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特許7589405物流倉庫の固定棚の配置方法、ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法、ピッキング情報生成方法、ピッキング方法、および物流倉庫
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】物流倉庫の固定棚の配置方法、ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法、ピッキング情報生成方法、ピッキング方法、および物流倉庫
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B65G1/137 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022201629
(22)【出願日】2022-12-01
(65)【公開番号】P2024080552
(43)【公開日】2024-06-13
【審査請求日】2023-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509323680
【氏名又は名称】株式会社タクテック
(73)【特許権者】
【識別番号】522489163
【氏名又は名称】株式会社オリエンタルアーツ
(72)【発明者】
【氏名】北 義弘
(72)【発明者】
【氏名】川本 文一
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088443(JP,A)
【文献】国際公開第2022/208634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流倉庫内に配置されるピッキング対象の全ての固定棚について、各棚内に収容された物品の一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置し、
前記ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置した後の一定期間経過後に、当該一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、前回特定領域とした複数の前記固定棚の今回のピッキング回数と、前回前記特定領域外とした前記固定棚の今回のピッキング回数とを比較し、ピッキング回数の多少が逆転している前回集中配置とした前記固定棚と前回集中配置外とした前記固定棚との間でロケーションを変更し、
前記ピッキング回数の算出値の算出について、各固定棚に収納している全種類の物品を対象とした前記一定期間当たりの合計のピッキング回数に基づいて決定する
ことを特徴とする固定棚の配置方法。
【請求項2】
物流倉庫内に配置されるピッキング対象の全ての固定棚について、各棚内に収容された物品の一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置し、
前記ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置した後の一定期間経過後に、当該一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、前回特定領域とした複数の前記固定棚の今回のピッキング回数と、前回前記特定領域外とした前記固定棚の今回のピッキング回数とを比較し、ピッキング回数の多少が逆転している前回集中配置とした前記固定棚と前回集中配置外とした前記固定棚との間でロケーションを変更し、
前記ピッキング回数の算出値の算出について、各固定棚に収納している全種類の物品を対象とするのでなく前記一定期間当たりのピッキング回数の多い複数種類の物品を対象とした合計のピッキング回数の算出値同士を比較して決定する
ことを特徴とする固定棚の配置方法。
【請求項3】
物流倉庫内に配置されるピッキング対象の全ての固定棚について、各棚内に収容された物品の一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置し、
前記ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置した後の一定期間経過後に、当該一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、前回特定領域とした複数の前記固定棚の今回のピッキング回数と、前回前記特定領域外とした前記固定棚の今回のピッキング回数とを比較し、ピッキング回数の多少が逆転している前回集中配置とした前記固定棚と前回集中配置外とした前記固定棚との間でロケーションを変更し、
前記ピッキング回数の算出値の算出について、各固定棚に収納している全種類の物品の中、前記一定期間当たりの一番ピッキング回数が多い1物品を比較対象として選出し当該ピッキング回数の算出値同士を比較して決定する
ことを特徴とする固定棚の配置方法。
【請求項4】
前記ピッキング対象の全ての固定棚から前記特定領域に集中配置する複数の前記固定棚を除いた複数の前記固定棚についても、前記ピッキング回数の多少に応じてクラス分けしてピッキング回数の多い棚ほど前記集中配置とした前記固定棚に近い位置に配置する
請求項1-3のいずれか1項に記載の固定棚の配置方法。
【請求項5】
前記固定棚のロケーションの変更を、自動走行ロボットにより該当する固定棚を持ち上げまたは牽引もしくは押動して行う
請求項1-3のいずれか1項に記載の固定棚の配置方法。
【請求項7】
ピッキング管理用コンピュータにおいて、ディスプレイに、物流倉庫内の対象となる全ての固定棚について請求項1-3のいずれか1項に記載の固定棚の配置方法に基づいて配置位置が決定された配列画像を表示するとともに、ピッキング当日の全オーダーの中、作業者毎に割り振られた複数のオーダーの束であるバッチに係る物品が収納された全ての固定棚のそれぞれにオーダー物品存在マークを表示し、さらに、ピッキング経路生成プログラムによりオーダー物品存在マークがある固定棚をめぐるピッキング経路となるよう固定棚のロケーション情報をリストアップする
ことを特徴とするピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法。
【請求項8】
請求項7に記載のロケーション情報のリストアップ方法に基づいて、リストアップされる各前記ロケーション情報に紐付けられるようピッキング作業情報として物品名、物品ID、物品の画像、ピッキング個数をリストアップする
ことを特徴とするピッキング情報生成方法。
【請求項9】
請求項7のロケーション情報のリストアップ方法に基づいてリストアップされる、作業者毎のバッチに係る固定棚のロケーション情報と、請求項7に記載のロケーション情報のリストアップ方法に基づいてリストアップされる各前記ロケーション情報に紐付けられるようピッキング作業情報としてリストアップされる物品名、物品ID、物品の画像、ピッキング個数とを担当の各作業者の携帯端末にダウンロードし、
リストアップしたロケーション情報の順序に従い、前記固定棚の配置方法に基づいて配列された固定棚の周りを歩いてピッキング作業を行う
ことを特徴とするピッキング方法。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固定棚の配置方法によって配置された固定棚を備えている
ことを特徴とする物流倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流倉庫内に配列された複数の固定棚の周りを作業者が歩いて固定棚からオーダーに係る物品をピッキングするための作業者の動線を最短とするための物流倉庫の固定棚の配置方法、ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法、ピッキング情報生成方法、ピッキング方法、および物流倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
広大な建屋内に膨大な数の固定棚が配列された物流倉庫において作業者がオーダーに係る物品をピッキングしてピッキングカートに集めるには、各作業者が、統合制御用コンピュータのオーダーおよびオーダーを照合処理できる諸々内容を登録しているデータベース(ビッグデータ)から必要なデータをピッキング管理用コンピュータにダウンロードし、このピッキング管理用コンピュータにより各作業者に割り振られるオーダーの束であるバッチを抽出する。次いで、バッチの情報を加工したピッキング情報に基づいて、物流倉庫に配列された複数の固定棚の周り(通路)を歩いてオーダーに係る物品が収納された固定棚に立ち寄り、固定棚に収納された複数種の物品からオーダーに係る物品を選択しオーダー数だけピッキングしピッキングカートに収納する。
【0003】
ここでのオーダーとは、注文者一人当たりの注文を言う。注文者一人当たりのオーダーは、通常は1種または複数種の商品について1個または複数個であり、通常、1オーダーに係る複数種の物品は固定棚の1段または複数段の分散されるか、または複数の固定棚に分散されて収納される。
【0004】
例えば、オーダー数が12,000オーダーあると仮定し、例えば50人の作業者が一人が1バッチ分のピッキング処理を1日4バッチ分繰り返すものとした場合、各作業者に当て割り振られるオーダーの束である1バッチ分のピッキングは、60オーダーになる。
