(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】生体適合性の可撓性止血シート
(51)【国際特許分類】
A61L 31/06 20060101AFI20241119BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20241119BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20241119BHJP
A61L 15/16 20060101ALI20241119BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20241119BHJP
A61L 15/64 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61L31/06
A61L31/04 120
A61L31/14 500
A61L15/16 100
A61L15/42 100
A61L15/64 100
(21)【出願番号】P 2021577001
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2020069441
(87)【国際公開番号】W WO2021009013
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-05-25
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517112672
【氏名又は名称】ガット テクノロジーズ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】GATT TECHNOLOGIES B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ケーレヴェール, アブラハム ライニール
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ラナオ, ロサ ピラール
(72)【発明者】
【氏名】オプステーン, ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】ベンダー, ヨハネス キャスパー マティアス エリザベス
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509139(JP,A)
【文献】特表2017-531488(JP,A)
【文献】特表2014-533988(JP,A)
【文献】特表2014-503017(JP,A)
【文献】特表2015-511507(JP,A)
【文献】特表2013-523296(JP,A)
【文献】特表2010-520377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0250013(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0233246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00-31/18
A61L 15/00-15/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性の可撓性
の止血シートであって、
三次元の相互接続した間隙空間を含む耐水性の粘着性
の繊維状担体構造体であ
って、前記繊維状担体構造体が、反応性求核性基を担持する求核性ポリマーを含有する繊維を含む、耐水性の粘着性繊維状担体構造体、並びに
前記間隙空間内に分布されている、少なくとも3個の反応性求電子性基を担持する水溶性求電子性ポリマーを含む複数の反応性ポリマー粒子であ
って、前記反応性求電子性基が、共有結合の形成下で、組織及び血液中のアミン基並びに前記求核性ポリマーの
前記反応性求核性基と反応することができ、前記反応性ポリマー粒子が0.5~100μmの範囲の直径を有し、且つ前記繊維状担体構造体の少なくとも3重量%の量で存在する、反応性ポリマー粒子
を含
み、
前記水溶性求電子性ポリマーがポリオキサゾリンであり、
前記反応性求電子性基がスクシンイミジルエステルである、止血シート。
【請求項2】
前記繊維状担体構造体の前記繊維が1~500μmの平均直径を有する、請求項1に記載の止血シート。
【請求項3】
前記繊維状担体構造体が、フェルト構造体、織物構造体又は編物構造
体である、請求項1又は2に記載の止血シート。
【請求項4】
前記反応性ポリマー粒子が、少なくとも10wt.%の前記水溶性求電子性ポリマーを含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の止血シート。
【請求項5】
前記反応性ポリマー粒子が、(i)前記水溶性求電子性ポリマーを含有する求電子性粒子、及び(ii)求核性架橋剤を含有する求核性粒子を含む粒子凝集物である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の止血シート。
【請求項6】
前記求電子性粒子が、少なくとも30wt.
%の前記水溶性求電子性ポリマーを含有する、請求項
5に記載の止血シート。
【請求項7】
前記求核性粒子が、少なくとも30wt.
%の前記求核性架橋剤を含有する、請求項
5又は6に記載の止血シート。
【請求項8】
前記反応性ポリマー粒子が、以下の組成:
(a) 少なくとも3個の
前記反応性求電子性基を担持する50~95wt.%の
前記水溶性求電子性ポリマー、
(b) 5~50wt.%の
前記求核性架橋剤、
(c) 0~50wt.%の多糖
を有し、成分(a)~(c)を合わせた組合せが、前記反応性ポリマー粒子の少なくとも80wt.
%を構成する、請求項
5~
7のいずれか一項に記載の止血シート。
【請求項9】
前記反応性ポリマー粒子が、前記水溶性求電子性ポリマーによって提供される
前記反応性求電子性基の総数と前記求核性架橋剤によって提供される
前記反応性求核性基の総数の間の比が25:1~1:1の範
囲にあるような量で、前記水溶性求電子性ポリマー及び前記求核性架橋剤を含有する、請求項
5~
8のいずれか一項に記載の止血シート。
【請求項10】
前記求核性ポリマーが、タンパク質、キトサン、
前記反応性求核性基を担持する合成ポリマー、
前記反応性求核性基を担持する炭水化物ポリマー及びこれらの組合せから選択される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の止血シート。
【請求項11】
前記求核性ポリマーが、ゼラチン、コラーゲン、キトサン及びこれらの組合せから選択される、請求項
10に記載の止血シート。
【請求項12】
前記求核性ポリマーがゼラチ
ンである、請求項
11に記載の止血シート。
【請求項13】
前記求核性ポリマーが架橋ゼラチンである、請求項11に記載の止血シート。
【請求項14】
前記繊維状担体構造体が、少なくとも50wt.%の前記求核性ポリマーを含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の止血シート。
【請求項15】
25~200mg/cm
3の非圧縮密度を有する、請求項1~
14のいずれか一項に記載の止血シート。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか一項に記載の1つ又は複数の止血シートを含有する、封止包装体。
【請求項17】
止血シートを調製する方法であって、前記方法が、
請求項1~3及び
10~
14のいずれか一項に記載の耐水性の接着性繊維状担体構造体のシートを用意するステップ、
請求項
1~9のいずれか一項に記載の反応性ポリマー粒子を用意するステップ、並びに
前記繊維状担体構造体の前記間隙空間内に前記反応性ポリマー粒子を分布させるステップ
を含む、方法。
【請求項18】
分布された前記反応性ポリマー粒子を含む前記繊維状担体構造体を多湿雰囲気に曝露し、前
記繊維中の前記反応性求核性基を前記反応性ポリマー粒子中の前記反応性求電子性基と反応させる、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、外科手技中の失血を最小化するために好適に使用することができる、生体適合性の可撓性止血シートに関する。この止血シートは、
三次元の相互接続した間隙空間を含む耐水性の粘着性繊維状担体構造体であって、前記繊維状担体構造体が、反応性求核性基を担持する求核性ポリマーを含有する繊維を含む、耐水性の粘着性繊維状担体構造体、並びに
間隙空間内に分布されている、少なくとも3個の反応性求電子性基を担持する水溶性求電子性ポリマーを含む反応性ポリマー粒子であって、前記反応性求電子性基が、共有結合の形成下で、組織及び血液中のアミン基並びに求核性ポリマーの反応性求核性基と反応することができる、反応性ポリマー粒子
を含む。
【0002】
[発明の背景]
実質組織に対する外科手技中の主な課題の1つは、出血の制御を達成することである。縫合制御、電気焼灼及び超音波封止は、例えば肝臓又は腎臓の手術中に不十分であることが多い。結果として、肝臓切除又は腎部分切除などの手技には、出血を制御するための代替的手法が必要である。この目的のために、広範な局所的止血製品が開発されており、臨床的に入手可能である。
【0003】
Lewisら(Control of bleeding in surgical procedures:critical appraisal of HEMOPATCH(Sealing Hemostat)、Dove Press Journal:Medical Devices Evidence and Research、2015年12月22日、1~9)は、合成のタンパク質反応性モノマー及びコラーゲン下地から構成される止血パッド(HEMOPATCH)について記載している。活性側は、タンパク質反応性モノマー:N-ヒドロキシスクシンイミド官能化ポリエチレングリコール(NHS-PEG)で覆われている。NHS-PEGは、コラーゲンパッドを組織に迅速に付着させ、止血を促進及び維持する。
【0004】
Schuhmacherら(Safety and effectiveness of a synthetic hemostatic patch for intraoperative soft tissue bleeding、Med Devices(Auckl).2015;8:167~174)は、吸収性下地材、酸化セルロール及びポリエチレングリコールヒドロゲルから構成される止血パッチ(ヴェリセット(Veriset)(商標))について記載している。ヴェリセット(商標)止血パッチは、ポリエチレングリコール側が出血部位に貼り付けられる、即時使用可能なパッチとして提供される。
【0005】
Boermanら(Next Generation Hemostatic Materials Based on NHS-Ester Functionalized Poly(2-oxazoline)s、Biomacromolecules(2017)、18、2529~2538)は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)-官能性ポリ(2-オキサゾリン)(NHS-POx)をゼラチンパッチにコーティングすることによって得られる合成の非生物活性止血製品について記載しており、これはポリマー、宿主の血液タンパク質、ゼラチン、及び組織の間の共有結合性架橋の形成によって作用して創傷部位を封止し、外科手術中の失血を防止する。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0233246号は、2成分反応性ポリエチレングリコール粉末を含浸させたコラーゲンスポンジ又はシートを含む生体適合性ポリマーデバイスであって、前記反応性粉末が、求核性基を有する第1のポリエチレングリコール及び求電子性基を有する第2のポリエチレングリコールを含み、ポリエチレングリコール粉末が、乾燥状態で非反応性のままである生体適合性ポリマーデバイスについて記載している。
【0007】
国際公開第2010/059280号は、無水繊維状シートであって、求電子性基又は求核性基を含有する繊維状ポリマーの第1の成分、及び前記シートが生物学的組織と接触している水性媒体に曝露される際、第1の成分と架橋し、生物学的組織に接着性の架橋ヒドロゲルを形成することができる第2の成分を含み、
a)第2の成分が、第1の成分の繊維状ポリマーと同じ若しくは異なる骨格構造を有し、第1の成分が求核性基を含有する場合、求電子性基を含有するか、又は第1の成分が求電子性基を含有する場合、求核性基を含有する繊維状ポリマーであり、
b)第2の成分が第1の成分の繊維状ポリマー上のコーティングであり、前記コーティングが、第1の成分が求核性基を含有する場合、求電子性基を含有するか、若しくは第1の成分が求電子性基を含有する場合、求核性基を含有するか、又は
