(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】多方向入力装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/06 20060101AFI20241119BHJP
H01H 25/04 20060101ALI20241119BHJP
G05G 9/047 20060101ALI20241119BHJP
G05G 25/00 20060101ALI20241119BHJP
G06F 3/0338 20130101ALI20241119BHJP
H01H 13/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01H25/06 A
H01H25/04 C
H01H25/06 D
G05G9/047
G05G25/00 C
G06F3/0338 411
H01H13/00 C
(21)【出願番号】P 2024505982
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2023005033
(87)【国際公開番号】W WO2023171259
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2022037451
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】細野 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】村中 哲夫
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-047871(JP,A)
【文献】特開2008-059210(JP,A)
【文献】特開2003-084915(JP,A)
【文献】特開2003-092045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 25/06
H01H 25/04
G05G 9/047
G05G 25/00
G06F 3/0338
H01H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置であって、
筒状部と、前記筒状部の外側に設けられた変形部とを有する起歪体と、
前記起歪体の筒状部の内部に設けられたプランジャーと、
前記起歪体の変形部に設けられた歪検知素子と、
前記起歪体の前記筒状部の底部に設けられた基板と、
前記基板と前記プランジャーの底部との間に設けられた弾性部材と
を備え、
前記起歪体は、前記変形部の外側の端部で機器本体に固定され、
前記基板は、前記起歪体に固定され
、
前記プランジャーが一体に設けられており、且つ、前記筒状部の上部および外側を覆う、キャップを備え、
前記起歪体の筒状部の内部は、
前記プランジャーが挿通される上部空間と、
前記上部空間の下側に形成され、前記上部空間よりも内径が大きく、且つ、前記弾性部材が配置される下部空間とを有する
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記起歪体の前記変形部は、
前記筒状部の下端から4方向に向かう上下方向の厚みより平面方向の幅が広い板状である
ことを特徴とする請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置であって、
筒状部と、前記筒状部の外側に設けられた変形部とを有する起歪体と、
前記起歪体の筒状部の内部に設けられたプランジャーと、
前記起歪体の変形部に設けられた歪検知素子と、
前記起歪体の前記筒状部の底部に設けられた基板と、
前記基板と前記プランジャーの底部との間に設けられた弾性部材と
を備え、
前記起歪体は、前記変形部の外側の端部で機器本体に固定され、
前記基板は、前記起歪体に固定され、
前記プランジャーが一体に設けられており、且つ、前記筒状部の上部および外側を覆う、キャップを備え、
前記プランジャーの外周面には、4方向に突出した突起が設けられており、
前記起歪体の前記筒状部の内周面には、4方向に設けられ、前記突起がスライド可能な溝が上下方向に延在して設けられている
ことを特徴とす
る多方向入力装置。
【請求項4】
前記起歪体の前記変形部は、
前記筒状部の下端から4方向に向かう上下方向の厚みより平面方向の幅が広い板状である
ことを特徴とする請求項
3に記載の多方向入力装置。
【請求項5】
傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置であって、
筒状部と、前記筒状部の外側に設けられた変形部とを有する起歪体と、
前記起歪体の筒状部の内部に設けられたプランジャーと、
前記起歪体の変形部に設けられた歪検知素子と、
前記起歪体の前記筒状部の底部に設けられた基板と、
前記基板と前記プランジャーの底部との間に設けられた弾性部材と
を備え、
前記起歪体は、前記変形部の外側の端部で機器本体に固定され、
前記基板は、前記起歪体に固定され、
前記起歪体の前記変形部は、
前記筒状部の下端から4方向に向かう上下方向の厚みより平面方向の幅が広い板状であり、
前記機器本体は、
前記変形部の前記外側の端部と対向する位置に、平面部から上方に突出して設けられた機器側突出部を有し、
前記変形部の前記外側の端部は、
前記機器側突出部に固定される
ことを特徴とす
る多方向入力装置。
【請求項6】
傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置であって、
筒状部と、前記筒状部の外側に設けられた変形部とを有する起歪体と、
前記起歪体の筒状部の内部に設けられたプランジャーと、
前記起歪体の変形部に設けられた歪検知素子と、
前記起歪体の前記筒状部の底部に設けられた基板と、