【0005】
バッチに係るピッキング情報は、バッチに係る全てのオーダーについて、1種の物品毎に、収納された固定棚の配列場所および物品の棚内の収納位置を示すロケーション情報と、物品名と、物品IDと、ピッキング個数、等をデータベースから抽出した後、オーダー単位の順番ではなく、棚に対するピッキング順位で並び替えが行われて生成されるピッキング情報である。
【0006】
各作業者は、ピッキングカートを随伴し、バッチとして割り振られたピッキング情報に基づいて、物流倉庫内に配列された複数の固定棚の周りを歩きオーダーに係る物品が収納された固定棚から当該物品をピッキングする。
【0007】
仮に、一人の作業者が1オーダーのみをピッキングするには、通常、複数品の注文に係る物品が複数の固定棚に分散され収納されているから、物流倉庫に配列された複数の固定棚に対してあちこち歩き回ってピッキングすることになる。1つのオーダーに係る複数の物品のピッキングについて、棚単位で複数種の物品を纏めてピッキングできるようにオーダー情報を加工しない場合には、1種の物品について一の固定棚からピッキングした後、他の固定棚からピッキングが続いてから再び他種の物品について前記一の固定棚からピッキングすることも起こりうる。そして、1オーダーのピッキングを終えたら、次の1オーダーのピッキングを行い、こうして次々に1オーダーのピッキングを行うことにより作業者一人当たりに割り振られるオーダーの束であるバッチ処理を行うとしたら、ピッキング動線が何重にも重なり、ピッキング作業が余りにも不効率になる。
【0008】
そこで、一人の作業者が1オーダーに係る物品をピッキングする1つのオーダーに係る複数の物品は複数の固定棚に分散されて収納されているので、バッチに係るピッキング情報は、固定棚毎に纏めてピッキングできるように編集される。さらに、ピッキング経路についてもソフトウエアにより自動生成され、これに基づいて、固定棚単位でピッキングする順序が決まる。
【0009】
そして、ピッキング経路を決定するソフトウエア次第で決定されるピッキング経路の長さに大きな差異が生じ、ピッキング作業時間の長短に大きく関係することになる。オーダーに係る物品のピッキングする順番とピッキング経路は、各作業者に割り振られたバッチのピッキング情報の中、歩き回る固定棚の順番と、一の固定棚から次の固定棚までの距離の集積によって決まり、ピッキング経路の長さが長いとピッキング作業に時間の多くなる。以下、図13図14を参照して具体的に説明する。
【0010】
図13は、ピッキング管理用コンピュータにより割り振られたある一人の作業者のピッキング情報に基づいて、物流倉庫に配列された複数の固定棚の中、オーダーに係る物品を収納している20台の固定棚に「◎」の目印を表示しているとともに、与えられたピッキング情報のオーダー順に一人の作業者が固定棚の周りを所定のピッキングルートで歩いたときに「◎」の目印を表示した固定棚に出会う順番をピッキングの順番とする番号を表示している。
【0011】
この場合のピッキング情報は、オーダー順に固定棚の周りを歩いてピッキングするものではなく、ピッキング管理用コンピュータにおいて、各作業者に割り振ったオーダーのピッキング情報にピッキング用蛇行経路生成プログラムを適用することにより、ディスプレイに、物流倉庫に配列された複数の固定棚を表示するとともに、固定棚の周りを途中で逆向きに歩くことをせず一筆書きに歩く(以下、蛇行経路という)ピッキング動線(点線で示す)として描画し、これに基づいて、ピッキングする物品が収納されている固定棚を示し、蛇行ピッキング動線を歩いた時にピッキング順番となる番号を固定棚に示す。ピッキング順序を決めるロケーション情報は、固定棚を順番にピッキングすることに合わせてロケーション情報をピックアップし並べた情報である。これによれば、蛇行経路を歩くピッキングである。
【0012】
図14は、図13と同一に、物流倉庫に配列された複数の固定棚に対して一人の作業者がオーダーに係る20の物品を収納している固定棚に「◎」の目印を表示している。しかし、図14では、図13とは異なり、蛇行経路となる順番のピッキング情報のオーダー順に各作業者が固定棚の周りを蛇行して歩くのではなく、ピッキング管理用コンピュータにおいて最短ピッキング経路生成プログラムに基づいて、ディスプレイに、物流倉庫に配列された複数の固定棚を表示するとともに、トータルとしての動線の長さが短縮される結果となるのであれば、動線の重なりを許容しかつ通路を右周りと左回りのいずれでも歩くことを許容するコンセプトで最適化された最短ピッキング動線を描画し、このピッキング動線を歩いたときに「◎」の目印を表示した固定棚に出会う順番をピッキングの順番とする番号を示している。
【0013】
これによれば、図13の場合に比べて、ピッキング動線が短くなり、ピッキング作業時間が短縮される(特許文献1―4、および非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2020-59570号公報
【文献】特開2020-59572号公報
【文献】特開2021-160938号公報
【文献】特開2021-160940号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】https://www.sato.co.jp/market/common/visualwarehouse/ Visual Warehouse 経路案内ソリューション
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図14は最短ピッキング経路生成プログラムにより得られる最短ピッキング動線であり、この最短ピッキング動線は、図13に示すピッキング動線に比べ例えば15%短縮できるが、例えば30%以上短縮できるものではない。
【0017】
また、各作業者の携帯端末には最適化された最短ピッキング動線の表示が含まれない(表示不可)ので、各作業者がシミュレーション通りのピッキング経路から逸脱してピッキングすることがあり、その場合には、各作業者の実際のピッキング動線は図14に示す最短ピッキング動線よりも長く、ピッキング作業時間の短縮割合が低減することになる。
【0018】
従来において、オーダーの多い物品と少ない物品とを固定棚単位のピッキング回数によって区分するものとして、物流倉庫のピッキング対象の物品を収納している全ての固定棚についてゾーン配置による区別を行うことによりピッキング動線を短縮することは行われてこなかった。
【0019】
本発明者らは、仮に、固定棚についてピッキング回数によってランク付けしてランク毎に固定棚を寄せ集める場合には、図14に示す従来の配列について最短ピッキング経路生成プログラムを適用して生成されるピッキング動線に比べてさらに大幅に短縮されたピッキング動線が得られ、ピッキング作業時間が短縮される、との考えに想到した。
【0020】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、従来の物流倉庫の固定棚の配置方法に比べ、ピッキング動線を大幅に短縮できて、ピッキング作業時間が大幅に短縮され、人的資源、現在ある物流設備を有効に活用できる、物流倉庫の固定棚の配置方法、ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法、ピッキング情報生成方法、ピッキング方法、および物流倉庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願の第1の発明態様に係る固定棚の配置方法は、上記課題を解決するため、物流倉庫内に配置されるピッキング対象の全ての固定棚について、各棚内に収容された物品の一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置する構成である。
【0022】
本願の第2の発明態様に係る固定棚の配置方法は、第1の発明態様の構成に加え、
前記ピッキング対象の全ての固定棚から前記特定領域に集中配置する複数の前記固定棚を除いた複数の前記固定棚についても、前記ピッキング回数の多少に応じてクラス分けしてピッキング回数の多い棚ほど前記集中配置とした前記固定棚に近い位置に配置する構成である。
【0023】
本願の第3の発明態様に係る固定棚の配置方法は、第1または第2の発明態様の構成に加え、
前記ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置した後の一定期間経過後に、当該一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、前回特定領域とした複数の前記固定棚の今回のピッキング回数と、前回前記特定領域外とした前記固定棚の今回のピッキング回数とを比較し、ピッキング回数の多少が逆転している前回集中配置とした前記固定棚と前回集中配置外とした前記固定棚との間でロケーション情報を変更し、かつこれに基づいて実際のロケーションを変更する構成である。
【0024】
本願の第4の発明態様に係る固定棚の配置方法は、第3の発明態様の構成に加え、
前記ピッキング回数の算出値の算出について、各固定棚に収納している全種類の物品を対象とした前記一定期間当たりの合計のピッキング回数に基づいて決定する構成である。
【0025】
本願の第5の発明態様に係る固定棚の配置方法は、第3の発明態様の構成に加え、
