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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ナノ微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
C12N1/20 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023201176
(22)【出願日】2023-11-29
【審査請求日】2024-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512276522
【氏名又は名称】福永 肇
(73)【特許権者】
【識別番号】515172441
【氏名又は名称】持留製油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】福永 肇
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104830300(CN,A)
【文献】国際公開第2021/059408(WO,A1)
【文献】特開2019-170183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00- 41/00
C12N 1/00- 7/08
C09K 23/00- 23/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂溶性成分を界面活性剤で抱持したエマルション粒子とメタケイ酸を含む培養液で乳酸菌を培養し、乳酸菌が発育することで、前記エマルション粒子から脂溶性成分を漏出させ、漏出した脂溶性成分を酸性となった培養液中のメタケイ酸によって包み込んで粒径が1.0nm~10nmのナノ微粒子とすることを特徴とするナノ微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の脂溶性成分を内包したナノ微粒子の製造方法において、前記脂溶性成分は植物に含まれる脂溶性分、もしくは溶液に添加した脂溶性成分であり、前記界面活性剤はサポニンであることを特徴とする脂溶性成分を内包したナノ微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸管細胞(M細胞)などによって取り込むことができる微細な脂溶性成分を内包した超ナノ微粒子の製造方法と当該方法によって製造された超ナノ微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの植物は油などの脂溶性成分を含んでいる。多くの動物は有用な成分を植物(野菜、果物、木の実など)から得ている。生体に備わっている消化酵素は口で咀嚼された食物を消化酵素で分解し、腸管細胞から吸収できるまでの大きさに変える。腸内に生息している腸内細菌は消化酵素では分解できない成分を更に分解することで生命活動に必要な栄養素を作り出している。
【0003】
一方、人類は長い歴史の中で、様々な植物を様々な方法で加工し、利用してきた。煮たり焼いたりをはじめ、砕く、蒸す、乾燥さすことで植物の持つ栄養素を美味しく、効率的に取り込む方法を考案してきた。大豆やオリーブなどに含まれている油は、機械的な圧力をかけることで油を搾りだす方法は長きに渡り行われている。このように植物から得られる成分は、我々の生活には欠かせないものである。近年は植物の持つ栄養素を工業的に合成し、栄養剤やサプリメントとして製品化されている。
【0004】
このような栄養素やサプリメントは生体に吸収されて初めて有能な成分となるが、経口摂取された有用な成分が生体に取り込まれるためには多くの特性が求められる。まず、第一に胃酸で分解されない事、第二に腸管で吸収されるために大きさが十分小さくなければならない、第三に腸管での吸収効率が優れていることが挙げられる。栄養素やサプリメントは、このような条件を満たす特性を備えたものでなければならない。ナノサイズ(10-9m)の微粒子は生体細胞に取り込まれるために十分な小ささである。このため有用な成分をナノサイズの微粒子に加工するために多くの方法が提案されているが、大きく分けると2つの構造体が実用化されている。第一に、石鹸の原理を使ったミセル構造体(エマルション)と第二の構造体として生体細胞を模倣したリン脂質で形成されるリポソーム構造体がある。
【0005】