前記基板と前記プランジャーの底部との間に設けられた弾性部材と
を備え、
前記起歪体は、前記変形部の外側の端部で機器本体に固定され、
前記基板は、前記起歪体に固定され、
前記起歪体の前記変形部は、
前記筒状部の下端から4方向に向かう上下方向の厚みより平面方向の幅が広い板状であり、
前記変形部の前記外側の端部は、
前記変形部の他の部分よりも下方に突出している
ことを特徴とす
る多方向入力装置。
【請求項7】
傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置であって、
筒状部と、前記筒状部の外側に設けられた変形部とを有する起歪体と、
前記起歪体の筒状部の内部に設けられたプランジャーと、
前記起歪体の変形部に設けられた歪検知素子と、
前記起歪体の前記筒状部の底部に設けられた基板と、
前記基板と前記プランジャーの底部との間に設けられた弾性部材と
を備え、
前記起歪体は、前記変形部の外側の端部で機器本体に固定され、
前記基板は、前記起歪体に固定され、
前記起歪体の前記変形部は、
前記筒状部の下端から4方向に向かう上下方向の厚みより平面方向の幅が広い板状であり、
前記起歪体は、
前記筒状部の下端から4方向に突出して設けられた固定片を有し、
前記固定片に前記基板が固定される
ことを特徴とす
る多方向入力装置。
【請求項8】
前記起歪体の前記変形部は、
前記起歪体の前記固定片よりも下方に突出した位置に設けられている
ことを特徴とする請求項
7に記載の多方向入力装置。
【請求項9】
前記歪検知素子は、
フレキシブルプリント配線基板に搭載されており、
前記フレキシブルプリント配線基板は、
前記起歪体の前記変形部の下面に接着されており、
前記基板は、
前記起歪体の前記変形部の前記下面よりも上側に設けられており、
前記基板の上面に設けられている2つの固定接点は、前記基板に設けられたスルーホー
ルを介して、前記フレキシブルプリント配線基板に電気的に接続される
ことを特徴とする請求項
8に記載の多方向入力装置。
【請求項10】
傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置であって、
筒状部と、前記筒状部の外側に設けられた変形部とを有する起歪体と、
前記起歪体の筒状部の内部に設けられたプランジャーと、
前記起歪体の変形部に設けられた歪検知素子と、
前記起歪体の前記筒状部の底部に設けられた基板と、
前記基板と前記プランジャーの底部との間に設けられた弾性部材と
を備え、
前記起歪体は、前記変形部の外側の端部で機器本体に固定され、
前記基板は、前記起歪体に固定され、
前記歪検知素子は、
フレキシブルプリント配線基板に搭載されており、
前記フレキシブルプリント配線基板は、
前記起歪体の前記変形部の下面に接着されており、
前記基板は、
前記起歪体の前記変形部の前記下面よりも下側に設けられており、
前記フレキシブルプリント配線基板は、
前記弾性部材の一部が貫通する開口部が形成されている。
ことを特徴とす
る多方向入力装置。
【請求項11】
前記押圧操作がなされていないとき、前記弾性部材はドーム状を有する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項12】
前記基板は、当該基板の上面に、2つの固定接点を有し、
前記弾性部材は、当該弾性部材の下面に、当該弾性部材の弾性変形に伴って前記基板の前記2つの固定接点に接触する可動接点を有する
ことを特徴とする請求項11に記載の多方向入力装置。
【請求項13】
前記プランジャーが一体に設けられており、且つ、前記筒状部の上部および外側を覆う、キャップを備える
ことを特徴とする請求項5~10のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、操作子の操作方向及び操作量を操作子によって押圧されて変形する弾性板に設けた複数の歪検知体によって検出する多方向入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、操作子の押圧操作を開始してから、操作子が弾性板を押圧するまでは、弾性板が変形しないため、複数の歪検知体による検出を行うことができず、すなわち、押圧操作を検出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る多方向入力装置は、傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置であって、筒状部と、筒状部の外側に設けられた変形部とを有する起歪体と、起歪体の筒状部の内部に設けられたプランジャーと、起歪体の変形部に設けられた歪検知素子と、起歪体の筒状部の底部に設けられた基板と、基板とプランジャーの底部との間に設けられた弾性部材とを備え、起歪体は、変形部の外側の端部で機器本体に固定され、基板は、起歪体に固定される。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態に係る多方向入力装置によれば、押圧操作の微量な荷重を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る多方向入力装置の外観斜視図
【
図2】第1実施形態に係る多方向入力装置の上面側を示す分解斜視図
【
図3】第1実施形態に係る多方向入力装置の下面側を示す分解斜視図
【
図5】第1実施形態に係る多方向入力装置の断面斜視図
【
図6】第2実施形態に係る多方向入力装置の外観斜視図
【
図7】第2実施形態に係る多方向入力装置の上面側を示す分解斜視図
【
図8】第2実施形態に係る多方向入力装置の下面側を示す分解斜視図
【
図10】第2実施形態に係る多方向入力装置の断面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について説明する。なお、以降の説明では、便宜上、図中Z軸方向を、上下方向とし、図中X軸方向および図中Y軸方向を水平方向とする。