前記ピッキング回数の算出値の算出について、各固定棚に収納している全種類の物品を対象とするのでなく前記一定期間当たりのピッキング回数の多い複数種類の物品を対象とした合計のピッキング回数の算出値同士を比較して決定する構成である。
【0026】
本願の第6の発明態様に係る固定棚の配置方法は、第3の発明態様の構成に加え、
前記ピッキング回数の算出値の算出について、各固定棚に収納している全種類の物品の中、前記一定期間当たりの一番ピッキング回数が多い1物品を比較対象として選出し当該ピッキング回数の算出値同士を比較して決定する構成である。
【0027】
本願の第7の発明態様に係る固定棚の配置方法は、第3の発明態様の構成に加え、
前記固定棚のロケーションの変更を、自動走行ロボットにより該当する固定棚を持ち上げまたは牽引もしくは押動して行う構成である。
【0028】
本願の第8の発明態様に係る固定棚の配置方法は、第3の発明態様の構成に加え、
前記物流倉庫内に配置されるピッキング対象の全ての固定棚の脚にキャスターを備えておくことにより、前記固定棚のロケーションの変更を人力移動方式で行う構成である。
【0029】
本願の第9の発明態様に係るピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法は、
ピッキング管理用コンピュータにおいて、ディスプレイに、物流倉庫内の対象となる全ての固定棚について第1-第3のいずれか1つの発明態様に係る固定棚の配置方法に基づいて配置位置が決定された配列画像を表示するとともに、ピッキング当日の全オーダーの中、作業者毎に割り振られた複数のオーダーの束であるバッチに係る物品が収納された全ての固定棚のそれぞれにオーダー物品存在マークを表示し、さらに、ピッキング経路生成プログラムによりオーダー物品存在マークがある固定棚をめぐるピッキング経路となるよう固定棚のロケーション情報をリストアップする構成である。
【0030】
本願の第10の発明態様に係るピッキング情報生成方法は、
第9の発明態様のロケーション情報のリストアップ方法に基づいてリストアップされる、各前記ロケーション情報に紐付けられるピッキング作業情報としての物品名、物品ID、物品の画像、ピッキング個数をリストアップする構成である。
【0031】
本願の第11の発明態様に係るピッキング方法は、
第9の発明態様のロケーション情報のリストアップ方法に基づいてリストアップされる、作業者毎のバッチに係る固定棚のロケーション情報と、第10の発明態様のピッキング情報生成方法に基づいてリストアップされるピッキング作業情報としての物品名、物品ID、物品の画像、ピッキング個数とを担当の各作業者の携帯端末にダウンロードし、
リストアップしたロケーション情報の順序に従い、第1-第3のいずれか1つの発明態様に係る固定棚の配置方法に基づいて配列された固定棚の周りを歩いてピッキング作業を行う構成である。
【0032】
本願の第12の発明態様に係るピッキング方法は、第11の発明態様の構成に加え、
前記携帯端末はスマートフォンとした構成である。
【0033】
本願の第13の発明態様に係る物流倉庫は、
第1-第3の発明態様のいずれか1つの固定棚の配置方法によって配置された固定棚を備えた構成である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、従来の物流倉庫の固定棚の配置方法に比べ、ピッキング動線を大幅に短縮できて、ピッキング作業時間が大幅に短縮され、人的資源、現在ある物流設備を有効に活用できる、物流倉庫の固定棚の配置方法、ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法、ピッキング情報生成方法、ピッキング方法、および物流倉庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施の形態に係る物流倉庫における物流の統合的管理を行うための統合制御用コンピュータの倉庫管理機能の概念図である。
図2】本発明の実施の形態に係る物流倉庫内の一例の固定棚のゾーンおよび通路をピッキング管理用コンピュータのディスプレイに示す平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る物流倉庫内の一例の固定棚の配置状態をピッキング管理用コンピュータのディスプレイに示す平面図である。
図4】本発明の実施の形態に係り、物流倉庫内の全て(図示例では180台)の固定棚について、一定期間のピッキング実績に基づいて棚毎のピッキング回数をデータ抽出し、ピッキング回数のランク分けとロケーション範囲との関係を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係り、1つのバッチに係るピッキング対象の固定棚が所在するランク毎の配置領域A,B,Cの少なくともいずれか1つと、バッチ数との割合について示す棒グラフである。
図6】本発明の実施の形態に係り、ピッキング管理用コンピュータのディスプレイに、物流倉庫内の一例の固定棚の配置状態を示し、さらに、全ての固定棚について1週間毎の棚毎のピッキング回数を実績として算出し、各固定棚の図の上に、新しく分けたクラスに対応したオーダー物品存在マークとして3段階に大きさおよび線の太さが異なる○を表示した図である。
図7】本発明の実施の形態に係り、図6の移動交換する前の配列においてゾーンB,Cに存在する移動交換する前の固定棚を含むようにゾーンA,B,Cの大きい○の表示に立ち寄るようにバッチを生成して最短のピッキング経路Pr1を生成するシミュレーション図である。
図8】本発明の実施の形態に係り、図6の移動交換した後の配列においてゾーンAに存在する移動交換した固定棚を含むようにゾーンAの大きい○の表示に立ち寄るようにバッチを生成して最短のピッキング経路Pr2を生成するシミュレーション図である。
図9】本発明の実施の形態に係り、図5中のF1に属する1つのバッチ分のピッキング対象の固定棚に重なるように●を付けて当該固定棚の位置をプロットし、さらに、ピッキング経路生成ソフトウエアにより最短のピッキング経路を生成した図である。
図10】本発明の実施の形態に係り、図5中のF3に属する1つのバッチ分のピッキング対象の固定棚に重なるように●を付けて当該固定棚の位置をプロットし、さらに、ピッキング経路生成ソフトウエアにより最短のピッキング経路を生成した図である。
図11】本発明の実施の形態に係り、図5中のF4に属する1つのバッチ分のピッキング対象の固定棚に重なるように●を付けて当該固定棚の位置をプロットし、さらに、ピッキング経路生成ソフトウエアにより最短のピッキング経路を生成した図である。
図12】本発明の実施の形態に係り、
図13】従来例のピッキング経路を示す図である。
図14】従来例の最短のピッキング経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態に係る物流倉庫の固定棚の配置方法、ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法、ピッキング情報生成方法、ピッキング方法、および物流倉庫について図面を参照して説明する。
【0037】
[前提技術:データベース管理とピッキング作業]
物流倉庫でのピッキング作業は、作業者がピッキングカートを随伴し配列された複数の固定棚の周りを歩いて固定棚からオーダーに係る物品をピッキングする作業である。固定棚は、物品を収納するための棚段が複数あり、1種の物品は、複数個(必要数)が1つの棚段に収納され、また、互いに類似する複数種の物品はできるだけ1つの固定棚に収納されることが好ましく、通路側から物品をピッキングすることができる。固定棚の配置は無人走行車または人手により行われる。なお、物品とは、物流倉庫にて取り扱う有体物である。
【0038】
固定棚は、例えば4段のラック形状であり四隅の柱部の最下段の棚部よりも下部分が4つの脚部となっている。固定棚は、無人走行車により持ち上げられ移動するタイプ、または4つの各脚の下端にストッパー付きキャスターを備えていて無人走行車または人力により牽引されまたは押されて移動するタイプのいずれであってもよい。
これにより、固定棚のロケーションへの移動は、自動走行ロボットにより該当する固定棚を持ち上げまたは牽引もしくは押動して行う構成であるか、または、人力移動方式で行う構成である。ここで、「無人走行車」とは、床面に設けられた2次元コード(QR,Aplirtag、DataMatrix,その他)誘導方式、床面に設けられた磁気テープ誘導方式、ガイド無し自動誘導方式(SLAM方式、その他)、他の方式などが採用されて無人走行する車両である。ただし、これに限定されるのもではない。
【0039】
[物流倉庫を管理するコンピュータ]
物流倉庫の管理には、物流倉庫企業の本部に備えられインターネットを含む通信ネットワークに接続されたサーバーと、このサーバーに接続された最上位の統合制御用コンピュータと、各物流倉庫の例えばピッキングスタート位置に備えられインターネットまたはイントラネットで前記統合制御用コンピュータに接続された下位のピッキング管理用コンピュータとを有する。
【0040】
物流倉庫企業の各支部、各営業所等から通信ネットワークを介して送られてくる注文はサーバーで受信され統合制御用コンピュータでデータ処理される。
【0041】
[統合制御用コンピュータ]