c)第2の成分が、第1の成分の繊維状ポリマーの間隙内に分散及び捕捉された乾燥粉末であり、前記粉末が、第1の成分が求核性基を含有する場合、求電子性基を含有するか、若しくは第1の成分が求電子性基を含有する場合、求核性基を含有する、無水繊維状シートについて記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2011/0250257号は、無水繊維状シートであって、求電子性基又は求核性基を含有する繊維状ポリマーの第1の成分、及び前記シートが生物学的組織と接触している水性媒体に曝露される際、第1の成分と架橋し、生物学的組織に接着性の架橋ヒドロゲルを形成することができる第2の成分を含み、第2の成分が、第1の成分が求核性基を含有する場合、求電子性基を含有するか、若しくは第1の成分が求電子性基を含有する場合、求核性基を含有する繊維状ポリマーであるか、又は第2の成分が第1の成分の繊維状ポリマー上のコーティングであり、前記コーティングが、第1の成分が求核性基を含有する場合、求電子性基を含有するか、若しくは第1の成分が求電子性基を含有する場合、求核性基を含有するか、又は第2の成分が、第1の成分の繊維状ポリマーの間隙内に分散及び捕捉された乾燥粉末であり、前記粉末が、第1の成分が求核性基を含有する場合、求電子性基を含有するか、若しくは第1の成分が求電子性基を含有する場合、求核性基を含有する、無水繊維状シートについて記載している。
【0009】
国際公開第2011/124640号は、
a)乾燥形態の生体材料のマトリックスを含むスポンジを用意するステップ、
b)1種の反応性ポリマー材料を乾燥粉末の形態で用意するステップ、
c)b)の材料が前記スポンジの少なくとも1つの表面に存在するようにa)とb)とを接触させるステップ、及び
d)b)の材料をa)のスポンジに固着させるステップ
を含む、止血スポンジの製造方法について記載している。
固着は、十分に長時間溶融させることによって達成することができる。
【0010】
国際公開第2012/057628号は、求電子的に活性化されたポリオキサゾリン(EL-POx)の乾燥物を少なくとも1重量%含む、組織接着性の医療製品であって、前記EL-POxが、少なくとも1個のペンダント求電子性基を含む少なくとも2個の反応性求電子性基を含む、組織接着性の医療製品について記載している。EL-POxの他に、医療製品は、求核的に活性化されたポリオキサゾリン(NU-POx)を含有してもよい。組織接着性製品の例として、接着性組織テープ、組織封止剤、止血多孔質材及びインプラントが挙げられる。
【0011】
国際公開第2016/056901号は、コーティングメッシュ、コーティングフォーム又はコーティング粉末から選択される接着性止血製品であって、前記止血製品が、
少なくとも5vol.%の多孔性を有し、反応性求核性基を含有する求核性ポリマーを含む外面を含む多孔質固体基材、及び
固体基材の少なくとも一部を覆う接着性コーティングであって、前記コーティングが、求電子的に活性化されたポリオキサゾリン(EL-POx)を含み、前記EL-POxが、平均少なくとも1個の反応性求電子性基を含有するコーティング
を含む、接着性止血製品について記載している。
接着性止血製品は、多孔質固体基材を用意するステップ、基材をEL-POx及び溶媒を含むコーティング液でコーティングするステップ、並びに溶媒を除去するステップを含む方法によって生成される。
【0012】
[発明の概要]
本発明者らは、腹腔鏡下外科手技中の失血の防止に特に好適な、生体適合性の可撓性止血シートを開発した。
【0013】
本発明による止血シートは、宿主の血液タンパク質及び組織、並びに繊維状担体構造体中の反応性求核性基と共有結合することができる反応性求電子性ポリマーを含む小粒子を保持し、それにより止血及び/又は組織接着を誘導する、耐水性の接着性繊維状担体構造体を含む。したがって、本発明の一態様は、生体適合性の可撓性止血シートであって、
三次元の相互接続した間隙空間を含む耐水性の粘着性繊維状担体構造体であり、前記繊維状担体構造体が、反応性求核性基を担持する求核性ポリマーを含有する繊維を含む、耐水性の粘着性繊維状担体構造体、並びに
間隙空間内に分布されている、少なくとも3個の反応性求電子性基を担持する水溶性求電子性ポリマーを含む複数の反応性ポリマー粒子であり、反応性求電子性基が、共有結合の形成下で、組織及び血液中のアミン基並びに求核性ポリマーの反応性求核性基と反応することができ、前記反応性ポリマー粒子が0.5~100μmの範囲の直径を有し、且つ繊維状担体構造体の少なくとも3重量%の量で存在する、反応性ポリマー粒子
を含む、生体適合性の可撓性止血シートに関する。
【0014】
本発明の止血シートは、血液が間隙空間に浸透しうるとすぐに血液を吸収する、耐水性の粘着性繊維状担体構造体を含む。この繊維状担体構造体には、反応性ポリマー粒子を容易に含浸させることができる。液体による含浸とは異なり、そのような乾式含浸は、担体構造体の構造的一体性又は機械的特性に影響を及ぼさない。本発明の止血シートによって血液が吸収されると、シート内の反応性ポリマー粒子が血液によって「湿潤」されるとすぐに溶解し始め、それにより求電子性ポリマーが、血液及び組織中の反応性求核性基と繊維状担体構造体中の反応性求核性基の両方と反応することが可能になり、それによりいずれも止血に寄与する血液凝固及び組織封止が誘導される。
【0015】
本発明者らは理論に束縛されることを望まないが、本発明の止血シートの有利な特性は、反応性ポリマー粒子が繊維状担体構造体全体に分布され、最小限の屈曲摩擦を生じること、及び粒径が小さいため、これらの反応性ポリマー粒子が血液又は他の水性体液と接触すると急速に溶解することに起因する可能性があると考えられる。したがって、シートを創傷部位に貼り付けると、一方では反応性求電子性ポリマーと、他方では血液タンパク質、組織と繊維状担体構造体との間に急速な共有結合性架橋が生じ、それによりゲルが形成され、ゲルが創傷表面を封止して出血を停止させ、さらに繊維状シートの組織への強力な接着をもたらすことができる。耐水性繊維状担体構造体は、貼付中及び後に機械的強度をもたらし、過剰な膨張を防止する。
【0016】
その可撓性のために、本発明の止血シートは、不規則な形状の出血部位に好適に貼付可能である。止血シートは、既に貼り付けられたシートが出血を完全に停止させない場合、層状に貼り付けられてもよい。
【0017】
本発明の別の態様は、止血シートを調製する方法であって、前記方法が、
上記で定義された耐水性の接着性繊維状担体構造体のシートを用意するステップ、
上記で定義された反応性ポリマー粒子を用意するステップ、及び
繊維状担体構造体の間隙空間内に反応性ポリマー粒子を分布させるステップ
を含む、方法に関する。
【0018】
[発明の詳細な説明]
したがって、本発明の一態様は、生体適合性の可撓性止血シートであって、
三次元の相互接続した間隙空間を含む耐水性の粘着性繊維状担体構造体であり、前記繊維状担体構造体が、反応性求核性基を担持する求核性ポリマーを含有する繊維を含む、耐水性の粘着性繊維状担体構造体、並びに
間隙空間内に分布されている、少なくとも3個の反応性求電子性基を担持する水溶性求電子性ポリマーを含む複数の反応性ポリマー粒子であり、反応性求電子性基が、共有結合の形成下で、組織及び血液中のアミン基並びに求核性ポリマーの反応性求核性基と反応することができ、前記反応性ポリマー粒子が0.5~100μmの範囲の直径を有し、且つ繊維状担体構造体の少なくとも3重量%の量で存在する、反応性ポリマー粒子
を含む、生体適合性の可撓性止血シートに関する。
【0019】
本明細書で使用される「止血シート」という用語は、別段指示されない限り、損傷組織からの出血を停止させる能力を有するシートを指す。本発明の止血シートは、血液をゲルに変える及び/又は創傷部位を閉じるシールを形成することによって止血を達成してもよい。
【0020】
本明細書で使用される「組織接着性」という用語は、シートと組織の間の共有結合の形成により、止血シートが組織に密着する能力を指す。これらの共有結合の形成には、典型的に水の存在が必要である。
【0021】
繊維状担体構造体に関連して本明細書で使用される「耐水性」という用語は、この構造体が水溶性でなく、且つ中性のpH条件(pH7)及び37℃の温度で水中で崩壊し、コロイド分散液を形成しないことを意味する。
【0022】
本明細書で使用される「間隙空間」という用語は、繊維状担体構造体内の空隙(「空の」)空間を指す。繊維状担体構造体内の間隙空間は、反応性ポリマー粒子の構造体への導入を可能にする。血液及び他の体液も間隙空間に入ることができ、それにより反応性ポリマー粒子内の水溶性求電子性ポリマーの溶解が可能になる。
【0023】
0.5~100μmの範囲の直径を有する反応性ポリマー粒子の濃度は、繊維状担体構造体それ自体の、すなわち反応性ポリマー粒子を除く重量%で表される。
【0024】
本発明によって用いられる「反応性求電子性基を担持する水溶性求電子性ポリマー」は、共有結合の形成下で、組織及び血液中のアミン基と反応できる少なくとも3個の反応性基を担持する。この水溶性求電子性ポリマーは、少なくとも1kDaの分子量、及び少なくとも50g/Lの20℃の蒸留水への溶解度を有する。
【0025】
本明細書で使用される「吸水能」という用語は、止血シートが吸水する能力の尺度である。吸水能は、乾燥シートの試料を秤量し(重量=Wd)、その後試料を蒸留水(37℃)に45分間浸漬させることによって決定される。次に、試料を水から取り出し、基材の外側に密着した水を除去した後、試料を再び秤量する(重量=Ww)。吸水能=100%×(Ww-Wd)/Wdである。吸水能は、基材の多孔性、及び基材が水の存在下で膨張する能力の指標である。
【0026】
本明細書で使用される「コラーゲン」という用語は、動物の身体における種々の結合組織の細胞外空間内の主な構造タンパク質を指す。コラーゲンは、特徴的な3本のポリペプチド鎖の三重らせんを形成する。石灰化の程度に応じて、コラーゲン組織は強固である(骨)か、又は柔軟である(腱)か、又は強固から柔軟までの勾配を有する(軟骨)かのいずれかでありうる。別段指示されない限り、「コラーゲン」という用語は、ゼラチン以外の変性コラーゲンも包含する。
【0027】
本明細書で使用される「ゼラチン」という用語は、家畜のウシ、ニワトリ、ブタ及び魚などの動物の皮膚、骨及び結合組織から抽出されるコラーゲンの部分加水分解によって生成される、ペプチドとタンパク質の混合物を指す。加水分解の間に、個々のコラーゲンストランド間の天然の分子結合が、より容易に再構成する形態へと分解される。
【0028】
本明細書で使用される「ポリオキサゾリン」という用語は、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)又はポリ(アロイルアルキレンイミン)を指し、さらにPOxと称される。POxの例は、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)である。「ポリオキサゾリン」という用語は、POxのコポリマーも包含する。
【0029】
反応性ポリマー粒子は、粒子密度が担体構造体全体で実質的に同じであるという意味で、繊維状担体構造体の間隙空間内に均質に分布される場合がある。反応性ポリマー粒子は、担体構造体全体に不均一に分布される場合もある。例えば、止血シートが、繊維状担体構造体の薄層及び反応性ポリマー粒子の層の積層体の形態で調製される場合、シート内の反応性ポリマー粒子の密度は変動してもよい。特定の用途では、例えば反応性粒子の密度が、出血創傷に貼り付けられることが意図されるシートの側面付近で最も低く、シートの反対側面付近で最も高いという点で、反応性ポリマー粒子の密度が勾配を示すと有利である場合がある。
【0030】
反応性ポリマー粒子の直径分布は、好適にはStainless Steel Sample Dispersion Unitとの組合せのMalvern Mastersizer 2000を使用するレーザー回折によって決定されてもよい。試料分散ユニットにおよそ120mlのシクロヘキサンを充填し、ユニットを1800rpmの撹拌速度で5~10分間安定させ、その後バックグラウンド測定(ブランク測定)を行う。試料管を振盪し、20回水平に回転させる。次に、シクロヘキサンを含有する試料分散ユニットに約50mgを分散させる。試料を分散ユニットに導入したら、すべての粒子が適正に分散されることを保証するために、試料を1800rpmで1分30秒撹拌し、その後測定を行う。分散された粒子に超音波処理は実施されない。平均粒径は、D[4,3]、体積加重平均直径(ΣniDi4)/(ΣniDi3)として表される。
【0031】
特に好ましい実施形態では、米国特許出願公開第2011/0250257号に記載される繊維状組織封止剤とは異なり、本発明の止血シートは、ヒドロゲル、すなわち実質的な量の水を吸収し、弾性ゲルを形成できる水膨張性ポリマーマトリックスを形成しない。
【0032】
特に好ましい実施形態によると、本発明の止血シートは生体吸収性である、つまり担体構造体、反応性ポリマー粒子、及び止血シートの任意の他の成分は、最終的に身体に吸収される。担体構造体及び反応性ポリマー粒子の吸収には、典型的に含有されるポリマーの化学分解(例えば、加水分解)が必要である。
【0033】
ヒトの身体による止血シートの完全な生体吸収は、典型的に1~10週間、好ましくは2~8週間で達成される。
【0034】
本発明の止血シートは、典型的に0.5~25mmの非圧縮平均厚さを有する。より好ましくは、非圧縮平均厚さは、1~10mmの範囲、最も好ましくは1.5~5mmの範囲である。
【0035】
