部に固着される。回転体16の下面中心には、下方へ延伸する第1軸161が設けられる。第1軸161は、回転中心が回転中心軸線CL1と一致し、下端部がロアケーシング7Aに支持される軸受17に回転可能に支持される。これにより、電磁クラッチ12は、回転軸9の回転中心軸線CL1を基準とする周囲に配置され、第1ギヤ13の回転中心軸線は、回転中心軸線CLと一致する。
【0030】
第1ギヤ13はロータ122の吸着面に対向する拡径部131を有し、回転体16の第1軸161に相対回転可能に枢支される。拡径部131の上面には、アーマチュア123が回転中心軸線CL1方向への移動が許容され、かつ回転方向への移動が規制されて取り付けられる。第1ギヤ13の下面中心には、下方へ向けて延伸する小径ギヤ132が設けられる。本実施形態においては、小径ギヤ132の軸部分の上部は、軸受18によりアッパーケーシング7Bに回転自在に支持される。
【0031】
第2ギヤ14は、下部に大径ギヤ14a、上部に小径ギヤ14bをそれぞれ有する2段ギヤにより構成され、ロアケーシング7Aとアッパーケーシング7Bとの間の空間で、かつ第1軸161の前方に位置する上下方向を向く第2軸141より回転自在に枢支されると共に、大径ギヤ14aが第1ギヤ13の小径ギヤ132に噛合することで、第1ギヤ13の回転を減速する。
【0032】
第3ギヤ15は、上部に大径ギヤ15aを有して、ロアケーシング7Aとアッパーケーシング7Bとの間の空間で、かつ第2軸141の前方に位置する上下方向を向く駆動軸151と共に回転自在に枢支されると共に、大径ギヤ15aが第2ギヤ14の小径ギヤ14bに噛合することで、第2ギヤ14の回転を減速する。駆動軸151は、第3ギヤ15と一体回転するように、第3ギヤ15の中心孔に固く挿入される。
【0033】
本実施形態においては、第3ギヤ15における大径ギヤ15aの下面中心に軸部15bを設け、当該軸部15bを軸受19Aによりロアケーシング7Aに回転自在に支持し、駆動軸151の上端部を軸受19Bによりアッパーケーシング7Bに回転自在に支持する。さらには、駆動軸151の外周面に上下方向へ延伸するセレーションを形成し、駆動軸151と第3ギヤ15とが一体回転するように、セレーションを第3ギヤ15の中心孔に圧入させる。さらには、図9に示す平面視において、モータ10の回転軸の回転中心軸線CL1と駆動軸151の上下方向を回転中心軸線CL2とを結んだ直線X(図9参照)上に、第2ギヤ14の回転中心をなす第2軸141が位置し、かつ直線Xの方向がベルトガイド20の長手方向(前後方向で、スライドドア3の開閉方向)と平行になるように、第1軸161、第2軸141及び駆動軸151をそれぞれ配置する。
【0034】
駆動軸151は、回転中心軸線CL2がベルト21の移動方向に対して直交する上下方向を向いて、第1ギヤ13、第2ギヤ14及び第3ギヤ15により減速されたモータ10の回転をガイドモジュール6側へ出力するものであって、特に図8に示すように、ロアケーシング7Aの底部を貫通して、ガイドモジュール6の後述の駆動プーリ23の中心孔に相対的に回転不能に圧入固着される。これにより、モータ10における回転軸9の回転は、接続状態の電磁クラッチ12、第1ギヤ13、第2ギヤ14、第3ギヤ15、駆動軸151を介して、駆動プーリ23に伝達される。駆動プーリ23の回転は、後述のように、ガイドモジュール6のベルト21に伝達される。
【0035】
本実施形態における第1ギヤ13、第2ギヤ14及び第3ギヤ15は、本発明に係る減速機構の基本的な構成要素とするが、本発明の減速機構は、本実施形態に限定されるものでなく、第2ギヤ14を省略して、第3ギヤ15を第1ギヤ13に直接噛合させても良いし、また他の減速ギヤをさらに追加しても良い。
【0036】
(ガイドモジュール6)
図2~5に示すように、ガイドモジュール6は、センターガイドレール42の上部に配置される合成樹脂製のベルトガイド20と、ベルトガイド20によりセンターガイドレール42の長手方向(前後方向)の形状に沿って案内されるベルト21と、ベルトガイド20に固定される取付プレート22と、ベルト21を循環移動させるための駆動プーリ23(図6、8、9参照)と、ベルト21をスライドドア3に連結するためのベルト接続部材24とを有する。
