(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】新規なポリチオール化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 323/52 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
C07C323/52 CSP
(21)【出願番号】P 2020169902
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】木村 僚
(72)【発明者】
【氏名】大槻 大史
(72)【発明者】
【氏名】山根 健太郎
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/075252(WO,A1)
【文献】特開2001-072872(JP,A)
【文献】特開2018-016616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリチオール化合物。
【化1】
(式中、R
1は各々独立して炭素原子数2~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、R
2は各々独立して炭素原子数1~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、R
3は各々独立して炭素原子数6~12のアリール基を示し、mは1~4の整数を示し、nは0~4の整数を示す。ただし、m、nが2以上の整数の場合のR
1、R
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1’-ビナフチル骨格を有する新規なポリチオール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオール化合物は、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、ビニル樹脂、不飽和ポリエステル、ポリブタジエンなど多様な樹脂の架橋剤として利用されているが、その化学構造は、脂肪族ポリオールを基本骨格としたポリチオール化合物が主流となっている。
芳香族ポリオールを基本骨格としたポリチオール化合物の報告例は未だ少なく、例えば、特許文献1にはビスフェノールAを基本骨格としたポリチオール化合物が記載されており、これを利用したブラックマトリックスレジスト組成物は高感度で、アルカリ現像時の細線パターンの線幅保持性、すなわち現像マージンに優れることが報告されている。
また、ビフェノールを基本骨格としたポリチオール化合物は、非特許文献1にも記載されているが、その基礎物性は明らかにされていない。
ビフェノールなどの、剛直な化学構造であるビアリール骨格を基本骨格とした化合物は、高い耐熱性が期待されるほか、芳香族環のπ電子による分極率の増加により高い屈折率も期待される一方で、その剛直な化学構造故に、溶剤可溶性に乏しいことが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Inorganica Chimica Acta,359(11),3605-3616,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情を背景としてなされたものであり、ビアリール骨格を有するポリチオール化合物の溶剤可溶性の改善を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述の課題解決のために鋭意検討した結果、1,1’-ビナフチル骨格を有するポリチオール化合物は、従来知られたビアリール化合物と比較して、同等の耐熱性を有しつつ、さらに溶剤可溶性、屈折率に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.下記一般式(1)で表されるポリチオール化合物。
【化1】
(式中、R
1は各々独立して炭素原子数2~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、R
2は各々独立して炭素原子数1~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、R
3は各々独立して炭素原子数6~12のアリール基を示し、mは1~4の整数を示し、nは0~4の整数を示す。ただし、m、nが2以上の整数の場合のR
1、R
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の新規なポリチオール化合物は、剛直なビアリール骨格を有する化合物でありながらも、従来知られたビアリール化合物と比較して、同等の耐熱性を有しつつ、高い溶剤可溶性を有するため非常に有用である。
しかも、高い屈折率を有するため、機能性モノマーとしても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
<本発明化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されるポリチオール化合物である。
【化2】
(式中、R
1は各々独立して炭素原子数2~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、R
2は各々独立して炭素原子数1~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、R
3は各々独立して炭素原子数6~12のアリール基を示し、mは1~4の整数を示し、nは0~4の整数を示す。ただし、m、nが2以上の整数の場合のR
1、R
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
上記一般式(1)中のR
1は、各々独立して炭素原子数2~6の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を示す。R
1は、各々独立して炭素原子数2、3の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、この中でも、下記に示す(A)群のアルキレン基が好ましい。
【化3】
(式中、*は、それぞれ酸素原子との結合部を示す。)
上記一般式(1)中のmは1~4の整数を示す。mが2~4である場合のR
1は、全て同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、mが2~4である場合のR
