(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】化粧シート及びこれを用いた化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241119BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241119BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241119BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241119BHJP
A61K 8/02 20060101ALN20241119BHJP
A61K 8/49 20060101ALN20241119BHJP
A61Q 17/04 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 E
B32B7/023
B32B27/18 A
A61K8/02
A61K8/49
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2020065367
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小紫 真友子
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171835(JP,A)
【文献】特開2019-155777(JP,A)
【文献】特開2019-181933(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203956(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/067569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A61K 8/02
A61K 8/49
A61Q 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護層、ポリプロピレン系樹脂を含む透明性樹脂層、及びポリプロピレン系樹脂を含む基材層をこの順に有し、
前記表面保護層は、トップコート層と、前記トップコート層より前記透明性樹脂層側に位置するプライマー層とを有し、前記トップコート層、前記プライマー層及び前記透明性樹脂層が紫外線吸収剤を含み、
JIS K0115:2004に準拠して測定した、前記表面保護層の波長270~300nm
の1nmごとの吸光度の平均値である吸光度A1が0.6以上
3.0以下であり、JIS K0115:2004に準拠して測定した、前記表面保護層及び前記透明性樹脂層の波長270~300nm
の1nmごとの吸光度の平均値である吸光度A2が1.2以上
4.0以下である、化粧シート。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤がトリアジン系紫外線吸収剤
である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記トリアジン系紫外線吸収剤として、下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含む、請求項2に記載の化粧シート。
【化1】
【請求項4】
前記
トップコート層が、前記
トップコート層を構成する樹脂と重合可能なエチレン性二重結合を有するラジカル捕捉剤iと、前記表面保護層を構成する樹脂と重合可能なエチレン性二重結合を有さないラジカル捕捉剤iiとを含む、請求項1~3の何れかに記載の化粧シート。
【請求項5】
前記表面保護層を構成する樹脂としてポリプロピレン系樹脂を実質的に含有しない請求項1~4の何れかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記トップコート層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含む
、請求項1~5の何れかに記載の化粧シート。
【請求項7】
前記基材層と前記透明性樹脂層との間に装飾層を有する請求項1~
6の何れかに記載の化粧シート。
【請求項8】
被着材と請求項1~
7の何れかに記載の化粧シートとを有する化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及びこれを用いた化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の内装部材や外装部材、あるいは、家具、造作部材、家電製品等の表面を装飾したり保護したりするために、化粧シートが用いられている。化粧シートは、例えば、基材上に表面保護層を有する構成を備えている。
【0003】
これら化粧シートは、屋外用途や、室内用途でも窓際等で日光に晒される用途では、紫外線の影響により色調の変化や樹脂の劣化を招く。このため、耐候性を向上させることを目的として、化粧シートの表面保護層中に紫外線吸収剤を添加している。
【0004】
しかし、紫外線吸収剤は経時的に表面保護層からブリードアウト(「bleed out」又は「移行」とも言う。)しやすいという問題がある。紫外線吸収剤がブリードアウトすると、化粧シート表面の美観が損なわれるとともに、経時的に表面保護層中の紫外線吸収剤濃度が低下して耐候性が不十分になるという問題がある。紫外線吸収剤のブリードを解消するために、例えば特許文献1が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の化粧シートは、電子線硬化型樹脂を主成分とした樹脂の硬化層中に、特定のベンゾトリアゾール系化合物等から選ばれる電子線反応型紫外線吸収剤を含有するものである。特許文献1の化粧シートでは、紫外線吸収剤のブリードアウトの問題は解消し得る。
【0007】
一方、化粧シートにはエンボス加工、折り曲げ、成形等の加工適性が求められる場合が多く、近年、加工適性に優れるポリプロピレン系樹脂を含む層を積層し、そこにさらに表面保護層を積層した化粧シートが提案されている。このようなポリプロピレン系樹脂を含む層を積層してなる化粧シートに特許文献1の表面保護層を適用した場合、表面保護層中の紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制されていたとしても、化粧シートの紫外線による経時劣化を抑制することができない場合が多発した。
【0008】
本発明は、このような状況下になされたもので、ポリプロピレン系樹脂を含む層を積層してなる化粧シート及びこれを用いた化粧材において、紫外線による経時劣化を抑制することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明は、以下の[1]~[2]を提供する。