【0037】
ベルトガイド20は、図5に示す平面視においてセンターガイドレール42の長手方向(前後方向)に沿った形状を呈して、センターガイドレール42の上面に重なり合うような形態で、前端部に設けた前ブラケット201及び後端部に設けた後ブラケット202が図示略のボルトにより車体パネル4に締結されることにより車体パネル4に固定される。
【0038】
ベルトガイド20の後部側面には、特に、図10、11、16、18に示すように、ベルト保持部材24をベルトガイド20に着脱自在に仮保持するための保持部203が設けられる。保持部203は、特に図11に示すように、ベルトガイド20における上下方向を向く側壁部20aを左右方向(車内外方向)に貫通し、前後方向に所定の開口幅を有する矩形状の開口孔により形成される。保持部203には、ベルト21をセンターガイドローラユニット32に連結するまでの期間、ベルト21に予め固着されたベルト接続部材24が仮保持される。ベルト接続部材24は、保持部203に一部が差し込まれて係合することによりベルトガイド20に着脱自在に仮保持される。
【0039】
特に、図11、16に示すように、ベルトガイド20における保持部203の下位には、上方へ突出するストッパ部203aが設けられる。ストッパ部203aは、ベルト接続部材24を保持部203に確実に仮保持するように、ベルト接続部材24における後述の係合部241aの角部分が当接することで、保持部203に対する係合部241の進入量を規制する。
【0040】
取付プレート22は、特に図6から理解できるように、ベルトガイド20の車内側側面に図示略のボルトにより固定される斜め上方を向く接続部22aと、当該接続部22aの下部から車内側へ延出する水平方向の支持部22bを有する。接続部22a及び支持部22bには、モータモジュール5におけるロアケーシング7Aの取付部71A、72Aがそれぞれ固定される被取付部22c、22dが設けられる。本実施形態においては、図6、7に示すように、ロアケーシング7Aの取付部71A、72Aと被取付部22c、22dとの間にゴムにより形成される円筒状の緩衝部材26を介在させて、取付部71A、71Bを被取付部22c、22dにそれぞれ固定する。これにより、モータモジュール5に対して、車両走行中等で発生する振動の伝達を緩和できる。
【0041】
図6、8に示すように、支持部22bには、駆動軸151と共に回転可能な駆動プーリ23が配置される。駆動プーリ23は、駆動軸151の下部が圧入されることで、駆動軸151の回転中心軸線CL2を中心に回転する。駆動プーリ23には、ベルト21の一部が掛け回される。これにより、駆動プーリ23の回転は、ベルト21に伝達されて、ベルト21は、ベルトガイド20に沿って循回移動する。
【0042】
ベルト21は、扁平状のゴム製の無端ベルトであって、図2に示すように、前端部がベルトガイド20の前部に枢支された前反転プーリ204、また後端部がベルトガイド20の後部に枢支された後反転プーリ205にそれぞれ掛け回されると共に、図9に示すように、室内側を移動する部分の一部が室内側に迂回して、取付プレート22に回転可能に支持された駆動プーリ23に掛け回されることで、駆動プーリ23の回転に伴って、ベルトガイド20に沿って前後方向へ循環移動する。
【0043】
ベルト接続部材24は、上部がベルト21の車外側を移動する領域に固着され、センターガイドローラユニット32に連結されるまでの期間、例えば図3、4に示すように、保持部203に係合した状態で着脱自在に仮保持され、最終的に、図2に示すように、下部がセンターガイドローラユニット32の被連結部32aに連結されることによって、ベルト21とスライドドア3とを互いに連結する。
【0044】