1は全て同一であることが好ましい。特に、mが1であることが好ましい。
【0011】
上記一般式(1)中のR
2は、各々独立して炭素原子数1~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示す。この中でも、炭素原子数1~4の直鎖状または分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましい。下記に示す(B)群のアルキレン基が好適な態様である。
【化4】
(式中、*はそれぞれ硫黄原子、#はそれぞれ炭素原子との結合部を示す。)
これらの中でも、炭素原子数1または2のアルキレン基が特に好ましい。
【0012】
上記一般式(1)中のR3は、各々独立して炭素原子数6~12のアリール基を示す。炭素原子数6~12のアリール基としては、具体的には、例えば、フェニル基(炭素原子数6)、ナフチル基(炭素原子数8)、アントリル基(炭素原子数10)、フェナントリル基(炭素原子数10)、ビフェニル基(炭素原子数12)、などが挙げられる。
中でも、炭素原子数6~10のアリール基が好ましく、炭素原子数6~8のアリール基がより好ましく、炭素原子数6のアリール基すなわちフェニル基が特に好ましい。
上記一般式(1)中のnは0~4の整数を示す。nが2~4である場合のR3は、全て同一であってもよく、異なっていてもよい。nが1~4の整数を示す場合、R3がナフタレン環に結合する位置として3位または6位が含まれることが好ましい。
中でも、nが0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0013】
上記一般式(1)で表される本発明の化合物の中でも、特に、下記化合物(1-1)~(1-20)が好ましい。
【化5-1】
【化5-2】
【0014】
<本発明化合物の原料>
本発明の化合物は、その製造方法に特に限定はないが、例えば、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と、一般式(3)で表されるチオール類を反応させることにより製造することができる。
【化6】
(式中、R
1、R
3、m、nは一般式(1)と同義である。)
【化7】
(式中、R
2は一般式(1)と同義である。)
一般式(2)、(3)中のR
1、R
2、R
3、m、nの具体例や好ましい態様は、一般式(1)と同じである。
本発明の化合物の製造方法において、一般式(3)で表されるチオール類に代えて、一般式(3)で表されるチオール類のヒドロキシカルボニル基がハロゲン化カルボニル基または低級(炭素数1~3)アルコキシカルボニル基である、酸ハロゲン化物やエステル化物を使用しても良い。
【0015】
上記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、例えば、置換基を有していても良い1,1’-ビ-2-ナフトールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、またはエチレンカーボネート(炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)、ブチレンカーボネート(炭酸ブチレン)等のアルキレンカーボネートを、アルカリ触媒存在下において反応させる公知の製造方法により得ることができる。
【0016】
上記一般式(3)で表されるチオール類としては、例えば、チオグリコール酸、チオ乳酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトブタン酸などが挙げられる。上記一般式(3)で表されるチオール類は、酸触媒存在下に、α,β-不飽和カルボン酸類と硫化水素類を反応させる製造方法などの公知の製造方法により得られたチオール化合物を用いてもよいし、市販されているチオール化合物を用いてもよい。
【0017】
本発明の化合物の好ましい態様の1つである上記化合物(1-1)について、その製造方法の1例を下記反応式で示す。
【化8】
【0018】
<反応条件>
本発明の化合物を、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるチオール類を反応させて、製造する場合の反応条件について以下説明する。
(触媒)
一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるチオール類との反応では、触媒を使用することが好ましい。好適な触媒としては、60~98%硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(または、その一水和物)が挙げられ、中でも、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(または、その一水和物)がより好ましい。
触媒量としては、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の1つのヒドロキシ基に対して、0.01~1等量が好ましく、0.01~0.1等量がより好ましく、0.01~0.05等量がさらに好ましい。
【0019】
(反応温度、圧力)
反応温度は、通常25~120℃、好ましくは50~110℃の範囲、より好ましくは80~100℃の範囲である。前記範囲よりも反応温度が高いと、副反応が進行し好ましくない。
反応圧力は、常圧もしくは減圧で良いが、減圧下で反応を行うと、生成する水を減圧により効率的に除去することが可能となり、反応時間が短くなるため好ましい。
【0020】
(反応溶剤)
本発明の化合物を、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるチオール類を反応させて製造する場合は、溶解性や撹拌性の観点から補助溶剤を使用してもよい。補助溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ペンタン等の飽和炭化水素類を挙げることができ、これらの内では、トルエン等の芳香族炭化水素類が好ましい。
このような溶剤は、通常、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物1重量部に対して、0.1~10重量倍の範囲、好ましくは0.5~2重量倍で用いられるが、これに限定されるものではない。
上記反応は平衡反応であるため、反応系から生成した水を取り出すことが反応完結において重要であり、上記溶剤群の中でも、水と共沸するような溶剤がより好ましい。
