(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】デスモグレイン減少剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20241119BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241119BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20241119BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/185
A61P17/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020088903
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】多田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】中原 千尋
(72)【発明者】
【氏名】梶原 篤史
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-292432(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098352(WO,A1)
【文献】特開2005-194246(JP,A)
【文献】特開2014-076957(JP,A)
【文献】特開2010-241762(JP,A)
【文献】特開2016-037501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウスベニタチアオイ(Marsh mallow, Athaea officinalis)の抽出物を有効成分と
する、肌の黒みがかった部分に塗布するための皮膚外用剤であり、
前記
肌の黒みがかった部分において、
前記肌の硬さを柔らかくするため、又は
薬効成分を効率的に前記肌に浸透させるため
に用いられる、デスモグレイン減少剤。
【請求項2】
前記抽出物が、ウスベニタチアオイ((Marsh mallow, Athaea officinalis)の根の抽出物である、請求項1に記載のデスモグレイン減少剤。
【請求項3】
ヒト表皮角化細胞の細胞間接着抑制のための、請求項1又は2に記載のデスモグレイン減少剤。
【請求項4】
減少対象がデスモグレイン1である、請求項1~3の何れか一項に記載のデスモグレイン減少剤。
【請求項5】
敏感肌の改善及び/又は予防のための、請求項1~4の何れか一項に記載のデスモグレ
イン減少剤。
【請求項6】
肌の明度改善のための、請求項1~4の何れか一項に記載のデスモグレイン減少剤。
【請求項7】
肌の透明感向上のための、請求項1~4の何れか一項に記載のデスモグレイン減少剤。
【請求項8】
肌の軟化のための、請求項1~4の何れか一項に記載のデスモグレイン減少剤。
【請求項9】
肌への薬効成分浸透補助のための、請求項1~4の何れか一項に記載のデスモグレイン 減少剤。
【請求項10】
角層重層剥離の改善及び/又は予防のための、請求項1~4の何れか一項に記載のデス モグレイン減少剤。
【請求項11】
請求項1~
4の何れか一項に記載のデスモグレイン減少剤を含む、デスモグレイン減少用皮膚外用組成物。
【請求項12】
化粧料である、請求項11に記載のデスモグレイン減少用皮膚外用組成物。
【請求項13】
医薬品である、請求項11に記載のデスモグレイン減少用皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスモグレイン減少剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肌荒れ、日焼けや乾燥により生じる角層の落屑等の肌状態の悪化に関し、デスモゾーム蛋白質の増加が原因の一つとして知られている。
デスモゾーム蛋白質の量をコントロールする方法として、角層に蓄積したデスモゾーム蛋白質をプロテアーゼにより分解し、ニキビ、フケ、落屑を改善する方法がこれまでに報告されている(特許文献1)。
【0003】
ここで、デスモゾーム蛋白質のうち、特に、デスモグレインが表皮細胞間及び角質細胞間の接着に関与していることが知られている(特許文献2-4)。
【0004】
従来技術として、特許文献2では、アスタキサンチンを含有する角層細胞におけるデスモグレイン減少剤が報告されている。
また、特許文献4では、甘草エキスを有効成分とする皮膚における細胞間接着抑制用経口投与剤が報告されている。
【0005】
ところで、特許文献5、6には、ウスベニタチアオイ(Marsh mallow, Athaea officinalis)の抽出物が白髪防止、白髪改善効果を有していること、ウスベニタチアオイの含有成分であるチリロサイドが、脂肪代謝促進効果を有することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平7-505383号公報
【文献】特開2016-37501号公報
【文献】特許第4002635号公報
【文献】特許第4197194号公報
【文献】特開2016-210755号公報