ベルト接続部材24は、車両用ドア開閉装置1を搬送する期間、及び車体パネル4に対して組付け作業を行う期間、ベルトガイド20に仮保持される。これにより、ベルト21及びベルト接続部材24がベルト21の弛み、捩じれ等により振れて他部品やスライドドア3に接触する等して傷付けることを未然に防止すると共に、車両用ドア開閉装置1のハンドリング性の向上を図ることができる。
【0045】
ベルト接続部材24は、保持部203に仮保持された状態においては、特に、図10、12、13、16に示すように、車外側へ上斜め方向に略30度に傾いた仮保持姿勢でベルトガイド20に仮保持される。したがって、ベルト接続部材24が仮保持姿勢に保持された状態においては、ベルト21は、厚み方向が車内外方向を向く正規姿勢(例えば、図17に示す姿勢)から所定角度捩れた状態にある。したがって、ベルト接続部材24が仮保持姿勢に保持されている状態においては、ベルト接続部材24の前側及び後側には、ベルト21の捩じれ部21aが形成される。捩じれ部21aにより、ベルト21の弛みを吸収して、ベルト21のガタ付きを抑えて、車両用ドア開閉装置1の搬送時、車体パネル4への組付け時におけるハンドリング性の向上を図ることができる。
【0046】
ベルト接続部材24は、仮保持姿勢にある場合には、センターガイドローラユニット32の移動軌跡外に退避した位置にある。これにより、車両用ドア開閉装置1を車体パネル4に組付けた後、センターガイドローラユニット32をセンターガイドレール42に組み付ける際、センターガイドローラユニット32がベルト接続部材24に干渉しないので、センターガイドローラユニット32をセンターガイドレール42に容易に組み付けることができる。
【0047】
ベルト接続部材24をベルトガイド20の保持部203に仮保持するには、図16に示すように、ベルト接続部材24を2点鎖線で示す正規姿勢から上方へ略120度回転させた姿勢として、この状態で、係合部24cを車外側から保持部203に差し込んで係合する。これにより、ベルト接続部材24は、特に、図16に実線で示すように、車外側へ上斜め方向に略30度に傾いた仮保持姿勢で仮保持される。ベルト接続部材24を保持部203から外す場合は、図16において、ベルト接続部材24を上方へ若干回転させた状態で、車外方向へ引き抜く。これにより、ベルト接続部材24を保持部203から簡単に外すことができる。この後、ベルト接続部材24は、センターガイドレール42に組付けられたセンターガイドローラユニット32に連結される。
【0048】
本実施形態においては、特に図16、17から理解できるように、ベルト接続部材24は、ベルト21を厚み方向(車内外方向)から挟み込む車外側の第1プレート24A及び室内側の第2プレート24Bを含むものとする。
【0049】
好ましくは、図14~18に示すように、ベルト接続部材24は、ベルト21を厚み方向から挟み込むことで、ベルト21に固着される挟持部24aと、当該挟持部24aよりも下位にあって、センターガイドローラユニット32の被連結部32aに連結される連結部24bと、挟持部24aよりも上位にあって、保持部203に係合する係合部24cを有するものとする。
【0050】
特に、図15、18に示すように、係合部24cは、前後方向の幅W1が保持部203の前後方向の開口幅W2よりも若干小さく形成される。さらに、図16に示すように、係合部24cは、ベルト接続部材24の仮保持姿勢において、斜め上方へ突出する爪部24dを有する。
【0051】
図16、18から理解できるように、ベルト接続部材24が仮保持姿勢に保持された状態においては、係合部24cは、ベルト接続部材24の前後方向への移動を規制するように、保持部203の開口に対して幅方向(前後方向)に係合する。係合部24cの角部分は、保持部203に対する係合部24cの車内側への進入量(差し込み量)を規制するように、保持部203の下位にあるストッパ部203aに当接する。爪部24dは、ベルト接続部材24が保持部203から容易に抜け出ないように、保持部203の開口の上縁に車内側から係合する。そして、ベルト接続部材24には、ベルト21に形成された捩じれ部21aによる復帰力(ベルト21が正規姿勢に戻ろうとする力であって、図16において、時計方向への力)が作用している。
