(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】加飾シート、加飾シートと加飾対象物との組合せ、加飾品の製造方法、加飾シートと接着手段との組合せ、および画像形成シートと転写シートとの組合せ
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20241119BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241119BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241119BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B7/023
B32B27/00 E
B44C1/17 B
(21)【出願番号】P 2020051888
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(74)【代理人】
【識別番号】100152098
【氏名又は名称】林 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小林 良正
(72)【発明者】
【氏名】松井 寛人
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/062038(WO,A1)
【文献】特開2002-019309(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131496(WO,A1)
【文献】特開平11-300905(JP,A)
【文献】特開昭63-045053(JP,A)
【文献】特開2019-064092(JP,A)
【文献】特開2004-277725(JP,A)
【文献】特開2017-170865(JP,A)
【文献】特開2019-065163(JP,A)
【文献】特開平09-315097(JP,A)
【文献】特開2004-291310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B44C 1/16- 1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、画像層、および保護層がこの順で積層されており、
前記支持体は、フィルム基材単層構造、またはフィルム基材をプライマー層を介して積層した積層構造であり、
前記画像層は、昇華性染料を含み、
前記保護層の画像層とは反対側に接着層が設けられており、
前記接着層によって加飾対象物に接着
されるものであり、
前記保護層と前記接着層は、熱転写された層であり、
前記保護層が第1の紫外線遮断層であり、
前記支持体が第2の紫外線遮断層であり、
前記第1および第2の紫外線遮断層はともに、300nm~400nmの波長領域での平均透過率が50%以下である、加飾シート。
【請求項2】
支持体、画像層、および保護層がこの順で積層されており、
前記支持体は、フィルム基材単層構造、またはフィルム基材をプライマー層を介して積層した積層構造であり、
前記画像層は、昇華性染料を含み、
前記保護層の画像層とは反対側に接着層が設けられており、この接着層によって加飾対象物に接着されるものであり、
前記保護層と前記接着層は、熱転写された層であり
前記接着層が第1の紫外線遮断層であり、
前記支持体が第2の紫外線遮断層であり、
前記第1および第2の紫外線遮断層はともに、300nm~400nmの波長領域での平均透過率が50%以下である、加飾シート。
【請求項3】
前記接着層が、粘着層である、請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記接着層が、ヒートシール層である、請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記支持体の一部が分離可能となっている、請求項1~4の何れか一項に記載の加飾シート。
【請求項6】
加飾シートと加飾対象物との組合せであって、
前記加飾シート
が請求項1~5の何れか1項に記載の加飾シートであり、
前記加飾対象物がガラス、アクリル、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、または金属である、加飾シートと加飾対象物との組合せ。
【請求項7】
支持体、画像層、および保護層がこの順で積層されており、
前記支持体は、フィルム基材単層構造、またはフィルム基材をプライマー層を介して積層した積層構造であり、前記画像層は、昇華性染料を含み、前記保護層の画像層とは反対側に接着層が設けられており、この
接着層によって加飾対象物に接着
されるものであり、
前記保護層と前記接着層は、熱転写された層であり前記保護層が第1の紫外線遮断層であり、前記支持体が第2の紫外線遮断層であり、前記第1および第2の紫外線遮断層はともに、300nm~400nmの波長領域での平均透過率が50%以下である加飾シートを準備する工程と、
前記接着層を用いて、前記加飾シートと加飾対象物と一体化させる工程と、を含む、加飾品の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記加飾シートと加飾対象物とを一体化させる工程の後に、レーザーカッターにより加飾対象物を任意の形状にカットする工程を含む、請求項7に記載の加飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾シート、加飾シートと加飾対象物との組合せ、加飾品の製造方法、加飾シートと接着手段との組合せ、および画像形成シートと転写シートとの組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成シートに対して、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式、インクジェット印刷方式、トナー印刷方式などの各種の画像形成方法によって画像を形成することで、印画物を製造している。また、印画物を加飾シートとして用い、この加飾シートを加飾対象物と一体化させることで、加飾対象物を装飾することが行われている。たとえば、特許文献1には、インクジェット印刷方式によって画像を形成した加飾シートや、この加飾シートを用いた加飾品の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、加飾シートを用いて装飾を施す加飾対象物の形状や材質が多様化している。本開示は、種々の加飾対象物に使用しても、紫外線による画像の劣化を抑制可能な加飾シート、加飾シートと加飾対象物との組合せ、加飾品の製造方法、加飾シートと接着手段との組合せ、および画像形成シートと転写シートとの組合せを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本開示の加飾シートは、画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、前記画像層の他方の面側に設けられた第2の紫外線遮断層と、を含む。