また、生成した水を反応系から効率的に除去するため、窒素気流を反応液に流し込みながら反応を行ってもよい。
【0021】
(精製方法)
反応終了後、得られた反応終了混合物から目的物である一般式(1)で表されるポリチオール化合物を精製するには、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、反応終了混合物に水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水を加えて、中和する。中和後、水層を分離除去するために必要に応じてトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチルまたはエーテル等の水と分離可能な溶剤を加え、その後、水層を分離すると共に得られた油層を水洗する。次いで、必要に応じて溶剤を留去しこれに適宜の晶析溶剤を添加し、晶析又は沈析させ、ろ過することによって、結晶体、または非結晶体(アモルファス体)として目的物である一般式(1)で表されるポリチオール化合物を得ることができる。
また、化合物によっては、晶析に用いた溶剤との付加物結晶として得ることもできる。
晶析溶剤は、晶析条件、精製効果、経済性等を考慮して、適宜に選択される。例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メタノール、ブタノール、エタノール等の脂肪族アルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等の鎖状、環状の脂肪族エステル類、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸、ブタン酸等の脂肪族カルボン酸類を挙げることができる。
【0022】
得られた目的生成物の純度が低い場合等、必要に応じて、得られた目的生成物の性状に応じて、さらに精製を行ってもよい。
当該精製方法としては、目的生成物が結晶体の場合は、再結晶、または再沈を1回~複数回行って精製してもよいし、また、晶析あるいは再結晶に使用された溶剤を、得られた結晶体または非結晶体に注いで再度洗浄して精製してもよい。
また、得られた目的生成物が低沸点化合物(溶剤)との付加物結晶(アダクト結晶)の場合には、減圧下、100~200℃程度で付加物結晶を熱で分解し、付加した化合物(溶剤)を除去して精製してもよい。
さらに、得られた目的生成物が結晶体または固体状(非結晶体)として得られない場合は、得られた反応混合物から蒸留等で原料を除去した後、その蒸留残渣として、目的物の粗製物を得ることができ、これを、カラム分離法等で高純度品とすることもできる。
【0023】
<用途>
本発明のポリチオール化合物は、高い屈折率を有し、かつ、溶剤可溶性に優れるものである。そのため、本発明のポリチオール化合物とウレタン樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、ビニル樹脂、不飽和ポリエステル、ポリブタジエンなどの樹脂を含む樹脂組成物は、コーティング技術やリソグラフィ技術、その他各種成形技術を利用して、屈折率などの光学的特性が向上した硬化成形物(薄膜、レンズなど)を形成するために使用する場合に有用である。
得られた硬化膜は、必要により基材から剥離してまたは基材とともに光学フィルムなどとして利用してもよい。
また、本発明の化合物はビナフチル骨格を有するので、電子材料の製造プロセスに使用するレジスト材料に用いた場合、優れたエッチング耐性を示すことが期待できる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
分析方法は以下の通りである。
<分析方法>
1.本発明における成分Aと成分Bの組成比の決定方法
下記条件で高速液体クロマトグラフィー分析を行い、実施例、比較例で得られた樹脂用組成物中の成分Aと成分Bの本発明における組成比を決定した。
(1)分析装置と分析条件
測定装置:高速液体クロマトグラフィー分析装置(ProminenceUFLC)((株)島津製作所製)
ポンプ:LC-20AD
カラムオーブン:CTO-20A
検出器:SPD-20A(UFLC)、セル長5mm
カラム:HALO C18(カラム3.0×75mm、粒子径2.7μm、advanced materials technology社製)
オーブン温度:50℃
流量:0.7mL/min
移動相:(A)0.1vol%リン酸水、(B)アセトニトリル
グラジエント条件:(B)体積%(分析開始からの時間)
30%(0min)→30%(3min)→100%(16min)→100%(20min)
検出波長:280nm
試料濃度:2mg/ml(化合物1-1)
0.5mg/ml(化合物a)
試料注入量:5μl
本発明のポリチオール化合物の純度は、上記分析方法により得られたチャートから、検出された全成分に対する目的化合物の成分の面積百分率により算出した。
【0025】
<実施例1:化合物(1-1)の合成>
【化9】
ディーン・スターク装置を取り付けた300mL4つ口フラスコに、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(30.6g)、トルエン(90.5g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.9g)を加え、110℃まで昇温して均一溶液とした。チオ乳酸(19.5g)を50分かけて滴下した後、脱水させながら110℃で6時間加熱撹拌した。40℃まで降温させた後、10%炭酸水素ナトリウム水溶液(45.0g)を加えて中和を行い、水層を除去した。水(45.0g)を加えて反応液を水洗し、水層を除去した。同様の水洗操作をさらに2回繰り返した後、減圧条件下で溶剤を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸ブチル=2:1(wt/wt))により精製し、目的である化合物(1-1)を透明粘性液体として29.0g得た(純度91%,収率64%)。
【0026】
下記に示す1H NMRとLC-MS分析により、目的物であることを確認した。
1H NMR:(400MHz、DMSO-d6)
δ(ppm):1.15(t-like,6H),2.87(m,2H),4.06(m,4H),4.21(m,4H),6.91(dd,2H),7.19-7.24(m,2H),7.34(brt,2H),7.62(dd,2H),7.94(d,2H),8.05(d,2H).