【0052】
上述のように、ベルト接続部材24の前側及び後側において、ベルト21に捩じれ部21aが形成されるように、ベルト接続部材24をベルトガイド20の保持部203に仮保持することで、捩じれ部21aによりベルト21の弛みを確実に吸収することができる。これにより、ベルト接続部材24を保持部203に確実に仮保持できる。さらに、ベルト接続部材24を、ベルト21に固着される挟持部24aよりも上位に係合部24cを設け、挟持部24aよりも下位に連結部24bを設けた構成とすることによって、ベルト接続部材24の仮保持姿勢において、ベルト21の捩じれ部21aによる復帰力、および係合部24cよりも先端に位置する連結部24bの質量の作用により、ベルト接続部材24に対して図16において係合部24cを支点にして時計方向へのモーメントが作用するため、係合部24cを保持部203に確実に係合させることができる。さらには、ベルト接続部材24の正規姿勢において、連結部24bが最下位に位置するため、連結部24bをセンターガイドローラユニット32の被連結部32aに容易に連結することができる。
【0053】
(車両用ドア開閉装置1のスライドドア3に対する連結作業)
先ず、ベルトガイド20を車体パネル4に予め固定されたセンターガイドレール42の上側に配置して、ベルトガイド20の前ブラケット201及び後ブラケット202を図示略のボルトにより車体パネル4に固定することで、車両用ドア開閉装置1を車体パネル4に組み付ける。
【0054】
車両用ドア開閉装置1を車体パネル4に組み付ける作業を行うときには、ベルト接続部材24は、ベルトガイド20の保持部203に仮保持されている。ベルト接続部材24を保持部203に仮保持することで、車両用パワースライド装置1の搬送、及び車体パネル4への組み付け作業時において、ベルト接続部材24及びベルト21の不要な動きを抑えることができるため、両用用パワースライド装置1のハンドリング性の向上が図られる。これにより、ベルト接続部材24が車体パネル4やスライドドア3に接触して傷付けることを防止できる。
【0055】
車体パネル4に対する車両用ドア開閉装置1の組み付けは、モータモジュール5をガイドモジュール6に予め連結した状態で行っても良いし、モータモジュール5とガイドモジュール6とを分離した形態で、先に、ガイドモジュール6を車体パネル4に組み付け、その後に、モータモジュール5をガイドモジュール6に連結するようにしても良い。
【0056】
次いで、スライドドア3に取り付けられた各ガイドローラユニット31、32、33の図示略ガイドローラ(センターガイドローラユニット32については、図17に符号32bとしてガイドローラを示している)をそれぞれ対応する各レール41、42、43に後端から挿入する。そして、スライドドア3を前方、すなわち閉方向へ移動させて、センターガイドローラユニット32を保持部203に仮保持されたベルト接続部材24の位置に合わせる。この場合、ベルト接続部材24は、仮保持姿勢にあって、センターガイドローラユニット32の移動軌跡外に退避した位置にあるため、センターガイドローラユニット32がベルト接続部材24に衝突するような事態を回避できる。これにより、センターガイドローラユニット32及びベルト接続部材24の損傷を防止できる。
【0057】
次いで、専用の治具を車体パネル4とスライドドア3の後端の間の隙間に差し込んで、ベルト接続部材24を保持部203から取り外して、ベルト接続部材24を正規姿勢にする。そして、ベルト接続部材24の連結部24bをセンターガイドローラユニット32の被連結部32aに連結する。これにより、ベルト21とスライドドア3とは、ベルト接続部材24及びセンターガイドローラユニット32を介して連結される。
【0058】
(車両用ドア開閉装置1の作用)