[1]表面保護層、ポリプロピレン系樹脂を含む透明性樹脂層、及びポリプロピレン系樹脂を含む基材層をこの順に有し、JIS K0115:2004に準拠して測定した、前記表面保護層の波長270~300nmにおける吸光度A1が0.6以上であり、JIS K0115:2004に準拠して測定した、前記表面保護層及び前記透明性樹脂層の波長270~300nmにおける吸光度A2が1.2以上である、化粧シート
[2]被着材と前記[1]に記載の化粧シートとを有する化粧材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂を含む層を積層してなる化粧シートにおいて、紫外線による経時劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の化粧シートの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[化粧シート]
本発明の化粧シートは、表面保護層、ポリプロピレン系樹脂を含む透明性樹脂層、及びポリプロピレン系樹脂を含む基材層をこの順に有し、JIS K0115:2004に準拠して測定した、前記表面保護層の波長270~300nmにおける吸光度A1が0.6以上であり、JIS K0115:2004に準拠して測定した、前記表面保護層及び前記透明性樹脂層の波長270~300nmにおける吸光度A2が1.2以上であるものである。
【0013】
本明細書において、「JIS K0115:2004に準拠して測定した、表面保護層の波長270~300nmにおける吸光度A1」のことを「吸光度A1」、「JIS K0115:2004に準拠して測定した、表面保護層及び透明性樹脂層の波長270~300nmにおける吸光度A2」のことを「吸光度A2」と称する場合がある。また、本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂を含む透明性樹脂層」のことを「透明性樹脂層」、「ポリプロピレン系樹脂を含む基材層」のことを「基材層」と称する場合がある。また、本明細書において、「AA~BB」の表記は、特に言及しない限り、「AA以上BB以下」であることを意味する。
【0014】
図1は、本発明の化粧シート100の実施の形態を示す断面図である。
図1の化粧シート100は、表面保護層10、ポリプロピレン系樹脂を含む透明性樹脂層20、及びポリプロピレン系樹脂を含む基材層40をこの順に有している。また、
図1の化粧シート100の表面保護層10は、トップコート層11及びプライマー層12から構成されている。また、
図1の化粧シート100は、基材層40と透明性樹脂層20との間に装飾層30を有している。
【0015】
<吸光度>
本発明の化粧シートは、吸光度A1を0.6以上として、かつ、吸光度A2を1.2以上としている。吸光度A1が大きいことは、表面保護層に近い側に位置するポリプロピレン系樹脂を含む層(透明性樹脂層)に到達する波長270~300nmの光が少ないことを意味し、吸光度A2が大きいことは、表面保護層に遠い側に位置するポリプロピレン系樹脂を含む層(基材層)に到達する波長270~300nmの光が少ないことを意味している。
従来の化粧シートは、通常、表面保護層(トップコート層やプライマー層)のみに紫外線吸収剤を添加する設計を行っていた。つまり、従来の化粧シートは、吸光度A1のみに関する設計を行っていた。しかし、吸光度A1のみの設計では、化粧シートの耐候性向上には限界があった。即ち、紫外線吸収剤は、種類によりブリードアウトのしやすさに差はあるが、何れも、層中から層外へのブリードアウトにより経時的に失われ、その濃度が低下する。その為、表面保護層の内側に位置する層の紫外線による劣化を短期的には抑制できても、長期間に渡って抑制できなかった。通常、耐候性とは、紫外線を含む日光に曝露された状態で、化粧シート全体の紫外線に起因する劣化が予め想定する所定の程度に達するまでの時間で評価される。従って、表面保護層の吸光度A1のみ高くする設計では耐候性向上には限界があった。また、経時的な紫外線吸収剤のブリードアウトを見越して、表面保護層中の紫外線吸収剤の量を余分に添加することで耐候性を向上する設計も考えられるが、その場合、紫外線吸収剤の過剰添加に起因する表面保護層の耐擦傷性、耐汚染性等の物性が低下するとともに、過剰量の紫外線吸収剤がブリードアウトすることによる表面の白濁等の外観劣化等の問題があった。
そこで、本発明では、表面保護層のみならず、透明性樹脂層にも紫外線吸収剤を添加し、2種類の吸光度(吸光度A1及び吸光度A2)を特定の範囲とすることで、長期耐候性の問題を解消しつつ、ブリードアウトを生じにくくしている。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂は270~300nmの紫外線で著しく劣化する。そこで、その特定波長範囲の紫外線をカットするような紫外線吸収剤を配合することにより、ポリプロピレン系樹脂を用いた化粧シートに長期耐久性を付与することができる。
【0017】
吸光度A1は0.6以上であることを要する。吸光度A1が0.6未満の場合、ポリプロピレン系樹脂を含む透明性樹脂層、及びポリプロピレン系樹脂を含む基材層が紫外線で経時劣化し、化粧シートの耐候性を良好にすることができない。
吸光度は0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0018】
また、吸光度A1は、ブリードアウトを抑制する観点から5.0以下であることが好ましい。
吸光度A1が大きいことは、表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量が多いこと、あるいは、表面保護層の膜厚が厚いことを意味する。表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量が多い場合、ブリードアウトや表面保護層の耐擦傷性が低下する傾向があり、表面保護層の膜厚が厚い場合、化粧シートの加工適性が低下する傾向がある。すなわち、吸光度A1が5.0を超える場合、紫外線吸収剤のブリードアウト、耐擦傷性の低下及び加工適性の低下から選ばれる何れかの不具合が生じやすくなる。
吸光度A1は4.5以下であることがより好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
【0019】
吸光度A2は1.2以上であることを要する。吸光度A2が1.2未満の場合、ポリプロピレン系樹脂を含む基材層が紫外線で経時劣化し、化粧シートの耐候性を良好にすることができない。
吸光度A2は1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましい。