【0006】
上記課題を解決するための本開示の加飾シートと加飾対象物との組合せは、前記加飾シートが本開示の加飾シートであり、前記加飾対象物がガラス、アクリル、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、または金属である。
【0007】
上記課題を解決するための本開示の加飾品の製造方法は、画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、前記画像層の他方の面側に設けられた第2の紫外線遮断層と、を含む加飾シートを準備する工程と、前記加飾シートと加飾対象物とを一体化させる工程と、を含む。
【0008】
上記課題を解決するための本開示の別の加飾品の製造方法は、画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、を含む加飾シートを準備する工程と、前記加飾シートを加飾対象物と一体化させるためのものであり、第2の紫外線遮断層を含む接着手段を準備する工程と、前記接着手段により、前記加飾シートの前記第1の紫外線遮断層が設けられていない側において、前記加飾シートと加飾対象物とを一体化させる工程と、を含む。
【0009】
上記課題を解決するための本開示の加飾シートと接着手段との組合せは、加飾シートと、前記加飾シートを加飾対象物と一体化するための接着手段と、の組合せであって、前記加飾シートは、画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に、直接または他の層を介して設けられた第1の紫外線遮断層と、を含み、前記接着手段は、第2の紫外線遮断層を含む。
【0010】
上記課題を解決するための本開示の画像形成シートと転写シートとの組合せは、前記画像形成シートは、画像を形成するための画像形成層と、前記画像形成層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、を含み、前記転写シートは、前記画像形成シートへ転写可能な第2の紫外線遮断層を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の加飾シートなどは、種々の加飾対象物に使用しても、紫外線による画像の劣化を抑制できる。本開示の加飾シートと加飾対象物との組合せ、加飾品の製造方法、加飾シートと接着手段との組合せ、および画像形成シートと転写シートとの組合せにおいても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示す本開示の加飾シートを加飾対象物と一体化してなる加飾品の概略断面図である。
【
図3】
図1に示す本開示の加飾シートを加飾対象物と一体化してなる加飾品の概略断面図である。
【
図4】本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図5】本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図6】本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図7】本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図8】本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図9】本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図10】本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図11】本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図12】本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図13】本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図14】本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図15】本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態を、図面などを参照しながら説明する。なお、本開示は多くの異なる態様で実施でき、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表す場合がある。しかしながら、図面は一例であり、本開示の解釈を限定しない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上または下などという語句を用いて説明するが、上下方向が逆転してもよい。左右方向についても同様である。
【0014】
<加飾シート>
本開示の実施形態の加飾シートについて説明する。
【0015】
図1は、本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0016】
図1に示すように、本開示の加飾シート10は、画像が形成された画像層11と、前記画像層11の一方の面側(
図1においては上側)に設けられた第1の紫外線遮断層12と、前記画像層11の他方の面側(
図1においては下側)に設けられた第2の紫外線遮断層13と、を含む。なお、
図1においては、第1の紫外線遮断層12および第2の紫外線遮断層13が画像層11の面上に直接設けられているが、この態様に限定されることはない。つまり、第1の紫外線遮断層12および第2の紫外線遮断層13が画像層11の一方および他方の面側に他の層を介して設けられてもよい。
【0017】
図2、
図3は、
図1に示す本開示の加飾シート10を加飾対象物100と一体化してなる加飾品110の概略断面図である。より具体的には、
図2は、加飾シート10の第1の紫外線遮断層12側で加飾対象物100と一体化した場合を示している。
図3は、加飾シート10の第2の紫外線遮断層13側で加飾対象物100と一体化した場合を示している。
【0018】
このように、本開示の加飾シート10は、第1の紫外線遮断層12側、第2の紫外線遮断層13側、どちら側においても加飾対象物100と一体化できる。
【0019】
図2に示すように、
図2の下側、つまり第2の紫外線遮断層13側から直接照射された紫外線UV1は、第2の紫外線遮断層13によって吸収される。また、
図2の下側から照射され加飾対象物内で反射した紫外線UV2や、
図2の上側、つまり第1の紫外線遮断層12側から照射され加飾対象物内を通過した紫外線UV3は、第1の紫外線遮断層12によって吸収される。このことは、
図3においても同様である。本開示の加飾シート10は、画像層11が第1の紫外線遮断層12と第2の紫外線遮断層3によって挟まれた、いわゆるサンドイッチ構造を有しているため、加飾シート10側から直接照射される紫外線UV1、および加飾対象物側から照射される紫外線UV2、UV3のすべてを吸収できる。よって紫外線の照射による画像層11の劣化を抑制できる。
【0020】