止血シートの寸法は、好ましくはシートの上部及び下部が、それぞれ少なくとも2cm2、より好ましくは少なくとも10cm2、最も好ましくは25~50cm2の表面積を有するようなものである。典型的に、シートは長方形の形状であり、長さ25~200mm及び幅25~200mmである。
【0036】
止血シートは、好ましくは200mg/cm3未満、より好ましくは150mg/cm3未満、最も好ましくは10~100mg/cm3の非圧縮密度を有する。
【0037】
本発明の一実施形態では、反応性ポリマー粒子は、繊維状担体構造体の間隙空間内に均質に分布される。本発明の別の実施形態では、止血シートは、交互の繊維状担体構造体の層及び反応性ポリマー粒子の層を含む積層体である。後者の実施形態では、反応性ポリマー粒子は、好ましくは反応性ポリマー粒子の層を分離させる繊維状担体構造体の層に入っている。
【0038】
本発明の止血シートは、好ましくは本質的に無水である。典型的に、止血シートは、5wt.%以下、より好ましくは2wt.%以下、最も好ましくは1wt.%以下の水分含有量を有する。
【0039】
止血シートの吸水能は、好ましくは少なくとも50%であり、より好ましくは100%~800%の範囲、最も好ましくは200%~500%の範囲にある。
【0040】
本発明の止血シートは、好ましくは滅菌である。
【0041】
止血シート中の反応性ポリマー粒子は、好ましくはカルボン酸エステル、スルホン酸エステル、ホスホン酸エステル、ペンタフルオロフェニルエステル、p-ニトロフェニルエステル、p-ニトロチオフェニルエステル、酸ハロゲン化物基、無水物、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、チオイソシアネート、イソシアノ、エポキシド、活性化ヒドロキシル基、オレフィン、グリシジルエーテル、カルボキシル、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、マレイミド(マレイミジル)、エテンスルホニル、イミドエステル、アセトアセテート、ハロアセタール、オルトピリジルジスルフィド、ジヒドロキシフェニル誘導体、ビニル、アクリレート、アクリルアミド、ヨードアセトアミド及びこれらの組合せから選択される反応性求電子性基を担持する水溶性求電子性ポリマーを含む。より好ましくは、反応性求電子性基は、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、ホスホン酸エステル、ペンタフルオロフェニルエステル、p-ニトロフェニルエステル、p-ニトロチオフェニルエステル、酸ハロゲン化物基、無水物(anhyinidrides)、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、チオイソシアネート、イソシアノ、エポキシド、活性化ヒドロキシル基、グリシジルエーテル、カルボキシル、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、イミドエステル、ジヒドロキシフェニル誘導体及びこれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、反応性求電子性基は、ハロアセタール、オルトピリジルジスルフィド、マレイミド、ビニルスルホン、ジヒドロキシフェニル誘導体、ビニル、アクリレート、アクリルアミド、ヨードアセトアミド、スクシンイミジルエステル及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、反応性求電子性基は、マレイミド、ビニル、アクリレート、アクリルアミド、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル及びこれらの組合せから選択される。
【0042】
利用されてもよいスクシンイミジルエステルの例として、スクシンイミジルグルタレート、スクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルスクシンアミド、スクシンイミジルカーボネート、ジスクシンイミジルスベレート、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、ビス(2-スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチルスルホン、3、3’-ジチオビス(スルホスクシンイミジル-プロピオネート)、スクシンイミジルカルバメート、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート、ジチオビス-スルホスクシンイミジルプロピオネート、ジスルホ-スクシンイミジルタータレート;ビス[2-(スルホ-スクシンイミジルオキシカルボニルオキシエチルスルホン)]、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(sulfosuccinimiclylsuccinate)、ジチオビス-(スクシンイミジルプロピオネート)が挙げられる。
【0043】
利用されてもよいジヒドロキシフェニル誘導体の例として、ジヒドロキシフェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ドパミン、3,4-ジヒドロキシヒドロケイ皮酸(dihydroxyhydroccinamic acid)(DOHA)、ノルエピネフリン、エピネフリン、及びカテコールが挙げられる。
【0044】
本発明の止血シートにおける繊維状担体構造体の使用は、反応性ポリマー粒子が、この担体構造体全体に困難なく均質に分布できるという利点をもたらす。そのような均質な分布は、例えば発泡担体構造体で達成することははるかに困難である。
【0045】
繊維状担体構造体の繊維は、好ましくは1~500μm、より好ましくは2~300μm、最も好ましくは5~200μmの平均直径を有する。繊維の平均直径は、好適には顕微鏡を使用して決定することができる。
【0046】
典型的に、繊維状担体構造体の繊維の少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%が、1~300μmの直径及び少なくとも1mmの長さを有する。
【0047】
好ましくは、繊維状担体構造体の繊維の少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%が、少なくとも1000のアスペクト比(長さの直径に対する比)を有する。
【0048】
本発明によって利用される繊維状担体構造体は、好ましくはフェルト構造体、織物構造体又は編物構造体である。最も好ましくは、繊維状担体構造体はフェルト構造体である。ここで、「フェルト構造体」という用語は、繊維にマット加工を施してまとめてプレスし、粘着性材料を形成することによって生成される構造体を指す。
【0049】
特定の好ましい実施形態によると、繊維状担体構造体は生分解性である。
【0050】
繊維状担体構造体に含有される求核性ポリマーは、担体構造体に含有される繊維全体に均質に分布されてもよく、又は外部コーティング層として適用されてもよい。担体構造体に求核性ポリマーが存在することにより、止血シートの接着特性と止血特性の両方が改善される。
【0051】
好ましくは、繊維状担体構造体の繊維は、少なくとも5wt.%、より好ましくは少なくとも10wt.%、より好ましくは少なくとも50wt.%の求核性ポリマーを含有する。最も好ましくは、繊維は前記求核性ポリマーからなる。
【0052】
担体構造体の繊維に含有される求核性ポリマーは、典型的に少なくとも2個の反応性求核性基、より好ましくは少なくとも5個の反応性求核性基、さらにより好ましくは少なくとも10個の反応性求核性基、最も好ましくは少なくとも20個の反応性求核性基を含有する。
【0053】
これらの反応性求核性基は、好ましくはアミン基、チオール基、ホスフィン基及びこれらの組合せから選択される。より好ましくは、これらの反応性求核性基は、アミン基、チオール基及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、反応性求核性基はアミン基である。これらのアミン基は、好ましくは第一級アミン基、第二級アミン基及びこれらの組合せから選択される。
【0054】
繊維状担体構造体の繊維中の求核性ポリマーは、好ましくは少なくとも1wt.%、より好ましくは5~10wt.%、最も好ましくは15~25wt.%の窒素含有量を有する。
【0055】
求核性ポリマーは、好ましくはタンパク質、キトサン、反応性求核性基を担持する合成ポリマー、反応性求核性基を担持する炭水化物ポリマー及びこれらの組合せから選択される。より好ましくは、求核性ポリマーは、ゼラチン、コラーゲン、キトサン及びこれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、求核性ポリマーはゼラチン、最も好ましくは架橋ゼラチンである。
【0056】
キトサンは、キチン(ポリ-N-アセチル-D-グルコサミン)の生分解性の、非毒性の複雑な炭水化物誘導体であり、天然に存在する物質である。キトサンは、キチンの脱アセチル化形態である。本発明によって適用されるキトサンは、好ましくは脱アセチル化度が70%より高い。
【0057】
繊維状担体構造体は、反応性求核性基を担持する求核性ポリマーを含有する繊維を、好ましくは少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%含む。
【0058】
好ましい実施形態では、繊維状担体構造体は、反応性求核性基を担持する求核性ポリマーを少なくとも50wt.%含有する繊維を少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%含む。
【0059】
特に好ましい実施形態によると、繊維状担体構造体は、ゼラチン、コラーゲン又はキトサンから作製される繊維を少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%含む。
【0060】
好ましいコラーゲンは、テロペプチド領域を有さない(「アテロペプチドコラーゲン」)。本発明によって利用されるコラーゲンは、好ましくはミクロフィブリル状コラーゲン、I型コラーゲン、III型コラーゲン、又はI型コラーゲンとIII型コラーゲンの組合せなどの合成ヒトコラーゲンの群から選択される。熱、放射、又はグルタルアルデヒドなどの化学剤を使用して架橋されたコラーゲンも使用することができる。
【0061】
好ましい実施形態によると、繊維状担体構造体中の繊維は、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%のゼラチンを含む。繊維中のゼラチンは、好ましくは200以上のブルーム強度を有する。
【0062】
特に有利な実施形態では、繊維状担体構造体は、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%の部分的に架橋されたゼラチンを含む。部分的に架橋されたゼラチンを使用することにより、繊維状担体構造体が体温で十分に安定且つ可撓性であり、さらに繊維状担体構造体の膨張によって閉気孔繊維状ゲル構造の形成が生じないという利点がもたらされる。
【0063】
本発明の止血シートの調製において、反応性ポリマー粒子の求電子性ポリマー中の反応性求電子性基の一部を、求核性ポリマーの反応性求核性基と反応させることが有利である場合がある。これにより、反応性ポリマー粒子が繊維状担体構造体内に有効に固着することができる。
【0064】
好ましい実施形態によると、繊維状担体構造体の繊維中の求核性ポリマーの反応性求核性基はアミン基を含み、反応性ポリマー粒子中の求電子性ポリマーの反応性求電子性基は、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、ホスホン酸エステル、ペンタフルオロフェニルエステル、p-ニトロフェニルエステル、p-ニトロチオフェニルエステル、酸ハロゲン化物基、無水物、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、チオイソシアネート、イソシアノ、エポキシド、活性化ヒドロキシル基、グリシジルエーテル、カルボキシル、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、イミドエステル、ジヒドロキシフェニル誘導体及びこれらの組合せから選択される。
【0065】
別の好ましい実施形態によると、求核性ポリマーの反応性求核性基はチオール基を含み、反応性ポリマー粒子中の求電子性ポリマーの反応性求電子性基は、ハロアセタール、オルトピリジルジスルフィド、マレイミド、ビニルスルホン、ジヒドロキシフェニル誘導体、ビニル、アクリレート、アクリルアミド、ヨードアセトアミド、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル及びこれらの組合せから選択される。より好ましくは、反応性求電子性基は、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、ハロアセタール、マレイミド又はジヒドロキシフェニル誘導体及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、反応性求電子性基は、マレイミド又はジヒドロキシフェニル誘導体及びこれらの組合せから選択される。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、繊維状担体構造体は、酸化再生セルロースを含まない。