【0020】
また、吸光度A2は、ブリードアウトを抑制する観点から5.0以下であることが好ましい。
本発明では、吸光度A2が5.0を超える場合、化粧シートから紫外線吸収剤がブリードアウトしやすくなる。
吸光度A2は4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることがより好ましい。
【0021】
吸光度A1及び吸光度A2は、例えば、紫外線吸収剤の含有割合、及び紫外線吸収剤を含む層の厚みにより調整できる。
【0022】
吸光度A2は、JIS K0115:2004に準拠して、透明性樹脂層上に表面保護層を形成した積層体の波長270~300nmにおいて測定した吸光度の平均値とする。本明細書において、波長270~300nmの吸光度の平均値は、波長270~300nmについて1nmごとに吸光度(合計31個の吸光度)を測定した際のこれらの平均値とする。
吸光度A1は、JIS K0115:2004に準拠して、透明性樹脂層の波長270~300nmにおける吸光度A0を測定し、吸光度A2から吸光度A0を減ずることにより得られる(吸光度A1=吸光度A2-吸光度A0)。なお、吸光度A0は、透明性樹脂層の波長270~300nmにおいて測定した吸光度の平均値である。
【0023】
<表面保護層>
表面保護層は、透明性樹脂層の基材層とは反対側の面に位置する層である。表面保護層は、単層で形成されていてもよいし、
図1のように2層以上から形成されていてもよい。
なお、本明細書において、表面保護層のうち透明性樹脂層から最も離れた層のことを「トップコート層」と称する。すなわち、表面保護層が単層から形成されている場合、表面保護層はトップコート層の単層構造となる。また、表面保護層が2層以上から形成されている場合、トップコート層と透明性樹脂層との間に位置する層は、表面保護層を構成する層のうちのトップコート層以外の層であることを意味する。
トップコート層は硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
表面保護層は、トップコート層より透明性樹脂層側に位置するプライマー層を有することが好ましい。表面保護層をトップコート層及びプライマー層から形成し、かつ、トップコート層及びプライマー層の両層に紫外線吸収剤を含有させることにより、紫外線による経時劣化を抑制しつつ、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制しやすくできる。
【0024】
表面保護層は、主として樹脂から構成される。
表面保護層を構成する樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を実質的に含有しないことが好ましい。本発明では、吸光度A1を規定することによって透明性樹脂層に到達する波長270~300nmの光を十分に制限しているが、表面保護層には透明性樹脂層よりも多い量の波長270~300nmの光が到達している。このため、表面保護層を構成する樹脂としてポリプロピレン系樹脂を実質的に含有しないことにより、表面保護層の耐候性を良好にしやすい点で好ましい。
ポリプロピレン系樹脂を実質的に含有しないとは、表面保護層を構成する全樹脂成分に対して、ポリプロピレン系樹脂の割合が1質量%以下であることを意味し、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0025】
《紫外線吸収剤》
表面保護層及び透明性樹脂層の少なくとも何れかには紫外線吸収剤を含有することが好ましく、表面保護層及び透明性樹脂層の両方に紫外線吸収剤を含有することがより好ましい。
表面保護層が2層以上から形成される場合、少なくともトップコート層中に紫外線吸収剤を含有することが好ましく、表面保護層を構成する全ての層に紫外線吸収剤を含有することがより好ましい。
なお、以下の紫外線吸収剤に関する実施形態は、特に断りがない限り、表面保護層の紫外線吸収剤及び透明性樹脂層の紫外線吸収剤に共通する実施形態である。
【0026】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、耐候性能の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
すなわち、本発明の化粧シートは、表面保護層及び透明性樹脂層の少なくとも何れかにトリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。また、本発明の化粧シートは、表面保護層及び前記透明性樹脂層の少なくとも何れかにヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含むことがより好ましい。
また、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の反応性官能基を有する紫外線吸収剤は、ブリードアウトを抑制しやすい点で好ましい。
【0027】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、下記一般式(1)のものが挙げられる。
【0028】
【0029】
一般式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は-O-C(=O)R15で示されるアシルオキシ基であり、R13、R14及びR15は各々独立して水素原子又は1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して0~5の整数である。また、R13及びR14が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。
R11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基が好ましく、その炭素数は好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。これらの脂肪族炭化水素基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、耐候性の観点から直鎖状、分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0030】
R13及びR14は、耐候性の観点から水素原子が好ましい。また、R13及びR14が1価の有機基の場合、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基等が好ましく挙げられ、耐候性の観点から、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基、中でもフェニル基が好ましい。