支持体の表面に画像層を形成してなる印画物は、従来から広く知られている。そして、このような印画物にあっては、画像層側における耐光性を考慮するのが一般的であった。このような状況下において、発明者らは、画像層が形成される支持体が透明な場合には、画像層側のみならず支持体側における耐光性をも考慮すべきであり、また支持体が金属などの場合には、この金属により反射された光に対する耐光性も考慮すべきであることを見出し、上記の作用効果を奏する本開示の加飾シートを完成させた。
【0021】
本開示の加飾シート10は、加飾対象物100の材質を問わず使用できる。つまり、加飾対象物100は、透明であっても不透明であってもよい。加飾対象物100の材質が、ガラスやアクリルなどの透明性を有する材質である場合、または加飾対象物100が金属などの紫外線を反射する材質である場合に、特に有用である。
【0022】
また、本開示の加飾シート10は、画像層11が昇華性染料を含む場合にも特に有用である。本開示の加飾シート10が有する、第1の紫外線遮断層12と第2の紫外線遮断層13とのサンドイッチ構造により、昇華性染料の紫外線による劣化を抑制できる。
【0023】
なお、本開示の加飾シート10における第1の紫外線遮断層12および第2の紫外線遮断層13は、「遮断」とはいうものの紫外線の透過率が0%である必要はなく、紫外線のの透過率を低減することができればよい。具体的には、単層の状態において、300nm~400nmの波長領域での平均透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0024】
・加飾シートの具体的な構成-1
図4は、本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0025】
図4に示すように、本開示の加飾シート10は、支持体14、画像層11、および保護層15がこの順で積層されており、前記保護層15が第1の紫外線遮断層12であり、前記支持体14が第2の紫外線遮断層13であってもよい。つまり、保護層15が第1の紫外線遮断層12の役割を果たし、支持体14が第2の紫外線遮断層13の役割を果たしてもよい。
【0026】
そして、第1の紫外線遮断層12の役割を果たす保護層15に、さらに接着性を付与することにより、
図2に示すように、加飾シート10をその第1の紫外線遮断層12側で加飾対象物100と一体化できる。一方で、第2の紫外線遮断層13の役割を果たす支持体14に、さらに接着性を付与することにより、
図3に示すように、加飾シート10をその第2の紫外線遮断層13側で加飾対象物100と一体化できる。
【0027】
・加飾シートの具体的な構成-2
図5は、本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0028】
図5に示すように、本開示の加飾シート10は、支持体14が複数の層からなる積層構造であってもよい。
図5に示す支持体14は、支持体14aと支持体14bの二層構造である。支持体14が積層構造の場合にあっては、積層構造を構成する層のうち、少なくとも一層が第2の紫外線遮断層13の役割を果たせばよい。
図5に示す支持体14は、支持体14aが第2の紫外線遮断層13の役割を果たす。
【0029】
支持体14が積層構造の場合にあっては、支持体14の一部が分離可能となっていてもよい。たとえば、
図5に示す支持体14にあっては、支持体14aと支持体14bとが分離可能となっている。なお、支持体14を分離可能とする場合には、第2の紫外線遮断層13の役割を果たす層が分離後の加飾シート10に残る必要がある。
【0030】
・加飾シートの具体的な構成-3
図6は、本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0031】
図6に示すように、本開示の加飾シート10は、第1の紫外線遮断層12の役割を果たす保護層15の画像層11とは反対側、つまり
図6における上側に、接着層16を設けてもよい。この接着層16により、
図2に示すように、加飾シート10をその第1の紫外線遮断層12側で加飾対象物100と一体化できる。
【0032】
・加飾シートの具体的な構成-4
図7は、本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0033】
図7に示すように、本開示の加飾シート10は、
図6と同じ層構成を有しつつ、保護層15ではなく、その上側に設けられた接着層16が第1の紫外線遮断層12でもよい。つまり、接着層16が第1の紫外線遮断層12の役割を果たしてもよい。接着層16が第1の紫外線遮断層12であっても、画像層11は、第1の紫外線遮断層12としての接着層16と、第2の紫外線遮断層13である支持体14とによって挟まれており、紫外線による画像層11の劣化を抑制できる。
【0034】
なお、
図6や
図7の場合において、接着層16は粘着層であってもよく、ヒートシール層であってもよい。
【0035】
・加飾シートの具体的な構成-5
図8は、本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0036】
図8に示すように、本開示の加飾シート10は、第2の紫外線遮断層13の役割を果たす支持体14の画像層11とは反対側、つまり
図8における下側に、接着層16を設けてもよい。この接着層16により、
図3に示すように、加飾シート10をその第2の紫外線遮断層13側で加飾対象物100と一体化できる。
【0037】
・加飾シートの具体的な構成-6
図9は、本開示の実施形態の加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0038】
図9に示すように、本開示の加飾シート10は、
図8と同じ層構成を有しつつ、支持体14ではなく、その下側に設けられた接着層16が第2の紫外線遮断層13でもよい。つまり、接着層16が第2の紫外線遮断層13の役割を果たしてもよい。接着層16が第2の紫外線遮断層13であっても、画像層11は、第1の紫外線遮断層12としての保護層15と、第2の紫外線遮断層13である接着層16とによって挟まれており、紫外線による画像層11の劣化を抑制できる。
【0039】
なお、
図8や
図9の場合において、接着層16は粘着層であってもよく、ヒートシール層であってもよい。
【0040】
上記で説明した「加飾シートの具体的な構成―1」から「加飾シートの具体的な構成―6」は、それぞれが本開示の加飾シートの一例である。したがって、それぞれの加飾シートの構成を適宜組み合わせてもよい。
【0041】
・加飾シートを構成する層
上記で説明した加飾シート10を構成する層のそれぞれについて説明する。
【0042】
(支持体)
加飾シート10を構成する支持体14は限定されない。支持体14は、従来の加飾シートにおいて用いられている各種支持体から適宜選択して使用できる。
【0043】
支持体14の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のフィルム基材を例示できる。これらフィルム基材は、延伸されたものであってもよく、未延伸であってもよい。フィルム基材は、透明性を有するフィルム基材であってもよく、不透明なフィルム基材であってもよい。また、フィルム基材は、白色顔料や充填剤を含有する白色フィルム基材であってもよい。また、内部にミクロボイドを有するフィルム基材であってもよい。
