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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】穴あけ工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20241119BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B23B51/00 T
B23B27/16 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024551607
(86)(22)【出願日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2024013905
【審査請求日】2024-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘樹
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-100772(JP,A)
【文献】特開2012-171040(JP,A)
【文献】特開2023-158482(JP,A)
【文献】特表2005-532175(JP,A)
【文献】特開2020-138241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0056926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
B23B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる本体部と、
交換可能であって且つ中心刃を有する第1切削インサートと、
交換可能であって且つ外周刃を有する第2切削インサートと、を備え、
前記本体部は、前端面と、前記前端面の反対にある後端面とを有し、
前記本体部には、
前記前端面に連なり、且つ、前記第1切削インサートが配置される第1ポケットと、
前記前端面に連なり、且つ、前記第2切削インサートが配置される第2ポケットと、が設けられており、
前記中心刃の内接円の直径は、前記外周刃の内接円の直径よりも大きく、
前記第1切削インサートは、すくい面と、前記すくい面に連なる逃げ面と、前記逃げ面に連なる底面とを有し、
前記逃げ面は、4つの逃げ面部を有し、
前記4つの逃げ面部の各々と前記底面との境界部には、それぞれ凹部が形成されており、
前記第1ポケットは、前記前端面に連なる第1側面と、前記前端面に連なり、前記第1側面よりも径方向外側に位置し且つ前記第1側面に対向する第2側面と、前記軸線に沿った方向において前記第1側面および前記第2側面の各々と前記後端面との間にある第3側面と、前記底面が接する座面と、を有し、
前記第1側面には、前記凹部に挿入される第1凸部が形成され、且つ、前記第2側面には、前記凹部に挿入される第2凸部が形成されており、
前記座面に垂直な直線に沿って見て、前記第1凸部の中央から前記第2凸部の中央に向かう方向を第1方向とし、前記軸線に平行であって且つ前記後端面から前記前端面に向かう方向を第2方向とする場合、前記第1方向と前記第2方向とがなす角度は、45°よりも大きく135°よりも小さい、穴あけ工具。
【請求項2】
前記第3側面は、前記座面に連なっている、請求項1に記載の穴あけ工具。
【請求項3】
前記第3側面には、前記凹部に挿入される第3凸部が形成されている、請求項1に記載の穴あけ工具。
【請求項4】
前記座面に対する前記第1凸部の高さを第1高さとし、前記中心刃の内接円の直径を第1直径とし、前記外周刃の内接円の直径を第2直径とする場合、前記第1高さを前記第1直径で割った値は、0.05以上0.15以下であり、且つ、前記第1高さを前記第2直径で割った値は、0.054以上0.185以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項5】
前記中心刃の内接円の直径を第1直径とし、前記外周刃の内接円の直径を第2直径とする場合、前記第1直径を前記第2直径で割った値は、1.08以上1.23以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項6】
前記第2切削インサートの底面は、平面形状を有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項7】
前記第3側面は、前記座面に連なっており、
前記座面に対する前記第1凸部の高さを第1高さとし、前記中心刃の内接円の直径を第1直径とし、前記外周刃の内接円の直径を第2直径とする場合、前記第1高さを前記第1直径で割った値は、0.05以上0.15以下であり、且つ、前記第1高さを前記第2直径で割った値は、0.054以上0.185以下であり、
前記第1直径を前記第2直径で割った値は、1.08以上1.23以下である、請求項1に記載の穴あけ工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、穴あけ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-080483号公報(特許文献1)は、2つの交換可能な切削インサートを有する切削工具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-080483号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る穴あけ工具は、本体部と、第1切削インサートと、第2切削インサートと、を備える。本体部は、軸線に沿って延びる。第1切削インサートは、交換可能であって且つ中心刃を有する。