R15は、耐候性の観点から1価の有機基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基等が好ましく挙げられ、耐候性の観点から、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。R15の1価の有機基がアルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基の場合、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、耐候性の観点から直鎖状、分岐状が好ましく、またその炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
【0031】
一般式(1)のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、下記一般式(1-1)のものが挙げられる。下記一般式(1-1)のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、商品名「Tinuvin479」として、BASF社から入手可能である。
【0032】
【0033】
また、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、下記一般式(2)のものも挙げられる。
一般式(2)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物は、分子中にエステル結合を含まないため、分子構造が変位しにくい。このため、一般式(2)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物は、一般式(1)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物よりも、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持において優れる点で好ましい。
なお、エステル結合を起点とする分子構造の変異は、酸性条件が起因すると考えられる。このため、一般式(2)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物は、酸性雨に晒される屋外での使用時において、優れた効果を発揮し得る。
【0034】
【0035】
一般式(2)中、R21は1価の有機基であり、R21は水素原子又は1価の有機基であり、R22及びR23は各々独立して水酸基又は1価の有機基であり、n21、n22及びn23は各々独立して1~5の整数である。また、R21、R22及びR23が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。
【0036】
R21、R22及びR23の1価の有機基としては、上記一般式(1)中のR13、R14の1価の有機基として例示したものが好ましく挙げられ、耐候性の観点から、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。この場合、R21、R22及びR23の1価の有機基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、耐候性の観点から直鎖状、分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。また、その炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。
また、n21、n22及びn23は2以上が好ましく、複数のR21、R22及びR23は同じでも異なっていてもよく、耐候性の観点から、複数のR21は同じであることが好ましく、R22及びR23は異なっていることが好ましい。異なるR22及びR23はその内の一つが水素原子であることが好ましい。また、R21、R22及びR23が1価の有機基である場合、同じ有機基であることが好ましい。
【0037】
一般式(2)のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、下記一般式(2-1)のものが挙げられる。一般式(2-1)のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、商品名「Tinuvin1600」として、BASF社から入手可能である。
【0038】
【0039】
表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量は、吸光度A1を0.6以上にできる限り特に限定されない。表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量を所定量以上とすることにより、吸光度A1を0.6以上にしやすくできる。また、表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量を所定量以下とすることにより、ブリードアウトを抑制しやすくできる。
表面保護層を構成するトップコート層中の紫外線吸収剤の含有量は、トップコート層を構成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以上7.0質量部以下がさらに好ましく、3.0質量部以上5.0質量部以下がよりさらに好ましい。
また、表面保護層を構成するその他の層が紫外線吸収剤を含有する場合、該その他の層における紫外線吸収剤の含有量は、該その他の層を構成する樹脂100質量部に対して1質量部以上40質量部以下が好ましく、5質量部以上30質量部以下がより好ましく、7質量部以上25質量部以下がさらに好ましい。該その他の層としては、例えば、プライマー層が挙げられる。
【0040】
《ラジカル捕捉剤》
表面保護層及び透明性樹脂層の少なくとも何れかはラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。表面保護層は、化粧シートを構成する層のうち紫外線が最初に入射する層であるため、ラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。表面保護層が多層構造の場合、トップコート層がラジカル捕捉剤を含むことが好ましい。
なお、以下のラジカル捕捉剤に関する実施形態は、特に断りがない限り、表面保護層のラジカル捕捉剤及び透明性樹脂層のラジカル捕捉剤に共通する実施形態である。
【0041】
ラジカル捕捉剤としては、芳香族系ラジカル捕捉剤、アミン系ラジカル捕捉剤、有機酸系ラジカル捕捉剤、カテキン系ラジカル捕捉剤及びヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が挙げられ、これらの中でもヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が好ましい。ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤とは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を分子内に含む構造を有するものである。