【0009】
〔第1実施形態〕
(多方向入力装置100の構成)
図1は、第1実施形態に係る多方向入力装置100の外観斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る多方向入力装置100の上面側を示す分解斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る多方向入力装置100の下面側を示す分解斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る多方向入力装置100の断面図である。
図5は、第1実施形態に係る多方向入力装置100の断面斜視図である。
【0010】
図1~
図5に示す多方向入力装置100は、ゲーム機、産業車両、ロボット操作等に用いられる、多方向(X軸方向、Y軸方向、およびこれらを組み合わせた方向)への傾倒操作、および、下方(Z軸負方向)への押圧操作が可能な入力装置である。
図1~
図5に示すように、多方向入力装置100は、キャップ102、起歪体120、荷重検出器130、基板160、弾性部材170、および機器本体110を備える。
【0011】
<キャップ102>
キャップ102は、起歪体120の筒状部125に取り付けられ、ユーザによる傾倒操作および押圧操作がなされる樹脂製の部材である。キャップ102は、上部が閉じ、且つ、下部が開口した円筒形状を有する。
【0012】
キャップ102の筒内における中央には、上下方向(Z軸方向)に延びる棒状のプランジャー103がキャップ102と一体に設けられている。キャップ102は、起歪体120の筒状部125に取り付けられて、筒状部125の上部および外側を覆う。プランジャー103は、起歪体120の筒状部125の上部空間125A内に挿通される。なお、プランジャー103の外周面には、4方向に突出した、4つの突起103Aが設けられている。
【0013】
<起歪体120>
起歪体120は、キャップ102から操作荷重を受けて歪を発生する樹脂製の部材である。起歪体120は、筒状部125と、4つの変形部122とを有する。筒状部125は、起歪体120の中央に設けられており、上下方向(Z軸方向)を筒方向とする、円筒状の部分である。筒状部125の内部は、上部空間125Aと下部空間125Bとを有する。上部空間125Aは、筒状部125の内部の上側(Z軸正側)の部分である。上部空間125Aには、プランジャー103が挿通される。上部空間125Aの内径は、プランジャー103の外径と略同寸法である。下部空間125Bは、筒状部125の内部の下側(Z軸負側)の部分である。下部空間125Bは、上部空間125Aよりも内径が大きい。下部空間125Bには、基板160および弾性部材170が配置される。4つの変形部122は、筒状部125の下端部から、90°間隔で4つの方向に突出して設けられている。4つの変形部122の各々は、上下方向の厚みより平面方向の幅が広い板状である。
【0014】
筒状部125の内周面には、4方向に設けられた4本の溝125Cが、上下方向(Z軸方向)に延在して設けられている。プランジャー103が有する4つの突起103Aの各々は、4本の溝125Cの各々の内部を上下方向にスライド可能である。
【0015】
4つの変形部122の各々は、外側の端部に貫通穴122Aが形成されている。起歪体120は、4つの変形部122の各々の貫通穴122Aを上側(Z軸正側)から貫通する4本のネジ(図示省略)により、外側の端部が機器本体110にネジ止め固定される。
【0016】
なお、機器本体110は、変形部122の外側の端部と対向する位置に、平面部111から上方に突出して設けられた機器側突出部112を有する。4つの変形部122の各々の外側の端部は、機器本体110の機器側突出部112にネジ止め固定される。
【0017】
また、
図4および
図5に示すように、4つの変形部122の各々の外側の端部は、変形部122の他の部分よりも厚さが厚くなっており、これにより、変形部122の他の部分よりも下方に突出している。
【0018】
<荷重検出器130>
荷重検出器130は、キャップ102の傾倒操作および押圧操作に伴う、起歪体120の歪みを検出する。荷重検出器130は、FPC131および4つの歪検知素子133を有する。
【0019】
FPC131は、「フレキシブルプリント配線基板」の一例であり、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。FPC131は、基部131A、引き出し部131B、および接続部131Cを有する。基部131Aは、起歪体120の底面の中央部(キャップ102の中心軸と同軸上)に接着される、平面視において円形状の部分である。引き出し部131Bは、基部131Aから水平方向に多方向入力装置100の外部へ延在する部分である。接続部131Cは、引き出し部131Bの先端に設けられており、外部(コネクタ等)と電気的に接続される部分である。また、FPC131は、基部131Aから90°間隔で4方向に突出して設けられた4つの突出部132を有する。
【0020】
4つの歪検知素子133の各々は、FPC131の4つの突出部132の各々に配置される。すなわち、4つの歪検知素子133の各々は、FPC131において、キャップ102の中心軸に対して4つの方向の各々に配置される。4つの突出部132の各々は、起歪体120の4つの変形部122の各々の底面に接着される。これにより、4つの歪検知素子133の各々は、FPC131とともに、起歪体120の4つの変形部122の各々の底面に配置される。各歪検知素子133は、FPC131に印刷された抵抗体である。このため、各歪検知素子133は、FPC131とともに変形することで、抵抗値が変化する。