モータ10は、ユーザ携帯のワイヤレスリモートスイッチ又はスライドドア3に設けられるドア開用のドアハンドルの操作に応じて駆動する。また、これに伴って、電磁クラッチ12は、接続状態になる。これにより、モータ10の回転軸9の回転は、電磁クラッチ12、第1ギヤ13、第2ギヤ14、第3ギヤ15、駆動軸151、駆動プーリ23を経由して、ベルト21に伝達される。これにより、ベルト21がベルトガイド20の長手方向に沿って循回移動することで、スライドドア3は、閉位置にあれば開移動し、全開位置にあれば閉移動する。
【0059】
スライドドア3を手動で開閉する場合には、モータ10及び電磁クラッチ12は非接続状態にある。したがって、スライドドア3の開閉作動は、ベルト21及び減速機構には伝達されるが、モータ10には伝達されない。これにより、スライドドア3を軽力で手動開閉移動できる。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更及び組み合わせを施すことが可能である。
【0061】
(1)前記実施形態においては、ガイドモジュール6のベルトガイド20とセンターガイドレール42とを別体としたが、これに代えて、ベルトガイド20とセンターガイドレール42とを一体的に形成するか、または、センターガイドレール42に対してベルトガイド20を予め固定した構成としても良い。この場合には、ベルト接続部材24を仮保持するための保持部203をセンターガイドレール42に設けても良い。よって、ベルトガイド20、又はベルトガイド20とセンターガイドレール42の両要素を組み合わせた要素を、本発明においては、ガイド手段と定義する。
【0062】
(2)ベルト接続部材24の仮保持姿勢を、車外側斜め上方を向く姿勢に代えて、垂直方向、又は水平方向とする。
【0063】
(3)保持部203を車内外方向に貫通する開口孔に代えて、上下方向又は斜め方向を向く開口孔とする。
【0064】
(4)保持部203を矩形状の開口孔に代えて、円形又は楕円形の開口孔とする。
【0065】
(5)モータモジュール5のケーシング7について、ロアケーシング7Aとアッパーケーシング7Bとを一体的に形成したものとする。
【0066】
(6)車両用ドア開閉装置1を車体下部に設けて、ベルト21をロアガイドローラユニット33に連結する。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用ドア開閉装置 2 車両
3 スライドドア 31 アッパーガイドローラユニット
32 センターガイドローラユニット 32a 被連結部
32b ガイドローラ 33 ロアガイドローラユニット
4 車体パネル 41 アッパーガイドレール
42 センターガイドレール 43 ロアガイドレール
5 モータモジュール 6 ガイドモジュール
7 ケーシング 7A ロアケーシング
71A、72A 取付部 7B アッパーケーシング
8 金属製ベースプレート 8A 第1金属プレート
8B 第2金属プレート 81 隙間
9 回転軸 10 モータ
11 カバー 11A 隙間
11a モータカバー部 12 電磁クラッチ
121 電磁用コイル部 122 ロータ
123 アーマチュア 13 第1ギヤ(減速機構)
131 拡径部 132 小径ギヤ
14 第2ギヤ(減速機構) 14a 大径ギヤ
14b 小径ギヤ 141 第2軸
15 第3ギヤ(減速機構) 15a 大径ギヤ
15b 軸部 151 駆動軸
16 回転体 161 第1軸
17、18 軸受 19A、19B 軸受
20 ベルトガイド 20a 側壁部
201 前ブラケット 202 後ブラケット
203 保持部 203a ストッパ部
204 前反転プーリ 205 後反転プーリ
21 ベルト 21a 捩じれ部
22 取付プレート 22a 接続部
22b 支持部 22c、22d 被取付部
23 駆動プーリ 24 ベルト接続部材
24a 挟持部 24b 連結部
24c 係合部 24d 爪部
24A 第1プレート 24B 第2プレート
25 ボルト 26 緩衝部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18