【文献】特開2007-176858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の先行技術のあるところ、本発明は、デスモグレインを減少させる新規な技術を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ウスベニタチアオイ(Marsh mallow, Athaea officinalis)の抽出物に、デスモグレインの減少作用があることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、ウスベニタチアオイ(Marsh mallow, Athaea officinalis)の抽出物を有効成分とする、デスモグレイン減少剤である。
なお、本明細書において、「デスモグレイン減少」の概念は、デスモグレインの減少、デスモグレインの増加抑制の何れも含む。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記有効成分が、ウスベニタチアオイ(Marsh mallow, Athaea officinalis)の根の抽出物である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記デスモグレイン減少剤は、ヒト表皮角化細胞の細胞間接着抑制のために用いられる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、本発明のデスモグレイン減少剤は、デスモグレイン1の減少のために用いられる。
デスモグレイン1は、主に皮膚に存在する。そのため、デスモグレイン1の減少作用を有する本発明のデスモグレイン減少剤によれば、より効率よく、肌状態悪化の予防又は改善をすることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記デスモグレイン減少剤は、敏感肌の改善及び/又は予防のために用いられる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記デスモグレイン減少剤は、肌の明度改善のために用いられる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記デスモグレイン減少剤は、肌の透明感向上のために用いられる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記デスモグレイン減少剤は、肌の軟化のために用いられる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記デスモグレイン減少剤は、肌への薬効成分浸透補助のために用いられる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記デスモグレイン減少剤は、角層重層剥離の予防又は改善のために用いられる。
【0019】
また、前記課題を解決する本発明は、前述のデスモグレイン減少剤を含む、デスモグレイン抑制用皮膚外用組成物である。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記のデスモグレイン抑制用皮膚外用組成物は、化粧料である。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記のデスモグレイン抑制用皮膚外用組成物は、医薬品である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、デスモグレインを減少させる新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】実施例2における、L
*値の測定結果を示すグラフである。
【
図4】実施例2における、a
*値の測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施例2における、b
*値の測定結果を示すグラフである。
【
図6】実施例2における、硬度の測定結果を示すグラフである。
【
図7】実施例2における、デスモグレイン1量の測定結果を示すグラフである。
【
図8】実施例2における、デスモグレイン1量の測定結果を示す図(代表)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のデスモグレイン減少剤は、ウスベニタチアオイ(Marsh mallow, Athaea officinalis、以下、単にウスベニタチアオイという)の抽出物を有効成分とする。
中でも、本発明のデスモグレインの減少剤は、ウスベニタチアオイの根の抽出物を有効成分とすることが好ましい。
【0025】
ウスベニタチアオイの抽出物は、植物原料を扱う会社により販売されている市販のウスベニタチアオイの抽出物を購入し、使用することができる。
【0026】
また、自生又は生育されたウスベニタチアオイを抽出することで、ウスベニタチアオイの抽出物を作製することができる。
また、ウスベニタチアオイの根を抽出することで、ウスベニタチアオイの抽出物を作製することが望ましい。
【0027】
ウスベニタチアオイの抽出に際し、ウスベニタチアオイの根を予め、粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。
【0028】
抽出物は、例えば、次の方法で得ることができる。ウスベニタチアオイの根又はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去する。しかる後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィーなどで分画精製することで、所望の抽出物を得ることができる。