【0044】
また、支持体14の材質として、隠蔽性を有するフィルム基材を用いることも可能である。この場合において、フィルム基材の種類は特に限定されず、従来から用いられている種々のフィルム基材を適宜選択して使用できる。ここで、隠蔽性を有するフィルム基材とは、450nm~700nmの波長領域での最大透過率が10%以下のものをいう。
【0045】
なお、加飾シートの支持体14が不透明な場合には、透明な加飾対象物に対して使用するのが好ましい。これにより、加飾シートの画像を加飾対象物側から視認できる。
【0046】
支持体14の厚さは限定されない。たとえば、1μm以上300μm以下としてもよい。
【0047】
ここで、
図4から
図7に示すように、支持体14を第2の紫外線遮断層13として機能させる場合には、たとえば、支持体14を構成する基材フィルム中に、紫外線吸収剤または紫外線散乱剤を含有してもよい。紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の種類は限定されない。紫外線吸収材としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルトリアジン等を例示できる。紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等を例示できる。これらの中でも、ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0048】
紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の含有量は特に限定されない。たとえば、支持体14の質量に対して0.1質量%以上15質量%以下としてもよく、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0049】
また、
図5に示すように、支持体14が積層構造である場合にあっては、支持体14を構成する各層のうちの少なくとも一層(14a)を第2の紫外線遮断層13として機能させてもよい。この場合において、支持体14を構成する各層(14a、14b)の間にプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
【0050】
支持体14を構成する各層(14a、14b)を貼り合わせて接着するためのプライマー層は、接着剤を含んでおり接着機能を有する。接着剤成分としては、たとえば、ウレタン樹脂、α-オレフィン-無水マレイン酸樹脂等のポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、シアノアクリレート樹脂等を例示できる。これらの中でもアクリル樹脂の反応型のものや、変性したもの等を好ましく使用できる。また、接着剤は硬化剤を用いて硬化させると、接着力も向上し、耐熱性も上がるため好ましい。硬化剤としては、イソシアネート化合物が一般的であるが、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物等を使用できる。また、プライマー層を設けずに、表面に接着性を有する、あるいは接着処理が施された基材を用いてもよい。
【0051】
プライマー層の厚みは、通常2μm以上10μm以下である。プライマー層の形成は、上記で例示した接着剤や、必要に応じて添加される添加材を、適当な溶媒に分散、或いは溶解したプライマー層用塗工液を調製し、この塗工液を塗布・乾燥して形成することができる。
【0052】
また、支持体14を構成する各層(14a、14b)を、上記プライマー層を用いて貼り合せることにかえて、ポリエチレン等を使用したECサンドラミネーションによって貼り合せてもよい。
【0053】
ここで、支持体14を構成する各層(14a、14b)を、上記プライマー層を用いて貼り合わせる場合にあっては、このプライマー層を第2の紫外線遮断層13として機能させてもよい(図示せず)。プライマー層を第2の紫外線遮断層13として機能させる場合にあっては、上記で説明したプライマー層を構成する樹脂中に、紫外線吸収剤または紫外線散乱剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤および紫外線散乱剤については、支持体14を第2の紫外線遮断層13として機能させる場合と同様のものを使用できる。
【0054】
(画像層)
加飾シート10を構成する画像層11は限定されない。従来公知の種々の画像形成方式に応じて適宜選択できる。したがって、画像層11の成分としては、所望の画像形成方式で画像を形成可能な成分を適宜選択して用いればよい。たとえば、画像層11への画像の形成を昇華型転写方式で行う場合、画像層11は昇華性染料を受容可能な成分を含有している。昇華性染料を受容可能な成分としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、あるいはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、オレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体、アイオノマー、セルロースジアスターゼ等のセルロース樹脂、ポリカーボネート、およびエポキシ樹脂等を例示できる。好ましい画像層11は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、アクリル-スチレン樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂を含有している。中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含有する画像層11とした場合には、画像層11に濃度の高い画像を形成でき、製造される加飾品の意匠性を良好にできる。
【0055】
画像層11の厚みについて限定はなく、画像形成方式等に応じて適宜設定できる。たとえば、熱転写方式に用いられる画像層11の厚みは、0.1μm以上10μm以下が好ましい。また、インクジェット印刷方式に用いられる画像層11の厚みは、0.1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上40μm以下がより好ましく、3μm以上30μm以下がさらに好ましい。また、トナー印刷方式に用いられる画像層11の厚みは、0.01μm以上5μm以下が好ましく、0.05μm以上1μm以下がより好ましい。
【0056】
(保護層)
加飾シート10を構成する保護層15は限定されない。従来から加飾シート10の画像層11や他の層を保護するために用いられる保護層を適宜選択して使用できる。保護層15は、たとえば、画像層11の画像の滲みを抑制できるものでもよい。保護層15は、単層構造でもよく、複数の層が積層された積層構造でもよい。保護層15は、画像層11の成分や画像(インキ)の成分等を考慮して決定できる。一例としての保護層15は、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等を含有している。保護層15は、1種の成分を含有してもよく、2種以上の成分を含有してもよい。