【0021】
荷重検出器130は、起歪体120の筒状部125に操作荷重が加わることによって生じる起歪体120の4つの変形部122の歪みを、4つの歪検知素子133によって検出し、検出された歪みを表す歪み検出信号(アナログ信号)を、荷重が加えられた方向および荷重の大きさ表す検出信号として、外部へ出力することができる。
【0022】
<基板160>
基板160は、起歪体120の筒状部125の内部の下側の下部空間125B内に設けられている、樹脂製且つ板状の部材である。基板160は、90°間隔で配置された4本の腕部162を有して十字状に形成されている。基板160は、4本の腕部162の各々の先端に形成されている貫通穴162Aを下側(Z軸負側)から貫通する4本のネジ165により、起歪体120にネジ止め固定される。具体的には、起歪体120は、筒状部125の下端から90°間隔(但し、4つの変形部122とは45°ずれている)で4方向に突出して設けられた4つの固定片123を有する。基板160は、4本の腕部162の各々が、4つの固定片123の各々に、ネジ止め固定される。
【0023】
なお、起歪体120の各変形部122は、起歪体120の固定片123よりも下方に突出した位置に設けられている。
【0024】
<弾性部材170>
弾性部材170は、起歪体120の筒状部125の内部の下側の下部空間125B内において、基板160とプランジャー103の底部との間に設けられている。弾性部材170は、ゴム、シリコン等の弾性素材が用いられて形成され、上下方向(Z軸方向)に弾性変形可能である。弾性部材170は、キャップ102の押圧操作がなされていないとき、上方(Z軸正方向)に凸状のドーム状を有する。
【0025】
弾性部材170の中央部の底面には、可動接点171が設けられている。一方、基板160の中央部の上面には、2つの固定接点161A,161Bが設けられている。可動接点171は、弾性部材170が弾性変形したときに、2つの固定接点161A,161Bに接触することにより、2つの固定接点161A,161Bを互いに導通させることができる。
【0026】
(多方向入力装置100の動作)
以上のように構成された多方向入力装置100は、キャップ102の傾倒操作がなされると、プランジャー103を介して、起歪体120の筒状部125に対して傾倒操作方向に荷重が加わる。これにより、筒状部125を支えている起歪体120の4つの変形部122の各々に荷重が加わるが、4つの変形部122の各々の外側の端部が機器本体110に固定されているため、4つの変形部122の各々に、傾倒操作に応じた歪みが生じる。そして、多方向入力装置100は、荷重検出器130に設けられた4つの歪検知素子133により、4つの変形部122の各々の歪みを検出し、4つの変形部122の各々の歪みを表す歪み検出信号(アナログ信号)を、傾倒操作の方向および荷重の大きさ表す検出信号として、FPC131を介して外部へ出力することができる。
【0027】
一方、多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作がなされると、プランジャー103および弾性部材170を介して、基板160に対して下方(Z軸負方向)への荷重が加わる。これにより、基板160が固定されている起歪体120に荷重が加わり、起歪体120を支えている4つの変形部122の各々に荷重が加わるが、4つの変形部122の各々の外側の端部が機器本体110に固定されているため、4つの変形部122に、押圧操作に応じた歪みが生じる。具体的には、4つの変形部122の各々に、同一方向且つ略同量の歪みが生じる。そして、多方向入力装置100は、荷重検出器130に設けられた4つの歪検知素子133により、4つの変形部122の各々の歪みを検出し、4つの変形部122の各々の歪みを表す歪み検出信号(アナログ信号)を、押圧操作の荷重の大きさ表す検出信号として、FPC131を介して外部へ出力することができる。
【0028】
また、多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作の操作量が所定量に達すると、プランジャー103に押し下げられた弾性部材170が弾性変形して、当該押圧操作にクリック感を呈示できるともに、弾性部材170の下面に設けられている可動接点171が、基板160の上面に設けられている2つの固定接点161A,161Bに接触することにより、2つの固定接点161A,161Bを互いに導通状態にすることができる。これにより、多方向入力装置100は、4つの歪検知素子133による押圧操作の検出とは別に、2つの固定接点161A,161Bを互いに導通することによる押圧操作の検出が可能である。
【0029】
さらに、多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作の操作量が所定量に達した後、キャップ102がさらに下方(Z軸負方向)へ押圧された場合、このさらなる押圧による荷重を、4つの歪検知素子133によって検出することができる。
【0030】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、傾倒操作および押圧操作が可能な多方向入力装置100であって、筒状部125と、筒状部125の外側に設けられた変形部122とを有する起歪体120と、起歪体120の筒状部125の内部に設けられたプランジャー103と、起歪体120の変形部122に設けられた歪検知素子133と、起歪体120の筒状部125の底部に設けられた基板160と、基板160とプランジャー103の底部との間に設けられた弾性部材170とを備え、起歪体120が、変形部122の外側の端部で機器本体110に固定され、基板160が、起歪体120に固定される。