第2切削インサートは、交換可能であって且つ外周刃を有する。本体部は、前端面と、前端面の反対にある後端面とを有する。本体部には、第1ポケットと、第2ポケットと、が設けられている。第1ポケットは、前端面に連なる。第1ポケットには、第1切削インサートが配置される。第2ポケットは、前端面に連なる。第2ポケットには、第2切削インサートが配置される。中心刃の内接円の直径は、外周刃の内接円の直径よりも大きい。第1切削インサートは、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、逃げ面に連なる底面とを有している。逃げ面は、4つの逃げ面部を有する。4つの逃げ面部の各々と底面との境界部には、それぞれ凹部が形成されている。第1ポケットは、前端面に連なる第1側面と、前端面に連なり、第1側面よりも径方向外側に位置し且つ第1側面に対向する第2側面と、軸線に沿った方向において第1側面および第2側面の各々と後端面との間にある第3側面と、底面が接する座面と、を有している。第1側面には、凹部に挿入される第1凸部が形成され、且つ、第2側面には、凹部に挿入される第2凸部が形成されている。座面に垂直な直線に沿って見て、第1凸部の中央から第2凸部の中央に向かう方向を第1方向とし、軸線に平行であって且つ後端面から前端面に向かう方向を第2方向とする場合、第1方向と第2方向とがなす角度は、45°よりも大きく135°よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、第1実施形態に係る穴あけ工具の構成を示す斜視模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る穴あけ工具の構成を示す平面模式図である。
図3図3は、第1切削インサートの構成を示す平面模式図である。
図4図4は、第1切削インサートの構成を示す斜視模式図である。
図5図5は、第2切削インサートの構成を示す平面模式図である。
図6図6は、第2切削インサートの構成を示す斜視模式図である。
図7図7は、本体部の構成を示す第1斜視模式図である。
図8図8は、第1ポケットの構成を示す平面模式図である。
図9図9は、図8のIX-IX線に沿った断面模式図である。
図10図10は、本体部の構成を示す第2斜視模式図である。
図11図11は、穴あけ工具を軸線の周りに回転させた場合における中心刃および外周刃の回転投影面の構成を示す模式図である。
図12図12は、第2実施形態に係る穴あけ工具の本体部の構成を示す平面模式図である。
図13図13は、サンプルのポケット形状と締結時の状態を示す模式図である。
図14図14は、第2切削インサートを第1ポケットに配置しつつ、矢印Bの方向に沿って第2切削インサートを本体部に押し付けた状態を示す平面模式図である。
図15図15は、第2切削インサートを第1ポケットに配置した状態で、第2切削インサートの前方に力が加わった状態を示す側面模式図である。
図16図16は、第2切削インサートを第1ポケットに配置した状態で、第2切削インサートの後方に力が加わった状態を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様(本実施形態とも称する)が説明される。
【0007】
(1)本開示に係る穴あけ工具は、本体部と、第1切削インサートと、第2切削インサートと、を備える。本体部は、軸線に沿って延びる。第1切削インサートは、交換可能であって且つ中心刃を有する。第2切削インサートは、交換可能であって且つ外周刃を有する。本体部は、前端面と、前端面の反対にある後端面とを有する。本体部には、第1ポケットと、第2ポケットと、が設けられている。第1ポケットは、前端面に連なる。第1ポケットには、第1切削インサートが配置される。第2ポケットは、前端面に連なる。第2ポケットには、第2切削インサートが配置される。中心刃の内接円の直径は、外周刃の内接円の直径よりも大きい。第1切削インサートは、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、逃げ面に連なる底面とを有している。逃げ面は、4つの逃げ面部を有する。4つの逃げ面部の各々と底面との境界部には、それぞれ凹部が形成されている。第1ポケットは、前端面に連なる第1側面と、前端面に連なり、第1側面よりも径方向外側に位置し且つ第1側面に対向する第2側面と、軸線に沿った方向において第1側面および第2側面の各々と後端面との間にある第3側面と、底面が接する座面と、を有している。第1側面には、凹部に挿入される第1凸部が形成され、且つ、第2側面には、凹部に挿入される第2凸部が形成されている。座面に垂直な直線に沿って見て、第1凸部の中央から第2凸部の中央に向かう方向を第1方向とし、軸線に平行であって且つ後端面から前端面に向かう方向を第2方向とする場合、第1方向と第2方向とがなす角度は、45°よりも大きく135°よりも小さい。これにより、切削インサートの取り付け間違いを抑制することができる。
【0008】
(2)上記(1)に係る穴あけ工具によれば、第3側面は、座面に連なっていてもよい。
【0009】
(3)上記(1)に係る穴あけ工具によれば、第3側面には、凹部に挿入される第3凸部が形成されていてもよい。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに係る穴あけ工具によれば、座面に対する第1凸部の高さを第1高さとし、中心刃の内接円の直径を第1直径とし、外周刃の内接円の直径を第2直径とする場合、第1高さを第1直径で割った値は、0.05以上0.15以下であり、且つ、第1高さを第2直径で割った値は、0.054以上0.185以下であってもよい。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに係る穴あけ工具によれば、中心刃の内接円の直径を第1直径とし、外周刃の内接円の直径を第2直径とする場合、第1直径を第2直径で割った値は、1.08以上1.23以下であってもよい。