【0057】
ここで、
図4や
図5に示すように、加飾シート10を構成する保護層15を第1の紫外線遮断層12として機能させてもよい。この場合にあっては、保護層15を構成する樹脂中に、紫外線吸収剤または紫外線散乱剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤および紫外線散乱剤については、支持体14を第2の紫外線遮断層13として機能させる場合と同様のものを使用できる。
【0058】
(接着層)
加飾シート10を構成する接着層16は限定されない。従来から加飾シート10を加飾対象物に接着・固定する際に用いられている各種接着層を適宜使用できる。本開示の加飾シート10にあっては、
図6や
図7に示すように、保護層15側に接着層16が設けられる場合と、
図8や
図9に示すように、支持体14側に接着層16が設けられる場合があるが、どちらの場合であっても、接着層16の種類は限定されない。
【0059】
接着層16は、接着性を有する成分を含有してもよい。接着性を有する成分としては、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド、合成ゴム等を例示できる。接着層16は、接着性を有する成分として、複数の成分を含有してもよい。接着層16は、接着フィルムや、接着シートでもよい。接着層16の厚みは、1μm以上1000μm以下が好ましい。
【0060】
接着層16は、常時粘着性を有している、いわゆる粘着層でもよい。粘着層の成分は特に限定されない。粘着層としては、たとえば、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂等を例示できる。粘着層の厚みについても特に限定はなく、たとえば、5μm以上20μm以下が一般的であり、好ましくは8μm以上10μm以下である。
【0061】
粘着層16は、熱により粘着性を発現する、いわゆるヒートシール層でもよい。ヒートシール層の成分は特に限定されない。ヒートシール層としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、シアノアクリレート等を例示できる。
【0062】
ここで、
図7や示すように、加飾シート10を構成する粘着層16を第1の紫外線遮断層12として機能させてもよい。また一方で、
図9に示すように、加飾シート10を構成する粘着層16を第2の紫外線遮断層13として機能させてもよい。これらの場合にあっては、粘着層16を構成する樹脂中に、紫外線吸収剤または紫外線散乱剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤および紫外線散乱剤については、支持体14を第2の紫外線遮断層13として機能させる場合と同様のものを使用できる。
【0063】
<加飾品の製造方法>
本開示の加飾品の製造方法について説明する。
【0064】
本開示の加飾品の製造方法は、(工程1)画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、前記画像層の他方の面側に設けられた第2の紫外線遮断層と、を含む加飾シートを準備する工程と、(工程2)前記加飾シートと加飾対象物とを一体化させる工程と、を含む。つまり、たとえば
図4に示すように、画像層が第1の紫外線遮断層と第2の紫外線遮断層とによって挟まれた「サンドイッチ構造」を有する加飾シートを準備し(工程1)、これを加飾対象物と一体化させる(工程2)ことで、加飾品を製造する。
【0065】
この場合において、サンドイッチ構造を有する加飾シートと加飾対象物とを一体化させる手段については限定されない。
【0066】
・具体的な加飾品の製造方法‐1
図10は、本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【0067】
たとえば、
図10に示すように、第1の紫外線遮断層12の役割を果たす保護層15の画像層11とは反対側、つまり
図10における上側に接着層16が設けられた加飾シート10を準備し、この接着層16を用いて、加飾シート10と加飾対象物100とを一体化してもよい。
【0068】
・具体的な加飾品の製造方法‐2
図11は、本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【0069】
また、たとえば、
図11に示すように、
図10と同じ層構成を有しつつ、保護層15ではなく、その上側に設けられた接着層16が第1の紫外線遮断層12である加飾シート10を準備し、この接着層16を用いて、加飾シート10と加飾対象物100とを一体化してもよい。
【0070】
・具体的な加飾品の製造方法‐3
図12は、本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【0071】
一方で、たとえば、
図12に示すように、第2の紫外線遮断層13の役割を果たす支持体14の画像層11とは反対側、つまり
図12における下側に、接着層16が設けられた加飾シート10を準備し、この接着層16を用いて、加飾シート10と加飾対象物100とを一体化してもよい。
【0072】
・具体的な加飾品の製造方法‐4
図13は、本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【0073】
また、たとえば、
図13に示すように、
図12と同じ層構成を有しつつ、支持体14ではなく、その下側に設けられた接着層16が第2の紫外線遮断層13である加飾シート10を準備し、この接着層16を用いて、加飾シート10と加飾対象物100とを一体化してもよい。
【0074】
なお、この製造方法で準備される加飾シート10の構造は、
図10から
図13に示す構造に限定されることはなく、画像層11が第1の紫外線遮断層12と第2の紫外線遮断層13とで挟まれた、いわゆる「サンドイッチ構造」を有する構造であれば、いかなる構造であってもよい。
【0075】
別の、本開示の加飾品の製造方法は、(工程1)画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、を含む加飾シートを準備する工程と、(工程2)前記加飾シートを加飾対象物と一体化させるためのものであり、第2の紫外線遮断層を含む接着手段を準備する工程と、(工程3)前記接着手段により、前記加飾シートの前記第1の紫外線遮断層が設けられていない側において、前記加飾シートと加飾対象物とを一体化させる工程と、を含む。つまり、この製造方法において用いられる加飾シートは、画像層が第1の紫外線遮断層と第2の紫外線遮断層とによって挟まれた「サンドイッチ構造」を有しておらず、第1の紫外線遮断層のみを有している。そして、加飾シートとは別の、第2の紫外線遮断層を含む接着手段を用いて加飾シートと加飾対象物とを一体化してはじめて、いわゆる「サンドイッチ構造」が形作られる。
【0076】