【0042】
表面保護層がラジカル捕捉剤を含む場合、当該ラジカル捕捉剤として、表面保護層を構成する樹脂と重合可能なエチレン性二重結合を有するラジカル捕捉剤iと、表面保護層を構成する樹脂と重合可能なエチレン性二重結合を有さないラジカル捕捉剤iiとを含むことが好ましい。
エチレン性二重結合は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びアリル基などの官能基が有している。
【0043】
ラジカル捕捉剤iのみを用いた場合、表面保護層中のラジカル捕捉剤はほぼ全て固定化された状態となり、表面保護層内を自由に動けるラジカル捕捉剤がほぼ存在しなくなるため、ラジカルを捕捉する性能が発揮されにくくなる。一方、ラジカル捕捉剤iは表面保護層を構成する樹脂と重合するため、表面保護層を構成する樹脂が硬化物(特に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物)を含む場合、ラジカル捕捉剤iによって、硬化物(特に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物)の架橋密度が低下し、耐擦傷性が低下しやすくなる。
一方、ラジカル捕捉剤iiのみを用いた場合、ラジカル捕捉剤iiが表面保護層から経時的にブリードアウトしやすいことから、化粧シート表面の美観が低下したり、ラジカルを捕捉する性能を長期に渡って維持しにくくなる。
したがって、表面保護層が、ラジカル捕捉剤i及びラジカル捕捉剤iiを含むことにより、ラジカル捕捉性、耐擦傷性、ブリードアウトの抑制の観点で好ましい。表面保護層が多層構造の場合、トップコート層がラジカル捕捉剤i及びラジカル捕捉剤iiを含むことが好ましい。
【0044】
ラジカル捕捉剤iとラジカル捕捉剤iiとの質量基準による配合比は、8:2~2:8であることが好ましい。
ラジカル捕捉剤iが8に対して、ラジカル捕捉剤iiを2以上とすることにより、耐候性をより良好にし得るとともに、表面保護層の硬化物の架橋密度が低下することを抑制しやすくできる。また、ラジカル捕捉剤iが2に対して、ラジカル捕捉剤iiを8以下とすることにより、ラジカル捕捉剤iiのブリードアウトを抑制しやすくできる。
【0045】
表面保護層を構成するトップコート層中のラジカル捕捉剤の含有量は、トップコート層を構成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上8質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
また、表面保護層を構成するその他の層がラジカル捕捉剤を含有する場合、該その他の層におけるラジカル捕捉剤の含有量は、該その他の層を構成する樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上8質量部以下がより好ましく、1質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
【0046】
ラジカル捕捉剤iは、表面保護層を構成する樹脂と重合可能なエチレン性二重結合を有するものである。エチレン性二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基、ビニル基及びアリル基が挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。すなわち、ラジカル捕捉剤iは、(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
ラジカル捕捉剤i中のエチレン性二重結合の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2以上であってもよい。また、ラジカル捕捉剤iは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0047】
エチレン性二重結合を1つ有するラジカル捕捉剤iとしては、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン及び4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、CAS番号1010692-24-6の化合物及びCAS番号1010692-21-3の化合物が挙げられる。
エチレン性二重結合を2以上有するラジカル捕捉剤iとしては、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、CAS番号1954659-42-7の化合物及びCAS番号1010692-23-5の化合物が挙げられる。
【0048】
ラジカル捕捉剤iiは、表面保護層を構成する樹脂と重合可能なエチレン性二重結合を有さないものである。ラジカル捕捉剤iiは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0049】
ラジカル捕捉剤iiとしては、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル)-2-n-ブチルマロネート等が挙げられる。
【0050】
《トップコート層》
トップコート層は、化粧シートの耐擦傷性を高めるために、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
また、トップコート層を構成する全樹脂成分に対して、硬化性樹脂組成物の硬化物の割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
硬化性樹脂の硬化物は、熱硬化性樹脂の硬化物、電離放射線硬化性樹脂の硬化物、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、トップコート層の架橋密度を高め、耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。また、無溶媒で塗布することができ、取り扱いが容易との観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の中でも電子線硬化性樹脂組成物の硬化物がより好ましい。
【0052】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0053】
-電離放射線硬化性樹脂-