【0012】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに係る穴あけ工具によれば、第2切削インサートの底面は、平面形状を有してもよい。
【0013】
(7)上記(1)に係る穴あけ工具によれば、第3側面は、底面に連なっていてもよい。座面に対する第1凸部の高さを第1高さとし、中心刃の内接円の直径を第1直径とし、外周刃の内接円の直径を第2直径とする場合、第1高さを第1直径で割った値は、0.05以上0.15以下であり、且つ、第1高さを第2直径で割った値は、0.054以上0.185以下であってもよい。第1直径を第2直径で割った値は、1.08以上1.23以下であってもよい。
【0014】
本開示の実施形態に係る穴あけ工具の具体例が、以下に図面を参照しつつ説明される。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号が付され、その説明は繰返えされない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る穴あけ工具の構成を示す斜視模式図である。図2は、第1実施形態に係る穴あけ工具の構成を示す平面模式図である。
【0016】
図1および図2に示されるように、第1実施形態に係る穴あけ工具5は、本体部100と、第1切削インサート10と、第2切削インサート20と、第1締結ネジ3と、第2締結ネジ4とを有している。第1切削インサート10は、第1締結ネジ3を用いて本体部100に取り付けられる。第2切削インサート20は、第2締結ネジ4を用いて本体部100に取り付けられる。第1切削インサート10は、交換可能である。第2切削インサート20は、交換可能である。言い換えれば、第1実施形態に係る穴あけ工具5は、刃先交換式の穴あけ工具5である。
【0017】
図2に示されるように、本体部100は、軸線Aに沿って延びる。穴あけ工具5は、例えば軸線Aの周りを回転可能である。本体部100は、前端面113と、後端面114と、第1外周面111と、第2外周面112と、第1溝面115と、第2溝面116と、を有している。前端面113は、被削材に対向する。後端面114は、前端面113の反対にある。後端面114は、工作機械の回転主軸(図示せず)に取り付けられる。
【0018】
軸線Aは、後端面114から前端面113に向かう方向に平行である。後端面114から前端面113に向かう方向は、前方とされる。前端面113から後端面114に向かう方向は、後方とされる。
【0019】
第1外周面111および第2外周面112の各々は、前端面113に連なっている。後端面114から前端面113に向かう方向において、第1外周面111および第2外周面112の各々は、前端面113と後端面114との間に位置している。
【0020】
後端面114から前端面113に向かう方向において、第1溝面115は、第1切削インサート10と後端面114との間に設けられている。第1溝面115は、第1切削インサート10によって切削された切屑を排出する。第1切削インサート10の一部は、前端面113よりも前方に位置している。
【0021】
後端面114から前端面113に向かう方向において、第2溝面116は、第2切削インサート20と後端面114との間に設けられている。第2溝面116は、第2切削インサート20によって切削された切屑を排出する。第2切削インサート20の一部は、前端面113よりも前方に位置している。
【0022】
図3は、第1切削インサート10の構成を示す平面模式図である。図4は、第1切削インサート10の構成を示す斜視模式図である。
【0023】
図3および図4に示されるように、第1切削インサート10は、中心刃17と、第1すくい面16と、第1逃げ面19と、第1底面15とを有している。第1すくい面16は、第1逃げ面19に連なる。第1すくい面16と、第1逃げ面19との稜線は、中心刃17を形成する。
【0024】
第1底面15は、第1すくい面16の反対にある。第1底面15は、第1逃げ面19に連なる。第1切削インサート10には、第1貫通孔18が設けられている。第1貫通孔18は、第1すくい面16と第1底面15との間を貫通する。第1貫通孔18には、第1締結ネジ3が配置される。
【0025】
図3に示されるように、第1貫通孔18が貫通する方向に見て、第1内接円E1は、中心刃17に内接する。第1内接円E1の直径は、第1直径D1とされる。第1直径D1は、例えば6.9mmである。第1直径D1は、5.9mm以上7.9mm以下であってもよい。
【0026】
図4に示されるように、第1逃げ面19は、4つの逃げ面部を有している。具体的には、第1逃げ面19は、第1逃げ面部11と、第2逃げ面部12と、第3逃げ面部13と、第4逃げ面部14と、を有している。第1逃げ面部11は、第2逃げ面部12の反対にある。第3逃げ面部13は、第4逃げ面部14の反対にある。第1貫通孔18は、第1逃げ面部11と第2逃げ面部12との間であって、且つ、第3逃げ面部13と第4逃げ面部14との間にある。
【0027】
4つの逃げ面部の各々と第1底面15との境界部には、それぞれ凹部が形成されている。具体的には、第1凹部31は、第1逃げ面部11と第1底面15との境界部に形成されている。第2凹部32は、第2逃げ面部12と第1底面15との境界部に形成されている。第3凹部33は、第3逃げ面部13と第1底面15との境界部に形成されている。第4凹部34は、第4逃げ面部14と第1底面15との境界部に形成されている。第1凹部31、第2凹部32、第3凹部33、および第4凹部34の各々は、第1貫通孔18から離間している。
【0028】