【0067】
好ましい繊維状担体構造体は、空気透過性が少なくとも0.1L/分×cm2、より好ましくは少なくとも0.5L/分×cm2である開気孔構造を有する。
【0068】
空気透過性は、EN ISO 9237:1995(繊維-布の空気透過性の決定)によって決定される。
【0069】
繊維状担体構造体中の繊維は、エレクトロスピニング、エレクトロブローンスピニング、及び高速回転噴霧器スピニングなどの当技術分野で公知の方法によって生成されてもよい。高速回転噴霧器スピニングによる繊維状担体構造体の生成は、米国特許出願公開第2015/0010612号に記載される。繊維状担体構造体として、市販の止血繊維状シートを使用することもできる。好適な市販品の例は、ジェリータ タフト-IT(GELITA TUFT-IT)(登録商標)(前Gelita Medical)である。
【0070】
反応性ポリマー粒子は、好ましくは繊維状担体構造体の5~90重量%、より好ましくは10~80重量%、さらにより好ましくは20~75重量%、最も好ましくは50~70重量%の量で本発明の止血シート中に存在する。
【0071】
反応性ポリマー粒子は、好ましくは少なくとも10wt.%の水溶性求電子性ポリマーを含有する。より好ましくは、反応性ポリマー粒子は、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%の水溶性求電子性ポリマーを含有する。
【0072】
繊維状担体構造体の間隙空間内に分布される反応性ポリマー粒子は、好ましくは2~75μmの範囲、より好ましくは1~50μmの範囲、最も好ましくは1~25μmの範囲の体積加重平均粒径を有する。
【0073】
本発明の反応性ポリマー粒子は、種々の方法、例えば摩砕によって、ポリマー溶液を噴霧乾燥することによって、凍結乾燥によって、ポリマー溶融物を噴霧冷却することによって、粉末混合物を造粒することによって、又は流動床コーティングによって調製されてもよい。
【0074】
水溶性求電子性ポリマーは、典型的に少なくとも2kDa、より好ましくは少なくとも5kDa、最も好ましくは10~100kDaの分子量を有する。
【0075】
水溶性求電子性ポリマーは、少なくとも100g/L、より好ましくは少なくとも200g/Lの20℃の蒸留水への溶解度を有する。
【0076】
本発明によって利用される水溶性求電子性ポリマーは、好ましくは少なくとも4個の反応性求電子性基、より好ましくは少なくとも8個の反応性求電子性基、さらにより好ましくは少なくとも16個の反応性求電子性基、最も好ましくは少なくとも32個の反応性求電子性基を含有する。
【0077】
反応性ポリマー粒子中に存在する水溶性求電子性ポリマーは、好ましくはポリオキサゾリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン(例えば、国際公開第2017/171551号に記載される)及びこれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、求電子性ポリマーは、ポリオキサゾリン、ポリエチレングリコール及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、求電子性ポリマーはポリオキサゾリンである。
【0078】
反応性求電子性基を含むポリオキサゾリンは、繰り返し単位が以下の式(I):
(CHR1)mNCOR2
(式中、R2及びR1のそれぞれは、H、任意選択で置換されたC1~22アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル、任意選択で置換されたアリールから独立的に選択され、mは2又は3である)
によって表されるポリオキサゾリンに由来することが好ましい。
【0079】
好ましくは、式(I)のR1及びR2は、H及びC1~8アルキル、さらにより好ましくはH及びC1~4アルキルから選択される。R1は、最も好ましくはHである。式(I)の整数mは、好ましくは2に等しい。
【0080】
好ましい実施形態によると、ポリオキサゾリンはポリマーであり、さらにより好ましくは2-アルキル-2-オキサゾリンのホモポリマーであり、前記2-アルキル-2-オキサゾリンは、2-メチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、2-プロピル-2-オキサゾリン、2-ブチル-2-オキサゾリン及びこれらの組合せから選択される。好ましくは、ポリオキサゾリンは、2-プロピル-2-オキサゾリン又は2-エチル-オキサゾリンのホモポリマーである。最も好ましくは、ポリオキサゾリンは、2-エチル-オキサゾリンのホモポリマーである。
【0081】
特定の好ましい実施形態によると、水溶性求電子性ポリマーは、少なくとも20個のオキサゾリン単位、より好ましくは少なくとも30個のオキサゾリン単位、最も好ましくは少なくとも80個のオキサゾリン単位を含む。求電子性ポリマーは、好ましくはオキサゾリン残基あたり平均少なくとも0.05個の反応性求電子性基を含む。さらにより好ましくは、求電子性ポリマーは、オキサゾリン残基あたり平均少なくとも0.1個の反応性求電子性基を含む。最も好ましくは、求電子性ポリマーは、オキサゾリン残基あたり平均0.12~0.5個の反応性求電子性基を含む。
【0082】
水溶性求電子性ポリマーは、典型的に平均少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個の反応性求電子性基を担持する。
【0083】
ポリオキサゾリンは、その側鎖(ペンダント反応性求電子性基)、その末端又は両方に反応性求電子性基を担持してもよい。
【0084】
本発明によって利用されるポリオキサゾリンは、有利には1又は複数のペンダント反応性求電子性基を含有する。典型的に、ポリオキサゾリンは、モノマーあたり0.03~0.5個のペンダント反応性求電子性基、より好ましくはモノマーあたり0.04~0.35個のペンダント反応性求電子性基、さらにより好ましくはモノマー当たり0.05~0.25個のペンダント反応性求電子性基を含有する。
【0085】
本発明によって適用される反応性求電子性基を含むポリエチレングリコール(PEG)は、好ましくは少なくとも3つのアーム、より好ましくは少なくとも4つのアームを含む、反応性求電子性基で末端化されたマルチアームPEG又は星型PEGである。
【0086】
水溶性求電子性ポリマーの他に、反応性ポリマー粒子は、好適にはデキストラン、アルギネート、酸化セルロース(酸化再生セルロース(ORC)を含む)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、及びこれらの組合せから選択される多糖を含有してもよい。好ましくは、そのような多糖は、少なくとも15wt.%、より好ましくは少なくとも25wt.%、最も好ましくは少なくとも50wt.%の濃度で反応性ポリマー粒子に含有される。特定の好ましい実施形態では、反応性ポリマー粒子は、少なくとも25wt.%、最も好ましくは少なくとも50wt.%のORCを含有する。
【0087】
本発明の有利な実施形態では、水溶性求電子性ポリマーの他に、反応性ポリマー粒子は、共有結合の形成下で他の水溶性ポリマーの反応性求電子性基と反応できる少なくとも2個の反応性求核性基を含有する求核性架橋剤、及び任意選択で1種又は複数の多糖を追加的に含有する。求核性架橋剤を導入することにより、血液、又はより重要なことに比較的少量の求核性タンパク質を含有する体液(例えば、肝胆汁)がシートに入る際に、水溶性求電子性ポリマーが求核性架橋剤と反応するため、シートの止血及び接着特性が改善される場合があるという利点がもたらされる。この架橋反応は、血液又は体液の流れを固定するヒドロゲルの形成につながり、ヒドロゲル中の反応性求電子性基と組織中のアミン/チオール基との間に共有結合が形成されることにより、このヒドロゲルが組織に張り付く。水溶性求電子性ポリマーと求核性架橋剤を単一の粒子内で組み合わせることにより、これらの2種の反応性成分が止血シート全体に均質に分布できること、輸送及び取扱い時に分離が生じないこと、並びに粒子が血液又は水性体液と接触した際に、これらの成分が即座に互いに反応できることが保証される。
【0088】
反応性求電子性基を担持する水溶性ポリマーと求核性架橋剤の組合せを含有する反応性ポリマー粒子、すなわち反応性ハイブリッド粒子は、好ましくは減圧下の湿式造粒及びそれに続く乾燥によって生成されてもよい。造粒液体は、造粒中に、水溶性求電子性ポリマーと求核性架橋剤との間にあまり又は全く反応が生じないように選択されるべきである。これは、例えば、これら2種の成分のうちの少なくとも1種が不溶性である造粒液体を利用することによって達成することができる。最も好ましくは、反応性求電子性基を担持する水溶性ポリマーが造粒液体中で不溶性である。
【0089】
特に好ましい実施形態によると、反応性ポリマー粒子は、(i)水溶性求電子性ポリマーを含有する求電子性粒子、及び(ii)求核性架橋剤を含有する求核性粒子を含む粒子凝集物である。
【0090】
求電子性粒子は、好ましくは少なくとも30wt.%、より好ましくは少なくとも50wt.%、最も好ましくは少なくとも80wt.%の水溶性求電子性ポリマーを含有する。
【0091】
求核性粒子は、好ましくは少なくとも30wt.%、より好ましくは少なくとも50wt.%、最も好ましくは少なくとも80wt.%の求核性架橋剤を含有する。
【0092】
典型的に、この実施形態による反応性ハイブリッド粒子は、以下の組成:
(a)少なくとも3個の反応性求電子性基を担持する50~95wt.%の水溶性求電子性ポリマー、
(b)5~50wt.%の求核性架橋剤、
(c)0~50wt.%の多糖
を有し、成分(a)~(c)を合わせた組合せは、反応性ポリマー粒子の少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%を構成する。特に好ましい実施形態によると、この実施形態で利用される反応性求電子性基を担持する水溶性求電子性ポリマーは、ポリオキサゾリン(EL-POx)である。
【0093】
反応性ポリマー粒子は、好ましくは水溶性求電子性ポリマーによって提供される反応性求電子性基の総数と、求核性架橋剤によって提供される反応性求核性基の総数の間の比が25:1~1:1の範囲、より好ましくは18:1~2:1の範囲、最も好ましくは12:1~2.5:1の範囲にあるような量で、水溶性求電子性ポリマー及び求核性架橋剤を含有する。
【0094】
求核性架橋剤は、好ましくは少なくとも3個の反応性求核性基、より好ましくは少なくとも5個の反応性求核性基、さらにより好ましくは少なくとも10個の反応性求核性基、最も好ましくは少なくとも20個の反応性求核性基を含有する。
【0095】
求核性架橋剤の反応性求核性基は、好ましくはアミン基、チオール基、ホスフィン基及びこれらの組合せから選択され、より好ましくはアミン基、チオール基及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、これらの反応性求核性基はアミン基である。好ましい実施形態によると、求核性架橋剤中に存在する反応性求核性基は、第一級アミン基である。
【0096】
求核性架橋剤は、好ましくは少なくとも1wt.%、より好ましくは5~10wt.%、最も好ましくは15~25wt.%の窒素含有量を有する。
【0097】
本発明の一実施形態では、求核性架橋剤は1,000g/mol未満、より好ましくは700g/mol未満、最も好ましくは400g/mol未満の分子量を有する低分子量ポリアミンである。好適な低分子量ポリアミンの例として、ジリジン;トリリジン;テトラリジン;ペンタリジン;ジシステイン;トリシステイン;テトラシステイン;ペンタシステイン;リジン、オルニチン、システイン、アルギニン及びこれらの組合せ、並びに他のアミノ酸残基から選択される2個以上のアミノ酸残基を含むオリゴペプチド;スペルミン;トリス(アミノメチル)アミン;アルギニン並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0098】
本発明の別の実施形態によると、求核性架橋剤は、求核的に活性化されたPOx(NU-POx);アミン官能化ポリエチレングリコール、キトサン;キトサン誘導体(例えば、国際公開第2009/028965号に記載されるジカルボキシ誘導体化キトサンポリマー);ポリエチレンイミン;ポリビニルアミン;ポリアリルアミン;アミン官能化ポリ(メタ)アクリレート;アミン官能性部分を含有する糖類、例えばアミノグリコシド;リジン、オルニチン、システイン、アルギニン及びこれらの組合せから選択される2個以上のアミノ酸残基を含むポリペプチド、並びにこれらの組合せの群から選択される高分子量(>1,000g/mol)ポリアミンである。天然源又は組換え体のアルブミンは、ポリペプチドとして好適に利用できるポリペプチドの例である。4,6-二置換デオキシストレプトアミン(カナマイシンA、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン)、4,5-二置換デオキシストレプトアミン(ネオマイシンB、C及びネオマイシンE(パロモマイシン))並びに非デオキシストレプトアミンアミノグリコシド、例えばストレプトマイシンが、利用できるアミノグリコシドの例である。最も好ましくは、高分子量ポリアミンはNU-POxである。