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性化合物は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0054】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2以上3以下がよりさらに好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0056】
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
【0057】
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、2以上8以下のものが好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下がよりさらに好ましい。
また、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0058】
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
トップコート層の厚みは、加工特性、耐擦傷性及び耐候性のバランスの観点から、1.5μm以上20μm以下が好ましく、2μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0060】
《プライマー層》
本実施形態の化粧シートは、表面保護層として、トップコート層の他に、トップコート層より透明性樹脂層側に形成されてなるプライマー層を有することが好ましい。プライマー層によって、トップコート層と透明性樹脂層との密着性を向上することができる。
【0061】
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等の添加剤を含有してもよい。
バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体とアクリルポリオール樹脂との混合物をバインダー樹脂として用いることができる。
【0062】
プライマー層の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上6μm以下がさらに好ましい。
【0063】
<透明性樹脂層>
透明性樹脂層はポリプロピレン系樹脂を含む層であり、表面保護層と基材層との間に位置する。
透明性樹脂層中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、加工適性の観点から、透明性樹脂層の全樹脂成分に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0064】
透明性樹脂層のポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0065】
透明性樹脂層がポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を含む場合、例えば、ポリプロピレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0066】
透明性樹脂層中には、上述したように、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。
透明性樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量は、吸光度A2を1.2以上にできる限り特に限定されない。
なお、透明性樹脂層の厚みが後述の範囲である場合、透明性樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量は、透明性樹脂層を構成する樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下が好ましく、0.07質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.09質量部以上3質量部以下がさらに好ましく、0.10質量部以上1質量部以下がよりさらに好ましい。
また、透明性樹脂層の厚みが後述の範囲である場合、透明性樹脂層中のラジカル捕捉剤の含有量は、透明性樹脂層を構成する樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上8質量部以下がより好ましく、1質量部以上5質量部以下がさらに好ましく、1.5質量部以上3質量部以下がよりさらに好ましい。
【0067】
透明性樹脂層は、透明性樹脂層よりも基材層側を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明及び半透明であってもよい。
【0068】
透明性樹脂層の厚みは、耐擦傷性、加工適正及び耐候性のバランスの観点から、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下がさらに好ましい。
また、透明樹脂層の厚みは、装飾層を保護し、かつ優れた耐擦傷性を得る観点から、基材層よりも厚くすることが好ましい。
【0069】
<基材層>
基材層はポリプロピレン系樹脂を含む層であり、透明性樹脂層の表面保護層とは反対側に位置する。
基材層中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、加工適性の観点から、基材層の全樹脂成分に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0070】
基材層のポリプロ系樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0071】
基材層がポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を含む場合、例えば、ポリプロピレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0072】
基材層は無色透明であってもよいが、意匠性の観点から着色されていることが好ましい。
基材層を着色する場合、基材層中には、染料、顔料等の着色剤を添加することができる。これら着色剤の中では、退色を抑制しやすい顔料が好ましい。
顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト等の白色顔料;カーボンブラック等の黒色顔料;鉛丹、酸化鉄赤等の赤色顔料;
黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)等の黄色顔料;ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料;等が挙げられる。