図5は、第2切削インサート20の構成を示す平面模式図である。図6は、第2切削インサート20の構成を示す斜視模式図である。
【0029】
図5および図6に示されるように、第2切削インサート20は、外周刃27と、第2すくい面26と、第2逃げ面29と、第2底面25とを有している。第2すくい面26は、第2逃げ面29に連なる。第2すくい面26と、第2逃げ面29との稜線は、外周刃27を形成する。
【0030】
第2底面25は、第2すくい面26の反対にある。第2底面25は、第2逃げ面29に連なる。第2切削インサート20には、第2貫通孔28が設けられている。第2貫通孔28は、第2すくい面26と第2底面25との間を貫通する。第2貫通孔28には、第2締結ネジ4が配置される。第2貫通孔28が貫通する方向に見て、第2底面25は、例えば四角形状を有している。第2切削インサート20においては、第2底面25と第2逃げ面29との境界部において、第2貫通孔28に向かって窪む凹部が設けられていない。
【0031】
図5に示されるように、第2貫通孔28が貫通する方向に見て、第2内接円E2は、外周刃27に内接する。第2内接円E2の直径は、第2直径D2とされる。第2直径D2は、例えば6.3mmである。第2直径D2は、5.3mm以上7.3mm以下であってもよい。
【0032】
第1直径D1は、第2直径D2よりも大きい。第1直径D1を第2直径D2で割った値は、例えば1.08以上1.23以下である。第1直径D1を第2直径D2で割った値は、1.10以上であってもよいし、1.12以上であってもよい。第1直径D1を第2直径D2で割った値は、1.21以下であってもよいし、1.19以下であってもよい。
【0033】
図6に示されるように、第2逃げ面29は、4つの逃げ面部を有している。具体的には、第2逃げ面29は、第5逃げ面部21と、第6逃げ面部22と、第7逃げ面部23と、第8逃げ面部24とを有している。第5逃げ面部21は、第7逃げ面部23の反対にある。第6逃げ面部22は、第8逃げ面部24の反対にある。第2貫通孔28は、第5逃げ面部21と第7逃げ面部23との間であって、且つ、第6逃げ面部22と第8逃げ面部24との間にある。
【0034】
第2底面25は、第1底面部71と、第2底面部72と、第3底面部73とを有している。第1底面部71は、第2逃げ面29に連なる。第2底面部72は、第1底面部71に対して傾斜している。第2底面部72は、第1底面部71に連なる。第3底面部73は、第2底面部72に対して傾斜している。第3底面部73は、第2底面部72に連なる。第2底面部72は、第1底面部71と第3底面部73との間に位置している。第3底面部73は、第1底面部71と平行であってもよい。第2貫通孔28が貫通する方向に見て、第1底面部71は、第3底面部73を取り囲んでいる。第2底面25の第3底面部73は、例えば平面形状を有している。
【0035】
図7は、本体部100の構成を示す第1斜視模式図である。図7に示されるように、本体部100には、第1ポケット1が設けられている。第1ポケット1には、第1切削インサート10が配置される。第1ポケット1は、前端面113に連なる。別の観点から言えば、第1ポケット1は、前端面113に開口するように設けられる。
【0036】
第1ポケット1は、第1側面41と、第2側面42と、第3側面43と、第1湾曲面45と、第2湾曲面46と、第1座面44とを有している。第1側面41および第2側面42の各々は、前端面113に連なる。第2側面42は、第1側面41に対向する。第2側面42は、第1側面41よりも径方向外側に位置する。なお、本明細書において、径方向外側は、軸線Aに垂直な平面において、軸線Aから放射状に延びる方向とされる。
【0037】
第3側面43は、前方を向いている。軸線Aに沿った方向において、第3側面43は、第1側面41および第2側面42の各々と後端面114との間にある。別の観点から言えば、軸線Aに沿った方向において、第3側面43は、前端面113と第1溝面115との間にある。第1湾曲面45は、第1側面41と第3側面43とを繋いでいる。第2湾曲面46は、第2側面42と第3側面43とを繋いでいる。
【0038】
第1座面44は、第1切削インサート10の第1底面15が接触する面である。第1座面44には、第1ネジ孔47が設けられている。第1ネジ孔47には、第1締結ネジ3が挿入される。
【0039】
本体部100は、第1平面部117を有している。第1ポケット1は、第1平面部117と前端面113との境界に設けられている。第1平面部117は、第1溝面115に連なっている。軸線Aに沿った方向において、第1平面部117は、前端面113と第1溝面115との間に位置している。第1平面部117は、第1座面44と実質的に平行であってもよい。
【0040】
第1側面41には、第1凸部51が形成されている。第1凸部51は、第1切削インサート10に設けられた凹部に挿入される。第2側面42には、第2凸部52が設けられている。第2凸部52は、第1切削インサート10に設けられた凹部に挿入される。第3側面43には、第1切削インサート10に設けられた凹部に嵌まる凸部が設けられていない。別の観点から言えば、第3側面43は、第1座面44に連なっている。第3側面43は、平面状であってもよい。
【0041】
図8は、第1ポケット1の構成を示す平面模式図である。図8に示される平面は、第1ポケット1の第1座面44に平行である。図8に示されるように、第1座面44に垂直な直線に沿って見て、第1凸部51の中央(第1中央C1)から第2凸部52の中央(第2中央C2)に向かう方向は、第1方向91とされる。なお、本明細書において、凸部の中央は、凸部の先端部の中央とされる。軸線Aに平行であって且つ後端面114から前端面113に向かう方向は、第2方向92とされる。第1方向91と第2方向92とがなす角度は、第1角度θ1とされる。第1角度θ1は、45°よりも大きく135°よりも小さい。