図1は統合制御用コンピュータTpcの内容を占める概念図である。統合制御用コンピュータTpcによる物流の統合的管理は、当該コンピュータに格納されたデータベース管理ソフトウエアDbsにより行われる。
【0042】
データベース管理ソフトウエアDbsは、データベース群Dbと、データベース群Dbを管理する管理プログラム群Pbとを有し、所要のプログラムを用いてデータベース群Dbからデータを抽出し編集加工することにより、入出庫管理・在庫管理・ピッキング用データ抽出並び替え・仕分け機能、端末へのデータ転送機能、等が行われる。データベース管理ソフトウエアDbsは、例えばAccessというデータベースソフトに複数のクエリとマクロ、等を用意することにより実現できる。
【0043】
データベース群Dbは、例えばテーブルデータである物品情報Db1と顧客情報Db2とオーダー情報Db3、固定棚のロケーションのリスト、その他の事項を登録している。
【0044】
物品情報Db1は、物流倉庫Hに存在する取引対象の全ての物品に関しオーダーに関わらない半固定的な情報であり、具体的には、物流倉庫Hに収納している物品として何を取り揃えてあるのかを示す物品名および物品ID、各物品はどのような形態かを示す物品の画像、いずれの固定棚が物流倉庫H内のどの位置に配置されているのかを示すロケーションID、および一定期間ごとにピッキング実績に基づいて算出されるピッキング回数の多少により固定棚をランク付けするランクID、固定棚にどの物品がどれだけの個数が収納されているのかを示す収納個数、等が含まれる。
【0045】
物品情報Db1への登録は、物品IDとロケーションIDとランクIDとが相互に関連性を有するように登録される。収納個数は、1種類の物品を特定の固定棚についてピッキングに不足がなく収納されるものであって、足りない場合には固定棚への補充が随時に行われ、一日の全オーダーの個数を常に上回るようコンピュータ管理される。
【0046】
顧客情報Db2は、取引対象の全ての顧客に関する半固定的な情報であり、顧客ID、顧客の名称(氏名)、担当者、代表者、住所、所属部署および電話番号、等である。新しく加入し注文する顧客があると追記される。
【0047】
オーダー情報Db3は、各地の支所から受注センターに随時に送信され受診される各オーダーがデータベース上の登録項目に編集されて登録される。オペレーターによるオーダー情報Db3の1つの登録項目として、オーダーIDと、1オーダー毎に纏め、かつ1種単位の物品に分ける各物品名と、各物品名に対応する物品IDと、各物品名に対応する注文数と、オーダー日と、出荷日と、出荷先ID、等登録項目が関連性を有して登録される。
【0048】
管理プログラム群Pbは、第1―第6のプログラム、その他を有する。これらプログラムは一例であり、限定要件ではない。
【0049】
第1のプログラムは、統合制御用コンピュータTpcのディスプレイに、図2に示すように、物流倉庫H内のエリアを3つのゾーンに分け、さらに、各ゾーンを列状の複数のロケーションと各ロケーションに立ち寄る通路とを有するように描画し、さらに、図3に示すように、各ロケーションに固定棚を重ねて描画する機能を有するプログラムである。
【0050】
第2のプログラムは、
物流倉庫H内の全ての固定棚を対象に一定期間、例えば7日間での1物品毎の1ピッキングがロケーションに紐付けられてカウントされるピッキング実績に基づく棚毎のピッキング回数の多少に応じてゾーン分けの数と同じ複数(3つ)のクラスに分ける機能を有し、
さらに、各クラスの複数の固定棚のロケーションのそれぞれに1つのロケーションIDを紐付け、各ロケーションを該当する1つのゾーン内の紐付けされた1つのロケーションに分配表示する機能を有し、
さらにまた、第2のプログラムは、棚毎のピッキング回数をオーダー情報Db3から抽出し、ピッキング回数の高い順に並べ、複数、例えばA,B,Cの3つのランクIDに分け各ロケーションに紐付けてクラスA,B,Cのいずれかを記録するとともに棚配置位置を適宜に選択してロケーションIDを付与するとともに、図3に描画された図中の各固定棚にロケーションを表示する機能を有する機能を有する。
この機能により記録されたクラスa,b,またはcの固定棚を物流倉庫H内の棚配設エリアを3つに分けた第1-第3のゾーンA,B,またはCに配設することができる。
【0051】
第3のプログラムは、オーダー情報Db3から各作業者に1回に当て割り振られる複数のオーダーの束(バッチ)を抽出する機能を有する。例えば、オーダー数が12,000オーダーあると仮定し、例えば50人の作業者が一人当たりの1回のバッチ処理を1日4回繰り返すものとした場合、各作業者が1回のバッチ処理で60オーダーに係る物品をピッキングすることにすれば、全オーダーを処理することができ、一人一回分の60オーダー数が1バッチである。
【0052】
バッチに係るリストアップされた60オーダー分のピッキング情報は、オーダー情報Db3から抽出され、1種の物品毎に収納された固定棚の、配列場所を示すゾーンIDと、ロケーションIDと、ロケーションと、物品IDと、物品名と、物品の棚内の収納位置と、ピッキング個数、物品の写真画像、等である。
【0053】
第4のプログラムは、バッチに係るリストアップされた60オーダー分のピッキング情報を、バッチ抽出でリストアップされたままのオーダーの順番ではなく、60オーダー分の物品を棚毎に纏め、後述する図9図11に示すように、バッチに係るリストアップされた60オーダー分のピッキング対象となる固定棚を対象に、固定棚の表示上にピッキングマーク(例えば●印)を重ねて付記表示する機能を有する。
【0054】
第5のプログラムは、物流倉庫Hの入口側から、後述する図9図11に示す固定棚の形状表示上に付記表示したピッキングマーク(例えば●印)に対し、最短距離で立ち寄るようにピッキング経路を線表示し、さらに、このピッキング経路順に60オーダー分のロケーションの並び替え、かつロケーションに括りつけられたピッキングデータをリストアップする機能を有する。なお、ロケーションの並び替えに伴って、各ロケーションが記録されているテーブルデータが並び替えられる。
【0055】
第6のプログラムは、第4のプログラムで決定したピッキング内容を携帯端末(スマートフォンが好ましい)にダウンロードさせる機能を有する。ダウンロードの内容として、所定のピッキング経路に合わせるようにロケーションを基準にして並べ替えたものが、ピッキング作業を行うためのピッキングデータとされ各作業者に渡される。各作業者は、オーダーの束をデータ加工したピッキングデータを携帯端末またはスマートフォンを携えて確認しつつ物流倉庫H内に配列された固定棚の周りを後述する図9図11に示す最短経路で歩きつつ固定棚からオーダーに係る物品をピッキングする。
【0056】
[ピッキング管理用コンピュータ]
ピッキング管理用コンピュータは、統合制御用コンピュータTpcのデータベース群Dbから各種データ、例えばテーブルデータである物品情報Db1と顧客情報Db2とオーダー情報Db3、例えば固定棚のロケーションのリスト、その他の事項を入手するようになっている。
ピッキング管理用コンピュータは、作業者がピッキングするために必要なバッチ処理、各バッチのピッキング経路を決定するロケーション情報の順番処理、ピッキング対象の物品名、ピッキング個数、等のノミネートを行うようになっている。
また、ピッキング管理用コンピュータは、物流倉庫内でピッキング作業をする作業者が携帯している携帯端末からピッキングの都度に送信されてくる情報、例えばピッキングを行った固定棚のロケーション情報と物品IDとピッキング個数、等を入手し、各固定棚内の残りの物品の個数を把握し物品の補給管理をするようになっている。
【0057】
ロケーションID、ランクIDは、一定期間のピッキング実績に基づいて棚毎のピッキング回数の見直しがピッキング管理用コンピュータにおいて行われ、ピッキング回数の多少に基づいたランク付けを示すランクIDに変動が生じたときは、固定棚同士の間でロケーションの相互交換移動を行うときにピッキング管理用コンピュータに変更登録される。
【0058】
すなわち、ピッキング回数が多い方の複数の固定棚を特定領域に集中配置した後の一定期間経過後に、当該一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、特定領域とした複数の固定棚の今回のピッキング回数と、前回前記特定領域外とした固定棚の今回のピッキング回数とを比較し、ピッキング回数の多少が逆転している前回集中配置とした固定棚と前回集中配置外とした固定棚との間でロケーション情報を変更し、かつこれに基づいて実際のロケーションを変更する。
【0059】
ピッキングが行われるときは、ピッキング管理用コンピュータに端末からピッキングが行われた信号を入力することにより、常に棚内の現在の収容個数が登録される。
【0060】
全てのオーダーを対象にプログラムにより一人の作業者の1回のピッキング作業のための適宜数のオーダーの束であるバッチを抽出するには、ロケーションIDの1つまたは複数と、バッチ構成オーダー数とを絞り込み条件とすることにより、ロケーションIDをピッキング順にリストアップ形式で抽出でき、このとき、各ロケーションIDに紐付けて物品情報Db1と顧客情報Db2とオーダー情報Db3とから紐付け情報が抽出されるようになっている。これにより、オペレーターの入力負荷が軽減され間違い入力が回避される。
【0061】