LC-MS
ESI-nega:549.14([M-H]-)
【0027】
<比較例1:化合物(a)の合成>
【化10】
ディーン・スターク装置を取り付けた300mL4つ口フラスコに、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビフェニル(30.0g)、トルエン(90.0g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.0g)を加え、110℃まで昇温して溶解させた。チオ乳酸(26.7g)を30分かけて滴下した後、脱水させながら110℃で5時間加熱撹拌した。70℃まで降温させた後、10%炭酸水素ナトリウム水溶液(34.2g)を加え中和を行い、水層を除去した。水(30.0g)を加えて反応液を水洗し、水層を除去した。同様の水洗操作をさらに1回繰り返して実施した後、50℃まで冷却した。イソオクタン(73.9g)を30分かけて添加し、室温まで冷却した。析出した固体を濾別し、イソオクタン(49.3g)で洗浄後、50℃で乾燥を行うことで、目的である化合物(a)を白色固体として41.7g得た(純度94%、収率84.6%)。
【0028】
下記に示す1H NMRとLC-MS分析により、目的物であることを確認した。
1H NMR:(400MHz、CDCl3)
δ(ppm):1.53(d,6H),2.19(d,2H),3.55(m,2H),4.22 (m,4H),4.50(m,4H),6.96(dt,4H),7.47(dt,4H).
LC-MS
ESI-nega:449.13([M-H]-)
融点(DSC)
71.3℃、73.6℃
【0029】
(耐熱性評価)
上記実施例1で得られた化合物(1-1)と比較例1で得られた化合物(a)を使用して、下記評価方法に従い耐熱性評価を行った。
それぞれの化合物10~20mgをアルミニウムセルへ秤量し、400℃まで加熱することで分解開始温度(5%重量減少温度)を測定した。測定には(株)日立ハイテクサイエンス社製STA-200を用い、以下の条件で測定を実施した。
測定環境:窒素雰囲気,開放
昇温速度:10℃/min
(結果)
測定により得られた分解開始温度は、以下のとおりである。
化合物(1-1):317℃
化合物(a):318℃
上記実施例1で得られた化合物(1-1)と比較例1で得られた化合物(a)の耐熱性は、同等であることが示唆された。
【0030】
(屈折率測定)
上記実施例1で得られた化合物(1-1)と比較例1で得られた化合物(a)を使用して、下記測定方法に従いそれぞれの屈折率を確認した。
それぞれの化合物を任意の重量比でN-メチルピロリドンと混合し、20℃における各溶液の屈折率を測定した。屈折率の測定には、京都電子工業(株)製屈折計RA-500を使用した。得られた屈折率と溶液中の化合物重量をプロットし、線形関数を作成した。得られた関数について化合物重量100%となる点の値を求め、外挿法各化合物単体の屈折率として推算した。
推算された屈折率は、以下のとおりである。
化合物(1-1):1.617
化合物(a):1.579
上記実施例1で得られた化合物(1-1)は、比較例1で得られた化合物(a)に比べて、高い屈折率を有する化合物であることが確認された。
【0031】
(溶解度測定)
上記実施例1で得られた化合物(1-1)と比較例1で得られた化合物(a)を使用して、それぞれの化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)に対する25℃における溶解度を確認した。化合物(1-1)はオイル状化合物であるため、溶剤と混和する点を溶解度と判断した。
測定された溶解度は、以下のとおりである。
(i)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解度
化合物(1-1):67g/100g以上
化合物(a):31g/100g
(ii)乳酸エチルに対する溶解度
化合物(1-1):67g/100g以上
化合物(a):18g/100g
上記実施例1で得られた化合物(1-1)は、比較例1で得られた化合物(a)に比べて、溶剤可溶性に優れることが確認された。