【0042】
第1角度θ1は、例えば82°である。第1角度θ1は、70°以上95°以下であってもよい。第1角度θ1は、75°以上であってもよいし、80°以上であってもよい。第1角度θ1は、90°以下であってもよいし、85°以下であってもよい。
【0043】
図9は、図8のIX-IX線に沿った断面模式図である。図9に示される断面は、第1方向91に沿っており、且つ、第1ポケット1の第1座面44に垂直である。図9に示されるように、第1凸部51は、第1側面41と第1座面44との境界に設けられている。第1座面44に対する第1凸部51の高さは、第1高さH1とされる。第2凸部52は、第2側面42と第1座面44との境界に設けられている。第1座面44に対する第2凸部52の高さは、第2高さH2とされる。第1方向91に沿った第1凸部51の上面の幅は、第1幅W1とされる。第1方向91に沿った第2凸部52の上面の幅は、第2幅W2とされる。
【0044】
第1高さH1は、第2高さH2と実質的に同じである。第1幅W1は、第1高さH1よりも大きくてもよいし、第1高さH1以下であってもよい。第2幅W2は、第2高さH2よりも大きくてもよいし、第2高さH2以下であってもよい。第1高さH1は、第2高さH2と異なっていてもよい。第1幅W1は、第2幅W2と異なっていてもよい。
【0045】
第1高さH1を第1直径D1で割った値は、例えば0.05以上0.15以下である。第1高さH1を第1直径D1で割った値は、0.07以上であってもよいし、0.09以上であってもよい。第1高さH1を第1直径D1で割った値は、0.13以下であってもよいし、0.11以下であってもよい。
【0046】
第2高さH2を第1直径D1で割った値は、例えば0.05以上0.15以下である。第2高さH2を第1直径D1で割った値は、0.07以上であってもよいし、0.09以上であってもよい。第2高さH2を第1直径D1で割った値は、0.13以下であってもよいし、0.11以下であってもよい。
【0047】
第1高さH1を第2直径D2で割った値は、例えば0.054以上0.185以下である。第1高さH1を第2直径D2で割った値は、例えば0.074以上であってもよいし、0.094以上であってもよい。第1高さH1を第2直径D2で割った値は、例えば0.165以下であってもよいし、0.145以下であってもよい。
【0048】
第2高さH2を第2直径D2で割った値は、例えば0.054以上0.185以下である。第2高さH2を第2直径D2で割った値は、例えば0.074以上であってもよいし、0.094以上であってもよい。第2高さH2を第2直径D2で割った値は、例えば0.165以下であってもよいし、0.145以下であってもよい。
【0049】
図10は、本体部100の構成を示す第2斜視模式図である。本体部100には、第2ポケット2が設けられている。第2ポケット2には、第2切削インサート20が配置される。第2ポケット2は、前端面113および第2外周面112の各々に連なっている。別の観点から言えば、第2ポケット2は、前端面113および第2外周面112の各々に開口するように設けられる。
【0050】
図10に示されるように、第2ポケット2は、第4側面61と、第5側面62と、第3湾曲面64と、第2座面63とを有している。第4側面61は、前端面113に連なる。第5側面62は、前方を向いている。軸線Aに沿った方向において、第5側面62は、第4側面61と後端面114との間にある。別の観点から言えば、軸線Aに沿った方向において、第5側面62は、前端面113と第2溝面116との間にある。第3湾曲面64は、第4側面61と第5側面62とを繋いでいる。
【0051】
第2座面63は、第2切削インサート20の第2底面25が接触する面である。第2座面63には、第2ネジ孔67が設けられている。第2ネジ孔67には、第2締結ネジ4が挿入される。第4側面61には、第1切削インサート10に設けられた凹部に嵌まる凸部が設けられていない。第4側面61は、第2座面63に連なっていてもよい。第5側面62には、第1切削インサート10に設けられた凹部に嵌まる凸部が設けられていない。第5側面62は、第2座面63に連なっていてもよい。
【0052】
本体部100は、第2平面部118を有している。第2ポケット2は、第2平面部118と前端面113との境界に設けられている。第2平面部118は、第2溝面116に連なっている。軸線Aに沿った方向において、第2平面部118は、第5側面62と第2溝面116との間に位置している。第2平面部118は、第2座面63と実質的に平行であってもよい。
【0053】
図11は、穴あけ工具5を軸線Aの周りに回転させた場合における中心刃17および外周刃27の回転投影面の構成を示す模式図である。図11に示されるように、回転投影面における中心刃17は、軸線Aと交差する。回転投影面における外周刃27は、軸線Aと交差しない。回転投影面において、中心刃17は、外周刃27と交差する。穴あけ工具5を用いて被削材に対して穴あけ加工を行う場合、中心刃17は、穴の径方向内側の切削を行い、且つ、外周刃27は、穴の径方向外側の切削を行う。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る穴あけ工具5の構成について説明する。第2実施形態に係る穴あけ工具5は、主に、第3側面43に第3凸部53が形成されている点において、第1実施形態に係る穴あけ工具5と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係る穴あけ工具5と実質的に同じである。以下、第1実施形態に係る穴あけ工具5と異なる構成を中心に説明する。
【0055】