例えば、オペレーターによりオーダー情報Db3の1つの登録項目の入力を行う毎に、例えば入力された物品IDに基づいて、物品情報の中の同一の物品IDと照合が行われ当該物品IDとリンクする一連の物品情報が自動的に抽出されオーダー内容に付け加えられる。オーダー情報Db3は、バッチの対象となり、ピッキングされた後は閉鎖データベースに移される。
【0062】
[固定棚の配置方法および物流倉庫]
本実施の形態に係る固定棚の配置方法は、物流倉庫内に配置されるピッキング対象の全ての固定棚について、ピッキング管理用コンピュータにより各棚内に収容された物品の一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、固定棚を人力または走行ロボットによりピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置し、そして、前記ピッキング対象の全ての固定棚から前記特定領域に集中配置する複数の前記固定棚を除いた複数の前記固定棚についても、前記ピッキング回数の多少に応じてクラス分けして固定棚を対象にピッキング回数の多いとしてクラス分けした複数の固定棚のグループ毎の寄せ集まりとなるよう人力または走行ロボットにより前記集中配置とした前記固定棚に近い位置に配置する構成である。
【0063】
さらに、本実施の形態に係る固定棚の配置方法は、ロケーションを変更することを含む構成である。すなわち、前記ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を一定領域に集中配置した後の一定期間経過後に、ピッキング管理用コンピュータにより当該一定期間当たりのピッキング回数の算出を行い、前回一定領域とした複数の前記固定棚の今回のピッキング回数と、前回前記一定領域外とした前記固定棚の今回のピッキング回数とを比較し、ピッキング回数の多少が逆転している前回集中配置とした前記固定棚と前回集中配置外とした前記固定棚との間でロケーション情報を変更し、かつこれに基づいて実際のロケーションを変更する。
【0064】
ピッキング回数の算出値の算出に関する1回のピッキングのカウントについては、
(1)各固定棚に収納している全種類の物品を対象とした前記一定期間当たりの合計のピッキング回数に基づいて決定する。
(2)各固定棚に収納している全種類の物品を対象とするのでなく前記一定期間当たりのピッキング回数の多い複数種類の物品を対象とした合計のピッキング回数の算出値同士を比較して決定する。
(3)各固定棚に収納している全種類の物品の中、前記一定期間当たりの一番ピッキング回数が多い1物品を比較対象として選出し当該ピッキング回数の算出値同士を比較して決定する。
という3つの方法のいずれか1つを採用するとよい。
【0065】
上記の「ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を…集中配置する」とは、ピッキング回数が多い順に並べることは必要ではなく、適宜の順番で寄せ集め配置することである。各クラス分けに係るピッキング回数の多い棚の寄せ集め配置についても同様に配置する。
【0066】
すなわち、ピッキング回数が多い方の複数の固定棚と、ピッキング回数が少ない方の複数の固定棚を複数ランクに分けて、同一のランクに分けた複数の固定棚の集まり毎に配置領域を分けるものであり、同一のランクに分けた複数の固定棚の配置領域ではピッキング回数が多い順に並べる必要はない。
【0067】
また上記の「前記ピッキング回数の多い棚ほど前記集中配置とした前記固定棚に近い位置に配置する」とは、ピッキング回数が多い複数の固定棚をピッキング回数が少ない複数の固定棚よりも前記集中配置とした前記固定棚に近い位置に配置することである。
【0068】
また上記の「特定領域」とは、一定領域である場合と変動領域である場合のいずれでもよい。
【0069】
すなわち、ピッキング回数の調査に基づいてピッキング回数の多い方の固定棚の数を固定する取り扱いとすれば所要数の固定棚を配置するために必要な予め決まっている一定領域とすることができ、他方、ピッキング回数の多い方の固定棚の数を固定せず増減してもよい取り扱いとすれば適宜数の固定棚を寄せ集めて配置するために必要な領域が一定領域ではなく増減する変動領域とすることができる。
【0070】
さらに上記の「ロケーション情報」とは、少なくとも物流倉庫内の固定棚の位置を示す倉庫内位置IDを含む情報であり、好ましくは倉庫内位置IDと棚IDと物品の棚内の位置を示す棚内位置IDを含む情報である。
【0071】
さらにまた上記の「ロケーションを変更する」とは、原則的に固定棚同士の位置の交換であるが、一定領域内の固定棚内からピッキング回数の少ない物品を取り出しこの物品を一定領域外の固定棚内のピッキング回数の多い物品との収納位置の交換も含まれる。
構成である。
【0072】
図14に示す従来の固定棚の配置方法では固定棚のピッキング回数の多少を調べることはしないかつピッキング回数が多い方の複数の固定棚を寄せ集めるということは当然にしていないのに対して、本実施の形態に係る固定棚の配置方法によれば、全ての固定棚のピッキング回数の多少を調べピッキング回数が多い方の複数の固定棚を特定領域に寄せ集めて配置する構成であるから、1バッチ当たりのピッキング動線とピッキング作業時間を従来に比べて大幅に短縮することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態に係る固定棚の配置方法によれば、ピッキング回数が多い方の複数の固定棚を特定領域に寄せ集めて配置するだけでなく、その他の固定棚についても、ピッキング回数の多少を調べランク付けしてピッキング回数が多い複数の固定棚とピッキング回数が少ない複数の固定棚とにランクに分かれて分布するよう配列されるので、ピッキング回数が少ない固定棚が含まれるようにバッチを作る場合もピッキング対象の固定棚の配列領域が従来に比べて大幅に小面積となり1バッチ当たりのピッキング動線とピッキング作業時間を図14に示す従来法のピッキングに比べて大幅に短縮することができる。
また、ピッキング回数が少ない固定棚に限定してバッチを作る場合も、ピッキング対象の固定棚の配列領域が従来に比べて大幅に小面積となり1バッチ当たりのピッキング動線とピッキング作業時間を図14に示す従来法のピッキングに比べて大幅に短縮することができる。
【0074】
さらに、本実施の形態に係る固定棚の配置方法によれば、上述したロケーションを変更するので、1バッチ当たりのピッキング動線とピッキング作業時間を益々大幅に短縮することができる。
【0075】
本実施の形態に係る物流倉庫は、倉庫内bの全ての固定棚について上記の固定棚の配置方法により配列された物流倉庫であるから、固定棚の配置方法により得られる効果を有する。
【0076】
以下の図2図10を用いた説明において、ゾーンIDと通路IDとロケーションIDという要素を用いているが、ピッキング管理用コンピュータにおける管理項目はロケーションIDのみであってよい。
【0077】
ゾーンID」と通路IDという要素についてはコンピュータにおいて管理項目でなくてよい。
ゾーンID」と通路IDについては、物流倉庫内の固定棚の配置状況やピッキング通路を分かり易く説明するための便宜として説明に用いている。
【0078】
全ての固定棚について一定期間のピッキング実績に基づくピッキング回数を調べてピッキング回数の多少に基づくランク付けをすることはピッキング管理用コンピュータにおいて行うので、このランク付けと物流倉庫内のゾーン分けとが対応する。
【0079】
図2は、本発明の実施の形態に係る物流倉庫内の一例の固定棚のゾーンおよび通路をピッキング管理用コンピュータのディスプレイに示す平面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る物流倉庫内の一例の固定棚の配置状態をピッキング管理用コンピュータのディスプレイに示す平面図である。
【0080】
図2は、物流倉庫(建物外壁を示す)H内に、例えば180台の固定棚をそれぞれの定位置に配置できるようにするため、倉庫内エリアを複数のゾーン、例えば3つのゾーンA,B,Cに分け、さらに、各ゾーンを例えば2列のマス目状に分画し180台の固定棚の定位置範囲を示すロケーションと、各ロケーションに到達できる通路とを分画した平面図である。図2において、符号P1-P180はロケーションIDであり、符号S1-S20は通路を示すIDである。
【0081】
ロケーションP1-P180は、固定棚を平面視した大きさの長方形に対し例えば長辺が10cm大きく、および短辺が5cm大きい長方形となるよう床にペイントで表示されているとともに、通路側にそれぞれのロケーションIDの表示プレートが配設されている。ロケーションP1-P180が固定棚の平面視形状よりも大きい寸法であることにより、後述するピッキング回数の変動に伴う固定棚の入れ替えを行う際に入れ替えが容易にできる。
【0082】
図3は、図2の各ロケーションP1-P180に物品が収納された固定棚を配設した状態を示す他の平面図である。符号R1-R180は固定棚のロケーションを示す。図3ではロケーションIDの表示を示していない。そして、ピッキング管理用コンピュータPmpcが例えば物流倉庫H内の入口付近に配置される。
【0083】
図4は、本発明の実施の形態に係り、物流倉庫内の全て(図示例では180台)の固定棚について、一定期間のピッキング実績に基づいて棚毎のピッキング回数をデータ抽出し、ピッキング回数を例えば3つのランクに分け、ランク毎の複数の固定棚を異なる領域に寄せ集めるためのデータ抽出後のランク分けする図である。図5は、本発明の実施の形態に係り、1つのバッチに係るピッキング対象の固定棚が所在するランク毎の配置領域A,B,Cの少なくともいずれか1つと、バッチ数との割合について示す棒グラフである。