【0099】
本発明のさらに別の実施形態では、反応性ポリマー粒子で利用される求核性架橋剤は、1,000g/mol未満、より好ましくは700g/mol未満、最も好ましくは400g/mol未満の分子量を有する2個以上のチオール基を含む低分子量ポリチオールである。さらにより好ましくは、求核性架橋剤は、トリメルカプトプロパン、エタンジチオール、プロパンジチオール、2-メルカプトエチルエーテル、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ペンタ(エチレングリコール)ジチオール、ヘキサエチレングリコールジチオール;チオール変性ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン又はジトリメチロールプロパン;少なくとも2個のシステイン単位を含有するオリゴペプチドの群から選択される。
【0100】
本発明のさらに別の実施形態によると、反応性ポリマー粒子で利用される求核性架橋剤は、少なくとも2個のチオール基を含むNU-POx;チオール官能化ポリ(メタ)アクリレート;チオール官能性部分を含有する多糖類、2個以上のチオール基を含むポリペプチドの群から選択される高分子量(>1,000g/mol)ポリチオールである。
【0101】
好ましくは、求核性架橋剤は、求核的に活性化されたPOx(NU-POx);アミン官能化ポリエチレングリコール、キトサン;キトサン誘導体、ポリエチレンイミン;ポリビニルアミン;ポリアリルアミン;アミン官能化ポリ(メタ)アクリレート;アミン官能性部分を含有する糖類;リジン、オルニチン、システイン、アルギニン及びこれらの組合せから選択される2個以上のアミノ酸残基を含むポリペプチド並びにこれらの組合せの群から選択される高分子量ポリアミンである。より好ましくは、求核性架橋剤は、NU-POx;アミン官能化ポリエチレングリコール;ゼラチン、コラーゲン及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、高分子量ポリアミンはNU-POxである。
【0102】
高分子量ポリアミンは、好ましくは3個以上のアミン基、より好ましくは10個以上のアミン基、最も好ましくは20個以上のアミン基を含む。
【0103】
本発明の特に好ましい実施形態では、反応性ポリマー粒子は、50~95wt.%のEL-POx及び5~50wt.%のNU-POx、より好ましくは60~90wt.%のEL-POx及び10~40wt.%のNU-POx、最も好ましくは70~85wt.%のEL-POx及び15~30wt.%のNU-POxを含有する。
【0104】
別の有利な実施形態によると、反応性ポリマー粒子は、乾燥緩衝系を含有する。好ましくは、緩衝系は、7~11の範囲、より好ましくは8~10の範囲の緩衝pHを有する。
【0105】
好ましくは、緩衝系は、少なくとも10mmol.l-1.pH-1の緩衝能を有する。より好ましくは、緩衝能は少なくとも25mmol.l-1.pH-1であり、最も好ましくは、緩衝能は少なくとも50mmol.l-1.pH-1である。
【0106】
本発明者らは、1~20wt.%、より好ましくは2.5~15wt.%、最も好ましくは5~10wt.%の非反応性非イオン性ポリマーを含有する反応性ポリマー粒子を利用することにより、特に望ましい接着特性を有する止血シートが得られる場合があることを予想外に発見した。この非反応性非イオン性ポリマーは、反応性求電子性基又は反応性求核性基を含有しない。
【0107】
非常に好ましい実施形態では、反応性ポリマー粒子は、非反応性非イオン性ポリマーでコーティングされる。
【0108】
非反応性非イオン性ポリマーは、好ましくは40~70℃の範囲、より好ましくは45~65℃の範囲、最も好ましくは50~60℃の範囲の融点を有する。ここで、融点は、ポリマーが完全に溶融する温度を指す。
【0109】
本発明の反応性ポリマー粒子に好適に適用可能な非反応性非イオン性ポリマーの例として、ポロキサマー、ポリエチレングリコール及びこれらの組合せが挙げられる。ポロキサマーは、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖が隣接したポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央の疎水性鎖から構成される非イオン性トリブロックコポリマーであり、式(I)
【化1】
(式中、aは10~110の整数であり、bは20~60の整数である)
によって表される。aが80でありbが27であるとき、このポリマーはポロキサマー188として公知である。本発明で有用な他の公知のポロキサマーは、ポロキサマー237(a=64及びb=37)、ポロキサマー338(a=141及びb=44)及びポロキサマー407(a=101及びb=56)である。公知であり、本発明で有用でありうるさらなるポロキサマーとして、ポロキサマー108、ポロキサマー182、ポロキサマー183、ポロキサマー212、ポロキサマー217、ポロキサマー238、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー338及びポロキサマー335が挙げられる。
【0110】
特に好ましい実施形態によると、非反応性非イオン性ポリマーは、ポロキサマー、さらにより好ましくは2,000~18,000の平均分子質量を有するポロキサマー、最も好ましくは7,000~10,000の平均分子質量を有するポロキサマーである。粒子凝集物に適用されるポロキサマーは、好ましくは室温で固体である。
【0111】
本発明の別の態様は、本発明による1つ又は複数の止血シートを含有する封止包装体に関する。
【0112】
本発明のさらに別の態様は、止血シートを調製する方法であって、前記方法が、
上記で定義された耐水性の接着性繊維状担体構造体のシートを用意するステップ、
上記で定義された反応性ポリマー粒子を用意するステップ、及び
繊維状担体構造体の間隙空間内に反応性ポリマー粒子を分布させるステップ
を含む、方法に関する。
【0113】
反応性ポリマー粒子は、乾式方法又は湿式方法を使用して間隙空間内に分布されてもよく、乾式方法が好ましい。乾式方法では、反応性ポリマー粒子が粉末の形態で適用され、この粉末が乾燥形態で間隙空間を通して分散される。
【0114】
この乾式方法の1つの好ましい実施形態によると、反応性ポリマー粒子は、繊維状担体構造体のシートを振盪する又は振動させることによって繊維状担体構造体の間隙空間内に分布される。
【0115】
乾式方法の別の実施形態によると、止血シートは、
a)繊維状担体構造体のシートを用意するステップ、
b)反応性ポリマー粒子の層を繊維状担体構造体のシートに堆積させるステップ、
c)繊維状担体構造体の別のシートを反応性ポリマー粒子の層に重ねるステップ、並びに
任意選択でステップb)及びc)を1又は複数回繰り返すステップ
を含む積層方法によって調製される。
【0116】
そのようにして得られた積層体内の反応性ポリマー粒子の分布は、積層体を振盪する又は振動させることによって促進されてもよい。
【0117】
反応性ポリマー粒子を分布させる湿式方法では、低沸点有機液体中の反応性ポリマー粒子の分散液を使用して繊維状担体構造体を含浸した後、好ましくは減圧下で低沸点有機液体を蒸発させる。典型的に、低沸点有機液体は、大気圧で150℃未満、より好ましくは98℃未満、最も好ましくは80℃未満の沸点を有する。
【0118】
好ましくは、本発明の方法において、分布された反応性ポリマー粒子を含有する担体構造体は、少なくとも5分間にわたって水溶性求電子性ポリマーのガラス温度よりも高温に加熱される。このようにしてポリマー粒子を加熱することにより、粒子が粘性になり、繊維状担体構造体に接着する。典型的に、ポリマー粒子は、少なくとも15分間にわたって少なくとも40℃、より好ましくは50~80℃の温度に加熱される。
【0119】
代替的に、反応性ポリマー粒子は、分布された反応性ポリマー粒子を含有する繊維状担体構造体を多湿雰囲気に曝露し、反応性ポリマー粒子中の反応性求電子性基の一部を前述の繊維中の反応性求核性基と反応させることにより、繊維状担体構造体に単純に接着されてもよい。
【0120】
本発明の方法は、好ましくは止血シートの滅菌を含む。止血シートは、無菌包装の前に滅菌されてもよい。代替的に、シートは、封止包装内で滅菌されてもよい。
【0121】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0122】
概して、乾燥後の残留含水量(乾燥粉末、造粒物及び/又は粘着性繊維状担体構造体中の)が明示されない場合は常に、レベルは2.0%w/w未満である。
【0123】
(NHS-POxの調製)
20%NHSエステル基を含有するNHS側鎖活性化ポリ[2-(エチル/ヒドロキシ-エチル-アミド-エチル/NHS-エステル-エチル-エステル-エチル-アミド-エチル)-2-オキサゾリン]ターポリマー(=EL-POx、20%NHS)を、以下のように合成した:
ポリ[2-(エチル/メトキシ-カルボニル-エチル)-2-オキサゾリン]コポリマー(DP=+/-100)を、60% 2-エチル-2-オキサゾリン(EtOx)及び40% 2-メトキシカルボニル-エチル-2-オキサゾリン(MestOx)を使用してCROPによって合成した。40% 2-メトキシカルボニル-エチル基(1H-NMR)を含有する統計的コポリマーが得られた。
第二に、40% 2-メトキシカルボニル-エチル基を含有するポリマーをエタノールアミンと反応させ、40% 2-ヒドロキシ-エチル-アミド-エチル基(1H-NMR)を有するコポリマーを得た。その後、2-ヒドロキシ-エチル-アミド-エチル基の半分を無水コハク酸と反応させ、1H-NMRによって60% 2-エチル基、20% 2-ヒドロキシ-エチル-アミド-エチル基及び20% 2-カルボキシ-エチル-エステル-エチル-アミド-エチル基を有するターポリマーを得た。
最後に、2-カルボキシ-エチル-エステル-エチル-アミド-エチル基を、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びジイソプロピルカルボジイミド(DIC)によって活性化し、EL-POx、20%NHSを得た。1H-NMRによると、NHS-POxは20%NHS-エステル基を含有していた。NHS-POxを2~8℃の間で水中に溶解し(300mL中60g)、マイナス80℃で30分間冷却して凍結乾燥した。そのようにして得られた凍結乾燥粉末を、Rotavap中40℃で、Karl Fischer滴定によって決定される水分含有量が0.8%w/w未満になるまで乾燥した。この乾燥(白色)粉末を、ボールミル(Retch MM400)を使用して平均粒径が40μm以下(D[4,3])になるまで粉砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0124】
(NHS-POx粉末の染色)
20gのNHS-POx粉末を水に溶解し、高速分散装置(Ultra-Turrax、IKA)を使用して50mgのBrilliant Blue FCF(Sigma Aldrich)と混合した。混合(2分)直後、溶液を-78℃で凍結し、その後一晩凍結乾燥した。そのようにして得られた凍結乾燥粉末を、Rotavap中40℃で、Karl Fischer滴定によって決定される残留水分含有量が0.8%w/w未満になるまで乾燥した。次に、乾燥(青色)粉末を、ボールミル(Retch MM400)を使用して平均粒径が40μm以下(D[4,3])の青色染色NHS-POx粉末になるまで粉砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0125】
(NU-POxの調製)
アルキル側鎖にエチル及びアミン基を含有するポリオキサゾリンを、EtOx及びMestOxのCROP、並びにそれに続くエチレンジアミンでのメチルエステル側鎖のアミド化によって合成し、ポリ(2-エチル/アミノエチルアミドエチル-2-オキサゾリン)コポリマー(NU-POx)を得た。1H-NMRによると、NU-POxは10%NH2を含有していた。NU-POxを2~8℃の間で水中に溶解し(300mL中60g)、マイナス80℃で30分間冷却して凍結乾燥した。そのようにして得られた凍結乾燥粉末を、Rotavap中40℃で、Karl Fischer滴定によって決定される水分含有量が0.8%w/w未満になるまで乾燥した。この乾燥粉末を、平均粒径が100μm以下(D[4,3])になるまで卓上粉砕機で粉砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0126】
(反応性NHS-POx/P188顆粒の調製)
NHS-POxを、高せん断混合機中P188粉末とともに65℃で10分間加熱し、その後周囲条件まで冷却することにより、1.5、2.5又は3.5wt.%のPluronic P188を含有するP188コーティング反応性NHS-POx造粒物を調製した。コーティング造粒物を、ボールミル(Retch MM400)を使用して平均粒径が40μm以下(D[4,3])になるまで粉砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0127】