【0029】
抽出溶媒としては、水、エタノ-ル、プロパンジオール、グリセリン、イソプロピルアルコ-ル、ブタノ-ルなどのアルコ-ル類、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコ-ルなどの多価アルコ-ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ-テル、テトラヒドロフランなどのエ-テル類から選択される1種乃至は2種以上が好適に例示できる。
抽出溶媒としては、特に、アルコール類が好ましく、中でも、プロパンジオール、及びグリセリンが好ましい。
【0030】
本発明のデスモグレイン減少剤におけるウスベニタチアオイの抽出物の含有量は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.08質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。
また、ウスベニタチアオイの抽出物の含有量は、2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下である。
【0031】
本発明のデスモグレイン減少剤は、デスモグレイン1を減少対象とすることが好ましい。
【0032】
本発明のデスモグレイン減少剤は、敏感肌の改善及び/又は予防のために用いられることが好ましい。
ここで、本明細書における「敏感肌」は、外部刺激(乾燥、紫外線、化合物の塗布)抵抗性が低下(皮膚刺激値が低下)した肌質をいう。
【0033】
より具体的には、本明細書における「敏感肌」は、(1)及び/又は(2)で提起される肌質をいう。
【0034】
(1)「医薬品外用剤、化粧品、植物、紫外線、金属などの物質に反応し、皮膚トラブルを起こしやすい肌。また、アレルギー性物質(花粉、香料など)や刺激性物質(アルコールなど)に過敏な肌」
(2)「睡眠不足、過労、生理、季節の変わり目、精神的なストレスなどの状況下で、刺激物に対して一時的に皮膚トラブルを起こしやすくなる肌。」
【0035】
また、本明細書における「敏感肌の改善及び/又は予防のため」は、外部刺激抵抗性が低下(皮膚刺激閾値が低下)した肌質の改善、及び/又は、肌質における外部刺激抵抗性の低下(皮膚刺激閾値の低下)の予防を指す。
【0036】
また、本発明のデスモグレイン減少剤は、ヒト表皮角化細胞の細胞間接着抑制のために用いられることが好ましい。
なお、本明細書において、「細胞間接着」の語は、デスモゾーム蛋白質(デスモグレインを含むたんぱく質群)の増加による角層接着機能異常(細胞接着性の亢進により角層の重層化が進むこと)をいう(要すれば、特許4197194号、特許第4002635号 参照)。
また、本明細書において、「細胞間接着抑制」の概念は、細胞間接着の予防又は改善の何れも含む。
【0037】
ここで、ヒト表皮角化細胞の細胞間接着が抑制されることで、角層の重層化が抑制され、角層重層剥離を抑制する作用を得ることができる。
すなわち、本願発明のデスモグレイン減少剤は、角層重層剥離の予防、又は改善のために用いることができる。
なお、本明細書において、「角層重層剥離」とは、角層が複数枚重なった状態で皮膚表面から剥がれ落ちることをいう。皮膚が角層重層剥離する状態か否かは、テープストリッピング法により角層を採取し、採取した角層を染色して観察することで確認することができる。
【0038】
また、後述する実施例に示すように、肌の明度の低い箇所では、デスモグレイン1が多く存在し、肌の明度の低下は、角層の重層化によるものと考えられる。
上記知見に鑑みると、本発明の有効成分によりデスモグレインを減少させることで、肌の明度改善作用を得ることができる。
すなわち、本発明の有効成分は、肌の明度改善剤としても、使用することができる。
ここで、本明細書において、「肌の明度改善」は、正常状態の肌とデスモグレインの過剰存在により明度の低下した肌との間における、明度の差が少なくなることを指す。
【0039】
また、後述する実施例に示すように、本発明のデスモグレイン減少剤は、より透明感のある肌状態を得ることができる。すなわち、本発明の有効成分は、肌の透明感向上剤としても使用できる。
【0040】
また、後述する実施例に示すように、肌の硬度が高い箇所では、デスモグレイン1が多く存在し、肌の硬さの要因は、角層の重層化によるものと考えられる。
上記知見に基づくと、デスモグレインを減少させることで、肌が柔らかくなる効果を得られる。すなわち、本発明の有効成分は、肌の軟化剤としても使用できる。
【0041】
ここで、肌が柔らかくなることにより、他の薬剤成分の浸透をより効率的に行うことができる。そのため、本発明のデスモグレイン減少剤によりデスモグレインを減少させることで、美白剤等の薬効成分をより効率良く肌に浸透させる効果を得られる。
すなわち、本発明の有効成分は、美白剤と併用するための、美白成分浸透補助剤として使用することが好ましい。
【0042】
特に、本発明のデスモグレイン減少剤は、美白剤と併用するための、美白成分浸透補助剤として使用することが好ましい。
【0043】
本発明のデスモグレイン減少剤は、皮膚外用組成物又は経口用組成物とすることができる。
中でも、本発明のデスモグレイン減少剤は、皮膚外用組成物の形態とすることが好ましい。
【0044】
皮膚外用組成物としては、化粧品、医薬品などが好適に例示できる。
【0045】