【0084】
図3に示すロケーションのR1-R180は、一番最初に固定棚を配置する際に、ピッキング管理用コンピュータPmpcにおいて、物流倉庫H内の全て(180台)の固定棚について、一定期間、例えば1週間のピッキング実績に基づいて棚毎のピッキング回数が多い順にロケーションを並べてデータ抽出し、棚毎のピッキング回数の多少により3つのランクにランク分けしてランク毎に寄せ集め配列し、ピッキング管理用コンピュータPmpcにおいて、実際に配列した位置に対応するように固定棚にロケーションを付与したものである。
【0085】
図4は、縦軸に一定期間のピッキング実績の棚毎のピッキング回数を目盛り、横軸に固定棚のランク毎に寄せ集め配列位置を目盛り、図3に示す180台の固定棚R1-R180のピッキング実績に応じて並べて得られる線図を示す。なお、ピッキング管理用コンピュータPmpcに図4に示す線図を表示するものではない。
【0086】
図4は、ランク分けされた固定棚の配置領域と棚毎のピッキング回数との関係を説明するための線図である。縦軸に一定期間のピッキング実績の棚毎のピッキング回数を目盛り、横軸に180台の固定棚R1-R180をピッキング回数が多い順に並べたものである。例えば、毎週の出荷終了後にピッキング回数の調査を行う場合、ピッキング回数の変動があるから図4に示す線図は変動する。なお、図4のグラフをピッキング管理用コンピュータPmpcに表示しない。
【0087】
上記の様に、180台の固定棚のロケーションをデータ抽出しクラスa,b,cに分けることができるので、棚毎のピッキング回数の多少に応じて180台の固定棚R1-R180をゾーンA,B,CのロケーションP1-P180に配設している。具体的には、ゾーンA内のロケーションP1-P60にピッキング回数が多いクラスaの固定棚R1-R60を配設し、ゾーンB内のロケーションP61-P140にピッキング回数が中位のクラスbの固定棚R61-R140を配設し、ゾーンC内のロケーションP141-P180にピッキング回数が少ないクラスcの固定棚R141-R180を配設している。
【0088】
上述した図3に示す、固定棚R1-R180の棚毎のピッキング回数の多少によるクラスa,b,cに基づくゾーンA,B,C、ロケーションP1-P180への配置は、本願第1の発明に係る実施の形態の固定棚の配置方法に基づくものである。
【0089】
すなわち、本願第1の発明に係る実施の形態の固定棚の配置方法は、物流倉庫H内のピッキング対象の全ての固定棚R1-R180を例えば1週間毎の一定期間のピッキング実績に基づき、棚毎のピッキング回数の多少に応じて複数(例えば3つ)のクラスa,b,cに分けるとともに、物流倉庫H内の棚配設エリアを複数のクラスa,b,cと同数のゾーンA,B,Cに分け、さらに、ゾーンA,B,CのそれぞれをロケーションP1-P180に細分し、複数の固定棚R1-R180をそれぞれ自身のクラスに対応するゾーンA,B,Cに配設するものである。
【0090】
もって、ピッキング対象の全ての固定棚をピッキング回数の多少に応じてクラス分けして、このクラスと対応する1つのゾーンに集中して配設することができる。
【0091】
こうした配置方法により、各作業者のバッチに係るピッキングの大半をピッキング回数が多い第1のゾーンAに集中して行うことができ、ピッキング動線よりもさらに大幅に短縮できて、ピッキング作業時間が大幅に短縮され、人的資源、現在ある物流設備を有効に活用できる。なお、発明の効果ついては、後述する本願発明に係るピッキング方法の説明においても言及する。
【0092】
なお、図3において、本発明に係る固定棚の配置方法を最初に実施したときの固定棚の配列とロケーションの配列とを数値番号を一致させて表示しているに過ぎない。すなわち、各固定棚のロケーションの数値と、各固定棚の位置しているロケーションIDの数値は同一であるが、これは便宜上のものに過ぎない。例えば、後述する固定棚同士の位置交換がある場合、図3に示す交換移動するロケーションはIDが変わることなく移動先の位置に表示される。このとき、各固定棚のロケーションの数値と、各固定棚の位置しているロケーションIDの数値は同一ではなくなる。1週間ごとに固定棚の位置交換が行われることが続くことで、図3に示す殆どの固定棚のロケーションの数値と、各固定棚の位置しているロケーションIDの数値は殆どが同一ではなくなる。
【0093】
[固定棚の配置方法について]
本発明に係る実施の形態の固定棚の配置方法は、物流倉庫Hのピッキング開始位置に備えたピッキング管理用コンピュータPmpcのデータベース群Dbの管理が上記の様に行われる下で、本発明の第一の工夫は、物流倉庫H内に配列された固定棚の配列方法に関するものであり、棚配置を決定する第1のプログラムにより決定され、一定期間のピッキング実績に基づいて、ピッキング回数の多い固定棚を複数ゾーンに分けた複数の配置エリアの中の特定の配置エリアに集中させて配置する構成である。
【0094】
すなわち、全ての固定棚を一定期間のピッキング実績に基づいて固定棚のクラス分けし、各固定棚の対応するゾーン内の配列位置を決定してロケーションIDの付与を行う構成であり、実際に各固定棚を物流倉庫Hのレイアウトの所定位置に配置するものであり、これにより、ピッキング回数の多い複数の固定棚と、ピッキング回数の中位の複数の固定棚と、ピッキング回数の少ない複数の固定棚とをそれぞれのゾーンに分かれて集中配置するものである。
【0095】
複数(3つ)のゾーンは、ピッキング回数の多い順に配列する構成とするのがよい。
さらに、複数ゾーンに分けた各前記配置エリアは前記固定棚が並ぶ通路単位に分けられる配置エリアであり、複数の通路の中、一方の通路から他方の通路の順にピッキング回数の多い順に複数の前記固定棚をクラス分けして配置する構成とするのがよい。
【0096】
この工夫により、本実施の形態の固定棚の配置方法により物流倉庫内に配置された固定棚の周りを歩いてピッキングする場合、図14に示す最短経路を歩いてピッキングする場合に比べ、更に短いピッチング動線が得られ、ピッキング作業時間を大幅に短縮できる。
【0097】
以下さらに、本実施の形態の固定棚の配置方法は、以下に説明する4つのステップにより達成される。
【0098】
[第1ステップ]
図4のゾーン・ピッキング回数関係線に示すように、一定期間(例えば7日間)における棚毎のピッキング実績に基づいて、全てのオーダーの棚毎のピッキング回数を纏めて抽出し、ピッキング回数の多い順に並べる。
【0099】
一定期間の全てのオーダーに関するピッキング実績とは、一日当たりの全オーダーを処理するためのピッキング作業が例えば1週間行われた棚毎の累積ピッキング実績を指す。一定期間が、1週間でなく、1か月の方が安定したピッキング実績が得られる。
【0100】
棚毎のピッキング回数の算出については、いくつかの考え方があり、第1に、各固定棚に収納している1物品をピッキングする毎に1回カウントするときのピッキング回数を算出するものであってよい。これは、図1のデータベース群Dbの中のオーダー情報Db3に登録している棚毎の注文数と一致するので、棚毎の注文数を抽出するものであってよい。
【0101】
さらに、ピッキング回数のカウントについては以下のいずれかであって良い。
(1)注文数をピッキング回数として記録する、具体的には、データベース群Dbにオーダー情報に一要素である注文数を登録する際に、物品毎の注文数をピッキング回数として記録して取り扱うか、または、
(2)一作業者が1つの固定棚から同一物品を1つまたは複数ピッキングする毎にピッキング回数を「1」とカウントする(実際のピッキング回数をカウントする)ものとして、データベース群Dbにオーダー情報Db3に一要素である注文数を登録する際に、当該注文数をピッキング回数として取り扱い、または、
(3)一作業者が1つの固定棚から同一物品であってもピッキングする毎にピッキング回数を「1」とカウントする(実際のピッキング回数をカウントする)ものとして、データベース群Dbにオーダー情報Db3に一要素である注文数を登録する際に、当該注文数をピッキング回数として取り扱う。
【0102】
続いて各棚に収納している全種類の物品の中、オーダー情報Db3に登録している棚毎の注文数に基づいて、第2に、各棚のピッキング回数が一番多い一種類の物品を対象として、また第3に、各棚のピッキング回数が多い複数種類の物品を対象としたピッキング回数を対象としてピッキング回数を抽出するものであってもよい。
【0103】
[第2ステップ]
第1ステップで得られたピッキング回数の多少に基づいて並べた全ての固定棚を3つ以上にa,b,cのランクIDに分け、このa,b,cのランクIDを各ロケーションに関連付け、さらにランク分けに対応して棚の設置範囲を分ける。なお、第2ステップについてコンピュータ処理としてもしなくてもよい。また以下において、ランク分けに対応して棚の設置範囲をロケーション範囲という。
【0104】
[第3ステップ]
ピッキング管理用コンピュータPmpcにおいて、各固定棚に関し前記ランクIDと前記ゾーンIDとに対応して決められる該当ゾーンの中の所定位置への配置を個々に決定しかつロケーションIDを付与登録すること。
【0105】
[第4ステップ]