本発明者は、特許文献1としてメタケイ酸を用いたナノ微粒子の製造方法を提案した。具体的には、メタケイ酸を含む温泉水を調製水として豆乳を作り、この豆乳を培養液として乳酸菌(AI-001)を培養する。すると、乳酸菌が産生する乳酸によって培地が酸性となり、酸性培養液中のメタケイ酸により豆乳に含まれる脂溶性分(セラミド、エクオールなど)を囲んだナノ微粒子が得られることが判明した。
【0006】
特許文献2には、M細胞を制御する乳酸菌(AI-001)の作製方法が記載され、特許文献3には、アレルギー抗体であるIgE抗体を吸着するフィラメント状乳酸菌の作製方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、血液脳関門を通り抜けるために、血液脳関門に発現するレセプターに薬剤を結合させ、脳組織に移行させる方法が記載され、特許文献5には、アルツハイマーの原因物質であるアミロイドβが脳で増加しない抗体製剤について記載され、特許文献6にはリポソームを用いた化粧品について記載され、特許文献7には、リポソームを用いた肺真菌感染症の治療薬について記載され、特許文献8及び9には、脂溶性成分として大麻抽出物(CBD)の抽出法について記載されている。
【0008】
非特許文献1には、脳には血液脳関門、血液脊髄関門、血液脳脊髄関門、血液クモ膜関門といわれる中枢関門構造があり、ナノ微粒子であっても、これらの関門を通過し、脳組織に到達することは困難な場合が多いことが記載されている。
【0009】
非特許文献2では、腸にはパイエル板という特殊な免疫組織が存在し、その中のM細胞は多くの成分を取り込む能力が備わっている。M細胞に取り込まれやすい粒子サイズは存在するが、粒子サイズが小さければ小さいほど多く取り込まれる性質もあることが報告されている。
【0010】
非特許文献3及び4には、腸に到達した栄養成分が生体内に取り込まれるには多くの条件が必要であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第6898620号公報
【文献】特許第6190512号公報
【文献】特許第5197880号公報
【文献】特許第6889218号公報
【文献】特開2023-011002号公報
【文献】特許第2807840号公報
【文献】特許第3245955号公報
【文献】特開2023-078465号公報
【文献】特開2021-042233号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】楠原洋之著、「血液脳関門の分子構造と薬物輸送」 Drug Delivery System 27,5, 201
【文献】長谷川秀夫、菅辰彦著、「長寿免疫と乳酸菌:Th1細胞を誘導するナノ型乳酸菌の働き」New Food industry 2008 Vol. 50 No8
【文献】荒井雄介、松原俊哉、金賢枝、山田和彦、「真球状中空シリカナノ粒子の開発」AGC Research Report 71(2021)
【文献】中村教泰、「有機ナノシリカ粒子の作成と応用」顕微鏡 Vol.52,No.3(2017)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
メタケイ酸を用いたナノ微粒子は、酸性の環境では微粒子のままであるが、アルカリ性の環境になると微粒子が崩壊し、微粒子の中に含まれている成分が出てくる性質を有している。生体の血液は弱アルカリ性に保たれているため、血中に入ったナノ微粒子は、崩壊し、微粒子に含まれている成分が血中に放出される。ナノ微粒子を形成していたメタケイ酸は血中にとけ、髪の毛や皮膚のコラーゲンの結合に利用される。このナノ微粒子は脂溶成分のみがナノ微粒子の核として取り込まれるという特徴を有している。このため、機能性脂溶成分を人の体に吸収させるには最適の性質を持ったナノ微粒子である。
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示されるナノ微粒子のサイズは50nm~150nmが限度であり、このサイズでは機能性成分が目的の臓器、組織に届かない場合がある。また、他の特許文献および先行文献にあっても上記よりも更に小さな粒子の製造については何ら提案されていない。
【0015】
また、特許文献1ではナノ粒子の核となる脂溶性成分は豆乳に含まれるものに限定され、豆乳には含まれていない脂溶性成分にて微細粒子ができるかについては何ら検証されていない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解消するため、本発明に係る脂溶性成分を内包した超ナノ微粒子を製造する乳酸菌バイオリアクターは、脂溶性成分を界面活性剤で抱持したエマルション粒子とメタケイ酸を含む培養液で乳酸菌を培養し、乳酸菌が産生する乳酸によって培養液を次第に酸性とすることで、エマルション構造を瓦解させ、前記エマルション粒子から脂溶性成分を漏出させ、漏出した脂溶性成分をメタケイ酸によって包み込んで超ナノ微粒子とすることを特徴とする。