中でも、継続的に使用できる化粧料の形態とすることが好ましく、例えば、化粧水、乳液、美容液、クリーム、ジェル、サンケア品等の形態とすることができる。
【0046】
皮膚外用組成物におけるウスベニタチアオイの抽出物の含有量は、0.02質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
また、皮膚外用組成物におけるウスベニタチアオイ(Marsh mallow, Athaea officinalis)の抽出物の含有量は、2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下である。
【0047】
皮膚外用組成物の形態として提供する場合、その組成も特に限定されず、本発明の効果を損ねない限度において、通常使用される任意成分を含有することもできる。このような任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4-ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類などが好ましく例示できる。
【0048】
経口組成物とする場合、本発明の有効成分を含む食品用組成物とすることが好ましい。
具体的には、一般食品、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤等の剤形を有するサプリメントの形態とすることができる。
【0049】
ここで、経口組成物におけるウスベニタチアオイの抽出物の含有量、及び含有量比については、前述の皮膚外用組成物の好ましい実施の形態の記載を準用することができる。
【0050】
また、経口組成物とする場合、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を適宜配合してもよい。
【0051】
また、本発明は、ウスベニタチアオイの抽出物を皮膚に適用することを特徴とする、皮膚上のデスモグレイ調製方法とすることもできる。
本発明によれば、ウスベニタチアオイの抽出物を皮膚に適用することで、敏感肌の予防又は改善をすることができる。
【0052】
ここで、本発明の皮膚上のデスモグレイン調製方法は非治療的方法であり、好ましくは美容方法、さらに好ましくは皮膚の美容方法である。
【実施例】
【0053】
[実施例1]デスモグレイン減少効果の測定
以下、ウスベニタチアオイの根の抽出物のデスモグレイン減少能を調べた。
【0054】
<角層細胞試料の調製工程>
ヒト前腕外側より、セロハンテープで採取した角層を、スライドガラス(「MASコート」、松浪硝子工業株式会社製)に転写し、当該スライドガラスをキシレンに一晩浸漬した。
次いで、当該スライドガラスをキシレンで10分間、2回洗浄した後、PBSで洗浄し、角層細胞試料を調製した。
【0055】
<被験試料、及び対象試料の調製>
ウスベニタチアオイの根の抽出物(Jurlique社製)を、濃度が0.25質量%となるようにPBSで希釈し、被験試料を得た。
【0056】
<測定用試料の調製>
前述の被験試料に、角層細胞を一晩浸漬し、実施例1の測定用試料を得た。
また、参考例(コントロール)として、上述の被験試料に浸漬させない角層細胞を用意した。
【0057】
<免疫染色試験>
測定用試料をPBSで洗浄後、4%PFA・リン酸緩衝液中、室温で15分間インキュベートした。インキュベート後の測定用試料をPBSで洗浄し、20%ブロックエース(DSバイオファーマメディカル社製)水溶液中、室温条件下で、1時間インキュベートした。
その後、一次抗体(Anti-Desmoglein 1,Mouse-Mono)を加え、湿潤箱中、室温条件下で、2時間インキュベートした。
【0058】
各測定用試料をPBSで5分間、3回洗浄した後、二次抗体(Allexa Fluor@488 Goat Anti-mouce IgG)、を加え、湿潤箱中、室温で1時間インキュベートした。
それぞれの測定用試料をPBSで5分間、3回洗浄し、蒸留水で2回洗浄した後、Fluoromout-G(southern biotech社製)を用いて封入した。
その後、測定用試料を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、それぞれ解析用画像を撮影し、蛍光(染色)の確認を行った。結果を
図1に示す。
【0059】
併せて、実施例1の測定用試料の蛍光(染色)部分を、コントロールの蛍光(染色)部分の面積を100%として、算出した。結果を表1、
図2に示す。
【0060】
【0061】
図1及び
図2に示す通り、ウスベニタチアオイ抽出物を添加した測定用試料(実施例1)は、ウスベニタチアオイ抽出物を添加していない試料(参考例)と比して、デスモグレイン1の発現量が抑制されていることがわかった。
この結果から、ウスベニタチアオイ抽出物は、デスモグレイン1の量を抑制する作用を有することがわかった。
【0062】
[実施例2]肌の明度及び/又は肌の硬度とデスモグレイン1の存在量の関係性
以下、肌の明度の相違とデスモグレイン1の存在量の関係性及び、デスモグレイン1の存在量と肌の硬度の関係性を裏付ける試験結果を示す。
【0063】
(1)被験者及び測定部位
本実施例では、40歳から52歳の女性20名を被験者とした。
そして、本実施例では、被験者顔面における、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)と正常状態の部位(