・具体的な加飾品の製造方法‐5
図14は、本開示の実施形態の加飾品の製造方法の一例を説明するための図である。
【0077】
たとえば、
図14に示すように、この製造方法で準備される加飾シート10は、支持体14と画像層11と保護層15が順次積層されており、支持体14が第1の紫外線遮断層12として機能している。また、この製造方法で準備される接着手段16は、加飾シート10と加飾対象物100とを一体化するためのものであり、第2の紫外線遮断層13として機能する。そして、この加飾シート10を接着手段16を用いて加飾対象物100と一体化することで、加飾対象物100上で、加飾シート10の画像層11は、第1の紫外線遮断層12として機能する支持体14と、第2の紫外線遮断層13として機能する接着手段16とによって挟まれた、いわゆる「サンドイッチ構造」が発現する。
【0078】
なお、この場合において、接着手段16と加飾シート10を一体化し、その後に加飾シート10上の接着手段16と加飾対象物100を一体化してもよい。一方で、接着手段16と加飾対象物100を一体化し、その後に加飾対象物100上の接着手段16と加飾シート10を一体化してもよい。
【0079】
・具体的な加飾品の製造方法‐6
図15は、本開示の実施形態の加飾シートの製造方法の一例を説明するための図である。
【0080】
たとえば、
図15に示すように、この製造方法で準備される加飾シート10は、支持体14と画像層11と保護層15が順次積層されており、保護層15が第1の紫外線遮断層12として機能している。また、この製造方法で準備される接着手段16は、加飾シート10と加飾対象物100とを一体化するためのものであり、第2の紫外線遮断層13として機能する。そして、この加飾シート10を接着手段16を用いて加飾対象物100と一体化することで、加飾対象物100上で、加飾シート10の画像層11は、第1の紫外線遮断層12として機能する保護層15と、第2の紫外線遮断層13として機能する接着手段16とによって挟まれた、いわゆる「サンドイッチ構造」が発現する。
【0081】
なお、この場合においても、接着手段16と加飾シート10と加飾対象物100の一体化の順番は限定されない。
【0082】
また、この製造方法で準備される加飾シート10の構造は、
図14および
図15に示す構造に限定されることはなく、画像層11と第1の紫外線遮断層12と含む構造であれば、いかなる構造であってもよい。
【0083】
上記で説明した本開示の加飾品の製造方法にあっては、加飾シートと加飾対象物とを一体化した後に、加飾シートのみ、または加飾シートと加飾対象物とを合わせて、レーザーカッターなどでトリミング加工を施してもよい。
【0084】
<加飾シートと加飾対象物の組合せ>
本開示の加飾シートと加飾対象物の組合せは、上記「加飾品の製造方法」において説明した加飾シート10と加飾対象物100との組合せである。
【0085】
<画像形成シートと転写シートの組合せ>
本開示の画像形成シートと転写シートの組合せについて説明する。
【0086】
画像形成シートは、画像を形成するための画像形成層と、前記画像形成層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、を含む。一方で、転写シートは、前記画像形成シートへ転写可能な第2の紫外線遮断層を含む。
【0087】
そして、この画像形成シートの画像形成層に所望の方法によって画像を形成した後、この画像層上に転写シートを用いて第2の紫外線遮断層を転写することで、本開示の加飾シート、つまり、画像層が第1の紫外線遮断層と第2の紫外線遮断層とによって挟まれた、いわゆる「サンドイッチ構造」を有する加飾シートを製造できる。
【0088】
本開示の実施形態にかかる加飾シートは、画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、前記画像層の他方の面側に設けられた第2の紫外線遮断層と、を含み、下記(i)~(xi)の1つ、または複数を満たす。本開示の実施形態にかかる加飾シートが下記(i)~(xi)の複数を満たす場合、下記(i)~(xi)の何れを組み合わせてもよい。
(i)前記画像層は、昇華性染料を含む。
(ii)支持体、前記画像層、および保護層がこの順で積層されており、前記保護層が前記第1の紫外線遮断層であり、前記支持体が前記第2の紫外線遮断層である。
(iii)前記保護層の画像層とは反対側に接着層が設けられており、この接着層によって加飾対象物に接着されている。
(iv)前記保護層ではなく、前記接着層が第1の紫外線遮断層である。
(v)前記接着層が、粘着層である。
(vi)前記接着層が、ヒートシール層である。
(vii)前記支持体の一部が分離可能となっている。
(viii)前記支持体の画像層とは反対側に、直接または他の層を介して接着層が設けられており、この接着層によって加飾対象物に接着される。
(ix)前記支持体ではなく、前記接着層が第2の紫外線遮断層である。
(x)前記接着層が、粘着層である。
(xi)前記接着層が、ヒートシール層である。
【0089】
また、本開示の実施形態にかかる加飾品の製造方法は、画像が形成された画像層と、前記画像層の一方の面側に設けられた第1の紫外線遮断層と、前記画像層の他方の面側に設けられた第2の紫外線遮断層と、を含む加飾シートを準備する工程と、前記加飾シートと加飾対象物とを一体化させる工程と、を含み、下記(i)~(iii)の1つ、または複数を満たす。本開示の実施形態にかかる加飾品の製造方法が下記(i)~(iii)の複数を満たす場合、下記(i)~(iii)の何れを組み合わせてもよい。
(i)前記加飾シートが接着層を有しており、前記接着層を用いて加飾対象物と一体化させる。
(ii)さらに、前記加飾シートとは別の接着手段を準備する工程を含み、前記接着手段を用いて加飾シートと加飾対象物とを一体化させる。
(iii)さらに、前記加飾シートと加飾対象物とを一体化させる工程の後に、レーザーカッターにより加飾対象物を任意の形状にカットする工程を含む。
【実施例】
【0090】
実施例と比較例を挙げて本開示の加飾シートをさらに具体的に説明する。なお、特に断りのない限り、部または%質量基準であり、固形分に換算する前の値である。
【0091】
(実施例1)
・画像形成シートの製造
支持体として、以下の[支持体A]を準備した。支持体上に、以下の[プライマー層形成用塗工液A]を塗布・乾燥して、厚さ2μmのプライマー層を形成した。プライマー層上に、以下の[画像形成層用塗工液]を塗布・乾燥して、厚さ3μmの画像層を形成した。
【0092】
[支持体A]
・PET(E5100 東洋紡(株) 厚さ25μm)
【0093】
[プライマー層形成用塗工液A]
・ポリエステル(エリテール(登録商標)UE3200 ユニチカ(株)) 25.5部
・ベンゾトリアゾール 1.5部
(Tinuvin(登録商標)326 BASFジャパン社)
・ベンゾトリアゾール 3部
(Tinuvin(登録商標)928 BASFジャパン社)
・メチルエチルケトン 56部
・トルエン 14部
【0094】
[画像形成層用塗工液]