図12は、第2実施形態に係る穴あけ工具5の本体部100の構成を示す平面模式図である。図12に示されるように、第3側面43には、第3凸部53が形成されている。第3凸部53は、第1切削インサート10の凹部に挿入される。径方向において、第3凸部53は、第1凸部51と第2凸部52との間に配置されている。第3凸部53の形状は、第1凸部51および第2凸部52の各々の形状と実質的に同じである。具体的には、第3凸部53の高さは、第1高さH1および第2高さH2の各々と実質的に同じである。なお、第3凸部53の高さは、第1高さH1および第2高さH2の各々と異なっていてもよい。
【0056】
次に、本実施形態に係る穴あけ工具5の作用効果について説明する。
本実施形態に係る穴あけ工具5によれば、第1ポケット1には、第1切削インサート10が配置される。第2ポケット2には、第2切削インサート20が配置される。第1切削インサート10の中心刃17の内接円の直径は、第2切削インサート20の外周刃27の内接円の直径よりも大きい。周速度が小さい中心刃17の内接円の直径を、周速度が大きい外周刃27の内接円の直径よりも大きくすることで、切れ刃に加わる力のバランスを取ることができる。結果として、穴あけ工具5によって形成される穴の精度を高めることができる。
【0057】
本実施形態に係る穴あけ工具5によれば、第1切削インサート10は、第1すくい面16と、第1逃げ面19と、第1底面15とを有している。第1逃げ面19は、4つの逃げ面部を有する。4つの逃げ面部の各々と第1底面15との境界部には、それぞれ凹部が形成されている。第1ポケット1は、第1側面41と、第2側面42と、第3側面43と、座面と、を有している。第1側面41には、凹部に挿入される第1凸部51が形成され、且つ、第2側面42には、凹部に挿入される第2凸部52が形成されている。
【0058】
第1切削インサート10が第1ポケット1に配置された場合、第1切削インサート10に形成された4つの凹部の内の1つの凹部は第1凸部51に挿入され、且つ、残りの3つの凹部の内の1つの凹部は第2凸部52に挿入される。そのため、第1切削インサート10の第1底面15は、第1ポケット1の第1座面44に接する。一方、第2切削インサート20が誤って第1ポケット1に配置された場合、第2切削インサート20は第1凸部51および第2凸部52の各々の上に配置される。そのため、第2切削インサート20の第2底面25と第1ポケット1の第1座面44との間に隙間が形成される。従って、第2切削インサート20が誤って第1ポケット1に配置された場合、作業者は容易に間違いに気づくことができる。結果として、切削インサートの取り付け間違いが抑制される。
【0059】
本実施形態に係る穴あけ工具5によれば、第1座面44に垂直な直線に沿って見て、第1凸部51の中央から第2凸部52の中央に向かう方向を第1方向91とし、軸線Aに平行であって且つ後端面114から前端面113に向かう方向を第2方向92とする場合、第1方向91と第2方向92とがなす角度は、45°よりも大きく135°よりも小さい。第1方向91と第2方向92とがなす角度が45°以下もしくは135°以上の場合には、第2切削インサート20が第1凸部51と第2凸部52との間に入り込み、第2切削インサート20の第2底面25が第1ポケット1の第1座面44に接するおそれがある。第1方向91と第2方向92とがなす角度を45°よりも大きく135°よりも小さくすることにより、第2切削インサート20の第2底面25が第1ポケット1の第1座面44に接することを抑制することができる。そのため、第2切削インサート20は第1凸部51および第2凸部52の各々の上に配置される。結果として、第2切削インサート20の第2底面25と第1ポケット1の第1座面44との間に大きな隙間が形成される。
【0060】
本実施形態に係る穴あけ工具5によれば、第3側面43は、座面に連なっていてもよい。第2切削インサート20が第1ポケット1に配置された状態で第2切削インサート20の後方に力が加えられた場合において、第2切削インサート20は後方に傾く。この場合、作業者は違和感を覚えやすいため、第2切削インサート20が誤って第1ポケット1に配置されたことに気づきやすくなる。結果として、切削インサートの取り付け間違いがさらに抑制される。
【0061】
凸部の高さが過度に小さい場合には、第2切削インサート20の底面と第1ポケット1の座面との間の隙間が小さくなる。反対に、凸部の高さが過度に大きい場合には、第2切削インサート20に形成される凹みの深さを大きくする必要がある。凹みの深さが大きくなると、第2切削インサート20の逃げ面の面積が小さくなり、第2切削インサート20と本体部100との接触面積が小さくなる。この場合、第2切削インサート20が本体部100に強固に取り付けされない。
【0062】
本実施形態に係る穴あけ工具5によれば、第1高さH1を第1直径D1で割った値は、0.05以上0.15以下であり、且つ、第1高さH1を第2直径D2で割った値は、0.054以上0.185以下であってもよい。これにより、第2切削インサート20の第2底面25と第1ポケット1の第1座面44との間の隙間を大きく確保しつつ、第2切削インサート20が本体部100に強固に取り付けられる。
【0063】
本実施形態に係る穴あけ工具5によれば、中心刃17の内接円の直径を第1直径D1とし、外周刃27の内接円を第2直径D2とする場合、第1直径D1を第2直径D2で割った値は、1.08以上1.23以下であってもよい。これにより、第1切削インサート10は、第2切削インサート20よりも十分に大きくなる。結果として、作業者が誤って第1切削インサート10を第2ポケット2に配置しようとしても、第1切削インサート10は、第2ポケット2には配置されない。そのため、切削インサートの取り付け間違いがさらに抑制される。
【0064】