【0017】
前記脂溶性成分としては、大豆、ピーナッツ、ブドウ、オレンジ、ハーブ、麻などの植物に含まれるセラミド、エクオール、ポリフェノール、アロマオイル、カンナビジオール(CBD)などが挙げられ、界面活性剤としてはサポニンなどが挙げられる。
【0018】
また本発明に係る脂溶性成分を内包した超ナノ微粒子は上記方法によって製造されたものであり、大きさ(粒径)が1.0nm~10.0nmの超ナノ微粒子である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば腸の細胞から容易に吸収される大きさの脂溶性成分を内包した超ナノ微粒子を製造することができる。
したがって、アレルギー症状の緩和、皮膚コンディションの改善、癒し効果、痛みの軽減に有効な医薬や機能性食品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る超ナノ微粒子の製造方法の反応系を模式的に説明した図
図2】エマルション粒子から超ナノ微粒子に至るまでの過程を模式的に説明した図
図3】エマルション粒子から脂溶性成分が漏出する過程を模式的に説明した図
図4】メタケイ酸ナトリウム・9水和物溶液の溶解度と温度の関係を示す写真
図5】メタケイ酸ナトリウム・9水和物と炭酸水素ナトリウムの混合割合と溶解度の関係を示す写真
図6】メタケイ酸ナトリウム・9水和物の脂溶性成分(油)の分離機能を示す写真
図7】乳酸菌AI-001を培養した培養物の成分を示すグラフ
図8】異なる条件での粒子分布を示すグラフ
図9】異なる条件での粒子分布を示すグラフ
図10】異なる条件での粒子分布を示すグラフ
図11】異なる条件での粒子分布を示すグラフ
図12】異なる条件での粒子分布を示すグラフ
図13】異なる条件での粒子分布を示すグラフ
図14】カンナビジオール(CBD)処方の違いによる痛みの軽減効果を示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施例を説明する。図1に示すように本発明の概要は、サポニンで形成される脂溶性成分を含くむエマルションをメタケイ酸が溶解した培養液で乳酸菌を培養することで、培養液中に脂質性成分を内包した超ナノ微粒子が発現する。
【0022】
メタケイ酸(HSiO)は、二酸化ケイ素に水を加えたものであり、本実施例では市販のメタケイ酸ナトリウム・9水和物(本明細書ではSiO2と記載する)を用いた。メタケイ酸ナトリウム・9水和物をより多く水に溶解させるため炭酸水素ナトリウムを加えた。
【0023】
図4は温度による溶解度を比較した図であり、室温では白濁して溶解度が小さいが、沸騰したメタケイ酸ナトリウム・9水和物(SiO2)と炭酸水素ナトリウム(Na2HCO3)を用いた場合は、白濁が見られず溶解度が大きいことが分かる。したがって、メタケイ酸ナトリウム・9水和物と炭酸水素ナトリウムを溶解させる場合には溶液を沸騰させることが好ましい。
【0024】
図5はメタケイ酸ナトリウム・9水和物と炭酸水素ナトリウムの混合割合について行った試験結果を示すものであり、メタケイ酸ナトリウム・9水和物:炭酸水素ナトリウムは、2:1が最も沈殿が少なく、この割合が好ましい。
【0025】
図6は脂溶性成分(油)の分離効果を示す図である。沸騰した水1リットルに、メタケイ酸ナトリウム・9水和物2gと炭酸水素ナトリウム1gを加え、この沸騰溶液にオレンジ皮(Natt Herb man, ETSY, USA)粉末30gを加え、更に30分間煮沸した。図6の左側写真が煮沸後0時間、右側写真が40℃に維持した24時間経過後の状態を示す。
右側写真には浮遊物を確認することができ、メタケイ酸はオレンジ皮を分解し、脂溶性成分(油)の分離効果が高いことが推測できる。
【0026】
上記水の代わりに乳酸菌の発育可能な栄養分を含んだ豆乳を用い、この豆乳にメタケイ酸ナトリウム・9水和物、炭酸水素ナトリウム及びオレンジ皮を加えて沸騰し、その後40℃に維持した。次いで40℃の溶液(培養液)に乳酸菌(AI-001)を加え6日間培養を行った。
【0027】