前記ロケーションIDに基づいて各固定棚を該当ロケーション範囲内の位置へ配置すること。すなわち、ピッキング回数が多い方の複数の前記固定棚を特定領域に集中配置し、さらにピッキング対象の全ての固定棚から前記特定領域に集中配置する複数の前記固定棚を除いた複数の固定棚についても、ピッキング回数の多い棚ほど前記の特定領域に集中配置とした固定棚に近い位置に配置するために行うものである。
【0106】
上記構成により、固定棚の配置エリアを例えば第1―第3のロケーション範囲A,B,Cに分ける場合、第1―第3のロケーション範囲の並びがピッキング回数の多い順となるのが望ましく、第1のロケーション範囲Aにはピッキング回数が大なるものとしてランク分けされる複数の固定棚が配列され、第2のロケーション範囲Bにはピッキング回数が中なるものとしてランク分けされる複数の固定棚が配列され、第3のロケーション範囲にはピッキング回数が小なるものとしてランク分けされる複数の固定棚が配列される。
【0107】
さらに、第1のロケーション範囲Aに対する複数の固定棚の配列についても、ピッキング回数の大なるものが第2のロケーション範囲Bから遠い端の列より並び、ピッキング回数の小なるものが第2のロケーション範囲Bに近い端の列より並ぶようにして、固定棚のロケーション変更による他のロケーション範囲へ移動する際の移動距離が短くなるようにするのがよい。このことは、第2,第3のロケーション範囲B,Cに対する複数の固定棚の配列についても言える。
【0108】
したがって、上記の第1-4の段階により、配置位置が決定された物流倉庫Hの全ての固定棚は、ピッキング管理用コンピュータPmpcのデータベース群Dbにおいて常に各オーダーに関し物品IDと物品名とロケーションIDとが関連性を有して登録されるものであり、各固定棚がピッキング回数の多少に応じてランク分けされ対応するロケーション範囲に配置され、しかも、ピッキング回数の多い固定棚が1つのロケーション範囲に集中して配置されることになる。
【0109】
このため、各作業者がオーダーに係る物品をピッキングするには、ピッキング管理用コンピュータPmpcにより各作業者に当たりに割り振られるオーダーの束であるバッチに係るピッキング情報に基づいて行うが、各作業者は、物流倉庫Hに配列された複数の固定棚の周りを歩いてオーダーに係る物品が収納された固定棚に立ち寄り、固定棚に収納された複数種の物品からオーダーに係る物品を選択しオーダー数だけピッキングしピッキングカートに収納するためのピッキング動線が、従来の配列方法で配列された固定棚の周りを図14に示す最短経路を歩いてピッキングする場合に比べて大幅に短縮できて、ピッキング作業時間が大幅に短縮され、人的資源、現在ある物流設備を有効に活用できる。
【0110】
[固定棚のロケーション変更のシミュレーションと実際の棚移動]
図3に示す固定棚の配置方法では、全ての固定棚を一定期間のピッキング実績に基づく棚毎のピッキング回数の多少に応じて複数のランク(第1-第3のランクa,b,c)に分けて配置する方法を採っている。これにより、ピッキング作業の大半をピッキング回数の多い固定棚を集めたロケーション範囲Aで行うことができ、もって、ピッキング動線が非常に短くなり、ピッキング作業時間を短縮できる。しかし、各固定棚のピッキング回数の多少には日数の経過、季節の変化、需要の一巡、代替え新製品の登場、等様々な要因により変動を生ずるので、固定棚の配置を最初のままの状態に固定してしまうと、ピッキング回数が少なくなった固定棚が第1のロケーション範囲Aに配置されたままになるとともに、ピッキング回数が多くなった固定棚が第2、第3のロケーション範囲B、Cに配置されたままになり、ピッキング動線を極限的に短縮するという当初の目的が達成できなくなる。
【0111】
そこで、図4に示すように、全ての固定棚を棚毎のピッキング回数について、一定期間毎、例えば7日間毎のピッキング実績に基づきピッキング回数の見直しが以下の手順で行われる。
【0112】
物流倉庫の例えば1週間毎の休業日に、図4に示すように、全ての固定棚を対象に、一定期間のピッキング実績に基づく棚毎のピッキング回数のデータ抽出を行い、棚毎のピッキング回数のランク分けの結果について、現在のランク分けの結果と相違があれば、相違がある第1のロケーション範囲Aの固定棚と第2のゾーンBの固定棚と第3のロケーション範囲Cの固定棚との間で相互に交換移動するシミュレーションを行い、ピッキング経路に一定割合以上の短縮があれば、交換移動を実行するものである。
【0113】
まず、ピッキング管理用コンピュータPmpcのディスプレイに、図6に示すように、新しい配列画像を表示する。この配列画像は図3と同一である。そして、図4に示すように、全ての固定棚について1週間毎の棚毎のピッキング回数を実績として算出し、各固定棚の図の上に、新しく分けたランクa,b,cに対応したオーダー物品存在マーク、例えば3段階に大きさおよび線の太さが異なる○を表示する。なお、ピッキング回数の多少によるオーダー物品存在マークは、ランク分けの表示と同じであり、◎と○と△の記号による異なる3つの記号表示、赤、橙、青などの色違いの○の表示、固定棚の面積の色違いの表示、等で表してもよい。
【0114】
そこで、図6に示す新しくクラス分けした配列画像を観察した場合、この図示例では、ロケーション範囲Aの固定棚R24,R34,R55,R57に中位の大きさの○の表示と固定棚R36に小さい○の表示が付けられ、ロケーション範囲Bの固定棚R65,R83,R88に大きい○の表示と固定棚R116,R138に小さい○の表示が付けられ、またロケーション範囲Cの固定棚R145に大きい○の表示と固定棚R146,R147に中位の大きさの○の表示が付けられている。
【0115】
したがって、ロケーション範囲Aの固定棚R24,R34,R57とロケーション範囲Bの固定棚R65,R83,R88との間で相互移動交換してゾーン位置を変更し、ロケーション範囲Aの固定棚R36とロケーション範囲Cの固定棚R145との間で相互移動交換してロケーション範囲を変更し、またロケーション範囲Bの固定棚R116とロケーション範囲Cの固定棚R146との間で相互移動交換してロケーション/ロケーション範囲を変更する。
ロケーション範囲Aの固定棚R55については、ロケーション範囲に交換対象の大きい○の表示の固定棚が無いので移動しない。また、ロケーション範囲の固定棚R139については、ゾーンCに交換対象の中位の大きさの○の表示の固定棚が無いので移動しない。
【0116】
ここでの移動交換は実際に固定棚同士を移動交換するのではなく、ピッキング管理用コンピュータPmpcのディスプレイ上での表示のみのシミュレーション移動である。
【0117】
続いて、ピッキング管理用コンピュータPmpcのディスプレイ上の図6の表示において、所要のアルゴリズムのピッキング経路生成ソフトウエアにより、上記の移動交換する前の配列と移動交換した後の配列について、移動交換の対象である固定棚を含むようにいくつかの新しいサンプルバッチを作成し、これらのサンプルバッチを適用して、図6の移動交換する前の配列においてロケーション範囲B,Cに存在する移動交換する前の固定棚に付した大きい○の表示に立ち寄るように図7に示す最短のピッキング経路Pr1を生成し、また、図6の移動交換した後の配列においてロケーション範囲Aに移動交換した固定棚に付した大きい○の表示に立ち寄るように図8に示す最短のピッキング経路Pr2を生成する。そして、2つのピッキング経路Pr1、Pr2の長さを比較し、図8に示すピッキング経路Pr2が図7に示すピッキング経路Pr1よりも例えば15%以上短くなればピッキング作業時間を効果的に短縮できるものと判断する。
【0118】
そうして、今度は実際に、図7に示す現在の配列画像から図8に示す新しくランク分けした配列画像の通りに該当する固定棚同士を移動交換する。
【0119】
図8に示すピッキング経路Pr2が図7に示すピッキング経路Pr1よりも例えば15%未満であれば、ピッキング作業時間を効果的に短縮されないものとして、今回の固定棚同士の移動交換は行わないものとし、次の7日間のピッキング実績により改めてシミュレーションを行うものとする。
【0120】
固定棚のロケーション変更は、固定棚を持ち上げて移動するか、または固定棚を牽引もしくは押して移動する自動走行ロボットにより行う。また、自動走行ロボットを用いず、固定棚の脚にキャスターを備えて人力移動により行う構成であってもよい。
【0121】
本願発明は、上記の固定棚の配置方法によって配置された固定棚を備えている物流倉庫を特許請求の範囲の対象として含むものである。
【0122】
[ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法]
上述した固定棚の最初のロケーションおよびその後のロケーション変更は、ピッキング経路を極限的に短縮する上で必要不可欠であるが、さらに、ピッキング経路を極限的に短縮するためには、図13に示す蛇行経路ではなく、図14に示すように、最短経路を求めるアルゴリズムを採用したピッキング経路生成ソフトウエアを採用するのがよい。すなわち、ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップ方法としては、後述する図9図11に示すように、生成されたピッキング経路に従って配列された固定棚の周りを歩くときにピッキングのために立ち寄る順番に固定棚のロケーション情報をリストアップする。
【0123】