【0031】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作の操作量が微量であっても、プランジャー103によって、弾性部材170を介して基板160を下方に押圧することができる。このため、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作の操作量が微量(例えば、キャップ102に触れる程度)であっても、起歪体120に歪みを生じさせることができ、よって、当該押圧操作の微量な荷重を歪検知素子133によって高精度に検知することができる。
【0032】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作がなされていないとき、弾性部材170はドーム状を有する。
【0033】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作の操作量が所定量を超えたとき、当該押圧操作に対してクリック感を呈示することができる。
【0034】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、基板160は、当該基板160の上面に、2つの固定接点161A,161Bを有し、弾性部材170は、当該弾性部材170の下面に、当該弾性部材170の弾性変形に伴って基板160の2つの固定接点161A,161Bに接触する可動接点171を有する。
【0035】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、キャップ102の押圧操作の操作量が所定量を超えたとき、当該押圧操作に対してクリック感を呈示するとともに、2つの固定接点161A,161Bを互いに導通状態にすることができる。
【0036】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、プランジャー103が一体に設けられており、且つ、起歪体120の筒状部125の上部および外側を覆う、キャップ102を備える。
【0037】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、キャップ102の傾倒操作がなされたとき、キャップ102によって起歪体120の筒状部125の側面を押圧して、起歪体120に歪みを生じさせることができるため、当該傾倒操作を歪検知素子133によって高精度に検知することができる。
【0038】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、起歪体120の筒状部125の内部は、プランジャー103が挿通される上部空間125Aと、上部空間125Aの下側に形成され、上部空間125Aよりも内径が大きく、且つ、弾性部材170が配置される下部空間125Bとを有する。
【0039】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、弾性部材170を下部空間125Bに配置したことで、弾性部材170が変形する際に、弾性部材170が起歪体120と干渉してクリック感が阻害されることを抑制することができる。また、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、上部空間125Aでは、起歪体120とプランジャー103との間の隙間を小さくできるため、キャップ102と筒状部125の傾きを一致させることができる。
【0040】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、プランジャー103の外周面には、4方向に突出した突起103Aが設けられており、起歪体120の筒状部125の内周面には、4方向に設けられ、突起103Aがスライド可能な溝125Cが上下方向に延在して設けられている。
【0041】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、キャップ102の傾倒操作がなされたとき、プランジャー103から起歪体120に加わる横方向の荷重を、歪検知素子133によって高精度に検知することができる。
【0042】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、起歪体120の変形部122は、筒状部125の下端から4方向に向かう上下方向の厚みより平面方向の幅が広い板状である。
【0043】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、変形部122を薄型化できることで、変形部122と他の部品との干渉を抑制することができ、且つ、変形部122を変形し易くすることができるため、起歪体120に加わる荷重を歪検知素子133によって高精度に検知することができる。
【0044】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、機器本体110は、変形部122の外側の端部と対向する位置に、平面部111から上方に突出して設けられた機器側突出部112を有し、変形部122の外側の端部は、機器側突出部112に固定される。
【0045】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、変形部122と他の部品との干渉を抑制することができ、且つ、変形部122を変形し易くすることができるため、起歪体120に加わる荷重を歪検知素子133によって高精度に検知することができる。
【0046】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、変形部122の外側の端部は、変形部122の他の部分よりも下方に突出している。
【0047】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、変形部122と他の部品との干渉を抑制することができ、且つ、変形部122を変形し易くすることができるため、起歪体120に加わる荷重を歪検知素子133によって高精度に検知することができる。