【0073】
着色剤の含有量は、例えば、基材層を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下が好ましく、3質量部以上40質量部以下がより好ましく、5質量部以上30質量部以下がさらに好ましく、5質量部以上20質量部以下がよりさらに好ましい。
【0074】
基材層には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機充填剤、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜調整できる。
なお、本発明では、吸光度A1及びA2を所定の範囲としていることから、基材層に紫外線吸収剤及びラジカル捕捉剤を含有させなくても基材層の耐候性を良好にできる点で好適である。
【0075】
基材層の厚みは、意匠性及び加工適性のバランスの観点から、20μm以上150μm以下が好ましく、25μm以上120μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下がさらに好ましく、40μm以上80μm以下がよりさらに好ましい。
【0076】
基材層は、化粧シートの他の層や被着材との密着性を高めるために、基材層の片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したり、プライマー層を形成したりしてもよい。
【0077】
<装飾層>
本発明の化粧シートは、意匠性を向上させる観点から、化粧シートの任意の箇所に装飾層を有することが好ましい。装飾層を形成する箇所は、装飾層の耐候性を高める観点から、基材層と透明性樹脂層との間であることが好ましい。
【0078】
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよいし、またこれらを組み合わせたものであってもよい。
【0079】
装飾層に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等を適宜混合したものが使用される。
装飾層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
【0080】
着色剤としては、隠蔽性及び耐候性に優れる顔料が好ましい。顔料は基材層で例示したものと同様のものを用いることができる。
基材層中の着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
【0081】
装飾層は、耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等の耐候剤を含むことが好ましい。
【0082】
装飾層の厚みは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下がさらに好ましい。
【0083】
<接着剤層A>
基材層と透明性樹脂層との間には、両層の密着性を向上するために接着剤層Aを形成することが好ましい。
なお、基材層と透明性樹脂層との間に、さらに、上述した装飾層を有する場合、接着剤層Aと装飾層との位置関係は特に限定されない。具体的には、基材層に近い側から装飾層、接着剤層Aを順に有していてもよいし、基材層に近い側から接着剤層A、装飾層を順に有していてもよい。
【0084】
接着剤層Aは、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤から構成することができる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、上記の各種イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
【0085】
接着剤層Aの厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0086】
上述した装飾層、接着剤層A、プライマー層及びトップコート層は、各層を形成する組成物を含む塗布液を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成することができる。
【0087】
本発明の化粧シートは、エンボス加工等で凹凸を付与してもよい。
エンボス加工を行う場合、例えば、化粧シートを好ましくは80℃以上260℃以下、より好ましくは100℃以上220℃以下、さらに好ましくは120℃以上200℃以下に加熱し、化粧シートにエンボス版を押圧して、エンボス加工を行うことができる。エンボス版を押圧する箇所は、化粧シートの表面保護層側とすることが好ましい。
【0088】
[化粧材]
本発明の化粧材は、被着材と上記の本発明の化粧シートとを有するものであり、具体的には、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材層側の面とを対向させて積層したものである。
【0089】
<被着材>
被着材としては、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。例えば、杉、檜、松、ラワン等の各種木材から成る木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。本発明の化粧材は、被着材がポリプロピレン系樹脂を含む場合に、被着材としての耐候性を良好にし得る点で好ましい。
【0090】
被着材は、上記のなかから用途に応じて適宜選択すればよい。
なお、壁、天井、床等の建築物の内装又は外装用部材;窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具乃至造作部材;として被着材を用いる場合には、被着材の材質は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。また、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具として被着材を用いる場合には、被着材の材質は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
【0091】
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mmがより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0092】
<接着剤層B>
被着材と化粧シートとは、優れた接着性を得るため、接着剤層Bを介して貼り合わせられることが好ましい。
【0093】
接着剤層Bに用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。この接着剤層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も適用し得る。