そのようにして得られた造粒物の粒径分布は、およそ90vol.%<80μm、50vol.%<40μm及び10vol.%<10μmであった。
【0128】
1H-NMR分光法を使用し、NHS-POx/P188(2.5%)造粒物を分析した。15mgの造粒物を1mLのジメチルスルホキシド(DMSO-d6)に溶解した。溶液をNMR管に移し、1H-NMRスペクトルを記録した。得られたスペクトルから、NHS-POxに結合したNHSの量を計算することができる。造粒物中のNHS-POxに結合したNHSの量は、NHS-POx出発材料に比べて101パーセントと計算され、造粒中に崩壊又は架橋が生じないことを示す。
【0129】
NHS-POx/P188造粒物を、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに分析した。5mgの造粒物を、SEC分析の溶離液である50mMの塩化リチウムを含有するN,N-ジメチルアセトアミド(2.50mL)に溶解した。SECをポリ(メチルメタクリレート)標準に対して測定し、得られたサイズ排除クロマトグラムからMn、Mw及びPDIを決定した。PDIは1.5以下であり、造粒中に架橋が生じなかったことを示す。
【0130】
(反応性NHS-POx/炭酸塩顆粒の調製)
25.31グラムの炭酸ナトリウム及び20.06グラムの炭酸水素ナトリウムを350mLの超純水に溶解し、次いで液体窒素で瞬間凍結して凍結乾燥することにより、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの1:1モル/モル混合物を調製した。得られた粉末を減圧下で乾燥し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0131】
25.28グラムのNHS-POxを、高せん断混合機を使用して均質な粉末が得られるまで、1.75グラムの炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム混合物及び0.80mLのイソプロピルアルコール(IPA)と混合した。
【0132】
混合後、湿潤造粒物を、IPA含有量が0.1%w/w未満になるまで減圧下で乾燥した。乾燥した造粒物を、平均粒径が25μm以下になるまでコーヒーグラインダーで摩砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0133】
(反応性NHS-POx/P188/炭酸塩顆粒の調製)
NHS-POx/炭酸塩造粒物を、P188粉末とともに高せん断混合機中65℃で10分間加熱し、その後周囲条件まで冷却することにより、1.5、2.5又は3.5wt.%のPluronic P188を含有するP188コーティング反応性NHS-POx/炭酸塩造粒物を調製した。コーティング造粒物を、ボールミル(Retch MM400)を使用して平均粒径が40μm以下(D[4,3])になるまで粉砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0134】
そのようにして得られた造粒物の粒径分布は、およそ90vol.%<20μm、70vol.%<10μm及び40vol.%<5μmであった。
【0135】
(反応性NHS-POx/NU-POx顆粒の調製(IPA造粒))
青色又は白色(非染色)NHS-POx粉末を、高せん断混合機中で約1~2%w/wのIPAを含有する均質な雪状粉末が得られるまで、イソプロピルアルコール(IPA)で湿潤させた。この後、NU-POx粉末を添加して混合した。湿潤された青色NHS-POx粉末を、1:0.6のモル比でNU-POx粉末と混合し、前記モル比は、NHS-POxによって提供されるNHS基の数のNU-POxによって提供されるアミン基の数に対する比を指す。湿潤された非染色NHS-POx粉末も、NU-POx粉末と他のモル比(1:0.8;1:1及び1:1.2)で混合した。
【0136】
混合後、1H-NMRによって決定されるIPA含有量が0.1%w/w未満になるまで、湿潤造粒物を減圧下で乾燥した。乾燥した造粒物を、ボールミル(Retch MM400)を使用して平均粒径が50μm以下(D[4,3])になるまで粉砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0137】
そのようにして得られた造粒物の粒径分布は、およそ90vol.%<90μm、50vol.%<45μm及び10vol.%<15μmであった。
【0138】
1H-NMR分光法を使用し、NHS-POX/NU-POx造粒物(1:1)を分析した。25mgの造粒物を、20分間超音波処理することによってトリフルオロ酢酸(0.20mL)に溶解した。造粒物の完全な溶解後、試料を、内部標準としてマレイン酸(2.5mg/mL)を含有する重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)(0.80mL)で希釈し、NMR管に移し、1H-NMRスペクトルを記録した。得られたスペクトルから、造粒物中に存在するNHS及びアミン基のモル比とともに、NHS-POxに結合したNHSの量を計算することができる。造粒物中のNHS-POxに結合したNHSの量は、NHS-POx出発材料に結合したNHSの量と同等であり、造粒中に崩壊又は架橋が生じないことを示す。
【0139】
NMR試料における全ポリマー回収率、すなわち、NHS-POxとNU-POxの組合せを、既知の量の内部標準(マレイン酸)、並びに異なる濃度のNHS-POx及びNU-POxの記録された1H-NMRスペクトルから作成した検量線を使用して決定した。全ポリマー回収率は99パーセントと測定され、不溶性の架橋材料が形成されなかったことを示す。
【0140】
NHS-POX/NU-POx造粒物(1:1)を、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに分析した。20mgの造粒物を、無水酢酸(1.00mL)で50℃で1時間処理した。次に、メタノール(2.00mL)を添加し、混合物を50℃でさらに1時間撹拌した。アリコート(0.75mL)を取り、すべての揮発物を減圧下で除去した。試料を、SEC分析の溶離液である50mMの塩化リチウムを含有するN,N-ジメチルアセトアミド(2.50mL)に溶解した。SECをポリ(メチルメタクリレート)標準に対して測定し、得られたサイズ排除クロマトグラムからMn、Mw及びPDIを決定した。PDIは1.5以下であり、造粒中に架橋が生じなかったことを示す。このサイズ排除クロマトグラフィー方法の分析検証により、0.05mol%のレベルのNHS-POxとNU-POxの意図的な架橋によってPDIが2.5より高くまで増加したことが示された。
【0141】
(反応性NHS-POx/NU-POx顆粒の調製(アセトン造粒))
青色又は白色(非染色)NHS-POx粉末を、高せん断混合機中で約1~2%w/wのアセトンを含有する均質な雪状粉末が得られるまで、アセトンで湿潤させた。この後、NU-POx粉末を添加して混合した。湿潤された青色NHS-POx粉末を、1:0.20のモル比でNU-POx粉末と混合し、前記モル比は、NHS-POxによって提供されるNHS基の数のNU-POxによって提供されるアミン基の数に対する比を指す。湿潤された非染色NHS-POx粉末も、NU-POx粉末と他のモル比(1:0.10及び1:0.40)で混合した。
【0142】
混合後、1H-NMRによって決定されるアセトン含有量が0.1%w/w未満になるまで、湿潤造粒物を減圧下で乾燥した。乾燥した造粒物をUltra Centrifugal Mill(Retch ZM200)を使用して粉砕し、63μmのメッシュサイズの試験ふるいでふるい分けした。ふるいを通った造粒物画分を収集し、平均粒径は50μm以下(D[4,3])であった。造粒物をalu-aluバッグで真空封止した。
【0143】
そのようにして得られた造粒物の粒径分布は、およそ90vol.%<90μm、50vol.%<45μm及び10vol.%<15μmであった。
【0144】
1H-NMR分光法を使用し、NHS-POX/NU-POx造粒物(1:0.20)を分析した。25mgの造粒物を、20分間超音波処理することによってトリフルオロ酢酸(0.20mL)に溶解した。造粒物の完全な溶解後、試料を、内部標準としてマレイン酸(2.5mg/mL)を含有する重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)(0.80mL)で希釈し、NMR管に移し、1H-NMRスペクトルを記録した。得られたスペクトルから、造粒物中に存在するNHS及びアミン基のモル比とともに、NHS-POxに結合したNHSの量を計算することができる。造粒物中のNHS-POxに結合したNHSの量は、NHS-POx出発材料に結合したNHSの量と同等であり、造粒中に崩壊又は架橋が生じないことを示す。
【0145】
NMR試料における全ポリマー回収率、すなわち、NHS-POxとNU-POxの組合せを、既知の量の内部標準(マレイン酸)、並びに異なる濃度のNHS-POx及びNU-POxの記録された1H-NMRスペクトルから作成した検量線を使用して決定した。全ポリマー回収率は99パーセントと測定され、不溶性の架橋材料が形成されなかったことを示す。
【0146】
NHS-POX/NU-POx造粒物(1:0.20)を、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに分析した。20mgの造粒物を、無水酢酸(1.00mL)で50℃で1時間処理した。次に、メタノール(2.00mL)を添加し、混合物を50℃でさらに1時間撹拌した。アリコート(0.75mL)を取り、すべての揮発物を減圧下で除去した。試料を、SEC分析の溶離液である50mMの塩化リチウムを含有するN,N-ジメチルアセトアミド(2.50mL)に溶解した。SECをポリ(メチルメタクリレート)標準に対して測定し、得られたサイズ排除クロマトグラムからMn、Mw及びPDIを決定した。PDIは1.5以下であり、造粒中に架橋が生じなかったことを示す。
【0147】
(反応性NHS-POx/NU-POx/P188顆粒の調製)
反応性NHS-POx/NU-POx顆粒を前述の通り調製した。次に、NHS-POx/NU-POx造粒物を、P188粉末とともに高せん断混合機中65℃で10分間加熱し、その後周囲条件まで冷却することにより、2.5%w/wのP188でコーティングされた反応性NHS-POx/NU-POx造粒物を調製した。コーティング造粒物を、ボールミル(Retch MM400)を使用して平均粒径が40μm以下(D[4,3])になるまで粉砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0148】
そのようにして得られた造粒物の粒径分布は、およそ90vol.%<80μm、50vol.%<40μm及び10vol.%<10μmであった。
【0149】
1H-NMR分光法を使用し、NHS-POx/NU-POx/P188造粒物を分析した。25mgの粉末を、20分間超音波処理することによってトリフルオロ酢酸(0.20mL)に溶解した。造粒物の完全な溶解後、試料を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)(0.80mL)で希釈し、NMR管に移し、1H-NMRスペクトルを記録した。得られたスペクトルから、未反応NHSの量は、NHS-POxと比べて98パーセントと計算された。
【0150】
NHS-POx/NU-POx/P188造粒物を、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに分析した。20mgの造粒物を、無水酢酸(1.00mL)で50℃で1時間処理した。次に、メタノール(2.00mL)を添加し、混合物を50℃でさらに1時間撹拌した。アリコート(0.75mL)を取り、すべての揮発物を減圧下で除去した。試料を、SEC分析の溶離液である50mMの塩化リチウムを含有するN,N-ジメチルアセトアミド(2.50mL)に溶解した。SECをポリ(メチルメタクリレート)標準に対して測定し、得られたサイズ排除クロマトグラムからMn、Mw及びPDIを決定した。PDIは1.5以下であり、造粒中に架橋が生じなかったことを示す。
【0151】
(還元架橋ゼラチン(RXL)の調製)
2つの手順によって還元架橋ゼラチン(RXL)を調製した:
12グラムのゼラチン粉末(ジェリータ-SPON(Gelita-SPON)(登録商標)、Gelita Medical GmbH)を、40℃で2時間撹拌することによって0.1モルの水酸化ナトリウム水溶液350mLに溶解した。透明な溶液を得た後、混合物を周囲温度まで冷却し、1.0モルの塩酸水溶液32.5mLを添加することにより、pHを7に調整した。液体窒素を使用して溶液を瞬間凍結し、一晩凍結乾燥させた。次に、粉末をコーヒーグラインダーで摩砕し、減圧下で乾燥させ、alu-aluバッグで真空封止した。以下、この還元架橋ゼラチンをRXL-LS(低塩分)と呼ぶ。