本実施形態に係る穴あけ工具5によれば、第2切削インサート20の第2底面25の第3底面部73は、平面形状を有してもよい。これにより、第1切削インサート10の底面形状は、第2切削インサート20の底面形状と明確に異なる。結果として、作業者が切削インサートを見間違えることが抑制される。
【0065】
<実施例1>
(サンプル準備)
サンプル1、2、および3に係る穴あけ工具5の本体部100が準備された。サンプル1に係る穴あけ工具5の本体部100は、比較例である。サンプル2および3に係る穴あけ工具5の本体部100は、実施例である。
【0066】
図13は、サンプルのポケット形状と締結時の状態を示す模式図である。図13に示されるように、サンプル1においては、第1側面41に第1凸部51が形成され、且つ、第3側面43に第3凸部53が形成されている。第2側面42には、凸部が形成されていない。サンプル1においては、第1凸部51と第3凸部53との中間地点は、第1ネジ孔47の中心と一致しない。
【0067】
サンプル2においては、第1側面41に第1凸部51が形成され、且つ、第2側面42に第2凸部52が形成されている。第3側面43には、凸部が形成されていない。サンプル2は、第1実施形態に係る穴あけ工具5に対応する。サンプル2においては、第1凸部51と第2凸部52との中間地点は、第1ネジ孔47の中心と一致する。
【0068】
サンプル3においては、第1側面41に第1凸部51が形成され、第2側面42に第2凸部52が形成され、且つ、第3側面43に第3凸部53が形成されている。サンプル3は、第2実施形態に係る穴あけ工具5に対応する。サンプル3においては、第1凸部51と第2凸部52との中間地点は、第1ネジ孔47の中心と一致する。
【0069】
(検証方法)
第1ポケット1において第2切削インサート20を本体部100に取り付けた場合における、第1座面44と第2切削インサート20の第2底面25との隙間が目視により観察された。具体的には、第1ポケット1の第1ネジ孔47の位置と、第2切削インサート20の第2貫通孔28との位置とを合わせた状態で、第1締結ネジ3を第2切削インサート20の第2貫通孔28と第1ネジ孔47とに挿入することで、第2切削インサート20が第1ポケット1に配置された。
【0070】
(検証結果)
図13に示されるように、サンプル1の本体部100の第1ポケット1に第2切削インサート20を配置した場合においては、第2切削インサート20の第2底面25は、第1座面44に対して傾斜する。第2切削インサート20の第2底面25の一部は、第1座面44に接触するため、第2切削インサート20の第2底面25と第1座面44との隙間が小さくなる。
【0071】
一方、サンプル2および3の本体部100の第1ポケット1に第2切削インサート20を配置した場合においては、第2切削インサート20の第2底面25は、第1座面44と実質的に平行である。第2切削インサート20の底面と第1座面44との隙間は比較的大きい。そのため、作業者が目視で隙間を観察しやすくなる。
【0072】
<実施例2>
(サンプル準備)
サンプル1、2、および3に係る穴あけ工具5の本体部100が準備された。実施例2のサンプル1、2、および3に係る穴あけ工具5の本体部100は、実施例1のサンプル1、2、および3に係る穴あけ工具5の本体部100と同じである。
【0073】
(検証方法)
図14は、第2切削インサート20を第1ポケット1に配置しつつ、矢印Bの方向に沿って第2切削インサート20を本体部100に押し付けた状態を示す平面模式図である。図14に示されるように、第2切削インサート20の第2逃げ面29は、第1ポケット1の第1側面41および第3側面43の各々に押し付けられる。この状態において、第2切削インサート20の第2貫通孔28の中心位置は、第1ポケット1の第1座面44に設けられた第1ネジ孔47の中心位置とは一致しない。
【0074】
(検証結果)
サンプル2の本体部100の第1ポケット1においては、第1側面41に第1凸部51が形成されているが、第3側面43には凸部が形成されていない。そのため、矢印Bの方向に沿って第2切削インサート20を本体部100に押し付けた場合、第2切削インサート20の底面は、第1座面44に対して傾く。そのため、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に配置した際、作業者が違和感を覚えやすい。結果として、作業者は、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に取り付けたことに気づきやすくなる。
【0075】
一方、サンプル1および3の本体部100の第1ポケット1においては、第1側面41に第1凸部51が形成され、且つ、第3側面43に第3凸部53が形成されている。そのため、矢印Bの方向に沿って第2切削インサート20を本体部100に押し付けた場合、第2切削インサート20の第2底面25は、第1凸部51および第3凸部53の各々に接触する。そのため、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に配置した場合であっても、第2切削インサート20は安定して第1ポケット1に配置される。結果として、作業者は、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に取り付けたことに気づき難い。
【0076】
以上より、サンプル2に係る穴あけ工具5は、サンプル1および3に係る穴あけ工具5と比較して、作業者は、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に取り付けたことに気づきやすくなる。
【0077】
<実施例3>
(サンプル準備)
サンプル2および3に係る穴あけ工具5の本体部100を準備した。実施例3のサンプル2および3に係る穴あけ工具5の本体部100は、実施例1のサンプル2および3に係る穴あけ工具5の本体部100と同じである。