図8中部位B 参照)を測定部位として選定した。
【0064】
(2)測定
(2-1)L
*値、a
*値、b
*値測定
上記の測定部位に分光光度計を当て、各部位5回ずつ測定に供することにより、L
*値、a
*値、b
*値を測定した。
結果を、
図3~
図5に示す。
【0065】
L
*値に関し、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、有意に低い値を示した。すなわち、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、暗いことが確認できた。
【0066】
a
*値に関し、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、有意に高い値を示した。すなわち、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、赤みが強いことが確認できた。
【0067】
b
*値に関し、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、有意に高い値を示した。すなわち、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、黄みが強いことが確認できた。
【0068】
(2-2)硬度測定
上記(2-1)の試験に供した各測定部位にインデントメーターを押し当て5回ずつ測定に供することにより、硬度を測定した。
結果を、
図6に示す。
【0069】
硬度に関し、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、有意に低い値を示した。すなわち、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、硬いことが確認できた。
【0070】
(2-3)デスモグレイン1(Dsg1)染色
上記(2-1)、(2-2)の試験に供した各測定部位の角層細胞をテープストリッピング法で採取し、スライドガラスに貼付した。
【0071】
角層細胞を貼付したスライドガラスを、キシレンに一晩浸漬させた。
浸漬後、洗浄、風乾させたのち、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液中で室温、条件下、15分間静置した。
【0072】
15分後、角層細胞をPBSで洗浄し、0.5%TritonX(ナカライテスク社製)/PBS溶液に、室温条件下、5分間浸漬させた。
【0073】
浸漬後、洗浄し、ブロックエース水溶液中(DSバイオファーマメディカル UK-B80)、室温条件下、1時間静置した。
【0074】
静置後、リキッドブロッカー(大道産業社 製)で枠付けし、一次抗体を加え、湿潤箱中、室温条件下、2時間静置した。
一次抗体として、Anti Desmoglein 1,Mouse Mono(Dsg1 P23) Progen,651110 原液(IgG 濃度:10-15g/mL)を使用した。
【0075】
静置後、PBSを用い洗浄し、二次抗体を加え、湿潤箱中、室温条件下、1時間静置した。
二次抗体として、Alle xa Fluor@488 Goat Anti mouse IgG Invitrogen,A 11001 PBS200倍希釈溶液を使用した。
【0076】
静置後洗浄し、Fluoromout-G(southern biotech 社製)で封入し、室温で30分乾燥させた。
【0077】
乾燥後、マニキュアでカバーガラスを固定し、乾燥させたのち、(撮影)共焦点レーザー顕微鏡(Nikon A1)、×20での観察に供した。
結果を、
図7に示す。
【0078】
デスモグレイン1(Dsg1)量に関し、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、有意に高い値を示した。すなわち、目視により明度の低下していることが確認できた部位(黒みがかった部分、
図8中部位A 参照)は、正常状態の部位(
図8中部位B 参照)に比して、デスモグレイン1(Dsg1)量が多いことが確認できた。
【0079】
(3)考察
図3~
図5、及び
図7に示すように、肌の明度の低い箇所では、デスモグレイン1が多く存在することが分かった。ここで、肌の明度の低下は、肌のpHが低くデスモグレイン1を分解するセリンプロテアーゼの活性が低いために、角層の重なりが密になったこと(角層の重層化)によるものと考えられる。
【0080】
そして、前述の通り、本願発明の有効成分はデスモグレイン減少作用を奏する。
上記知見に鑑みると、本発明の有効成分は、デスモグレイン1を減少させることによる肌の明度改善作用を奏することがわかった。
【0081】
図6~
図7に示すように、肌の硬度が高い箇所では、デスモグレイン1が多く存在するが分かった。ここで、肌の硬さの要因は、肌のpHが低くデスモグレイン1を分解するセリンプロテアーゼの活性が低いために、角層の重なりが密になったこと(角層の重層化)によるものと考えられる。
【0082】
上記知見に基づくと、デスモグレイン1を減少させることにより、肌が柔らかくなることがわかった。
そして、前述の通り、本願発明の有効成分はデスモグレイン減少作用を奏する。
つまり、本発明の有効成分は、デスモグレイン1を減少させることによる肌の軟化作用を奏することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、化粧料に応用できる。