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 19部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株))
・有機変性シリコーン 1部
(X-22-3000T 信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 40部
【0095】
・保護層およびヒートシール層用の熱転写シートの製造
基材として、厚さ5μmの易接着層付きのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この基材の易接着層側に、下記組成の離型層用塗工液を、乾燥時の厚みが0.2μmになるように塗布・乾燥し離型層を形成した。次いで、離型層上の一部に、下記組成の[保護層形成用塗工液A]を乾燥時の厚みが1.5μmになるように塗布・乾燥し、保護層を形成した。保護層と面順次となるように、離型層上に下記組成のヒートシール層用塗工液を乾燥時の厚みが2.0μmになるように塗布・乾燥し、ヒートシール層を形成することで、保護層とヒートシール層が面順次に設けられた熱転写シートを得た。
【0096】
[離型層形成用塗工液]
・ポリビニルアルコール(PVA-110 (株)クラレ) 10部
・水 70部
・イソプロピルアルコール 20部
【0097】
[保護層形成用塗工液A]
・PMMA(ダイヤナール(登録商標)BR-83 三菱ケミカル(株)) 30部
・メチルエチルケトン 56部
・酢酸ノルマルプロピル 14部
【0098】
[ヒートシール層形成用塗工液A]
・ポリエステル(エリテール(登録商標)UE3380 ユニチカ(株)) 25.5部
・ベンゾトリアゾール 1.5部
(Tinuvin(登録商標)326 BASFジャパン社)
・ベンゾトリアゾール 3部
(Tinuvin(登録商標)928 BASFジャパン社)
・メチルエチルケトン 56部
・トルエン 14部
【0099】
・加飾シートの製造
上記の画像形成シートの画像形成層に以下の印画条件にて画像を印画し画像層を形成した。次いで、上記の保護層およびヒートシール層用の熱転写シートを用いて、画像層上に、保護層とヒートシール層とをこの順で転写した。なお、画像の印画、および保護層とヒートシール層の転写には、以下のプリンタを用いた。
【0100】
[印画条件]
昇華型熱転写プリンタ(DS620 大日本印刷(株))の純正リボンを用い、画像形成層にデフォルト条件でYe(イエロー)、Mg(マゼンタ)、Cy(シアン)、階調0~255のグラデーション画像の階調パターンの印画を行った。その後、画像の上に保護層とヒートシール層を55/255階調(エネルギー階調)のエネルギーで転写した。
【0101】
[プリンタ]
サーマルヘッド:KEE-57-12GAN2-STA(京セラ(株))
発熱体平均抵抗値:3303(Ω)
主走査方向印字密度:300(dpi)
副走査方向印字密度:300(dpi)
ライン周期:3.0(msec./line)
印字開始温度:35(℃)
パルスDuty比:85(%)
印画電圧:18.0(V)
【0102】
[保護層形成用塗工液A]
・PMMA(ダイヤナール(登録商標)BR-83 三菱ケミカル(株)) 30部
・メチルエチルケトン 56部
・酢酸ノルマルプロピル 14部
【0103】
[ヒートシール層形成用塗工液A]
・ポリエステル(エリテール(登録商標)UE3380 ユニチカ(株)) 25.5部
・ベンゾトリアゾール 1.5部
(Tinuvin(登録商標)326 BASFジャパン社)
・ベンゾトリアゾール 3部
(Tinuvin(登録商標)928 BASFジャパン社)
・メチルエチルケトン 56部
・トルエン 14部
【0104】
・加飾品の製造
加飾対象物として、以下の[加飾対象物A]を準備した。上記加飾シートのヒートシール層が加飾対象物に接するようにして加飾対象物と加飾シートを重ね、加飾シートの支持体側から加熱することで加飾対象物と加飾シートを一体化して加飾品を得た。
【0105】
[加飾対象物A]
・厚さ2mmのアクリル板(パラグラス クラレ(株))
【0106】
(実施例2)
[支持体A]にかえて、以下の[支持体B]を用い、支持体上にプライマー層は形成せず、接着手段として以下の[両面テープA]を準備し、この両面テープを介して、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化したこと以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0107】
[支持体B]
・厚さ20μmのUV拡散剤含有PET
(Melinex(登録商標)389 デュポン(株))
【0108】
[両面テープA]
・UVカット粘着(MHM-UVC100 日栄加工(株))
【0109】
(実施例3)
[支持体A]にかえて、上記の[支持体B]を用い、[保護層形成用塗工液A]にかえて、以下の[保護層形成用塗工液B]を用い、接着手段として以下の[両面テープB]を準備し、この両面テープを介して、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化したこと以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0110】
[保護層形成用塗工液B]
・PMMA(ダイヤナール(登録商標)BR-83 三菱ケミカル(株)) 25.5部
・ベンゾトリアゾール 4.5部
(Tinuvin(登録商標)928 BASFジャパン社)
・メチルエチルケトン 56部
・酢酸ノルマルプロピル 14部
【0111】
[両面テープB]
・基材レス高透明両面テープ(ZB7010W-10 DIC(株))
【0112】
(実施例4)
[支持体A]にかえて、上記の[支持体B]を用い、[保護層形成用塗工液A]にかえて、上記の[保護層形成用塗工液B]を用いたこと以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0113】
(実施例5)
ヒートシール層を形成することなく、接着手段として以下の[マウントフィルムA]を準備し、このマウントフィルムを介して、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0114】
[マウントフィルムA]
・マウント用両面粘着シート(A-357ZC Lintec社)
【0115】
(実施例6)
[保護層形成用塗工液A]にかえて、上記の[保護層形成用塗工液B]を用い、ヒートシール層を形成することなく、接着手段として以下の[マウントフィルムB]を準備し、このマウントフィルムを介して、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0116】
[マウントフィルムB]
・マウント用両面粘着シート(E-339ZC Lintec社)
【0117】
(実施例7)
[保護層形成用塗工液A]にかえて、上記の[保護層形成用塗工液B]を用い、ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムA]を準備し、このマウントフィルムを介して、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0118】