上記の処理培養物を乾燥させ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で一連のカンナビジオール(CBD)分析を行った(図7の左テーブル)。一方で、オレンジ皮のみを同様に分析した(図7の右テーブル)。その結果、乳酸菌AI-001を培養した処理培養物にわずかにCBDが検出されたことが分かる。
【0028】
因みにCBDは機能性脂溶性成分で、多くの国で、過剰な神経伝達をおさえ、痛みの軽減、睡眠改善剤として使用することが認められ、わが国でも抗てんかん薬として臨床使用ができるように、国会で審議されている。また、非検出のTHCは麻薬成分として扱われる。
【0029】
次に、乳酸菌が発育可能な培地(豆乳)に植物性界面活性剤サポニン(Saponin)、カンナビジオール(CBD)、炭酸水素ナトリウム(Na2HCO3)、メタケイ酸ナトリウム・9水和物(SiO2)を順次加え、各ステップで形成する微粒子をゼータ電位・粒径・分子量測定システムELSZ-2000 シリーズ(大塚電子、京都)で粒子径、個数を測定した。
【0030】
図8は上記の粒子分布の変化を示し、横軸は粒径、左縦軸は個数分布%、右縦軸は累積頻度分布%を示す。
サポニン(Sponin)を加えた溶液(1)に脂溶性のCBDを加えると(2)、サポニンの界面活性剤の機能により溶解した。さらに、Na2HCO3とSiO2を前記と同等の比率でこの溶液に混ぜ、微粒子の測定を行った(3)(4)。この結果、(1)、(2)では粒子径約160nm,(3)(4)では約80nmのナノ微粒子が形成された。
【0031】
上記の試験において、脂溶性のCBDを加えない溶液と加えた溶液を作成し、粒径、個数分布%を前記と同様に測定した。その結果、脂溶性のCBDを加えると図9に示すように、[(5)-CBD]で見られた200nm前後の微粒子が減少し、約80nmの大きさを主体とする微粒子が形成された(5)。脂溶性のCBDが存在することで植物性界面活性剤サポニンに取り囲まれたエマルションが形成されたと推測された。
【0032】
このように、脂溶性成分CBDの有無により、粒子分布に変化ができる。CBDを加えないと図9の[(5)- CBD ]の〇で囲った粒子は、サポニンだけを加えた場合の図8(1)の粒径に一致する。CBDを加えるとこの範囲の粒子は減少し、代わりに脂溶性成分CBDを含んだエマルションと思われるサイズの粒子が増加している。
【0033】
図9(5)の溶液に乳酸菌AI-001を加え、40℃、6日間好気培養を行った。その結果、図10(6)に示すように、更に微小なナノ微粒子(平均1.9nm)が観察された。
【0034】
一方、CBDを加えていない図10[(6)- CBD ]においては平均51nmの微粒子が観察されただけであった。CBDを核としたサポニンによるエマルションが乳酸菌AI-001により更なる微小なナノ微粒子(超ナノ微粒子)を形成させたと推測された。
【0035】
乳酸菌(AI-001)を一緒に培養すると、培養液が次第に酸性となり、エマルション(4)の粒子が、更に小さなサイズの粒子に変化していることが観察される(6)。また、CBDを加えないと更なる小さな微粒子が形成されていない。これはサポニンは壊されても脂溶性成分が含まれていないため、メタケイ酸で作られる超ナノ微粒子が作られないと推定される
【0036】
SiO2の有無により超ナノ微粒子が形成されるかを観察した。結果を図11に示す。SiO2を加える事なしの溶液に乳酸菌AI-001を加え、40℃、6日間培養を行った。その結果、超ナノ微粒子は形成されなかった(7)。何も加えない豆乳のみの溶液に乳酸菌AI-001を加え、40℃、6日間培養を行った(陰性コントロール)とほぼ同じ結果であった(8)。
このことから、SiO2を加えないと超ナノ微粒子が形成されていない。よって、超ナノ微粒子はSiO2で作られていることになる(溶けているメタケイ酸で作られていることになる)。
【0037】
超ナノ微粒子が形成された培養溶液はpH4.1であった。この溶液を水酸化ナトリウムの溶液でpH9.0の溶液に調整した。この溶液を粒子計で計測した結果を図12(9)に示す。
アルカリ性にした結果、超ナノ微粒子は消失し、代わりに70nm,700nmをピークとする二峰性の分布を持った微粒子が検出された。次にこの溶液に塩酸溶液を加えpH3.0に調整した(10)。その結果、平均1.5nmの超ナノ微粒子が検出された。
【0038】
即ち、酸性溶液中では超ナノ微粒子は安定であるが、アルカリ性溶液においては超ナノ微粒子が溶けて、凝集し大きな集合体を作っている可能性がある。
【0039】