12グラムのゼラチン粉末(ジェリータ-SPON(登録商標)、Gelita Medical GmbH)を、40℃で10分間撹拌することによって1.0モルの水酸化ナトリウム水溶液360mLに溶解した。得られた透明な溶液を周囲温度まで冷却し、濃縮塩酸溶液(37%w/w)30mLを添加することにより、pHを7に減少させた。
液体窒素を使用して溶液を瞬間凍結し、一晩凍結乾燥させた。次に、粉末をコーヒーグラインダーで摩砕し、減圧下で乾燥させ、alu-aluバッグで真空封止した。以下、この還元架橋ゼラチンをRXL-HS(高塩分)と呼ぶ。
【0152】
(反応性NHS-POx/RXL顆粒(低塩分及び高塩分)の調製)
反応性NHS-POx/RXL顆粒を以下の通り調製した:5gの青色NHS-POx粉末を、高せん断混合機中で約1~2%w/wのIPAを含有する均質な雪状粉末が得られるまで、IPAで湿潤させた。この後、5gのRXL-LS又はRXL-HS粉末を添加して混合した。混合後、1H-NMRによって決定されるIPA含有量が0.1%w/w未満になるまで、湿潤造粒物を減圧下で乾燥した。乾燥した造粒物を、平均粒径が90μm以下(D[4,3])になるまでコーヒーグラインダーで摩砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0153】
そのようにして得られた造粒物の粒径分布は、およそ90vol.%<190μm、50vol.%<60μm及び10vol.%<15μmであった。
【0154】
RXLを含有する造粒物を1H-NMR分光分析によって分析した。この目的のために、5%(v/v)酢酸を含有する重水素化クロロホルム(CDCl3)(1.0mL)を、25mgの造粒物に添加した。試料を20分間超音波処理することにより、NHS-POxを選択的に抽出した。分散液を0.22μmフィルターに通し、NMR管に移して1H-NMRスペクトルを記録した。得られたスペクトルから、未反応NHS量は、NHS-POxと比べて98パーセントと計算された。
【0155】
NMR試料におけるNHS-POxの回収率を、トリメチルシランを内部標準として、並びに異なる濃度のNHS-POxの1H-NMRスペクトルから作成した検量線を使用して決定した。全NHS-POx回収率は100パーセントと測定され、不溶性の架橋材料が形成されなかったことを示す。
【0156】
NHS-POx/RXL造粒物を、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに分析した。このために、1H-NMR分光分析に使用された溶液からアリコート(0.15mL)を取り出した。この溶液を、SEC分析の溶離液である50mMの塩化リチウムを含有するN,N-ジメチルアセトアミド(1.00mL)で希釈した。SECをポリ(メチルメタクリレート)標準に対して測定し、得られたサイズ排除クロマトグラムからMn、Mw及びPDIを決定した。PDIは1.5以下であり、ここでも造粒中に架橋が生じなかったことが示される。
【0157】
(炭酸塩を含有する反応性NHS-POx/RXL顆粒の調製)
まず、25.31gの炭酸ナトリウム及び20.06gの炭酸水素ナトリウムを350mLの超純水に溶解することにより、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの1:1モル/モル混合物を調製した。溶液を液体窒素で瞬間凍結し、凍結乾燥した。得られた粉末を減圧下で乾燥し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0158】
NHS-POx/RXL/炭酸塩顆粒を以下の通り調製した:高せん断混合機を使用し、5gのRXL-LS又はRXL-HSと0.178gの炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムを混合した。次に、約1~2%w/wのIPAを含有する5gの青色NHS-POxを添加し、均質な粉末が得られるまで混合した。混合後、1H-NMRによって決定されるIPA含有量が0.1%w/w未満になるまで、湿潤造粒物を減圧下で乾燥した。乾燥した造粒物を、平均粒径が100μm以下(D[4,3])になるまでコーヒーグラインダーで摩砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0159】
(反応性NHS-POx/NH2-PEG顆粒の調製)
NHS-POx(6,9g)を、高せん断混合機中で約1~2%w/wのIPAを含有する均質な雪状粉末が得られるまで、IPAで湿潤させた。次に、8.1gのアミン-PEG-アミン、2アーム、MW2k(前Creative PEGWorks)を添加した(モル比1:1.16であり、前記モル比は、NHS-POxによって提供されるNHS基の数のPEG-アミンによって提供されるアミン基の数に対する比を指す)。1H-NMRによって決定されるIPA含有量が0.1%w/w未満になるまで、形成された造粒物を減圧下で乾燥した。乾燥した造粒物を、平均粒径が100μm以下(D[4,3])になるまでコーヒーグラインダーで摩砕し、alu-aluバッグで真空封止した。
【0160】
1H-NMR分光法を使用し、NHS-POX/NH2-PEG造粒物を分析した。25mgの造粒物を、20分間超音波処理することによってトリフルオロ酢酸(0.20mL)に溶解した。造粒物の完全な溶解後、試料を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)(0.80mL)で希釈し、NMR管に移し、1H-NMRスペクトルを記録した。得られたスペクトルから、未反応NHSの量は、NHS-POxと比べて97パーセントと計算された。
【0161】
NHS-POX/NH2-PEG造粒物を、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに分析した。20mgの造粒物を、無水酢酸(1.00mL)で50℃で1時間処理した。次に、メタノール(2.00mL)を添加し、混合物を50℃でさらに1時間撹拌した。アリコート(0.75mL)を取り、すべての揮発物を減圧下で除去した。
【0162】
試料を、SEC分析の溶離液である50mMの塩化リチウムを含有するN,N-ジメチルアセトアミド(2.50mL)に溶解した。SECをポリ(メチルメタクリレート)標準に対して測定し、得られたサイズ排除クロマトグラムからMn、Mw及びPDIを決定した。PDIは1.5以下であり、造粒中に架橋が生じなかったことを示す。
【0163】
(反応性NHS-PEG/NU-POx顆粒の調製)
1.07グラムのNHS-PEG 4アーム MW10k(前Creative PEGWorks)及び0.46グラムのNU-POxを、乳棒及び乳鉢を使用して50μLのジエチルエーテルと十分に混合した。均質な混合物の形成後、これを減圧下で乾燥してalu-aluバッグで真空封止した。
【0164】
(反応性NHS-POx/ジェリータ Spon顆粒の調製)
0.2%w/w未満の水分含有量を有する事前乾燥されたゼラチン粉末(ジェリータ-SPON(登録商標)、前Gelita Medical GmbH)7.01gを、20,000rpmで動作する高せん断混合機を使用してジクロロメタン(200mL)に20分間分散させた。次に、NHS-POx(7.02g)を添加し、5分間撹拌を続けた。NHS-POxは溶解しなかった。すべての揮発物を減圧下で懸濁液から除去した。得られた粉末を、平均粒径が95μm以下(D[4,3])になるまでコーヒーグラインダーを使用して摩砕し、alu-aluバッグで真空封止し、減圧下でさらに乾燥させ、alu-aluバッグで真空封止した。
【0165】
そのようにして得られた造粒物の粒径分布は、およそ90vol.%<190μm、50vol.%<80μm及び10vol.%<15μmであった。
【0166】
造粒物を1H-NMR分光分析によって分析した。この目的のために、5%(v/v)酢酸を含有する重水素化クロロホルム(CDCl3)(1.0mL)を25mgの造粒物に添加した。試料を20分間超音波処理することにより、NHS-POxを選択的に抽出した。分散液を0.22μmフィルターに通し、NMR管に移して1H-NMRスペクトルを記録した。得られたスペクトルから、未反応NHSの量は、NHS-POxと比べて97パーセントと計算された。
【0167】
造粒物をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析によってさらに分析した。上述の濾過されたNHS-POx抽出物のアリコート(0.15mL)を、SEC分析の溶離液である50mMの塩化リチウムを含有するN,N-ジメチルアセトアミド(1.00mL)で希釈した。
【0168】
試料をSECによってポリ(メチルメタクリレート)標準に対して分析したところ、PDIは1.45であり、架橋が生じなかったことを示す。
【0169】
(粘着性繊維状担体構造体)
本発明による組織接着性シートの調製において繊維状担体構造体として使用するために、以下の市販の止血製品を選択した:
ジェリータ タフト-It(登録商標):8層の還元架橋ゲルフォーム繊維からなる粘着性繊維状担体構造体。それぞれ約2mm厚の8つの層は、寸法が50mm×75mmである。ジェリータ タフト-It(登録商標)の水分含有量は、15%以下である。製品を真空オーブン中40℃で数時間乾燥させ、水分含有量を2.0%w/w以下(重量測定によって決定される)まで低減させた後、凝集粒子を含浸させた。
【0170】
(出血実験)
標準化されたex-vivo及びin-vivoブタ出血モデルを使用して止血有効性を評価した。すべてのモデルは、ヘパリンを使用して凝血時間を延長させ、活性化凝固時間(ACT)を約2~3倍にした。
【0171】
ex-vivoモデル:
実際のin-vivo環境を可能な限り厳密に模倣するために、屠殺場からのヘパリン処置された新鮮な血液で灌流された新鮮な肝臓を有する、生きたex-vivoブタモデル。肝臓を灌流機に取り付け、灌流機によって酸素化、血液のpH、温度及び血圧を生体境界内に維持する。2つの肝臓及び10リットルのヘパリン処置された血液(5000単位/L)を屠殺場で収集する。肝臓は氷上で、血液は周囲温度で輸送する。収集後2時間以内に、肝臓を病変について検査し、これを手袋及びシアノアクリレート糊で閉じる。
灌流パラメータ:流量600ml/分、圧力10~12mmHg、温度37℃(+/-1℃)、カルボゲン 1分に0.25リットル
平坦な丸形回転擦過ツールを用いて肝臓表面に円形の出血創傷(直径8mm)を作成し、パンチされた出血部の深さが常に3mmになるようにゴムアンレーを用いる。
肝臓が適正に灌流されたら(色及び温度を点検する)、以下の手順に従って試料を試験する:試料を適切なサイズ(2.7×2.7cm)に切断する;カメラをオンにする;カメラで部位数を確認する;8mmの生検をパンチする;生検を切断除去する;ガーゼで血液を出血部から除去する(2x);事前に秤量されたガーゼで血液を30秒間収集する;出血をスコア付けする(2名の研究者によって);
事前に湿潤されたガーゼ(食塩水)によって試料を出血部に置き、わずかな圧力で1分間抑える;5分間観察し(接着及び止血を点検し、スコア付けする)、30分後に繰り返す。
【0172】
in vivoモデル:
麻酔したブタ(家畜ブタ、雄、体重範囲:40kg、成体)で標準化組合せ貫通脾臓破裂を引き起こす。脾臓及び他の臓器にアクセスするため、正中線開腹術を行う。メスを使用し、n=3(S1...S3)の被膜下標準化病変(10mm×10mm)を作製する。止血製品を、事前に湿潤されたガーゼ(食塩水)によって穏やかな圧力で貼り付け、1分間抑える。製品の貼付後、止血までの時間(TTH)を評価する。TTHがゼロに等しい場合、1分の押圧後に止血が既に達成されていることを意味する。
【0173】
パッチのスコア付けシステム:凝固
++++ タンポナーデ直後に達成
+++ タンポナーデ後<10秒で達成
++ タンポナーデ後<30秒で達成
+ タンポナーデ後3分以内に達成
+/- 3分後に達成、第2のタンポナーデを適用
- 達成されず
【0174】
パッチのスコア付けシステム:貼付の10分後
++++ 非常に強力な接着(除去時にパッチが破損する)
+++ 強力な接着(除去時にパッチが破損する)
++ 強力な接着(パッチは破損することなく除去可能)
+ 中等度の接着(パッチは破損することなく除去可能)
+/- 軽度の接着(パッチは破損することなく除去可能)
- 達成されず
【0175】
[実施例1]
〔担体構造体への染色ポリマー粒子の含浸〕
Vibratory Sieve Shaker AS 300(Retsch)を、それぞれ5分間の連続した2つの期間にわたって操作し、染色NHS-POx粉末を異なる担体構造体に導入した。生成後、1gのシリカを含有するalu-aluパウチに止血パッチを装填し、真空封止した。
【0176】
上述の振盪機を使用し、青色NHS-POx粉末を3種の異なる担体構造体に導入した:
ゼラチンフォーム(ジェリータ ラピッド(Gelita Rapid)(登録商標)、Gelita Medical Germany)、スポンジ
コラーゲンフォーム(サージコル(Surgicoll)(登録商標)、MBP、ドイツ)、スポンジ
繊維状担体構造体(ジェリータ タフト-It(登録商標)、Gelita Medical Germany))