(実施例8)
[支持体A]にかえて、上記の[支持体B]を用い、支持体上にプライマー層は形成せず、[保護層形成用塗工液A]にかえて、上記の[保護層形成用塗工液B]を用い、ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムB]を準備し、このマウントフィルムを介して、加飾シートを支持体側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0119】
(実施例9)
[プライマー層形成用塗工液A]にかえて、以下の[プライマー層形成用塗工液B]を用い、[保護層形成用塗工液A]にかえて、上記の[保護層形成用塗工液B]を用い、ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムA]を準備し、このマウントフィルムを介して、加飾シートを支持体側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0120】
[プライマー層形成用塗工液B]
・ポリエステル(エリテール(登録商標)UE3200 ユニチカ(株)) 30部
・メチルエチルケトン 56部
・トルエン 14部
【0121】
(実施例10)
ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムA]を準備し、[加飾対象物A]にかえて以下の[加飾対象物B]を準備し、これらを用いて、加飾シートを支持体側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0122】
[加飾対象物B]
・厚さ1.5mmのソーダライムガラス
(スライドガラスS9224 松波硝子工業(株))
【0123】
(実施例11)
ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムA]を準備し、[加飾対象物A]にかえて以下の[加飾対象物C]を準備し、これらを用いて、加飾シートを支持体側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0124】
[加飾対象物C]
・厚さ1.5mmのアルミニウム板(合金番号A1070 UACJ社)
【0125】
(比較例1)
[プライマー層形成用塗工液A]にかえて、上記の[プライマー層形成用塗工液B]を用い、[ヒートシール層形成用塗工液A]にかえて、上記の[ヒートシール層形成用塗工液B]を用いた以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0126】
(比較例2)
[プライマー層形成用塗工液A]にかえて、上記の[プライマー層形成用塗工液B]を用いた以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0127】
(比較例3)
ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムB]を準備し、このマウントフィルムを介して、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0128】
(比較例4)
[支持体A]にかえて、上記の[支持体B]を用い、[プライマー層形成用塗工液A]にかえて、上記の[プライマー層形成用塗工液B]を用い、ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムB]を準備し、このマウントフィルムを介して、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0129】
(比較例5)
[プライマー層形成用塗工液A]にかえて、上記の[プライマー層形成用塗工液B]を用い、ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムB]を準備し、[加飾対象物A]にかえて、上記の[加飾対象物B]を準備し、これらを用いて、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0130】
(比較例6)
[プライマー層形成用塗工液A]にかえて、上記の[プライマー層形成用塗工液B]を用い、ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムB]を準備し、[加飾対象物A]にかえて、上記の[加飾対象物C]を準備し、これらを用いて、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0131】
(比較例7)
ヒートシール層を形成することなく、接着手段として上記の[マウントフィルムB]を準備し、[加飾対象物A]にかえて、上記の[加飾対象物C]を準備し、これらを用いて、加飾シートを保護層側から加飾対象物と一体化した以外は、すべて実施例1と同じ条件にて加飾品を得た。
【0132】
(耐光性評価)
上記各実施例および各比較例の加飾品について、JEITA CP-3901Bに準拠する耐光性試験を実施し、算出された寿命年齢に基づいて耐光性の評価を行った。なお、この評価は、画像層の上側つまり保護層側からと、画像層の下側つまり支持体側からの双方側から行った。
・評価基準
A:寿命年齢が10年以上である。
B:寿命年齢が5年以上10年未満である。
C:寿命年齢が1年以上5年未満である。
NG:寿命年齢が1年未満である。
【0133】
(透過率の測定)
上記各実施例および各比較例の加飾品について、紫外可視分光光度計(UV-3100PC (株)島津製作所)に積分球付属装置(ISR-3100 (株)島津製作所)を取り付けた装置により透過率を測定した。より具体的には、厚さ5mmの透明ガラス板(GB300 アズワン(株))を用意し、このガラス板上に各実施例および各比較例の加飾品を固定し、当該装置の試料光束側に設置し、対照光束側にブランクとして、各実施例および各比較例の加飾品で用いられている加飾対象物と同じものを設置して、透過率を測定した。
【0134】
各実施例と各比較例の加飾品の層構成と耐光性評価と透過率の測定の結果を以下の表1と表2にまとめる。
【0135】
【0136】
【0137】
なお、表1および表2中の灰色に着色された部分は、紫外線遮断層として機能している層である。また、表1および表2中の各層の下にかっこ書きで記載されている数字(%)は、その層が単層の状態の場合における300nm~400nmの波長領域での平均透過率を示している。
【0138】
上記の表からも、本開示の加飾シートを用いて製造した加飾品は、画像層が第1の紫外線遮断層と第2の紫外線遮断層とによって挟まれた、いわゆる「サンドイッチ構造」を有しているため、画像層の上側からと下側、いずれの側からの耐光性も優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0139】
10・・・加飾シート
11・・・画像層
12・・・第1の紫外線遮断層
13・・・第2の紫外線遮断層
14・・・支持体
15・・・保護層
16・・・接着層
100・・・加飾対象物