ピッキング順序を決めるロケーション情報のリストアップは、オーダー情報Db3から一人の作業者の1回のピッキング作業のためにバッチ(オーダーの束)を抽出し、さらにバッチに係る物品を収納している全ての固定棚に対してピッキング経路に従ってピッキングする順序でリストアップする。
【0124】
一人の作業者毎の1回のピッキング作業のためにバッチに係るピッキング経路は以下にように決定される。まず、ピッキング管理用コンピュータPmpcのディスプレイに、上述した固定棚の配置方法に基づき、図3に示すように、物流倉庫H内に配置された全ての固定棚について、ロケーション、および固定棚を含む配列画像を表示し、さらに、後述する図9図11に示すように、ピッキング当日の全オーダーの中、一人の作業者の1回のピッキング作業のために割り振られたバッチに係る物品が収納された全ての固定棚のそれぞれにオーダー物品存在マークとして例えば「●」を重ねて表示する。そしてさらに、ピッキング経路生成プログラムにより、バッチに係る物品が収納された全ての固定棚の前を通る蛇行通路または最短通路であるピッキング経路を生成表示し、ピッキング経路に従ってピッキングする順序で固定棚のロケーションをリストアップする。
【0125】
ピッキング管理用コンピュータPmpcにおいて、ピッキング当日の全オーダーの中、作業者毎に割り当てる各バッチを生成する際に、ロケーションがなるべく互いに近い範囲内にピッキング対象となる物品を収納している複数の固定棚が位置しているように各バッチを設定し、上述したピッキング経路を生成表示し、ピッキング経路に従ってピッキングする順序で固定棚のロケーションをリストアップするのがよい。
【0126】
ピッキング経路を極限的に短縮するために、ロケーションがなるべく互いに近い範囲内で各バッチを設定する方法を以下に説明する。なるべく互いに近い範囲内とは、小規模の物流倉庫においては多くて50-60台の固定棚が2-10列の並ぶ範囲内であり、大規模の物流倉庫においてはもっと多くの台数の固定棚が集まっている範囲である。各ゾーンの範囲内の場合もあるし、ロケーション情報の境界の通路を挟んで2つのロケーション情報にわたる範囲の場合もある。
【0127】
1バッチを生成するには、例えば1つのバッチを12,000オーダーから抽出するために、ロケーション範囲A内の通路IDを指定しこの通路IDに面する固定棚であってかつ60オーダーを条件指定して60オーダーをロケーションとともにリストアップする。60オーダーに満たない数がリストアップされるときは、ゾーンAに広げかつ不足分のオーダー数を条件指定してリストアップする。さらに、60オーダーに満たない数がリストアップされるときは、ロケーション範囲AおよびBであってかつ不足分のオーダー数を条件指定してリストアップする。さらにまた、不足分のオーダー数に満たない数がリストアップされるときは、ロケーション範囲A,B,およびCであってかつ不足分のオーダー数を条件指定してリストアップする。固定棚ができるだけ狭い範囲にある60オーダーをリストアップする。リストアップを終えた60オーダーについてはリストアップの対象から除外する。このようにして、次々に、一人の作業者の1回の作業分のバッチ(60オーダー)のリストアップを上記と同様にしてリストアップする。
【0128】
図5は、1つのバッチに係るピッキング対象の固定棚が所在するゾーンA,B,Cの少なくともいずれか1つと、バッチ数との割合について示す棒グラフである。
この棒グラフにおいて、
F1はオーダーに係る物品が収納された固定棚がロケーション範囲AとBとCとに存在する場合のバッチ数である。
F2はオーダーに係る物品が収納された固定棚がロケーション範囲AとBとに存在する場合のバッチ数である。
F3はオーダーに係る物品が収納された固定棚がロケーション範囲Aのみに存在する場合のバッチ数である。
F4はオーダーに係る物品が収納された固定棚がロケーション範囲BとCとに存在する場合のバッチ数である。
F5はオーダーに係る物品が収納された固定棚がロケーション範囲Bのみに存在する場合のバッチ数である。
F6はオーダーに係る物品が収納された固定棚がロケーション範囲Cのみに存在する場合のバッチ数である。
【0129】
そこで、作業者毎に割り当てる各バッチを生成するには、オーダー情報Db3に登録されている例えば12,000の全オーダーの中から、例えば絞り込み条件として、ロケーション範囲AとBとCの範囲、ロケーション範囲AとBの範囲、ロケーション範囲Aの範囲、ロケーション範囲BとCの範囲、ロケーション範囲Bの範囲、またはロケーション範囲Cの範囲をピッキング管理用コンピュータPmpcに入力するとともに、例えば60オーダーを抽出するようにして所要数のバッチを構成する。このようにすると、互いに近い範囲内で各バッチを設定することができる。
【0130】
図9は、図3に示す棚配置図上でF1の条件で抽出された1つのバッチ分のピッキング対象の固定棚に重なるように●を付けて当該固定棚の位置をプロットした図である。同様に、図10図11は、図3に示す棚配置図上でF3,F4の条件で抽出された1つのバッチ分のピッキング対象の固定棚に重なるように●を付けて当該固定棚の位置をプロットした図である。
【0131】
作業者毎に割り当てる各バッチを生成する場合、ロケーションがロケーション情報よりも狭い範囲、互いになるべく近い範囲内、例えば、通路の片側または両側に複数の固定棚が並んでいる範囲内であるか、あるいは通路を挟んで両側に並んでいるか、さらに、2つの通路に挟まれて背中合わせに2列並んでいる範囲内で、各バッチを設定することができる。これにより、ピッキング経路の距離が極限的に短縮される。
【0132】
[ピッキング情報生成方法]
オーダー情報Db3に登録されている例えば12,000の全オーダーの中から例えば60オーダーを抽出するようにして1つのバッチを構成しても、このバッチの情報はオーダーが60並んだだけのものであり、オーダー順にピッキングするものとすれば、それこそ物流倉庫内を複雑に歩き回ることになるから、ピッキング経路が非常に長くなってしまい、とても実用に供することはできない。
【0133】
そこで、ピッキング管理用コンピュータPmpcにおいて、60オーダーに係る全ての物品についてオーダーの括りを外し棚毎に纏めること、および、図3に示す棚配置図でピッキング対象の固定棚に重なるように例えば●を付けてピッキング対象の固定棚の位置をプロットしてから、ピッキング経路生成ソフトウエアにより最短のピッキング経路を生成する。図9図11は、1つのバッチ分のピッキング対象の固定棚に重なるように●を付けて当該固定棚の位置をプロットし、さらに、ピッキング経路生成ソフトウエアにより最短のピッキング経路を生成した図である。
【0134】
そして、図9図11に示すそれぞれのピッキング経路順に●の付いたロケーションを並べるようリストアップし、さらに、各ロケーションに紐付けるようにデータベース群DbからロケーションID、物品ID、物品名、物品の棚内の収納位置、物品の画像、ピッキング個数、等をリストアップし、もって、ピッキング対象の棚毎のテーブルデータを生成する。
【0135】
[ピッキング方法]
上述のように生成される1つのバッチに係るピッキング情報(棚毎のテーブルデータ)は、配列された固定棚の周りを歩いてピッキング作業を行う一人一人の作業者が実際にピッキングするために携帯しなければならない情報である。このため、1つのバッチに係るピッキング情報は、ピッキング管理用コンピュータPmpcのデータベースに登録された情報を管理プログラムの機能により抽出され加工編集され生成された後、各作業者の携帯端末であるスマートフォンSmfにダウンロードされる。
【0136】
図12はスマートフォンの表示画面の一例を示す図である。(A)図は棚の配置位置とピッキングルートを示す。(B)図はピッキング対象のロケーション情報と物品名、物品の画像、ピッキング個数、等を示す。(C)図はピッキング対象のロケーション情報を示す。
【0137】
作業者は、スマートフォンSmfに表示された最初の1つのロケーションを確認し、配列された複数の固定棚の中の、当該確認したロケーションの固定棚に到達することができ、そして、スマートフォンに表示されたロケーションに紐付けられた物品ID、物品名、物品の棚内の収納位置、物品の画像、ピッキング個数を確認しピッキングを行う。ここでのピッキングは、当該固定棚に収容された1つのバッチに係る全ての物品に対して行う。このロケーションのピッキングの終了をスマートフォンSmfに入力すると、スマートフォンSmfには、次の1つのロケーションと、各ロケーションに紐付けられたロケーションID、物品ID、等がスマートフォンSmfに更新表示されるので、当該物品IDのピッキングを行う。こうして、次々にピッキングを行う。1つのバッチ分のピッキングが終了すると、ピッキングされた物品は仕分けステーションでオーダー毎に仕分けされてから出荷される。
【符号の説明】
【0138】
a,b,c…ランクID
A,B,C…ロケーション範囲
P1-P180…ロケーションID
Tpc…統合制御用コンピュータ
Pmpc…ピッキング管理用コンピュータ
Dbs…データベース管理ソフトウエア
Db…データベース群
Pb…管理プログラム群
Db1…物品情報
Db2…顧客情報
Db3…オーダー情報
H…物流倉庫
S1-S20…通路ID
R1-R180…固定棚のロケーション
Pr1,Pr2…ピッキング経路
Smf…スマートフォン
図1
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