振盪処理後、青色NHS-POx粉末は、ゼラチンフォーム又はコラーゲンフォームにほとんど浸透しなかったことが見出された。フォームをメスで切断すると、深部の含浸が生じなかったことが明白であった。
【0177】
それに対し、振盪処理により、青色NHS-POx粉末は繊維状担体構造体全体に均質に分散した。
【0178】
[実施例2]
〔担体構造体への反応性ポリマー粒子及び造粒物の含浸〕
機械振盪プロセスにより、ジェリータ タフト-It(登録商標)(およそ0.71グラム)にNHS-POx粉末及びNHS-POx/NU-POx(1:0.6)造粒物をそれぞれ含浸させた。塗料振盪機を使用し(Collomix GmbHのVIBA PRO V)、染色粉末(およそ0.75グラム)をパッチに導入した。担体構造体を含むアレイのホルダーを機械にクランプした。アレイを垂直に振動させた。
【0179】
含浸させた試料をPMMAプレートに置いてオーブンに入れ、そこで試料を異なる熱処理に供した。粉末の固着を評価するために、試料を白色PMMAプレート上で2回動かした。青色粉末が放出されない場合、結果を固着したとみなした。結果を表1に示す。
【0180】
【0181】
NHS-POx粉末を含浸させた試料とNHS-POx/NU-POx造粒物を含浸させた試料の間で、固着結果の差は観察されなかった。
【0182】
反応性NHS-POx粉末とNHS-POx/NU-POx造粒物は、いずれも吸湿性である。周囲温度及び40%より低い相対湿度(RH)で、曝露の30分以内に繊維状担体構造体に再現性よく含浸させることができる。しかし、例えばRH75%及び25℃で含浸を行う場合、粒子/顆粒は数分以内に粘性になり、再現不可能な不均質な含浸特性がもたらされる。
【0183】
[実施例3]
止血パッチ(ジェリータ タフト-It(登録商標);50×75mm、およそ0.7グラム)に、「ガラガラ鳴る」タイプの空気振盪エンジンによって動かされるばね上懸架装置でパッチを振盪することにより、1gの青色NHS-POxを含浸させた。エンジンは、6バール、146Hz及び830Nの遠心力で操作されるNTP25B+C(Netter Vibration GmbH)であった。それぞれ10秒の10回のサイクルを使用し、染色NHS-POx粉末を分散させた。生成後、1gのシリカを含有するalu-aluパウチに止血パッチを装填し、真空封止した。
【0184】
パッチを2cm×2cm片に切断し、ex vivo肝臓灌流モデルで三連で試験した。止血までの時間(TTH)は0分(1分の押圧後)であり、30分の観察時間の間に再出血は観察されなかった。パッチは、非常に良好な接着特性を示した。パッチを粉々に破損させることなく除去することは不可能であった。加えて、パッチは高い可撓性及び屈曲特性を有することが見出された。
【0185】
さらに、パッチをin vivoブタヘパリン処置モデルで評価した。パッチは、高い止血有効性を示し、優れた接着特性を有することが見出された。活動性出血は、種々の臓器:脾臓、肝臓及び腎臓の切除において効率的に停止された。ex-vivo及びin-vivoの結果の概要を表2に示す。
【0186】
【0187】
[実施例4]
止血パッチ(ジェリータ タフト-It(登録商標);50×75mm、およそ0.71グラム)に、反応性NHS-POx/NU-POx(1:0.6)造粒物を前述の通り含浸させた。1グラムの造粒物を、実施例3に記載の通りパッチ全体に分布させた。次に、1gのシリカを含有するalu-aluパウチに止血パッチを装填し、真空封止した。
【0188】
パッチを2cm×2cm片に切断し、ex vivo肝臓灌流モデルで三連で試験した。止血までの時間(TTH)は0(1分の押圧後)であり、30分の観察時間の間に再出血は観察されなかった。パッチはまた、高い可撓性及び屈曲特性を有することが見出された。
【0189】
さらに、パッチをin vivoブタヘパリン処置モデルで評価した。パッチは、非常に良好な凝固及び接着特性を有することが見出された。活動性出血は、種々の臓器:脾臓、肝臓及び腎臓の切除において効率的に停止された。結果の概要を表3に示す。
【0190】
【0191】
[実施例5]
ジェリータ タフト-It(登録商標)(50×75mm、およそ0.7g)に、異なる反応性ポリマー粉末を含浸させた。そのようにして得られたパッチの止血特性を、本明細書で以前に記載されたようにex-vivo及びin-vivoブタ出血モデルで試験した。
【0192】
空気振盪デバイスを使用し、繊維状担体構造体に1.4gの粉末を含浸させた。繊維状担体のシートを垂直に振動させた。ロングストローク型エンジン(NTK 25 AL L、前Netter Vibration GmbH)を、6バール、11Hz及び30mmの振幅で操作した。15秒の4サイクルを使用し、シートに粉末を分散させた。造粒物がシートの全厚にわたって分布された。シート表面全体の分布も均質であった。
【0193】
9種の異なる反応性ポリマー粉末を試験した。これらの粉末は、NHS-POxの形態の、又は前NOF America corporationのペンタエリスリトールポリ(エチレングリコール)エーテルテトラスクシンイミジルグルタレート(NHS-PEG)の形態の反応性求電子性基を担持する水溶性ポリマーを含有した。反応性ポリマー粉末の一部は、NHS-POx又はNHS-PEGの他に、NHS-POx及びNHS-PEGの反応性NHS基と反応できる反応性求核性基を担持するポリマーを含有する造粒物であった。これらの造粒物の調製は、本明細書で以前に記載されている。
【0194】
試験された造粒物を以下に列挙する:
NHS-POx/P188
NHS-POx/炭酸塩
NHS-POx/ジェリータ Spon
NHS-POx/NH2-PEG
NHS-POx/RXL(高塩分)
NHS-POx/RXL(低塩分)
炭酸塩を含有するNHS-POx/RXL(高塩分)
NHS-PEG/RXL(低塩分)
NHS-PEG/NU-POx
試験した繊維状担体構造体と反応性ポリマー粉末の異なる組合せを表4に示す。
【0195】
【0196】
ex-vivo及びin-vivoブタ出血モデルにおいて、これらのパッチによって得られた結果を表5に要約する。
【0197】
【0198】
[実施例6]
止血パッチ(ジェリータ タフト-It(登録商標);50×75mm、およそ0.7g)に、NHS-POx/NU-POx/P188 2.5%を含浸させた。1グラムの造粒物を、実施例2に記載の通りパッチ全体に分布させた。次に、1gのシリカを含有するalu-aluパウチに止血パッチを装填し、真空封止した。
【0199】
パッチをin vivoブタヘパリン処置モデルで評価した。パッチは、非常に良好な凝固及び十分な接着特性を有することが見出された。接着特性が低減したことにより、P188を含まない同一のパッチとは対照的に、パッチを1枚で除去することが可能であった。活動性出血は、種々の臓器:脾臓、肝臓及び腎臓の切除において効率的に停止された。結果の概要を表6に示す。
【0200】
【0201】
[実施例7]
止血パッチ(ジェリータ タフト-It(登録商標);50×75mm、およそ0.7g)に、NHS-POx/NU-POx又は1.5%、2.5%若しくは3.5%のPluronic P188をそれぞれ含有するNHS-POx/NU-POx/P188を含浸させた。1グラムの造粒物を、実施例2に記載の通りパッチ全体に分布させた。次に、1gのシリカを含有するalu-aluパウチに止血パッチを装填し、真空封止した。
【0202】
パッチを、in vivoブタヘパリン処置モデルにおいて脾臓切除(動脈出血)で評価した。結果を表7に要約する。
【0203】
【0204】
NHS-POx/NU-POx/P188を含有するパッチは、NHS-POx/NU-POxを含有するパッチよりも、貼付後に「1枚で」除去するのが容易であった。
【0205】
[実施例8]
実験を行い、止血パッチのin-vivoでの性能に対する反応性NHS-POx/NU-POx造粒物のNU-POx含有量の効果を決定した。
【0206】
(含浸方法)
止血パッチ(ジェリータ タフト-It(登録商標);50×75mm、およそ0.7g)に、1:0.10、1:0.20及び1:0.40のモル比でのアセトン造粒によって作製された反応性NHS-POx/NU-POx顆粒を含浸させ、前記モル比は、NHS-POxによって提供されるNHS基の数のNU-POxによって提供されるアミン基の数に対する比を指す。同じ止血パッチに、反応性NHS-POx粉末も含浸させた。
【0207】
Fibroline SL-Preg実験室機械を使用し、1グラムの造粒物/粉末をパッチ全体に分布させた。次に、止血パッチを固着させ、乾燥させ、1gのシリカを含有するalu-aluパウチに装填し、真空封止した。
【0208】
機械
Fibroline SL-Preg実験室機械は、最大200Hzの周波数で最大40kVの電圧を最大60秒間の期間印加することにより、電極間で粒子を動かす。2つの電極プレートは、約50×40cmのサイズである。上プレートを接地させる。
【0209】
以下の標準設定を使用した:40kV、100Hz、20秒。
【0210】
アレイ
3D印刷PMMAアレイを下電極プレートに取り付けた後、粉末を重力法によってアレイに注入した。掻取りカートン又は金属スパチュラを使用し、アレイに反応性ポリマー粉末を充填した。アレイは50×75×4mmであり、22×33=726個の正方形ウェル(各ウェルの内のり寸法:2×2×2mm)を含有していた。726個のウェルの合計体積は、およそ5.8mLであった。
【0211】
スペーサ
スペーサマスクをアレイの上に配置した。スペーサを使用すると、交番電界に供した際に粒子の上下移動が可能になる。スペーサが使用されない場合、担体への浸透及びそこを通る分布が制限される。タフト-ITの場合、これは3mmのマスクであった。これにより、電極の距離は3+4mm=7mmになる。
【0212】
NHS-POx:NU-POx造粒物(0、10、20及び40パーセントのNU-POxからのアミン基、パーセンテージはNHS-POxによって提供されるNHS基の数に基づいて計算される)又はNHS-POx粉末を含有する止血パッチのin vivoでの性能を、非ヘパリン処置in-vivoブタモデルで評価した。試験されたパッチの詳細を表8に示す。
【0213】
【0214】
(in vivo試験)
成体雌家畜ブタ(40~50kg)に試験を行った。抗凝固剤は適用しなかった。パッチ性能を脾臓と肝臓の両方で試験した。脾臓又は肝臓の位置を特定し、試験期間の経過とともに必要に応じて表出させ、食塩水で浸したスポンジで覆うことによりそれらの天然の湿度を維持した。
【0215】
異なる種類の損傷を作成した:
肝臓:擦傷、生検パンチ及び切除傷
脾臓:切除傷
【0216】
適切にサイズ調整された肝実質の部分を擦過/パンチし、中等度から重度の出血を引き起こした。外科用メス及び1×1cm2の鋳型によって肝臓の擦傷を作成し、8mmの円形生検パンチを使用して円形パンチを作成した。肝臓及び脾臓の切除傷は、外科用ナイフを使用して作成した。
【0217】
組織の切除又は乱切の直後にパッチを貼り付けた:
生検パンチ及び擦傷に対して2×2cm片
切除傷に対して完全な7.5×5cmのパッチ
【0218】
試験パッチを出血組織に貼り付け、食塩溶液で事前に湿潤されたガーゼを使用して圧迫することによって穏やかにプレスした。タンポナーデは、最初に10秒間の期間、次に30秒間の間隔をおき、合計5分間まで適用した。
【0219】
含浸されていないタフト-ITパッチを基準として使用した(タフト-ITと呼ぶ)。
【0220】
in vivo試験の結果を表9に要約する。
【0221】
【0222】
パッチ1~4は非常に強力な組織接着を示した一方、タフト-ITパッチでは軽度の接着しか観察されなかった。
【0223】
パッチ1及び2は、貼付後にごくわずかな膨張しか示さなかった。パッチ3~4は、より大きな、しかし依然として許容可能な膨張を示した。
【0224】
(実施例9)
止血パッチ(ジェリータ タフト-It(登録商標);50×75mm、およそ0.7g)に、NHS-POxの溶液、NHS-POx粉末、又はNHS-POx/NU-POx造粒物のいずれかを含浸させた。使用したNHS-POx/NU-POx造粒物は、1:0.20のモル比でのアセトン造粒によって作製された(実施例8を参照されたい)。
【0225】
NHS-POxをイソプロピルアルコールとジクロロメタンの1:1混合物(200g/L)に溶解することにより、NHS-POxを含有する噴霧溶液を調製した。実験室ガラス噴霧器及び加圧空気を使用し、この噴霧溶液5mLを1回の噴霧サイクルでパッチに含浸させた。このようにして送達されたNHS-POxの全量は、パッチあたり1グラムであった。含浸後、パッチを40℃のオーブン内で2時間乾燥させ、その後乾燥器で2日間保管した後、1gのシリカを含有するalu-aluパウチに装填して真空封止した。
【0226】
さらに、実施例8に記載の手順を使用し、1グラムのNHS-POx粉末又は1グラムのNHS-POx/NU-POx造粒物をパッチに含浸させた。
【0227】
そのように調製されたパッチの性能を、ex vivo肝臓灌流モデルで、軽度(<20mL/分)及び重度の出血(>50mL/分)の条件下で三連で試験した。平坦な丸形回転擦過ツールを用いて肝臓表面に円形の出血創傷(直径8mm)を作成し、パンチされた出血部の深さが常に3mmになるようにゴムアンレーを用いた。結果を表10に示す。
【0228】