【0078】
(検証方法)
図15は、第2切削インサート20を第1ポケット1に配置した状態で、第2切削インサート20の前方に力が加わった状態を示す側面模式図である。力は、第1座面44の法線に沿って、第1座面44に向かう方向に加えられる。図15に示されるように、第2切削インサート20の前方に力が加わった場合、第2切削インサート20は前方に傾斜する。第2切削インサート20の前方に力が加わった場合において、第1ポケット1の第1座面44の法線に対する第2切削インサート20の第2底面25の法線の傾斜角は、第2角度θ2とされる。
【0079】
図16は、第2切削インサート20を第1ポケット1に配置した状態で、第2切削インサート20の後方に力が加わった状態を示す側面模式図である。力は、第1座面44の法線に沿って、第1座面44に向かう方向に加えられる。図16に示されるように、第2切削インサート20の後方に力が加わった場合、第2切削インサート20は後方に傾斜する。第2切削インサート20の後方に力が加わった場合において、第1ポケット1の第1座面44の法線に対する第2切削インサート20の第2底面25の法線の傾斜角は、第3角度θ3とされる。
【0080】
サンプル2に係る穴あけ工具5の本体部100においては、第1凸部51の高さは、第2凸部52の高さと同じである。サンプル3に係る穴あけ工具5の本体部100においては、第1凸部51の高さは、第2凸部52の高さおよび第3凸部53の高さの各々と同じである。凸部の高さを0.2mmから2.4mmの範囲で変更し、第2角度θ2および第3角度θ3が算出された。
【0081】
(検証結果)
【0082】
【表1】
【0083】
表1は、凸部の高さと、第2角度θ2および第3角度θ3との関係を示している。表1に示されるように、サンプル2に係る穴あけ工具5においては、凸部の高さが大きくなるにつれて、第2角度θ2および第3角度θ3の各々が大きくなった。サンプル2の本体部100の第1ポケット1においては、第3側面43には凸部が形成されていない。そのため、第2切削インサート20の後方に力が加わった場合には、第2切削インサート20は後方に傾く。従って、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に配置した際、作業者が違和感を覚えやすい。結果として、作業者は、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に取り付けたことに気づきやすくなる。
【0084】
一方、サンプル3に係る穴あけ工具5においては、凸部の高さが大きくなるにつれて、第2角度θ2は大きくなったが、第3角度θ3は0°のまま変化しなかった。サンプル3の本体部100の第1ポケット1においては、第3側面43には第3凸部53が形成されている。そのため、第2切削インサート20の後方に力が加わった場合には、第2切削インサート20は後方に傾かない。
【0085】
つまり、サンプル2に係る穴あけ工具5における第2角度θ2と第3角度θ3の合計値は、サンプル3に係る穴あけ工具5における第2角度θ2と第3角度θ3の合計値よりも大きい。そのため、サンプル2に係る穴あけ工具5は、サンプル3に係る穴あけ工具5と比較して、作業者は、第2切削インサート20を誤って第1ポケット1に取り付けたことに気づきやすくなる。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 第1ポケット、2 第2ポケット、3 第1締結ネジ、4 第2締結ネジ、5 穴あけ工具、10 第1切削インサート、11 第1逃げ面部、12 第2逃げ面部、13 第3逃げ面部、14 第4逃げ面部、15 第1底面、16 第1すくい面、17 中心刃、18 第1貫通孔、19 第1逃げ面、20 第2切削インサート、21 第5逃げ面部、22 第6逃げ面部、23 第7逃げ面部、24 第8逃げ面部、25 第2底面、26 第2すくい面、27 外周刃、28 第2貫通孔、29 第2逃げ面、31 第1凹部、32 第2凹部
33 第3凹部、34 第4凹部、41 第1側面、42 第2側面、43 第3側面、44 第1座面、45 第1湾曲面、46 第2湾曲面、47 第1ネジ孔、51 第1凸部、52 第2凸部、53 第3凸部、61 第4側面、62 第5側面、63 第2座面、64 第3湾曲面、67 第2ネジ孔、71 第1底面部、72 第2底面部、73 第3底面部、91 第1方向、92 第2方向、100 本体部、111 第1外周面、112 第2外周面、113 前端面、114 後端面、115 第1溝面、116 第2溝面、117 第1平面部、118 第2平面部、A 軸線、B 矢印、C1 第1中央、C2 第2中央、D1 第1直径、D2 第2直径、E1 第1内接円、E2 第2内接円、H1 第1高さ、H2 第2高さ、W1 第1幅、W2 第2幅。
【要約】
穴あけ工具は、本体部と、第1切削インサートと、第2切削インサートと、を有する。第1ポケットは、前端面に連なる第1側面と、前端面に連なり、第1側面よりも径方向外側に位置し且つ第1側面に対向する第2側面と、軸線に沿った方向において第1側面および第2側面の各々と後端面との間にある第3側面と、底面が接する座面と、を有している。第1側面には、凹部に挿入される第1凸部が形成され、且つ、第2側面には、凹部に挿入される第2凸部が形成されている。座面に垂直な直線に沿って見て、第1凸部の中央から第2凸部の中央に向かう方向を第1方向とし、軸線に平行であって且つ後端面から前端面に向かう方向を第2方向とする場合、第1方向と第2方向とがなす角度は、45°よりも大きく135°よりも小さい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16