また、接着剤層Bには、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
【0094】
接着剤層Bの厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
【実施例】
【0095】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0096】
1.評価及び測定
1-1.吸光度
紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、商品名:U-4000)を用いて、JIS K0115:2004に準拠して、透明性樹脂層上に表面保護層を形成した積層体の波長270~300nmの吸光度A2を測定し平均値を算出した。また、透明性樹脂層の波長270~300nmの吸光度A0を同手段で測定し、吸光度A2から吸光度A0を減じて、表面保護層の波長270~300nmの吸光度A1を算出した。
【0097】
1-2.耐候性
下記の超促進耐候性試験装置を用いて、実施例及び比較例で得られた化粧シートに対して、ブラックパネル温度63℃、照度100mW/cm2の条件で20時間紫外線を照射した後、4時間結露させるサイクルを繰り返した。1000時間及び1400時間経過後に、化粧シートの外観を下記基準にて目視で評価した。
<超促進耐候性試験装置>
UVランプ(商品名:M04-L21WB/SUV、岩崎電気社製)、ランプジャケット(商品名:WJ50-SUV、岩崎電気社製)及び照度計(商品名:UVD-365PD、岩崎電気社製)を備えてなる、超促進耐候性試験装置(商品名:アイ スーパー UVテスター SUV-W161」、岩崎電気社製)
<評価基準>
A:化粧シートの全体で外観変化は確認されなかった。
B:化粧シートの外観上で軽微な白化は確認されたが、透明性樹脂層及び/又は基材層の色調変化は確認できなかった。
C:化粧シートの外観上で軽微な白化が確認されるとともに、透明性樹脂層及び/又は基材層の軽微な色調変化が確認された。
D:化粧シートの著しい外観白化、並びに、透明性樹脂層及び/又は基材層の大きな色調変化が確認された。
【0098】
1-3.ブリードアウト
実施例及び比較例で得られた化粧シートを60℃温水の恒温槽に1週間浸漬した後、取り出して十分に乾燥させてから目視と非接触式の形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス製:VK-X1000)を用いて外観を観察し、以下の基準で評価した。
A:外観の変化が確認されなかった。
B:わずかな膨れや気泡、艶変化、シート成分の析出等の外観変化が確認された。
C:著しい膨れや気泡、艶変化、シート成分の析出等の外観変化が確認された。
【0099】
2.化粧シートの作製
[実施例1]
両面コロナ放電処理を施した基材層(厚み60μmの着色ポリプロピレン樹脂シート)の一方の面に、2液硬化型のアクリル-ウレタン樹脂からなる印刷インキを用いて装飾層を形成した。次いで、装飾層上に、厚み3μmのウレタン樹脂系接着剤からなる接着剤層を形成した。
次いで、接着剤層上に、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN479、BASF社製)を0.12質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(商品名:アデカスタブLA-46、ADEKA社製)を0.12質量部含む組成物AをTダイ押出し機により加熱溶融押出し、厚み80μmの透明性樹脂層を形成した。
透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、透明性樹脂層上に、下記組成物Bを塗布、乾燥し、厚み4μmのプライマー層を形成した。
<組成物B>
100質量部の組成物X(ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体及びアクリルポリオールからなる組成物と、ヘキサメチレンジイソシアネートとを、100:5の質量割合で混合した組成物)と、10質量部のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN400、BASF社製)とを混合してなる組成物。
【0100】
次いで、プライマー層上に、下記の組成物Cを塗布し、電子線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、厚み5μmのトップコート層を形成した。
次いで、トップコート層の上からエンボス加工により深さ50μmの木目導管状の凹凸模様を形成し、実施例1の化粧シートを得た。
【0101】
<組成物C>
・電離放射線硬化性樹脂組成物 100質量部
(重量平均分子量4000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤 1質量部
(商品名:TINUVIN1600、BASF社製)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤 2質量部
(商品名:TINUVIN479、BASF社製)
・電離放射線硬化性樹脂と反応可能なエチレン性二重結合を有するヒンダードアミンラジカル捕捉剤i 1.5質量部
(ペンタメチルピペリジニルメタクリレート)
・電離放射線硬化性樹脂と反応可能なエチレン性二重結合を有さないヒンダードアミンラジカル捕捉剤ii 3.0質量部
(ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート)
【0102】
[実施例2~5]、[比較例1~4]、[参考例1]
透明性樹脂層の紫外線吸収剤、及び、トップコート層の紫外線吸収剤を、表1のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5、比較例1~4、及び参考例1の化粧シートを得た。
【0103】
【0104】
表1の結果から、吸光度A1が0.6以上であり、かつ、吸光度A2が1.2以上である実施例の化粧シートは、紫外線による経時劣化を抑制し得ることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の化粧シートは、耐候性に優れるため、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具といった直射日光に晒される環境で用いられる部材用の化粧シートとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0106】
100:化粧シート
11:トップコート層
12:プライマー層
10:表面保護層
20:透明性樹脂層
30:装飾層
40:基材層