サポニンを加えた溶液にCBD濃度を10g/Lとなるように添加。溶解したサポニンのエマルションを形成させるため、この溶液をホモジナイザー(丸三機械、静岡)処理を行い、Na2HCO3、SiO2を順次加え、乳酸菌AI-001を培養した。その結果、平均1.0nmの超ナノ微粒子が検出された図13(11)。
【0040】
図14は超ナノ微粒子としたことの効果を検証したグラフである。
Saponin、CBD、Na2HCO3、SiO2を含んだ液を豆乳で作成し、これに乳酸菌AI-001を接種、培養することで豆乳ヨーグルトを作成した。その100mlを被検者Aに毎日連続で摂食してもらった。被検者Aは重度の坐骨神経で持続的な腰痛を持っている。この被検者Aに豆乳ヨーグルト摂食による痛みの軽減を5段階のスコアに分けてもらい痛みの軽減する評価を行った(4:痛くない、3.5:時たま痛い、3:押さえれば痛い、2.5: 痛みを意識する、2:いつも痛い)。Saponin、CBD、Na2HCO3、SiO2の様々の組み合わせの豆乳ヨーグルトの摂食を行い評価した。1パターンの摂食を7日間継続してもらい、スコアの最高値と最低値を削除し、残った5日間のスコアの平均を評価値とした。その結果、Saponin、CBD、Na2HCO3、SiO2を順次溶解したものが腰痛緩和作用に優れていた。
【0041】
超ナノ微粒子に包含された脂溶性成分の組織移行性を確認するための臨床評価を行い、脂溶性成分の神経までの組織移行を確認できた。座骨神経痛は様々な原因が考えられるが、神経シナプスでの過剰な神経伝達を抑えるというCBDの機能が痛みの軽減を行っていることが考えられる。脂溶性成分を含んだ超ナノ微粒子は、腸管吸収の効率、組織移行性の効果に寄与することが可能となる。
【0042】
以上をまとめると、乳酸菌が発育可能な培地(豆乳)に植物性界面活性剤サポニン、CBDを順次加えることで、図2に示すように、CBDを取り込んだエマルション粒子が形成される。脂溶性成分としてCBD以外にアロマオイルを用いて同様に実施し、超ナノ微粒子を検出することができた。
Saponin、脂溶性成分、Na2HCO3、SiO2の添加、その後の乳酸菌の培養を上記の順に行うことが超ナノ微粒子を作る上で必要となる。
【0043】
更に上記溶液を豆乳などの乳酸菌を発育させる栄養を含んだ培養液としているので、培養液は乳酸菌が産生する乳酸によって酸性となる。
乳酸菌が発育することで、図3に示すように、界面活性剤の親水性部分と親油性部分とに分解され、エマルション粒子の瓦解により、エマルション粒子から脂溶性成分が漏出してくる。
漏出してきた脂溶性成分は、乳酸菌の乳酸で培養液が酸性状態のメタケイ酸溶液となっているので、メタケイ酸に取り囲まれ、1.0~10.0nmの超ナノ微粒子(ミセル構造体)となる。
【0044】
ここで、豆乳はあくまでも乳酸菌が発育するための栄養を供給する溶液であるので、豆乳以外の溶液で乳酸菌が発育できるものであればよい。また、乳酸菌は微小な反応空間に乳酸で次第に環境を酸性に変え、至適なpHでサポニンによるエマルションの瓦解、漏れ出た脂溶性成分とメタケイ酸による超微粒子の形成という一連の反応を同じ容器で行うことが可能なバイオリアクターとして機能するものであるから、乳酸菌の種類としてAI-001に限らないが、反応空間は乳酸菌の菌体サイズが発育に伴って大きくなることで形成されるため、AI-001のように他の乳酸菌に比べて大きい乳酸菌が好ましい。
【0045】
更に、炭酸水素ナトリウムはメタケイ酸ナトリウム・9水和物を溶解しやすくするものである。また、脂溶性成分を含んだエマルションの粒径を小さくする効果もある[図8(3)]。必ずしも炭酸水素ナトリウムである必要はないが、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【要約】
【課題】 脂溶性成分を内包した超ナノ微粒子を製造する乳酸菌バイオリアクターを提供する。
【解決手段】
乳酸菌が発育可能な培地に植物性界面活性剤(サポニン:Saponin)、脂溶性成分を順次加えることで、図2に示すように、脂溶性成分を取り込んだエマルション粒子が形成される。更に、炭酸水素ナトリウム(Na2HCO3)、メタケイ酸ナトリウム・9水化物(SiO2)を加える。これに加えた乳酸菌の発育につれ、界面活性剤の親水性部分と親油性部分が次第に分解される。この結果、エマルションの瓦解が起こり、エマルション粒子から脂溶性成分が漏れ出てくる。漏れ出てきた脂溶性成分は、乳酸菌の発育により培養液が酸性状態のメタケイ酸に取り囲まれ、超ナノ微粒子(ミセル構造体)とする乳酸菌バイオリアクターを構成する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14