【0048】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、起歪体120は、筒状部125の下端から4方向に突出して設けられた固定片123を有し、固定片123に基板160が固定される。
【0049】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、押圧操作の荷重を基板160から固定片123を介して起歪体120の変形部122に効率的に伝達できるため、起歪体120に加わる押圧操作の荷重を歪検知素子133によって高精度に検知することができる。
【0050】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、起歪体120の変形部122は、起歪体120の固定片123よりも下方に突出した位置に設けられている。
【0051】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、起歪体120の変形部122の高さ位置を、起歪体120の固定片123よりも低くすることができる。
【0052】
なお、第1実施形態に係る多方向入力装置100において、なお、基板160の上面に設けられている2つの固定接点161A,161Bは、起歪体120の変形部122の下面に接着されているFPC131に電気的に接続され、FPC131を介して、外部に電気的に接続されてもよい。この場合、2つの固定接点161A,161Bは、基板160に設けられたスルーホールを(図示省略)介して、基板160の底面側に設けられているFPC131に電気的に接続されてもよい。
【0053】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置100は、別途配線部材を設けることなく、2つの固定接点161A,161Bを、外部に電気的に接続することができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2の外観斜視図である。
図7は、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2の上面側を示す分解斜視図である。
図8は、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2の下面側を示す分解斜視図である。
図9は、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2の断面図である。
図10は、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2の断面斜視図である。
【0055】
以下、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2に関し、第1実施形態からの変更点について説明する。
【0056】
図6~
図8に示すように、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2は、起歪体120の固定片123がより外側に設けられている点で、第1実施形態に係る多方向入力装置100と異なる。
【0057】
また、
図9および
図10に示すように、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2は、FPC131が起歪体120の変形部122の下面に接着されている点では第1実施形態と変わらないが、基板160および弾性部材170が、起歪体120の変形部122の下面よりも下側に設けられている点で、第1実施形態と異なる。
【0058】
但し、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2は、FPC131の基部131Aの中央に円形の開口部131Dが形成されており、弾性部材170の一部(中央の凸部)が、開口部131Dを貫通して、開口部131Dよりも上方に突出している。
【0059】
また、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2は、FPC131の基部131Aが円形状を有しており、FPC131が突出部132を有していない。このため、第2実施形態に係る多方向入力装置100-2は、4つの歪検知素子133が、FPC131の基部131Aに搭載されている。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0061】
例えば、多方向入力装置100において、弾性部材170は、可動接点171を有さず、基板160は、161A,161Bを有さなくてもよい。また、多方向入力装置100において、弾性部材170は、クリック感を呈示しないものであってもよい。
【0062】
本国際出願は、2022年3月10日に出願した日本国特許出願第2022-037451号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0063】
100,100-2 多方向入力装置
102 キャップ
103 プランジャー
103A 突起
110 機器本体
111 平面部
112 機器側突出部
120 起歪体
122 変形部
122A 貫通穴
123 固定片
125 筒状部
125A 上部空間
125B 下部空間
125C 溝
130 荷重検出器
131 FPC
131A 基部
131B 引き出し部
131C 接続部
131D 開口部
132 突出部
133 歪検知素子
160 基板
161A,161B 固定接点
162 腕部
162A 貫通穴
165 ネジ
170 弾性部材
171 可動接点